以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(単位レンズの配列ピッチが分割領域ごとに異なるFELの例)
2.第1の実施の形態の変形例
変形例1(単位レンズの光軸方向の厚みが分割領域ごとに異なるFELの例)
3.第2の実施の形態(単位レンズの光入射側レンズ頂点の位置が分割領域ごとに異なるFELの例)
4.第3の実施の形態(第1,第2の実施の形態等の構成を組み合わせたFELの例)
5.各実施の形態等に共通の変形例
変形例2(2段構成のFELに適用した例)
6.その他の変形例
<第1の実施の形態>
[表示装置3の全体構成]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る表示装置(表示装置3)の全体構成を表すものである。この表示装置3は、スクリーン30(被投射面)に対して映像(映像光)を投射する投射型の表示装置であり、照明装置1と、この照明装置1からの照明光を用いて映像表示を行うための光学系(表示光学系)とを備えている。
(照明装置1)
照明装置1は、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、カップリングレンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学素子14、駆動部140、フライアイレンズ(FEL;Fly Eye Lens)15およびコンデンサレンズ17を備えている。なお、図中に示したZ0は光軸を表している。
赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、赤色レーザ光、緑色レーザ光または青色レーザ光を発する3種類の光源である。これらのレーザ光源により光源部が構成されており、ここでは、これら3種類の光源がいずれもレーザ光源となっている。これらの赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えばパルス発光を行う。すなわち、例えば所定の発光周波数(発光周期)により、間欠的(断続的)にレーザ光を出射するようになっている。赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えば半導体レーザや固体レーザ等からなる。なお、例えばこれらのレーザ光源がそれぞれ半導体レーザである場合、一例として、赤色レーザ光の波長λr=600〜700nm程度、緑色レーザ光の波長λg=500〜600nm程度、青色レーザ光の波長λb=400〜500nm程度である。
また、これらのレーザ光源から出射されるレーザ光は、レーザ結晶からなるレーザ媒質に励起光が入射されることにより発生するようになっている。ここで、このレーザ光の強度分布(光量分布、FFP(Far Field Pattern))は、レーザ媒質であるレーザ結晶の原子や分子の分布、結晶のサイズに応じて定まる。そして、理想的には、発生されたレーザ光の光量分布(プロファイル)は、ほぼガウス分布となる。
カップリングレンズ12Gは、緑色レーザ11Gから出射された緑色レーザ光をコリメートして(平行光として)、ダイクロイックプリズム131と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。同様に、カップリングレンズ12Bは、青色レーザ11Bから出射された青色レーザ光をコリメートして、ダイクロイックプリズム131と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。また、カップリングレンズ12Rは、赤色レーザ11Rから出射された赤色レーザ光をコリメートして、ダイクロイックプリズム132と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。なお、これらのカップリングレンズ12R,12G,12Bによって、ここでは入射した各レーザ光をコリメートしている(平行光としている)が、この場合には限られず、カップリングレンズ12R,12G,12Bによってコリメートしなくてもよい(平行光としてなくてもよい)。ただし、上記のようにコリメートしたほうが装置構成の小型化を図ることができるため、より望ましいと言える。
ダイクロイックプリズム131は、カップリングレンズ12Bを介して入射した青色レーザ光を選択的に透過させる一方、カップリングレンズ12Gを介して入射した緑色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。ダイクロイックプリズム132は、ダイクロイックプリズム131から出射した青色レーザ光および緑色レーザ光を選択的に透過させる一方、カップリングレンズ12Rを介して入射した赤色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。これにより、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光に対する色合成(光路合成)がなされるようになっている。
光学素子14は、上記した光源部からの出射光(レーザ光)の光路上に配置される素子であり、ここでは光源部とフライアイレンズ15との間(具体的には、ダイクロイックプリズム132とフライアイレンズ15との間)の光路上に配置されている。この光学素子14は、照明光におけるいわゆるスペックルノイズ等を低減するための光学素子であり、上記した光路上を進行するレーザ光がこの光学素子14を通過するようになっている。なお、このような光学素子14は、例えば、レンズ(レンチキュラーレンズなど)、プリズムアレイまたは回折素子等からなる。
駆動部140は、光学素子14を駆動するものである。具体的には、この駆動部140は、光学素子14を振動(微小振動)させる(例えば、光軸Z0に沿った方向や、光軸Z0に対する垂直方向に沿って振動させる)機能を有している。これにより、光学素子14を通過する光束の状態が変化し、スペックルノイズ等を低減させることが可能となっている。なお、このような駆動部140は、例えば、コイルおよび永久磁石(例えば、ネオジム(Nd)や鉄(Fe)、ホウ素(ボロン;B)等の材料からなる永久磁石)等を含んで構成されている。
フライアイレンズ15は、基板上に複数の単位セル(後述する単位レンズ)が2次元配置された光学部材(インテグレータ)であり、これらの単位レンズの配列に応じて入射光束を空間的に分割して出射させるものである。このフライアイレンズ15は、上記した光学素子14の後段側(ここでは、光学素子14とコンデンサレンズ17との間)の光路上に配置されており、光源部側から入射した光(入射光束)が通過するようになっている。また、フライアイレンズ15では、分割された光束が重畳されるように出射される。これにより、フライアイレンズ15からの出射光Loutの均一化(面内の光量分布の均一化)が図られ、照明光として出射されるようになっている。つまり、このフライアイレンズ15が、本開示における「均一化光学部材」の一具体例に対応している。なお、フライアイレンズ15では、斜入射光も効率良く照明光として利用するため、以下説明するように、その光入射面Sin側だけでなく光出射面Sout側に亘って単位レンズが形成されている。
図2は、フライアイレンズ15の平面(X−Y平面)構成例を表したものであり、光入射面Sin側から見た平面構成に対応している。また、図3は、このフライアイレンズ15の断面(Y−Z断面)構成例を表したものである。
フライアイレンズ15は、図2に示したように、複数の単位レンズ(後述する単位レンズUL11,UL12,UL13,UL14)が2次元配列されてなる。すなわち、複数の単位レンズが、X軸方向(ここでは水平方向)およびY軸方向(ここでは垂直方向)の双方に沿って配列されている。また、各単位レンズは、X軸方向を長軸方向とすると共にY軸方向を短軸方向とする異方性形状(ここでは矩形状)からなる平面(X−Y平面)形状を有している。そして、この異方性形状(矩形状)におけるアスペクト比(長軸方向と短軸方向との長さの比)は、後述する反射型液晶素子21におけるアスペクト比と略一致(望ましくは一致)するように設定されている。
ここで、本実施の形態のフライアイレンズ15では、図2に示したように、その光通過面(光入射面Sinおよび光出射面Sout)が、複数の分割領域(ここでは、4つの分割領域A11,A12,A13,A14)に分割されている。具体的には、光通過面上の中心点Pcを中心にして、4つの分割領域A11,A12,A13,A14が光通過面上で点対称に配置されている。そして、各分割領域A11,A12,A13,A14内においても、複数の単位レンズが2次元配列されている。すなわち、分割領域A11内では複数の単位レンズUL11が2次元配列され、分割領域A12内では複数の単位レンズUL12が2次元配列され、分割領域A13内では複数の単位レンズUL13が2次元配列され、分割領域A14内では複数の単位レンズUL14が2次元配列されている。
なお、上記したように、複数の分割領域の個数が偶数であったり、複数の分割領域が光通過面上で点対称(または線対称)に配置されているようにするのが望ましい。フライアイレンズ15へ入射する光束は、中心点Pcから軸対称に円形状や長方形状、六角形状となることが想定されることから、光束入射の際の等方性を担保するためである。
また、このフライアイレンズ15では、上記した単位レンズにおける形状のパラメータが、複数の分割領域A11,A12,A13,A14ごとに互いに異なっている。具体的には、本実施の形態では図2に示したように、上記パラメータとして、光通過面内での単位レンズの配列ピッチが、複数の分割領域A11,A12,A13,A14ごとに互いに異なっている。つまり、各分割領域A11,A12,A13,A14における単位レンズの平面形状は、互いに相似となっている。詳細には、分割領域A11における単位レンズUL11の配列ピッチ(長軸方向のピッチ)をw1、分割領域A12における単位レンズUL12の配列ピッチをw2、分割領域A13における単位レンズUL13の配列ピッチをw3、分割領域A14における単位レンズUL14の配列ピッチをw4とすると、例えば以下のように各配列ピッチw1〜w4が設定されている。そして、このような各分割領域A11,A12,A13,A14におけるパラメータ(ここでは配列ピッチw1〜w4)は、後述する所定の関係を満たすようになっている。
w1:w2:w3:w4=1.05:1.00:0.95:0.90
(w1>w2>w3>w4)
一方、フライアイレンズ15における各単位レンズUL11〜UL14の光軸方向(Z軸方向)の厚みは、図3に示したように、分割領域A11,A12,A13,A14間で共通の値(厚み:d)となっている。なお、このようなフライアイレンズ15の詳細構成については、後述する。
コンデンサレンズ17は、フライアイレンズ15からの出射光Loutを集光し、照明光として出射させるためのレンズである。
(表示光学系)
前述した表示光学系は、偏光ビームスプリッタ(PBS;Polarization Beam Splitter)23、フィールドレンズ22、反射型液晶素子21および投射レンズ24(投射光学系)を用いて構成されている。
偏光ビームスプリッタ23は、特定の偏光(例えばP偏光)を選択的に透過させると共に、他方の偏光(例えばS偏光)を選択的に反射させる光学部材である。これにより、照明装置1からの照明光(例えばS偏光)が選択的に反射されて反射型液晶素子21へ入射すると共に、この反射型液晶変調素子21から出射した映像光(例えばP偏光)が選択的に透過し、投射レンズ24へ入射するようになっている。
フィールドレンズ22は、偏光ビームスプリッタ23と反射型液晶素子21との間の光路上に配置されている。このフィールドレンズ22は、照明光をテレセントリックに反射型液晶素子21に入射させることによって、光学系のコンパクト化を図るためのレンズである。
反射型液晶素子21は、照明装置1からの照明光を、図示しない表示制御部から供給される映像信号に基づいて変調しつつ反射させることにより、映像光を出射する光変調素子である。このとき、反射型液晶素子21では、入射時と出射時とにおける各偏光(例えば、S偏光またはP偏光)が異なるものとなるように、反射がなされる。このような反射型液晶素子21は、例えばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の液晶素子からなる。
投射レンズ24は、反射型液晶素子21により変調された照明光(映像光)をスクリーン30に対して投射(拡大投射)するためのレンズである。
[フライアイレンズ15の詳細構成]
ここで、本実施の形態の照明装置1では、フライアイレンズ15において、前述した各分割領域A11,A12,A13,A14におけるパラメータ(配列ピッチw1〜w4)が、以下のような関係を満たすように設定されている。すなわち、まず、以下説明するように、各単位レンズUL11〜UL14(1つの単位レンズ)からの出射光により被照射面上(反射型液晶素子21上)に形成される光量分布には、山状部分(明部分,ピーク部分)と谷状部分(暗部分,ボトム部分)とが存在する。そして、このような山状部分と谷状部分とが、複数の分割領域A11〜A14ごとに得られる上記光量分布同士の重ね合わせによって互いに減殺し合うように、各分割領域A11〜A14における配列ピッチw1〜w4が設定されている。つまり、後述する照明光における回折むら(回折現象により生ずる輝度むら)における山状部分と谷状部分とが互いにキャンセルされる方向となるように、各配列ピッチw1〜w4が設定されている。これにより詳細は後述するが、照明光におけるそのような回折むらが低減するようになっている。
ここで、分割領域A11内の1つの単位レンズUL11からの出射光により、反射型液晶素子21上に形成される上記光量分布(回折むら)は、図4に示したようになる。図4中において、照明系の光学倍率(コンデンサレンズ17およびフィールドレンズ22からなるリレー系によって規定される)をβ、1つの単位レンズUL11による照明領域幅をD1(=β×w1)、反射型液晶素子21上の有効照明領域をDeffとする。なお、照明領域幅D1は、この有効照明領域Deffよりも若干大きくなる(D1>Deff)ように設定される。照明効率を上げるのと同時に、多少の摂動が生じても非照明領域が有効照明領域Deff内に入り込まないようにするためである。
すると、図4に示したように、このような照明領域幅D1内の光量分布上に、上記した山状部分および谷状部分からなる回折むらが生じる。ここで、この照明領域幅D1内の光量分布における山状部分のうちの最大明部(最大ピーク部分)間の間隔をh11、2番目明部(2番目のピーク部分)の間隔をh12とする。なお、これらの間隔h11,h12および照明領域幅D1(=β×w1)はそれぞれ、照明光学系の設計により左右されるパラメータであるが、基本的には算出することが可能である。
この場合、配列ピッチw1の単位レンズUL11により形成される照明領域幅D1の光量分布における山状部分および谷状部分は、以下の(1)式で規定される配列ピッチw2の単位レンズUL12により形成される光量分布における山状部分および谷状部分によって減殺される。換言すると、そのような2種類の配列ピッチw1,w2の単位レンズUL11,UL12により形成される光量分布における山状部分および谷状部分同士が重畳することで、互いに打ち消し合う方向に作用する。
また、このような配列ピッチw2の単位レンズUL12により形成される光量分布における照明領域幅をD2(=β×w2)、この照明領域幅D2内の光量分布における山状部分のうちの最大明部間の間隔をh21、2番目明部の間隔をh22とする。すると、配列ピッチw2の単位レンズUL12により形成される光量分布における山状部分および谷状部分はまた、以下の(2)式で規定される配列ピッチw3の単位レンズUL13により形成される光量分布における山状部分および谷状部分によって減殺される。
したがって、分割領域の個数をN(N:2以上の自然数)、n番目(n=1,2,…,N)の分割領域内の単位レンズにおける配列ピッチをwn、(n−1)番目の分割領域内の単位レンズにおける配列ピッチをw(n-1)とすると、一般化された以下の(3)式が成り立つことになる。
このように、各分割領域A11〜A14における単位レンズUL11〜UL14の配列ピッチw1〜w4が互いに異なっているため、各単位レンズUL11〜UL14により形成される光量分布のサイズ(照明領域幅)も互いに異なるものとなる。したがって、後述するように各光量分布における山状部分および谷状部分の位置もそれぞれ変位することとなり、それらが互いに減殺されるようにすることが可能となっている。
[表示装置3の作用・効果]
(1.表示動作)
この表示装置3では、図1に示したように、まず照明装置1において、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bからそれぞれ出射された光(レーザ光)が、カップリングレンズ12R,12G,12Bによってそれぞれコリメートされ、平行光となる。次いで、このようにして平行光とされた各レーザ光(赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光)は、ダイクロイックプリズム131,132によって色合成(光路合成)がなされる。光路合成がなされた各レーザ光は、光学素子14、フライアイレンズ15およびコンデンサレンズ17をこの順に通過し、照明光として出射する。この際、フライアイレンズ15によって、このフライアイレンズ15からの出射光Loutの均一化(面内の光量分布の均一化)が図られる。このようにして、照明装置1から照明光が出射される。
次いで、この照明光は、偏光ビームスプリッタ23によって選択的に反射され、フィールドレンズ22を介して反射型液晶素子21へ入射する。反射型液晶素子21では、この入射光が映像信号に基づいて変調されつつ反射されることにより、映像光として出射する。ここで、この反射型液晶素子21では、入射時と出射時とにおける各偏光が異なるものとなるため、反射型液晶素子21から出射した映像光は選択的に偏光ビームスプリッタ23を透過し、投射レンズ24へと入射する。そして、この入射光(映像光)は、投射レンズ24によって、スクリーン30に対して投射(拡大投射)される。
この際、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えば、所定の発光周波数による間欠的な発光動作を行う。これにより、各レーザ光(赤色レーザ光,緑色レーザ光,青色レーザ光)が、時分割的に順次出射される。そして、反射型液晶素子21では、各色成分(赤色成分、緑色成分、青色成分)の映像信号に基づいて、対応する色のレーザ光が時分割的に順次変調される。このようにして、映像信号に基づくカラー映像表示が表示装置3においてなされる。
(2.回折むらの低減作用)
続いて、フライアイレンズ15の作用(照明光における回折むらの低減作用)について説明する。
まず、レーザ光は可干渉性が強いため、フライアイレンズを光路上に配置した場合、照明像に干渉成分や回折パターンが発生する問題がある。具体的には、フライアイレンズには一般に矩形状の単位レンズが2次元配列されていることから、この単位レンズにおける矩形形状が伝播光(レーザ光)にとっての開口として作用し、開口回折(フラウンフォーファー回折)が生じる。すると、照明光におけるエッジ部分がそのような回折の影響を強く受けて光量の強弱が繰り返され、振動振幅のような輝度むら(回折むら)が発生する。このようにして、例えば図5に示したように、スクリーン30上の投射映像においても、周辺部分に線状の輝度むら(回折濃淡模様)が生じ、表示画質が劣化してしまうことになる。
なお、そのような回折むらの対策として、前述した反射型液晶素子21上の有効照明領域Deffの外側に回折むらがはみ出るように設計する、という手法も考えられる。しかしながら、その場合、回折むらは低減されるものの、光利用効率が低下してしまうことになる。
そこで本実施の形態では、フライアイレンズ15における各単位レンズUL11〜UL14からの出射光により被照射面上(反射型液晶素子21上)に形成される光量分布において所定の条件を満たすように、各分割領域A11〜A14における配列ピッチw1〜w4が設定されている。具体的には、前述した(3)式を満たすように、各配列ピッチw1〜w4が設定されている。
これにより例えば図6に示したように、そのような光量分布における山状部分と谷状部分とが、複数の分割領域A11〜A14ごとに得られる光量分布同士の重ね合わせ(加重平均)によって、互いに減殺し合うこととなる。具体的には、この例では、分割領域A11における単位レンズUL11からの照明光によって形成される光量分布と、分割領域A12における単位レンズUL12からの照明光によって形成される光量分布と、分割領域A13における単位レンズUL13からの照明光によって形成される光量分布と、分割領域A14における単位レンズUL14からの照明光によって形成される光量分布とが、互いに重畳される。
そして、各光量分布における山状部分および谷状部分の位置が少しずつずれているため、それらの重ね合わせによって、光量分布が平坦化することとなる。その結果、例えば図7に示したように、レーザ光における可干渉性とフライアイレンズ15における複数の単位レンズの2次元配列とに起因して被照射面上(反射型液晶素子21上)の光量分布内に発生する回折むら(回折現象により生ずる輝度むら)が、低減する。具体的には、本実施の形態に係る実施例(実施例1)では、フライアイレンズにおいて本実施の形態のような領域分割がなされていない比較例1と比べ、光量分布における山状部分および谷状部分の発生が抑えられ、上記した回折むらが低減している。
以上のように本実施の形態では、上記光量分布における山状部分と谷状部分とが複数の分割領域A11〜A14ごとに得られる光量分布同士の重ね合わせによって互いに減殺し合うように、各分割領域A11〜A14における単位レンズUL11〜UL14の配列ピッチw1〜w4を設定したので、回折現象により生ずる輝度むらが低減する。よって、照明光における輝度むらを低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
また、反射型液晶素子21上の有効照明領域Deff内に回折むらの発生位置を保持しつつ、そのような回折むらの発生を低減するようにしたので、光利用効率を低下させずに表示画質を向上させることが可能となる。
なお、本実施の形態(および以下の関連する変形例等)で説明した手法では、光量分布における山状部分と谷状部分とが必ずしも完全に打ち消し合う(相殺する)必要はなく、互いに打ち消し合う方向(減殺する方向)に各パラメータが設定されているようにすればよい。すなわち、完全に打ち消し合う条件から各パラメータが若干ずれていたとしても、光量分布における山状部分および谷状部分の位置が分割領域ごとに少しでもずれていれば、これらの位置が一致している場合と比べて回折むらはある程度低減することとなる。
具体的には、前述した(1)式や(2)式(一般式としては(3)式)および図4で示したように、一の分割領域の光量分布における谷状部分の位置に他の分割領域の光量分布における山状部分が位置する場合が最適条件であり、回折むらの低減効果が最も大きくなる。しかしながら、以下の(4)式等(一般式としては(5)式)および図4中の範囲Δh内で示したように、一の分割領域の光量分布における谷状部分と山状部分との中間地点よりも谷状部分寄りの位置に、他の分割領域の光量分布における山状部分が位置するようにしてもよい。このような範囲Δh内の位置であれば((4)式等や(5)式を満たすようにすれば)、光量分布における山状部分と谷状部分とが互いに打ち消し合う関係(減殺する関係)となり、回折むらが低減する。実際に、(5)式の上限値および下限値(例えば図4中の範囲Δhの右端および左端の位置に対応)に相当するサンプルを作製して実験を行ったところ、上記最適条件に近い大きな回折むら低減効果が得られた。このように、実際の設計の際には、例えば素子作製上の都合に併せて、上記(5)式で規定する範囲内で各パラメータの値を調整してもよい。また、その際に、多少の製造誤差は許容される。
<変形例1>
続いて、上記第1の実施の形態の変形例(変形例1)について説明する。なお、第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
[表示装置3Aの構成]
図8は、変形例1に係る表示装置(表示装置3A)の全体構成を表すものである。この表示装置3Aは、変形例1に係る照明装置(照明装置1A)と、この照明装置1Aからの照明光を用いて映像表示を行うための表示光学系とを備えている。すなわち、表示装置3において、照明装置1の代わりに照明装置1Aを設けたものとなっている。
照明装置1Aは、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、カップリングレンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学素子14、駆動部140、フライアイレンズ15Aおよびコンデンサレンズ17を備えている。すなわち、この照明装置1Aは、照明装置1においてフライアイレンズ15の代わりに以下説明するフライアイレンズ15Aを設けたものに対応し、他の構成は同様となっている。
(フライアイレンズ15A)
第1の実施の形態で説明したフライアイレンズ15では、単位レンズにおける配列ピッチが、複数の分割領域ごとに異なっていた。これに対し、本変形例のフライアイレンズ15Aでは、単位レンズにおける光軸方向の厚みが複数の分割領域ごとに異なっており、他の構成は同様となっている。すなわち、フライアイレンズ15では、単位レンズにおける配列ピッチが本開示における「パラメータ」の一具体例に対応し、フライアイレンズ15Aでは、単位レンズにおける光軸方向の厚みが本開示における「パラメータ」の一具体例に対応している。
図9は、フライアイレンズ15Aの平面(X−Y平面)構成例を表したものであり、光入射面Sin側から見た平面構成に対応している。また、図10は、このフライアイレンズ15Aの断面(Y−Z断面)構成例(図9中に示したII−II線に沿った断面構成例)を表したものである。
本変形例のフライアイレンズ15Aは、図9に示したように、複数の単位レンズ(後述する単位レンズUL21,UL22,UL23,UL24)が2次元配列されてなる。すなわち、複数の単位レンズが、X軸方向およびY軸方向の双方に沿って配列されている。また、第1の実施の形態と同様に、各単位レンズは、X軸方向を長軸方向とすると共にY軸方向を短軸方向とする異方性形状(ここでは矩形状)からなる平面(X−Y平面)形状を有している。
ここで、フライアイレンズ15Aにおいてもフライアイレンズ15と同様に、図9に示したように、その光通過面(光入射面Sinおよび光出射面Sout)が、複数の分割領域(ここでは、4つの分割領域A21,A22,A23,A24)に分割されている。具体的には、光通過面上の中心点Pcを中心にして、4つの分割領域A21,A22,A23,A24が光通過面上で点対称に配置されている。そして、各分割領域A21,A22,A23,A24内においても、複数の単位レンズが2次元配列されている。すなわち、分割領域A21内では複数の単位レンズUL21が2次元配列され、分割領域A22内では複数の単位レンズUL22が2次元配列され、分割領域A23内では複数の単位レンズUL23が2次元配列され、分割領域A24内では複数の単位レンズUL24が2次元配列されている。
また、このフライアイレンズ15Aにおいても、各単位レンズにおける形状のパラメータが、複数の分割領域A21,A22,A23,A24ごとに互いに異なっている。具体的には、本変形例では図10に示したように、上記パラメータとして、単位レンズにおける光軸方向(Z軸方向)の厚みが、複数の分割領域A21,A22,A23,A24ごとに互いに異なっている。詳細には、分割領域A21における単位レンズUL21の光軸方向の厚みをd1、分割領域A22における単位レンズUL22の光軸方向の厚みをd2、分割領域A23における単位レンズUL23の光軸方向の厚みをd3、分割領域A24における単位レンズUL24の光軸方向の厚みをd4とすると、例えば以下のように各厚みd1〜d4が設定されている。そして、このような各分割領域A21,A22,A23,A24におけるパラメータ(ここでは光軸方向の厚みd1〜d4)は、後述する所定の関係を満たすようになっている。
d1:d2:d3:d4=1.03:1.00:0.97:0.94
(d1>d2>d3>d4)
なお、これに対して、フライアイレンズ15Aにおける各単位レンズUL21〜UL24の配列ピッチは、図9に示したように、分割領域A21,A22,A23,A24間で共通の値(配列ピッチ:w)となっている。すなわち、本変形例では第1の実施の形態とは異なり、各単位レンズUL21〜UL22の平面形状(X−Y平面)は、互いに同一となっている。
また、本変形例においても、各単位レンズUL21〜UL24(1つの単位レンズ)からの出射光により被照射面上(反射型液晶素子21上)に形成される光量分布には、山状部分と谷状部分とが存在する。そして、このような山状部分と谷状部分とが、複数の分割領域A21〜A24ごとに得られる上記光量分布同士の重ね合わせによって互いに減殺し合うように、各分割領域A21〜A24における単位レンズUL21〜UL24の光軸方向の厚みd1〜d4が設定されている。
ここで、分割領域A21内の1つの単位レンズUL21からの出射光により、反射型液晶素子21上に形成される上記光量分布(回折むら)は、第1の実施の形態と同様に図4に示したようになる。したがって、本変形例においても基本的には第1の実施の形態と同様に、光軸方向の厚みd1の単位レンズUL21により形成される光量分布における山状部分および谷状部分は、以下の(6)式で規定される光軸方向の厚みd2の単位レンズUL22により形成される光量分布における山状部分および谷状部分によって減殺される。
なお、係数αは、所定の場合における倍率変化を表す係数である。具体的には、例えば第1の実施の形態のように、単位レンズにおける配列ピッチが前述の「パラメータ」である場合には、係数α=1である。これは、単位レンズにおける配列ピッチが前述の「パラメータ」である場合には、この配列ピッチのみが回折ピッチを決定する要素となるためである。一方、例えば本変形例のように、単位レンズにおける光軸方向の厚みが前述の「パラメータ」である場合には、係数α≠1である。これは、単位レンズにおける光軸方向の厚みが前述の「パラメータ」である場合には、それに伴って単位レンズのパワーも変化するためである(単位レンズと反射型液晶素子21との倍率比が変化し、上記した山状部分と谷状部分とが減殺し合う位置もずれるためである)。つまり、この係数αは、単位レンズにおける光軸方向の厚み(軸上厚)を変化させた場合における倍率変化を表す係数であると言える。なお、係数αの値は、単位レンズの設計(例えば、曲率,光軸方向の厚み,屈折率,非球面係数等の設計)によって任意の値を取り得る可変値である。ちなみに、前述したd1:d2:d3:d4の具体例(=1.03:1.00:0.97:0.94)では、α=1.02となる(最適値の一例)。
また、光軸方向の厚みd2の単位レンズUL22により形成される光量分布における山状部分および谷状部分はまた、以下の(7)式で規定される光軸方向の厚みd3の単位レンズUL23により形成される光量分布における山状部分および谷状部分によって減殺される。
したがって、分割領域の個数をN(N:2以上の自然数)、n番目(n=1,2,…,N)の分割領域内の単位レンズにおける光軸方向の厚みをdn、(n−1)番目の分割領域内の単位レンズにおける光軸方向の厚みをd(n-1)とすると、一般化された以下の(8)式が成り立つことになる。
このように、各分割領域A21〜A24における単位レンズUL21〜UL24の光軸方向の厚みd1〜d4が互いに異なっているため、各単位レンズUL21〜UL24により形成される光量分布のサイズ(照明領域幅)も互いに異なるものとなる。したがって、本変形例においても第1の実施の形態と同様に、各光量分布における山状部分および谷状部分の位置もそれぞれ変位することとなり、それらが互いに減殺されるようにすることが可能となっている。
[表示装置3Aの作用・効果]
このようにして本変形例の表示装置3Aでは、フライアイレンズ15Aにおける各単位レンズUL21〜UL24からの出射光により被照射面上(反射型液晶素子21上)に形成される光量分布において、以下のように設定されている。すなわち、所定の条件を満たすように、各分割領域A21〜A24における単位レンズUL21〜UL24の光軸方向の厚みd1〜d4が設定されている。具体的には、上記(8)式を満たすように、各光軸方向の厚みd1〜d4が設定されている。
これにより第1の実施の形態と同様に、そのような光量分布における山状部分と谷状部分とが、複数の分割領域A21〜A24ごとに得られる光量分布同士の重ね合わせ(加重平均)によって、互いに減殺し合うこととなる。その結果、本変形例においても第1の実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、回折現象により生ずる輝度むらを低減することができ、照明光における輝度むらを低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
なお、本変形例においても第1の実施の形態と同様に、以下のことが言える。すなわち、前述した(6)式や(7)式(一般式としては(8)式)および図4で示したように、一の分割領域の光量分布における谷状部分の位置に他の分割領域の光量分布における山状部分が位置する場合が最適条件であり、回折むらの低減効果が最も大きくなる。しかしながら、以下の(9)式等(一般式としては(10)式)および図4中の範囲Δh内で示したように、一の分割領域の光量分布における谷状部分と山状部分との中間地点よりも谷状部分寄りの位置に、他の分割領域の光量分布における山状部分が位置するようにしてもよい。このような範囲Δh内の位置であれば((9)式等や(10)式を満たすようにすれば)、光量分布における山状部分と谷状部分とが互いに打ち消し合う関係(減殺する関係)となり、回折むらが低減する。
<第2の実施の形態>
続いて、本開示の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態等における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
[表示装置3Bの構成]
図11は、第2の実施の形態に係る表示装置(表示装置3B)の全体構成を表すものである。この表示装置3Bは、第2の実施の形態に係る照明装置(照明装置1B)と、この照明装置1Bからの照明光を用いて映像表示を行うための表示光学系とを備えている。すなわち、表示装置3において、照明装置1の代わりに照明装置1Bを設けたものとなっている。
照明装置1Bは、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、カップリングレンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学素子14、駆動部140、フライアイレンズ15Bおよびコンデンサレンズ17を備えている。すなわち、この照明装置1Bは、照明装置1においてフライアイレンズ15の代わりに以下説明するフライアイレンズ15Bを設けたものに対応し、他の構成は同様となっている。
(フライアイレンズ15B)
第1の実施の形態のフライアイレンズ15では、単位レンズにおける配列ピッチが、複数の分割領域ごとに異なっていた。また、変形例1のフライアイレンズ15Aでは、単位レンズにおける光軸方向の厚みが、複数の分割領域ごとに異なっていた。これに対し、本実施の形態のフライアイレンズ15Bでは、単位レンズにおける光入射側レンズ頂点の位置が分割領域ごとに異なっている。
図12は、フライアイレンズ15Bの平面(X−Y平面)構成例を表したものであり、光入射面Sin側から見た平面構成に対応している。また、図13は、このフライアイレンズ15Bにおける単位レンズの断面(Y−Z断面)構成例を表したものである。
本実施の形態のフライアイレンズ15Bでは、図12に示したように、複数の単位レンズ(後述する単位レンズUL31,UL32,UL33,UL34,UL35)が2次元配列されてなる。すなわち、複数の単位レンズが、X軸方向およびY軸方向の双方に沿って配列されている。また、第1の実施の形態および変形例1と同様に、各単位レンズは、X軸方向を長軸方向とすると共にY軸方向を短軸方向とする異方性形状(ここでは矩形状)からなる平面(X−Y平面)形状を有している。
ここで、フライアイレンズ15Bにおいてもフライアイレンズ15,15Aと同様に、図12に示したように、その光通過面(光入射面Sinおよび光出射面Sout)が、複数の分割領域(ここでは、5つの分割領域A31,A32,A33,A34,A35)に分割されている。具体的には、この例では、光通過面上において光入射面Sin側から見て、5つの分割領域A31,A32,A33,A34,A35が、X軸の負方向に沿ってこの順に配置されている。そして、各分割領域A31,A32,A33,A34,A35内においても、複数の単位レンズが2次元配列されている。すなわち、分割領域A31内では複数の単位レンズUL31が2次元配列され、分割領域A32内では複数の単位レンズUL32が2次元配列され、分割領域A33内では複数の単位レンズUL33が2次元配列されている。また、分割領域A34内では複数の単位レンズUL34が2次元配列され、分割領域A35内では複数の単位レンズUL35が2次元配列されている。なお、本実施の形態においても変形例1と同様に、各単位レンズUL31〜UL35の平面形状(X−Y平面)は、互いに同一となっている。
また、このフライアイレンズ15Bでは、図13に示したように、各単位レンズにおける光入射側レンズ頂点Pinの位置が、複数の分割領域A31,A32,A33,A34,A35ごとに互いに異なっている。一方、各単位レンズにおける光出射側レンズ頂点Poutの位置は、複数の分割領域A31,A32,A33,A34,A35間で同一となっている。すなわち、光入射側レンズ頂点Pinの位置は、分割領域によっては偏芯している(X−Y平面形状の中心からずれている)場合がある一方で、光出射側レンズ頂点Poutの位置は、いずれの分割領域においても偏芯していない(X−Y平面形状の中心に位置している)。なお、本実施の形態では第1の実施の形態と同様に、各単位レンズUL31〜UL35における光軸方向(Z軸方向)の厚みは、互いに共通の値(厚み:d)となっている。
ここで、単位レンズにおいて、光出射側レンズ頂点Poutの位置に対する光入射側レンズ頂点Pinの変位量(偏芯量)をΔとし、各単位レンズにおける垂直方向(Y軸方向)の配列ピッチをpとする。すると、図13中に示したように、この配列ピッチpに対する偏芯量Δの割合(Δ/p)は、各分割領域A31〜A35の単位レンズUL31〜UL35において、例えば以下のように設定されている。なお、例えば図13中に示したように、以下では、光入射側レンズ頂点Pinの偏芯方向(光出射側レンズ頂点Poutの位置に対する光入射側レンズ頂点Pinの変位方向;偏芯量Δのずれ方向)を、偏芯量Δの横に矢印で示している。
単位レンズUL31: (Δ/p)=−0.10(−10%)
単位レンズUL32: (Δ/p)=−0.05( −5%)
単位レンズUL33: (Δ/p)= 0.00( 0%)
単位レンズUL34: (Δ/p)=+0.05( +5%)
単位レンズUL35: (Δ/p)=+0.10(+10%)
また、このフライアイレンズ15Bでは、例えば図14に示したように、複数の分割領域A31〜A35のうち、単位レンズにおける光出射側レンズ頂点Poutの位置から光入射側レンズ頂点Pinの位置が変位(偏芯)している分割領域では、以下のようになっている。すなわち、例えば図14中の矢印で示したように、そのように偏芯している分割領域(この例では、分割領域A31,A32,A34,A35)では、隣接する単位レンズ同士において、上記した偏芯方向(偏芯量Δのずれ方向)が、互いに逆(互い違い)となっている。具体的には、例えば分割領域A31内では、隣接する単位レンズUL31同士において、偏芯方向が互いに逆となっている。同様に、分割領域A32内では、隣接する単位レンズUL32同士において偏芯方向が互いに逆となっており、分割領域A34内では、隣接する単位レンズUL34同士において偏芯方向が互いに逆となっており、分割領域A35内では、隣接する単位レンズUL35同士において偏芯方向が互いに逆となっている。
[表示装置3Bの作用・効果]
本変形例の表示装置3Aでは、フライアイレンズ15Bが上記構成となっていることにより、以下説明する各単位レンズの加工痕に起因した輝度むらの発生が、抑えられる。このような加工痕に起因した輝度むらの低減作用について、比較例(比較例2)と比較しつつ詳細に説明する。
(比較例2)
まず、一般的なフライアイレンズ205(本実施の形態とは異なり、光入射側レンズ頂点Pinおよび光出射側レンズ頂点Poutの位置がいずれも偏芯していない単位レンズを用いたもの)をフライアイレンズ15Bの代わりに設けている比較例2では、以下のようになる。つまり、以下説明する原理にて、フライアイレンズ205における各単位レンズの加工痕に起因した輝度むらが発生する。
具体的には、例えば図15に示したように、フライアイレンズ205の各単位レンズUL(偏芯量Δ=0)における中央地点(光入射側レンズ頂点Pinおよび光出射側レンズ頂点Pout)を通過した光線同士は、被照射面上(反射型液晶素子21上)の同じ位置P202(中央地点)に到達する。同様に、例えば、フライアイレンズ205の各単位レンズULにおけるX軸方向の最奥側地点を通過した光線同士は、反射型液晶素子21上の同じ位置P203(X軸方向の最手前側地点)に到達する。また、例えば、フライアイレンズ205の各単位レンズULにおけるX軸方向の最手前側地点を通過した光線同士は、反射型液晶素子21上の同じ位置P201(X軸方向の最奥側地点)に到達する。このように、この比較例2では、フライアイレンズ205の各単位レンズULにおける同じ位置を通過した光線同士が、反射型液晶素子21上の同じ位置に到達する。
したがって、フライアイレンズ205の各単位レンズULに同様(共通)の加工痕が残留している場合、反射型液晶素子21上では、そのような加工痕に起因した輝度むらが同一位置で重畳されてしまうことになる(例えば図16中の矢印を参照)。その結果、例えば図17に模式的に示したように、投射映像が表示されているスクリーン30上においても、そのような加工痕に起因した輝度むらが発生し、表示画質が劣化してしまうことになる。なお、図16および図17に示したような同心円状の輝度むらが発生するのは、一般にフライアイレンズの各単位レンズには同心円状の加工痕が残留することによるものであり、特に中央部分にて顕著に輝度むらが生じている。
このような加工痕が各単位レンズに残留するのは、以下の理由による。すなわち、照明装置の光源としてレーザを用いた場合、光源の小型化が可能となるという利点がある一方で、それに伴って各光学部品の小型化も要求される。ここで、フライアイレンズは多数の単位レンズの集合体であることから、各単位レンズは数百μmオーダーの非常に小さなものとなる。そのため、製造の際には光学部品としての加工精度が要求され、現在の加工レベルでは、単位レンズの金型加工時に加工バイトの切削痕(加工痕)が残留してしまうのが現状である。このように、フライアイレンズの各単位レンズに加工痕が残留してしまうのは、光源にレーザを用いて小型化を進めたことによるものである。
ここで、このような加工痕に起因した輝度むらは、原理的に、各単位レンズにおける光入射面側の加工痕のみが寄与し、光出射面側の加工痕は寄与しない。これは、以下の理由によるものである。すなわち、まず、各単位レンズが両凸レンズ(光入射面側および光出射面側の双方に凸のレンズ)である場合、例えば配列ピッチや曲率等が同じであれば、同程度の加工痕が残留することになる。それにも関らず、上記したように各単位レンズにおける光入射面側の加工痕のみが寄与するというのは、照明光学系における共役関係が関係している。つまり、まず一般に、反射型液晶素子等の光変調素子上の映像が照明されてスクリーン上に拡大投射されるため、スクリーンと光変調素子とが共役関係となるように配置される。次に、光変調素子が照明光学系内のどの位置と共役関係にあるのかについて、前述した図15を用いて説明する。この図15中の反射型液晶素子21(光変調素子)上の位置P202(中央地点)から、照明光学系側に光線を辿ると、フィールドレンズ22およびコンデンサレンズ17を経由して、フライアイレンズ205の位置に平行光で到達する。これは、フィールドレンズ22およびコンデンサレンズ17における焦点距離の位置に、反射型液晶素子21が配置されているためである。このとき、仮にフライアイレンズ205における光出射面側から平行光が入射すると、その焦点位置は、フライアイレンズ205における各単位レンズULの光入射面付近(光入射側レンズ頂点Pinの位置付近)となる。したがって、フライアイレンズ205における光入射面付近と反射型液晶素子21の位置とが、共役関係となる。よって、共役関係にある像同士がある所定の倍率によって共役像を結ぶため、フライアイレンズ205の各単位レンズULにおける光入射面側の加工痕が、輝度むらに寄与することとなる。これに対して、フライアイレンズ205における光出射面側の共役関係位置は、反射型液晶素子21上で反射されて投射レンズ24側へ進行する光線の、投射レンズ24における瞳近傍となる。よって、フライアイレンズ205における光出射面近傍は、反射型液晶素子21の位置とは共役関係とはならないため、フライアイレンズ205の各単位レンズULにおける光出射面側の加工痕は、輝度むらには寄与しないのである。
なお、このような原理にて発生する加工痕による輝度むらを、特殊な加工法を採用することで対応することも考えられる。すなわち、特殊な加工法を用いることで、各単位レンズに残留する加工痕自体を除去してしまう、という手法である。ただし、特殊な金型加工ツールを必要とするため、フライアイレンズ自体の価格が高くなってしまったり、加工時間が増加するため製造効率が低下してしまう。
(加工痕に起因した輝度むらの低減作用)
そこで本実施の形態では、そのような特殊な加工法を用いることなく、フライアイレンズ15Bにおける単位レンズの形状を工夫することで、加工痕に起因した輝度むらの発生を抑えるようにしている。すなわち、前述したように、フライアイレンズ15Bの単位レンズにおいて、その少なくとも一部の光入射面側レンズ頂点Pinの位置を偏芯させることで、加工痕に起因した輝度むらの発生を抑えている。
具体的には、このフライアイレンズ15Bでは、例えば図12および図13に示したように、まず、その光通過面(光入射面Sinおよび光出射面Sout)が、複数の分割領域A31〜A35に分割されている。そして、各単位レンズUL31〜UL35における光入射側レンズ頂点Pinの位置が、複数の分割領域A31〜A35ごとに互いに異なっている。
これにより例えば図18中の符号P1で示したように、複数の分割領域A31〜A35間で、単位レンズUL31〜UL35における光入射側レンズ頂点Pinを通過した光線同士が、被照射面上(反射型液晶素子21上)の異なる位置に到達するようになる。具体的には、この図18中に代表して示した例では、分割領域A31の単位レンズUL31、分割領域A33の単位レンズUL33および分割領域A35の単位レンズUL35における各光入射側レンズ頂点Pinを通過した光線同士が、反射型液晶素子21上の異なる位置に到達している。つまり、上記比較例2の場合(図15)に対して反射型液晶素子21上への照明範囲は変えることなく、フライアイレンズ15Bを通過してくる各光線の光路(通過経路)のみを変化させることで、反射型液晶素子21上の同じ位置に到達しないように照明関係を変えている。
なお、各単位レンズUL31〜UL35における光入射側レンズ頂点Pinを通過した光線を代表して示しているのは、この光入射側レンズ頂点Pin(加工痕が顕著に表れる部分)を通過する光線が、加工痕による輝度むらに特に寄与するためである。つまり、本実施の形態のフライアイレンズ15Bのように、光入射側レンズ頂点Pinの位置が偏芯していたとしても、各単位レンズUL31〜UL35における金型加工の際には同心円状に加工を行うため、各光入射側レンズ頂点Pinを中心に同一の加工痕が発生する。
このようにして、複数の分割領域A31〜A35間で、単位レンズUL31〜UL35における光入射側レンズ頂点Pinを通過した光線同士が反射型液晶素子21上の異なる位置に到達することで、各単位レンズUL31〜UL35における加工痕の影響が加算平均化される。その結果、既存の加工手法を用いて各単位レンズUL31〜UL35に加工痕が残留していたとしても、反射型液晶素子21上では、そのような加工痕の影響が見かけ上消失することになる。よって、本実施の形態では例えば図19に示した実施例2のように、図16に示した上記比較例2と比べ、各単位レンズUL31〜UL35の加工痕に起因した輝度むらの発生が抑えられる。
また、本実施の形態では例えば図20に中の符号P21,P22,P23で示したように、複数の分割領域A31〜A35間で、単位レンズUL31〜UL35における光出射側レンズ頂点Poutを通過した光線同士が、反射型液晶素子21上の同じ位置に到達する。つまり、単位レンズUL31,UL32,UL34,UL35における光入射側レンズ頂点Pinが偏芯しているにも関わらず、図16に示した比較例2と同様に、反射型液晶素子21上の同じ位置に到達している。したがって、反射型液晶素子21上の照明位置は変化していないことから、比較例2と比べて光利用効率が低下することもない。
更に、本実施の形態のフライアイレンズ15Bでは、例えば図14に示したように、光入射側レンズ頂点Pinの位置が偏芯している分割領域(分割領域A31,A32,A34,A35)では、隣接する単位レンズ同士において、偏芯方向(偏芯量Δのずれ方向)が互いに逆となっている。これにより、各単位レンズの光入射面Sin側の形状が連続的なものとなるため、下記の比較例3,4のように、隣接する単位レンズ同士で偏芯方向が同一となっている(揃っている)場合と比べ、以下の利点が得られる。
すなわち、まず、図21に示した比較例3に係るフライアイレンズ305では、隣接する単位レンズUL301同士で、偏芯方向(矢印で示した偏芯量Δのずれ方向)が同一となっている。このため、光入射面Sin側の形状が非連続なものとなり、各単位レンズUL301が形成しにくくなる。逆に言うと、本実施の形態のフライアイレンズ15Bでは、このような比較例3のフライアイレンズ305と比べ、各単位レンズが形成し易くなる。
また、図22に示した比較例4に係るフライアイレンズ405においても、隣接する単位レンズUL401同士で、偏芯方向(矢印で示した偏芯量Δのずれ方向)が同一となっている。更に、このフライアイレンズ405における偏芯形状は、例えば光源像を散らすためのものであったり、コンデンサレンズとフライアイレンズとの複合素子にすることを目的としてパワーを持たせたものである。すなわち、本実施の形態のフライアイレンズ15Bとは、偏芯形状の目的および偏芯形状自体が、いずれも異なっている。
以上のように本実施の形態では、単位レンズUL31〜UL35における光入射側レンズ頂点Pinの位置が複数の分割領域A31〜A35ごとに互いに異なっているようにしたので、各単位レンズUL31〜UL35の加工痕に起因した輝度むらの発生が抑えられる。よって、照明光における輝度むらを低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。
また、複数の分割領域A31〜A35のうち、光出射側レンズ頂点Pinの位置が偏芯している分割領域(分割領域A31,A32,A34,A35)では、隣接する単位レンズ同士で偏芯方向が互いに逆となっているようにしたので、各単位レンズが形成し易くなる。よって、フライアイレンズ15Bを容易に製造することも可能となる。
<第3の実施の形態>
続いて、本開示の第3の実施の形態について説明する。なお、第1,第2の実施の形態等における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
[表示装置3Cの構成]
図23は、第3の実施の形態に係る表示装置(表示装置3C)の全体構成を表すものである。この表示装置3Cは、第3の実施の形態に係る照明装置(照明装置1C)と、この照明装置1Cからの照明光を用いて映像表示を行うための表示光学系とを備えている。すなわち、表示装置3において、照明装置1の代わりに照明装置1Cを設けたものとなっている。
照明装置1Cは、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、カップリングレンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学素子14、駆動部140、フライアイレンズ15Cおよびコンデンサレンズ17を備えている。すなわち、この照明装置1Cは、照明装置1においてフライアイレンズ15の代わりに以下説明するフライアイレンズ15Cを設けたものに対応し、他の構成は同様となっている。
(フライアイレンズ15C)
本実施の形態のフライアイレンズ15Cは、第1の実施の形態で説明したフライアイレンズ15の構成と、第2の実施の形態で説明したフライアイレンズ15Cの構成とを組み合わせたものとなっている。
すなわち、例えば図24に示したフライアイレンズ15Cの平面(X−Y平面)構成例(光入射面Sin側から見た平面構成例)から分かるように、フライアイレンズ15Cは以下のような構成となっている。
まず、フライアイレンズ15Cにおける各単位レンズからの出射光により被照射面上(反射型液晶素子21上)に形成される光量分布において所定の条件を満たすように、各分割領域A11〜A14における所定のパラメータが設定されている。具体的には、前述した(5)式または(10)式(望ましくは、前述した(3)式または(8)式)を満たすように、各分割領域A11〜A14における単位レンズの配列ピッチw1〜w4または光軸方向の厚みd1〜d4が設定されている。
また、各分割領域A31〜A35の単位レンズにおける光入射側レンズ頂点Pinの位置が、これら複数の分割領域A31〜A35ごとに互いに異なっている。そして、光入射側レンズ頂点Pinの位置が偏芯している分割領域(分割領域A31,A32,A34,A35)では、隣接する単位レンズ同士において、偏芯方向(偏芯量Δのずれ方向)が互いに逆となっている。
このように、上記パラメータ(単位レンズの配列ピッチw1〜w4または光軸方向の厚みd1〜d4)と、光入射側レンズ頂点Pinにおける偏芯とは互いに独立したパラメータであることから、分割領域の数は増加するものの、このようなフライアイレンズ15Cを形成することは可能である。なお、このフライアイレンズ15Cの例では、光通過面上の中心点Pcを中心にして、4つの分割領域A11,A12,A13,A14が光通過面上で点対称に配置されている。また、それと同時に、光通過面上において光入射面Sin側から見て、5つの分割領域A31,A32,A33,A34,A35が、X軸の負方向に沿ってこの順に配置されている。
[表示装置3Cの作用・効果]
このような構成により本実施の形態の表示装置3Cでは、第1,第2の実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、回折現象により生ずる輝度むらと、各単位レンズの加工痕に起因した輝度むらとの双方を低減することができ、照明光における輝度むらを更に低減する(表示画質を更に向上させる)ことが可能となる。また、それと共に、フライアイレンズ15Cを容易に製造することも可能となる。
なお、本実施の形態では、フライアイレンズ15Cが、第1の実施の形態で説明したフライアイレンズ15の構成と、第2の実施の形態で説明したフライアイレンズ15Cの構成とを組み合わせたものとなっている場合について説明した。ただし、これには限られず、例えば、変形例1で説明したフライアイレンズ15Aの構成と、第2の実施の形態で説明したフライアイレンズ15Cの構成とを組み合わせたフライアイレンズを用いるようにしてもよい。この場合も、変形例1および第2の実施の形態と同様の作用により、本実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
<変形例2>
続いて、上記第1〜第3の実施の形態および変形例1に共通の変形例(変形例2)について説明する。本変形例は、第1〜第3の実施の形態および変形例1に係るフライアイレンズのうちのいずれかを、これまで説明したものとは異なり、2段構成のフライアイレンズに適用した例となっている。なお、第1〜第3の実施の形態等における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
[表示装置3Dの構成]
図25は、変形例2に係る表示装置(表示装置3D)の全体構成を表すものである。この表示装置3Dは、変形例2に係る照明装置(照明装置1D)と、この照明装置1Dからの照明光を用いて映像表示を行うための表示光学系とを備えている。すなわち、表示装置3において、照明装置1の代わりに照明装置1Dを設けたものとなっている。
照明装置1Dは、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、カップリングレンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学素子14、駆動部140、フライアイレンズ151,152、サブコンデンサレンズ161,162およびコンデンサレンズ17を備えている。このように、この照明装置1Dは、照明装置1等において、前段側のフライアイレンズ151およびサブコンデンサレンズ161,162を更に設けたものに対応し、他の構成は同様となっている。
(フライアイレンズ151,152)
フライアイレンズ151,152はそれぞれ、基板上に複数の単位レンズが2次元配置された光学部材(インテグレータ)であり、これらの単位レンズの配列に応じて入射光束を空間的に分割して出射させるものである。フライアイレンズ151は、光源部側からみて前段側のフライアイレンズであり、ここでは光源部とフライアイレンズ152との間の光路上(具体的には、ダイクロイックプリズム132と光学素子14との間の光路上)に配置されている。フライアイレンズ152は後段側のフライアイレンズであり、ここでは光学素子14とコンデンサレンズ17との間の光路上に配置されている。これらのフライアイレンズ151,152ではそれぞれ、分割された光束が重畳されるように出射される。これにより、フライアイレンズ152からの出射光L2outの均一化(面内の光量分布の均一化)が図られ、照明光として出射されるようになっている。
ここで本変形例では、これら2つ(2段構成)のフライアイレンズ151,152のうち、後段側のフライアイレンズ152が、これまでに説明したフライアイレンズ15,15A〜15Cのうちのいずれかにより構成されている。すなわち、フライアイレンズ151が本開示における「他の均一化光学部材」の一具体例に対応し、フライアイレンズ152が本開示における「均一化光学部材」の一具体例に対応している。
(サブコンデンサレンズ161,162)
サブコンデンサレンズ161,162はそれぞれ、2つのフライアイレンズ151,152の間の光路上に配置(フライアイレンズ151側にサブコンデンサレンズ161、フライアイレンズ152側にサブコンデンサレンズ162が配置)されている。これらのサブコンデンサレンズ161,162はそれぞれ、正のパワーを有するレンズであり、リレー光学系を構成している。具体的には、サブコンデンサレンズ161は、フライアイレンズ151からの出射光を集光し、光学素子14へ入射させるためのレンズである。同様に、サブコンデンサレンズ162は、光学素子14からの出射光を集光し、フライアイレンズ152へ入射させるためのレンズである。
[表示装置3Dの作用・効果]
このような構成の本変形例の表示装置3Dにおいても、第1〜第3の実施の形態および変形例1と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、回折現象により生ずる輝度むら、および各単位レンズの加工痕に起因した輝度むらのうちの少なくとも一方を低減することができ、照明光における輝度むらを低減する(表示画質を向上させる)ことが可能となる。また、加工痕に起因した輝度むらが低減される場合には、それと共にフライアイレンズを容易に製造することも可能となる。
更に、本変形例では、照明装置1D内で2段構成のフライアイレンズ151,152が設けられているため、1段目のフライアイレンズ151によって、2段目のフライアイレンズ152への入射光の光量分布の均一化が図られる。このように、レーザの発散角によらずに、2段目のフライアイレンズ152への入射光の光量分布が均一化されるため、照明光学系の光学設計によってFナンバー(擬似FナンバーF’)が一意に決まることになり、以下のような特性の変動が抑えられる。すなわち、光源としてレーザを用いた光学系では一般に、レーザにおける発散角の変動によって、フォーカス深度が変動したり、後述するスペックルノイズの度合いが変動したりし、プロジェクタ特性が大きく左右されるが、本変形例ではそのような特性の変動が抑えられる。
また、レーザ光を用いたプロジェクタでは一般に、瞳共役位置における光量分布がレーザの放射分布そのもの(ガウス分布)となるため、中央付近での強度が強い。そのため、瞳位置でも同様に、中央付近での強度が強い光量分布となり、人間(ユーザ)の目に危険を及ぼすおそれがあることから、レーザ光の強度(照明光の光量)を制限する必要が生じてしまう。
これに対して変形例では、上記したように2段構成のフライアイレンズ151,152によって、2段目のフライアイレンズ152への入射光L2inの光量分布の均一化が図られる。したがって、瞳位置での光量分布の均一化も図られ、人間の目にとってもダメージが小さくなる。その結果、レーザ光の強度(照明光の光量)の制限が緩くて済むようになり、安全規格を遵守しつつ表示映像の明るいプロジェクタを構築できるようになる。
<その他の変形例>
以上、いくつかの実施の形態および変形例を挙げて本開示の技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態等では、フライアイレンズにおける光通過面が、4つまたは5つの分割領域に分割、あるいはそれらの組合せの態様で分割されている場合について説明したが、複数の分割領域の個数(およびそれらの分割領域の配置の仕方)は、これには限られない。すなわち、製造が可能な限りにおいて分割領域の個数を増やす(より細かく分割する)ことで、更なる特性の向上(輝度むらの更なる抑制)を図ることが可能となる。
また、上記実施の形態等では、本開示における「均一化光学部材」がフライアイレンズからなる場合を例に挙げて説明したが、この均一化光学部材が他の光学部材(例えばロッドインテグレータ等)からなるようにしてもよい。
更に、上記実施の形態等では、照明装置内に光学素子14およびその駆動部140が設けられている場合について説明したが、これには限られず、場合によってはそれらを設けないようにしてもよい。
加えて、上記実施の形態等では、複数種類(赤色用,緑色用,青色用)の光源がいずれもレーザ光源である場合について説明したが、この場合には限られない。具体的には、例えば第1の実施の形態および変形例1ならびにそれらの変形例等では、複数種類の光源のうちの少なくとも1つがレーザ光源であればよい。すなわち、光源部内に、レーザ光源と他の光源(例えばLED等)とを組み合わせて設けるようにしてもよい。また、例えば第2の実施の形態およびその変形例等では、複数種類の光源の各々を、任意の組み合わせにてレーザ光源以外の他の光源(例えばLED等)に置き換えるようにしてもよい。
また、上記実施の形態等では、光変調素子が反射型の液晶素子である場合を例に挙げて説明したが、この場合には限られない。すなわち、例えば透過型の液晶素子であってもよく、更には、液晶素子以外の光変調素子(例えば、DMD(Digital Micromirror Device)など)であってもよい。
更に、上記実施の形態等では、異なる波長の光を発する3種類の光源を用いた場合について説明したが、例えば3種類の光源ではなく、1種類や2種類,4種類以上の光源を用いるようにしてもよい。
加えて、上記実施の形態等では、照明装置および表示装置の各構成要素(光学系)を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。具体的には、例えばダイクロイックプリズム131,132の代わりに、ダイクロイックミラーを設けるようにしてもよい。また、偏光ビームスプリッタ23の代わりに、プリズムを設けるようにしてもよい。
また、上記実施の形態等では、光変調素子により変調された光をスクリーンに投射する投射光学系(投影レンズ)を備え、投射型の表示装置として構成されている場合について説明したが、本技術は、直視型の表示装置などにも適用することが可能である。
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
[1]
レーザ光源を含む光源部と、
2次元配列された複数の単位レンズを有し、前記光源部側からの光が通過する均一化光学部材と
を備え、
前記均一化光学部材における光通過面が複数の分割領域に分割されていると共に、前記単位レンズにおける形状のパラメータが、前記複数の分割領域ごとに互いに異なっており、
前記単位レンズからの出射光により形成される光量分布における山状部分と谷状部分とが、前記複数の分割領域ごとに得られる前記光量分布同士の重ね合わせによって互いに減殺し合うように、各分割領域における前記パラメータが設定されている
照明装置。
[2]
以下の(1)式を満たす
上記[1]に記載の照明装置。
[3]
前記パラメータが、前記光通過面内での前記単位レンズの配列ピッチであり、
前記係数α=1である
上記[2]に記載の照明装置。
[4]
前記パラメータが、前記単位レンズの光軸方向の厚みであり、
前記係数α≠1である
上記[2]に記載の照明装置。
[5]
更に、前記単位レンズにおける光入射側レンズ頂点の位置が、前記複数の分割領域ごとに互いに異なっており、
前記複数の分割領域のうち、前記単位レンズにおける光出射側レンズ頂点の位置から前記光入射側レンズ頂点の位置が変位している分割領域では、
隣接する前記単位レンズ同士において、前記光出射側レンズ頂点の位置に対する前記光入射側レンズ頂点の変位方向である偏芯方向が、互いに逆となっている
上記[3]または[4]に記載の照明装置。
[6]
前記複数の分割領域の個数が、偶数である
上記[1]ないし[5]のいずれかに記載の照明装置。
[7]
前記複数の分割領域が、前記光通過面上で点対称に配置されている
上記[1]ないし[6]のいずれかに記載の照明装置。
[8]
前記均一化光学部材がフライアイレンズからなる
上記[1]ないし[7]のいずれかに記載の照明装置。
[9]
前記光源部と前記均一化光学部材との間の光路上に、他の均一化光学部材を更に備えた
上記[1]ないし[8]のいずれかに記載の照明装置。
[10]
照明光を出射する照明装置と、
前記照明光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と
を備え、
前記照明装置は、
レーザ光源を含む光源部と、
2次元配列された複数の単位レンズを有し、前記光源部側からの光が通過する均一化光学部材と
を備え、
前記均一化光学部材における光通過面が複数の分割領域に分割されていると共に、前記単位レンズにおける形状のパラメータが、前記複数の分割領域ごとに互いに異なっており、
前記単位レンズからの出射光により形成される光量分布における山状部分と谷状部分とが、前記複数の分割領域ごとに得られる前記光量分布同士の重ね合わせによって互いに減殺し合うように、各分割領域における前記パラメータが設定されている
表示装置。
[11]
前記光変調素子により変調された照明光を被投射面に対して投射する投射光学系を更に備えた
上記[10]に記載の表示装置。
[12]
前記光変調素子が液晶素子である
上記[10]または[11]に記載の表示装置。
[13]
光源部と、
2次元配列された複数の単位レンズを有し、前記光源部側からの光が通過する均一化光学部材と
を備え、
前記均一化光学部材における光通過面が複数の分割領域に分割されていると共に、前記単位レンズにおける光入射側レンズ頂点の位置が、前記複数の分割領域ごとに互いに異なっており、
前記複数の分割領域のうち、前記単位レンズにおける光出射側レンズ頂点の位置から前記光入射側レンズ頂点の位置が変位している分割領域では、
隣接する前記単位レンズ同士において、前記光出射側レンズ頂点の位置に対する前記光入射側レンズ頂点の変位方向である偏芯方向が、互いに逆となっている
照明装置。
[14]
前記複数の分割領域間で、前記単位レンズにおける前記光入射側レンズ頂点を通過した光線同士が、被照射面上の異なる位置に到達する
上記[13]に記載の照明装置。
[15]
前記複数の分割領域間で、前記単位レンズにおける前記光出射側レンズ頂点に対向する光入射位置を通過した光線同士が、被照射面上の同じ位置に到達する
上記[13]または[14]に記載の照明装置。
[16]
前記均一化光学部材がフライアイレンズからなる
上記[13]ないし[15]のいずれかに記載の照明装置。
[17]
前記光源部と前記均一化光学部材との間の光路上に、他の均一化光学部材を更に備えた
上記[13]ないし[16]のいずれかに記載の照明装置。
[18]
照明光を出射する照明装置と、
前記照明光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と
を備え、
前記照明装置は、
光源部と、
2次元配列された複数の単位レンズを有し、前記光源部側からの光が通過する均一化光学部材と
を備え、
前記均一化光学部材における光通過面が複数の分割領域に分割されていると共に、前記単位レンズにおける光入射側レンズ頂点の位置が、前記複数の分割領域ごとに互いに異なっており、
前記複数の分割領域のうち、前記単位レンズにおける光出射側レンズ頂点の位置から前記光入射側レンズ頂点の位置が変位している分割領域では、
隣接する前記単位レンズ同士において、前記光出射側レンズ頂点の位置に対する前記光入射側レンズ頂点の変位方向である偏芯方向が、互いに逆となっている
表示装置。
[19]
前記光変調素子により変調された照明光を被投射面に対して投射する投射光学系を更に備えた
上記[18]に記載の表示装置。
[20]
前記光変調素子が液晶素子である
上記[18]または[19]に記載の表示装置。