複屈折を有する試料を光が通過すると、試料中で常光と異常光の間に光路差(以降、リターデーションと記す。)が生じるため、試料を通過した光(常光と異常光が干渉した干渉光)の強度は、試料で生じたリターデーションに応じて変化する。ベレックコンペンセータは、試料で生じたリターデーションをベレックコンペンセータで生じたリターデーションによって補償することにより、試料で生じたリターデーションを測定するものである。
まず、ベレックコンペンセータと大きく異なる複屈折の波長特性を有する試料に関して、その試料で生じたリターデーションをベレックコンペンセータで正確に測定することが困難であることについて説明する。
図1は、試料Sの厚さと各波長の光の強度との関係を説明するための図である。試料の複屈折をΔn(λ)=ne(λ)−no(λ) とすると、試料において各波長λ1、λ2、λ3で発生するリターデーションR1、R2、R3は、下式で示される。ここで、dは試料の厚さ、L1、L2、L3は整数、Φ1、Φ2、Φ3は1波長に満たない位相差を示すリターデーション、ne(λ)は異常光の屈折率、no(λ)は常光の屈折率である。
R1=Δn(λ1)・d=L1・λ1+Φ1 ・・・(1−1)
R2=Δn(λ2)・d=L2・λ2+Φ2 ・・・(1−2)
R3=Δn(λ3)・d=L3・λ3+Φ3 ・・・(1−3)
図1には、試料の厚さdが変化すると、波長毎に異なる周期で周期的に強度(B1、B2、B3)が変化することが示されている。なお、図1では、強度の強弱が濃淡で示されていて、最も濃い部分において光の強度が最も弱くなっている。
試料で発生するリターデーションR1、R3を、リターデーションR2を用いて表わすと、下式のようになる。
R1=Δn(λ1)/Δn(λ2)・R2=γ12・R2 ・・・(2−1)
R3=Δn(λ3)/Δn(λ2)・R2=γ32・R2 ・・・(2−2)
ここで、試料の複屈折の波長特性γ12、γ32は、下式で示される。
γ12=Δn(λ1)/Δn(λ2) ・・・(3−1)
γ32=Δn(λ3)/Δn(λ2) ・・・(3−2)
以上のように、任意の波長(λ1、λ3)で生じるリターデーション(R1、R3)は、基準波長(λ2)で生じるリターデーション(R2)と試料の複屈折の波長特性(γ12、γ32)を用いて表わすことができる。なお、以降では、複屈折の波長特性を単に波長特性ともいう。
ベレックコンペンセータで生じるリターデーションについても、試料と同様の関係が成り立つことから、ベレックコンペンセータにおいて波長λ1、λ3で発生するリターデーションRc1、Rc3は、波長λ2で発生するリターデーションRc2を用いて、下式で示される。ここで、Δnc(λ)は、ベレックコンペンセータの複屈折である。
Rc1=Δnc(λ1)/Δnc(λ2)・Rc2
=γc12・Rc2 ・・・(4−1)
Rc3=Δnc(λ3)/Δnc(λ2)・Rc2
=γc32・Rc2 ・・・(4−2)
ベレックコンペンセータで試料のリターデーションを測定する方法には、ベレックコンペンセータの傾き角を変化させることで光が透過する厚さを変化させて複数の波長の光の干渉色が暗線になる状態を作り出し、そのときのベレックコンペンセータの傾き角から試料のリターデーションを算出するという方法がある。
しかしながら、この方法は、干渉色が暗線になる状態において、下式に示すように、各波長で発生するリターデーションがそれぞれ補償されることを前提としている。つまり、γc12=γ12、γc32=γ32が前提である。
Rc1−R1=γc12・Rc2−γ12・R2=0 ・・・(5−1)
Rc2−R2=0 ・・・(5−2)
Rc3−R3=γc32・Rc2−γ32・R2=0 ・・・(5−3)
しかしながら、試料とベレックコンペンセータの波長特性が異なり、γc12≠γ12、γc32≠γ32の関係が成り立つ場合には、基準波長λ2におけるリターデーションが補償されている場合(Rc2=R2)であっても、下式で示すように、他の波長で発生するリターデーションが補償されない。
Rc1−R1=(γc12−γ12)R2≠0 ・・・(6−1)
Rc3−R3=(γc32−γ32)R2≠0 ・・・(6−2)
従って、基準波長λ2が補償された状態の干渉色は暗線とはならず、補償された状態が特定できないため、試料で発生したリターデーションを測定することができない。さらに悪いことに、下式に示すように、試料で生じたリターデーションがベレックコンペンセータで補償されてない場合であっても、ε1、ε2、ε3が整数となる場合には、干渉色は暗線となってしまう。このため、ε1、ε2、ε3が整数となるときにベレックコンペンセータで生じたリターデーションを試料で生じたリターデーションと誤認してしまうことがある。
Rc1−R1=γc12・Rc2−γ12・R2=ε1・λ1 ・・・(7−1)
Rc2−R2=ε2・λ2 ・・・(7−2)
Rc3−R3=γc32・Rc2−γ32・R2=ε3・λ3 ・・・(7−3)
例えば、R2=4000nm、γ12−γc12≒0.03、γ32−γc32≒−0.04、γc12≒1.014、γc32≒0.98、λ1=490nm、λ2=550nm、λ3=650nmの場合を仮定する。この場合、ε1=ε2=ε3=2のときに、式(7−1)、(7−2)、(7−3)を変形することによって得られる、下式に示す関係が成り立ち、干渉色が暗線に近い状態となる。
(γ12−γc12)R2=γc12・ε2・λ2−ε1・λ1・・・(8−1)
(γ32−γc32)R2=γc32・ε2・λ2−ε3・λ3・・・(8−2)
このことから、ベレックコンペンセータを用いて、基準波長λ2のリターデーションR2が4000nm程度であり、波長特性がベレックコンペンセータの波長特性と4%程度異なる試料の干渉色を観察してリターデーションを測定すると、Rc2=R2+2・λ2となるため、試料の実際のリターデーションよりも2波長程度大きく測定されてしまう。
このように、複屈折の波長特性がベレックコンペンセータと異なる試料で生じるリターデーションを干渉色の暗線部分を拠り所にして測定すると、ベレックコンペンセータによる測定値は試料で生じたリターデーションとは異なる値を示してしまう。また、その差は試料で生じるリターデーションに比例して大きくなる。
次に、セナルモンコンペンセータを用いたリターデーション測定方法について説明し、セナルモンコンペンセータによっても正確なリターデーションの測定が困難なことを説明する。
λ/4板と回転偏光板とを含むセナルモンコンペンセータで直接的に測定できるリターデーションは1波長未満に限定される。つまり、式(1−1)から式(1−3)に示すΦ1、Φ2、Φ3が測定できるのみである。このため、ポリマーシートなどの偏光解消素子のように1波長以上のリターデーションが生じる試料を、セナルモンコンペンセータを用いて測定する場合には、干渉計測で用いられている合致法を利用するのが通常である。
合致法は、複数の波長(λ1、λ2、λ3)で1波長に満たないリターデーションΦ1、Φ2、Φ3を測定し、各々で生じるリターデーションR1、R2、R3がR1=R2=R3となる式(1−1)から(1−3)のL1、L2、L3の最小の組み合わせを求めて、その値からリターデーションR1、R2、R3を算出する方法である。この方法は、試料の複屈折Δnが波長依存性を有しないことを前提としているため、試料の複屈折Δnの波長依存性が大きい場合には、正確な測定が困難である。
図2は、本発明の一実施形態に係るリターデーション測定方法のフローチャートである。図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係るリターデーション測定方法について説明する。図2に示すリターデーション測定方法は、ベレックコンペンセータとセナルモンコンペンセータを使用して試料で生じたリターデーションを正確に測定するものである。この方法では、ベレックコンペンセータのみによって測定される場合とは異なり、任意の試料で生じたリターデーションを測定することができる。
まず、最初にコンペンセータを用いてリターデーションを測定する(ステップS1)。ここでは、試料で生じたリターデーションのうち試料で生じた位相差を示す検出波長1波長分に満たないリターデーション(第1のリターデーション)を算出する。具体的な方法としては、例えば、セナルモンコンペンセータを構成するλ/4板の光学軸に対してセナルモンコンペンセータを構成する回転偏光板の振動方向(より厳密には回転偏光板を通過した光の振動方向)を相対的に変化させることにより、試料で生じたリターデーションのうち試料で生じた位相差を示す検出波長1波長分に満たないリターデーションを補償する。そして、補償されているときのλ/4板の光学軸と回転偏光板の振動方向とのなす角度に基づいて、第1のリターデーションを算出する。
セナルモンコンペンセータで算出される第1のリターデーションΦは、なす角θ(°)と波長λを用いて、Φ=θ・λ/180で算出される。リターデーションの測定は、波長毎に行われる。ここでは、例えば、波長λ1、λ2、λ3の第1のリターデーションがそれぞれΦ1、Φ2、Φ3として算出される。なお、各実施例で示すように、第1のリターデーションは、セナルモンコンペンセータに限られず、任意のコンペンセータで測定され得る。
次に、ベレックコンペンセータを用いてリターデーションを測定する(ステップS3)。より詳細には、偏光子と検光子の間にベレックコンペンセータが配置されている状態で、ベレックコンペンセータの傾き角を変化させて光が透過する部分の厚さ(図1の厚さd)を変化させることにより、検光子を通過する光の強度を変化させる。そして、検光子を通過する光の強度が最小となるときのベレックコンペンセータの光が透過する部分の厚さに基づいて第2のリターデーションを算出する。なお、第2のリターデーションは、ベレックコンペンセータと試料の複屈折の波長特性の違いの影響を受けて、実際に試料で生じたリターデーションに対して誤差を含む値として算出される。この処理は、波長毎に行われても、複数の波長に対して同時に行われてもよい。ここでは、例えば、波長λ1、λ2、λ3の第2のリターデーションがそれぞれRe1、Re2、Re3として算出される。
さらに、ベレックコンペンセータの複屈折の波長特性を算出する(ステップS5)。ベレックコンペンセータの複屈折の波長特性は、ベレックコンペンセータの数表から算出する。具体的には、ベレックコンペンセータをθだけ傾けてベレックコンペンセータの光が透過する部分の厚さをdとしたときに、ベレックコンペンセータにおいて波長λ1、λ2、λ3に対して生じるリターデーション(第4のリターデーション)Rc1、Rc2、Rc3を数表から読み取る。その後、式(4−1)及び式(4−2)に示す関係から、ベレックコンペンセータの複屈折の波長特性γc12、γc32を、それぞれRc1/Rc2、Rc1/Rc3として算出する。即ち、厚さが一定のときにベレックコンペンセータで生じる波長間のリターデーション比を、ベレックコンペンセータの複屈折の波長特性として算出する。
その後、試料の複屈折の波長特性を算出する(ステップS7)。ここでは、まず、ベレックコンペンセータで測定された(つまり、ステップS3で算出された)第2のリターデーションの比γe12(=Re1/Re2)、γe32(=Re3/Re2)を算出する。これらの比は、試料の複屈折の波長特性γ12、γ32そのものではなく、コンペンセータの複屈折の波長特性γc12、γc32の影響を受けた誤差を含む試料の複屈折の波長特性である。
λ1でベレックコンペンセータの干渉縞が暗線になるとき式(7−1)の右辺が0とみなせると考える。このとき、基準波長であるλ2でベレックコンペンセータが示すRe2と、試料で生じたリターデーションR2との間には、Re2=γ12/γc12・R2の関係が求まる。これは、次のことを意味している。測定したリターデーションRe1が試料で生じるリターデーションR1を正しく表わしている場合には、ベレックコンペンセータでリターデーションRe2を求めると、上記の関係で示されるように、ベレックコンペンセータの波長特性の影響を受けてRe2を正しく測定できない。Re2=γ12/γc12・R2としてRe2を算出してしまう。
λ3でも同様に、測定したリターデーションRe3が試料で生じるリターデーションR3を正しく表わしている場合には、ベレックコンペンセータの波長特性の影響を受けてRe2を正しく測定できない。Re2=γ32/γc32・R2としてRe2を測定してしまう。
このように、波長特性がベレックコンペンセータと異なる試料を測定する場合には、基準波長λ2のリターデーションRe2と他の波長のリターデーションを同時に正しく測定することができず、基準波長とそれ以外の波長の一方のリターデーションReはベレックコンペンセータの波長特性の影響を受けた値として測定されることになる。
このため、誤差を含む試料の複屈折の波長特性γe12、γe32は、試料の複屈折の波長特性γ12、γ32とコンペンセータの複屈折の波長特性γc12、γc32を用いて、下式で示される。
γe12=γ12/γc12 ・・・(9−1)
γe32=γ32/γc32 ・・・(9−2)
これをコンペンセータの複屈折の波長特性について変形すると、下式のようになる。
γ12=γe12・γc12 ・・・(10−1)
γ32=γe32・γc32 ・・・(10−2)
式(10−1)及び式(10−2)に、ステップS5で算出したベレックコンペンセータの複屈折の波長特性γc12、γc32とステップS7で算出した誤差を含む試料の複屈折の波長特性γe12、γe32を代入して、試料の複屈折特性γ12、γ32を算出する。
試料の複屈折の波長特性が算出されると、ステップS1で算出した第1のリターデーションとステップS7で算出した試料の複屈折の波長特性に基づいて、試料で生じるリターデーション(第3のリターデーション)を算出する(ステップS9及びステップS11)。
まず、下式(11−1)及び(11−2)に示すδR12、δR32が最小となる整数L1、L2、L3を算出する(ステップS9)。なお、式(11−1)及び(11−2)は、式(1−1)から(1−3)、式(2−1)及び(2−2)を用いて導出される。
δR12=|L1・λ1+Φ1−γ12・(L2・λ2+Φ2)|・・・(11−1)
δR32=|L3・λ3+Φ3−γ32・(L2・λ2+Φ2}|・・・(11−2)
最後に、式(1−1)から(1−3)の右辺に数値(L1、L2、L3、λ1、λ2、λ3、Φ1、Φ2、Φ3)を代入して、試料で生じるリターデーションR1、R2、R3を算出する(ステップS11)。
以上の測定方法によれば、試料の波長特性を算出することができるため、ベレックコンペンセータで測定されるリターデーションが試料とベレックコンペンセータの波長特性の差によって影響を受けるにもかかわらず、試料で生じるリターデーションを正確に算出することができる。従って、任意の試料で生じるリターデーションを精度良く測定することができる。また、試料を顕微鏡下で試料を観察しながら、試料中の各位置で生じるリターデーションを測定することができる。従って、試料で生じるリターデーションの分布を短時間で容易に把握することができる。
なお、以上の説明では試料で生じるリターデーション全体を補償する補償素子としてベレックコンペンセータを例示したが、上述した方法は、バビネソレイユコンペンセータや楔コンペンセータを用いても行うことが可能である。また、以上の説明では3波長を用いた例を示したが、上述した方法は、任意の2波長を用いて行うことも可能である。
以下、本発明の各実施例について具体的に説明する。
図3は、本実施例に係る偏光顕微鏡1の構成を例示した図である。偏光顕微鏡1は、透過照明を採用した正立顕微鏡であり、光源10と、光源10からの光を試料Sに照射する照明光学系20と、試料Sを配置する回転ステージ30と、試料Sの光学像を形成する観察光学系40と、を備えている。
光源10は、白色光源であり、例えば、ハロゲンランプである。
照明光学系20は、光源側から順に、複数の波長選択フィルターを内部に収納したフィルターターレット21と、偏光子22を内蔵した偏光用コンデンサ23と、を備えている。
フィルターターレット21に収納された複数の波長選択フィルターの各々は、光源10からの白色光から所定の波長の光を選択して透過させる干渉フィルターである。フィルターターレット21は、異なる波長透過率特性を有する複数の波長選択フィルターを切り替える切替機構であり、波長選択フィルターを切り替えることにより試料Sに照射する光の波長を変更する波長可変機構である。なお、フィルターターレット21は、照明光学系20ではなく観察光学系40に配置されても良い。
偏光子22は、所定の振動方向を有する光のみを透過させる素子であり、偏光用コンデンサ23は、高い偏光性能を実現するためにレンズのひずみが小さくなるように設計・製造されている。
回転ステージ30は、照明光学系20と観察光学系40との間に配置された透過照明用のステージである。回転ステージ30は、照明光学系20及び観察光学系40の光軸と平行な回転軸を有し、その回転軸周りに回転自在に配置されている。
観察光学系40は、試料S側から順に、偏光用対物レンズ41と、λ/4板42aと、ベレックコンペンセータ42bと、回転偏光子43と、接眼部44とを備えている。
偏光用対物レンズ41は、高い偏光性能を実現するためにレンズのひずみが小さくなるように設計・製造された対物レンズである。
λ/4板42aは、偏光用対物レンズ41の光軸と平行な回転軸周りに回転自在に配置された回転偏光子43とともに試料Sで生じる検出波長1波長分に満たないリターデーションを補償する第1の補償素子であり、λ/4板42aと回転偏光子43とでセナルモンコンペンセータを構成する。
ベレックコンペンセータ42bは、素子の傾き角を変化させて光が透過する部分の厚さを変化させることにより補償するリターデーションを変化させる第2の補償素子であり、光が透過する部分の厚さに基づいてリターデーションを測定するものである。
λ/4板42a及びベレックコンペンセータ42bは、偏光用対物レンズ41と回転偏光子43との間の光路(偏光子22と回転偏光子43の間)に対して挿脱自在に配置されていて、切り替えて使用される。
回転偏光子43は、観察光学系40の光軸と平行な回転軸を有し、且つ、その回転軸周りに回転自在に配置された偏光子である。回転偏光子43は、検光子として機能する。
図4は、本実施例に係るリターデーション測定方法のフローチャートである。図4を参照しながら、偏光顕微鏡1を用いて、大きな複屈折を有する試料S(特に、検出波長1波長分以上のリターデーションが生じる試料S)のリターデーションを測定する方法について具体的に説明する。なお、以降では、検出波長としてλ1、λ2の2波長を用いる例を示す。
まず、回転偏光子43の基準位置を決定する(ステップS101)。ここでは、λ/4板42a及びベレックコンペンセータ42bがともに光路外に配置され、且つ、試料Sが回転ステージ30に配置されていない状態で、回転偏光子43を回転させて回転偏光子43を透過する光量が最小となる位置を特定する。そして、特定された位置を回転偏光子43の基準位置(0度位置)に決定する。
次に、回転ステージ30の基準位置を決定する(ステップS103)。ここでは、回転偏光子43が基準位置にある状態で試料Sを回転ステージ30に配置し、その後、回転ステージ30を回転させて回転偏光子43を透過する光量が最小となる位置を特定する。そして、特定された位置を回転ステージ30の基準位置(0度位置)に決定する。
その後、回転ステージ30を基準位置から45度回転させる(ステップS105)。これにより、回転偏光子43と試料Sの回転角の調整が完了する。
回転角の調整が完了すると、セナルモンコンペンセータを用いてリターデーションを測定する(ステップS107からステップS115)。
まず、λ/4板42aを光路に挿入し、フィルターターレット21で検出波長を選択する(ステップS107及びステップS109)。ここでは、まず、フィルターターレット21により波長λ1が選択されたものとする。
その後、セナルモンコンペンセータでリターデーションを算出する(ステップS111及びステップS113)。ここでは、ステップS111で、回転偏光子43を回転させて回転偏光子43を透過する光量が最小となるときのλ/4板42aの光学軸と回転偏光子43の振動方向とのなす角度θ1(°)を特定する。つまり、試料Sで生じた1波長分に満たない第1のリターデーションΦ1が補償されたときの角度を特定する。ステップS113では、その角度θ1に基づいて、第1のリターデーションΦ1を算出する。具体的には、第1のリターデーションΦ1は、角度θ1と検出波長λ1を用いて、Φ1=θ1・λ1/180として算出される。
その後、すべての検出波長に対してリターデーションが測定済みか否かを判断し(ステップS115)、測定していない検出波長がある場合には、ステップS109からステップS113を繰り返す。これにより、波長λ1に対する第1のリターデーションΦ1と、波長λ2に対する第1のリターデーションΦ2が、セナルモンコンペンセータで測定される。
セナルモンコンペンセータによる測定が完了すると、ベレックコンペンセータを用いて、リターデーションを測定する(ステップS117からステップS127)。
まず、λ/4板42aを光路外に取り除いて、ベレックコンペンセータ42bを光路に挿入する(ステップS117)。このとき、回転偏光子43の角度を基準位置(0度位置)に戻して固定する。
次に、ベレックコンペンセータ42bの基準位置を決定する(ステップS119)。ここでは、フィルターターレット21を光路中に波長選択フィルターがない位置に設定し、光源10からの白色光で試料Sを照明する。その後、試料Sの光学像を観察しながら、ベレックコンペンセータ42bを傾ける。そして、光学像に重畳する干渉縞の干渉色の最も鮮やかな部分が視野に入り、且つ、最も暗い暗線部分が視野中央に位置する状態を特定し、そのときのベレックコンペンセータ42bの位置を基準位置に決定する。
フィルターターレット21で検出波長を選択する(ステップS121)。ここでは、まず、フィルターターレット21により波長λ1が選択されたものとする。
その後、ベレックコンペンセータでリターデーションを算出する(ステップS123及びステップS125)。ステップS123では、まず、試料を観察して視野の中心に最も近い暗線部分を特定する。その後、ベレックコンペンセータ42bを傾けてその暗線部分を視野内で移動させて、その暗線部分が視野の中心に位置するときのベレックコンペンセータ42bの角度ω1(°)を特定する。換言すると、前記検光子を通過する視野の中心部分を通った光の強度が最小となるときのベレックコンペンセータ42bの角度を特定する。ステップS125では、その角度ω1に基づいて、試料Sで生じたリターデーションR1に対応する第2のリターデーションRe1を算出する。具体的には、ベレックコンペンセータ42bの角度−複屈折換算表を参照し、角度ω1と検出波長λ1の組み合わせに対応するリターデーションを第2のリターデーションRe1として算出する。
その後、すべての検出波長に対してリターデーションが測定済みか否かを判断し(ステップS127)、測定していない検出波長がある場合には、ステップS121からステップS125を繰り返す。これにより、波長λ1に対する第2のリターデーションRe1と、波長λ2に対する第2のリターデーションRe2が、ベレックコンペンセータで測定される。
ベレックコンペンセータによる測定が完了すると、ベレックコンペンセータの波長特性を算出する(ステップS129からステップS131)。
まず、ステップS125で算出した波長λ1に対する第2のリターデーションRe1と波長λ2に対する第2のリターデーションRe2の比を算出する(ステップS129)。第2のリターデーションの比γe12(=Re1/Re2)は、試料の複屈折の波長特性γ12そのものではなく、ベレックコンペンセータの複屈折の波長特性γc12の影響を受けた誤差を含む試料の複屈折の波長特性である。
次に、ベレックコンペンセータの複屈折の波長特性を算出する(ステップS131)。ここでは、ベレックコンペンセータ42bの角度−複屈折換算表から、任意の角度ωと波長λ1の組み合わせに対応するリターデーションRc1と、同じ角度ωと波長λ2の組み合わせに対応するリターデーションRc2と、を読み取る。そして、それらのリターデーションの比をベレックコンペンセータの複屈折の波長特性γc12(=Rc1/Rc2)として算出する。
その後、ステップS129とステップS131で算出した波長特性から試料の複屈折の波長特性を算出する(ステップS133)。ここでは、誤差を含む試料の複屈折の波長特性γe12にベレックコンペンセータの複屈折の波長特性γc12を掛けて試料の複屈折の波長特性γ12(=γ12e・γc12)を算出する。
試料の複屈折の波長特性の算出が完了すると、試料で生じたリターデーションを算出する(ステップS135からステップS137)。
まず、合致法のパラメータを算出する(ステップS135)。試料で波長λ1、波長λ2に対して生じるリターデーションR1とリターデーションR2は、ステップS131で算出した波長特性γ12を用いて、R1=γ12・R2という関係にある。これを踏まえて、上記の式(1−1)と式(1−2)のパラメータである整数L1、L2を求める。具体的には、δR12=|L1・λ1+Φ1−γ12・(L2・λ2+Φ2)|が最小となる整数L1と整数L2の組み合わせを求める。
最後に、試料で生じたリターデーションを算出する(ステップS137)。ここでは、式(1−1)及び式(1−2)に、波長λ1、波長λ2、ステップS113で算出した第1のリターデーションΦ1、第1のリターデーションΦ2、及び、ステップS135で算出した整数L1、整数L2を代入して、試料で生じた第3のリターデーションR1、第3のリターデーションR2を算出する。
さらに、試料の複屈折の波長特性を再度算出する(ステップS139)。ここでは、ステップS133で算出した波長特性γ12が近似的な値であることを踏まえ、ステップS137で算出した第3のリターデーションから試料の複屈折の波長特性γs12を算出する。具体的には、第3のリターデーションの比として試料の複屈折の波長特性γs12(=R1/R2)を算出する。
以上の測定方法によれば、任意の試料で生じるリターデーションを精度良く測定することができる。また、ベレックコンペンセータを用いることで、試料の複屈折の波長特性を容易に測定することができる。さらに、セナルモンコンペンセータとベレックコンペンセータを用いることで、試料の複屈折の波長特性をさらに高い精度で測定することができる。
図5は、本実施例に係るリターデーション測定装置2の構成を例示した図である。リターデーション測定装置2は、試料Sで生じるリターデーションを測定する装置であり、光源50と、光源50からの光を試料Sに照射する照明光学系60と、試料Sを配置する回転ステージ70と、試料Sの光学像を形成する観察光学系80と、RGBのカラーフィルタを備えた3板式のCCDカメラ90と、を備えている。リターデーション測定装置2は、さらに、画像処理や各演算処理を実行する演算制御装置100と、複数の駆動機構(モータ103、角度調整機構104)を制御する検出制御装置101と、画像を表示するモニタ105と、を備えている。
光源50は、白色光源であり、例えば、ハロゲンランプなどである。
照明光学系60は、光源側から順に、複数の波長選択フィルターを内部に収納したフィルターターレット61と、セナルモンコンペンセータを構成する回転偏光子62及びλ/4板63と、偏光用コンデンサ64と、を備えている。
フィルターターレット61は、複数の波長選択フィルターを切り替える切替機構であり、波長選択フィルターを切り替えることにより試料Sに照射する光の波長を変更する波長可変機構である。フィルターターレット61は、検出制御装置101に接続されていて、検出制御装置101からの駆動信号に基づいて複数の波長選択フィルターを切り替えるように構成されている。
フィルターターレット61に収納された複数の波長選択フィルターの各々は、光源50からの白色光から所定の波長の光を選択して透過させる干渉フィルターである。より詳細には、CCDカメラ90のカラーフィルタに対応してRGBの波長帯域でクロストークが発生しないようにそれら3つの波長帯域に狭帯域化された透過帯を有するフィルターである。複数の波長選択フィルターは、互いに狭帯域幅や中心波長が異なっている。
回転偏光子62は、照明光学系60の光軸と平行な回転軸を有し、且つ、その回転軸周りに回転自在に配置された偏光子である。回転偏光子62は、モータ103が駆動することにより回転軸周りに回転するように構成されている。
λ/4板63は、回転偏光子62とともに試料Sで生じるリターデーションのうち試料Sで生じる位相差を示す検出波長1波長分に満たないリターデーションを補償する第1の補償素子であり、λ/4板63と回転偏光子62とでセナルモンコンペンセータを構成する。
偏光用コンデンサ64は、高い偏光性能を実現するためにレンズのひずみが小さくなるように設計・製造されている。
回転ステージ70は、照明光学系60と観察光学系80との間に配置された透過照明用のステージである。回転ステージ70は、照明光学系60及び観察光学系80の光軸と平行な回転軸を有し、その回転軸周りに回転自在に配置されている。
観察光学系80は、試料S側から順に、偏光用対物レンズ81と、ベレックコンペンセータ82と、検光子83と、接眼部84とを備えている。
偏光用対物レンズ81は、高い偏光性能を実現するためにレンズのひずみが小さくなるように設計・製造された対物レンズである。
ベレックコンペンセータ82は、素子の傾き角を変化させて光が透過する部分の厚さを変化させることで、補償するリターデーションを変化させることができる第2の補償素子であり、光路に対して挿脱自在に配置されている。ベレックコンペンセータ82は、角度調整機構104が駆動することにより、光が透過する部分の厚さが変化するように(つまり、ベレックコンペンセータ82が傾くように)構成されている。ベレックコンペンセータ82には、傾きの角度、波長、リターデーションとの関係が記載されている角度−複屈折換算表が用意されている。また、ベレックコンペンセータ82は、角度調整機構104の駆動によって、光路に対して挿脱されるように構成されていてもよい。
CCDカメラ90は、受光面が観察光学系80の像位置に位置するように配置された撮像装置であり、2次元イメージセンサを備えている。CCDカメラ90は、RGBの画像情報を演算装置100へ出力するように構成されている。
演算制御装置100は、プロセッサやメモリ等を備えた装置であり、CCDカメラ90や検出制御装置101からの信号に基づいて各種の演算処理を実行する。具体的には、CCDカメラ90から出力された画像情報に対する画像処理や、リターデーション算出処理などが行われる。また、演算制御装置100には、キーボードやマウスなどの図示しない入力装置に接続されている。
検出制御装置101は、直接に又は駆動機構(モータ103、角度調整機構104)を介して各種光学素子(フィルターターレット61、回転偏光子62、ベレックコンペンセータ82)の状態を検出し、制御する制御装置である。具体的には、検出制御装置101は、フィルターターレット61に駆動信号を送信して、波長選択フィルターを切り替える。また、検出制御装置101は、モータ103に駆動信号を送信して、モータ103に回転偏光子62を回転させる。また、検出制御装置101は、角度調整機構104に駆動信号を送信して、ベレックコンペンセータ82の傾きを変更するとともに、角度調整機構104からの信号を受信してベレックコンペンセータ82の傾き角度を検出する。
モニタ105は、演算装置100による処理結果を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイである。
以上のように構成されたリターデーション測定装置2では、演算装置100からの指示に基づいて制御装置101によりコンペンセータ(ベレックコンペンセータ、セナルモンコンペンセータ)の角度制御やフィルターターレット61の回転制御が電子的に行われる。また、CCDカメラ90によって撮像された試料SのRGBの各色の画像情報及びそれらが合成されたカラー画像情報が演算装置100に記憶されて、それらの画像情報に基づいてモニタ105にR画像、G画像、B画像、カラー画像が選択的に表示される。リターデーション測定装置2のユーザは、モニタ105に表示された任意の画像を見ながら、リターデーションを測定する検出領域を設定することができる。そして、試料の検出領域で生じたリターデーションは、CCDカメラ90及び制御装置101からの信号に基づいて演算装置100により自動的に算出される。このため、リターデーション測定装置2によれば、ユーザは、演算装置100に対して指示を入力するだけで、試料Sのリターデーションを測定することができる。
図6は、本実施例に係るリターデーション測定方法のフローチャートである。図6を参照しながら、リターデーション測定装置2を用いて、大きな複屈折を有する試料S(特に、検出波長1波長分以上のリターデーションが生じる試料S)のリターデーションを測定する方法について具体的に説明する。なお、以降では、検出波長としてλ1、λ2の2波長を用いる例を示す。
まず、リターデーション測定装置2は、検出領域の設定を取得する(ステップS201)。演算制御装置100は、まず、試料Sを回転ステージ70に配置する前に、波長選択フィルター及びベレックコンペンセータ82が光路中に配置されていない状態でCCDカメラ90から出力される画像信号に基づいてモニタ105に画像を表示させる。ユーザは、画像を見ながら図示しない入力装置を用いて、検出領域、即ち、リターデーションを測定すべき領域、を指定する。検出領域は、例えば30×30画素の領域として指定される。その後、演算制御装置100は、指定された検出領域の座標(例えば、検出領域の中心の座標)を特定して、メモリ等に記憶する。これにより、リターデーション測定装置2は、検出領域の設定を取得する。
ここでは、図7に示すように、検出領域(A1、A2、A3、A4、A5)がカラー画像IM(つまり、視野範囲)内に複数設定されたものとする。なお、ここでは、カラー画像IMを参照しながら検出領域を指定した例を示したが、他の画像(R画像、G画像、B画像)を参照しながら検出領域を指定してもよく、一の画像に設定された検出領域は他の画像に対しても適用される。つまり、すべての画像(R画像、G画像、B画像、カラー画像)に対して同一の座標に検出領域が指定される。
次に、リターデーション測定装置2は、回転偏光子62の基準位置を決定する(ステップS203)。この処理は、図4のステップS101に相当する処理である。ここでは、演算制御装置100は、検出制御装置101を介して回転偏光子62の回転を制御し、例えば、画像中央に設定された検出領域A1の平均輝度(つまり平均強度)が最小となる位置を特定する。そして、特定された位置を回転偏光子62の基準位置(0度位置)に決定し、メモリ等に記憶させる。
その後、リターデーション測定装置2は、ベレックコンペンセータ82を光路中に挿入し(ステップS205)、ベレックコンペンセータの基準位置を検出領域毎に決定する(ステップS207)。ここでは、演算制御装置100は、検出制御装置101を介してベレックコンペンセータ82の傾きを制御し、検出領域毎の平均輝度が最小となる位置を特定する。そして、特定された位置をベレックコンペンセータ82の検出領域毎の基準位置(0度位置)に決定し、メモリ等に記憶させる。
試料Sを回転ステージ70上に配置後、ユーザにより回転ステージ70の設定が行われる。ここでは、ユーザは、モニタ105に表示される、例えば、画像中央に設定された検出領域A1の平均輝度が最小となる位置に回転ステージ70を回転させる。この位置は、回転ステージ70の0度位置である。その後、ユーザは、さらに45度回転ステージ70を回転させて、ステージの設定を完了する。
次に、リターデーション測定装置2は、波長選択フィルターを光路に挿入する(ステップS209)。ここでは、演算制御装置100は、検出制御装置101を介してフィルターターレット61を制御して光路中に波長選択フィルターを挿入する。これにより、光源50から出射する白色光からそれぞれ波長λ1、波長λ2、波長λ3を中心波長する狭い波長帯域の光が選択され、試料Sに照射される。なお、以降では、G(Green)に相当する波長λ1、B(Blue)に相当する波長λ2についてのみ説明し、R(Red)に相当する波長λ3についての説明は省略する。
その後、ベレックコンペンセータ82を用いて、試料Sで生じるリターデーション全体を測定する(ステップS211からステップS213)。
ステップS211では、リターデーション測定装置2は、平均輝度が最小になるベレックコンペンセータ82の角度を検出領域毎に特定する。より詳細には、リターデーション測定装置2は、ベレックコンペンセータ82の角度を変更しながら、各角度でカラー画像情報、RGBの画像情報を取得する。そして、検出領域毎に次の処理を行う。カラー画像情報の検出領域の平均輝度が最小となるベレックコンペンセータの傾き角度ω0を特定する。さらに、その角度近傍で、G画像情報の検出領域の平均輝度が最小となるベレックコンペンセータの傾き角度ω1、B画像情報の検出領域の平均輝度が最小となるベレックコンペンセータの傾き角度ω2を特定する。これにより、検出領域毎にベレックコンペンセータの傾き角度ω1とω2が得られる。このような手順で色毎の傾き角度を特定するのは、ベレックコンペンセータの傾き角度を変化させるとG画像情報とB画像情報の検出領域の平均輝度は周期的に変化する。このため極小を示す角度は複数存在するが、その中で最小を示す角度はカラー画像情報の検出領域の平均輝度が最小となる角度の近傍に存在する、からである。
ステップS213では、リターデーション測定装置2は、ベレックコンペンセータ42bで補償した第2のリターデーションRe1、Re2を検出領域毎に算出する。具体的には、ベレックコンペンセータ42bの角度−複屈折換算表を参照して、角度ω1(ξ,η)と検出波長λ1の組み合わせに対応するリターデーションを波長λ1に対する第2のリターデーションRe1(ξ,η)として、角度ω2(ξ,η)と検出波長λ2の組み合わせに対応するリターデーションを波長λ2に対する第2のリターデーションRe2(ξ,η)として、算出し、メモリ等に記憶させる。なお、(ξ,η)は検出領域の座標を示している。
次に、ベレックコンペンセータ82を光路外に取り除いて、セナルモンコンペンセータを用いてリターデーションを測定する(ステップS215からステップS217)。
リターデーション測定装置2は、ベレックコンペンセータ82を光路外に取り除き(ステップS215)、その後、位相シフト法を用いて第1のリターデーションΦ1、Φ2を画素毎に算出する(ステップS217)。
ステップS217では、まず、演算制御装置100は、検出制御装置101を介して回転偏光子62を、0度位置、45度位置、90度位置、135度位置に回転させて、それぞれの位置でRGBの画像情報を取得する。その後、取得したRGBの画像情報に基づいて位相シフト法により第1のリターデーションΦ1、Φ2を画素(x,y)毎に算出し、メモリ等に記憶させる。
ここで、各角度(0度、45度、90度、135度)におけるGの画像情報をI1(x,y,0)、I1(x,y,45)、I1(x,y,90)、I1(x,y,135)とし、各角度におけるBの画像情報をI2(x,y,0)、I2(x,y,45)、I2(x,y,90)、I2(x,y,135)とすると、波長λ1に対する第1のリターデーションΦ1(x,y)と波長λ2に対する第1のリターデーションΦ2(x,y)は、以下の式で算出される。
Φ1(x,y)=(λ1/2π)・tan−1[{I1(x,y,90)−I1(x,y,0)}/{I1(x,y,135)−I1(x,y,45)}] ・・・(12−1)
Φ2(x,y)=(λ2/2π)・tan−1[{I2(x,y,90)−I2(x,y,0)}/{I2(x,y,135)−I2(x,y,45)}] ・・・(12−2)
セナルモンコンペンセータによる測定が完了すると、ベレックコンペンセータ82の波長特性を算出する(ステップS219からステップS223)。
まず、ステップS211で、算出した波長λ1に対する第2のリターデーションRe1と波長λ2に対する第2のリターデーションRe2の比γe12(=Re1/Re2)を検出領域毎に算出する(ステップS219)。第2のリターデーションの比γe12(ξ,η)は、試料の複屈折の波長特性γ12(ξ,η)そのものではなく、ベレックコンペンセータ82の複屈折の波長特性γc12の影響を受けた誤差を含む試料の複屈折の波長特性である。
次に、ベレックコンペンセータ82の複屈折の波長特性を算出する(ステップS221)。ここでは、ベレックコンペンセータ82の角度−複屈折換算表から、任意の角度ωと波長λ1の組み合わせに対応するリターデーションRc1と、同じ角度ωと波長λ2の組み合わせに対応するリターデーションRc2と、を読み取る。そして、それらのリターデーションの比をベレックコンペンセータ82の複屈折の波長特性γc12(=Rc1/Rc2)として算出する。
その後、ステップS219とステップS221で算出した波長特性から試料の複屈折の波長特性を算出する(ステップS223)。ここでは、検出波長毎に算出された誤差を含む試料の複屈折の波長特性γe12(ξ,η)に、ベレックコンペンセータの複屈折の波長特性γc12を掛けることにより、試料の複屈折の波長特性γ12(ξ,η)を検出波長毎に算出する。
試料の複屈折の波長特性の算出が完了すると、試料で生じたリターデーションを画素毎に算出する(ステップS225からステップS227)。
まず、合致法のパラメータを画素毎に算出する(ステップS225)。試料で波長λ1、波長λ2に対して生じるリターデーションR1(x,y)とリターデーションR2(x,y)は、ステップS223で算出した波長特性γ12(ξ,η)を用いて、R1(x,y)=γ12(ξ,η)・R2(x,y)という関係にある。ここで、検出領域(ξ,η)は画素(x,y)を含む検出領域である。これを踏まえて、上記の式(1−1)と式(1−2)のパラメータである整数L1、L2を画素毎に求める。具体的には、δR12(x,y)=|L1(x,y)・λ1+Φ1(x,y)−γ12(ξ,η)・(L2(x,y)・λ2+Φ2(x,y))|が最小となる整数L1と整数L2の組み合わせを求める。
なお、複数の検出領域の波長特性γ12(ξ,η)が略等しい場合には、対象とする画素を含む検出領域の波長特性γ12(ξ,η)の代わりに、それらを平均した波長特性γ12avを用いても良く、また、特定の検出領域の波長特性(例えば、第1の検出領域の波長特性γ12(ξ1,η1))を用いてもよい。
最後に、試料で生じたリターデーションを画素毎に算出する(ステップS227)。ここでは、式(1−1)及び式(1−2)に、波長λ1、波長λ2、ステップS217で算出した第1のリターデーションΦ1(x,y)、第1のリターデーションΦ2(x,y)、及び、ステップS225で算出した整数L1(x,y)、整数L2(x,y)を代入して、試料で生じた第3のリターデーションR1(x,y)、第3のリターデーションR2(x,y)を算出する。
さらに、試料の複屈折の波長特性を画素毎に再度算出する(ステップS229)。ここでは、ステップS223で算出した波長特性γ12(ξ,η)が近似的な値であることを踏まえ、ステップS227で算出した第3のリターデーションから試料の複屈折の波長特性γs12(x,y)を算出する。具体的には、第3のリターデーションの比として試料の複屈折の波長特性γs12(x,y)を算出する。
本実施例のリターデーション測定方法及びリターデーション測定装置2によっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施例のリターデーション測定方法及びリターデーション測定装置2によれば、2次元イメージセンサを備えているため、試料を観察しながら試料で生じるリターデーションを画素毎に測定することができる。この点は、上述した特許文献1及び特許文献2に記載されているような分光計測を用いてリターデーションを測定する方法とは大きく異なっている。
図8は、本実施例に係るリターデーション測定方法のフローチャートである。図8に示すリターデーション測定方法は、第1のリターデーションをベレックコンペンセータで測定する点が、図4に示す実施例1に係るリターデーション測定方法とは異なっている。
以下、図8を参照しながら、図4に示す実施例1に係るリターデーション測定方法との相違点について説明する。なお、本実施例に係る偏光顕微鏡は、図3に示す実施例1に係る偏光顕微鏡1と同様であるので、本実施例に係る偏光顕微鏡の構成要素については図3と同じ符号を用いて参照する。
本実施例では、ステップS101からステップS105の処理により、回転偏光子43と試料S(回転ステージ30)の回転角の調整が完了すると、ベレックコンペンセータ42bを用いてリターデーションを測定する。
まず、ベレックコンペンセータ42bを光路に挿入し、フィルターターレット21で検出波長を選択する(ステップS301及びステップS109)。ここでは、フィルターターレット21により波長λ1が選択されたものとする。
次に、波長λ1を中心に狭帯域化された光が照射された試料Sの光学像を、ベレックコンペンセータ42bを介して観察すると、試料Sがない状態でベレックコンペンセータ42bに対して0点調整が行われたときに視野の中心に現れる十字状の暗線が、視野内の中心からずれた位置に見える。この十字状の暗線が視野の中心に来るようにベレックコンペンセータ42bを傾ける(ステップS303)。なお、この操作は、ベレックコンペンセータ42bの傾き角度を0度から変化させて、狭帯域化された光を照射したときに視野内で周期的に観察される干渉縞の暗線のうち最も視野中心に近い暗線が視野の中心に位置するようにする操作に相当するものである。このときのベレックコンペンセータ42bの角度τ1から、波長λ1に対応する第1のリターデーションΦ1を算出する(ステップS305)。具体的には、ベレックコンペンセータ42bの角度−複屈折換算表を参照し、角度τ1と検出波長λ1の組み合わせに対応するリターデーションを第1のリターデーションΦ1として算出する。
続いて、すべての検出波長に対してリターデーションが測定済みか否かを判断し(ステップS115)、測定していない検出波長がある場合には、ステップS303に戻って、上記の処理を繰り返す。これにより、波長λ1に対する第1のリターデーションΦ1と、波長λ2に対する第1のリターデーションΦ2が、ベレックコンペンセータで測定される。以降の処理は、実施例1と同様である。
以上の測定方法によっても、実施例1に係るリターデーション測定方法と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施例に係るリターデーション測定方法によれば、実施例1とは異なり、ベレックコンペンセータのみを用いて、任意の試料で生じるリターデーションを精度良く測定することができる。
上述した実施例は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各実施例に記載された装置及び方法は、特許請求の範囲により規定される本発明の思想を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
リターデーションを測定する際に行われる各ステップの順番は、適宜順番を入れ替えてもよい。例えば、実施例1では、セナルモンコンペンセータを用いた測定後にベレックコンペンセータを用いた測定が行われているが、実施例2のように、ベレックコンペンセータを用いた測定後にセナルモンコンペンセータを用いた測定が行われてもよい。
また、セナルモンコンペンセータによるリターデーション測定は、実施例1のようにリターデーションを補償することにより測定されてもよく、また、実施例2のように位相シフト法を用いて測定されてもよい。
また、セナルモンコンペンセータによるリターデーション測定は、上述した実施例では、検出波長を含む狭い波長帯域を有する光を試料に照射して行われているが、複数の検出波長を含む広い波長帯域の白色光を照射して行われてもよい。
さらに、偏斜照明を用いて2軸性複屈折に対応させるため、コンデンサの瞳位置に開口を配置してもよい。その上で、コノスコープ観察により観察されるアイソジャイアの暗線位置に対応するように、照明の開口を偏心させてリターデーションの測定を行ってもよい。