以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る音楽データ再生装置の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、本実施の形態の音楽データ再生装置は、音高情報を含む演奏データを入力するための鍵盤を含む演奏操作子1と、各種情報を入力するための複数のボタン(押しボタンスイッチ)を含む設定操作子2と、演奏操作子1の操作状態を検出する検出回路3と、設定操作子2の操作状態を検出する検出回路4と、装置全体の制御を司るCPU5と、該CPU5が実行する制御プログラム、各種テーブルデータおよび各種パラメータ等を記憶するROM6と、演奏データ、各種入力情報および演算結果等を一時的に記憶するRAM7と、各種情報等を表示する、たとえば小型の液晶ディスプレイ(LCD)および/または発光ダイオード(LED)等を備えた表示器8と、前記制御プログラムを含む各種アプリケーションプログラムや各種音楽データ、各種データ等を記憶する記憶装置9と、図示しない外部機器を接続し、この外部機器とデータの送受信を行う通信インターフェース(I/F)10と、演奏操作子1から入力された演奏データや、前記記憶装置9に記憶されたいずれかの音楽データを再生して得られた演奏データ等を楽音信号に変換するとともに、その楽音信号に各種効果を付与するための音源・効果回路11と、該音源・効果回路11からの楽音信号を音響に変換する、たとえば、DAC(digital-to-analog converter)やアンプ、スピーカ等のサウンドシステム12と、タイマ割込み処理における割込み時間や各種時間を計時するタイマ13とにより構成されている。
上記構成要素3〜11は、バス14を介して相互に接続され、CPU5にはタイマ13が接続され、音源・効果回路11にはサウンドシステム12が接続されている。
記憶装置9は、たとえば、フレキシブルディスク(FD)、ハードディスク(HD)、CD−ROM、DVD(digital versatile disc)、光磁気ディスク(MO)および半導体メモリなどの記憶媒体とその駆動装置である。記憶媒体は、駆動装置から着脱可能であってもよいし、記憶装置9自体が、本実施の形態の音楽データ再生装置から着脱可能であってもよい。あるいは、記憶媒体も記憶装置9も着脱不可能であってもよい。なお記憶装置9(の記憶媒体)には、前述のようにCPU5が実行する制御プログラムも記憶でき、ROM6に制御プログラムが記憶されていない場合には、この記憶装置9に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM7に読み込むことにより、ROM6に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU5にさせることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。
通信I/F10としては、たとえば、MIDI(musical instrument digital interface)信号などの音楽信号を専用に送受信する音楽専用有線I/F、USB(universal serial bus)やIEEE1394などの汎用近距離有線I/F、Ethernet(登録商標)などの汎用ネットワークI/F、無線LAN(local area network)やBluetooth(登録商標)などの汎用近距離無線I/Fを挙げることができる。本実施の形態では、通信I/F10としてUSBを採用しているが、これに代えて他の種類のI/Fを採用してもよいし、これに他の種類のI/Fを加えるようにしてもよい。
なお本実施の形態の音楽データ再生装置は、上述の構成から分かるように電子鍵盤楽器上に構築されたものであるが、これに限らず、鍵盤を外部接続した汎用的なパーソナルコンピュータ上に構築してもよい。また、鍵盤を必須の構成とせずに本発明を実現できるので、弦楽器タイプ、管楽器タイプ、打楽器タイプ等の形態を採用するようにしてもよい。さらに電子楽器に限らず、カラオケ機器やゲーム機器、通信機器などの電子機器にも本発明を適用することができる。
図2は、本実施の形態の音楽データ再生装置のパネル面の一部を示す平面図である。当該パネル面の一部には、同図に示すように、テンキー21、+(プラス)ボタン22、−(マイナス)ボタン23、START/STOP(スタート/ストップ)ボタン24、TEMPO(テンポ)ボタン25、MUTE(ミュート)ボタン26、PAUSE/FILL(ポーズ/フィル)ボタン27、および7セグメントLED8a(以下「LED8a」と略す)が設けられている。ボタン21〜27は、前記設定操作子2に属し、LED8aは、前記表示器8に属している。
テンキー21は、本実施の形態では、再生対象の音楽データを選択する際に用いられる。各音楽データには、図3を用いて後述するように、固有のデータID(本実施の形態では、3桁の番号)が付与されているので、ユーザは、テンキー21を用いて3桁の番号を入力することで、再生したい音楽データを直接選択することができる。入力された番号は、LED8aに表示されるが、入力された番号に対応する音楽データがない場合もあり、その場合には、音楽データの選択は行われず、LED8aの表示は番号を入力する前の状態に戻る。あるいは、エラー表示(たとえば“−−−”)を出して、ユーザに正しいデータIDの入力を促してもよい。
音楽データが既に選択されている場合、つまりLED8aに有効な番号が表示されている場合には、ユーザは、+ボタン22または−ボタン23を押して、表示された番号を増加または減少させることにより、再生したい音楽データを選択することもできる。なお、この選択機能を、+ボタン22および−ボタン23ではなく、図示しないダイヤルスイッチに割り当て、ユーザがダイヤルスイッチを、たとえば時計方向または反時計方向に回転させることに応じて、表示された番号を増加または減少させて、再生したい音楽データを選択するようにしてもよい。
START/STOPボタン24は、選択中の音楽データの再生の開始/停止を指示するためのものである。
TEMPOボタン25は、テンキー21あるいは+ボタン22および/または−ボタン23と協働して、選択中の音楽データのテンポを設定するものである。具体的には、ユーザがTEMPOボタン25を押した後所定時間内に、テンキー21、+ボタン22または−ボタン23を操作すると、テンキー21で入力されたテンポ値や、+ボタン22または−ボタン23で増加/減少されたテンポ値が設定される。また、ユーザがTEMPOボタン25を押した後所定時間内に、+ボタン22および−ボタン23を同時押しすると、現在設定されているテンポが、選択中の音楽データに予め備わっている固有のテンポ(初期テンポ)にリセットされる。
MUTEボタン26は、選択中の音楽データの一部のパートのミュート(消音)とその解除をトグルで切り替えるためのものである。この一部のパートは、選択中の音楽データの種類に応じて予め決まっている。具体的には、選択中の音楽データがソングデータであれば、メロディパート(本実施の形態ではパート1(図3参照))がミュートされ、伴奏スタイルデータであれば、伴奏パート(本実施の形態ではパート3〜8(図3参照))がミュートされる。
PAUSE/FILLボタン27は、ソングデータの再生中はその一時停止を指示し、伴奏スタイルデータの再生中はフィルインセクションの演奏データの再生を指示するためのものである。
なお本実施の形態では、音楽データの3桁の番号を表示する表示器として、7セグメントLED8aを採用したが、これに限らず、ドットマトリックスLED、7セグメントLCDあるいはドットマトリックスLCDなど、どのような方式のものを採用してもよい。また本実施の形態の音楽データ再生装置は、表示器8として、このLED8aの他に、他の情報を表示する小型のLCD(図示せず)やLEDを備えていることを想定しているが、これに限らず、表示器8はLED8aのみとしてもよい。
図3は、記憶装置9に記憶された音楽データとそのフォーマットの一例を示す図である。同図に示すように、記憶装置9には、音楽データとして、15曲のソングデータ#1〜#15と20タイプの伴奏スタイルデータ#1〜#20が予め記憶されている。なお、各音楽データのフォーマットとして、本実施の形態では説明の都合上、SMF(standard MIDI file)形式のMIDIデータを採用している。もちろん、他のフォーマットのMIDIデータを採用するようにしてもよいし、MIDIのフォーマットを採らない他のフォーマット、たとえばOSC(Open Sound Control)などの演奏情報であってもよい。また、オーディオトラック(パート)を含むようにしてもよいし、オーディオトラックのみで構成されていてもよい。
前述のようにして、ユーザがテンキー21、+ボタン22または−ボタン23を用いて、いずれかの音楽データを選択すると、選択された音楽データ、つまりソングデータまたは伴奏スタイルデータが記憶装置9から読み出され、前記RAM7の所定位置に確保された音楽データ格納領域(図示せず)に格納される。なお、ソングデータおよび伴奏スタイルデータの記憶場所は、記憶装置9に限らず、前記ROM6またはRAM7であってもよく、ソングデータと伴奏スタイルデータとで、記憶場所が異なっていてもよい。
ソングデータおよび伴奏スタイルデータのそれぞれには、前述のように、固有の3桁の番号(データID)が付与されている。図示例では、ソングデータ#1〜#15に“001”〜“015”が付与され、伴奏スタイルデータ#1〜#20に“016”〜“035”が付与されている。このように固有番号は、先頭のソングデータ#1から末尾の伴奏スタイルデータ#20まで、抜けのない通し番号が付与されているが、これに限らず、抜けがあってもよい。もちろん、抜けのない番号が付与されていたとしても、3桁の番号がすべて埋まっている訳ではないので、ユーザがテンキー21を用いて番号を入力すると、記憶されていない音楽データが選択指示されることもある。この場合には、前述のように、当該選択指示された音楽データは選択されない。一方、ユーザが+ボタン22または−ボタン23を用いて音楽データを選択するときには、固有番号に抜けがあったとしても、音楽データはその並び順に従って1つずつ選択されて行く。そしてユーザが、末尾の伴奏スタイルデータ#20が選択された状態で+ボタン22を押すと、選択対象の音楽データは末尾の伴奏スタイルデータ#20から先頭のソングデータ#1に移り、先頭のソングデータ#1が選択された状態で−ボタン23を押すと、選択対象の音楽データは先頭のソングデータ#1から末尾の伴奏スタイルデータ#20に移る。
各ソングデータは、同じフォーマットで構成されているので、図3には、ソングデータ#1のフォーマットのみが図示されている。ソングデータ#1は、演奏データ31およびメタデータ32によって構成されている。演奏データ31は、複数パート(たとえば、16パート)の演奏データによって構成されている。各パートの演奏データは、ノートオン/オフ、ノートナンバ、ベロシティ等のデータを含むノートイベントデータ、ピッチベンドデータやボリュームデータ等のイベントデータと、該イベントデータの再生タイミングを示すタイミングデータとを一組とする複数組からなるシーケンスによって構成され、その末尾にはエンドデータが付加されている。本実施の形態では、パート1がメロディパートであり、その他のパートが伴奏パートである。一方、メタデータ32は、曲名、(初期)テンポ、拍子および歌詞などを含んでいる。
ある1つのソングデータが選択されると、そのソングデータ全体が記憶装置9から読み出されて、前記音楽データ格納領域に格納される。これに続いて、音楽データ格納領域内のソングデータに含まれるメタデータ内のテンポが読み出され、再生テンポの初期値として、シーケンサ104(その詳細は、図4を用いて後述)の設定部104bに設定される。
各伴奏スタイルデータも、同じフォーマットで構成されているので、図3には、伴奏スタイルデータ#1のフォーマットのみが図示されている。伴奏スタイルデータ#1は、メインセクションの演奏データ33、フィルインセクションの演奏データ34およびメタデータ35によって構成されている。メインセクションの演奏データ33もフィルインセクションの演奏データ34も、複数パート(たとえば、8パート)の演奏データによって構成されている。パートには、打楽器音(リズム)を生成するための音高を変化させないパート(RHYパート)と、リズムと連動して多彩な装飾音を施した伴奏音を生成するための音高を変化させるパート(ACMP(accompaniment)パート)がある。図示例では、RHYパートとしてパート1,2の2パート、ACMPパートとしてパート3〜8の6パートが設けられているが、各パート数は、これに限られる訳ではない。また、メインセクションの演奏データ33とフィルインセクションの演奏データ34の各パート数は、本実施の形態では、いずれも8パートとするが、パート数はこれに限られる訳ではなく、さらに、メインセクションとフィルインセクションとで、パート数を異ならせてもよい。また、メインセクションとフィルインセクションだけでなく、イントロセクション、エンディングセクション、ブレイクセクションなどの他のセクションがあってもよいし、複数種類のメインセクションがあってもよい。なお、各演奏データ34,35の各パートの演奏データの内容(フォーマット)は、ソングデータ31の各パートの演奏データの内容(フォーマット)と同様であるので、その説明は繰り返さない。一方、メタデータ35は、(初期)テンポおよびコード変換データなどを含んでいる。コード変換データは、前記鍵盤に対するユーザの押鍵に応じて、各セクションのACMPパートの音高を変換するためのデータである。このコード変換データは、本実施の形態では公知のものを採用しており、また、ACMPパートの音高変換も、この公知のコード変換データを使って一般的に行われているので、コード変換データがどのようなものであり、コード変換データをどう使って、ACMPパートの音高をどう変換するかについての説明は省略する。
ある1つの伴奏スタイルデータが選択されると、ソングデータが選択された場合と同様に、その伴奏スタイルデータ全体が記憶装置9から読み出されて、音楽データ格納領域に格納される。しかし、ソングデータが選択された場合と異なり、当該格納された伴奏スタイルデータに含まれるメタデータ内のテンポは、通常は読み出されず、シーケンサ104の設定部104bのテンポ設定は変動しない。この詳細については、後述する。
図4は、本実施の形態の音楽データ再生装置の機能構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施の形態の音楽データ再生装置は、演奏操作部101、設定操作部102、制御部103、シーケンサ104、記憶部105、表示部106、音源部107および出力部108によって構成されている。
演奏操作部101は、演奏操作子1(の、特に鍵盤)および検出回路3によって構成され、設定操作部102は、設定操作子2(の、特に図2のボタン21〜27)および検出回路4によって構成される。
制御部103は、主としてCPU5、ROM6およびRAM7によって構成され、CPU5が後述する図5〜図7の処理を含む制御処理を実行することによって実現される。
シーケンサ104も、主としてCPU5、ROM6およびRAM7によって構成され、CPU5がシーケンサプログラム(図示せず)を実行することによって実現される。シーケンサ104は、再生部104aと設定部104bを備え、選択された音楽データに含まれる演奏データを再生部104aによって再生する。そのとき、再生部104aは、設定部104bに設定されているテンポで当該演奏データを再生する。設定部104bに設定されているテンポ値は、前述のように変更することができる。
記憶部105は、記憶装置9によって構成され、複数の音楽データを記憶する。音楽データには、図3を用いて前述したように、ソングデータと伴奏スタイルデータの2種類のデータがあり、各音楽データには固有のデータID、つまり3桁の番号が付与されている。なお、データIDは、各音楽データがそのデータ内に持つようにしてもよいし、各音楽データとは別に、たとえばテーブルなどによって管理するようにしてもよい。要するに、データIDと各音楽データとが1対1に対応付けられていれば、データIDの持ち方は問わない。また、各音楽データの内容(データフォーマット)については、前述したので、これ以上繰り返さない。
表示部106は、表示器8(の、特に図2のLED8a)に相当し、選択された音楽データのデータIDを表示する。
音源部107は、前記音源・効果回路11に相当し、シーケンサ104が音楽データを再生して出力した演奏データや、ユーザが演奏操作部101から入力した演奏データ等を楽音信号に変換し、その楽音信号に適宜各種効果を付与する。
出力部108は、前記サウンドシステム12に相当し、音源部107から供給された楽音信号を音響に変換する。本実施の形態では、音響はスピーカから発生するようにしたが、これに限らず、ヘッドフォン(のスピーカ)から発生するようにしてもよい。
以上のように構成された音楽データ再生装置が実行する制御処理を、図4〜図7を参照して詳細に説明する。
本実施の形態の音楽データ再生装置は、
(1)種類の異なる音楽データ(のデータID)を共通の操作子で選択できる音楽データ選択処理;
(2)上記(1)の音楽データ選択処理によって新たな音楽データ(のデータID)が選択され、現在選択中の音楽データが当該新たに選択された音楽データに変更されると、その変更された音楽データの種類に合った(適切な)再生が行えるようにシーケンサ104(の設定部104b)を自動的に設定するデータID変更後処理;
(3)異なる種類の音楽データ間で共通あるいは関連する再生制御機能ではあるが、音楽データの種類が異なる毎に内容の異なる再生制御処理を共通の操作子による操作指示で行う再生制御処理;
(4)所定の操作子による操作指示に応じて、現在選択中の音楽データの種類毎に異なるデフォルト位置の音楽データを選択できるデフォルト音楽データ選択処理;
を含む各種制御処理を実行する。
たとえば、ユーザが本実施の形態の音楽データ再生装置の電源スイッチ(図示せず)をオンすると、本実施の形態の音楽データ再生装置に電源が供給される。これにより、本実施の形態の音楽データ再生装置は起動し、前回の起動時の最後に選択された音楽データがそのまま選択され、そのデータID(3桁の番号)が表示部106(図2ではLED8a)に表示される。なお、本実施の形態の音楽データ再生装置を購入して初めて起動するなど、前回選択した音楽データがない場合には、初期設定として定められた音楽データ(たとえば、先頭の音楽データ、つまり図3ではソングデータ#1)が選択される。
今、図2に示すように、データIDが“001”のソングデータ#1が選択されているとする。この状態で、ユーザが、たとえば+ボタン22を押すと、前記(1)の音楽データ選択処理が起動され、制御部103は、“001”から+ボタン22が押された回数だけ増加方向に位置するデータIDの音楽データを選択する。図3を用いて前述したように、記憶部105には、データIDが“001”〜“035”の35個の音楽データが記憶されているので、ユーザが+ボタン22を、たとえば15回押すと、データID“016”の音楽データ、つまり伴奏スタイルデータ#1が選択され、そのデータID“016”が表示部106に表示される。なお前述のように、先頭の音楽データ(図3ではソングデータ#1)から末尾の音楽データ(図3では伴奏スタイルデータ#20)までのデータID(固有番号)に抜けがある場合には、+ボタン22の操作回数と、選択前のデータIDと選択後のデータIDの差分とは対応しないことがある。また、音楽データの選択は、+ボタン22の他に、−ボタン23やテンキー21を操作することで行うこともできる。これも前述した通りである。
このようにして音楽データ(データID)が変更されると、制御部103は、変更後の音楽データを記憶部105から読み出して、RAM7上の前記音楽データ格納領域に格納する。そして制御部103は、前記(2)のデータID変更後処理を起動する。
図5は、このデータID変更後処理の手順を示すフローチャートである。同図において、制御部103は、変更後の音楽データ、つまり音楽データ格納領域に格納された音楽データの種類を判定する(ステップS1)。ここで、音楽データの種類の判定方法は、音楽データの種類が判定できれば、どのような方法を用いてもよいが、たとえば、次のような方法が考えられる。すなわち、
(11)データIDと音楽データの種類とを対応付けるテーブルを予め用意しておき、音楽データが変更されると、そのデータIDに基づいてテーブルを検索し、音楽データの種類を判定する方法;
(12)各音楽データは、本実施の形態では前述のように、ファイル形式で記憶されているので、その拡張子を音楽データの種類毎に異なるように記載しておき、拡張子で音楽データの種類を判定する方法;
(13)音楽データの構造(具体的には、ソングデータは複数パートからなる演奏データが1つだけ含むのに対して、伴奏スタイルデータは複数パートからなる演奏データを複数(本実施の形態では、2つ)含む)を解析し、その解析結果から音楽データの種類を判定する方法;
(14)各音楽データのメタデータ内に当該音楽データの種類を記載しておき、それを読み出して音楽データの種類を判定する方法;
などである。
前記ステップS1の判定の結果、異なる種類(形式)の音楽データに変更された場合には、制御部103は、シーケンサ104に指示して、設定部104bの再生設定を切り替える(ステップS2→S3)。一方、同じ種類(形式)の音楽データに変更された場合には、制御部103は、本データID変更後処理を終了する。
音楽データがソングデータから伴奏スタイルデータに変更された場合には、異なる種類の音楽データに変更されたので、制御部103は、シーケンサ104に指示して、設定部104bを伴奏スタイルデータに合った設定に変更する。具体的には、制御部103は、リピート再生をオンに設定するように指示する。
一方、音楽データが伴奏スタイルデータからソングデータに変更された場合には、この場合も異なる種類の音楽データに変更されたので、制御部103は、シーケンサ104に指示して、設定部104bをソングデータに合った設定に変更する。具体的には、制御部103は、リピート再生をオフに設定し、さらにチェーン再生(1曲分のソングデータの再生が終了すると、次のソングデータを自動的に読み込んで再生する機能)をオンに設定するように指示する。
なお、データIDが変更された場合、設定部104bのテンポ設定は、ステップS3の処理とは別の処理(図示せず)により、次のようにして行われる。すなわち、
(21)ソングデータから別のソングデータに変更された場合:別のソングデータ内のテンポ値に変更;
(22)ソングデータから伴奏スタイルデータに変更された場合:伴奏スタイルデータ内のテンポ値に変更;
(23)伴奏スタイルデータからソングデータに変更された場合:ソングデータ内のテンポ値に変更;
(24)伴奏スタイルデータから別の伴奏スタイルデータに変更された場合:テンポ値は変更しない;
である。この(24)の場合に、設定部104bのテンポ設定を変更しないのは、伴奏スタイルデータは、ユーザによって指定されたテンポで再生するのが基本だからである。一方、上記(22)の場合に、設定部104bのテンポ設定を変更するのは、変更時点では、ユーザによって指定された、伴奏スタイルデータを再生するためのテンポが存在しないからである。
このようにして、ある音楽データが選択され、その音楽データに合った再生を行うことができるような設定がなされた状態で、ユーザが前記START/STOPボタン24を押すと、シーケンサ104の再生部104aは、設定部104bの設定に従って、その音楽データに合った再生を行う。以下、音楽データとしてソングデータ#1と伴奏スタイルデータ#1が選択された場合に、再生部104aが実行する各再生処理を具体的に説明する。
まず、ソングデータ#1が選択された状態で、再生開始が指示されると、再生部104aは、音楽データ格納領域に格納されているソングデータ#1の演奏データ31(図3参照)の先頭データをパート毎に読み出す。各パートの先頭データは、必ずしもタイミングデータではないが、ここではタイミングデータとする。再生部104aは、この各パートのタイミングデータの値を、設定部104bに設定されているテンポ値に応じた時間毎に“1”ずつデクリメントして行く。このデクリメント処理は、本実施の形態では、図示しないタイマ割込み処理中で行われる。そして、タイマ割込み処理は、クロックの立ち上がり(あるいは立ち下がり)に応じて起動され、クロックは、再生部104a(CPU5)がテンポに応じた周期を前記タイマ13(図1参照)に設定し、そのスタートを指示すると、タイマ13によって生成される。その結果、各パートのタイミングデータの値は、設定部104bに設定されているテンポ値に応じた時間毎に“1”ずつデクリメントされて行く。
デクリメントが進み、あるパートのタイミングデータの値が“0”になると、再生部104aは、そのパートについて当該タイミングデータと組になっているイベントデータを読み出し、そのイベントデータの内容に応じた楽音処理を音源部107に指示する。このイベントデータ(複数個あることもある)の次に位置する演奏データは、次の組のタイミングデータであるので、再生部104aは、このタイミングデータを読み出して、同様に所定時間毎のデクリメントを行う。再生部104aは、このような各パート毎の処理をエンドデータが読み出されるまで行う。そして、全パートにおける最後のエンドデータが読み出されると、再生部104aは、ソングデータ#1の再生を停止する。もちろん、全パートにおける最後のエンドデータが読み出されるまでに、ユーザがSTART/STOPボタン24を押すと、制御部103は直ちに、シーケンサ104に対して再生停止を指示する。これに応じて再生部104aは、ソングデータ#1の再生を停止する。
再生部104aがソングデータ#1の再生を行っているときに、ユーザがPAUSE/FILLボタン27を押すと、制御部103は、前記(3)の再生制御処理を起動し、シーケンサ104に対して再生の一時停止を指示する。これに応じて再生部104aは、ソングデータ#1の再生を一時停止する。一方、ソングデータ#1の再生が一時停止されている状態で、ユーザが再度、PAUSE/FILLボタン27を押すと、制御部103は直ちに、シーケンサ104に対して一時停止の解除を指示する。これに応じて再生部104aは、ソングデータ#1の一時停止状態を解除して、一時停止した位置からソングデータ#1の再生を再開する。
また、再生部104aがソングデータ#1の再生を行っているときに、ユーザがMUTEボタン26を押すと、制御部103は、前記(3)の再生制御処理を起動し、この(3)再生制御処理に含まれるミュート設定切替処理に処理を進める。図6は、このミュート設定切替処理の手順を示すフローチャートである。同図において、現在選択中の音楽データはソングデータ#1であるので、制御部103は、シーケンサ104の設定部104bに対して、ソングデータ#1の演奏データ31のパート1のミュートオンを指示する(ステップS11→S12)。これにより、設定部104bにミュートオンが設定されるので、これ以降、再生部104aは、パート1の演奏データを再生しているときに、楽音を発音するイベントデータを読み出したとしても、音源部107に対してその発音を指示しない。その結果、パート1の楽音のみが消音され、パート1のみがミュートされる。ソングデータのパート1には、本実施の形態では前述のように、メロディパートが割り当てられているので、パート1のみがミュートされると、ユーザは、伴奏パート(パート2〜16)の再生に合わせて、メロディだけ演奏するという使い方ができる。
一方、パート1がミュートされている状態で、ユーザがMUTEボタン26を押すと、制御部103は、シーケンサ104の設定部104bに対してミュートオフを指示する(ステップS12)。これにより、設定部104bにミュートオフが設定されるので、これ以降、再生部104aは、パート1についても、他のパートと同様に、楽音を発音するイベントデータを読み出した場合には、音源部107に対してその発音を指示する。その結果、パート1のミュートが解除される。
次に、伴奏スタイルデータ#1が選択された状態で、再生開始が指示されると、再生部104aは、音楽データ格納領域に格納されている伴奏スタイルデータ#1のメインセクションの演奏データ33(図3参照)の先頭データをパート毎に読み出す。演奏データ33に含まれる各組のタイミングデータおよびイベントデータの再生方法は、ソングデータ#1の演奏データ31に含まれる各組のタイミングデータおよびイベントデータについてのそれとほとんど変わらないので、再生方法の詳細な説明は省略する。ただし前述のように、伴奏スタイルデータ#1の再生中に、ユーザが鍵盤を押鍵した場合には、再生部104aは、押鍵音の音高とコード変換データ35b(図4参照)に基づいて、ACMPパート(図3の演奏データ33では、パート3〜8)の演奏データ中、読み出されたイベントデータのノートナンバを変換する。この制御は、フィルインセクションの演奏データ34の再生処理内でも、同様に行われる。
メインセクションの演奏データ33についての再生処理が進み、全パートの最後のエンドデータが読み出されると、前述のように設定部104bにはリピート再生のオンが設定されているので、再生部104aは、再度演奏データ33の先頭に戻って、演奏データ33の再生を継続する。
再生部104aがメインセクションの演奏データ33の再生を行っているときに、ユーザがPAUSE/FILLボタン27を押すと、制御部103は、前記(3)の再生制御処理を起動し、シーケンサ104に対して再生対象の変更を指示する。これに応じて再生部104aは、再生対象を現在のメインセクションの演奏データ33からフィルインセクションの演奏データ34に変更する。そして再生部104aは、メインセクションの演奏データ33についての再生処理と同様の再生処理をフィルインセクションの演奏データ34について実行する。フィルインセクションの演奏データ34の再生は、本実施の形態では1回だけ行われる(もちろん、この回数は1回に限られない)ので、フィルインセクションの演奏データ34の全パートの最後のエンドデータが読み出されると、再生部104aは、再生対象を現在のフィルインセクションの演奏データ34からメインセクションの演奏データ33に自動的に変更する。このようにして、メインセクションの演奏データ33が繰り返し再生されている途中で適宜、フィルインセクションの演奏データ34の再生が挿入されるという再生態様が続いて行く。そして、伴奏スタイルデータ#1の再生を停止したい場合には、ユーザは、START/STOPボタン24を押す。
再生部104aが伴奏スタイルデータ#1の再生を行っているときに、ユーザがMUTEボタン26を押すと、制御部103は、前記(3)の再生制御処理を起動し、前記図6のミュート設定切替処理に処理を進める。同図において、現在選択中の音楽データは伴奏スタイルデータ#1であるので、制御部103は、シーケンサ104に対して、伴奏スタイルデータ#1の演奏データ33または34のACMPパートのミュートオンを指示する(ステップS11→S13)。これにより、設定部104bにミュートオンが設定されるので、これ以降、再生部104aは、ACMPパートの演奏データを再生しているときに、楽音を発音するイベントデータを読み出したとしても、音源部107に対してその発音を指示しない。その結果、ACMPパートの楽音のみが消音され、ACMPパートのみがミュートされる。ACMPパートのみがミュートされると、RHYパートのみが再生されるので、ユーザは、打楽器音をメトロノーム代わりに使いたいときに便利である。
一方、ACMPパートがミュートされている状態で、ユーザがMUTEボタン26を押すと、制御部103は、シーケンサ104に対してミュートオフを指示する(ステップS13)。これにより、設定部104bにミュートオフが設定されるので、これ以降、再生部104aは、ACMPパートについても、RHYパートと同様に、楽音を発音するイベントデータを読み出した場合には、音源部107に対してその発音を指示する。その結果、ACMPパートのミュートが解除される。
なお本実施の形態では、図6のミュート設定切替処理を音楽データの再生中に実行する例について説明したが、音楽データの再生前に実行し、ミュートオン/オフを切り替えた後、切替後のミュート設定で音楽データを再生することもできる。
以上のようにして(1)〜(3)の各処理が実行され、各種ソングデータや各種伴奏スタイルデータが再生された後、デフォルト位置の音楽データ、特に現在選択されている音楽データと同じ種類のデフォルト位置の音楽データを再度選択したい場合がある。たとえば、色々な伴奏スタイルデータを再生して試しに聞いてみたが、最初に再生したものがよかったので、その伴奏スタイルデータを再度選択して再生したい場合である。この場合、最初の伴奏スタイルデータは、データIDが最初、つまり“001”のものではないので、ユーザは、どの伴奏スタイルデータが最初のものであるか分からなくなってしまう可能性がある。このような状況に対処するために、本実施の形態の音楽データ再生装置では、ユーザが+ボタン22と−ボタン23を同時に押すと、現在選択されている音楽データと同じ種類の音楽データであって、デフォルト位置にあるものが直ちに選択されるようにした。なお、デフォルト位置は、必ずしも各種類の音楽データの先頭とは限らないが、本実施の形態では、デフォルト位置の音楽データは、ソングデータの場合にはソングデータ#1であり、伴奏スタイルデータの場合には伴奏スタイルデータ#1であるとする。
音楽データの再生が停止中に、ユーザが+ボタン22と−ボタン23を同時に押すと、制御部103は、前記(4)のデフォルト音楽データ選択処理を起動する。図7は、このデフォルトデータ選択処理の手順を示すフローチャートである。同図において、現在選択中の音楽データがソングデータである場合には、制御部103は、デフォルト位置のソングデータ、本実施の形態ではソングデータ#1を読み込み(ステップS21→S22)、当該ソングデータに対応するデータIDを表示部106、つまりLED8aに表示する(ステップS23)。これにより、LED8aには“001”が表示される。一方、現在選択中の音楽データが伴奏スタイルデータである場合には、制御部103は、デフォルト位置の伴奏スタイルデータ、本実施の形態では伴奏スタイルデータ#1を読み込み(ステップS21→S24)、当該伴奏スタイルデータに対応するデータIDをLED8aに表示する(ステップS25)。これにより、LED8aには“016”が表示される。
以上説明したように、本実施の形態の音楽データ再生装置では、音楽データの種類毎にモードを設けずに、音楽データの異なる種類間で共通あるいは関連する機能を1つの操作子に割り当て、当該操作については音楽データの種類に拘わらず1つの操作子で行うことができるようにしたので、ユーザは現在のモードを常に把握して操作子を操作しなくても、意図通りの操作を迷わずに行うことができる。これにより、ユーザの機能選択の操作性が向上する。
また、音楽データの種類に拘わらず、共通の操作子で音楽データを選択可能に構成したので、音楽データの種類毎に、音楽データを選択する操作子を別々に設けたり、モードスイッチを設けてユーザがモードを切り替えたりする必要がなくなる。これにより、操作子の数が減少して製造コストを削減できるとともに、ユーザの操作子に対する判別性が向上する。
さらに、音楽データが変更されると、シーケンサ104(の再生部104a)が変更後の音楽データに合った(適切な)再生を行うことができるような設定に、シーケンサ104(の設定部104b)を自動的に設定するようにしたので、ユーザは、音楽データを変更した後、START/STOPボタン24を押すだけで、変更後の音楽データを直ちに再生することができる。これにより、ユーザの操作性はさらに向上する。
また、ユーザが+ボタン22および−ボタン23を同時に押すことにより、現在選択中の音楽データと同じ種類の音楽データであって、デフォルト位置にあるものを選択可能に構成したので、ユーザは、現在選択中の音楽データの種類を把握して、デフォルト位置の音楽データを選択し直さなくても、簡単な操作で、直ちに意図通りの音楽データを選択することができる。これにより、ユーザの操作性はさらに向上する。
なお本実施の形態では、音楽データの種類として、ソングデータと伴奏スタイルデータの2種類を例に挙げて説明したが、再生用の音楽データであれば、その種類はこれに限られず、たとえば、アルペジオやフレーズデータなどでもよいし、オーディオデータでもよい。選択できる音楽データの種類数も、2種類に限らず、3種類以上であってもよく、3種類以上の音楽データを区別なく選択できるようにしてもよい。
また本実施の形態では、伴奏スタイルデータのセクションの種類として、メインセクションとフィルインセクションの2種類を例に挙げて説明したが、これに、イントロセクションやエンディングセクションなどの他のセクションを加え、これらセクションの演奏データを適宜選択して再生できるように構成してもよい。
さらに本実施の形態では、ソングデータの音高変化については言及していないが、ソングデータに対しては、トランスポーズ可能に構成してもよい。
なお、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムコードおよび該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、たとえば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、通信ネットワークを介してサーバコンピュータからプログラムコードが供給されるようにしてもよい。
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。