JP6176102B2 - 電線の劣化判定方法、電線の劣化判定装置 - Google Patents

電線の劣化判定方法、電線の劣化判定装置 Download PDF

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Description

本発明は、電線の劣化判定方法、電線の劣化判定装置に関する。
電線に用いられる亜鉛めっき鋼より線等は劣化すると、表面の亜鉛めっきが剥がれ、素地の鉄が発錆・減肉し、断線に至ることから、定期的に保守点検を行っている。
上記の保守点検は、双眼鏡等により目視で、電線に生じた発錆の有無を確認しており、断線に直結する錆の進行状況についても、発錆の色から目視で判断している状況である。また、他の保守点検の方法として、X線を用いて電線の透視画像を撮影する方法(特許文献1参照)も提案されている。
特開2005−181188号公報
しかし、上記の双眼鏡等により目視で錆の進行状況を判定する方法は、次のような問題がある。すなわち、亜鉛めっき鋼より線等は、茶褐色の錆が生じてからも、引張強度が断線に至るほどは錆が進行していないため、電線として使用することは可能である。ゆえに、このような錆の状態と断線直前の錆の状態とを判別することは、熟練者でなければ困難である。
また、X線を用いた透視画像を撮影する方法の場合についても、最終的には透視画像をもとに目視で判定せざるを得ない。加えて、電線の規格(材料、断面形状、断面積等)が異なれば許容される引張強度も異なっているので、取り替えるタイミングは、錆の進行状況で判定するのではなく、引張強度で判定する必要がある。そのため、透視画像では、当該電線の劣化度合いを定量的に判定することは、困難である。
そこで、本発明は、主成分として鉄を含有する材料からなる電線の断線を防止するため、その劣化度合いを定量的に判定する方法及び装置を提案することを目的とする。
前述した課題を解決する主たる本発明は、主成分として鉄を含有する材料からなる電線の劣化判定方法であって、電線の表面の摩擦係数を測定する第1工程と、予め取得した電線と略同一の材料からなる試料の摩擦係数と引張強度との関係を示す基準データと、前記第1工程で測定した摩擦係数とに基づいて、前記電線の劣化度合いを判定する第2工程と、を備える電線の劣化判定方法である。
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
本発明によれば、点検者の目視によることなく、測定対象の電線の劣化度合いを定量的に把握し、判定することが可能となる。特に、本発明によれば、測定対象の電線の現在の引張強度を推定することが可能となるので、当該電線の材料、断面形状、断面積等によらず、断線を確実に防止することができる。
本発明の実施形態における電線の保守点検方法を示す図である。 本発明の実施形態における測定装置の外観を示す図である。 本発明の実施形態における測定装置の外観を示す図である。 本発明の実施形態における測定装置の外観を示す図である。 本発明の実施形態における測定装置の内部構成を示す図である。 本発明の実施形態における操作装置の内部構成を示す図である。 摩擦力Fxの測定結果の一例を示す図である。 本発明の実施形態における電線の表面における摩擦係数と引張強度の関係を示す図である。 本発明の実施形態における電線の表面における摩擦係数と引張強度の関係を示す図である。 本発明の実施形態における電線の表面における摩擦係数と引張強度の相関関係を示す図である。 劣化した電線の断面のイメージ図である。 劣化した電線の断面のイメージ図である。 本発明の実施形態における劣化判定結果を示す図である。
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
本実施形態は、主成分として鉄を含有する材料からなる電線について、劣化による引張強度と摩擦係数の変化量が相関関係を有するという理解に基づくものである。そのため、測定対象の電線と略同一の材料からなる試料の摩擦係数と引張強度との関係を示す基準データを予め取得しておく。そして、保守点検の測定時には、測定された電線の表面の摩擦係数と、当該基準データとを比較することによって、当該電線の引張強度を推定し、劣化度合いを判定する方法を採用している。
===劣化判定装置について===
以下、図1〜図4を参照して、本実施形態における劣化判定装置について説明する。
図1は、本実施形態における電線の劣化判定装置を用いて保守点検を行っている様子を示す図である。本実施形態の劣化判定装置は、測定装置100と操作装置200とから構成される。そして、本実施形態の劣化判定装置は、使用者が電線300の測定したい箇所に測定装置100を固定するとともに、操作装置200に指示することによって測定を行う構成となっている。
図2Aは、測定装置100を正面から見た外観を示す図であり、図2Bは、測定装置100を側面から見た外観を示す図である。また、図2Cは、測定装置100が有する接触子100Cの外観を示す図である。尚、図2A、図2B、図2CのX方向は電線300の長手方向、Y方向は電線300の長手方向と直交する水平な方向、Z方向は電線300の長手方向と直交する垂直な方向を表している。尚、以下の説明では、それぞれ単に「X方向」、「Y方向」、「Z方向」と示し、矢印の示す方向を+方向、矢印と逆の方向を−方向を表す。
測定装置100は、電線300の測定箇所の摩擦係数を測定する装置である。測定装置100は、摩擦係数を測定するための測定部100Aを有している。また、測定装置100は、測定竿100Bの先端に装着されており、使用者は、測定竿100Bを持つことにより、測定装置100を任意の測定箇所に設置させることができる。そして、測定装置100の筐体の下部は、−Z方向を向く電線300が長手方向に沿って嵌まる凹部100Eの形状を呈し、使用者が測定装置100の当該凹部100Eに電線300を引っかけることで、電線300の測定箇所に固定することができる。
また、測定部100Aは、図2Cに示すように、測定装置100の電線300との接触位置には、窪み部100Fから測定装置100の筐体の電線300との対向面より突出するように配置されている接触子100Cを有する。接触子100Cは、一例としては電線300と対向する面が平坦面となった、ステンレス鋼からなる寸法がφ10mmの押圧部材である。そして、接触子100Cは、電線300の表面に対向させて、電線300の長手方向と直交する垂直方向(Z方向)、水平方向(X方向)に移動可能となっている(図中T-T’は、接触子100Cが水平方向へ往復動する範囲を示す)。これより、測定装置100は、接触子100Cを電線300の垂直方向(−Z方向)に押圧しつつ、水平方向(±X方向)に移動させるように接触子100Cの動作を制御する。ここで、本実施形態では、接触子100Cには、スポンジからなる軟性部材100Dが取り付けられており、当該軟性部材100Dを介在させて、電線300の表面の摩擦係数を測定している。電線300の断面は略円形状となっているとともに、電線300の表面は劣化により凹凸を有する形状となっており、電線300の表面の摩擦係数を測定する際、測定結果にぶれが生じやすい。しかし、軟性部材100Dを介在させることにより、当該電線300の表面の摩擦係数をより正確に測定することができる構成となっている。尚、軟性部材100Dは、スポンジ以外に布やフィルムであってもよい。
本実施形態の測定装置100の内部構成を図3に示す。
測定装置100は、制御部101、押圧部102、検出器103、通信部104、記憶部105を有している。
制御部101は、CPU等であり、バス等を介して、押圧部102、検出器103、通信部104、記憶部105と接続されている。そして、制御部101は、記憶部105に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、押圧部102、検出器103、通信部104、記憶部105とデータ通信を行うとともに、それらの動作を制御する。
押圧部102は、接触子100C、駆動モータ(不図示)等からなり、駆動モータで接触子100Cを電線300の垂直方向(Z方向)、水平方向(X方向)に移動させることができる構成となっている。すなわち、押圧部102は、駆動モータの駆動力が伝達されると、電線300の表面を−Z方向に押圧するように接触子100Cを移動させる機能と、接触子100Cを±X方向に往復動させる機能を備える。そして、押圧部102は、電線300の表面に対向して配置した接触子100Cにより、電線300の表面に垂直方向(−Z方向)の荷重Fzと、水平方向(±X方向)の摩擦力Fxを与える。検出器103は、ひずみゲージ、起歪体からなるロードセル等であり、押圧部102で与えた摩擦力Fx、荷重Fzをロードセルにより検出し、ホイートストンブリッジ回路等を介して、測定結果を制御部101に出力する。
通信部104は、通信コントローラ等であり、RS−232CやUSB等によるシリアル接続、SCSI等によるパラレル接続、有線や無線によるLAN接続等を利用して、操作装置200と操作指示や測定データ等の送受信を行う。
記憶部105は、揮発性メモリー(RAM)、不揮発性メモリー(フラッシュメモリー)等からなる。そして、記憶部105には、測定装置100を制御するためのコンピュータプログラム、摩擦係数を測定した結果である測定データ、測定条件に対応した押圧部102や検出器103の制御データ等が記憶されている。
本実施形態の操作装置200の内部構成を図4に示す。
操作装置200は、制御部201、入力部202、表示部203、通信部204、記憶部205を有している。
制御部201は、CPU等であり、バス等を介して、入力部202、表示部203、通信部204、記憶部205と接続されている。そして、制御部201は、記憶部205に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて、入力部202、表示部203、通信部204、記憶部205とデータ通信を行うとともに、それらの動作を制御する。
入力部202は、スイッチ、タッチパネル等であり、測定装置100に対する使用者の操作指示を受付ける。
表示部203は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ等であり、後述する劣化判定結果等を表示する。
通信部204は、通信コントローラ等であり、RS−232CやUSB等によるシリアル接続、SCSI等によるパラレル接続、有線や無線によるLAN接続等を利用して、測定装置100と操作指示や測定データ等の送受信を行う。
記憶部205は、揮発性メモリー(RAM)、不揮発性メモリー(フラッシュメモリー)等からなる。そして、記憶部205には、操作装置200を制御するためのコンピュータプログラム、測定装置100から受信した測定データ、後述する基準となる試料における摩擦係数と引張強度の関係を示す基準データ等が記憶されている。
次に、本実施形態の劣化判定装置の動作を説明する。
使用者が操作装置200の入力部202に対して、測定開始の指示を入力した場合、操作装置200の通信部204は、測定装置100に対して操作指示を送信する。
測定装置100の制御部101は、通信部104を介して操作指示を受信すると、電線300の表面の摩擦係数の測定を開始する。具体的には、押圧部102は、電線300の表面に対向して配置した接触子100Cにより、電線300の表面に垂直方向(−Z方向)の荷重Fzと、水平方向(±X方向)の摩擦力Fxを与える。
そして、検知器103は、ロードセルにより、押圧部102が与えた垂直方向の荷重Fzと、水平方向の摩擦力Fxを検出する。
図5に、摩擦力Fxの測定結果の一例を示す。
図5は、押圧部102が駆動モータにより接触子100Cを制御して、垂直方向の荷重Fzを一定に保った状態で、水平方向の摩擦力Fxを増加させていったときのX方向の変位を示している。尚、X方向の変位値は理解容易のため図示しており、本実施形態の検知器103は摩擦力Fxの測定結果のみからA領域を判定し、摩擦係数を算出している。
摩擦力Fxの検出結果は、一般的な摩擦試験と同様に、摩擦力Fxを増加させていったとき、接触子100Cは一定値まではX方向にほぼ変位することなく、摩擦力Fxは一次関数的に増加する(A領域)。そして、一定値に至ったとき(A領域)、摩擦力Fxは低下し、一定の摩擦力FxでX方向に変位するようになる(B領域)。このときのA領域の摩擦力Fxを静摩擦力といい、B領域の摩擦力Fxを動摩擦力という。
本実施形態では、静摩擦力に基づいて、以下の摩擦係数を算出している。具体的には、検出器103は、検出した荷重Fz、静摩擦力の摩擦力Fxに基づいて、摩擦係数を下記式(1)により求める。
摩擦係数=Fx/Fz …(1)
そして、検出器103により取得された摩擦係数は、記憶部105に測定データとして記憶される。加えて、測定装置100の通信部104は、当該測定データを操作装置200に送信する。
操作装置200の制御部201は、測定データの摩擦係数と、以下に説明する、基準データに基づいて、所定の画像処理を行って、劣化判定結果を表示部203に表示させる。これにより、劣化判定装置は、使用者が電線300の劣化状態を判定できる構成としている。すなわち、本劣化判定装置により、電線の劣化度合いを目視によることなく、定量的に判定することが可能となる。
===劣化判定のための基準データついて===
上述したとおり、本実施形態は、主成分として鉄を含有する材料からなる電線について、劣化による引張強度と摩擦係数の変化量が相関関係を有するという理解に基づくものである。そのため、保守点検の対象となる電線の引張強度を推定するために、当該電線と略同一の断面形状、断面積であって、略同一の材料からなる試料について、予め摩擦係数と引張強度との関係を示す基準データを取得しておく必要がある。尚、引張強度とは、材料に引張応力(荷重/断面積)を与えていったときに、材料が破断するときの応力を意味する。
次に、基準データを取得する方法について説明する。
以下は、本実施形態で取得した基準データの一例である。本実施形態では、基準データの取得に用いる試料は、保守点検の対象となる電線300と同一の断面形状、断面積の亜鉛めっき鋼より線(JIS G3537 素線数/素線径:7/2.60、鋼より線計算断面積:37.2mm、引張強度:44kN)を用いた。また、当該試料の主成分として鉄を含有する材料及び亜鉛めっき膜についても、保守点検の対象となる電線300と同一の材料が用いられている。尚、亜鉛めっき鋼より線の初期の摩擦係数は、0.09であった。
本実施形態では、押圧荷重:150g、接触子移動速度:48mm/minの測定条件で摩擦係数を測定した。また、本実施形態では、引張速度:500mm/分、標線間距離:25mm、温度:23℃で引張試験を行った。そして、試料の表面の摩擦係数が0.097、0.363、0.6、0.7、0.972となっている試料について、各3点を引張試験で測定し、それらの平均値を求めた。尚、試料の表面の摩擦係数が0.097、0.363、0.6、0.7、0.972となっている試料のいずれについても、各3点の引張強度は、平均値と大きくはずれた結果は見られなかった。
本実施形態において試料の表面の摩擦係数と引張強度を測定した結果を図6Aに示す。試料A、試料B、試料Cは、上記試料のうち、摩擦係数が0.097、0.363、0.972の試料に対応し、順に電線が劣化した状態を示している。ここで、図中の色は試料を目視で観察した場合の色を意味する。図6Bは、試料A、試料B、試料Cについて目視で観察したときの外観を示す写真である。尚、本実施形態では、電線の引張強度が20kNより下回ったとき、自重等による破断のおそれがあり、取り替えが必要と判定している。
試料Aは、電線の劣化が小さい状態を示し、電線の表面は亜鉛でほぼ完全に被覆された状態である。試料Aの表面が白色になっているのは、表面の亜鉛が酸化しているためである。このとき、引張強度は、初期状態(44kN)とほとんど変化はなく、電線は破断のおそれはないため、取替は不要である。
試料Bは、電線の劣化が試料Aよりも進んだ状態を示す。試料Bは、表面にめっきした亜鉛の多くは消失しており、摩擦係数が試料Aよりも上昇している。表面が茶褐色になっているのは、酸化した鉄(Fe)が析出しているためと考えられる。また、図6Bの写真より、試料Bの表面には、試料Aの表面よりも凹凸が形成されていることが分かる。しかし、このとき、引張強度は、初期状態(44kN)から多少低下しているものの、電線が破断するほどは低下しておらず、取替は不要である。
試料Cは、電線の劣化が試料Bよりも進んだ状態を示す。試料Cでは、摩擦係数が試料Bよりもさらに上昇している。試料Cの表面は、試料Bよりも黒ずんだこげ茶色となっている。これは、鉄の酸化物として、Feに加え、Feも析出しているためと考えられる。また、図6Bの写真より、試料Cの表面には、試料Bの表面よりも大きな凹凸が形成されていることが分かる。このとき、試料の引張強度は、初期状態(44kN)の20分の1以下まで低下しており、断線の危険があるため、電線を取り替える必要がある。
次に、電線の摩擦係数と引張強度の相関関係を示す。
図7は、上記した表面の摩擦係数が0.097、0.363、0.6、0.7、0.972となっている試料の引張強度の測定結果をグラフ上にプロットしたものである。摩擦係数が上昇するにつれて引張強度が低下していることが分かる。上述したとおり、0.097、0.363、0.6、0.7、0.972となっている試料の各3点について引張強度を測定したところ、同程度の値を取得することができた。
このように、本実施形態は、当該電線と略同一の断面形状、断面積であって、略同一の材料からなる試料については、劣化による引張強度と摩擦係数の変化量が相関関係を有することを実験データより明らかにするものである。そして、本実施形態では、当該理解に基づいて、測定対象となる電線と略同一の断面形状、断面積であって、略同一の材料からなる試料について、基準データを取得しておくことによって、測定対象の電線の引張強度を推定するという方法を採用する。
ここで、劣化の度合(錆の進行状態)と、電線の引張強度の低下、及び摩擦係数の上昇の関係について考察する。図8Aは劣化した電線の短手方向の断面(YZ方向に切断した断面)のイメージ図、図8Bは劣化した電線の長手方向の断面(XZ方向に切断した断面)のイメージ図を示す(図中A-A’は、切断箇所を示す)。
電線の引張強度と電線の表面の凹凸は、ともに劣化の進行にしたがって、一次関数的に変化することが知られている。すなわち、主成分として鉄を含有する材料の錆が進行した場合、孔食や表面粗が生じるため、局所的に応力がかかり、すべりが発生しやすい状態となる。加えて、鉄の酸化物である錆はコロイド凝集体より結合力が弱い状態である。そのため、劣化が進行するにしたがって、電線の引張強度は低下することになる。
また、錆が進行すると、新たな表面が露出し、露出面がさらに発錆する。結果、劣化が進行するほど、電線の表面の凹凸が大きくなることになる。加えて、発生したFe等の錆は表面に付着する。このとき、錆は鉄よりも摩擦係数が大きいことに加え、凝着して粒径が大きくなるため、凹凸も大きくなる。そのため、劣化が進行するにしたがって、電線の表面の摩擦係数は上昇することになる。
一方、電線の表面の摩擦係数、及び電線の引張強度の変化量は、凹凸の形状、錆の付着態様等により異なり、規則性を有さないと考えられていた。本実施形態は、その規則性を実験より明らかにしたものである。特に、摩擦係数の測定の際に、軟性部材を介在させた場合、相関関係を正確に取得することができた。そのため、本実験結果は、電線の引張強度の変化量、及び電線の表面の摩擦係数の変化量が、ともに、錆により発生する凹凸の形状が要因の一つとなっていることに起因すると考えられる。
===劣化判定結果について===
図9に、使用者が劣化判定装置を用いて電線300の劣化判定を行ったときの劣化判定結果の一例を示す。
上述したとおり、本実施形態では、使用者が操作装置200の入力部202に対して、測定開始の指示を入力した場合、測定装置100による測定が行われる。そして、測定装置100による測定後、測定装置100から操作装置200に対して、測定箇所における摩擦係数に関する測定データが送信される。
そして、操作装置200の制御部201は、当該測定した摩擦係数と、基準データとに基づいて、図9に示す画面データを生成する。操作装置200の記憶部205には、当該測定箇所における前回の測定データも記憶されており、図9に示す画面データには、基準データ上に、前回の測定結果と今回の測定結果があわせて表示されている。劣化判定装置の使用者は、当該画面を参照して、電線300を取り替えるか否かを判定することになる。
このように、劣化判定結果は、測定した電線300の表面における摩擦係数と、基準データに基づいて、測定装置100の使用者が判定可能となるように、基準データと当該測定した摩擦係数とを重ね合わせて提示するものであってもよいし、単に電線300の取替が必要か不必要かを提示するものであってもよい。
また、本実施形態では、基準データを参照して、画面データ等を出力する際、表面における摩擦係数と、対応する引張強度のデータをすべて参照する態様となっている。しかしながら、引張強度に基づいて決定された取替が必要か、取替が不要かを特定する、表面における摩擦係数の規定値のみを参照してもよい。例えば、測定した表面における摩擦係数が、0.6を超えているか否かのみを判定するものであってもよい。
尚、本実施形態では、測定した表面における摩擦係数が0.6程度のときに、引張強度が20kNとなっているが、測定条件に応じて、摩擦係数は変化する(例えば、軟性部材を介在させているか否か等)。そのため、基準データの摩擦係数は、精密な測定機器及び/又は測定条件で測定された値を用いるのではなく、保守点検の測定の際と、略同一の条件下で測定された値を用いた方がより正確に引張強度を判定することができる。
以上、本発明の劣化判定方法によれば、電線の表面の摩擦係数に基づいて、定量的に電線の劣化度合いを判定することが可能となる。したがって、点検者の熟練度等に依存することなく、電線の保守点検等を実施することができる。
また、電線は、規格(材料、断面形状、断面積等)ごとに断線に至るまでの引張強度は異なるため、電線の断面の透過画像等では、実際に取り替えるべき引張強度に至っているか否かを判定することは困難である。しかし、本発明によれば、当該電線と略同一の断面形状、断面積であって、略同一の材料からなる試料について、基準データを取得しておけば、摩擦係数から引張強度を推定することができるため、当該電線に適したタイミングで、電線の取り替えを行うことができる。
尚、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
上記実施形態では、亜鉛めっき鋼より線を用いたが、主成分として鉄を含有する材料からなる電線であれば、本発明の劣化判定方法は適用可能である。主成分として鉄を含有する材料からなる電線であれば、上記実施形態と同様に、劣化による摩擦係数と引張強度の変化量に相関関係が認められるためである。これは、上述したように、電線の引張強度の変化と、電線の表面の摩擦係数の変化は、ともに、錆により発生する凹凸の形状が大きな要因となっているためと考えられる。このときの主成分として鉄を含有する材料としては、純粋な鉄、鉄に炭素を含有させた鋼、鉄に他の金属を含有させた合金であってもよい。
また、上記実施形態と同様に、主成分として鉄を含有する材料の表面上に亜鉛めっきがなされた電線であってもよいし、鉄が露出した電線であってもよい。その他、鉄上に絶縁被膜が形成されたものであってもよい。これは、鉄が露出した後においては、初期の表面状態によらず、摩擦係数と引張強度は相関関係を有しているからである。
また、上記実施形態では、電線の表面を押圧する荷重と、静摩擦力に基づいて、電線の表面の摩擦係数を算出した。しかしながら、静摩擦力に代えて、動摩擦力に基づいて、摩擦係数を算出してもよい。これは、静摩擦力に代えて、動摩擦力を用いても、劣化による電線の表面の凹凸に基づく、摩擦係数の上昇を測定することができるからである。
また、上記実施形態では、電線の表面の摩擦係数を測定するためにロードセルにより摩擦力を検出する測定装置を用いた。しかし、電線の表面の摩擦係数を定量的に把握できれば、他の方法を用いてもよい。例えば、プローブで表面状態を測定する摩擦力顕微鏡(FFM)等であってもよい。
===結言===
以上より、本実施形態は、次のように記載できる。
本実施形態は、主成分として鉄を含有する材料からなる電線300の劣化判定方法であって、電線300の表面の摩擦係数を測定する第1工程と、予め取得した電線300と略同一の材料からなる試料の摩擦係数と引張強度との関係を示す基準データと、第1工程で測定した摩擦係数とに基づいて、電線300の劣化度合いを判定する第2工程と、を備える電線の劣化判定方法を開示するものである。
これによって、定量的に電線300の劣化度合いを判定することが可能となる。また、摩擦係数から引張強度を推定することができるため、当該電線300の規格に適したタイミングで、電線の取り替えを行うことができる。
ここで、第1工程は、電線300の摩擦係数を測定する測定装置100と電線300との間に軟性部材100Dを介在させて、電線300の摩擦係数を測定してもよい。
これによって、電線300の断面が略円形状となっているとともに、電線300の表面は劣化により凹凸を有する形状となっていても、電線300の表面摩擦係数の変化を正確に測定可能となる。
ここで、主成分として鉄を含有する材料からなる電線300は、亜鉛めっき鋼より線であってもよい。
より線の場合、1本線よりも複雑な断面形状となるため、X線等の透過画像を撮影して、電線の劣化度合いを定量的に判定することが困難である。しかし、本実施形態は、電線の表面の摩擦係数を測定するものであるから、より線であるか1本線であるかによらず、電線の劣化度合いを定量的に判定することができる。
また、本実施形態は、主成分として鉄を含有する材料からなる電線300の劣化判定装置であって、電線300の表面の摩擦係数を測定する測定装置100の押圧部102、検知器103から構成される測定部100Aと、予め取得した電線300と略同一の材料からなる試料の摩擦係数と引張強度との関係を示す基準データと、測定部100Aで測定した摩擦係数とに基づいて、電線300の劣化度合いを判定可能に提示する操作装置200の制御部201から構成される提示部と、を備える電線の劣化判定装置を開示するものである。
これによって、定量的に電線300の劣化度合いを判定することが可能となる。また、摩擦係数から引張強度を推定することができるため、当該電線300の規格に適したタイミングで、電線の取り替えを行うことができる。
ここで、当該劣化判定装置は、上記実施形態で記載したように、測定装置100と操作装置200を別装置とする複数の装置から構成されてもよいし、測定装置単体から構成されてもよい。
また、当該劣化判定装置の測定部100Aは、上記実施形態では、ロードセルにより摩擦係数を測定するため、押圧部102、検知器103から構成されるが、電線300の表面における摩擦係数を測定する機能を有していれば、他の機構より構成されてもよい。また、当該劣化判定装置の提示部は、測定装置100が備えていてもよい。具体的には、測定装置100の制御部101が、測定した電線300の表面における摩擦係数と、基準データに基づいて、上記実施形態の図9に対応する画像データを生成し、操作装置200に表示させたり、サーバ装置を介して他の端末装置に表示させるものであってもよい。
ここで、測定部100Aは、電線300との接触位置に配置された接触子100Cに軟性部材100Dを有し、測定部100Aは、軟性部材100Dを介在させて、電線300の摩擦係数を測定するものであってもよい。これによって、電線300の断面が略円形状となっているとともに、電線300の表面は劣化により凹凸を有する形状となっていても、電線300の表面の摩擦係数の変化を正確に測定可能となる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
100…測定装置、100A…測定部、100B…測定竿、100C…接触子、100D…軟性部材、100E…凹部、100F…窪み部、200…操作装置、300…電線

Claims (5)

  1. 主成分として鉄を含有する材料からなる電線の劣化判定方法であって、
    前記電線の表面の摩擦係数を測定する第1工程と、
    予め取得した前記電線と略同一の材料からなる試料の摩擦係数と引張強度との関係を示す基準データと、前記第1工程で測定した摩擦係数とに基づいて、前記電線の劣化度合いを判定する第2工程と、
    を備える電線の劣化判定方法。
  2. 前記第1工程は、前記電線の摩擦係数を測定する測定装置と前記電線との間に軟性部材を介在させて、前記電線の摩擦係数を測定する
    ことを特徴とする請求項1に記載の電線の劣化判定方法。
  3. 前記主成分として鉄を含有する材料からなる電線は、亜鉛めっき鋼より線である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電線の劣化判定方法。
  4. 主成分として鉄を含有する材料からなる電線の劣化判定装置であって、
    前記電線の表面の摩擦係数を測定する測定部と、
    予め取得した前記電線と略同一の材料からなる試料の摩擦係数と引張強度との関係を示す基準データと、前記測定部で測定した摩擦係数とに基づいて、前記電線の劣化度合いを判定可能に提示する提示部と、
    を備える電線の劣化判定装置。
  5. 前記測定部は、前記電線との接触位置に配置された接触子に軟性部材を有し、
    前記測定部は、前記軟性部材を介在させて、前記電線の表面の摩擦係数を測定する
    ことを特徴とする請求項4に記載の電線の劣化判定装置。
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