JP6190779B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
前記第1制御では、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における第1のスリップ係合状態に移行させ、その後、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における前記第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない前記第1制御における第2のスリップ係合状態に移行させ、前記第1制御における前記第2のスリップ係合状態において前記振動判定手段により回転数が振動していないと判定されると、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における前記第2のスリップ係合状態よりも更にスリップ量の少ない前記第1制御における第3のスリップ係合状態に移行させる第1制御を実施する。
前記第2制御では、前記ロックアップクラッチを前記第2制御における第1のスリップ係合状態に移行させ、その後、前記ロックアップクラッチを前記第2制御における前記第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない前記第2制御における第2のスリップ係合状態に移行させる。
(5)前記制御手段は、前記第2制御において前記開始条件が成立した場合には、前記第1の解放度合いよりも小さい第2の解放度合いで前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる第2開始移行制御を実施することが好ましい。
その後、制御手段は、第1のスリップ係合状態のロックアップクラッチを第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない第2のスリップ係合状態に移行させるため、動力伝達効率の低下を更に抑えながら動力伝達系の振動を吸収することができる。
そして、制御手段は、振動判定手段により回転数が振動していない(安定した)と判定されると、第2のスリップ係合状態のロックアップクラッチを第2のスリップ係合状態よりも更にスリップ量の少ない第3のスリップ係合状態に移行させるため、動力伝達効率の低下を抑制するとともにロックアップクラッチの耐久性を確保することができ、さらには、動力伝達系の振動を確実に抑えることにも寄与する。
このように、制御手段は、第1,第2,第3のスリップ係合状態の順にロックアップクラッチのスリップ量を徐々に低減させる第1制御を実施するため、ロックアップクラッチの急係合やダイレクト感の低下などによるドライバビリティの低下を抑えることができ、動力伝達系の振動を確実に吸収することができる。
ロックアップクラッチを第1〜第3のスリップ係合状態に移行させる第1制御による動力伝達系における振動の吸収は、ロックアップクラッチが係合状態の場合に、動力伝達系の振動が発生しうる状態として予め設定された第1の走行状態に車両の走行状態があることを開始条件に実施されるため、適切に動力伝達系の振動を抑えることができる。
以下、一実施形態にかかる自動変速機の制御装置について説明する。
〔1.構成〕
自動変速機の制御装置は、車両の動力伝達系に設けられたベルト式無段変速機を制御対象とする。
はじめに、図1を参照して、車両の動力伝達系の構成を説明する。
車両の動力伝達系には、エンジン(原動機)1と、ベルト式無段変速機(CVT)100と、終減速機構5と、駆動輪6,6と、が設けられている。ベルト式無段変速機100には、トランスミッションケース内に、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とベルト式無段変速機構(「バリエータ」とも称される)4とが収容されている。
エンジン1は、車両の駆動源である。ここでは、エンジン1として内燃機関を適用している。なお、エンジン1に替えて、例えば電動モータおよびエンジンを併せもつハイブリッド型の駆動源や電動モータ単体の電動の駆動源といった他の駆動源を適用してもよい。
トルクコンバータ2は、トルク増大機能を有する発進要素であり、トルク増大機能を必要としないときに、エンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21とを直結可能なロックアップクラッチ20が設けられている。このトルクコンバータ2は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結されたポンプインペラ23と、トルクコンバータ出力軸21に連結されたタービンランナ24と、ケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられたステータ26とを構成要素とする。
ロックアップクラッチ20は、スリップ係合状態であれば一部の動力がトルクコンバータ2を介して伝達されるので、入出力軸間に回転差が生じた状態で動力を伝達する。このため、スリップ係合状態のロックアップクラッチ20は、動力伝達系においてダンパーとして機能する。
前後進切替機構3は、ベルト式無段変速機構4の変速機構入力軸40への入力回転方向を前進走行時の正転方向と後退走行時の逆転方向とで切り替える機構である。この前進切替機構3は、ダブルピニオン式遊星歯車30と、複数のクラッチプレートからなる前進クラッチ31および後退ブレーキ32と、を有する。
なお、前後進切替機構3として、前進側に複数の変速段を達成しうる副変速機構としての機能を有するものを適用してもよい。
ベルト式無段変速機構4は、ベルト接触径の変更により変速比を無段階に変化させる無段変速機能を有する。このベルト式無段変速機構4は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、ベルト44と、を有する。プライマリプーリ42は、固定プーリ42aおよびスライドプーリ42bを有し、スライドプーリ42bがプライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriによって軸方向に移動する。同様に、セカンダリプーリ43は、固定プーリ43aおよびスライドプーリ43bを有し、スライドプーリ43bがセカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecによって軸方向に移動する。
終減速機構5は、ベルト式無段変速機構4の変速機構出力軸41からの出力回転を減速するとともに差動可能に左右の駆動輪6,6に伝達する機構である。この終減速機構5は、変速機構出力軸41と駆動輪6,6に連結された左右のドライブ軸51,51との間に介装され、変速機構出力軸41に設けられた第1ギヤ52と、アイドラ軸50に設けられた第2ギヤ53および第3ギヤ54と、最終減速機ギヤ55を介して連結されており差動機能を有するディファレンシャルギヤ56とを有する。
次に、車両の制御系の構成を説明する。ここでは、ベルト式無段変速機100を制御する制御系に着目して説明する。
車両の制御系には、油圧コントロールユニット7と、CVT電子コントロールユニット(以下、「CVTECU」という。制御手段)8と、が設けられている。この油圧コントロールユニット7は、CVTECU8から出力される指示圧に応じた油圧を作り出す。また、CVTECU8と情報を授受するエンジン電子コントロールユニット(以下、「エンジンECU」という)9が装備されている。このエンジンECU9は、エンジン1に関する点火系,燃料系,吸排気系及び動弁系といった広汎なシステムを制御する。なお、各電子コントロールユニット(ECU:Electric Control Unit)8,9は、入出力装置,多数の制御プログラムを内蔵した記憶装置(ROM,RAM等),中央処理装置(CPU),タイマカウンタなどを備えて構成される。
油圧コントロールユニット7は、プライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriと、セカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecと、前進クラッチ31への前進クラッチ圧Pfcと、後退ブレーキ32への後退ブレーキ圧Prbと、ロックアップコントロールバルブ78へのソレノイド圧Psolと、を作り出す制御ユニットである。この油圧コントロールユニット7はオイルポンプ70と油圧制御回路71とを備えている。
ライン圧ソレノイド72は、CVTECU8から出力されるライン圧指示に応じ、オイルポンプ70から圧送される作動油を、指示されたライン圧PLに調圧する。
プライマリ圧ソレノイド73は、CVTECU8から出力されるプライマリ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示されたプライマリ圧Ppriに減圧調整する。
前進クラッチ圧ソレノイド75は、CVTECU8から出力される前進クラッチ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示された前進クラッチ圧Pfcに減圧調整する。
後退ブレーキ圧ソレノイド76は、CVTECU8から出力される後退ブレーキ圧指示に応じ、ライン圧PLを元圧として指示された後退ブレーキ圧Prbに減圧調整する。
CVTECU8は、上記したようにCVT100に関する各指示圧を出力してCVT100にかかる広汎なシステムを制御するが、以下の説明では、トルクコンバータ2のロックアップクラッチ20の制御に着目して、CVTECU8の構成を詳述する。
このCVTECU8には、CANやFlexRayなどの通信ラインを介して各種のセンサ類が接続されている。各種センサ類による検出情報はCVTECU8に伝達される。
まず、CVTECU8に接続される各種のセンサ類について説明する。
ライン圧センサ80はライン圧PLを検出し、プライマリ圧センサ81はプライマリ圧Ppriを検出し、セカンダリ圧センサ82はセカンダリ圧Psecを検出するものである。これらのセンサ80,81,82の検出情報に基づいて、CVTECU8は各油圧の指示圧を演算し出力する。
アクセル開度センサ87は、図示省略するアクセルペダルの踏込量を検出するものである。また、アイドルスイッチ(アイドルSW)88は、アクセルペダルが踏込み操作されているか否かを検出するものである。このアイドルスイッチ88は、アクセルペダルの踏込み操作がされていればOFF信号を出力し、アクセルペダルの踏込み操作がされていなければON信号を出力する。
次に、CVTECU8によって実施されるロックアップクラッチ20をスリップ係合状態にする制御(以下、「LUC制御」という)について説明する。ここでは、LUC制御のうち、動力伝達系の振動が判定(検出)されたときに実施される第1LUC制御(第1制御)と動力伝達系の振動が発生するおそれがあるときに実施される第2LUC制御(第2制御)との二つの制御について説明する。これら第1LUC制御および第2LUC制御は、動力伝達系の振動を抑えるために実施される。
このCVTECU8は、前提条件判定部8Aにより前提条件の成立が判定されたうえで、開始条件判定部8Bにより開始条件の成立が判定されると、第1LUC制御部8Eまたは第2LUC制御部8Fにより第1LUC制御または第2LUC制御を択一的に実施し、終了条件判定部8Gにより終了条件の成立が判定されると第1LUC制御または第2LUC制御を終了する。
前提条件判定部8Aは、第1LUC制御および第2LUC制御それぞれを実施するうえで前提となる条件(前提条件)を判定する。なお、ここでいう前提条件は、CVTECU8による第1LUC制御および第2LUC制御それぞれの実施を許可する条件(許可条件)の一部ともいえる。
まず、第1LUC制御の前提条件(以下、「第1前提条件」という)について説明する。
第1前提条件は、例えば下記(A1)〜(A4)のすべてに当てはまるときに成立する。
(A1)各種センサ類のすべてが正常であること。
(A2)アクセル操作がされていること。
(A3)Dレンジが選択されていること。
(A4)ロックアップクラッチ20が係合状態であること。
上記(A2)は、アイドルスイッチ88がOFF信号を出力されていれば成立する。この(A2)は、アクセル開度センサ87からアクセルペダルの踏込量がゼロ近傍の所定量よりも大きいときに成立するものとしてもよい。また、(A2)に加えて、ブレーキスイッチ89がOFF信号を出力していることを盛り込んでもよい。
上記(A4)は、CVTECU8からの指示信号圧であるソレノイド圧Psolに基づいて判定することができる。また、(A4)は、エンジン回転数センサ83により検出された回転数とプライマリ回転数センサ84により検出された回転数との差が所定回転数よりも小さいときに成立したと判定することができる。これは、各センサ83,84等の検出誤差等を考慮したためであり、このときのロックアップクラッチ20は実質的に係合状態となっている。
(A5)アクセル開度が所定開度以上であること。
(A6)動力伝達系に副変速機構が設けられていれば(A61)副変速機構が1速段あるいは2速段であること、(A62)副変速機構の入力側の回転と出力側の回転との差回転が所定回転数よりも小さいこと、(A63)副変速機構が変速中(架け替え中)でないこと。
第2LUC制御の前提条件(以下、「第2前提条件」という)は、第1前提条件と同様である。
開始条件判定部8Bは、第1LUC制御および第2LUC制御それぞれの開始条件を判定する。なお、ここでいう開始条件は、第1LUC制御および第2LUC制御それぞれを開始するトリガーとなる。
この開始条件は、開始条件判定部8Bの振動判定部8cおよび走行状態判定部8dを用いて判定される。
すなわち、走行状態判定部8dは、プライマリ回転数センサ84により検出されたタービン回転数Nと算出された変速比rとに基づいて、車両の走行状態が領域Aまたは領域Bに含まれるか否かを判定する。
まず、第1LUC制御の開始条件(以下、「第1開始条件」という)について説明する。
第1開始条件は、例えば下記(B1)および(B2)に当てはまるときに成立する。
(B1)動力伝達系の振動が判定されること。
(B2)車両の走行状態が領域Bにあること。
なお、第1開始条件の上記(B1)には、下記(B3)などが付加されていてもよい。
(B3)上記(B1)で検出された振動の周波数が、検出時の変速比に対応する固有共振周波数から所定周波数範囲内にあること。
次に、第2LUC制御の開始条件(以下、「第2開始条件」という)について説明する。
第2開始条件は、少なくとも下記(C1)および(C2)に当てはまるときに成立する。
(C1)車両の走行状態が領域Aにあること。
(C2)第1開始条件が成立していないこと。
上記(C2)が第2開始条件に含まれることから、第1LUC制御は第2LUC制御に優先して実施される。
第1LUC制御部8Eは、第1LUC制御を実施する。この第1LUC制御では、制御開始時の第1開始移行制御と、ロックアップクラッチ20をスリップ係合状態にする第1スリップ制御と、制御終了時の第1終了移行制御と、が実施される。
第1開始移行制御は、第1開始条件が成立すると実施される。この第1開始移行制御では、トルク変動の急変を抑えるため、係合状態のロックアップクラッチ20をスリップ係合状態へ向けて徐々に移行させる。
なお、第1の解放度合いは、単位時間あたりの係合圧PLUの減少量(図3のランプ制御中における係合圧PLUの傾き)に対応する。
第1スリップ制御は、第1開始移行制御の完了後に実施される。この第1スリップ制御では、第1ドライブスリップ制御と第1マイクロスリップ制御とが実施される。
第1ドライブスリップ制御は、第1開始移行制御が完了すると実施される。この第1ドライブスリップ制御では、図3の時点t12〜t13に示すように、ロックアップクラッチ20を第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない第2のスリップ係合状態に移行させる。
第1ドライブスリップ制御では、トルクコンバータ2の差回転が上記の第1差回転αよりも小さく予め設定された第2差回転β(<α)となるように、係合圧PLUをフィードバック制御する。このとき、トルクコンバータ2の差回転の変化率が予め設定された差回転変化率Δβを越えないように制御される。
第1ドライブスリップ制御は、振動判定部8cにより動力伝達系の振動が検出されない(振動していないと判定される)状態となったとき、即ち、トルクコンバータ2の差回転が安定すると完了する。具体的には、検出された回転数のバンドパス処理値が第1の所定回転数変化域よりも小さく予め設定された所定の回転数の変化域、即ち、所定の回転数帯(以下、「第2の所定回転数変化域」という)に入っているか否かを判定し、バンドパス処理値が第2の所定回転数変化域に入っていれば振動していない、つまり、振動が検出されずに第1ドライブスリップ制御が完了する。
第1マイクロスリップ制御は、第1ドライブスリップ制御が完了すると開始される。この第1マイクロスリップ制御では、図3の時点t13〜t14に示すように、ロックアップクラッチ20を第2のスリップ係合状態よりも更にスリップ量の少ない第3のスリップ係合状態に移行させる。
第1マイクロスリップ制御は、後述する第1終了条件が成立すると終了する。仮に、第1マイクロスリップ制御の実施中に振動判定部8cにより動力伝達系の振動が検出された状態となったときは、第1マイクロスリップ制御を終了して再び第1ドライブスリップ制御が実施される。
第1終了移行制御は、後述する第1終了条件が成立すると実施される。この第1終了移行制御では、図3の時点t14〜t15に示すように、トルク変動の急変(係合ショック)を抑えるため、スリップ係合状態のロックアップクラッチ20を係合状態へ向けて徐々に移行(スムースオン)させる。すなわち、係合圧PLUをランプ状に漸増させ、トルクコンバータ2の差回転が無くなるまたは略無くなるロックアップクラッチ20の係合状態に移行させる。
第2LUC制御部8Fは、第2LUC制御を実施する。この第2LUC制御では、制御開始時の第2開始移行制御と、ロックアップクラッチ20をスリップ係合状態にする第2スリップ制御と、制御終了時の第2終了移行制御と、が実施される。
第2開始移行制御は、第2開始条件が成立すると実施される。この第2開始移行制御は、上記の第1開始移行制御に対してランプ制御における解放度合いが異なる点を除いては同様の制御内容である。
第2開始移行制御では、図4の時点t21〜時点t22に示すように、ランプ制御においてロックアップクラッチ20を予め設定された第2の解放度合いで徐々にスリップ係合状態にさせる。この第2の解放度合いは、第1の解放度合いよりも小さく設定されている。すなわち、図4のランプ制御中における単位時間あたりの係合圧PLUの減少量(図4のランプ制御中における係合圧PLUの傾き)が、第1開始移行制御のランプ制御における単位時間あたりの係合圧PLUの減少量(図4に二点鎖線で示す)よりも小さい。
この第2開始移行制御は、第1開始移行制御と同様に、トルクコンバータ2の差回転が第1差回転α′となる第1のスリップ係合状態になると完了する。
第2スリップ制御は、図4の時点t22〜時点t23に示すように、第2開始移行制御の完了後に実施される。この第2スリップ制御では、第2ドライブスリップ制御が実施される。なお、第2スリップ制御では、上記の第1マイクロスリップ制御に対応する制御は実施されない。
第2ドライブスリップ制御は、後述する第2終了条件が成立すると終了する。この第2ドライブスリップ制御は、上記の第1ドライブスリップ制御と同様の制御内容とすることができる。ただし、ここでは、第2ドライブスリップ制御において、トルクコンバータ2の目標差回転に上記の第1差回転α′よりも小さく且つ上記の第2差回転βよりも小さい第2差回転β′(<α′)を用いており、また、第2差回転β′に対応して予め設定された差回転変化率Δβ′を越えないように係合圧PLUを減少させている。
この第2ドライブスリップ制御は、第1ドライブスリップ制御と同様に、トルクコンバータ2の差回転が第2差回転β′となる第2のスリップ係合状態になると完了する。
第2終了移行制御は、図4の時点t23〜時点t24に示すように、第2スリップ制御が終了後に実施される。この第2終了移行制御は、上記の第1終了移行制御と同様の制御内容とすることができる。ただし、第1終了移行制御とは異なる係合圧PLUの漸増度合いを採用することも可能である。
終了条件判定部8Gは、第1LUC制御および第2LUC制御それぞれの終了条件を判定する。なお、ここでいう終了条件は、CVTECU8による第1LUC制御および第2LUC制御それぞれの実施を禁止する条件(禁止条件)ともいえる。
第1LUC制御の終了条件(以下、「第1終了条件」という)について説明する。
第1終了条件は、例えば下記(D1)〜(D3)の少なくも何れかに当てはまるときに成立する。
(D1)第1前提条件が成立しないこと。
(D2)第1開始条件が成立しないこと。
(D3)第1開始条件成立時の変速比が予め設定された所定量以上に変動したこと。
なお、第1終了条件には下記(D4)などが付加されてもよい。
(D4)第1LUC制御が開始されてから所定時間以上経過したこと。
この(D4)は、制御滞留を抑えるために有効である。
次に、第2LUC制御の終了条件(以下、「第2終了条件」という)について説明する。
第2終了条件は、少なくとも下記(E1)または(E2)の何れかに当てはまるときに成立する。
(E1)第2前提条件が成立しないこと。
(E2)第2開始条件が成立しないこと。
なお、第2終了条件には、第1終了条件の(D4)と同様に、(E3)第2LUC制御が開始されてから所定時間以上経過したことなどが加えられてもよい。
第1LUC制御中に、例えば上記(D3)に当てはまり第1終了条件が成立したものの、車両の走行状態が領域Aにあって第2終了条件が成立しない場合(第2開始条件が成立した場合)には、第1LUC制御から第2LUC制御に移行する。例えば、第1LUC制御の第1開始移行制御の実施中に第1終了条件が成立するものの第2終了条件が成立していなければ(第2開始条件が成立すれば)、ロックアップクラッチ20の解放度合いを第1の解放度合いからこれよりも小さい第2の解放度合いに変更して、第2開始移行制御に移行する。
次に、図6〜図9のフローチャートを参照して、CVTECU8により実施される制御手順について説明する。このフローチャートは、第1前提条件および第2前提条件の成立下で開始(スタート)する。このフローは、所定の制御周期で繰り返し実施される。また、フローチャート中の各ステップは、CVTECU8のハードウェアに割り当てられた各機能がソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することで実施される。
また、フラグF11は、第1LUC制御における各制御に対応するフラグである。このフラグF11は、初期値が「1」に設定され、第1開始移行制御が実施されていると「1」が維持され、第1スリップ制御が実施されていると「2」が維持され、第1終了移行制御が実施されていると「3」が維持されるフラグである。同様に、フラグF21は、第2LUC制御における各制御に対応するフラグである。初期値が「1」に設定され、第2開始移行制御が実施されていると「1」が維持され、第2スリップ制御が実施されていると「2」が維持され、第2終了移行制御が実施されていると「3」が維持されるフラグである。
なお、フラグFに付記された「(n)」は制御周期を意味する。例えば、「(n−1)」は前回の制御周期を意味し、「(n)」は今回の制御周期を意味し、「(n+1)」は次回の制御周期を意味する。
ステップS1では、第1開始条件が成立したか否かを判定する。第1開始条件が成立すればステップS2へ移行し、第1開始条件が成立していなければステップS4へ移行する。なお、上記(D2)に示すように、第1開始条件が成立しなければ第1終了条件は成立する。
ステップS2では、今回の制御周期のフラグF1を「1」に設定する。そして、ステップS3へ移行する。
ステップS4では、今回の制御周期のフラグF1を「0」に設定する。そして、ステップS5へ移行する。
ステップS6では、今回の制御周期のフラグF2を「1」に設定する。そして、ステップS10へ移行する。
ステップS7では、今回の制御周期のフラグF2を「0」に設定する。そして、ステップS10へ移行する。このステップS7には、例えば第1開始条件が成立するとともに第1終了条件が成立していない場合に第2開始条件や第2終了条件が判定されることなく移行する。これは、上記(C2)および(E2)に示すように、第1開始条件の成立時には、第2開始条件は成立しないと同時に第2終了条件は成立するためである。
ステップS10では、前回の制御周期におけるフラグF1が「1」か否かを判定する。このフラグF1が「1」であればステップS11へ移行し、そうでなければ(フラグF1が「0」であれば)ステップS16へ移行する。
ステップS11では、今回の制御周期におけるフラグF1が「1」か否かを判定する。このフラグF1が「1」であればステップS12へ移行し、そうでなければ(フラグF1が「0」であれば)ステップS14へ移行する。
ステップS30では、図7に示す第1開始移行制御のサブルーチンが実行される。
ステップS34では、係合圧PLUを第1の解放度合いで序々に減少させる。そして、本制御に戻って(リターンして)図6のステップS36へ移行する。
ステップS38では、次回の制御周期で用いるフラグF11およびフラグF21を何れも「2」に設定する。そして本制御周期を終了(エンド)する。
ステップS40では、図8に示す第1スリップ制御のサブルーチンが実行される。
ステップS46では、トルクコンバータ2の差回転が第3差回転γ(以下)になるように係合圧PLUを例えば増加させてフィードバック制御する。このステップS46は、第1マイクロスリップ制御に対応する。そして、本制御に戻って本制御周期を終了する。
ステップS15では、次回の制御周期で用いるフラグF11およびフラグF21を何れも「3」に設定する。そして、ステップS50へ移行する。
ステップS50では、終了移行制御(第1終了移行制御,第2終了移行制御)のサブルーチンが実行される。このサブルーチンでは、係合圧PLUをランプ状に漸増させてロックアップクラッチ20を係合状態に移行させる。そして、ステップS52へ移行する。
ステップS54では、次回の制御周期で用いるフラグF11およびフラグF21を何れも「1」に設定する。そして本制御周期を終了する。
ステップS17では、ステップS14と同様に、今回の制御周期におけるフラグF2が「1」か否かを判定する。このフラグF2が「1」であればステップS18へ移行し、そうでなければ(フラグF2が「0」であれば)ステップS20へ移行する。
ステップS60では、図9に示す第2開始移行制御のサブルーチンが実行される。
ステップS64では、係合圧PLUを第2の解放度合いで序々に減少させる。そして、本制御に戻って(リターンして)図6のステップS66へ移行する。
ステップS68では、次回の制御周期で用いるフラグF11およびフラグF21を何れも「2」に設定する。そして本制御周期を終了(エンド)する。
ステップS70では、トルクコンバータ2の差回転が第2差回転β′になるように係合圧PLUを例えば増加させてフィードバック制御する。そして、本制御周期を終了する。
なお、第2スリップ制御は、振動が発生していないときに振動を予防する制御といえ、制御実施中に振動が発生することは想定し得ない。よって、第2スリップ制御の実施中に第2終了条件が成立するとともに第2開始条件が成立することも想定し得ない。
本発明の一実施形態にかかる自動変速機の制御装置は、上述のように構成されるため、以下のような作用及び効果を得ることができる。
CVTECU8は、振動判定部8cにより動力伝達系の振動があると判定されると、ロックアップクラッチ20を第1のスリップ係合状態に移行させる第1開始移行制御を実施するため、動力伝達系の振動をダンパーとして機能するロックアップクラッチ20において確実に吸収することができる。これにより、速やかに動力伝達系の振動を抑えることができる。
そして、CVTECU8は、振動判定部8cにより動力伝達系の振動が判定されない、即ち、トルクコンバータ2の差回転が安定したと判定されると、第2のスリップ係合状態のロックアップクラッチ20を第2のスリップ係合状態よりも更にスリップ量の少ない第3のスリップ係合状態に移行させる第1マイクロスリップ制御を実施するため、動力伝達効率の低下を抑えるとともにロックアップクラッチ20のフェーシングの劣化を抑えることができ、さらには、動力伝達系の振動を確実に抑えることにも寄与する。
一方、第2LUC制御の第2開始移行制御では、ロックアップクラッチ20を第1の解放度合いよりも小さい第2の解放度合いで徐々に第1のスリップ係合状態にさせる。この際、動力伝達系の振動があると判定されていないため、ロックアップクラッチ20のスリップ係合状態への円滑な移行を優先させ、ドライバビリティの低下を更に抑えることができる。
また、第1前提条件に上記(A6)の副変速機構の入力側の回転と出力側の回転との差回転が所定回転数よりも小さいことや副変速機構が変速中(架け替え中)でないことなどが付加されれば、変速比の変更中、即ち固有共振周波数が変化している際の第1LUC制御を禁止することができ、不要な第1LUC制御の実施を回避することができる。
このように、不要な第1LUC制御の実施を抑えることで、燃費を向上させることができ、ロックアップクラッチ20の耐久性を確保することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した一実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせてもよい。
上述の一実施形態では、領域Bのうちで所定の変速比範囲内の領域を領域Aとしたが、このうえ更に振動の発生しやすい所定タービン回転数範囲内にある領域を領域Aとしてもよい。
また、第2LCU制御の第2ドライブスリップ制御では、第1マイクロスリップ制御に対応する制御は実施されないものを説明したが、第2LUC制御において第2ドライブスリップ制御の後に第1マイクロスリップ制御と同様の第2マイクロスリップ制御が実施されてもよい。このように、第2LCU制御を第1LCU制御と同様の制御としてもよい。
また、第1LUC制御または第2LUC制御の途中で第2LUC制御または第1LUC制御に移行するものを説明したが、第1終了条件および第2終了条件が成立してから何れか一方が成立した際に、第1LUC制御または第2LUC制御の全制御(開始移行制御、スリップ制御,終了移行制御)を実施したのち第2LUC制御または第1LUC制御に移行してもよい。この場合、動力伝達系の振動吸収が速やかになされないおそれがあるものの、制御アルゴリズムを簡素化することができる。
また、少なくとも第1LUC制御が実施されればよい。すなわち、第2LUC制御は省略してもよい。この場合、動力伝達系の振動を未然に防ぐことはできないものの制御アルゴリズムを簡素化することができる。
また、車両の動力伝達系に、上述したように副変速機構が設けられてもよいし、この副変速機構の配設箇所は、変速機の動力伝達方向上流側に限られず、変速機の動力伝達方向下流側であってもよい。
11 エンジン出力軸
2 トルクコンバータ
20 ロックアップクラッチ
21 トルクコンバータ出力軸
22 コンバータハウジング
23 ポンプインペラ
24 タービンランナ
25 ワンウェイクラッチ
26 ステータ
3 前後進切替機構
30 ダブルピニオン式遊星歯車
31 前進クラッチ
32 後退ブレーキ
4 ベルト式無段変速機構(バリエータ)
40 変速機構入力軸
41 変速機構出力軸
42 プライマリプーリ
42a 固定プーリ
42b スライドプーリ
43 セカンダリプーリ
43a 固定プーリ
43b スライドプーリ
44 ベルト
45 プライマリ圧室
46 セカンダリ圧室
5 終減速機構
50 アイドラ軸
51 ドライブ軸
52 第1ギヤ
53 第2ギヤ
54 第3ギヤ
55 最終減速ギヤ
56 ディファレンシャルギヤ
6 駆動輪
7 油圧コントロールユニット
70 オイルポンプ
71 油圧制御回路
72 ライン圧ソレノイド
73 プライマリ圧ソレノイド
74 セカンダリ圧ソレノイド
75 前進クラッチ圧ソレノイド
76 後退ブレーキ圧ソレノイド
77 ロックアップソレノイド
78 ロックアップコントロールバルブ
8 CVT電子コントロールユニット(CVTECU,制御装置,変速比検出手段)
8A 前提条件判定部
8B 開始条件判定部
8c 振動判定部(振動判定手段)
8d 走行状態判定部(走行状態判定手段)
8E 第1LUC制御部
8F 第2LUC制御部
8G 終了条件判定部
80 ライン圧センサ
81 プライマリ圧センサ
82 セカンダリ圧センサ
83 エンジン回転数センサ
84 プライマリ回転数センサ(走行状態検出部)
85 セカンダリ回転数センサ(走行状態検出部)
86 インヒビタスイッチ(インヒビタSW)
87 アクセル開度センサ
88 アイドルスイッチ(アイドルSW)
89 ブレーキスイッチ
9 エンジンECU
84 エンジン回転数センサ
100 ベルト式無断変速機(自動変速機)
r 変速比
N タービン回転数PLU 係合圧
PLUS 基準係合圧
α 第1差回転
β 第2差回転
γ 第3差回転
Claims (6)
- 車両の駆動源である原動機と駆動輪との間の動力伝達系に設けられたトルクコンバータにおいて係合状態および解放状態ならびにスリップ係合状態の何れかの状態を達成可能なロックアップクラッチと、
前記動力伝達系に設けられた回転軸の回転数を検出する回転数センサと、
前記回転数センサにより検出された回転数が振動しているか否かを判定する振動判定手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記ロックアップクラッチを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記ロックアップクラッチが係合状態の場合に、前記走行状態検出手段により検出される走行状態が前記振動の発生しうる状態として予め設定された第1の走行状態にあるとともに前記振動判定手段により回転数が振動していると判定されることを開始条件に第1制御を実施し、
前記振動判定手段により回転数が振動していないと判定され、且つ、前記走行状態検出手段により検出される走行状態が前記第1の走行状態のうちで更に前記振動の発生しやすい状態として予め設定された第2の走行状態であることを開始条件に第2制御を実施し、
前記第1制御では、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における第1のスリップ係合状態に移行させ、その後、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における前記第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない前記第1制御における第2のスリップ係合状態に移行させ、前記第1制御における前記第2のスリップ係合状態において前記振動判定手段により回転数が振動していないと判定されると、前記ロックアップクラッチを前記第1制御における前記第2のスリップ係合状態よりも更にスリップ量の少ない前記第1制御における第3のスリップ係合状態に移行させる第1制御を実施し、
前記第2制御では、前記ロックアップクラッチを前記第2制御における第1のスリップ係合状態に移行させ、その後、前記ロックアップクラッチを前記第2制御における前記第1のスリップ係合状態よりもスリップ量の少ない前記第2制御における第2のスリップ係合状態に移行させる
自動変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記走行状態検出手段により検出される走行状態が前記第1の走行状態でないことを終了条件に、前記ロックアップクラッチをスリップ係合状態から係合状態に移行させる終了移行制御を実施する
請求項1に記載の自動変速機の制御装置。 - 変速比を検出する変速比検出手段を備え、
前記制御手段は、前記開始条件の成立時において前記変速比検出手段により検出された変速比が予め設定された所定量以上に変動することを終了条件に、前記ロックアップクラッチをスリップ係合状態から係合状態に移行させる終了移行制御を実施する
請求項1または2に記載の自動変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記第1制御において前記開始条件が成立した場合には、予め設定された第1の解放度合いで前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる第1開始移行制御を実施する
請求項1〜3の何れか1項に記載の自動変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記第2制御において前記開始条件が成立した場合には、前記第1の解放度合いよりも小さい第2の解放度合いで前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる第2開始移行制御を実施する
請求項4に記載の自動変速機の制御装置。 - 前記制御手段は、前記第2開始移行制御において前記第2の解放度合いで前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる最中に、前記振動判定手段により回転数が振動していると判定されて前記第1制御の開始条件が成立すると、前記第2の解放度合いを前記第1の解放度合いに変更して前記ロックアップクラッチを前記第1のスリップ係合状態に移行させる前記第1開始移行制御に移行する
請求項5に記載の自動変速機の制御装置。
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