本発明の好ましい実施の形態における電界共鳴型カップラについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
まずはじめに、従来例の電界共鳴型カップラ(以下では、電界共鳴型カップラ900と記す)の特性について説明する。従来例の電界共鳴型カップラ900の斜視図を図2に示す。従来例の電界共鳴型カップラ900は、2つの電極111、112と2つの共振コイル113、114を有する送電用カップラ910と、2つの電極121、122と2つの共振コイル123、124を有する受電カップラ920を備えるものとする。そして、特許文献1と同様に、電力ケーブルとして送電用の同軸ケーブル91及び受電用の同軸ケーブル92を用いるものとする。同軸ケーブル91は送電用カップラ910の共振コイル113、114に直接接続され、同軸ケーブル92は受電用カップラ920の共振コイル123、124に直接接続されるものとする。
送電用の同軸ケーブル91と送電用カップラ910との接続では、同軸ケーブル91の中心導体91aが共振コイル113に接続され、外導体91bが共振コイル114に接続される。また、受電用の同軸ケーブル92と受電用カップラ920との接続では、同軸ケーブル92の中心導体92aが共振コイル123に接続され、外導体92bが共振コイル124に接続される。同軸ケーブル91、92の外導体91b、92bは、いずれもグランド(GND)に接続されているものとする。
同軸ケーブル91及び92をそれぞれ共振コイル113、114及び共振コイル123、124に直接接続し、同軸ケーブル91、92の外導体91b、92bをGNDに接続した従来例の電界共鳴型カップラ900の場合には、電極111、112、121、122とGNDとの間に電界による容量結合が生じる。これによって不要な共振系が形成されることになり、不要共振周波数において同軸ケーブル91、92の外導体91b、92bとGNDに強いコモンモード電流が流れてしまう。
電極111、112、121、122とGNDとの間に不要な共振系が形成されている状態を、模式的に図3(a)に示す。ここで、C1及びC2はそれぞれ電極111と112、及び電極121と122で形成されるキャパシタを示し、C’mはキャパシタC1とC2との間の相互結合による容量を示している。送電用カップラ910及び受電用カップラ920とも、同軸ケーブルが直接接続されたときは、電極間の共振回路に加えて電極とGNDとの間の共振回路(例えば、送電用カップラ910側ではC1ac、C1bc、C1ag、C1bgを含む系)が追加されることになり、例えば送電側の等価回路は、図3(b)のように表わすことができる。
従来例の電界共鳴型カップラ900に同軸ケーブル91、92が直接接続されたときの伝送特性をシミュレーションした結果を図4に示す。シミュレーション条件として、同軸ケーブル91、92及びGNDの配置を図5のように想定し、それぞれのパラメータを以下のように設定するものとする。
・同軸ケーブル91、92
特性インピーダンスZ0=50Ω
ケーブル長:800mm
・グランド(GND)
2175mm×1512mmの導体板を想定
送受電カップラとの距離:500mm
図4(a)は周波数に対する伝送効率η21(=|S21|2)の変化を示し、図4(b)はスミスチャートを示している。なお、ここでは共振コイル113、114及び123、124のそれぞれのパラメータを以下のように設定している。
巻き数N1=13,高さH1=15.1mm、コイル径D1=21mm、
コイル間距離L=22.54mm、コイル1個当たりの抵抗R=0.5Ω
また、比較のために送受電用カップラ910、920に同軸ケーブルが接続されていないときの伝送特性を図6に示す。同軸ケーブルが接続されていないときは、図6に示すように、電極間の共振による共振点f0(=27.12[MHz])のみが現れ、伝送効率η21=95.7%となっている。
これに対し送受電用カップラ910、920に同軸ケーブルが接続され、さらに同軸ケーブルの外導体がGNDに接続された従来例の電界共鳴型カップラ900では、図4に示すように、電極間の共振点f0(=27.75[MHz])に加えて、電極とGNDとの間の共振によりさらに2つの共振点f0’(=25.48[MHz])とf0’’(=31.44[MHz])が生じている。また、共振点f0における伝送効率η21=95.2%となっている。このように、従来例ではGND及び外導体と電極との間に強い不要共振が形成されることになり、外導体に強いコモンモード電流が発生して不要放射波を発生させるといった問題が生じる。不要放射波が増大すると、ノイズ抑制の観点からも好ましくない。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電界共鳴型カップラを、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の電界共鳴型カップラ100の構成を示す斜視図である。同図(a)は、電界共鳴型カップラ100の全体斜視図を示し、同図(b)は電界共鳴型カップラ100の部分斜視図である。本実施形態の電界共鳴型カップラ100は、送電用カップラ110と受電用カップラ120を備えており、送電用カップラ110が電力ケーブル11で交流電源(図示せず)に接続され、受電用カップラ120が電力ケーブル21で負荷(図示せず)に接続されている。
送電用カップラ110は、2つの電極111、112と2つの共振コイル113、114を備えている。2つの電極111、112は、ここでは一例として矩形状の平板電極としているが、これに限定されるものではない。電極111の電極112に近接する側の長辺とこれに対向する電極112の長辺とを所定の間隔を設けて平行に配置することで、電極111、112はキャパシタを形成している。共振コイル113、114は、それぞれの一端が電極111、112の端部にそれぞれ接続されている。これにより、送電用カップラ110は共振回路を形成している。
同様に受電用カップラ120も、2つの電極121、122と2つの共振コイル123、124を備えており、電極121と電極122の対向する2つの長辺を所定の間隔を設けて平行に配置することで、電極121、122はキャパシタを形成している。そして、共振コイル123、124のそれぞれの一端が電極121、122の端部にそれぞれ接続されて共振回路を形成している。
電界共鳴型カップラ100は、送電用カップラ110の2つの電極111、112と、受電用カップラ120の2つの電極121、122とを略平行に対向配置することで、送電用カップラ110と受電用カップラ120との間で電界共鳴させることができる。すなわち、電極111と121及び電極112と122とをそれぞれ所定の間隔を設けて対向配置させ、送電側の共振コイル113、114に所定周波数の交流電力が供給されると、電極111、112と電極121、122との間で電界共鳴が行われて送電用カップラ110から受電用カップラ120に電力が供給される。
以下では、電界共鳴型カップラ100の共振周波数f0が、一例として27.12MHzに設定されているものとする。また、2つの電極111、112で形成される送電側のカップリング部、及び2つの電極121、122で形成される受電側のカップリング部の大きさを、それぞれ250mm×250mmとする。両カップリング部間の距離(カップラ間距離)を、ここでは一例として200mmとする。共振コイル113、114、123、124は、線径φ=1mmの線状導体(例えば銅)を巻回して形成され、コイル径、巻き数、及び高さはすべて同じであるとし、コイル径を21mm、巻き数を13、高さを15.1mmとする。さらに、共振コイル113と114との間、及び共振コイル123と124との間のコイル間距離が、それぞれ22.54mmに設定され、コイル1個当たりの抵抗Rが0.5Ωに設定されているものとする。
本実施形態の電界共鳴型カップラ100では、交流電源から送電用カップラ110に交流電力を供給するための電力ケーブル11、及び受電用カップラ120から負荷に電力を供給するための電力ケーブル21として、ともに平衡ケーブルを用いている(以下では、平衡ケーブル11及び平衡ケーブル21とする)。平衡ケーブル11、21として例えば平行2線ケーブルを用いることができる。平行2線ケーブルは、例えば線径1mmの線状導体(例えば銅)を2本平行に配列して形成される。平行2線の線間を例えば8.6mmとしたとき、平衡ケーブル11、21の特性インピーダンスZ0は約350Ωとなる。以下では、平衡ケーブル11、21の長さ、すなわち給電点から送電用カップラ110までの距離、及び受電用カップラ120から負荷までの距離、をそれぞれ800mmとする。
電力ケーブルに平衡ケーブル11、21を用いることで、電極111、112と平衡ケーブル11との間の容量結合、及び電極121、122と平衡ケーブル21との間の容量結合をともに無視できるレベルに落とすことが可能となり、平衡ケーブル11、21に流れるコモンモード電流を抑制することができる。これにより、不要放射を抑制することが可能となる。
しかしながら、平衡ケーブル11、21の特性インピーダンスは50Ωより極めて高く、例えば上記の平行2線ケーブルを用いたときの特性インピーダンスは約350Ωとなる。そのため、特性インピーダンスが50Ωの送電用カップラ110及び受電用カップラ120に平衡ケーブル11、21を接続すると、インピーダンス不整合のために電力の伝送効率が大幅に低下してしまう。平行2線ケーブルでは、線間を狭くするほど特性インピーダンスを低減させることができるが、50Ωまで小さくすることは極めて困難である。
なお、平衡ケーブル11と21、及び送電用カップラ110と受電用カップラ120は、それぞれ同様の構成を有していることから、以下では主として平衡ケーブル11及び送電用カップラ110について説明し、平衡ケーブル21及び受電用カップラ120については必要に応じて括弧内に対応する符号を記載することとする。
送電用カップラ110及び受電用カップラ120にそれぞれ平衡ケーブル11、21を接続したときの伝送特性を、シミュレーションにより求めた結果を図7に示す。図7(a)は周波数に対する伝送効率η21の変化を示し、図7(b)はスミスチャートを示している。図7では、共振点がf0(=25.19[MHz])のみにあり不要な共振が発生していないことが示されている。これから、平衡ケーブル11、21にはコモンモード電流がほとんど流れずほぼ平衡していることがわかる。共振点f0における伝送効率η21=95.6%となっている。しかしながら、図7(b)に示されるように、共振点f0(=25.19[MHz])における給電点から見た入力インピーダンスZin=43Ωとなっており、特性インピーダンスZ0(=50Ω)と整合していない。
送電用カップラ110及び受電用カップラ120にそれぞれ平衡ケーブル11、21を接続したときの等価回路を図8に示す。ここでは、平衡ケーブル11、21のそれぞれの平行2線は、いずれもGNDに接続されていないとしている。図8(a)は交流電源から負荷までを含む系全体の等価回路を示し、図8(b)は一例として送電側の等価回路を示している。送電用カップラ110及び受電用カップラ120は、それぞれ1つの共振回路となっており、共振点を1つ有するのみである。送電用カップラ110及び受電用カップラ120のそれぞれの電極と平衡ケーブルとの容量結合が小さく無視できる程度であることから、コモンモード電流が抑制されて不要共振が発生しない。従って、共振点は1つのみとなる。
本実施形態の電界共鳴型カップラ100では、送電用カップラ110及び受電用カップラ120と平衡ケーブル11、21とのインピーダンス整合を図るため、送電用カップラ110と平衡ケーブル11との接続部、及び受電用カップラ120と平衡ケーブル21との接続部、のそれぞれにインピーダンス整合用のキャパシタを介在させている。インピーダンス整合用のキャパシタの配置を、図1(b)に示す部分斜視図を用いて説明する。図1(b)は、一例として送電用カップラ110と平衡ケーブル11との接続部を拡大して示しているが、受電用カップラ120と平衡ケーブル21との接続部も同様の構造を有している。
図1(b)において、平衡ケーブル11(21)は、2本の伝送線11a、11b(21a、21b)からなる平行2線としている。本実施形態では、共振コイル113(123)と伝送線11a(21a)との間にキャパシタ115(125)を直列に接続し、共振コイル114(124)と伝送線11b(21b)との間にキャパシタ116(126)を直列に接続している。さらに、伝送線11a、11b(21a、21b)に並列にキャパシタ117(127)を接続している。キャパシタ115〜117(125〜127)には、いずれも可変キャパシタを用いることができる。なお、ここでは平衡ケーブル11(21)の平行2線の両方にキャパシタを直列接続する構成としているが、これに限定されず、平行2線の少なくともいずれか一方にインピーダンス整合用のキャパシタを直列接続すればよい。
キャパシタ115〜117(125〜127)の容量を適切に調整することにより、送電用カップラ110(受電用カップラ120)に接続された平衡ケーブル11(21)の入力インピーダンスZinを特性インピーダンスZ0(=50Ω)に整合させることが可能となる。キャパシタ115〜117(125〜127)の容量を適切に調整したときの本実施形態の電界共鳴型カップラ100の伝送特性を、シミュレーションにより求めた結果を図9に示す。ここでは、キャパシタ115、116(125、126)の容量を60pFとし、キャパシタ117(127)の容量を20pFとしている。
キャパシタ115〜117(125〜127)の容量を上記のように調整したとき、図9(a)に示すように、共振点は電極間の共振点f0(=27.55[MHz])のみに現れ、不要な共振点が発生していない。よって、キャパシタ115〜117(125〜127)を追加しても、共振コイル113、114(123,124)に流れる電流は平衡しており、コモンモード電流が増大することはないことがわかる。共振点f0における伝送効率η21=95.6%となっている。また、図9(b)に示すように、入力インピーダンスZinが50Ωとなって特性インピーダンスZ0と整合がとれていることがわかる。
本実施形態の電界共鳴型カップラ100に平衡ケーブル11、21が接続されたときの等価回路を図10に示す。ここで、平衡ケーブル11、21はいずれもGNDに接続されていないとする。図10(a)は交流電源から負荷までを含む系全体の等価回路を示し、図10(b)は一例として送電側の等価回路を示している。図10(b)では、平衡ケーブル11と送電用カップラ110との間の接合部がキャパシタ(C1sa、C1sb、C1pa)のみで構成されることが示されている。また、平衡ケーブル11の特性インピーダンスが50Ωより十分大きいにもかかわらず、キャパシタC1sa、C1sb、C1paを付加することで、給電点から見た入力インピーダンスZinが50Ωとなることが示されている。
送電用カップラ110及び受電用カップラ120は、それぞれ1つの共振回路となっており、共振点を1つ有するのみである。また、送電用カップラ110及び受電用カップラ120のそれぞれの電極と平衡ケーブルとの容量結合が小さく無視できる程度であることから、コモンモード電流が抑制されて不要共振が発生しない。従って、等価回路において共振点は1つだけとなる。上記のように、キャパシタ115〜117(125〜127)のみを付加してインピーダンス整合を図ることができ、キャパシタの付加により不要共振が発生してコモンモード電流が流れるといったおそれもない。すなわち、キャパシタ115〜117(125〜127)のみを追加しても、共振点f0が多少変動するのみで、電界共鳴型カップラ100の共振特性には大きな影響を与えないことがわかる。なお、共振点f0については電極寸法を調整することで所定の値に設定することが可能である。
本実施形態の電界共鳴型カップラ100では、電力ケーブルに平衡ケーブル11、21を用いることで、電極111、112、121、122との容量結合を低減させて不要共振の発生を抑制することができ、コモンモード電流を低減させることができる。これにより、不要放射を抑制することができる。また、キャパシタのみでインピーダンス整合を図ることができ、伝送効率を低下させることなく平衡ケーブル11、21を送電用カップラ110及び受電用カップラ120に接続することが可能となる。インピーダンス整合を図るためにインダクタを用いると、交流電流によるインダクタの抵抗量が増大して伝送効率が低下するおそれがあるが、本実施形態ではキャパシタのみでインピーダンス整合を図っていることから、伝送効率を低下させるおそれはない。
つぎに、電界共鳴型カップラ100に接続された平衡ケーブル11、21がケーブルシールドに収納されたとき、電界共鳴型カップラ100の共振特性にどのような影響を与えるかを以下に説明する。簡単のためキャパシタ115〜117(125〜127)を付加せずに、送電用カップラ110及び受電用カップラ120に平衡ケーブル11、21を接続したときの共振特性について説明する。
図11は、平衡ケーブル11及び21がそれぞれケーブルシールド11c、21cに収納された構成を示す斜視図である。平衡ケーブル11、21はそれぞれケーブルシールド11c、21cに収納されており、両者は電気的に導通されていないものとする。また、ケーブルシールド11c、21cはGNDにも接続されていないものとする。平衡ケーブル11、21をそれぞれケーブルシールド11c、21cに収納することにより、導体や人体等の弱導電性物質が平衡ケーブル11、21に近接しても、その影響を低減することができる。
ケーブルシールド11c、21cの断面を一辺が17.2mmの正方形としたとき、送電用カップラ110及び受電用カップラ120の伝送特性をシミュレーションにより求めた結果を図12に示す。図12(a)は周波数に対する伝送効率η21の変化を示し、図12(b)はスミスチャートを示している。図12(a)では、共振点がf0(=25.4[MHz])のみにあり不要な共振が発生していないことが示されている.これより、平衡ケーブル11、21がケーブルシールド11c、21cに収納されても不要共振は発生せず、共振コイル113、114(123、124)に流れる電流が平衡してコモンモード電流が抑制されることがわかる。共振点f0における伝送効率η21=92.4%となっている。
一方、図12(b)に示すスミスチャートでは、共振点f0における入力インピーダンスZin=41Ωとなり、特性インピーダンスZ0(=50Ω)と整合していない。しかしながら上記説明のように、整合用のキャパシタ115〜117(125〜127)を付加して好適に調整することで、電界共鳴型カップラ100の共振特性に大きな影響を与えずに入力インピーダンスZinを特性インピーダンスZ0に整合させることができる。
送電用カップラ110及び受電用カップラ120がそれぞれ、ケーブルシールド11cに収納された平衡ケーブル11及びケーブルシールド21cに収納された平衡ケーブル21を接続したときの等価回路を図13に示す。図13(a)は交流電源から負荷までを含む系全体の等価回路を示し、図13(b)は一例として送電側の等価回路を示している。送電用カップラ110とケーブルシールド11cとの間の容量結合C1ac、C1bc、及び受電用カップラ120とケーブルシールド21cとの間の容量結合C2ac、C2bcは、それぞれ十分小さく、これにより共振周波数f0がシフトする可能性はあるが、不要共振が発生することはない。よって、送電用カップラ110及び受電用カップラ120のそれぞれで1つの共振回路が形成されて共振点が1つ存在するだけとなる。
以上より、ケーブルシールド11cに収納された平衡ケーブル11及びケーブルシールド21cに収納された平衡ケーブル21を、それぞれ送電用カップラ110及び受電用カップラ120に接続しても、不要共振が発生することはなくコモンモード電流を十分に低減することができる。従って、本実施形態の電界共鳴型カップラ100にケーブルシールド11cに収納された平衡ケーブル11及びケーブルシールド21cに収納された平衡ケーブル21を接続し、インピーダンス整合用のキャパシタ115〜117及び125〜127を用いてインピーダンス整合を図っても、不要共振が発生することはなくコモンモード電流を十分に低減させることができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る電界共鳴型カップラを、図14を用いて説明する。図14は、本実施形態の電界共鳴型カップラ200の構成を示す斜視図である。本実施形態の電界共鳴型カップラ200は、送電用カップラ110及び受電用カップラ120が、それぞれカップラシールド231、232に収納されている。また、送電用カップラ110にはケーブルシールド11cに収納された平衡ケーブル11が接続され、受電用カップラ120にはシールド21cに収納された平衡ケーブル21が接続されている。
図14では、カップラシールド231(232)の寸法の一例として、電極111、112(121、122)と平行な底面の寸法を300mm×300mmとし、高さを100mmとしている。また、カップラシールド231、232の近接する底面間の距離を120mmとしている。カップラシールド231はケーブルシールド11cと電気的に導通させて一体化しており、カップラシールド232もケーブルシールド21cと電気的に導通させて一体化している。これにより、カップラ110、120及び平衡ケーブル11、21に対する周辺環境からの影響を低減させることができる。カップラシールド231を有する送電用カップラ110及びカップラシールド232を有する受電用カップラ120の伝送特性をシミュレーションにより求めた結果を図15に示す。図15(a)は周波数に対する伝送効率η21の変化を示しており、f0=23.28[MHz]で93%となっている。図15(b)はスミスチャートを示している。不要な共振が発生していないことがわかる。
カップラシールド231に収納された送電用カップラ110及びカップラシールド232に収納された受電用カップラ120にそれぞれ、ケーブルシールド11cに収納された平衡ケーブル11及びケーブルシールド21cに収納された平衡ケーブル21を接続したときの等価回路を図16に示す。図16(a)は交流電源から負荷までを含む系全体の等価回路を示し、図16(b)は一例として送電側の等価回路を示している。ここでも、説明簡単のためキャパシタ115〜117(125〜127)を省略している。
図16(a)に示すように、等価回路ではケーブルシールド11cとカップラシールド231及びケーブルシールド21cとカップラシールド232をそれぞれ一体化して表すことができ、ケーブルシールド11c、21cのみの図13に示した等価回路と比較してシールド部分が大きくなっただけの違いである。この場合でも、送電用カップラ110とケーブルシールド11c及びカップラシールド231との間の容量結合C1ac、C1bc、及び受電用カップラ120とケーブルシールド21c及びカップラシールド232との間の容量結合C2ac、C2bcはそれぞれ十分小さく、これにより共振周波数f0がシフトする可能性はあるが、不要共振が発生することはない。よって、送電用カップラ110及び受電用カップラ120のそれぞれで1つの共振回路が形成されて共振点が1つ存在するだけである。
以上より、ケーブルシールド11cに収納された平衡ケーブル11及びケーブルシールド21cに収納された平衡ケーブル21を、カップラシールド231に収納された送電用カップラ110及びカップラシールド232に収納された受電用カップラ120にそれぞれ接続しても、不要共振が発生することはなくコモンモード電流を十分に低減することができる。従って、ケーブルシールド11cに収納された平衡ケーブル11及びケーブルシールド21cに収納された平衡ケーブル21を本実施形態の電界共鳴型カップラ200に接続し、インピーダンス整合用のキャパシタ115〜117(125〜127)を用いてインピーダンス整合を図っても、不要共振が発生することはなくコモンモード電流を十分に低減させることができる。
つぎに、一体化されたケーブルシールド11cとカップラシールド231及びケーブルシールド21cとカップラシールド232が、それぞれGNDに接続されたとき、電界共鳴型カップラ200の共振特性にどのような影響を与えるかを以下に説明する。ケーブルシールド11c、21c及びカップラシールド231、232とGNDとの相対的な配置関係を、例えば図17のように想定する。ここでも、カップラシールド231、232の近接する底面間の距離を120mmとしている。また、ケーブルシールド11c、21cとGNDとの距離をそれぞれ500mmとする。カップラシールド231を有する送電用カップラ110及びカップラシールド232を有する受電用カップラ120の伝送特性をシミュレーションにより求めた結果を図18に示す。図18(a)は周波数に対する伝送効率η21の変化を示しており、f0=23.66[MHz]で91%となっている。図18(b)はスミスチャートを示している。双方より不要な共振が発生していないことがわかる。
ケーブルシールド11c、21c及びカップラシールド231、232がGNDに接続されたときの等価回路を図19に示す。図19(a)は交流電源から負荷までを含む系全体の等価回路を示し、図19(b)は一例として送電側の等価回路を示している。ここでも、説明簡単のためキャパシタ115〜117(125〜127)を省略している。
ケーブルシールド11c、21c及びカップラシールド231、232がGNDに接続されても平衡ケーブル11、21はGNDから浮いた状態にあるため、送電用カップラ110とケーブルシールド11c及びカップラシールド231との間の容量結合C1ac、C1bc、及び受電用カップラ120とケーブルシールド21c及びカップラシールド232との間の容量結合C2ac、C2bcはそれぞれ十分小さく、これにより共振周波数f0がシフトする可能性はあるが、不要共振が発生することはない。よって、送電用カップラ110及び受電用カップラ120のそれぞれで1つの共振回路が形成されて共振点が1つ存在するだけである。
以上より、ケーブルシールド11cに収納された平衡ケーブル11及びケーブルシールド21cに収納された平衡ケーブル21を本実施形態の電界共鳴型カップラ200に接続し、ケーブルシールド11cとカップラシールド231及びケーブルシールド21cとカップラシールド232をそれぞれ電気的に導通させてGNDに接続し、さらにインピーダンス整合用のキャパシタ115〜117(125〜127)を用いてインピーダンス整合を図っても、不要共振が発生することはなくコモンモード電流を十分に低減させることができる。
なお、ケーブルシールドもしくはカップラシールドを設置する効果としては、電極間に近接する部分が0電位となることが保障されるため、電極間の電気的な平衡度を保ち易くなり送受カップラ双方において反射特性、伝送特性が安定するといった点が上げられる。但しカップラシールドは電極に近づけすぎると送受カップラの結合係数が低下し、送電能力が低下するため電極とカップラシールドは一定の距離を保つ必要がある。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る電界共鳴型カップラを、図20を用いて説明する。図20は、本実施形態の電界共鳴型カップラ300の配置及び構成を示す斜視図である。同図(a)は、電界共鳴型カップラ300とGNDとの相対的な配置関係を示しており、同図(b)は電界共鳴型カップラ300の部分斜視図である。本実施形態の電界共鳴型カップラ300は、第1実施形態の電界共鳴型カップラ100と同様の構成を有しており、共振コイル113(123)と平衡ケーブル11(21)の伝送線11a(21a)との間にキャパシタ315(325)が直列に接続され、共振コイル114(124)と平衡ケーブル11(21)の伝送線11b(21b)との間にキャパシタ316(326)が直列に接続されている。さらに、伝送線11a、11b(21a、21b)に並列にキャパシタ317(327)が接続されている。
上記の第1及び第2実施形態では、平衡ケーブル11、21が有する各平行2線(伝送線11a、11b及び21a、21b)のいずれもがGNDに接続されていないとしていたが、本実施形態では平衡ケーブル11、21のそれぞれの平行2線のいずれか一方がGNDに接続されている。ここでは、一例として平衡ケーブル11の伝送線11bと平衡ケーブル21の伝送線21bがGNDに接続されているとする。また、平衡ケーブル11、21は、それぞれケーブルシールド11c、21cに収納されており、ケーブルシールド11c、21cもGNDに接続されている。本実施形態では、平衡ケーブル11、21のそれぞれの伝送線11b、21bがGNDに接続されているため、インピーダンス整合用キャパシタ315〜317(325〜327)の各容量が、第1実施形態のインピーダンス整合用キャパシタ115〜117(125〜127)の各容量と異なっている。
比較のため、平衡ケーブル11、21のそれぞれの平行2線の両方がGNDに接続されていないときの伝送特性をシミュレーションにより求めた結果を図21に示す。ここでは、ケーブルシールド11c、21cのみがGNDに接続されている。また、インピーダンス整合用のキャパシタ315〜317(325〜327)は接続されていない。図21(a)は周波数に対する伝送効率η21の変化を示し、図21(b)はスミスチャートを示している。
図21より、平衡ケーブル11、21のそれぞれの平行2線の両方がGNDに接続されていないときは、ケーブルシールド11c、21cをGNDに接続しても共振点はf0(約26MHz)のみとなり不要な共振が発生しないことがわかる。また、このときのケーブルシールド11c、21cの中央部電流密度は、図22に示すように、共振点26[MHz]において給電ポート電圧1Vの条件にて2〜3mA/m程度と十分に低いことがシミュレーションにより確認された。
つぎに、ケーブルシールド11c、21cがGNDに接続されるとともに、平衡ケーブル11、21のそれぞれの伝送線11b、21bがGNDに接続されたときの伝送特性をシミュレーションにより求めた結果を図23に示す。ここでも、インピーダンス整合用のキャパシタ315〜317(325〜327)が接続されていない。図23(a)は周波数に対する伝送効率η21の変化を示し、図23(b)はスミスチャートを示している。
図23に示すように、平衡ケーブル11、21のそれぞれの伝送線11b、21bがGNDに接続されると、共振点f0以外に不要な共振が発生しており、とくに共振点f0(約26MHz)の近傍に強い不要な共振点が発生している。このような不要共振によりコモンモード電流が流れることになる。ケーブルシールド11c、21cに流れる電流は、図24に示すように、中央部電流密度が共振点26.3[MHz]で130mA/m程度になり、高い電流がケーブルシールド11c、21cに流れることがシミュレーションにより確認された。
ケーブルシールド11c、21c及び平衡ケーブル11、21のそれぞれの伝送線11b、21bがGNDに接続されたときの等価回路を図25に示す。図25(a)は交流電源から負荷までを含む系全体の等価回路を示し、図25(b)は一例として送電側の等価回路を示している。送電用カップラ110及び受電用カップラ120には、それぞれ2つの共振回路が形成されており、これにより共振点を2つ持つことになる。また、送電側の電極111、112と受電側の電極121、122との間の電界共鳴により形成される相互キャパシタンスCm’は、各カップラで形成される2つの共振回路ごとに異なる値となる(結合係数が異なる)。本例では送受結合時に不要共振がスプリットする形で2つの共振点となり、都合3つの共振点が出現している。
図25(b)に示す2つの共振回路のうち、左側の閉回路は主にコモンモード電流による不要共振を発生させ、右側の閉回路は主に電界共鳴による送電に供される共振を発生させる。インピーダンス整合用のキャパシタ315〜317(325〜327)は図25におけるキャパシタ(C1sa、C1sb、C1pa)に相当する。キャパシタのうち、C1saは2つの共振回路に共有されるが、キャパシタC1sb及びC1paは、不要共振の共振周波数には大きくは影響せず、主に電界共鳴による送電に供される共振の周波数に影響する。そのため、キャパシタ(C1sa、C1sb、C1pa)を調整することにより、コモンモード電流による不要共振の周波数と、電界共鳴による送電に供される共振の周波数を分離することが可能となる。詳細に言えば、上記キャパシタにおいて、C1saがC1sb以上、可能であれば2倍以上にすることが望ましい。これは図25(b)に示されるように、電極とグランドとの容量に該当するC1bg,C1bcがC1sbにほぼ並列に入り、C1sbの等価的な容量が増加するので、それを補正することを意味する。C1sbを低下させた分C1saを増加させれば電界共鳴による送電に供される共振回路の共振周波数、インピーダンス整合の機能はほぼ保持される。かつC1saの値が増加することでコモンモード電流による不要共振の周波数は低下する。即ちコモンモード電流による不要共振の周波数のみをシフトさせることとなる。
上記のように、平衡ケーブル11、21のそれぞれの伝送線11b、21bがGNDに接続されると不要な共振が発生することから、本実施形態の電界共鳴型カップラ300では、インピーダンス調整用のキャパシタ315〜317及び325〜327の各容量を好適に調整することで、インピーダンス整合を図るとともに不要な共振の影響を低減させるようにしている。
一例として、共振コイル113(123)と平衡ケーブル11(21)の伝送線11a(21a)との間に接続されるキャパシタ315(325)の容量を75pFとし、共振コイル114(124)と平衡ケーブル11(21)のGNDに接続された伝送線11b(21b)との間に接続されるキャパシタ316(326)の容量を75pFとし、伝送線11a、11b(21a、21b)に並列に接続されるキャパシタ317(327)の容量を65pFとしたときの伝送特性をシミュレーションにより求めた結果を図26に示す。図26(a)は周波数に対する伝送効率η21の変化を示し、図26(b)はスミスチャートを示している。
キャパシタ315〜317(325〜327)による調整を行わない図23の伝送特性と比較して、図26では不要共振点(約27MHz)が共振点f0(約28.2MHz)から離れた周波数に移動していることがわかる。更に、コモンモード電流に起因するもうひとつの共振点が32MHz付近に出現している。ケーブルシールド11c、21cに流れる電流は、図27に示すように、中央部電流密度が共振点28.1[MHz]で70〜80mA/m程度になり、キャパシタ315〜317(325〜327)による調整を行わない場合に比べて大幅に低下している。
本実施形態の電界共鳴型カップラ300の別の一例として、共振コイル113(123)と平衡ケーブル11(21)の伝送線11a(21a)との間に接続されるキャパシタ315(325)の容量を115pFとし、共振コイル114(124)と平衡ケーブル11(21)のGNDに接続された伝送線11b(21b)との間に接続されるキャパシタ316(326)の容量を55pFとし、伝送線11a、11b(21a、21b)に並列に接続されるキャパシタ317(327)の容量を65pFとしたときの伝送特性をシミュレーションにより求めた結果を図28に示す。図28(a)は周波数に対する伝送効率η21の変化を示し、図28(b)はスミスチャートを示している。
キャパシタ315〜317(325〜327)による調整を行わない図23の伝送特性と比較して、図28では共振点f0(約28.2MHz)付近ではコモンモードに起因する共振が消失している。また前述の32MHz付近に出ていたもう一つのコモンモードに起因する共振点は、31.6MHz付近にシフトしている。ケーブルシールド11c、21cに流れる電流は、図29に示すように、中央部電流密度が共振点28.18[MHz]で60〜70mA/m程度になり、キャパシタ315〜317(325〜327)による調整を行わない場合に比べてさらに大幅に低下している。また、上記の一例の場合に比べて、共振点における中央部電流密度が15%程度低下している。
上記説明のように、本実施形態の電界共鳴型カップラ300によれば、平衡ケーブル11、21のそれぞれの平行2線のいずれか一方がGNDに接続されていても、インピーダンス調整用のキャパシタ315〜317及び325〜327の各容量を好適に調整することで、インピーダンス整合を図るとともに不要な共振点を共振点f0から離すことでその影響を低減することが可能となっている。上記説明より、グランドに電気的に接続されたケーブルシールドに更にカップラシールドを接続した場合でも、本実施例の結果より容量の調整により不要共振の影響を低減できることは言うまでもない。また、ケーブルシールドもしくはカップラシールド、あるいはその両方がグランドと電気的に接続されて無い場合も同様に容量の調整により不要共振の影響を低減できることは言うまでもない。
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る電界共鳴型カップラの一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における電界共鳴型カップラの細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。