以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の交換方法及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具1は、図3及び図4に示すように、躯体Bの枠用開口部2に取り付けられた既設の建具100を交換する場合に用いられる交換用のものである。建具100が取り付けられた躯体Bの枠用開口部2は、一対の柱3の間にまぐさ4及び窓台5を設けることによって構成された矩形状の開口を有するものである。本実施の形態では、特に、テラスやベランダに至る掃き出し部分の枠用開口部2に設けられた建具100を交換対象としている。以下、躯体Bに取り付けられた既設の建具100及び交換用となる新設の建具1についてそれぞれの構成を説明する。尚、以下においては便宜上、既設の建具100を構成する要素にはそれぞれの名称の先頭に「既設」という用語を付与し、新設の建具1を構成する要素にはそれぞれの名称の先頭に「新設」という用語を付与することによって両者を区別することとする。また、枠用開口部2を構成する柱3、まぐさ4及び窓台5について特に特定する必要がない場合には、単に躯体Bもしくは枠用開口部2として説明する。
図3及び図4に示すように、躯体Bに取り付けられた既設建具100は、既設上枠部材111a、既設下枠部材111b及び一対の既設縦枠部材111cを四周枠組みすることによって構成された既設開口枠110の内部に既設障子120を配設して構成されるものである。本実施の形態で例示する既設開口枠110は、合成樹脂、あるいはアルミニウムもしくはアルミニウム合金等のように比較的切断加工が容易な材質によって成形されたものである。図5に示すように、各既設枠部材111a,111b,111cは、端部が45°の傾斜面を有するように形成し、これらの傾斜面を互いに接合することによって既設開口枠110を構成している。本実施の形態の既設建具100としては、2枚の既設障子120を備えた引き違い窓を例示している。
既設障子120は、4つの既設框121を四周框組みして構成した框の内部にガラス等の既設面材122を保持して構成されたものである。既設開口枠110は、既設上枠部材111a、既設下枠部材111b及び一対の既設縦枠部材111cのそれぞれが取付片112及び補助取付片113を備えており、個々の取付片112及び補助取付片113を介して躯体Bに既設ネジ部材114を螺合させることにより、躯体Bに固定されている。図3及び図4からも明らかなように、本実施の形態の既設開口枠110は、見込み方向のほぼ半分となる部分を室外に突出させた状態で躯体Bの枠用開口部2に配設されている。
既設上枠部材111a、既設下枠部材111b及び一対の既設縦枠部材111cの取付片112は、それぞれの外周部から外方に向けて突出されたヒレ状の部分であり、躯体Bの外表面に重ね合わせた状態で既設ネジ部材114を螺合することにより躯体Bの外表面に固定されている。既設上枠部材111a、既設下枠部材111b及び一対の既設縦枠部材111cの補助取付片113は、それぞれ枠用開口部2の内周面に沿って室内側に突出したヒレ状の部分であり、枠用開口部2の内周面に重ね合わせた状態で見込み面から既設ネジ部材114を螺合することにより枠用開口部2の内周面に固定されている。
既設開口枠110の既設上枠部材111a及び一対の既設縦枠部材111cには、それぞれの取付片112の外表面から躯体Bの外表面に連続するように既設防水シート130が配設されている。図には明示していないが、既設防水シート130と取付片112との間は、水密性を確保するために粘着テープや粘着剤によって貼り付けられている。既設上枠部材111aの補助取付片113から、まぐさ4の見込み面に渡る部位及び一対の既設縦枠部材111cの補助取付片113から、柱3の見込み面に渡る部位には、それぞれ既設額縁部材140が設けられている。既設額縁部材140は、補助取付片113の外表面全面及び枠用開口部2の内周面全面を覆うように設けられており、既設上枠部材111aの補助取付片113、既設縦枠部材111cの補助取付片113及びそれぞれに螺合した既設ネジ部材114が室内側に露出するのを防止している。
これに対して既設開口枠110の既設下枠部材111bについては、予め窓台5の外表面及び上面に既設下層防水シート131を配設した後に窓台5に取り付けられたもので、躯体Bの外表面から下面に渡る部位に補強金具115が取り付けられているとともに、躯体Bの外表面から補強金具115の外表面に渡る部位に既設防水シート130が配設されている。補強金具115は、既設下枠部材111bよりも板厚が大きく剛性の高い材質によって成形され、既設下枠部材111bの取付片112に対応する部位に既設ネジ部材114を螺合することによって躯体Bに取り付けてあり、既設下枠部材111bを下方から支持している。図には明示していないが、既設防水シート130と補強金具115の外表面との間についても、水密性を確保するために粘着テープや粘着剤によって貼り付けられている。尚、図中の符号116は、補強金具115と既設下枠部材111bの下面との間に介在させたブラケットパッキン材である。
既設下枠部材111bにおいて室内側に位置する縁部には、床接続片117が設けられている。床接続片117は、既設下枠部材111bの上端縁部から補助取付片113に対向するようにほぼ平行に突出した部分であり、上面から既設ネジ部材114を螺合することにより、床材(額縁部材)Fの端部が接続されている。床材Fは、室内の床面を構成するものである。この床材Fは、窓台5の見込み面及び既設下枠部材111bの補助取付片113を覆うように設けられており、既設下枠部材111bの補助取付片113及びこれに螺合した既設ネジ部材114が室内側に露出するのを防止している。
既設開口枠110の周囲において躯体Bよりも室外側に位置する部分には、躯体Bの外表面から離隔した位置に外壁部材6が設けられている。外壁部材6は、各既設枠部材111a,111b,111cの取付片112に螺合した既設ネジ部材114を覆うように既設開口枠110の外周部に設けられている。外壁部材6に設けられた矩形状を成す開口6aの端面と既設開口枠110の外周面との隙間は、それぞれ既設シーリング材7を充填することによって閉塞され、互いの間に所望の水密性が確保されている。
一方、交換用として用意される新設建具1は、図1及び図2に示すように、新設枠部材11a,11b,11cを四周枠組みすることによって構成した新設開口枠10の内部に新設障子20を配設することにより構成したもので、新設障子20を2枚備えた引き違い窓を例示している。新設障子20は、既設障子120と同様、新設框部材21を四周框組みした框の内部にガラス等の新設面材22を保持して構成したものである。
新設開口枠10は、既設下枠部材111bを残して既設上枠部材111a及び一対の既設縦枠部材111cを取り外した後の枠用開口部2に四周隙間を持って配置することのできる大きさに構成してある。新設開口枠10の各新設枠部材11a,11b,11cは、個々の外周面において室内側に位置する縁部に凹状の段部12を有し、枠用開口部2の内部に配置した場合に室外側に位置する部分よりも室内側に位置する部分の隙間が大きくなるように構成してある。本実施の形態では、既設開口枠110と同様、新設開口枠10についても合成樹脂もしくはアルミニウムやアルミニウム合金によって成形したものを適用している。
以下、躯体Bに取り付けられた既設建具100を新設建具1に交換する手順について説明する。この交換方法では、まず、既設建具100の既設開口枠110から既設障子120を取り外した後、図6に示すように、カッター等の切断工具Cを適用し、外壁部材6と既設開口枠110の既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cとの間に設けられた既設シーリング材7を切除する作業を行う。既設下枠部材111bと外壁部材6との間の既設シーリング材7に対しては、そのままの状態に維持する。既設シーリング材7を切除した状態においては、図7に示すように、既設開口枠110の既設上枠部材111a及び既設下枠部材111bと外壁部材6との接続状態が解除される。
次いで、既設額縁部材140を取り外した後に既設上枠部材111aの補助取付片113及び既設縦枠部材111cの補助取付片113を介して躯体Bに螺合した既設ネジ部材114を弛緩、除去する。さらに、既設シーリング材7を切除した隙間を利用したり、室内側から枠用開口部2と補助取付片113との隙間を利用し、カッター等の切断工具を適宜利用して既設上枠部材111aの取付片112及び既設縦枠部材111cの取付片112をそれぞれの長手方向に沿って順次切断し、既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cと枠用開口部2との固定状態を解除する。取付片112を切断する場合には、図8に示すように、切断端面が枠用開口部2の内周面から突出するように取付片112の切断位置を設定することが好ましい。
既設下枠部材111bと一対の既設縦枠部材111cとの連結部分については、カッター等の切断工具、あるいはサンダー等の電動切断工具を適用し、図5に示すように、既設縦枠部材111cの下方部を既設下枠部材111bの上面に沿って切断することにより既設縦枠部材111cを上方部111c1と下方部111c2とに分断する。
上記のようにして既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cと枠用開口部2との固定状態を解除し、かつ既設縦枠部材111cを上下に分断して既設下枠部材111bと既設縦枠部材111cの上方部111c1との連結状態を解除すると、取付片112において既設ネジ部材114が螺合された部分と既設縦枠部材111cの下方部111c2とが躯体Bに残存することになるものの、図8に示すように、既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cの上方部111c1については、枠用開口部2から取り外すことが可能となる。このとき、取付片112が切断された既設開口枠110の既設上枠部材111a及び一対の既設縦枠部材111cの上方部111c1は、外壁部材6の開口よりも外形寸法が小さくなるため、外壁部材6を取り壊さずとも、室外側から外壁部材6の開口を通じて既設上枠部材111a及び一対の既設縦枠部材111cの上方部111c1を取り外すことができるようになる。
ここで、上記のようにして既設開口枠110の既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cの上方部111c1を取り外した後の躯体Bにあっては、躯体Bの外表面と躯体Bに残存する取付片112との隙間Xが外部に露出することになり、この隙間Xから雨水等の水が内部に浸入する恐れがある。
そこで、この交換方法においては、図9に示すように、既設開口枠110の既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cの上方部111c1を取り外した後の枠用開口部2の内周面に新設防水シート30を配設し、かつ新設防水シート30と躯体Bの外表面に残存する取付片112との隙間Xに新設シーリング材31を充填することにより、躯体Bの外表面と躯体Bに残存する取付片112との隙間Xから内部に水が浸入するのを防止するようにしている。また、図10に示すように、枠用開口部2の両側縁部2aにおいては、既設縦枠部材111cの取付片112を覆う既設防水シート130と外壁部材6の裏面との間の上下方向に沿った全長に側方シール材32を充填することにより、これら既設防水シート130と外壁部材6との隙間を塞ぐようにしている。尚、側方シール材32は、外壁部材6と躯体Bとの間であれば、必ずしも既設防水シート130との間に充填する必要はなく、既設縦枠部材111cの取付片112との間であっても良いし、既設防水シート130及び取付片112の両者に渡って充填するようにしても構わない。
さらに、枠用開口部2の上縁部2bには、図11及び図12に示すように、躯体Bの外表面を伝った水が枠用開口部2を介して室内側に浸入するのを防止するため、躯体Bの外表面と外壁部材6との隙間の下方域を覆う状態で枠用開口部2の上縁部2bに上縁に沿って上方水切部材40を設けるようにしている。
上方水切部材40は、枠用開口部2の内周面から室外側に延在し、外壁部材6の外表面よりもわずかに外方に突出する幅を有した薄板状部材であり、合成樹脂もしくはアルミニウム等の金属によって成形してある。図10に示すように、上方水切部材40の両側部は、外壁部材6及び枠用開口部2の内周面に近接するように配置してある。上方水切部材40の両側部において外壁部材6から既設縦枠部材111cの取付片112までの間に対向する部分(図10中の二点鎖線で囲んだ部分A)には、互いの間の隙間を塞ぐための水切シール材33が充填してある。
図11及び図12に示すように、上方水切部材40の上面と枠用開口部2の内周面との間には、外方上水切用パッキン材34及び内方上水切用パッキン材35が配設してある。外方上水切用パッキン材34は、上方水切部材40の一方の端部から他方の端部まで連続するように配設してあり、その上部に既設上枠部材111aの取付片112が圧接されるとともに、図10に示すように、その両端部が既設縦枠部材111cの取付片112に圧接された状態にある。内方上水切用パッキン材35は、図11に示すように、外方上水切用パッキン材34よりも室内側に位置する部位に配置したもので、外方上水切用パッキン材34と同様、上方水切部材40の一方の端部から他方の端部まで連続するように配設してある。この上方水切部材40は、内方上水切用パッキン材35を貫通する位置において躯体Bに新設ネジ部材14を螺合させることにより、枠用開口部2の内周面との間及び既設上枠部材111aの取付片112との間にそれぞれ水密性を確保した状態で躯体Bに取り付けてある。尚、外方上水切用パッキン材34及び内方上水切用パッキン材35は、必ずしも個別に設ける必要はなく、一体に成形したものを適用しても構わない。また、必ずしも予め成形されたパッキン材を用いる必要はなく、塗布したシール材によって外方上水切用パッキン材34及び内方上水切用パッキン材35としても構わない。
上方水切部材40の上面と外壁部材6の下端面との間は、適宜箇所に排水口36を確保した状態で、上方シール材37によって互いの隙間を塞ぐようにしている。排水口36は、外壁部材6の内外を連通させるための開口であり、図11中の矢印Wで示すように、躯体Bの外表面を伝って上方水切部材40の上面に到達した雨水等の水を外壁部材6の外部に排出するように機能するものである。本実施の形態では、合成樹脂によって矩形の枠状に形成した角窓部材を適用し、図12に示すように、この角窓部材を上方水切部材40と外壁部材6との間に介在させた状態でその周囲に上方シール材37を充填することにより、外壁部材6と上方水切部材40との間に排水口36を設けている。
一方、既設下枠部材111bについては、図13に示すように、枠用開口部2に取り付けた状態のままであるため、既設防水シート130や粘着テープが損傷されることはなく、既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cの上方部111c1を取り外した後においても、そのままの状態で躯体Bとの間に十分な水密性を確保することができる。しかしながら、既設縦枠部材111cとの連結状態を解除すべく既設縦枠部材111cを上方部111c1と下方部111c2とに分断しているため、図14に示すように、枠用開口部2において既設下枠部材111bの両側部に既設縦枠部材111cの下方部111c2の小口が露出することになり、これらの小口から雨水等の水が浸入する恐れがある。また、既設縦枠部材111cとの連結部分を切断しているため、切断以前の状態と比べた場合には、枠用開口部2に対する既設下枠部材111bの取付強度が低下していることも考えられる。
そこで、この交換方法においては、図15及び図16に示すように、枠用開口部2に取り付けたままの既設下枠部材111bに対して、その上面から室外側の見付け面に渡る部位及び残存した既設縦枠部材111cの下方部111c2の小口を覆うように下方水切部材50を配設するようにしている。この下方水切部材50は、室内側に位置する見込み面から窓台5に新設ネジ部材14を螺合させることにより、既設開口枠110の既設下枠部材111bとともに躯体Bに取り付けられるものである。さらに、図17に示すように、床材Fの上面から下方水切部材50の上面に渡る部位の全幅には、支持用ブラケット51を配設し、支持用ブラケット51の室内側に位置する見付け面から床材Fを介して躯体Bに新設ネジ部材14を螺合させることにより、支持用ブラケット51を躯体Bに取り付けるようにしている。尚、下方水切部材50の取付対象は、必ずしも窓台5である必要はなく、床材Fであっても構わない。
下方水切部材50は、合成樹脂やアルミニウムもしくはアルミニウム合金によって成形した薄板状を成すもので、室外側に位置する先端部が既設下枠部材111bの見付け面を覆うように下方に向けて折り曲げてある。この下方水切部材50には、既設下枠部材111bの室外側に位置する見付け面とこれを覆う部分との間に下水切用パッキン材(下水切用防水部材)38を介在させ、さらに下方に折り曲げた先端部と既設下枠部材111bの見付け面との間に下方シール材39が充填してある。
支持用ブラケット51は、角筒状を成すブラケット本体51aと、ブラケット本体51aから延在した薄板状の防水板状部51bとを有したもので、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって一体に成形してある。防水板状部51bの先端部上面には、全長に渡って下枠用パッキン材52が配設してある。この支持用ブラケット51は、ブラケット本体51aを床材Fの上面に当接させ、かつ防水板状部51bを室外側に向けた状態で下方水切部材50の上面に設置し、ブラケット本体51aから床材Fを介して窓台5に新設ネジ部材14を螺合させることにより、窓台5に取り付けてある。下方水切部材50の上面と防水板状部51bの先端部下面との間には、互いの間を介して室内側へ水が浸入するのを防止するためのブラケット用パッキン材53が配設してある。
上記のようにして枠用開口部2の上縁部2bに上方水切部材40を配設し、かつ枠用開口部2の下縁部に下方水切部材50を配設するとともに、両側縁部2aに新設防水シート30を配設した後においては、図1及び図2に示すように、枠用開口部2に新設開口枠10を配置する。このとき、新設上枠部材11aの外周面に上枠用パッキン材60を設け、この上枠用パッキン材60を上方水切部材40の下面に圧接させるとともに、一対の新設縦枠部材11cのそれぞれの外周面に上枠用パッキン材60に連続するように縦枠用パッキン材61を設け、各縦枠用パッキン材61を枠用開口部2の内周面に圧接させる。これにより、新設開口枠10と枠用開口部2との隙間から室内側に雨水等の水が浸入する事態を防止することができる。特に、水切部材を設けていない枠用開口部2の左右両側縁部2aについては、水密性を考慮した場合、枠用開口部2に残存する既設縦枠部材111cの取付片112に対して縦枠用パッキン材61を圧接させることが好ましい。尚、外方上水切用パッキン材34及び内方上水切用パッキン材35と同様、上枠用パッキン材60及び縦枠用パッキン材61についても塗布したシール材で構成しても良い。
枠用開口部2に新設開口枠10を配置した後、新設上枠部材11a及び新設縦枠部材11cのそれぞれの見込み面から躯体Bに新設ネジ部材14を螺合させ、かつ新設下枠部材11bについては支持用ブラケット51の上面を覆うカバーヒレ部51cを介して支持用ブラケット51に新設ネジ部材14を螺合させれば、新設開口枠10を躯体Bに取り付けることができる。新設上枠部材11a及び新設縦枠部材11cの新設ネジ部材14を螺合させる位置は、上枠用パッキン材60及び縦枠用パッキン材61よりも室内側に位置する段部12を設けた部分である。新設ネジ部材14を螺合させる際には、枠用開口部2との間の隙間に予めスペーサ62を介在させておく。また、新設開口枠10において新設上枠部材11a及び新設縦枠部材11cの室内側に位置する部分にそれぞれ新設額縁部材63を設けるとともに、外壁部材6の端面と新設上枠部材11a及び新設縦枠部材11cとの間に新設シーリング材8を充填する。さらに、新設下枠部材11bと下方水切部材50の状面との間において支持用ブラケット51の防水板状部51bよりも室外側となる部分に新設下方シーリング材9を充填し、新設開口枠10に新設障子20を配設すれば、新設建具1が完成することになる。
上記のように取り付けた新設建具1では、既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cについては取付片112を切断することによって躯体Bと既設開口枠110との固定状態を解除し、かつ既設下枠部材111bについてはそのまま枠用開口部2に取り付けた状態としているため、外壁部材6を取り壊すことなく既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cを除去することが可能である。しかも、新設開口枠10としては、既設下枠部材111bを残して既設上枠部材111a及び一対の既設縦枠部材111cを取り外した後の枠用開口部2に、四周隙間を持って配置することのできる大きさに構成してあるため、外壁部材6の開口を介して室外側から枠用開口部2に配置することができ、外壁部材6を取り壊す必要がない。従って、既設建具100から新設建具1への交換を短い工期で実施することができるばかりでなく、既設の外壁部材6をそのまま使用できるため、交換作業に伴う施工コストを抑えることができるようになる。
また、新設開口枠10の新設上枠部材11a及び新設縦枠部材11cを新設ネジ部材14によって見付け面から躯体Bに固定するようにしている。このため、既設開口枠110の材質がアルミニウム等の金属であっても合成樹脂であっても、あるいは既設上枠部材111a及び既設縦枠部材111cに歪みや撓みが生じていたり、取付片112の切断幅が均一でない状態であっても、新設開口枠10の躯体Bへの取付強度に何ら影響を及ぼす恐れがない。また、新設下枠部材11bについては、下方水切部材50を介して既設下枠部材111bの上方に配設しているが、新設ネジ部材14を螺合する対象は、床材Fを介して躯体Bに取り付けた支持用ブラケット51である。従って、新設下枠部材11bについては、支持用ブラケット51を介して躯体Bに取り付けられることになり、その取付強度が問題となる恐れはない。
さらに、躯体Bの枠用開口部2に新設開口枠10を配置する以前に躯体Bに新設防水シート30や上方水切部材40によって防水処理を施し、かつ防水処理を施した躯体Bと新設開口枠10との間においては枠用開口部2の内周面と新設上枠部材11a及び新設縦枠部材11cの外周面との間に上枠用パッキン材60及び縦枠用パッキン材61を設けている。
また、既設開口枠110の既設下枠部材111bに施されていた既設防水シート130等の防水処理は、そのまま使用することができる。しかも、既設下枠部材111bの上面及び残存した既設縦枠部材111cの下方部111c2の小口を覆うように下方水切部材50を配設し、かつ既設下枠部材111bと新設下枠部材11bとの間には下枠用パッキン材52、ブラケット用パッキン材53及び新設下方シーリング材9を設けている。従って、十分な防水性を確保して新設建具1を取り付けることが可能となる。
さらに、既設開口枠110の既設下枠部材111bを取り外すことなく躯体Bの枠用開口部2に新設開口枠10を取り付けるようにしているため、既設建具100の改修に伴って床材Fと既設下枠部材111bとの接続部分が露出することがない。このため、新設開口枠10としては、床材Fと既設下枠部材111bとの接続部分を覆い隠すようなものを適用したり、床材Fとの高さが合致するものを選択する必要がない。また、仮に既設開口枠110の既設下枠部材111bに補強金具115が付設されている場合であっても、これを切断する作業を行う必要がないため、既設建具100から新設建具1への交換が煩雑化する事態を招来する恐れがない。
尚、上述した実施の形態では、枠用開口部2の上縁部2bに躯体Bの外表面と外壁部材6との隙間を覆う状態で上方水切部材40を配設し、かつ躯体Bの外表面に残存する既設上枠部材111aの取付片112及び一対の既設縦枠部材111cの取付片112と上方水切部材40との間に外方上水切用パッキン材34を設けるようにしている。また、枠用開口部2の上縁部2bにおいて上方水切部材40の上面と外壁部材6との間には、排水口36を確保した状態で上方水切部材40と外壁部材6との間の隙間を上方シール材37によって塞ぐとともに、枠用開口部2の両側縁部2aにおいて上方水切部材40の両側部と外壁部材6から新設防水シート30までとの間の隙間を水切シール材33によって塞ぐようにしている。従って、躯体Bの外表面を伝ってきた雨水等の水は、上方水切部材40によって受け止められ、排水口36を介して外壁部材6の外部に排出されることになり、室内側に水が浸入する恐れがなくなる等、防水性を考慮した場合にきわめて有利となる。しかしながら、本発明は必ずしも上方水切部材を配設する必要はない。また、既設上枠部材及び既設縦枠部材を取り外す場合に取付片を躯体に残す必要もない。
さらに、上述した実施の形態では、既設障子120を2枚備えた引き違い窓を改修の対象としているが、既設建具100は必ずしも引き違い窓である必要はない。同様に、新設建具1としても引き違い窓に限定されない。尚、テラスやベランダに至る掃き出し部分の枠用開口部2に設けられた建具100を新設建具1に交換する方法について例示しているが、腰窓等、その他の枠用開口部に設けられる建具についても同様に交換することが可能である。この場合、実施の形態で「床材」として記載した部分が「額縁部材」や「化粧部材」となるのはいうまでもない。
また、上述した実施の形態では、支持用ブラケット51を介して新設下枠部材11bを躯体Bに取り付けるようにしているため、取付強度の点で有利となるが、必ずしも支持用ブラケット51を設ける必要はない。
さらに、上述した実施の形態では、下水切用防水部材として下方水切部材50と下枠部材111bの見付け面との間に下水切用パッキン材38を設けるようにしているが、シール材を塗布することによって下水切用防水部材としても良く、また下水切用防水部材を設ける位置についても下枠部材111bの見付け面に限らない。