JP2015033555A - 血管再生基材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】生体吸収性高分子からなる平均繊維径0.05〜10μmの繊維が集合した繊維集合体層が少なくとも2層以上積層された積層体からなる血管再生基材であって、見かけ密度が200kg/m3以上であり、かつ、前記繊維集合体層間に空隙を有する血管再生基材。
【選択図】 図1
Description
また、繊維の比表面積が大きくなることから、細胞の接着性が向上し、組織の再生を促進することができる。
本発明は、上記現状に鑑み、血管の欠損部に移植したときに血流による応力に耐えられる高い機械的強度を有し、かつ、内皮の肥厚化を防止して高い効率で血管を再生することができる血管再生基材を提供することを目的とする。
以下に本発明を詳述する。
バームクーヘン構造とすることにより、動脈の再生に用いることができる高い機械的強度を発揮できるほどの高密度としても、移植後の内皮の肥厚化がほとんど認められない。この理由は明らかではないが、バームクーヘン構造の繊維集合体層間の空隙によって、高密度にもかかわらず血管再生基材全体としての柔軟性が向上し、再生中の血管に適度な応力がかかって内皮の肥厚化が防止されるのではないかと考えられる。
以下、図1を用いて本発明を詳しく説明する。なお、本発明は、図1に示した構造に限定されるものではない。また、図1においては、本発明の血管再生基材をチューブ状体として表現しているが、例えば、シート状体として再生すべき血管にパッチする形で移植することもできる。
例えば、図1の血管再生基材1は、繊維集合体層21、繊維集合体層22、繊維集合体層23及び繊維集合体層24が積層された構造を有する。このような積層構造とすることにより、細胞が侵入できる空隙を設けることが可能となり、優れた細胞侵入性を発揮することができる。また、積層構造とすることにより、より高い機械的強度を発揮することもできる。
なお、上記繊維集合体層の積層数は、少なくとも2層以上であれば特に限定されないが、好ましくは3層以上、より好ましくは4層以上である。また、上記繊維集合体層の積層数の上限についても特に限定されないが、血管再生基材全体としての厚みを考慮すれば、5層程度が実質的な上限となる。
上記生体吸収性高分子としては、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド(D、L、DL体)、ポリカプロラクトン、グリコリド−ラクチド(D、L、DL体)共重合体、グリコリド−ε−カプロラクトン共重合体、ラクチド(D、L、DL体)−ε−カプロラクトン共重合体及びポリジオキサノン、グリコリド−ラクチド(D、L、DL体)−ε−カプロラクトン共重合体等が挙げられる。なかでも、生体内で吸収されるまでの期間が血管の再生に好適であることから、ポリラクチド(D、L、DL体)が好適である。これらの生体吸収性高分子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において上記生体吸収性高分子の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)による測定値を意味する。
なお、上記平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、上記繊維集合体層を構成する繊維の任意の少なくとも10カ所の繊維径を測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
なお、上記繊維集合体層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、上記繊維集合体層の任意の少なくとも10カ所の厚みを測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
例えば、図1の血管再生基材1は、繊維集合体層21と繊維集合体層22との間に空隙31、繊維集合体層22と繊維集合体層23との間に空隙32、繊維集合体層23と繊維集合体層24との間に空隙33を有する。このような空隙を有することにより、高い細胞侵入性を確保することができる。
上記空隙は、一定の幅を有するものではなく、部位によって幅が変動してもよい。従って、上記幅の値は平均値である。また、例えば、図1の血管再生基材1の空隙31、空隙32、空隙33は、同じ幅であってもよく、異なっていてもよい。
なお、上記空隙の幅は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、上記繊維集合体層間に形成された空隙の任意の少なくとも10カ所の幅を測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
なお、本明細書において見かけ密度とは、得られた血管再生基材の重量を体積で除した値を意味し、血管再生基材の重量と体積を実測して、下記式により算出することができる。
見かけ密度(kg/m3)=血管再生基材の重量(kg)/血管再生基材の体積(m3)
なお、本明細書においてポロシティとは、得られた血管再生基材の体積に占める空隙の割合を意味し、平均見かけ密度と血管再生基材を形成する生体吸収性高分子の固有密度から、下記式により算出することができる。
ポロシティ(%)
={1−{血管再生基材の平均見かけ密度(g/cm3)/生体吸収性高分子の固有密度(g/cm3)}}×100
なお、本明細書において平均ポアサイズとは、得られた上記繊維集合体層中の繊維間の距離を意味し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、上記繊維集合体層中の繊維間の任意の少なくとも10カ所の距離を測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
なお、上記血管再生基材の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて血管再生基材の断面を観察して、血管再生基材の任意の少なくとも10カ所の厚みを測定し、その平均値を求めることにより得た値を意味する。
本発明の血管再生基材は、例えば、上記生体吸収性高分子を溶解した溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極に向けて曵糸して形成した繊維状物質を回転する巻き取り軸状のコレクタに巻き取る方法により製造することができる。この際、回転する巻き取り軸状のコレクタの回転数を調整することにより得られる血管再生基材の見かけ密度を制御することができる。一方、上記生体吸収性高分子を溶解した溶液調整、溶液の吐出条件の調整、電極間の電圧調整と距離、電極間で形成された静電場中の温湿度の調整、電極間で高分子を溶解させた溶液の溶媒が揮発する際の静電場中における溶媒揮発濃度の調整、回転する巻き取り軸状のコレクタの回転数の調整、曵糸して形成した繊維状物質をコレクタに巻き取る際の幅(即ち、トラバース幅)の調整、電極間で形成された静電場中の温湿度の調整とのバランスにより、上記バームクーヘン構造を有する本発明の血管再生基材を製造することができる。
以下に静電紡糸法により本発明の血管再生基材を製造する方法を詳しく説明する。
図2に示した静電紡糸装置4は、高電圧印加装置41、高分子の溶解漕42、高分子の溶解漕42に装着されたノズル43、巻き取り軸状のコレクタ44、高分子の溶解漕42とノズル43とがの長軸、短軸方向に移動可能なトラバース装置45とからなるものであり、高電圧印加装置41により、ノズル43と巻き取り軸状のコレクタ44との間に静電場を形成することができる。
上記溶媒としては、上記生体吸収性高分子を溶解可能な溶媒であれば特に限定されず、例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホオキシド(DMSO)、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、水等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのポアサイズ制御剤は、得られた血管再生基材を適当な溶剤で洗浄することにより容易に溶出して除去することができ、配合したポアサイズ制御剤の粒子径に対応するサイズの孔を血管再生基材中に形成させることができる。
上記ノズルの口径は特に限定されないが、好ましい下限は32G、好ましい上限は12Gである。上記ノズルの口径がこの範囲内であると、平均繊維径が充分に細い繊維状物質を安定して供給することができる。上記ノズルの口径のより好ましい下限は31G、より好ましい上限は13Gである。
本発明の血管再生基材の製造においては、1つのノズルから上記生体吸収性高分子溶液を吐出してもよいし、数個のノズルを用いてもよい。
なお、最適な静電気電位の範囲は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧を勘案して決定すればよい。
なお、上記巻き取り軸状のコレクタの回転数は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧、トラバース幅を勘案して決定すればよい。
上記トラバース幅は、得ようとする血管再生基材のサイズや生産効率性を勘案すればよく特に限定されないが、好ましい下限は3mm、好ましい上限は10,000mmである。上記トラバース幅がこの範囲内であると、繊維集合体層が安定して調整できる。
なお、最適なトラバース幅の範囲は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧、回転数を勘案して決定すればよい。
上記静電場中の温湿度は、生体吸収性高分子溶液の溶媒の性状を勘案すればよく特に限定されない。なお、最適な温湿度の範囲は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧、回転数、トラバース幅を勘案して決定すればよい。
上記静電場中における上記溶液の揮発溶媒濃度は、生体吸収性高分子溶液の溶媒の性状を勘案すればよく特に限定されない。なお、最適な揮発溶媒濃度の範囲は、生体吸収性高分子溶液の濃度、電極間の距離、ノズルの口径、吐出空気圧、回転数、トラバース幅、電極間の温湿度を勘案して決定すればよい。
(1)血管再生基材の製造
図2に示した静電紡糸装置を用いて、以下の方法により血管再生基材を製造した。
重量平均分子量が30,000のポリラクチド(L体)をHFIPに溶解して濃度6重量%のポリラクチド溶液を調製した。
得られたポリラクチド溶液をシリンジに入れ、口径27Gのノズルから吐出空気圧0.04MPaで静電気電位20kVの電圧のかかった電極間に吐出した。形成された繊維状物質を巻き取り軸状のコレクタ(外径0.6mm)に巻き取った。このとき、コレクタの回転数を300rpmとし、トラバース幅を50mmとした。厚みが150μmになるまで吐出と巻き取りとを続け、血管再生基材を得た。
なお、一連の操作は、温度18.5〜21℃、湿度45〜51RH%の常温常圧下で行った。
得られた血管再生基材について、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクロジーズ社製、MiniscopeTM−1000)を用いて撮影した断面の写真及びその拡大写真を図3に示した。
図3より、得られた血管再生基材は、繊維径0.12〜2.26μmの繊維からなる繊維集合体層が5層積層された積層体からなることが判る。また、繊維集合体層間に、幅が1.1〜2.0μmの空隙が形成されていることも判る。
また、得られた血管再生基材について測定を行ったところ、見かけ密度は380kg/m3、ポロシティは68.4%であった。
得られた血管再生基材について、以下の方法にて動物実験による評価を行った。
マウスの腎動脈下腹部大動脈を一部切除し、得られた血管再生基材を切除に移植した。
計25検体の試験を行い、術後2週間、2カ月、4カ月、8カ月及び12カ月後に超音波エコーで移植部の血管の形態を調べた。図4に、通常のマウスの腎動脈下腹部大動脈(ネイティブ)と、術後2週間、2カ月、4カ月、8カ月及び12カ月後の移植部の血管の超音波エコー像を示した。
図4より、移植部の血管において、破裂、拡張及び狭窄は認められず、開存性は良好であり、ネイティブとほぼ変わりはなかった。
なお、術後12ヵ月後の生存率は86%であった。
図5に、術後12ヵ月後の移植部の血管の断面のCD31組織染色像を示した。
図5より、血管内皮は一層のみが再生されており、血管内皮の肥厚化は全く認められなかった。
21、22、23、24 繊維集合体層
31、32、33 空隙
4 静電紡糸装置
41 高電圧印加装置
42 高分子の溶解漕
43 ノズル
44 巻き取り軸状のコレクタ
45 トラバース装置
Claims (3)
- 生体吸収性高分子からなる平均繊維径0.05〜10μmの繊維が集合した繊維集合体層が少なくとも2層以上積層された積層体からなる血管再生基材であって、
見かけ密度が200kg/m3以上であり、かつ、前記繊維集合体層間に空隙を有する
ことを特徴とする血管再生基材。 - 繊維集合体層の厚みが1〜500μmであることを特徴とする請求項1記載の血管再生基材。
- 繊維集合体層間に空隙の幅が0.5〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の血管再生基材。
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