JP6185326B2 - ポリエステルフィルム、それからなる太陽電池部材および太陽電池裏面保護フィルム - Google Patents
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Description
一般に太陽電池裏面保護膜として含フッ素系フィルムとポリエステルフィルムを貼り合わせたものが使用されているが、フッ素系フィルムは非常に高価であるため、安価かつ性能面でフッ素系と遜色ないようなフィルムが切望されていた。
一方、特許文献4はポリエチレンテレフタレートの高分子量化を目的として高分子量型の多官能エポキシ化合物を用いる技術であり、結合反応触媒を併用することが開示されているものの、エポキシ化合物の種類および結合反応触媒の組み合わせによって目的とする反応とゲル化などの副反応との進みやすさが異なり、用いる剤に応じた反応の制御が重要であることや、目的とする反応を効率的に高めて副反応を効率的に抑制できる剤の組み合わせに関する検討はなされていない。
また、本発明には本発明のポリエステルフィルムを含む太陽電池部材、本発明のポリエ
ステルフィルムを含む太陽電池裏面保護膜も包含される。
[ポリエステル]
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリマー成分はポリエステルを主成分とする。本発明におけるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルである。かかるポリエステルは実質的に線状であり、そしてフィルム形成性、特に溶融成形によるフィルム形成性を有する。芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等を挙げることができる。また、具体的な脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール,トリメチレングリコール,テトラメチレングリコール,ペンタメチレングリコール,ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。
かかるポリエステルはポリエステルフィルムを構成するポリマー成分を基準として80重量%以上であることが好ましく、さらに90重量%以上であることが好ましい。
さらに本発明におけるポリエステルには、実質的に線状である範囲の量であり、かつ本発明の効果を損なわないかぎり、例えば全酸成分に対し2mol%以下の量で、3官能以上のポリカルボン酸またはポリヒドロキシ化合物、例えばトリメリット酸、ペンタエルスリトール等を共重合してもよい。
このようにしてエステル化反応もしくはエステル交換反応を経由して得られた前駆体を溶融状態で重縮合反応させればよい。重縮合反応触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などが好適に挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、耐加水分解剤として(A)単官能エポキシ化合物(以下、エポキシ化合物(A)、成分(A)と称することがある)を、ポリエステルを主成分とするポリマー成分および成分(B)を含む組成物100重量部に対して、0.15〜5重量部含有する。本発明において、ポリエステルを主成分とするポリマー成分および成分(B)を含む組成物とは、上記(A)単官能エポキシ化合物以外の成分で構成される組成物を指しており、さらに白色顔料など他の添加剤を含む場合にはそれらの成分も含めた組成物を指す。
上記単官能エポキシ化合物(A)は、フィルム中ではその一部あるいは全てがポリエステル末端基と反応した状態で存在している。
かかる単官能の脂肪酸グリシジルエステル化合物は、脂肪酸残基を構成する炭素数が5〜50個であることが好ましく、より好ましくは5〜25個、さらに好ましくは5〜15個である。また脂肪酸残基は飽和脂肪酸残基であることが好ましい。
また、単官能の分枝脂肪酸グリシジルエステル化合物は、カルボン酸基に隣接する炭素原子が第三級炭素原子であることが好ましく、第三級炭素原子と結合する3個の基をR1、R2、R3とする場合、R1、R2およびR3の炭素数の合計が前述した5〜50個であることが好ましく、より好ましい範囲についても前記範囲であることが好ましい。R1およびR2は前記炭素数を満たす範囲内でアルキル基の中からそれぞれ独立して選択でき、R1およびR2の少なくとも一方はメチル基であることが好ましい。R3は水素および前記炭素数を満たす範囲内のアルキル基から選択でき、前記炭素数を満たす範囲内のアルキル基であることが好ましい。
(ア)ポリエステルのエステル化またはエステル交換工程〜重縮合工程において前記成分(A)を添加する。
(イ)ポリエステルチップを溶融し、前記成分(A)を添加することで成分(A)の高濃度マスターバッチを予め作成し、製膜直前に成分(A)を含まない樹脂と混合して使用する。
(ウ)ポリエステルチップを溶融し、前記成分(A)を添加することで希望の濃度の成分(A)含有ペレットを予め作成し、そのまま使用する。
(エ)製膜直前に溶融する押出機のフィードポケットもしくはバレルにおいて、直接、前記成分(A)を添加する。
本発明のポリエステルフィルムは、上述の単官能エポキシ化合物(A)の反応触媒として、(B)有機酸アルカリ金属塩および/または有機酸アルカリ土類金属塩(以下、成分(B)と称することがある)を、ポリエステルを主成分とするポリマー成分および該成分(B)を含む組成物を基準(100重量%)として0.0015〜0.045重量%含有し、かつ前記成分(B)に含まれる炭素原子数Cの金属イオン数Mに対する比(C/M)が15以下であり、前記成分(B)を構成するアニオン成分の式量が750以下であることを要する。
ここで、成分(B)の含有量の基準となる上記組成物とは、エポキシ化合物(A)における説明と同じく、上記単官能エポキシ化合物以外の成分で構成される組成物と同義であり、さらに白色顔料など他の添加剤を含む場合にはそれらの成分も含めた組成物を指す。また積層フィルムの場合は層を構成する組成物に対して求められる。
一般的に、塩基触媒が存在するとエポキシ化合物のエポキシ基とポリエステルのカルボキシル基との反応が促進されることは知られているが、本発明者は単官能エポキシ化合物(A)のエポキシ基とポリエステルのカルボキシル基との反応触媒として作用する塩基化合物として、前記成分(B)で表される特定の成分、すなわち有機酸アルカリ金属塩および/または有機酸アルカリ土類金属塩(B)であって、C/Mが15以下、かつアニオン成分の式量が750以下である化合物を用いることで、単官能エポキシ化合物(A)のエポキシ基とポリエステルのカルボキシル基との反応性が高く、同時に副反応が生じにくいという選択性に優れ、高い末端封止効果と優れたフィルム外観性とを発現できることを見出した。
これらの中でも該成分(B)として有機酸アルカリ金属塩が好ましく、特に酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、蟻酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウムなどが好ましく例示される。
本発明のポリエステルフィルムはさらに(C)白色顔料を含有することができ、エポキシ化合物(A)ないし成分(B)で定義した組成物の重量を基準(100重量%)として3〜18重量%含有することが好ましい。該白色顔料の含有量は3〜15重量%であることがより好ましく、3〜12重量%であることがさらに好ましい。
フィルム中の白色顔料の含有量がかかる範囲にあることにより隠蔽性に優れ、太陽電池の裏面保護膜として用いる場合には受光面側への反射によって太陽電池の発電効率が向上する。(C)白色顔料の含有量が下限に満たないと、隠蔽性やフィルムの紫外線劣化を抑制する効果が十分に発現しないことがある。また(C)白色顔料の含有量が上限値を超えると、フィルム強度が低下したり、フィルムにデラミネーションを生じることがあり、それに伴いフィルムの耐熱性や耐加水分解性が低下することがある。
該白色顔料(C)の平均粒径は、好ましくは0.1〜5.0μm、特に好ましくは0.1〜3.0μmである。この範囲の平均粒径の白色顔料を用いることで、良好な分散状態で白色顔料をポリエステルフィルム中に分散させることができ、白色顔料の凝集を低減することができるとともに、良好な延伸性でフィルムを製膜することができる。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルの末端カルボキシル基濃度は、好ましくは20eq/T、さらに好ましくは17eq/T、特に好ましくは14eq/Tの範囲である。末端カルボキシル基濃度がかかる範囲であることで、耐熱性および耐加水分解性に優れ、高温・多湿の条件において長時間使用した場合においても機械的性質の低下の少ないフィルムを得ることができる。
なお、本発明のポリエステルフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムを構成するポリエステル全体での末端カルボキシル基濃度がかかる範囲であることが好ましく、さらに積層フィルムの各層を構成するポリエステルそれぞれについて上記末端カルボキシル基濃度の範囲であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、用途により好ましい極限粘度数の範囲が異なるが、極限粘度数が0.55〜0.85dl/gであることが好ましく、さらに0.56〜0.79dl/gであることが好ましい。極限粘度数がこの範囲にあることで、良好な耐熱性、耐加水分解性のフィルムを高い生産性で得ることができる。極限粘度数が下限に満たない場合は劣化に伴う重合度減少により脆化が生じやすくなる。一方、極限粘度数が上限を超える範囲にするために、重合〜溶融工程で樹脂温度を低く保つことがあり、高溶融粘度であるがゆえに生産性が低下することがある。
なお、本発明のポリエステルフィルムが積層フィルムである場合は、積層フィルムを構成するポリエステル全体での極限粘度数がかかる範囲であることが好ましく、さらに積層フィルムの各層を構成するポリエスエルそれぞれについて上記極限粘度数の範囲であることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールの前面および裏面の最外層用フィルムとして用いる場合、温度121℃、湿度100%RHでエージングしたときのフィルムの伸度半減期が70時間以上であることが好ましい。温度121℃、湿度100%RHの環境における70時間のエージングは、太陽電池モジュールの前面および裏面の最外層用フィルム用途に対し、概ね25年間の屋外暴露状態に相当する耐加水分解性を検査する加速試験の一つであり、上記伸度半減期が70時間に満たない場合は太陽電池の表面保護膜あるいは裏面保護膜として求められる耐加水分解性が十分でなく、屋外での長期使用において劣化を引き起こし、機械的性質が低下する可能性がある。かかる伸度半減期は好ましくは90時間、さらに好ましくは110時間以上である。かかる耐加水分解特性はポリエステルをポリマーの主成分とするポリエステルフィルムにおいて、上記成分(A)および上記成分(B)を所定量ずつ用いることにより得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム全体の厚みとしてはハンドリング性の観点から、例えば25〜300μm、好ましくは40〜275μm、特に好ましくは50〜250μmである。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの特性を損なわない範囲で少なくとも2層の積層フィルムとしてもよい。積層フィルムの場合は積層フィルム全体でかかる厚みを有することが好ましい。
該白色積層ポリエステルフィルムにおいて、前記層(X)と前記層(Y)の厚み比(X:Y)は70:30〜97:3であることが好ましい。
必要に応じてさらに性能を上げるために、本発明のポリエステルフィルムには、成分(A)、成分(B)、白色顔料(C)以外にも従来公知の各種添加剤をその作用を阻害しない範囲内で用いてもよく、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などを添加することができる。
本発明のポリエステルフィルムは太陽電池部材として用いることができ、さらに太陽電池モジュールの表面あるいは裏面を保護する太陽電池保護膜として用いることができる。かかる保護膜は太陽電池表面保護膜、太陽電池裏面保護膜と称することがある。
太陽電池保護膜として用いる場合、本発明のポリエステルフィルム1枚で太陽電池表面保護膜として使用してもよく、他のシートと積層した積層体を太陽電池表面保護膜として使用してもよい。また、本発明のポリエステルフィルム1枚で太陽電池裏面保護膜として使用してもよく、他のシートと積層した積層体を太陽電池裏面保護膜として使用してもよい。ここで太陽電池表面とは太陽電池モジュール受光面側、即ちフロントシート側を指し、太陽電池裏面とは太陽電池セルの裏面側、即ちバックシート側を指す。積層体の例として、絶縁特性を向上させる目的で別のポリエステルフィルムと貼り合わせた積層体、さらに耐久性を向上させる目的でポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデンなどの高耐候性樹脂からなるフィルムと貼り合わせた積層体を例示することができる。
本発明のポリエステルフィルムを製膜する際に用いるポリエステルの製造方法について、ポリエチレンテレフタレートを例に説明する。なお、ポリマーのガラス転移温度をTg、融点をTmと表記することがある。
本発明に用いるポリエチレンテレフタレートの製造方法として、テレフタル酸ジメチルに代表される芳香族ジカルボン酸エステルとエチレングリコールをエステル交換反応により反応させた後に重縮合反応を行う方法、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールをエステル化反応させた後に重縮合反応を行う方法が挙げられる。
より高い耐加水分解性のポリエステルフィルムを得るためには、上記手法で得られたポリエステル原料の高極限粘度数および低末端カルボキシル基濃度化が重要であり、固相重合を加えることが好ましい。
(1)単官能エポキシ化合物成分(A)の組成および含有量
単層フィルムの場合、フィルムサンプル約10mgを重トリフルオロ酢酸と重クロロホルムの1:1混合溶媒約0.6mlに溶解し、1H−NMR法で解析した。アルキル基と帰属されるδ=0.6〜2.0ppmのピーク群の積分値からフィルム中の存在量を計算した。
積層フィルムの場合は予め断面観察でその層構成を大まかに把握したうえで、フィルムサンプルからフェザー刃で表層から層境界手前まで削り取り、10mgサンプリングした。各層、および積層フィルム全体についてそれぞれサンプリングし、上記の方法に従って、各層について成分(A)の組成および含有量を求めた。
イオンクロマト法により成分(B)の組成、CPM、式量を同定し、含有量を特定した。積層フィルムの場合は(1)と同様の手法で各層、および積層フィルム全体についてそれぞれサンプリングを行い、イオンクロマト法により測定した。
組成については、(2)と同様のICP−MS分析によりその組成を定性・半定量分析した。含有量については、フィルムサンプル約10mgをアルミニウム製パンに積載して熱重量分析計(SII社製TG/DTA200)に装着し、大気雰囲気下25℃から20℃/分の速度で550℃まで昇温させ、重量残存率を読み取り、白色顔料の含有量を求めた。
積層フィルムの場合は各層、および積層フィルム全体についてそれぞれ(1)と同様にサンプリングし、上記の方法に従って、各層について白色顔料(C)の組成および含有量を求めた。
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
各層厚みについては、フィルムから試料を三角形に切り出し包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂で包埋し、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層厚みを測定し、平均厚みを求めた。
サンプルを重量比6:4のフェノール:テトラクロロエタン混合溶媒に溶解後、35℃の温度にて測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml)、Kはハギンス定数である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。なおポリエステル以外に、白色顔料など上記溶媒に不溶な成分を含む際は、予めそのポリエステル成分の重量比率を測定しておき、η値を重量比率で割ることでポリマー自体の極限粘度数を得た。
サンプル10mgをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール):重クロロホルム=1:3の混合溶媒0.5mlに溶解してイソプロピルアミンを数滴添加し、1H−NMR法(50℃、600MHz)により定量した。
フィルムの縦方向に100mm長、横方向に10mm幅に切り出した短冊状の試料片を、温度121℃、湿度100%RHに設定した環境試験機内に所定時間放置する。その後試料片を取り出し、試料の縦方向の破断伸度を5回測定し、平均値を求めた。引張試験は東洋ボールドウィン社製(商品名「テンシロン」)を用いておこない、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minにて実施した。同様に上記処理を行わない試験片について試料の縦方向の破断伸度を5回測定し、平均値を求めた。
処理後の縦方向の破断伸度平均値を処理前の縦方向の破断伸度平均値で割った値をその処理時間についての破断伸度保持率[%]とした。
上記環境試験機内での処理時間は10時間きざみで行い、それぞれの時間について破断伸度保持率をそれぞれ算出し、破断伸度保持率が50%をまたぐ隣接する2データのうち処理の短いほうの時間を破断伸度半減期と定義する。耐加水分解性を破断伸度半減期に応じて以下の通りランク付けした。
S: 110時間 ≦ 破断伸度半減期
A: 90時間 ≦ 破断伸度半減期 < 110時間
B: 70時間 ≦ 破断伸度半減期 < 90時間
C: 50時間 ≦ 破断伸度半減期 < 70時間
D: 破断伸度半減期 < 50時間
フィルムサンプルについて、暗室内でLED光反射検査を行い、長辺0.1mmを超える内部異物の数をカウントした。フィルム1m2あたりの評価結果を下記の基準で評価した。積層構成のフィルムの場合、測定方法(1)をもとに成分(A)の含有量が相対的に多い層から観察を行った。また透明性の高いフィルムなど反射法で観察しにくい場合は、反射検査に代えて透過検査を用いてもよい。
A: 異物個数/1m2 < 3個
B: 3個 ≦ 異物個数/1m2 < 15個
C: 15個 ≦ 異物個数/1m2
エステル交換反応容器にテレフタル酸ジメチルを100重量部、エチレングリコールを60重量部、酢酸マンガン四水和物を仕込み、150℃に加熱して溶融し撹拌した。反応容器内温度をゆっくりと235℃まで昇温しながら反応を進め、生成するメタノールを反応容器外へ留出させた。メタノールの留出が終了したらフェニルホスホン酸を添加し、エステル交換反応を終了させた。その後反応物を重縮合装置に移行し、酸化アンチモンおよび酢酸チタンの両方を添加した。
次いで重合装置内の温度を235℃から290℃まで90分かけて昇温し、同時に装置内の圧力を大気圧から100Paまで90分かけて減圧した。重合装置内容物の撹拌トルクが所定の値に達したら装置内を窒素ガスで大気圧に戻して重合を終了した。重合装置下部のバルブを開いて重合装置内部を窒素ガスで加圧し、重合の完了したポリエチレンテレフタレートをストランド状にして水中に吐出した。ストランドはカッターによってチップ化した。得られたポリマーの極限粘度数は0.64dl/g、末端カルボキシル基濃度は17当量/トン、触媒、リン化合物の濃度は、Mnが30mmol%、Sbが20mmol%、Tiが3mmol%、フェニルホスホン酸が15mmol%であった。これをPEs−aと称する。
参考例1で得られたポリマー(PEs−a)を150〜160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で7時間固相重合を行った。固相重合後の極限粘度数は0.77dl/g、末端カルボキシル基濃度は10当量/トンであった。これをPEs−bと称する。
参考例2で得られたポリマー(PEs−b)60重量%と堺化学株式会社製ルチル型酸化チタン粒子TCR−52(平均粒径0.2μm)40重量%とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPEs−cと称する。
反応器内に、撹拌下、窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸と95部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、エステル化反応を4時間し反応を完結させた。この時のエステル化率は98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は約5〜7であった。このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、テトラブトキシチタネート0.018重量部を投入した。引き続き系内の反応温度を255℃から280℃、また、反応圧力を常圧から60Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水、エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。重縮合反応の進行度合いを、系内の撹拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所望の重合度に達した時点で、反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押し出し、冷却、カッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。この時の重縮合反応時間は110分間であり、得られたポリエチレンテレフタレートペレットの固有粘度は0.52dl/gであった。これをPEs−dと称する。
参考例4で得られたポリマー(PEs−d)を220℃、15時間真空下で固相重合して得られたペレット( 固有粘度0.78dl/g、カルボキシル末端基濃度9.0当量/トン)を、25℃、0.5重量%の酢酸カリウム塩水溶液を入れた容器に入れて4時間接触処理させ、引き続き、酢酸カリウム塩水溶液を除いた後160℃にて5時間、窒素気流下で乾燥させた。これをPEs−eと称する。
参考例5で得られたポリマー(PEs−e)60重量%と堺化学株式会社製ルチル型酸化チタン粒子TCR−52(平均粒径0.2μm)40重量%とをブレンドし、二軸混練機に供給して280℃で溶融した。溶融混練したポリエステル組成物をストランド状にして水中に吐出し、カッターによってチップ化した。これをPEs−fと称する。
エステル交換反応後に成分(B)として酢酸カリウム(以下、B1と表記する)を0.26重量部(テレフタル酸成分対比で金属イオン換算0.50mol%に相当)、20重量%エチレングリコールスラリーとして添加する以外は参考例1と同様にしてポリエステルチップを得た。これをPEs−gと称する。
エステル交換反応後に平均分子量約1000のポリアクリル酸ナトリウム(以下、B2と表記する)を0.24重量部(テレフタル酸成分対比で金属イオン換算0.50mol%に相当)、20重量%エチレングリコールスラリーとして添加する以外は参考例1と同様にしてポリエステルチップを得た。これをPEs−hと称する。
エステル交換反応後にステアリン酸カルシウム/ステアリン酸ナトリウム/ステアリン酸リチウム(50/25/25重量比)複合物(以下、B3と表記する)を1.04重量部(テレフタル酸成分対比で金属イオン換算0.50mol%に相当)、20重量%エチレングリコールスラリーとして添加する以外は参考例1と同様にしてポリエステルチップを得た。これをPEs−iと称する。
エステル交換反応後に成分(B)として酢酸ナトリウム(以下、B4と表記する)を0.22重量部(テレフタル酸成分対比で金属イオン換算0.50mol%に相当)、20重量%エチレングリコールスラリーとして添加する以外は参考例1と同様にしてポリエステルチップを得た。これをPEs−jと称する。
表1に示した配合比で層(X)のポリエステル原料をそれぞれ混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出機1のフィードポケットに供給し、285℃で溶融押出しした。同時にエポキシ化合物(A)として商品名「カーデュラE10P」(ネオデカン酸グリシジルエステル、モメンティブスペシャリティケミカルズ(株)製、以下「A1」と表記する)を表2に記載の配合量となるよう、チューブポンプを用いてフィードポケット側部から添加した。層(Y)についても層(X)と同様に表1に示した配合比で混合・乾燥を行い、押出機2に供給し285℃で溶融押出しした。
それぞれの押出機で溶融した樹脂組成物を2層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままスリットダイよりシート状に成形した。各樹脂の供給量は、層(X)と層(Y)の厚み比率が80%:20%となるように調整し、冷却ドラムに接触する側の面は層(X)とした。以上の条件における成分(A)、成分(B)、白色顔料(C)の含有量を表2に示している。さらにこのシートを静電密着法により表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に3.2倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き、130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.5倍延伸した。その後、テンター内で222℃に加熱された雰囲気中で15秒間熱固定を行い、横方向に3%幅入れを行い、続いて両端を切り落として長手方向に2%熱弛緩した後、室温まで冷やして厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの極限粘度数は0.582g/dl、カルボキシル末端基数は8.4当量/トン、特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。エポキシ化合物A1による耐加水分解性効果が不十分であり、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性がやや不足していた。
表2の通り、エポキシ化合物A1、成分B1を添加しないよう変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。得られたフィルムの極限粘度数は0.598g/dl、カルボキシル末端基数は22.5当量/トン、特性は表2の通りであった。エポキシ化合物A1、成分B1とも含まないため、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性がやや不足していた。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。過剰量のエポキシ化合物に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。またエポキシ化合物A1の未反応分の分解を起点としてポリエステル樹脂の分解も促進され、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性が不足していた。
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、太陽電池保護膜として好適に利用できる。
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B1の配合量が不足していたためエポキシ化合物A1の反応性が乏しく、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性が不足していた。また、未反応のエポキシ化合物A1に由来するゲル状異物欠点が発生し、表面外観性に乏しかった。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例4と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B1の配合量が不足しているためエポキシ化合物A1の供給量を増やしてもエポキシ化合物A1の反応性が乏しく、Aランクレベルの耐加水分解性は得られなかった。また、未反応のエポキシ化合物A1に由来するゲル状異物欠点が発生し、表面外観性に乏しかった。
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。過剰量の成分B1に由来する異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例6と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例6と同様、過剰量の成分B1に由来する異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
成分(B)を酢酸カリウム(B1)からポリアクリル酸ナトリウム(B2)に変更し、表1の通りチップ配合比を変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B2を構成するアニオン種の平均分子量は777と大きく、成分(B)に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
表1の通りチップ配合比を変更することでエポキシ化合物A1、成分B2の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例8と同様、成分(B)に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
成分(B)を酢酸カリウム(B1)から参考例9に記載したステアリン酸カルシウム等の複合物(B3)に変更し、表1の通りチップ配合比を変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B3のCPMが大きいため、重量基準で実施例1と同量配合するには成分B3を多量に配合する必要があり、成分B3に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例15と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例15と同様の異物が多発し、表面外観性に乏しかった。
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B3の配合量を表2の通り変更する以外は比較例15と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B3のCPMが大きいため、実施例で用いた成分B1で効果が発現する配合量(重量基準)ではエポキシ基の反応性に乏しく、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性が不足していた。また、未反応のエポキシ化合物A1に由来するゲル状異物欠点が発生し、表面外観性に乏しかった。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例18と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例18と同様の異物が多発し、表面外観性に乏しかった。
表1の通りチップ配合比を変更することで成分B3の配合量を表2の通り変更する以外は比較例15と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。成分B3に由来するゲル状異物欠点が多発し、表面外観性に乏しかった。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は比較例20と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。比較例20と同様の異物が多発し、表面外観性に乏しかった。
表1の通り層(Y)のチップ配合比を変更し、押出機2のフィードポケットの側部からもエポキシ化合物A1を添加し、表2の通りの配合量とした以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少ないため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
押出機1、押出機2からのエポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例7と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。エポキシ化合物A1の効果が不十分であり、太陽電池保護膜として利用するうえでは耐加水分解性がやや不足していた。
表1の通りチップ配合比を変更し、フィルムを構成するポリエステル樹脂の種類を変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため、太陽電池保護膜として好適に利用できる。
未延伸シートを得るまでの工程は実施例1と同様に操作を行った。未延伸フィルムの両端をクリップで保持しながら同時二軸延伸機に導き、100℃に加熱された雰囲気中で長手方向(縦方向)に3.2倍延伸すると同時に幅方向(横方向)に3.5倍延伸した。その後テンター内でさらに222℃に加熱された雰囲気中で15秒間熱固定を行い、同時に縦方向にクリップ速度差をつけて2%の熱弛緩率とし、また同時に横方向に幅入れ率3%でクリップ幅入れを行い、室温まで冷やしてポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため、太陽電池保護膜用フィルムとして好適に利用できる。
表1に示した通りの配合比でポリエステル原料をそれぞれ混合し、回転式真空乾燥機にて180℃で3時間乾燥した後、押出機1のフィードポケットに供給し、285℃で溶融押出しした。同時に、エポキシ化合物A1を表2に記載の配合量となるよう、チューブポンプを用いてフィードポケット側部から添加した。このようにして得られた溶融樹脂をスリットダイよりシート状に成形した。成分(A)、成分(B)の含有量を表2に示した。さらにこのシートを表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを100℃にて長手方向(縦方向)に3.0倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き130℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.2倍延伸した。その後テンター内で222℃に加熱された雰囲気中で15秒間熱固定を行い、横方向に3%幅入れを行い、続いて両端を切り落として長手方向に2%熱弛緩した後、室温まで冷やして厚み250μmの単層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため、太陽電池保護膜、特に裏面保護膜の内面用フィルムとして好適に利用できる。
成分(B)を酢酸カリウム(B1)から参考例10に記載した酢酸ナトリウム(B4)に変更した以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少ないため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
エポキシ化合物A1の配合量を表2の通り変更する以外は実施例1と同様に操作を行い、フィルムを得た。特性は表2の通りであった。得られたフィルムは長期にわたり耐加水分解性に優れており、異物発生も少なく表面外観に優れるため太陽電池保護膜として好適に利用できる。
Claims (10)
- ポリエステルがポリマー成分を基準として80重量%以上であるポリマー成分、(A)脂肪酸グリシジルエステル化合物である単官能エポキシ化合物、ならびに(B)有機酸アルカリ金属塩および/または有機酸アルカリ土類金属塩を含有する層を含むポリエステルフィルムであり、該ポリマー成分および該(B)成分を含む組成物100重量%を基準として該(B)成分を0.0015〜0.045重量%含有し、該組成物100重量部に対して該(A)単官能エポキシ化合物を0.15〜5重量部含み、かつ該成分(B)に含まれる炭素原子数Cの金属イオン数Mに対する比(C/M)が15以下であり、該成分(B)を構成するアニオン成分の式量が750以下であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- 前記成分(B)が有機酸アルカリ金属塩である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
- 温度121℃、湿度100%RHでエージングしたときのフィルムの伸度半減期が70
時間以上である、請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。 - さらに(C)白色顔料を含む請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- 前記(C)白色顔料がルチル型酸化チタンである、請求項4に記載のポリエステルフィ
ルム。 - 少なくとも2層からなり、少なくとも一方の層が(C)白色顔料を含有する、請求項4
または5に記載のポリエステルフィルム。 - 太陽電池部材に用いられる請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
- 太陽電池裏面保護膜に用いられる請求項7に記載のポリエステルフィルム。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルフィルムを含む太陽電池部材。
- 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルフィルムを含む太陽電池裏面保護膜。
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