〔実施の形態〕
以下、本発明の実施形態に係る金属空気二次電池について図面を参照し説明すれば以下の通りである。
本発明の金属空気二次電池は、電池セルと電極切替装置からなる。
図1に、実施形態の電極切替装置1の基本構成を示す。電極切替装置1は、少なくとも制御部10と切替部20で構成される。
切替部20は、外部負荷の正極21・負極22及び外部電源の正極23・負極24と、空気極101・燃料極102(特許文献1の金属電極に相当する)・補助極110(同補助電極に相当する)と配線を通じて電気的に接続されており、制御部10のコントロールにより外部負荷・外部電源の各電極と電池セルの各電極との接続切替を行う機能を有する。
制御部10は、人間の手による手動切替え操作と、自動判定切替えのいずれか、或いは双方の機能を有する。制御部10は、手動による操作、或いは自動判定により、少なくとも下記3つのモードを切替えコントロールする。3つのモードとは、二次電池の充電モード、二次電池の放電モード、燃料電池の発電モードであり、以下に説明する。
最初に、二次電池の充電モードの制御を、図2に基づき説明する。
制御部10が、二次電池の充電モードと判断した場合、切替部20に対し、補助極110と正極23とを接続し、燃料極102を負極24とを接続する制御を行うと共に、外部電源からの電圧の印加の制御を行う。これにより、金属空気電池内部で電気分解が発生し、燃料極102に亜鉛が析出する形で充電可能となる。
これにより、例えば、制御部10が、安価である夜間電力の時間帯になった際に、負荷の状態を確認した上で、切替部20を制御し自動的に充電状態とすることが可能である。
次に、二次電池の放電モードの制御を、図3に基づき説明する。
制御部10が、二次電池の放電モードと判断した場合、切替部20に対し、空気極101と正極21とを接続し、燃料極102を負極22とを接続する制御を行うことで、外部負荷への接続の制御を行う。これにより、空気極(+)燃料極(−)の電池として電力供給可能となる。
次に、燃料電池の発電モードの制御を、図4に基づき説明する。燃料電池の発電モードとは、これまで説明してきた二次電池動作において、予め溜めていた電力を使いきってしまった際に、本来の燃料極102の代わりに、第3の電極である補助極110で燃料供給を受け発電を行うものである。
制御部10が、燃料電池の発電モードと判断した場合、切替部20に対し、空気極101と正極21とを接続し、補助極110を負極22とを接続する制御を行うことで、外部負荷への接続の制御を行う。これにより、空気極(+)補助極(−)の電池として電力供給可能となる。
例えば、二次電池の放電モードから、燃料電池の発電モードへと切り替わる際には、二次電池の放電モードの状態である外部負荷正極21と空気極101、外部負荷負極22と燃料極102の接続から、燃料電池の発電モードの状態である外部負荷正極21と空気極101、外部負荷負極22と補助極110へと切替る。
以上に電極切替装置1の電極切替の概要について説明した。引き続き金属空気二次電池のもう一方の構成要素である電池セルの概要について説明する。
図5に、本発明の電池セル50の概要を示す。電池セル50は電解質103中に浸漬されて配されている空気極101、燃料極102、補助極110の3つの電極で構成される3極方式の金属空気二次電池セルである。なお、電池セル50は本発明の概要説明のために各電極の位置関係と充放電・発電の反応の代表例を示すものであって、各電極は実施例に応じて一部異なる。各電極の詳細については以降の各実施例において具体的に詳しく説明する。
補助極110は、二次電池用の充電用電極の機能と、燃料極の物質を完全または一定量使用した後、充分な電力を得られなくなった際に、燃料を供給可能な機能を兼ね備えており、空気極と燃料極の間に配置されている。
図17に示した特許文献1に記載の従来例では、金属電極912(本願では燃料極)が補助電極915(同補助極)と空気極911の間に位置している点が異なる。この図17の配置の場合、二次電池の放電時は、空気極911と金属電極912により放電を行うが、その際、金属電極912の空気極911に面した面912aが、補助電極915に面した面912bより高活性となり、912a面がより燃料を消費しやすい傾向となる。一方、二次電池の充電時には、補助電極915と金属電極912により充電を行うが、912b面が912a面より高活性となり、912b面がより燃料を析出しやすい傾向となる。よって、総合的に、燃料は、912a面が減りやすく、912b面が増えやすいという環境を形成し、制御が困難になり、サイクル寿命を短くしてしまうという課題があった。
これに対し、本発明の電池セル50は、図5に示すように、空気極101と燃料極102の間の102a面及び102b面それぞれに対して補助極110を配置する。これにより、二次電池の放電時には、空気極101と燃料極102の間での放電を補助極110が阻害することなく行い、充電時には、補助極110と燃料極102で阻害要因がなく充電を行うことができる。よって、102a面及び102b面双方で均等な反応となり制御しやすくなり、サイクル寿命を長くすることが可能となる。
なお、図5では、燃料極102の両面側に補助極110、空気極101を設ける場合を示したが、102a面または102b面のどちらか片側に補助極110、空気極101を設ける構成であってもよい。つまり、燃料極102、補助極110、空気極101の順に位置すればよい。この場合であっても、充電時に燃料極102の亜鉛が析出する面と、放電時に燃料極の亜鉛の溶解する面とが同じ面になるので、同一面で反応をするため高い発電効率で発電することができる。図5で示したように燃料極102の両面側に補助極110、空気極101を設けることにより、燃料極102の表面積をより利用することができ、利用効率が向上する。
また、緊急時の発電において、燃料極102に燃料が一部残っていても、発電反応が起こる空気極101と補助極110の間ではないため、影響を最小限にした状態で発電ができる。
以上のように、本発明を構成する金属空気二次電池セルとして、電池セル50を例に空気極101、燃料極102、補助極110の位置関係と、充電・放電・発電の各モードと各電極の反応の概要について説明してきた。本発明の金属空気二次電池は、上述した電池セル50とそれを有効に機能・動作させる電極切替装置1からなる。以下に示す各実施例にて電池セルの具体例を挙げてその詳細を説明する。
実施例1の各電極について図面を用いて詳細に説明する。
図6に、実施例1の金属空気二次電池を構成する電池セル51を示す。電池セル51は電解質103中に浸漬されて配されている空気極101、燃料極102、補助極114の3つの電極で構成される3極方式の金属空気二次電池セルである。本発明の概要説明のために用いた図5の電池セル50に対して、実施例1の電池セル51は補助極114を構成する材質に亜鉛を用いる点が異なる。その他の点は電池セル50と共通である。
燃料極102は、例えば2mm厚のステンレスや銅、鉄、ニッケル、アルミニウムからなる板を用いることができる。また、表面に燃料金属である亜鉛を有することで放電用の燃料極として使用できる。また、予めメッキなどにより表面に亜鉛が付与されていてもよいし、充電によって表面に燃料である亜鉛が析出していてもよい。
3極式金属空気二次電池の補助極として、一般的には非酸化性の多孔質金属材料などが用いられる。例えばニッケル製の多孔質体や、ニッケル/ニッケル合金/SUS板を用いることもできる。本実施例1の補助極114は、上記のような補助極の構成に加えて、その材質中や表面に、発電のための燃料金属である亜鉛が含まれる。
空気極101は、例えば基材として多孔質の炭素材料が使用され、反応をより活性化させるための触媒や電解質の漏れを防ぐためのフッ素系撥水材がその表面にコーティングされている。そして、片面が空気に、他面が電解質103に接するように設けられる。
電解質103には、水酸化カリウム水溶液等を用いることができる。
図6は燃料極102を使用する前の状態を示し、補助極114を構成する材質に亜鉛を用いている。図6の電池セル51の燃料極102の亜鉛を完全または一定量使用した後に燃料電池動作させる際の電池セルについて図7を用いて説明する。図7には、燃料極102の全部の燃料を消費した後の状態の燃料極102’を含む電池セル52を示す。この時、補助極114の材質に予め含まれる亜鉛を燃料として利用し、補助極114と空気極101を用いて発電することができる。なお、図7の燃料極102’は、燃料極102の全部の燃料を消費した場合を示したが、燃料の全部ではなく一定量使用した場合も同様に補助極114を用いて発電することができる。
すなわち、実施例1の電池セル51は、日常的には二次電池として利用でき、燃料極102の物質を完全または一定量使用した後、充分な電力を得られなくなった際には、電極切替装置1により、空気極(+)と補助極(−)の構成に切り替えて、補助極114の材質に含まれる亜鉛を燃料として、発電が可能である。
以上のような制御を制御部10が切替部20に対して行うことにより、空気極101、燃料極102、補助極114の3つの電極で構成される3極方式の金属空気二次電池セル51において、日常的に二次電池として使用でき、燃料極102の物質を使用した後、充分な電力を得られなくなった際にも、補助極114の材質に含まれる亜鉛を燃料として利用し継続的に発電する燃料電池として使用することができる。
なお、本実施例1では、燃料金属として亜鉛を使用した例を示したが、本発明の技術思想は金属空気二次電池に適用されるものであり、金属空気二次電池に利用できる金属であればいずれの材料も使用でき、特定の材料に限定されるものではない。このことは、以降のいずれの実施例においても同様である。
次に、本発明の実施例2について、図面を参照し説明すれば以下の通りである。
図8に、実施例2の金属空気二次電池を構成する電池セル53を示す。電池セル53は電解質103中に浸漬されて配されている空気極101、燃料極102、充電用補助極111の3つの電極で構成される3極方式の金属空気二次電池セルであって、充電用補助極111を着脱可能な構造であり、実施例1とは補助極114の代わりに、充電用補助極111が着脱可能な構造である点が異なる。加えて充電用補助極111を構成する材質に予め亜鉛が含まれる必要は必ずしもない。具体的には、充電用補助極111は着脱可能であり充電用電極として使用可能であり、必要に応じて材質に亜鉛を含む補助極に交換することができる。その他の点は実施例1の電池セル51と共通である。
平常時の二次電池動作においては、図8に示すように、充電用補助極111に充電効率の高いニッケル/ニッケル合金/SUS板などを使用する。燃料極102の亜鉛を完全または一定量使用した後に燃料電池動作させる際の電池セルについて図9を用いて説明する。図9には、燃料極102の全部の燃料を消費した後の状態の燃料極102’を含む電池セル54を示す。この時、充電用補助極111のニッケル/ニッケル合金/SUS板を取り外し、図9に示すように、亜鉛板もしくは亜鉛メッキされた金属板からなる発電用補助極112に差替えて使用し、発電用補助極112と空気極101を用いて発電することができる。なお、図9の燃料極102’は、燃料極102の全部の燃料を消費した場合を示したが、燃料の全部ではなく一定量使用した場合も同様に発電用補助極112と空気極101を用いて発電することができる。
すなわち、電池セル53は、電極切替装置1により、日常的には二次電池として利用でき、燃料極102の物質を完全または一定量使用した後、充分な電力を得られなくなった際には、充電用補助極111を発電用補助極112に交換することで、空気極(+)と補助極(−)の構成で、発電することが可能である。
なお、実施例2では、充電用補助極111と発電用補助極112が着脱可能な構成であるので、二次電池としての充電・放電使用時には、充電用補助極111が亜鉛を含まない構成、かつ、充電専用の補助極とすることができる。これにより、二次電池の充電・放電時に下記の効果が得られる。
充電時においては、充電用補助極111については充電専用(発電時には使用しない)であるため、充電に最適な材料や形態・構造を選択することができ、高効率で充電することが可能となる。例えば充電時には亜鉛は燃料極102にて析出するため、充電用補助極111には亜鉛は含まれない方が望ましい。
放電時においては、充電用補助極111に亜鉛が含まれていないため、燃料極102と空気極101間に充電用補助極111が位置する場合にも、燃料極102と空気極101間の放電の阻害要因とならず、高効率で放電することが可能となる。
また、燃料電池としての発電使用時には、発電用補助極112が亜鉛を含む発電専用の補助極とすることができる。これにより、発電に最適な材料や形態・構造を選択することができ、高効率で発電することが可能となる。
つまり、二次電池使用、燃料電池使用の各局面において、それぞれに最適な補助極を交換して使用することで、各電池使用を高効率化できる。
次に、本発明の実施例3について、図面を参照し説明すれば以下の通りである。
図10に、実施例3の金属空気二次電池を構成する電池セル55を示す。電池セル55は電解質103中に浸漬されて配されている空気極101、燃料極102、補助極113の3つの電極で構成される3極方式の金属空気二次電池セルであって、燃料の受け口または支持体などの保持構造を持つ補助極113を含み、実施例1とは補助極114の代わりに、補助極113が燃料の受け口または支持体などの保持構造を持つ点が異なる。加えて補助極113を構成する材質に予め亜鉛が含まれる必要は必ずしもない。その他の点は実施例2の電池セル53と共通である。
平常時の二次電池動作においては、図10のように、充電効率の高いニッケル/ニッケル合金/SUSなどの材質からなり、且つ二次電池の放電モード時のイオン伝導に影響の小さいメッシュ/多孔状板等の形状を持ち、更に亜鉛燃料の受け口または支持体などの保持構造を有する補助極113を使用する。燃料極102の亜鉛を完全または一定量使用した後に燃料電池動作させる際の電池セルについて図11をもとに説明する。図11には、燃料極102の全部の燃料を消費した後の状態の燃料極102’を含む電池セル56を示す。この時、補助極113を取り外すこと無く、図11に示すように、亜鉛燃料120を補助極113に投入することで亜鉛材料120と一体となった補助極113と空気極101を用いて発電することができる。なお、図11の燃料極102’は、燃料極102の全部の燃料を消費した場合を示したが、燃料の全部ではなく一定量使用した場合も同様に補助極113を用いて発電することができる。ここでは、亜鉛燃料120として板状のものを用いたが、実際には板状に限定されるものではなく、ペレット状、ペースト状などであってもよい。
すなわち、電池セル55は、電極切替装置1により、日常的には二次電池として利用でき、燃料極102の物質を完全または一定量使用した後、充分な電力を得られなくなった際には、亜鉛燃料120を補助極113に投入することで、空気極(+)と補助極(−)の構成で、発電が可能である。
なお、実施例1から実施例3にてこれまで説明してきた電池セル50、電池セル51から電池セル56の電極の位置関係、すなわち、燃料極102、補助極、空気極101の順に配置した電池セルの場合、燃料電池の発電モードにおいて、燃料を交換、投入もしくは予め含めておく電極が補助極であることが望ましい。なぜなら、補助極と空気極101の間には他の電極がないため、発電時において補助極と空気極101との間で発電反応を行う方が、阻害要因がなく発電効率が高くなるからである。
次に、本発明の実施例4について、図面を参照し説明すれば以下の通りである。
図12に、実施例4の金属空気二次電池を構成する補助極115〜119を示す。
実施例6は補助極の形状がメッシュ状、多孔状、ハニカム状、ワイヤー状、細板状である金属空気二次電池セルであり、実施例1とは、補助極が板状ではなく、電解液103の連絡形状を有する点が異なる。加えて補助極を構成する材質に予め亜鉛が含まれる必要は必ずしもない。その他の点は実施例1と共通である。
図5で示した構成では一様な板状としていた補助極110の形状を、具体的には、図12のようなメッシュ状115、多孔状116、ハニカム状117、ワイヤー状118、細板状119など電解液の連絡性が良い状態となる形状とする。これにより、空気極101と燃料極102の間に、形状が板状である補助極110を配置する場合に比べて、補助極が電解液の連絡性をよくすることができるので、空気極101と燃料極102で起こるべき二次電池の放電モードの反応を阻害することがなく、二次電池としての放電効率の低下を抑制することが可能となる。
図に示した各形状はあくまで一例であるので、これらの角度を変えた斜格子としたり、孔の形状を三角形や五角形などにしたりしてもよい。
次に、本発明の実施例5について、図面を参照し説明すれば以下の通りである。
図13に、実施例5の金属空気二次電池を構成する電池セル57を示す。電池セル57は、電解質103中に浸漬されて配されている空気極101、燃料極122、補助極110の3つの電極で構成される3極方式の金属空気二次電池セルであって、燃料極122を着脱可能な構造であり、実施例1とは、燃料極122が着脱可能な構造である点と、発電時の電極切替が放電時と共通である点が異なる。具体的には、燃料極122は着脱可能であり充放電用電極として使用可能であり、必要に応じて材質に亜鉛を含む燃料極に交換することができる。加えて補助極110を構成する材質に予め亜鉛が含まれる必要は必ずしもない。その他の点は実施例1の電池セル51と共通である。
平常時の二次電池動作においては、図5に示した構成や実施例1と同様に燃料極122と補助極110を用いて充放電を行う。燃料極122の亜鉛を完全または一定量使用した後の状態が図13に示す電池セル57である。燃料極122は着脱可能なので、使用した燃料極122を取り外すことができる。なお、図13の燃料極122は、燃料極の全部の燃料を消費した場合を示したが、燃料の全部ではなく一定量使用した場合も同様に燃料極122を交換することができる。
次に燃料電池動作させる際の電池セルについて図14を用いて説明する。図14には、燃料電池動作のために、燃料極122を燃料極123に交換した電池セル58を示す。図14に示すように、電池セル57の燃料極122を、亜鉛板もしくは亜鉛メッキされた燃料を含む新たな燃料極123に差替えて使用する。実施例1と異なり、燃料極123を使用して発電するため、電極切替装置1の制御部10が切替部20に対して二次電池の放電モードと同じ制御、すなわち空気極101と正極21とを接続し、燃料極123を負極22とを接続する制御を行うことで、外部負荷への接続の制御を行う。これにより、空気極(+)燃料極(−)の電池として電力供給可能となる。
すなわち、電池セル57は、電極切替装置1により、日常的には二次電池として利用でき、燃料極122の物質を完全または一定量使用した後、充分な電力を得られなくなった際には、新たな燃料極123に交換することで、空気極(+)と燃料極(−)の構成で、発電することが可能である。
次に、本発明の実施例6について、図面を参照し説明すれば以下の通りである。
図15に、実施例6の金属空気二次電池を構成する電池セル59を示す。電池セル59は電解質103中に浸漬されて配されている空気極101、燃料極124、補助極110の3つの電極で構成される3極方式の金属空気二次電池セルであって、燃料の受け口または支持体などの保持構造を持つ燃料極124を含み、実施例1とは燃料極124が燃料の受け口または支持体などの保持構造を持つ点と、発電時の電極切替が放電時と共通である点が異なる。加えて補助極110を構成する材質に予め亜鉛が含まれる必要は必ずしもない。その他の点は実施例1の電池セル51と共通である。
平常時の二次電池動作においては、図15に示すように、亜鉛燃料の受け口または支持体などの保持構造を有する燃料極124を使用して充放電を行う。燃料極124の亜鉛を完全または一定量使用した後に燃料電池動作させる際の電池セルについて図16を用いて説明する。図16には、燃料極124の全部の燃料を消費した後の状態の燃料極125を含む電池セル60を示す。この時、燃料金属を消費した後の燃料極125を取り外すこと無く、図16に示すように、亜鉛燃料120を燃料極125に投入することで亜鉛材料120と一体となった燃料極125と空気極101を用いて発電することができる。なお、図16の燃料極125は、燃料極124の全部の燃料を消費した場合を示したが、燃料の全部ではなく一定量使用した場合も同様に亜鉛材料120と一体となった燃料極を用いて発電することができる。ここでは、亜鉛燃料120として板状のものを用いたが、実際には板状に限定されるものではなく、ペレット状、ペースト状などであってもよい。実施例1と異なり、燃料極125を使用して発電するため、電極切替装置1の制御部10が切替部20に対して二次電池の放電モードと同じ制御、すなわち空気極101と正極21とを接続し、燃料極125を負極22とを接続する制御を行うことで、外部負荷への接続の制御を行う。これにより、空気極(+)燃料極(−)の電池として電力供給可能となる。すなわち、電池セル59は、電極切替装置1により、日常的には二次電池として利用でき、燃料極124の物質を完全または一定量使用した後、充分な電力を得られなくなった際には、亜鉛燃料120を燃料極125に投入することで、空気極(+)と燃料極(−)の構成で、発電が可能である。
ここまで実施例として、燃料極の燃料金属消費後の燃料電池の発電モードとして、燃料金属を補助極に補充する場合と、燃料極に補充する場合の両方の実施例を説明してきた。なお、補充とは、各実施例で説明した電極交換、燃料金属投入、予め材質に燃料金属を含む、を包括する意味で用いるものとする。具体的には実施例1から実施例4における補助極に燃料金属を補充して補助極と空気極で発電する場合、実施例5、実施例6における燃料極に燃料金属を補充して燃料極と空気極で発電する場合である。ここで、実施例5、実施例6に示した燃料極に燃料金属を補充して燃料極と空気極で発電する場合に得られるさらなる効果について以下に説明する。
例えば、補助極、燃料極、空気極の順に配置した場合を考える。燃料極に燃料金属を補充して燃料極と空気極で発電する実施例5および実施例6においては補助極、燃料極、空気極の順に配置した構成にした場合に新たな効果が得られる。すなわち、燃料極と空気極の2つの電極間に他の電極が存在しないので発電を阻害されることなく、高い発電効率で発電することができる。さらに言えば、燃料極と空気極を比較的近い位置に配置することができるので、高い発電効率で発電することができる。この効果は、二次電池の放電時と燃料電池の発電時の両方において得られる効果である。
また、燃料電池として発電するのはあくまで非常時のため使用頻度は低いと考えられるので、二次電池としての特性を優先することが二次電池としての高頻度使用・定常使用のため有利である。補助極、燃料極、空気極の順に配置した構成であれば、燃料極と空気極の2つの電極間に他の電極が存在しないので発電を阻害されることなく、高い発電効率で放電することができる。さらに言えば、燃料極と空気極を比較的近い位置に配置することができるので、高い効率で放電することができる。従って、補助極、燃料極、空気極の順に配置した構成であれば、二次電池としての高頻度使用・定常使用のため有利である。
また、燃料極、補助極、空気極の位置関係に関わらず、燃料極を使用して発電するため、制御部10が切替部20に対して二次電池の放電モードと同じ制御で発電することができるため、制御が容易である。
本発明に係る金属空気二次電池は、燃料極、空気極、補助極の3つの電極で構成される3極方式の電池セルと、電極切替装置からなる金属空気二次電池であって、前記電極切替装置は、充電時、放電時および発電時で、前記燃料極、前記空気極および前記補助極の電気的な接続を切り替えることを特徴としている。
前記電極切替装置は、充電時には、前記燃料極を外部電源負極に、前記補助極を外部電源正極に、放電時には、前記燃料極を外部負荷負極に、前記空気極を外部負荷正極に、発電時には、前記補助極を外部負荷負極に、前記空気極を外部負荷正極に、それぞれ電気的に接続することが好ましい。
従来の二次電池は、予め溜めていた電力を使いきってしまうと、電力供給できなくなるという課題がある。そのため、緊急時でも充分な電力を確保しておきたい場合には、二次電池の残量に注意して制約内で利用するか、別の電源をバックアップとして準備する必要があった。
また、系統電力からの電力供給が停止した場合、更に電力を使用するためには、内燃機関等による発電装置を利用することがあるが、これら発電装置は、不完全燃焼や燃料の危険性から屋内で使用することができないという課題もある。
一方、金属空気電池は、亜鉛等の物質を燃料として供給することで発電できる燃料電池でもあるが、この形態で日常利用した場合、系統電力等と比較した場合に充分なコストメリットが得られないため、非常用電源としての利用しかできず、装置コストの回収が難しいという課題があった。
上記構成によれば、3極方式の金属空気二次電池において、燃料極の物質が減少し充分な電力を得られなくなった際に、発電部を切替えることで、補助極の燃料の利用により継続的に発電できるようになり、二次電池のように残量に注意することなく利用でき、燃料極の物質を使い切った後でも、補助極の燃料を利用することで安定的に電力供給が可能となる。また、バックアップとなる二次電池や発電装置を別個に準備する必要がなく、1つの装置で二次電池の機能と燃料電池の機能を兼ね備えるため装置の数を少なくすることができる。
さらに、系統から供給される安価な夜間電力を二次電池の機能で日常的にピークシフト利用することで装置コストの償却を行いつつ、非常時にも補助極の燃料を利用することで大容量の電力を供給することが可能となる。
前記補助極は、前記空気極と前記燃料極の間に配置されることが好ましい。
上記構成によれば、二次電池として利用する際に、空気極と燃料極、補助極と燃料極のいずれに反応においても、燃料極の消費/析出面を同一とできることで、消費/析出の制御がしやすくなる。また、緊急時の発電において、発電反応が起こる補助極と空気極101の間に他の電極がないため、阻害要因がなく発電効率が高い。燃料極に燃料が一部残っていても、発電反応が起こる空気極と補助極の間ではないため、影響を最小限にした状態で発電ができる。
前記補助極は、発電用補助極と交換可能であり、前記発電用補助極は、発電のための燃料となる金属材料を含むことが好ましい。
上記構成によれば、平常時には、補助極を二次電池の充電用電極として、充電効率の高いニッケル/ニッケル合金/SUS板などで利用し、非常時には、高いニッケル/ニッケル合金/SUS板などを取り外し、亜鉛板もしくは亜鉛メッキされた金属板からなる補助極に差し替えることで、空気極(+)と補助極(−)の間の構成で発電することが可能となる。
また、充電用補助極111と発電用補助極112が着脱可能な構成であるので、二次電池としての充電・放電使用時には、充電用補助極111が亜鉛を含まない構成、かつ、充電専用の補助極とすることができる。これにより、二次電池の充電・放電時に下記の効果が得られる。
充電時においては、充電用補助極111については充電専用(発電時には使用しない)であるため、充電に最適な材料や形態・構造を選択することができ、高効率で充電することが可能となる。例えば充電時には亜鉛は燃料極102にて析出するため、充電用補助極111には亜鉛は含まれない方が望ましい。
放電時においては、充電用補助極111に亜鉛が含まれていないため、燃料極102と空気極101間に充電用補助極111が位置する場合にも、燃料極102と空気極101間の放電の阻害要因とならず、高効率で放電することが可能となる。
また、燃料電池としての発電使用時には、発電用補助極112が亜鉛を含む発電専用の補助極とすることができる。これにより、発電に最適な材料や形態・構造を選択することができ、高効率で発電することが可能となる。
つまり、二次電池使用、燃料電池使用の各局面において、それぞれに最適な補助極を交換して使用することで、各電池を高効率で使用できる。
前記補助極は、保持構造を有し、前記保持構造は、発電のための燃料となる金属材料を保持することが好ましい。
上記構成によれば、平常時には、補助極を二次電池の充電用電極として利用し、非常時には、補助極を取り出すことなく、燃料である亜鉛を投入することで空気極(+)と補助極(−)の間の構成で発電することが可能となる。
前記補助極は、発電のための燃料となる金属材料を含むことが好ましい。
上記構成によれば、平常時には、二次電池として利用し、燃料極の物質を使い切った後の緊急時においても、補助極を構成する材料に亜鉛を用いることで、補助極の着脱や燃料の投入を行うこと無しに、空気極(+)と補助極(−)の間の構成で発電することが可能となる。
前記補助極の形状は、メッシュ状、多孔状、ハニカム状、ワイヤー状、細板状のいずれかからなる、またはいずれかの組み合わせからなることが好ましい。
上記構成によれば、補助極を板状ではなく、電解液の連絡性が良い形状とすることで、二次電池として利用する際の発電効率の低下を抑制し、高発電効率の電池セルを実現できる。
前記金属材料は亜鉛であることが好ましい。
上記構成によれば、金属空気電池に好適で広範囲に用いられている安価な亜鉛を燃料金属材料として用いることで、本発明の電池セルの設計が容易になり、所望の電池セルを容易に実現できる。
前記燃料極には、燃料となる金属材料を電池外部から補充することができることが好ましい。
前記電極切替装置は、充電時には前記燃料極を外部電源負極に、前記補助極を外部電源正極に、放電時と発電時には前記燃料極を外部負荷負極に、前記空気極を外部負荷正極に、それぞれ電気的に接続することが好ましい。
従来の二次電池は、予め溜めていた電力を使いきってしまうと、電力供給できなくなるという課題がある。そのため、緊急時でも充分な電力を確保しておきたい場合には、二次電池の残量に注意して制約内で利用するか、別の電源をバックアップとして準備する必要があった。
また、系統電力からの電力供給が停止した場合、更に電力を使用するためには、内燃機関等による発電装置を利用することがあるが、これら発電装置は、不完全燃焼や燃料の危険性から屋内で使用することができないという課題もある。
一方、金属空気電池は、亜鉛等の物質を燃料として供給することで発電できる燃料電池でもあるが、この形態で日常利用した場合、系統電力等と比較した場合に充分なコストメリットが得られないため、非常用電源としての利用しかできず、装置コストの回収が難しいという課題があった。
上記構成によれば、3極方式の金属空気二次電池において、燃料極の物質が減少して放電時に充分な電力を得られなくなった際に、発電部を放電時から切替えることなく、新たな燃料極の燃料を利用することで安定的に電力供給が可能となる。また、バックアップとなる二次電池や発電装置を別個に準備する必要がなく、1つの装置で二次電池の機能と燃料電池の機能を兼ね備えるため装置の数を少なくすることができる。
さらに、系統から供給される安価な夜間電力を二次電池の機能で日常的にピークシフト利用することで装置コストの償却を行いつつ、非常時にも補助極の燃料を利用することで大容量の電力を供給することが可能となる。
燃料極、補助極、空気極の位置関係に関わらず、燃料極を使用して発電するため、制御部10が切替部20に対して二次電池の放電モードと同じ制御で発電することができるため、制御が容易である。
前記燃料極は交換可能であることが好ましい。
上記構成によれば、平常時には、燃料極を二次電池の燃料電極として利用し、非常時には、燃料極を新たに差し替えることで、空気極(+)と燃料極(−)の間の構成で発電することが可能となる。
前記燃料極は保持構造を有し、前記保持構造は、発電のための燃料となる金属材料を保持することが好ましい。
上記構成によれば、平常時には、燃料極を二次電池の燃料電極として利用し、非常時には、燃料極を取り出すことなく、燃料である亜鉛を投入することで空気極(+)と燃料極(−)の間の構成で発電することが可能となる。