JP6194815B2 - 4輪駆動車のトランスファ装置 - Google Patents
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前記リングギアは、前記主駆動輪と前記副駆動輪の間のプロペラシャフトに連結したピニオンギアに噛合するギア部が外周面に形成される。
前記トランスファクラッチは、デフケースと前記リングギアの間に設けられ、クラッチ解放により前記リングギアを前記デフケースから切り離す。
前記トランスファケースは、前記リングギアと前記ピニオンギアと前記トランスファクラッチを収納し、潤滑オイルを封入すると共に、内部圧力を調整するブリーザが設けられる。
そして、前記リングギアと前記トランスファケースの間に、前記リングギアを回転可能に支持すると共に、大径側を対向して配置される一対の円錐ころ軸受を介装する。さらに、前記ブリーザは、前記トランスファケースの内部空間のうち、前記一対の円錐ころ軸受の小径側の内部空間を大気に連通する。
ここで、リングギアの回転時、円錐ころ軸受の小径側空間と円錐ころ軸受の大径側空間との間に圧力差が生じる。これにより、トランスファケース内の潤滑オイルは、円錐ころ軸受の小径側の内部空間から吸い込まれ、大径側の内部空間に吐出される。すなわち、円錐ころ軸受の小径側の内部空間内のオイル量は、停車時のオイル量よりも低減し、大径側の内部空間内のオイル量は、停車時のオイル量よりも増加する。
一方、リングギアが回転しないときには、円錐ころ軸受の小径側と大径側の圧力差は生じず、潤滑オイルの移動は発生しない。つまり、リングギアの回転が停止しているときに、円錐ころ軸受の小径側空間のオイル量が停車時のオイル量よりも増加することはない。
これに対し、ブリーザは、円錐ころ軸受の小径側の内部空間を大気に連通する。すなわち、オイル量が停車時のオイル量から少なくなることがあっても、増加することはない円錐ころ軸受の小径側の内部空間にブリーザが設けられることになる。そのため、トランスファケースに設けたブリーザから潤滑オイルを噴き出しにくくすることができる。
まず、実施例1の4輪駆動車のトランスファ装置における構成を、「4輪駆動車の駆動系構成」、「4輪駆動車の制御系構成」、「駆動モード切り替え構成」、「トランスファ装置の詳細構成」に分けて説明する。
図1は、実施例1のトランスファ装置が適用された前輪駆動ベースの4輪駆動車の駆動系構成を示す。以下、図1に基づき、実施例1の4輪駆動車の駆動系構成を説明する。
すなわち、エンジン1及び変速機2を経過した駆動力は、フロントデファレンシャル3を介して左右前輪ドライブシャフト4,5に伝達され、差動を許容しながら主駆動輪である左右前輪6,7を常時駆動する。
ここでは、前記4輪駆動車の後輪駆動系を、ドグクラッチ8と電制カップリング16を共に解放することで、副駆動輪である左右後輪19,20をエンジン1から切り離した2輪駆動走行(=ディスコネクト2輪駆動モード)と、ドグクラッチ8と電制カップリング16を共に締結することで、副駆動輪である左右後輪19,20をエンジン1に接続した4輪駆動走行(=コネクト4輪駆動モード)と、を選択することが可能な駆動系構成としている。なお、ドグクラッチ8を解放することにより、ドグクラッチ8より下流側の駆動系回転(プロペラシャフト12等の回転)を停止することができ、フリクション損失やオイル攪拌損失などが抑えられ、燃費向上が達成される。
このドグクラッチ8は、一対の噛み合い部材(図1では不図示)を有する噛み合いクラッチであり、例えば、一方の噛み合い部材を固定部材とし他方の噛み合い部材を可動部材とし、固定部材と可動部材との間に締結方向に付勢するバネ(不図示)を設け、可動部材の外周にソレノイドピン(不図示)と嵌合可能なネジ溝(不図示)が形成されたものを用いる。このドグクラッチ8は、ネジ溝に対しソレノイドピンを突出させて嵌合すると、可動部材が回転しながら解放方向にストロークし、ストローク量が所定量を超えることで、噛み合い締結を解放する。一方、ネジ溝に対するソレノイドピンの嵌合を解除すると、バネ付勢力により固定部材に向かって可動部材が締結方向にストロークし、両者の歯部が噛み合って締結する。
この電制カップリング16としては、例えば、入力側クラッチプレートと出力側クラッチプレートを交互に複数配置した多板摩擦クラッチと、対向するカム面を有する固定カムピストン(不図示)及び可動カムピストン(不図示)と、対向するカム面間に介装されたカム部材(不図示)と、を有するものを用いる。電制カップリング16の締結は、電動モータ(不図示)が可動カムピストンを回転させることで生じるピストン間隔を拡大するカム作用により、可動カムピストンが回転角に応じてクラッチ締結方向にストロークし、多板摩擦クラッチの摩擦締結力を増すことで行う。電制カップリング16の解放は、電動モータが可動カムピストンを締結方向とは逆方向に回転させることで生じるピストン間隔を縮小するカム作用により、可動カムピストンが回転角に応じてクラッチ解放方向にストロークし、多板摩擦クラッチの摩擦締結力を減じることで行う。
図2は、実施例1のトランスファ装置が適用された前輪駆動ベースの4輪駆動車の制御系構成を示す。以下、図2に基づき、実施例1の4輪駆動車の制御系構成を説明する。
そして、この4WDコントロールユニット34は、ドグクラッチアクチュエータ48(ソレノイドピン)と電制カップリングアクチュエータ49(電動モータ)に駆動制御指令を出力する。ここで、CAN通信線37以外からの入力情報源として、駆動モード選択スイッチ50、ブレーキ操作の有無を検出するブレーキスイッチ51、リングギア回転数センサ52、ドグクラッチストロークセンサ53、モータ回転角度センサ54等を有する。
つまり、「エコオートモード」の選択時には、スタンバイ2輪駆動モード中、電制カップリング16を完全解放状態にして待機する。これに対し、「スポーツオートモード」の選択時には、スタンバイ2輪駆動モード中、電制カップリング16を締結直前の解放状態にして待機する。なお、この「エコオートモード」と「スポーツオートモード」は、ドライバーによって任意に選択される。
図3は、実施例1の「オートモード」選択時の車速とアクセル開度に応じた駆動モード切り替えマップを示し、図4は、駆動モード(ディスコネクト2輪駆動モード・スタンバイ2輪駆動モード・コネクト4輪駆動モード)の切り替え遷移を示す。以下、図3及び図4に基づき、駆動モード切り替え構成を説明する。
この3つの駆動モードは、アクセル開度ゼロで設定車速VSP0の基点aから車速の上昇に比例してアクセル開度が上昇する領域区分線Aと、領域区分線Aとの交点bから高車速側に引いた一定アクセル開度ACC0の領域区分線Bと、により分けている。
また、「遷移速度」とは、切り替え要求が発生してから遷移完了までの時間である。ここでは、この遷移速度が遅い場合(矢印G、矢印I)には、切り替え要求出力後所定時間が経過してからモード遷移制御を開始する。また、遷移速度が速い場合(矢印F、矢印H、矢印J、矢印K)には、切り替え要求出力後直ちにモード遷移制御を開始する。
図5は、実施例1のトランスファ装置を示す断面図である。以下、図5に基づき、実施例1のトランスファ装置の詳細構成を説明する。
ここで、デフケース3aは、トランスファケース23内に挿入される中空のシャフト部材3bを有しており、このシャフト部材3bにドグクラッチ8の入力側噛み合い部材8aが連結される。なお、このシャフト部材3bは、第1ボールベアリングB1を介して、トランスファケース23に回転可能に支持されると共に、第1シールベアリングS1、第2シールベアリングS2、第3シールベアリングS3によってトランスファケース23との間から潤滑オイルOILが漏れることを防止している。
また、シャフト部材3bの内部には右前輪7の車軸である右前輪ドライブシャフト5が挿入貫通される。この右前輪ドライブシャフト5は、第2ボールベアリングB2を介してトランスファケース23に回転可能に支持されると共に、第4シールベアリングS4によってシャフト部材3bとの間に潤滑オイルOILが漏れることを防止している。さらに、このシャフト部材3bを貫通した右前輪ドライブシャフト5の一端には、フロントデファレンシャル3のサイドギア(不図示)が連結される。
ここで、シャフト部9aには、ギア部9bを固定するフランジ部9cと、シャフト部9aを径方向に貫通する第2循環路62bと、が形成されており、第1,第2円錐ころ軸受CB1,CB2は、フランジ部9cに固定されたギア部9b及び第2循環路62bを挟んで、大径側が互いに対向するように配置されている。
なお、出力ピニオン10とトランスファケース23の間には、ボールベアリングから構成されるピニオンベアリング10aが介装され、第5シールベアリングS5によって潤滑オイルOILの漏れを防止している。
また、クラッチ室60とギア室61の間に配置された第1円錐ころ軸受CB1は、前輪側リングギア9の回転時、小径側と大径側との圧力差によって小径側(クラッチ室60側)から潤滑オイルOILを吸い込み、大径側(ギア室61側)へ吐出するポンプの役割を果たす。
そして、この潤滑オイルOILは、車両の走行時、ドグクラッチ8や前輪側リングギア9によってかき上げられる。また、前輪側リングギア9が回転するときには、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用によってクラッチ室60からギア室61へと導入され、第1,第2循環路62a,62bを介してギア室61からクラッチ室60へと循環する。
図6は、実施例1のトランスファ装置において、コネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モード時の潤滑状態を示す説明図である。以下、図6を用いてコネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モード時調圧作用を説明する。
また、ギア室61では、前輪側リングギア9のギア部9bによって潤滑オイルOILをかき上げ(矢印β)、ギア部9bと出力ピニオン10の噛み合い面や、第1,第2円錐ころ軸受CB1,CB2の潤滑を行う。
ここで、このオイル循環路62を流れるオイル流量は、第1,第2循環路62a,62bの流路幅に依存する。つまり、第1,第2循環路62a,62bの流路幅を、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用によって導入される潤滑オイルOILの最大量に対応して設計することで、ギア室61内に導入された潤滑オイルOILを、クラッチ室60へと速やかに循環させ、オイル量変化を小さく抑えることができる。
しかしながら、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用によって導入される潤滑オイルOILの最大量に対応してオイル循環路62の流路幅を設計してしまうと、前輪側リングギア9のシャフト部9aの外形寸法が大きくなってしまい、トランスファ装置TRが大型化するという問題が生じる。また、シャフト部9aの厚みを薄くしたり、第2循環路62bの幅を広げると、シャフト部9aの強度が低下するという問題が生じる。
そのため、この第1,第2循環路62a,62bの流路幅を十分に広げることはできず、オイル循環路62を流れるオイル流量は制限される。
また、オイル循環路62を介してギア室61と連通しているクラッチ室60が大気に連通することで、軸端空間64にブリーザ63を設けた場合よりも、トランスファケース23内の圧力調整を円滑に行うことができる。
図7は、実施例1のトランスファ装置において、ディスコネクト2輪駆動モード時の潤滑オイルの流れを示す説明図である。以下、図7を用いてディスコネクト2輪駆動モード時潤滑作用を説明する。
このように、前輪側リングギア9が回転しないので、ギア室61内の潤滑オイルOILはかき上げられず、安定状態を維持する。
実施例1の4輪駆動車のトランスファ装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
前記主駆動輪(左右前輪6,7)と前記副駆動輪(左右後輪19,20)の間のプロペラシャフト12に連結したピニオンギア(出力ピニオン10)に噛合するギア部9bが外周面に形成されたリングギア(前輪側リングギア9)と、
デフケース3aと前記リングギア(前輪側リングギア9)の間に設けられ、クラッチ解放により前記リングギア(前輪側リングギア9)を前記デフケース3aから切り離すトランスファクラッチ(ドグクラッチ8)と、
前記リングギア(前輪側リングギア9)と前記ピニオンギア(出力ピニオン10)と前記トランスファクラッチ(ドグクラッチ8)を収納し、潤滑オイルOILを封入すると共に、内部圧力を調整するブリーザ63が設けられたトランスファケース23と、
を備え、
前記リングギア(前輪側リングギア9)と前記トランスファケース23の間に、前記リングギア(前輪側リングギア9)を回転可能に支持すると共に、大径側を対向して配置される一対の円錐ころ軸受(第1円錐ころ軸受CB1、第2円錐ころ軸受CB2)を介装し、
前記ブリーザ63は、前記トランスファケース23の内部空間のうち、前記一対の円錐ころ軸受(第1円錐ころ軸受CB1、第2円錐ころ軸受CB2)の小径側の内部空間(クラッチ室60)を大気に連通する構成とした。
これにより、トランスファケース23に設けたブリーザ63から潤滑オイルOILを噴き出しにくくすることができる。
前記ブリーザ63は、前記クラッチ室60を大気に連通する構成とした。
これにより、上記(1)の効果に加え、トランスファケース23に設けたブリーザ63から潤滑オイルOILをさらに噴き出しにくくすることができる。
前記オイル循環路62を、前記シャフト部材3bと前記リングギア(前輪側リングギア9)の間に形成されて前記クラッチ室60に連通する第1循環路62aと、前記リングギア(前輪側リングギア9)を径方向に貫通して前記ギア室61と前記第1循環路62aを連通する第2循環路62bと、によって構成する構成とした。
これにより、上記(2)の効果に加え、オイル循環路62を容易に確保することができると共に、トランスファケース23の大型化を抑制することができる。
前記トランスファクラッチ(ドグクラッチ8)よりも下流位置に、クラッチ締結容量に応じて前記駆動源(エンジン1)からの駆動力の一部を前記副駆動輪(左右後輪19,20)へ配分する摩擦クラッチ(電制カップリング16)を設け、
前記リングギア(前輪側リングギア9)の回転が停止しているとき、前記トランスファクラッチ(ドグクラッチ8)の一部を前記潤滑オイルOILに浸漬させる構成とした。
これにより、上記(1)〜(3)の何れかの効果に加え、フリクション損失やオイル攪拌損失などが抑えて燃費向上を達成しつつ、必要箇所の潤滑を行うことができる。
さらに、ドグクラッチ8は、油圧により駆動するシフトフォークを用いて解放/締結がなされる噛み合いクラッチによって構成してもよい。また、電制カップリング16は、油圧により多板クラッチを解放/締結する油圧式摩擦クラッチによって構成してもよい。
2 変速機
3 フロントデファレンシャル
3a デフケース
3b シャフト部材
4 左前輪ドライブシャフト(車軸)
5 右前輪ドライブシャフト(車軸)
6 左前輪(主駆動輪)
7 右前輪(主駆動輪)
8 ドグクラッチ(トランスファクラッチ)
9 前輪側リングギア(リングギア)
9a シャフト部
9b ギア部
10 出力ピニオン(ピニオンギア)
11 後輪出力軸
12 プロペラシャフト
16 電制カップリング(摩擦クラッチ)
19 左後輪(副駆動輪)
20 右後輪(副駆動輪)
23 トランスファケース
31 エンジンコントロールモジュール
32 変速機コントロールモジュール
33 ABSアクチュエータコントロールユニット
34 4WDコントロールユニット
60 クラッチ室
61 ギア室
62 オイル循環路
62a 第1循環路
62b 第2循環路
63 ブリーザ
TR トランスファ装置
Claims (4)
- 左右前輪と左右後輪のうち、一方を駆動源に接続される主駆動輪とし、他方を前記駆動源にクラッチを介して接続される副駆動輪とする4輪駆動車に搭載され、
前記主駆動輪と前記副駆動輪の間のプロペラシャフトに連結したピニオンギアに噛合するギア部が外周面に形成されたリングギアと、
デフケースと前記リングギアの間に設けられ、クラッチ解放により前記リングギアを前記デフケースから切り離すトランスファクラッチと、
前記リングギアと前記ピニオンギアと前記トランスファクラッチを収納し、潤滑オイルを封入すると共に、内部圧力を調整するブリーザが設けられたトランスファケースと、
を備え、
前記リングギアと前記トランスファケースの間に、前記リングギアを回転可能に支持すると共に、大径側を対向して配置される一対の円錐ころ軸受を介装し、
前記ブリーザは、前記トランスファケースの内部空間のうち、前記一対の円錐ころ軸受の小径側の内部空間を大気に連通する
ことを特徴とする4輪駆動車のトランスファ装置。 - 請求項1に記載された4輪駆動車のトランスファ装置において、
前記トランスファケースは、前記一対の円錐ころ軸受のいずれか一方の小径側に形成されると共に前記トランスファクラッチを配置するクラッチ室と、前記一対の円錐ころ軸受の間に形成されると共に前記リングギア及び前記ピニオンギアを配置するギア室と、前記クラッチ室と前記ギア室を連通するオイル循環路と、を有し、
前記ブリーザは、前記クラッチ室を大気に連通する
ことを特徴とする4輪駆動車のトランスファ装置。 - 請求項2に記載された4輪駆動車のトランスファ装置において、
前記デフケースは、前記リングギアを貫通すると共に、前記主駆動輪又は前記副駆動輪のいずれかの車軸に連結するシャフト部材を有し、
前記オイル循環路を、前記シャフト部材と前記リングギアの間に形成されて前記クラッチ室に連通する第1循環路と、前記リングギアを径方向に貫通して前記ギア室と前記第1循環路を連通する第2循環路と、によって構成する
ことを特徴とする4輪駆動車のトランスファ装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された4輪駆動車のトランスファ装置において、
前記トランスファクラッチを、前記主駆動輪から前記副駆動輪への駆動分岐位置に設け、
前記トランスファクラッチよりも下流位置に、クラッチ締結容量に応じて前記駆動源からの駆動力の一部を前記副駆動輪へ配分する摩擦クラッチを設け、
前記リングギアの回転が停止しているとき、前記トランスファクラッチの一部を前記潤滑オイルに浸漬させる
ことを特徴とする4輪駆動車のトランスファ装置。
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