JP6189008B1 - 消弧用絶縁材料成形体およびこれを備えるガス遮断器 - Google Patents

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Abstract

電流遮断の繰り返しに伴う、内部損傷およびガス発生量の減少が抑制された消弧用絶縁材料成形体を提供する。消弧用絶縁材料成形体(200)は、フルオロポリエーテル重合体(201)と、パーフルオロ樹脂粒子(202)とを含む。パーフルオロ樹脂粒子の含有率は、フルオロポリエーテル重合体およびパーフルオロ樹脂粒子の合計に対して、1体積%以上50体積%以下である。パーフルオロ樹脂粒子は、平均粒径が1μm以上30μm以下である。

Description

本発明は、消弧用絶縁材料成形体およびこれを備えるガス遮断器に関する。
特開昭57−202003号公報(特許文献1)には、アークに曝される部分の少なくとも表面部を、樹脂絶縁物で構成したガス絶縁電気装置が開示されている。この装置において、樹脂絶縁物は、フッ素樹脂および無機充填材を含んでいる。
特開昭57−202003号公報(第2ページの左下欄) 特開平5−94744号公報(第3ページの左上欄)
ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear;GIS)は、高圧電力系統の遮断および接続を行う装置である。GISは、たとえば、変電所、発電所、および受電設備等で用いられている。
GISは、1つの密閉容器内に、ガス遮断器、断路器、母線電路、避雷器、計器用変成器、および作業用接地装置等を収容した装置である。密閉容器には、絶縁性ガスが充填されている。絶縁性ガスは、たとえば六フッ化硫黄(SF6)等である。
GISにおいて、ガス遮断器は、短絡、過電流、地絡等が発生した際に、電路を遮断する役割を担う。一般にガス遮断器は、消弧室、絶縁性ガス、および、接点を有する一対のアーク接触子を備える。アーク接触子は、消弧室内に収容されている。アーク接触子は、可動アーク接触子および固定アーク接触子を含む。絶縁性ガスは、消弧室内に充填されている。
通電時、可動アーク接触子と固定アーク接触子とは接触している。すなわちアーク接触子は接点を有している。短絡等が発生すると、可動アーク接触子が固定アーク接触子から離れる(つまり接点が開く)ことにより、強制的に電流が遮断される。このとき可動アーク接触子と固定アーク接触子との間には、アークが発生(点弧)する。可動アーク接触子と固定アーク接触子とが離れても、電流が流れ続けようとするためである。
ガス遮断器では、遮断時に発生するアークに対して、絶縁性ガスを吹き付けることにより、アークを速やかに消滅(消弧)させる。絶縁性ガスの吹き付けは、アークによって加熱された電極を冷却する効果も有する。
現在、ガス遮断器はパッファ式が主流となっている。パッファ式とは、可動アーク接触子と固定アーク接触子とが離れる動作と連動して、ピストンを駆動させ、アークが発生する部分に向かって絶縁性ガスを吹き出す方式である。
パッファ式には、熱パッファ式、機械パッファ式、およびこれらを併用する方式等がある。熱パッファ式とは、アークの熱を利用することにより、絶縁性ガスの圧力を高める方式である。機械パッファ式とは、一対のピストンおよびシリンダ等の機械的動作により、絶縁性ガスの圧力を高める方式である。
近年、電力需要の増大により、ガス遮断器が遮断すべき電流はいっそう増大している。また小形化のニーズから、ガス遮断器における遮断接点数の低減も進められている。つまり総じて、ガス遮断器には、単位体積あたりの遮断容量の向上が求められている。
前述のパッファ式ガス遮断器において、遮断容量を向上させる有力な手段の一つが、消弧用絶縁材料成形体である。
すなわち、消弧室内において、アークのエネルギーが及ぶ領域内に、消弧用絶縁材料成形体(以下「成形体」と略記する場合がある)を配置する。アークのエネルギー(光エネルギーおよび熱エネルギー)により、成形体の表面において分解反応が起こり、絶縁性ガスが発生する。発生した絶縁性ガスは、アークに吹き付けられる絶縁性ガスと共に、アークの消弧を促進する。本明細書では、このようにアークに曝露されることにより、絶縁性ガスを生じる材料を「アブレーション材」と称する。
ところで、電流遮断時に、アーク光が成形体の内部深くまで侵入すると、成形体の内部に炭化、損傷等が生じることがある。これにより、成形体の絶縁性および機械的特性が低下する可能性がある。
従来、こうしたアーク光による成形体の消耗を抑制するために、消耗抑制材が検討されている。たとえば特許文献1では、アブレーション材に、消耗抑制材として無機充填材を配合している。無機充填材(アルミナ等)は、アブレーション材(樹脂)と屈折率が異なる。そのため無機充填材はアーク光を反射できる。これによりアーク光が成形体の内部深くまで侵入することを抑制する効果が期待できる。
また、特許文献2では、無機充填材の過剰な充填により、消弧用絶縁材料成形体の誘電率の大幅な増大をもたらし、絶縁性能の著しい低下をもたらすという課題に対して、窒化ホウ素粒子が混入された四弗化エチレン粒子から構成され、更に周囲の空間へ連続的に連挿する空孔部を有する多孔質構造の消弧用絶縁材料を用いることが記載されている。
これらの特許文献に記載された消弧用絶縁材料成形体において用いられる無機充填材は、アークのエネルギーによっては分解し難い。そのため電流遮断時、成形体においてアブレーション材は消費される一方、無機充填材は消費されずに残留する。さらに電流遮断が繰り返されると、成形体の表面では、ガス発生に寄与しない無機充填材の構成比率が徐々に高くなる。すなわち、電流遮断の繰り返しに伴って、ガス発生量が徐々に減少することになる。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものである。すなわち本発明の目的は、電流遮断の繰り返しに伴う、内部損傷およびガス発生量の減少が抑制された消弧用絶縁材料成形体を提供することである。
本発明の消弧用絶縁材料成形体は、フルオロポリエーテル重合体と、パーフルオロ樹脂粒子と、を含む。パーフルオロ樹脂粒子の含有率は、フルオロポリエーテル重合体およびパーフルオロ樹脂粒子の合計に対して、1体積%以上50体積%以下である。パーフルオロ樹脂粒子は、レーザ回折散乱法によって測定される平均粒径が、1μm以上30μm以下である。
本発明の消弧用絶縁材料成形体において、フルオロポリエーテル重合体は、アブレーション材としての役割を担う。フルオロポリエーテル重合体は、アークのエネルギーにより切断されやすい結合を分子鎖内に複数含む。そのためフルオロポリエーテル重合体はアーク光に曝露されると、大量の絶縁性ガスを発することができる。
電流遮断時に生じるアーク光は、ナトリウムD線(589nm)に近い成分を含む。本発明の消弧用絶縁材料成形体では、589nmの波長におけるフルオロポリエーテル重合体の屈折率と、該波長におけるパーフルオロ樹脂粒子の屈折率との差が0.1以上である。このため、パーフルオロ樹脂粒子は、消耗抑制材として機能する。すなわち、フルオロポリエーテル重合体とパーフルオロ樹脂粒子との界面で、アーク光の界面反射が繰り返される。あるいは当該界面で、アーク光の界面散乱が誘発される。これにより、アーク光が成形体の内部深くまで侵入することが抑制される。すなわち、電流遮断の繰り返しに伴う、成形体の内部損傷が抑制される。
しかも、パーフルオロ樹脂粒子はアーク光に曝露されると、分解されてガスとなり得る。すなわち、パーフルオロ樹脂粒子は、アブレーション材ともなり得る。このため、消弧用絶縁材料成形体は、アークに繰り返し曝露されても、表面組成が略一定に保たれる。すなわち、電流遮断の繰り返しに伴う、ガス発生量の減少が抑制される。
本発明の第1実施形態に係る消弧用絶縁材料成形体の構成を示す概念図である。 本発明の第2実施形態に係るガス遮断器の構成の一例を示す概略断面図である。 消弧室内の第1状態を示す概略断面図である。 消弧室内の第2状態を示す概略断面図である。 屈折率1.33のパーフルオロ樹脂粒子を40体積%含む成形体について、パーフルオロ樹脂粒子の平均粒径と589nmの波長における反射率との相関を示すグラフである。 平均粒径10μm、屈折率1.33のパーフルオロ樹脂粒子と、屈折率1.49のフルオロポリエーテル重合体とを含む成形体について、パーフルオロ樹脂粒子の体積含有率と589nmの波長における反射率との相関を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるべきでない。以下では、図面を参照しながら説明する。複数の図に亘って示される構成に対しては、同一の参照符号を付している。
<第1実施形態:消弧用絶縁材料成形体>
本発明の第1実施形態は、消弧用絶縁材料成形体である。消弧用絶縁材料成形体は、ガス遮断器に用いられる。消弧用絶縁材料成形体のガス遮断器内での配置等については、後述の第2実施形態で詳しく述べる。
図1は、第1実施形態の消弧用絶縁材料成形体の構成を示す概念図である。図1に示されるように、成形体200(消弧用絶縁材料成形体)は、フルオロポリエーテル重合体201と、パーフルオロ樹脂粒子202と、を含む。フルオロポリエーテル重合体201は、成形体200の母材である。パーフルオロ樹脂粒子202は、フルオロポリエーテル重合体201内に分散している。
成形体200は、従来公知の樹脂成形加工により製造され得る。たとえば、フルオロポリエーテル重合体201にパーフルオロ樹脂粒子202を分散させることにより、樹脂組成物を調製する。金型成形により樹脂組成物を成形体200に成形する。切削、研磨等の機械加工を行ってもよい。
樹脂組成物は固体(硬化物)であってもよい。あるいは、樹脂組成物は液体であってもよい。たとえば、液体の樹脂組成物を基材に含浸させることにより、成形体200を製造してもよい。たとえば、液体の樹脂組成物をカプセル等に封入してもよい。たとえば、液体の樹脂組成物を多孔質フィラー等に含浸させてもよい。ただし好ましくは、フルオロポリエーテル重合体201およびパーフルオロ樹脂粒子202の合計は、成形体200の50質量%以上を占めるものとする。
《フルオロポリエーテル重合体》
成形体200において、フルオロポリエーテル重合体201は、主たるアブレーション材である。フルオロポリエーテル重合体201は、フッ素化されたポリエーテル重合体である。換言すれば、フルオロポリエーテル重合体201は、高分子鎖中の末端原子の全部または一部がフッ素原子(F)である、ポリエーテル重合体である。
フルオロポリエーテル重合体201は、炭素−酸素結合(C−O結合)を複数含む。フルオロポリエーテル重合体201は、好ましくは、主鎖にC−O結合を複数含む。「主鎖」とは、高分子鎖の中で最も長く連結する鎖を示す。C−O結合は、アークのエネルギーにより容易に切断される。すなわち主鎖にC−O結合を複数含むことにより、フルオロポリエーテル重合体201は分解されやすくなる。さらにガス発生量も多くなる。
フルオロポリエーテル重合体201は、好ましくは下記化学式(1)〜(8)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種である。
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上記化学式(1)〜(8)中、mおよびnは自然数である。化学式(1)〜(3)および(6)において、nは、好ましくは2以上5000以下である。nが2以上であることにより、所望の機械的特性が期待できる。nが5000以下であることにより、所望の形状に成形しやすくなる。nは、より好ましくは10以上4000以下であり、よりいっそう好ましくは100以上3000以下であり、最も好ましくは1000以上3000以下である。
上記化学式(4)、(5)、(7)および(8)においては、mおよびnの合計が、好ましくは2以上5000以下である。mおよびnの合計が2以上であることにより、所望の機械的特性が期待できる。mおよびnの合計が5000以下であることにより、所望の形状に成形しやすくなる。mおよびnの合計は、より好ましくは10以上4000以下であり、よりいっそう好ましくは100以上3000以下であり、最も好ましくは1000以上3000以下である。
フルオロポリエーテル重合体201では、水素原子(H)の含有率を可及的に低くすることができる。たとえば、フルオロポリエーテル重合体201の末端原子を実質的に全てフッ素原子に置換することが考えられる。水素原子の含有率が低いことにより、ガス遮断器内において腐食性ガスの発生を抑制できる。
フルオロポリエーテル重合体201は、架橋されていてもよい。重合体が、三次元網目構造を有することにより、成形体において、たとえば靭性等の向上が期待できる。フルオロポリエーテル重合体201が架橋物である場合、フルオロポリエーテル重合体201は、好ましくはシリコーン架橋物である。シリコーン架橋物の硬化物は、耐熱性および耐久性等に優れる傾向にある。
《パーフルオロ樹脂粒子》
パーフルオロ樹脂粒子202は、パーフルオロ樹脂の粒子である。パーフルオロ樹脂は、分子鎖が炭素原子(C)およびフッ素原子により構成されるか、または分子鎖が炭素原子、フッ素原子および酸素原子(O)により構成される。ただし、酸素原子は、パーフルオロ樹脂の主鎖には含まれず、側鎖に含まれるものとする。「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている鎖を示す。
パーフルオロ樹脂では、分子鎖の末端原子が実質的に全てフッ素原子となっている。すなわち、パーフルオロ樹脂は、腐食性ガスの原因となる水素原子を実質的に含有しない。
パーフルオロ樹脂粒子202は、消耗抑制材として機能する。しかもパーフルオロ樹脂粒子202は、アーク光に曝露されると、分解してガスとなり得る。そのため成形体200は、アーク光に繰り返し曝露されても、表面組成が略一定に保たれる。
(屈折率)
フルオロポリエーテル重合体201およびパーフルオロ樹脂粒子202は、特定の光学特性を有する。すなわち、589nmの波長におけるフルオロポリエーテル重合体201の屈折率と、該波長におけるパーフルオロ樹脂粒子202の屈折率との差は、0.1以上である。
たとえば、589nmの波長におけるフルオロポリエーテル重合体201の屈折率が1.5であった場合、パーフルオロ樹脂粒子202の屈折率は1.4以下であるか、または1.6以上である。屈折率の差が0.1以上であることにより、パーフルオロ樹脂粒子202は消耗抑制材として機能する。すなわち、フルオロポリエーテル重合体201とパーフルオロ樹脂粒子202との界面において、アーク光の反射および散乱が起こる。そのため、アーク光は成形体200の内部深くまで侵入することが困難である。
一方、屈折率の差が0.1未満になると、フルオロポリエーテル重合体201とパーフルオロ樹脂粒子202との界面における、アーク光の反射および散乱が起こり難くなる。両者の光学特性が近すぎるためである。屈折率の差は大きい程好ましい。屈折率の差の上限は、たとえば10である。
「屈折率」は、「JIS K 7142:2014(プラスチック−屈折率の求め方)」におけるB法(ベッケ線現象を利用する方法)に準拠して測定する。顕微鏡の光源には589nmのナトリウムD線を用いる。
フルオロポリエーテル重合体201は、典型的には屈折率が1.4〜1.5程度である。この値を考慮すると、パーフルオロ樹脂としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が好適である。
パーフルオロ樹脂粒子202は、1種のパーフルオロ樹脂により構成されていてもよい。パーフルオロ樹脂粒子202は、2種以上のパーフルオロ樹脂により構成されていてもよい。すなわち、パーフルオロ樹脂粒子202は、PTFE、PFAおよびFEPからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
(パーフルオロ樹脂粒子の平均粒径)
パーフルオロ樹脂粒子202は、平均粒径が1μm以上30μm以下である。「平均粒径」は、レーザ回折散乱法により測定される体積基準の粒度分布において、微粒側から累計50%の粒径を示す。平均粒径は、好ましくは3μm以上25μm以下である。平均粒径は、より好ましくは3μm以上20μm以下である。平均粒径は、最も好ましくは10μm以上20μm以下である。
平均粒径が1μm未満であると、アーク光の波長よりも粒径が小さい粒子の存在比率が高くなる。そのため界面での反射および散乱が起こり難くなる可能性がある。平均粒径が30μmを超えると、パーフルオロ樹脂粒子202の比表面積が小さくなりフルオロポリエーテル重合体201とパーフルオロ樹脂粒子202との界面における密着性が不十分となり、成形体200の内部にボイド(気泡)が発生する可能性がある。
図5に、屈折率1.33のパーフルオロ樹脂粒子202を40体積%添加した成形体200について、パーフルオロ樹脂粒子202の平均粒径と589nmの波長における反射率との関係を示す。平均粒径が1μm未満の場合、成形体200の反射率の値が10%未満に低下することがわかる。本願発明者らは、成形体200内部への過剰なエネルギー入射を抑制し、内部への損耗進行を効果的に抑制するためには、589nmの波長における成形体200の反射率が10%以上であることが必要であることを見出した。すなわち、成形体200に添加するパーフルオロ樹脂粒子202の平均粒径は1μm以上であることが必要である。
(パーフルオロ樹脂粒子の含有率)
パーフルオロ樹脂粒子202の含有率は、フルオロポリエーテル重合体201およびパーフルオロ樹脂粒子202の合計に対して、1体積%以上50体積%以下である。
パーフルオロ樹脂粒子202の含有率に対する成形体200の反射率の値は、例えば、平均粒径10μm、屈折率1.33のパーフルオロ樹脂粒子202と、屈折率1.49のフルオロポリエーテル重合体201と、を含む成形体200について、図6に示されるような相関性を有する。図6から、パーフルオロ樹脂粒子202の含有率が1体積%未満の場合、成形体200の反射率が10%未満となることがわかる。すなわち、パーフルオロ樹脂粒子202の含有率は、(フルオロポリエーテル重合体201およびパーフルオロ樹脂粒子202の合計に対して、)1体積%以上であることが必要である。
一方、パーフルオロ樹脂粒子202の含有率が50体積%を超過した場合、フルオロポリエーテル重合体201とパーフルオロ樹脂粒子202とを均一に分散させることが困難になる。したがって、パーフルオロ樹脂粒子202の含有率は、(フルオロポリエーテル重合体201およびパーフルオロ樹脂粒子202の合計に対して、)50体積%未満であることが必要である。パーフルオロ樹脂粒子202の含有率が50体積%を超える(すなわち、フルオロポリエーテル重合体201の含有率が50体積%未満になる)と、成形体200の分解による圧力上昇(絶縁性ガスの発生量)が不足し、電流遮断に必要な絶縁性ガスの発生量を確保できない可能性がある。
パーフルオロ樹脂粒子202の含有率が1体積%未満であると、アーク光が、フルオロポリエーテル重合体201とパーフルオロ樹脂粒子202との界面での反射や散乱を経ることなく、成形体200の内部深くまで侵入する可能性がある。パーフルオロ樹脂粒子202の含有率が50体積%を超える(すなわちフルオロポリエーテル重合体201の含有率が50体積%未満になる)と、電流遮断時に、所望のガス発生量を確保できない可能性がある。
含有率は、好ましくは10体積%以上50体積%以下であり、より好ましくは30体積%以上50体積%以下である。
(成形体の反射率)
成形体200は、589nmの波長における反射率が、好ましくは50%以上60%以下である。成形体内部への過剰なエネルギー入射を抑制するためである。「反射率」は、硫酸バリウムの反射率に対する相対値を示すものとする。
(成形体の水素原子の含有率)
前述のように、フルオロポリエーテル重合体201およびパーフルオロ樹脂粒子202は、水素原子の含有率が低い。そのため、成形体200の水素原子の含有率も低くすることができる。成形体200は、好ましくは水素原子の含有率が2質量%以下である。水素原子の含有率は、より好ましくは1質量%以下である。水素原子の含有率は、最も好ましくは実質的に0質量%である。
成形体200の水素原子の含有率が低い程、ガス遮断器内の絶縁部材の絶縁劣化を抑制することができる。たとえば、後述の絶縁支持体8(図2を参照のこと)等が、ここでいう絶縁部材に相当する。以下の理由から、水素原子の含有率が低い成形体200は、絶縁性ガスにSF6を用いるガス遮断器に特に好適である。
たとえば、ポリオキシメチレン樹脂、メラニン樹脂等は、分子鎖内に水素原子を複数含む。これらを消弧用絶縁材料成形体に用いると、ガス遮断器内の絶縁部材が劣化する可能性がある。成形体の分解により発生した水素原子が、絶縁性ガス(たとえばSF6等)と反応することにより、腐食性ガスが生成されるためである。腐食性ガスは、たとえば、フッ化水素(HF)、水(H2O)等の水素化合物である。絶縁部材が絶縁劣化すると、ガス遮断器の遮断性能が低下する可能性がある。
「水素原子の含有率」は、有機元素分析により測定する。先ず水分の影響を排除するため、成形体200を減圧乾燥する。乾燥温度は50℃程度とする。乾燥時間は2時間程度とする。次いでヘリウム(He)および酸素(O2)の気流中、成形体200を燃焼させる。これにより成形体200に含まれる各構成原子が酸化される。たとえば、炭素原子は二酸化炭素(CO2)となる。水素原子はH2Oとなる。窒素原子(N)は窒素酸化物(NOx)となる。NOxは、還元銅を含む還元炉の中を通過させることにより、窒素(N2)に変換できる。これらの成分は、たとえばガスクロマトグラフ法により定量する。フッ素原子は、所定の吸収液に、フッ化物として回収する。フッ化物は、たとえばイオンクロマトグラフ法により定量する。定量結果から、各構成原子の質量をそれぞれ算出する。水素原子の質量を、構成原子の質量の合計で除することにより、成形体200の水素原子の含有率を算出する。
《その他の成分》
成形体200は、フルオロポリエーテル重合体201およびパーフルオロ樹脂粒子202を含む限り、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の含有率は、たとえば0.1〜10体積%程度である。その他の成分としては、たとえば、充填材、補強材、着色材、チキソトロピー剤、脱水剤、接着性向上剤、耐熱性向上剤、耐寒性向上剤、耐油性向上剤等が挙げられる。
充填材および補強材としては、たとえば、シリカ、カーボンブラック、チタニア、アルミナ、タルク、窒化ホウ素、セリサイト、ベントナイト、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられる。耐油性向上剤としては、たとえば、メタクリル酸カリウム等が挙げられる。耐熱性向上剤、耐寒性向上剤としては、たとえば、ベンガラ、酸化セリウム等が挙げられる。接着性向上剤としては、たとえば、γ−アミノプ口ピル卜リエトキシシラン等が挙げられる。
充填材または補強材として、比較的高い屈折率(例えば、1.5以上)を有する白色無機微粒子を添加した場合、白色無機微粒子とフルオロポリエーテル重合体201との界面における光学的反射効果、散乱効果により、成形体200の反射率を向上させる効果が得られる。このため、白色無機微粒子は、消耗抑制材としての効果を併せ持つ。このような比較的高い屈折率(例えば、1.5以上)を有する白色無機微粒子としては、酸化チタン(チタニア)、アルミナ、タルクおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1つを含む白色無機微粒子などが挙げられる。
本発明者らは、白色無機微粒子の含有率が、フルオロポリエーテル重合体201、パーフルオロ樹脂粒子202および白色無機微粒子の合計に対して、0.1体積%以上10体積%以下の範囲であり、かつ、パーフルオロ樹脂粒子202の含有量が1体積%以上50体積%以下の範囲であれば、本実施形態の効果(アーク光の成形体の内部深くへの侵入抑制と、電流遮断の繰り返しに伴うガス発生量の減少の抑制と、の両立)が可能であることを見出した。白色無機微粒子の含有率が10体積%以上である場合、繰り返しのアーク曝露後において、これらの白色無機微粒子がアーク曝露により成形体200の表面近傍に偏在した状態が形成され、繰り返し遮断に対する性能確保が困難となる。また、白色無機微粒子とパーフルオロ樹脂粒子202とを併用することにより、これらの効果と、成形体200の機械的強度の向上効果と、の両立が可能であり、ガス遮断器100の機械的設計を容易にする効果が期待できる。
<第2実施形態:ガス遮断器>
本発明の第2実施形態は、ガス遮断器である。図2は、第2実施形態のガス遮断器の構成の一例を示す概略断面図である。
ガス遮断器100は、消弧装置1、動作機構4、および筐体9を備える。筐体9には、第1ブッシング2および第2ブッシング3が取り付けられている。第1ブッシング2内には、第1導体2aが挿入されている。第2ブッシング3内には、第2導体3aが挿入されている。
消弧装置1は、筐体9に配置されている。消弧装置1は、絶縁支持体8によって支持されている。消弧装置1は、第1導体2aおよび第2導体3aと電気的に接続されている。
動作機構4は、消弧装置1内の接点を開閉する。動作機構4は、操作装置5、リンク6、およびロッド7を含む。操作装置5は、たとえば、バネ、油圧等により動作する。ロッド7は絶縁性である。操作装置5は、リンク6およびロッド7を介して、消弧装置1内の接点を開閉する。
筐体9は密閉されている。筐体9内には絶縁性ガスが充填されている。ロッド7が筐体9を貫通する部分には、摺動部材10が設けられている。ロッド7が摺動する際、摺動部材10は筐体9の気密を保つ。摺動部材10は、たとえばOリング等である。
ガス遮断器100の主要部を説明する。
図3は、消弧装置1内の第1状態を示す概略断面図である。第1状態は、電流遮断過程の前半に相当する。図4は、消弧装置1内の第2状態を示す概略断面図である。第2状態は、電流遮断過程の後半に相当する。
消弧装置1は消弧室を備える。消弧室内には、絶縁性ガスが充填されている。すなわちガス遮断器100は、絶縁性ガスを備える。絶縁性ガスとしては、たとえばSF6、CO2、ヨウ化トリフルオロメタン(CF3I)、N2、O2、テトラフルオロメタン(CF4)、アルゴン(Ar)、He等が挙げられる。絶縁性ガスとして1種のガスを用いてもよい。絶縁性ガスとして2種以上のガスを含む混合ガスを用いてもよい。絶縁性ガスは、好ましくはSF6である。また絶縁性ガスは、好ましくはCO2およびN2の混合ガスである。
消弧室内には、一対の通電接触子、および、一対のアーク接触子が配置されている。一対の通電接触子は、可動通電接触子11および固定通電接触子12を含む。可動通電接触子11と固定通電接触子12とは、互いに対向している。可動通電接触子11は、可動電極ということもできる。固定通電接触子12は、固定電極ということもできる。
一対のアーク接触子は、可動アーク接触子13および固定アーク接触子14を含む。可動アーク接触子13と固定アーク接触子14とは、互いに対向している。図示されていないが、通電時は、可動アーク接触子13と固定アーク接触子14とは接触している。すなわち、ガス遮断器100は、接点を有する一対のアーク接触子を備える。
可動アーク接触子13および固定アーク接触子14の外周には、絶縁ノズル15が配置されている。絶縁ノズル15は、パッファシリンダ16に固定されている。
絶縁ノズル15は、第1実施形態の消弧用絶縁材料成形体により構成されている。すなわち、ガス遮断器100は、消弧用絶縁材料成形体を備える。消弧用絶縁材料成形体は、絶縁ノズル15の全体を構成していてもよい。消弧用絶縁材料成形体は、絶縁ノズル15の一部を構成していてもよい。
消弧用絶縁材料成形体が絶縁ノズル15の一部を構成する場合、可動アーク接触子13および絶縁ノズル15により形成されるガス流路を阻害しない態様で、消弧用絶縁材料成形体を配置することが好ましい。図示していないが、可動アーク接触子13と絶縁ノズル15との間にフローガイドを設けてもよい。フローガイドに消弧用絶縁材料成形体を配置することもできる。
パッファシリンダ16は、操作ロッド17に接続されている。操作ロッド17は、前述のロッド7(図2を参照のこと)の一部である。つまり、パッファシリンダ16は、動作機構4に接続されている。
ピストン18は、筐体9(図2を参照のこと)に固定されている。隔壁24は、パッファシリンダ16に固定されている。熱パッファ室19aは、パッファシリンダ16、ピストン18、および隔壁24により形成される空間である。機械パッファ室19bは、パッファシリンダ16、隔壁24、操作ロッド17、およびピストン18により形成される空間である。
機械パッファ室19bは、隔壁24とピストン18との間にある。そのため、操作ロッド17が図3中の右方向に移動すると、機械パッファ室19bの容積が減少する。これにより、機械パッファ室19b内の絶縁性ガスが圧縮される。同時に機械パッファ室19b内の圧力が高まる。機械パッファ室19b内の圧力が、熱パッファ室19a内の圧力よりも高くなると、機械パッファ室19b内の絶縁性ガスが、逆止弁23を通じて、絶縁ノズル15の開口部に向かって押し出される仕組みになっている。
図3を用いて電流遮断過程の前半を説明する。
開極動作が始まると、可動部11aは、動作機構4側(図3では右方向)へと移動する。これにより、可動アーク接触子13と固定アーク接触子14との間に生じた空間に、アーク20が発生(点弧)する。
アーク20は高温である。そのためアーク20の周囲の絶縁性ガスも高温になる。さらにアーク20に曝された消弧用絶縁材料成形体(図3では絶縁ノズル15)が絶縁性ガスを発する。すなわち消弧用絶縁材料成形体は、接点が開いた際に発生するアーク20のエネルギーが及ぶ領域内に配置されている。
高温になった絶縁性ガスは、図3中の矢印に沿って、熱パッファ室19aに流れ込む。これにより熱パッファ室19a内の圧力が高まる。熱パッファ室19a内の圧力は、隔壁24を図3の右方向に押し動かす。また熱パッファ室19a内の圧力は、絶縁ノズル15の開口部に向かって、絶縁性ガスを吹き出す。
図4を用いて電流遮断過程の後半を説明する。
可動アーク接触子13と固定アーク接触子14との距離が離れるに従って、電流はゼロに近づいていく。これに伴って、アーク20も小さくなっていく。隔壁24の移動に伴い、機械パッファ室19bの圧力が高まる。機械パッファ室19bの圧力は、逆止弁23を通じて、室内のガスを絶縁ノズル15の開口部に向けて押し出す。
以上の一連の動作により、アーク20を速やかに消弧することができる。同時に可動通電接触子11と固定通電接触子12との間に生じる熱を外部に排出することもできる。そして再起電圧が生じない程度にまで、可動通電接触子11が固定通電接触子12から離れると、可動通電接触子11と固定通電接触子12との間の絶縁が確立される。これにより電流遮断が完了する。
高圧電力系統の場合、絶縁を確立させるために、可動通電接触子11と固定通電接触子12との間に形成されるべき間隔が広くなる。電流遮断の直前に現れる再起電圧が大きいためである。上記のように、可動通電接触子11と固定通電接触子12との間に生じる熱を効率的に外部に排出することにより、絶縁の確立に必要な間隔を狭くすることができる。これにより消弧装置1およびガス遮断器100の小形化に寄与できる。
前述のようにガス遮断器100は、第1実施形態の消弧用絶縁材料成形体を備える。そのため、消弧装置1から外部に排出される高温ガスは、水素原子の含有率が低い。これにより、腐食性ガス(水素化合物等)の発生が抑制される。すなわち、絶縁支持体8等の絶縁劣化が抑制される。
さらに電流遮断を繰り返しても、消弧用絶縁材料成形体の表面組成は略一定に保たれる。したがってガス遮断器100では、電流遮断の繰り返しに伴う、遮断性能の低下が抑制される。
以上を纏めると、第2実施形態のガス遮断器は次の構成を備える。ガス遮断器は、消弧室と、絶縁性ガスと、接点を有する一対のアーク接触子と、第1実施形態の消弧用絶縁材料成形体と、を備える。絶縁性ガスは、消弧室に充填されている。アーク接触子および消弧用絶縁材料成形体は、消弧室に収容されている。消弧用絶縁材料成形体は、接点が開いた際に発生するアークのエネルギーが及ぶ領域内に配置されている。
第2実施形態のガス遮断器は次の利点を有する。動作が単純であるため小形化できる。腐食性ガスの発生量が少ないため、機器内に絶縁劣化が生じ難い。電流遮断時、消弧用絶縁材料成形体から生じる絶縁性ガスの量が多いため、遮断容量を大きくできる。電流遮断を繰り返しても、遮断性能の低下が小さい。
以下、実施例を挙げて説明する。ただし、本発明は以下の例に限定されるべきでない。
<材料の準備>
以下の材料を準備した。
《アブレーション材》
A種:フルオロポリエーテル重合体のシリコーン架橋物(市販品、ShoreA硬度40)
B種:PTFE重合体(市販品)
《消耗抑制材》
A種:PTFE粒子(セイシン企業社製「TFW−1000」)
B種:PFA粒子(住友スリーエム社製「ダイニオン(登録商標)PFA 6503 A EPC」)
C種:FEP粒子(三井・デュポン・フロロケミカル社製「テフロン(登録商標) 100−J」のペレットを凍結粉砕法により粉砕したもの)
D種:PTFE粒子(ダイキン工業社製「ポリフロン(登録商標)PTFE M−12」)
E種:PTFE粒子(三井・デュポン・フロロケミカル社製「テフロン(登録商標) PTFE TLP 10F−1」)
F種:針状酸化チタン(石原産業社製「FTL−300」)
<消弧用絶縁材料成形体の製造>
下記表1に示すように、上記の各材料を組み合わせて、実施例1〜7および比較例1〜7の消弧用絶縁材料成形体を製造した。本例において、消弧用絶縁材料成形体は、図3および図4に示される絶縁ノズル15である。
《実施例1〜7ならびに比較例3〜7》
アブレーション材A種に、各種消耗抑制材を分散させ、金型成形により、消弧用絶縁材料成形体を製造した。成形時の金型温度は150℃とし、金型から取り外し後の成形体に対して、200℃で4時間の熱処理を施した。加熱処理後の成形体に対して機械加工を施し、所望の形状の成形体を得た。
《比較例1》
アブレーション材B種の原料組成物を圧縮成形により所定の形状に成形した。圧縮成形は、室温下、200kg/cm2の圧力で行った。圧縮成形の結果物を370℃で焼成した。以上より消弧用絶縁材料成形体を製造した。
《比較例2》
消耗抑制材を配合しないことを除いては、実施例1と同様にして、消弧用絶縁材料成形体を製造した。
<評価>
以下のようにして、各材料、各消弧用絶縁材料成形体を評価した。
《平均粒径の測定》
消耗抑制材A〜E種の平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「LA−910」)により測定した。粒子の分散媒にはイソプロピルアルコール(IPA)を用いた。測定結果を下記表1に示す。
消耗抑制材F種の平均長径および平均短径は、顕微鏡法により測定した。測定にはビデオマイクロスコープ(キーエンス社製「VHX−5000」)を用いた。測定結果を下記表1に示す。
《屈折率の測定》
前述の方法により、アブレーション材および消耗抑制材の屈折率(589nmの波長における値)を測定した。測定結果を下記表1に示す。下記表1中、「屈折率(n1)」はアブレーション材の屈折率を示す。「屈折率(n2)」は消耗抑制材の屈折率を示す。「|n1−n2|」は、屈折率(n1)と屈折率(n2)との差の絶対値を示す。
《反射率の測定》
消弧用絶縁材料成形体の反射率を測定した。反射率は、紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定した。測定は、大気中、室温環境で行った。参照試料は硫酸バリウムとした。消弧用絶縁材料成形体の反射率は、硫酸バリウムの反射率に対する相対値として測定した。589nmの波長における反射率を下記表1に示す。
《ガス発生量の評価》
ガス遮断器を用いた遮断試験により、ガス発生量を評価した。図2〜4に示されるガス遮断器100を準備した。消弧室内の所定位置に絶縁ノズル15(消弧用絶縁材料成形体)を配置した。消弧室内には絶縁性ガスとしてSF6を充填した。以下の条件で接点を開いてアーク20を発生させた。
定格電圧:84kV
通電電流:20kA(実効値)
遮断時間:10〜15ms
電流遮断は10回繰り返した。1回目および10回目の遮断において、遮断中の最大圧力を測定し、遮断の成否を評価した。最大圧力は、遮断時のガス発生量を反映した値である。測定結果を下記表1に示す。下記表1の「ガス発生量」の欄では、比較例1の1回目の遮断時の最大圧力を「1」として、上記の最大圧力の相対値を示している。また、下記表1の「遮断の成否」欄において、「成」は、遮断が成功したことを示し、「否」は、遮断が失敗したことを示す。本発明者らは、アーク電流を抑制し確実な電流遮断を行うために、10回の遮断動作を経た後でも、最大圧力(表1に「ガス発生量」として示す相対値)が1.7以上必要であることを見出した。
《内部損傷の評価》
遮断試験後に、消弧用絶縁材料成形体を切断した。切断面を観察することにより、消弧用絶縁材料成形体の内部の状態を確認した。評価結果を下記表1に示す。下記表1において「あり」とは、成形体の内部に、樹脂が分解した痕跡が確認されたことを示している。「成形ボイド」とは、成形体の内部に、成形時に発生したと思われるボイド(気泡)が確認されたことを示している。
Figure 0006189008
<結果と考察>
上記表1に示されるように、実施例1〜7では、1回目のガス発生量と10回目のガス発生量との差が非常に小さく、1回目および10回目ともに遮断に成功した。すなわち、電流遮断の繰り返しに伴う、ガス発生量の減少が抑制されている。また実施例1〜7では、電流遮断の繰り返しに伴う、成形体内部での損傷も認められなかった。実施例1〜7が以下の構成を全て備えるためと考えられる。
アブレーション材がフルオロポリエーテル重合体である。
消耗抑制材がパーフルオロ樹脂粒子である。
消耗抑制材の含有率が1体積%以上50体積%以下である。
消耗抑制材の平均粒径が1μm以上30μm以下である。
比較例1はガス発生量が少ない。そのため、1回目および10回目ともに遮断に成功することが出来なかった。アブレーション材に用いたPTFEが、主鎖にC−O結合を含まないためと考えられる。
比較例2では、消耗抑制材を含まない樹脂を用いたため、成形体表面の反射率が10%未満となり、成形体内部に過剰なアーク光が侵入して損耗点を形成し、試験途中に成形体の一部が破断した。そのため、1回目の遮断は成功したものの、10回目の遮断試験時は正常な遮断を達成することが出来なかった。試験後、成形体の内部には、アーク光による損傷が確認された。成形体が消耗抑制材を含まないためと考えられる。
比較例3では、消耗抑制材の含有率が少ない樹脂を用いたため、成形体表面の反射率が10%未満となり、成形体内部に過剰なアーク光が侵入して損耗点を形成し、試験途中に成形体の一部が破断した。そのため、1回目の遮断は成功したものの、10回目の遮断試験時は正常な遮断を達成することが出来なかった。試験後、成形体の内部には、アーク光による損傷が確認された。消耗抑制材の含有率が低いためと考えられる。
比較例4は、消耗抑制材の含有率が50%を超えており、アブレーション材の含有率が低く、遮断を達成するために十分なガス発生量を得ることが出来なかった。そのため、1回目および10回目ともに遮断に成功することが出来なかった。消耗抑制材の含有率が高い(アブレーション材の含有率が相対的に低い)ためと考えられる。
比較例5では、平均粒径が1μm未満の消耗抑制材を用いたため、成形体表面の反射率が10%未満となり、成形体内部に過剰なアーク光が侵入して損耗点を形成し、試験途中に成形体の一部が破断した。そのため、1回目の遮断は成功したものの、10回目の遮断試験時は正常な遮断を達成することが出来なかった。試験後、成形体の内部には、アーク光による損傷が確認された。消耗抑制材の平均粒径が小さいため、アーク光の反射および散乱が起こり難いと考えられる。
比較例6では、平均粒径が30μm以上の消耗抑制材を用いたため成形体内部にボイドが発生し、試験途中に成形体の一部が破断した。そのため、1回目の遮断は成功したものの、10回目の遮断試験時は正常な遮断を達成することが出来なかった。試験後、成形体の内部には、ボイドが確認された。アークの熱により、ボイドが膨張するため、破断に至ったと考えられる。ボイドは、成形時に消耗抑制材と樹脂の界面の密着性が不足したことにより発生したものと考えられる。
比較例7では、電流遮断の繰り返しに伴い、ガス発生量が大幅に減少した。そのため、1回目の遮断は成功したものの、10回目の遮断試験時は正常な遮断を達成することが出来なかった。消耗抑制材として用いた針状酸化チタンが、アークに曝露されても分解しないためと考えられる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示である。今回開示された実施形態および実施例は、制限的に解釈されるべきでない。すなわち本発明の範囲は、上記した説明に限定して解釈すべきでない。
本発明の範囲は、請求の範囲によって画定されるべきである。本発明の範囲には、請求の範囲と均等の意味での全ての変更、および、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれると解釈されるべきである。
1 消弧装置、2 第1ブッシング、2a 第1導体、3 第2ブッシング、3a 第2導体、4 動作機構、5 操作装置、6 リンク、7 ロッド、8 絶縁支持体、9 筐体、10 摺動部材、11 可動通電接触子、11a 可動部、12 固定通電接触子、13 可動アーク接触子、14 固定アーク接触子、15 絶縁ノズル、16 パッファシリンダ、17 操作ロッド、18 ピストン、19a 熱パッファ室、19b 機械パッファ室、20 アーク、23 逆止弁、24 隔壁、100 ガス遮断器、200 成形体(消弧用絶縁材料成形体)、201 フルオロポリエーテル重合体、202 パーフルオロ樹脂粒子。

Claims (6)

  1. フルオロポリエーテル重合体と、
    パーフルオロ樹脂粒子と、
    を含み、
    前記パーフルオロ樹脂粒子の含有率は、前記フルオロポリエーテル重合体および前記パーフルオロ樹脂粒子の合計に対して、1体積%以上50体積%以下であり、
    前記パーフルオロ樹脂粒子は、レーザ回折散乱法によって測定される平均粒径が、1μm以上30μm以下である、消弧用絶縁材料成形体。
  2. 前記パーフルオロ樹脂粒子は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、およびテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の消弧用絶縁材料成形体。
  3. 白色無機微粒子をさらに含有し、
    前記白色無機微粒子の含有率は、前記フルオロポリエーテル重合体、前記パーフルオロ樹脂粒子および前記白色無機微粒子の合計に対して、0.1体積%以上10体積%以下である、請求項1または2に記載の消弧用絶縁材料成形体。
  4. 前記白色無機微粒子は、酸化チタン、アルミナ、タルクおよび窒化ホウ素からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項3に記載の消弧用絶縁材料成形体。
  5. 消弧室と、
    絶縁性ガスと、
    接点を有する一対のアーク接触子と、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の消弧用絶縁材料成形体と、
    を備え、
    前記絶縁性ガスは、前記消弧室に充填されており、
    前記アーク接触子および前記消弧用絶縁材料成形体は、前記消弧室に収容されており、
    前記消弧用絶縁材料成形体は、前記接点が開いた際に発生するアークのエネルギーが及ぶ領域内に配置されている、ガス遮断器。
  6. 前記絶縁性ガスは、六フッ化硫黄を含む、請求項5に記載のガス遮断器。
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