JP6194815B2 - 4輪駆動車のトランスファ装置 - Google Patents

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本発明は、駆動源の出力方向を変えるギア機構と、駆動源の出力を主駆動輪と副駆動輪に分配するトランスファクラッチを一つのトランスファケースに収納した4輪駆動車のトランスファ装置に関するものである。
従来、4輪駆動車に搭載され、駆動源の出力を前輪と後輪に分配する4輪駆動車のトランスファ装置において、動力伝達部材を収納するトランスファケースの最上部にブリーザを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2013-245752号公報
ところで、従来の4輪駆動車のトランスファ装置にあっては、トランスファ装置の最上部にブリーザを設けることで、潤滑オイルがブリーザから流出することを抑えていた。しかしながら、トランスファケース内の動力伝達部材の配設状態によっては、潤滑オイルのオイル面高さが変動してしまい、ブリーザから潤滑オイルが噴き出すおそれがあった。
本発明は、上記問題に着目してなされたものであり、トランスファケースに設けたブリーザから潤滑オイルを噴き出しにくくすることができる4輪駆動車のトランスファ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の4輪駆動車のトランスファ装置は、左右前輪と左右後輪のうち、一方を駆動源に接続される主駆動輪とし、他方を前記駆動源にクラッチを介して接続される副駆動輪とする4輪駆動車に搭載され、リングギアと、トランスファクラッチと、トランスファケースと、を備えている。
前記リングギアは、前記主駆動輪と前記副駆動輪の間のプロペラシャフトに連結したピニオンギアに噛合するギア部が外周面に形成される。
前記トランスファクラッチは、デフケースと前記リングギアの間に設けられ、クラッチ解放により前記リングギアを前記デフケースから切り離す。
前記トランスファケースは、前記リングギアと前記ピニオンギアと前記トランスファクラッチを収納し、潤滑オイルを封入すると共に、内部圧力を調整するブリーザが設けられる。
そして、前記リングギアと前記トランスファケースの間に、前記リングギアを回転可能に支持すると共に、大径側を対向して配置される一対の円錐ころ軸受を介装する。さらに、前記ブリーザは、前記トランスファケースの内部空間のうち、前記一対の円錐ころ軸受の小径側の内部空間を大気に連通する。
よって、本発明の4輪駆動車のトランスファ装置では、リングギアとピニオンギアとトランスファクラッチと潤滑オイルを収納するトランスファケースに設けられたブリーザにより、トランスファケースの内部空間のうち、リングギアを回転可能に支持する一対の円錐ころ軸受の小径側の内部空間が大気に連通される。
ここで、リングギアの回転時、円錐ころ軸受の小径側空間と円錐ころ軸受の大径側空間との間に圧力差が生じる。これにより、トランスファケース内の潤滑オイルは、円錐ころ軸受の小径側の内部空間から吸い込まれ、大径側の内部空間に吐出される。すなわち、円錐ころ軸受の小径側の内部空間内のオイル量は、停車時のオイル量よりも低減し、大径側の内部空間内のオイル量は、停車時のオイル量よりも増加する。
一方、リングギアが回転しないときには、円錐ころ軸受の小径側と大径側の圧力差は生じず、潤滑オイルの移動は発生しない。つまり、リングギアの回転が停止しているときに、円錐ころ軸受の小径側空間のオイル量が停車時のオイル量よりも増加することはない。
これに対し、ブリーザは、円錐ころ軸受の小径側の内部空間を大気に連通する。すなわち、オイル量が停車時のオイル量から少なくなることがあっても、増加することはない円錐ころ軸受の小径側の内部空間にブリーザが設けられることになる。そのため、トランスファケースに設けたブリーザから潤滑オイルを噴き出しにくくすることができる。
実施例1のトランスファ装置を適用した前輪駆動ベースの4輪駆動車の駆動系構成を示す駆動系構成図である。 実施例1のトランスファ装置を適用した前輪駆動ベースの4輪駆動車の制御系構成を示す制御系構成図である。 実施例1の「オートモード」選択時の車速とアクセル開度に応じた駆動モード切り替えマップを示す基本マップ図である。 実施例1の「オートモード」選択時の駆動モード(ディスコネクト2輪駆動モード・スタンバイ2輪駆動モード・コネクト4輪駆動モード)の切り替え遷移を示す駆動モード遷移図である。 実施例1のトランスファ装置を示す断面図である。 実施例1のトランスファ装置において、コネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モード時の潤滑状態を示す説明図である。 実施例1のトランスファ装置において、ディスコネクト2輪駆動モード時の潤滑状態を示す説明図である。
以下、本発明の4輪駆動車のトランスファ装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
(実施例1)
まず、実施例1の4輪駆動車のトランスファ装置における構成を、「4輪駆動車の駆動系構成」、「4輪駆動車の制御系構成」、「駆動モード切り替え構成」、「トランスファ装置の詳細構成」に分けて説明する。
[4輪駆動車の駆動系構成]
図1は、実施例1のトランスファ装置が適用された前輪駆動ベースの4輪駆動車の駆動系構成を示す。以下、図1に基づき、実施例1の4輪駆動車の駆動系構成を説明する。
前記4輪駆動車の前輪駆動系は、図1に示すように、横置きのエンジン1(駆動源)と、変速機2と、フロントデファレンシャル3と、左前輪ドライブシャフト4と、右前輪ドライブシャフト5と、左前輪6(主駆動輪)と、右前輪7(主駆動輪)と、を備えている。
すなわち、エンジン1及び変速機2を経過した駆動力は、フロントデファレンシャル3を介して左右前輪ドライブシャフト4,5に伝達され、差動を許容しながら主駆動輪である左右前輪6,7を常時駆動する。
前記4輪駆動車の後輪駆動系は、図1に示すように、トランスファ装置TRと、出力ピニオン10(ピニオンギア)と、後輪出力軸11と、プロペラシャフト12と、ドライブピニオン13と、後輪側リングギア14と、リアデファレンシャル15と、電制カップリング16(摩擦クラッチ)と、左後輪ドライブシャフト17と、右後輪ドライブシャフト18と、左後輪19(副駆動輪)と、右後輪20(副駆動輪)と、を備えている。なお、図1中、21は自在継手である。
すなわち、エンジン1及び変速機2を経過した駆動力は、トランスファ装置TR内のドグクラッチ8と、その下流に設けた電制カップリング16の締結/解放によって、左右前輪6,7と左右後輪19,20に分配される。
ここでは、前記4輪駆動車の後輪駆動系を、ドグクラッチ8と電制カップリング16を共に解放することで、副駆動輪である左右後輪19,20をエンジン1から切り離した2輪駆動走行(=ディスコネクト2輪駆動モード)と、ドグクラッチ8と電制カップリング16を共に締結することで、副駆動輪である左右後輪19,20をエンジン1に接続した4輪駆動走行(=コネクト4輪駆動モード)と、を選択することが可能な駆動系構成としている。なお、ドグクラッチ8を解放することにより、ドグクラッチ8より下流側の駆動系回転(プロペラシャフト12等の回転)を停止することができ、フリクション損失やオイル攪拌損失などが抑えられ、燃費向上が達成される。
前記トランスファ装置TRは、左右前輪6,7から左右後輪19,20への駆動分岐位置に設けられ、ドグクラッチ8のクラッチ解放により左右後輪19,20への駆動力伝達系を、左右前輪6,7への駆動力伝達系から切り離す。
このドグクラッチ8は、一対の噛み合い部材(図1では不図示)を有する噛み合いクラッチであり、例えば、一方の噛み合い部材を固定部材とし他方の噛み合い部材を可動部材とし、固定部材と可動部材との間に締結方向に付勢するバネ(不図示)を設け、可動部材の外周にソレノイドピン(不図示)と嵌合可能なネジ溝(不図示)が形成されたものを用いる。このドグクラッチ8は、ネジ溝に対しソレノイドピンを突出させて嵌合すると、可動部材が回転しながら解放方向にストロークし、ストローク量が所定量を超えることで、噛み合い締結を解放する。一方、ネジ溝に対するソレノイドピンの嵌合を解除すると、バネ付勢力により固定部材に向かって可動部材が締結方向にストロークし、両者の歯部が噛み合って締結する。
前記電制カップリング16は、ドグクラッチ8よりも下流位置(ドグクラッチ8と副駆動輪、ここでは左右後輪19,20との間の位置)に設けられ、クラッチ締結容量に応じてエンジン1からの駆動力の一部を左右後輪19,20へ配分する摩擦クラッチである。電制カップリング16の入力側クラッチプレート(不図示)は、クラッチ入力軸(不図示)を介してリアデファレンシャル15の左サイドギアに連結されている。また電制カップリング16の出力側クラッチプレート(不図示)は、クラッチ出力軸(不図示)を介して左後輪ドライブシャフト17に連結されている。さらに、この電制カップリング16は、リアデファレンシャル15を収納したリアデフハウジング24の隣接位置に固定されたカップリングケース25に収納されている。
この電制カップリング16としては、例えば、入力側クラッチプレートと出力側クラッチプレートを交互に複数配置した多板摩擦クラッチと、対向するカム面を有する固定カムピストン(不図示)及び可動カムピストン(不図示)と、対向するカム面間に介装されたカム部材(不図示)と、を有するものを用いる。電制カップリング16の締結は、電動モータ(不図示)が可動カムピストンを回転させることで生じるピストン間隔を拡大するカム作用により、可動カムピストンが回転角に応じてクラッチ締結方向にストロークし、多板摩擦クラッチの摩擦締結力を増すことで行う。電制カップリング16の解放は、電動モータが可動カムピストンを締結方向とは逆方向に回転させることで生じるピストン間隔を縮小するカム作用により、可動カムピストンが回転角に応じてクラッチ解放方向にストロークし、多板摩擦クラッチの摩擦締結力を減じることで行う。
[4輪駆動車の制御系構成]
図2は、実施例1のトランスファ装置が適用された前輪駆動ベースの4輪駆動車の制御系構成を示す。以下、図2に基づき、実施例1の4輪駆動車の制御系構成を説明する。
前記4輪駆動車の制御系は、図2に示すように、エンジンコントロールモジュール31(図2では「ECM」と示す)と、変速機コントロールモジュール32(図2では「TCM」と示す)と、ABSアクチュエータコントロールユニット33(図2では「ABSアクチュエータC/U」と示す)と、4WDコントロールユニット34(図2では「4WCC/U」と示す)と、を備えている。
前記エンジンコントロールモジュール31は、エンジン1の制御ディバイスであり、エンジン回転数センサ35やアクセル開度センサ36等からの検出信号を入力する。このエンジンコントロールモジュール31からは、CAN通信線37を介して4WDコントロールユニット34に対し、エンジン回転数情報やアクセル開度情報(ACC情報)が入力される。
前記変速機コントロールモジュール32は、変速機2の制御ディバイスであり、変速機入力回転数センサ38や変速機出力回転数センサ39等からの検出信号を入力する。この変速機コントロールモジュール32からは、CAN通信線37を介して4WDコントロールユニット34に対し、ギアレシオ情報(ギア比情報)が入力される。
前記ABSアクチュエータコントロールユニット33は、各輪のブレーキ液圧を制御するABSアクチュエータ(不図示)の制御ディバイスであり、ヨーレートセンサ40や横Gセンサ41や前後Gセンサ42や車輪速センサ43,44,45,46等からの検出信号を入力する。このABSアクチュエータコントロールユニット33からは、CAN通信線37を介して4WDコントロールユニット34に対し、ヨーレート情報や横G情報や前後G情報や各輪の車輪速情報が入力される。なお、上記情報以外に、ステアリング舵角センサ47から舵角情報が、CAN通信線37を介して4WDコントロールユニット34に対し入力される。
前記4WDコントロールユニット34は、ドグクラッチ8と電制カップリング16の締結/解放を制御する制御ディバイスであり、各種入力情報に基づいて演算処理を行う。
そして、この4WDコントロールユニット34は、ドグクラッチアクチュエータ48(ソレノイドピン)と電制カップリングアクチュエータ49(電動モータ)に駆動制御指令を出力する。ここで、CAN通信線37以外からの入力情報源として、駆動モード選択スイッチ50、ブレーキ操作の有無を検出するブレーキスイッチ51、リングギア回転数センサ52、ドグクラッチストロークセンサ53、モータ回転角度センサ54等を有する。
前記駆動モード選択スイッチ50は、「2WDモード」と「ロックモード」と「オートモード」をドライバーが切り替え選択するスイッチである。「2WDモード」が選択されると、ドグクラッチ8と電制カップリング16を解放した前輪駆動の2WD状態(2輪駆動走行)が維持される。「ロックモード」が選択されると、ドグクラッチ8と電制カップリング16を締結した完全4WD状態(4輪駆動走行)が維持される。さらに、「オートモード」が選択されると、車両状態(車速、アクセル開度)に応じてドグクラッチ8と電制カップリング16の締結/解放が自動制御され、駆動モードが自動的に切り替えられる。
ここで、「オートモード」には、燃費向上を重視する際に選択する「エコオートモード」と、4輪駆動性能を重視する際に選択する「スポーツオートモード」の選択肢があり、ドグクラッチ8を締結し、電制カップリング16を解放するスタンバイ2輪駆動モードにおける電制カップリング16の状態が選択モードにより異なる。
つまり、「エコオートモード」の選択時には、スタンバイ2輪駆動モード中、電制カップリング16を完全解放状態にして待機する。これに対し、「スポーツオートモード」の選択時には、スタンバイ2輪駆動モード中、電制カップリング16を締結直前の解放状態にして待機する。なお、この「エコオートモード」と「スポーツオートモード」は、ドライバーによって任意に選択される。
そして、「完全解放状態」とは、電制カップリング16の入力側クラッチプレートと出力側クラッチプレートを離間させ、可動カムピストンをクラッチ締結側にストロークさせた直後では両プレートが全く接触せず、クラッチ締結容量が発生しない状態である。また、「締結直前の解放状態」とは、クラッチ締結容量はゼロであるものの、入力側クラッチプレートと出力側クラッチプレートはごく僅かに接触しており、可動カムピストンを少しでもクラッチ締結側にストロークさせると直ちにクラッチ締結容量が発生する状態である。
前記リングギア回転数センサ52は、ドグクラッチ8の出力回転数情報を取得するためのセンサであり、リングギア回転数検出値に、リア側ギア比とフロント側ギア比を演算に考慮することで、ドグクラッチ8の出力回転数を演算する。なお、ドグクラッチ8の入力回転数情報は、エンジン回転数とギアレシオとファイナルギア比を用いた演算により取得する。
[駆動モード切り替え構成]
図3は、実施例1の「オートモード」選択時の車速とアクセル開度に応じた駆動モード切り替えマップを示し、図4は、駆動モード(ディスコネクト2輪駆動モード・スタンバイ2輪駆動モード・コネクト4輪駆動モード)の切り替え遷移を示す。以下、図3及び図4に基づき、駆動モード切り替え構成を説明する。
実施例1において、「オートモード」が選択されたときの駆動モードは、ディスコネクト2輪駆動モード(Disconnect)と、スタンバイ2輪駆動モード(Stand-by)と、コネクト4輪駆動モード(Connect)と、を有している。そして、この3つの駆動モードは、車速(VSP)と、ドライバーの要求駆動力を表すアクセル開度(ACC)と、図3に示す駆動モード切替マップに基づき、4WDコントロールユニット34によって相互に切り替えられる。
前記駆動モード切り替えマップは、図3に示すように、車速とアクセル開度に応じて、ディスコネクト2輪駆動モード(図3において「差回転制御領域(Disconnect)」と示す)と、スタンバイ2輪駆動モード(図3において「差回転制御領域(Stand-by)」と示す)と、コネクト4輪駆動モード(図3において「駆動力配分領域(Connect)」と示す)と、を分けた設定としている。
この3つの駆動モードは、アクセル開度ゼロで設定車速VSP0の基点aから車速の上昇に比例してアクセル開度が上昇する領域区分線Aと、領域区分線Aとの交点bから高車速側に引いた一定アクセル開度ACC0の領域区分線Bと、により分けている。
前記ディスコネクト2輪駆動モード(差回転制御領域(Disconnect))は、アクセル開度が設定開度ACC0以下であって、アクセル開度がゼロの車速軸線と領域区分線Aと領域区分線Bにより囲まれる領域に設定している。すなわち、高車速域であってもアクセル開度が設定開度ACC0以下(ドライバーの要求駆動力が低い)であるため、駆動スリップによる左右前輪6,7と左右後輪19,20の差回転発生頻度が極めて小さいと共に、駆動スリップが発生してもスリップが緩増する4輪駆動性能の要求が低い領域に設定している。
前記スタンバイ2輪駆動モード(差回転制御領域(Stand-by))は、アクセル開度が設定開度ACC0を超えていて、領域区分線Aと領域区分線Bにより囲まれる領域に設定している。つまり、高車速域であって、アクセル開度が設定開度ACC0を超えている(ドライバーの要求駆動力が高い)ため、4輪駆動性能の要求が低いものの、駆動スリップにより左右前輪6,7と左右後輪19,20の差回転が発生すると、スリップが急増する可能性が高い領域に設定している。
前記コネクト4輪駆動モード(駆動力配分領域(Connect))は、車速がゼロのアクセル開度軸線と、アクセル開度がゼロの車速軸線と、領域区分線Aと、により囲まれる領域に設定している。つまり、発進時や車速が低い(低車速域)もののアクセル開度が高い高負荷走行等のように、4輪駆動性能の要求が高い領域に設定している。
前記ディスコネクト2輪駆動モードが選択されると、図4の枠線C内に示すように、ドグクラッチ8と電制カップリング16が共に解放された「2WD走行(Disconnect)」になる。このディスコネクト2輪駆動モードでは、基本的に左右前輪6,7にのみ駆動力を伝達しての前輪駆動の2輪駆動走行(以下「2WD走行」という)が維持される。しかし、前輪駆動の2WD走行中に左右前輪6,7に駆動スリップが発生し、駆動スリップ量(又は駆動スリップ率)が閾値を超えると、電制カップリング16を摩擦締結する。その後、回転同期状態が判定されるとドグクラッチ8を噛み合い締結して、4輪駆動走行(以下、「4WD走行」という)にする。これにより、左右後輪19,20にも駆動力を配分して駆動スリップを抑える差回転制御が行われる。
前記スタンバイ2輪駆動モードが選択されると、図4の枠線D内に示すように、ドグクラッチ8を締結し、電制カップリング16を解放する「2WD走行(Stand-by)」になる。このスタンバイ2輪駆動モードでは、ドグクラッチ8を噛み合い締結しているものの基本的に左右前輪6,7にのみ駆動力を伝達しての前輪駆動の2WD走行が維持される。しかし、前輪駆動の2WD走行中に左右前輪6,7に駆動スリップが発生し、駆動スリップ量(又は駆動スリップ率)が閾値を超えると、予めドグクラッチ8が噛み合い締結されているため、電制カップリング16の摩擦締結のみを行う。この電制カップリング16の摩擦締結により、応答良く左右後輪19,20に駆動力を配分することで、駆動スリップを抑える差回転制御が行われる。
前記コネクト4輪駆動モードが選択されると、図4の枠線E内に示すように、ドグクラッチ8と電制カップリング16が共に締結された「4WD走行(Connect)」になる。このコネクト4輪駆動モードでは、基本的に左右前輪6,7と左右後輪19,20に対して路面状況に合わせた最適の駆動力配分(例えば、発進時の前後輪等配分制御)とする駆動力配分制御が行われる。但し、駆動力配分制御中に、ステアリング舵角センサ47やヨーレートセンサ40や横Gセンサ41や前後Gセンサ42からの情報により、車両の旋回状態が判断されると、電制カップリング16の締結容量を低下させてタイトコーナーブレーキング現象を抑える制御が行われる。
前記ディスコネクト2輪駆動モード(2WD走行(Disconnect))と、スタンバイ2輪駆動モード(2WD走行(Stand-by))と、コネクト4輪駆動モード(4WD走行(Connect))の切り替え遷移は、車速とアクセル開度により決まる動作点が、図3に示す領域区分線Aや領域区分線Bを横切るときに出力される切り替え要求により行われる。各駆動モードの切り替え遷移速度については、4WD要求に応える駆動モードへの遷移速度を、燃費要求に応えるディスコネクト2輪駆動モードへの遷移速度に対して優先するように決めている。
すなわち、2WD走行(Disconnect)→2WD走行(Stand-by)の切り替え遷移速度(図4の矢印F)に対し、2WD走行(Stand-by)→2WD走行(Disconnect)の切り替え遷移速度(図4の矢印G)を遅くしている。同様に、2WD走行(Disconnect)→4WD走行(Connect)の切り替え遷移速度(図4の矢印H)に対し、4WD走行(Connect)→2WD走行(Disconnect)の切り替え遷移速度(図4の矢印I)を遅くしている。一方、2WD走行(Stand-by)→4WD走行(Connect)の切り替え遷移速度(図4の矢印J)と、4WD走行(Connect)→2WD走行(Stand-by)の切り替え遷移速度(図4の矢印K)は、同じ速い速度にしている。
また、「遷移速度」とは、切り替え要求が発生してから遷移完了までの時間である。ここでは、この遷移速度が遅い場合(矢印G、矢印I)には、切り替え要求出力後所定時間が経過してからモード遷移制御を開始する。また、遷移速度が速い場合(矢印F、矢印H、矢印J、矢印K)には、切り替え要求出力後直ちにモード遷移制御を開始する。
[トランスファ装置の詳細構成]
図5は、実施例1のトランスファ装置を示す断面図である。以下、図5に基づき、実施例1のトランスファ装置の詳細構成を説明する。
前記トランスファ装置TRは、エンジン1の出力(駆動力)を、左右前輪6,7と左右後輪19,20に分配するための動力分配機構であり、図5に示すように、ドグクラッチ8(トランスファクラッチ)と、前輪側リングギア9(リングギア)と、トランスファケース23と、を備えている。
前記ドグクラッチ8は、入力側噛み合い部材8aがフロントデファレンシャル3のデフケース3aに連結され、出力側噛み合い部材8bが前輪側リングギア9に連結されている。すなわち、このドグクラッチ8は、デフケース3aと前輪側リングギア9の間に設けられ、クラッチ解放により前輪側リングギア9をデフケース3aから切り離す。
ここで、デフケース3aは、トランスファケース23内に挿入される中空のシャフト部材3bを有しており、このシャフト部材3bにドグクラッチ8の入力側噛み合い部材8aが連結される。なお、このシャフト部材3bは、第1ボールベアリングB1を介して、トランスファケース23に回転可能に支持されると共に、第1シールベアリングS1、第2シールベアリングS2、第3シールベアリングS3によってトランスファケース23との間から潤滑オイルOILが漏れることを防止している。
また、シャフト部材3bの内部には右前輪7の車軸である右前輪ドライブシャフト5が挿入貫通される。この右前輪ドライブシャフト5は、第2ボールベアリングB2を介してトランスファケース23に回転可能に支持されると共に、第4シールベアリングS4によってシャフト部材3bとの間に潤滑オイルOILが漏れることを防止している。さらに、このシャフト部材3bを貫通した右前輪ドライブシャフト5の一端には、フロントデファレンシャル3のサイドギア(不図示)が連結される。
前記前輪側リングギア9は、図5に示すように、シャフト部材3bが挿入貫通されるシャフト部9aと、このシャフト部9aの外周面に取り付けられるギア部9bと、を有している。
前記シャフト部9aは、両端が開放した中空円筒体であり、このシャフト部9aにドグクラッチ8の出力側噛み合い部材8bが連結されている。そして、シャフト部9aは、シャフト部材3bとの間にころ軸受Kが介装されて回転可能に支持されると共に、シャフト部材3bとの間に後述する第1循環路62aが形成されている。さらに、このシャフト部9aは、第1円錐ころ軸受CB1と第2円錐ころ軸受CB2を介してトランスファケース23に回転可能に支持されている。
ここで、シャフト部9aには、ギア部9bを固定するフランジ部9cと、シャフト部9aを径方向に貫通する第2循環路62bと、が形成されており、第1,第2円錐ころ軸受CB1,CB2は、フランジ部9cに固定されたギア部9b及び第2循環路62bを挟んで、大径側が互いに対向するように配置されている。
前記ギア部9bは、噛合面9eが傾斜したベベルギア形状を呈したリング部材であり、ネジNによってシャフト部9aに形成されたフランジ部9cに固定されている。このギア部9bの噛合面9eには、出力ピニオン10が噛合する。
前記トランスファケース23は、図5に示すように、右前輪ドライブシャフト5が貫通し、シャフト部材3b及び後輪出力軸11が差し込まれる筐体であり、フロントデファレンシャル3を収納するフロントデフハウジング22の隣接位置に固定されている。このトランスファケース23には、ドグクラッチ8と前輪側リングギア9に加え、出力ピニオン10と後輪出力軸11の一部が収納されると共に、潤滑オイルOILが封入されている。
なお、出力ピニオン10とトランスファケース23の間には、ボールベアリングから構成されるピニオンベアリング10aが介装され、第5シールベアリングS5によって潤滑オイルOILの漏れを防止している。
そして、このトランスファケース23の内部には、クラッチ室60と、ギア室61と、オイル循環路62と、が形成されている。
前記クラッチ室60は、ドグクラッチ8を配置する空間であり、第1ボールベアリングB1と第1円錐ころ軸受CB1の間、すなわち、第1円錐ころ軸受CB1の小径側に形成される。このクラッチ室60は、トランスファケース23に設けられたブリーザ63によって大気に連通している。
前記ギア室61は、前輪側リングギア9のギア部9b及び出力ピニオン10を配置する空間であり、第1円錐ころ軸受CB1と第2円錐ころ軸受CB2の間、すなわち、第1,第2円錐ころ軸受CB1,CB2の大径側に形成される。
前記オイル循環路62は、クラッチ室60とギア室61を連通し、トランスファケース23内の潤滑オイルOILが流れる空間である。このオイル循環路62は、デフケース3aのシャフト部材3bと前輪側リングギア9のシャフト部9aの間に形成されてクラッチ室60に連通する第1循環路62aと、前輪側リングギア9のシャフト部9aを径方向に貫通してギア室61と第1循環路62aを連通する第2循環路62bと、を有している。
また、クラッチ室60とギア室61の間に配置された第1円錐ころ軸受CB1は、前輪側リングギア9の回転時、小径側と大径側との圧力差によって小径側(クラッチ室60側)から潤滑オイルOILを吸い込み、大径側(ギア室61側)へ吐出するポンプの役割を果たす。
そして、前記潤滑オイルOILは、ドグクラッチ8の噛み合い面や、ギア部9bと出力ピニオン10の噛み合い面、第1,第2円錐ころ軸受CB1,CB2、ころ軸受K、第1ボールベアリングB1、ピニオンベアリング10aをそれぞれ潤滑するオイルである。この潤滑オイルOILは、停車時等の前輪側リングギア9の回転が停止しているとき、ドグクラッチ8の一部が浸漬する量がトランスファケース23に収納されている。つまり、前輪側リングギア9の回転が停止しているときのオイル面高さH1が、ドグクラッチ8の最低部高さH2よりも高くなるように設定している。なお、停車時におけるクラッチ室60内でのオイル面高さH1と、停車時におけるギア室61内でのオイル面高さはほぼ同じとなっている。
そして、この潤滑オイルOILは、車両の走行時、ドグクラッチ8や前輪側リングギア9によってかき上げられる。また、前輪側リングギア9が回転するときには、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用によってクラッチ室60からギア室61へと導入され、第1,第2循環路62a,62bを介してギア室61からクラッチ室60へと循環する。
次に、実施例1の4輪駆動車のトランスファ装置における作用を、「コネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モード時調圧作用」、「ディスコネクト2輪駆動モード時調圧作用」に分けて説明する。
[コネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モード時調圧作用]
図6は、実施例1のトランスファ装置において、コネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モード時の潤滑状態を示す説明図である。以下、図6を用いてコネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モード時調圧作用を説明する。
実施例1の4輪駆動車が走行すると、フロントデファレンシャル3のデフケース3aが回転し、このデフケース3aのシャフト部材3bに連結されたドグクラッチ8の入力側噛み合い部材8aがデフケース3aと共に回転する。
また、コネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モードのときには、ドグクラッチ8は締結され、このドグクラッチ8を介してフロントデファレンシャル3のデフケース3aと前輪側リングギア9が連結される。これにより、デフケース3aの回転が前輪側リングギア9に伝達され、前輪側リングギア9のシャフト部9a及びギア部9bが、ドグクラッチ8の出力側噛み合い部材8bと一体に回転する。
これにより、クラッチ室60では、ドグクラッチ8の入力側噛み合い部材8aと出力側噛み合い部材8bが一体になって潤滑オイルOILをかき上げ(矢印α)、第1円錐ころ軸受CB1や第1ボールベアリングB1の潤滑を行う。
また、ギア室61では、前輪側リングギア9のギア部9bによって潤滑オイルOILをかき上げ(矢印β)、ギア部9bと出力ピニオン10の噛み合い面や、第1,第2円錐ころ軸受CB1,CB2の潤滑を行う。
そして、前輪側リングギア9のシャフト部9aが回転することで、第1円錐ころ軸受CB1の小径側と大径側に圧力差が発生し、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用によってクラッチ室60からギア室61へと潤滑オイルOILが導入される(矢印γ)。これにより、クラッチ室60内のオイル量が停車時のオイル量よりも減り、ギア室61内のオイル量が停車時のオイル量よりも増加するといったオイル量変化が生じる。
一方、クラッチ室60とギア室61とは、オイル循環路62によって連通されている。そのため、ギア室61に導入された潤滑オイルOILは、このオイル循環路62を介してクラッチ室60へと循環される(矢印δ)。
ここで、このオイル循環路62を流れるオイル流量は、第1,第2循環路62a,62bの流路幅に依存する。つまり、第1,第2循環路62a,62bの流路幅を、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用によって導入される潤滑オイルOILの最大量に対応して設計することで、ギア室61内に導入された潤滑オイルOILを、クラッチ室60へと速やかに循環させ、オイル量変化を小さく抑えることができる。
しかしながら、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用によって導入される潤滑オイルOILの最大量に対応してオイル循環路62の流路幅を設計してしまうと、前輪側リングギア9のシャフト部9aの外形寸法が大きくなってしまい、トランスファ装置TRが大型化するという問題が生じる。また、シャフト部9aの厚みを薄くしたり、第2循環路62bの幅を広げると、シャフト部9aの強度が低下するという問題が生じる。
そのため、この第1,第2循環路62a,62bの流路幅を十分に広げることはできず、オイル循環路62を流れるオイル流量は制限される。
このように、前輪側リングギア9のシャフト部9aが回転時、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用により、クラッチ室60内のオイル量が減り、ギア室61内のオイル量が増加するといったオイル量変化が生じるものの、オイル循環路62を流れるオイル流量が制限されるのでギア室61へと導入された潤滑オイルOILをクラッチ室60へと速やかに循環させることが難しかった。そのため、前輪側リングギア9が回転するコネクト4輪駆動モード又はスタンバイ2輪駆動モードでは、停車時等の前輪側リングギア9の回転が停止しているときと比べて、ギア室61内のオイル面が上昇し、クラッチ室60内のオイル面が低下していた。
これに対し、実施例1のトランスファ装置TRでは、ブリーザ63によってクラッチ室60が大気に連通している。すなわち、前輪側リングギア9の回転時にオイル面が低下する空間(クラッチ室60)が大気に連通することになる。そのため、潤滑オイルOILが飛散しても、オイル面が低くオイル量が少ないことから、ブリーザ63に潤滑オイルOILが入り込みにくくなり、ブリーザ63から潤滑オイルOILを噴き出しにくくすることができる。
また、第2循環路62bから第1循環路62aと流れ込んだ潤滑オイルOILは、クラッチ室60へと循環する一方、ころ軸受Kを潤滑したのち、シャフト部材3bとシャフト部9aとの隙間から、第2円錐ころ軸受CB2と第2シールベアリングS2の間の軸端空間64へ漏れ出る(矢印ε)。そして、この軸端空間64は、第2円錐ころ軸受CB2の小径側の内部空間となるため、この軸端空間64に漏れ出た潤滑オイルOILは、第2円錐ころ軸受CB2のポンプ作用によってギア室61へと導入される(矢印η)。
ここで、軸端空間64は、図5及び図6に示しているように、内部に何も配置されておらず、シャフト部材3bとトランスファケース23とが近接し、空間容積が比較的小さくなっている。一方、クラッチ室60には、ドグクラッチ8が配置されており、シャフト部材3bとトランスファケース23とが離間し、空間容積が比較的大きくなっている。
これに対し、この実施例1では、クラッチ室60がブリーザ63によって大気に連通しているため、ドグクラッチ8によって潤滑オイルOILがかき上げられても、空間容積が比較的大きいクラッチ室60では、かき上げられた潤滑オイルOILがブリーザ63内に入りにくい。そのため、軸端空間64にブリーザ63を設けた場合と比較すると、ブリーザ63からのオイル噴き出しをさらに発生しにくくすることができる。
また、オイル循環路62を介してギア室61と連通しているクラッチ室60が大気に連通することで、軸端空間64にブリーザ63を設けた場合よりも、トランスファケース23内の圧力調整を円滑に行うことができる。
そして、この実施例1では、デフケース3aが、前輪側リングギア9を貫通するシャフト部材3bを有している。そして、オイル循環路62を、このシャフト部材3bと前輪側リングギア9のシャフト部9aの間に形成されてクラッチ室60に連通する第1循環路62aと、前輪側リングギア9のシャフト部9aを径方向に貫通してギア室61と第1循環路62aを連通する第2循環路62bと、によって構成している。
そのため、相対回転するシャフト部材3bとシャフト部9aの間の隙間を利用してオイル循環路62を形成することができ、このオイル循環路62を容易に確保することができる。また、ギア室61からクラッチ室60へと潤滑オイルOILを循環させるオイル循環路62を、例えばトランスファケース23の外周面に形成する場合と比較した場合では、トランスファケース23の大型化を抑制することができる。
[ディスコネクト2輪駆動モード時潤滑作用]
図7は、実施例1のトランスファ装置において、ディスコネクト2輪駆動モード時の潤滑オイルの流れを示す説明図である。以下、図7を用いてディスコネクト2輪駆動モード時潤滑作用を説明する。
実施例1の4輪駆動車の走行時、フロントデファレンシャル3のデフケース3aが回転し、このデフケース3aのシャフト部材3bに連結されたドグクラッチ8の入力側噛み合い部材8aがデフケース3aと共に回転する。
一方、ドグクラッチ8と電制カップリング16を共に解放したディスコネクト2輪駆動モードのときには、ドグクラッチ8が解放されるため、このドグクラッチ8の出力側噛み合い部材8bが回転することはない。つまり、デフケース3aの回転が前輪側リングギア9に伝達されないため、前側駆動系の回転によって前輪側リングギア9が回転することはない。また、電制カップリング16の解放によって、左後輪19の回転がリアデファレンシャル15に伝達されないため、リアデファレンシャル15から上流側の部材(後輪側リングギア14、ドライブピニオン13、プロペラシャフト12、後輪出力軸11)の回転は停止する。つまり、左後輪19の回転によって前輪側リングギア9が回転することはない。
このように、前輪側リングギア9が回転しないので、ギア室61内の潤滑オイルOILはかき上げられず、安定状態を維持する。
また、前輪側リングギア9が回転しないことで、第1円錐ころ軸受CB1の小径側と大径側の圧力差は発生せず、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用は生じない。そのため、クラッチ室60からギア室61へと潤滑オイルOILが導入されることはなく、クラッチ室60内のオイル量が減り、ギア室61内のオイル量が増加するといったオイル量変化が発生することもない。
このように、ディスコネクト2輪駆動モード時には、ドグクラッチ8の入力側噛み合い部材8aの回転によって、クラッチ室60内の潤滑オイルOILがかき上げられ(矢印μ)、ドグクラッチ8の噛み合い面や第1ボールベアリングB1の潤滑が行われる。また、前輪側リングギア9が回転しないことで、ギア室61では潤滑オイルOILは安定状態を維持する。
これに対し、実施例1のトランスファ装置TRでは、クラッチ室60がブリーザ63によって大気に連通されている。ここで、第1円錐ころ軸受CB1のポンプ作用が生じず、オイル量変化が発生しないため、クラッチ室60内の潤滑オイルOILは、停車時のオイル量から増加することはない。そのため、ディスコネクト2輪駆動モード時であっても、ブリーザ63からのオイル噴き出しを発生しにくくすることができる。
しかも、このディスコネクト2輪駆動モード時、クラッチ室60ではドグクラッチ8の入力側噛み合い部材8aのみによって潤滑オイルOILがかき上げられる。そのため、ドグクラッチ8が締結している場合よりも、かき上げられるオイル量が少なく、クラッチ室60内に飛散する潤滑オイルOILがブリーザ63に入り込みにくくなって、このブリーザ63からのオイル噴き出しを発生しにくくすることができる。
さらに、この実施例1では、ドグクラッチ8を、左右前輪6,7から左右後輪19,29への駆動分岐位置に設けている。また、このドグクラッチ8よりも下流位置に電制カップリング16を設けている。そして、前輪側リングギア9の回転が停止しているとき、ドグクラッチ8の一部を潤滑オイルOILに浸漬させている。
これにより、ドグクラッチ8と電制カップリング16を共に解放したディスコネクト2輪駆動モードであっても、クラッチ室60内では、潤滑オイルOILをかき上げて、ドグクラッチ8の噛み合い面や第1ボールベアリングB1といった潤滑が必要な箇所の潤滑を行うことができる。また、このディスコネクト2輪駆動モードでは、ドグクラッチ8より下流側の駆動系回転(プロペラシャフト12等の回転)を停止することができ、フリクション損失やオイル攪拌損失などが抑えられ、燃費向上を達成することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1の4輪駆動車のトランスファ装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1) 左右前輪6,7と左右後輪19,20のうち、一方を駆動源(エンジン1)に接続される主駆動輪とし、他方を前記駆動源(エンジン1)にクラッチを介して接続される副駆動輪とする4輪駆動車に搭載され、
前記主駆動輪(左右前輪6,7)と前記副駆動輪(左右後輪19,20)の間のプロペラシャフト12に連結したピニオンギア(出力ピニオン10)に噛合するギア部9bが外周面に形成されたリングギア(前輪側リングギア9)と、
デフケース3aと前記リングギア(前輪側リングギア9)の間に設けられ、クラッチ解放により前記リングギア(前輪側リングギア9)を前記デフケース3aから切り離すトランスファクラッチ(ドグクラッチ8)と、
前記リングギア(前輪側リングギア9)と前記ピニオンギア(出力ピニオン10)と前記トランスファクラッチ(ドグクラッチ8)を収納し、潤滑オイルOILを封入すると共に、内部圧力を調整するブリーザ63が設けられたトランスファケース23と、
を備え、
前記リングギア(前輪側リングギア9)と前記トランスファケース23の間に、前記リングギア(前輪側リングギア9)を回転可能に支持すると共に、大径側を対向して配置される一対の円錐ころ軸受(第1円錐ころ軸受CB1、第2円錐ころ軸受CB2)を介装し、
前記ブリーザ63は、前記トランスファケース23の内部空間のうち、前記一対の円錐ころ軸受(第1円錐ころ軸受CB1、第2円錐ころ軸受CB2)の小径側の内部空間(クラッチ室60)を大気に連通する構成とした。
これにより、トランスファケース23に設けたブリーザ63から潤滑オイルOILを噴き出しにくくすることができる。
(2) 前記トランスファケース23は、前記一対の円錐ころ軸受(第1円錐ころ軸受CB1、第2円錐ころ軸受CB2)のいずれか一方の小径側に形成されると共に前記トランスファクラッチ(ドグクラッチ8)を配置するクラッチ室60と、前記一対の円錐ころ軸受(第1円錐ころ軸受CB1、第2円錐ころ軸受CB2)の間に形成されると共に前記リングギア(前輪側リングギア9)及び前記ピニオンギア(出力ピニオン10)を配置するギア室61と、前記クラッチ室60と前記ギア室61を連通するオイル循環路62と、を有し、
前記ブリーザ63は、前記クラッチ室60を大気に連通する構成とした。
これにより、上記(1)の効果に加え、トランスファケース23に設けたブリーザ63から潤滑オイルOILをさらに噴き出しにくくすることができる。
(3) 前記デフケース3aは、前記リングギア(前輪側リングギア9)を貫通すると共に、前記主駆動輪(右前輪7)の車軸(右前輪ドライブシャフト5)に連結するシャフト部材3bを有し、
前記オイル循環路62を、前記シャフト部材3bと前記リングギア(前輪側リングギア9)の間に形成されて前記クラッチ室60に連通する第1循環路62aと、前記リングギア(前輪側リングギア9)を径方向に貫通して前記ギア室61と前記第1循環路62aを連通する第2循環路62bと、によって構成する構成とした。
これにより、上記(2)の効果に加え、オイル循環路62を容易に確保することができると共に、トランスファケース23の大型化を抑制することができる。
(4) 前記トランスファクラッチ(ドグクラッチ8)を、前記主駆動輪(左右前輪6,7から前記副駆動輪(左右後輪19,20)への駆動分岐位置に設け、
前記トランスファクラッチ(ドグクラッチ8)よりも下流位置に、クラッチ締結容量に応じて前記駆動源(エンジン1)からの駆動力の一部を前記副駆動輪(左右後輪19,20)へ配分する摩擦クラッチ(電制カップリング16)を設け、
前記リングギア(前輪側リングギア9)の回転が停止しているとき、前記トランスファクラッチ(ドグクラッチ8)の一部を前記潤滑オイルOILに浸漬させる構成とした。
これにより、上記(1)〜(3)の何れかの効果に加え、フリクション損失やオイル攪拌損失などが抑えて燃費向上を達成しつつ、必要箇所の潤滑を行うことができる。
以上、本発明の4輪駆動車のトランスファ装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、トランスファ装置TRを左右前輪6,7の間に配置する例を示したが、これに限らない。例えば、本発明のトランスファ装置を左右後輪19,20の間に配置してもよい。この場合では、リアデフハウジング24内に、ドライブピニオン13、後輪側リングギア14、リアデファレンシャル15に加えて、トランスファクラッチに相当する電制カップリング16を収納する。そして、後輪側リングギア14を大径側が対向するように配置された一対の円錐ころ軸受によって支持すると共に、この一対の円錐ころ軸受の小径側にブリーザを設ける。
また、トランスファクラッチとしては、噛み合いクラッチであるドグクラッチ8に限らず、電制カップリング16のような摩擦クラッチであってもよい。
さらに、ドグクラッチ8は、油圧により駆動するシフトフォークを用いて解放/締結がなされる噛み合いクラッチによって構成してもよい。また、電制カップリング16は、油圧により多板クラッチを解放/締結する油圧式摩擦クラッチによって構成してもよい。
実施例1では、駆動源としてエンジン1のみを有する4輪駆動車に適用する例を示したが、駆動源としてエンジンとモータを有するハイブリッド車両や、モータのみを有する電気自動車に対しても適用することができる。
1 エンジン(駆動源)
2 変速機
3 フロントデファレンシャル
3a デフケース
3b シャフト部材
4 左前輪ドライブシャフト(車軸)
5 右前輪ドライブシャフト(車軸)
6 左前輪(主駆動輪)
7 右前輪(主駆動輪)
8 ドグクラッチ(トランスファクラッチ)
9 前輪側リングギア(リングギア)
9a シャフト部
9b ギア部
10 出力ピニオン(ピニオンギア)
11 後輪出力軸
12 プロペラシャフト
16 電制カップリング(摩擦クラッチ)
19 左後輪(副駆動輪)
20 右後輪(副駆動輪)
23 トランスファケース
31 エンジンコントロールモジュール
32 変速機コントロールモジュール
33 ABSアクチュエータコントロールユニット
34 4WDコントロールユニット
60 クラッチ室
61 ギア室
62 オイル循環路
62a 第1循環路
62b 第2循環路
63 ブリーザ
TR トランスファ装置

Claims (4)

  1. 左右前輪と左右後輪のうち、一方を駆動源に接続される主駆動輪とし、他方を前記駆動源にクラッチを介して接続される副駆動輪とする4輪駆動車に搭載され、
    前記主駆動輪と前記副駆動輪の間のプロペラシャフトに連結したピニオンギアに噛合するギア部が外周面に形成されたリングギアと、
    デフケースと前記リングギアの間に設けられ、クラッチ解放により前記リングギアを前記デフケースから切り離すトランスファクラッチと、
    前記リングギアと前記ピニオンギアと前記トランスファクラッチを収納し、潤滑オイルを封入すると共に、内部圧力を調整するブリーザが設けられたトランスファケースと、
    を備え、
    前記リングギアと前記トランスファケースの間に、前記リングギアを回転可能に支持すると共に、大径側を対向して配置される一対の円錐ころ軸受を介装し、
    前記ブリーザは、前記トランスファケースの内部空間のうち、前記一対の円錐ころ軸受の小径側の内部空間を大気に連通する
    ことを特徴とする4輪駆動車のトランスファ装置。
  2. 請求項1に記載された4輪駆動車のトランスファ装置において、
    前記トランスファケースは、前記一対の円錐ころ軸受のいずれか一方の小径側に形成されると共に前記トランスファクラッチを配置するクラッチ室と、前記一対の円錐ころ軸受の間に形成されると共に前記リングギア及び前記ピニオンギアを配置するギア室と、前記クラッチ室と前記ギア室を連通するオイル循環路と、を有し、
    前記ブリーザは、前記クラッチ室を大気に連通する
    ことを特徴とする4輪駆動車のトランスファ装置。
  3. 請求項2に記載された4輪駆動車のトランスファ装置において、
    前記デフケースは、前記リングギアを貫通すると共に、前記主駆動輪又は前記副駆動輪のいずれかの車軸に連結するシャフト部材を有し、
    前記オイル循環路を、前記シャフト部材と前記リングギアの間に形成されて前記クラッチ室に連通する第1循環路と、前記リングギアを径方向に貫通して前記ギア室と前記第1循環路を連通する第2循環路と、によって構成する
    ことを特徴とする4輪駆動車のトランスファ装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された4輪駆動車のトランスファ装置において、
    前記トランスファクラッチを、前記主駆動輪から前記副駆動輪への駆動分岐位置に設け、
    前記トランスファクラッチよりも下流位置に、クラッチ締結容量に応じて前記駆動源からの駆動力の一部を前記副駆動輪へ配分する摩擦クラッチを設け、
    前記リングギアの回転が停止しているとき、前記トランスファクラッチの一部を前記潤滑オイルに浸漬させる
    ことを特徴とする4輪駆動車のトランスファ装置。
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