<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
(1)基板処理装置の全体構成
図1は、本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示している。図2は、本実施形態で好適に用いられる縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線断面図で示している。
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス等の金属から構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。なお、マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
処理室201内には、第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。第1ノズル249a、第2ノズル249b、第3ノズル249c、第4ノズル249dには、第1原料ガス供給管232a、第3原料ガス供給管232b、第1酸化ガス供給管232c、第1触媒ガス供給管232dが、それぞれ接続されている。また、第1原料ガス供給管232aには、第2原料ガス供給管232eが接続されている。また、第3原料ガス供給管232bには、第4原料ガス供給管232fが接続されている。また、第1酸化ガス供給管232cには、第2酸化ガス供給管232gが接続されている。また、第1触媒ガス供給管232dには、第2触媒ガス供給管232hが接続されている。このように、反応管203には4本のノズル249a〜249dと、複数本のガス供給管232a〜232hとが設けられており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することができるように構成されている。
第1原料ガス供給管232aには、上流方向から順に、例えば第1原料ガス供給源としてのTiCl4ガス供給源242a、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1原料ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第2原料ガス供給管232eが接続されている。この第2原料ガス供給管232eには、上流方向から順に、例えば第2原料ガス供給源としてのZrCl4ガス供給源242e、流量制御器(流量制御部)であるMFC241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第1原料ガス供給管232aにおける第2原料ガス供給管232eとの接続箇所よりも下流側には、第1不活性ガス供給管232iが接続されている。この第1不活性ガス供給管232iには、上流方向から順に、例えば第1不活性ガス供給源としてのN2ガス供給源242i、流量制御器(流量制御部)であるMFC241i、及び開閉弁であるバルブ243iが設けられている。
また、第1原料ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル249aが接続されている。第1ノズル249aは、図2に示されているように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル249aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第1ノズル249aはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第1ノズル249aの側面にはガスを供給するガス供給孔250aが設けられている。図2に示されているように、ガス供給孔250aは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔250aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
上記に挙げたTiCl4ガスやZrCl4ガスは、後述するように、TiやZr等の金属元素を含む金属系原料ガスといえる。主に、原料ガス供給管232a,232e、MFC241a,241e、バルブ243a,243eにより、金属系原料ガス供給系が構成される。なお、第1ノズル249a、TiCl4ガス供給源242a,ZrCl4ガス供給源242eを金属系原料ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第1不活性ガス供給管232i、MFC241i、バルブ243iにより、第1不活性ガス供給系が構成される。なお、N2ガス供給源242iを第1不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。第1不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
第3原料ガス供給管232bには、上流方向から順に、例えば第3原料ガス供給源としてのSi2Cl6(HCDS)ガス供給源242b、流量制御器(流量制御部)であるMFC241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第3原料ガス供給管232bのバルブ243dよりも下流側には、第4原料ガス供給管232fが接続されている。この第4原料ガス供給管232fには、上流方向から順に、例えば第4原料ガス供給源としてのSiHCl3(TCS)ガス供給源242f、流量制御器(流量制御部)であるMFC241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第3原料ガス供給管232bにおける第4原料ガス供給管232fとの接続箇所よりも下流側には、第2不活性ガス供給管232jが接続されている。この第2不活性ガス供給管232jには、上流方向から順に、例えば第2不活性ガス供給源としてのN2ガス供給源242j、流量制御器(流量制御部)であるMFC241j、及び開閉弁であるバルブ243jが設けられている。
また、第3原料ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル249bが接続されている。第2ノズル249bは、図2に示されているように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第2ノズル249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第2ノズル249bはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第2ノズル249bの側面にはガスを供給するガス供給孔250bが設けられている。図2に示されているように、ガス供給孔250bは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
上記に挙げたHCDSガスやTCSガスは、後述するように、シリコン(Si)を含むシリコン系原料ガス(以下、Si系原料ガスともいう)といえる。主に、原料ガス供給管232b,232f、MFC241b,241f、バルブ243b,243fにより、シリコン系原料ガス供給系(Si系原料ガス供給系)が構成される。なお、第2ノズル249b、HCDSガス供給源242b,TCSガス供給源242fをSi系原料ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第2不活性ガス供給管232j、MFC241j、バルブ243jにより、第2不活性ガス供給系が構成される。なお、N2ガス供給源242jを第2不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。第2不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
また、主に、金属系原料ガス供給系およびSi系原料ガス供給系により、複数の供給ライン(供給系)の集合体である原料ガス供給系が構成される。すなわち、原料ガス供給系は、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の金属系原料ガスやSi系原料ガス(以下、これらを単に「原料ガス」ともいう)をそれぞれ供給する複数の供給ラインの集合体とみることもできる。つまり、原料ガス供給系は、主に第1原料ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより構成されるTiCl4ガス供給ラインと、主に第2原料ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより構成されるZrCl4ガス供給ラインと、第3原料ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより構成されるHCDSガス供給ラインと、主に第4原料ガス供給管232f、MFC241f、バルブ243fにより構成されるTCSガス供給ラインと、の集合体であるといえる。このとき、個々の供給ラインに、第1ノズル249aまたは第2ノズル249bや、対応する各原料ガス供給源242a,242e,242b,242fを含めて考えてもよい。
第1酸化ガス供給管232cには、上流方向から順に、例えば第1酸化ガス供給源としてのH2Oガス供給源242c、流量制御器(流量制御部)であるMFC241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第1酸化ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第2酸化ガス供給管232gが接続されている。この第2酸化ガス供給管232gには、上流方向から順に、例えば第2酸化ガス供給源としてのH2O2ガス供給源242g、流量制御器(流量制御部)であるMFC241g、及び開閉弁であるバルブ243gが設けられている。第1酸化ガス供給管232cにおける第2酸化ガス供給管232gとの接続箇所よりも下流側には、第3不活性ガス供給管232kが接続されている。この第3不活性ガス供給管232kには、上流方向から順に、例えば第3不活性ガス供給源としてのN2ガス供給源242k、流量制御器(流量制御部)であるMFC241k、及び開閉弁であるバルブ243kが設けられている。
また、第1酸化ガス供給管232cの先端部には、上述の第3ノズル249cが接続されている。第3ノズル249cは、図2に示されているように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第3ノズル249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第3ノズル249cはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第3ノズル249cの側面にはガスを供給するガス供給孔250cが設けられている。図2に示されているように、ガス供給孔250cは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
主に、酸化ガス供給管232c,232g、MFC241c,241g、バルブ243c,243gにより、酸化ガス供給系が構成される。なお、第3ノズル249c、H2Oガス供給源242c、H2O2ガス供給源242g、を酸化ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第3不活性ガス供給管232k、MFC241k、バルブ243kにより、第3不活性ガス供給系が構成される。なお、N2ガス供給源242kを第3不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。第3不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
なお、酸化ガス供給系は、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の酸化ガスをそれぞれ供給する複数の供給ライン(供給系)の集合体とみることもできる。つまり、酸化ガス供給系は、主に第1酸化ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより構成されるH2Oガス供給ラインと、主に第2酸化ガス供給管232g、MFC241g、バルブ243gにより構成されるH2O2ガス供給ラインと、の集合体であるといえる。このとき、個々の供給ラインに、第3ノズル249cや、対応する各酸化ガス供給源242c,242gを含めて考えてもよい。
第1触媒ガス供給管232dには、上流方向から順に、例えば第1触媒ガス供給源としてのC5H5N(ピリジン)ガス供給源242d、流量制御器(流量制御部)であるMFC241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第1触媒ガス供給管232dのバルブ243dよりも下流側には、第2触媒ガス供給管232hが接続されている。この第2触媒ガス供給管232hには、上流方向から順に、例えば第2触媒ガス供給源としてのNH3ガス供給源242h、流量制御器(流量制御部)であるMFC241h、及び開閉弁であるバルブ243hが設けられている。また、第1触媒ガス供給管232dにおける第2触媒ガス供給管232hとの接続箇所よりも下流側には、第4不活性ガス供給管232lが接続されている。この第4不活性ガス供給管232lには、上流方向から順に、例えば第4不活性ガス供給源としてのN2ガス供給源242l、流量制御器(流量制御部)であるMFC241l、及び開閉弁であるバルブ243lが設けられている。
また、第1触媒ガス供給管232dの先端部には、上述の第4ノズル249dが接続されている。第4ノズル249dは、図2に示されているように、反応管203の内壁とウエハ200との間における円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第4ノズル249dは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うように設けられている。第4ノズル249dはL字型のロングノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、その垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がるように設けられている。第4ノズル249dの側面にはガスを供給するガス供給孔250dが設けられている。図2に示されているように、ガス供給孔250dは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔250dは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
主に、触媒ガス供給管232d,232h、MFC241d,241h、バルブ243d,243hにより、触媒ガス供給系が構成される。なお、第4ノズル249d、ピリジンガス供給源242d、NH3ガス供給源242hを触媒ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第4不活性ガス供給管232l、MFC241l、バルブ243lにより、第4不活性ガス供給系が構成される。なお、N2ガス供給源242lを第4不活性ガス供給系に含めて考えてもよい。第4不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
このように、少なくとも本実施形態におけるロングノズルを用いたガス供給の方法は、反応管203の内壁と、積載された複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長に伸びた空間内、つまり、円筒状の空間内に配置したノズル249a,249b,249c,249dを経由してガスを搬送し、ノズル249a,249b,249c,249dにそれぞれ開口されたガス供給孔250a,250b,250c,250dからウエハ200の近傍で初めて反応管203内にガスを噴出させており、反応管203内におけるガスの主たる流れをウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。このような構成とすることで、各ウエハ200に均一にガスを供給でき、各ウエハ200の表面上に形成される薄膜の膜厚を均一にできる効果がある。なお、ウエハ200の表面上を流れたガス、すなわち、反応後の残ガスは、排気口、すなわち、後述する排気管231の方向に向かって流れるが、この残ガスの流れの方向は、排気口の位置によって適宜特定され、垂直方向に限ったものではない。
第1原料ガス供給管232aからは、金属元素を含む金属系原料ガスとして、例えば金属元素とハロゲン元素とを含むガス、すなわち、ハロメタル系原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、第1ノズル249aを介して処理室201内に供給される。ここで、ハロメタル系原料ガスは、金属元素として例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、およびモリブデン(Mo)等のうち少なくともいずれかを含む。また、ハロメタル系原料ガスは、ハロゲン元素として例えばフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)等のうち少なくともいずれかを含む。金属系原料ガスは、金属元素を含み、ハロゲン元素(ハロゲン基)としてCl(クロロ基)を含むクロロメタル系原料ガスを含む。第1原料ガス供給管232aから供給される金属系原料ガスとしては、例えば、金属元素としてTiを含むクロロメタル系原料ガスであるチタニウムテトラクロライド(TiCl4)ガスを用いることができる。
第2原料ガス供給管232eからは、金属元素を含む金属系原料ガスとして、例えば金属元素とハロゲン元素とを含むガス、すなわち、ハロメタル系原料ガスが、MFC241e、バルブ243e、第1ノズル249aを介して処理室201内に供給される。第2原料ガス供給管232eから供給される金属系原料ガスとしては、例えば、金属元素としてZrを含むクロロメタル系原料ガスであるジルコニウムテトラクロライド(ZrCl4)ガスを用いることができる。
金属系原料ガスとしては、チタン系原料ガス(Ti系原料ガス)であれば、チタニウムテトラクロライド(TiCl4)ガスの他、チタニウムテトラフルオライド(TiF4)ガス、およびチタニウムテトラブロマイド(TiBr4)ガス等を用いることができ、ジルコニウム系原料ガス(Zr系原料ガス)であれば、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl4)ガスの他、ジルコニウムテトラフルオライド(ZrF4)ガス、およびジルコニウムテトラブロマイド(ZrBr4)ガス等を用いることができる。この他、金属系原料ガスとしては、ハフニウムテトラクロライド(HfCl4)ガス、タンタルペンタクロライド(TaCl5)ガス、アルミニウムトリクロライド(AlCl3)ガス、およびモリブデンペンタクロライド(MoCl5)ガス等を用いることができる。
第3原料ガス供給管232bからは、シリコン(Si)を含むシリコン系原料ガス(Si系原料ガス)として、例えばSiとハロゲン元素とを含むガス、すなわち、ハロシラン系原料ガスが、MFC241b、バルブ243b、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給される。ここで、ハロシラン系原料ガスは、ハロゲン元素として例えばF、Cl、Br等のうち少なくともいずれかを含む。Si系原料ガスは、Siを含み、ハロゲン元素(ハロゲン基)としてCl(クロロ基)を含むクロロシラン系原料ガスを含む。第3原料ガス供給管232bから供給されるSi系原料ガスとしては、例えば、Siを含むクロロシラン系原料ガスであるヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガスを用いることができる。
第4原料ガス供給管232fからは、Siを含むSi系原料ガスとして、例えばSiとハロゲン元素とを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスが、MFC241f、バルブ243f、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給される。第4原料ガス供給管232fから供給されるSi系原料ガスとしては、例えば、Siを含むクロロシラン系原料ガスであるトリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガスを用いることができる。
Si系原料ガスとしては、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガスの他、シリコンテトラクロライド(SiCl4、略称:STC)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、およびモノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス等を用いることができる。
このように、原料ガス供給系を構成する複数の供給ラインは、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の原料ガスをそれぞれ供給するよう構成されている。また、このように、各原料ガスは、それぞれ異なる分子構造、つまり、それぞれ異なる化学構造式を有している。各原料ガスの組成や成分が異なっていてもよい。それぞれ異なる分子構造を有する原料ガスは、化学的性質もそれぞれ異なっている。よって、後述するように、所望の成膜処理に応じて、適宜、原料ガスの種類を選択することで、1台の基板処理装置で様々な組成比、膜質の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。
ここで、各原料ガス供給管232a,232eから供給されるクロロメタル系原料ガスとは、気体状態のクロロメタル系原料、例えば、常温常圧下で液体状態であるクロロメタル系原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態であるクロロメタル系原料等のことである。また、各原料ガス供給管232b,232fから供給されるクロロシラン系原料ガスとは、気体状態のクロロシラン系原料、例えば、常温常圧下で液体状態であるクロロシラン系原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態であるクロロシラン系原料等のことである。なお、本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である液体原料」を意味する場合、「気体状態である原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。従って、本明細書において「クロロメタル系原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態であるクロロメタル系原料」を意味する場合、「気体状態であるクロロメタル系原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。また、本明細書において「クロロシラン系原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態であるクロロシラン系原料」を意味する場合、「気体状態であるクロロシラン系原料ガス」を意味する場合、または、その両方を意味する場合がある。なお、TiCl4、ZrCl4、HCDS、TCSのように常温常圧下で液体状態である液体原料を用いる場合は、液体原料を気化器やバブラ等の気化システムにより気化して、原料ガス(TiCl4ガス、ZrCl4ガス、HCDSガス、TCSガス)として供給することとなる。
第1酸化ガス供給管232cからは、酸化ガスとして、例えば、酸素(O)を含むガス(酸素含有ガス)が、MFC241c、バルブ243c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。第1酸化ガス供給管232cから供給される酸化ガスとしては、例えば、水蒸気(H2Oガス)を用いることができる。なお、H2Oガスの供給に際し、図示しない外部燃焼装置に、酸素(O2)ガスと水素(H2)ガスとを供給してH2Oガスを生成し、供給する構成としてもよい。
第2酸化ガス供給管232gからは、酸化ガスとして、例えば、Oを含むガス(酸素含有ガス)が、MFC241g、バルブ243g、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給される。第2酸化ガス供給管232gから供給される酸化ガスとしては、例えば、過酸化水素(H2O2)ガスを用いることができる。
このように、酸化ガス供給系を構成する複数の供給ラインは、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の酸化ガスをそれぞれ供給するよう構成されている。また、このように、各酸化ガスは、それぞれ異なる分子構造、つまり、それぞれ異なる化学構造式を有している。各酸化ガスの組成や成分が異なっていてもよい。それぞれ異なる分子構造を有する酸化ガスは、化学的性質もそれぞれ異なっている。よって、後述するように、所望の成膜処理に応じて、適宜、酸化ガスの種類を選択することで、1台の基板処理装置で様々な組成比、膜質の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。
第1触媒ガス供給管232dからは、酸解離定数(以下、pKaともいう)が5〜11程度、好ましくは5〜7である触媒ガスとして、例えば、孤立電子対を有する窒素(N)を含むガス(窒素系ガス)が、MFC241d、バルブ243d、第4ノズル249dを介して処理室201内に供給される。ここで、酸解離定数(pKa)とは、酸の強さを定量的に表わす指標のひとつであり、酸から水素イオンが放出される解離反応における平衡定数Kaを負の常用対数で表わしたものである。触媒ガスは、孤立電子対を有するNを含むことで、その触媒作用によりウエハ200の表面、あるいは、H2Oガス等の酸化ガスが有するO−H結合の結合力を弱め、金属系原料ガスやSi系原料ガスの分解を促進し、また、H2Oガス等による酸化反応を促進する。孤立電子対を有するNを含む窒素系ガスとしては、例えばアンモニア(NH3)が有する水素原子のうち少なくとも1つをアルキル基等の炭化水素基で置換したアミンを含むアミン系ガスが挙げられる。第1触媒ガス供給管232dから供給される触媒ガスとしては、例えば、アミン系ガスであるピリジン(C5H5N)ガスを用いることができる。
図14に示されているように、触媒ガスとして用いられる各種アミンは、例えばピリジン(C5H5N、pKa=5.67)の他、アミノピリジン(C5H6N2、pKa=6.89)、ピコリン(C6H7N、pKa=6.07)、ルチジン(C7H9N、pKa=6.96)、ピペラジン(C4H10N2、pKa=9.80)、およびピペリジン(C5H11N、pKa=11.12)等を含む。図14に示される各種アミンは、炭化水素基が環状となった環状アミンでもある。また、これらの環状アミンは、CとNとの複数種類の元素からその環状構造が構成される複素環化合物、すなわち、窒素含有複素環化合物であるともいえる。
第2触媒ガス供給管232hからは、上記と同様の触媒作用を持つ触媒ガスとして、例えば、孤立電子対を有するNを含む窒素系ガスが、MFC241h、バルブ243h、第4ノズル249dを介して処理室201内に供給される。第2触媒ガス供給管232hから供給される触媒ガスとしては、例えば、非アミン系ガスであるアンモニア(NH3、pKa=9.2)ガスを用いることができる。
このように、触媒ガス供給系を構成する複数の供給ラインは、分子構造がそれぞれ異なる複数種類の触媒ガスをそれぞれ供給するよう構成されている。また、このように、各触媒ガスは、それぞれ異なる分子構造、つまり、それぞれ異なる化学構造式を有している。各触媒ガスの組成や成分が異なっていてもよい。それぞれ異なる分子構造を有する触媒ガスは、化学的性質もそれぞれ異なっている。よって、後述するように、所望の成膜処理に応じて、適宜、触媒ガスの種類を選択することで、1台の基板処理装置で様々な組成比、膜質の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。
不活性ガス供給管232i,232j,232k,232lからは、例えば、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスが、それぞれMFC241i,241j,241k,241l、バルブ243i,243j,243k,243l、ガス供給管232a,232b,232c、232d、ノズル249a,249b,249c、249dを介して処理室201内に供給される。不活性ガスは、例えばN2ガスの他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを含む。
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。なお、真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。排気系は、真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ244の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、排気管231は反応管203に設ける場合に限らず、ノズル249a〜249dと同様にマニホールド209に設けてもよい。
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219はマニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面にはマニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述する基板支持具としてのボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。すなわち、ボートエレベータ115は、ボート217およびボート217に支持されるウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成される。
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なお、ボート217の下部には、例えば石英や炭化シリコン等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるよう構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化シリコン等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル249a〜249dと同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
図3に示されているように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する薄膜形成等の基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。なお、プロセスレシピは、後述する薄膜形成工程等の基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
I/Oポート121dは、上述のMFC241a〜241l、バルブ243a〜243l、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU121aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、MFC241a〜241lによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a〜243lの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作及び圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
なお、コントローラ121は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123を用意し、係る外部記憶装置123を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ121を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置123を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置123を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
(2)薄膜形成工程
次に、上述の基板処理装置の処理炉202を用いて、半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を形成(成膜)するシーケンス例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
本実施形態では、
基板としてのウエハ200に対して金属元素を含む金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
ウエハ200に対して酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に金属元素を含む薄膜を形成する。
また、本実施形態では、
各工程は、ノンプラズマの雰囲気下で行われる。
ここで、サイクルが「金属系原料ガスと触媒とを供給する工程」と「酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程」との各工程を含むとは、1サイクル内に各工程が1回以上含まれていることをいう。したがって、1サイクルにおいて、各工程を1回ずつ行ってもよく、或いは、少なくともいずれかの工程を複数回行ってもよい。また、1サイクルにおいて、各工程を同じ回数行ってもよく、異なる回数行ってもよい。また、サイクル内での各工程の実施順は任意に決定することができる。このように、各工程を行う回数、順番、組み合わせ等を適宜変更することで、膜質や膜組成や成分比率等の異なる薄膜を形成することができる。また、「サイクルを所定回数行う」とは、このサイクルを、1回行うこと、又は、複数回繰り返すことをいう。ただし、このサイクルは複数回繰り返すことが好ましい。
なお、本実施形態では、形成する薄膜の組成比が化学量論組成、または、化学量論組成とは異なる所定の組成比となるようにすることを目的として、形成する薄膜を構成する複数の元素を含む複数種類のガスの供給条件を制御する。例えば、形成する薄膜を構成する複数の元素のうち少なくとも一つの元素が他の元素よりも化学量論組成に対し過剰となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。以下、形成する薄膜を構成する複数の元素の比率、すなわち、薄膜の組成比を制御しつつ成膜を行うシーケンス例について説明する。
以下、本実施形態の成膜シーケンスを、図4、図5(a)を用いて具体的に説明する。図4は、本実施形態の成膜シーケンスにおける成膜フローを示す図である。図5(a)は、本実施形態の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図である。
なお、ここでは、
ウエハ200に対して金属系原料ガスとしてのTiCl4ガスと、触媒ガスとしてのピリジンガスと、を供給する工程と(ステップ1a)、
ウエハ200に対して酸化ガスとしてのH2Oガスと、触媒ガスとしてのピリジンガスと、を供給する工程と(ステップ2a)、
を含むサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に金属元素を含む薄膜として、チタン(Ti)を含むチタン酸化膜(TiO2膜、以下、TiO膜ともいう)を形成する例について説明する。
また、ここでは、1サイクルにおいて、これらの工程を1回ずつ交互に行う例について説明する。
なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(又は膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(又は膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(又は膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
(ウエハチャージ及びボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
(圧力調整及び温度調整)
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。なお、真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。なお、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。ただし、後述するように、室温でウエハ200に対する処理を行う場合は、ヒータ207による処理室201内の加熱は行わなくてもよい。続いて、回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転を開始する。なお、回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
(TiO膜形成工程)
その後、次の2つのステップ、すなわち、ステップ1a,2aを順次実行する。
[ステップ1a]
(TiCl4ガス+ピリジンガス供給)
第1原料ガス供給管232aのバルブ243aを開き、第1原料ガス供給管232a内にTiCl4ガスを流す。第1原料ガス供給管232a内を流れたTiCl4ガスは、MFC241aにより流量調整される。流量調整されたTiCl4ガスは、第1ノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTiCl4ガスが供給されることとなる(TiCl4ガス供給)。このとき同時にバルブ243iを開き、第1不活性ガス供給管232i内にN2ガス等の不活性ガスを流す。第1不活性ガス供給管232i内を流れたN2ガスは、MFC241iにより流量調整される。流量調整されたN2ガスは、TiCl4ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
また、このとき、第1触媒ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第1触媒ガス供給管232d内にピリジンガスを流す。第1触媒ガス供給管232d内を流れたピリジンガスは、MFC241dにより流量調整される。流量調整されたピリジンガスは、第4ノズル249dのガス供給孔250dから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してピリジンガスが供給されることとなる(ピリジンガス供給)。このとき同時にバルブ243lを開き、第4不活性ガス供給管232l内にN2ガス等の不活性ガスを流す。第4不活性ガス供給管232l内を流れたN2ガスは、MFC241lにより流量調整される。流量調整されたN2ガスは、ピリジンガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
なお、このとき、第2ノズル249b、第3ノズル249c内へのTiCl4ガスおよびピリジンガスの侵入を防止するため、バルブ243j,243kを開き、第2不活性ガス供給管232j、第3不活性ガス供給管232k内にN2ガスを流す。N2ガスは、第3原料ガス供給管232b、第1酸化ガス供給管232c、第2ノズル249b、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜13300Pa、好ましくは20〜1330Paの範囲内の圧力であって、例えば1330Paとする。MFC241aで制御するTiCl4ガスの供給流量は、例えば1〜2000sccmの範囲内の流量とする。また、MFC241dで制御するピリジンガスの供給流量は、例えばTiCl4ガスの供給流量(sccm)/ピリジンガスの供給流量(sccm)の比にして0.01〜100、より好ましくは0.05〜10の範囲内となる流量とする。MFC241i〜241lで制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。TiCl4ガス及びピリジンガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜30秒の範囲内の時間とする。
このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば室温以上200℃以下、好ましくは室温以上150℃以下、より好ましくは室温以上100℃以下の範囲内のいずれかの温度となるような温度に設定する。なお、TiCl4ガス供給時に、触媒ガスを供給しない場合には、ウエハ200の温度が例えば200℃以下となるとウエハ200上にTiCl4が化学吸着しにくくなり、実用的な成膜レートが得られなくなることがある。本実施形態のように、触媒ガスとしてのピリジンガスを供給することで、ウエハ200の温度を例えば200℃以下としても、これを解消することが可能となる。ピリジンガスの存在下において、ウエハ200の温度を200℃以下、さらには150℃以下、100℃以下とすることで、ウエハ200に加わる熱量を低減することができ、ウエハ200の受ける熱履歴の制御を良好に行うことができる。また、ピリジンガスの存在下では、室温以上の温度であれば、ウエハ200上にTiCl4を充分に吸着させることができ、充分な成膜レートが得られることとなる。よって、ウエハ200の温度は室温以上200℃以下、好ましくは室温以上150℃以下、より好ましくは室温以上100℃以下の範囲内のいずれかの温度とするのがよい。
上述の条件下でウエハ200に対してTiCl4ガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さの、Clを含むチタン含有層(Ti含有層)が形成される。Clを含むTi含有層は、Clを含むチタン層(Ti層)であってもよいし、TiCl4ガスの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
ここで、Clを含むTi層とは、Tiにより構成されClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるチタン薄膜(Ti薄膜)をも含む総称である。なお、Tiにより構成されClを含む連続的な層を、Clを含むTi薄膜という場合もある。なお、Clを含むTi層を構成するTiは、Clとの結合が完全に切れていないものの他、Clとの結合が完全に切れているものも含む。
また、TiCl4ガスの吸着層は、TiCl4ガスのガス分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、TiCl4ガスの吸着層は、TiCl4分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。なお、TiCl4ガスの吸着層を構成するTiCl4分子は、TiとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、TiCl4ガスの吸着層は、TiCl4分子の化学吸着層やTiCl4分子の物理吸着層を含む。
なお、1原子層未満の厚さの層とは不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは連続的に形成される原子層のことを意味している。また、1分子層未満の厚さの層とは不連続に形成される分子層のことを意味しており、1分子層の厚さの層とは連続的に形成される分子層のことを意味している。なお、Clを含むTi含有層は、Clを含むTi層とTiCl4ガスの吸着層との両方を含み得るが、上述の通り、Ti含有層については「1原子層」、「数原子層」等の表現を用いることとする。
ウエハ200上に形成されるClを含むTi含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ2aでの改質の作用がClを含むTi含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なClを含むTi含有層の厚さの最小値は1原子層未満である。よって、Clを含むTi含有層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。なお、Clを含むTi含有層の厚さを1原子層以下、すなわち、1原子層または1原子層未満とすることで、後述するステップ2aでの改質反応の作用を相対的に高めることができ、ステップ2aの改質反応に要する時間を短縮することができる。ステップ1aのClを含むTi含有層の形成に要する時間を短縮することもできる。結果として、1サイクルあたりの処理時間を短縮することができ、トータルでの処理時間を短縮することも可能となる。すなわち、成膜レートを高くすることも可能となる。また、Clを含むTi含有層の厚さを1原子層以下とすることで、膜厚均一性の制御性を高めることも可能となる。
TiCl4ガスが自己分解(熱分解)する条件下、すなわち、TiCl4の熱分解反応が生じる条件下では、ウエハ200上にTiが堆積することでClを含むTi層が形成される。TiCl4ガスが自己分解(熱分解)しない条件下、すなわち、TiCl4の熱分解反応が生じない条件下では、ウエハ200上にTiCl4ガスが吸着することでTiCl4ガスの吸着層が形成される。なお、ウエハ200上にTiCl4ガスの吸着層を形成するよりも、ウエハ200上にClを含むTi層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ、好ましい。但し、本実施形態では、ウエハ200の温度を例えば200℃以下の低温としているので、ウエハ200上にClを含むTi層が形成されるよりも、ウエハ200上にTiCl4ガスの吸着層が形成される方が、優位となる可能性がある。さらに、触媒ガスを供給しない場合には、TiCl4ガスの吸着層においては、ウエハ200表面等の下地に対する結合やTiCl4分子同士の結合が、化学吸着よりも弱い物理吸着の状態が優位となってしまう可能性がある。すなわち、TiCl4ガスの吸着層は、その殆どがTiCl4ガスの物理吸着層から構成されてしまう可能性がある。
ここで、触媒としてのピリジンガスは、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、TiCl4ガスの分解を促し、TiCl4分子の化学吸着によるClを含むTi含有層の形成を促進させる。すなわち、図6(a)に示されているように、例えばウエハ200やClを含むTi含有層等の表面に存在するO−H結合に、触媒としてのピリジンガスが作用してO−H間の結合力を弱める。結合力の弱まった水素(H)とTiCl4ガスのClとが反応することで塩化水素(HCl)ガスが生成されて脱離し、Clを失ったTiCl4分子(ハロゲン化物)がウエハ200等の表面に化学吸着する。すなわち、ウエハ200等の表面に、TiCl4ガスの化学吸着層が形成される。ピリジンガスがO−H間の結合力を弱めるのは、ピリジン分子中の孤立電子対を有するN原子が、Hを引きつける作用を持つためである。N原子等を含む所定の化合物がHを引きつける作用の大きさ、つまり、触媒ガスの触媒作用の大きさは、例えば上述の酸解離定数(pKa)を指標の1つとすることができる。
上述の通り、pKaは、酸から水素イオンが放出される解離反応における平衡定数Kaを負の常用対数で表わした定数であり、pKaが大きい化合物はHを引き付ける力が強い。例えば、pKaが5以上の化合物を触媒ガスとして用いることで、TiCl4ガスの分解を促してClを含むTi含有層の形成を促進させることができる。一方で、触媒ガスのpKaが過度に大きいと、TiCl4分子から引き抜かれたClと触媒ガスとが結合し、これにより生じた成分、つまり、塩化アンモニウム(NH4Cl)等の塩(Salt:イオン化合物)がパーティクルとなる場合がある。これを抑制するには、触媒ガスのpKaを11程度以下、好ましくは7以下とすることが望ましい。ピリジンガスはpKaが約5.67と比較的大きく、Hを引きつける力が強い。また、pKaが7以下であるので、パーティクルも発生し難い。
以上のように、触媒ガスとしてのピリジンガスをTiCl4ガスと共に供給することで、例えば200℃以下の低温条件下であっても、TiCl4ガスの分解を促進し、TiCl4ガスの物理吸着層の形成ではなく化学吸着層の形成が優勢となるよう、Clを含むTi含有層を第1の層として形成することができる。この第1の層が、その後に行われるステップ2aにおいて改質され、チタン酸化層(TiO層)や、係るTiO層が積層されてなるTiO膜を高い成膜レートで形成することができる。
(残留ガス除去)
第1の層としてのClを含むTi含有層がウエハ200上に形成された後、第1原料ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、TiCl4ガスの供給を停止する。また、第1触媒ガス供給管232dのバルブ243dを閉じ、ピリジンガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のTiCl4ガス及びピリジンガスを処理室201内から排除する(残留ガス除去)。なお、このとき、バルブ243i〜243lは開いたままとして、不活性ガスとしてのN2ガスの処理室201内への供給を所定時間、例えば15秒間、維持する。或いは、処理室201内を真空排気する時間とパージする時間との両方を含めて15秒間などとしてもよい。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後のTiCl4ガス及びピリジンガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
なお、このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ2aにおいて悪影響が生じることはない。このとき処理室201内に供給するN2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ2aにおいて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
金属元素を含む金属系原料ガスとしては、TiCl4ガスの他、TiF4ガス、およびTiBr4ガス等を用いてもよい。触媒ガスとしては、ピリジンガスの他、アミノピリジンガス、ピコリンガス、ルチジンガス、ピペラジンガス、およびピペリジンガス等のアミン系ガスを用いてもよく、また、NH3ガス等の非アミン系ガスを用いてもよい。不活性ガスとしては、N2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
[ステップ2a]
(H2Oガス+ピリジンガス供給)
ステップ1aが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、第1酸化ガス供給管232cのバルブ243cを開き、第1酸化ガス供給管232cにH2Oガスを流す。H2Oガスは第1酸化ガス供給管232cから流れ、MFC241cにより流量調整される。流量調整されたH2Oガスは、第3ノズル249cのガス供給孔250cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してH2Oガスが供給されることとなる(H2Oガス供給)。このとき同時にバルブ243kを開き、第3不活性ガス供給管232k内に不活性ガスとしてのN2ガスを流す。第3不活性ガス供給管232k内を流れたN2ガスは、MFC241kにより流量調整される。流量調整されたN2ガスは、H2Oガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
また、このとき、第1触媒ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第1触媒ガス供給管232d内にピリジンガスを流す。第1触媒ガス供給管232d内を流れたピリジンガスは、MFC241dにより流量調整される。流量調整されたピリジンガスは、第4ノズル249dのガス供給孔250dから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してピリジンガスが供給されることとなる(ピリジンガス供給)。このとき同時にバルブ243lを開き、第4不活性ガス供給管232l内にN2ガス等の不活性ガスを流す。第4不活性ガス供給管232l内を流れたN2ガスは、MFC241lにより流量調整される。流量調整されたN2ガスは、ピリジンガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
なお、このとき、第1ノズル249a、第2ノズル249b内へのH2Oガスおよびピリジンガスの侵入を防止するため、バルブ243i,243jを開き、第1不活性ガス供給管232i、第2不活性ガス供給管232j内にN2ガスを流す。N2ガスは、第1原料ガス供給管232a、第3原料ガス供給管232b、第1ノズル249a、第2ノズル249bを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1〜13300Pa、好ましくは20〜1330Paの範囲内の圧力であって、例えば1330Paとする。MFC241cで制御するH2Oガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccmの範囲内の流量とする。また、MFC241dで制御するピリジンガスの供給流量は、例えばH2Oガスの供給流量(sccm)/ピリジンガスの供給流量(sccm)の比にして0.01〜100、より好ましくは0.05〜10の範囲内となる流量であって、例えば1(H2Oガスとピリジンガスとの供給流量が同一)となるようにする。MFC241i〜241lで制御するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100〜10000sccmの範囲内の流量とする。H2Oガスをウエハ200に対して供給する時間、すなわち、ガス供給時間(照射時間)は、例えば1〜100秒、好ましくは5〜30秒の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、ステップ1aのTiCl4ガスの供給時と同様な温度帯、すなわち、例えば室温以上200℃以下、好ましくは室温以上150℃以下、より好ましくは室温以上100℃以下の範囲内のいずれかの温度となるように設定する。
処理室201内に供給されたH2Oガスは熱で活性化され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、熱で活性化されたH2Oガスが供給されることとなる。すなわち、処理室201内に流しているガスは熱的に活性化されたH2Oガスであり、処理室201内にはTiCl4ガスは流していない。したがって、H2Oガスは気相反応を起こすことはなく、活性化された状態でウエハ200に対して供給され、ステップ1aでウエハ200上に形成された第1の層(Clを含むTi含有層)の少なくとも一部と反応する。これにより第1の層は、ノンプラズマで熱的に酸化されて、TiとOとを含む第2の層、すなわち、TiO層へと変化させられる(改質される)。
ここで、触媒ガスとしてのピリジンガスは、H2Oガスが有するO−H結合の結合力を弱め、H2Oガスの分解を促し、H2O分子の第1の層との反応を促進させる。すなわち、図6(b)に示されているように、H2Oガスの有するO−H結合に触媒ガスとしてのピリジンガスが作用し、O−H間の結合力を弱める。結合力の弱まったHと、ウエハ200上に形成された第1の層が有するClとが反応することで、HClガスが生成されて脱離し、Hを失ったH2OガスのOが、第1の層のClが脱離したTiと結合する。
以上のように、触媒ガスとしてのピリジンガスをH2Oガスと共に供給することで、例えば200℃以下の低温条件下であっても、H2Oガスの分解を促進してその酸化力を高め、第1の層をより確実に、かつ迅速に改質(酸化)することができる。よって、TiO層や、TiO膜を高い成膜レートで形成することができる。
(残留ガス除去)
その後、第1酸化ガス供給管232cのバルブ243cを閉じ、H2Oガスの供給を停止する。また、第1触媒ガス供給管232dのバルブ243dを閉じ、ピリジンガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは反応に寄与した後のH2Oガスやピリジンガスや反応副生成物を処理室201内から排除する(残留ガス除去)。なお、このとき、バルブ243i〜243lは開いたままとして、不活性ガスとしてのN2ガスの処理室201内への供給を所定時間、例えば15秒間、維持する。或いは、処理室201内を真空排気する時間とパージする時間との両方を含めて15秒間としてもよい。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは第2の層の形成に寄与した後のH2Oガスやピリジンガスや反応副生成物を処理室201内から排除する効果を高めることができる。
なお、このとき、処理室201内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室201内を完全にパージしなくてもよい。処理室201内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップ1aにおいて悪影響が生じることはない。このとき処理室201内に供給するN2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、反応管203(処理室201)の容積と同程度の量を供給することで、ステップ1aにおいて悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室201内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
酸化ガスとしては、H2Oガスの他、過酸化水素(H2O2)ガス、水素(H2)ガス+酸素(O2)ガス、H2ガス+オゾン(O3)ガス等を用いてもよい。触媒ガスとしては、ピリジンガスの他、上記に挙げた各種のアミン系ガス、又は非アミン系ガスを用いてもよい。不活性ガスとしては、N2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
(所定回数実施)
上述したステップ1a,2aを1サイクルとして、このサイクルを1回以上、つまり、所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成及び所定膜厚のTiO膜を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成するTiO層の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。
このとき、各ステップにおける処理室201内の圧力やガス供給時間等の処理条件を制御することで、TiO層における各元素成分、すなわち、Ti成分およびO成分の割合、すなわち、Ti濃度およびO濃度を調整することができ、TiO膜の組成比を制御することができる。
なお、サイクルを複数回行う場合、少なくとも2サイクル目以降の各ステップにおいて、「ウエハ200に対して所定のガスを供給する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層に対して、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味し、「ウエハ200上に所定の層を形成する」と記載した部分は、「ウエハ200上に形成されている層の上、すなわち、積層体としてのウエハ200の最表面の上に所定の層を形成する」ことを意味している。この点は、上述の通りである。なお、この点は、後述する変形例や他の実施形態においても同様である。
(パージ及び大気圧復帰)
所定組成及び所定膜厚のTiO膜を形成する成膜処理がなされたら、バルブ243i〜243lを開き、不活性ガス供給管232i〜232lのそれぞれから不活性ガスとしてのN2ガスを処理室201内に供給し、排気管231から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200はボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
本実施形態の成膜シーケンスによれば、ステップ1aで、ウエハ200に対してピリジンガスと共にTiCl4ガスを供給する。これにより、ピリジンガスの触媒作用によってTiCl4ガスの分解が促進され、Clを含むTi含有層の形成を迅速に行うことができる。結果として、TiO膜の成膜レートを向上させることができる。
また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、ステップ2aで、ウエハ200に対してピリジンガスと共にH2Oガスを供給する。これにより、ピリジンガスの触媒作用によってH2Oガスの分解が促進され、Clを含むTi含有層のTiO層への改質(酸化)を迅速に行うことができる。結果として、TiO膜の成膜レートを向上させることができる。
上述のように、半導体装置が形成されるウエハ200の熱履歴を考慮してTiO膜等のような金属元素を含む薄膜を低温条件下で成膜しようとしても、充分な成膜レートが得られないことがある。例えば、200℃〜450℃程度の温度条件下であってもTiO膜等の成膜レートが低下して、生産性が悪化してしまうことがある。
しかしながら、本実施形態では、TiCl4ガスやH2Oガスの供給時、ピリジンガス等の触媒ガスを供給する。これによって、例えば200℃以下の低温条件下であっても、TiO膜等の金属元素を含む薄膜の成膜レートを向上させることができる。よって、基板処理のスループットや生産効率を向上させ、生産コストを低減することが可能となる。
(4)本実施形態の変形例
次に、本実施形態の変形例について、図5(b)を用いて説明する。図5(b)は、本実施形態の変形例の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図である。
図5(b)に示されているように、本変形例においては、金属系原料ガスとしてZr系原料ガスであるZrCl4ガスを用い、酸化ガスとしてH2O2ガスを用い、触媒ガスとしてNH3ガスを用いる。これらにより、ウエハ200上にZrを含む薄膜としてジルコニウム酸化膜(ZrO2膜、以下、ZrO膜ともいう)を形成する。
このように、各ガスを供給する工程では、原料ガス、酸化ガス、触媒ガス等として、分子構造や組成や成分がそれぞれ異なる複数種類のガスの中から特定のガスを選択して供給することにより、異なる膜質や膜組成や膜種の薄膜を形成することができる。
複数種類の原料ガス、酸化ガス、触媒ガス等の中から特定のガスを選択して供給するには、分子構造等がそれぞれ異なる複数種類のガスをそれぞれ供給する複数の供給ラインの中から特定の供給ラインを選択することで、特定のガスを供給することができる。
上述のように、本実施形態の成膜シーケンス例では、原料ガスとして、TiCl4ガス供給ライン、ZrCl4ガス供給ライン等の中からTiCl4ガス供給ラインを選択することで、特定の原料ガスとしてTiCl4ガスを選択して供給している。また、図5(b)に示されているように、本実施形態の変形例の成膜シーケンス例では、上記原料ガス供給ラインの中からZrCl4ガス供給ラインを選択することで、特定の原料ガスとしてZrCl4ガスを選択して供給する。
また、上述のように、本実施形態の成膜シーケンス例では、酸化ガスとして、H2Oガス供給ライン、H2O2ガス供給ライン等の中からH2Oガス供給ラインを選択することで、特定の酸化ガスとしてH2Oガスを選択して供給している。また、図5(b)に示されているように、本実施形態の変形例の成膜シーケンス例では、上記酸化ガス供給ラインの中からH2O2ガス供給ラインを選択することで、特定の酸化ガスとしてH2O2ガスを選択して供給する。
また、上述のように、本実施形態の成膜シーケンス例では、触媒ガスとして、ピリジンガス供給ライン、NH3ガス供給ライン等の中からピリジンガス供給ラインを選択することで、特定の触媒ガスとしてピリジンガスを選択して供給している。また、図5(b)に示されているように、本実施形態の変形例の成膜シーケンス例では、上記触媒ガス供給ラインの中からNH3ガス供給ラインを選択することで、特定の触媒ガスとしてNH3ガスを選択して供給する。
ここで、ウエハ200に対する各ガスの供給手順について以下に説明する。その他の手順および処理条件については、上述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
(ZrCl4ガス+NH3ガス供給)
第2原料ガス供給管232eのバルブ243eを開き、第2原料ガス供給管232e内にZrCl4ガスを流す。第2原料ガス供給管232e内を流れたZrCl4ガスは、MFC241eにより流量調整される。流量調整されたZrCl4ガスは、第1ノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してZrCl4ガスが供給されることとなる(ZrCl4ガス供給)。このとき、上述の実施形態と同様の手順で、第1不活性ガス供給管232iからN2ガス等の不活性ガスを流す。N2ガスは、ZrCl4ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
また、このとき、第2触媒ガス供給管232hのバルブ243hを開き、第2触媒ガス供給管232h内にNH3ガスを流す。第2触媒ガス供給管232h内を流れたNH3ガスは、MFC241hにより流量調整される。流量調整されたNH3ガスは、第4ノズル249dのガス供給孔250dから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してNH3ガスが供給されることとなる(NH3ガス供給)。このとき、上述の実施形態と同様の手順で、第4不活性ガス供給管232lからN2ガス等の不活性ガスを流す。N2ガスは、NH3ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
このように、ウエハ200に対してZrCl4ガスを供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのClを含むZr含有層が形成される。Clを含むZr含有層は、Clを含むZr層であってもよいし、ZrCl4ガスの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
ここで、Clを含むZr層とは、Zrにより構成されClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるClを含むZr薄膜をも含む総称である。なお、Zrにより構成されClを含む連続的な層を、Clを含むZr薄膜という場合もある。なお、Clを含むZr層を構成するZrは、Clとの結合が完全に切れていないものの他、Clとの結合が完全に切れているものも含む。
またここで、ZrCl4ガスの吸着層は、ZrCl4ガスのガス分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、ZrCl4ガスの吸着層は、ZrCl4分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。なお、ZrCl4ガスの吸着層を構成するZrCl4分子は、ZrとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、ZrCl4ガスの吸着層は、ZrCl4分子の化学吸着層やZrCl4分子の物理吸着層を含む。
NH3ガスは、ZrCl4ガスと共にウエハ200に対して供給されることで、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、ZrCl4ガスの分解を促し、ZrCl4分子の化学吸着によるClを含むZr含有層の形成を促進させる。すなわち、ウエハ200等の表面に、ZrCl4ガスの化学吸着層が形成される。このように、NH3ガスは、上述のピリジンガスと同様の触媒反応を引き起こす。一方で、NH3ガスはピリジンガスよりもpKaが大きい。このように、ピリジンガスの代わりに、よりpKaの大きいNH3ガスを用いることで、ZrCl4ガスの分解がより促進され、例えばより迅速にClを含むZr含有層が形成されると考えられる。
Clを含むZr含有層がウエハ200上に形成された後、第2原料ガス供給管232eのバルブ243eを閉じ、ZrCl4ガスの供給を停止する。また、第2触媒ガス供給管232hのバルブ243hを閉じ、NH3ガスの供給を停止する。
(H2O2ガス+NH3ガス供給)
第2酸化ガス供給管232gのバルブ243gを開き、第2酸化ガス供給管232g内にH2O2ガスを流す。第2酸化ガス供給管232g内を流れたH2O2ガスは、MFC241gにより流量調整される。流量調整されたH2O2ガスは、第3ノズル249cのガス供給孔250cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してH2O2ガスが供給されることとなる(H2O2ガス供給)。このとき、上述の実施形態と同様の手順で、第2不活性ガス供給管232kからN2ガス等の不活性ガスを流す。N2ガスは、H2O2ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。また、このとき、上記と同様、ウエハ200に対してNH3ガスを供給する(NH3ガス供給)。
このように、ウエハ200に対して、熱で活性化されたH2O2ガスが供給されることで、ウエハ200上に形成された第1の層(Clを含むZr含有層)の少なくとも一部とH2O2ガスとが反応し、第1の層は、ZrとOとを含む第2の層、すなわち、ZrO層へと変化させられる(改質される)。H2O2ガスはH2Oガスよりも活性で酸化力が高い。このように、H2Oガスの代わりに、より酸化力の高いH2O2ガスを用いることで、例えばより酸化具合の進んだZrO層が形成されると考えられる。
ここで、触媒ガスとしてのNH3ガスは、H2O2ガスが有するO−H結合の結合力を弱め、H2O2ガスの分解を促し、H2O2分子の第1の層との反応を促進させる。このように、NH3ガスは、上述のピリジンガスと同様の触媒反応を引き起こす。ピリジンガスの代わりに、よりpKaの大きいNH3ガスを用いることで、H2O2ガスの分解がより促進され、例えばより迅速にZrO層が形成されると考えられる。
その後、第2酸化ガス供給管232gのバルブ243gを閉じ、H2O2ガスの供給を停止する。また、上記と同様の手順にて、NH3ガスの供給を停止する。
なお、このときの処理室201内の圧力、金属系原料ガス、酸化ガス、触媒ガス、N2ガス等の各ガスの供給流量、供給時間、ウエハ200の温度等の処理条件については、例えば上述の実施形態の処理条件と同様の範囲内の処理条件とすることができる。また、各ガスを供給する際は、上述の実施形態と同様、そのとき不使用となっているノズル249a,249b,249c,249d等へのガスの侵入を防止するN2ガス供給を行う。
以上のように、例えばTiCl4ガスのようなTi系原料ガスの代わりにZrCl4ガスのようなZr系原料ガスを用いることで、上述の実施形態のTiO膜とは成分の異なるZrO膜が得られる。また、上記のように、適宜、酸化ガスや触媒ガスの種類を選択することで、異なる膜質や膜組成の薄膜を形成することができる。
なお、ガス種の選択にあたり、金属系原料ガスと共に供給する触媒ガスの種類は、酸化ガスと共に供給する触媒ガスの種類と同一としてもよいし、異ならせてもよい。また、上述のサイクルを複数回行う場合、その途中で、金属系原料ガスや酸化ガスや触媒ガスの種類の変更を行ってもよい。このように、ガス種を途中変更することで、TiO膜やZrO膜等の薄膜の膜質や組成や成分を、膜厚方向で変化させることができる。
上述のように、本実施形態および変形例の基板処理装置は、原料ガスや酸化ガスや触媒ガスについて複数の供給ラインを備え、分子構造がそれぞれ異なる複数種類のガスの中から特定のガスを選択して供給可能に構成されている。これらにより、所望の膜組成等に応じて、複数種類のガスの中から特定の原料ガスや酸化ガスや触媒ガスを選択して供給することが容易となる。よって、1台の基板処理装置で様々な組成比、膜質の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、ガス種の追加や入替等に際しての装置運用の自由度を確保することができる。
またこのとき、上述の各種薄膜の成膜に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件が記載されたプログラム)を、原料ガスや酸化ガスや触媒ガス等のガスの種類ごと、つまり、異なるガス系ごとに予め複数用意しておくことで、原料ガスや酸化ガスや触媒ガスの種類の選択が容易となる。つまり、所望の膜組成等に応じて、複数種類のガスの中から特定の原料ガスや酸化ガスや触媒ガスを選択して供給することが容易となる。オペレータは、複数のプロセスレシピの中から所望の膜組成等に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択し、成膜処理を実行すればよい。よって、1台の基板処理装置で様々な組成比、膜質の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
(1)薄膜形成工程
上述の第1実施形態では、金属系原料ガスと酸化ガスと触媒ガスとを用いて金属元素を含む薄膜を形成したが、本実施形態では、さらにシリコン系原料ガスを用いて金属元素とSiとを含む薄膜を形成する。本実施形態においても、上述の実施形態と同様、図1、図2に示す基板処理装置を用いる。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
本実施形態では、
ウエハ200に対して金属元素を含む金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
ウエハ200に対して酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、を含み、
ウエハ200に対してシリコンを含むシリコン系原料ガス(Si系原料ガス)と触媒ガスとを供給する工程を更に含むサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に金属元素とシリコン(Si)とを含む薄膜を形成する。
また、本実施形態では、
各工程は、ノンプラズマの雰囲気下で行われる。
なお、以下に述べるように、これら各工程を行う順番や組み合わせを適宜変更することで、膜質や膜組成や成分比率等の異なる薄膜を形成することができる。
以下、本実施形態の成膜シーケンスを、図7、図8(a)を用いて具体的に説明する。図7は、本実施形態の成膜シーケンスにおける成膜フローを示す図である。図8は、本実施形態の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図である。
なお、ここでは、
ウエハ200に対して金属系原料ガスとしてのTiCl4ガスと、触媒ガスとしてのピリジンガスと、を供給する工程と(ステップ1b)、
ウエハ200に対して酸化ガスとしてのH2Oガスと、触媒ガスとしてのピリジンガスと、を供給する工程と(ステップ2b)、をこの順に行い、
ウエハ200に対してSi系原料ガスとしてのHCDSガスと、触媒ガスとしてのピリジンガスと、を供給する工程と(ステップ3b)、
ウエハ200に対して酸化ガスとしてのH2Oガスと、触媒ガスとしてのピリジンガスと、を供給する工程と(ステップ4b)、をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に金属元素とシリコン(Si)とを含む薄膜として、TiとSiとを含むチタノシリケート膜(TiSiO4膜、以下、TiSiO膜ともいう)を形成する例について説明する。
ここで、チタノシリケート(チタンシリケート、チタニウムシリケート)は、すなわち、チタンケイ酸塩のことである。また、TiSiO膜は、TiとSiとの複合酸化膜であるといえ、Siが添加されたTiO膜であるともいえ、Tiが添加されたシリコン酸化膜(SiO膜)であるともいえる。
また、上記のシーケンス例では、TiSiO膜は、ステップ1bとステップ2bとにより形成されるTiO層と、ステップ3bとステップ4bとにより形成されるシリコン酸化層(SiO層)と、が積層されてなる膜であるともいえる。このように、Ti系原料ガス等の金属系原料ガスと、Si系原料ガスと、を共に原料ガスとすることで、金属元素とSiとが複合された複合酸化膜を形成することができる。
なお、上記サイクルにおいては、ステップ1b,2bがこの順に行われ、ステップ3b,4bがこの順に行われればよい。つまり、ステップ1bとステップ3bとは、どちらから先に開始してもかまわない。以下の説明では、図7、図8(a)に示されているように、ステップ1bから先に開始し、以降、各ステップを順次1回ずつ行うものとする。つまり、このようなサイクルを所定回数行うことにより、ステップ1b,2bと、ステップ3b,4bと、を交互に所定回数行うこととなる。
(TiO層形成工程)
上述の実施形態のステップ1a,2aと同様にステップ1b,2bを行って、ウエハ200上にTiO層を形成する。
(SiO層形成工程)
その後、次の2つのステップ3b,4bを順次実行する。
[ステップ3b]
(HCDSガス+ピリジンガス供給)
第3原料ガス供給管232bのバルブ243bを開き、第3原料ガス供給管232b内にHCDSガスを流す。第3原料ガス供給管232b内を流れたHCDSガスは、MFC241bにより流量調整される。流量調整されたHCDSガスは、第2ノズル249bのガス供給孔250bから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスが供給されることとなる(HCDSガス供給)。このとき同時にバルブ243jを開き、第2不活性ガス供給管232j内にN2ガス等の不活性ガスを流す。第2不活性ガス供給管232j内を流れたN2ガスは、MFC241jにより流量調整される。流量調整されたN2ガスは、HCDSガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。また、このとき、上述の実施形態と同様、ウエハ200に対してピリジンガスを供給する(ピリジンガス供給)。
なお、このとき、第1ノズル249a、第3ノズル249c内へのHCDSガスおよびピリジンガスの侵入を防止するため、バルブ243i,243kを開き、第1不活性ガス供給管232i、第3不活性ガス供給管232k内にN2ガスを流す。N2ガスは、第1原料ガス供給管232a、第1酸化ガス供給管232c、第1ノズル249a、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
このように、ウエハ200に対してHCDSガスを供給することにより、ウエハ200表面に形成されたTiO層上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのClを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層であってもよいし、HCDSガスの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
ここで、Clを含むSi層とは、Siにより構成されClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるClを含むSi薄膜をも含む総称である。なお、Siにより構成されClを含む連続的な層を、Clを含むSi薄膜という場合もある。なお、Clを含むSi層を構成するSiは、Clとの結合が完全に切れていないものの他、Clとの結合が完全に切れているものも含む。
またここで、HCDSガスの吸着層は、HCDSガスのガス分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、HCDSガスの吸着層は、HCDS分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。なお、HCDSガスの吸着層を構成するHCDS(Si2Cl6)分子は、SiとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、HCDSガスの吸着層は、HCDS分子の化学吸着層やHCDS分子の物理吸着層を含む。
ここで、触媒としてのピリジンガスは、HCDSガスと共にウエハ200に対して供給されることで、ウエハ200上に形成されたTiO層の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、HCDSガスの分解を促し、HCDS分子の化学吸着によるClを含むSi含有層の形成を促進させる。すなわち、上述の図6(a),(b)と同様、図9(a),(b)の触媒反応を経てウエハ200上に形成されたTiO層の表面にはO−H結合が存在する。図9(c)に示されているように、このTiO層の表面に存在するO−H結合に、触媒としてのピリジンガスが作用してO−H間の結合力を弱める。結合力の弱まったHとHCDSガスのClとが反応することでHClガスが生成されて脱離し、Clを失ったHCDS分子(ハロゲン化物)がTiO層等の表面に化学吸着する。このように、触媒ガスとしてのピリジンガスは、HCDSガスに対しても、上述のTiCl4ガス等の金属系原料ガスの場合と同様の触媒作用を示す。
なお、このときの処理室201内の圧力、原料ガス、触媒ガス、N2ガス等の各ガスの供給流量、供給時間、ウエハ200の温度等の処理条件については、例えば上述の実施形態の処理条件と同様の範囲内の処理条件とすることができる。
(残留ガス除去)
第1の層としてのClを含むSi含有層がTiO層上に形成された後、第3原料ガス供給管232bのバルブ243bを閉じ、HCDSガスの供給を停止する。また、上述の実施形態と同様の手順にて、ピリジンガスの供給を停止し、処理室201内からの残留ガスの除去を行う。
[ステップ4b]
(H2Oガス+ピリジンガス供給)
ステップ3bが終了し処理室201内の残留ガスを除去した後、上述の実施形態と同様の手順にて、ウエハ200に対してH2Oガス及びピリジンガスを供給する。
ウエハ200に対して、熱で活性化されたH2Oガスが供給されることで、TiO層上に形成された第1の層(Clを含むSi含有層)の少なくとも一部とH2Oガスとが反応し、第1の層は、SiとOとを含む第2の層、すなわち、SiO層へと変化させられる(改質される)。
ここで、触媒ガスとしてのピリジンガスは、図9(d)に示されているように、H2Oガスの有するO−H結合に触媒ガスとしてのピリジンガスが作用し、O−H間の結合力を弱める。結合力の弱まったHと、TiO層上に形成されたClを含むSi含有層が有するClとが反応することで、HClガスが生成されて脱離し、Hを失ったH2OガスのOが、Clが脱離したSi含有層のSiと結合する。このように、触媒ガスとしてのピリジンガスは、Clを含むSi含有層を改質する場合においても、上述のClを含むTi含有層を改質する場合と同様の触媒作用を示す。
なお、このときの処理室201内の圧力、酸化ガス、触媒ガス、N2ガス等の各ガスの供給流量、供給時間、ウエハ200の温度等の処理条件については、例えば上述の実施形態の処理条件と同様の範囲内の処理条件とすることができる。また、H2Oガスやピリジンガスを供給する際は、上述の実施形態と同様、不使用となっているノズル249a,249b等へのガスの侵入を防止するN2ガス供給を行う。
以上により、TiO層上にSiO層が形成される。或いは、これらをTiO層とSiO層とが積層されてなるチタノシリケート層(TiSiO層)とみることもできる。
(残留ガス除去)
その後、上述の実施形態と同様の手順にて、H2Oガス及びピリジンガスの供給を停止し、処理室201内からの残留ガスの除去を行う。
(所定回数実施)
上述したステップ1b〜4bを1サイクルとして、このサイクルを1回以上、つまり、所定回数(n回)行うことにより、ウエハ200上に、所定組成及び所定膜厚のTiSiO膜を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成するTiSiO層の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。
このとき、各ステップにおける処理室201内の圧力やガス供給時間等の処理条件を制御することで、TiSiO層における各元素成分、すなわち、Ti成分、Si成分、O成分の割合、すなわち、Ti濃度、Si濃度、O濃度を調整することができ、TiSiO膜の組成比を制御することができる。
具体的には、例えば、ステップ1bでのTiCl4ガスの供給時間、すなわち、TiCl4ガスとピリジンガスとを供給する工程の実施時間TTと、ステップ3bでのHCDSガスの供給時間、すなわち、HCDSガスとピリジンガスとを供給する工程の実施時間TSと、の比率を調整する。例えば、実施時間TTに対する実施時間TSの比率を高くすれば、膜中のTi濃度に対するSi濃度を高くすることができる。また、実施時間TTに対する実施時間TSの比率を低くすれば、膜中のTi濃度に対するSi濃度を低くすることができる。このように、実施時間TT,TSの比率を調整することで、膜中のTi濃度とSi濃度との比率を制御することができる。また、他の任意の工程の組み合わせについて、同様の調整を行ってもよい。これらのことにより、TiSiO膜中の各成分(Ti,Si,O)の組成比を適宜、相互に制御することが可能となる。
また、本実施形態では、ステップ1b〜4bまでを順次、1回ずつ行う例について説明したが、例えば図8(b)に示されているように、ステップ1b,2bをこの順に行うことを1セットとして、このセットSTを1回または複数回行って、所定厚さのTiO層を形成してもよい。また、ステップ3b,4bをこの順に行うことを1セットとして、このセットSSを1回または複数回行って所定厚さのSiO層を形成してもよい。そして更に、ステップ1b,2bをこの順に行うセットSTを所定回数行うことと、ステップ3b,4bをこの順に行うセットSSを所定回数行うことと、を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行って、TiO層とSiO層とが積層されたTiSiO膜を形成してもよい。この場合、上記各工程の実施時間による制御の他、サイクル内で、ステップ1b,2bを行う回数や、ステップ3b,4bを行う回数の増減により、つまり、各セットST,SSを行う回数の比率調整によっても、Ti/Si比率等の膜組成を制御することができる。例えば、セットSTを行う回数に対するセットSSを行う回数の比率を高くすれば、膜中のTi濃度に対するSi濃度を高くすることができる。セットSTを行う回数に対するセットSSを行う回数の比率を低くすれば、膜中のTi濃度に対するSi濃度を低くすることができる。
このように、各ステップ1b〜4bを行う回数や順番や組み合わせを適宜変更することで、膜質や膜組成や成分比率等の異なるTiSiO膜を形成することができる。
(2)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、上述の実施形態と同様の効果を奏する。また、本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態の成膜シーケンスによれば、ステップ1b,2b,3b,4bをこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上にTiSiO膜を形成する。このように、Ti系原料ガスとSi系原料ガスとを適宜用いることで、TiとSiとの複合酸化膜を形成することができ、好ましい膜質や膜組成等を得ることが容易となる。
例えば、複合酸化膜を用いない例として、SiO膜等のSi系酸化膜においても低温条件下での成膜が試みられることがある。しかしながら、例えば100℃以下の低温で形成されたSi系酸化膜は、例えば従来の700℃以上の高温で形成された酸化膜と比較して、膜質が劣ることがある。具体的には、フッ酸(HF水溶液)等のエッチング液に対するウエットエッチングレート(以下、WERともいう)が高く、エッチング耐性が劣ることがある。このように膜質の劣るSi系酸化膜を、例えばマスク材として用いた場合、熱やプラズマによりマスク寸法に誤差が生じ易い。このため、パターン寸法のばらつきやデバイス不良の原因となってしまうことがある。
本実施形態のように、形成する薄膜をTiとSiとの複合酸化膜とすることで、例えば低温で形成されたSiO膜等よりもWERを低下させエッチング耐性を高めることができ、また、膜質等の調整や改善が容易となる。例えば、TiSiO膜においては、膜中のSi濃度に対するTi濃度を高めることで、WERが更に低下し、エッチング耐性が更に高まる傾向にあることが確認されている。
(b)また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、各ステップ1b〜4bに含まれる工程の実施時間の相互比率や、各ステップ1b〜4bの順番や、組み合わせを適宜変更する。これらにより、膜質や膜組成や成分比率等の異なるTiSiO膜を形成することができる。具体的には、例えば、ステップ1bでのTiCl4ガス+ピリジンガス供給工程の実施時間と、ステップ3bでのHCDSガス+ピリジンガス供給工程の実施時間と、の比率を調整することで、TiSiO膜中のTi/Si含有比率を制御することができる。これらのことにより、異なる膜質や膜組成や膜種等を有する様々な薄膜を適宜形成することができ、膜形成における選択の幅を広げることができる。
(3)本実施形態の変形例
次に、本実施形態の種々の変形例について説明する。
(変形例)
まずは、本実施形態の変形例について、図8(c)を用いて説明する。図8(c)は、本実施形態の変形例の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図である。
図8(c)に示されているように、金属系原料ガスや酸化ガスや触媒ガスと同様、Si系原料ガスについても、所望の膜質等に応じてガス種を適宜選択することが可能である。本変形例においては、Si系原料ガスとして、上述の実施形態のHCDSガスに替えてTCSガスを用いる。
ここで、ウエハ200に対するTCSガスの供給手順について以下に説明する。その他のH2Oガス、ピリジンガスの供給手順については、上述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
第4原料ガス供給管232fのバルブ243fを開き、第4原料ガス供給管232f内にTCSガスを流す。第4原料ガス供給管232f内を流れたTCSガスは、MFC241fにより流量調整される。流量調整されたTCSガスは、第2ノズル249bのガス供給孔250bから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してTCSガスが供給されることとなる(TCSガス供給)。このとき、上述の実施形態と同様の手順で、第1不活性ガス供給管232jからN2ガス等の不活性ガスを流す。N2ガスは、TCSガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
このように、ウエハ200に対してTCSガスを供給することにより、ウエハ200表面に形成されたTiO層上に、第1の層として、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのClを含むSi含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、Clを含むSi層であってもよいし、TCSガスの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
ここで、Clを含むSi層とは、上述のHCDSガス供給時に形成されるClを含むSi層と実質的に同じものである。但し、HCDSガスとTCSガスとでは、1分子中に含まれるSiやClの数、また分子構造自体が異なるところ、ここで形成されるClを含むSi層は、含まれるClの比率や、SiとClまたはSiとSiとの結合状態等が、上述のHCDSガスにより形成されるClを含むSi層とは異なっている可能性はある。
またここで、TCSガスの吸着層は、TCSガスのガス分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、TCSガスの吸着層は、TCS分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。なお、TCSガスの吸着層を構成するTCS(SiHCl3)分子は、SiとClとの結合やSiとHとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、TCSガスの吸着層は、TCS分子の化学吸着層やTCS分子の物理吸着層を含む。
触媒ガスとしてのピリジンガスは、TCSガスと共にウエハ200に対して供給されることで、ウエハ200の表面に存在するO−H結合の結合力を弱め、TCSガスの分解を促し、TCS分子の化学吸着によるClを含むSi含有層の形成を促進させる。このように、ピリジンガスは、TCSガスに対しても、上述のHCDSガス等の場合と同様の触媒作用を示す。
Clを含むSi含有層がウエハ200上に形成された後、第4原料ガス供給管232fのバルブ243fを閉じ、TCSガスの供給を停止する。
この後、Clを含むSi含有層は、上述の実施形態と同様、H2OガスとピリジンガスとによりSiO層へと改質(酸化)される。そして、更には、このSiO層とTiO層とが積層されてなるTiSiO層やTiSiO膜が形成される。
なお、このときの処理室201内の圧力、金属系原料ガス、Si系原料ガス、酸化ガス、触媒ガス、N2ガス等の各ガスの供給流量、供給時間、ウエハ200の温度等の処理条件については、例えば上述の実施形態の処理条件と同様の範囲内の処理条件とすることができる。また、各ガスを供給する際は、上述の実施形態と同様、そのとき不使用となっているノズル249a,249b,249c,249d等へのガスの侵入を防止するN2ガス供給を行う。
(他の変形例)
続いて、本実施形態の他の変形例について、図10および図11を用いて説明する。図10は、本実施形態の他の変形例の成膜シーケンスにおける成膜フローを示す図であって、(a)は他の変形例1の成膜フローを示す図であり、(b)は他の変形例2の成膜フローを示す図である。図11は、本実施形態の他の変形例の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であって、(a)は他の変形例1のシーケンス例を示す図であり、(b)は他の変形例2のシーケンス例を示す図である。
上述のように、薄膜を形成する工程では、
ウエハ200に対して金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
ウエハ200に対してシリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
ウエハ200に対して酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、のサイクル内における順番や組み合わせを適宜変更することができる。
他の変形例1においては、
ウエハ200に対してTiCl4ガスとピリジンガスとを供給する工程と(ステップ1c)、
ウエハ200に対してHCDSガスとピリジンガスとを供給する工程と(ステップ2c)、を行った後に、
ウエハ200に対してH2Oガスとピリジンガスとを供給する工程(ステップ3c)を行うサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上にTiSiO膜を形成する例について説明する。
ここで、他の変形例1のシーケンス例では、TiSiO膜は、ステップ1cとステップ2cとにより形成されるClを含むTi及びSi含有層を、ステップ3cにより酸化して得られる酸化層、つまり、TiSiO層を積層してなる膜であるともいえる。
なお、上記サイクルにおいては、ステップ1c,2cの後に、ステップ3cが行われればよい。つまり、ステップ1cとステップ2cとは、どちらを先に行ってもかまわない。以下の説明では、図10(a)および図11(a)に示されているように、ステップ1cを先に実施し、以降、各ステップを順次1回ずつ行うものとする。つまり、このようなサイクルを所定回数行うことにより、ステップ1c,2c,3cを代わる代わる(交互に)所定回数行うこととなる。
各ステップ1c,2cは、それぞれ、上述の実施形態の各ステップ1b,3bと同様の手順および処理条件で行うことができる。このとき、ステップ1cにおいては、上述の図9(a)と同様、図12(a)に示される触媒反応を経てウエハ200上にClを含むTi含有層が形成される。続いて、ステップ2cにおいては、図12(b)に示されているように、ピリジンガスの触媒作用により、ウエハ200の表面のうち、主にClを含むTi含有層が形成されていない領域に、Clを含むSi含有層が形成される。
また、これにより、ウエハ200上にClを含むTi含有層とClを含むSi含有層とが混在することとなり、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのClを含むTi及びSi含有層が形成される。Clを含むTi及びSi含有層は、Clを含むチタンシリサイド層(TiSi層)であってもよいし、TiCl4ガス及びHCDSガスの吸着層であってもよいし、その両方を含んでいてもよい。
ここで、Clを含むTiSi層とは、Ti及びSiにより構成されClを含む連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるClを含むTiSi薄膜をも含む総称である。なお、Ti及びSiにより構成されClを含む連続的な層を、Clを含むTiSi薄膜という場合もある。なお、Clを含むTiSi層を構成するTiやSiは、Clとの結合が完全に切れていないものの他、Clとの結合が完全に切れているものも含む。
またここで、TiCl4ガス及びHCDSガスの吸着層は、各ガスのガス分子の連続的な吸着層の他、不連続な吸着層をも含む。すなわち、TiCl4ガス及びHCDSガスの吸着層は、各ガス分子で構成される1分子層もしくは1分子層未満の厚さの吸着層を含む。なお、各ガスの吸着層を構成するTiCl4分子は、TiとClとの結合が一部切れたものも含み、各ガスの吸着層を構成するHCDS(Si2Cl6)分子は、SiとClとの結合が一部切れたものも含む。すなわち、TiCl4ガス及びHCDSガスの吸着層は、TiCl4分子及びHCDS分子の化学吸着層やTiCl4分子及びHCDS分子の物理吸着層を含む。
またここで、ステップ3cは、上述の実施形態のステップ2bやステップ4bと同様の手順および処理条件で行うことができる。このとき、ステップ3cにおいては、図12(c)に示されているように、ピリジンガスの触媒作用により、Clを含むTi及びSi含有層をTiSiO層へと改質(酸化)する。
この後、ステップ1c〜3cを含むサイクルを所定回数行うことにより、TiSiO層が積層されてなるTiSiO膜が形成される。
なお、上記他の変形例1では、ステップ1c,2c,3cをこの順に1回ずつ行う例について説明したが、例えばステップ1c,2cを1セットとして、このセットSMを1回または複数回行った後にステップ3cを行うようにしてもよい。そして更に、これを1サイクルとして、このサイクルを所定回数行ってもよい。この場合、各工程の実施時間の比率調整による膜組成の制御の他、サイクル内で、上記セットSMとステップ3cとを行う回数の比率調整によっても、膜組成を制御することができる。例えば、セットSMを行う回数に対するステップ3cを行う回数の比率を高くすれば、膜中のTi濃度やSi濃度に対するO濃度を高くすることができる。セットSMを行う回数に対するステップ3cを行う回数の比率を低くすれば、膜中のTi濃度やSi濃度に対するO濃度を低くすることができる。
但し、上述の実施形態のようにステップ1b〜4bを1サイクルとし、或いは、上述の変形例のようにステップ1c〜3cを1サイクルとすることがより好ましい。これらにより、原料ガスを供給する工程を行うごとに酸化ガスを供給する工程を行って、1層ごとに改質処理を確実に行いながら成膜をすることができ、各工程における反応をより適正に制御することができる。
また、サイクル内で各工程を行う順番や組み合わせを変更する際には、上述のように各工程を交互に、つまり、代わる代わる行ってもよく、或いは、一部の工程を同時に行ってもよい。所定の工程を同時に行う場合には、各工程の実施期間が完全に一致する場合や一部の期間のみが重複する場合等が含まれる。
他の変形例2においては、
ウエハ200に対してTiCl4ガスとピリジンガスとを供給する工程と、
ウエハ200に対してHCDSガスとピリジンガスとを供給する工程と、を同時に行い(ステップ1d)、その後に、
ウエハ200に対してH2Oガスとピリジンガスとを供給する工程(ステップ2d)を行うサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上にTiSiO膜を形成する例について説明する。
まず、上記のように、ステップ1dにおいては、ウエハ200に対してTiCl4ガスとHCDSガスとピリジンガスとを供給する。つまり、上述の実施形態と同様の手順にて、ウエハ200に対してTiCl4ガスを供給する(TiCl4ガス供給)。また、上述の実施形態と同様の手順にて、ウエハ200に対してHCDSガスを供給する(HCDSガス供給)。また、上述の実施形態と同様の手順にて、ウエハ200に対してピリジンガスを供給する(ピリジンガス供給)。このとき、上述の実施形態と同様の手順で、不活性ガス供給管232i,232j,232lからN2ガス等の不活性ガスを流す。
なお、このとき、第3ノズル249c内への各ガスの侵入を防止するため、バルブ243kを開き、第3不活性ガス供給管232k内にN2ガスを流す。N2ガスは、第1酸化ガス供給管232c、第3ノズル249cを介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
このように、ウエハ200に対してTiCl4ガス及びHCDSガスを供給することにより、また、このとき一緒に供給するピリジンガスの触媒作用により、図13(a)に示されているように、ウエハ200(表面の下地膜)上にClを含むTi及びSi含有層が形成される。
ステップ2dは、上述の変形例のステップ3cと同様の手順で行うことができる。このとき、図13(b)に示されているように、ピリジンガスの触媒作用により、Clを含むTi及びSi含有層をTiSiO層へと改質(酸化)する。
この後、ステップ1d,2dを含むサイクルを所定回数行うことにより、すなわち、ステップ1dとステップ2dとを交互に所定回数行うことにより、TiSiO層が積層されてなるTiSiO膜が形成される。
なお、このときの処理室201内の圧力、各種原料ガス、酸化ガス、触媒ガス、N2ガス等の各ガスの供給流量、供給時間、ウエハ200の温度等の処理条件については、例えば上述の実施形態の処理条件と同様の範囲内の処理条件とすることができる。また、各ガスを供給する際は、上述の実施形態と同様、そのとき不使用となっているノズル249a,249b,249c,249d等へのガスの侵入を防止するN2ガス供給を行う。
上述のステップ1dにおいては、TiCl4ガスの流量FTとHCDSガスの流量FSとの比率を調整することで、例えばTiSiO層中のTi濃度とSi濃度とを調整することができる。流量FTに対する流量FSの比率を高くすれば、膜中のTi濃度に対するSi濃度を高くすることができる。また、流量FTに対する流量FSの比率を低くすれば、膜中のTi濃度に対するSi濃度を低くすることができる。
また、上述のステップ1dにおいて、各ガスの流量比を調整することで、処理室201内での各ガスの分圧も変化する。すなわち、上述のステップ1dにおいては、処理室201内でのTiCl4ガスの分圧PTと、処理室201内でのHCDSガスの分圧PSとの比率を調整することで、例えばTiSiO層中のTi濃度とSi濃度とを調整することができる。分圧PTに対する分圧PSの比率を高くすれば、膜中のTi濃度に対するSi濃度を高くすることができる。また、分圧PTに対する分圧PSの比率を低くすれば、膜中のTi濃度に対するSi濃度を低くすることができる。
また、例えばステップ1dの実施時間TMとステップ2dの実施時間TOとの比率を調整することで、例えばTiSiO層中のTi濃度やSi濃度に対するO濃度を調整することができる。実施時間TMに対する実施時間TOの比率を高くすれば、膜中のTi濃度やSi濃度に対するO濃度を高くすることができる。また、実施時間TMに対する実施時間TOの比率を低くすれば、膜中のTi濃度やSi濃度に対するO濃度を低くすることができる。
このように、TiCl4ガス、HCDSガス、ピリジンガスの各ガスを同時に供給するようにしても上述の実施形態と同様な作用効果が得られる。また、各ガスを同時に供給することで、Clを含むTi及びSi含有層をいっそう迅速に形成することができる。但し、成膜プロセスの制御性の観点から、上述の実施形態のようにステップ1b〜4bを1サイクルとし、或いは、上述の変形例のようにステップ1c〜3cを1サイクルとして、1つ1つの工程を順次行っていくことが好ましい。
<他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
例えば、上述の実施形態や変形例では、金属元素を含む薄膜として金属系酸化膜であるTiO膜、ZrO膜、或いはTiとSiとの複合酸化膜であるTiSiO膜を形成する例について説明したが、本発明は、TiやZr以外の元素、例えばハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)等の金属元素を含む薄膜等を形成する場合にも適用することができる。すなわち、上述の実施形態等の成膜シーケンスは、ハフニウム酸化膜(HfO膜)、タンタル酸化膜(TaO膜)、アルミニウム酸化膜(AlO膜)、モリブデン酸化膜(MoO膜)等の金属系酸化膜や、或いはこれらのうち少なくともいずれかの金属元素とSiとの複合酸化膜を形成する場合等にも好適に適用することができる。この場合、原料ガスとして、上述の実施形態におけるTiやZrを含む金属系原料ガスに替えて、或いはこれらのガスに加えて、他の金属元素を含む金属系原料ガスを用い、上述の実施形態や変形例と同様なシーケンスにより成膜を行うことができる。
また、上述の実施形態等では、TiSiO膜等の成膜に用いるSi系原料ガスとして、クロロシラン系原料ガスを用いる例について説明したが、クロロシラン系以外のハロシラン系原料ガス、例えば、フルオロシラン系原料ガスやブロモシラン系原料ガス等を用いてもよい。ここで、フルオロシラン系原料ガスとは、ハロゲン基としてのフルオロ基を含むシラン系原料ガスのことであり、少なくともシリコン(Si)及びフッ素(F)を含む原料ガスのことである。また、ブロモシラン系原料ガスとは、ハロゲン基としてのブロモ基を含むシラン系原料ガスのことであり、少なくともシリコン(Si)及び臭素(Br)を含む原料ガスのことである。
また、上述の実施形態等では、原料ガスと共に触媒ガスを用いる際において、ステップ2a,2b,4b,3c,2d等において、触媒ガスと共にH2Oガス等の酸化ガスを用いて所定の層の改質(酸化)を行う例について説明した。しかし、原料ガスと共に触媒ガスを用いる際において、プラズマで励起したO2ガス等の酸化ガスを用いて所定の層の改質処理を行ってもよい。
また、上述の実施形態等では、H2Oガス等の酸化ガスを用いて金属系酸化膜や複合酸化膜を形成する例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば窒素(N)等を含む窒素含有ガスや、炭素(C)等を含む炭素含有ガスを更に用いて、金属系酸窒化膜や複合酸窒化膜、金属系酸炭窒化膜や複合酸炭窒化膜等を形成してもよい。窒素含有ガスとしては、例えばアンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス、これらの化合物を含むガス等を用いることができる。炭素含有ガスとしては、プロピレン(C3H6)ガスやエチレン(C2H4)ガスや、これらの化合物を含むガス等を用いることができる。
なお、これらの各種薄膜の成膜に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(形成する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
但し、上述のプロセスレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のプロセスレシピを変更することで用意してもよい。プロセスレシピを変更する場合は、変更後のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のプロセスレシピを直接変更するようにしてもよい。
また、上述の実施形態等の成膜シーケンスにおいては、金属系酸化膜や複合酸化膜の形成を室温にて行う例についても説明したが、この場合、ヒータ207による処理室201内の加熱を行う必要はなく、基板処理装置にヒータを設けなくともよい。これにより、基板処理装置の加熱系の構成を簡素化することができ、基板処理装置をより安価で単純な構造とすることができる。
また、上述の実施形態等では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて薄膜を成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて薄膜を成膜する場合にも、好適に適用できる。また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を成膜する場合にも、好適に適用できる。
また、上述の各実施形態および各変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の実施例として、上述の実施形態における基板処理装置を用い、ウエハ上に各種薄膜を形成し、これらの薄膜の諸特性について評価を行った。係る評価結果を図15に示す。図15は、本発明の実施例および比較例のグラフであって、(a)は各種条件下で成膜された薄膜のウエットエッチングレート(WER)を示すグラフであり、(b)は触媒ガスを使用した場合の薄膜の成膜サイクルレートに対する効果を示すグラフである。
図15(a)の例では、TiSiO膜のWERとSiO膜のWERとを比較している。具体的には、膜中のTi濃度とSi濃度とを変化させて低温条件下でそれぞれ成膜したTiSiO膜を実施例とし、低温条件下で成膜したSiO膜を比較例とした。TiSiO膜中のTi濃度とSi濃度とは、Ti系原料ガスの供給時間とSi系原料ガスの供給時間との比率を変えることで変化させた。また、SiO膜の成膜には原料ガスとしてSi系原料ガスのみを用いた。また、TiSiO膜およびSiO膜の成膜時には、上述の実施形態と同様、Ti系原料ガス、Si系原料ガス、酸化ガスのうち、いずれのガスを供給する場合においても触媒ガスの供給を行った。
図15(a)のグラフの横軸は各膜の処理状態を示しており、左から順に、HCDSガスの供給時間に対するTiCl4ガスの供給時間の比率を「4」とした例(TiCl4 Flow Time/HCDS Flow Time=4)、HCDSガスの供給時間に対するTiCl4ガスの供給時間の比率を「2」とした例(TiCl4 Flow Time/HCDS Flow Time=2)を示しており、右端が上述の比較例を示している。また、グラフの縦軸は、各膜の1%濃度のフッ化水素含有液(1%HF水溶液)によるWER[a.u.]を示している。ここで、WERは、単位時間当たりのエッチング深さであって、ここでは、比較例に係るSiO膜のWERを「1」とし、実施例に係るTiSiO膜のそれぞれのWERをこれに対する比で示している。
図15(a)によれば、薄膜をTiとSiとの複合酸化膜とすることで、比較例と比べてWERが低下し、エッチング耐性が向上することがわかる。また、HCDSガスの供給時間に対するTiCl4ガスの供給時間の比率を、2、そして、4と、増加させていくことで、すなわち、膜中のSi濃度に対するTi濃度を増加させていくことで、WERが低下し、エッチング耐性が更に向上していくことがわかる。
図15(b)の例では、成膜時に触媒ガスを使用した例と使用しなかった例とにおいて、形成される薄膜の成膜サイクルレート、つまり、1サイクルあたりに形成されるTiO層の厚さを比較している。具体的には、低温条件下で、金属系原料ガス、酸化ガスの供給時において触媒ガスの供給を行って成膜したTiO膜を実施例とした。また、低温条件下で各ガスの供給時に触媒ガスを供給せずに成膜したTiO膜を比較例とした。
図15(b)のグラフの横軸はそれぞれの評価例を示しており、左から順に、実施例および比較例を示している。また、グラフの縦軸は、各TiO膜の成膜サイクルレート[a.u.]を示している。ここでは、比較例に係るTiO膜の成膜サイクルレートを「1」とし、実施例に係るTiO膜の成膜サイクルレートをこれに対する比で示している。
図15(b)によれば、触媒ガスを用いて成膜した実施例に係るTiO膜の成膜サイクルレートは、触媒ガスを用いずに成膜した比較例に係るTiO膜の成膜サイクルレートに対し、約2.2倍となり、大幅に向上することがわかる。このように、触媒ガスによる触媒反応を利用することで、低温条件下であっても、金属系酸化膜の成膜レートを大幅に向上させることができる。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本発明の一態様によれば、
基板に対して金属元素を含む金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
前記基板に対して酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含む薄膜を形成する工程を有する半導体装置の製造方法が提供される。
(付記2)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記各工程は、ノンプラズマの雰囲気下で行われる。
(付記3)
付記1または2の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記サイクルは、前記基板に対してシリコンを含むシリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程を更に含み、
前記薄膜を形成する工程では、前記基板上に前記金属元素およびシリコンを含む薄膜を形成する。
(付記4)
付記3の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記サイクルでは、
前記基板に対して前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
前記基板に対して前記酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、をこの順に行い、
前記基板に対して前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
前記基板に対して前記酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、をこの順に行う。
(付記5)
付記3または4の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記サイクルでは、
前記基板に対して前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、前記基板に対して前記酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、をこの順に行うセットを所定回数行い、
前記基板に対して前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、前記基板に対して前記酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、をこの順に行うセットを所定回数行う。
(付記6)
付記3の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記サイクルでは、
前記基板に対して前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
前記基板に対して前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、を行った後に、
前記基板に対して前記酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程を行う。
(付記7)
付記3乃至6の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程では、
前記基板に対して前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程を行う回数と、
前記基板に対して前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程を行う回数と、の比率を調整する。
(付記8)
付記5の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程では、
前記各セットを行う回数の比率を調整する。
(付記9)
付記3乃至8の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程では、
前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程の実施時間と、
前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程の実施時間と、の比率を調整する。
(付記10)
付記3の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記サイクルでは、
前記基板に対して前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
前記基板に対して前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、を同時に行った後に、
前記基板に対して前記酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程を行う。
(付記11)
付記10の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、を同時に行う際に、
前記金属系原料ガスの流量と前記シリコン系原料ガスの流量との比率を調整する。
(付記12)
付記10または11の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程は、前記基板を処理室内に収容した状態で行われ、
前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、を同時に行う際に、
前記処理室内での前記金属系原料ガスの分圧と、前記処理室内での前記シリコン系原料ガスの分圧との比率を調整する。
(付記13)
付記10乃至12の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、前記シリコン系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、を同時に行う際の実施時間と、
前記酸化ガスと前記触媒ガスとを供給する工程の実施時間と、の比率を調整する。
(付記14)
付記3乃至13の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコン系原料ガスは、シリコンとハロゲン元素とを含むハロシラン系原料ガスを含む。
(付記15)
付記3乃至14の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコン系原料ガスは、シリコンと塩素(クロロ基)とを含むクロロシラン系原料ガスを含む。
(付記16)
付記3乃至15の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記シリコン系原料ガスは、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、シリコンテトラクロライド(SiCl4、略称:STC)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、およびモノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガスのうち少なくともいずれかを含む。
(付記17)
付記1乃至16の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記金属系原料ガスは、前記金属元素とハロゲン元素とを含むハロメタル系原料ガスを含む。
(付記18)
付記1乃至17の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記金属系原料ガスは、前記金属元素と塩素(クロロ基)とを含むクロロメタル系原料ガスを含む。
(付記19)
付記1乃至18の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記金属系原料ガスは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、およびモリブデン(Mo)のうち少なくともいずれかを含む。
(付記20)
付記1乃至19の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記金属系原料ガスは、チタニウムテトラクロライド(TiCl4)ガス、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl4)ガス、ハフニウムテトラクロライド(HfCl4)ガス、タンタルペンタクロライド(TaCl5)ガス、アルミニウムトリクロライド(AlCl3)ガス、およびモリブデンペンタクロライド(MoCl5)ガスのうち少なくともいずれかを含む。
(付記21)
付記1乃至20の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記触媒ガスは、アンモニア(NH3)ガス、ピリジン(C5H5N)ガス、アミノピリジン(C5H6N2)ガス、ピコリン(C6H7N)ガス、ルチジン(C7H9N)ガス、ピペラジン(C4H10N2)ガス、およびピペリジン(C5H11N)ガスのうち少なくともいずれかを含む。
(付記22)
付記1乃至21の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記触媒ガスは、酸解離定数が5〜11のガスを含む。
(付記23)
付記1乃至22の半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記触媒ガスは、酸解離定数が5〜7のガスを含む。
(付記24)
付記1乃至23のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程では、前記基板の温度を室温以上200℃以下の温度とする。
(付記25)
付記1乃至24のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程では、前記基板の温度を室温以上150℃以下の温度とする。
(付記26)
付記1乃至25のいずれかの半導体装置の製造方法であって、好ましくは、
前記薄膜を形成する工程では、前記基板の温度を室温以上100℃以下の温度とする。
(付記27)
本発明の他の態様によれば、
基板に対して金属元素を含む金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
前記基板に対して酸化ガスと触媒ガスとを供給する工程と、
を含むサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含む薄膜を形成する工程を有する基板処理方法が提供される。
(付記28)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内へ金属元素を含む金属系原料ガスを供給する金属系原料ガス供給系と、
前記処理室内へ酸化ガスを供給する酸化ガス供給系と、
前記処理室内へ触媒ガスを供給する触媒ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して前記金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する処理と、前記処理室内の前記基板に対して前記酸化ガスと触媒ガスとを供給する処理と、を含むサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含む薄膜を形成する処理を行うように前記金属系原料ガス供給系、前記酸化ガス供給系、および前記触媒ガス供給系を制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
(付記29)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板に対して金属元素を含む金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して酸化ガスと触媒ガスとを供給する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含む薄膜を形成する手順をコンピュータに実行させるプログラムが提供される。
(付記30)
本発明のさらに他の態様によれば、
基板処理装置の処理室内の基板に対して金属元素を含む金属系原料ガスと触媒ガスとを供給する手順と、
前記処理室内の前記基板に対して酸化ガスと触媒ガスとを供給する手順と、
を含むサイクルを所定回数行うことにより、前記基板上に前記金属元素を含む薄膜を形成する手順をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。