JP6200402B2 - 超電導ケーブル線路、及び断熱管路 - Google Patents

超電導ケーブル線路、及び断熱管路 Download PDF

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Description

本発明は、超電導ケーブルが布設された超電導ケーブル線路、及びこの超電導ケーブル線路の構成部材に適した断熱管路に関する。特に、冷媒を冷却する冷凍機の負荷が小さい超電導ケーブル線路に関する。
超電導ケーブルは、既存の常電導ケーブル(例、OFケーブルやCVケーブル)と比較して、大容量の電力を低損失で送電できることから、省エネルギー技術として期待されている。最近では、超電導ケーブルを布設し、実際に送電を行う実証試験が進められている。
超電導ケーブルは、フォーマの外周に超電導線材を螺旋状に巻回して形成された超電導層(超電導導体層、超電導シールド層)を有するケーブルコアを断熱管内に収納し、この断熱管内に冷媒(例えば、液体窒素)を流通させることで、超電導層を冷却する構造が代表的である(特許文献1)。超電導シールド層が設けられていることで、この超電導シールド層には、超電導導体層に流れる電流と逆向きでほぼ同じ大きさの誘導電流が流れる。誘導電流から生じる磁場にて、超電導導体層から生じる磁場を打ち消し合うことで、磁場が外部に漏れる(漏れ磁場が生じる)ことを抑制している。断熱管は、一般的に、内管と外管とを有する二重構造管であり、内管と外管との間の空間が真空引きされ、この空間に真空断熱層が形成されている。
特開2006−59695号公報
超電導ケーブルを実用化する上で、すでに常電導ケーブルが布設されている既存の地中管路や洞道内に超電導ケーブルを増設することが検討されている。しかし、超電導ケーブルと常電導ケーブルとを近接配置した場合、超電導ケーブルは、常電導ケーブルからの磁場の影響を受ける虞がある。
また、常電導ケーブルの代替として超電導ケーブルを布設することが検討されている。このとき、超電導ケーブルのコスト削減のために、超電導シールド層を省くことが検討されている。しかし、超電導シールド層を備えない超電導ケーブルでは漏れ磁場が生じるため、複数の超電導ケーブルを近接配置するにあたり超電導シールド層を備えない超電導ケーブルが含まれると、他の超電導ケーブルがこの漏れ磁場の影響を受けることになる。
超電導ケーブルにおいて外部から磁場が印加されると、まず断熱管に磁場が印加される。断熱管は一般的に金属材料で構成されているため、断熱管に磁場が印加されると渦電流によってジュール熱が生じることによる渦電流損失が発生する虞がある。断熱管に渦電流損失が発生すると、断熱管の内部に充填される冷媒を冷却する冷凍機の負荷となる。そこで、外部からの磁場の影響を受けた場合にも、冷媒の冷凍機の負荷が小さい断熱管路、及び超電導ケーブル線路の開発が望まれる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、冷媒を冷却する冷凍機の負荷が小さい超電導ケーブル線路を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、冷媒を冷却する冷凍機の負荷が小さい断熱管路を提供することにある。
本発明の一態様に係る超電導ケーブル線路は、超電導ケーブルと、板状の磁気遮蔽部材とを備える。超電導ケーブルは、超電導導体層を有するケーブルコアと、前記ケーブルコアを収納すると共に冷媒が充填される内管及び前記内管の外側に配設される外管を有する断熱管とを備える。磁気遮蔽部材は、前記超電導ケーブルと、前記超電導ケーブルに対して磁場を印加する磁場発生ケーブルとの間に介在され、前記超電導ケーブルを前記磁場から遮蔽する。前記磁気遮蔽部材は、強磁性材料で構成される強磁性体層を有し、他の強磁性材料で構成される部材とは電磁気的に独立している。
本発明の一形態に係る断熱管路は、冷媒が充填される内管及び前記内管の外側に配設される外管を有する断熱管と、前記断熱管と、前記断熱管に対して磁場を印加する磁場発生ケーブルとの間に介在され、前記断熱管を前記磁場から遮蔽する板状の磁気遮蔽部材とを備える。前記磁気遮蔽部材は、強磁性材料で構成される強磁性体層を有し、他の強磁性材料で構成される部材とは電磁気的に独立している。
上記超電導ケーブル線路は、外部からの磁場の影響を受けた場合でも、冷媒を冷却する冷凍機の負荷が小さい。
また、上記断熱管路は、外部からの磁場の影響を受けた場合でも、冷媒を冷却する冷凍機の負荷が小さい。
実施形態1の超電導ケーブル線路の概略横断面図である。 実施形態2の超電導ケーブル線路の概略横断面図である。
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らは、超電導ケーブルにおいて外部からの磁場(以下、外部磁場と呼ぶことがある)の影響を受けた場合に断熱管に生じる渦電流損失を検討した。超電導ケーブルの断熱管は、液体窒素といった冷媒が充填されるため、一般的に、ステンレス鋼といった超電導ケーブルの運用温度に対する耐性に優れる材料から構成される。ステンレス鋼といった金属材料は、磁場が印加されると、渦電流によってジュール熱が生じることによる渦電流損失が発生する。そこで、超電導シールド層を備えない3本の単心型超電導ケーブルを近接配置した際に、各超電導ケーブルの断熱管に生じる渦電流損失をFEM(Finite Element Method)解析によって調べた。その結果、断熱管の内管及び外管ともに渦電流が流れて大きな渦電流損失が発生することがわかった。内管及び外管ともに渦電流損失が発生する理由は、以下のように考えられる。超電導ケーブルに外部磁場が印加されると、まず外管に印加され、この外管で渦電流損失が発生することである程度外部磁場は低減する。しかし、外管においてある程度の磁場は低減するものの、外管で低減できなかった外部磁場は外管を透過して内管に印加され、内管でも渦電流損失を生じる。外管は外部環境(常温部)側に露出しており、渦電流によるジュール熱は常温部側に放熱するため、冷媒を冷却する冷却機構(冷凍機)の負荷に及ぼす影響は小さい。一方、内管は冷媒と接触する(低温部)側に位置するため、渦電流によるジュール熱は冷媒側に放熱する。よって、内管に生じる渦電流損失が冷凍機の負荷に及ぼす影響は大きく、この冷凍機の負荷を低減するために内管に生じる渦電流損失を極力低減したい。この内管に生じる渦電流損失は、上記FEM解析の結果、5〜10W/m程度と無視できない程大きいことがわかった。そこで、超電導ケーブルにおいて外部磁場の影響を遮蔽することを検討し、本発明を完成するに至った。以下、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本発明の実施形態に係る超電導ケーブル線路は、超電導ケーブルと、板状の磁気遮蔽部材とを備える。超電導ケーブルは、超電導導体層を有するケーブルコアと、前記ケーブルコアを収納すると共に冷媒が充填される内管及び前記内管の外側に配設される外管を有する断熱管とを備える。磁気遮蔽部材は、前記超電導ケーブルと、前記超電導ケーブルに対して磁場を印加する磁場発生ケーブルとの間に介在され、前記超電導ケーブルを前記磁場から遮蔽する。前記磁気遮蔽部材は、強磁性材料で構成される強磁性体層を有し、他の強磁性材料で構成される部材とは電磁気的に独立している。
前記実施形態で規定する各要件の具体的意義は次の通りである。「超電導ケーブルに対して磁場を印加する磁場発生ケーブル」とは、超電導ケーブルに近接配置した常電導ケーブルや、超電導シールド層を備えない超電導ケーブルなどが挙げられる。超電導シールド層を備えない超電導ケーブルが複数ある場合、磁場発生ケーブルを兼ねた超電導ケーブルは、それぞれ相互に磁場の影響を及ぼし合うことになる。
「他の強磁性材料で構成される部材」とは、磁気遮蔽部材が複数ある場合の各磁気遮蔽部材同士や、磁気遮蔽部材以外で超電導ケーブル線路を構成する部材(例えば、洞道や、洞道内において各ケーブルを支持する支持台など)などが挙げられる。磁場発生ケーブルが複数ある場合、超電導ケーブルと各磁場発生ケーブルとの間にそれぞれ別体の磁気遮蔽部材が介在されることになる。
「電磁気的に独立」とは、複数の部材が導通路や磁路として分断されて連続していないことをいう。よって、複数の磁気遮蔽部材同士が、プラスチックなどの非磁性及び非導通性部材で機械的に連結されていても、各磁気遮蔽部材は「電磁気的に独立」していることになる。
上記構成によれば、超電導ケーブルと磁場発生ケーブルとの間に介在される磁気遮蔽部材によって、超電導ケーブルを磁場発生ケーブルが発生する磁場(外部磁場)から遮蔽することができる。磁気遮蔽部材が強磁性体層を有することで、磁気遮蔽部材に外部磁場が印加されると、外部磁場の磁束線を強磁性体層に沿わせることができ、強磁性体層で外部磁場の向きを変えることができるからである。超電導ケーブル(断熱管)に印加される外部磁場のうち主に垂直磁場が断熱管に渦電流損失を生じさせる主な原因であるため、この垂直磁場の向きを変えることで、渦電流損失を生じさせる外部磁場を低減できる。よって、超電導ケーブル(断熱管)において外部磁場による渦電流損失が発生することを抑制できる。断熱管のうち特に低温部側に位置する内管に生じる渦電流損失を低減できるため、冷凍機の負荷を低減できる。
磁気遮蔽部材は、他の強磁性材料で構成される部材(強磁性部材)とは電磁気的に独立していることで、磁気遮蔽部材において外部磁場による渦電流損失を低減できる。磁気遮蔽部材は、体積が大きいと渦電流損失も大きくなる。よって、磁気遮蔽部材は、超電導ケーブルを外部磁場から遮蔽できる大きさを有する必要はあるが、他の強磁性部材と独立していることで、不必要に大きくなることを抑制でき、渦電流損失を低減できる。また、磁気遮蔽部材が他の強磁性部材と独立していることで、渦電流パスを分断することができ、渦電流損失を低減できる。磁気遮蔽部材における渦電流損失を低減することで、その磁気遮蔽部材による遮蔽効果を向上でき、断熱管における渦電流損失も低減できる。
(2)上記の超電導ケーブル線路の一例として、前記磁場発生ケーブルを兼ねた三つの前記超電導ケーブルが、三角形状に配設される形態が挙げられる。このとき、前記磁気遮蔽部材が、三つの前記超電導ケーブル間にそれぞれ配設されている。
超電導ケーブル線路として、超電導シールド層を備えない三つの超電導ケーブルが三角形状に配設されることがある。このとき、各超電導ケーブルは磁場発生ケーブルでもあるため、各超電導ケーブルはそれぞれ相互に磁場の影響を及ぼし合う。磁気遮蔽部材が、各超電導ケーブル間にそれぞれ配設されていることで、各超電導ケーブル(断熱管)において渦電流損失を生じさせる外部磁場をそれぞれに低減できる。各磁気遮蔽部材は電磁気的に独立しているため、各磁気遮蔽部材において外部磁場による渦電流損失を低減できる。
(3)上記の超電導ケーブル線路の一例として、前記強磁性体層は、飽和磁束密度が1T以上である形態が挙げられる。
上記構成によれば、強磁性体層で外部磁場(垂直磁場)の向きを変える効果が大きくなるため、強磁性体層の厚さを薄くすることができる。よって、強磁性体層の体積を小さくできることで、磁気遮蔽部材における渦電流損失をさらに低減し易い。
(4)上記の超電導ケーブル線路の一例として、前記強磁性体層は、導電率が5MS/m以下である形態が挙げられる。
上記構成によれば、強磁性体層に流れる渦電流をより低減できるため、磁気遮蔽部材における渦電流損失をさらに低減し易い。
(5)上記の超電導ケーブル線路の一例として、前記磁気遮蔽部材は、厚さが2mm以上10mm以下である形態が挙げられる。
上記構成によれば、磁気遮蔽部材における渦電流損失をより低減し、断熱管における渦電流損失を低減し易い。磁気遮蔽部材の厚さが2mm以上であることで、超電導ケーブル(断熱管)に印加される外部磁場を十分に遮蔽でき、断熱管における渦電流損失を低減し易い。一方、磁気遮蔽部材の厚さが厚くなると、磁気遮蔽部材の体積が大きくなるため、磁気遮蔽部材における渦電流損失が大きくなり易い。よって、磁気遮蔽部材の厚さが10mm以下であることで、磁気遮蔽部材の体積を小さくでき、磁気遮蔽部材における渦電流損失を低減できる。磁気遮蔽部材における渦電流損失を低減することで、その磁気遮蔽部材による遮蔽効果を向上でき、断熱管における渦電流損失も低減し易い。
(6)上記の超電導ケーブル線路の一例として、前記磁気遮蔽部材は、絶縁材を介して複数の前記強磁性体層が積層された積層体である形態が挙げられる。
上記構成によれば、磁気遮蔽部材の厚さを一定としたとき、単層の強磁性体層で磁気遮蔽部材を構成する場合に比較して、強磁性体層の厚さを薄くできるため、磁気遮蔽部材における渦電流損失をさらに低減し易い。各強磁性体層間には絶縁材が介在されているため、各強磁性体層のそれぞれに独立して渦電流が流れることになるが、各強磁性体層の厚さを薄くすることで、各強磁性体層における渦電流損失を低減できるからである。各強磁性体層の渦電流損失を低減することで、磁気遮蔽部材における渦電流損失(各強磁性体層の渦電流損失の合計)を低減することができる。
(7)上記(6)の超電導ケーブル線路の一例として、前記強磁性体層は、厚さが0.5mm以下である形態が挙げられる。
磁気遮蔽部材が上記積層体である場合、各強磁性体層の厚さが0.5mm以下であることで、磁気遮蔽部材における渦電流損失をさらに低減し易い。
(8)上記の超電導ケーブル線路の一例として、前記強磁性体層は、電磁鋼板である形態が挙げられる。
各強磁性体層が電磁鋼板であることで、1T以上の飽和磁束密度を確保しつつ導電率を低減できるため、磁気遮蔽部材における渦電流損失をさらに低減でき、超電導ケーブルの断熱管における渦電流損失をさらに低減できる。
(9)本発明の実施形態に係る断熱管路は、冷媒が充填される内管及び前記内管の外側に配設される外管を有する断熱管と、前記断熱管と、前記断熱管に対して磁場を印加する磁場発生ケーブルとの間に介在され、前記断熱管を前記磁場から遮蔽する板状の磁気遮蔽部材とを備える。前記磁気遮蔽部材は、強磁性材料で構成される強磁性体層を有し、他の強磁性材料で構成される部材とは電磁気的に独立している。
上記構成によれば、冷媒が充填された断熱管を磁場発生ケーブルが発生する磁場(外部磁場)から遮蔽することができ、断熱管において外部磁場による渦電流損失が発生することを抑制できる。よって、断熱管、特に低温部側に位置する内管に生じる渦電流損失を低減できるため、冷凍機の負荷を低減できる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の詳細を、以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。図中の同一符号は、同一名称物を示す。
<実施形態1>
〔超電導ケーブル線路〕
実施形態1の超電導ケーブル線路100は、図1に示すように、三本の超電導ケーブル1a,1b,1cを三角形状に近接配置(例えば、各超電導ケーブルの中心間距離が100mm以上500mm以下程度)して、一つの洞道4内に布設されている。本実施形態1の超電導ケーブル線路100の主たる特徴とするところは、各超電導ケーブル1a,1b,1cは超電導シールド層を備えておらず、各超電導ケーブル1a,1b,1cをそれぞれ外部の磁場(以下、外部磁場と呼ぶことがある)から遮蔽する磁気遮蔽部材3A,3B,3Cを備えることにある。以下、各構成について詳しく説明する。なお、説明の便宜上、洞道4に対する超電導ケーブル1a,1b,1cの大きさを大きくしている。
(超電導ケーブル)
超電導ケーブル1a,1b,1cは、それぞれ一つのケーブルコア10が断熱管20に収納された単心のケーブル構造である。ケーブルコア10は、中心から順にフォーマ11、超電導導体層12、電気絶縁層13、常電導接地層14、保護層15を備え、超電導シールド層を備えない。これら各構成部材には、公知の構成・材料を用いることができる。
フォーマ11は、超電導導体層の支持、ケーブルの抗張力材、その他、短絡や地絡などの事故時における事故電流を分流する通電路などに利用される。通電路にも利用する場合、フォーマ11は、銅やアルミニウムなどの常電導材料からなる中実体や中空体(管体)が好適に利用できる。中実体は、例えば、エナメルなどの絶縁被覆を備える銅線を複数本撚り合わせた撚り線材が挙げられる。フォーマ11の外周にクラフト紙やPPLP(住友電気工業株式会社の登録商標)といった絶縁性テープなどを巻回してクッション層(図示せず)を設けることができる。
超電導導体層12は、酸化物超電導導体を備えるテープ状線材、例えばBi2223系超電導テープ線(Ag−Mnシース線)を単層又は多層に螺旋状に巻回した構成が挙げられる。その他、RE123系薄膜線材(RE:希土類元素、例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)も超電導導体層12に利用できる。一つの超電導導体層12を多層構造とする場合、各超電導線材の層間にクラフト紙などの絶縁紙を巻回した層間絶縁層を形成することができる。
電気絶縁層13は、クラフト紙などの絶縁紙テープや、クラフト紙とプラスチックとを複合した半合成絶縁テープ、例えばPPLPといったテープ状の絶縁性材料を巻回した構成が挙げられる。
常電導接地層14は、従来のOFケーブルやCVケーブルと同様に絶縁層の外側に設けられて、接地電位を形成する層であり、銅といった常電導材料からなる金属テープを巻回した構成が挙げられる。これにより、電気絶縁層13内の電界分布の均一化が図れ、安定した絶縁性能が得られるが、これは既存ケーブルも同じである。常電導接地層14は、接地線(図示せず)を介して接地されている。常電導接地層14は、例えば一点接地することで、超電導導体層12からの磁場に対する誘導電流が流れないようにすることができる。
保護層15は、ケーブルコア10の最外周に配置され、その内側に配置された部材の機械的保護、常電導接地層14と断熱管20との間の電気的絶縁の確保を主な目的として設けられる。保護層15は、クラフト紙などの絶縁紙テープや、クラフト紙とプラスチックとを複合した半合成絶縁紙、例えばPPLPをテープ状にして巻回した構成が挙げられる。
断熱管20は、ステンレス鋼製の内管21と外管22とを有する二重構造のコルゲート管であり、内管21と外管22との間が真空引きされ、この空間に真空断熱層が形成されている。真空断熱層には、断熱性を高めるためにスーパーインシュレーション(商品名)などの断熱材(図示せず)を配置してもよい。内管21内(ケーブルコア10と内管21との間の空間)には冷媒Cが流通される。断熱管20はコルゲート管で構成する他、直管で構成してもよい。外管22の外周には、ポリ塩化ビニルなどの樹脂からなる防食層23を備える。
各超電導ケーブル1a,1b,1cは、超電導シールド層を備えないため、超電導導体層12に流れる電流によって各超電導ケーブル1a,1b,1cの外側に磁場(外部磁場)が発生する。つまり、各超電導ケーブル1a,1b,1cは磁場発生ケーブルとなる。そうすると、超電導ケーブル1aは、超電導ケーブル1bから発生する外部磁場、及び超電導ケーブル1cから発生する外部磁場の影響を受けることになる。同様に、超電導ケーブル1bは、超電導ケーブル1cから発生する外部磁場、及び超電導ケーブル1aから発生する外部磁場の影響を受け、超電導ケーブル1cは、超電導ケーブル1aから発生する外部磁場、及び超電導ケーブル1bから発生する外部磁場の影響を受ける。そこで、各超電導ケーブル1a,1b,1c間にそれぞれ磁気遮蔽部材3A,3B,3Cを配設することで、各超電導ケーブル1a,1b,1cのそれぞれが受ける外部磁場の影響を抑制できる。
(磁気遮蔽部材)
磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、強磁性材料で構成される強磁性体層31を有する板状体である。ここで言う「強磁性材料」とは、比透磁率が500以上である材料のことである。比透磁率は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは5000以上であることが挙げられる。このような比透磁率を満たす材料としては、例えば鉄や鉄合金などを挙げることが挙げる。
磁気遮蔽部材3A,3B,3Cが強磁性体層31を有することで、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cに外部磁場が印加されると、外部磁場の磁束線を強磁性体層31に沿わせることができ、強磁性体層31で外部磁場の向きを変えることができる。超電導ケーブル1a,1b,1cに印加される外部磁場のうち主に垂直磁場が各断熱管20に渦電流損失を生じさせる主な原因であるため、この垂直磁場の向きを変えることで、渦電流損失を生じさせる外部磁場を低減(遮蔽)できる。
磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、図1に示すように、各超電導ケーブル1a,1b,1c間にそれぞれ配設されている。具体的には、磁気遮蔽部材3Aは、超電導ケーブル1a,1b間に配設され、超電導ケーブル1aから発生する外部磁場、及び超電導ケーブル1bから発生する外部磁場を遮蔽する。磁気遮蔽部材3Bは、超電導ケーブル1b,1c間に配設され、超電導ケーブル1bから発生する外部磁場、及び超電導ケーブル1cから発生する外部磁場を遮蔽する。磁気遮蔽部材3Cは、超電導ケーブル1c,1a間に配設され、超電導ケーブル1cから発生する外部磁場、及び超電導ケーブル1aから発生する外部磁場を遮蔽する。ここでは、三本の超電導ケーブル1a,1b,1cが三角形状に配設されているため、超電導ケーブル線路100を横断面で見たとき(図1を参照)、板状の三つの磁気遮蔽部材3A,3B,3Cが、それぞれ三本の超電導ケーブル1a,1b,1cで形作られる三角形の中心方向に伸びるように配設されている。ただし、三つの磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、それぞれ電磁気的に接続されずに独立している。三つの磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、全て同じ形状及び材質である。
磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、各超電導ケーブル1a,1b,1cをそれぞれ外部磁場から遮蔽できる箇所に配設される。ここでは、超電導ケーブル線路100を横断面で見たとき(図1を参照)、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、隣り合う超電導ケーブル(ケーブルコア)の各中心を結ぶ線分の中央で、この線分の直交方向に伸びるように配設されている。磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、隣り合う超電導ケーブル同士が対向する側にのみ配設されている。つまり、各超電導ケーブル1a,1b,1cの周方向に伸びるようには配設されていない。磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、体積が大きくなると磁気遮蔽部材3A,3B,3Cで発生する渦電流損失が大きくなる傾向にある。そのため、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、隣り合う超電導ケーブルにおいて相互に外部磁場を遮蔽できる程度の大きさであり、不必要に大きくないことが好ましい。
磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、超電導ケーブル1a,1b,1cの長手方向に分断して配設されている(図示せず)。そうすることで、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cの長手方向に沿った渦電流パスを分断することができるため、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cにおける渦電流損失を低減できる。磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、渦電流損失を発生させるジュール熱によって昇温することで保温材となり易いが、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cが長手方向に分断されていることで、保温効果も低減される。
磁気遮蔽部材3A,3B,3Cの形状は、外部磁場のうち垂直磁場が印加される箇所に配設できる形状であればよく、断面矩形状(図1を参照)や、断面円弧状などが挙げられる。
各磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、各端部を絶縁性材料で構成される部材(絶縁部材)によって機械的に接続してもよい。そうすることで、各磁気遮蔽部材3A,3B,3Cを一体物として取り扱い易く、所定位置に配設し易い。
強磁性体層31は、飽和磁束密度が1T以上であることが挙げられる。飽和磁束密度が1T以上であることで、強磁性体層31で外部磁場(垂直磁場)の向きを変える効果が大きくなるため、強磁性体層31の厚さを薄くすることができる。飽和磁束密度は、さらに1.5T以上、1.6T以上、特に1.9T以上が好ましい。強磁性体層31の厚さを薄くすることで、強磁性体層31の体積を小さくできるため、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cにおける渦電流損失をさらに低減し易い。
強磁性体層31は、導電率が12MS/m(メガジーメンス毎メートル)以下であることが挙げられる。導電率が12MS/m以下であることで、強磁性体層31に流れる渦電流を低減し易くなるため、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cにおける渦電流損失をさらに低減し易い。導電率は、さらに8MS/m以下、5MS/m以下、特に2MS/m以下が好ましい。
磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、厚さが2mm以上10mm以下であることが挙げられる。磁気遮蔽部材3A,3B,3Cの厚さが上記範囲であることで、断熱管20における渦電流損失を低減して、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cにおける渦電流損失を低減し易い。磁気遮蔽部材3A,3B,3Cの厚さは、さらに3mm以上8mm以下、特に5mm程度が好ましい。
磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、絶縁材を介して複数の強磁性体層が積層された積層体であることが挙げられる。このとき、各強磁性体層は、厚さが2.5mm以下であることが好ましい。各強磁性体層の厚さが薄いほど、各強磁性体層における渦電流損失を低減し易く、ひいては磁気遮蔽部材における渦電流損失を低減し易い。磁気遮蔽部材3A,3B,3Cが積層体である場合、各強磁性体層の厚さは、さらに2mm以下、1mm以下、特に0.5mm以下、0.3mm以下が好ましい。
各強磁性体層は電磁鋼板であることが挙げられる。電磁鋼板は、高純度の鉄に珪素などの添加元素を含有し、高度の冶金的処理を施すことによって、交流磁場下で発生する鉄損を低減した材料である。珪素などの添加元素の含有量が多いほど導電率を低減でき、磁気遮蔽部材における渦電流損失をより低減でき、断熱管における渦電流損失をより低減できる。さらに、各強磁性体層を厚さが0.5mm以下の電磁鋼板とすることで、磁気遮蔽部材における渦電流損失、及び断熱管における渦電流損失をより低減できる。
(その他の構成:冷媒管)
この超電導ケーブル線路においては、超電導ケーブル1a,1b,1cと接続され冷媒の循環経路を構成する冷媒管(図示せず)を備えることが挙げられる。この冷媒管は、冷媒が充填される内管及び内管の外側に配設される外管を有する断熱管であり、上述した断熱管20と同様の構成のものを利用できる。そして、冷媒管とこの冷媒管に対して磁場を印加する磁場発生ケーブル(例えば、上記超電導ケーブル1a,1b,1c)との間に介在され、冷媒管を外部磁場から遮蔽する磁気遮蔽部材を備える。磁気遮蔽部材は、上述した磁気遮蔽部材3A,3B,3Cと同様の構成を有する。冷媒管は、一端が冷却システムに接続され、他端側が終端接続部に接続され、終端接続部で超電導ケーブル1a,1b,1cの断熱管20と繋がっている。冷却システムの冷凍機で冷却された冷媒は、超電導ケーブル1a,1b,1cの断熱管20に送られ、断熱管20内を流通した後、終端接続部に接続された冷媒管を通って冷却システムに戻される。つまり、超電導ケーブル1a,1b,1cの各断熱管20が冷媒の往路となり、冷媒管が冷媒の復路となる。この冷媒管(断熱管)と磁場発生ケーブルとの間に磁気遮蔽部材を配設することで、冷媒管に印加する外部磁場を低減でき、冷媒管内の冷媒を冷却する冷凍機の負荷を低減できる。
〔超電導ケーブルの布設方法〕
超電導ケーブル1a,1b,1cの布設は、超電導ケーブル1a,1b,1c及び磁気遮蔽部材3A,3B,3Cを準備⇒超電導ケーブル1a,1b,1cを洞道内に布設⇒超電導ケーブル1a,1b,1c間に磁気遮蔽部材3A,3B,3Cを配設、によって行うことができる。超電導ケーブル1a,1b,1cは、工場で製造し、ドラムに巻き取ったものを準備する。磁気遮蔽部材3A,3B,3Cは、超電導ケーブル1a,1b,1cとは独立して準備する。超電導ケーブル1a,1b,1cを洞道内に布設する際、超電導ケーブル1a,1b,1cは、その長手方向に間隔をあけて固定部材などで固定する。固定部材は、例えば、各超電導ケーブル1a,1b,1cの外周部分に嵌る三つの把持部を有し、各把持部に各超電導ケーブル1a,1b,1cを嵌めることで各超電導ケーブル1a,1b,1cの相互の位置関係を固定できる。磁気遮蔽部材の配設は、例えば、上記固定部材に取り付けることで行える。このとき、各磁気遮蔽部材と固定部材とは、絶縁部材で機械的に接続する。一般に洞道内には磁気遮蔽部材を超電導ケーブルに取り付けるための作業空間があるため、磁気遮蔽部材を超電導ケーブルの布設後に容易に配設できる。
超電導ケーブル線路100として、超電導シールド層を備えない三つの超電導ケーブル1a,1b,1cが三角形状に配設された場合、各超電導ケーブル1a,1b,1cはそれぞれ相互に磁場の影響を及ぼし合う。各超電導ケーブル1a,1b,1c間に、磁気遮蔽部材3A,3B,3Cがそれぞれ配設されていることで、各超電導ケーブル1a,1b,1cの断熱管20において渦電流損失を生じさせる外部磁場(垂直磁場)をそれぞれに低減できる。よって、各超電導ケーブル1a,1b,1cの断熱管20において外部磁場による渦電流損失が発生することを抑制できる。断熱管20のうち特に低温部側に位置する内管21に生じる渦電流損失を低減できるため、冷凍機の負荷を低減できる。
<実施形態2>
実施形態2では、図2に示すように、超電導シールド層を備えない六本の超電導ケーブル1a〜1fが直線状に近接配置されており、磁気遮蔽部材3D〜3Hが各超電導ケーブル1a〜1f間にそれぞれ配設されている超電導ケーブル線路200を説明する。実施形態2では、各超電導ケーブル1a〜1f及び各磁気遮蔽部材3D〜3Hの配置形態が異なるだけであり、他の構成は実施形態1と同様である。以下の説明では、相違点を中心に行う。
超電導ケーブル1a,1b,1cが同じ支持台41に直線状に載置されており、超電導ケーブル1d,1e,1fが同じ支持台41に直線状に載置されている。各磁気遮蔽部材3D〜3Hは、それぞれ隣り合う超電導ケーブル1a−1b,1b−1c,1c−1d,1d−1e,1e−1f間に介在されている。各磁気遮蔽部材3D〜3Hは、各支持台41とは電磁気的に接続されておらず、絶縁部材(図示せず)で機械的に接続されている。各磁気遮蔽部材3D〜3Hと各支持台41とがそれぞれ電磁気的に接続されずに独立していることで、支持台41が強磁性材料や導電性材料で構成されていたとしても、各磁気遮蔽部材3D〜3Hにおける渦電流損失が増大することを抑制できる。
超電導ケーブル線路200として、超電導シールド層を備えない複数の超電導ケーブル1a〜1fが直線状に配設された場合であっても、各超電導ケーブル1a〜1f間にそれぞれ磁気遮蔽部材3D〜3Hが配設されていることで、各超電導ケーブル1a〜1fの断熱管20において渦電流損失を生じさせる外部磁場(垂直磁場)をそれぞれに低減できる。よって、各超電導ケーブル1a〜1fの断熱管20において外部磁場による渦電流損失が発生することを抑制できる。断熱管20のうち特に低温部側に位置する内管21に生じる渦電流損失を低減できるため、冷凍機の負荷を低減できる。
<実施形態3>
実施形態1,2では、断熱管の内部にケーブルコアが収納された複数の超電導ケーブル間の相互に及ぼし合う磁場を遮蔽する形態を説明した。実施形態3では、断熱管の内部にケーブルコアを収納しない形態を説明する。例えば、実施形態1で説明した冷媒管のように、断熱管の内部に極低温の冷媒が充填された場合、断熱管に外部磁場が印加されると、断熱管では渦電流損失が発生し、冷媒を冷却する冷凍機の負荷となる。そこで、断熱管とこの断熱管に磁場を印加する磁場発生ケーブルとの間に、断熱管を外部磁場から遮蔽する磁気遮蔽部材を備えることで、渦電流損失を低減でき、冷凍機の負荷を低減できる。この磁気遮蔽部材の構成は、実施形態1における磁気遮蔽部材と同様である。
<試験例>
・試験例1
超電導シールド層を備えないケーブルコアが断熱管内に収納された超電導ケーブルを三相正三角形配置し、各超電導ケーブル間に板状の磁気遮蔽部材を配設した場合に、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失をFEM解析によって調べた。断熱管は、内管の導電率が2.02MS/m、外管の導電率が1.45MS/mである。各相の中心間距離は350mmである。各相の超電導導体層に12kArmsの導体電流を流した。
・・試験例1−1
試験例1−1は、各磁気遮蔽部材が、それぞれに電磁気的に接続されずに独立した独立部材である(図1を参照)。各磁気遮蔽部材は、一端部が三相中心から25mm離れて配設されている。各磁気遮蔽部材は、厚さ10mmの単層の強磁性体層で形成されている。強磁性体層は、純鉄で構成されている。純鉄の導電率は10.44MS/mである。
・・試験例1−2
試験例1−2は、各磁気遮蔽部材が、それぞれに電磁気的に接続されずに独立した独立部材である(試験例1−1と同様)。各磁気遮蔽部材は、厚さ10mmの単層の導電体層で形成されている。導電体層は、アルミニウムで構成されている。アルミニウムの導電率は34.45MS/mである。
・・試験例1−3
試験例1−3は、各磁気遮蔽部材が、それぞれに電磁気的に接続された一体部材である。各磁気遮蔽部材は、それぞれの一端部が三相中心部で電磁気的に接続して形成されている。各磁気遮蔽部材は、試験例1−1と同様の強磁性体層で形成されている。
・・試験例1−4
試験例1−4は、各磁気遮蔽部材が、それぞれに電磁気的に接続された一体部材である(試験例1−3と同様)。各磁気遮蔽部材は、試験例1−2と同様の導電体層で形成されている。
・・試験例1−5
試験例1−5は、磁気遮蔽部材自体が配設されていない。
試験例1−1〜1−5において、断熱管(内管及び外管)に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失を表1に示す。試験例1−1では、磁気遮蔽部材が配設されていない試験例1−5に比較して、内管及び外管ともに損失が半減した。特に、内管の損失を3W/m以下にまで低減できた。試験例1−2では、試験例5に比較して、内管及び外管ともに損失は低減されたが、内管の損失は4W/m以上であり、その低減率は20%程度であった。つまり、試験例1−2では、磁気遮蔽部材による遮蔽効果はそれほど高くないことがわかった。磁気遮蔽部材を強磁性体層で形成した場合、磁気遮蔽部材に外部磁場(垂直磁場)が印加されると、その外部磁場の向きが変わり、断熱管に印加される磁場が低減される。一方、磁気遮蔽部材を導電体層で形成した場合、磁気遮蔽部材に外部磁場が印加されても、その外部磁場の向きは変わらず、外部磁場は磁気遮蔽部材を透過して断熱管に印加されることになるため、外部磁場の遮蔽効果は低くなると考えられる。試験例1−3では、試験例5に比較して、内管及び外管ともに損失は低減されたが、内管の損失は3W/m超であった。また、試験例1−4では、試験例5に比較して、内管及び外管ともに損失は低減されたが、内管の損失は3W/m超であった。つまり、各磁気遮蔽部材が電磁気的に連結している試験例1−3及び1−4では、磁気遮蔽部材による遮蔽効果はそれほど高くないことがわかった。各磁気遮蔽部材が連結している場合、連結していない場合に比較して、各磁気遮蔽部材に生じる渦電流損失が大きくなるため、磁気遮蔽部材による遮蔽効果が低くなったと考えられる。
Figure 0006200402
・試験例2
試験例2では、上記試験例1−1について、磁気遮蔽部材の厚さをパラメータとして、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失をFEM解析によって調べた(試験例2−1〜2−7、試験例2−7は上記試験例1−1と同じ)。磁気遮蔽部材は、単層の強磁性体層で形成されている。各試験例について、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失を表2に示す。
Figure 0006200402
磁気遮蔽部材の厚さが2mm以上であることで、内管の損失を3W/m以下にまで低減できることがわかった。特に、磁気遮蔽部材の厚さが5mmであることで、内管の損失を2W/mにまで低減できた。また、磁気遮蔽部材の厚さが厚くなるにつれて、磁気遮蔽部材の損失は大きくなることがわかった。これは、磁気遮蔽部材の厚さが厚くなると体積が大きくなるため、磁気遮蔽部材に生じる渦電流損失が大きくなったためと考えられる。磁気遮蔽部材の渦電流損失が大きくなると、磁気遮蔽部材による遮蔽効果が低くなるため、試験例2−7では、試験例2−6に比較して、内管の損失が大きくなったと考えられる。
・試験例3
試験例3では、上記試験例1−1について、厚さ10mmの磁気遮蔽部材を複数の強磁性体層が積層された積層体とし、各強磁性体層の厚さをパラメータとして、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失をFEM解析によって調べた(試験例3−1〜3−6、試験例3−1は上記試験例1−1と同じ)。各強磁性体層間には絶縁材を介しているが、試験例3では、絶縁材の厚さは考慮していない。各試験例について、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失を表3に示す。
Figure 0006200402
磁気遮蔽部材が、絶縁材を介して複数の強磁性体層が積層された積層体であることで、断熱管の損失及び磁気遮蔽部材の損失ともに低減できることがわかった。磁気遮蔽部材が、厚さ5.0mm以下の強磁性体層が積層された積層体であると、内管の損失を2W/m以下にまで低減できた。各強磁性体層の厚さが1.25mm以下と薄くなると、内管の損失を1.5W/mにまで低減できた。また、各強磁性体層の厚さが薄いほど、磁気遮蔽部材の損失を低減できることがわかった。各強磁性体層の厚さが2.5mm以下であると、磁気遮蔽部材の損失を600W/m以下にまで低減できた。さらに、各強磁性体層の厚さが0.5mm以下であると、磁気遮蔽部材の損失を150W/m以下にまで低減できた。特に、各強磁性体層の厚さが0.25mm以下であると、磁気遮蔽部材の損失を100W/m以下にまで低減できた。これは、各磁気遮蔽部材の厚さが薄くなると体積が小さくなるため、磁気遮蔽部材における渦電流損失が小さくなったためと考えられる。そして、磁気遮蔽部材の渦電流損失が小さくなったことで、磁気遮蔽部材による遮蔽効果が向上し、内管の損失を1.5W/mにまで低減できたと考えられる。
・試験例4
試験例4では、厚さ5mmの磁気遮蔽部材を複数の強磁性体層が積層された積層体とし、各強磁性体層の厚さをパラメータとして、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失をFEM解析によって調べた(試験例4−1〜4−5)。磁気遮蔽部材の厚さ以外の条件は、上記試験例3と同様である。強磁性体層間には絶縁材を介しているが、試験例4では、絶縁材の厚さは考慮していない。各試験例について、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失を表4に示す。
Figure 0006200402
試験例3と同様に、磁気遮蔽部材が、絶縁材を介して複数の強磁性体層が積層された積層体であることで、断熱管の損失及び磁気遮蔽部材の損失ともに低減できることがわかった。つまり、内管の損失及び磁気遮蔽部材の損失ともに低減するためには、薄い強磁性体層を、絶縁材を介して積層することが効果的であることがわかった。
・試験例5
試験例5では、厚さ10mmの磁気遮蔽部材を複数の強磁性体層が積層された積層体とし、各強磁性体層を表5に示す条件(種類(結晶軸の配向性が方向性か無方向性か)、厚さ、導電率、飽和磁束密度)の積層鋼板として、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失をFEM解析によって調べた(試験例5−1〜5−10)。超電導ケーブル及び磁気遮蔽部材の配置形態や通電条件などは、上記試験例1−1と同様である。各試験例について、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失を表5に併せて示す。
Figure 0006200402
磁気遮蔽部材が、絶縁材を介して複数の電磁鋼板が積層された積層体であることで、内管の損失を1.5W/m以下にまで低減でき、かつ磁気遮蔽部材の損失を100W/m以下、特に50W/m以下にまで低減できることがわかった。試験例5では、電磁鋼板の配向性について、方向性と無方向性の違いは見られなかった。各電磁鋼板の厚さについて、厚さが薄くなると、磁気遮蔽部材の損失が低減される傾向にあることがわかった。特に、電磁鋼板の厚さが0.23mmまで薄くなると、磁気遮蔽部材の損失を20W/m以下にまで低減できた。各電磁鋼板の導電率について、導電率が小さくなると、磁気遮蔽部材の損失が低減される傾向にあることがわかった。特に、電磁鋼板の導電率が3MS/m以下まで小さくなると、磁気遮蔽部材の損失を50W/m以下にまで低減できた。
・試験例6
試験例6では、厚さ5mmの磁気遮蔽部材を複数の強磁性体層が積層された積層体とし、各強磁性体層を試験例5と同様の条件の積層鋼板として、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失をFEM解析によって調べた(試験例6−1〜6−10)。磁気遮蔽部材の厚さ以外の条件は、上記試験例5と同様である。各試験例について、断熱管に生じる損失及び磁気遮蔽部材に生じる損失を表6に併せて示す。
Figure 0006200402
試験例5と同様に、磁気遮蔽部材が、絶縁材を介して複数の電磁鋼板が積層された積層体であることで、断熱管の損失を1.6W/m以下にまで低減でき、かつ磁気遮蔽部材の損失を100W/m以下、特に50W/m以下にまで低減できることがわかった。つまり、内管の損失及び磁気遮蔽部材の損失ともに低減するためには、電磁鋼板を、絶縁材を介して積層することが効果的であることがわかった。
以上説明した本発明の実施形態に関連して、更に以下の付記を開示する
[付記]
(付記1)
超電導導体層を有するケーブルコアと、前記ケーブルコアを収納すると共に冷媒が充填される内管及び前記内管の外側に配設される外管を有する断熱管とを備える超電導ケーブルと、前記超電導ケーブルが内部に収納される布設路と、前記外管の外方に、前記超電導ケーブルを外部の磁場から遮蔽する磁気遮蔽部材とを備え、前記磁気遮蔽部材は、良導電性材料で構成される導電体層を有する超電導ケーブル線路。
付記1の超電導ケーブル線路によれば、外管の外方に導電体層を有する磁気遮蔽部材を備えることで、導電体層で外部磁場による渦電流損失を発生させることができ、超電導ケーブルに印加する外部磁場を低減できる。よって、超電導ケーブルの構成部材(断熱管)において磁場による渦電流損失が発生することを抑制できる。断熱管のうち特に低温部側に位置する内管に生じる渦電流損失を低減できるため、冷凍機の負荷を抑制できる。ここで言う「良導電性材料」とは、導電率が15MS/m以上である材料のことである。導電率は、さらに好ましくは30MS/m以上であることが挙げられる。このような導電率を満たす材料としては、例えばアルミニウムや銅、またはそのいずれかをベースとする合金などを挙げることができる。
(付記2)
さらに、前記磁気遮蔽部材は、強磁性材料で構成される強磁性体層を有する付記1に記載の超電導ケーブル線路。
付記2の超電導ケーブル線路によれば、磁気遮蔽部材が強磁性体層を備えることで、外部磁場の磁束線を強磁性体層に沿わせることができ、強磁性体層で外部磁場の向きを変えることができる。超電導ケーブル(断熱管)に印加される外部磁場のうち垂直磁場が断熱管に渦電流損失を発生させる主な原因であるため、この垂直磁場の向きを変えることで、渦電流損失を生じさせる外部磁場を低減できる。導電体層で渦電流損失による磁場の低減を行い、さらに強磁性体層で外部磁場の向きを変えることによる磁場の低減を行うことで、超電導ケーブルに印加される外部磁場をより効果的に低減できる。
(付記3)
前記強磁性体層は、前記超電導ケーブル側に配設され、前記導電体層は前記強磁性体層の直上に配設されている付記2に記載の超電導ケーブル線路。
付記3の超電導ケーブル線路によれば、まず導電体層で渦電流損失を発生させてある程度外部磁場を低減し、低減できなかった外部磁場を強磁性体層で向きを変えることができ、超電導ケーブルに印加される外部磁場をより効果的に低減できる。また、磁気遮蔽部材を超電導ケーブル(断熱管)に近接して配設する場合、導電体層を強磁性体層よりも超電導ケーブルの外方側に配設することで、導電体層で生じるジュール熱を常温部側に放熱し易い。
(付記4)
前記磁気遮蔽部材は、前記超電導ケーブルの周方向又は長さ方向の少なくとも一方向の一部に配設されている付記1〜付記3のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
渦電流損失を発生させる導電体層はジュール熱によって昇温されるため、磁気遮蔽部材が超電導ケーブルの全周及び全長に亘って配設されていると、磁気遮蔽部材が保温材となり易い。そこで、磁気遮蔽部材が超電導ケーブルの周方向又は長さ方向の少なくとも一方向において途切れていることで、保温効果が低減される(放熱性に優れる)。上述したように、超電導ケーブル(断熱管)に印加される外部磁場のうち垂直磁場が断熱管に渦電流損失を発生させる主な原因であるため、磁気遮蔽部材は少なくとも垂直磁場が印加される箇所に配設されていれば、超電導ケーブルに印加される外部磁場を低減できる。また、磁気遮蔽部材の使用量を低減でき、低コスト化が図れる。
(付記5)
前記磁気遮蔽部材は、前記外管に固定されている付記1〜付記4のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
付記5の超電導ケーブル線路によれば、磁気遮蔽部材が外管に固定されていることで、超電導ケーブルごとに取り扱うことができ、布設などの作業性に優れる。
(付記6)
前記布設路内には、前記超電導ケーブルを含む複数のケーブルが布設されており、前記磁気遮蔽部材は、前記超電導ケーブルと他のケーブルとの間に配設されている付記1〜付記4のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
付記6の超電導ケーブル線路によれば、磁気遮蔽部材が超電導ケーブルと他のケーブルとの間に配設されていることで、例えば他のケーブルにおいても外部磁場を遮蔽する場合、複数のケーブルで磁気遮蔽部材を共用するため、布設路内において磁気遮蔽部材の点数を低減できる。また、磁気遮蔽部材の使用量を低減でき、低コスト化が図れる。
(付記7)
前記磁気遮蔽部材は、前記導電体層が前記外管の外周上に良導電性材料で構成されるテープ材を巻回して形成されている付記1〜付記4のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
付記7の超電導ケーブル線路によれば、磁気遮蔽部材がテープ材を巻回して形成されていることで、超電導ケーブルごとに取り扱うことができ、布設時の作業性に優れる。
(付記8)
前記導電体層は、幅が広いテープ線材を線材間にギャップ材を設けて巻回して形成された幅広層と、前記幅広層より幅が狭い複数のテープ線材を線材間にギャップ材を設けて巻回して形成された幅狭層と、前記幅広層と前記幅狭層との間に配設される層間絶縁層とを備え、前記幅狭層は、前記超電導ケーブル側に配設される付記7に記載の超電導ケーブル線路。
付記8の超電導ケーブル線路によれば、幅広層で優先的に外部磁場による渦電流損失を発生させることができ、超電導ケーブルに印加する外部磁場を低減できる。そして、幅狭層で優先的に超電導導体層からの誘導を受けることで誘導電流を流すことができ、誘導電流から生じる磁場で超電導導体層から生じる磁場をある程度打ち消して超電導ケーブル自体の漏れ磁場を低減できる。よって、超電導シールド層を備えない超電導ケーブルとする場合、外部磁場を遮蔽するとともに、他のケーブルに対しても磁場を遮蔽することができる。
(付記9)
前記布設路と並列して、前記超電導ケーブルとは別のケーブルが布設された他布設路を備え、前記磁気遮蔽部材は、前記布設路と前記他布設路との間に配設されている付記1〜付記8のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
付記9の超電導ケーブル線路によれば、布設路と他布設路との間に磁気遮蔽部材が配設されるため、他布設路に布設されたケーブルからの外部磁場が、超電導ケーブルに印加されることを抑制できる。
(付記10)
前記超電導ケーブルは、超電導シールド層を有する付記1〜付記9のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
付記10の超電導ケーブル線路によれば、超電導シールド層には超電導導体層に流れる電流と逆向きでほぼ同じ大きさの誘導電流が流れるため、誘導電流から生じる磁場にて、超電導導体層から生じる磁場を打ち消し合うことで、漏れ磁場を低減できる。よって、磁気遮蔽部材によって外部磁場を遮蔽するとともに、超電導シールド層で他のケーブルに対しても磁場を遮蔽することができる。
(付記11)
冷媒が充填される内管及び前記内管の外側に配設される外管を有する断熱管と、前記断熱管が内部に収納される布設路と、前記外管の外方に、前記断熱管を外部の磁場から遮蔽する磁気遮蔽部材とを備え、前記磁気遮蔽部材は、良導電性材料で構成される導電体層を有する断熱管路。
付記11の断熱管路によれば、冷媒が充填された断熱管に外部磁場が印加されても、導電体層で外部磁場による渦電流損失を発生させることができ、断熱管に印加する外部磁場を低減できる。よって、断熱管、特に低温部側に位置する内管に生じる渦電流損失を低減できるため、冷凍機の負荷を低減できる。
本発明の超電導ケーブル線路は、超電導ケーブルにおいて外部からの磁場が印加される可能性のある送電線路に好適に利用することができる。また、本発明の断熱管路は、極低温の冷媒を充填する断熱管において外部からの磁場が印加される可能性のある断熱管路に好適に利用することができる。
100,200 超電導ケーブル線路
1a,1b,1c,1d,1e,1f 超電導ケーブル
10 ケーブルコア
11 フォーマ 12 超電導導体層 13 電気絶縁層
14 常電導接地層 15 保護層
20 断熱管 21 内管 22 外管 23 防食層
C 冷媒
3A〜3C,3D〜3H 磁気遮蔽部材 31 強磁性体層
4 洞道 41 支持台

Claims (9)

  1. 超電導導体層を有するケーブルコアと、前記ケーブルコアを収納すると共に冷媒が充填される内管及び前記内管の外側に配設される外管を有する断熱管とを備える超電導ケーブルと、
    前記超電導ケーブルと、前記超電導ケーブルに対して磁場を印加する磁場発生ケーブルとの間に介在され、前記超電導ケーブルを前記磁場から遮蔽する板状の磁気遮蔽部材とを備え、
    前記磁気遮蔽部材は、強磁性材料で構成される強磁性体層を有し、他の強磁性材料で構成される部材とは電磁気的に独立している超電導ケーブル線路。
  2. 前記磁場発生ケーブルを兼ねた三つの前記超電導ケーブルが、三角形状に配設され、
    前記磁気遮蔽部材が、三つの前記超電導ケーブル間にそれぞれ配設されている請求項1に記載の超電導ケーブル線路。
  3. 前記強磁性体層は、飽和磁束密度が1T以上である請求項1または請求項2に記載の超電導ケーブル線路。
  4. 前記強磁性体層は、導電率が5MS/m以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
  5. 前記磁気遮蔽部材は、厚さが2mm以上10mm以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
  6. 前記磁気遮蔽部材は、絶縁材を介して複数の前記強磁性体層が積層された積層体である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
  7. 前記強磁性体層は、厚さが0.5mm以下である請求項6に記載の超電導ケーブル線路。
  8. 前記強磁性体層は、電磁鋼板である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の超電導ケーブル線路。
  9. 冷媒が充填される内管及び前記内管の外側に配設される外管を有する断熱管と、
    前記断熱管と、前記断熱管に対して磁場を印加する磁場発生ケーブルとの間に介在され、前記断熱管を前記磁場から遮蔽する板状の磁気遮蔽部材とを備え、
    前記磁気遮蔽部材は、強磁性材料で構成される強磁性体層を有し、他の強磁性材料で構成される部材とは電磁気的に独立している断熱管路。
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