JP6181460B2 - 血管再生基材 - Google Patents

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Description

本発明は、血管の欠損部に移植したときに血流による応力に耐えられる高い機械的強度を有し、かつ、血管内皮の肥厚化を防止して高い効率で血管を再生することができる血管再生基材に関する。
現在、臨床において人工血管として使用されているのは、ゴアテックス等の非吸収性高分子を用いたものである。このような人工血管は、極めて血管に近い物性を発揮させることができ、短期的な血管の再建術には一定の成果をあげている。しかしながら、非吸収性高分子を用いた人工血管は、半永久的に異物が体内に残存し、また、血栓ができやすいことから、継続的に抗凝固剤等を投与しなければならないという問題があった。また、特に小児に使用した場合、成長に伴うサイズミスマッチにより改めて手術する必要が生じることや、人工血管の石灰化により再手術を要するという問題もあった。
これに対して近年、いわゆる再生医療技術による組織再生方法が試みられている。即ち、細胞の侵入が容易な血管再生基材を血管の欠損部に移植することにより、該血管再生基材を足場として患者自身の細胞が増殖する機序を利用して自己の組織を再生しようとする試みである。
このような血管再生基材の一つとして、生体吸収性高分子からなる平均繊維径がナノメートルオーダーの繊維が集合した繊維集合体を用いることが検討されている。そもそも身体を構成するコラーゲンは繊維状物質である。繊維集合体を構成する繊維の繊維径をナノメートルオーダーにすることにより、高い物理的強度と柔軟性とを両立することができる。
また、繊維の比表面積が大きくなることから、細胞の接着性が向上し、組織の再生を促進することができる。
例えば、非特許文献1には、静電紡糸法により種々の繊維径を有するポリラクチドからなる繊維からなる集合体を製造し、その繊維径による血小板の接着性を検討したところ、繊維径が1μm以下の繊維からなる繊維集合体では血小板の接着が著しく抑制され、抗血栓性が高い可能性があることが報告されており、血管再生基材としての応用が示唆されている。また、特許文献1には、生体吸収性ポリマーからなる平均繊維径が0.05〜10μmの繊維構造体からなる多孔体が開示されており、該多孔体を再生医療に応用することが記載されている。
組織のなかでも血管の再生のためには、単に基材中に細胞が侵入し、増殖するという細胞侵入性だけではなく、血管が再生するまでの期間、血流による応力に耐えられる機械的強度も求められるという点で、血管再生基材には他の組織の再生基材にはない性能が求められる。とりわけ、動脈の再生を行う場合には、極めて高い機械的強度が必要となる。非特許文献1や特許文献1に記載された平均繊維径がナノメートルオーダーの繊維が集合した繊維集合体を血管再生基材として用いた場合、動脈の再生に用いることができる高い機械的強度を得ようとすれば、繊維集合体の密度を高くする必要がある。しかしながら、このように機械的強度を向上させた血管再生基材を血管の欠損部に移植した場合、該移植部が石灰化してしまい、正常な血管の再生ができないことがあるという問題があった。
国際公開第2006/028244号パンフレット
Acta Biomaterialia,8(2012),4349−4356
本発明者らは、従来の機械的強度を向上させた血管再生基材を血管の欠損部に移植したときに、該移植部が石灰化する原因を調査した。血管再生基材を血管の欠損部に移植した場合、移植後3〜8週間程度で血管再生基材の内面(血液に接する側の面)に細胞層が形成される。正常な血管においては、血管内皮は血管内皮細胞1層のみからなる。しかしながら、従来の血管再生基材の移植部においては、血管内皮が複数層に肥厚化していき、最終的には該肥厚化した血管内皮が石灰化につながっていることを見出した。即ち、正常な血管の再生のためには、血流による応力に耐えられる高い機械的強度を有しながら、同時に内皮の肥厚化を防止することが重要であることがわかった。
本発明は、上記現状に鑑み、血管の欠損部に移植したときに血流による応力に耐えられる高い機械的強度を有し、かつ、内皮の肥厚化を防止して高い効率で血管を再生することができる血管再生基材を提供することを目的とする。
本発明は、生体吸収性高分子からなる平均繊維径0.05〜10μmの繊維が集合した繊維集合体層が少なくとも2層以上積層された積層体からなる血管再生基材であって、見かけ密度が200kg/m以上であり、かつ、前記繊維集合体層間に空隙を有する血管再生基材である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、生体吸収性高分子からなる平均繊維径がナノメートルオーダーの繊維が集合した繊維集合体を層状に重ね、かつ、該層間の少なくとも一部に空隙を有する構造(以下、これを「バームクーヘン構造」ともいう。)とすることにより、動脈における血流による応力に耐えられるほどに高い見かけ密度としても、内皮の肥厚化を防止できること見出し、本発明を完成した。
バームクーヘン構造とすることにより、動脈の再生に用いることができる高い機械的強度を発揮できるほどの高密度としても、移植後の内皮の肥厚化がほとんど認められない。この理由は明らかではないが、バームクーヘン構造の繊維集合体層間の空隙によって、高密度にもかかわらず血管再生基材全体としての柔軟性が向上し、再生中の血管に適度な応力がかかって内皮の肥厚化が防止されるのではないかと考えられる。
図1に、本発明の血管再生基材の構造を説明する模式図を示した。
以下、図1を用いて本発明を詳しく説明する。なお、本発明は、図1に示した構造に限定されるものではない。また、図1においては、本発明の血管再生基材をチューブ状体として表現しているが、例えば、シート状体として再生すべき血管にパッチする形で移植することもできる。
本発明の血管再生基材は、繊維集合体層が少なくとも2層以上積層された積層体からなる。
例えば、図1の血管再生基材1は、繊維集合体層21、繊維集合体層22、繊維集合体層23及び繊維集合体層24が積層された構造を有する。このような積層構造とすることにより、細胞が侵入できる空隙を設けることが可能となり、優れた細胞侵入性を発揮することができる。また、積層構造とすることにより、より高い機械的強度を発揮することもできる。
なお、上記繊維集合体層の積層数は、少なくとも2層以上であれば特に限定されないが、好ましくは3層以上、より好ましくは4層以上である。また、上記繊維集合体層の積層数の上限についても特に限定されないが、血管再生基材全体としての厚みを考慮すれば、5層程度が実質的な上限となる。
上記繊維集合体層は、生体吸収性高分子からなる繊維が集合したものである。
上記生体吸収性高分子としては、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド(D、L、DL体)、ポリカプロラクトン、グリコリド−ラクチド(D、L、DL体)共重合体、グリコリド−ε−カプロラクトン共重合体、ラクチド(D、L、DL体)−ε−カプロラクトン共重合体及びポリジオキサノン、グリコリド−ラクチド(D、L、DL体)−ε−カプロラクトン共重合体等が挙げられる。なかでも、生体内で吸収されるまでの期間が血管の再生に好適であることから、ポリラクチド(D、L、DL体)が好適である。これらの生体吸収性高分子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記生体吸収性高分子の重量平均分子量の好ましい下限は10,000、好ましい上限は500,000である。上記生体吸収性高分子の重量平均分子量が10,000未満であると、得られる血管再生基材の強度が劣ることがあり、500,000を超えると、微細な繊維状への加工性が劣ることがある。上記生体吸収性高分子の重量平均分子量のより好ましい下限は70,000、より好ましい上限は400,000である。
なお、本明細書において上記生体吸収性高分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)による測定値を意味する。
上記繊維集合体層を構成する繊維は、平均繊維径の下限は0.05μm、上限は10μmである。上記繊維の平均繊維径が0.05μm未満であると、得られる血管再生基材の強度が劣り、10μmを超えると、繊維の比表面積が小さく生着する細胞数が少なくなり、血管の再生が遅くなる。上記繊維の平均繊維径の好ましい下限は0.2μm、好ましい上限が8μmである。
なお、上記平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、上記繊維集合体層を構成する繊維の任意の少なくとも10カ所の繊維径を測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
上記繊維集合体層を構成する繊維は、繊維径が均等で繊維径分布においてバラツキが小さくとも大きくともよく、繊維径分布においてバラツキが大きい場合、繊維径分布の変動係数が1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましい。繊維径分布の変動係数が2%以上であることにより、より血管の再生が促進される。この理由については明らかではないが、正常な組織との近似性が高いためではないかと考えられる。即ち、正常な組織では、種々の繊維径を有する繊維組織を含む。繊維径にバラツキのある血管再生基材を用いた方がより正常な組織に近いため、細胞が容易に侵入することができ、血管再生基材中で増殖、分化して組織を形成することができるためではないかと考えられる。
上記繊維集合体層の各々の厚みは、繊維集合体層の積層数と得ようとする血管再生基材の厚みとを勘案して適当な厚みを選択すればよい。上記繊維集合体層の厚みの好ましい下限は1μm、好ましい上限は500μmである。上記繊維集合体層の厚みが1μm未満であると、充分な厚みの血管再生基材を構成するために極めて多数の積層数が必要となり、現実的ではない。上記繊維集合体層の厚みが500μmを超えると、2層以上積層したところで血管再生基材の厚みを超えてしまう。上記繊維集合体層の厚みのより好ましい下限は2μm、より好ましい上限は400μmである。
なお、上記繊維集合体層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、上記繊維集合体層の任意の少なくとも10カ所の厚みを測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
本発明の血管再生基材は、上記繊維集合体層間に空隙を有する。
例えば、図1の血管再生基材1は、繊維集合体層21と繊維集合体層22との間に空隙31、繊維集合体層22と繊維集合体層23との間に空隙32、繊維集合体層23と繊維集合体層24との間に空隙33を有する。このような空隙を有することにより、高い細胞侵入性を確保することができる。
上記空隙の幅(即ち、繊維集合体層間の距離)の好ましい下限は0.5μm、好ましい上限は100μmである。上記空隙の幅が0.5μm未満であると、内皮の肥厚化を充分には防止できないことがあり、100μmを超えると、得られる血管再生基材の強度が劣ることがある。上記空隙の幅のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は2μmであり、更に好ましい下限は3μm、更に好ましい上限は90μmである。
上記空隙は、一定の幅を有するものではなく、部位によって幅が変動してもよい。従って、上記幅の値は平均値である。また、例えば、図1の血管再生基材1の空隙31、空隙32、空隙33は、同じ幅であってもよく、異なっていてもよい。
なお、上記空隙の幅は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、上記繊維集合体層間に形成された空隙の任意の少なくとも10カ所の幅を測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
本発明の血管再生基材は、見かけ密度の下限が200kg/m以上である。見かけ密度を200kg/m以上とすることにより、動脈の再生に用いた場合にでも、血流の圧力により膨張したり、破壊したりすることがない。上記見かけ密度の好ましい下限は260kg/m、より好ましい下限は300kg/m、更に好ましい下限は320kg/mである。上記見かけ密度の上限は特に限定されないが、実質的には450kg/m程度が上限である。
なお、本明細書において見かけ密度とは、得られた血管再生基材の重量を体積で除した値を意味し、血管再生基材の重量と体積を実測して、下記式により算出することができる。
見かけ密度(kg/m)=血管再生基材の重量(kg)/血管再生基材の体積(m
本発明の血管再生基材は、ポロシティの好ましい下限が5%、好ましい上限が95%である。上記ポロシティが5%未満であると、内皮の肥厚化を充分には防止できないことがあり、95%を超えると、内皮の肥厚化は防止できても機械的強度が低下することがある。上記ポロシティのより好ましい下限は10%、より好ましい下限は20%である。
なお、本明細書においてポロシティとは、得られた血管再生基材の体積に占める空隙の割合を意味し、平均見かけ密度と血管再生基材を形成する生体吸収性高分子の固有密度から、下記式により算出することができる。
ポロシティ(%)
={1−{血管再生基材の平均見かけ密度(g/cm)/生体吸収性高分子の固有密度(g/cm)}}×100
本発明の血管再生基材は、平均ポアサイズの好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が100μmである。上記平均ポアサイズが0.1μm未満であると、充分な細胞侵入性が得られないことがあり、100μmを超えると、強度が劣るとともに血液の漏水抑制が困難になる。上記平均ボアサイズのより好ましい下限は0.3μm、より好ましい下限は0.4μmである。
なお、本明細書において平均ポアサイズとは、得られた上記繊維集合体層中の繊維間の距離を意味し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、上記繊維集合体層中の繊維間の任意の少なくとも10カ所の距離を測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
本発明の血管再生基材は、厚みの好ましい下限が20μm、好ましい上限が1000μmである。上記厚みが20μm未満であると、強度が劣ることがあり、1000μmを超えると、取扱い性に劣り、移植が困難となることがある。上記厚みのより好ましい下限は30μm、より好ましい下限は40μmである。
なお、上記血管再生基材の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、血管再生基材の任意の少なくとも10カ所の厚みを測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
本発明の血管再生基材は、いわゆる静電紡糸法により製造することができる。静電紡糸法とは、高分子を溶解した溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極に向けて曵糸する方法である。吐出された溶液中の溶媒が、電極に達するまでに徐々に揮発することで、繊維状物質を形成させることができる。
本発明の血管再生基材は、例えば、上記生体吸収性高分子を溶解した溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極に向けて曵糸して形成した繊維状物質を回転する巻き取り軸状のコレクタに巻き取る方法により製造することができる。この際、回転する巻き取り軸状のコレクタの回転数を調整することにより得られる血管再生基材の見かけ密度を制御することができる。一方、上記生体吸収性高分子を溶解した溶液調整、溶液の吐出条件の調整、電極間の電圧調整と距離、電極間で形成された静電場中の温湿度の調整、電極間で高分子を溶解させた溶液の溶媒が揮発する際の静電場中における溶媒揮発濃度の調整、回転する巻き取り軸状のコレクタの回転数の調整、曵糸して形成した繊維状物質をコレクタに巻き取る際の幅(即ち、トラバース幅)の調整、電極間で形成された静電場中の温湿度の調整とのバランスにより、上記バームクーヘン構造を有する本発明の血管再生基材を製造することができる。
以下に静電紡糸法により本発明の血管再生基材を製造する方法を詳しく説明する。
本発明の血管再生基材の製造に供することができる静電紡糸装置の一例を示す模式図を図2に示した。
図2に示した静電紡糸装置4は、高電圧印加装置41、高分子の溶解漕42、高分子の溶解漕42に装着されたノズル43、巻き取り軸状のコレクタ44、高分子の溶解漕42とノズル43とがの長軸、短軸方向に移動可能なトラバース装置45とからなるものであり、高電圧印加装置41により、ノズル43と巻き取り軸状のコレクタ44との間に静電場を形成することができる。
本発明の血管再生基材の製造においては、まず上記生体吸収性高分子を溶媒に溶解した生体吸収性高分子溶液を準備する。
上記溶媒としては、上記生体吸収性高分子を溶解可能な溶媒であれば特に限定されず、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記生体吸収性高分子溶液中の生体吸収性高分子の濃度の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は40重量%である。上記生体吸収性高分子の濃度が1重量%未満であると、繊維状物質を形成することが困難となることがあり、40重量%を超えると、溶液の粘度が高くなり、繊維状物質の形成に必要以上の高電圧をかける必要がある。上記生体吸収性高分子の濃度のより好ましい下限は2重量%、より好ましい上限は30重量%である。
上記生体吸収性高分子溶液は、得られる血管再生基材のポアサイズを制御する目的で、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、砂糖、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、氷、ドライアイス等のポアサイズ制御剤を含有してもよい。これらのボアサイズ制御剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのポアサイズ制御剤は、得られた血管再生基材を適当な溶剤で洗浄することにより容易に溶出して除去することができ、配合したポアサイズ制御剤の粒子径に対応するサイズの孔を血管再生基材中に形成させることができる。
本発明の血管再生基材の製造においては、次いで、上記生体吸収性高分子溶液を、ノズルを用いて電極間で形成された静電場中に吐出し、該溶液を電極に向けて曵糸して繊維状物質を形成させる。
上記ノズルの口径は特に限定されないが、好ましい下限は32G、好ましい上限は12Gである。上記ノズルの口径がこの範囲内であると、平均繊維径が充分に細い繊維状物質を安定して供給することができる。上記ノズルの口径のより好ましい下限は31G、より好ましい上限は13Gである。
本発明の血管再生基材の製造においては、1つのノズルから上記生体吸収性高分子溶液を吐出してもよいし、数個のノズルを用いてもよい。
上記ノズルから上記生体吸収性高分子溶液を吐出する際の吐出空気圧は特に限定されないが、好ましい下限は0.001MPa、好ましい上限は0.10MPaである。上記吐出空気圧がこの範囲内であると、平均繊維径が充分に細い繊維状物質を安定して供給することができる。上記吐出空気圧のより好ましい下限は0.002MPa、より好ましい上限は0.09MPaである。
上記電極間に印加される静電気電位の好ましい下限は1kV、好ましい上限は100kVである。この範囲内であると、繊維状物質の形成が良好である。上記静電気電位のより好ましい下限は2kV、より好ましい上限は90kVである。
なお、最適な静電気電位の範囲は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧を勘案して決定すればよい。
本発明の血管再生基材の製造においては、次いで、形成した繊維状物質を回転する巻き取り軸状のコレクタに巻き取る。上記巻き取り軸状のコレクタに直接巻き取ることにより、高い効率でチューブ状の血管再生基材を製造することができる。なお、上記巻き取り軸状のコレクタの外径を調整することにより、得られる血管再生基材の内径を制御することができる。
上記巻き取り軸状のコレクタの回転数を調整することにより、得られる血管再生基材の見かけ密度を制御することができる。即ち、回転数を大きくすると見かけ密度の高い血管再生基材を得ることができ、回転数を小さくすると見かけ密度の低い血管再生基材を得ることができる。得られる血管再生基材の見かけ密度が300kg/m以上とするためには、上記巻き取り軸状のコレクタの回転数の好ましい下限は200rpmであり、より好ましい下限は250rpmである。
上記巻き取り軸状のコレクタの回転数を調整することにより、得られる血管再生基材を構成する繊維集合体層の積層状態を調整することができる。即ち、回転数を可変とすることで、ノズルから静電場中に吐出された繊維状物質が、回転する巻き取り軸状のコレクタ上に積層する際の線速度が変わり、繊維集合体層の積層数を制御することができる。回転数を小さくすると繊維集合体層の層数が減少し、回転数を高くすると繊維集合体層の層数が増加する。
上記繊維集合体層の積層数を制御する場合の上記巻き取り軸状のコレクタの回転数は、得ようとする血管再生基材の厚みを勘案すればよく特に限定されないが、好ましい下限は1rpm、好ましい上限は5000rpmである。上記巻き取り軸状のコレクタの回転数がこの範囲内であると、繊維集合体層が安定して調整できる。
なお、上記巻き取り軸状のコレクタの回転数は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧、トラバース幅を勘案して決定すればよい。
本発明の血管再生基材の製造においては、曵糸して形成した繊維状物質を巻き取り軸状のコレクタに巻き取る際の幅(即ち、トラバース幅)を調整することにより、得られる血管再生基材を構成する繊維集合体層の積層状態を調整することができる。トラバース幅を拡縮することで、ノズルから静電場中に吐出された繊維状物質と、回転する巻き取り軸状のコレクタ上に積層済みの繊維集合体層とが接触するタイミングが変わり、繊維集合体層の積層数を制御することができる。
上記トラバース幅は、得ようとする血管再生基材のサイズや生産効率性を勘案すればよく特に限定されないが、好ましい下限は3mm、好ましい上限は10,000mmである。上記トラバース幅がこの範囲内であると、繊維集合体層が安定して調整できる。
なお、最適なトラバース幅の範囲は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧、回転数を勘案して決定すればよい。
本発明の血管再生基材の製造においては、曵糸して形成した繊維状物質を電極間で形成された静電場中の温湿度を調整することにより、得られる血管再生基材を構成する繊維集合体層の積層状態を調整することができる。即ち、温室度を可変することで、ノズルから静電場中に吐出された繊維状物質に含まれる溶媒の揮発状態が変わり、繊維集合体層の積層数を制御することができる。
上記静電場中の温湿度は、生体吸収性高分子溶液の溶媒の性状を勘案すればよく特に限定されない。なお、最適な温湿度の範囲は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧、回転数、トラバース幅を勘案して決定すればよい。
本発明の血管再生基材の製造においては、高分子溶液を電極に向けて吐出する際、電極間で形成された静電場中における上記溶液の溶媒揮発状態を調整することにより、得られる血管再生基材を構成する繊維集合体層の積層状態を調整することができる。即ち、静電場中の揮発溶媒濃度を調整することで、ノズルから静電場中に吐出された溶液中の溶媒の揮発状態が変わり、得られる繊維集合体層の積層数を調整することができる。電極間で形成された静電場中における揮発溶媒濃度が高い場合、ノズルから静電場中に吐出された溶液からの溶媒の揮発は緩慢になり、上記巻き取り軸状のコレクタ上に積層された際、繊維状物質同士の接点が多くなる。一方、揮発溶媒濃度が低い場合、ノズルから静電場中に吐出された溶液からの溶媒の揮発は急激になり、上記巻き取り軸状のコレクタ上に積層された際、繊維状物質同士は接点が少ないか若しくは接点がなくなる。繊維状物質同士の接点の多少により、繊維集合体層の積層数を制御することができる。
上記静電場中における上記溶液の揮発溶媒濃度は、生体吸収性高分子溶液の溶媒の性状を勘案すればよく特に限定されない。なお、最適な揮発溶媒濃度の範囲は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧、回転数、トラバース幅、電極間の温湿度を勘案して決定すればよい。
本発明によれば、血管の欠損部に移植したときに血流による応力に耐えられる高い機械的強度を有し、かつ、血管内皮の肥厚化を防止して高い効率で血管を再生することができる血管再生基材を提供することができる。
本発明の血管再生基材の構造を説明する模式図である。 本発明の血管再生基材の製造に供することができる静電紡糸装置の一例を示す模式図である。 実施例1で製造した血管再生基材の断面の写真(左)及びその拡大写真(右)である。 通常のマウスの腎動脈下腹部大動脈(ネイティブ)と、術後2週間、2カ月、4カ月、8カ月及び12カ月後の移植部の血管の超音波エコー像である。 術後12ヵ月後の移植部の血管の断面のCD31組織染色像である。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
(1)血管再生基材の製造
図2に示した静電紡糸装置を用いて、以下の方法により血管再生基材を製造した。
重量平均分子量が30,000のポリラクチド(L体)をHFIPに溶解して濃度6重量%のポリラクチド溶液を調製した。
得られたポリラクチド溶液をシリンジに入れ、口径27Gのノズルから吐出空気圧0.04MPaで静電気電位20kVの電圧のかかった電極間に吐出した。形成された繊維状物質を巻き取り軸状のコレクタ(外径0.6mm)に巻き取った。このとき、コレクタの回転数を300rpmとし、トラバース幅を50mmとした。厚みが150μmになるまで吐出と巻き取りとを続け、血管再生基材を得た。
なお、一連の操作は、温度18.5〜21℃、湿度45〜51RH%の常温常圧下で行った。
(2)血管再生基材の観察
得られた血管再生基材について、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクロジーズ社製、MiniscopeTM−1000)を用いて撮影した断面の写真及びその拡大写真を図3に示した。
図3より、得られた血管再生基材は、繊維径0.12〜2.26μmの繊維からなる繊維集合体層が5層積層された積層体からなることが判る。また、繊維集合体層間に、幅が1.1〜2.0μmの空隙が形成されていることも判る。
また、得られた血管再生基材について測定を行ったところ、見かけ密度は380kg/m、ポロシティは68.4%であった。
(3)動物実験による評価
得られた血管再生基材について、以下の方法にて動物実験による評価を行った。
マウスの腎動脈下腹部大動脈を一部切除し、得られた血管再生基材を切除に移植した。
計25検体の試験を行い、術後2週間、2カ月、4カ月、8カ月及び12カ月後に超音波エコーで移植部の血管の形態を調べた。図4に、通常のマウスの腎動脈下腹部大動脈(ネイティブ)と、術後2週間、2カ月、4カ月、8カ月及び12カ月後の移植部の血管の超音波エコー像を示した。
図4より、移植部の血管において、破裂、拡張及び狭窄は認められず、開存性は良好であり、ネイティブとほぼ変わりはなかった。
なお、術後12ヵ月後の生存率は86%であった。
術後12ヵ月後に犠牲死させ、移植部の血管を摘出して、組織学的評価に供した。
図5に、術後12ヵ月後の移植部の血管の断面のCD31組織染色像を示した。
図5より、血管内皮は一層のみが再生されており、血管内皮の肥厚化は全く認められなかった。
本発明によれば、血管の欠損部に移植したときに血流による応力に耐えられる高い機械的強度を有し、かつ、血管内皮の肥厚化を防止して高い効率で血管を再生することができる血管再生基材を提供することができる。
1 血管再生基材
21、22、23、24 繊維集合体層
31、32、33 空隙
4 静電紡糸装置
41 高電圧印加装置
42 高分子の溶解漕
43 ノズル
44 巻き取り軸状のコレクタ
45 トラバース装置

Claims (2)

  1. 1種類の生体吸収性高分子のみからなる平均繊維径0.05〜10μmの繊維が集合した繊維集合体層が少なくとも2層以上積層された積層体からなる血管再生基材であって、
    見かけ密度が200kg/m以上であり、かつ、前記繊維集合体層間に空隙を有し、
    前記繊維集合体層間の空隙の幅が0.5〜100μmである
    ことを特徴とする血管再生基材。
  2. 繊維集合体層の厚みが1〜500μmであることを特徴とする請求項1記載の血管再生基材。
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