JP6190134B2 - ダイシングシート用基材フィルム、ダイシングシート、ダイシングシート用基材フィルムの製造方法およびチップ状部材の製造方法 - Google Patents

ダイシングシート用基材フィルム、ダイシングシート、ダイシングシート用基材フィルムの製造方法およびチップ状部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体ウエハなどのデバイス関連部材をダイシングする際に用いられるダイシングシートのための基材フィルム、その基材フィルムを用いてなるダイシングシート、およびその基材フィルムの製造方法に関する。また、本発明は、かかるダイシングシートを用いるチップ状部材の製造方法にも関する。なお、本発明における「ダイシングシート」には、ダイシング・ダイボンディングシートの一部となっているものも含まれるものとし、また、リングフレームを貼付するための別の基材フィルムおよび粘着剤層を有するものも含まれるものとする。さらに、本発明における「シート」には、「テープ」の概念も含まれるものとする。
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハおよび各種パッケージ類(以下、これらをまとめて「デバイス関連部材」と記載することがある。)は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(以下、「チップ状部材」と記載する。)に切断分離(ダイシング工程)される。
このダイシング工程に付されるデバイス関連部材は、ダイシング工程およびそれ以降の工程におけるデバイス関連部材およびチップ状部材の取扱性の確保を目的として、基材フィルムおよびその上に設けられた粘着剤層を備えるダイシングシートが、切断のための切削工具が近接する側と反対側に位置するデバイス関連部材の一の面にあらかじめ貼り付けられている。このようなダイシングシートは、通常、基材フィルムとしてポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル系フィルムなどが使用されている。
ダイシング工程の具体的な手法として一般的なフルカットダイシングでは、回転する丸刃によって被切断物の切断が行われる。フルカットダイシングにおいては、ダイシングシートが貼り付けられたデバイス関連部材が全面にわたって確実に切断されるように、デバイス関連部材を超えて粘着剤層も切断され、さらに基材フィルムの一部も切断される場合がある。
このとき、粘着剤層および基材フィルムを構成する材料からなるダイシング屑がダイシングシートから発生し、得られるチップ状部材がそのダイシング屑によって汚染される場合がある。そのようなダイシング屑の形態の一つに、ダイシングライン上、またはダイシングにより分離されたチップ状部材の断面(側面)付近に付着する、糸状のダイシング屑がある。
上記のような糸状のダイシング屑がチップ状部材に多量に付着したままチップ状部材の封止を行うと、チップ状部材に付着する糸状のダイシング屑が封止の熱で分解し、この熱分解物がパッケージを破壊したり、得られるデバイスにて動作不良の原因となったりする。この糸状のダイシング屑は洗浄により除去することが困難であるため、糸状のダイシング屑の発生によってダイシング工程の歩留まりは著しく低下する。
ダイシング工程後に切断されたデバイス関連部材は、その後、洗浄、エキスパンド工程、ピックアップ工程と各工程が施される。それゆえ、ダイシングシートには、さらにエキスパンド工程での拡張性に優れることも求められている。
このようなダイシング屑の発生を抑制することを目的として、特許文献1には、ダイシングシートの基材フィルムとして、電子線またはγ(ガンマ)線が1〜80Mrad(10〜800kGy)照射されたポリオレフィン系フィルムを用いる発明が開示されている。当該発明に係るダイシングシートは、ウエハダイシング時に発生するダイシング屑の量を低減させることができる。電子線またはγ線の照射により基材フィルムを構成する樹脂が架橋し、ダイシング屑の発生が抑制されると考えられる。
特許文献1においては、電子線またはγ線が照射されるポリオレフィン系フィルムとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−アイオノマー共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリブテン等の樹脂が例示されている。
特開平5−211234号公報
近年、半導体ウエハの厚さが薄くなったことに伴い、ダイシングブレードは基材フィルムに深く切り込むこととなった。このような状況下では、よりダイシング屑の発生がしやすくなる。また、基材フィルムに電子線を照射する工程において、電子線照射による基材フィルムの発熱により、基材フィルムの収縮が生じることがあった。
本発明は、薄い半導体ウエハのようなデバイス関連部材をダイシングする場合にも、ダイシング屑の発生を低減できるとともに、その構成部材である基材フィルムを製造する過程で行われるポリオレフィン系フィルムへの電子線照射の際に不具合が生じる可能性を低減させることができるダイシングシート、そのダイシングシートの構成部材である基材フィルム、およびそのダイシングシートの製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、かかるダイシングシートを用いるチップ状部材の製造方法を提供することも課題とする。
上記目的を達成するために提供される本発明は、第1に、電子線が照射されたポリオレフィン系フィルムを備えたダイシングシート用基材フィルムであって、前記ポリオレフィン系フィルムに対する電子線の照射は、次の(a)から(c)の条件の全てを満たすように行われることを特徴とするダイシングシート用基材フィルムを提供する(発明1)。
(a)電子線の積算照射量が105kGy以上
(b)電子線の積算照射時間が8秒以下
(c)電子線の1回の照射あたりの照射量が135kGy以下
上記の条件を満たすことにより、基材フィルムへの電子線照射に起因する発熱が基材フィルムに与える影響を低減させることができる。
上記発明(発明1)において、電子線の照射回数が2以上であることが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1、2)において、前記ポリオレフィン系フィルムに対する電子線の積算照射量が115kGy以上350kGy以下であることが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1から3)において、前記ポリオレフィン系フィルムを備えた長尺フィルムの長尺方向に張力が付与された状態で、前記ポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の主面側から、前記ポリオレフィン系フィルムの主面における電子線が照射された帯域が長尺方向に移動するように、電子線の照射は行われることが好ましい(発明4)。
上記発明(発明4)において、前記電子線が照射された帯域の移動速度が、10m/分以上100m/分以下であることが好ましい(発明5)。
上記発明(発明1から5)において、前記ポリオレフィン系フィルム以外のフィルムを構成要素として含まなくてもよい(発明6)。
本発明は、第2に、上記発明(発明1から6)に係るダイシングシート用基材フィルムと、前記ダイシングシート用基材フィルムの一方の主面上に積層された粘着剤層とを備えたことを特徴とするダイシングシートを提供する(発明7)。
本発明は、第3に、ポリオレフィン系フィルムに電子線を照射する電子線照射工程を備えたダイシングシート用基材フィルムの製造方法であって、前記電子線照射工程は、次の(a)から(c)の条件の全てを満たすダイシングシート用基材フィルムの製造方法を提供する(発明8)。
(a)電子線の積算照射量が105kGy以上
(b)電子線の積算照射時間が8秒以下
(c)電子線の1回の照射あたりの照射量が135kGy以下
上記発明(発明8)において、電子線の照射回数が2以上であってもよい(発明9)。
上記発明(発明8、9)において、前記ポリオレフィン系フィルムに対する電子線の積算照射量が115kGy以上300kGy以下であることが好ましい(発明10)。
上記発明(発明8から10)において、前記ポリオレフィン系フィルムを備えた長尺フィルムの長尺方向に張力が付与された状態で、前記ポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の主面側から、前記長尺フィルムの主面における電子線が照射された帯域が長尺方向に移動するように、電子線の照射を行ってもよい(発明11)。
上記発明(発明11)において、前記電子線が照射された帯域の移動速度が、10m/分以上100m/分以下であってもよい(発明12)。
本発明は、第4に、上記発明(発明7)に係るダイシングシートの前記粘着剤層側の面を、被加工部材であるデバイス関連部材の一の面に貼付し、前記デバイス関連部材における前記ダイシングシートが貼付された一の面に遠位な側から前記デバイス関連部材を切断して、前記デバイス関連部材が小片化してなるチップ状部材の複数を得ることを特徴とするチップ状部材の製造方法を提供する(発明13)。
本発明によれば、薄い半導体ウエハなどのデバイス関連部材をダイシングする場合にも、ダイシング屑の発生を低減でき、構成部材である基材フィルムに電子線を照射する工程(電子線照射工程)において、不具合の発生を抑制できるダイシングシートを得ることができる。また、かかるダイシングシートを用いることにより、品質および生産性に優れるチップ状部材をも得ることができる。
本発明の一実施形態に係るダイシングシートの概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るダイシングシート1は、基材フィルム2と、基材フィルム2の少なくとも一方の面に積層された粘着剤層3とを備える。
1.基材フィルム
本実施形態に係るダイシングシート1の基材フィルム2は、電子線が照射されたポリオレフィン系フィルム(本明細書において「照射後POフィルム」ともいう。)をその構成要素の少なくとも一つとして含む。基材フィルム2は、照射後POフィルムから構成されていてもよいし、照射後POフィルムと他のフィルムとの積層体であってもよいが、エキスパンド適性が損なわれないようにすること、コストが増大することを避けること等の観点から、ポリオレフィン系フィルム以外のフィルムを構成要素として含まないこと、すなわち、基材フィルム2はポリオレフィン系フィルムからなることが好ましい。基材フィルム2が積層体からなる場合には、基材フィルム2の一方の主面が照射後POフィルムの面からなり、その電子線が照射された主面に粘着層3が積層されることにより、ダイシングシート1が構成されていることが好ましい。
本明細書において、ポリオレフィン系フィルムとは、エチレン性不飽和結合を有する炭化水素化合物を単量体の少なくとも一種として形成された重合体を含有するフィルムを意味する。かかる単量体として、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブテン、ノルボルネンなどが例示される。
ポリオレフィン系フィルムの具体例として、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等のエチレン系共重合体フィルム;低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のオレフィン樹脂フィルムなどが挙げられる。またアイオノマーフィルムのような変性フィルムもポリオレフィン系フィルムの概念に含まれる。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。ポリオレフィン系フィルムはこうしたフィルムの単層体であってもよいし、複数のポリオレフィン系フィルムの積層体であってもよい。また、上記のポリオレフィン系フィルムを与える重合体の複数種類を含むフィルムをポリオレフィン系フィルムとして用いてもよい。
本実施形態に係るダイシングシート1が備える基材2は、照射後POフィルムと照射後POフィルム以外のフィルムとの積層体であってもよい。そのような照射後POフィルム以外のフィルムの具体例として、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。
照射後POフィルムを与えるポリオレフィン系フィルムがエチレン系共重合体フィルムである場合には、その共重合比を変えることなどによりその機械特性を広範な範囲で制御することが容易である。このため、エチレン系共重合体フィルムに基づく照射後POフィルムを備える基材フィルム2は、本実施形態に係るダイシングシート1の基材フィルムとして求められる機械特性を満たしやすい。また、エチレン系共重合体フィルムは粘着剤層3に対する密着性が比較的高いため、ダイシングシートの構成要素として使用した際に基材フィルム2と粘着剤層3との界面での剥離が生じにくい。
エチレン系共重合体フィルムなどポリオレフィン系フィルムは、ダイシングシートとしての特性に悪影響を及ぼす成分(例えば、ポリ塩化ビニル系フィルムなどでは、当該フィルムに含有される可塑剤が基材フィルム2から粘着剤層3へと移行し、さらに粘着剤層3の基材フィルム2に対向する側と反対側の面に分布して、粘着剤層3のデバイス関連部材に対する粘着性を低下させる場合がある。)の含有量が少ないため、粘着剤層3のデバイス関連部材に対する粘着性が低下するなどの問題が生じにくい。すなわち、エチレン系共重合体フィルムなどポリオレフィン系フィルムは化学的な安定性に優れる。
本実施形態に係る基材フィルム2は、上記のポリオレフィン系フィルムに対して電子線の照射が行われたものである照射後POフィルムを備える。ここで、電子線とは、自由電子束すなわち陰極線を指す。ポリオレフィン系フィルムに電子線を照射するには、通常、電子線源(高エネルギー、低エネルギー、さらにはスキャニング等の何れのタイプも含む)を用いて、その発生電子線下を所定の条件で、フィルムを通過させることにより行なう。電子線源の種類としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。なお、電子線はβ線(すなわち、原子核の放射性崩壊により生成した電子線)であってもよい。
通常、電子線の照射は、ポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の主面側から電子線を照射することにより行われる。この電子線の照射は、次の3条件の全てを満たすように行われる。
(条件a)電子線の積算照射量が105kGy以上
(条件b)電子線の積算照射時間が8秒以下
(条件c)電子線の1回の照射あたりの照射量が135kGy以下
電子線の積算照射量が105kGy以上であることにより、ダイシング屑の発生を低減させる効果を安定的に得ることができる。かかる効果をより安定的に得る観点から、電子線の積算照射量が110kGy以上であることが好ましく、115kGy以上であることが好ましく、125kGy以上であることが特に好ましい。
電子線の積算照射量の上限は、電子線を照射することによりダイシング屑の発生を低減させる観点のみからは、設定されない。ポリオレフィン系フィルムを構成する重合体に電子線が照射されると、重合体内または重合体間の架橋反応が進行し、かかる反応により形成される架橋構造の存在密度が高い部分では、ポリオレフィン系フィルムは硬質化し、ダイシングの際に切削片が成長しにくい。電子線の照射量と上記の架橋構造の存在密度とは概ね正の相関を有するため、基本的な傾向として、電子線の照射量が多ければ多いほど、ダイシング屑は発生しにくい。
ただし、次に説明するように、電子線の照射時間が長くなると、架橋構造の形成に異方性が生じる場合があり、この異方性に基づくポリオレフィン系フィルムの分子構造的異方性の程度が大きくなると、ダイシング屑が逆に発生しやすくなることもある。
そのような不具合が発生する場合として、ポリオレフィン系フィルムに対して電子線を照射する工程(本明細書において「電子線照射工程」ともいう。)において、ポリオレフィン系フィルムの電子線が照射される部分に張力が付与されている場合が例示される。かかる場合の具体例を、以下、具体的に説明する。
そのような場合の具体例として、ポリオレフィン系フィルムを備えた長尺フィルムの巻取体から長尺フィルムを繰り出して、ポリオレフィン系フィルムの一部の帯域に電子線を照射し、電子線が照射されたポリオレフィン系フィルムを備えた長尺フィルムを基材フィルム2として再び巻き取る、いわゆるロールツーロール方式で電子線照射が行われる場合が挙げられる。この場合には、長尺フィルムの繰り出された部分は長尺方向に張力が付与された状態となる。この状態において、長尺フィルムが備えるポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の主面側から、ポリオレフィン系フィルムの主面における電子線が照射された帯域が長尺方向に移動するように、電子線照射が行われる。電子線が照射された部分は、電子線の運動エネルギーや、電子線とともに放射されるエネルギー線(赤外線など)の影響により、局部的に発熱する。このため、電子線が照射された部分に存在するポリオレフィン系フィルム内の重合体は変形が容易となる。上記のとおり長尺フィルムは張力が付与された状態にあるため、この張力の方向に配向するような重合体の変形が生じやすく、結果的に、ポリオレフィン系フィルムの電子線が照射された部分ではポリオレフィン系フィルム内の重合体の配向が進み、長尺フィルムが備えるポリオレフィン系フィルム(この段階では照射後POフィルムとなっている。)の異方性が高まる。
照射後POフィルムの分子構造的異方性がある程度大きくとなると、かかる照射後POフィルムを含む基材フィルム2を備えたダイシングシート1は、ダイシング工程時にダイシング屑がむしろ発生しやすくなってしまう。その理由は明らかでないが、次のような現象が生じている可能性がある。すなわち、張力が付与された方向(MD方向)では、重合体の配向に沿った切断となるため照射後POフィルムの切断抵抗が相対的に低いが、MD方向に直交する方向(CD方向)では、重合体を切断する可能性が高くなるため、照射後POフィルムの切断抵抗が高まる。切断抵抗が高い状態での基材フィルム2の切断は発熱量が多くなるため、切削片が成長しやすくなって、ダイシング屑の発生が助長されている可能性がある。
以上説明した、いわゆるロールツーロール方式で電子線照射が行われる場合における、照射後POフィルムの分子構造的異方性に起因したダイシング屑の発生が助長される傾向は、基材フィルム2がポリオレフィン系フィルム以外のフィルムを構成要素として含まない場合に特に問題となる。その理由は次のとおりである。すなわち、基材フィルム2がポリオレフィン系フィルム以外のフィルムとして、たとえばポリエステル系フィルム等の張力によって変形しにくいフィルムを構成要素として含む場合には、これによってポリオレフィン系フィルムに加えられる張力を低減することができる。したがって、上記のような電子線照射の方法であっても、ダイシング屑の発生は助長されにくい。しかし、基材フィルム2がポリオレフィン系フィルム以外のフィルムを構成要素として含まない場合はこのような防止策(基材フィルム2を他のフィルムとの積層体としてポリオレフィン系フィルムに加えられる張力を低減する方法)を採用できない。それゆえ、この場合には、従来技術によれば、ダイシング屑の発生が助長されることを避けることが困難である。これに対し、本発明に係るダイシングシート用基材フィルムでは、このように基材フィルム2がポリオレフィン系フィルム以外のフィルムを構成要素として含まない場合であっても、いわゆるロールツーロール方式で電子線照射が行われる場合において、照射後POフィルムの分子構造的異方性に起因してダイシング屑の発生が助長されることを抑制しうる。
以上説明した照射後POフィルムの分子構造的異方性が高まったことに基づいてダイシング屑が発生しやすくなる不具合を安定的に回避する観点から、ポリオレフィン系フィルムに対する電子線の積算照射時間は8秒以下とされる。かかる不具合をより安定的に回避する観点から、電子線の積算照射時間は7秒以下とすることが好ましく、6.5秒以下とすることがより好ましく、5秒以下とすることが特に好ましい。
前述のように、電子線の照射は基材フィルム2の発熱をも伴うところ、電子線の照射量が増加すると、基材フィルム2の発熱量が増えて、基材フィルム2全体が収縮する不具合が生じやすくなる。この収縮に基づく不具合の発生を安定的に回避する観点から、電子線の積算照射量の上記の必要量(105kGy以上)へと到達させるにあたり、1回の電子線の照射による照射量は135kGy以下とされる。上記の収縮に基づく不具合の発生をより安定的に回避する観点から、1回の電子線の照射による照射量を135kGy以下とすることが好ましく、125kGy以下とすることがより好ましく、120kGy以下とすることが特に好ましい。
このように1回の電子線の照射による照射量には上限が設定されるため、ポリオレフィン系フィルムへの電子線の照射を複数回行うことによって、電子線の積算照射量の上記の必要量(105kGy以上)へと到達させてもよい。照射回数が多いほど発熱に起因する不具合が発生する可能性は低減されるが、照射回数が過度に多い場合には、設備負荷が増大したり、製造時間が長くなって生産性が低下したりするおそれがあるため、電子線の照射回数は4以下とすることが好ましく、3以下とすることがより好ましく、2以下とすることが特に好ましい。
以上の電子線照射に伴う発熱の問題を考慮すれば、電子線の積算照射量は350kGy以下とすることが好ましく、270kGy以下とすることがより好ましく、250kGy以下とすることが特に好ましい。
前述のように、ポリオレフィン系フィルムを備えた長尺フィルムに張力が付与された状態で、ポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の主面側から、長尺フィルムの主面における電子線が照射された帯域が長尺方向に移動するように、電子線の照射を行う場合には、電子線が照射された帯域の移動速度は10m/分以上100m/分以下とすることが好ましい。なお、前述のロールツーロール方式により電子線の照射が行われる場合には、電子線が照射された帯域の移動速度とは、長尺フィルムの巻取体からの長尺フィルムの繰り出し速度に相当する。上記の移動速度が10m/分未満の場合には、ポリオレフィン系フィルムの電子線の照射領域における発熱量が過大となって、収縮に係る不具合が顕在化しやすくなる。一方、上記の移動速度が100m/分を超える場合には、1回あたりの電子線の照射帯域を大きくしたり、電子線の照射回数を増やしたりすることが、前述の電子線の積算照射量に関する要請(105kGy以上)を満たすために必要となり、生産性の低下などの不具合が生じる可能性が高まる。
基材フィルム2は、これを構成するフィルム内に、顔料、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤が含まれていてもよい。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、フィラーとして、メラミン樹脂のような有機系材料、ヒュームドシリカのような無機系材料およびニッケル粒子のような金属系材料が例示される。こうした添加剤の含有量は特に限定されないが、基材フィルム2が所望の機能を発揮し、平滑性や柔軟性を失わない範囲に留めるべきである。
また、基材フィルム2の粘着剤層3側の面(以下、「基材被着面」ともいう。)には、カルボキシル基、ならびにそのイオンおよび塩からなる群から選ばれる1種または2種以上を有する成分が存在することが好ましい。基材フィルム2における上記の成分と粘着剤層3に係る成分(粘着剤層3を構成する成分および架橋剤(γ)などの粘着剤層3を形成するにあたり使用される成分が例示される。)とが化学的に相互作用することにより、これらの間で剥離が生じる可能性を低減させることができる。基材被着面にそのような成分を存在させるための具体的な手法は特に限定されない。たとえば、基材フィルム2自体を例えばエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム等として、基材フィルム2を構成する材料となる樹脂がカルボキシル基、ならびにそのイオンおよび塩からなる群から選ばれる1種または2種以上を有するようにしてもよい。基材被着面に上記成分を存在させる他の手法として、基材フィルム2は例えばポリオレフィン系フィルムであって、基材被着面側にコロナ処理が施されていたり、プライマー層が設けられていたりしてもよい。また、基材フィルム2の基材被着面と反対側の面には各種の塗膜が設けられていてもよい。
基材フィルム2の厚さはダイシングシート1が前述の各工程において適切に機能できる限り、限定されない。好ましくは20μm以上450μm以下、より好ましくは25μm以上400μm以下、特に好ましくは50μm以上350μm以下の範囲にある。
本実施形態における基材フィルム2の破断伸度は、23℃、相対湿度50%のときに測定した値として100%以上であることが好ましく、特に200%以上1000%以下であることが好ましい。ここで、破断伸度はJIS K7161:1994(ISO 527−1 1993)に準拠した引張り試験(引張速度:200mm/分、試験片形状:15mm×100mm)における、試験片破壊時の試験片の長さの元の長さに対する伸び率である。上記の破断伸度が100%以上である基材フィルム2は、エキスパンド工程の際に破断しにくく、デバイス関連部材を切断して形成したチップ状部材を離間し易いものとなる。
また、本実施形態における基材フィルム2の25%ひずみ時引張応力は5N/10mm以上15N/10mm以下であることが好ましく、最大引張応力は15MPa以上50MPa以下であることが好ましい。ここで25%ひずみ時引張応力および最大引張応力はJIS K7161:1994に準拠した試験により測定される。25%ひずみ時引張応力が5N/10mm未満であったり、最大引張応力が15MPa未満であったりすると、ダイシングシート1にデバイス関連部材を貼着した後、リングフレームなどの枠体に固定した際、基材フィルム2が柔らかいために弛みが発生することが懸念され、この弛みは搬送エラーの原因となることがある。一方、25%ひずみ時引張応力が15N/10mmを超えたり、最大引張応力が50MPa未満であったりすると、エキスパンド工程時にリングフレームからダイシングシート1自体が剥がれたりするなどの問題が生じやすくなることが懸念される。なお、上記の破断伸度、25%ひずみ時引張応力、最大引張応力は基材フィルム2における原反の長尺方向について測定した値を指す。
なお、基材フィルム2を構成するフィルムは、延伸工程を受けたものであってもよいし、無延伸であってもよい、延伸工程を受けたものである場合には、2軸延伸など、フィルム内に配向が生じにくい手法による延伸であることが好ましい。
2.粘着剤層
(1)組成
本実施形態に係るダイシングシート1の粘着剤層3は、従来より公知の種々の粘着剤組成物により形成され得る。このような粘着剤組成物としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤組成物が用いられる。また、エネルギー線硬化型や加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤組成物も用いることができる。
本実施形態に係るダイシングシート1が備える粘着剤層3は、エネルギー線の照射により重合反応を生じる成分を含有する、エネルギー線重合型の粘着剤組成物から構成される場合もある。この重合のためのエネルギー線としては、X線、紫外線のような電磁波、電子線などが例示される。これらのエネルギー線の中でも、設備設置に要するコストが低く、作業性にも優れる紫外線が好ましい。
紫外線により重合しうる粘着剤組成物の一例として、次に説明するアクリル系重合体(α)およびエネルギー線重合性化合物(β)、さらに必要に応じ架橋剤(γ)などを含有する粘着剤組成物が挙げられる。
(1−1)アクリル系重合体(α)
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物の一例はアクリル系重合体(α)を含有する。この粘着剤組成物から形成された粘着剤層3において、アクリル系重合体(α)は少なくともその一部が後述する架橋剤(γ)と架橋反応を行って架橋物として含有される場合もある。
アクリル系重合体(α)としては、従来公知のアクリル系の重合体を用いることができる。アクリル系重合体(α)の重量平均分子量(Mw)は、上記の粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物またはこれに溶媒を加えて得られる組成物からなる塗工液(本明細書において、これらの塗工液を「粘着層形成用塗工液」と総称する。)の塗工時の取り扱い性および造膜性の観点から1万以上200万以下であることが好ましく、10万以上150万以下であることがより好ましい。また、アクリル系重合体(α)のガラス転移温度Tgは、好ましくは−70℃以上30℃以下、さらに好ましくは−60℃以上20℃以下の範囲にある。ガラス転移温度は、Fox式より計算することができる。なお、後述の水酸基等の官能基を含有する(メタ)アクリレートに基づく構成単位およびアルキル(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含んでなる共重合体であるアクリル系重合体と、上記の官能基と反応しうる官能基およびエネルギー線重合性基を1分子内に有する化合物とを反応させて、アクリル系重合体にエネルギー線重合性基を導入する場合には、アクリル系重合体(α)のTgは、上記の官能基と反応しうる官能基およびエネルギー線重合性基を1分子内に有する化合物を反応させる前のアクリル系重合体のTgを指す。
上記アクリル系重合体(α)は、1種類のアクリル系モノマーから形成された単独重合体であってもよいし、複数種類のアクリル系モノマーから形成された共重合体であってもよいし、1種類または複数種類のアクリル系モノマーとアクリル系モノマー以外のモノマーとから形成された共重合体であってもよい。アクリル系モノマーとなる化合物の具体的な種類は特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、その誘導体(アクリロニトリルなど)が具体例として挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルについてさらに具体例を示せば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の鎖状骨格を有する(メタ)アクリレート;シクロへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イミドアクリレート等の環状骨格を有する(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の水酸基以外の反応性官能基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。また、アクリル系モノマー以外のモノマーとして、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン、酢酸ビニル、スチレンなどが例示される。なお、アクリル系モノマーがアルキル(メタ)アクリレートである場合には、そのアルキル基の炭素数は1から18の範囲であることが好ましい。
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物が、後述するようにアクリル系重合体(α)を架橋しうる架橋剤(γ)を含有している場合には、アクリル系重合体(α)が有する反応性官能基の種類は特に限定されず、架橋剤(γ)の種類などに基づいて適宜決定すればよい。例えば、架橋剤(γ)がポリイソシアネート化合物である場合には、アクリル系重合体(α)が有する反応性官能基として、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが例示される。これらのうちでも、架橋剤(γ)がポリイソシアネート化合物である場合には、イソシアネート基との反応性の高い水酸基を反応性官能基として採用することが好ましい。アクリル系重合体(α)に反応性官能基として水酸基を導入する方法は特に限定されない。一例として、アクリル系重合体(α)が2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有するアクリレートに基づく構成単位を骨格に含有する場合が挙げられる。
アクリル系重合体(α)が反応性官能基を有する場合には、アクリル系重合体(α)を形成するためのモノマー換算で、全モノマーに対する反応性官能基の質量割合を1質量%以上20質量%以下程度とすることが好ましく、2質量%以上10質量%以下とすることがより好ましい。
(1−2)エネルギー線重合性化合物(β)
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物が含有するエネルギー線重合性化合物(β)は、エネルギー線重合性基を有し、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けて重合反応することができる限り、具体的な構成は特に限定されない。エネルギー線重合性化合物(β)が重合することによって粘着剤層3のデバイス関連部材に対する粘着性を低下させることができる。
エネルギー線重合性基の種類は特に限定されない。その具体例として、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和結合を有する官能基などが挙げられる。中でもエネルギー線が照射されたときの反応性の高さの観点から(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
エネルギー線重合性化合物(β)の分子量は特に限定されない。その分子量が過度に小さい場合には、粘着剤組成物または粘着剤層3の製造過程においてその化合物が揮発することが懸念され、このとき粘着剤層3の組成の安定性が低下する。したがって、エネルギー線重合性化合物(β)の分子量は、重量平均分子量(Mw)として100以上とすることが好ましく、200以上とすることがより好ましく、300以上とすることが特に好ましい。
エネルギー線重合性化合物(β)の少なくとも一部は、分子量が、重量平均分子量(Mw)として4,000以下であることが好ましい。このようなエネルギー線重合性化合物(β)として、エネルギー線重合性基を有する単官能モノマーおよび多官能のモノマーならびにこれらのモノマーのオリゴマーからなる群から選ばれる1種または2種以上からなる化合物が例示される。
上記の化合物の具体的な組成は特に限定されない。上記化合物の具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの鎖状骨格を有するアルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンタジエンジメトキシジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有するアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系化合物などが挙げられる。これらの中でもアクリレート系化合物はアクリル系重合体(α)への相溶性が高いため好ましい。
エネルギー線重合性化合物(β)が一分子中に有するエネルギー線重合性基の数は限定されないが、複数であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることが特に好ましい。
エネルギー線重合性化合物(β)が比較的低分子量の化合物である場合には、本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物に含有されるエネルギー線重合性化合物(β)の含有量は、アクリル系重合体(α)100質量部に対して50質量部以上300質量部以下とすることが好ましく、75質量部以上150質量部以下とすることがより好ましい。なお、本明細書において、各成分の含有量を示す「質量部」は固形分としての量を意味する。エネルギー線重合性化合物(β)の含有量をこのような範囲とすることにより、エネルギー線照射後の粘着剤層3のデバイス関連部材に対する粘着性と、エネルギー線照射前の粘着剤層3のデバイス関連部材に対する粘着性との差を十分に確保することができる。
エネルギー線重合性化合物(β)の他の例として、エネルギー線重合性化合物(β)がアクリル系重合体であって、エネルギー線重合性基を有する構成単位を主鎖または側鎖に有するものである場合が挙げられる。この場合には、エネルギー線重合性化合物(β)はアクリル系重合体(α)としての性質を有するため、粘着剤層3を形成するための組成物の組成が簡素化される、粘着剤層3におけるエネルギー線重合性基の存在密度を制御しやすいなどの利点を有する。
上記のようなアクリル系重合体(α)の性質を有するエネルギー線重合性化合物(β)は、例えば次のような方法で調製することができる。水酸基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有する(メタ)アクリレートに基づく構成単位およびアルキル(メタ)アクリレートに基づく構成単位を含んでなる共重合体であるアクリル系重合体と、上記の官能基と反応しうる官能基およびエネルギー線重合性基(例えばエチレン性二重結合を有する基)を1分子内に有する化合物とを反応させることにより、上記のアクリル系重合体にエネルギー線重合性基を付加させることができる。
エネルギー線として紫外線を用いる場合には、取り扱いのしやすさから波長200〜380nm程度の紫外線を含む近紫外線を用いればよい。紫外線量としては、エネルギー線重合性化合物(β)の種類や粘着剤層3の厚さに応じて適宜選択すればよく、通常50〜500mJ/cm程度であり、100〜450mJ/cmが好ましく、200〜400mJ/cmがより好ましい。また、紫外線照度は、通常50〜500mW/cm程度であり、100〜450mW/cmが好ましく、200〜400mW/cmがより好ましい。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオードなどが用いられる。
エネルギー線として電子線を用いる場合には、その加速電圧については、エネルギー線重合性化合物(β)の種類や粘着剤層3の厚さに応じて適宜選定すればよく、通常加速電圧10〜1000kV程度であることが好ましい。また、照射線量は、エネルギー線重合性化合物(β)が適切に硬化する範囲に設定すればよく、通常0.1〜10kGyの範囲で選定される。
(1−3)架橋剤(γ)
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物は、前述のように、アクリル系重合体(α)と反応しうる架橋剤(γ)を含有してもよい。この場合には、本実施形態に係る粘着剤層3は、アクリル系重合体(α)と架橋剤(γ)との架橋反応により得られた架橋物を含有する。
架橋剤(γ)の種類としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、金属キレート系化合物、アジリジン系化合物等のポリイミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、金属アルコキシド、金属塩等が挙げられる。これらの中でも、架橋反応を制御しやすいことなどの理由により、架橋剤(γ)がポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
ここで、ポリイソシアネート化合物についてやや詳しく説明する。ポリイソシアネート化合物は1分子当たりイソシアネート基を2個以上有する化合物であって、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの鎖状骨格を有するイソシアネートが挙げられる。
また、これらの化合物の、ビウレット体、イソシアヌレート体や、これらの化合物と、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の非芳香族性低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などの変性体も用いることができる。上記のポリイソシアネート化合物は1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。
本実施形態に係る粘着剤層3がアクリル系重合体(α)と架橋剤(γ)とに基づく架橋物を有する場合には、粘着剤層3に含有される架橋物に係る架橋密度を調整することによって、粘着剤層3の照射前貯蔵弾性率などの特性を制御することができる。この架橋密度は、粘着剤層3を形成するための組成物に含まれる架橋剤(γ)の含有量などを変えることによって調整することができる。具体的には、粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物の架橋剤(γ)の含有量を、アクリル系重合体(α)100質量部に対して0.1質量部以上とすることで、粘着剤層3の照射前貯蔵弾性率などを適切な範囲に制御することが容易となる。この制御性を高める観点から、架橋剤(γ)の含有量は、アクリル系重合体(α)100質量部に対して0.3質量部以上とすることがより好ましく、0.5質量部以上とすることが特に好ましい。架橋剤(γ)の含有量の上限は特に限定されないが、含有量が過度に高い場合には、粘着剤層3の粘着性を後述する範囲に制御することが困難となる場合もあるため、アクリル系重合体(α)100質量部に対して50質量部以下とすることが好ましく、40質量部以下とすることがより好ましい。
本実施形態に係る粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物が架橋剤(γ)を含有する場合には、その架橋剤(γ)の種類などに応じて、適切な架橋促進剤を含有することが好ましい。例えば、架橋剤(γ)がポリイソシアネート化合物である場合には、粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物は有機スズ化合物などの有機金属化合物系の架橋促進剤を含有することが好ましい。
(1−4)その他の成分
本実施形態に係るダイシングシート1が備える粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物は、上記の成分に加えて、貯蔵弾性率調整剤、光重合開始剤、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。
貯蔵弾性率調整剤として粘着付与樹脂や長鎖アルキルアクリルオリゴマーなどが例示される。貯蔵弾性率調整剤の含有量は、その機能を安定的に発揮させる観点から、アクリル系重合体(α)100質量部に対して50質量部以上とすることが好ましく、75質量部以上とすることがより好ましく、100質量部以上とすることが特に好ましい。また、粘着剤層3に含有される粘着剤の凝集性を適切な程度に維持するため、貯蔵弾性率調整剤の含有量はアクリル系重合体(α)100質量部に対して500質量部以下とすることが好ましく、400質量部以下とすることがより好ましく、350質量部以下とすることが特に好ましい。
貯蔵弾性率調整剤が粘着付与樹脂を含有する場合において、その粘着付与樹脂の種類は特に限定されない。重合化ロジン、エステル化ロジンおよび不均化ロジンならびにこれらの水素添加樹脂などのロジン系の粘着付与樹脂であってもよいし、α−ピネン樹脂などのテルペン系の粘着付与樹脂であってもよいし、炭化水素樹脂などの石油系樹脂であってもよい。あるいは、クマロン樹脂、アルキル・フェノール樹脂、キシレン樹脂といった芳香族系の粘着付与樹脂であってもよい。
長鎖アルキルアクリルオリゴマーは、炭素数が4以上18以下程度のアルキル(メタ)アクリレートが重合してなるオリゴマーであって、アルキル基部分の具体的な構成は特に限定されない。かかるオリゴマーを形成するためのモノマーの具体例として、ブチルアクリレートが挙げられる。
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示される。エネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
(2)厚さ
本実施形態に係るダイシングシート1が備える粘着剤層3の厚さは特に限定されない。粘着剤層3のデバイス関連部材に対する粘着性を適切に維持する観点から、粘着剤層3の厚さは1μm以上とすることが好ましく、2μm以上とすることがより好ましく、3μm以上とすること特に好ましい。一方、ダイシング工程中にチップ状部材に欠けが生じる可能性を低減させる観点から、粘着剤層3の厚さは100μm以下とすること好ましく、80μm以下とすることより好ましく、50μm以下とすること特に好ましい。
(3)基材フィルムとの位置関係
本実施形態に係るダイシングシート1が備える基材フィルム2と粘着剤層3とは、基材フィルム2の一方の主面上に粘着剤層3が積層されていれば特に限定されない。ダイシング屑の発生をより安定的に抑制する観点から、基材フィルム2が備える照射後POフィルムの面と粘着剤層3の面とが対向するように積層されていることが好ましく、照射後POフィルムの電子線が照射された側の面が粘着剤層3の面に対向するように積層されていることがより好ましい。
3.剥離シート
本実施形態に係るダイシングシート1は、粘着剤層3をデバイス関連部材に貼付するまでの間粘着剤層3を保護する目的で、粘着剤層3の基材フィルムから遠位な側の面に、剥離シートの剥離面が貼合されていてもよい。剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系などを用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シートの厚さについて特に制限はないが、通常20μm以上250μm以下程度である。
4.ダイシングシートの製造方法
ダイシングシート1の製造方法は、基材フィルム2を前述のように電子線が照射されたポリオレフィン系フィルムを備えるものとし、前述の粘着剤組成物から形成される粘着剤層3を基材フィルム2の一の面に積層できれば、詳細な方法は特に限定されない。
ポリオレフィン系フィルムに電子線を照射する電子線照射工程は、前述の条件aから条件cを満たす限り、その詳細は特に限定されない。電子線照射工程に求められる各条件のより好ましい条件、その他満たすことが好ましい条件等は前述のとおりである。
粘着剤層3を基材フィルム2の一の面に積層する工程の一例を挙げれば、前述の粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒を含有する粘着層形成用塗工液を調製し、基材フィルム1の一の面上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等によりその粘着層形成用塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該一の面上の塗膜を必要に応じて加熱等を伴って乾燥させることにより、粘着剤層3を形成することができる。粘着層形成用塗工液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層3を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。
粘着層形成用塗工液が架橋剤(γ)を含有する場合には、上記の乾燥における熱を利用して、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のアクリル系重合体(α)と架橋剤(γ)との架橋反応を進行させ、粘着剤層3内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、上記の方法などによって基材フィルム2に粘着剤層3を積層させた後、得られたダイシングシート1を、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
ダイシングシート1の製造方法の別の一例として、前述の剥離シートの剥離面上に塗工用組成物を塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させて粘着剤層3と剥離シートとからなる積層体を形成し、この積層体の粘着剤層3における剥離シートに対向する側と反対側の面を基材フィルム2の基材被着面に貼付して、ダイシングシート1と剥離シートとの積層体を得てもよい。この積層体における剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、デバイス関連部材に貼付するまでの間粘着剤層3を保護していてもよい。
ダイシングシート1を、デバイス関連部材に貼付する前に、予めデバイス関連部材と同形状あるいはデバイス関連部材の平面視における形状をそっくり含む形状に裁断しておいてもよい。これにより、ダイシングシート1のデバイス関連部材への貼付後に粘着シート1を裁断する労力や設備を省略できる。
ダイシングシート1を、ダイシング・ダイボンディングシートの一部として用いる場合には、上記のようにして得られたダイシングシート1における、粘着剤層3の基材被着面に対向する面と反対側の面に、ダイボンディング用の接着剤となるフィルム状接着剤が積層されてもよい。フィルム状接着剤は、ダイシング・ダイボンディングシートをデバイス関連部材に貼付する前に、予めデバイス関連部材と同形状に裁断されていてもよく、ダイシングシート1は、ダイシング・ダイボンディングシートをデバイス関連部材に貼付する前に、予めデバイス関連部材の平面視における形状をそっくり含む形状に裁断されていてもよい。ダイシングシート1における、粘着剤層3の基材被着面に対向する面と反対側の面には、フィルム状接着剤以外の機能性フィルム(例えば、保護膜形成用フィルムなど)の面が積層されてもよい。
5.チップ状部材の製造方法
本実施形態に係るダイシングシート1を用いて、デバイス関連部材としての半導体ウエハから半導体チップを製造する場合を具体例として、デバイス関連部材からチップ状部材を製造する方法を以下に説明する。
本実施形態に係るダイシングシート1は、使用にあたり、粘着剤層3側の面(すなわち、粘着剤層3の基材フィルム2と反対側の面)を半導体ウエハの一の主面に貼付する。なお、ダイシングシート1の粘着剤層3側の面に剥離シートが貼付されている場合には、その剥離シートを剥離して粘着剤層3側の面を表出させて、半導体ウエハの一の主面にその面を貼付すればよい。ダイシグシート1の周縁部は、通常その部分に設けられた粘着剤層3により、リングフレームと呼ばれる搬送や装置への固定のための環状の治具に貼付される。本実施形態に係るダイシングシート1の基材フィルム2が所定の条件を満たすように電子線が照射されたポリオレフィン系フィルムを備えるため、本実施形態に係るダイシングシート1を用いた場合には、ダイシング工程中にダイシング屑が生じにくい。
以上のダイシング工程を実施することによって半導体ウエハから複数のチップ状部材としての半導体チップを得ることができる。ダイシング工程終了後、ダイシングシート1上に互いに近接して配置された複数の半導体チップをピックアップしやすいように、ダイシングシート1を主面内方向に伸長するエキスパンド工程が行われる。この伸長の程度は、近接配置された半導体チップが有すべき間隔、基材フィルム2の引張強度などを考慮して適宜設定すればよい。
エキスパンド工程の実施により近接配置された半導体チップ同士が適切に離間したら、吸引コレット等の汎用手段により、粘着剤層3上の半導体チップのピックアップを行う。ピックアップされた半導体チップは、搬送工程など次の工程へと供される。
なお、粘着剤層3を形成するための粘着剤組成物がエネルギー線照射により重合する材料である場合には、ダイシング工程の終了後、ピックアップ工程の開始までに、本実施形態に係るダイシングシート1の基材フィルム2側からエネルギー線を照射を行ってもよい。その場合には、ダイシングシート1が備える粘着剤層3内部において重合反応が進行し、ピックアップ工程の作業性を高めることができる。このエネルギー線照射の実施時期は、ダイシング工程の終了後、ピックアップ工程の開始前であれば特に限定されない。
以上説明したとおり、本実施形態に係るチップ状部材の製造方法はダイシング工程時にダイシング屑が生じにくい。このため、ダイシング工程で不良品が発生しにくく、歩留まりが低下しにくい。それゆえ、本実施形態に係るダイシングシート1を用いる本実施形態に係る製造方法により得られたチップ状部材は、品質に優れるのみならず、コスト的に有利なものとなりやすい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)粘着層形成用塗工液の調製
次の組成を有する溶液状態の粘着層形成用塗工液(溶媒:トルエン)を調製した。
i)アクリル系重合体(α)として、90質量部のブチルアクリレートと10質量部のアクリル酸とを共重合して得た共重合体(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度Tg:−45℃)を固形分として100質量部、
ii)エネルギー線重合性化合物(β)として10官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量1740)を含むUV硬化性成分(日本合成化学社製:UV−5806、光重合開始剤を含む。)を固形分として100重量部、および
iii)架橋剤(γ)としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネート(TDI−TMP)を含有する架橋剤成分(日本ポリウレタン社製:コロネートL)を固形分として10質量部。
(2)ダイシングシートの作製
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製基材の一方の主面上にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製:SP−PET381031)を用意した。この剥離シートの剥離面上に、前述の塗工用組成物を、ナイフコーターにて、最終的に得られる粘着剤層の厚さが10μmとなるように塗布した。得られた塗膜を剥離シートごと100℃の環境下に1分間経過させることにより塗膜を乾燥させて、剥離シートと粘着剤層(厚さ:10μm)とからなる積層体を得た。粘着剤層の厚さは定圧厚さ測定器(テクロック社製:PG−02)を用いて測定した。
厚さ80μmの長尺体であるTダイ押出しにより製膜した無延伸のエチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル社製:ニュクレルN0903HC、酸含有率:9%、メルトフローレート:3g/10min.(190℃、2.16kg荷重)、密度:930kg/m、融点:99℃)フィルムの巻取体からフィルムを45m/分で繰り出し、電子線照射装置(ESI社製:TYPE300/165/800)を通過させることにより、当該フィルムの一方の主面側から電子線を照射した。照射条件は次のとおりであった。
照射量:110kGy
照射時間:2.2秒
なお、照射回数は1回であったため、上記の照射量および照射時間は、それぞれ、積算照射量および積算照射時間に相当する。かかる条件で電子線を照射した後のフィルムを基材フィルムとして得た。
かかる基材フィルムの電子線を照射した面を基材被着面として、その面に、上記の積層体の粘着剤層側の面を貼付して、図1に示されるような基材フィルムと粘着剤層とからなるダイシングシートを、粘着剤層側の面に剥離シートがさらに積層された状態で得た。
〔実施例2〕
実施例1における基材フィルムの調製にあたり、次の条件で電子線を照射した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
照射量:120kGy
照射時間:2.2秒
照射回数:1回
なお、照射回数が1回であったため、積算照射量は120kGyであり、積算照射時間は2.2秒であった。
〔実施例3〕
実施例1における基材フィルムの調製にあたり、次の条件で電子線を照射した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
照射量:130kGy
照射時間:2.2秒
照射回数:1回
なお、照射回数が1回であったため、積算照射量は130kGyであり、積算照射時間は2.2秒であった。
〔実施例4〕
実施例1における基材フィルムの調製にあたり、次の条件で電子線を照射した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
照射量:100kGy
照射時間:2.2秒
照射回数:2回
なお、照射回数が2回であったため、積算照射量は200kGyであり、積算照射時間は4.4秒であった。
〔実施例5〕
実施例1における基材フィルムの調製にあたり、次の条件で電子線を照射した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
照射量:100kGy
照射時間:2.2秒
照射回数:3回
なお、照射回数が3回であったため、積算照射量は300kGyであり、積算照射時間は6.6秒であった。
〔比較例1〕
実施例1における基材フィルムの調製にあたり、次の条件で電子線を照射した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
照射量:100kGy
照射時間:2.2秒
照射回数:1回
なお、照射回数が1回であったため、積算照射量は100kGyであり、積算照射時間は2.2秒であった。
〔比較例2〕
実施例1における基材フィルムの調製にあたり、次の条件で電子線を照射した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
照射量:140kGy
照射時間:2.2秒
照射回数:1回
なお、照射回数が1回であったため、積算照射量は140kGyであり、積算照射時間は2.2秒であった。
〔比較例3〕
実施例1における基材フィルムの調製にあたり、次の条件で電子線を照射した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ダイシングシートを得た。
照射量:100kGy
照射時間:2.2秒
照射回数:4回
なお、照射回数が4回であったため、積算照射量は400kGyであり、積算照射時間は8.8秒であった。
〔試験例1〕<ダイシング屑の発生状況の評価>
半導体ウエハ(8インチ)の鏡面からなる一の主面に、実施例および比較例にて作製したダイシングシートのそれぞれをテープマウンター(リンテック社製:Adwill RAD−2500m/12)を用いて貼付し、得られた半導体ウエハとダイシングシートとの積層体における半導体ウエハの面の周縁部(ダイシングシートの粘着剤層側の面が表出している部分)に、ダイシング用リングフレーム(ディスコ社製:2−6−1)を付着させた。次いで、半導体ウエハを下記の条件でダイシングして、10mm角の半導体チップからなるチップ状部材を得た。
<ダイシング条件>
・ダイシング装置 :DISCO社製 DFD−651
・ブレード :DISCO社製 ZH05−SD2500−N1−50
・刃の厚さ :0.020〜0.025mm
・刃先出し量 :0.510〜0.640mm
・ブレード回転数 :40000rpm
・切削速度 :10mm/秒
・基材切り込み深さ:20μm
・切削水量 :1.0L/分
・切削水温度 :20℃
得られたチップ状部材のうち、ダイシングシートの主面の中心近傍上に位置するチップ状部材5個についてダイシング屑観察試験を行った。すなわち、装置として電子顕微鏡(KEYENCE社製:VHZ−100)を用い、10mm角チップ状部材における、基材フィルムの長尺方向に平行な方向(MD方向)の断面(側面)、基材フィルムの長尺方向に直交する方向(MD方向)の断面(側面)を300倍のレンズを用いて拡大し、これら5個のチップ状部材に付着するMD方向のダイシング屑数およびCD方向のダイシング屑数を計測した。測定結果を表1に示す。
〔試験例2〕<収縮度の測定>
ポリオレフィン系フィルムの幅を電子線照射前後で測定し、下記式により収縮度を算出した。
収縮度(%)=(1−電子線照射後の幅/電子線照射前の幅)×100
算出結果を表1に示す。
〔試験例3〕<外観評価>
ポリオレフィン系フィルムの主面を電子線照射前後で観察し、ポリオレフィン系フィルムの主面にシワが発生し、その外観が劣化したか否かを評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 0006190134
表1から分かるように、本発明の条件を満たす実施例のダイシングシートは、ダイシング屑が発生しにくく、収縮に起因する不具合も発生しにくいものであった。
本発明に係るダイシングシートは、半導体ウエハなどのデバイス関連部材のダイシングシートとして好適に用いられる。
1…ダイシングシート
2…基材フィルム
3…粘着剤層

Claims (13)

  1. 電子線が照射されたポリオレフィン系フィルムを備えたダイシングシート用基材フィルムであって、前記ポリオレフィン系フィルムに対する電子線の照射は、次の(a)から(c)の条件の全てを満たすように行われることを特徴とするダイシングシート用基材フィルム。
    (a)電子線の積算照射量が105kGy以上
    (b)電子線の積算照射時間が8秒以下
    (c)電子線の1回の照射あたりの照射量が135kGy以下
  2. 電子線の照射回数が2以上である、請求項1に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  3. 前記ポリオレフィン系フィルムに対する電子線の積算照射量が115kGy以上350kGy以下である、請求項1または2に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  4. 前記ポリオレフィン系フィルムを備えた長尺フィルムの長尺方向に張力が付与された状態で、前記ポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の主面側から、前記ポリオレフィン系フィルムの主面における電子線が照射された帯域が長尺方向に移動するように、電子線の照射は行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  5. 前記電子線が照射された帯域の移動速度が、10m/分以上100m/分以下である、請求項4に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  6. 前記ポリオレフィン系フィルム以外のフィルムを構成要素として含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルム。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載されるダイシングシート用基材フィルムと、前記ダイシングシート用基材フィルムの一方の主面上に積層された粘着剤層とを備えたことを特徴とするダイシングシート。
  8. ポリオレフィン系フィルムに電子線を照射する電子線照射工程を備えたダイシングシート用基材フィルムの製造方法であって、前記電子線照射工程は、次の(a)から(c)の条件の全てを満たすダイシングシート用基材フィルムの製造方法。
    (a)電子線の積算照射量が105kGy以上
    (b)電子線の積算照射時間が8秒以下
    (c)電子線の1回の照射あたりの照射量が135kGy以下
  9. 電子線の照射回数が2以上である、請求項8に記載のダイシングシート用基材フィルムの製造方法。
  10. 前記ポリオレフィン系フィルムに対する電子線の積算照射量が115kGy以上300kGy以下である、請求項8または9に記載のダイシングシート用基材フィルムの製造方法。
  11. 前記ポリオレフィン系フィルムを備えた長尺フィルムの長尺方向に張力が付与された状態で、前記ポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の主面側から、前記長尺フィルムの主面における電子線が照射された帯域が長尺方向に移動するように、電子線の照射を行う、請求項8から10のいずれか一項に記載のダイシングシート用基材フィルムの製造方法。
  12. 前記電子線が照射された帯域の移動速度が、10m/分以上100m/分以下である、請求項11に記載のダイシングシート用基材フィルムの製造方法。
  13. 請求項7に記載されるダイシングシートの前記粘着剤層側の面を、被加工部材であるデバイス関連部材の一の面に貼付し、前記デバイス関連部材における前記ダイシングシートが貼付された一の面に遠位な側から前記デバイス関連部材を切断して、前記デバイス関連部材が小片化してなるチップ状部材の複数を得ることを特徴とするチップ状部材の製造方法。
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