本発明の第1実施形態のインバータ装置1について、図1〜図8を参考にして説明する。図1は、第1実施形態のインバータ装置1の回路図である。図示されるように、インバータ装置1は、三相の正側スイッチング素子21U、21V、21W、および三相の負側スイッチング素子22U、22V、22Wをブリッジ接続した一般的な回路構成となっている。第1実施形態では、スイッチング素子21U〜22Wとして、特許文献1で開示した正六角形の板状のパワー半導体モジュール(IGBT素子)を用いる。
図1に示されるように、回路構成はU相、V相、およびW相で同じであるので、U相を例にして詳細に説明し、V相およびW相の説明は省略する。U相正側スイッチング素子21Uのコレクタ電極C1は、後述する内側バスバー31を経由して直流電源の正側端子に接続される。U相正側スイッチング素子21Uのエミッタ電極E1は、U相出力バスバー61Uに接続されている。また、U相負側スイッチング素子22Uのコレクタ電極C2も、U相出力バスバー61Uに接続されている。U相負側スイッチング素子22Uのエミッタ電極E2は、後述する外側バスバー32を経由して直流電源の負側端子に接続される。
U相正側スイッチング素子21Uのゲート電極G1は、後述するU相正側ゲート制御回路51Uに接続され、U相負側スイッチング素子22Uのゲート電極G2は、後述するU相負側ゲート制御回路52Uに接続されている。ゲート電極G1およびゲート電極G2にゲート制御信号が入力されると、コレクタ電極C1、C2とエミッタ電極E1、E2との間の導通状態が制御される。U相出力バスバー61Uは、インバータ装置1から引き出されて、三相交流負荷に接続される。
インバータ装置1は、内側バスバー31および外側バスバー32から入力された直流電力を周波数可変の交流電力に変換して、三相の出力バスバー61U、61V、61Wから出力する。この電力変換機能は一般的なものであるので、これを実現するゲート制御信号の形態ならびに電力変換動作の詳細な説明は省略する。
図2は、第1実施形態のインバータ装置1の構成を示す断面図である。インバータ装置1は、中心軸線CLの周りに概ね回転対称に構成されている。また、インバータ装置1は、中心軸線CLの軸長方向に5層を成している。図3は、第1実施形態のインバータ装置1の5層構造を模式的に説明する分解斜視図である。なお、図3で、スイッチング素子21U〜22Wなどが図示省略されている。図2および図3で、最も下側が第1層であり、上側へと順番に第2層〜第5層が配設されている。
第1層は、主に下側ヒートシンク41で形成されている。図4は、インバータ装置1を構成する第1層の下側ヒートシンク41の平面図である。下側ヒートシンク41は、中心軸線CLの部分が中空で回転対称なトーラス形状に形成されている。下側ヒートシンク41は、強磁性および高い導電率を有する電磁シールド材料、例えば鉄などを用いて形成され、フレームグラウンドに接地されて用いられる。下側ヒートシンク41の径方向外縁43は、軸長方向上向きに延びている。
下側ヒートシンク41は、中心軸線CLを通る平面で切った断面が矩形であり、内部空間42を有している(図2示)。内部空間42には、冷却媒体が封入されて強制的に循環される。冷却媒体は、下側ヒートシンク41で熱を受け取って外部の放熱器に流出し、放熱器で熱を放散すると下側ヒートシンク41に戻る。例えば、冷却媒体として冷却水、強制循環手段として送水ポンプ、放熱器として熱交換器をそれぞれ用いることができる。ただし、下側ヒートシンク41の冷却媒体、強制循環手段、および放熱器は必須でなく、別の構成を採用してもよい。例えば、複数の放熱フィンを備えた自然冷却方式のヒートシンクを採用してもよい。
図4に示されるように、下側ヒートシンク41の上面には、6枚の熱伝導性絶縁物44が中心軸線CLの周りに環状に布設されている。6枚の熱伝導性絶縁物44は、互いに同形同大であり、後述する電極板31U〜32Wと同じ大きさかわずかに大きめの正六角形の薄板に形成されている。熱伝導性絶縁物44は、高い熱伝導率および高い電気絶縁性を有する材料、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)などを用いて形成される。熱伝導性絶縁物44は、電極板31U〜32Wから下側ヒートシンク41への熱伝導の役割、ならびに、電極板31U〜32Wと下側ヒートシンク41との間の電気絶縁の役割を担っている。
図2および図3に示されるように、第1層の中心部分を貫通し下方に向けて、内側バスバー31および外側バスバー32が配設されている。内側バスバー31および外側バスバー32は、中心軸線CLの周りに同軸内外に配置されている。内側バスバー31と外側バスバー32との間には、筒状の絶縁物33が介挿され、絶縁が確保されている。さらに、外側バスバー32と下側ヒートシンク41との間にも、筒状の絶縁物34が介挿され、絶縁が確保されている。内側バスバー31の下側の一端部は、直流電源の正側端子に接続される。外側バスバー32の下側の一端部は、直流電源の負側端子に接続される。
内側バスバー31は、三相の正側電極板31U、31V、31Wを上側の他端部に有している。各正側電極板31U、31V、31Wは、径方向外向きに延伸されており、かつ径方向外側が展開されて周方向に拡がっている。外側バスバー32も、三相の負側電極板32U、32V、32Wを上側の他端部に有している。各負側電極板32U、32V、32Wも、径方向外向きに延伸されており、かつ径方向外側が展開されて周方向に拡がっている。第2層は、主にこれらの電極板31U〜32Wおよび正側スイッチング素子21U、21V、21Wで形成されている。図5は、インバータ装置1を構成する第2層の電極板31U〜32Wおよび正側スイッチング素子21U、21V、21Wの平面図である。
図5に示されるように、合計6個の電極板31U、31V、31W、32U、32V、32Wは、互いに同形同大であり、スイッチング素子21U〜22Wの正六角形よりも一回り大きい正六角形状に形成されている。内側バスバー31の三相の正側電極板31U、31V、31Wと、外側バスバー32の三相の負側電極板32U、32V、32Wとは、周方向に60°ピッチで交互に配置され、かつ、相互間に所定の絶縁距離が確保されている。具体的には、図5の左手前から反時計回りに順番に、U相正側電極板31U、U相負側電極板32U、V相正側電極板31V、V相負側電極板32V、W相正側電極板31W、およびW相負側電極板32Wが配置されている。合計6個の電極板31U〜32Wと下側ヒートシンク41との間には、前述した6枚の熱伝導性絶縁物43が介挿されている。
三相の正側電極板31U〜31Wの上面に、三相の正側スイッチング素子21U、21V、21Wが中心軸線CLの周りに120°ピッチで回転対称に配設されている。特許文献1で詳述しているように、正側スイッチング素子21U、21V、21Wは、正六角形の板状の裏面にコレクタ電極C1を有し、板状の表面の中央にエミッタ電極E1を有し、板状の表面の縁寄りにゲート電極G1を有している。そして、正側電極板31U、31V、31Wの上面に正側スイッチング素子21U、21V、21Wの裏面が接触するように配設することで、ボンディングワイヤを用いずに、コレクタ電極C1を内側バスバー31に直接的に接続している。また、広い接触面を介して、正側スイッチング素子21U、21V、21Wの発熱を正側電極板31U、32V、31Wに良好に伝導させることができる。
第3層は、主にゲート回路基板5で形成されている。図6は、インバータ装置1を構成する第3層のゲート回路基板5の平面図である。ゲート回路基板5は、基板材50および合計6個のゲート制御回路51U〜52Wからなる。基板材50は、円板状の絶縁部材であり、その材質としてポリカーボネート樹脂を例示できる。6個の電極板31U〜32Wの中央位置に対応する基板材50の6箇所に、それぞれ貫通孔53U、53V、53W、54U、54V、54Wが穿設されている。貫通孔53U〜54Wは、直線電極を通す部位である(詳細後述)。
基板材50の下面で第2層の正側スイッチング素子21U、21V、21Wの真上の位置に、3相の正側ゲート制御回路51U、51V、51Wが配設されている。同様に、基板材50の上面で後述する第4層の負側スイッチング素子22U、22V、22Wの真下の位置に、3相の負側ゲート制御回路52U、52V、52Wが配設されている。正側ゲート制御回路51U、51V、51Wおよび負側ゲート制御回路52U、52V、52Wは、基板材50の表裏交互に60°ピッチの配置となる。
合計6個のゲート制御回路51U〜52Wは、三相の正側および負側に対応するゲート制御信号を生成して出力する。ゲート制御信号の立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングは、ゲート回路基板5内で決定してもよく、外部で決定して例えば光ファイバを経由して指令するようにしてもよい。ゲート制御回路51U〜52Wとして、例えば、BGAチップ(ボールグリッドアレイを有するIC素子)を用いることができる。これによれば、ボンディングワイヤを用いずに、BGAチップのゲート制御信号の出力グリッドをスイッチング素子21U〜22Wのゲート電極G1、G2に直接的に接続できる。
図2および図3に示されるように、第4層の中心部分から上方に向けて、出力端子に相当する三相の出力バスバー61U、61V、61Wが配設されている。三相の出力バスバー61U、61V、61Wは、中心軸線CLの軸長方向に延在しており、その断面は中心角が120°弱の円弧形状になっている。三相の出力バスバー61U、61V、61Wは、三相の出力側電極板62U、62V、62Wを下側の端部に有している。各出力側電極板62U、62V、62Wは、径方向外向きに延伸されており、かつ径方向外側が展開されて周方向に拡がっている。
第4層は、主にこれらの出力側電極板62U、62V、62Wおよび負側スイッチング素子22U、22V、22Wで形成されている。図7は、インバータ装置1を構成する第4層の出力側電極板62U、62V、62Wおよび負側スイッチング素子22U、22V、22Wを下側から見た平面図である。図7は下から見た平面図であるので、相順が時計回りに反転している。
図示されるように、三相の出力側電極板62U、62V、62Wは、互いに同形同大であり、スイッチング素子21U〜22Wの正六角形よりも一回り大きな正六角形を円周方向に2個並べた形状とされている。そして、U相出力側電極板62Uは、第2層のU相正側電極板31UおよびU相負側電極板32Uの真上に配置される。同様に、V相出力側電極板62Vは、V相正側電極板31VおよびV相負側電極板32Vの真上に配置され、W相出力側電極板62Wは、W相正側電極板31WおよびW相負側電極板32Wの真上に配置される。
U相出力側電極板62Uの下面のU相負側電極板32Uの真上の位置に、U相負側スイッチング素子22Uが配設されている。同様に、V相出力側電極板62Vの下面のV相負側電極板32Vの真上の位置に、V相負側スイッチング素子22Vが配設されている。W相出力側電極板62Wの下面のW相負側電極板32Wの真上の位置に、W相負側スイッチング素子22Wが配設されている。これにより、三相の負側スイッチング素子22U、22V、22Wは、中心軸線CLの周りに120°ピッチで回転対称配置となる。
そして、出力側電極板62U、62V、62Wの下面に負側スイッチング素子22U、22V、22Wの裏面が接触するように配設することで、ボンディングワイヤを用いずに、コレクタ電極C2を出力側電極板62U、62V、62Wに直接的に接続している。なお。負側スイッチング素子22U、22V、22Wと、正側スイッチング素子21U、21V、21Wとでは、配設姿勢が上下逆になっている。また、広い接触面を介して、負側スイッチング素子22U、22V、22Wの発熱を出力側電極板62U、62V、62Wに良好に伝導させることができる。
さらに、第3層のゲート回路基板5の貫通孔53U〜54Wを通り中心軸線CLの軸長方向に延在する図略の直線電極を用いて、第2層と第4層の間を最短距離で接続している。具体的に、3つの貫通孔53U、53V、53Wを通る直線電極は、三相の正側スイッチング素子21U、21V、21Wのエミッタ電極E1と、出力側電極板62U、62V、62Wとを接続している。また、3つの貫通孔54U、54V、54Wを通る直線電極は、三相の負側電極板32U、32V、32Wと、三相の負側スイッチング素子22U、22V、22Wのエミッタ電極E2とを接続している。これにより、ボンディングワイヤが不要になっている。
第5層は、主に上側ヒートシンク45で形成されている。図8は、インバータ装置1を構成する第5層の上側ヒートシンク45の平面図である。上側ヒートシンク45は、下側ヒートシンク41と同一品であり、上下を逆にして配設されている。上側ヒートシンク45の内部空間46の冷却媒体は、下側ヒートシンク41と共通の強制循環手段により循環される。上側ヒートシンク45の径方向外縁47は、軸長方向下向きに延びている。図8に破線で示されるように、上側ヒートシンク45の下面には、6枚の熱伝導性絶縁物48が布設されている。6枚の熱伝導性絶縁物48は、下側ヒートシンク41の熱伝導性絶縁物44と同一品である。熱伝導性絶縁物48は、出力側電極板62U、62V、62Wから上側ヒートシンク45への熱伝導の役割、ならびに、出力側電極板62U、62V、62Wと上側ヒートシンクへ45との間の電気絶縁の役割を担っている。
図2に示されるように、下側ヒートシンク41の径方向外縁43と、上側ヒートシンク45の径方向外縁47とが接することで、電磁シールドボックスが形成されている。電磁シールドボックスは、正側スイッチング素子21U、21V、21Wおよび負側スイッチング素子22U、22V、22Wを覆い、スイッチング動作時に発生するサージ電圧を抑制する。
第1実施形態のインバータ装置1は、直流電源の正側端子に接続される三相の正側スイッチング素子21U、21V、21Wと、直流電源の負側端子に接続される三相の負側スイッチング素子22U、22V、22Wと、各相の正側スイッチング素子21U、21V、21Wと負側スイッチング素子22U、22V、22Wとを接続した途中にそれぞれ設けられた三相の出力端子(出力バスバー61U、61V、61W)と、三相の正側スイッチング素子21U、21V、21Wおよび三相の負側スイッチング素子22U、22V、22Wの導通状態を個別に制御するゲート回路基板5(制御回路)と、を備えたインバータ装置1であって、三相の正側スイッチング素子21U、21V、21Wは、中心軸線CLの周りに回転対称に配設され、三相の負側スイッチング素子22U、22V、22Wは、三相の正側スイッチング素子21U、21V、21Wの中心軸線CLの軸長方向に離間して配置され、かつ中心軸線CLの周りに回転対称に配設されている。
これによれば、正側スイッチング素子21U、21V、21Wを配設した第2層と、負側スイッチング素子22U、22V、22Wを配設した第4層とを中心軸線CLの軸長方向に離間して配置した層構造を採用できる。各層で、三相のスイッチング素子(21U、21V、21W)(22U、22V、22W)は中心軸線CLの周りに回転対称に配設されており、電気回路の平衡性は良好である。そして、スイッチング素子21U〜22Wと入出力バスバー(31、32、61U、61V、61W)との接続長は、一平面内に正負の全スイッチング素子を配設した従来の単層構造における接続長よりも短くできる。したがって、従来よりも浮遊インダクタンスを低減できる。結果として、電気回路の平衡性および浮遊インダクタンスの低減の作用により、サージ電圧およびノイズの発生を抑制できる。
また、サージ電圧の抑制に対応して耐電圧の余裕や発熱量の余裕が生じるので、スイッチング素子21U〜22Wを小形化でき、一層の低インダクタンス化が図れる。加えて、各層のスイッチング素子(21U、21V、21W)(22U、22V、22W)の個数は従来の6個を半減した3個でよいので、多層化で厚くなるとはいえ、インバータ装置1の小形化が可能である。
さらに、第1実施形態のインバータ装置1は、中心軸線CLの周りに同軸内外に配置されてそれぞれの一端部が直流電源の正側端子および負側端子に接続される内側バスバー31および外側バスバー32をさらに備え、内側バスバー31および外側バスバー32は、径方向外向きに展開された三相の電極板(31U、31V、31W)(32U、32V、32W)を他端部に有し、かつ、内側バスバー31の正側電極板31U、31V、31Wと外側バスバー32の負側電極板32U、32V、32Wとが周方向に交互に配置されており、内側バスバー31の正側電極板31U、31V、31Wは正側スイッチング素子21U、21V、21Wに接続され、外側バスバー32の負側電極板32U、32V、32Wは、負側スイッチング素子22U、22V、22Wに接続されている。
これによれば、電極板31U〜32Wをスイッチング素子21U〜22Wの至近まで延在させることができるので、接続長を確実に短くでき、浮遊インダクタンスの低減効果およびサージ電圧の抑制効果が顕著になる。
さらに、第1実施形態のインバータ装置1は、正側電極板31U、31V、31Wに熱伝導性絶縁物44を介して配設された下側ヒートシンク41をさらに備えた。
これによれば、正側スイッチング素子21U、21V、22Wの発熱は、広い面積で接触してかつ伝熱方向に薄い正側電極板31U、31V、31Wおよび熱伝導性絶縁物44を介して下側ヒートシンク41で放散されるので、冷却性能が優れている。
さらに、第1実施形態のインバータ装置1では、正側電極板31U、31V、31Wと正側スイッチング素子21U、21V、21Wとの接続は、他の部材を用いない直結接続とされ、負側電極板32U、32V、32Wと負側スイッチング素子22U、22V、22Wとの接続は、中心軸線CLの軸長方向に延在する直線電極を用いた接続とされている。
これによれば、正側電極板31U、31V、31W上に直接正側スイッチング素子21U、21V、21Wを配設し、かつ、負側電極板32U、32V、32Wからわずかに離間して負側スイッチング素子22U、22V、22Wを配設して直線電極により最短距離で接続することができる。したがって、従来使用していたボンディングワイヤは不要となり、浮遊インダクタンスの低減効果およびサージ電圧の抑制効果がさらに一層顕著になる。
さらに、第1実施形態のインバータ装置1では、制御回路のうち少なくとも三相の正側スイッチング素子21U、21V、21Wおよび三相の負側スイッチング素子22U、22V、22Wの導通状態を個別に制御するゲート回路基板5(ゲート制御信号の生成回路)は、三相の正側スイッチング素子21U、21V、21W(第2層)と三相の負側スイッチング素子22U、22V、22W(第4層)との間の第3層に配置されている。
これによれば、正側スイッチング素子21U、21V、21Wを配設した第2層、ゲート回路基板5(ゲート制御回路)の第3層、および負側スイッチング素子22U、22V、22Wを配設した第4層からなる多層構造を採用できる。したがって、スイッチング素子21U〜22Wとゲート回路基板5との間を接続する接続長が短くなって、サージ電圧の抑制に寄与できる。また、ゲート回路基板5を正側および負側スイッチング素子21U〜22Wと同じ平面上に配置しないので、3層の各層をコンパクトに形成でき、インバータ装置1のさらなる小形化に寄与できる。
さらに、第1実施形態のインバータ装置1は、中心軸線CLの軸長方向の両側にそれぞれ熱伝導性絶縁物44、48を介して配設され、電磁シールド材料を用いて形成されるとともに径方向外縁43、47が軸長方向に延びて正側スイッチング素子21U、21V、21Wおよび負側スイッチング素子22U、22V、22Wを覆う下側および上側ヒートシンク41、45をさらに備えた。
これによれば、電磁シールド材料を用いて形成された下側および上側ヒートシンク41、45で、正側および負側スイッチング素子21U〜22Wを覆うことができる。つまり、下側および上側ヒートシンク41、45は、放射エミッションを低減する電磁シールドボックスを兼ねる。したがって、簡易な構成でありながら、冷却性能および電磁シールド性能の両面で優れている。
次に、ノイズ低減用コンデンサ271〜276、281〜286を付加した第2実施形態のインバータ装置1Aについて、第1実施形態と異なる点を主に説明する。図9は、第2実施形態のインバータ装置1Aを構成する第1層の下側ヒートシンク41、ならびに第2層の電極板31U〜32Wおよび正側スイッチング素子21U、21V、21Wの平面図である。第2実施形態において、図9に示された以外の構成は、第1実施形態と同じである。
第2実施形態では、第2層で周方向に交互に配置された正側電極板31U、31V、31Wと負側電極板32U、32V、32Wとの間の6箇所に、それぞれノイズ低減用コンデンサ271〜276が橋設されている。例えば、U相正側電極板31UとU相負側電極板32Uとの間にコンデンサ271が橋設され、V相負側電極板32VとW相正側電極板31Wとの間にコンデンサ274が橋設されている。ノイズ低減用コンデンサ271〜276は、線間に発生するノーマルモードノイズを低減するものである。
また、正側電極板31U、31V、31Wおよび負側電極板32U、32V、32Wと、下側ヒートシンク41との間の6箇所に、それぞれノイズ低減用コンデンサ281〜286が橋設されている。例えば、U相正側電極板31Uと下側ヒートシンク41との間にコンデンサ281が橋設され、V相負側電極板32Vと下側ヒートシンク41との間にコンデンサ284が橋設されている。前述したように下側ヒートシンク41はフレームグラウンドに接地されており、したがって、ノイズ低減用コンデンサ281〜286は対地間に発生するコモンモードノイズを低減するものである。合計12個のノイズ低減用コンデンサ271〜276、281〜286は、橋設する離間距離が小さいので、ボンディングワイヤ無しで直接的に実装されている。
第2実施形態のインバータ装置1Aでは、正側電極板31U、31V、31Wと負側電極板32U、32V、32Wとの間の6箇所、ならびに、正側電極板31U、31V、31Wおよび負側電極板32U、32V、32Wと下側ヒートシンク41との間の6箇所に、それぞれノイズ低減用コンデンサ271〜276、281〜286が接続されている。
これによれば、ノーマルモードノイズやコモンモードノイズを低減するためのノイズ低減用コンデンサ271〜276、281〜286をボンディングワイヤ無しで直接実装でき、浮遊インダクタンスが極めて小さくなる。したがって、コンデンサ容量値および浮遊インダクタンス値から定まる自己共振周波数が増加して伝導エミッションが低減され、放射エミッションが抑制されるので、効果的にノイズを低減できる。
次に、逆方向の整流機能を有する第3実施形態のインバータ装置1Bについて、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。図10は、第3実施形態のインバータ装置1Bの回路図である。図1の第1実施形態の回路図と比較すれば分かるように、図10の第3実施形態の回路図では、6個の整流素子23U〜24Wおよびコンデンサ7が追加されている。
三相の正側整流素子23U、23V、23Wは、それぞれ正側スイッチング素子21U、21V、21Wに並列接続されている。U相正側整流素子23UのカソードK1は、U相正側スイッチング素子21Uのコレクタ電極C1に接続され、アノードA1は、U相正側スイッチング素子21Uのエミッタ電極E1に接続されている。同様に、三相の負側整流素子24U、24V、24Wは、それぞれ負側スイッチング素子22U、22、22Wに並列接続されている。U相負側整流素子24UのカソードK2は、U相負側スイッチング素子22Uのコレクタ電極C2に接続され、アノードA2は、U相負側スイッチング素子22Uのエミッタ電極E2に接続されている。V相およびW相も同様の回路構成であるので、説明は省略する。
コンデンサ7は、正側スイッチング素子21U、21V、21Wおよび負側スイッチング素子22U、22、22WとバッテリBat(直流電源)との間に並列に接続されている。第3実施形態では、コンデンサ7として、本願出願人が特願2012−015571号に出願済みの中空筒型コンデンサ7を用いる。
図11は、第3実施形態のインバータ装置1Bの構成を模式的に示した断面図である。インバータ装置1Bを5層構造で構成する点は第1実施形態と同様である。各整流素子23U〜24Wは、スイッチング素子21U〜22Wと比較すると小形でよい。したがって、第2層の正側スイッチング素子21U、21V、21Wの傍らにそれぞれ正側整流素子23U、23V、23Wを配設し、第4層の負側スイッチング素子22U、22V、22Wの傍らにそれぞれ負側整流素子24U、24V、24Wを配設する。また、中空筒型コンデンサ7は、第1層の下側ヒートシンク41の軸長方向の隣に配設する。
中空筒型コンデンサ7は、内周筒部711および該内周筒部711の一方の端部から外周側に延在する一側面部712を有する一方極接続部71と、内周筒部711と中心軸線CL上に同軸に配置された外周筒部721および該外周筒部721の他方の端部から内周側に延在する他側面部722を有する他方極接続部72と、を備えている。そして、一方極接続部71に接続される一方電極板と、他方極接続部72に接続される他方電極板とが対向して環状空間内に静電容量部73が高密度に収容されている。中空筒型コンデンサ7に関しては、出願済みの明細書に開示しているので、詳細な説明は省略する。
図11に示されるように、第3実施形態で、内側バスバー31Bと正側電極板31U、31V、31Wとは別体とされ、外側バスバー32Bと負側電極板32U、32V、32Wとは別体とされている。そして、中空筒型コンデンサ7の内周筒部711の一端(図11の上側)が正側電極板31U、31V、31Wに接続され、内周筒部711の他端(図11の下側)が内側バスバー31Bに接続されている。また、他側面部722が負側電極板32U、32V、32Wに接続され、外周筒部721が外側バスバー32Bに接続されている。これらの接続は、最短距離で行われている。内側バスバー31Bおよび外側バスバー32Bは、図略のバッテリBatに接続されている。
第3実施形態のインバータ装置1Bにおいて、バッテリBatから入力された直流電力を周波数可変の交流電力に変換して出力する電力変換機能は一般的なものである。また、逆方向の整流機能を使用する場合には、6個全てのスイッチング素子21U〜22Wを断状態として、合計6個の整流素子23U〜24Wにより三相全波整流回路を構成する。これにより、出力バスバー61U、61V、61Wに入力された三相交流電力を直流電力に変換し、中空筒型コンデンサ7で平滑して、バッテリBatを充電できる。
第3実施形態のインバータ装置1Bは、正側スイッチング素子21U、21V、21Wおよび負側スイッチング素子22U、22V、22Wに並列に整流素子23U〜24Wをさらに備え、正側スイッチング素子21U、21V、21Wおよび負側スイッチング素子22U、22V、22WとバッテリBat(直流電源)との間に並列にコンデンサ7をさらに備え、コンデンサ7は、特願2012−015571号に開示した中空筒型コンデンサ7である。
これによれば、整流素子23U〜24Wおよび中空筒型コンデンサ7をさらに備えることで、逆方向の整流平滑作用を付与できる。したがって、発電モードで動作可能なモータジェネレータの電源用に好適であり、インバータ装置1Bは、モータジェネレータが発電モード時に出力する交流電力を整流してバッテリBatを充電できる。また、整流素子23U〜24Wおよび中空筒型コンデンサ7を含めて回転対称形状を維持でき、加えて、接続長も短くて済むので、サージの抑制効果を維持できる。
次に、第4実施形態のインバータ一体形モータ装置10について説明する。図12は、第4実施形態のインバータ一体形モータ装置10を模式的に示した断面図である。インバータ一体形モータ装置10は、三相同期モータ8と第3実施形態のインバータ装置1Bとが、大きな円筒状のハウジング89内で中心軸線CL上に配置され、一体化されて構成されている。
三相同期モータ8は、内周側のロータ81および外周側のステータ85で構成されている。ロータ81は、ロータコア82、出力軸83、および図略の磁極などで構成されている。ロータコア82は、多数枚の環状の電磁鋼板が中心軸線CL方向に積層されて円筒状に形成されている。出力軸83は、ロータコア82の円筒状の中心に挿通されて固定され、ロータコア82と一体的に回転する。出力軸83の前方側および後方側の2箇所は、ハウジング89側の軸受部材891、892により回転自在に軸承されている。さらに、ロータコア82の外周面寄りには、周方向に等ピッチでN極およびS極が交互に配置されるように磁極が埋め込まれている。
ステータ85は、ロータ82の周りにわずかな間隙を有してハウジング89に固設されている。ステータ85は、ステータコア86および電機子巻線88などで構成されている。ステータコア86は、ロータコア82側よりも大径の多数枚の環状の電磁鋼板が積層されて円筒状に形成されている。ステータコア86は、周方向に等ピッチで配置されて中心方向に突出する磁極ティース87を有している。電機子巻線88は、各磁極ティース87の周りのスロットに導体が巻回されて形成されている。
インバータ装置1Bは、一体化のために出力バスバー64が変形されている。すなわち、図11に示される第3実施形態で、出力バスバー61U、61V、61Wは、上側ヒートシンク45の中央の中空部分を通って引き出されていた。これに対して、図12に示される第4実施形態で、出力バスバー64は、上側ヒートシンク45Bの外周寄りに設けられた貫通孔を通り、絶縁を確保しつつ引き出されている。これにより、電機子巻線88への最短距離での接続が実現されている。また、中空筒型コンデンサ7を含むインバータ装置1Bは、符号略の絶縁物を用いて、ハウジング89に絶縁取り付けされている。
第4実施形態のインバータ一体形モータ装置10は、ハウジング89に中心軸線CL回りに回転可能に軸承されたロータ81、および三相の電機子巻線88がロータ81の回りに配置されてハウジング89に固定されたステータ85を備えた三相同期モータ8と、第3実施期待のインバータ装置1Bと、が中心軸線上CLに配置され一体化されている。
これによれば、三相同期モータ8およびインバータ装置1Bを中心軸線CLの回りに回転対称に構成できるので、電気回路の平衡性が良好になる。また、三相同期モータ8とインバータ装置1Bとを一体化することで、接続長を短くして浮遊インダクタンスを低減できる。この2点により、サージ電圧の発生を抑制できる。さらに、一体化によるモータ装置10の小形化が可能となる。
次に、直流電源電圧の昇圧機能を有する第5実施形態のインバータ一体形モータ装置11について、第4実施形態と異なる点を主に説明する。図13は、第5実施形態のインバータ一体形モータ装置11の回路図である。第5実施形態では、直流電源となるバッテリBatから負荷となる三相同期モータ8までの間に、入力コンデンサ7D、昇圧用リアクトル9、昇圧駆動回路96、昇圧用コンデンサ7E、およびインバータ装置1Dが接続されている。
入力コンデンサ7Dおよび昇圧用コンデンサ7Eには、第4実施形態で説明した中空筒型コンデンサ7の構造を適用する。入力コンデンサ7Dおよび昇圧用コンデンサ7Eは、必要とされる静電容量の大きさに応じて、適宜設計することができる。入力コンデンサ7Dの正側端子7Dpは、内側バスバー31Bを用いてバッテリBatの正極に接続され、負側端子7Dnは、外側バスバー32Bを用いてバッテリBatの負極に接続されている。さらに、入力コンデンサ7Dの正側端子7Dpは、昇圧用リアクトル9の一方端子9pに接続されている。
昇圧駆動回路96は、直列接続された2個のスイッチング素子961、962、および2個の整流素子963、964で構成されている。2個のスイッチング素子961、962としてGIBT素子を例示でき、これに限定されない。2個の整流素子963、964は、それぞれスイッチング素子961、962に並列接続されている。昇圧用リアクトル9の他方端子9nは、スイッチング素子961のエミッタ電極E5およびスイッチング素子962のコレクタ電極C6に接続されている。入力コンデンサ7Dの負側端子7Dnは、スイッチング素子962のエミッタ電極E6に接続されている。スイッチング素子961のコレクタ電極C5は昇圧用コンデンサ7Eの正側端子7Epに接続され、スイッチング素子962のエミッタ電極E6は昇圧用コンデンサ7Eの負側端子7Enに接続されている。
そして、昇圧用コンデンサ7Eの正側端子7Epおよび負側端子7Enがインバータ装置1Dに接続されている。インバータ装置1Dは、回路構成が第1実施形態のインバータ装置1に類似し、さらに第3実施形態で説明した整流素子23U〜24Wを備えている。インバータ装置1Dの三相の出力バスバー65は、三相同期モータ8の電機子巻線88に接続されている。
昇圧駆動回路96で、2個のスイッチング素子961、962を開閉制御することにより、昇圧機能が生じる。これにより、バッテリBatの直流電源電圧よりも高い電圧をインバータ装置1Dに供給できる。この昇圧機能は公知のものであるので、スイッチング素子961、962の制御方法ならびに昇圧動作の詳細な説明は省略する。また、第5実施形態のインバータ一体形モータ装置11は、逆方向の整流平滑機能も兼ね備えている。
図14は、第5実施形態のインバータ一体形モータ装置11を模式的に示した断面図である。図示されるように、内側バスバー31Bおよび外側バスバー32Bに続いて、入力コンデンサ7D、昇圧用リアクトル9、昇圧用コンデンサ7E、昇圧駆動回路96、およびインバータ装置1Dが記載した順番に配置されている。これらの構成要素7D、9、7E、96、1Dは全て、中心軸線CLの周りに回転対称形状に構成されている。また、これらの構成要素7D、9、7E、96、1Dの間は、同軸内側において正側の接続が最短距離で行われ、同軸外周側において負側の接続が最短距離で行われている。また、これらの構成要素7D、9、7E、96、1Dは全て、符号略の絶縁物を用いて、ハウジング89に絶縁取り付けされている。
第5実施形態では、昇圧用リアクトル9として、本願出願人が特願2013−092172号に出願済みの中空筒型リアクトル装置9を用いる。中空筒型リアクトル装置9は、絶縁被覆された導体を巻回したコイルを中心軸線CLの周りに有するインダクタンス素子91を往路に備え、リターン導体92を復路に備えている。インダクタンス素子91は、中心軸線CLが中空の筒状または環状であり、リターン導体92は、中心軸線CLを共通とする筒状であってインダクタンス素子91の同軸外周側に配置されている。中空筒型リアクトル装置9に関しては、出願済みの明細書に開示しているので、詳細な説明は省略する。
また、インバータ装置1Dの構成は、次の3点で第1実施形態と異なっている。すなわち、第5実施形態に用いるインバータ装置1Dは、内側バスバー31および外側バスバー32を備えず、別体の電極板31U〜32Wを備えている。また、インバータ装置1Dの下側ヒートシンク41Dおよび上側ヒートシンク45Dは、延在する周方向外縁43、47を有さず、代わりにこのスペースを用いて負側の接続が行われている。また、第4実施形態と同様に、インバータ装置1Dの三相の出力バスバー65は、上側ヒートシンク45Dの外周寄りに設けられた貫通孔を通り、絶縁を確保しつつ引き出されている。三相同期モータ8は、第4実施形態と同一品である。
第5実施形態のインバータ一体形モータ装置11は、正側スイッチング素子21U、21V、21Wおよび負側スイッチング素子22U、22V、22WとバッテリBat(直流電源)との間に昇圧用コンデンサ7Eおよび昇圧用リアクトル9をさらに備え、昇圧用コンデンサ7Eは、特願2012−015571号に開示した中空筒型コンデンサであり、昇圧用リアクトル9は、特願2013−092172号に開示した中空筒型リアクトル装置9である。
これによれば、構成要素としてインバータ装置1Dに中空筒型コンデンサ(入力コンデンサ7D、昇圧用コンデンサ7E)および中空筒型リアクトル装置9を組み合わせることで、昇圧機能を付与できる。したがって、例えば車載用に好適であり、車載のバッテリBatの直流電源電圧を昇圧して三相同期モータ8を駆動でき、また、バッテリBatの消耗などで直流電源電圧が変動しても安定して三相同期モータ8を駆動できる。さらに、全ての構成要素を含むモータ装置11全体を回転対称形状に構成できるので、電気回路の平衡性が極めて良好になる。また、構成要素間を接続する接続長を短くして浮遊インダクタンスを低減できる。この2点により、モータ装置11全体で総合的にサージ電圧の発生を抑制できる。
なお、各実施形態において、スイッチング素子21U〜22Wは正六角形である必要はなく、市販の汎用素子を中心軸線CLの周りに三相回転対称に配置してもよい。また、スイッチング素子21U〜22Wの発熱が少なく温度上昇が小さい回路構成では、下側ヒートシンク41および上側ヒートシンク45を省略した3層構造としてもよい。さらに、第4および第5実施形態で、回転対称形状を逸脱しない範囲で、各構成要素の配置を変更してもよい。例えば、第5実施形態で、入力コンデンサ7Dおよび中空筒型リアクトル装置9を軸長方向に長くかつ径方向に薄く形成して、中空筒型リアクトル装置9の外周側に入力コンデンサ7Dを配置してもよい。本発明は、その他にも様々な応用や変形などが可能である。