JP6181957B2 - 気泡シールド工法における流体状掘削土の消泡方法 - Google Patents
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Description
気泡シールド工法は、起泡剤を含む液体を発泡させて生成した気泡を、切羽とカッタとの間に、あるいは、カッタで掘削された掘削土を貯えるチャンバに注入しつつ、カッタによって地山を掘削するものである(特許文献1、2参照)。
従来、この種の気泡シールド工法では、カッタによる掘削土は、気泡が混合された気泡土となっていることから、気泡を消泡するための消泡剤を掘削土に空気中で噴霧したのち、台車やベルトコンベアで排出する必要がある。
そのため、掘削土の移送処理に手間を要すると共に、移送設備が複雑化することからコストがかさみ、省力化を図る上で不利がある。更に、消泡剤を空気中に噴霧するために、気泡土に満遍なく行き渡らせることが困難である。
そこで、本出願人は、気泡シールド工法における掘削土の流体輸送方法を既に提案している(特許文献3参照)。
この方法では、チャンバから排出され気泡が混合された掘削土からなる気泡土に第1の泥水を混合して第2の泥水とする第1の工程と、前記第2の泥水を、排泥ポンプを用いてトンネルの外に移送する第2の工程と、前記第1の工程に先立って、気泡を消泡する消泡剤を前記第1の泥水に注入する第1の消泡剤注入工程、あるいは、前記第1の工程のあとで前記消泡剤を前記第2の泥水に注入する第2の消泡剤注入工程、あるいは、第1の消泡剤注入工程および第2の消泡剤注入工程の双方の工程とを備えことで、消泡の確実性、安全性、及び作業性の向上を図るものである。
本発明は、泥水と消泡剤との比重が近いほど互いに混じりやすいことに着目してなされたものであり、気泡シールド工法において排出される気泡を含む掘削土の移送において、消泡の確実性、安全性、及び作業性の向上を図る上で有利となる気泡シールド工法における消泡方法を提供することを目的とする。
そして、消泡剤の比重を1.0以上1.1以下の範囲内としたので、第1の泥水あるいは第2の泥水と消泡剤とを混じりやすくすることができ、泥水と消泡剤とを効率良く混合して泥水中の消泡を促進する上で有利となる。
したがって、第2の泥水に含まれる気泡が低減されるため、排泥ポンプにおけるキャビテーションの発生を抑制でき、第2の泥水の移送が安定してかつ確実に行われる。
そのため、気泡を含む掘削土を円滑に流体移送することができるため、消泡の確実性、安全性、及び作業性の向上を図る上で有利となる。
図1は本実施の形態の気泡シールド工法における消泡方法の説明図である。
本実施の形態における気泡シールド工法における消泡方法は、シールド機10と、発泡設備30(図2)と、流体輸送設備42と、泥水処理設備62とを用いて実施される。
なお、図1において、符号1は地盤に対して鉛直方向に掘削された発進立坑を示し、符号2は発進立坑1からシールド機10によって水平方向に掘削されたトンネルを示す。また、符号Gは地面を示す。
シールド機10は、掘削部12およびテール部14などを含んで構成されている。
カッタ装置16は、掘削部12の前端に配設された円盤状のカッタ1602を掘進方向と平行な軸線回りに回転することで地盤を掘削するように構成されている。
隔壁18は、カッタ装置16の後方に設けられ、隔壁18とカッタ装置16の背面との間に、カッタ装置16による地盤の掘削で排出された掘削土を貯えるチャンバ28が形成される。
コンベア装置20は、チャンバ28に貯えられた掘削土を後述する合流管44に運搬するように構成されている。コンベア装置20としては例えばスクリュコンベアが使用可能である。
ジャッキ装置22は、カッタ装置16によって掘削されたトンネル2に環状に組み付けられるセグメント4の箇所を掘進方向の後方に向けて押圧することでシールド機10を掘進方向に推進させるように構成されている。
鋼殻外装壁24は、トンネル2の内壁に臨む円筒状を呈し、鋼殻外装壁24の内側に形成される円柱状の空間内にコンベア装置20の前部とジャッキ装置22を収容している。
鋼殻外装壁26は、トンネル2の内壁に臨む円筒状を呈し、掘削部12の鋼殻外装壁24の掘進方向の後端に接続され、鋼殻外装壁26の内側面2604の内側に形成される円柱状の空間内にコンベア装置20の後部などを収容している。
発泡設備30は、起泡剤貯留槽32、起泡剤注入ポンプ34、コンプレッサ36、気泡制御装置38、発泡装置40などを含んで構成されている。
これら各装置は、テール部14の後部に連結された不図示の複数の発泡設備用の設備車両に分散して配設されている。これら複数の発泡設備用の設備車両もシールド機用の設備車両と同様にレール6上を移動可能に設けられている。
起泡剤注入ポンプ34は、起泡剤貯留槽32から供給される起泡剤を気泡制御装置38に移送するものである。
コンプレッサ36は、圧縮空気を気泡制御装置38に供給するものである。
気泡制御装置38は、起泡剤および圧縮空気の流量をそれぞれ制御して発泡装置40に供給するものである。
発泡装置40は、気泡制御装置38から供給される起泡剤および圧縮空気からシェービングクリーム状の気泡を生成するものである。
発泡装置40で生成された気泡は、気泡注入管4002を介して切羽とカッタ1602の前面との間に供給され、あるいは、チャンバ28に供給される。
したがって、カッタ装置16によって掘削された掘削土は気泡が混合された気泡土となる。
流体輸送設備42は、消泡剤注入装置43と、合流管44と、送泥管46と、送泥ポンプ48と、排泥管50と、クラッシャ52と、分流器54と、複数の排泥ポンプ56と、循環管58と、循環ポンプ60と、制御盤61とを含んで構成されている。
第1の開口44Aは、コンベア装置20の下流端に接続されている。
第2の開口44Bは、第1の泥水を、第1の泥水を貯える後述する調整槽66から合流管44に移送する送泥管46の下流端に接続されている。
第3の開口44Cは、複数の排泥ポンプ56が設けられ第2の泥水を合流管44からトンネル2の外に移送する排泥管50の上流端に接続されている。
合流管44は、コンベア装置20から第1の開口44Aに供給される気泡土と、送泥管46から第2の開口44Bに供給される第1の泥水とを合流、混合させ、気泡土と第1の泥水とが混合された第2の泥水を第3の開口44Cから排泥管50に供給するものである。
消泡剤は、あらかじめ泥水中に分散させておくと、泥水中の気泡の薄膜の安定性を阻害し泡の生成を不可能(消泡)とするものである。
なお、本明細書において、消泡剤は、抑泡剤、脱泡剤、破泡剤を含むものとする。
このような消泡剤として、シリコン系エマルジョン型消泡剤、あるいは、鉱物油系オイル型消泡剤など、従来公知のさまざまな消泡剤が使用可能である。
また、泥水と消泡剤との比重が近いほど互いに混じりやすいため、消泡剤の比重が泥水の比重(ほぼ1.0)に近いことが泥水中の消泡を促進する上でより有利となる。
そこで、本実施の形態では、後述する実験結果に基づいて、消泡剤の比重を1.0以上1.1以下とした。
消泡剤の比重が1.0以上1.1以下の範囲内であると、第1の泥水と消泡剤とを混じりやすくすることができ、泥水と消泡剤とを効率良く混合して泥水中の消泡を促進する上でより有利となる。
消泡剤の比重が1.0を下回ると、第1の泥水に注入された消泡剤が第1の泥水に対して浮き上がやすくなり、第1の泥水と消泡剤とを混じりやすくする上で不利となる。また、消泡剤の比重が1.1を上回ると、第1の泥水に注入された消泡剤が第1の泥水に対して沈みやすくなり、第1の泥水と消泡剤とを混じりやすくする上で不利となる。したがって、何れの場合も、消泡剤の比重が1.0以上1.1以下の範囲内である場合に比較して泥水と消泡剤とを効率良く混合しがたく、泥水中の消泡を促進する効果が少ない。
なお、シールド機10により地山が掘削されて排出される掘削土に含まれる礫の大きさが小さく、礫が含まれる第2の泥水を排泥ポンプ56によって支障なく移送できる場合には、クラッシャ52によって礫を破砕する必要が無い。したがって、そのような場合には、クラッシャ52、分流器54、及び循環ポンプ60を、全て省略することができる。
分流器54は、泥水吸入口54Aから供給される消泡剤が注入された第2の泥水を第1の泥水排出口54Bに排出する経路と、泥水吸入口54Aに供給される第2の泥水を第2の泥水排出口54Cに導くバイパス経路との2つの経路を備えている。
循環ポンプ60は、循環管58の中間部に設けられ、分流器54の第2の泥水排出口54Cから供給される第2の泥水を送泥管46の中間部に供給するものである。
制御盤61は、これら消泡剤注入装置43、送泥ポンプ48、クラッシャ52、分流器54、複数の排泥ポンプ56、循環ポンプ60の起動、停止などを操作するための操作スイッチを備えており、これら操作スイッチが操作されることで制御を行う。
本実施の形態では、循環ポンプ60および制御盤61は、専用の車両6002上に設けられ、この専用の車両6002は、前記のシールド機用の設備車両、発泡設備用の設備車両、クラッシャ52専用の車両5202と同様にレール6上を移動可能に設けられている。
礫分および砂分が除去された第2の泥水は、75ミクロン未満のシルト・粘土・コロイドの微粒子を含む第1の泥水として振動ふるい装置64から調整槽66に移送される。
振動ふるい装置64によって取り除かれた礫分および砂分aは、油圧ショベルAおよびダンプトラックBを用いて搬出される。
原水槽68は、調整槽66から送水管67を介して移送された第1の泥水を余剰泥水として貯えるものである。
凝集剤は、水の濁りや色を除去するために用いられる薬剤で、水中に懸濁する微粒子をくっつけてフロック(集塊)をつくらせ、沈降、濾過によって分離除去するのを容易にする作用がある。凝集剤としては、PAC(ポリ塩化アルミニウム)など従来公知のさまざまな凝集剤が使用可能である。
フィルタプレス装置76は、移送された泥水を脱水処理することで脱水ケーキbを得るものである。脱水ケーキbは、油圧ショベルDおよびダンプトラックEを用いて処理場に搬出される。
清水槽80は、ろ液水槽78から送水管79を介して移送された水を清水として貯えるものである。
シールド機10による地盤の掘削が開始される前に、送泥ポンプ48、消泡剤注入装置43、クラッシャ52、複数の排泥ポンプ56、循環ポンプ60の全てが動作停止状態にあるものとする。
シールド機10による地盤の掘削が開始されると、コンベア装置20から排出された気泡土が合流管44において消泡剤を含んだ第1の泥水と合流、混合されて第2の泥水となる。
言い換えると、チャンバ28から排出され気泡が混合された掘削土からなる気泡土に、消泡剤を含んだ第1の泥水を混合して第2の泥水とする第1の工程が実行される。
言い換えると、第2の泥水を排泥ポンプ56を用いてトンネル2の外に移送する第2の工程が実行される。また、本実施の形態では、前記の第1の工程と、前記第2の工程との間で、第2の泥水に含まれる礫をクラッシャ52によって破砕する破砕工程が実行される。
そのため、第2の泥水に含まれる気泡が低減されるため、排泥ポンプ56におけるキャビテーションの発生を抑制でき、第2の泥水の移送が安定してかつ確実に行われる。
そのため、気泡を含み流体状およびスラリー状となっている掘削土を円滑に流体移複数の排泥ポンプ56による第2の泥水の移送が安定してかつ確実に行われる。
そして、消泡剤の比重を1.0以上1.1以下の範囲内としたので、第1の泥水と消泡剤とを混じりやすくすることができ、泥水と消泡剤とを効率良く混合して泥水中の消泡を促進する上でより有利となる。
したがって、気泡シールド工法においてシールド機10から排出される気泡を含み流体状およびスラリー状となっている掘削土を円滑に流体移送することができるため、掘削土の移送において、消泡の確実性、安全性、及び作業性の向上を図る上で有利となる。
特に、従来のように、気泡を含む掘削土に消泡剤を噴霧して消泡したのち、掘削土を台車、あるいは、ベルトコンベアを用いて移送する場合に比較して、消泡の確実性、安全性、及び作業性の向上を図る上で有利となる。
これに対して、本実施の形態では、気泡土と消泡剤を含んだ第1の泥水とを混合することによって、泥水中の気泡の薄膜の安定性を阻害し泡の生成を不可能とできるので、前記各ポンプにおけるキャビテーションの発生を抑制でき、泥水を円滑に移送あるいは循環させる上で有利となる。
言い換えると、第1の工程に先立って、気泡を消泡する消泡剤を第1の泥水に注入する第1の消泡剤注入工程を実行してもよい。
すなわち、調整槽66に貯えられた第1の泥水に消泡剤を注入、混合してもよい。
あるいは、気泡土と第1の泥水とが混合された直後に消泡剤を注入すると共に、第1の泥水に消泡剤を混合してもよい。
要するに、排泥管50で移送する第2の泥水に含まれる気泡を消泡することができれば、消泡剤を第2の泥水に注入するか、第1の泥水に注入するか、あるいは、第1、第2の泥水の双方に注入するかは任意である。
すなわち、第1の工程に先立って、気泡を消泡する消泡剤を第1の泥水に注入する第1の消泡剤注入工程、あるいは、第1の工程のあとで消泡剤を第2の泥水に注入する第2の消泡剤注入工程、あるいは、第1の消泡剤注入工程および第2の消泡剤注入工程の双方の工程の何れを行うかは任意である。
第2の泥水に残存する気泡の量が多いと、複数の排泥ポンプ56による第2の泥水の移送が円滑に行われないなどの影響を与えることが懸念される。
そのため、第2の泥水に含まれる気泡の量が複数の排泥ポンプ56による第2の泥水の移送に影響を与えないように、第2の泥水に含まれる気泡の量を監視しつつ、消泡剤の注入量を制御することが好ましい。
しかしながら、第2の泥水は、クラッシャ52および排泥管50を通っていることから気泡の量を監視することは容易ではない。
一方、調整槽66に貯えられる第1の泥水は、振動ふるい64によって第2の泥水から礫が除去されたものであることから、第1の泥水に含まれる気泡の量を監視すれば、実質的に第2の泥水に含まれる気泡の量を監視することができる。
そこで、調整槽66の第1の泥水に含まれている気泡の量を監視して調整槽66の第1の泥水に対する消泡剤の注入量を制御すれば、実質的に第2の泥水に含まれる気泡の量を監視して消泡剤の注入量を制御することができる。
この場合、調整槽66の第1の泥水に含まれている気泡の量を監視することは容易であるため、消泡剤の注入量を適切に管理することが容易にでき好ましい。
実験条件は以下の通りである。
消泡剤は、シリコン系エマルジョン型消泡剤と、鉱物油系オイル型消泡剤との2種類とし、消泡剤毎に比重を0.8、1.0、1.1、1.3の4段階に変えたものを用意した。
同量の消泡剤と泥水とを用意して混合した。
混じりやすさの評価は、シリコン系エマルジョン型消泡剤の比重1.0の場合の混合度合いを100とする指数で評価した。
シリコン系エマルジョン型消泡剤と、鉱物油系消泡剤との何れの場合においても、比重が1.0以上1.1以下の範囲内のものが混じりやすいと評価され、1.0以上1.1以下の範囲外のものは混じり難いと評価された。
したがって、消泡剤の比重を1.0以上1.1以下の範囲内とすることで、泥水と消泡剤とを混じりやすくすることができ、泥水と消泡剤とを効率良く混合して泥水中の消泡を促進する上でより有利となることが明らかとなった。
また、シリコン系エマルジョン型消泡剤の方が鉱物油系消泡剤よりも泥水と混じりやすいと評価された。
なお、シリコン系エマルジョン型消泡剤は、鉱物油系消泡剤に比較して周辺環境に与える汚染などの影響が少ないという点でも有利である。
Claims (2)
- 起泡剤を含む液体を発泡させて生成した気泡を、切羽とカッタとの間に、あるいは、カッタで掘削された掘削土を貯えるチャンバに注入しつつ、カッタによって地山を掘削するに際して、
前記チャンバから排出され気泡が混合された掘削土からなる気泡土に第1の泥水を混合して第2の泥水とする第1の工程と、
前記第2の泥水を、排泥ポンプを用いてトンネルの外に移送する第2の工程と、
前記トンネルの外に移送された前記第2の泥水から礫分および砂分を除去することで第3の泥水を生成する第3の工程と、
前記トンネルの外で前記第3の泥水からシルト、粘度、コロイドの微粒子を除去することで清水を生成する第4の工程と、
前記第1の工程に先立って、気泡を消泡する消泡剤を前記第1の泥水に注入する第1の消泡剤注入工程、あるいは、前記第1の工程のあとで前記消泡剤を前記第2の泥水に注入する第2の消泡剤注入工程、あるいは、第1の消泡剤注入工程および第2の消泡剤注入工程の双方の工程とを備え、
前記第3の泥水を、前記清水で希釈したものを、前記第1の泥水として用いる気泡シールド工法であって、
前記消泡剤の比重を1.0以上1.1以下とした、
ことを特徴とする気泡シールド工法における掘削土の消泡方法。 - 前記消泡剤は、シリコン系エマルジョン型である、
ことを特徴とする請求項1記載の気泡シールド工法における掘削土の消泡方法。
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