意外にも、本発明者らは、式(I):
[式中、
R
1は、R
2とは独立して、H、X、N
3、CN、NO
2、OH、(CH
2)
n−CH
3、O−(CH
2)
n−CH
3、S−(CH
2)
n−CH
3、NR
3R
4、OCO(CH
2)
nCH
3、NR
3CO(CH
2)
nCH
3、CH2−R
5、場合により置換された単環式または二環式アリール、複素環式または脂環式基を表し;ならびに
R
2は、R
1とは独立して、H、(CH
2)
m−CH
3もしくはアリールを表すか;または
R
1およびR
2のどちらも、X、OHもしくはO((CH
2)
nCH
3)のいずれかを表すか;または
R
1とR
2は、一緒になって=O、=CH−R
5を表すか、もしくは一緒になって環−(CH
2)
p−、−(CH
2)
r−(1,2−アリーレン)−(CH
2)
s−を形成し、前記式中、
上記に示されるCH
2もしくはCH
3基のいずれか一方は、X、N
3、CN、NO
2、OH、(CH
2)
n−CH
3、アリール、O−(CH
2)
n−CH
3、OCO(CH
2)
nCH
3、NR
3R
4、NR
3CO(CH
2)
nCH
3によって場合によりさらに置換されていてもよく;または
炭素原子を連結する各々のCH
2は、O、SもしくはNR
3によって置換されていてもよく;前記式中、
R
3およびR
4は、互いに独立してもしくは一緒になってH、(CH
2)
m−CH
3を表すか、または一緒になって環−(CH
2)
p−、−(CH
2)
r−(1,2−アリーレン)−(CH
2)
s−、−(CO)
r−(1,2−アリーレン)−(CO)
s−を形成し;
R
5は、場合により置換された単環式または二環式アリール、複素環式または脂環式基を表し;
Xは、F、Cl、BrまたはIを表し;
nは0から10の整数であり;
mは0から3の整数であり;
pは2から6の整数であり;ならびに
rおよびsの少なくとも一方は1である。]
の化合物、または医薬的として許容されるこの塩、エステルもしくは立体異性体を調製するための工程であって、式(II):
[式中、R
1およびR
2は上記のように定義される。]
の化合物を、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素と単に接触させることができ、および場合により生成物を塩化する、エステル化するまたは立体選択的に分解する、
工程を見出した。
本明細書で使用される「単環式または二環式アリール基」という用語は、任意の単環式または二環式、5員、6員または7員芳香環または複素芳香環、例えばピロリル、フラニル、チオフェニル、フェニル、イミダゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリニル、フタルイミニルおよびベンズイミダゾリルを指す。
本明細書で使用される「アリール」という用語は、特定の実施形態に関して特に明記されない場合、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環炭素原子を含む芳香環系への言及を包含する。アリールはフェニルであり得るが、2以上の環を有し、このうちの少なくとも1つが芳香族である多環式環系であってもよい。この用語は、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、インデニル、アントリル等を包含する。
本明細書で使用される「単環式または二環式複素環式基」という用語は、任意の単環式または二環式、5員、6員または7員飽和または不飽和環であって、環中の少なくとも1個の炭素が酸素、窒素および硫黄から成る群より選択される原子によって置換されている、前記環を指す。単環式または二環式複素環式基の非限定的な例は、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアオゾリル、モルホリニルである。
本明細書で使用される「複素環」という用語は、特定の実施形態に関して特に明記されない場合、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環原子を有し、このうち少なくとも1つが窒素および酸素から選択される、飽和(例えばヘテロシクロアルキル)または不飽和(例えばヘテロアリール)複素環部分を包含する。特に、ヘテロシクリルは、飽和または不飽和であってよい、3員から10員環または環系、より詳細には5員または6員または7員環を包含する;この例には、オキシラニル、アジリニル、1,2−オキサチオラニル、イミダゾリル、チエニル、フリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、チオピラニル、チアントレニル、イソベンゾフラニル、ベンゾフラニル、クロメニル、2H−ピロリル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピラゾリジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ジチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリダジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、特にチオモルホリノ、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、クマリル、インダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、デカヒドロキノリル、オクタヒドロイソキノリル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フラザニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、クロメニル、イソクロマニル、クロマニル等が含まれる。
より具体的には、飽和複素環部分は、3、4、5、6または7個の環炭素原子ならびに窒素および酸素から選択される1、2、3、4または5個の環ヘテロ原子を有してよい。該基は多環式環系であってもよいが、より頻繁には単環式であり、例えばアゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、オキシラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、インドリジジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、キノリニジニル等が含まれる。さらに、「ヘテロアリール」は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環原子を有し、このうち少なくとも1つは窒素および酸素から選択される、芳香族複素環系を包含し得る。該基は、2以上の環を有し、このうち少なくとも1つは芳香族である、多環式環系であってもよいが、より頻繁には単環式である。この用語は、ピリミジニル、フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピロリジニル、ピリジニル、ベンゾ[b]フラニル、ピラジニル、プリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、フェノチアジニル、トリアジニル、フタラジニル、2H−クロメニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、プテリジニル等を包含する。
本明細書で使用される「単環式または二環式脂環式基」という用語は、任意の単環式または二環式、5員、6員または7員脂環式環を指す。
本明細書で使用される、場合により置換されていてもよい、式(I)もしくは(II)の化合物、APIまたはスタチンとの関連において「塩化された」または「医薬的として許容される塩」という用語は、実質上生理的にも耐容される、塩の形態、例えばカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、塩酸塩、臭化水素酸塩等の形態の該化合物またはスタチンを指す。式(I)もしくは(II)の化合物、APIまたはスタチンは、式(I)もしくは(II)の化合物、APIまたはスタチンまたはこの中間体を、場合により水性または有機溶媒中の、酸または塩基またはこれらの混合物と混合することによって塩化するまたは塩の形態にすることができる。好ましくは、溶媒はその後除去される。
本明細書で使用される、式(I)もしくは(II)の化合物、APIまたはスタチンとの関連において「エステル化すること」または「エステル」という用語は、これらの構造中に少なくとも1つのエステル結合を有する、式(I)もしくは(II)の化合物またはスタチンを指す。このようなエステル結合または化合物をエステル化することは、式(I)もしくは(II)の化合物、APIまたはスタチンまたはこの中間体を、化合物またはスタチンがヒドロキシル基を含む場合は、カルボン酸またはリン酸基含有化合物とカップリングすることによって達成され得る。式(I)もしくは(II)の化合物、APIまたはスタチンまたはこの中間体がカルボン酸基またはリン酸基を含む場合は、別の化合物のヒドロキシル基とカップリングすることによって達成され得る。
「立体選択的に分解された」という用語は、立体異性体の混合物の分離、立体特異的化合物の準備化学、または分析の分野の当業者に公知の任意の方法を指すために本明細書で使用される。立体異性体は、例えば立体選択的カラムを使用するHPLCによって得ることができる。立体選択的カラムは当分野において公知である。
酵素、生物
本明細書で使用される「酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素」という用語は、酸化または脱水素反応を触媒する任意の酵素を指す。酵素は、例えば式(II)の化合物を基質として認識し、利用する。酵素の組合せ、異なる単位が場合により異なる反応を触媒する、マルチユニット酵素、縮合もしくは結合酵素、または別の構造もしくは非触媒化合物、単位、サブユニットもしくは部分も、酸化または脱水素反応を触媒することができるという要件を満たす限り本発明において企図される。酵素は、例えば原核もしくは真核細胞の電子伝達鎖において、または真核もしくは原核細胞におけるアルコール、アルデヒドもしくは糖の生化学的経路において認められる酵素であってよい。通常天然基質に作用する酵素は、意外にも、かなり複雑な合成化合物を認識し、酸化すること、特にラクトールをラクトンにまたはおそらくエステルに変換することが認められた。酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素のために使用されることを意図された反応は、通常は自然には起こらず、これは、例えばエタノール、メタノール、アセトアルデヒド、酢酸、天然の糖もしくは天然のアミノ酸、または例えばグルコン酸のような糖から得られる酸を使用することを免除されるように、基質が天然のものとは異なるからであることは、本発明の重要な態様である。しかし、驚くべきことに、本明細書で開示される合成基質は、かなり構造的に複雑である場合でも、最終的にAPI、特にスタチンまたは、例えば式(I)のラクトン化合物を含むこの中間体を得るために、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素を使用することによってまだ容易に処理され得ることが見出された。一般に、酵素はオキシドレダクターゼから選択され得る。
酵素命名法によれば、本発明に適用できる酵素は、主としてEC 1.1(主に供与体のCH−OH基に作用するオキシドレダクターゼ)、より具体的にはEC 1.1.1(NAD+またはNADP+を受容体とする。)、EC 1.1.2(シトクロムを受容体とする。)、EC 1.1.3(酸素を受容体とする。)、EC 1.1.5(キニンまたはフラビンまたは類似の化合物を受容体とする。)のサブクラスに属するが、これらに限定されない。当分野で公知の任意のオキシドレダクターゼを、これらの配列同一性にかかわりなく反応のために使用し得る。
以下では、原則として本発明に適用できる酵素をさらに詳細に説明し、説明に役立つ実験的な実施例を後ほど述べ、必要に応じて適切なスクリーニングおよび/または実証試験も本明細書で提供する。特定の酵素の一部が本発明に先立って記述され、場合により使用されているが、明らかに本発明とは別の状況または分野においてである。開示が参照により本明細書に組み込まれる、参考文献を、以下で引用し、列挙する。
糖の酸化/脱水素反応の活性を有する酵素は工業界で広く使用されている。酸化発酵の典型的な例は、D−グルコナート(グルコン酸)、L−ソルボースその他の伝統的な生産である。これらの工程は、原因となる酵素の分子機構が解明される前に一部の微生物の経験的に認められた特性に基づく実際的な工業として開発された[Adachi,2007]。
糖酸化酵素は、食品加工において添加剤として、食品保存のために乳製品およびラクトペルオキシダーゼ系において、製パンにおいて、乾燥卵粉末を生産するために、抗酸化剤/防腐剤(脱酸素剤)として、ワインのアルコールを減じるため、グルコースアッセイおよび燃料電池として使用されてきた[Wong,2008]。糖酸化酵素はまた、例えば血中のグルコース濃度を測定するため[Igarashi,2004]、重金属の検出のため[Lapenaite,2003]、空気中のホルムアルデヒドの検出のため[Acmann,2008]、フローインジェクション分析におけるフェノール化合物の検出のため[Rose,2001]、アドレナリンについての超高感度二酵素センサーとして[Szeponik,1997]、キシロース濃度の測定のため[Smolander,1992]等に、電流測定バイオセンサーとしても使用されてきた。
6員糖を酸化することができる周知の酵素はグルコースオキシダーゼ、Gox(EC 1.1.3.4)であり、この酵素はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)からの抽出物としてSigmaから市販されている。この酵素は非常に限られた基質特異性を有する[Keilin,1952]。一部の真菌および昆虫において天然に生産され、この酵素の触媒産物である過酸化水素は抗菌剤および抗真菌剤として働く。Goxは一般に安全とみなされており、A.ニガー(A.niger)からのGoxは多くの工業適用の基礎である[Wong,2008]。Goxが触媒する反応はまた、パン焼き、乾燥卵粉末の生産、ワインの生産、グルコン酸の生産等においても使用されている。電気化学的活性により、この酵素は、特に糖尿病患者において、グルコースセンサーの重要な成分となっており、これはPQQ依存性糖デヒドロゲナーゼに関しておよび潜在的に燃料電池適用においてもあてはまる。グルコースオキシダーゼは単糖類、ニトロアルカンおよびヒドロキシル化合物を酸化することができる[Wilson,1992]。グルコースの反応速度を基準(100%)として使用すると、2−デオキシ−D−グルコース(20−30%)、4−O−メチル−D−グルコース(15%)および6−デオキシ−D−グルコース(10%)だけが有意の速度でA.ニガー(A.niger)からのグルコースオキシダーゼによって酸化される[Pazur,1964;Leskovac,2005]。他の基質に対するグルコースオキシダーゼの活性は、典型的には低く、反応速度はグルコースの2%未満である[Keilin,1948;Pazur,1964;Leskovac,2005]。
好ましい実施形態では、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素はデヒドロゲナーゼである。特に、この酵素は糖の脱水素反応、より詳細にはアルドース脱水素反応を触媒することができる。好ましくは、酵素は糖デヒドロゲナーゼ(EC 1.1)である。特定の実施形態では、酵素はアルドースデヒドロゲナーゼまたはグルコースデヒドロゲナーゼである。このような酵素を表す現在の技術分野の用語は本発明によって提供されるものとは異なり得るが、酵素の基質特異性および化合物(II)または本明細書で企図される他の化合物の酸化/脱水素反応を触媒する酵素の能力は、現在の技術分野で見出される用語とは無関係であることが理解される。見出され得る一例は、E.コリ(E.coli)(YliI、Adh、Asd)で認められる酵素についての用語であり、この酵素は、一部の著者によって「可溶性グルコースデヒドロゲナーゼ」と称され、また別の著者では「アルドース糖デヒドロゲナーゼ」または「可溶性アルドースデヒドロゲナーゼ」と称される。別の例は、E.コリ(E.coli)(mGDH、GCD、PQQMGDH)で認められる膜結合型グルコースデヒドロゲナーゼについての用語であり、一部の著者では「PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ」と称され、また別の著者によっては「膜結合型グルコースデヒドロゲナーゼ」またはGCDと称される。
糖デヒドロゲナーゼ(アルドースデヒドロゲナーゼ)に対する天然基質は、酸化される様々な糖である。アルドースデヒドロゲナーゼが作用し得る広範囲の糖は、五炭糖、六炭糖、二糖および三糖を包含する。好ましくは、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素は、C1位での酸化に特異的である。アルドース1−デヒドロゲナーゼの場合、酵素はアルデヒドまたは環状ヘミアセタールをラクトンに酸化する。
上記糖に一致して、オキシドレダクターゼは電子受容体に従って(一部の場合には、これらは、機能性となるためにこれらの酵素が利用する補因子、即ちFAD、NAD(P)+またはPQQである。)クラスに分類される。糖オキシドレダクターゼのサブクラス間で大きく異なり得る、基質特異性の見地から、PQQ依存性デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.5)の使用が本発明に従って好ましい。
FAD(フラボタンパク質デヒドロゲナーゼ)およびPQQ依存性糖デヒドロゲナーゼ(キノプロテインデヒドロゲナーゼ)、EC 1.1.5は、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)またはピロロキノリンキニン(PQQ)補因子をそれぞれ利用し、活性部位を細胞周辺腔に向けて、細菌の細胞質膜の外表面に位置する。これらはしばしば膜糖デヒドロゲナーゼと称される。または、特にPQQ依存性糖デヒドロゲナーゼ群において、多くの酵素が可溶性形態で認められ、細胞周辺腔内に位置する。溶解度に関して、使用される糖デヒドロゲナーゼの性質に本発明による限定はないが、クローニング、発現手順および利用可能な分子ツールに関連して、可溶性ペリプラズム糖デヒドロゲナーゼ、即ち水溶性のものが選択されることが好ましいと考えられる。このような酵素の効率的なペリプラズム発現のための発現株の構築は技術的により容易であり、従って好ましい。他方で、膜結合型糖デヒドロゲナーゼは効率的な発現がより困難であり得るが、PQQからユビキノンプールへの電子の移動を介した、呼吸鎖とのこれらのより密接な結びつきのために好ましいと考えられる。本発明の過程で、例えば工業的に有用な収率で化合物(II)を化合物(I)に変換するために天然の膜結合型糖デヒドロゲナーゼならびに過剰発現される膜結合型糖デヒドロゲナーゼを使用する例が提供される。
呼吸鎖;電子受容体
酸化過程によって生成される電子は、ユビキノンを宿主生物の呼吸鎖におけるメディエータとして、酵素補因子(電子伝達体)を介して基質から末端ユビキノールオキシダーゼに伝達される。電子の最終的な受容体は酸素であり、酸素は呼吸鎖の酸化還元酵素によって水に還元される。
呼吸鎖は、精密に調整される段階的な反応のカスケードにおいて還元分子からの電子を伝達する能力を有する一連の酸化還元酵素であり、段階的な反応は酸素の還元で終了する。各々の段階は、有用な作業、例えば細胞質膜を横切るプロトンの移動、他の分子の還元等のために酸化還元電位の差を利用する。電子伝達体は、呼吸鎖ならびに全体的な細胞の酸化還元過程において主要な役割を担う。
電子は様々なレベルで呼吸鎖に入ることができる。ユビキノンプールへの電子の伝達および細胞外空間へのプロトンの放出を伴ってNADH/NADPH(細胞内の様々な酸化還元過程によって得られる。)を酸化する、NADHデヒドロゲナーゼのレベルで。または、酸化還元酵素は、酵素結合補因子(FAD、PQQ)を介して電子を直接ユビキノンに伝達することができる。ユビキノールは末端酸化還元酵素、例えばシトクロム、硝酸レダクターゼ等によってさらに酸化され、これにより電子は細胞内プロトンと結合して酸素を還元し(水を形成する。)、ユビキノール結合プロトンが細胞外空間に放出される。酸化還元電位を利用してプロトンを転移することができる任意の系は、しばしばプロトンポンプとして知られる。膜透過プロトン電位がこれによって確立され、ATPシンターゼの機能のための駆動力となる。これらのレベルは逐次的により高い正の酸化還元電位を有し、即ち逐次的に減少する最終電子受容体に対する電位差を有する。個々の細菌はしばしば複数の電子伝達鎖を同時に利用する。細菌は多くの異なる電子供与体、多くの異なるデヒドロゲナーゼ、異なるオキシダーゼおよびレダクターゼならびに異なる電子受容体を利用することができ、例えばE.コリ(E.coli)(グルコースをエネルギー源として好気的に増殖している場合)は、2つの異なるNADHデヒドロゲナーゼおよび2つの異なるキノールオキシダーゼを、同時に作動する合計4つの異なる電子伝達鎖のために利用する。
従って、酸化還元酵素(例えば糖デヒドロゲナーゼ)は電子受容体が提供される場合にのみ機能性であり得ることは明らかである。天然の系の場合、これは呼吸鎖によって提供され、または基質/酵素/補因子カスケードと比較して適切な酸化還元電位を有する人工電子受容体を使用することができる。後者の選択肢において不利な点は、人工電子受容体がかなり多量に、言い換えると通常は酸化される基質と等モル量で提供されねばならないことである。
この態様では、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素によって生成される電子の受容体は、電子の流れおよび化合物(II)の酸化または脱水素反応を促進するために反応混合物中で提供され得る。受容体は、ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)、フェナジンメトスルファート(PMS)、フェリシアン化カリウム(PF)、フェリシュウ酸カリウム、p−ベンゾキノン、フェニル−p−ベンゾキノン、デュロキノン、シリコモリブダート、ビタミンK3、ジアミノデュレン(DAD)、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン(TMDP)から選択され得るが、これらに限定されない。電子受容体は酸素であってもよい。当業者は、例えば人工電子受容体として働き、還元された場合色が変化する染料である、ヒル試薬として列挙される化合物を認識し、これらを使用することができ、文献から多くのさらなる候補受容体を見出すことができる。
PQQデヒドロゲナーゼ
PQQは溶液中の二価カチオンと錯体を形成する能力を有することが示されており、この能力は細菌キノプロテインデヒドロゲナーゼの触媒活性にとっての必須条件である[Mutzel,1991;Itoh,1998;Itoh,2000]。細菌キノプロテインデヒドロゲナーゼ(起源にかかわりなく)を活性にするには、ホロ形態の酵素の再構成を達成するためにPQQに加えて二価イオン(例えばMg2+、Ca2+)が存在しなければならない[James,2003]。錯体形成した二価イオンは、これらの構造上の役割以外に、PQQの活性な立体配置を維持するうえでも役割を果たす。[Anthony,2001]。
PQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼをスクリーニングした後、本発明者らは、驚くべきことに、試験したすべての酵素(例えばE.コリ(E.coli)からのYliIアルドースデヒドロゲナーゼ、E.コリ(E.coli)からのGcd膜結合型グルコースデヒドロゲナーゼ、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)からのGDH(可溶性または膜結合形態)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)からのGDH、クルイベラ・インテルメディウム(Kluyvera intermedium)からのGDH)が、受容体が合成分子であるかまたは微生物の呼吸鎖であるかにかかわらず、電子受容体の存在下で化合物(II)を化合物(I)−(R1=H、R2=O−CO−CH3)に酸化できることを認めた。実際に、PQQ依存性酸化還元酵素を含む試験したすべての生物が、我々の実験において((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートに成功裏に酸化することが認められた。幾つかを、以下に例示する他の化合物(II)分子に関しても試験し、成功を収めた。
この意味で、本発明の好ましい態様は、PQQ依存性デヒドロゲナーゼ(キノプロテイン、EC 1.1.5)、より具体的にはPQQ依存性糖1−デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.5.2)を対象とする。
例えばYliIは、E.コリ(E.coli)由来のアルドース糖デヒドロゲナーゼであり、活性のためにはPQQを必要とする[Southall,2006]。E.コリ(E.coli)はPQQ自体を合成する能力を持たないが[Hommes,1984;Matsushita,1997]、環境で認められる、PQQに対する正の走化性作用を示し[de Jonge,1998]、外部から供給された補因子を利用することができる[Southall,2006]。YliIアルドース糖デヒドロゲナーゼは、細胞質膜を通ってペリプラズムに転移するために必要なN末端シグナル配列を含む、可溶性のペリプラズムタンパク質である。YliIアルドース糖デヒドロゲナーゼ(Asd)のフォールドは、6枚の4本鎖逆平行βシートと、浅い、溶媒に曝露されたクレフト中のタンパク質の表面に位置するPQQ結合部位を含む。YliIタンパク質は、各々が2個のカルシウムイオンに結合している単量体であり、これらの一方はPQQ結合ポケットに位置し、他方はプロペラフォールドを構成する6本の鎖の2本の間に押し込まれている[Southall,2006]。
D−グルコース、D−ガラクトース、D−フルクトース、D−アラビノース、D−フコース、D−マンノース、D−リクソース、D−キシロース、D−リボース、キシリトール、ミオイノシトール、L−ソルボース、マンニトール、2−デオキシ−D−グルコース、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、グルコース1−リン酸、グルコース6−リン酸、マルトース、α−ラクトース、D−スクロース、D−セロビオース、メリビオースおよびマルトトリオースが、YliIアルドース1−デヒドロゲナーゼの受容される天然基質であることが示されている[Southall,2006]。化合物(II)に類似した、C3位に立体化学を有する天然の糖、例えばD−アロース、D−アルトロース、D−グロースまたはD−イドースは、いずれもSuthall et al.によって試験されなかった。
YliIアルドース糖デヒドロゲナーゼに加えて、E.コリ(E.coli)は膜結合型グルコースデヒドロゲナーゼ(mGDH)も含み、これもまたアルコールおよび糖のペリプラズム酸化における呼吸鎖に含まれるキノプロテインである[Yamada,2003]。GCDまたはmGDHまたはPQQGDHとも称されるこの酵素は、E.コリ(E.coli)が酵素の補欠分子族であるピロロキノリンキノン(PQQ)を合成する能力を持たないので、YliIのようにアポ酵素の形態で生じる。mGDHは膜結合型キノプロテインであり[Matsushita,1993;Anthony,1996;Goodwin,1998]、細胞周辺腔に伸びるC末端ドメイン上でD−グルコースのD−グルコナートへの酸化を触媒する。PQQによって媒介される電子伝達は、N末端の膜結合ドメインによってさらに駆動される;呼吸鎖への電子の流れは、ユビキノンプールを通ってユビキノールオキシダーゼに向かう[Van Schie,1985;Matsushita,1987;Yamada,1993]。活性ホロ形態のmGDH酵素は、PQQおよびMg2+またはCa2+または他の二価金属イオンの添加によって得られる。GCDは、内膜にまたがるN末端疎水性ドメイン[Yamada,1993]ならびにPQQおよびMg2+またはCa2+のための結合部位を含む、細胞周辺腔に位置する大きなC末端ドメインを有する単量体タンパク質である[Yamada,1993;Cozier,1999]。
驚くべきことに、mGDH酵素はまた、人工基質である式(II)の化合物の酸化も触媒することができる。Cozier,et al.は、試験した化合物(II)のものに類似するC−3原子上の立体化学を有する唯一の天然アルドヘキソースである、D−アロースに対するこの酵素の活性を試験し、D−グルコースと比較して類似の活性を示した。D−アロースはC−2およびC−4上の2個の付加的なOH基が化合物(II)と異なり、このことが化合物(II)に対する活性を等しく意外で予期せぬものにしていることは注目すべきである。
PQQ依存性糖デヒドロゲナーゼのさらに別の例は、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)のGDHである。アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)由来の少なくとも2つの異なるキノプロテイングルコースデヒドロゲナーゼが公知である:膜結合形態(mGDH)および可溶性形態(sGDH)であり、細胞質膜を通ってペリプラズムに転移するために必要な24アミノ酸のN末端シグナル配列を含む。2つの形態は、すべての特徴において、例えば基質特異性、分子サイズ、動態、最適pH、免疫反応性において異なる。
sGDHの基質特異性はmGDHのものと異なる。sGDHは、好ましくはD−グルコース、マルトースおよびラクトースを酸化し、D−フコース、D−キシロース、D−ガラクトースはそれほど成功裏には酸化せず、一方mGDHは二糖との反応性がより低い;mGDHは、好ましくはD−グルコース、6−デオキシ−D−グルコース、2−デオキシ−D−グルコース、D−アロース、D−フコース、2−アミノ−D−グルコース(グルコサミン)、3−デオキシ−D−グルコース、D−メリビオース、D−ガラクトース、D−マンノース、3−O−メチル−D−グルコース、D−キシロース、L−アラビノース、L−リクソースおよびD−リボースを酸化し、やはりマルトースおよびラクトースはそれほど成功裏には酸化しない[Cozier,1999;Adachi,2007]。
sGDHについての2つの可能性のある反応機構は次のとおりである:(A)付加−脱離機構は、一般塩基が触媒するプロトン引き抜きとこれに続く基質の共有結合的付加およびその後の生成物の脱離を含む;(B)基質からPQQへの直接の水素化物移動と呼応した、一般塩基が触媒するプロトン引き抜きおよびPQQH2への互変異性化を含む機構[Oubrie,1999]。同様の機構は、E.コリ(E.coli)YliIアルドースデヒドロゲナーゼ酵素にもあてはまると推測される。これまでに記述されたPQQ依存性デヒドロゲナーゼと同様に、sGDHおよびmGDHのいずれもが二量体化および機能のためにカルシウムまたはマグネシウムを必要とする[Olsthoorn,1997]。この構造は、単量体につき3つのカルシウム結合部位が存在することを確認する[Oubrie, 1999]。
本発明によって例示されるように、構造特性、局在化、補因子結合および電子伝達の機構等の意味でのこれらの酵素の多様性は、化合物(II)の化合物(I)への酸化を触媒するうえでの前記多様な酵素の効果には影響を及ぼさない。
PQQ依存性糖デヒドロゲナーゼの現在の工業適用には、古典的発酵工程におけるD−グルコナート生産(グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans))ならびに様々な天然糖の生産が含まれる。グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)生物は、生物工学適用における使用のために天然の炭素基質、例えばD−ソルビトール(ビタミンC合成のためにL−ソルボースを生産する。)、グリセロール(ジヒドロキシアセトンを生産する。)、D−フルクトースおよびD−グルコース(グルコン酸、5−ケト、2−ケトおよび2,5−ジケトグルコン酸を生産する。)を不完全に酸化するこの重要な能力のゆえに周知である[Gupta,2001]。
上記説明から導かれるように、PQQ依存性デヒドロゲナーゼは、食用酢の製造において使用される工業的微生物、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)中に認められる。
PQQ依存性糖デヒドロゲナーゼに対する最近の注目は、種々の電流測定バイオセンサー、例えば血中のグルコース濃度を測定するため[D’Costa,1986;Igarashi,2004;Heller,2008]、重金属の検出のため[Lapenaite,2003]、空気中のホルムアルデヒドの検出のため[Acmann,2008]、フローインジェクション分析におけるフェノール化合物の検出のため[Rose,2001]、アドレナリンについての超高感度二酵素センサーとして[Szeponik,1997]、キシロース濃度の測定のため[Smolander,1992]等の、電流測定バイオセンサーの開発に向けられている。PQQ依存性糖デヒドロゲナーゼはバイオ燃料電池としてナノテクノロジーにおいても使用され得る[Gao,2010]。可溶性PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼは、グルコースオキシダーゼと異なり、酸素の存在とは無関係であるので[Heller,2008]、血糖の自己測定のためのバイオセンサーシステムにおいて使用される酵素の主要な群となっている。
現在の技術分野では、特に活性医薬化合物またはこれらの中間体に関連して、非天然化合物の生産のためにPQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼを使用する工程は存在しないかまたは企図されていないが、本発明によって開示され、提供されるように、このような酵素は、有用な非天然化合物のための有効で容易な合成原理を提供するために実現可能および達成可能となった。従って本発明は、特に合成APIおよびこれらの中間体化合物のクラスに属する非天然化合物の合成を目的として使用される、さらなる酸化還元反応におけるこれらの酵素の使用のために新しい分野を開く。
本発明のために特に有用な酵素の選択
本明細書で提供される情報および実験指針により、当業者は、例えば基質特異性または不特定性、使用可能なpH、温度およびイオン強度ウィンドウ、付加的なイオンまたは補因子の必要性等に基づいて式(II)の化合物を式(I)の化合物に変換するために、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素を認識し、酵素をどのようにして選択するかを導き出す。基質および反応条件は、通常、酵素の最適活性を与えるように選択される。しかし、酵素を保有する細胞に最小の阻害作用を与えるまたは生成物の安定性を低下させる基質および条件を、最適活性が達成される基質および条件に対して活用することができる。原則として、酵素の高い活性、好ましくは最良の活性を可能にする基質が好ましく、またはこの逆も同様で、所望化合物基質に対して高い、好ましくは最良の特異性を有する酵素が好ましい。反応条件には、1つの態様では、温度、pH、溶媒組成物、撹拌および反応の長さが所望生成物の蓄積を可能にすることが含まれることは当業者に直ちに明らかである。酵素活性を満たすことに加えて、当業者は、本明細書で提供される開示により、生成物、例えばラクトンまたはエステルが劣化するのを防ぐ適切なpH、温度および反応時間を適用するという見地から条件を適合させることを理解する。必要な場合は、特定の補因子、補助基質および/または塩を、酵素の活性を可能にするまたは改善するために酵素に添加することができる。補因子は塩または化学的化合物である。しばしば、前記種は、特に酵素が生存全細胞、不活性化全細胞、ホモジナイズされた全細胞または無細胞抽出物中に含まれる場合、溶媒混合物中に既に含まれている。これにもかかわらず、補因子、補助基質および/または塩を酵素、溶媒または反応混合物にさらに添加することができる。酵素に依存して、第二銅、第二鉄、ニッケル、セレン、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、モリブデンもしくはマンガンイオン、またはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)、リポアミド、アスコルビン酸、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、補酵素Q、補酵素F420、ピロロキノリンキニン、補酵素B、グルタチオン、ヘム、テトラヒドロビオプテリン等を、酵素、溶媒または媒質または酵素を含む反応混合物に添加することができる。例えば、アルドース1−デヒドロゲナーゼまたは、好ましくはYlilもしくはGcdに関しては、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンおよびピロロキノリンキニンまたは類似の電子受容体を反応混合物、酵素または溶媒または媒質に添加する。具体的には、適切な条件を以下の実施例において例示する。
本発明における使用のためのデヒドロゲナーゼは、特に上記基質(II)に対して酸化活性を有する任意の酵素の中から選択され得る。一般に当分野で公知の任意の糖1−デヒドロゲナーゼを、以下で列挙する酵素、特にデヒドロゲナーゼとのこれらの配列同一性にかかわりなく使用することができる。上述したように、C1位で特異的に酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素を選択することが有益である。アルドース1−デヒドロゲナーゼの場合、この酵素はアルデヒドまたは環状ヘミアセタールをラクトンに酸化する。
例えば耐熱性微生物株において認められる酵素のような、特殊な変異体の酵素も本発明において企図される。同じことが天然の酵素の修飾または改善された変種にもあてはまり、これらのアミノ酸配列または構造は、より良好な基質特異性、より高い活性、より広い温度またはpH範囲にわたる活性、有機溶媒の存在または溶媒の高いイオン強度に対する耐性等を達成するように変更されている。
本発明者らは、驚くべきことに、分類上多様な微生物に由来し、21.8%だけのアミノ酸配列同一性を有する2つの異なる糖デヒドロゲナーゼが、我々の実験において等しく成功を収めることを認めた。具体的には、E.コリ(E.coli)からのGDH 01アルドース糖デヒドロゲナーゼYliIのアミノ酸配列である配列番号:02と、A.カルコアセチカス(A.calcoaceticus)からのGDH 02グルコースデヒドロゲナーゼGdhBのアミノ酸配列である配列番号:06との間で比較を実施した。配列比較アルゴリズムは、Clustal Wアルゴリズムをデフォルト設定で用いる、Vector NTI Advance 11.0ソフトウェア(Invitrogen)の構成要素であるAlignXモジュールにおいてデフォルト設定で行った。
加えて、構造的に大きく異なる酵素、例えばアミノ酸配列、配列番号:02を有するE.コリ(E.coli)からの可溶性アルドース1−デヒドロゲナーゼおよびアミノ酸配列、配列番号:04を有するE.コリ(E.coli)からの膜結合型グルコースデヒドロゲナーゼでさえも、わずかに異なる反応条件ではあるが、我々の実験において等しく成功を収めることが認められた。
この驚くべき所見により、化合物(II)を化合物(I)に変換するかまたは同様の反応を行うことができるタンパク質は、アミノ酸配列が有意に異なり得ると予想することは今や妥当である。反応の収率は、しかし、各々の糖デヒドロゲナーゼ酵素の基質特異性に依存し得る。
適切なデヒドロゲナーゼ酵素の例には配列表中の酵素が含まれるが、これらに限定されず、これらは、これらのヌクレオチド配列またはそれぞれのコドン最適化ヌクレオチド配列または配列表に示すアミノ酸配列によって同定される。
GDH 01は、配列番号:01のヌクレオチド配列または配列番号:02のアミノ酸配列に含まれる遺伝子をコードするデヒドロゲナーゼである。
GDH 02は、配列番号:03のヌクレオチド配列または配列番号:04のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 03は、配列番号:05のヌクレオチド配列または配列番号:06のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 04は、配列番号:07のヌクレオチド配列または配列番号:08のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 05は、配列番号:09のヌクレオチド配列または配列番号:10のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 06は、配列番号:23のヌクレオチド配列または配列番号:24のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 07は、配列番号:25のヌクレオチド配列または配列番号:26のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 08は、配列番号:27のヌクレオチド配列または配列番号:28のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 09は、配列番号:29のヌクレオチド配列または配列番号:30のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 10は、配列番号:31のヌクレオチド配列または配列番号:32のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 11は、配列番号:33のヌクレオチド配列または配列番号:34のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 12は、配列番号:35のヌクレオチド配列または配列番号:36のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 13は、配列番号:37のヌクレオチド配列または配列番号:38のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 14は、配列番号:39のヌクレオチド配列または配列番号:40のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 15は、配列番号:41のヌクレオチド配列または配列番号:42のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 16は、配列番号:43のヌクレオチド配列または配列番号:44のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 17は、配列番号:45のヌクレオチド配列または配列番号:46のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 18は、配列番号:47のヌクレオチド配列または配列番号:48のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 19は、配列番号:49のヌクレオチド配列または配列番号:50のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 20は、配列番号:51のヌクレオチド配列または配列番号:52のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 21は、配列番号:53のヌクレオチド配列または配列番号:54のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 22は、配列番号:55のヌクレオチド配列または配列番号:56のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 23は、配列番号:57のヌクレオチド配列または配列番号:58のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 24は、配列番号:59のヌクレオチド配列または配列番号:60のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
GDH 25は、配列番号:61のヌクレオチド配列または配列番号:62のアミノ酸配列を有するデヒドロゲナーゼである。
従って、本発明における使用のための糖デヒドロゲナーゼは、化合物(II)に対して糖1−デヒドロゲナーゼ活性を有する任意の化合物であってよい。本発明の1つの実施形態では、糖1−デヒドロゲナーゼはPQQ依存性糖1−デヒドロゲナーゼである。適切なPQQ依存性糖1−デヒドロゲナーゼの例には、GDH 01、GDH 02、GDH 03、GDH 04、GDH 05、GDH 06、GDH 07、GDH 08、GDH 09、GDH 10、GDH 11、GDH 12、GDH 13、GDH 14、GDH 15、GDH 16、GDH 17、GDH 18、GDH 19、GDH 20、GDH 21、GDH 22、GDH 23、GDH 24およびGDH 25が含まれるが、これらに限定されず、各々の酵素は、上記配列表に示す対応するヌクレオチド配列またはそれぞれのコドン最適化ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列によって同定される。
本発明は、GDH 01、GDH 02、GDH 03、GDH 04、GDH 05、GDH 06、GDH 07、GDH 08、GDH 09、GDH 10、GDH 11、GDH 12、GDH 13、GDH 14、GDH 15、GDH 16、GDH 17、GDH 18、GDH 19、GDH 20、GDH 21、GDH 22、GDH 23、GDH 24およびGDH 25から選択されるデヒドロゲナーゼのいずれかに少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する糖デヒドロゲナーゼを提供する。アミノ酸配列の同一性は、配列比較アルゴリズムでの解析によってまたは目視検査によって決定される。1つの態様では、配列比較は、Clustal Wアルゴリズムをデフォルト設定で用いる、Vector NTI Advance 11.0ソフトウェア(Invitrogen)の構成要素であるAlignXモジュールにおいてデフォルト設定で行う。
本発明によって提供される好ましい糖1−デヒドロゲナーゼは、上記配列表においてGDH01と同定される、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)に由来し、対応するヌクレオチド配列、配列番号:01および配列番号:02のアミノ酸配列を有する糖デヒドロゲナーゼであり得る。
本発明によって提供される同様に好ましい糖1−デヒドロゲナーゼは、上記配列表においてGDH02と同定される、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)に由来し、対応するヌクレオチド配列、配列番号:03および配列番号:04のアミノ酸配列を有する糖デヒドロゲナーゼであり得る。
本発明によって提供される別の好ましい糖1−デヒドロゲナーゼは、上記配列表においてGDH03と同定される、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)に由来し、対応するヌクレオチド配列、配列番号:05および配列番号:06のアミノ酸配列を有する糖デヒドロゲナーゼから選択され得る。
本発明によって提供されるさらに別の好ましい糖1−デヒドロゲナーゼは、上記配列表においてGDH04と同定される、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)に由来し、対応するヌクレオチド配列、配列番号:07および配列番号:08のアミノ酸配列を有する修飾された糖デヒドロゲナーゼから選択され得る。
本発明によって提供される最も好ましい糖1−デヒドロゲナーゼは、上記配列表においてGDH02と同定される、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)に由来し、対応するヌクレオチド配列、配列番号:03および配列番号:04のアミノ酸配列を有する糖デヒドロゲナーゼであり得る。前記糖1−デヒドロゲナーゼは、当分野においておよび本発明の中でPQQ依存性糖デヒドロゲナーゼ、PQQ依存性グルコースデヒドロゲナーゼ、膜結合型グルコースデヒドロゲナーゼ、PQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼ、アルドースデヒドロゲナーゼキノプロテインまたはグルコースデヒドロゲナーゼキノプロテインとも表される。この特定の酵素は、E.コリ(E.coli)において天然に生じるgcd遺伝子によってコードされ、Gcd、mGDHまたはPQQGDHと称されるタンパク質をコードする。
本発明は、アミノ酸配列、配列番号:02と少なくとも21.8%、好ましくは少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する糖デヒドロゲナーゼを説明のために使用する。
本発明において、式(II)のラクトールまたは、生成物としての所望の合成APIもしくはこの前駆体化合物に依存して、別の非天然基質を酸化することができる酵素/生物をスクリーニングすることが可能である。本発明の1つの態様では、当業者は、文献から付加的な候補酵素を見出し、これを所望のタイプの酵素変換に適用することができる。
化合物(II)に対する酸化/脱水素活性を種々の微生物および/または酵素においてスクリーニングし得る。本明細書で使用される「分析された物質」という用語は、天然であるかまたは遺伝的に改変された微生物であるかにかかわらず、任意の微生物の本発明によって提供される生存全細胞触媒、休止全細胞触媒、無細胞溶解物、部分精製もしくは精製酵素、固定化酵素または任意の他の形態の触媒として化合物(II)を化合物(I)に変換することができる微生物および/または酵素をスクリーニングし、同定するスクリーニング方法において使用できる任意の微生物および/または酵素を指す。実際的な目的のために、以下では、「分析された物質」という用語は上述した候補触媒のすべての調製物を包含すると理解される。化合物(II)に対する酸化/脱水素活性のスクリーニングおよび同定を可能にする、従って本発明を実施するのに有用な生物および/または酵素をスクリーニングし、同定するための幾つかの方法が本開示において提供される。
前記スクリーニング方法を成功裏に実施するために、「分析された物質」を、物質の培養特性を考慮して入手し得る。培養は、栄養素要求を満たす増殖培地において「分析された物質」のバイオマスを得るために実施し得る。培養は液体培地中または固体培地上で実施し得る。増殖培地および培養の条件は、Difco & BBL Manual,2010および当業者に周知の他のプロトコールから選択され得るが、これらに限定されない。培養された微生物は、本発明によって提供される種々の形態の触媒として調製され得る。特に、「分析された物質」を、化合物(I)の形成および蓄積を可能にする条件下で化合物(II)と接触させる。これらの条件には、1つの態様では「分析された物質」が、酸化/脱水素反応を実施することができる十分な投入量で提供されること、別の態様では基質および電子受容体が、触媒の活性の最小限の阻害を示す量で反応中に存在すること、別の態様では温度、pH、溶媒組成物、撹拌および反応の長さが所望生成物の蓄積を可能にすること、別の態様では前記条件が生成物の安定性に有害な作用を及ぼさないことが含まれる。具体的には、このような条件は、実施例で開示される値または条件によって指示されるように、または前記値もしくは条件から修正もしくは変更されるように定義され得る。「分析された物質」は、化合物(I)(PQQと命名する。)に対する活性のために必要なすべての補因子を内因的に提供することできるか、または「分析された物質」は、本発明で述べるようにPQQが外部から提供された場合、化合物(II)を化合物(I)に変換する能力を有する。本明細書で提供されるすべてのスクリーニング方法においてPQQは、好ましくは記述され、例示される濃度で添加され得る。CaCl2またはMgCl2などの塩の形態で提供される、カルシウムまたはマグネシウムイオンなどの二価金属イオンは、活性形態のアルドースデヒドロゲナーゼを生じさせるPWWのアポ酵素への再構成を促進する。これらは、好ましくは記述され、例示される濃度で酵素に添加され得る。
PQQの存在の定量化が上記方法によっておよび本明細書の別の部分で述べるように測定できることは当業者に明らかになる。この場合、この方法のために使用される物質は、PQQが枯渇しているまたは本質的に既にPQQ不含でなければならない。
候補触媒をスクリーニングし、同定するためのこのような方法の1つは、「分析された物質」を化合物(II)と接触させることである。化合物(II)の化合物(I)への変換は、上述したような最適反応条件で実施されるべきである。「分析された物質」の存在下で生成物に変換する基質の検出は、当分野で周知のクロマトグラフィ法のいずれかによって達成できる。非限定的な例には、液体HPLC、GC、TLC分析等が含まれる。化合物(I)および対応する化合物(II)を観測するための、例示的であるが非限定的な方法は、ガスクロマトグラフィ分析である(クロマトグラフィカラム:DB−1 100%ジメチルポリシロキサン;温度プログラム:初期温度:50℃、初期時間:5分、温度速度:10℃/分、最終温度:215℃、最終時間:10分;注入器:スプリット/スプリットレスインジェクタ;キャリヤガス:ヘリウム、初期流量:10mL/分;検出器:水素炎イオン化検出器(FID)、検出器温度:230℃)。このような方法を実施するための前提条件は、反応混合物中の電子受容体が存在することである。天然の電子受容体が存在する「分析された物質」(例えば呼吸鎖)に関しては、付加的な成分(空気中の酸素を別として)を必要とせずに、前記クロマトグラフィ法を用いることによって化合物(II)からの化合物(I)の形成を観察することができる。自らの電子対のPQQを放出することができる電子受容体が利用可能でない場合(例えば無細胞溶解物または細胞膜画分におけるように)、DCPIPなどの人工電子受容体が必要である。しかし、記述されている方法は分析手順であり、ごく少量の人工電子受容体しか必要としないので、任意の種類の「分析された物質」に関してスクリーニング方法を実施する好ましい方法は、人工電子受容体の存在下においてである。上記方法を実施するための例示的な好ましい条件は、実施例で開示される値および条件によって定義される。
本発明によって提供される別のスクリーニング方法は、使用できる基質/酵素/補因子カスケードと比較して適切な酸化還元電位を有する選択的な人工電子受容体の存在下で実施される方法である。この意味で、本発明は、還元された場合光学的に測定可能な単数または複数の特性(例えば色、吸光度スペクトル等)を変化させる人工電子受容体を使用するスクリーニング方法を提供する。このような人工電子は、電子の流れを促進するために反応混合物(色素結合系)中で提供され得、従って化合物(II)の酸化または脱水素反応を指示する。受容体/インジケータは、2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)、フェナジンメトスルファート(PMS)、フェリシアン化カリウム(PF)、フェリシュウ酸カリウム、p−ベンゾキノン、フェニル−p−ベンゾキノン、デュロキノン、シリコモリブダート、ビタミンK3、ジアミノデュレン(DAD)、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン(TMDP)から選択され得るが、これらに限定されない。当業者は、人工電子受容体として働き、還元された場合色が変化する染料である、ヒル試薬として列挙される化合物を認識し、文献から多くのさらなる候補受容体/インジケータを見出す。好ましくは、フェナジンメトスルファート(PMS)と組み合わせた2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)を使用し得る。例示的なスクリーニング方法は、反応混合物中に以下の成分を含む:人工電子受容体としてPMSと組み合わせたDCPIP、「分析された物質」および化合物(II)。化合物(II)についての「分析された物質」の酸化/脱水素活性はDCPIPの吸光度の減少として分光光度法で追跡され、DCPIPは、酸化された場合は青色であり、還元された場合は無色になる。「分析された物質」が化合物(II)に対して酸化/脱水素活性を示すことができる場合、電子は人工電子受容体に移動して、人工電子受容体は還元され、従って反応混合物は色が青色から無色に変化する。
前記方法を実施する一例は、以下の手順に従うことである:DCPIPおよびPMSを、両方の前記人工電子受容体について約0.01mMから約10mMの濃度で、特に約0.05mMから約5mM DCPIPを0.01mMから約2mM DCPIPと組み合わせて使用する。好ましくは、スクリーニング方法におけるDCPIPの量は、0.05mMから約0.5mMの濃度のPMSと組み合わせて0.1mMから約1mMの濃度で提供される。最も好ましくは、PMSと組み合わせたDCPIPは、分光光度法で追跡できる時系列で吸光度の減少を観察することができる量で提供される。化合物(II)を適切な水溶液に溶解し、約0.5mMから約1M、好ましくは約10mMから約500mM、最も好ましくは20mMから200mMの濃度でスクリーニング方法において使用し得る。化合物(II)は、蒸留水または適切な緩衝液に溶解し得る。pH値を調整するための適切な緩衝剤は、酸、塩基、塩またはこれらの混合物で作製され、特にリン酸および水酸化ナトリウムを使用し得る。スクリーニング方法が実施される水性懸濁液は、pH5.5から9.0、好ましくは6.0から8.5、より好ましくは6.0から8.0に緩衝し得る。「分析された物質」を、場合により緩衝液中で(特にリン酸緩衝液pH6.0から8.5中で)、前記水性懸濁液中の(特に約0.05g/Lから約50g/Lの濃度範囲で)反応混合物に添加する。化合物(II)を化合物(I)に変換することができる触媒のスクリーニングおよび同定は、経時的に吸光度の減少を追跡して分光光度法で観察することができ、380nmから750nmの間の波長、好ましくは450nmから650nmの間の波長、より好ましくは550nmから650nmの間の波長においてあり得る。
本発明はまた、アルドースデヒドロゲナーゼ活性単位を提供する。アルドースデヒドロゲナーゼ活性単位は、任意の「分析された物質」の調製物について使用される培養微生物の湿重量につき1分当たりの吸光度単位の低下の絶対値(abs[mAU/分/mg])と定義される。比較試験のために、試験微生物の細胞密度を試料mL当たりのmgでの湿重量、タンパク質濃度および/または当業者に周知の定量化のための他の間接的もしくは直接的方法として定量し得る。
化合物(II)を化合物(I)に変換することができる生物の同定のためのさらに別のスクリーニング方法は、当分野で公知の任意の酸素消費測定法の使用である。本発明によって提供される非限定的な例は、化合物(II)の添加後の試験生物の培養物中での溶解酸素の測定の使用である。より詳細には、実験設定は、試験生物の液体培養ブロスを含む撹拌通気容器および溶解酸素センサーで構成され得る。化合物(II)の添加後、溶解酸素値の低下によって示される酸素消費の増大を観察することができる。標準化された条件下での溶解酸素値の低下がより速くより深いほど、化合物(II)のより高い酸化速度が試験生物によって促進される。
PQQ
ピロロキノリンキニン(4,5−ジヒドロ−4,5−ジオキソ−1H−ピロロ−[2,3−f]キノリン−2,7,9−トリカルボン酸:PQQ)は、キノプロテインを使用する場合、機能するために必要とされる分子である。酸化還元補因子であるPQQは、水溶性および熱安定性であり、生物学的酸化還元においてニコチンアミドおよびフラビンに次ぐ3番目の種類の補酵素とみなされ、Hauge,1964によって発見された。この時点まで未知の酸化還元補因子も、アルコールデヒドロゲナーゼ中でAnthony and Zatmanによって見出され、彼らによりメトキサンチンと命名された[Anthony,1967]。その後、PQQは、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、オキシゲナーゼ、ヒドラターゼおよびデカルボキシラーゼにおいて生じることが報告された。これらのキノプロテインの役割は、非リン酸化基質、例えばアルコール、アルデヒドまたはアルドースの一次酸化段階を触媒することである。
PQQは、原核生物(例えばクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、ラーネラ・アクアティリス(Rahnella aquatilis)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)および真核生物(例えばポリポラス・ベルシカラー(Polyporus versicolor)、ラス・ベルニシフェラ(Rhus vernicifera))の両方で認められている[Goodwin,1998;Hoelscher,2006;Yang,2010]。
PQQの一般に認められている構造は:
[式中、PQQoxは酸化形態の補因子であり、PQQredは還元形態の補因子である。]
である。
PQQの生合成に関与する遺伝子の数は種間で異なるが、一般に、生合成のためには、通常pqqABCDEまたはpqqABCDEFオペロンにクラスター化した、少なくとも5または6個の遺伝子が必要であることが公知である。遺伝子の数および組織化は、以下の実施例で見られるように可変的である。クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)では、PQQ生合成遺伝子はpqqABCDEFオペロンにクラスター化し、一方シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)ではpqqFがpqqABCDEオペロンから分離されている。アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)では、pqqABCDEは存在するがpqqF遺伝子は知られていない。条件的メチロトローフであるメチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)AM1は、pqqC遺伝子とpqqD遺伝子が融合しているpqqABC/DEオペロンを含み、一方pqqFG遺伝子は3個の他の遺伝子とオペロンを形成する。
PQQを補因子として利用する酵素については多くのことが公知であるが、PQQの生合成については相対的にほとんど知られていない。しかし、PQQの骨格はグルタマートおよびチロシンから構築される。おそらくこれらのアミノ酸は前駆体ペプチドPqqA中にコードされている。低分子ペプチドの長さは種々の生物間で異なり(それぞれK.ニューモニエ(K.pneumoniae)での23アミノ酸からP.フルオレセンス(P.fluorescens)の39アミノ酸まで)、すべての変異体においてPqqAペプチドの中央にGlu−X−X−X−Tyrモチーフが保存されている。PqqBタンパク質は、PQQのペリプラズムへの輸送に関与すると考えられ、従ってPQQの生合成に直接必要ではない。PqqCタンパク質の残基は種々の細菌からのPqqCタンパク質内で高度に保存されており、このタンパク質はPQQ形成における最終段階を触媒することに関与する。種々の生物からのPqqDタンパク質のタンパク質配列のアラインメントは厳密に保存された残基を示すが、PqqDの機能は十分には解明されていない。クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)において、PqqEは、C9およびC9aを連結するPqqAを認識することが示されており、その後連結されたアミノ酸を切断するPqqFによって受容される。前記生物において、その次の反応(シッフ塩基)は、二原子酸素添加後、自発的であることが示された。最後の環化および酸化段階はPqqCによって触媒される[Puehrunger,2008]。
タンパク質データベース内でクレブシエラ・シュードモナス(Klebsiella pseudomonas)に由来するPqqFおよびPqqGタンパク質の比較を実施した場合、前記タンパク質は、低分子ペプチドを切断する二価カチオン含有エンドペプチダーゼのファミリーと類似性を共有することが示された[Meulenberg,1992]。メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)のPqqFおよびPqqGタンパク質は、ミトコンドリアプロセシングペプチダーゼの2つのサブユニットに多少の類似性を示すが[Springer,1996]、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)のPqqFは、tldD遺伝子によってコードされるエシェリキア・コリ(Escherichia coli)ペプチダーゼ、ピトリリシンに最も密接に関連する[Meulenberg,1992]。pqqABCDE遺伝子だけを含み、pqqFを欠くPQQ遺伝子クラスターは、E.コリ(E.coli)において適格なPQQ生合成機構を提供するために使用し得ることが提案され、実験的に示されている(Kim C.H.et al.,2003,Yang X.−P.et al.2010)。ピトリリシンプロテアーゼ(tldD遺伝子によってコードされる。)は、見掛け上、一部の微生物において認められるpqqF遺伝子の活性を補完している。
E.コリ(E.coli)はPQQ自体を合成する能力を持たないが[Hommes,1984;Matsushita,1997]、環境で認められる、PQQに対する正の走化性作用を示し[de Jonge,1998]、外部から供給された補因子を利用することができる[Southall,2006]。従ってPQQ生合成遺伝子はE.コリ(E.coli)において組換え発現することができ、これは本発明で述べる態様の1つである。
上記に関して、一般に、PQQをPQQ依存性デヒドロゲナーゼにインサイチューで提供する少なくとも3つの方法がある。
第一に、PQQを、アルドースデヒドロゲナーゼ酵素を含む生存もしくは休止細胞または無細胞溶解物または精製アルドースデヒドロゲナーゼ酵素に添加することができる。ホロ酵素形態の活性アポ酵素への再構成はほとんど瞬時であり、これは本発明の1つの態様で示された。PQQと酵素のカップリングを促進するためにカルシウム、マグネシウムまたは他の二価金属イオンを混合物に添加する。これは、MgCl2またはCaCl2などの塩を酵素混合物に添加することによって達成され得る。さらに、PQQの添加のさらに別の可能性があり、PQQは必ずしも補助食品、酵母抽出物などの培地成分等の形態に精製される必要はない。キノプロテインがPQQに対して非常に高い親和性を有する[de Jonge,1998]という事実は、キノプロテインと等モル量を使用することを可能にする。実際には、これはナノモルからマイクロモルレベルの濃度を意味する。工程のコストを低減するためにアルドースデヒドロゲナーゼ酵素の最適活性に必要なPQQの量を最適化することが容易に実施されることは当業者に明らかになる。非限定的な例として、漸増量(0.1nMから出発する。)のPQQをアルドースデヒドロゲナーゼ触媒に添加し、さらなるPQQを提供しても前記触媒の活性がもはや増大しない場合、添加された量が最適である。
この意味で、本発明は、アルドースデヒドロゲナーゼに、より具体的には生存全細胞触媒、休止もしくは不活性化全細胞触媒、無細胞溶解物もしくは抽出物または本明細書によって提供される任意の他の形態の触媒に、PQQを約0.1nMから約5mMの濃度で供給する方法を提供する。特に約1nMから約100μMのPQQが提供され得る。より好ましくは、PQQは約100nMから約5μMの濃度で提供される。最も好ましくは、PQQは、前記触媒の最大活性を可能にする最少量で提供される。PQQは任意の供給源から得ることができ、固形物またはPQQの保存溶液として触媒に提供される。PQQによるアルドースデヒドロゲナーゼの再構成を促進するため、カルシウムまたはマグネシウムイオン、好ましくはCaCl2またはMgCl2を約0.1mMから約50mM、より好ましくは約1mMから約20mMの濃度で酵素に提供する。MgCl2は好ましい選択肢であるが、異なる酵素は特定の二価イオンに対する選択性が異なり得る。第二に、適切なデヒドロゲナーゼの生産のための宿主生物が内因性PQQ生合成能を有する、言い換えるとこの遺伝物質中に既に組み込まれたPQQ生合成についての機能的遺伝子を含むという選択肢がある。非限定的な例は、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、ラーネラ・アクアティリス(Rahnella aquatilis)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)その他である。
このような微生物を同種または異種アルドースデヒドロゲナーゼの発現のための宿主として使用する場合、発現された酵素をPQQと結合して、これらの活性形態を形成する。前記微生物の一部には、PQQ生産能に加えて、活性PQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼが存在し、これは化合物(II)を化合物(I)に変換することができる。本発明の幾つかの態様において、このアプローチは以下で例示するように極めて有効でうまくいくことが証明された。
この態様では、本発明は、PQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼの相同または非相同発現のための宿主として使用できるPQQを生産する生来の能力を有する微生物を提供する。前記微生物は、好ましくは細菌の中から、より好ましくは工業的に培養可能な細菌、特にクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)、エンテロバクター(Enterobacter)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、ラーネラ・アクアティリス(Rahnella aquatilis)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)から選択される。最も好ましい実施形態では、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)を使用し得る。
同様であるが異なる実施形態では、本発明は、化合物(II)を化合物(I)に変換する天然の能力を有する微生物を提供する。所望の酸化を実施することができる触媒を得るために、提供される生物に関して遺伝的修飾は必要ない。従って本発明は、細菌起源から、より詳細にはクレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enteorobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、リゾビウム属(Rhizobioum)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、クルイベラ属(Kluyvera)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、エルウィニア属(Erwinia)、ラーネラ属(Rahnella)およびデイノコッカス属(Deinococcus)から選択される、本明細書で開示される目的および使用のための微生物を提供する。より詳細には、微生物は、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)、エンテロバクター(Enterobacter)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、ラーネラ・アクアティリス(Rahnella aquatilis)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)から、最も好ましくはグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)およびクルイベラ・インテルメディウム(Kluyvera intermedium)から選択され得る。
上記で述べたのは、本発明を実施するための所望特性を有する微生物の非限定的な例である。さらに、このような微生物のスクリーニングおよび同定を可能にする方法を開示し、提供する。
3番目の選択肢は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)のようなPQQの生合成の内因性能力を有さない微生物に特に適用できる。E.コリ(E.coli)などの一部の微生物および大部分の高等生物は、これらのゲノム中にコードされたPQQ依存性酵素を有し、特定の条件で発現するが、PQQの生合成を欠くことは当分野で周知である[Matshushita,1997]。このような微生物がPQQを必須栄養素として、または言い換えるとビタミンとして得ることが当分野で企図されている。本発明のために使用されるこのような微生物においてPQQの生合成を確立する方法は当業者に明らかである。このような生物にPQQの生合成を提供するアプローチは記述されている(例えばGoosen,1988;Yoshida,2001;Kim,2003;Khairnar,2003;Hoelscher,2006;Yang,2010参照)。同じく本発明によって提供されるように、これは、PQQ生合成機構を有する微生物からのPQQ生合成遺伝子クラスターをプラスミドベクターまたは細菌染色体にクローニングし、次に宿主生物においてこのような遺伝子を発現させることによって確立され得る。この目的に適する微生物の非限定的な例には、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)その他が含まれる。「PQQ遺伝子クラスターの異種発現」という用語は、上記手順を表す広く確立された用語として、当業者には直ちに理解される。
本発明における使用のために、前記遺伝子クラスターが上述した機能的タンパク質をコードし、単独でまたは宿主生物の酵素と協力してPQQを生合成する能力を有することを条件として、任意のPQQ遺伝子クラスターを使用し得る。
本発明の1つの実施形態では、PQQ遺伝子クラスターは、PQQを産生する任意の生存生物から得ることができる。本発明のより特定の実施形態では、PQQ遺伝子クラスターは、細菌の中から、より詳細にはクレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enteorobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、リゾビウム属(Rhizobioum)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、クルイベラ属(Kluyvera)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、エルウィニア属(Erwinia)、ラーネラ属(Rahnella)およびデイノコッカス属(Deinococcus)から選択される任意の微生物から得ることができる。より詳細には、微生物は、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)、エンテロバクター(Enterobacter)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、ラーネラ・アクアティリス(Rahnella aquatilis)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)から、最も好ましくはグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)およびクルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)から選択され得る。
適切なPQQ遺伝子クラスターの例には、クラスターのヌクレオチド配列または配列表に含まれる遺伝子が含まれるが、これらに限定されず、これらは、配列表に示すこれらのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列によって同定される。一般に、当分野で公知の機能的遺伝子を提供するPQQクラスターのいずれかを、列挙されるPQQクラスター、この中に含まれる遺伝子および前記遺伝子によってコードされるタンパク質とのこれらの配列同一性にかかわらず、反応のために使用し得る。
PQQ 01は、配列番号:68のヌクレオチド配列に含まれるグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)621HからのPQQコード遺伝子クラスターであり、それぞれアミノ酸配列、配列番号:12、13、14、15、16を有するタンパク質PqqA、PqqB、PqqC、PqqDおよびPqqEをコードする遺伝子pqqA、pqqB、pqqC、pqqDおよびpqqEの発現を可能にする。
PQQ 02は、配列番号:69のヌクレオチド配列に含まれるクルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)からのPQQコード遺伝子クラスターであり、それぞれアミノ酸配列、配列番号:18、19、20、21、22を有するタンパク質PqqA、PqqB、PqqC、PqqDおよびPqqEをコードする遺伝子pqqA、pqqB、pqqC、pqqDおよびpqqEの発現を可能にする。
PQQ 03は、配列番号:63のヌクレオチド配列を有するクレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)324からの遺伝子クラスターpqqABCDEFであり、タンパク質PqqA、PqqB、PqqC、PqqD、PqqEおよびPqqFをコードする遺伝子pqqA、pqqB、pqqC、pqqD、pqqEおよびpqqFの発現を可能にする。上記配列は、2602846と2599706の間の位置にある、NCBIゲノムデータベースでアクセッション番号CP000964を有するゲノム配列の一部として入手可能である。
PQQ 04は、それぞれ配列番号:64および配列番号:65のヌクレオチド配列を有するメチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)AM1からの遺伝子クラスターpqqABC/DEおよびpqqFGであり、タンパク質PqqA、PqqB、PqqC、PqqD、PqqEおよびPqqFをコードする遺伝子pqqA、pqqB、pqqC、pqqD、pqqEおよびpqqFの発現を可能にする。上記配列は、1825235と1821763の間(pqqABC/DE)、2401055と2403792の間(pqqEF)の位置にある、NCBIゲノムデータベースでアクセッション番号CP001510を有するゲノム配列の一部として入手可能である。
PQQ 05は、それぞれ配列番号:66および配列番号:67のヌクレオチド配列を有するシュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)PA7からの遺伝子クラスターpqqABCDEおよびpqqFであり、タンパク質PqqA、PqqB、PqqC、PqqD、PqqEおよびPqqFをコードする遺伝子pqqA、pqqB、pqqC、pqqD、pqqEおよびpqqFの発現を可能にする。上記配列は、3420385と3423578の間(pqqABCDE)、3439512と3437221の間(pqqF)の位置にある、NCBIゲノムデータベースでアクセッション番号CP000744を有するゲノム配列の一部として入手可能である。
PQQ 06は、配列番号:70のヌクレオチド配列を有するエルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)ATCC 49946からの遺伝子クラスターpqqABCDEFであり、タンパク質PqqA、PqqB、PqqC、PqqD、PqqEおよびPqqFをコードする遺伝子pqqA、pqqB、pqqC、pqqD、pqqEおよびpqqFの発現を可能にする。上記配列は、597604と600850の間の位置にある、NCBIゲノムデータベースでアクセッション番号FN666575を有するゲノム配列の一部として入手可能である。
当業者はまた、広く確立されたデータマイニングツールを使用して公的に利用可能なデータベース(GenBank、Swiss−Prot/TrEMBL、RCSB PDB、BRENDA、KEGG、MetaCyc)において、PQQ合成を提供する付加的な候補遺伝子クラスターを認識する。
本発明によって提供されるPQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼの活性を測定する方法は、本明細書で本発明によって例示されるように、生物の起源(天然または遺伝的に改変されている。)にかかわりなく、PQQを産生することができる生物をスクリーニングし、同定するために使用することができ、加えて、所望する場合は、産生されたPQQの量を推定する半定量的方法を可能にする。好ましくはE.コリ(E.coli)(またはPQQを産生することができない任意の他の微生物)において発現される、任意の形態のPQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼを活性ホロ酵素の再構成のために使用することができる。様々な量のPQQを添加した、前記PQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼの活性を測定することによって得られる検量線を、分析された試料を添加した前記PQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼの活性と比較する。この方法の直線範囲内で、より多くのPQQが分析試料中に存在するほど、より高い活性が認められる。
本発明の特定の実施形態では、PQQ遺伝子クラスター(またはこの部分)は、クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)またはグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)に由来する。特に、配列番号:68のヌクレオチド配列に含まれるグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)621Hからの遺伝子クラスターを使用し得る。または、本発明の特定の実施形態は、配列番号:69のヌクレオチド配列に含まれるクルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)からの遺伝子クラスターの使用を提供する。前述した遺伝子クラスターは、E.コリ(E.coli)における前記クラスター内にコードされた遺伝子の発現を可能にするために、当分野で公知の方法によって、例えばSambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor,NY 2001に記載されている方法によって改変することができる。E.コリ(E.coli)の数多くの株のいずれかを使用することができる:例えばE.コリ(E.coli)K12株、例えばJM109、DH5、DH10、HB101、MG4100等またE.コリ(E.coli)B株、例えばBL21、Rossetta、Origami等が使用できる。遺伝子は、当分野で公知の任意の遺伝学的方法によって、例えばトランスフェクション、形質転換、電気穿孔、接合伝達その他によって前記宿主株に導入することができる。前記遺伝子クラスターは、当分野で公知の任意の形態で、例えば自律複製プラスミド中にコードされてまたは宿主のゲノムに組み込まれて、前記宿主微生物中に維持され得る。前記遺伝子クラスター中にコードされる遺伝子の発現は、前記遺伝子の発現を制御する天然プロモーターの活性を利用することによってまたはプロモーターを、前記宿主微生物における発現により適し得るプロモーターに置き換えることによって得ることができる。このような改変を行うための方法は当分野において周知である。
1つの態様では、本発明は、配列番号:68のヌクレオチド配列に含まれるグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)621Hからの遺伝子クラスターを提供し、これは、宿主E.コリ(E.coli)株に含まれる自律複製プラスミド上で実施される。この特定の態様では、クラスター上にコードされる遺伝子は、これらの対応する天然プロモーターの制御下で発現される。
1つの態様では、本発明は、配列番号:69のヌクレオチド配列に含まれるクルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)からの遺伝子クラスターを提供し、これは、宿主E.コリ(E.coli)株に含まれる自律複製プラスミド上で実施される。この特定の態様では、クラスター上にコードされる遺伝子は、これらの対応する天然プロモーターの制御下で発現される。同じ特定の態様において、E.コリ(E.coli)におけるPQQ合成を提供するために使用される遺伝子はpqqABCDEであり、pqqFの機能はE.コリ(E.coli)の内因性活性によって提供される。
本発明者らの所見によれば、PQQ依存性デヒドロゲナーゼの異種発現の間にPQQが利用可能であることは、これらの正しい折りたたみ、輸送、リーダー配列の切断および他の翻訳後修飾にほとんど影響を及ぼさない。これは、PQQがいつデヒドロゲナーゼに提供されるか、即ちPQQがデヒドロゲナーゼに提供される時点または期間、例えば培養および発現の誘導の間または後であるかにかかわらず、デヒドロゲナーゼ活性にはほとんど差がないことを意味する。他のパラメータ、即ち細胞周辺腔または細胞膜において高い、さらには最大のPQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼ活性がいつ確立されるか、細胞の天然電子受容体(呼吸鎖)への最適結合がどこで可能となるかは、より意味がある。これらのパラメータの1つは、タンパク質をペリプラズムまたは膜へと向かわせる、適切なリーダー配列の存在である。別のこのようなパラメータは、培養の温度、選択される転写プロモーター、PQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼコード遺伝子におけるコドン使用頻度、発現誘導物質の量等によって制御され得る発現強度である。さらに別のこのようなパラメータは、選択されるPQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼの固有特性、例えば異種宿主における正しい折りたたみの能力、異種宿主に対する毒性、宿主の分解酵素に対する耐性等である。このようなパラメータはすべて、活性の増強および最適化ならびにこれらを行う方法のために有用であり、当業者に明らかになる。
本発明のさらに例示され、改変されたまたは選択的な実施形態
本発明の実施するための様々なさらなる実施形態、改変および代替手段が上記説明から明らかになる。
さらに例示される、本発明は、例えば基質(II)をデヒドロゲナーゼ触媒酸化条件下で反応させて対応するラクトン(I)を形成する段階を含む特定の工程を提供し、この工程でデヒドロゲナーゼは、第一の実施形態では、GDH 01もしくはGDH 02もしくはGDH 03もしくはGDH 04もしくはGDH 05、またはこれらと少なくとも70%、より好ましくは90%のアミノ酸配列同一性を有する任意のデヒドロゲナーゼから選択される。別の実施形態では、デヒドロゲナーゼは、GDH 06もしくはGDH 07もしくはGDH 08もしくはGDH 09もしくはGDH 10、またはこれらと少なくとも70%、より好ましくは90%のアミノ酸配列同一性を有する任意のデヒドロゲナーゼから選択される。
別の態様では、本発明は、E.コリ(E.coli)が宿主微生物として例示される、適切な合成生物学的経路を構築し、提供する方法に関し、この場合DERA(デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ)、PQQ依存性デヒドロゲナーゼおよび、場合によりPQQ生合成経路遺伝子が同時に発現される。宿主生物の呼吸鎖も確立され、提供される。
Gcdアルドースデヒドロゲナーゼはすべての好ましい特徴を満たし、従って使用される最も好ましい酵素である。Gcdは、本明細書で述べるGcdの少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%にアミノ酸配列同一性を有する任意のアルドースデヒドロゲナーゼを包含する。アミノ酸配列同一性は、配列比較アルゴリズムでの解析によってまたは目視検査によって決定される。1つの態様では、配列比較アルゴリズムは、デフォルトに設定したVector NTI 9.0(InforMax)のAlignXアルゴリズムで行う。
さらなる特別な態様では、本発明は、上述した酵素を用いた化合物(II)の酸化または脱水素反応の工程であって、生存全細胞触媒、休止全細胞触媒、無細胞溶解物、部分精製もしくは精製酵素、固定化酵素または任意の他の形態の触媒として使用される微生物または微生物由来物質を提供することを含む工程に関し、上述した酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素は、前記微生物において天然に発現される、即ち前記酵素は微生物の天然の特性である。前記態様では、培養され、前記反応において触媒として使用される場合このような生物は、前記微生物の付加的な遺伝的修飾を必要とせずに化合物(II)を対応するラクトンに変換することができる。前記微生物は、以下で例示するような極めて多様な細菌から選択することができる。記述された特性を有する生物は、細菌、より詳細にはプロテオバクテリア(proteobacteria)、アクチノミセタール(actinomycetales)、ミクソバクテリアセアエ(mixobacteriaceae)から選択することができる。より詳細には、前記微生物はガンマプロテオバクテリアセアエ科(Gamma proteobacteriaceae)から選択され得る。この意味で最も好ましい生物は、エンテロバクテリアセアエ科(Enterobacteriaceae)、リゾビウム属(Rhizobioum)、グルコノバクター属(Gluconobacter)およびアシネトバクター属(Acinetobacter)の群から選択される。
本明細書で提供される開示を考慮して、化合物(II)の酸化または脱水素の能力を有する生物を探索する方法は当業者に明らかである。1つのこのような方法は、一定量の化合物(II)を試験微生物の培養物に提供し、活性を調べることである。
さらなる特定の実施形態では、式(II)の化合物の定義、従ってまた式(I)の化合物の定義も、R5が式(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)および(IX):
さらに別の特定の実施形態では、式(II)の定義、従ってまた式(I)の定義も、以下の定義:
R1は、R2とは独立して、H、X、N3、CN、NO2、OH、(CH2)n−CH3、O−(CH2)n−CH3、S−(CH2)n−CH3、NR3R4、OCO(CH2)nCH3またはNR3CO(CH2)nCH3を表し;ならびに
R2は、R1とは独立して、Hもしくは(CH2)m−CH3を表すか;または
R1およびR2のどちらも、X、OHもしくはO(CH2)nCH3を表すか;または
R1とR2は一緒になって=O、−(CH2)p−、−(CH2)r−(1,2−アリーレン)−(CH2)s−を表し、前記式中、
R3およびR4は、互いに独立してもしくは一緒になってH、(CH2)m−CH3を表すか、または一緒になって環−(CH2)p−、−(CH2)r−(1,2−アリーレン)−(CH2)s−、−(CO)r−(1,2−アリーレン)−(CO)s−を形成し;
Xは、F、Cl、BrまたはIを表し;
nは0から10の整数であり;
mは0から3の整数であり;
pは2から6の整数であり;ならびに
rおよびsの少なくとも一方は1である
に特定され得る。
本発明の工程によって得られる式(I)の化合物は、スタチンを調製するための中間体として使用することができる。当業者は、スタチン合成に関連して本発明による前記化合物を得る工程段階をどのように実施するかを理解する。原則として、スタチンに到達する2つの基本的な方法がある。第一の経路によれば、ラクトンをラクトールから調製し、次にスタチン骨格に連結する。または、最初にアルデヒド側鎖を含むスタチン骨格を調製し、その後これを、例えば2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(DERA)酵素を使用することによってラクトールに変換し、次にラクトンに酸化する。アトルバスタチンの特定の場合については、一例として、WO2006134482のスキーム2から4を参照することができる。
特定の実施形態では、酵素2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(DERA、EC 4.1.2.4)を、式(II)の化合物を調製するために使用し、その後これを、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素によってラクトンに変換する。DERA酵素の多数の野生型、変異体または突然変異型が当分野で公知であり、J.Am.Chem.Soc.116(1994),p.8422−8423、WO2005/118794またはWO2006/134482が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ酵素を、式(II)の化合物を酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素と接触させる段階の直前に合成段階のために使用する。
別の好ましい実施形態では、DERAを使用して、式(II)の化合物を、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素による前記化合物の式(I)の化合物への変換と少なくとも部分的に同時に調製する。式(II)の化合物を調製する反応および前記化合物を式(I)に酸化する反応を触媒するのに必要な酵素は、同時にまたは続いて、一度に、断続的にもしくは継続的に、混合物中で使用することができるかまたは反応混合物に添加することができる。DERAによって調製される、式(II)の化合物、および従って酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素との反応のための出発物質を有する実施形態は、この設計が良好に適合性であり、先行する段階で水性溶媒を使用することを可能にし、従って式(II)の化合物を、ラクトンへの変換のために酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素に提供する前に精製することを不要にするので、好都合である。好ましい実施形態は、従って、前記化合物の事前の単離または精製を伴わずに式(II)の化合物を酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素と接触させることである。この場合、先行段階の完全な反応混合物をその後の反応のために使用することができ、これは工程段階の数を低減し、工程を単純化する。精製段階を取り除くことにより、収率も上昇する。加えて、化学的酸化剤に比べてより良好な酵素特異性のために、ほとんど(II)の化合物だけがラクトンに酸化され、存在する残りの化合物は変化せず、このため不純物生成の傾向が低減し、従ってその後の作業または精製手順を改善する。本発明による任意の酵素反応における基質はすべて、一度に反応に添加することができるか、またはより長期間にわたって継続的にまたは1つのバッチもしくは断続的なバッチで添加することができる。
式(I)の化合物を式(II)の化合物を調製するのと少なくとも部分的に同時に調製した場合、有意の改善を達成することができる。同時に、DERA酵素との反応を個別に使用することの多くの欠点を解決する。例えば、DERA酵素を使用することによって式(II)の化合物を調製する場合に出発物質として使用されるアルデヒドは、反応の経過中にDERA酵素を不活性化する傾向があり、従って酵素の活性を低下させる。加えて、反応混合物中で形成される式(II)のラクトールは生存微生物に対して毒性である。このため、DERAとの反応段階を短縮し、出発アルデヒドおよび/またはラクトールをできるだけ早く消費することが極めて望ましく、これは両方の酵素反応段階を少なくとも部分的に同時に実施する場合に達成される。即ち、両方の反応段階を少なくとも部分的に同時に、好ましくは完全に同時に実施した場合、毒性ラクトールは直ちに、結果として起こる反応に入り、非毒性のラクトンに変換される。さらに、2番目の反応段階は、以下の実施例で確認されるように、典型的には律速段階ではなく、DERAとの最初の段階よりも速く進行するので、最初の反応の定常状態平衡は生成物の方向にシフトする。これは、第一段階の完了のための時間短縮をもたらし、従ってDERAを不活性化から保護する。同時に生細胞を高濃度のラクトールによる破壊から保護する。
本発明の重要な態様は、(II)の酸化/脱水素反応によって生成される電子を、この呼吸鎖を介して酸素(最終電子受容体)に伝達する微生物の内因性能力を対象とする。これは、全細胞系において酵素が触媒する化合物(II)の酸化/脱水素の反応を駆動する。電子溜めとして働く能力が、本発明において本明細書によって説明される全細胞系の重要で有益な特性であることは直ちに明らかである。
全細胞の使用は、従って、上述したDCIPその他のような付加的な電子受容体の使用を回避する。全細胞工程を使用することのさらなる恩恵は、記述された合成生物学的経路のすべての態様、即ちDERA酵素、PQQおよびPQQ依存性糖デヒドロゲナーゼを1つの生物において提供できることである。このような工程の生産性および収率は以下で例示するように工業的に適切であるので、全細胞の使用は、コストを他のアプローチ、例えば無酵素工程、固定化酵素、無細胞溶解物等と比較して有意に低いレベルに抑えることができるため好ましい。また、DERAおよび酸化/脱水素反応段階の両方を、ワンポット設計を用いて完全にまたは部分的に同時に実施する可能性は、工業規模で使用される場合、有意のコスト削減を導く。
全細胞系を電子溜めとして利用するという意味で、酸素の存在下で工程を実施することも、特に酸素が所与の工程条件で溶解酸素の少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%となる量で提供される場合、好都合であり、100%溶解酸素は所与の工程条件で酸素の飽和溶液と理解され、0%は無酸素液体と理解され、酸素濃度と溶解酸素パーセントとの間の相関は、所与の工程条件で0%から100%まで線形である。この態様では、工程条件は液体組成物、温度、pH、圧と理解され、動的過程における測定は均質な固体/液体/気体多相系において実施されると理解される。
酸化または脱水素反応を不可逆的にする量の酸素の存在は、得られたラクトンを保護し、第一反応の定常状態平衡が生成物の方向にシフトすることをさらに増強する。この好ましい実施形態は、従って、収率を高め、工程に必要な時間を短縮する。
酸素もしくは脱水素反応を触媒することができる酵素および/またはDERA酵素は、即ちそれぞれ単独でまたは組み合わせておよび場合により独立して、単一または複数の生存全細胞、不活性化全細胞、ホモジナイズされた全細胞もしくは無細胞抽出物中に含まれ得るか、またはそれぞれ精製され、固定化されているおよび/または細胞外で発現されるタンパク質の形態である。好ましくは、2つの酵素の一方は、さらにより好ましくは両方の酵素は、同じ生存全細胞、同じ不活性化全細胞または同じホモジナイズされた全細胞に含まれ、より好ましくは同じ生存全細胞または同じ不活性化全細胞に含まれ、特に同じ生存全細胞に含まれ、なぜならば、一般的な全細胞または少なくとも一般的な不活性化全細胞中に酵素を有することは、工程中で使用する前に酵素の取扱いをあまり必要とせず、コストを低減するからである。さらに、酵素が生存全細胞中に含まれることは、ろ過による酵素の簡単な除去を可能にし、工業規模での最終的な精製段階を軽減する。加えて、生細胞に含まれる酵素をその後のバッチで再利用することを可能にする。
全細胞または少なくとも不活性化全細胞中で酵素を使用することの別の利点は、上記で詳述したようにPQQ補因子を内因的に提供できることである。
好都合な選択肢として、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(DERA)酵素および酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素を翻訳することができる全細胞系を、前記翻訳のために必要な遺伝子の両方を過剰発現するように設計することができる。過剰発現のための手段は当業者に公知であり、時に本明細書の別の部分で言及される。
本発明のさらなる態様によれば、1以上の細胞型を含む発現系であって、それぞれの細胞型が、細胞型全体で、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(DERA)酵素および酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素の両方を発現するように遺伝子操作されている発現系が提供される。
発現系は、適切な生物または細胞および場合によりさらなる因子および添加剤で構成され得、本明細書で提供される開示が参照される。
1つの態様では、本発明は、E.コリ(E.coli)が宿主微生物として例示される、本発明における使用のための合成生物学的経路を構築するまたは提供する方法を提供し、この場合DERA(デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ)、PQQ依存性デヒドロゲナーゼおよび、場合によりPQQ生合成経路遺伝子が同時に発現される。宿主生物の呼吸鎖を提供するので、前記合成生物学的経路は、以下に示す化合物(X)およびアセトアルデヒドなどの簡単な分子から化合物(I)の生成を実施する能力を有する。このアプローチは、化合物(II)の生成、化合物(II)の精製および化合物(II)の化合物(I)への酸化という別々の段階をあらかじめ結合するので、好都合である。加えて、前記合成生物学的経路を担持する生物の培養は、化合物(IX)などの分子とアセトアルデヒドを式(I)の化合物に変換することができる物質を直ちに提供する、1つの工業的発酵工程で実施される。
本発明の別の実施形態は、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(DERA)酵素および酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素の存在下でDERA酵素反応のための出発物質を反応させ、ならびに場合により生成物を塩化する、エステル化するまたは立体選択的に分解することにより、式(I)の化合物またはこの塩、エステルもしくは立体異性体をワンポット工程で得ることである。この実施形態は、式(X):
[式中、Rは式(I)のR
1−CH−R
2部分を表し、R
1およびR
2は上記で定義されたとおりである。]
の化合物から出発して、前記化合物(X)を2つの酵素、即ちアルドラーゼ(DERA)酵素および酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素の存在下でアセトアルデヒドとの反応に供することを企図する。この設定は、比較的簡単な出発物質、例えばアセトアルデヒドから出発する単一工程段階で式(I)の化合物を得ることを可能にする。反応は数時間以内に完了に至るので、工業的に適切である。この反応は中間精製段階を不要にする。加えて、好ましくは同じ生存全細胞、不活性化全細胞、ホモジナイズされた全細胞もしくは無細胞抽出物に含まれる、または精製され、固定化されているおよび/または細胞外で発現されるタンパク質の形態である、好ましくは同じ生存全細胞、不活性化全細胞またはホモジナイズされた全細胞に含まれ、より好ましくは同じ生存全細胞または不活性化全細胞に含まれ、特に同じ生存全細胞に含まれる、両方の酵素を一緒に添加する、即ち第一酵素反応の生成物が第二酵素反応の基質を形成する、可能性を提供する。
これは、本明細書で述べるものを含むがこれらに限定されない、組み合わせた酵素反応の有利な作用すべてを利用する。1つの態様では、混合物に添加する基質の総量は、添加する基質(X)の総量が反応混合物1リットルにつき約20mmolから反応混合物1リットルにつき約2mol、特に反応混合物1リットルにつき約100mmolから反応混合物1リットルにつき約1.5mmol、より詳細には反応混合物1リットルにつき約200mmolから反応混合物1リットルにつき約700mmolとなる量である。アセトアルデヒドは幾つかの手段によって添加し得る。1つの態様では、アセトアルデヒドを1つのバッチでまたはより多くのバッチでまたは連続的に反応混合物に添加する。アセトアルデヒドを式(X)の基質と予混合して、反応混合物に添加し得る。反応混合物に添加するアセトアルデヒドの総量は、受容体基質の総量に対して約0.1から約4モル当量、特に約2から約2.5モル当量である。本発明の1つの態様では、反応に使用されるpH値は約4から約11である。1つの実施形態では、反応に使用されるpHは約5から約10である。別の実施形態では、反応に使用されるpH値は約5から約8である。具体的には、pH値は適切な緩衝液によって5.2から7.5の範囲内に維持される。または、上記で挙げたpH値は、当業者に明らかであるように必要に応じて酸または塩基の添加を制御することによって、しかしこれに限定されることなく、管理され得る。
1つの態様では、本発明によって説明される反応に使用されるpHは、最適な酵素活性と最適な基質および/または生成物安定性との間で互譲が得られるように最適化され得る。本明細書で述べる種々の酵素についての最適酵素活性が基質/生成物安定性についての最適条件と同一でない場合があることは本明細書で理解される。当業者は、基質および/または生成物安定性を適合させて最適な生成物収率を得られるように条件を調整することにより、ある程度酵素活性を犠牲にすることが有益である(または逆もまた同様である。)と判断し得る。
具体的には、アルドラーゼ酵素を、場合により少なくとも一部は酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素と共に、水溶液中で(特に各々0.1g/Lから3g/Lの濃度で)、場合により塩(特に50から500mMの濃度のNaCl)の存在下に、場合によりPQQ(特に250nMから5μMの濃度で)およびCaCl2、MgCl2または選択的なカルシウムもしくはマグネシウム塩)を特に0.1から20mMの濃度で添加して調製する。水溶液は水と混和性の有機溶媒(特に2から15%V/Vの濃度のジメチルスルホキシド)を含んでもよく、pH4から11に緩衝され得る。一部の一般的に使用される緩衝液は、アルドラーゼ縮合中間体、特に第一縮合反応の産物が緩衝液との化学反応を受けることがあるので、これらの利用可能性を制限することによってアセトアルデヒドから出発する前記反応の収率を低下させ得る。例えば、ビス−トリスプロパンは、前記中間体((S)−3−ヒドロキシ−4,4−ジメトキシブタナール)と反応して(S,Z)−2−(3−((1,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル)プロパン−2−イル)(3−ヒドロキシ−4,4−ジメトキシブト−1−エニル)アミノ)プロピルアミノ)−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオールを与える。同様に反応し得る他の緩衝液は、ビス−トリス、トリシン、トリス、ビシンまたは第一級、第二級もしくは第三級アミノ基を有する任意の他の緩衝液である。従ってpHを調整するための適切な緩衝液は、この調整が必要である場合、酸、塩基、塩またはこれらの混合物、特にリン酸および水酸化ナトリウムで作製される。特に好ましい実施形態では、緩衝液はリン酸緩衝液である。特に、リン酸緩衝液を10から500mMの濃度で使用することができる。水溶液はまた、アルドラーゼ酵素を、場合により少なくとも一部は酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素と共に水に添加して、無機酸、塩基、塩またはこれらの混合物の自動添加を用いて反応の間pH値を維持することによっても調製できる。
本発明による1つの態様では、アセトアルデヒドから出発する反応に使用される温度は約10から約70℃である。1つの実施形態では、反応に使用される温度は約20から約50℃である。別の実施形態では、反応に使用される温度は約25から約40℃である。
1つの態様では、本発明によって説明される反応に使用される温度は、最適な酵素活性と最適な基質および/または生成物安定性との間で互譲が得られるように最適化され得る。本明細書で述べる種々の酵素についての最適酵素活性が基質/生成物安定性についての最適条件と同一でない場合があることは本明細書で理解される。当業者は、基質および/または生成物安定性を適合させて最適な生成物収率を得られるように条件を調整することにより、ある程度酵素活性を犠牲にすることが有益である(または逆もまた同様である)と判断し得る。
反応の完了後、どちらの酵素も、例えば1容の反応混合物に対して少なくとも約1容のアセトニトリルを添加することによって、反応混合物から除去することができる。または、当分野で公知の任意の塩析法によって酵素を除去することができる。1つの実施形態では、塩析は、少なくとも5%m/Vの硫酸アンモニウムを添加して実施される。酵素が生存または不活性化細胞に含まれる実施形態では、反応混合物をろ過するまたは遠心分離することによって酵素を除去し得る。
別の実施形態では、生成物は、多くの水不混和性または難混和性溶媒のいずれかへの液/液抽出によって除去される。溶媒は、塩化メチレン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、酢酸プロピオニル、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、ニトロメタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、n−ブタノール、n−ペンタノール、ベンゼン、トルエン、o−、m−、p−キシレン、シクロヘキサン、石油エーテル、トリエチルアミンから選択され得るが、これらに限定されない。選択された有機溶媒での液/液抽出の前に、生成物の水溶液のpHを1から12の間、好ましくは2から8の間、より好ましくは3から5の間の値に調整し得る。抽出完了後の有機相中の残留水分の乾燥は、列挙される塩:硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム(一水和物)、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸銅を添加することによって実施され得るが、これに限定されない。
一般に、使用されるアルドラーゼ酵素および/または酸化もしくは脱水素反応を触媒することができる酵素は、当分野で公知の任意の手段によって、例えばSambrook et al.(1989)Molecular cloning:A laboratory Manual 2nd Edition,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harborに記載されているタンパク質発現の方法によって調製することができる。アルドラーゼ酵素および/または酸化もしくは脱水素反応を触媒することができる酵素をコードする遺伝子を発現ベクターにクローニングし、酵素を適切な発現宿主において発現させることができる。改変された型の公知のアルドラーゼ酵素または酸化もしくは脱水素反応を触媒することができる酵素は、クローニング条件に依存して必要であり得るかまたは生じてもよく、本発明に包含される。
細胞および生物
本発明の1つの態様は、天然に発現される酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素を有する、本明細書で述べる任意の形態の微生物を使用した、化合物(II)または本明細書で列挙する他の化合物の酸化または脱水素の工程を提供する。前記態様では、培養され、触媒として使用された場合このような生物は、前記微生物の付加的な遺伝的修飾を必要とせずに化合物(II)を対応するラクトンに変換することができる。このような生物を同定する方法が本発明において例示される。このような生物の非限定的な例は、極めて多様な細菌から、より詳細にはエシェリキア属(Escherichia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enteorobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、リゾビウム属(Rhizobioum)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、クルイベラ属(Kluyvera)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、ラーネラ属(Rahnella)およびデイノコッカス属(Deinococcus)から選択され得る。
関連実施形態では、および本発明の実施形態を最良の配置で実施するために、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(DERA)酵素および酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素を翻訳することができ、ならびに前記翻訳のために必要な遺伝子の両方を過剰発現することができる特に適合された発現系が提供される。本明細書で使用される「過剰発現する」という用語は、強力なプロモーターの制御下での発現、または遺伝子が高レベルで発現され(野生型発現制御と比較して)、細胞内もしくは細胞外に蓄積される発現を指す。このような改変された発現を得る方法は当業者に公知である。例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular cloning:A laboratory Manual 2nd Edition,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harborに記載されているクローニング方法が使用できる。酵素についての遺伝子を、例えば同じまたは異なるベクター上にクローニングし、細胞に形質転換することができる。選択的に、発現系は別々の細胞を含み、第一細胞はアルドラーゼ酵素についての遺伝子を過剰発現し、第二細胞は酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素についての遺伝子を過剰発現する。本明細書は例証的に、一般的な知識に課せられる限定を伴わずに、このような発現系を作製する例を提供する。発現系は、スタチンまたはこの中間体を調製するのに特に適する。
当業者は、DERA酵素または酸化もしくは脱水素反応を触媒することができる酵素のいずれかを、単独でまたは組み合わせて、および場合により互いから独立して調製するまたは受け入れるためのすべての可能な細胞系を認識する。一般に、細胞系は原核または真核細胞系である。特定の実施形態では、酵素は合成的に調製することができる。酵素のいずれかを調製するまたは受け入れるための細胞は、細菌、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞であり得る。細菌または酵母細胞はより容易に培養され、増殖されるので、好ましくは、細胞は細菌または酵母であり、より好ましくは細菌である。細菌は、エシェリキア属(Escherichia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、バチルス属(Bacillus)およびラクトバチルス属(Lactobacillus)から成る属の群から、好ましくはエシェリキア属(Escherichia)およびラクトバチルス属(Lactobacillus)から、より好ましくはエシェリキア属(Escherichia)から選択され得、特にエシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。酵母の場合、細胞は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロミセス属(Shizosaccharomyces)およびカンジダ属(Candida)から成る属の群から、好ましくはサッカロミセス属(Saccharomyces)から選択され得る。哺乳動物細胞の例は、チャイニーズハムスター卵巣細胞または肝細胞であり、好ましくはチャイニーズハムスター卵巣細胞である。
本発明の別の実施形態は、化合物(I)の調製のための工程、特に工業的発酵工程であって、化合物(II)を酸化することができる微生物の培養の段階を含み、前記微生物を化合物(II)と接触させる工程である。
本発明のさらに別の実施形態は、化合物(I)の調製のための工程、特に工業的発酵工程であって、化合物(II)を酸化することができる微生物の培養の段階を含み、前記微生物を、特にDERAの触媒作用によって、(II)の酵素的生成の能力を有する別の微生物と接触させ、化合物(II)の生成を可能にする基質を反応混合物に提供する工程である。
本発明の好ましい実施形態は、化合物(I)の調製のための工程、特に工業的発酵工程であって、化合物(II)の生成ならびに酸化/脱水素の両方の能力を有する微生物の培養の段階を含み、化合物(II)の生成を可能にする基質を反応混合物に提供する工程である。
特定の実施形態では、本発明による工程は以下の段階を含む:
段階a1)既に公知ではないかまたは提供されていない場合、本明細書の別の部分で開示されるように、この段階は、化合物(II)の酸化/脱水素の能力を有する微生物の同定および/または本明細書で述べるように化合物(II)の酸化/脱水素の能力を得るための微生物の遺伝的に改変された株の生成を含む。特に糖1−デヒドロゲナーゼ活性を有する生物が好ましい。
段階a2)既に公知ではないかまたは提供されていない場合、本明細書の別の部分で開示されるように、この段階は、化合物(II)の生成の能力を有する微生物の同定および/または本明細書で述べるようにもしくは当分野で公知のように化合物(II)の生成の能力を得るための微生物の遺伝的に改変された株の生成を含む。特にアルドラーゼ触媒活性を有する生物が好ましい。
段階a1)および段階a2)で述べた両方の特性を得るために微生物が同定されるおよび/または遺伝的に改変されることが特に好ましい。この意味で本発明は、具体的には微生物の遺伝的に改変された株に関し、株の遺伝物質はアルドール縮合を触媒して化合物(II)を形成することができる酵素をコードする少なくとも1つの過剰発現される遺伝子、より具体的にはDERA酵素をコードする遺伝子を含む。
段階a1)および段階a2)で述べた微生物を同定するおよび/または遺伝的に改変された微生物を生成する手順を本発明において詳細に例示するが、当業者は、前記微生物の同じ所望特性を導き得る選択的手順を直ちに見出す。例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular cloning:A laboratory Manual 2nd Edition,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harborに記載されているクローニング方法が使用できる。酵素についての遺伝子を、例えば同じまたは異なるベクター上にクローニングし、細胞に形質転換することができる。選択的に、発現系は別々の細胞を含み、第一細胞はアルドラーゼ酵素についての遺伝子を過剰発現し、第二細胞は酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素についての遺伝子を過剰発現する。本明細書は例証的に、限定を伴わずおよび一般的な知識を考慮に入れずに、このような改変された微生物を作製する例を提供する。微生物は、スタチンまたはこの中間体を調製するのに特に適する。
当業者は、DERA酵素または酸化もしくは脱水素反応を触媒することができる酵素または、場合により、PQQ生合成遺伝子のいずれかを、単独でまたは組み合わせて、および場合により互いから独立して調製するまたは受け入れるためのすべての可能な細胞系を認識する。一般に、細胞系は原核または真核細胞系である。特定の実施形態では、酵素は合成的に調製することができる。酵素のいずれかを調製するまたは受け入れるための細胞は、細菌、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞であり得る。細菌または酵母細胞はより容易に培養され、増殖されるので、好ましくは、細胞は細菌または酵母であり、より好ましくは細菌である。
細菌は、エシェリキア属(Escherichia)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ロドコッカス属(Rhodococcus)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、エンテロバクター属(Enteorobacter)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、リゾビウム属(Rhizobioum)、メチロバクテリウム属(Methylobacterium)、クルイベラ属(Kluyvera)、グルコノバクター属(Gluconobacter)、エルウィニア属(Erwinia)、ラーネラ属(Rahnella)およびデイノコッカス属(Deinococcus)から成る属の群より選択され得る。より詳細には、微生物は、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、メチロバクテリウム・エキストロクエンス(Methylobacterium extorquens)、クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)、エンテロバクター(Enterobacter)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エルウィニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、ラーネラ・アクアティリス(Rahnella aquatilis)、デイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)およびラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)から、最も好ましくはエシェリキア・コリ(Escherichia coli)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)およびクルイベラ・インテルメディウム(Kluyvera intermedium)から選択され得る。酵母の場合、細胞は、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロミセス属(Shizosaccharomyces)およびカンジダ属(Candida)から成る属の群から、好ましくはサッカロミセス属(Saccharomyces)およびピキア属(Pichia)から選択され得る。
段階a1)および段階a2)で述べた両方の特性を得るために微生物が同定されるおよび/または遺伝的に改変されることが特に好ましい。この意味で本発明は、具体的には微生物の遺伝的に改変された株に関し、株の遺伝物質はアルドール縮合を触媒して化合物(II)を形成することができる酵素をコードする少なくとも1つの過剰発現される遺伝子、より具体的にはDERAアルドラーゼ酵素をコードする遺伝子を含む。
従って、本発明は、E.コリ(E.coli)が宿主微生物として例示される、合成生物学的経路を構築する例示的な方法を提供し、この場合DERA(デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ)、PQQ依存性デヒドロゲナーゼおよび、場合によりPQQ生合成経路遺伝子が同時に発現される。宿主生物の呼吸鎖が提供されるので、前記合成生物学的経路は、化合物(X)およびアセトアルデヒドなどの簡単な分子から化合物(I)の生成を実施する能力を有する。
本発明で述べる1つの態様は、段階a1)およびa2)で述べた微生物を同時にまたは独立して培養することである。
段階b)種培地の調製
本明細書で述べる微生物の培養は、当業者に公知の方法によって実施することができる。様々な微生物の培養方法は、例えば「Difco & BBL Manual,Manual of Microbiological Culture Media」(Zimbro M.J.et al.,2009,2nd Edition.ISBN 0−9727207−1−5)ハンドブックに記載されている。好ましくは、(I)の生成のための主発酵工程で使用できる種微生物の生産は、前記微生物のコロニーから出発する。これに関して本出願による工程は、記述された微生物の保存株の調製を含む。この凍結ストックの調製は当分野で公知の方法を用いて、例えば液体増殖培地を使用して実施し得る。好ましくは、微生物のこの凍結保存株を使用して栄養培地に接種することにより、栄養種培地を作製する。
種培地は無菌的にバイオリアクターに移し得る。原則として種微生物の培養は主発酵工程(段階c)で述べる。)におけるような条件(例えばpHおよび温度)下で実施することができる。
段階c)主発酵工程
好ましくは、本出願で述べる微生物を使用した主発酵工程は、バイオリアクターにおいて特に撹拌および/または通気下で実施される。好ましくは、本出願で述べる化合物(I)の生成のための工程に使用される微生物の培養は、同化炭素、窒素、リン酸塩および無機物の供給源を含む、水性栄養培地(生産培地)での液中好気条件下で実施される。適切な酵素活性を得るために付加的な化合物を培養工程の間または培養工程後に生産培地に添加してもよい。これらには、発現誘導物質、補因子の供給源および/または遺伝要素の維持を可能にする化合物(抗生物質など)が含まれ得る。
好ましくは、主発酵工程は、特に反応器に無菌的に移すことにより、段階b)で得られた種微生物を生産培地に接種することを含む。接種には栄養型の微生物を用いることが好ましい。主発酵工程における栄養培地(生産培地)の反応器への添加は、1回以上のバッチ式でまたは連続的に実施することができる。栄養培地(生産培地)の添加は発酵工程の前および/または発酵工程の間に実施できる。
栄養培地中の炭素の好ましい供給源は、以下に例示するようにデキストリン、グルコース、可溶性デンプン、グリセロール、乳酸、マルトース、フルクトース、糖蜜およびスクロースから選択することができる。
栄養培地中の窒素の好ましい供給源は、アンモニア溶液、酵母抽出物、大豆ペプトン、 大豆ミール、細菌ペプトン、カゼイン加水分解物、L−リシン、硫酸アンモニウム、コーンスティープリカーその他である。
無機塩、例えば炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムまたはカリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄その他の塩も培地に添加し得る。
発酵工程のためのさらなる公知の添加剤は、特に主発酵工程において添加し得る。培地の過剰な発泡を防ぐために消泡剤、例えばシリコーン油、脂肪油、植物油等を添加することができる。特にシリコーンに基づく消泡剤は、培地の過剰な発泡を防ぐために発酵工程の間に添加し得る。発現誘導物質、例えばイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)、アラビノース、テトラサイクリン、インドールアクリレート等を培地に添加してもよい。加えて、PQQ(ピロロキノリンキノン)、NAD(P)、FADなどの補因子を、関与する酵素の活性を改善するために添加してもよい。特定の態様では、IPTGおよびPQQを使用し得る。
発酵工程は、生産培地を撹拌および通気しながら好気条件下で実施し得る。培養混合物の撹拌および通気は様々な方法で達成し得る。生産培地の撹拌は、プロペラまたは同様の機械装置によって提供され得、発酵の条件および規模によって様々な程度にわたり得る。通気速度は、バイオリアクターの作業体積に対して0.5から2.5VVM(1分当たりの液体体積単位当たりのガス体積流量(体積/体積/分))の範囲内で変化させ得る。
本発明の方法による主発酵工程は、約6.3から8.5の範囲内のpHおよび18から37℃の範囲内の温度で実施される。好ましくは、pHは約6.5から8.3の範囲内であり、温度は約21から31℃の範囲内である。好ましくは、培養物を16から約300時間、より好ましくは約30から70時間インキュベートする。
異なる微生物は異なる増殖条件を要求し得ることおよび特定の生物の増殖のための最適条件をどのようにして決定できるかが当分野で広く記述されていることは当業者に明らかである。また、異なる増殖条件が、提供される工程に関与する酵素の活性に大きな影響を及ぼし得ることも当業者に明らかである。本発明は、前記酵素の最大活性および反応速度を得るために増殖条件を最適化するのに使用できる方法の詳細な例を提供する。
本発明の別の実施形態は、段階a)で述べた微生物を同時にまたは独立して培養することを包含する。同様に、化合物(II)と化合物(I)の調製のための反応を別々にまたは同時に、連続的にまたはワンポット法で実施することも可能である。
具体的には、デヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ酵素を、水溶液中(特に0.1g/Lから300g/Lの濃度範囲で)、場合により塩(特に50から500mMの濃度範囲のNaCl)の存在下で、塩を前記濃度範囲に希釈または濃縮して、段階c)の後に調製する。新鮮培地または生物の生存を可能にする培地の成分を添加した場合は、生存全細胞触媒が得られる。緩衝水溶液中または使用済み培地中で調製した場合は、休止全細胞触媒が得られる。水溶液は、pH4.0から11、好ましくはpH5.0から10.0、より好ましくはpH5.0から8.0に緩衝し得る。最も好ましくは溶液を約pH5.2から約pH7.5に緩衝する。適切な緩衝液は、酸、塩基、塩またはこれらの混合物、および第一級、第二級もしくは第三級アミノ基を有するものを除く当分野で公知の任意の他の緩衝系から調製できる。特に、リン酸緩衝液を10から500mMの濃度で使用し得る。水溶液は、前記デヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ酵素を水に添加し、無機または有機酸、塩基、塩またはこれらの混合物の自動添加を用いて反応の間pHを維持することによって調製できる。
段階d)酵素反応
本発明を実施するための幾つかの選択肢を提供する。化合物(II)および化合物(I)の調製のための反応を別々にまたは同時に、連続的にまたはワンポット法で実施することが可能である。1つの実施形態では、これらの変法は次のとおりである:
1.化合物(II)を、化合物(II)の酸化/脱水素能力を有する微生物の培養物に添加する。
主発酵工程で化合物(II)の酸化/脱水素能力を有する微生物を培養する前段階の完了後、化合物(II)を前記微生物と接触させる。前記微生物がすべての必要な補因子を内因性に含んでもよくまたは外部からのPQQ添加を用いてもよい。PQQは約0.1nMから約5mMの濃度で添加し得る。特に約1nMから約100μMのPQQが提供され得る。より好ましくは、PQQは100nMから約10μMの濃度で提供される。最も好ましくは、PQQは、前記触媒の最大活性を可能にする最少量で提供される。実際には、これはPQQの250nMから5μMの最終濃度の範囲内である。外部から提供されたPQQによる、酸化/脱水素能力を有する酵素の再構成を促進するため、マグネシウムまたはカルシウムイオンを添加してもよい。好ましくは、MgCl2またはCaCl2を約0.1mMから約50mM、特に約1mMから約20mMの濃度で、最も好ましくは約2mMから約20mMの濃度で添加する。場合により人工電子受容体を、本発明で述べるように等モル濃度で化合物(II)に添加する。好ましくは、この工程は、脱水素/酸化反応の間に形成された電子を自らの内因性呼吸鎖に受け取る微生物の能力を利用することによって実施される。化合物(II)は、アルドラーゼが触媒するアルドール縮合条件下でDERAアルドラーゼを含む前反応の混合物からまたは他の供給源(有機合成)から得られる部分的または完全に単離された化合物(II)として提供され得る。化合物(II)は、本発明で述べる任意の手段および速度によって約20mMから約1M、好ましくは約50mMから約700mMの濃度で添加され得、最も好ましい濃度は100mMから500mMである。化合物(II)の脱水素/酸化の工程の間に、微生物の生存能を支持するために付加的な栄養素を段階c)で述べたのと同様の方法で添加してもよい。実際には、場合により窒素源とは独立してまたは窒素源に加えて、本発明で述べるように前記反応混合物に付加的な炭素源を提供することが有益であり得る。この特定の態様において化合物(II)の脱水素/酸化を可能にする一般的な反応条件は、本発明によって提供される「アルドース脱水素/酸化条件」と定義される。
化合物(II)を得るためのオキシダーゼ/デヒドロゲナーゼについての基質としての化合物(II)は、1以上のバッチで反応混合物に添加し得る。1つの態様では、混合物に添加する基質の総量は、添加する化合物(II)の総量が反応混合物1リットルにつき約20mmolから反応混合物1リットルにつき約1.5mol、より詳細には反応混合物1リットルにつき約100mmolから反応混合物1リットルにつき約700mmolとなる量である。好ましい実施形態では、基質は、反応の任意の特定時点でプログラム可能なポンプを用いて特定の流量で反応混合物に連続的に添加する。最適には、流量は、基質が反応混合物中に蓄積していかない最大流量として決定される。特に、これは望ましくない生成物の濃度を最小にする。別の実施形態では、正しい添加方法を用いて基質の阻害作用をさらに最小限に抑えることができる。
2.DERAアルドラーゼおよび酸化/脱水素酵素を用いた逐次反応
本発明のこの態様はd1)で述べた変異体を提供するが、この場合化合物(II)は、当分野で公知の方法によりDERAアルドラーゼを化合物(X)およびアセトアルデヒドと反応させることによって得られる反応混合物の形態で、直接インサイチューで提供される。好ましくは、このアプローチは、ワンポット反応を実施することの利点を利用し、従って組み合わせた工程の簡単さに有意の影響を及ぼす。「アルドラーゼが触媒するアルドール縮合条件」に従って前段階でDERAアルドラーゼを含む全細胞触媒を使用することは好都合である。
3.2つの別々の触媒中でDERAアルドラーゼおよび酸化/脱水素酵素を使用する同時反応
両方の触媒を発酵工程によって同時にまたは独立して得(段階c)で述べたように)、次に触媒を、好ましくは触媒を得るために使用した同じ発酵槽に連結されたまたは発酵槽中に残された、適切な容器または反応器に移す。この工程の別であるが類似の態様では、両方の酵素活性が、好ましくは段階c)で述べたように得られる単一微生物中に存在する。特定の実施形態では、DERAアルドラーゼおよび酸化/脱水素能力を有する酵素を使用すること、従って化合物(I)を提供することを含む同時工程。より好ましくは、化合物(II)を得るためのDERAアルドラーゼについての基質としてのアセチルオキシアセトアルデヒド(CH3CO2CH2CHO)を、反応混合物に連続的に添加してもよく、またはアセチルオキシアセトアルデヒド(CH3CO2CH2CHO)を1以上のバッチで反応混合物に添加する。1つの態様では、混合物に添加する基質の総量は、添加するアセチルオキシアセトアルデヒド(CH3CO2CH2CHO)の総量が反応混合物1リットルにつき約20mmolから反応混合物1リットルにつき約1.5mol、より詳細には反応混合物1リットルにつき約100mmolから反応混合物1リットルにつき約700mmolとなる量である。アセトアルデヒドは幾つかの手段によって添加し得る。1つの態様では、アセトアルデヒドを1以上のバッチでまたは連続的に反応混合物に添加する。アセトアルデヒドをアセチルオキシアセトアルデヒド(CH3CO2CH2CHO)と予混合して、反応混合物に添加してもよい。反応混合物に添加するアセトアルデヒドの総量は、受容体基質、アセチルオキシアセトアルデヒド(CH3CO2CH2CHO)の総量に対して約0.1から約4モル当量、特に約1から約3モル当量、より好ましくは約2から約2.5モル当量である。特に、これは望ましくない生成物の濃度を最小にする。場合によりPQQを約0.05μMから約10mM、より好ましくは0.1μMから約100μMの濃度で反応混合物に添加する。外部から提供されたPQQによる、酸化/脱水素能力を有する酵素の再構成を促進するため、マグネシウムまたはカルシウムイオンを添加してもよい。好ましくは、MgCl2またはCaCl2を約0.1mMから約50mM、特に約1mMから約20mMの濃度で、最も好ましくは約2mMから約20mMの濃度で添加する。好ましい実施形態では、基質は、反応の任意の特定時点でプログラム可能なポンプを用いて特定の流量で反応混合物に連続的に添加する。流量は、基質が反応混合物中に蓄積していかない最大流量として決定される。特に、これは望ましくない生成物の濃度を最小にする。別の実施形態では、正しい添加方法を用いて基質の阻害作用をさらに最小限に抑えることができる。1つの態様では、デヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ触媒反応に使用する温度は約10℃から約70℃である。1つの実施形態では、デヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ反応に使用する温度は約20℃から約50℃である。1つの実施形態では、デヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ反応に使用する温度は約25℃から約40℃である。反応は数時間以内に完了まで進行するので、この反応は工業的に適切である。
本明細書で使用される「アルドース脱水素/酸化条件」という用語は、本明細書で述べるような、任意のデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ酵素によって触媒され得る、当分野で公知の任意の脱水素/酸化条件を指す。特にデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ条件は、所望生成物の形成および蓄積を可能にする条件である。これらの条件は、1つの態様では、デヒドロゲナーゼ/オキシダーゼが、脱水素/酸化を実施することができる十分な充填量で提供される活性な酵素であることを包含する。別の態様では、基質としての化合物(II)が、アルドラーゼの活性の最小阻害を示す量で反応混合物中に存在することである。好ましくは、温度、pH、溶媒組成物、撹拌および反応の長さが所望生成物の蓄積を可能にする、従って化合物(II)から対応する化合物(I)を形成することを可能にすることであり、別の態様では、前記条件が安定性に有害な作用を及ぼさないことである。具体的には、これらの条件は実施例で開示する値によって定義される。本明細書における使用のためのデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼは、化合物(II)に対してデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ活性を有する任意の酵素であり得る。好ましい実施形態では、デヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ酵素には、GDH 01、GDH 02、GDH 03、GDH 04、GDH 05、GDH 06、GDH 07、GDH 08、GDH 09、GDH 10、GDH 11、GDH 12、GDH 13、GDH 14、GDH 15、GDH 16、GDH 17、GDH 18、GDH 19、GDH 20、GDH 21、GDH 22、GDH 23、GDH 24およびGDH 25が含まれるが、これらに限定されず、各々の酵素は、上記配列表に示す対応するヌクレオチド配列またはそれぞれのコドン最適化ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列によって同定される。本明細書で述べるデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼ触媒は、本発明で提供される任意の生物学的に活性な形態で使用することができる。一般に、化合物(II)を得ることができる触媒は適切な容器または反応器中で提供され、化合物(II)はバッチ式でもしくは連続的に添加されるかまたは、少なくとも一部は、好ましくは「アルドラーゼが触媒するアルドール縮合条件」下に同じ容器中で、化合物(II)の同時生成によって提供される。
本明細書で使用される「アルドラーゼが触媒するアルドール縮合条件」という用語は、例えばWO2008/119810A2に記載されているように、任意のアルドラーゼによって触媒され得る当分野で公知の任意のアルドール縮合条件を指す。特にアルドラーゼが触媒するアルドール縮合条件は、所望生成物の形成および蓄積を可能にする条件、より好ましくは基質としての置換されたアセトアルデヒドR1CO2CH2CHO、より詳細にはアセチルオキシアセトアルデヒド(CH3CO2CH2CHO)およびアセトアルデヒドが、アルドラーゼの活性の最小阻害を示す量で反応混合物中に存在する条件であり、別の態様では、温度、pH、溶媒組成物、撹拌および反応の長さが所望生成物の蓄積を可能にする、従って対応するラクトール(化合物(II))を形成することを可能にする条件である。本明細書で述べるDERAアルドラーゼは、前記発明において提供される任意の生物学的に活性な形態で使用することができる。DERAアルドラーゼについての基質、式(X)の化合物は、対応する化合物(II)に応じて選択される。マスクされたアルデヒド基を有するこれらの生成物は、スタチン、特にアルデヒド基を有する生成物を生じる基質の調製においてさらなる段階を可能にする、WO2008/119810A2およびWO2009/092702A2における重要な中間体である。化合物(X)は、特にアセチルオキシアセトアルデヒド(CH3CO2CH2CHO)であり得る。
選択的段階e):化合物(I)の分離および/または精製
前記培地から主発酵工程で生成された化合物(I)の単離および/または精製をさらなる分離段階で実施し得る。
単離の第一段階では、反応混合物中に存在する全細胞触媒を任意の公知の種類のろ過/凝集/沈降/遠心分離手順によって除去し得るか、または全細胞を含有する反応混合物に関してさらなる単離段階を実施する。好ましくは、反応混合物から固体粒子を分離する段階を省き、以下でさらに述べるように反応の完了直後に直接抽出段階を実施することが本発明の目的である。
本発明の1つの実施形態では、化合物(I)の単離は、有意のレベルで化合物(I)に結合することができる吸着剤への吸着、および溶出条件後に、例えば培地をより非極性の化合物に置き換えた後に化合物(I)を放出することによって実施し得る。吸着剤は、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、Amberlite(商標)XAD(商標)吸着樹脂、Amberlite(商標)およびAmberlite(商標)FPイオン交換樹脂等から選択され得るが、これらに限定されない。
または、アセトニトリルまたはメタノールなどの水混和性溶媒を使用して、いわゆる「塩析」抽出手順において混合物に高濃度の塩、場合により塩化ナトリウムを添加して液−液抽出を実施し得る。この工程では相の分離が認められ、化合物(I)は溶媒リッチ相に選択的に分配される。
好ましい実施形態では、液/液抽出のための抽出溶媒は、多くの水不混和性または難混和性溶媒から選択される。溶媒は、塩化メチレン、ジエチルエーテル、酢酸プロピオニル、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、ニトロメタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、n−ブタノール、n−ペンタノール、ベンゼン、トルエン、o−、m−、p−キシレン、シクロヘキサン、石油エーテル、トリエチルアミンから選択され得るが、これらに限定されない。選択された有機溶媒での液/液抽出の前に、生成物の水溶液のpHを1から9の間、好ましくは2から8の間、より好ましくは2から5の間の値に調整し得る。加えて、好ましい実施形態では、水相のイオン強度を液/液抽出の前に無機/有機酸、塩または塩基のいずれかの添加によって増大させる。このような酸、塩または塩基の非限定的な例は、リン酸およびこの塩、硫酸およびこの塩、クエン酸およびこの塩、塩酸およびこの塩等である。水相のイオン強度の増大は、水相と有機相との間の化合物(II)の分配係数を上昇させ、従って抽出工程の有効性を高める。
抽出完了後の有機相中の残留水分の乾燥は、列挙される塩:硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム(一水和物)、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸銅を添加することによって実施され得るが、これに限定されない。
精製工程の最も好ましい実施形態では、反応混合物のpHを最初に約1から9、好ましくは約2から8の間、より好ましくは約3から6の値に修正する。最も好ましくは、リン酸、硫酸または塩酸等のような酸化合物を使用してpHを約5に修正する。硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩化ナトリウム等を50g/Lから300g/L、最も好ましくは100g/Lから200g/Lの濃度で添加する。酢酸エチルを、1容の反応混合物への少なくとも1容の酢酸エチルの添加によって少なくとも1回、好ましくは1容の反応混合物への1容の酢酸エチルの添加によって少なくとも3回、添加する。最も好ましくは、酢酸エチルを添加し、抽出物を分離する段階を、5%以下の化合物(I)が水相に存在するまで実施する。酢酸エチル画分を収集し、当分野で公知の乾燥塩のいずれか、好ましくはCaCl2もしくはMgSO4または当分野で公知の水除去の他の方法で乾燥させる。1つの態様では、得られた酢酸エチル抽出物を蒸発させて、室温で黄色からコハク色の形態の単離された化合物(I)を生成することができるかまたは医薬的に有用な化合物、好ましくはスタチンを生成するためにさらなる段階に進むことができる。
選択的段階f):さらなる処理
式(I)の化合物を得た後、式(I)の化合物をAPI、好ましくはスタチンを調製するのに十分な条件に供することにより、式(I)の化合物をAPI、好ましくはスタチンまたは医薬的として許容されるこの塩にさらに変換することができる。従って、1つの実施形態では、スタチンまたはこの塩、エステルもしくは立体異性体は、(i)上記で定義した式(II)の化合物を酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素と接触させて、上記で定義した式(I)の化合物を調製すること、(ii)前記化合物(I)を、スタチンを調製するのに十分な条件に供すること、および(iii)場合により生成物を塩化する、エステル化するまたは立体選択的に分解することによって調製される。再び、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(DERA、EC 4.1.2.4)酵素を使用することによって式(II)の化合物を調製することができる。反応の設定は、両方の酵素を実質的に同時にまたは続いて、一度にまたは連続的に、1バッチでまたは断続的なバッチで導入するように設計することができる。好ましくは、式(II)および(I)の化合物は、少なくとも部分的に同時に、より好ましくは実質的に同時に調製される。式(I)および/または(II)の化合物を調製するために酵素を使用することは好都合であり、というのは、酵素の場合は、生成物が直ちに置換基の正しい空間的配向を含み、さらなる精製または分離を必要としないからである。他の立体異性体が必要である場合は、工程を当業者に公知の立体特異的化学の方法と組み合わせることができる。好ましい実施形態では、調製されるスタチンは、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、ベルバスタチンまたはダルバスタチンであり、より好ましくはアトルバスタチン、ロスバスタチンまたはピタバスタチン、特にロスバスタチンである。
本明細書で使用される「API、好ましくはスタチンを生成するのに十分な条件」という用語は、式(I)の化合物をさらにAPI、好ましくはスタチンに変換するための本明細書で述べる手段を含む、当分野で記述されている手段を指す。特定の実施形態では、スタチンを調製する場合、当業者は、適切なR1およびR2、またはRを選択することによって化学的経路を選択する。R1、R2およびRがスタチン骨格を示すように選択される場合、式(I)の化合物は既にスタチン分子であるかまたはこれの「進んだ」中間体である。これにもかかわらず、例えばラクトン環を開くこと、塩もしくはエステルを形成することまたは立体異性体の混合物から所望の立体異性体を分割することなどによってスタチンを改変することも可能である。選択的に、スタチンを、最初にラクトンを提供し、次にこれをスタチン骨格に結合することによって調製しようとする場合、反応スキーム2に従うことができる。式(I)の化合物を得た後、これの4位のヒドロキシル基を保護基P(式(XI))で保護することができ、保護基Pは任意の慣例的に使用される保護基であり得、特にシリル保護基である。その後、化合物をアルデヒドまたはこれの水和物(それぞれ式(XII)および(XIII))の形態にすることができる。
Iから得た式(XII)の化合物またはこの水和物(XIII)をさらに使用して、式(XII)の化合物またはこの水和物(XIII)をウィッティヒカップリングの条件下で複素環式または脂環式誘導体(スタチン骨格)と反応させ、次いで必要な場合は水素化することによってスタチンを調製することができる。ロスバスタチンを調製することに関連する特定の実施形態では、その後の反応段階で、(2S,4R)−4−(P−オキシ)−6−オキソ−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−カルボアルデヒド(XII)をウィッティヒカップリングの条件下で(塩基の存在下に)((4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル)メチル)トリフェニル−ホスホニウムハライドもしくは任意の他の((4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−5−イル)メチル)ホスホニウム塩またはジ−i−プロピル({4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]−5−ピリミジニル}メチルホスホナートもしくは任意の他の({4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]−5−ピリミジニル}メチルホスホナートエステルと反応させて、N−(5−((E)−2−((2S,4R)−4−(P−オキシ)−6−オキソ−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)ビニル)−4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピルピリミジン−2−イル)−N−メチルメタンスルホンアミドを得ることができる。塩基として、リチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラザン(KHMDS)、ナトリウムヘキサメチルジシラザン(NaHMDS)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、水素化ナトリウム、ブチルリチウムまたはグリニャール試薬、好ましくはナトリウムヘキサメチルジシラザンを使用し得る。供給源が水和物形態XIIIであるかまたはXIIとこの水和物形態XIIIとの混合物である場合、これは、THF、Et
2O、i−Pr
2O、
tBuMeOから選択されるエーテル;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタンから選択される炭化水素;トルエンもしくはこの塩素化誘導体から選択される芳香族炭化水素;クロロホルムおよびジクロロメタンから選択される塩素化炭化水素、またはこれらの溶媒の混合物に溶解するので、形成されるイリド溶液への添加の前に水和物から放出される水を除去すべきである。反応のための好ましい溶媒は、無水トルエンおよびジクロロメタンである。反応は、−80℃から90℃、好ましくは0℃から90℃、より好ましくは80℃から90℃の温度で実施できる。反応は1から12時間で完了する。抽出による粗生成物の単離は、AcOEt、エーテルまたはアルカン、好ましくは
tBuMeOで実施できる。保護基は除去してもよく、ラクトンを開環してロスバスタチン遊離酸またはこの塩、場合によりアミンを生成し、これをヘミカルシウム塩に変換してもよい。脱保護は、0℃から80℃の温度、好ましくは20または40℃で、適切な溶媒中、好ましくはアルコール、酢酸、THF、アセトニトリル、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、CH
2Cl
2から選択される溶媒中、より好ましくはアルコールおよびTHF/AcOHの混合物中で実施することができる。通常の脱保護試薬、例えばテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド、アンモニウムフルオリド、AcCl、FeCl
3、TMSCl/HF・2H
2O、クロロエチルクロロホルマート(CEC)、Ph
3PCH
2COMeBrを使用し得る。ラクトンの開環は、THF/H
2Oの4:1から2:1混合物中ならびに純粋なTHF中、20℃から60℃の温度で、適切なアルカリ、例えばNaOH、KOH、アンモニアまたはアミンを用いて起こる。加水分解は30分(60℃)から2時間(20℃)で達成される。加水分解段階後、THFの蒸発を減圧下に10℃から50℃の温度で実施することができ、好ましくはCa(OAc)
2.×H
2Oの添加(一度にまたは5から60分間滴下して添加することができる。)による、カルシウム塩への変換は、0℃から40℃の温度で実施できる。Ca(OAc)
2.×H
2Oの添加後、生じた懸濁液を0℃から40℃の温度で30分から2時間撹拌することができる。このような反応の詳細は、WO2008/119810を含むがこれに限定されない、当分野において公知である。
前記実施形態のいずれかによって得られるAPI、好ましくはスタチンは、医薬製剤に製剤化することができる。API、好ましくはスタチンで医薬製剤を調製するための方法は当業者に公知である。一般に、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル、坐剤、溶液、軟膏、懸濁液、泡、パッチ、輸液、注射用溶液等のような製剤を調製することから選択できる。製剤は、例えば放出、安定性、効果または安定性のようなAPIの特定の態様を改変するために変化させることができる。APIに依存して、当業者は前記APIのための適切な投与経路をどのようにして選択するかを理解する。これに基づき、当業者は適切な製剤を選択することができる。次に、当業者は、医薬製剤を製剤化するために必要な賦形剤を選択することができる。API(場合により少なくとも1つの別のAPIと組み合わせることができる。)に加えて、当業者は、医薬製剤を製剤化するための賦形剤および添加剤を選択することができる。適切な賦形剤は、例えば結合剤、希釈剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、流動促進剤、溶媒、pH調整剤、イオン強度調整剤、界面活性剤、緩衝剤、抗酸化剤、着色剤、安定剤、可塑剤、乳化剤、防腐剤、粘度調整剤、緩和剤、着香剤であり得るが、これらに限定されず、これらは単独でまたは組み合わせて使用することができる。方法は、選択される製剤に依存して、混合、粉砕、湿式造粒、乾式造粒、成形、溶解、凍結乾燥、カプセルへの充填を含み得るが、これらに限定されない。
APIおよびこの中間体への適用
本発明のさらなる態様では、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素は、一般に、本明細書で開示される酵素系と適合性であるAPIまたはこの中間体を調製するために使用することができる。
本発明のこの態様は、好ましくは、可能な基質としての置換または非置換ジデオキシアルドース糖、ラクトール(場合により複数のヒドロキシル基を含む。)および合成非天然アルコール、ならびに可能な生成物としての(場合によりさらにヒドロキシル化された)ラクトンまたはエステルとしてそれぞれ分類可能な合成APIまたはこの中間体に関する。本発明の開示およびこの技術的特徴から、天然に生じるまたは糖の生化学的経路(例えば解糖、ペントースリン酸経路、グリコーゲン新生)、脂肪酸もしくは細胞呼吸鎖の生化学的経路において生じる化合物は、本発明による酸化もしくは脱水素反応を触媒することができる酵素またはAPIもしくはこの中間体についての基質とみなされることから免除されることが理解される。同じように、天然のアミノ酸、ビタミンまたは補因子も、本発明によるAPIまたはこの中間体の定義から免除される。自然界におけるこのような経路の基質または生成物には、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メタン酸、酢酸、単糖、二糖、三糖、グルクロン酸、特にメタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メタン酸、酢酸、単糖、グルクロン酸、中でもエタノール、酢酸および単糖が含まれる。好ましい実施形態では、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素は、式(I)の化合物を調製するために使用され、式(I)は上記で定義されたとおりである。この態様では、式(II)の化合物に作用する酵素を使用することが最も効率的であり、式(II)は上記で定義されたとおりである。使用の特定の選択肢は、上記で開示された本発明の他の実施形態、態様または好ましい特徴を考慮した場合、当業者に直ちに明らかである。
説明に役立つさらなる例を提供するため、適切なAPIまたはこの中間体の調製のために有用な基質、従って出発化合物の可能で有用なさらなる定義を以下の式XIVによって与え、ゆえに式XVによって定義される対応する生成物化合物をもたらす:
[式中、Qは、例えば上記で定義されたR
1、R
2およびR
5の群から選択される、任意の所望構造部分であり、場合によりR
1、R
2またはR
5とラクトール/ラクトン環との間に中間リンカー分子を有する。]。構造式に示すように、酸化されていない非ラクトールヒドロキシル基は、ラクトール/ラクトン環の任意の位置に存在し得る。
好ましい実施形態では、酸化または脱水素反応を触媒することができる酵素は、DERA酵素と同時にまたはこれに続いてAPIまたはこの中間体を調製するために使用される。
以下の実施例は単に本発明の説明に役立つ例にすぎず、これらの実施例およびこれらの他の等価物が本開示および付属の特許請求の範囲を考慮して当業者に明らかになるので、これらはいかなる意味においても本発明の範囲を限定するとみなされるべきではない。
[実施例1]
全細胞中に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼの調製
幾つかのアルドースデヒドロゲナーゼを以下の実施例で述べるように調製した:
最初に、gcd遺伝子(E.コリ(E.coli)GeneBank No.JW0120、遺伝子座タグb0124)によってコードされる、膜結合型グルコースデヒドロゲナーゼ、ピロロキノンキノン(PQQ)依存性デヒドロゲナーゼを調製した。
E.コリ(E.coli)DH5αからのゲノムDNAを、Wizard Genomic DNA Purification Kit(Promega,Madison,WI,USA)を製造者の指示に従って使用して単離した。ゲノムDNAの単離は、LB培地にて37℃で増殖させたE.コリ(E.coli)の一晩培養物を使用して行った。遺伝子gcdの増幅を、オリゴヌクレオチドプライマーGCGCCATATGGCAATTAACAATACAGGCTCGCGおよびGCGCGCTCAGCGCAAGTCTTACTTCACATCATCCGGCAGを使用してPCRによって実施した。増幅は、Pfx50 DNAポリメラーゼ(Invitrogen,Calsbad,CA,USA)によって以下のように実施した:94℃、10分間の初期変性、次いで94℃、45秒、52℃、45秒および68℃、150秒の30サイクル。最終伸長は68℃で420秒間実施した。gcdを含む2.4kbのDNAフラグメント(配列番号:03)をアガロースゲル電気泳動によって分離し、精製した。生成物をT4リガーゼ反応においてプラスミドpGEM T−Easy(Promega,Madison,WI,USA)に連結した。プラスミド構築物を制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびBlpIで切断し、生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離して、gcdを含む2.4kbフラグメントを精製した。発現ベクターpET30a(+)(Novagen Inc.,Madison,WI,USA)を、同じ前記制限エンドヌクレアーゼを用いて切断し、精製した。gcd遺伝子を含む2.4kbフラグメントを、T4リガーゼ反応において切断した発現ベクターと連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を得られた連結反応物で形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養した。その後プラスミドDNAを単離した。生じた構築物をpET30/Gcdと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。細胞膜への組み込みのために必要なシグナルを含む配列(配列番号:04)を有するタンパク質の発現を可能にするため、クローニング手順を実施した。膜結合型グルコースデヒドロゲナーゼを発現する生物を、BL21(DE3)コンピテント細胞を前記プラスミドで形質転換することによって作製した。
第二に、遺伝子yliI(E.コリ(E.coli)GeneBank No.ECK0827、遺伝子座タグb0837)によってコードされる、水溶性アルドースデヒドロゲナーゼ、ピロロキノリンキノン(PQQ)依存性デヒドロゲナーゼを調製した。
E.コリ(E.coli)DH5αからのゲノムDNAを、Wizard Genomic DNA Purification Kit(Promega,Madison, WI,USA)を製造者の指示に従って使用して単離した。ゲノムDNAの単離は、LB培地にて37℃で増殖させたE.コリ(E.coli)の一晩培養物を使用して行った。遺伝子yliIの増幅を、オリゴヌクレオチドプライマーGCGCCATATGCATCGACAATCCTTTおよびGCGCGCTCAGGCTAATTGCGTGGGCTAACTTTAAGを使用してPCRによって実施した。増幅は、Pfx50 DNAポリメラーゼ(Invitrogen,Calsbad,CA,USA)によって以下のように実施した:94℃、10分間の初期変性、次いで94℃、45秒、52℃、45秒および68℃、150秒の30サイクル。最終伸長は68℃で420秒間実施した。yliIを含む1.2kbのDNAフラグメント(配列番号:01)をアガロースゲル電気泳動によって分離し、精製した。生成物をT4リガーゼ反応においてプラスミドpGEM T−Easy(Promega,Madison,WI,USA)に連結した。プラスミド構築物を制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびSalIで切断し、生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離して、yliIを含む1.2kbフラグメントを精製した。発現ベクターpET30a(+)(Novagen Inc.,Madison,WI,USA)を、同じ前記制限エンドヌクレアーゼを用いて切断し、精製した。yliI遺伝子を含む1.2kbフラグメントを、T4リガーゼ反応において切断した発現ベクターと連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を得られた連結反応物で形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養した。その後プラスミドDNAを単離した。生じた構築物をpET30/YliIと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。ペリプラズムへのYliI転移のためのリーダー配列を含む配列(配列番号:02)を有するタンパク質の発現を可能にするため、クローニング手順を実施した。アルドースデヒドロゲナーゼを発現する生物を、BL21(DE3)コンピテント細胞を前記プラスミドで形質転換することによって作製した。
アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)において認められる、別の水溶性アルドースデヒドロゲナーゼを選択的な酸化試験のために使用した。遺伝子およびペリプラズムへの転移のためのリーダー配列をコードするヌクレオチド配列(PQQ GdhB、A.カルコアセチカス(A.calcoaceticus)GeneBank No.X15871)をE.コリ(E.coli)における発現のために最適化し、DNAを化学合成した(Geneart,Regensburg,Germany)(配列番号:05)。E.コリ(E.coli)JM109細胞を、ヌクレオチド配列gdhBを担持する人工プラスミドで形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養した。その後プラスミドDNAを単離し、構築物を制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびHindIIIで切断して、生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離し、1.5kbフラグメントを精製した(配列番号:05)。発現ベクターpET30a(+)(Novagen Inc.,Madison,WI,USA)を、同じ前記制限エンドヌクレアーゼを用いて切断し、精製した。gdhB遺伝子を含む1.5kbフラグメントを、T4リガーゼ反応において切断した発現ベクターに連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を得られた連結反応物で形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養した。その後プラスミドDNAを単離した。生じた構築物をpET30/GdhBと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。配列番号:06の配列を有するタンパク質の発現を可能にする標的に関してクローニング手順を実施した。A.カルコアセチカス(A.calcoaceticus)からのアルドースデヒドロゲナーゼを発現する生物を、BL21(DE3)コンピテント細胞を前記プラスミドで形質転換することによって作製した。
変化した配列を有する、従って熱安定性特性が増大している、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)(PQQ GdhB、A.カルコアセチカス(A.calcoaceticus)GeneBank No.X15871)において認められるさらに別の水溶性アルドースデヒドロゲナーゼを使用した[Igarashi,2003]。遺伝子およびペリプラズムへの輸送のためのリーダー配列をコードするヌクレオチド配列(PQQ GdhB、A.カルコアセチカス(A.calcoaceticus)GeneBank No.X15871)をE.コリ(E.coli)における発現のために最適化し、DNAを化学合成した(Geneart,Regensburg,Germany)(配列番号:07)。E.コリ(E.coli)JM109細胞を、ヌクレオチド配列gdhB_thermを担持する人工プラスミドで形質転換し、アンピシリン耐性コロニーを培養した。その後プラスミドDNAを単離し、構築物を制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびHindIIIで切断して、生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離し、1.5kbフラグメントを精製した(配列番号:07)。発現ベクターpET30a(+)(Novagen Inc.,Madison,WI,USA)を、同じ前記制限エンドヌクレアーゼを用いて切断し、精製した。gdhB_therm遺伝子を含む1.5kbフラグメントを、T4リガーゼ反応において切断した発現ベクターに連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を、得られた連結反応物で形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養した。その後プラスミドDNAを単離した。生じた構築物をpET30/GdhB_thermと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。選択的なアルドースデヒドロゲナーゼ発現生物を、BL21(DE3)コンピテント細胞を前記プラスミドで形質転換することによって作製した。配列番号:08の配列を有するタンパク質の発現を可能にする標的に関してクローニング手順を実施した。配列番号:06と比較した配列番号:08は、231位のSer残基をコードする配列がLys残基に変化した配列を有する。
明記される場合は、発現プラスミドベクターpET30a(+)(Novagen Inc.,Madison,WI,USA)を有するE.コリ(E.coli)BL21(DE3)を陰性対照として使用した。対照細胞は、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)コンピテント細胞を前記プラスミドで形質転換することによって作製し、カナマイシン耐性コロニーを培養した。
E.コリ(E.coli)において様々な酵素を発現する手順を、手順1Aで述べるように実施した。発現後、細胞を採取し、手順1Bで述べるように全細胞触媒を得た。休止全細胞触媒を得るため、手順1Cを実施した。
手順1A:
カナマイシン(25μg/mL)を添加したVD培地(30mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHでpH=7.0に調整した。)に、新たに画線培養したVD寒天プレートからの単一コロニー、E.コリ(E.coli)BL21 DE(3)pET30/GcdまたはE.コリ(E.coli)BL21 DE(3)pET30/YliIまたはBL21 DE(3)pET30/GdhBまたはBL21 DE(3)pET30/GdhB_thermを接種し、対数増殖期後期まで前培養した(37℃、250rpm、8時間)。前培養細胞(接種物サイズ10%、v/v)を、次に、カナマイシン(25μg/mL)を添加した新鮮VD培地(100mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHでpH=7.0に調整した。)に移した。タンパク質発現の誘導のため、0.1mMイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG、Sigma Aldrich,Germanyにより購入)を添加した。細胞を回転振とう機において25℃、250rpmで16時間培養した。
手順1B:
発現後(手順1Aで述べたように)、細胞を遠心分離(10000g、5分間、4℃)によって採取した。遠心分離後に上清を廃棄し、ペレットを新鮮VD培地(10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHでpH=6.0に調整した。)に再懸濁した。細胞を初期培養容量の10分の1で再懸濁した。
手順1C:
上清を廃棄した後(手順1Aに関して)、ペレットをリン酸緩衝液(50mM KH2PO4、150mM NaCl、pH6.0)に再懸濁した。細胞を初期培養容量の10分の1で再懸濁した。
[実施例2]
無細胞溶解物に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼの調製
E.コリ(E.coli)YliI、E.コリ(E.coli)GdhB、E.コリ(E.coli)GcdまたはE.コリ(E.coli)GdhB_thermの発現後に(実施例1で述べたように、より詳細には手順1Aを実施した後に)無細胞溶解物を得るため、細胞を遠心分離(10000g、5分間、4℃)によって採取した。遠心分離後に上清を廃棄し、ペレットを初期容量の10分の1でリン酸緩衝液(50mM KH2PO4、150mM NaCl、pH7.0)に再懸濁した。細胞に1mg/mLリゾチーム溶液を添加した。37℃で1時間溶解を実施した。溶解後、細胞デブリを沈降(10分間、20000g、4℃)によって除去し、透明な水溶液を得た。このようにして無細胞抽出物に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼを得た。
または、溶解緩衝液(50mM NaH2PO4、pH7.0、300mM NaCl、2mM DTT)1Lにつきペレット200gを使用して、ペレットを前記緩衝液に再懸濁した。Bransonデジタルソニファイアーを用いて細胞を超音波処理し(3×15秒)、細胞デブリを沈降(10分間、20000g、4℃)によって除去して、透明な水溶液を得た。このようにして無細胞抽出物に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼを得た。
上記と同じ方法で、無細胞溶解物を全細胞クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)およびグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)から調製した(全細胞触媒の培養および調製は、それぞれ実施例9および実施例10で述べる。)。
陰性対照として使用した、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30の培養物を同じ手順によって処理した。
[実施例3]
アルドースデヒドロゲナーゼを含むペリプラズム細胞画分の調製
E.コリ(E.coli)YliI、E.コリ(E.coli)Gcd、E.コリ(E.coli)GdhBまたはE.コリ(E.coli)GdhB_thermの発現後に(実施例1で述べたように、より詳細には手順1Aを実施した後に)ペリプラズムタンパク質の特異的放出を得るため、以下の手順を用いた。新鮮発現された培養物からの細胞を遠心分離によってペレット化し、増殖培地を完全に除去した。細胞ペレットを20mM Tris−HCl(pH7.5)で3回洗浄した。次に細胞ペレットを遠心分離(10000g、5分間、4℃)した後、初期培養容量の10分の1の、20mM Tris HCl(pH7.5)、20%スクロースおよび0.5mM EDTAを含む高張液に再懸濁した。遠心分離後(10分間、12000g、4℃)、細胞ペレットを、高張液(50mM Tris−HCl、pH7.0)と同じ容量で、ピペットで分注することによって高張液に静かに再懸濁した。細胞を氷上でさらに10分間インキュベートした。細胞を遠心分離(10分間、20000g、4℃)によってペレット化し、上清を取り出して、ペリプラズム画分とみなした。
陰性対照として使用した、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30の培養物を同じ手順によって処理した。
[実施例4]
アルドースデヒドロゲナーゼを含む膜細胞画分の調製
E.コリ(E.coli)Gcdの発現後に(実施例1で述べたように、より詳細には手順1Aを実施した後に)膜結合タンパク質の特異的放出を得るため、以下の手順を用いた。新鮮発現された培養物からの細胞を遠心分離によってペレット化し、増殖培地を完全に除去した。細胞ペレットを、0.05%(v/v)Triton X−100および1mg/mLリゾチームを含むリン酸緩衝液(50mM KH2PO4、150mM NaCl、pH6.0)に初期容量まで再懸濁し、37℃で30分間インキュベートした。細胞デブリを遠心分離(30分間、20000g、4℃)によって除去し、上清を分離して、膜画分と表示した。
陰性対照として使用した、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30の培養物を同じ手順によって処理した。
[実施例5]
全細胞に含まれるデオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ酵素(DERA)の調製
全細胞触媒に含まれるアルドラーゼ遺伝子deoC(E.コリ(E.coli)GeneBank No.EG10221、遺伝子座タグb4381)は、多くの手順によって、例えばWO2009/092702に記載されているように得ることができる。これにもかかわらず、本発明者らは、全細胞に含まれるアルドラーゼ酵素(DERA)の調製の非限定的な例を提供する。
E.コリ(E.coli)DH5αからのゲノムDNAを、Wizard Genomic DNA Purification Kit(Promega,Madison,WI,USA)を製造者の指示に従って使用して単離した。ゲノムDNAの単離は、LB培地にて37℃で増殖させたE.コリ(E.coli)の一晩培養物を使用して行った。遺伝子deoCの増幅を、オリゴヌクレオチドプライマーCCGGCATATGACTGATCTGAAAGCAAGCAGおよびCCGCTCAGCTCATTAGTAGCTGCTGGCGCTCを使用してPCRによって実施した。増幅は、Pfx50 DNAポリメラーゼ(Invitrogen,Calsbad,CA,USA)によって以下のように実施した:95℃、10分間の初期変性、次いで94℃、45秒、60℃、45秒および68℃、60秒の30サイクル。最終伸長は68℃で420秒間実施した。生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって分離し、精製した。deoCを含む0.9kbのDNAフラグメント(配列番号:09)をアガロースゲル電気泳動によって分離し、精製した。生成物をT4リガーゼ反応においてプラスミドpGEM T−Easy(Promega,Madison,WI,USA)に連結した。このようにして得たプラスミド構築物を制限エンドヌクレアーゼNdeIおよびBlpIで切断し、生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離して、deoCを含む0.9kbフラグメントを精製した。発現ベクターpET30a(+)(Novagen Inc.,Madison,WI,USA)を、同じ前記制限エンドヌクレアーゼを用いて切断し、精製した。deoC遺伝子を含む0.9kbフラグメントを、T4リガーゼ反応において切断した発現ベクターと連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を得られた連結反応物で形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養した。その後プラスミドDNAを単離した。生じた構築物をpET30/DeoCと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。配列番号:10の配列を有するタンパク質の発現を可能にする標的に関してクローニング手順を実施した。DERAアルドラーゼを発現する生物を、BL21(DE3)コンピテント細胞を前記プラスミドで形質転換することによって作製した。
deoCの発現:カナマイシン(25μg/mL)を添加したVD培地(50mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pH=7.0)に、新たに画線培養したプレートからの単一コロニー、E.コリ(E.coli)BL21 DE(3)pET30/DeoCを接種し、一晩培養した(37℃、250rpm)。
E.コリ(E.coli)DeoCの発現の手順は、手順1Aで述べたとおりに実施したが、唯一の相違はIPTG誘導物質の濃度が0.5mMであった点である。発現後、細胞を採取し、全細胞触媒を手順1Bで述べたように得て、生存全細胞触媒を入手した。休止全細胞触媒を得るため、手順1Cを実施した。
[実施例6]
単一微生物の全細胞培養物に含まれるアルドラーゼ酵素(DERA)およびキノプロテイングルコースデヒドロゲナーゼの調製
アルドラーゼ活性(DERA)およびグルコースデヒドロゲナーゼ活性の両方を有する遺伝的に改変された生物の2つの例を構築した。
1番目の場合は、付加的なリボソーム結合部位(RBS)を有する遺伝子yliIを構築物pEt/DeoCに付加した。生じた構築物は、単一オペロンに組織化された、IPTG誘導的プロモーターの転写制御下にある2つの異なるコード配列(一方はDERAをコードし、他方はYliIをコードする。)を担持する。
具体的には、E.コリ(E.coli)JM109 pET30/YliIからのプラスミドDNA(構築は実施例1に述べられている。)を、Wizard Plus SV Minipreps DNA Purification Kit(Promega,Madison,WI,USA)を製造者の指示に従って使用して単離した。プラスミドDNAの単離は、LB培地にて37℃で増殖させたE.コリ(E.coli)の一晩培養物を使用して行った。
単離したプラスミドpET30/YliIをPCR反応における鋳型として使用して、遺伝子yliIおよびコード領域の上流の発現ベクターpET30a(+)に由来するRBSを含む配列を増幅した。PCR反応を、オリゴヌクレオチドプライマーGCAGGCTGAGCTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATGおよびGCGCGCTCAGCCTAATTGCGTGGGCTAACTTTAAGを使用して実施した。このフラグメントの増幅を、Pfu ULTRA II Fusion HS DNA 200ポリメラーゼ(Agilent,Santa Clara,CA,USA)を使用してPCRによって以下のように実施した:98℃、3分間の初期変性、次いで98℃、20秒、55℃、20秒および72℃、90秒の30サイクル。最終伸長は72℃で180秒間実施した。生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって分離し、yliIおよびRBS部位を含む1.2kbフラグメントを精製した。生成物をプラスミドpGEM T−Easy(Promega,Madison,WI,USA)に導入し、pGEM/RBS_yliIと称した。構築物を制限エンドヌクレアーゼBlpIで切断し、次に生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離して、yliIおよびRBS部位を含む1.2kbフラグメントを精製した。構築物pET30a/DeoC(構築は実施例5に述べられている。)を、前記制限エンドヌクレアーゼ(BlpI)を使用して切断し、精製した。エビアルカリホスファターゼ(SAP、Promega,Madison,WI,USAにより購入)を製造者の指示に従って使用して、切断したpET30a/DeoCの5’リン酸化末端を脱リン酸化した。このようにしてpET30a/DeoCの自己連結を防止した。フラグメントをT4リガーゼ反応において連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を得られた連結反応物で形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養して、プラスミドDNAを単離した。生じた構築物をpET30/DeoC_RBS_YliIと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。DERAアルドラーゼおよびキノプロテイングルコースデヒドロゲナーゼを発現する生物を、BL21(DE3)コンピテント細胞を前述したプラスミドで形質転換することによって作製した。
2番目の場合は、付加的なリボソーム結合部位(RBS)だけでなく付加的なT7プロモーター配列も有する遺伝子gcdを構築物pEt/DeoCに付加した。生じたベクターは、IPTG誘導的プロモーターの転写制御下にある2つの異なるコード配列(一方はDERAをコードし、他方はGcdをコードする。)を担持する。
具体的には、E.コリ(E.coli)JM109 pET30/GcdからのプラスミドDNA(構築は実施例1に述べられている。)を、Wizard Plus SV Minipreps DNA Purification Kit(Promega,Madison,WI,USA)を製造者の指示に従って使用して単離した。プラスミドDNAの単離は、LB培地にて37℃で増殖させたE.コリ(E.coli)の一晩培養物を使用して行った。
単離したプラスミドDNAをPCR反応における鋳型として使用して、遺伝子gcdおよびコード領域の上流の発現ベクターpET30a(+)に由来するRBS配列を含む配列を増幅した。PCR反応を、オリゴヌクレオチドプライマーGCTGGCTCAGCCTCGATCCCGCGAAATTAATAおよびGCGCGCTCAGCGCAAGTCTTACTTCACATCATCCGGCAGを使用して実施した。このフラグメントの増幅を、Pfu ULTRA II Fusion HS DNA 200ポリメラーゼ(Agilent,Santa Clara,CA,USA)を使用してPCRによって以下のように実施した:98℃、3分間の初期変性、次いで98℃、20秒、55℃、20秒および72℃、90秒の30サイクル。最終伸長は72℃で180秒間実施した。生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって分離し、gcdおよびRBS部位を含む1.2kbフラグメントを精製した。生成物をプラスミドpGEM T−Easy(Promega,Madison,WI,USA)に導入し、pGEM/T7p_RBS_gcdと称した。構築物を制限エンドヌクレアーゼBlpIで切断し、次に生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離して、gcd、RBSおよびT7プロモーター配列部位を含む2.4kbフラグメントを精製した。
構築物pET30a/DeoC(構築は実施例5に述べられている。)を、同じ前記制限エンドヌクレアーゼ(BlpI)を使用して切断し、精製した。エビアルカリホスファターゼ(SAP、Promega,Madison,WI,USAにより購入)を製造者の指示に従って使用して、切断したpET30a/DeoCの5’リン酸化末端を脱リン酸化した。このようにしてpET30a/DeoCの自己連結を防止した。フラグメントをT4リガーゼ反応において連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を得られた連結反応物で形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養して、プラスミドDNAを単離した。生じた構築物をpET30/DeoC_T7p_RBS_Gcdと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。DERAアルドラーゼおよびキノプロテイングルコースデヒドロゲナーゼを発現する生物を、BL21(DE3)コンピテント細胞を前述したプラスミドで形質転換することによって作製した。
特に明記されない限り、上記手順によって得られた株によってコードされる酵素の発現は、手順1Aで述べたように実施した。
[実施例7]
ピロロキノンキノン(PQQ)を合成することができるE.コリ(E.coli)の調製
ピロロキノリンキノン(PQQ)生合成に関与する、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)(ATCC 621H)遺伝子クラスターpqqABCDE(pqqA、pqqB、pqqC、pqqD、pqqE、GeneBank No.CP000009、ゲノム内のおよその位置1080978…1084164)をE.コリ(E.coli)において発現させた。
グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)(ATCC 621H)からのゲノムDNAを、Wizard Genomic DNA Purification Kit(Promega,Madison,WI,USA)を製造者の指示に従って使用して単離した。ゲノムDNAの単離は、マンニトール培地(10g/Lバクトイーストエクストラクト、3g/Lペプトン、5g/Lマンニトール、pH7.0)にて26℃で48時間増殖させたG.オキシダンス(G.oxydans)の培養物を使用して行った。前記単離ゲノムを遺伝子クラスターpqqABCDEおよびこれ自体のプロモーターの増幅のための鋳型として使用した。増幅は、オリゴヌクレオチドプライマーGCGCGGTACCGCACATGTCGCGGATGTTCAGGTGTTC(配列番号:80)およびGCGCGGATCCGGGCGGAGAGTTTGGAGAACCTCTTCA(配列番号:81)を使用し、Pfu ULTRA II Fusion HS DNA 200ポリメラーゼ(Agilent,Santa Clara,CA,USA)を用いてPCRによって以下のように実施した:95℃、2分間の初期変性、次いで95℃、20秒、65℃、20秒および72℃、120秒の30サイクル。最終伸長は72℃で180秒間実施した。pqqABCDEオペロンおよびこの上流および下流配列を担持するG.オキシダンス(G.oxydans)の3.4kb DNAフラグメントをアガロースゲル電気泳動によって分離し、精製した。3.4kbの生成物(配列番号:11)をプラスミドpGEM T−Easy(Promega,Madison,WI,USA)に連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を得られた連結反応物で形質転換し、アンピシリン耐性コロニーを培養して、プラスミドDNAを単離した。生じたプラスミド構築物をpGEMpqqA−Eと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。天然プロモーターの制御下での遺伝子の発現、従ってG.オキシダンス(G.oxydans)由来のタンパク質PqqA、PqqB、PqqC、PqqDおよびPqqE(それぞれ配列番号:12、13、14、15、16)の生産を可能にする標的に関してクローニング手順を実施した。
E.コリ(E.coli)におけるPQQの合成(手順7A):アンピシリン(100μg/mL)を添加したLB培地(30mL;20g/LバクトLBブロス)に、新たに画線培養したプレートからの単一コロニー、E.コリ(E.coli)JM109 pGEM/pqqA−Eを接種し、対数増殖期後期まで前培養した(37℃、250rpm、8時間)。前培養細胞を遠心分離(10000g、10分間)によってペレット化し、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で3回洗浄した。前培養細胞を、元の前培養物と同じ容量で同じ前記緩衝液に再懸濁した。次に懸濁液(接種物サイズ5%、v/v)をグルコース最少培地(100mL;5g/L D−グルコース、2g/Lクエン酸ナトリウム、10g/L K2HPO4、3.5g/L(NH4)2SO4、pH7.0)に移した。培養物を37℃、250rpmで48時間増殖させた。細胞培養物に1mg/mLリゾチーム溶液を添加した。溶解を37℃で1時間実施した。溶解後、細胞デブリを沈降(10分間、20000g、4℃)によって除去し、透明な水溶液を得た。このようにして無細胞抽出物に含まれるPQQを得た。
E.コリ(E.coli)におけるPQQ産生を確認するための方法は実施例13で述べる。
[実施例8]
ピロロキノリンキノン(PQQ)を合成することができる単一微生物の全細胞培養物に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼ酵素の調製
遺伝子yliIおよび遺伝子クラスターpqqA−Eを担持する発現プラスミドを構築した。
構築物pET30/YliI(調製は実施例1に述べられている。)を制限エンドヌクレアーゼSphIで消化した。エビアルカリホスファターゼ(SAP、Promega,Madison,WI,USAにより購入)を製造者の指示に従って使用して、切断したpET30a/YliIの5’リン酸化末端を脱リン酸化した。このようにしてpET30a/YliIの自己連結を防止した。二重の制限認識部位SphIおよび制限エンドヌクレアーゼBamHI、KpnIおよびHindIIIについての認識部位を含む二本鎖リンカーGCGCAAGCATGCGGATCCGGTACCAAGCTTGCATGCACACTA(配列番号:82)(Invitrogen,Calsbad,CA,USAで作製)を、SphIでの切断後、消化した構築物pET30/YliI上のSphI部位に導入した。
切断したリンカーと切断した構築物をT4リガーゼ反応において連結した。リンカーの導入は、プラスミドに付加的な制限エンドヌクレアーゼ認識部位を挿入する。構築物pGEMpqqA−E(実施例7による。)を制限エンドヌクレアーゼBamHIおよびKpnIで切断し、次に生じたフラグメントをアガロースゲル電気泳動で分離して、遺伝子オペロンpqqABCDEを含む3.4kbフラグメントを精製した。リンカーを有する構築物pET30/YliIを、前記制限エンドヌクレアーゼを用いて切断し、精製した。フラグメント(それぞれリンカーを有する切断したpET30/YliIおよびpqqA−E)をT4リガーゼ反応において連結した。E.コリ(E.coli)JM109細胞を得られた連結反応物で形質転換し、カナマイシン耐性コロニーを培養して、プラスミドDNAを単離した。生じたプラスミド構築物をpET30/YliI+pqqA−Eと称し、遺伝子配列の確認のために配列決定した。
アルドースデヒドロゲナーゼを発現することができ、一方でピロロキノリンキノンを合成することができる生物を、BL21(DE3)コンピテント細胞を前記プラスミドで形質転換することによって作製した。
PQQを産生することができる単一微生物の全細胞培養物に含まれるE.コリ(E.coli)YliIの発現を手順1Aで述べたように実施した。手順1Bおよび1Cに対応して、生存全細胞触媒および休止全細胞触媒をそれぞれ調製した。無細胞溶解物を実施例2で述べた手順に従って調製した。
E.コリ(E.coli)の酸化能力およびPQQ産生を確認するための方法は実施例13で述べる。
加えて、DERAおよびアルドースデヒドロゲナーゼYliIの両方を含む構築物ならびにグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)(ATCC 621H)からのPQQ生合成クラスターを連結した。手順は上記手順と同様に実施したが、ベクターpET30/DeoC_RBS_YliI(実施例6で述べた。)を出発点として使用した。生じたプラスミドをpET30/DeoC_RBS_YliI+pqqA−E(図1)と称した。
[実施例9]
クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)全細胞触媒の調製
クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)(ATCC 33421、以前のエンテロバクター・インテルメディウム(Enterobacter intermedium))の培養:VD培地(30mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHでpH=7.0に調整した。)に、新たに画線培養したVD寒天プレートからのクルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)の単一コロニーを接種し、対数増殖期後期まで前培養した(30℃、250rpm、8時間)。
前培養細胞(接種物サイズ10%、v/v)を、次に、新鮮VD培地(100mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHでpH=7.0に調整した。)に移した。細胞を30℃、250rpmで16時間維持した。
全細胞触媒の調製(手順1B):培養後、細胞を遠心分離(10000g、5分間、4℃)によって採取した。遠心分離後に上清を廃棄し、ペレットを新鮮VD培地(10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHでpH=6.0に調整した。)に再懸濁した。細胞を初期培養容量の10分の1で再懸濁した。生存全細胞に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼをこのようにして新鮮培地中で得た。
または(手順1C)、遠心分離後に上清を廃棄した後、ペレットをリン酸緩衝液(50mM KH2PO4、150mM NaCl、pH6.0)に再懸濁した。細胞を初期培養容量の10分の1で再懸濁した。休止全細胞培養物に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼをこのようにして得た。
無細胞溶解物を実施例2で述べた手順に従って調製した。
[実施例10]
グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)全細胞触媒の調製
グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)(ATCC No.621H)の培養:マンニトール培地(100mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、3g/Lペプトン、5g/Lマンニトール、pHは1M NaOHでpH=7.0に調整した。)に、新たに画線培養したマンニトール寒天プレートからの単一コロニー、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)を接種し、培養した。細胞を26℃、250rpmで48時間維持した。
全細胞触媒の調製(手順1B):培養後、細胞を遠心分離(10000g、5分間、4℃)によって採取した。遠心分離後に上清を廃棄し、ペレットを新鮮VD培地(10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHでpH=6.0に調整した。)に再懸濁した。細胞を初期培養容量の10分の1で再懸濁した。生存全細胞に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼをこのようにして新鮮培地中で得た。
または(手順1C)、遠心分離後に上清を廃棄した後、ペレットをリン酸緩衝液(50mM KH2PO4、150mM NaCl、pH6.0)に再懸濁した。細胞を初期培養容量の10分の1で再懸濁した。休止全細胞培養物に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼをこのようにして得た。
無細胞溶解物を実施例2で述べた手順に従って調製した。
[実施例11]
DCPIPを電子受容体として使用する、化合物(II)の酸化/脱水素活性の測定のための方法
この方法はアルドースデヒドロゲナーゼ活性(または他のデヒドロゲナーゼおよび/もしくはオキシダーゼの活性)を測定するために有用である。従って同じ方法が、化合物(I)を生じさせる化合物(II)の酸化/脱水素反応を実施することができる酵素および/または生物をスクリーニングし、同定するために用いられる。
化合物(II)に対する酸化/脱水素活性は、天然であるかまたは遺伝的に改変された微生物であるかにかかわらず、任意の微生物の生存全細胞触媒(手順1Bに関して)、休止全細胞触媒(手順1Cに関して)、溶解物(調製は実施例2に述べられている。)、ペリプラズム画分(実施例3)または膜画分(実施例4)を使用して測定することができる。実際的には、以下では「分析された物質」という用語は、これまでの実施例で述べた触媒のすべての調製物を包含すると理解される。種々の調製物を使用して得られた結果を以下で提供する表において別々に示す。
比較試験のために、試験した微生物の細胞密度を試料1mL当たりのmg湿重量として定量化した。試料中の細胞を遠心分離(10000g、10分間)によってブロスから分離し、湿潤ペレットを計量した。溶解物、ペリプラズム画分または膜画分を試験分画として使用した場合は、これらの画分が由来する全細胞の湿潤細胞重量のデータを考慮に入れた。
「分析された物質」1mLに5μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)および10mM MgCl2(Sigma Aldrich,Germany)を添加し、室温で10分間インキュベートした。測定の前に「分析された物質」のpH値を1M NaOHで8.0に調整した。特に明記される場合(記号「*」は例外を示す。)、測定の相違はpH値であり、より詳細にはpH6.0であった。明記される場合、内因性のものを除き、付加的なPQQを反応混合物に添加しなかった。
フェナジンメトスルファート(PMS)と組み合わせた人工電子受容体2,6−ジクロロベンゼノン−インドフェノール(DCPIP)の存在下で((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートに変換するために有用な「分析された物質」をスクリーニングし、同定するために、スクリーニング方法を96穴マイクロプレートにおいて実施した。
反応混合物(総容量は200μLであった。)は、リン酸緩衝液pH8.0(または、明記される場合はリン酸緩衝液pH6.0)、100mM基質(((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタート)、1mM DCPIP(Sigma Aldrich,Germany)、0.4mM PMS(Sigma Aldrich,Germany)を含んだ。「分析された物質」(50μL)を反応混合物に添加した。必要な場合は(反応の迅速な完了による)、「分析された物質」をリン酸緩衝液pH8.0または、明記される場合はリン酸緩衝液pH6.0に希釈した。試験したすべての「分析された物質」を3組作製した。アッセイが線形である有用な範囲は、10から400mAU/秒であることが認められた。
方法は、分光光度計Spectra Max Pro M2(Molecular Devices,USA)で実施した。600nmでの吸光度を15秒ごとに15分間、28℃で測定した。結果を収集し、ソフトウェアSoftMax Pro Data Acquisition&Analysis Softwareを用いて解析した。
「分析された物質」の活性、従って化合物(II)を化合物(I)に変換する、具体的には((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートに変換する反応を実施する能力は、反応混合物中に存在する、手順1C、2、3または4による任意の「分析された物質」の調製のために使用される培養細胞の湿重量当たりの1分当たりの吸光度単位の低下の絶対値と定義された(abs[mAU/分/mg])。データは3つの並行する測定の平均値であり、以下の表に示されている。
陰性対照については、反応混合物の少なくとも1つの成分(電子受容体である、PMSと組み合わせたDCPIPを除く)を、リン酸緩衝液pH8.0または、適切な場合はpH6.0で置き換えた。長期的なインキュベーション後でも、すべての陰性対照ウェルにおいて変色は認められなかった。アルドースデヒドロゲナーゼの透明な水溶液をリン酸緩衝液で置き換えた場合、変色は認められなかった。基質(((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタート、グルコース、ガラクトースまたはグリセロール)のいずれかをリン酸緩衝液で置き換えた場合、変色は認められなかった。PQQを本発明で述べる何らかの手段によって反応混合物に提供しなかった場合(PQQが内因的に提供される混合物9、10および11を除く。)、変色は認められなかった。
[実施例12]
DCPIPの存在下でのE.コリ(E.coli)に含まれるアルドースデヒドロゲナーゼの特性の測定
a)他の基質および種々の濃度に関するE.コリ(E.coli)YliIアルドースデヒドロゲナーゼの活性の測定のために、付加的な実験を実施した。
「分析された物質」(より詳細には5μL PQQおよび10mM MgCl2で再構成し、手順1Bを実施したE.コリ(E.coli)BL21 pET30/YliI)50μL、1mM DCPIP、0.4mM PMSを、種々の濃度(2.5から10g/L)の基質(((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタート、D−グルコースおよびD−ガラクトース)と共に96穴マイクロタイタープレートに入れた。反応混合物の最終容量は200μLであり、すべての成分をリン酸緩衝液pH8.0に溶解した。
DCPIPの変色がこれらのウェルで認められた。変色速度は、((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを基質とした場合、D−グルコースまたはD−ガラクトースを基質として含む対照ウェルよりも約2倍速かった。
変色は、10g/Lの((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを基質として使用した場合、2.5g/Lの前記基質に比べてより速かった。反応速度に対するわずかな基質阻害が、反応混合物中の((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの濃度が40g/Lより上になった場合にのみ認められた。
生成物((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの反応速度への影響の可能性を評価するため、反応の開始前に様々な量の前記生成物を反応混合物に添加した。10g/Lの((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートに加えて35g/L以上の((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを添加した場合にのみ、反応速度のわずかな低下が認められた。
E.コリ(E.coli)YliIアルドースデヒドロゲナーゼの基質特異性および最適pHを調べるため、以下の実験を実施した:
1つの反応混合物(総容量は200μLであった。)は、リン酸緩衝液pH8.0、50mM基質(((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタート、D−グルコースまたはグリセロール)、1mM DCPIP、0.4mM PMSを含んだ。5μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)および10mM MgCl2を添加した、「分析された物質」(以下でさらに詳述する。)50μLを混合物に添加した。触媒E.コリ(E.coli)BL21 pET30/YliI培養物を休止全細胞触媒(手順1Cを実施して得た。)または溶解物(実施例2で述べたように)のいずれかとして得た。反応混合物の初期pH値は8.0であった。すべての試験溶液を3組作製した。
2番目の反応混合物は、上記と同じように調製したが、唯一の相違は、作製した混合物のpH値が6.0であった点である(反応混合物のすべての化合物をリン酸緩衝液pH6.0に溶解し、反応混合物の初期pH値は、従って6.0であった。)。すべての試験溶液を3組作製した。
アルドースデヒドロゲナーゼの区別、従って前記反応物中の種々の最適値での基質の変換を分光光度計Spectra Max Pro M2(Molecular Devices,USA)で測定した。600nmでの吸光度を15秒ごとに15分間、28℃で測定した。結果を収集し、ソフトウェアSoftMax Pro Data Acquisition&Analysis Softwareを用いて解析した。実験は実施例11で述べたように実施した。以下の表に「分析された物質」の活性を示す(abs[mAU/分/mg])。
b)さらに、E.コリ(E.coli)からの構造的に異なる膜結合型グルコース、Gcdの特徴を、DCPIP法を用いて評価した。
「分析された物質」(より詳細には5μL PQQおよび10mM MgCl2で再構成し、手順1Bを実施したE.コリ(E.coli)BL21 pET30/Gcd)50μL、1mM DCPIP、0.4mM PMSを、種々の濃度(2.5から10g/L)の基質(((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタート、D−グルコースおよびD−ガラクトース)と共に96穴マイクロタイタープレートに入れた。反応混合物の最終容量は200μLであり、すべての成分をリン酸緩衝液pH6.0に溶解した。
DCPIPの変色がこれらのウェルで認められた。変色速度は、((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを基質とした場合、D−グルコースまたはD−ガラクトースを基質として含む対照ウェルよりも約2倍速かった。
変色は、10g/Lの((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを基質として使用した場合、2.5g/Lの前記基質に比べてより速かった。反応速度に対するわずかな基質阻害が、反応混合物中の((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの濃度が60g/Lより上になった場合にのみ認められた。
生成物((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの反応速度への影響の可能性を評価するため、反応の開始前に様々な量の前記生成物を反応混合物に添加した。10g/Lの((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートに加えて55g/L以上の((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを添加した場合にのみ、反応速度のわずかな低下が認められた。
前記E.コリ(E.coli)膜アルドースデヒドロゲナーゼの基質特異性および最適pHを調べるため、上述した実験を触媒E.コリ(E.coli)BL21 pET30/Gcdに関して実施した。
結果は、膜中の過剰発現されたGcdキノプロテインデヒドロゲナーゼは、基質が((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートである場合、pH6.0でより良好に機能することを示す。((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートに対する活性は、グルコースを基質として使用した場合の活性よりもわずかに弱い。
結果は、同じ生物(E.コリ(E.coli))に由来する場合でも、異なるキノプロテインデヒドロゲナーゼは完全に異なる活性最適値および他の特性を有し得ることを明らかに示し、各々個別の酵素についての個別の特徴づけおよび反応条件の最適化の必要性を指摘する。
[実施例13]
pO 2 センサーを使用したバイオリアクターにおける全細胞の触媒作用能力の測定
最大容量2Lの実験室バイオリアクターInfors ISF100を、E.コリ(E.coli)アルドースデヒドロゲナーゼの全細胞触媒作用能力の測定のために使用した。以下で述べるように反応器を撹拌し、通気して、温度およびpHを制御した。ホロアルドースデヒドロゲナーゼを担持する全細胞触媒を様々な基質に曝露した場合、O2の異常な消費が出現した。O2センサーHamilton OXYFERM FDA 225 PN 237452を使用して、基質を提供した後の時間的なpO2低下(酸素消費)の割合は全細胞触媒作用能力の割合と相関することが認められた。
全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21 pET30/Gcd(実施例1、手順1Aおよびさらに実施例25で述べた調製の手順)を使用して実験を実施した。
全細胞触媒をバイオリアクターにおいてリン酸緩衝液(50mM KH2PO4、150mM NaCl、pH6.2)に溶解し、最終容量(1L)に対して5g/L、10g/Lおよび20g/Lの濃度にした。
基質を添加する前の初期工程パラメータは次のとおりであった:37℃、空気流量1.0L/分(1.0VVM)、撹拌器速度1000rpm、pH6.2および溶解酸素濃度は飽和の80%以上に保持した。5μM PQQおよび10mM MgCl2をバイオリアクターブロスに供給した。供給溶液は、持続的に供給した12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液およびシリコーン消泡性化合物であるシンペロニック消泡剤(Sigma,A−5551)であった。
基質(D−グルコースおよび((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタート)を0.25g/L、0.5g/Lおよび1g/Lの濃度で一気に添加した。基質をブロス中で提供した場合は、酸素消費を時間的に追跡した。
上述したシステムは、経時的な溶解酸素レベルの数学的記述に関して非常に複雑である。一方では、これらはkLa(容器特性、撹拌、通気、培地、温度等)に依存し、他方でアルドースデヒドロゲナーゼの酵素動態に依存する。加えて、酸素プローブの遅延動態が重要な役割を果たす。本発明者らは、これゆえ、この動的システムにおいて基質のパルス供給後、溶解酸素の最少量までの期の酸素消費が二次方程式に最もよく相関することを経験的に見出した。試験した生体触媒の活性能の良好なインジケータは、特定の時間値(例えばt=15秒)で測定した、この二次方程式の勾配である。勾配は、二次方程式の一次導関数から計算した。この計算手順は、良好な再現性ならびに方法の線形性を示した。
[実施例14]
様々な供給源からのPQQによるホロ酵素アルドースデヒドロゲナーゼの再構成および電子受容体としてのDCPIPに関するアッセイ
PQQならびにMg2+およびCa2+などの適切な二価カチオンをPQQ依存性アルドースデヒドロゲナーゼにインサイチューで提供すること、従って活性アルドースデヒドロゲナーゼを得ることによるホロ酵素の構築の種々の可能性がある。測定のために、本発明者らは、実施例11で述べたように人工電子受容体(PMSと組み合わせたDCPIP)による方法を使用した。
手順1Bまたは1Cに従って調製した全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30または全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcd、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GdhB、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GdhB_therm、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC_RBS_YliIおよびpET30/DeoC_T7p_RBS_Gcdに、PQQを次のように供給することができる:
−手順14A:5μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)、10mM MgCl2(Sigma Aldrich,Germany)およびリン酸緩衝液pH6.0(5mL)を生存全細胞触媒または休止全細胞触媒(5mL)に添加し、室温で10分間インキュベートした。
−手順14B:培養したE.コリ(E.coli)JM109 pGEM/pqqA−E(溶解物は手順7Dで述べたように得た。)の上清5mLを10mM MgCl2の存在下で全細胞触媒または休止細胞触媒(5mL)に添加し、室温で10分間インキュベートした。
−手順14C:培養したクルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)またはグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)(培養は、それぞれ実施例10および実施例11で述べた。)の上清5mLを全細胞触媒または休止細胞触媒(5mL)に添加した。培養物の遠心分離(10000g、5分間、4℃)後に上清を得て、懸濁液中10mM MgCl2の存在下に室温で10分間インキュベートした。
手順1Bまたは1Cを実施した生存全細胞触媒または休止全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI+pqqA−E(5mL)にリン酸緩衝液pH=6.0および10mM MgCl2を同じ容量比で添加し、室温で10分間インキュベートした。
すべての反応混合物を、96穴マイクロプレートにおいて、実施例11で述べた手順を実施して人工電子受容体DCPIPの存在下で((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートに変換する能力に関して試験した。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)細胞におけるプラスミドpET30、pET30/YliI、pET30/Gcd、pET30/GdhB、pET30a/GdhB_thermの発現の誘導時点での5μM PQQおよび10mM MgCl2の添加(手順1Aに従って)は、反応の直前の添加と同様の結果を明らかにした。
[実施例15]
生存全細胞触媒に含まれる様々なアルドースデヒドロゲナーゼによるラクトール((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの酸化
アルドースデヒドロゲナーゼを有する様々な生存全細胞触媒(これらの種類は、それぞれ実施例1、7、8、9および10に述べられている。)を、((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートへの生物変換に関して試験した。
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/YliI、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/Gcd、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/GdhB、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/GdhB_therm(調製は実施例1に述べられている。)を手順1Bで述べたように調製した。上記生存全細胞触媒の試料9mLを100mLエルレンマイヤーフラスコに移し、ここで反応を実施した。反応混合物に1μM PQQ(PQQの1mM予調製保存溶液10μL、Sigma)および10mM MgCl2(MgCl2の4M予調製保存溶液2.5μL、Sigma)を添加した。
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/YliI+pqqA−E(調製は実施例7に述べられている。)を手順1Bで述べたように調製した。上記細胞の試料9mLを100mLエルレンマイヤーフラスコに移し、ここで反応を実施した。
生存全細胞触媒クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)(実施例10)およびグルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)(実施例11)を手順1Bで述べたように調製した。上記細胞の試料9mLを100mLエルレンマイヤーフラスコに移し、ここで反応を実施した。
((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートをリン酸緩衝液(50mM KH2PO4、150mM NaCl、pH6.0)に溶解して2mol/Lの濃度にした。濃縮生存全細胞触媒のすべての試料に2mol/Lの((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタート1mLを添加した。反応を回転振とう機において37℃、250rpmで6時間実施した。0分、60分、120分、180分、240分、300分および360分の時点で試料を採取した。各々の試料をGC−MS分析のためにアセトニトリルで50倍に希釈した。0分、180分および360分の時点の結果を以下の表に示す。
反応の主要生成物は、当分野で記述されている化学的酸化によって得られる((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートと同じ保持時間およびイオン分布を有していた。
360分後、反応混合物を等容量の酢酸エチルで5回抽出し、すべての有機画分を収集して、回転蒸発器で乾燥させた。最終的に黄色の油を得た。
生じた生成物の構造をNMRによって確認したところ、当分野で報告されているものと同じである。1H NMR(300MHz,acetone−d6)δ4.88(m,1H)、4.45(d,J=3.0Hz,1H)、4.38(hex,J=3.0Hz,1H)、4.23(dd,J=3.5Hz,J=12.0Hz,1H)、4.16(dd,J=5.5Hz,J=12.1Hz,1H)、2.68(dd,J=4.3Hz,J=17.5HZ,1H)、2.51(dddd,J=0.8Hz,J=2.0Hz,J=3.3Hz,J=17.5Hz,1H)、2.03(s,3H)、1.91(m,2H)、13C NMR(75MHz,acetone−d6)δ170.8、169.7、74.2、66.5、62.7、39.1、32.3、20.6。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30を陰性対照として使用した。反応は上述したのと同じ条件で実施し、反応の終了時に少量の((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを認めた。しかし、提供した((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートはすべて影響を受けないままであった。変換の理由は、PQQとMgCl2が提供された場合にホロ酵素を形成する、E.コリ(E.coli)中に存在する内因性キノプロテインデヒドロゲナーゼ(YliIおよびGcd)の活性化である。
[実施例16]
アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドからの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの生成のためのDERAアルドラーゼおよびアルドースデヒドロゲナーゼ(YliIまたはGcd)を使用した逐次反応
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを、手順1Bに従って実施例5で述べたように調製した。生存全細胞触媒5mLを100mLエルレンマイヤーフラスコに移した。
アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの保存溶液を調製した。アセチルオキシアセトアルデヒド(前記化合物の化学合成は本発明者らの研究室において実施し、85%の純度を示した。)600.5mgおよびアセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)467.2mgを氷冷リン酸緩衝液pH6.0に溶解して、最終容量10mLにした。
0分の時点でアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの前記保存溶液0.1mLを反応混合物に添加した。反応を回転振とう機において37℃、250rpmで3時間実施した。
1μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)および10mM MgCl2(Sigma Aldrich,Germany)を添加した生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI(調製は手順1Bに従って実施例1に述べられている。)5mLを、3時間後に同じエルレンマイヤーフラスコに添加した。酸化反応を回転振とう機において37℃、250rpmでさらに3時間進行させた。
0分、60分、120分、180分、240分、300分および360分の時点で試料を採取した。各々の試料をGC−MS分析のためにアセトニトリルで50倍に希釈した。反応の主要生成物は、当分野で記述されている化学的酸化によって得られる((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートと同じ保持時間およびイオン分布を有していた。360分後に12.3g/Lの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを認め、これは64%モル収率である。
上述したのと同じ手順を、生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcd(調製は手順1Bに従って実施例1に述べられている。)を使用して実施した。生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcd 5mlをE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを有する反応混合物に添加した360分後に、14.45g/Lの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを認め、これは75%モル収率である。
[実施例17]
アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドからの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの生成のためのDERAアルドラーゼおよびアルドースデヒドロゲナーゼ(Gcd)を使用した同時反応
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC(調製はそれぞれ実施例1および5に述べられている。)を手順1Bで述べたように調製した。両方の生存全細胞触媒を同じ容量比(5mL)で100mLエルレンマイヤーフラスコに移した。
両方の生存全細胞触媒が存在する2つの異なる反応を設定した。1番目の反応混合物には5μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)および10mM MgCl2(Sigma Aldrich,Germany)を添加し、2番目の反応混合物はアポアルドースデヒドロゲナーゼ酵素だけが存在する対照として使用した。
アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの保存溶液を調製した。アセチルオキシアセトアルデヒド(前記化合物の化学合成は本発明者らの研究室において実施し、85%の純度を示した。)1.201gおよびアセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)934.4mgを氷冷リン酸緩衝液pH6.0に溶解して、最終容量10mLにした。
0分の時点でアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの前記保存溶液1mLを反応混合物に添加した。アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの最終濃度はそれぞれ100mMおよび210mMであった。反応を37℃、250rpmで6時間実施した。
0分、60分、120分、180分、240分、300分および360分の時点で試料を採取した。各々の試料をGC−MS分析のためにアセトニトリルで50倍に希釈した。反応の主要生成物は、当分野で記述されている化学的酸化によって得られる((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートと同じ保持時間およびイオン分布を有していた。
ホロデヒドロゲナーゼが存在する1番目の反応混合物では、360分後に13.6g/Lの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを認め、これは71%モル収率である。360分後にごく少量のラクトール((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを認めたが、基質(アセトアルデヒドおよびアセチルオキシアセトアルデヒド)ならびに中間体((S)−(4−ヒドロキシオキセタン−2−イル)メチルアセタート)がこの時点でまだ存在した。
同時に、アポデヒドロゲナーゼだけが存在する、従って反応において活性なDERAアルドラーゼだけを有する2番目の反応混合物では、9.55g/Lのラクトール((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートだけが生成された。
これらの指標は、アルドースデヒドロゲナーゼ(Gcd)による反応段階がアルドラーゼ酵素(DERA)によって触媒される段階よりも速いことおよびアルドースデヒドロゲナーゼの存在がDERA反応段階の定常状態平衡を生成物の方にシフトさせることを示し、アルドースデヒドロゲナーゼ(Gcd)との同時反応は、実際にラクトン(化合物I)に向かう全体的な割合を改善する。
[実施例18]
アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドからの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの生成のための単一微生物の生存全細胞触媒中にDERAアルドラーゼおよびアルドースデヒドロゲナーゼ(YliIまたはGcd)を含む同時反応
以下の実施例は、簡単で安価な分子:アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドから極めて鏡像異性的に純粋な((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを生成することができる、生存微生物中で提供される合成生物学的経路を提供する。
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC_RBS_YliIおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC_T7p_RBS_Gcd(調製は実施例6に述べられている。)を手順1Aで述べたように調製した。前記全細胞触媒を遠心分離(5000g、10分間)によって別々に濃縮し、ペレットを同じ上清の初期容量の10分の1で再懸濁した。過剰の上清を廃棄した。前記濃縮生存全細胞触媒10mLを100mLエルレンマイヤーフラスコに移した。細胞ブロスに5μM PQQおよび10mM MgCl2を添加し、ブロスのpH値をアンモニウム溶液で6.0に調整した。
アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドから成る保存溶液を調製した。アセチルオキシアセトアルデヒド(前記化合物の化学合成は本発明者らの研究室において実施し、85%の純度を示した。)1.201gおよびアセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)934.4mgを氷冷リン酸緩衝液pH6.0に溶解して、最終容量10mLにした。
0分の時点でアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの前記保存溶液1mLを反応混合物に添加した。反応混合物中のアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの最終濃度はそれぞれ100mMおよび210mMであった。反応を37℃、250rpmで6時間実施した。
0分、60分、120分、180分、240分、300分および360分の時点で試料を採取した。各々の試料をGC−MS分析のためにアセトニトリルで50倍に希釈した。反応の主要生成物は、当分野で記述されている化学的酸化によって得られる((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートと同じ保持時間およびイオン分布を有していた。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC_RBS_YliIが触媒として存在した場合は、360分後に7.80g/Lの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを認め、これは41%モル収率である。同時に、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC_T7p_RBS_Gcdの存在下で反応を実施した場合は、360分後に13.12g/Lの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを認め、これは69%モル収率である。
[実施例19]
アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドからの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの生成のためのDERAアルドラーゼおよび生存全細胞触媒クルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)を含む同時反応
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCおよびクルイベラ・インテルメディア(Kluyvera intermedia)(調製はそれぞれ実施例1および11に述べられている。)を手順1Bで述べたように調製した。両方の生存全細胞触媒を同じ容量比(5mL)で100mLエルレンマイヤーフラスコに移した。
アセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの保存溶液を調製した。アセチルオキシアセトアルデヒド(前記化合物の化学合成は本発明者らの研究室において実施し、85%の純度を示した。)1.201gおよびアセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)934.4mgを氷冷リン酸緩衝液pH6.0に溶解して、最終容量10mLにした。
0分の時点でアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの前記保存溶液1mLを反応混合物に添加した。反応混合物中のアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの最終濃度はそれぞれ100mMおよび210mMであった。反応を37℃、250rpmで6時間実施した。
0分、60分、120分、180分、240分、300分および360分の時点で試料を採取した。各々の試料をGC−MS分析のためにアセトニトリルで50倍に希釈した。反応の主要生成物は、当分野で記述されている化学的酸化によって得られる((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートと同じ保持時間およびイオン分布を有していた。
360分後、10.40g/Lの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートを認め、これは54%モル収率である。
[実施例20]
(4R,6S)−6−(クロロメチル)−4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オンの生成のためのDERAアルドラーゼおよびアルドースデヒドロゲナーゼ(YliIまたはGcd)を使用した同時反応
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC(調製はそれぞれ実施例1および5に述べられている。)を手順1Bで述べたように調製した。生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC 6mLおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliIまたはE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcd 3mLを50mLポリスチレン円錐チューブ(BD Falcon,(登録商標)USA)に移した。反応混合物に1μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)および10mM MgCl2を添加した。
クロロアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの保存溶液を調製した。クロロアセトアルデヒド溶液(H2O中50重量%、Aldrich,USAにより購入)817μLおよびアセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)500.6mgを氷冷リン酸緩衝液pH6.0に溶解して、最終容量5mLにした。
0分の時点でクロロアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの前記保存溶液1mLを反応混合物に添加した−従って総反応容量は10mLであり、反応混合物中のクロロアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの出発濃度はそれぞれ100mMおよび225mMであった。反応を、水浴中200rpmで振とうしながら37℃で2時間実施した。
反応の進行をガスクロマトグラフィで観測した。120分後、反応混合物を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、すべての有機画分を収集して、回転蒸発器で乾燥させた。乾燥生成物(4R,6S)−6−(クロロメチル)−4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン66mg(36.2%収率)が、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliIおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを組み合わせた反応後に残り、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを組み合わせた反応後には乾燥生成物72mg(39%収率)が残った。生成物をNMRで分析した。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.01(m,1H)、4.47(m,1H)、3.80(m,1H)、3.68(m,1H)、2.69(d,J=3.6Hz,2H)、2.09(m,1H)、1.97(m,1H)。13C NMR(75MHz,CDCl3)δ170.2、74.8、62.5、46.6、38.5、32.8。
[実施例21]
(4R,6S)−6−(ジメトキシメチル)−4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オンの生成のためのDERAアルドラーゼおよびアルドースデヒドロゲナーゼ(YliIまたはGcd)を使用した同時反応
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC(調製はそれぞれ実施例1および5に述べられている。)を手順1Bで述べたように調製した。生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC 6mLおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliIまたはE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcd 3mLを50mLポリスチレン円錐チューブ(BD Falcon,USA)に移した。反応混合物に1μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)および10mM MgCl2を添加した。
ジメトキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの保存溶液を調製した。ジメトキシアセトアルデヒド溶液(H2O中60重量%、Fluka,USAにより購入)868μLおよびアセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)500.6mgを氷冷リン酸緩衝液pH6.0に溶解して、最終容量5mLにした。
0分の時点でジメトキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの前記保存溶液1mLを反応混合物に添加した−従って総反応容量は10mLであり、反応混合物中のジメトキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの出発濃度はそれぞれ100mMおよび225mMであった。反応を、水浴中200rpmで振とうしながら37℃で2時間実施した。
反応の進行をガスクロマトグラフィで観測した。120分後、反応混合物を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、すべての有機画分を収集して、回転蒸発器で乾燥させた。乾燥生成物(4R,6S)−6−(ジメトキシメチル)−4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン53mg(25.3%収率)が、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliIおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを組み合わせた反応後に残り、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを組み合わせた反応後には乾燥生成物67mg(31.9%収率)が残った。生成物をNMRで分析した。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ4.74(quint,J=3.5Hz,1H)、4.43(m,2H)、3.49(s,3H)、3.47(s,3H)、3.10(br s,1H)、2.72(dd,J=3.5Hz,J=17.8Hz,2H)、2.62(m,2H),1.99(m,2H)。
[実施例22]
(4R,6S)−6−(ベンジルオキシメチル)−4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オンの生成のためのDERAアルドラーゼおよびアルドースデヒドロゲナーゼ(YliIまたはGcd)を使用した同時反応
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC(調製はそれぞれ実施例1および5に述べられている。)を手順1Bで述べたように調製した。生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC 6mLおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliIまたはE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcd 3mLを50mLポリスチレン円錐チューブ(BD Falcon,USA)に移した。反応混合物に1μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)および10mM MgCl2を添加した。
ベンジルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの保存溶液を調製した。ベンジルオキシアセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)774.1mgおよびアセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)500.6mgを氷冷リン酸緩衝液pH6.0に溶解して、最終容量5mLにした。
0分の時点でベンジルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの前記保存溶液1mLを反応混合物に添加した−従って総反応容量は10mLであり、反応混合物中のベンジルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドの出発濃度はそれぞれ100mMおよび225mMであった。反応を、水浴中200rpmで振とうしながら37℃で2時間実施した。
反応の進行をガスクロマトグラフィで観測した。120分後、反応混合物を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、すべての有機画分を収集して、回転蒸発器で乾燥させた。乾燥生成物(4R,6S)−6−(ベンジルオキシメチル)−4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン51mg(19.6%収率)が、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliIおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを組み合わせた反応後に残り、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを組み合わせた反応後には乾燥生成物56mg(21.5%収率)が残った。粗生成物をジクロロメタンに溶解し、TBDMSClおよびイミダゾールと24時間反応させた。溶液を濃縮し、クロマトグラフィによって精製して、TBDMSClで保護された化合物((4R,6S)−6−(ベンジルオキシメチル)−4−ヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン)を得、これをNMRで分析した。1H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.36(m,5H)、5.17(s,2H)、4.93(quint,J=4.7Hz,1H)、4.38(dd,J=3.4Hz,J=11.8Hz,1H)、4.35(quint,J=3.3Hz,1H)、4.27(dd,J=4.7Hz,J=11.8Hz,1H)、2.58(d,J=3.3Hz,2H)、1.85(m,2H)、0.88(s,9H)、0.09(s,3H)、0.08(s,3H)、13C NMR(125MHz,CDCl3)δ154.8、134.8、128.7、128.6、128.4、73.2、70.0、68.8、63.2、39.0、32.2、25.6、17.8、−5.0。
[実施例23]
(4R,6R)−4−ヒドロキシ−6−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オンの生成のためのDERAアルドラーゼおよびアルドースデヒドロゲナーゼ(YliIまたはGcd)を使用した同時反応
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC(調製はそれぞれ実施例1および5に述べられている。)を手順1Bで述べたように調製した。生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC 6mLおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliIまたはE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcd 3mLを50mLポリスチレン円錐チューブ(BD Falcon,USA)に移した。反応混合物に1μM PQQ(Sigma Aldrich,Germany)および10mM MgCl2を添加した。
アセトアルデヒドの保存溶液を調製した。アセトアルデヒド(Fluka,USAにより購入)445mgを氷冷リン酸緩衝液pH6.0に溶解して、最終容量5mLにした。
0分の時点でアセトアルデヒドの前記保存溶液1mLを反応混合物に添加した−従って総反応容量は10mLであり、反応混合物中の最終濃度はそれぞれ200mMであった。反応を、水浴中200rpmで振とうしながら37℃で2時間実施した。
反応の進行をガスクロマトグラフィで観測した。120分後、反応混合物を等容量の酢酸エチルで3回抽出し、すべての有機画分を収集して、回転蒸発器で乾燥させた。乾燥生成物(4R,6R)−4−ヒドロキシ−6−メチルテトラヒドロ−2H−ピラン−2−オン99mg(34.1%収率)が、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliIおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを組み合わせた反応後に残り、E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoCを組み合わせた反応後には乾燥生成物110mg(37.9%収率)が残った。生成物をNMRで分析した。1H NMR(300MHz,acetone−d6)δ4.76(dq,Jd=11.2Hz,Jq=3.2Hz,1H)、4.41−4.15(m,2H)、2.63(dd,J=4.3Hz,J=17.0Hz,1H)、2.46(ddd,J=1.7Hz,J=3.3Hz,J=17.0Hz,1H)、1.92(m,1H)、1.71(dd,J=3.0Hz,J=14.3Hz,1H)、1.29(d,J=6.4Hz,3H)。13C NMR(75MHz,acetone−d6)δ170.6、72.7、63.1、39.1、38.2、21.8。
[実施例24]
生存全細胞触媒の高細胞密度生産ならびにアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドからの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートのワンポット連続生成
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI+pqqA−EおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/DeoC(調製はそれぞれ実施例7および実施例4に述べられている。)の高細胞密度培養物を、最大容量2Lの実験室バイオリアクターInfors ISF100を使用して「フェドバッチ」バイオプロセスで調製した。以下で述べるように反応器を撹拌し、通気して、温度およびpHを制御した。培地に提供した初期基質の消費後、アンモニアおよびグルコースをそれぞれ窒素源および炭素源として連続的に工程に供給する。
培地の組成物および調製は次のとおりであった:
13.3g/L KH2PO4、1.7g/Lクエン酸、60mg/Lクエン酸Fe(III)、40g/L D−グルコース、8mg/L Zn(CH3COO)2 2H2O、1g/L(NH4)2HPO4、2.7g/L MgSO4 7H2Oおよび10mL/L鉱液。
鉱液を次のように予調製した:
1.5g/L MnCl2 4H2O、0.3g/L H3BO3、0.25g/L NaMoO4 2H2O、0.25g/L CoCl2 6H2O、0.15g/L CuCl2 2H2O、0.84g/L EDTA、1g/L Na2PO4 2H2O。
沈殿を防ぐため、特別なプロトコールに従って初期培地を調製した:KH2PO、クエン酸Fe(III)、鉱液、Zn(CH3COO)2 2H2Oおよび(NH4)2HPO4を溶液として最終容量の約半分まで連続して添加した。加圧滅菌(121℃で20分間)した後、グルコース、MgSO4 7H2Oおよびカナマイシン(25mg/mL)の滅菌溶液を、事前に12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液でpHを6.8に調整した後、添加した。滅菌蒸留水を添加してバイオリアクター中で最終容量(1L)を調整した。上記溶液をろ過(0.2μm)によって別々に滅菌した。
供給溶液は、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液、シリコーン消泡性化合物であるシンペロニック消泡剤(Sigma,A−5551)および50%(w/v)グルコースであった。
両方の培養物についての接種材料を対数増殖期の振とうフラスコ培養物50mLとして提供した。VD培地(50mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHで7.0に調整した。)に、新たに画線培養したVD寒天プレートからの前記全細胞触媒の単一コロニーを接種し、対数増殖期後期まで前培養した(37℃、250rpm、8時間)。
接種時の初期工程パラメータは次のとおりであった:25℃、空気流量1.5L/分(1.5VVM)、撹拌器速度800rpm、pH6.8。培養の間、溶解酸素濃度をpO2/撹拌速度制御ループおよびpO2/空気流量制御ループによって飽和の20%以上に保持し、バイオプロセスの終わりごろに0%に近づけ、バイオリアクター能力を最大にした(撹拌器速度2000rpm、通気3L/分)。
pHは、pHが6.8より下になった場合は常にアンモニア溶液のパルスをバイオリアクターに供給する、pHセンサー制御された外部ポンプを使用して全工程の間6.8に保持した。
初期培地中に存在するグルコースの枯渇後、pO2およびpHレベルの特徴的な上昇が認められる(工程に入って約10から12時間)。この時点で50%(w/v)グルコースの供給を開始し、できるだけ指数曲線に近づけるように手操作で調節した(供給は0.1mL/分で開始し、24時間後に0.6mL/分で終了した。)。工程は基質供給によって制御することができる;グルコース濃度を動的なゼロに保持する場合、グルコース溶液流量が培養物の呼吸速度を制御する。酸素供給および熱伝達に関する技術的な制約はこのようにして成功裏に克服することができる。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI+pqqA−Eの培養物中のタンパク質YilIの発現の誘導を、供給段階の開始の6時間後に0.05mM IPTG(Sigma Aldrich,Germany)を添加することによって実施した。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/DeoCの培養物中のタンパク質DeoCの発現の誘導を、供給段階の開始の6時間後に0.1mM IPTG(Sigma Aldrich,Germany)を添加することによって実施した。
工程の全体的な長さは34から42時間であり、200から240g/Lのレベルの湿重量のバイオマスが得られる。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI+pqqA−Eの高密度培養物を15℃に冷却し、反応に使用するまで、光誘導し、通気(400rpm、0.5L/分)しながら反応器中に保持した(5時間)。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/DeoCの高密度培養物をバイオリアクターに保持し、800rpmで撹拌した。温度を37℃に上昇させ、アセチルオキシアセトアルデヒド56.6gおよび水に希釈したアセトアルデヒド(45.4g)120mLをプログラム可能なポンプで反応混合物に添加した。アセチルオキシアセトアルデヒドの全量を一定の流量にて30分間で添加した。アセトアルデヒドは、以下の表に示すように連続的に3時間で添加した。
反応の間、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液およびバイオリアクターのセンサー依存性pH補正機能を用いてpHを5.8に保持した。反応の3時間後、反応混合物の一部を反応器から取り出し、800rpm、37℃で撹拌しながら反応混合物1Lを残した。あらかじめ37℃に加熱したE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/YliI+pqqA−Eの高密度培養物0.5Lを反応混合物に添加し、通気(1L/分)を行った。反応混合物を6時間放置し、この時間中に0.1mL/分のグリセロールを混合物に添加して、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液を用いてpHを5.8に維持した。
6時間後に反応を停止させ、5M HCl溶液を用いてpHを5に低下させて、反応混合物の全容量を簡単なガラス容器に移し、酢酸エチル1.5Lと混合して「全ブロス」抽出工程を実施した。有機相を収集し、別の1.5Lの酢酸エチルを水相に添加した。手順全体を5回反復した。収集した有機相画分を合わせて、無水硫酸ナトリウム200gを添加し(酢酸エチル溶解水に結合するため)、ろ過して除去した。次に低圧蒸発によって37℃で溶媒を除去した。残存する物質(82.6g)は黄色からコハク色の油であり、室温で蜂蜜の粘稠度を有していた。1H NMRおよびGC−MSを用いたその後の分析は((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの構造を確認し、クロマトグラフィ純度は52%であった。反応の全体的なモル収率は42.5%と推定された。
[実施例25]
生存全細胞触媒の高細胞密度生産ならびにアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドからの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートのワンポット連続生成
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/GcdおよびE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/DeoC(構築はそれぞれ実施例1および実施例5に述べられている。)の高細胞密度培養物を、最大容量2Lの実験室バイオリアクターInfors ISF100を使用して「フェドバッチ」バイオプロセスで調製した。以下で述べるように反応器を撹拌し、通気して、温度およびpHを制御した。培地に提供した初期基質の消費後、アンモニアおよびグルコースを、それぞれ窒素源および炭素源として工程に連続的に供給する。
培地の組成物および調製は次のとおりであった:
13.3g/L KH2PO4、1.7g/Lクエン酸、60mg/Lクエン酸Fe(III)、40g/L D−グルコース、8mg/L Zn(CH3COO)2・2H2O、1g/L(NH4)2HPO4、2.7g/L MgSO4・7H2Oおよび10mL/L鉱液。
鉱液を次のように予調製した:
1.5g/L MnCl2・4H2O、0.3g/L H3BO3、0.25g/L NaMoO4・2H2O、0.25g/L CoCl2・6H2O、0.15g/L CuCl2・2H2O、0.84g/L EDTA、1g/L Na2PO4・2H2O。
沈殿を防ぐため、特別なプロトコールに従って初期培地を調製した:KH2PO4、クエン酸Fe(III)、鉱液、Zn(CH3COO)2・2H2Oおよび(NH4)2HPO4を溶液として最終容量の約半分まで連続して添加した。加圧滅菌(121℃で20分間)した後、グルコース、MgSO4・7H2Oおよびカナマイシン(25mg/mL)の滅菌溶液を、事前に12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液でpHを6.8に調整した後添加した。滅菌蒸留水を添加してバイオリアクター中で最終容量(1L)を調整した。上記溶液をろ過(0.2μm)によって別々に滅菌した。
供給溶液は、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液、シリコーン消泡性化合物であるシンペロニック消泡剤(Sigma,A−5551)および50%(w/v)グルコースであった。
両方の培養物についての接種材料を対数増殖期の振とうフラスコ培養物50mLとして提供した。VD培地(50mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHで7.0に調整した。)に、新たに画線培養したVD寒天プレートからの前記全細胞触媒の単一コロニーを接種し、対数増殖期後期まで前培養した(37℃、250rpm、8時間)。
接種時の初期工程パラメータは次のとおりであった:25℃、空気流量1.5L/分(1.5VVM)、撹拌器速度800rpm、pH6.8。培養の間、溶解酸素濃度をpO2/撹拌速度制御ループおよびpO2/空気流量制御ループによって飽和の20%以上に保持し、バイオプロセスの終わりごろに0%に近づけ、バイオリアクター能力を最大にした(撹拌器速度2000rpm、通気3L/分)。
pHは、pHが6.8より下になった場合は常にアンモニア溶液のパルスをバイオリアクターに供給する、pHセンサー制御された外部ポンプを使用して全工程の間6.8に保持した。
初期培地中に存在するグルコースの枯渇後、pO2およびpHレベルの特徴的な上昇が認められる(工程に入って約10から12時間)。この時点で50%(w/v)グルコースの供給を開始し、できるだけ指数曲線に近づけるように手操作で調節した(供給は0.1mL/分で開始し、24時間後に0.6mL/分で終了した。)。工程は基質供給によって制御することができる;グルコース濃度を動的なゼロに保持する場合、グルコース溶液流量が培養物の呼吸速度を制御する。酸素供給および熱伝達に関する技術的な制約はこのようにして成功裏に克服することができる。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcdの培養物中のタンパク質Gcdの発現の誘導を、供給段階の開始の6時間後に0.1mM IPTG(Sigma Aldrich,Germany)を添加することによって実施した。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/DeoCの培養物中のタンパク質DeoCの発現の誘導を、供給段階の開始の6時間後に0.2mM IPTG(Sigma Aldrich,Germany)を添加することによって実施した。
工程の全体的な長さは34から42時間であり、150から200g/Lのレベルの湿重量のバイオマスが得られる。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcdの高密度培養物を15℃に冷却し、反応に使用するまで、光誘導し、通気(400rpm、0.5L/分)しながら反応器中に保持した(5時間)。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/DeoCの高密度培養物592mLをバイオリアクターに保持し、1300rpmで撹拌した。温度を37℃に上昇させ、アセチルオキシアセトアルデヒド39.30gおよび水に希釈したアセトアルデヒド(48.46g)100mLを調製した。アセチルオキシアセトアルデヒドの全量を一定の流量にて27分間で添加した。アセトアルデヒド溶液は、プログラム可能なポンプを用いて以下の表に示すように90分間で反応混合物に連続的に添加した。
反応の間、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液およびバイオリアクターのセンサー依存性pH補正機能を用いてpHを6.2に保持した。反応の30分後、さらに70mLのE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/DeoCの高密度培養物を添加した。反応の2時間後、残存する反応混合物735mLを1400rpm、37℃で撹拌した。GC−FID分析は、反応の終了時に((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートが75.6/Lの濃度で存在することを示した。
あらかじめ37℃に加熱したE.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/Gcdの高密度培養物183mLを反応混合物に添加し、通気(1.4L/分)を行った。MgCl2およびPQQを添加してそれぞれ最終濃度10mMおよび2μMにし、PQQによるGcd酵素の完全な再構成を達成するため、反応混合物を撹拌しながら10分間放置した。反応混合物を3時間放置し、この時間中、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液を用いてpHを6.2に維持した。2番目の段階の反応開始から65分後、撹拌速度を1200rpm、空気流量を1.2L/分に低下させた。再び、2番目の段階の反応開始から137分後、撹拌速度を1000rpm、空気流量を1.0L/分に低下させた。GC−FID分析は、反応の終了時に((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートが58.6g/Lの濃度で存在することを示した。GC−FID結果から計算した、この段階での((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートへの変換の収率は95%より高かった。
3時間後に反応を停止させ、5Mリン酸溶液を用いてpHを4.0に低下させて、反応混合物の全容量を簡単なガラス容器に移し、ガラス容器に200g/LのNa2SO4を添加して、5Mリン酸でpHを再び4.0に補正し、酢酸エチル920mLと混合して(1:1)、「全ブロス」抽出工程を実施した。有機相を収集し、別の920mLの酢酸エチルを水相に添加した。手順全体を5回反復した。収集した有機相画分を合わせて、無水硫酸マグネシウム約150gを添加し(酢酸エチル相から水を除去するため)、ろ過して除去した。次に低圧蒸発によって40℃で溶媒を除去した。残存する物質(51.1g)、室温で蜂蜜の粘稠度を有する黄色からコハク色の油を、1H NMRを用いて分析し、GC−MSによって((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの構造を確認し、クロマトグラフィ純度(GC−FID)は78.6%であった。2つの連続的な酵素反応の全体的なモル収率は81.6%と計算された。
[実施例26]
生存全細胞触媒の高細胞密度生産ならびにアセチルオキシアセトアルデヒドおよびアセトアルデヒドからの((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートのワンポット同時生成
生存全細胞触媒E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC_T7p_RBS_Gcd(調製は実施例6に述べられている。)の高細胞密度培養物を、最大容量2Lの実験室バイオリアクターInfors ISF100を使用して「フェドバッチ」バイオプロセスで調製した。以下で述べるように反応器を撹拌し、通気して、温度およびpHを制御した。培地に提供した初期基質の消費後、アンモニアおよびグルコースを、それぞれ窒素源および炭素源として工程に連続的に供給する。
培地の組成物および調製は次のとおりであった:
13.3g/L KH2PO4、1.7g/Lクエン酸、60mg/Lクエン酸Fe(III)、40g/L D−グルコース、8mg/L Zn(CH3COO)2・2H2O、1g/L(NH4)2HPO4、2.7g/L MgSO4・7H2Oおよび10mL/L鉱液。
鉱液を次のように予調製した:
1.5g/L MnCl2・4H2O、0.3g/L H3BO3、0.25g/L NaMoO4・2H2O、0.25g/L CoCl2・6H2O、0.15g/L CuCl2・2H2O、0.84g/L EDTA、1g/L Na2PO4・2H2O。
沈殿を防ぐため、特別なプロトコールに従って初期培地を調製した:KH2PO4、クエン酸Fe(III)、鉱液、Zn(CH3COO)2・2H2Oおよび(NH4)2HPO4を溶液として最終容量の約半分まで連続して添加した。加圧滅菌(121℃で20分間)した後、グルコース、MgSO4・7H2Oおよびカナマイシン(25mg/mL)の滅菌溶液を、事前に12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液でpHを6.8に調整した後、添加した。滅菌蒸留水を添加してバイオリアクター中で最終容量(1L)を調整した。上記溶液をろ過(0.2μm)によって別々に滅菌した。
供給溶液は、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液、シリコーン消泡性化合物であるシンペロニック消泡剤(Sigma,A−5551)および50%(w/v)グルコースであった。
両方の培養物についての接種材料を対数増殖期の振とうフラスコ培養物50mLとして提供した。VD培地(50mL;10g/Lバクトイーストエクストラクト、5g/Lグリセロール、5g/L NaCl、4g/L NaH2PO4・2H2O、pHは1M NaOHで7.0に調整した。)に、新たに画線培養したVD寒天プレートからの前記全細胞触媒の単一コロニーを接種し、対数増殖期後期まで前培養した(37℃、250rpm、8時間)。
接種時の初期工程パラメータは次のとおりであった:25℃、空気流量1.5L/分(1.5VVM)、撹拌器速度800rpm、pH6.8。培養の間、溶解酸素濃度をpO2/撹拌速度制御ループおよびpO2/空気流量制御ループによって飽和の20%以上に保持し、バイオプロセスの終わりごろに0%に近づけ、バイオリアクター能力を最大にした(撹拌器速度2000rpm、通気3L/分)。
pHは、pHが6.8より下になった場合は常にアンモニア溶液のパルスをバイオリアクターに供給する、pHセンサー制御された外部ポンプを使用して全工程の間6.8に保持した。
初期培地中に存在するグルコースの枯渇後、pO2およびpHレベルの特徴的な上昇が認められる(工程に入って約10から12時間)。この時点で50%(w/v)グルコースの供給を開始し、できるだけ指数曲線に近づけるように手操作で調節した(供給は0.1mL/分で開始し、24時間後に0.6mL/分で終了した。)。工程は基質供給によって制御することができる;グルコース濃度を動的なゼロに保持する場合、グルコース溶液流量が培養物の呼吸速度を制御する。酸素供給および熱伝達に関する技術的な制約はこのようにして成功裏に克服することができる。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30/DeoC+Gcdの培養物中のタンパク質DERAおよびGcdの発現の誘導を、供給段階の開始の6時間後に0.1mM IPTG(Sigma Aldrich,Germany)を添加することによって実施した。
工程の全体的な長さは34から42時間であり、150から200g/Lのレベルの湿重量のバイオマスが得られる。
E.コリ(E.coli)BL21(DE3)pET30a/DeoC+Gcdの高密度培養物690mLをバイオリアクター中に保持し、1300rpmで撹拌した。温度を37℃に上昇させ、通気(1.0L/分)を行って、アセチルオキシアセトアルデヒド32.67gおよび水に希釈したアセトアルデヒド(37.00g)100mLを調製した。MgCl2およびPQQを添加して、それぞれ最終濃度10mMおよび5μMにし、PQQによるGcd酵素の完全な再構成を達成するため、反応混合物を撹拌しながら10分間放置した。アセチルオキシアセトアルデヒドの全量を一定の流量にて35分間で添加した。アセトアルデヒド溶液は、プログラム可能なポンプを用いて以下の表に示すように60分間で反応混合物に連続的に添加した。
反応の間、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液およびバイオリアクターのセンサー依存性pH補正機能を用いてpHを6.2に保持した。反応混合物を3時間半放置し、この時間中、12.5%(v/v)水酸化アンモニウム溶液を使用してpHを6.2に維持した。GC−FID分析は、反応の終了時に((2S,4R)−4,6−ジヒドロキシテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートが46.1g/Lの濃度で存在することを示した。
3時間半後に反応を停止させ、5Mリン酸溶液を用いてpHを4.0に低下させて、反応混合物の全容量を簡単なガラス容器に移し、ガラス容器に200g/LのNa2SO4を添加して、5Mリン酸でpHを再び4.0に補正し、酢酸エチル800mLと混合して(1:1)、「全ブロス」抽出工程を実施した。有機相を収集し、別の800mLの酢酸エチルを水相に添加した。手順全体を5回反復した。収集した有機相画分を合わせて、無水硫酸マグネシウム約150gを添加し(酢酸エチル相から水を除去するため)、ろ過して除去した。次に低圧蒸発によって40℃で溶媒を除去した。残存する物質(34.2g)、室温で蜂蜜の粘稠度を有する黄色からコハク色の油を、1H NMRを用いて分析し、GC−MSによって((2S,4R)−4−ヒドロキシ−6−オキソテトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)メチルアセタートの構造を確認し、クロマトグラフィ純度(GC−FID)は76.3%であった。2つの同時酵素反応の全体的なモル収率は59.9%と計算された。