JP6183645B2 - ジアミン化合物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、工業的に有用なスルホン酸エステル基を含むジアミン化合物及びその製造方法に関するものである。
ジアミン化合物は、有機化学分野及び高分子化学分野で広く用いられている化合物であり、ファインケミカル、医農薬原料および樹脂原料、さらには電子情報材料や光学材料など、工業用途として多岐にわたる分野で有用な化合物である。近年、エステル基を有するジアミン化合物を原料とした材料の研究が盛んで、例えば、溶媒への溶解度が向上するポリイミド共重合体が得られる(特許文献1)、耐熱性等の諸特性に優れ、機械的強度が高く、かつ低い線膨張係数を有して熱的寸法安定性に優れたポリイミド共重合体が得られる(特許文献2)、低熱膨張、低吸湿膨張性の耐熱絶縁材料が得られる(非特許文献1)等の報告がなされている。そのため、これらジアミン化合物に要求される性能も益々多様化、高度化してきており、透明性に優れた材料、例えば、白色で、且つ、着色しにくいスルホン酸エステル基を含有したジアミンが望まれている。
従来のジアミン化合物は、一般的に着色していることが多く、また、空気酸化により着色し易く、製造時に着色したり、保管中にも着色が進行する等の欠点があり、透明性が求められる材料への制限が出てくるなどの欠点があった。
米国特許4,317,902号明細書 特開平7−133349号公報 日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会編「新訂 最新ポリイミド−基礎と応用−」株式会社エヌ・ティー・エス出版、2010年8月25日、p.287−304
本発明は、白色で、且つ、着色しにくいスルホン酸エステル基を含有したジアミン化合物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の現状に鑑み、鋭意検討の結果、スルホン酸エステル基を含有することで白色、且つ着色しにくい新規ジアミン化合物と、その製造方法を見出した。
すなわち、本発明のジアミン化合物とは、下記式(1)
Figure 0006183645
(式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R5,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
で示されるジアミン化合物である。
本発明のジアミン化合物の製造方法は、下記式(2)で示される4−アセトアミドベンゼンスルホン酸クロライドと、
Figure 0006183645
下記式(3)で示される化合物とを、塩基下でエステル化させて得られた、
Figure 0006183645
(式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
下記式(4)で示される化合物を、脱アセチル化することにより得られる、
Figure 0006183645
(式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,R6は、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
下記式(1)で示されるジアミン化合物の製造方法である。
Figure 0006183645
(式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
本発明の新規ジアミン化合物は、ジアミン化合物であるにもかかわらず、化合物内に剛直なスルホン酸エステル基を導入したことで白色の化合物となり、且つ、空気による酸化を受けにくくなり、製造時の着色もないことから、透明性が求められるポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂等の原料として有望である。また、本化合物は、エステル基を含有していることから、溶媒への溶解度の向上、耐熱性の向上、高い機械的強度、低線膨張性、低熱膨張性、低吸湿膨張性等の優れた機能性を有するポリイミドの原料、例えばフレキシブル回路基板用ベースフィルム材料、感光性耐熱性ポリマー、液晶配向膜等の原料として有望である。
図1は、参考例1で得られた2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]プロパンの水素核磁気共鳴(以下、「H−NMR」と呼ぶ。)スペクトルチャートである。 図2は、参考例1で得られた2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]プロパンの赤外線分光法(以下、「IR」と呼ぶ。)スペクトルチャートである。 図3は、実施例で得られた2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]ヘキサフルオロプロパンのH−NMRスペクトルチャートである。 図4は、実施例で得られた2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]ヘキサフルオロプロパンのIRスペクトルチャートである。
以下に、本発明のジアミン化合物およびそのジアミン化合物の製造方法について詳細に記載する。
本発明におけるジアミン化合物は、下記式(1)で示される、ジアミン化合物である。
Figure 0006183645
(式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
式(1)で示される化合物としては、2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)−3−メチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)−3,5−ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)−3−メチルフェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)−3,5−ジメチルフェニル]ブタンが挙げられる。好ましくは、2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]ヘキサフルオロプロパンである。原料の入手しやすさから好ましい。
上記式(1)で示されるジアミン化合物は、白色であると共に、着色しにくい化合物である。例えば、空気雰囲気下、40℃で7日間保管しても、色目にほとんど変化は無く着色は認められない。
上記式(1)で示される化合物を製造するとき、まず下記式(2)
Figure 0006183645
で示される4−アセトアミドベンゼンスルホン酸クロライドと、下記式(3)
Figure 0006183645
(式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
で示される化合物とを塩基下でエステル化させることにより、中間体の下記式(4)で示される中間体化合物を製造することが出来る。
Figure 0006183645
(式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,R6は、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
式(3)で示される化合物として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタンが挙げられる。好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンである。原料の入手しやすさから好ましい。
式(4)で示される化合物として、2,2−ビス[4−(4−アセトアミドベンゼンスルホン酸)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アセトアミドベンゼンスルホン酸)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アセトアミドベンゼンスルホン酸)−3−メチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アセトアミドベンゼンスルホン酸)−3,5−ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アセトアミドベンゼンスルホン酸)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アセトアミドベンゼンスルホン酸)−3−メチルフェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アセトアミドベンゼンスルホン酸)−3,5−ジメチルフェニル]ブタンが挙げられる。好ましくは、2,2−ビス[4−(4−アセトアミドベンゼンスルホン酸)フェニル]ヘキサフルオロプロパンである。原料の入手しやすさから好ましい。
式(2)で示される化合物と、式(3)で示される化合物との反応割合は、式(2)の化合物1モルに対して、式(3)で示される化合物を0.3〜1.0モルが好ましく、より好ましくは、0.4〜0.6モル使用する。式(3)の化合物を0.3モル以上とすることで、反応未達による収率低下を防止できることが期待され、また1.0モル以下とすることで、反応物から式(3)で示される化合物を除去するエネルギーが少なくなり、廃棄物も少なくなるため経済的であるので好ましい。
エステル化反応は、塩基の存在下で、式(2)で示される化合物と、式(3)で示される化合物とを反応させる。
エステル化反応に好ましく使用される塩基としては、例えば、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ金属フッ化物、アミン等が挙げられる。
アルカリ金属水素化物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属水素化物としては、水素化ベリリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属炭酸塩としては、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等が挙げられる。
アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt − ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt − ブトキシド等が挙げられる。
アルカリ土類金属アルコキシドとしては、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジメトキシド等が挙げられる。
アルカリ金属フッ化物としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウムなどが挙げられる。
アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N、N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,8−ナフタレンジアミン等の三級アミン、ピリジン、ピロール、ウラシル、コリジン、ルチジン等の複素芳香族アミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の環状アミジン等が挙げられる。
これらの塩基は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。これらの塩基のうち、トリエチルアミン、ピリジンが液体で取り扱いが容易であり、沸点が低いため除去が容易であることから特に好ましい。
塩基の使用量は、式(2)で示される化合物に対して、1.0〜3.0モル倍量が好ましく、より好ましくは1.0〜1.5モル倍量にすると良い。塩基を1.0モル倍量以上とすることで、反応未達による収率低下を防止でき、3.0モル倍量以下とすることで、塩基除去に必要なエネルギーが少なくなり、廃棄物も少なくなるので好ましい。
エステル化反応で好ましく用いる溶媒としては、例えばスルホキシド化合物、スルホラン化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、エーテル化合物、炭化水素化合物、ケトン化合物、エステル化合物等を好適に用いることができる。
スルホキシド化合物としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等が挙げられる。
スルホラン化合物としては、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。
アミド化合物としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N −ジメチルホルムアミド、2− ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル− 2−イミダゾリノジン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
エーテル化合物としては、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、アニソール、モルホリン等が挙げられる。
炭化水素化合物としては、トルエン、キシレン、メシチレン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ケトン化合物としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
エステル化合物としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる、
これらの中でもアセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトン、酢酸エチルが、沸点が低いため除去が容易であることから好ましい。
エステル化溶媒は、単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
エステル化溶媒の使用量は、通常、式(2)で示される化合物に対して0.1〜20重量倍の範囲である。
エステル化反応は、窒素雰囲気下で実施することが好ましい。窒素雰囲気下で実施することにより、系内に酸素が混入することを防ぐことで、純度低下を抑制することが出来る。
エステル化反応の反応温度は、通常、0〜150℃が好ましく、より好ましくは、0〜70℃である。0℃以上とすることで反応が速やかに進行し、150℃以下にすることで副反応を抑制し、収率低下を防ぐことができる。
エステル化反応の反応時間は、通常、0.5〜20時間の範囲である。
エステル化反応終了後は、反応混合物に晶析溶媒を添加することで結晶が析出し、これを単離することで中間体化合物が得られる。得られた中間体は、再結晶を行っても良い。
エステル化反応に好ましく使用される晶析溶媒としては、例えば、水、アルコール化合物等を好適に用いることができる。
アルコール化合物としては、メタノ−ル、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。
これらの晶析溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。これらの晶析溶媒のうち、水、メタノール、エタノール、2−プロパノールが安価に入手できることから特に好ましい。
また、エステル化反応終了後に中間体を単離することなく次工程に用いても良い。
次に、上記で得られた式(4)の中間体化合物を、脱アセチル化することにより下記式(1)で示されるジアミン化合物を製造することが出来る。
Figure 0006183645
(式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
脱アセチル化方法としては、一般的に酸またはアルカリを用いて加水分解する方法が知られている。しかしながら、酸またはアルカリを用いると、エステル基を含有している化合物の場合は、エステル基の加水分解も進行するという欠点があった。本発明においては、剛直なスルホン酸エステル基を導入したことで、酸に対して安定な化合物となり、目的物のスルホン酸エステル基の加水分解を抑制できる。この結果、本発明においては、酸を用いた脱アセチル化が最も好ましい。酸を用いることにより、スルホン酸エステル基の加水分解が抑制され、収率よく目的物が得られる。
脱アセチル化に好ましく使用される酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸、フッ化ホウ素酸等の無機酸が挙げられる。
これらの酸は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。これらの酸のうち、塩酸、硫酸が後処理の容易な点から特に好ましい。
酸の使用量は、式(4)で示される化合物に対して、1.0〜20.0モル倍量が好ましく、より好ましくは2.0〜10.0モル倍量にすると良い。塩基を2.0モル倍量以上とすることで、反応未達による収率低下を防止でき、10.0モル倍量以下とすることで、酸除去に必要なエネルギーが少なくなり、廃棄物も少なくなるので好ましい。
脱アセチル化に好ましく使用される溶媒としては、例えば、アルコール化合物、エーテル化合物、炭化水素化合物、ニトリル化合物等を好適に用いることができる。
アルコール化合物としては、メタノ−ル、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。
エーテル化合物としては、グライム、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
炭化水素化合物としては、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ニトリル化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。
これらの中でもテトラヒドロフラン、2−プロパノール、トルエンが、沸点が低いため除去が容易であることから好ましい。
脱アセチル化反応の溶媒は、単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
溶媒の使用量は、通常、式(4)で示される化合物に対して0.1〜20重量倍の範囲である。
脱アセチル化反応は、窒素雰囲気下で実施することが好ましい。窒素雰囲気下で実施することにより、系内に酸素が混入することを防ぐことで、純度低下を抑制することが出来る。
脱アセチル化の反応温度は、通常、0〜150℃が好ましく、より好ましくは、50〜120℃である。50℃以上とすることで反応が速やかに進行し、120℃以下にすることで副反応を抑制し、収率低下を防ぐことができる。
脱アセチル化反応の反応時間は、通常、0.5〜20時間の範囲である。
本脱アセチル化反応後は、反応液を中和した後、中和液に晶析溶媒を添加することで結晶が析出し、これを単離することで、式(1)で示されるジアミン化合物が得られる。得られた化合物は、再結晶を行っても良い。
脱アセチル化反応に好ましく使用される晶析溶媒としては、例えば、水、アルコール化合物、炭化水素化合物等を好適に用いることができる。
アルコール化合物としては、例えばメタノ−ル、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。
炭化水素化合物としては、トルエン、キシレン、メシチレン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
これらの晶析溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。これらの晶析溶媒のうち、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、トルエンが本化合物の純度を向上させるのに特に好ましい。
上記により得られた、式(1)で示されるジアミン化合物は、化合物内に剛直なスルホン酸エステル基を導入したことにより、ジアミン化合物であるにもかかわらず白色の化合物であり、且つ、空気による酸化を受けにくく、製造時の着色もない。また、保管時における着色を抑制することが出来る。
このジアミン化合物は、透明性が求められるポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂等の原料として有望である。また、エステル基を含有していることから、溶媒への溶解度の向上、耐熱性の向上、高い機械的強度、低線膨張性、低熱膨張性、低吸湿膨張性等の優れた機能性を有するポリイミドの原料、例えばフレキシブル回路基板用ベースフィルム材料、感光性耐熱性ポリマー、液晶配向膜等の原料として有望である。
以下、実施例により具体的に説明する。
参考例1、実施例1において、ジアミン化合物の化学純度は、高速液体クロマトグラフィー法(以下、「HPLC」と略す。)で、以下の分析条件で分析したもの(HPLC area%)である。
・カラム: YMC―Pack ODS−AM303 4.6φ×250mm
・カラム温度: 40℃
・移動相:
A:0.05%(v/v)リン酸水溶液
B:アセトニトリル
(グラジエント) 0min. A:B=50:50
5min. A:B=50:50
30min A:B=10:90
・流量:1ml/min
・注入量: 0.5μl
・検出: 紫外(UV)検出 波長254nm
・分析時間: 30分
・分析サンプル調製:サンプル0.05gを秤量し、アセトニトリル25mlに溶解させた。
また、中間体化合物の化学純度についても、上記HPLCの分析条件により分析した。
参考例1)
温度計、冷却管および撹拌機を取り付けた500ml四つ口フラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン13.7g(0.060mol)、4−アセトアミドベンゼンスルホン酸クロライド29.4g(0.126mol)、テトラヒドロフラン90gを仕込み、系内を窒素置換した。これにトリエチルアミン13.4g(0.132mol)を30℃付近で滴下した。この混合液を30℃で3時間撹拌しエステル化反応を行った。反応が終了した後、水45gを加え水洗、分液することで、中間体を含んだ油層を得た。得られた油層中の中間体化合物は、HPLC純度97.4%であった。
得られた油層に35%塩酸37.5g(0.360mol)を加え、70℃で3時間撹拌し脱アセチル化反応を行った。反応が終了した後、28%アンモニア水29.2g(0.480mol)で中和、分液することで、ジアミン化合物を含んだ油層を得た。得られた油層中のジアミン化合物は、HPLC純度91.4%であった。また、脱アセチル化時のスルホン酸エステル基の加水分解は0.4%であった。
得られた油層に水と2−プロパノールを加え、5℃まで冷却し、これを濾過、乾燥することで白色結晶のジアミン化合物28.4gを得た。得られたジアミン化合物は、HPLC純度98.4%、収率64.9%であった。
図1に、参考例1で得られたジアミン化合物の水素核磁気共鳴(H−NMR)スペクトルチャート、図2に赤外(IR)吸収スペクトルチャートを示す。なおH−NMRは、図中に記載の測定条件で行った。
以上の結果をもって、得られたジアミン化合物が2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]プロパンであることを同定した。
(実施例
温度計、冷却管および撹拌機を取り付けた500ml四つ口フラスコに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン25.1g(0.075mol)、4−アセトアミドベンゼンスルホン酸クロライド36.7g(0.157mol)、テトラヒドロフラン100gを仕込み、系内を窒素置換した。これにトリエチルアミン16.6g(0.164mol)を30℃付近で滴下した。この混合液を30℃で3時間撹拌しエステル化反応を行った。反応が終了した後、水55gを加え水洗、分液することで、中間体を含んだ油層を得た。得られた油層中の中間体化合物は、HPLC純度95.5%であった。
得られた油層に35%塩酸46.7g(0.448mol)を加え、70℃で3時間撹拌し脱アセチル化反応を行った。反応が終了した後、28%アンモニア水36.3g(0.598mol)で中和、分液することで、ジアミン化合物を含んだ油層を得た。得られた油層中のジアミン化合物は、HPLC純度91.3%であった。また、脱アセチル化時のスルホン酸エステル基の加水分解は1.7%であった。
得られた油層に水と2−プロパノールを加え、5℃まで冷却し、これを濾過、乾燥することで白色結晶のジアミン化合物28.4gを得た。得られたジアミン化合物は、HPLC純度95.7%、収率77.3%であった。
図3に、実施例で得られたジアミン化合物の水素核磁気共鳴(H−NMR)スペクトルチャート、図4に赤外(IR)吸収スペクトルチャートを示す。なおH−NMRは、図中に記載の測定条件で行った。
以上の結果をもって、得られたジアミン化合物が2,2−ビス[4−(4−アミノベンゼンスルホン酸)フェニル]ヘキサフルオロプロパンであることを同定した。
(参考例
参考例1において、脱アセチル化反応時に、35%塩酸の代わりに48%水酸化ナトリウム水溶液30.0g(0.360mol)を使用し、70℃、3時間反応させた以外は、実施例1と同様に実施したところ、脱アセチル化時のスルホン酸エステル基の加水分解は99%以上で、目的物のHPLC純度は1%以下となり、目的物はほとんど得られなかった。
(参考例
実施例において、脱アセチル化反応時に、35%塩酸の代わりに48%水酸化ナトリウム水溶液37.3g(0.448mol)を使用し、70℃、3時間反応させた以外は、参考例1と同様に実施したところ、脱アセチル化時のスルホン酸エステル基の加水分解は99%以上で、目的物のHPLC純度は1%以下となり、目的物はほとんど得られなかった。
(参考例
参考例1で得られたジアミン化合物を空気雰囲気下、40℃で7日間保管したところ、色目にほとんど変化は無く着色は認められなかった。また、比較として4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを同条件で保管したところ、色目が初期の黄土色から7日間保管後に薄茶色に変化しており着色が認められた。
(参考例
実施例で得られたジアミン化合物を空気雰囲気下、40℃で7日間保管したところ、色目にほとんど変化は無く着色は認められなかった。

Claims (3)

  1. 下記式(1)で示されるジアミン化合物。
    Figure 0006183645
    (式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
  2. 下記式(2)で示される4−アセトアミドベンゼンスルホン酸クロライドと、
    Figure 0006183645
    下記式(3)で示される化合物とを塩基下で反応させて得られた、
    Figure 0006183645
    (式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
    下記式(4)で示される中間体を、脱アセチル化することにより得られる、
    Figure 0006183645
    (式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CH基、CHCH基、又はCF基を示す。)
    下記式(1)で示されるジアミン化合物の製造方法。
    Figure 0006183645
    (式中、R、R,R,Rは、互いに独立して、H、又はCH基を示し、R,Rは、互いに独立して、CCH基、又はCF基を示す。)
  3. 前記式(4)の中間体を、無機酸を用いて脱アセチル化を行う、請求項2に記載のジアミン化合物の製造方法。
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