JP6199694B2 - プレス加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄肉のブランクに対して所定の形状を成形加工してプレス加工品を製造するプレス加工方法に関する。
プレス加工品は、一般に、成形後に歪み(ゆがみ)が残ることが多い。特に、プレス加工品の素材として薄肉のブランク(薄肉金属板)を採用する場合には、歪みが残りやすく、機能上又は商品性を確保する上で歪みの除去は極めて重要となる。この点に関し、従来から、例えば、下記特許文献1に示すように、薄肉金属板を素材とするプレス加工品の歪みを除去するプレス加工品の歪み除去方法及びプレス装置は知られている。
この従来のプレス加工品の歪み除去方法は、プレス装置のダイスとブランクホルダインサートにより薄肉金属板の周縁部を固定した状態でプレス成形し、このプレス成形したプレス加工品の中心部を上型と下型とにより部分的に挟持した状態でプレス方向に移動させるようになっている。このように、プレス加工品を移動させることにより、プレス加工品の中心部を囲む周囲部分を中心部から離れる方向に相対的に引き延ばしてプレス加工品を塑性変形させ、この塑性変形によりプレス加工品から歪みを除去するようになっている。これにより、プレス加工品の形状を維持した状態で、引き延ばすのみの作業により、薄肉金属板を素材とするプレス加工品の歪み除去を簡単に行うことができるようになっている。
特開2003−230913号公報(特許第4166019号)
ところで、上記従来のプレス加工品の歪み除去方法及びプレス装置では、薄肉のブランクである薄肉金属板の周縁部をダイスとブランクホルダインサートによって固定した状態で、すなわち、周縁部から中心部に向けた材料流動を禁止した状態で、上型と下型とにより中心部に多数の筋状の凹凸が成形される。この場合、材料流動が禁止されているため、薄肉金属板の中心部に形成される多数の筋状の凹凸(溝)は、所謂、張出しによって成形される。従って、多数の筋状の凹凸を成形する際に発生する歪みが大きくなる傾向にある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、プレス成形時おける歪みの発生を抑制することができるプレス加工方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、雌型と、雄型と、前記雌型の外周に位置するダイホルダと、前記雄型の外周に位置するブランクホルダとを有するプレス装置を用いて、前記雄型に設けた成形部を前記雌型に設けた成形部に進入させて薄肉のブランクに対して所定の形状を成形加工してプレス加工品を製造するプレス加工方法において、前記ダイホルダと前記ブランクホルダとによって前記ブランクの周縁部分を固定することなく前記雌型の成形部と前記雄型の成形部との間に前記ブランクを介在させ、前記雌型の成形部及び前記雄型の成形部によって成形加工される前記ブランクの中央部分に向けて前記ブランクの周縁部分からの材料流動を許容した状態で前記雄型の成形部を前記雌型の成形部に第1の成形荷重により進入させて、前記ブランクの中央部分に前記所定の形状に至るまでの中間形状を成形加工する中間成形加工工程と、前記ダイホルダと前記ブランクホルダとによって前記ブランクの周縁部分を固定して前記ブランクの中央部分に向けて前記ブランクの周縁部分からの材料流動を禁止した状態で、前記雄型の成形部を前記雌型の成形部に前記第1の成形荷重よりも大きな第2の成形荷重により進入させて前記ブランクの中央部分に前記中間形状から前記所定の形状に向けて最終的に成形加工するとともに、前記雄型の成形部が前記雌型の成形部に前記第2の荷重により進入している状態で前記雌型及び前記雄型を前記ブランクの周縁部分を固定している前記ダイホルダ及び前記ブランクホルダに対して相対的に変位させて、前記ブランクの中央部分と前記ブランクの周縁部分との間における前記ブランクの周囲部分に歪を生じさせる最終成形加工工程とを含むように構成されることにある。
この場合、前記雌型及び前記雄型を前記ダイホルダ及び前記ブランクホルダに対して相対的に変位させるとき、前記雌型及び前記雄型の前記成形部を設けた面において前記雌型の成形部以外の一般面と前記雄型の成形部以外の一般面との間は、前記ブランクの周囲部分における板厚よりも大きな隙間を有することができる。
又、これらの場合、前記最終成形加工工程は、前記ブランクの周縁部分と前記ブランクの周囲部分との間に、前記雌型及び前記雄型を前記ダイホルダ及び前記ブランクホルダに対して相対的に変位させることに伴う塑性変形により段部を形成し、前記ブランクの周囲部分に歪を生じさせることができる。
又、これらの場合、前記雌型の成形部及び前記雄型の成形部は、前記ブランクの中央部分に複数の筋状の凹凸を成形加工することができる。
更に、これらの場合、前記最終成形加工工程後、更に、前記ブランクの周囲部分の設定位置で前記ブランクの周縁部分をカットするように構成することができる。
これらによれば、雄型の成形部を雌型の成形部に第1の成形荷重により進入させてブランクの中央部分に中間形状を成形する中間成形加工工程において、ブランクの周縁部分からブランクの中央部分に向かう材料流動を確保することができる。これにより、雄型の成形部が雌型の成形部に進入することに伴って、特に、ブランクの周縁部分に近い成形部位においては材料を流入させることができるため、少なくとも、この成形部位では、所謂、絞り加工により中間形状が容易に成形され、プレス加工に伴う歪みの発生を抑制することができる。尚、この場合、ブランクの周縁部分から離れた成形部位においては材料を流入させにくく、この成形部位では、所謂、張出し加工により中間形状が成形される。しかし、ブランクの周縁部分に近い成形部位に良好に材料を流入させることができるため、成形に進行に伴ってブランクの周囲部分から離れた成形部位との間で不可避的に発生する、所謂、材料の取り合いが軽減され、張出し加工においても過度に歪(ひずみ)を生じさせることを抑制することができる。
又、中間成形加工工程後の最終成形加工工程において、雌型及び雄型をダイホルダ及びブランクホルダに対して相対的に変位させることに伴う塑性変形によって(具体的に段部を形成することによって)ブランクの周囲部分に歪を生じさせることができる。すなわち、ブランクの中央部分に所定の形状まで成形した場合、ブランクの周囲部分に疎らに歪が生じると、この歪がプレス加工品の歪みを生じさせる。このため、ブランクの周囲部分における歪がほぼ均一の分布になるように、塑性変形によって(具体的に段部を形成することによって)ブランクの周囲部分に歪を生じさせる。これにより、上述したように、中間成形加工工程を経てプレス加工に伴う歪みの発生自体を抑制、言い換えれば、ブランクの周囲部分に生じる歪のムラを小さくした上で、更に、ブランクの周囲部分に均一の分布となるように歪を生じさせることにより、プレス加工品の歪みをより適切に除去することができる。
ここで、雌型及び雄型をダイホルダ及びブランクホルダに対して相対的に変位させるときには、ブランクの周囲部分が雌型及び雄型によって固定(拘束)されずに良好な材料流動性を有することができる。このため、塑性変形に伴ってブランクの周囲部分に確実に歪を生じさせることができて、プレス加工品の歪みを除去することができる。
本発明の実施形態に係り、プレス加工方法に用いられるプレス装置の構成を概略的に示す概略図である。 本発明の実施形態に係り、プレス加工方法を経て製造されるメタルセパレータを示す概略図である。 ブランクセット工程を説明するための図である。 中間成形加工工程におけるブランクホルダの降下を説明するための図である。 中間成形加工工程におけるパンチの降下を説明するための図である。 中間成形加工工程における中間形状の成形を説明するための図である。 最終成形加工工程を説明するための図である。 プレス加工品の取り出し時におけるパンチとブランクホルダの動作を説明するための図である。 プレス加工品の取り出し時におけるダイの動作を説明するための図である。 本発明のプレス加工方法を経て成形されるプレス加工品を示す断面図である。 プレス加工品に対するトリミング(周縁部分のカット)を説明するための図である。
以下に、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係り、薄肉のブランクとしての薄肉金属板Zに複数の筋状の凹凸を成形するプレス装置10を示している。プレス装置10は、雌型としてのダイ11と、雄型としてのパンチ12と、ダイホルダ13と、ブランクホルダ14とを備えている。
ダイ11は、図1に示すように、下端面にて、油圧シリンダYS及び2個一対のエンドブロックEBを介してボルスタBR上に設置されている。これにより、ダイ11は、油圧シリンダYSによって鉛直方向にて上方及び下方に移動することができ、エンドブロックEBによって下方への移動が規制されるようになっている。又、ダイ11の上端面には、薄肉金属板Zに複数の筋状の凹凸を成形するための成形部11aが収容凹部11b内に設けられている。
パンチ12は、図1に示すように、上端面にて、鉛直方向にて上動及び下動するスライドSLに一体的に組み付けられている。これにより、パンチ12は、スライドSLとともに一体的に鉛直方向にて上方及び下方に移動することができる。又、パンチ12の下端面には、薄肉金属板Zに複数の筋状の凹凸を成形するための成形部12aがダイ11に形成された成形部11a及び収容凹部11bに進入可能に設けられている。これにより、パンチ12(より詳しくは、成形部12a)は、スライドSLにより、ダイ11の収容凹部11b内に設けられた成形部11aに向けて下降して進入し、又、成形部11a及び収容凹部11bから上方に離間するようになっている。
ダイホルダ13は、図1に示すように、ダイ11の外周に位置しており、その下端面にてボルスタBR上に設置されている。尚、ダイホルダ13の上端面は、後述するように、載置された薄肉金属板Zをブランクホルダ14とともに強固に挟持して固定するために、滑り止め加工(例えば、ローレット加工等)が施される場合がある。
ブランクホルダ14は、図1に示すように、パンチ12の外周に位置しており、その上端にてガススプリングGSを介してスライドSLに一体的に組み付けられている。これにより、ブランクホルダ14は、スライドSLとともに一体的に鉛直方向にて上方及び下方に移動することができ、ダイホルダ13とともに薄肉金属板Zを挟持する際にはガススプリングGSによって少なくとも低荷重と高荷重の2段階の荷重によって薄肉金属板Zを挟持するようになっている。尚、ブランクホルダ14の下端面は、ダイホルダ13に載置された薄肉金属板Zを強固に挟持して固定するために、滑り止め加工(例えば、ローレット加工等)が施される場合がある。
次に、上記のように構成したプレス装置10を用いて、パンチ12に設けた成形部12aをダイ11の収容凹部11b内に設けた成形部11aに進入させて薄肉金属板Zに対して複数の筋状の凹凸を成形加工してプレス加工品Wを製造するプレス加工を説明する。尚、本実施形態においては、プレス加工品Wから仕上げ工程(カット工程)を経て得られる製品として、図2に示すように、多数の筋状の凹凸が成形されて、燃料電池に採用されるメタルセパレータを製造する場合を例示して説明する。
プレス装置10は、図3に示したブランクセット工程、図4〜図6に示した中間成形加工工程、図7に示した最終成形加工工程を経て図10に示したプレス加工品Wを成形製造する。
図3に示したブランクセット工程では、油圧シリンダYSによってダイ11の上端面(より具体的には、収容凹部11bの上端面)をダイホルダ13の上端面に合わせる。そして、薄肉のブランクである薄肉金属板Zを載置してセットする。すなわち、このブランクセット工程を経ることにより、ダイ11の成形部11aとパンチ12の成形部12aとの間に薄肉金属板Zが介在された状態になる。ここで、薄肉金属板Zについては、図3に示すような予め設定された大きさに切断されたシート材を逐一供給したり、コイルからアンコイルして連続供給したりすることが可能である。このように、ブランクセット工程が終了すると、中間成形加工工程に進む。
図4〜図6に示した中間成形加工工程では、図4に示すように、スライドSLが下動することによってパンチ12及びブランクホルダ14が降下し、先ずブランクホルダ14の下端面が薄肉金属板Zに接触する。続いて、図5に示すように、パンチ12の成形部12aが薄肉金属板Zに接触する。この場合、ガススプリングGSの調整によって、降下するブランクホルダ14は、ダイホルダ13とともに低荷重、具体的に、後述するような中間形状の成形に伴って材料が内部に引き込まれる(すなわち、材料の流動が許容される)程度の荷重により、薄肉金属板Zを保持する。
更に、図6に示すように、スライドSLが下動し、パンチ12の成形部12aが薄肉金属板Zの中央部分Z1とともにダイ11の成形部11a及び収容凹部11bに進入する。この場合、ダイホルダ13とブランクホルダ14とは、低荷重により薄肉金属板Zの周縁部分Z2を保持している。このため、パンチ12の成形部12aがダイ11の成形部11aに進入することに伴って、薄肉金属板Zの周縁部分Z2から中央部分Z1に向けて材料が流動する、より詳しくは、薄肉金属板Zの周縁部分Z2が中央部分Z1に向けて引き込まれるように流れる。これにより、パンチ12の成形部12aとダイ11の成形部11aとによって挟まれて筋状の凹凸形状が成形される成形部位のうち、少なくとも、薄肉金属板Zの周縁部分Z2に近い成形部位においては良好な材料の流動によって、所謂、絞り加工により、筋状の凹凸形状が成形される。一方、筋状の凹凸形状が成形される成形部位のうち、薄肉金属板Zの周縁部分Z2から離れた成形部位においては良好な材料の流動が得られず、所謂、張出し加工により、筋状の凹凸形状が成形される。
すなわち、ダイホルダ13とブランクホルダ14とによって周縁部分Z2が低荷重で保持されることにより、周縁部分Z2に近い成形部位には良好な材料の流動(より詳しくは、材料の流入)が生じる。このため、周縁部分Z2に近い成形部位と周縁部分Z2から離れた成形部位との間で、凹凸形状の成形が進行することに伴って不可避的に発生する材料流動の不均一な状態、所謂、材料の取り合いが軽減される。これにより、周縁部分Z2から離れた成形部位では張出し加工となるものの、過度に歪を生じさせることなく必要な筋状の凹凸形状を成形することができる。
又、この中間成形加工工程においては、パンチ12の成形部12aは、第1の成形荷重F0により、薄肉金属板Zの中央部分Z1とともにダイ11の成形部11a及び収容凹部11bに進入し、薄肉金属板Zの中央部分Z1を成形する。尚、第1の成形荷重F0の大きさは、後述する最終成形加工工程における第2の成形荷重F1の大きさの半分(F1/2)程度の大きさに設定されている。このため、パンチ12の成形部12aとダイ11の成形部11aとに挟まれて成形される筋状の凹凸は未だ成形部11a,12aの形状すなわち最終的な製品形状(所定の形状)を正確に転写した形状ではなく、製品形状に至るまでの中間形状となる。このように、中間成形工程において薄肉金属板Zの中央部分に中間形状を成形すると、最終成形加工工程に進む。
図7に示した最終成形加工工程では、継続的なスライドSLの下動に対してガススプリングGSの調整により、ブランクホルダ14は、ダイホルダ13とともに高荷重、具体的に、成形に伴って材料が内部に引き込まれない(すなわち、材料の流動が禁止される)ように薄肉金属板Zの周縁部分Z2を固定する荷重により、薄肉金属板Zを挟持する。又、パンチ12の成形部12aは、ダイホルダ13及びブランクホルダ14によって薄肉金属板Zにおける材料の流動が禁止された状態で、更に薄肉金属板Zの中央部分Z1とともにダイ11の成形部11a及び収容凹部11bに進入する。すなわち、この状態では、中間形状から最終的な筋状の凹凸形状に向けて成形が進む。
又、このパンチ12(成形部12a)の進入に合わせて、ダイ11を上方に付勢している油圧シリンダYSはその付勢力を徐々に低下させ、ダイ11とパンチ12とが一体的に下方に向けて移動することを許容する。これにより、ダイホルダ13及びブランクホルダ14が薄肉金属板Zの周縁部分Z2を固定しているため、ダイ11及びパンチ12が一体的に下方に移動すると、ダイ11及びパンチ12とダイホルダ13及びブランクホルダ14とが相対的に変位して、所謂、段絞り加工が開始される。そして、この段絞り加工が開始されることにより、図7に示すように、薄肉金属板Zの中央部分Z1と周縁部分Z2との間における周囲部分Z3と、ダイホルダ13及びブランクホルダ14に固定されている周縁部分Z2との間に塑性変形による段部Z4が成形される。ここで、段絞り加工が行われる際には、図7にてA部及びB部として示すように、ダイ11の成形部11a以外の一般面とパンチ12の成形部12a以外の一般面との間の隙間の大きさは、薄肉金属板Zの周囲部分Z3における板厚よりも大きくなるように設定されており、段絞り加工における周囲部分Z3の材料流動性が確保されるようになっている。これにより、周囲部分Z3が段絞り加工によってスムーズに周辺部分Z2に向けて引っ張られ、その結果、プレス加工品Wにおける歪みが良好に取り除かれる。
更に、スライドSLの下動によってパンチ12がダイ11とともに降下すると、ダイ11がエンドブロックEBに当接し、ダイ11及びパンチ12の一体的な下方への移動が規制される。このため、パンチ12の成形部12aは、第1の成形荷重F0よりも大きな第2の成形荷重F1により、薄肉金属板Zの中央部分Z1とともにダイ11の成形部11a及び収容凹部11bに進入する。これにより、薄肉金属板Zの中央部分Z1において、パンチ12の成形部12aとダイ11の成形部11aの形状すなわち最終的な製品形状(所定の形状)が正確に転写されて成形される。又、ダイ11及びパンチ12の一体的な下方への移動が規制されることにより、一定量の段部Z4を成形する段絞り加工も完了する。
このように、最終成形加工工程が完了すると、図8に示すように、スライドSLが上動することに伴って、パンチ12及びブランクホルダ14を上方に退避させる。そして、パンチ12及びブランクホルダ14を上方に退避させた後、図9に示すように、油圧シリンダYSがダイ11を上方に移動させることにより、プレス加工品Wを取り出す。このように、パンチ12及びブランクホルダ14の退避後にダイ11を上方に移動させることにより、プレス加工品Wの無用な変形を防止することができる。
このようにプレス加工されたプレス加工品Wは、図11に示すように、薄肉金属板Zの周囲部分Z3の設定位置でトリミングされて薄肉金属板Zの周縁部分Z2及び段部Z4がカットされる。これにより、図2に示したように、多数の筋状の凹凸形状が成形された製品としてのメタルセパレータが製造される。
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、パンチ12の成形部12aをダイ11の成形部11aに第1の成形荷重F0により進入させて薄肉金属板Zの中央部分Z1に中間形状を成形する中間成形加工工程において、薄肉金属板Zの周縁部分Z2から薄肉金属板Zの中央部分Z1に向かう材料流動を適切に確保することができる。これにより、パンチ12の成形部12aがダイ11の成形部11aに進入することに伴って、特に、周縁部分Z2に近い成形部位においては材料を流入させることができるため、少なくとも、この成形部位では、所謂、絞り加工により中間形状が容易に成形される。従って、例えば、材料の流入させない場合に比して周囲部分Z3に発生する歪のムラを小さくすることができ、プレス加工に伴う歪みの発生を抑制することができる。
又、最終成形加工工程において、薄肉金属板Zに段部Z4を成形することによって、薄肉金属板Zの周囲部分Z3に歪を生じさせることができる。すなわち、薄肉金属板Zの中央部分Z1に最終的に複数の筋状の凹凸を成形した場合、周囲部分Z3に疎らに歪が生じると、この歪がプレス加工品W及び製品であるメタルセパレータの歪みを生じさせる。このため、薄肉金属板Zの周囲部分Z3における歪がほぼ均一の分布になるように、段部Z4を成形することにより、周囲部分Z3に歪を生じさせる。これにより、上述したように、中間成形加工工程を経ることによってプレス加工に伴う歪みの発生自体を抑制、すなわち、周囲部分Z3に発生する歪のムラを小さくした上で、更に、段部Z4を成形して周囲部分Z3に均一の分布となるように歪を生じさせることにより、プレス加工品Wすなわち製品であるメタルセパレータの歪みをより適切に除去することができる。
ここで、ダイ11及びパンチ12をダイホルダ13及びブランクホルダ14に対して相対的に変位させるときには、図7にてA部及びB部として示したように、薄肉金属板Zの周囲部分Z3がダイ11及びパンチ12によって固定(拘束)されずに良好な材料流動性を有することができる。このため、段部Z4の成形に伴って周囲部分Z3に確実に歪を生じさせることができて、プレス加工品Wの歪みを除去することができる。
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、プレス装置10のダイ11、パンチ12、ダイホルダ13及びブランクホルダ14が鉛直方向にて上下に配置されるように実施した。この場合、プレス装置10のダイ11、パンチ12、ダイホルダ13及びブランクホルダ14を、鉛直方向以外の方向、例えば、水平方向にて左右に配置して実施することも可能である。このようにプレス装置10を配置する場合であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
又、上記実施形態においては、パンチ12及びブランクホルダ14がスライドSLによって上方又は下方に移動するように実施した。又、ダイ11が油圧シリンダYSによって上方又は下方に移動するように実施した。この場合、スライドSL及び油圧シリンダYSに代えて他の駆動装置、例えば、電気的に駆動する電動機等を採用して実施可能であることは言うまでもない。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
又、上記実施形態においては、薄肉金属板Zの中央部分Z1に複数の筋状の凹凸形状を成形するように実施した。この場合、複数の筋状の凹凸形状を成形することに代えて、例えば、点状(ディンプル状)の凹凸形状を成形するように実施可能であることは言うまでもない。この場合であっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
更に、上記実施形態においては、最終成形加工工程にて、ダイ11及びパンチ12が薄肉金属板Zの中央部分Z1を挟持した状態(凹凸を成形した状態)で、薄肉金属板Zの周縁部分Z2を固定しているダイホルダ13及びブランクホルダ14に対して、相対的に鉛直方向下方に移動させて段部Z4を成形するように実施した。この場合、例えば、油圧シリンダYSによる付勢力を増大させてダイ11の下方への移動を規制しておき、パンチ12の成形部12aをダイ11の成形部11aに対して第2の成形荷重により進入させて最終的な筋状の凹凸形状を成形した後、ダイ11及びパンチ12をダイホルダ13及びブランクホルダ14に対して相対的に鉛直方向上方に移動させて段部Z4を成形するように実施することも可能である。或いは、例えば、ダイホルダ11を鉛直方向にて上下方向に移動させる駆動装置(油圧シリンダ等)を設けておき、ダイ11及びパンチ12に対して、ダイホルダ13及びブランクホルダ14を相対的に鉛直方向下方又は上方に移動させて段部Z4を成形するように実施することも可能である。これらによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
10…プレス装置、11…ダイ(雌型)、11a…成形部、11b…収容凹部、12…パンチ(雄型)、12a…成形部、13…ダイホルダ、14…ブランクホルダ、Z…薄肉金属板(ブランク)、Z1…中央部分、Z2…周縁部分、Z3…周囲部分、Z4…段部、YS…油圧シリンダ、W…プレス加工品

Claims (5)

  1. 雌型と、雄型と、前記雌型の外周に位置するダイホルダと、前記雄型の外周に位置するブランクホルダとを有するプレス装置を用いて、前記雄型に設けた成形部を前記雌型に設けた成形部に進入させて薄肉のブランクに対して所定の形状を成形加工してプレス加工品を製造するプレス加工方法において、
    前記ダイホルダと前記ブランクホルダとによって前記ブランクの周縁部分を固定することなく前記雌型の成形部と前記雄型の成形部との間に前記ブランクを介在させ、前記雌型の成形部及び前記雄型の成形部によって成形加工される前記ブランクの中央部分に向けて前記ブランクの周縁部分からの材料流動を許容した状態で前記雄型の成形部を前記雌型の成形部に第1の成形荷重により進入させて、前記ブランクの中央部分に前記所定の形状に至るまでの中間形状を成形加工する中間成形加工工程と、
    前記ダイホルダと前記ブランクホルダとによって前記ブランクの周縁部分を固定して前記ブランクの中央部分に向けて前記ブランクの周縁部分からの材料流動を禁止した状態で、前記雄型の成形部を前記雌型の成形部に前記第1の成形荷重よりも大きな第2の成形荷重により進入させて前記ブランクの中央部分に前記中間形状から前記所定の形状に向けて最終的に成形加工するとともに、
    前記雄型の成形部が前記雌型の成形部に前記第2の荷重により進入している状態で前記雌型及び前記雄型を前記ブランクの周縁部分を固定している前記ダイホルダ及び前記ブランクホルダに対して相対的に変位させて、前記ブランクの中央部分と前記ブランクの周縁部分との間における前記ブランクの周囲部分に歪を生じさせる最終成形加工工程とを含むように構成されたプレス加工方法。
  2. 請求項1に記載のプレス加工方法において、
    前記雌型及び前記雄型を前記ダイホルダ及び前記ブランクホルダに対して相対的に変位させるとき、
    前記雌型及び前記雄型の前記成形部を設けた面において前記雌型の成形部以外の一般面と前記雄型の成形部以外の一般面との間は、前記ブランクの周囲部分における板厚よりも大きな隙間を有するプレス加工方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のプレス加工方法において、
    前記最終成形加工工程は、
    前記ブランクの周縁部分と前記ブランクの周囲部分との間に、前記雌型及び前記雄型を前記ダイホルダ及び前記ブランクホルダに対して相対的に変位させることに伴う塑性変形により段部を形成し、前記ブランクの周囲部分に歪を生じさせるプレス加工方法。
  4. 請求項1ないし請求項3のうちのいずれか一つに記載のプレス加工方法において、
    前記雌型の成形部及び前記雄型の成形部は、前記ブランクの中央部分に複数の筋状の凹凸を成形加工するプレス加工方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のうちのいずれか一つに記載のプレス加工方法において、
    前記最終成形加工工程後、更に、前記ブランクの周囲部分の設定位置で前記ブランクの周縁部分をカットするように構成されたプレス加工方法。
JP2013216946A 2013-10-18 2013-10-18 プレス加工方法 Active JP6199694B2 (ja)

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