JP6179996B2 - 被削性に優れたCu合金、押出しパイプ部材およびCu合金製シンクロナイザーリング - Google Patents
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Description
そして、シンクロナイザーリングは、図1に概略斜視図で示すように、シンクロナイザーリングの内面1が回転するテーパーコーンとの高面圧下での同期摺動並びにこれよりの離脱の断続的面接触を受け、また外周面にはキーが嵌合するキー溝3が形成され、さらに、その外縁にそって所定間隔おきに設けたチャンファー2が同じく相手部材であるハブスリーブとかみ合う構造をもつものであることは既によく知られている。
このようなCu合金製シンクロナイザーリングについて、使用条件の高負荷化に伴い、その耐摩耗性とともに、強度、靱性、耐疲労特性等を改善すべく、種々の提案がなされている。
前記特許文献1〜4に示されるCu合金製シンクロナイザーリングにおいては、使用環境からの要請に応えるため、主として、強度、靱性、耐摩耗性、耐疲労特性等の改善に重点が置かれており、特に、金属間化合物を素地に分散させることによって耐摩耗性の向上が図られている。
しかし、金属間化合物が素地に分散分布している組織の場合には、確かに耐摩耗性は高められるものの、その反面、前述したCu合金製シンクロナイザーリングの作製工程において切削加工する際に、硬質の金属間化合物の存在によって被削性が劣り、加工能率が低下するという問題があった。
そこで、Cu合金製シンクロナイザーリングとして必要とされる特性、即ち、強度、靱性、耐摩耗性等を備えるとともに、これに加え、被削性にも優れるCu合金の開発が望まれている。
(1)質量%で、Zn:25%以上43%以下、Al:2.0%以上8.0%以下、Ti:0.10%以上5.0%以下、Cr:0.010%以上0.040%以下、C:0.0005%以上0.010%以下、Fe、NiおよびCoの内から選ばれる1種または2種以上を合計で1.0%以上5.0%以下含有し、残部Cuおよび不可避不純物からなることを特徴とする被削性に優れたCu合金。
(2)前記(1)に記載のCu合金において、Alの含有量は2.0%以上6.0%以下、Tiの含有量は0.10%以上2.0%以下であることを特徴とする被削性に優れたCu合金。
(3)前記(1)に記載のCu合金において、AlとTiとCrのそれぞれの含有量が、(Al+Ti+3Cr)≦8.1%を満足することを特徴とする被削性に優れたCu合金。
(4)前記(1)乃至(3)に記載のCu合金からなることを特徴とするCu合金製押出しパイプ部材。
(5)前記(1)乃至(3)に記載のCu合金からなることを特徴とするCu合金製シンクロナイザーリング。
本発明のCu合金中のZn成分には、Alと共存することによってCu合金の強度、靭性および耐摩耗性を向上させる作用があるが、Znの含有量が25質量%(以下、単に「%」と記す)未満になると、素地に占めるβ相の面積割合が減少し、α相の面積割合が増加するため、硬さが低下し、所望の耐摩耗性を確保することができない。
一方、Znの含有量が43%を超えると、耐摩耗性は向上するものの、γ相の出現によってCu合金の強度、靭性、熱間加工性が低下傾向を示すようになる。
したがって、Znの含有量は、25〜43%とする。
Al成分はZnとの共存によって、Cu合金の強度、靭性および耐摩耗性を向上させることは前記のとおりであるが、さらに、Alは、Fe、NiおよびCoの内から選ばれる1種または2種以上の鉄族元素およびTiとの金属間化合物を形成して、耐摩耗性を向上させることから2.0%以上含有させる。しかし、8.0%を超えて含有させても耐摩耗性向上効果は少なく、その反面、γ相の出現によりCu合金の靱性、熱間加工性を低下させるようになることから、Alの含有量は2.0〜8.0%とする。
また、本発明では、Cu合金の被削性を向上させるために、金属間化合物の生成量の低減を図っていることから、Al含有量の上限を6.0%とし、Alの含有量を2.0〜6.0%とすることが望ましい。
Ti成分は、AlおよびFe、NiおよびCoの内から選ばれる1種または2種以上の鉄族成分元素と共存した場合、凝固時に微細粒状の金属間化合物を形成し、これが組織を微細化すると同時に、素地に分散して耐摩耗性を向上させる作用を有する。
しかし、Ti含有量が0.10%未満あるいはFe、NiおよびCoの含有量合計が1.0%未満では、組織の微細化効果、耐摩耗性向上効果が少なく、一方、Ti含有量が5.0%を超える場合、あるいは、Fe、NiおよびCoの含有量合計が5.0%を超える場合には、Cu合金の靭性が低下するので、好ましくない。
したがって、Ti含有量は0.10〜5.0%、また、Fe、NiおよびCoの内から選ばれる1種または2種以上の鉄族元素の合計含有量は1.0〜5.0%とする。
ただ、Cu合金中に生成する金属間化合物の生成量を低減し、被削性能を改善するという観点からは、Ti含有量は2.0%を上限とし、Ti含有量を0.10〜2.0%とすることが望ましい。なお、上記のFe、NiおよびCoのうち、とりわけNiは前述の組織微細化並びに耐摩耗性向上に寄与する効果が大きい。そのため、Niは必須添加とするのが望ましく、その場合のNiの下限値は1.5%にすれば良い。
Crは、Cu合金素地に固溶し、固溶強化により素地の強度を高め、金属間化合物生成量の減少に伴うCu合金の強度低下、耐摩耗性の低下を補完するが、0.010%未満の含有量ではその効果が少なく、一方、含有量が0.040%を超えると、金属間化合物として析出し、被削性を低下させるようになることから、Cr含有量は0.010%以上0.040%以下とする。
なお、前記特許文献2には、Cu合金中の合金成分として、Mn:2%以上4.5%以下及びSi:0.5%以上2%以下の添加とともに、Crを0.05%以上0.5%以下添加含有させることが提案されているが、特許文献2におけるCr(およびMn、Si)の添加は、合金中に金属間化合物を形成することによる耐摩耗性の向上を目的としているものであり、金属間化合物の生成の低減化を図る本発明とは、Crを添加する目的、Cu合金中でCrが果たす作用(固溶強化と炭化物の析出・分散による耐摩耗性の向上)は明らかに異なるものである。
Cu合金中のCは、主として、Ti、Cr等の成分元素と反応して炭化物を形成し、素地中に微細に分布することによりCu合金の強度、硬さを高め、耐摩耗性を向上させると同時に被削性を向上させる。
しかし、その含有量が0.0005%未満では、耐摩耗性を向上させるに十分なほど炭化物が形成されず、一方、その含有量が0.010%を超えると、形成される炭化物量が過剰になり、また、炭化物の粗大化により、強度、被削性がともに低下する。
したがって、C含有量は0.0005%〜0.010%とする。
また、耐摩耗性を低下させずに被削性を一段と向上させるという観点からは、Al:2.0%以上6.0%以下で、かつ、Ti:0.10%以上2.0%以下とすることが望ましい。
あるいは、AlとTiとCrのそれぞれの含有量について、(Al+Ti+3Cr)≦8.1%を満足する範囲とすることが望ましい。
これは、すでに述べたように、Cr、Cを合金成分として含有することによって、微細炭化物を形成させてCu合金の強度、耐摩耗性を確保し、その一方、AlとTiの含有量をできるだけ少なくして、被削性を劣化させる金属間化合物の生成を抑制するという理由による。
そして、被削性を一段と向上させた前記成分組成を有するCu合金製シンクロナイザーリングにおいては、ビッカース硬さHVが200以上であり、高硬度、耐摩耗性を備えることに加えて、突切用超硬バイトによる加工個数が3200個以上という被削性が一段とすぐれたものとなる(後記実施例の表3の本発明4〜12の加工個数の数値参照)。
次いで、熱間押出しにより所定の寸法のCu合金製押出しパイプ部材を作製する。
次いで、上記Cu合金製押出しパイプ部材を、所定の幅(高さ)になるように切削加工することによって、所定の成分組成のCu合金からなる所定サイズのCu合金製シンクロナイザーリング(素材)を得ることができる。
また、この発明のCu合金を用いてシンクロナイザーリングを作製するに際し、従来よりも高い加工能率で、しかも、シンクロナイザーリングとして求められる高強度、靱性、耐摩耗性を備えたシンクロナイザーリングを得ることができる。
ついで、このインゴットを所定の長さに切断し、750℃で熱間押出し加工を行い、外径:72mm、内径:54mmのCu合金製押出しパイプを作製した。
ついで、このパイプを、突切用超硬バイト(型式:JIS21型、超硬チップ:ISO M20)を用いて幅10mmで突切加工を施して高さ10mmの本発明リング1〜12を作製した。
さらに、前記本発明リング1〜12についで、内・外径の切削加工を施すことにより、外径:70mm、内径:56mm、高さ:10mmのCu合金製シンクロナイザーリングを作製した。
また、前記で作製した高さ10mmの本発明リング1〜12および比較例リング1〜6の断面について、ビッカース硬さ試験(ただし、荷重:10kg)を行い、ビッカース硬さHVの大小によって、本発明リング1〜12および比較例リング1〜6の耐摩耗性の良否を評価した。
表3に、これらの結果を示す。
特に、請求項2あるいは請求項3の条件を満足する本発明4〜12については、本発明1〜3に比して硬さは若干劣る(HV:204〜214)ものの、すぐれた被削性(加工個数:3283〜3702)を備えている。
2 チャンファー
3 キー溝
Claims (5)
- 質量%で、Zn:25%以上43%以下、Al:2.0%以上8.0%以下、Ti:0.10%以上5.0%以下、Cr:0.010%以上0.040%以下、C:0.0005%以上0.010%以下、Fe、NiおよびCoの内から選ばれる1種または2種以上を合計で1.0%以上5.0%以下含有し、残部Cuおよび不可避不純物からなることを特徴とする被削性に優れたCu合金。
- 請求項1に記載のCu合金において、Alの含有量は2.0%以上6.0%以下、Tiの含有量は0.10%以上2.0%以下であることを特徴とする被削性に優れたCu合金。
- 請求項1に記載のCu合金において、AlとTiとCrのそれぞれの含有量が、(Al+Ti+3Cr)≦8.1%を満足することを特徴とする被削性に優れたCu合金。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のCu合金からなることを特徴とするCu合金製押出しパイプ部材。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のCu合金からなることを特徴とするCu合金製シンクロナイザーリング。
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