以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図22は本実施形態に係る検眼装置の構成について説明する図である。
<概要>
本発明の実施形態に係る検眼装置の概要について説明する。本実施形態に関わる検眼装置1(図1参照)は、視標呈示ユニット3と、自覚式眼屈折力測定ユニット8(以下、測定ユニット8と略す)と、を備える。検眼装置1は、視標呈示ユニット3を用いて被検眼に遠用検査用光路にて視標を呈示し、被検眼の遠用視機能を検査する。測定ユニット8は、検査窓81に光学素子(例えば、矯正レンズ)を切り換え配置する左右一対のレンズ室ユニット80を有する。例えば、検眼装置1は、測定ユニット8の検査窓81を覗く被検眼に検査視標を呈示し、被検眼の遠用視機能を検査する。
また、検眼装置1は、検眼テーブル(検眼テーブルユニット)2と、保持手段(保持ユニット)10と、を有する。保持ユニット10は、視標呈示ユニット3を保持すると共に、検査窓81が基準軸L1と同一となる高さに位置するように測定ユニット8を保持する。例えば、保持ユニット10は、視標呈示ユニット3を検眼テーブルユニット2上で保持する。
なお、視標呈示ユニット3は、保持ユニット10によって検眼テーブルユニット2に保持される構成に限定されない。例えば、保持ユニット10が壁掛けタイプの構成を備え、視標呈示ユニット3が壁に設置される構成が挙げられる。
視標呈示ユニット3(図4参照)は、凹面ミラー50と、視標を表示するディスプレイ45と、を有する。視標呈示ユニット3は、ディスプレイ45から出射された視標光束を凹面ミラー50で反射させて、光学的に所定の遠用検査距離に視標を呈示する。例えば、視標呈示ユニット3は、ディスプレイ45の画面に対する法線方向(図7参照)を凹面ミラー50の光軸O1に対して傾斜させて配置され、視標光束を凹面ミラー50の光軸O1に対してずらして入射させる。
例えば、ディスプレイ45としては、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)等が用いられる。
例えば、凹面ミラー50(図4参照)は、被検眼が正面を見るときの正面方向の基準軸L1上に配置される。例えば、凹面ミラー50は、筺体5に収納される。
例えば、筺体5は、基準軸L1で凹面ミラー50の前面に配置された呈示窓(例えば、透明パネル52)を有し、測定ユニット8の正面方向に配置されている。透明パネル52は、ディスプレイ45からの視標光束を透過し、凹面ミラー50で反射された視標光束を再び透過して筐体5外に射出する。
このような構成によって、視標呈示ユニット3は、視標光束の光量損失が大きなビームスプリッタを介さずに視標を呈示する構成であるため、大きな光量を発するディスプレイを使用しなくても、視力検査等で必要とされる輝度を確保した検査を的確に行える。また、筺体5はビームスプリッタを有しないため、筐体5の薄型が図られ、より省スペースな検眼装置を実現できる。
以下、各構成の具体的な説明をする。以下の説明では、ディスプレイ45、透明パネル52、光路切換ユニット60、自覚式眼屈折力測定ユニットの順に説明する。なお、以下の構成は、適宜組み合わせが可能であるとともに、独立した構成として実施してもよい。
<ディスプレイ>
図4に例示されるディスプレイ45は、筐体の外部で基準軸L1外に配置される。また、ディスプレイ45は、被検眼が測定ユニット8(図1参照)の検査窓81を覗いたときの所定の視野角の範囲外に配置されている。
例えば、ディスプレイ45は、筺体5の外部に配置され、且つディスプレイ45より視標光束を筺体5外部から透明パネル52を介して凹面ミラー50に向かわせる位置に配置されている。さらにいうと、例えば、ディスプレイ45は、測定ユニット8の周辺に配置され、被検眼側より凹面ミラー50に向けて、視標光束を出射する。また、例えば、ディスプレイ45は、測定ユニット8(図1参照)の額当て82の周辺に配置される。さらにいうと、例えば、ディスプレイ45は、測定ユニット8の額当て82の上方位置に配置される。
このような、ディスプレイ45の配置によって被検者に対し広い視野を確保することができる。そして、被検者は透明パネル52を通して筐体5の内部に遠用視標を観察する際に、保護パネル51より被検者側に余分な構造物であるディスプレイ45を見る事がなくなる。これによって、被検者がディスプレイ45を注視してしまうことが無くなり、遠用検査時に視標以外の構造物を見ることによる被検眼の調節の介入を軽減することができる。そして、精度よく視機能検査を行うことができる。
なお、ディスプレイ45は、測定ユニット8の検査窓81を覗いたときの所定の視野角の範囲外に配置されていなくてもよい。例えば、ディスプレイ45は、筺体5の外部に配置され、且つディスプレイ45より視標光束を筺体5外部から透明パネル52を介して凹面ミラー50に向かわせる位置であって、被検者の額付近に配置されている構成であればよい。このように、ディスプレイ45を被検者の額付近に配置することにより、視標光束を凹面ミラー50に向けて出射した際に、凹面ミラー50への入射角と凹面ミラー50から反射される際の反射角が小さくしている。このため、視標の歪を小さくすることができる。
<透明パネル>
図7に例示される筐体5に設けられた透明パネル52は、透明パネル52の前面の法線方向が基準軸L1に対して傾斜した角度で配置される。なお、透明パネル52の傾斜角度は、ディスプレイ45から出射され、透明パネル52の前面で反射される反射光が所定位置の被検眼から外れる方向に向かうように設定されている。
これによって、透明パネル52で反射されるディスプレイ45の強い光が被検眼に入射することによって、被検者の視標観察の妨げとなる問題を軽減することができる。また、被検者の後方の背景の外乱光及び検眼装置1の上方の外乱光が透明パネル52で反射して被検眼に入射することによって、被検者の視標観察の妨げとなる問題を軽減することができる。
例えば、さらに、筐体5には、凹面ミラー50の前面側で透明パネル52の周囲に遮蔽部材(遮蔽部53)が配置され、遮蔽部53に囲まれた透明パネル52が、被検眼が筐体5内部に視標を観察するための呈示窓を構成するようにしてもよい。遮蔽部53を設けることによって、筺体5の内部構造が見えにくくなる。もちろん、呈示窓には、透明パネル52のみで構成され、遮蔽部53が設けられていない構成でもよい。
また、例えば、透明パネル52からディスプレイ45までの間の光路の上部を覆う上方遮蔽部材(遮蔽カバー6)を設ける構成としてもよい。また、例えば、透明パネル52からディスプレイ45までの間の光路の側方を覆う側方遮蔽部材(遮蔽カバー6)を備える構成としてもよい。これらのような遮蔽部材の構成を設けることによって、蛍光灯等による外乱光が装置内の光学部材に入射することを抑制する効果を備える。
なお、本実施形態では、遮蔽カバー6が上方遮蔽部材と側方遮蔽部材を兼用する構成であるが、それぞれ別部材によって、構成されてもよい。また、本実施例上方遮蔽部材と側方遮蔽部材の一方のみを設ける構成としてもよい。
<光路切換手段>
なお、検眼装置1は、遠用検査用光路と,凹面ミラー50(図4参照)の反射を介さずに被検眼へディスプレイ45からの視標光束を導光する近用検査用光路と,を切り換える光路切換手段と、ディスプレイ45の画面の傾斜角度を遠用検査と近用検査とで変更する角度変更手段と、を備える。
角度変更手段は、光路切換手段によって、遠用検査用光路と近用検査用光路とで切り換えた時に、被検眼がディスプレイ45の画面を見た場合に、基準軸L1に対して画面が略垂直に位置する画面として観察できるように、ディスプレイ45の画面の傾斜角度を変更する。
例えば、光路切換手段は、図4、14に示すように被検眼と凹面ミラー50と間に挿脱可能な反射部材(反射ミラー)62を有し、被検眼と凹面ミラー50との間に反射部材62を挿脱することにより、遠用検査用光路と近用検査用光路とを切り換える光路切換ユニット60の構成が挙げられる。例えば、反射部材62としては、平面ミラー、凸面ミラー、凹面ミラーが挙げられる。この場合、例えば、角度変更手段は、近用検査用光路への切換時には、ディスプレイ45の画面に対する法線方向と,基準軸L1が反射部材62で反射された軸の方向と,が略一致するように、ディスプレイ45の画面の傾斜角度を変更する。また、遠用検査用光路への切換時には、ディスプレイ45の画面に対する法線方向と,基準軸L1が凹面ミラー50で反射された軸の方向と,が略一致するように、ディスプレイの画面の傾斜角度を変更する。
以上のようにして、光路切換手段は、ディスプレイからの視標光束を反射して被検眼に導光する反射部材を被検眼と凹面ミラーとの間の光路に挿脱させるか、又はディスプレイを被検眼と凹面ミラーとの間の光路に移動する移動手段を備える構成により光路切換を行う。これによって、遠用検査光路と近用検査用の光路との切り換えが容易に可能となる。また、光路の切り換えに伴って、ディスプレイ45の傾斜角度が変更されるため、光路の切り換えを行った場合であっても、歪みの軽減された視標を被検眼に投影することができる。これによって、視標を表示するディスプレイを使用した構成で、的確な検査が行うための視標呈示が行える。
また、変容例として、例えば、図4に例示される光路切換手段60が、反射部材の傾斜角度を変更するための反射部材用傾斜角度変更手段を備える構成が挙げられる。この場合、光路切換手段60は、被検眼と凹面ミラー50と間に反射部材62を挿入した状態で、反射部材62を基準軸L1上で移動させ、且つ、反射部材用傾斜角度変更手段によって、反射部材62の傾斜角度を変更し、近用検査用光路の近用検査距離を変化させる。また、角度変更手段は、ディスプレイ45の画面に対する法線方向と,基準軸L1が反射部材62で反射された軸の方向と,が略一致するように、ディスプレイ45の画面の傾斜角度を変更する。これによって、遠用検査及び近用検査のみならず、中距離用の検査も可能である。
<自覚式眼屈折力測定ユニット>
図1に例示される測定ユニット8は、視機能検査に使用するか否かに応じて、被検眼の眼前の検査位置と、退避位置と、で移動される。
例えば、保持ユニット10には、支持手段(例えば、支持アーム20)が設けられている。支持手段は、測定ユニット8を被検眼の眼前の検査位置と、退避位置と、の間で移動可能に支持する。
例えば、図4に例示される保持ユニット10は、第1保持部材(支柱)10a、支柱10aから延びた第2保持部材(上部支柱)10b、とで構成される。支柱10aは、検査位置に置かれた測定ユニット8に対して、所定距離離れた位置に筐体5を保持する。上部支柱10bは、支柱10aから延びており、ディスプレイ45を保持するために筐体5の上方から被検者側に延びた構成となっている。そして、支持手段は、上部支柱10bに連結されている。
例えば、測定ユニット8を検査位置と、退避位置と、の間で移動可能に支持するための、支持手段は、支持アーム20、支持部材(例えば、支柱)を用いるものが挙げられる。
例えば、支持手段に支持アーム20を用いる場合、支持アーム20が上部支柱10bに連結され、連結位置Oを中心に旋回可能な構成が挙げられる。そして、支持アーム20は、支持アーム20の回旋によって、測定ユニット8を検査位置と退避位置との間で移動可能に支持する。これによって、装置のコンパクト化に繋がり、より省スペース化をはかることができる。
なお、本実施形態において、例えば、図10に例示される連結位置Oは検眼装置1の中心軸C上から紙面に対して上下方向にずらした位置で連結されるとよりよい。このように、連結位置Oを検眼装置1の中心軸Cからずらした位置で連結することによって、より小さな可動範囲にて、測定ユニット8を移動させることが可能となる。これによって、測定ユニット8を移動させる際に、可動範囲が小さいため、検者に接触する可能性が少なくなる。
また、支持部材を用いる場合、支持部材は上下移動手段(例えば、周知のテレスコピックパイプ機構)を備えた支持部材であって、上部支柱10bに取り付けられる。測定ユニット8を検査位置より上方の退避位置に移動させる構成によって、測定ユニット8を検査位置と退避位置との間で移動可能にする。これによって、測定ユニット8を移動させる際に、測定ユニット8が検者の顔を横切らなくなるため、検者に接触する可能性を少なくできる。
なお、本実施形態においては、測定ユニット8と連結した支持手段が保持ユニット10を介して視標呈示ユニット3に設けられる構成としたがこれに限定されない。例えば、保持ユニット10を介すことなく、支持手段が視標呈示手段3に連結される構成としてもよい。
<両眼視機能検査>
両眼視機能検査において、ディスプレイ45は、被検眼両眼の視機能を検査するための右眼用視標(例えば、201a、202a、203a)と左眼用視標(例えば、201c、202b、203b)を互いに分離された表示領域に表示する(例えば、図11、図12参照)。ディスプレイ45としては、例えば、一定の偏光軸を持つ直線偏光を出射するディスプレイが用いられる。なお、右眼用視標及び左眼用視標は、2次元的に配列された画素列において、水平方向及び垂直方向に連続した画素を用い、より解像度の高い画像を表示することが好ましい。
偏光光学部材55は、右眼用視標の表示領域に対応して配置される右眼用光学領域(例えば、第1光学領域55a参照)と、左眼用視標の表示領域に対応して配置される左眼用光学領域(例えば、第2光学領域55b参照)と、が互いに分離して配置される。例えば、右眼用光学領域は、同機能の光学部材で連続的に構成され、右眼用視標を形成する表示領域全体に関して、水平方向及び垂直方向に連続する画素列全体を覆うように配置される。また、左眼用光学領域は、同機能の光学部材で連続的に構成され、左眼用視標を形成する表示領域全体に関して、水平方向及び垂直方向に連続する画素列全体を覆うように配置される。
これにより、右眼用光学領域と左眼用光学領域とがディスプレイ45の有する画素に対応して、水平方向あるいは垂直方向にライン状かつ交互に配置された従来の偏光光学部材55に対して、容易または簡単な構成でつくることができる。
偏光光学部材55は、ディスプレイ45に表示された右眼用視標と左眼用視標からの光を、互いに直交する偏光軸の光に変換する。
両眼視機能検査時には、偏光光学部材55からの互いに直交する偏光軸にそれぞれ一致した偏光軸を持つ偏光フィルタ(例えば、60R,60L)が被検眼の左右の眼前にそれぞれ配置されて使用される。
偏光光学部材55としては、例えば、右眼用光学領域と左眼用光学領域の一方には、ディスプレイ45に表示された右眼用視標と左眼用視標からの光の一方の偏光軸方向を回転させる第1の1/2λ板が配置される。1/2λ板は、右眼用視標と左眼用視標からの光の他方の偏光軸方向と直交させるために用いられる。
さらに、右眼用光学領域と左眼用光学領域の他方には、ディスプレイ45に表示された右眼用視標と左眼用視標からの光の他方の偏光軸方向を回転させる第2の1/2λ板が配置される。第2の1/2λ板は、右眼用視標と左眼用視標からの光の他方の偏光軸方向と直交させるために用いられる。第1の1/2λ板と第2の1/2λ板は、例えば、偏光軸が互いに直交する関係となるように配置される。
さらに、ディスプレイ45は、右眼用視標と前記左眼用視標の表示領域を変更可能である。この場合、好ましくは、右眼用視標と左眼用視標の表示領域の変更に対応して、右眼用光学領域と左眼用光学領域の形成位置を変更するための構成(形成位置変更手段)が設けられる。
形成位置変更手段としては、例えば、右眼用視標と左眼用視標の表示領域の変更に対応した複数の異なる偏光光学部材が設けられ、表示領域の変更に応じて切換配置される(図8参照)。なお、図8のような回転機構に限定されるものではなく、偏光光学部材55を保持するためのホルダを設け、ホルダに配置される偏光光学部材55を変更するようにしてもよい。
さらに、ディスプレイは、右眼用視標と左眼用視標とは分離された表示領域に、被検眼の両眼に視認されるための両眼用視標(例えば、201b、203c)を表示してもよい。この場合、好ましくは、偏光光学部材55には、さらに、両眼用視標の表示領域に対応して配置される両眼用光学領域((例えば、第3光学領域55c参照))が、右眼用光学領域と左眼用光学領域とは分離して配置される。例えば、両眼用光学領域は、同機能の光学部材で連続的に構成され、両眼用視標を形成する表示領域全体に関して、水平方向及び垂直方向に連続する画素列全体を覆うように配置される。そして、両眼用光学領域はディスプレイ45に表示された両眼用視標からの光を円偏光に変換する。
またディスプレイから偏光フィルタまでの光路に対して偏光光学部材55を挿脱するための構成(挿脱手段)を設けるようにしてもよい。挿脱手段は、被検眼両眼の視機能を検査する際に偏光光学部材55を光路に挿入し、通常の片眼検査を行う際に偏光光学部材55を光路から退避させる等のために用いられる。挿脱手段としては、例えば、図8のような回転機構が考えられる、また、偏光光学部材55を保持するためのホルダを設け、ホルダに偏光光学部材55に配置したり、外したりするような構成であってもよい。
なお、両眼視機能検査におけるディスプレイは、据置型のディスプレイに限定されない。例えば、ディスプレイは、被検者の手によって把持可能な手持型ディスプレイ(例えば、図17に示す携帯端末451のディスプレイ452)であって、近用検査距離にて被検眼の両眼視機能検査を行うための右眼用視標と左眼用視標を互いに分離された表示領域に表示可能なディスプレイであってもよい。
このような手持型ディスプレイの場合、例えば、偏光光学部材55は、ディスプレイの前面に装着可能である。
なお、偏光光学部材55の被検眼側に1/4λ板を配置し、右眼用視標からの光と左眼用視標からの光を円偏光に変換するようにしてもよい。この場合、右眼用視標からの光と左眼用視標は、互いに回転方向が逆の円偏光となる。この場合、偏光フィルタのディスプレイ側に−1/4λ板が設けられ、互いに直交する直線偏光に戻した後に、偏光フィルタに入射される。
このようにすれば、手持式視標で偏光フィルタの偏光軸に対して視標からの光の偏光軸がずれやすい場合には、有利である。もちろん、据置型視標であっても、一定の効果が得られる。
なお、偏光光学部材55は、ディスプレイの表示画面の近傍に配置されることが好ましい。これは、片眼で、左眼用視標と右眼用視標の両方が視認されない程度の近傍距離に配置するのが好ましい。
より好ましくは、左眼用視標と右眼用視標の境界と、右眼用光学領域と左眼用光学領域の合わせ目がずれない程度の近傍距離にて設定される。もちろん、ディスプレイの表示画面と偏光光学部材55が接触した状態であってもよい。
<実施例>
以下、本発明の形態を図面に基づいて説明する。図1、2は本発明に係る検眼装置の外観図を示している。図3は、検眼装置1を図1上のX方向から観察した検眼装置1の正面図を示している。なお、図3の検眼装置の正面図は、自覚式眼屈折力測定ユニット8を退避位置に配置した場合の検眼装置1を示している(詳細は後述する)。図4は、検眼装置1を図3のA−A面で切断した際の装置の断面図を示している。なお、図4では、測定ユニット8については省略されている。
検眼装置1は、検眼テーブルユニット2と、視標呈示ユニット3と、自覚式眼屈折力測定ユニット8(以下、測定ユニット8と略す)と、を備える。検眼テーブルユニット2は、テーブル2aと、テーブル2aを上下移動するための上下駆動ユニット2bと、テーブル2aの上下移動の指示信号を入力する高さ調節スイッチ2cと、を備える。上下駆動ユニット2bはモータ等の駆動源を備え、駆動源がスイッチ2cから入力される指示信号によって駆動される。
視標呈示ユニット3は、視標を表示するディスプレイ45を有する視標表示部4と、凹面ミラー50が収納された筺体5と、外観カバー(遮蔽カバー)6と、後述する光路切換ユニット60と、を備える。視標呈示ユニット3は、テーブル2aに立設した支柱を有する保持ユニット10によって保持されている。好ましい保持ユニット10の例として、テーブル2aの端に立設した第1保持部材(支柱)10aに筺体5が取り付けられ、保持されている。保持ユニット10は、支柱10aから延びており、ディスプレイ45を保持するために筐体5の上方から被検者側(筺体5の前側)に延びた第2保持部材(上部支柱)10bを有し、上部支柱10bの前方部分に視標表示部4が取り付けられている。
また、測定ユニット8は測定位置と退避位置との間で移動可能に保持ユニット10に保持されている。好ましい例として、測定ユニット8は、支持部材(例えば、支持アーム)20を介して測定位置と退避位置との間で移動可能に上部支柱10bに支持されている。視標呈示ユニット3、検眼テーブルユニット2及び測定ユニット8は、一体型の検眼装置1を構成する。しかし、検眼装置1は、測定ユニット8を備えない構成とされても良い。
図2は測定ユニット8を被検者側から見たときの概略構成図である。測定ユニット8は、被検眼に屈折力を付与する種々の光学素子(球面レンズ、円柱レンズ、補助レンズ等)が左右の検査窓81に切換え配置される左右一対のレンズ室ユニット80を備える。レンズ室ユニット80の内部にはレンズディスク71が回転可能に保持されている。レンズディスク71には、多数の光学素子(球面レンズ、円柱レンズ、分散プリズム、等)が同一円周上に配置されている。レンズディスク71がモータ72によって回転制御されることにより、検者が所望する光学素子が検査窓81に配置される。図2に示す左右の検査窓81には、補助レンズとして偏光フィルタ60L及び60Rが配置されている。偏光フィルタ60L、60Rは、光の透過軸が互いに直交するように配置される。本実施形態では、偏光フィルタ60Lは、左のレンズ室ユニット80Lに備わり、検査窓81Lに配置される。偏向フィルタ60Lは、偏光軸が45度の方向である偏光成分を最も透過し、偏光軸が135度の方向である偏光成分を遮断する。偏光フィルタ60Rは、右のレンズ室ユニット80Rに備わり、検査窓81Rに配置される。偏光フィルタ60Rは、偏光軸が135度の方向である偏光成分を最も透過し、偏光軸が45度の方向である偏光成分を遮断する。また、測定ユニット8は、検査窓81に対して被検眼を所定の位置関係にするための額当て82を備える。図1に示されるように、測定ユニット8が測定位置に位置するとき、凹面ミラー50によって視標が呈示される所定の基準軸L1の高さに検査窓81が位置するように設定されている。
視標呈示ユニット3は、筺体5の外部に配置されたディスプレイ45からの視標光束を凹面ミラー50で反射させて被検眼に向かわせ、光学的に所定の遠用検査距離(例えば、5mの検査距離)で視標を呈示する。また、視標呈示ユニット3は、凹面ミラー50と被検眼との間に反射ミラー62が挿入されることにより、ディスプレイ45からの視標光束を反射部材62で反射させて被検眼に向かわせ、所定の近用検査距離(例えば、40cm)で視標を呈示する近用視標呈示ユニットに切換えられる。視標呈示ユニット3は、視標光束の光量損失が大きなビームスプリッタを介さずに視標を呈示する構成であるため、大きな光量を発するディスプレイを使用しなくても、視力検査等で必要とされる輝度を確保した検査を的確に行える。また、筺体5はビームスプリッタを有しないため、筐体5の薄型が図られ、より省スペースな検眼装置を実現できる。
<視標表示部>
図4において、視標表示部4は、支持部41、視標を表示するディスプレイ45、を備える。ディスプレイ45は、支持部41によって支持されている。支持部41は、後述するシャフト(回転軸)42を介して、ベース65に保持される。ベース65は、保持ユニット10に支持される。これによって、視標表示部4は、保持ユニット10によって支持される。ディスプレイ45には、ランドルト環視標等の検査視標が表示される。例えば、ディスプレイ45としては、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)等が用いられる。本実施例においては、ディスプレイ45として、LCDを用いた場合を例に挙げて、以下の説明を行う。
図5(a)は、ディスプレイ45の構成図であり、縦断面図として示されている。ディスプレイ45の中央に配置された液晶731の後面側には、配向膜732a、透明電極733a、透明な支持材734a、第1偏光板735a、バックライト736が順に配置されている。液晶731の前面側には、配向膜732b、透明電極733b、1画素毎にRGBの各フィルタが配置されたカラーフィルタ740、透明な支持材734b、持つ第2偏光板735bが順に配置されている。第2偏光板735bは、第1偏光板736aに対して透過軸が直交する関係で配置されている。透明な支持材734a,734bには、例えば、ガラス板やセルロースアセテートブチレート(CAB)板等が使用される。
図5(b)は、カラーフィルタ740の配置を示す図である。カラーフィルタ740は、1画素742の領域にR(赤色)フィルタ741R、G(緑色)フィルタ741G、B(青色)フィルタ741Bを1セットとして構成されている。ディスプレイ45には、画素742毎にRフィルタ741R、Gフィルタ741G、Bフィルタ741Bが縦方向(Y方向:上下方向)に順に並ぶように、筐体2に配置されている。なお、Rフィルタ741R、Gフィルタ741G、Bフィルタ741Bは横方向に順に並ぶように配置されてもよい。また、透明電極733a(図5(a)参照)には、各フィルタ741R,741G,741Bの配列に対応させて個別に制御可能な電極が配置されており、透明電極733aが持つ電極を個別に制御することにより、液晶731の液晶分子の配列が変えられ、第1偏光板735a、液晶731及び第2偏光板735bを経ることにより、各フィルタに対応する光の光量が変えられる。これにより、画素742におけるカラーが自在に表現される。
ディスプレイ45から出射される光は、第2偏光板735bを通過して、ある方向の偏光軸を有した偏光である。この偏光軸の方向は、第2偏光板735bの透過軸によって決定し、装置に用いるディスプレイ45の種類によって異なる。
図6は、視標表示部4の正面図を示している。ディスプレイ45は、支持部41に支持されており、支持部41には、図示無きディスプレイ45の基板等が配置される。支持部41の表面には、基板等の部材を覆うためのマスク板(カバー)49が設けられている。マスク板49はディスプレイ45の画面の周囲に配置され、ディスプレイ45の周囲の余分な物体が被検眼に見えてしまうことを防止する機能を持つ。マスク板49は、例えば、黒色のアクリル樹脂や黒い塗装が塗布された鉄板等で形成される。これによって、被検眼に呈示される視標の画面以外に、ディスプレイ45の周辺の基板等の写り込みを防止する。また、黒色のマスク板49を用いることによって、投影される視標の背景を黒色とすることができ、視標が確認しやすくなる。もちろん、マスク板49は、黒色でなくてもよい。
図7は、ディスプレイ45の配置位置について説明する図である。ディスプレイ45は、被検者が測定ユニット8の検眼窓81を覗き込んで視標を観察した際に、検査窓81からの所定の視野角α1の範囲外になるように配置される。すなわち、視野角α1は、被検眼が測定ユニット8の検査窓81を介して正面を見る際の基準軸L1を中心にした視野角であり、測定ユニット8において被検眼より遠い側に設けられた検査窓81の開口の大きさによって設計的に決定される。測定ユニット8の視野角α1は、例えば、基準軸L1を中心に40度に設定されている。なお、基準軸L1の上下位置は、測定ユニット8の検眼窓81の測定光軸(検眼窓81に配置される球面レンズの光軸)と略同一の位置である。また、基準軸L1の左右位置は、左右の検眼窓81の左右中央位置と略同一の位置である。所定位置に置かれる被検眼の正面方向の基準軸L1上に凹面ミラー50が配置されている。
凹面ミラー50は、基準軸L1外に配置されたディスプレイ45からの視標光束を被検眼に向けて反射するために、凹面ミラー50の光軸O1(凹面ミラ−50の曲面の法線方向)が基準軸L1に対して傾斜して配置されている。そして、凹面ミラー50における基準軸L1の反射軸である軸L2上にディスプレイ45が配置されている。ディスプレイ45の画面に垂直な軸(法線方向)が軸L2の方向となるように、基準軸L1に対するディスプレイ45の画面の傾斜角が設定されている。これにより、被検眼が凹面ミラー50で反射されるディスプレイ45の画面を見たときに、その画面を基準軸L1に対して垂直に位置する画面として見ることができる。
本実施例において、ディスプレイ45の上下位置は、視野角α1の範囲外で、且つ基準軸L1にできるだけ近い位置に配置されている。例えば、ディスプレイ45は、検査窓81より上方位置で、測定ユニット8の額当て82(すなわち、被検者の額)の付近に配置され、被検眼側から凹面ミラー50に向けて視標光束を出射する。なお、ディスプレイ45の左右方向の配置位置は、被検者が凹面ミラー50と正対するときの中央位置である。
なお、本実施例においては、基準軸L1に対する凹面ミラー50の光軸O1の傾斜角度は、5°となっている。すなわち、ディスプレイ45より出射された視標光束が凹面ミラー50によって反射され、被検眼に導光される際の反射角は5°となっている。また、光軸O1に対するディスプレイ45の軸L2の傾斜角度は、5°となっている。すなわち、ディスプレイ45より出射された視標光束が凹面ミラー50に入射される際の入射角は5°となっている。
以上のような構成となるように、ディスプレイ45の傾斜角度及び凹面ミラー50の傾斜角度が設定されている。このような構成とすることによって、被検眼に呈示される視標の歪の発生を抑制することができる。また、本実施例では、上記で説明したように、ディスプレイ45を被検者の額付近に配置することにより、視標光束を凹面ミラー50に向けて出射した際に、凹面ミラー50への入射角と凹面ミラー50から反射される際の反射角が小さくしている。このため、視標の歪を小さくすることができる。このように、視標を表示するディスプレイを使用した構成で、省スペース化を図りつつ、的確な検査を行うための視標呈示が行える。
なお、本実施例においては、入射角5°、反射角5°という構成としたがこれに限定されない。視標の歪の発生が少ない入射角及び反射角にて構成すればよい。
また、本実施例において、ディスプレイ45の下部に僅かな遮蔽壁69が設けられている。これによって、例えば、暗室等で本装置を使用する際のディスプレイ45から直接、被検眼に入射される光束を効率的に除去することができる。なお、本実施例においては、遮蔽壁69は、遮蔽カバー6の一部として構成されている。遮蔽カバー6がディスプレイ45の下部に突出しており、遮蔽壁69の役割を成している。
このようなディスプレイ45の配置によって被検者に対し広い視野を確保することができる。そして、被検者は視標呈示窓(透明パネル52)を通して筐体5の内部に遠用視標を観察する際に、保護パネル51より被検者側に余分な構造物であるディスプレイ45を見る事がなくなる。これによって、被検者がディスプレイ45を注視してしまうことが無くなり、遠用検査時に視標以外の構造物を見ることによる被検眼の調節の介入を軽減することができる。そして、精度よく視機能検査を行うことができる。
なお、本実施例の検査窓81の視野角は、約40°であるがこれに限定されない。タイプの異なる測定ユニット8を用いる場合では、検査窓81のサイズや形状は多様であり、各タイプの測定ユニット8の検査窓81からの視野角は異なる。また、視野角は、被検眼から測定ユニット8の検査窓81までの距離によっても変化する。これらのことから、視野角に応じて、ディスプレイ45の配置位置を微調整するとよりよい。なお、本実施例においては、額当て82に被検者の額を当てることによって、被検眼から測定ユニット8の検査窓81までの距離を一定としている。
<偏光光学ユニット>
次に、偏光光学ユニット500の構成について説明する。図7において、ディスプレイ45からは、第2偏光板35bによってある方向に偏光軸(偏光面)を持つ直線偏光が出射される。本実施形態では、水平方向の偏光軸を持つ直線偏光が出射される。偏光光学ユニット500は、複数の偏光光学部材55、偏光光学部材55を同一円周上に保持するディスク56と、ディスク56の回転軸を中心に回転するモータ57で構成される。また、偏光光学部材55はディスク56の回転によって、ディスプレイ45の凹面ミラー50側の光路に切り換え配置される。なお、ディスク56には偏光光学部材55と同一円周上に開口58が配置され、ディスプレイ45から出射された光をそのまま通過させる。
なお、本発明では偏光光学部材55が軸L2上に切換配置することが可能な構成を備えていればよく、ディスク56の回転による切り換えに限定されない。例えば、ディスプレイ45のミラー50側に、偏光光学部材55を保持するためのホルダを設け、ホルダに配置される偏光光学部材55を入れ換えるようにしてもよい。
図8は偏光光学ユニットを示す概略構成図である。偏光光学部材55は、ディスプレイ45に表示される視標に対応して配置された光学領域55a、55b、55cを持つ。光学領域55a、55bは、ディスプレイ45からの光を通過させるときに、互いに直交する偏光軸を持つ直線偏光に変換する機能を持つ。本実施形態では偏光光学部材55a、55bとして、位相差機能を持つ1/2λ板を使用している。1/2λ板は、周知のように入射光の偏光面が1/2λ板の高速軸(或いは低速軸)に対して角度θで入射したときに、その振動方向を2×θ回転させる。すなわち、1/2λ板は、入射光の偏光方向に対して高速軸(或いは低速軸)である光学的主軸方向を傾斜させることにより、入射光の偏光軸方向(振動方向)を回転させる機能を持つものであり、入射光の光量をそのまま維持できる特性を持つ。
偏光光学部材551〜553の第1光学領域55aは右眼用光学領域であり、その光学的主軸方向は、ディスプレイ45から出射される直線偏光の偏光軸を水平方向から135度の方向に変換するように配置される。光学領域55aとして1/2λ板を用いた場合は、1/2λ板の高速軸(或いは低速軸)を、ディスプレイ45から出射される直線偏光の偏光軸である水平方向から135/2度傾けた状態で配置される。この配置により、ディスプレイ45から出射された直線偏光の偏光軸は水平方向から135度の方向に変換される。つまり、ディスプレイ45からの直線偏光の偏光軸は、検査窓81に配置された右眼用の偏光フィルタ60Rの偏光方向135度(透過軸)と一致し、左眼用の偏光フィルタ60Lの偏光方向45度(透過軸)と直交する。
一方、光学領域55bは左眼用光学領域であり、その光学的主軸方向は、ディスプレイ45から出射される直線偏光の偏光軸を水平方向から45度の方向に変換するように配置される。偏光光学部材55bとして1/2λ板を用いた場合は、1/2λ板の高速軸(或いは低速軸)を、ディスプレイ45から出射される直線偏光の偏光軸である水平方向から45/2度傾けた状態で配置される。この配置により、ディスプレイ45から出射された直線偏光の偏光軸は水平方向から45度に変換される。つまり、ディスプレイ45からの直線偏光の偏光軸は、検査窓81に配置された左眼用の偏光フィルタ60Lの偏光方向45度(透過軸)と一致し、右眼用の偏光フィルタ60Rの偏光方向135度(透過軸)と直交する。
このため、被検者が左右の眼前にそれぞれ配置された偏光フィルタ60L及び60Rを通してディスプレイ45の表示を見ると、左眼には偏光フィルタ60Lを通過可能な光学領域55bからの出射光のみが視認され、光学領域55aからの出射光は偏光フィルタ60Lによりカットされ、視認されない。これは、偏光フィルタ60Lが45度の偏光軸を持つ偏光成分を最も透過し、偏光軸が45度と直交する135度方向の直線偏光を遮断するという効果によるものである。逆に、右眼には偏光フィルタ60Rを通過可能な光学領域55aからの出射光のみが視認され、光学領域55bからの出射光は偏光フィルタ60Rによりカットされ、視認されない。これは、偏光フィルタ60Rが135度の偏光軸を持つ偏光成分を最も透過し、偏光軸が135度と直交する45度方向の直線偏光を遮断するという効果によるものである。
また、各偏光光学部材551〜553の第3光学領域55cは両眼用光学領域であり、ディスプレイから出射された直線偏光は、第3光学領域55cによって円偏光に変換される。円偏光とは偏光軸の方向が時間とともに連続的に変化する偏光のことである。第3光学領域55cとしては、1/4λ板を使用している。被検者が左右の眼前にそれぞれ配置された偏光フィルタ60L及び60Rを通して、第3光学領域55cを介したディスプレイ45の表示を見た場合、円偏光の偏光軸が一定方向ではないため、偏光フィルタ60L及び60Rではカットされることなく、両眼で視認される。これにより、被検者の左右眼にそれぞれ異なる視標を呈示できると同時に、両眼に同一の視標を呈示することもできる。
なお、ディスプレイ45から45度方向の偏光軸を持つ光が出射されるときは、光学領域55aについては、光学部材を配置せず、開放するようにしてもよい。この場合、光学部材を通過した光と通過しない光の見え方の差(例えば、明るさ、コントラスト)を考慮して、光学領域55aには位相差機能を持たずに、45度の偏光軸方向を維持したまま通過させる光透過部材として構成してもよい。
また、ディスプレイ45として液晶ディスプレイを使用したが、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、SEDディスプレイ等も使用可能である。液晶ディスプレイ以外のディスプレイから出射される光が直線偏光の特性を持たない場合、ディスプレイ45と偏光光学部材55との間に偏光板を配置し、直線偏光に変換すればよい。また、出射される光が円偏光の場合、ディスプレイ45と偏光光学部材50との間に1/4λ板を配置し、円偏光を直線偏光に変換すればよい。
なお、ディスプレイ45から直線偏光でない自然光が出射された場合、偏光光学部材55として、光学領域55bに45度方向の偏光軸を持つ偏光板を配置し、光学領域55bに135度方向の偏光軸を持つ偏光板を配置して構成することもできる。
<光路切換ユニット>
光路切換ユニット60は、支持部61、反射ミラー(例えば、平面ミラー)62、つまみ63を備える。光路切換ユニット60は、反射ミラー61を被検眼が正面を見る際の基準軸L1上に挿脱する構成によって、遠用検査用の光路と近用検査用の光路とを切り換える。
<制御部>
図13は、検眼装置の制御ブロック図である。制御部70には、測定ユニット8、ディスプレイ45、モータ57、コントローラ90、メモリ72、等が接続されている。メモリ72には、ランドルト環視標等の検査視標のデータが多数記憶されている。例えば、視力値0.1〜2.0の視標データ記憶されている。制御部70は、コントローラ90からの入力信号に応じて、メモリ72から該当する視標データを呼び出し、ディスプレイ45の表示を制御して、ディスプレイの画面上に視標を表示させる。また、制御部70は、コントローラ90からの入力信号に応じて、メモリ72から両眼検査用視標を呼び出す場合、モータ57を制御して、その視標に対応する偏光光学部材55を、軸L2を中心に配置する。なお、本実施例において、コントローラ90からの信号は、図示無きケーブルを介して、制御部70に入力されるが、赤外線等の無線通信により信号が入力される構成としてもよい。
<偏光光学部材>
偏光光学部材55の作用について、図11及び図12を用いて説明する。偏光光学部材551は、上段に光学領域55a、下段に光学領域55b、中段に光学領域55cが配置される。これは図11(a)に示す両眼バランスチャート201に対応する。両眼バランスチャート201とは、左右眼と両眼での見え具合を比較するための視標である。本実施形態では、ランドルト視標が上段、中段、下段に分かれてそれぞれ横一列に並べて表示される。図11(a)の両眼バンランスチャート201は、上段に一点鎖線で囲んで示す領域に表示される右眼用視標201a、中段に一点鎖線で囲んで示す領域に表示される両眼用視標201b、下段に一点鎖線で囲んで示す領域に表示される左眼用視標201c、から形成される。偏光光学部材551が軸L2上に配置されるとき、右眼用光学領域55aは、少なくとも右眼用視標201aを覆うように配置される。同様に、左眼用光学領域55bは、少なくとも左眼用視標201cを覆い、両眼用光学領域55cは、少なくとも両眼用視標201bを覆うように配置される。
このとき、左右の検査窓81に配置された偏光フィルタ60L及び60Rを通して視標を観察すると、図12(a)に示すように、左右眼で異なる視標が視認される。具体的には、右眼には両眼バランスチャート201における上段の右眼用視標201aと中段の両眼用視標201bが視認され、左眼には、中段の両眼用視標201bと下段の左眼用視標201cが視認される。これは、光学領域55a、55bによって、それぞれ右眼用視標201a、左眼用視標201cからの直線偏光の偏光軸が変換されたこと、また、光学領域55cによって、両眼用視標201bからの直線偏光が円偏光に変換されたことによる。
偏光光学部材552は、左側に光学領域55a、右側に光学領域55bが配置される。これは、図11(b)に示す立体視チャート202に対応する。立体視チャート202とは、正常に立体視機能が働き、物体の奥行きを感じることができるか検査するための視標である。本実施形態では、異なる間隔で横に並んだ2本の縦棒が3対、中央の上段、中段、及び下段に表示され、その左右にはそれぞれ3種類の視標が縦に並んで左右対称的に表示される。図11(b)の立体視チャート202は、において、左側に一点鎖線で囲んで示す領域に表示される右眼用視標202a、右側に一点鎖線で囲んで示す領域に表示される左眼用視標202b、から形成される。偏光光学部材552が軸L2上に配置されるとき、右眼用光学領域55aは、少なくとも右眼用視標202aを覆うように配置され、左眼用光学領域55bは、少なくとも左眼用視標202bを覆うように配置される。
このとき、左右の検査窓81に配置された偏光フィルタ60L及び60Rを通して視標を観察すると、図12(b)に示すように、右眼には立体視チャート202における左側の右眼用視標202aが視認され、左眼には右側の左眼用視標202bが視認される。これは、光学領域55a、55bによって、それぞれ右眼用視標202a、左眼用視標202bからの直線偏光の偏光軸が変換されたことによる。
偏光光学部材553は、右斜め上部に光学領域55a、左斜め下部に光学領域55b、中央部に光学領域55cが配置される。これは図11(c)に示す固視点付十字斜位チャート203に対応する。固視点付十字斜位チャート203とは、融像刺激を与えた状態での斜位を見つけるための視標である。本実施形態では、2本の縦棒と横棒が、丸い点を中心に十字に表示される。図11(c)の固視点付十字斜位チャート203は、右斜め上部に一点鎖線で囲んで示す領域に表示される右眼用視標203a、左斜め下部に一点鎖線で囲んで示す領域に表示される左眼用視標203b、中央部に一点鎖線で囲んで示す領域に表示される両眼用視標203c、から形成される。光学部材553が軸L2上に配置されるとき、右眼用光学領域55aは、少なくとも右眼用視標203aを覆うように配置される。同様に、左眼用光学領域55bは、少なくとも左眼用視標203bを覆うように配置され、両眼用光学領域55cは、少なくとも両眼用視標203cを覆うように配置される。
このとき、左右の検査窓81に配置された偏光フィルタ60L及び60Rを通して視標を観察すると、図12(c)に示すように、右眼には固視点付十字斜位チャート203における右斜め上部の右眼用視標203aと中央部の領域203cの両眼用視標が視認される。また、左眼には左斜め下部の左眼用視標203bと中央部の両眼用視標203cが視認される。これは、光学領域55a、55bによって、それぞれ右眼用視標203a、左眼用視標203bからの直線偏光の偏光軸が変換されこと、また、光学領域55cによって、両眼用視標203cからの直線偏光が円偏光に変換されたことによる。
なお、これは一例であり、光学領域55a、55b、55cの組み合わせによって、偏光光学部材55は前記の視標以外のあらゆる両眼検査用視標(例えば、両眼レッド・グリーンチャート、不等像視チャート、十字斜位チャートなど)に対応できる。
<光路切換>
本装置には、視標呈示ユニット3の視標呈示において、遠用検査用光路と近用検査用光路との切り換えるための光路切換ユニット60が設けられている。以下、光路切換について説明する。図14は、遠用検査用光路と近用検査用光路との切り換えについて説明する図である。図14(a)は、遠用検査用光路を示している。図14(b)は、近用検査用光路を示している。なお、図14において測定ユニット8は省略している。
遠用検査用光路にて、視機能検査を行う場合、ディスプレイ45より視標光束を凹面ミラー50に向けて出射し、凹面ミラー50によって反射された視標光束を被検眼に呈示させる。被検者は、呈示された視標を観察して、遠用の視機能検査を行う。
近用検査用光路にて、視機能検査を行う場合、反射ミラー62を被検眼と凹面ミラー50との間の基準軸L1上に配置する。また、ディスプレイ45の画面に対する法線方向と、基準軸L1が反射ミラー62で反射された軸L4の方向と,が略一致するように、ディスプレイ45の画面の傾斜角度を変更する。
そして、ディスプレイ45より出射された視標光束は、凹面ミラー50を介さずに、基準軸L1に沿って被検眼に導光される。視標光束が凹面ミラー50を介さずに、被検眼に導光されることによって、検査距離が近距離(例えば、40cm)となる。
なお、遠用検査用光路への切換時には、ディスプレイ45の画面に対する法線方向と、基準軸L1が凹面ミラー50で反射された軸L2の方向とが略一致するように、ディスプレイ45の画面の傾斜角度を変更する。
<両眼視機能検査>
視標呈示による両眼視機能検査を簡単に説明する。検者は、測定ユニット8の額当て82に被検者の額を当てるように指示する。そして、額当て82と額を合わせることによって、一定の位置に被検眼を位置させる。
遠用検査時には、反射ミラー62が基準軸L1から外された状態で、被検眼が正面を見る際の基準軸L1上に、凹面ミラー50を介して視標を呈示し、被検者に検眼窓81に配置された偏光フィルタ60L及び60Rを通して、呈示される両眼検査用視標を観察させ、両眼視機能の検査を行う。制御部70は、コントローラ90によって入力される両眼検査用視標の選択信号に基づいてディスプレイ45の表示を制御し、両眼検査用視標をディスプレイ45に表示させる。このとき、制御部70は、ディスプレイ45に表示される両眼検査用視標に対応する偏光光学部材55が軸L2上に配置されるように、モータ57を制御する。
<両眼バランステスト>
具体的には、例えば、両眼バランスチャート201を用いた両眼バランステストを行うとする。まず、検者は、被検者に測定ユニット8の額当てに額を当てるように指示し、被検者を一定位置に位置させる。次に、検者はコントローラ90の操作によって、ディスプレイ45に両眼バランスチャート201を表示させる。制御部70は、コントローラ90によって入力された視標の選択信号に基づいてディスプレイ45の表示を制御し、両眼バランスチャート201をディスプレイ45に表示させる。このとき、制御部70は、ディスプレイ45に表示される両眼バランスチャート201に対応する偏光光学部材551が軸L2上に配置されるように、モータ57を制御する。また、検者はコントローラ90を操作し、検眼ユニット8の検査窓81に偏光フィルタ60L及び60Rを配置させる。制御部70は、モータ72を制御し、左右の検査窓81に偏光フィルタ60L及び60Rを配置させる。
偏光光学部材551の作用によって、被検者には図12(a)に示すように左右眼で異なる視標が視認される。検者は被検者に、右眼のみで視認する右眼用視標201a、左眼で視認する左眼用視標201c、及び両眼で視認する両眼用視標201bの見え具合を比較するように指示する。被検者の見え具合に応じて、検者はコントローラ90を操作し、右眼用視標201a、左眼用視標201cが同程度に見えるように、検査窓81に配置される球面レンズの度数を調節する。
<立体視機能テスト>
立体視チャート202を用いた立体視機能テストを簡単に説明する。前述のように偏光フィルタ60L及び60Rを通すと、右眼には、右眼用視標202aが視認され、左眼には、左眼用視標202bが視認される。左右眼に視認された視標は、脳によって中央の縦棒が融像され、中央の縦棒が他のマークに対して浮き上がって見える。また、縦棒の浮き上がり方は左右の棒の間隔が大きなほど、より手前に浮き上がって見える。そこで、立体視機能テストでは、被検者に立体視チャート202を呈示し、3本の棒が浮き上がって見え、それぞれの棒の浮き上がり方の差が分かることを確認する。これにより、正常に立体視機能が働き、奥行きを感じることができるか検査する。
<固視点付十字斜位テスト>
固視点付十字斜位チャート203を用いた固視点付十字斜位テストを簡単に説明する。前述のように偏光フィルタ60L及び60Rを通すと、右眼には、十字斜位チャート203の右眼用視標203aと両眼用視標203cが視認され、左眼には、十字斜位チャート203の左眼用視標203bと、両眼用視標203cが視認される。斜位があると固視点付十字斜位チャート203の縦棒が上下でずれて見えたり、横棒が左右でずれて見えたりする。そこで、固視点付十字斜位テストでは、被検者に固視点付十字斜位チャート203を呈示し、縦棒と横棒のずれが生じているか確認させることで、斜位があるか検査する。
近用検査時には、上記のように反射ミラー62を基準軸L1に挿入すると共にディスプレイ45の角度を変更する。制御部70は、コントローラ90によって入力される両眼検査用視標の選択信号に基づいてディスプレイ45の表示を制御し、両眼検査用視標をディスプレイ45に表示させる。制御部70は、ディスプレイに表示される両眼検査用視標に対応する偏光光学部材55が軸L2上に配置されるように、モータ57を制御する。テスト方法は遠用検査時と同様である。
被検者は光学領域55a、55bによって偏光軸が直行した視標の偏光を、左右眼に偏光フィルタ60L及び60Rをそれぞれ通して観察することで、左右眼で異なる視標を視認する。
このように、偏光光学ユニットを用いることで、従来のように、画素1ラインごとに異なる偏光特性を持ったフィルムを張り合わせる必要がなくなる。このため、LCDのサイズや精細さに関係なく、被検者の左右眼に異なる視標を呈示することができる。画素の細かなディスプレイを用いた視標呈示装置でも、左右眼で異なる視標を呈示することができるようになる。また、本件発明の方法では、両眼検査時でもディスプレイ45の解像度を下げることなく視標を呈示することができる。これにより、通常の視力測定で用いる視力表と同じ視力値範囲の表示が可能になる。さらに、光学領域55a、55b、55cを組み合わせることによって、偏光光学部材55をあらゆる両眼検査用視標に対応させることができ、左右眼の一方にしか視認できない部分と、両眼で視認できる部分を共存させることができる。これは、融像刺激を与える固視点や、左右眼の視標の境界を視認させるための視標を呈示するのに役立つ。
両眼視機能検査以外の検査(例えば、視力測定、乱視検査、球面調整など)を行う場合、制御部70は、偏光光学ユニット500のモータ57を制御し、ディスク56の開口58が軸L2上に配置する。これによって、ディスプレイから出射される光が余計な経路を通ることを回避することができる。ただし、ディスク56に開口58がなく、軸L2上にいずれかの偏光光学部材55が配置されている場合でも、偏光フィルタ60L及び60Rを用いないときは、両眼視機能検査以外の検査を問題なく行うことができる。
なお、以上の説明において、光学領域55aとして1/2λ板を用いた場合は、1/2λ板の高速軸(或いは低速軸)を水平方向(ディスプレイ45からの直線偏光の偏光方向)から135/2度傾けて配置するとしたが、これに限らない。1/2λ板を通過したディスプレイ45からの直線偏光が右眼用偏光フィルタ60Rの偏光軸135度と一致し、左眼用偏光フィルタ60Lの偏光軸45度と直交するように配置されればよい。例えば、1/2λ板の高速軸(或いは低速軸)を水平方向から−45/2度傾けて配置してもよい。同様に、光学領域55bとして1/2λ板を用いた場合は、高速軸(或いは低速軸)を水平方向から45/2度傾けて配置することに限らず、例えば−135/2度傾けて配置してもよい。
<変容例>
本実施形態の変容例を図面を用いて説明する。図15は、本発明の実施形態である検眼システムの概略構成図である。検眼システム600は、大別して、自覚的に被検者眼の視機能を検査するための検眼装置350と、被検者眼に遠用検査視標を呈示するための視標呈示装置300と、を備えている。検眼装置350には、被検眼に近用視標を呈示するための近用検査視標呈示ユニット(以下、近用視標ユニットと略す)440が備わる。本件発明は、このような検眼システム600の近用視標ユニット440にも利用できる。以下、具体的に説明する。
検眼ユニット350は、図2に示す検眼ユニット8と同様であるため、同一部については同じ番号を用いる。左右対称な一対のレンズ室ユニット80(左レンズ室ユニット80L、右レンズ室ユニット80R)と、レンズ室ユニット80を吊下げ支持する支持ユニット353と、を備えており、検眼テ−ブル301に固定されている。内部構造は検眼ユニット8と同一であるため、ここでは説明を省略する。検査窓81に配置される光学素子の切換え等は、入力手段(操作手段)であるコントローラ360の操作によって行われる。支持ユニット353は、被検者の瞳孔間距離に合わせて左検査窓81Lと右検査窓81Rとの間隔を変えるためのレンズ室ユニット80の間隔調節機構(輻輳機構を含む)を備えている。また、支持ユニット353の略中央部(左レンズ室ユニット80Lと右レンズ室ユニット80Rとの間付近)には、近用視標ユニット440をスライド可能に保持している近用棒420が検眼ユニット350から前側(被検者のいる側とは反対側)に延設される。なお、近用棒420は上方に跳ね上げ可能であり、遠用検査のときには被検眼の視界から退避させる。
図16、17は近用視標ユニット3及びホルダ443の構成を説明する図である。視標呈示ユニット440は、検査窓81からの距離が20〜70cm程度の間で移動される。本実施形態では、近用視力値検査又は近用両眼視機能検査の際、近用視標ユニット440は、検査窓81からの距離が40cmの位置に置かれる。視標呈示ユニット440は、呈示窓442が設けられたケース441と、ディスク56と、端末保持部448と、ケース441を保持するホルダ450と、を備えている。複数種類の偏光光学部材55が保持されたディスク56は、ケース441中央のピン445を中心に回転可能にケース441内に収納されている。ケース441からはディスク56の一部が露出しており、その露出部分を持ってディスク56を回転することにより、呈示窓442に所期する偏光光学部材55が配置される。なお、変容例のディスク56は、検者が回転させやすいよう円周部に窪み457が備わる。端末保持部448は、近用視標を呈示するための小型ディスプレイ452を備える端末451を着脱可能に保持する。本変容例の端末保持部450には端末固定位置の上下にスライド溝445が備わり、端末451を左右にスライドさせることで固定・取り外しを自在とする。なお、端末451を着脱可能に保持するための端末保持部の構成は、これに限らない。端末451を固定・取り外ししやすい構成であればよい。構成小型ディスプレイ452に表示された近用視標は、呈示窓442に配置された偏光光学部材55を介して被検眼に呈示される。本変容例で使用する端末451の小型ディスプレイ452はタッチパネル機能を有しており、視標の表示や切り換えなどの操作は、小型ディスプレイ452へのタッチにより行う。なお、端末451としては、市販の携帯端末(例えば、スマートフォン)を使用することも可能である。
近用視標ユニット440は、ホルダ443により近用棒420上を移動可能(近用棒420の軸方向に移動可能)に保持されている。近用棒420には被検眼からの近用視標ユニット440の呈示距離を示す目盛りが付されている。
図16に戻る。スライダ446は近用棒420の軸方向に移動可能であり、ガイド孔446aに近用棒420が差し込まれる。中間ホルダ447は、スライダ446の下方に固定された軸448の垂直軸V1を中心にして360度回転可能である。中間ホルダには、端末保持部450が固定される。近用視標ユニット440を保持するホルダ部444は、中間ホルダ447の水平軸H1を中心に180度回転可能である(図17参照)。ロックねじ449は、スライダ446の頂部に設けられたねじ孔を貫通し、近用棒420に対するスライダ446の移動を固定する。ロックねじ449の締め付け力を緩めることにより、近用棒420に対するホルダ443のスムーズな移動が可能になる。
図18は図16のA−A断面の該略図である。近用視標ユニット440を構成するケース441の上部には、断面T形状部441aが形成されている。一方、ホルダ部444の下方にはこの断面T形状部441aを受ける案内溝が形成されており、ケース441はホルダ部444により吊下げ保持されると共に、ホルダ部444に形成された案内溝に沿って左右方向に移動可能に保持される。また、ケース441をスライドさせることによりホルダ部444から取り外すことができ、ケース441はホルダ部444に対して着脱自在である。このため、異なる偏光光学部材55が配置されたディスク56をケースごと容易に交換することができる。
また、ホルダ部444には凸部を備える板ばね430が形成されており(図16参照)、ケース441が中心位置に達した時に、板ばね430の凸部が断面T形状部441aの表面に形成された孔431と係合して、検者がクリック感を感じるになっている。このため、ケース441を中心位置に容易に復帰させることができる。
視標呈示装置330は、遠用検査視標を呈示するディスプレイ(視標呈示部)331を備えている。視標呈示装置330は、リレーユニット306を介してコントローラ360と接続されており、ディスプレイ331に表示される視標の切換え等がコントローラ360の操作によって行われる。検眼装置350と視標呈示装置330との間の距離(検査距離,設置距離)は、遠用検査に適した距離、例えば、5mとされている。
次に、検眼システム600の制御系について説明する。図19は、検眼システム600の制御系の概略ブロック図である。リレーユニット306の制御手段である制御部307に、検眼装置350の制御手段である制御部357、視標呈示装置330の制御手段である制御部337、コントローラ360の制御手段である制御部367、が接続されている。リレーユニット306は、検眼システム600において、データ、指令信号、等の入出力を行うためのユニットである。なお、リレーユニット306とコントローラ360との間の信号のやりとりは、無線通信にて行われることが好ましい。また、リレーユニット306は、必ずしも必須の構成ではなく、コントローラ360からの制御指令を検眼装置350、視標呈示装置330が受信する構成であってもよい。
コントローラ360からの指令信号(光学素子の切換え指令信号、視標の切換え指令信号、等)は、制御部367から制御部307に送られる。制御部307は、受取った指令信号を制御部357と制御部337とに分配する。制御部357は、指令信号に基づいてモータ72を駆動し、検査窓81に光学素子を配置する。被検眼に遠用視標を呈示する場合、制御部337は、指令信号に基づいて遠用視標をディスプレイ331に表示させる。
上記構成を備える本変容例の検眼システム600の近用両眼視機能検査における動作を説明する。まず、検者は検眼装置350の額当て82に被検者の額を当てるように指示する(図2参照)。そして、額当て82と額を合わせることによって、一定の位置に被検眼を位置させる。
次に、検者は近用棒420を水平に倒し、近用視標ユニット440を検眼窓81から40cm離れた位置に配置させる。このとき、ロックねじ449の締め付け力を緩めて近用視標ユニット440をスライド移動させ、所望の位置に移動させた後、ロックねじ449を締めることでスライダを近用棒420に固定する。
検者はケース441を跳ね上げ、端末保持部450に端末451を装着しやすいようにする。ケース441を跳ね上げたら、端末451を保持部450に固定し、端末451の操作によって、所望の両眼検査用視標をディスプレイ452に表示させる。ここでは、例として、図11(a)に示す両眼バランスチャート201を表示させる。
検者は、跳ね上げられたケース441を降ろし、呈示窓442からディスプレイ452に表示された視標が見えるようにする。次に、検者はケース441から一部露出したディスク56を持って回転させ、ディスプレイ452に表示された視標に対応する偏光光学部材55を呈示窓442に配置する。ここでは、両眼バランスチャート201に対応する偏光光学部材551を呈示窓442に配置するようにディスク56を回転する。これにより、被検眼には偏光光学部材551を通して両眼バランスチャート201が呈示される。
検者はコントローラ360を操作し、検眼装置350の検査窓81に偏光フィルタ60L及び60Rを配置させる。制御部70は、モータ72を制御し、左右の検査窓81に偏光フィルタ60L及び60Rを配置させる。そして、被検者に検眼窓81に配置された偏光フィルタ60L及び60Rを通して、呈示される両眼検査用視標を観察させ、両眼視機能の検査を行う。検査方法は実施形態ですでに述べてあるので、ここでは省略する。
他の視標を用いる検査を行う場合も、同様に、端末451の操作によって所望の両眼検査用視標をディスプレイ452に表示させる。端末451を操作する際は、ケース441を跳ね上げることで操作を行いやすくする。次に、表示させた視標に対応する偏光光学部材55が呈示窓442に配置されるようにディスク56を回転させる。ディスプレイ452に立体視チャート202を表示させた場合は、呈示窓442に偏光光学部材552を配置し、固視点付十字斜位チャート203を表示させた場合は、呈示窓442に偏光光学部材553を配置されるように、ディスク56を回転させる。
このように、本変容例のような構成を備えた近用視標ユニット440であれば、簡単な構成で両眼視機能検査を行うことができ、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、ホルダ部444に取り付けられたケース441内のディスク56に、所望の両眼検査用視標に対応する偏光光学部材55がない場合は、ケース441を左右方向にスライドさせることでホルダ部444から取り外し、所望のディスク56がセットされたケース441をホルダ部444に付け換えればよい。
また、本変容例の近用視標ユニット440は、近用棒420から取り外すことによって、手持ちの近用視標としても利用可能である。この場合、被検者の左右の眼前に偏光フィルタ60L及び60Rが配置された偏光眼鏡を用いることで、前述のような両眼機能測定を行うことができる。
通常の近用検査をする場合は、ディスク56の開口58を呈示窓に配置する。これによって偏光光学部材55を介すことなくディスプレイ452に表示された視標を観察することができる。また、ケース441を中間ホルダ447の水平軸H1を中心に回転させ、上方に跳ね上げた場合も、同様にディスプレイ452からの出射光を余計な経路を通ることなく被検眼に投光することができる。
なお、以上の説明において、ディスク56の構成は、3種の偏光光学部材55と1つの開口58を備えるものとしたが、これに限らない。例えば、ディスク56の大きさや呈示窓442の大きさ、開口58の有無によっては、ディスク56に保持できる偏光光学部材55を増やすことができる。
また、以上の説明において、端末保持部450は中間ホルダ447に固定されるものとしたが、これに限らない。例えば、ホルダ443と同様の構成を端末保持部450用に別に設けることで、ケース441と同様に、ホルダ443から着脱可能とし、垂直軸および水平軸回りに回転するようにしてもよい。これにより、近用視標ユニット440を収納する際に都合がよい。
また、以上の説明において、スライド機構455によってケース441をホルダ443から取り外すとしたが、これに限らない。端末451の取り付け、取り外しが容易に行える構成であればよい。例えば、ケース441をコイルばねなどの弾性体の弾性力によって固定する構成でもよい。また、例えば、図20に示すように呈示窓462aを備えた端末カバー462、ピン463を備え、端末451を端末カバーの隙間から出し入れするような構成が考えられる。また、例えば図21、22に示すように端末保持部450は、回転盤461と、回転盤を端末保持部450に回転可能に保持するボルト463及びつまみ464を備え、ボルト463の中心軸回りに回転盤461を回転させる構成としてもよい。このとき、ボルト463の中心軸は、呈示窓462aの中央に位置する。検者は、つまみ464をつかみ、左右に回転させることで、端末保持部450のつまみ464側から回転盤461を回転させることができる。
このような構成とすれば、端末451を端末カバーから挿脱しやすくなるだけでなく、小型ディスプレイ452を縦方向及び横方向に配置することが可能となる。
また、変容例として、図21、22に例示される端末保持部450を持つ近用視標ユニット440において、ケース441、及びディスク56は含まれず、かわりに偏光光学部材55は呈示窓462aに形成される。このような構成とすれば、例えば、呈示窓462aに偏光光学部材552(図8参照)を配置した場合、回転盤461を回転させることで偏光光学部材552を横方向に配置させることができる。これにより、偏光光学部材552は右眼用光学領域55aと左眼用光学領域55bが左右方向に分離した配置から、上下方向に分離した配置に切り換え可能となり、対応する視標の種類が多くなる。
また、以上の説明において、偏光光学部材55の切り換えにディスク56の回転を利用したが、これに限らない。例えば、1種類の偏光光学部材55が保持されたプレートが内部に固定されたケース441が複数用意され、ホルダ443からケース441を取り換えるようにしてもよい。