本発明に係るイムノアッセイ分析方法は、分析チップに励起光を照射し、分析チップに配置された被検出物質を標識する蛍光物質の励起によって発生する蛍光を受光センサーにより検出することで、前記被検出物質の量を測定する。上記イムノアッセイ分析方法の例には、表面プラズモン共鳴蛍光分析(SPFS)法が含まれる。以下、本発明の実施の一形態として、SPFS法による実施形態を説明する。まず、本発明の一実施形態に係る表面プラズモン共鳴蛍光分析装置(以下「SPFS装置」とも言う)を説明する。
<SPFS装置>
図1は、本発明の一実施の形態に係るSPFS装置100の構成を示す模式図である。SPFS装置100は、誘電体プリズム上の金属膜に対して励起光を表面プラズモン共鳴が生じる角度で入射することで、金属膜表面上に局在場光(一般に「増強されたエバネッセント波」または「増強電場」とも呼ばれる)を発生させることができる。この局在場光により金属膜上に配置された被検出物質を標識する蛍光物質が選択的に励起され、蛍光物質から放出された蛍光の光量を検出することで、被検出物質の濃度または量を検出する。
SPFS装置100は、図1に示されるように、励起光学系ユニット110、受光光学系ユニット120、送液ユニット130、分析チップ移動機構140、スポット拡大手段150および制御部160から構成される。SPFS装置100は、被検出物質の測定では、不図示のチップホルダーに分析チップ10を装着した状態で使用される。そこで、分析チップ10について先に説明し、その後にSPFS装置100の各構成要素について説明する。
分析チップ10は、図1に示されるように、入射面21、成膜面22および出射面23を有するプリズム20と、成膜面22に形成された金属膜30と、成膜面22または金属膜30上に配置された流路蓋40とを有する。通常、分析チップ10は、分析のたびに交換される。分析チップ10は、好ましくは、各片の長さが数mm〜数cmである構造物であるが、「チップ」の範疇に含まれないより小型の構造物またはより大型の構造物であってもよい。
プリズム20は、励起光αに対して透明な誘電体からなる。プリズム20は、入射面21、成膜面22および出射面23を有する。入射面21は、励起光学系ユニット110からの励起光αをプリズム20の内部に入射させる。成膜面22の上には、金属膜30が形成される。プリズム20の内部に入射した励起光αは、金属膜30で反射する。より具体的にはプリズム20と金属膜30との界面(成膜面22)で反射する。出射面23は、金属膜30で反射した励起光αをプリズム20の外部に出射させる。
プリズム20の形状は、特に限定されない。本実施の形態では、プリズム20の形状は、台形を底面とする柱体である。台形の一方の底辺に対応する面が成膜面22であり、一方の脚に対応する面が入射面21であり、他方の脚に対応する面が出射面23である。底面となる台形は、等脚台形であることが好ましい。これにより、入射面21と出射面23とが対称になり、励起光αのS波成分がプリズム20内に滞留しにくくなる。
入射面21は、励起光αが励起光学系ユニット110に戻らないように形成される。励起光αが励起光源であるレーザーダイオードに戻ると、レーザーダイオードの励起状態が乱れてしまい、励起光αの波長や出力が変動してしまうからである。そこで、理想的な増強角を中心とする走査範囲において、励起光αが入射面21に垂直に入射しないように、入射面21の角度が設定される。たとえば、入射面21と成膜面22との角度および成膜面22と出射面23との角度は、いずれも約80°である。
なお、分析チップ10の設計により共鳴角(その極近傍にある電場増強角)が凡そ決まる。設計要素は、プリズム屈折率、金属の屈折率、金属の膜厚、金属の消衰係数、励起波長などである。被検出物質によって共鳴角がシフトするが、その量は数度未満である。
プリズム20は、複屈折特性を少なからず有する。プリズム20の材料の例には、樹脂およびガラスが含まれる。プリズム20の材料は、好ましくは、屈折率が1.4〜1.6であり、かつ複屈折が小さい樹脂である。
金属膜30は、プリズム20の成膜面22上に形成されている。これにより、成膜面22に全反射条件で入射した励起光αの光子と、金属膜30中の自由電子との間で相互作用、すなわち表面プラズモン共鳴が生じ、金属膜30の表面上に局在場光を生じさせることができる。
金属膜30の素材は、表面プラズモン共鳴を生じさせる金属であれば特に限定されない。金属膜30の素材の例には、金、銀、銅、アルミ、これらの合金が含まれる。本実施の形態では、金属膜30は、金薄膜である。金属膜30の形成方法は、特に限定されない。金属膜30の形成方法の例には、スパッタリング、蒸着、メッキが含まれる。金属膜30の厚みは、特に限定されないが、30〜70nmの範囲内が好ましい。
また、図1では図示しないが、金属膜30のプリズム20と対向しない面には、被検出物質を捕捉するための捕捉体が固定されていてもよい。捕捉体を固定することで、被検出物質を選択的に検出することが可能となる。たとえば、捕捉体は、金属膜30上の所定の領域に均一に固定されている。捕捉体の種類は、被検出物質を捕捉することができれば特に限定されない。たとえば、捕捉体は、被検出物質に特異的な抗体またはその断片である。
流路蓋40は、金属膜30のプリズム20と対向しない面上に(後述する流路を隔てて)配置されている。金属膜30がプリズム20の成膜面22の一部にのみ形成されている場合は、流路蓋40は、成膜面22上に(後述する流路を隔てて)配置されていてもよい。流路蓋40は、金属膜30(およびプリズム20)と共に、被検出物質の溶液などの試料液や、蛍光物質の溶液および洗浄液などの薬液が流れる流路を形成する。捕捉体は、不図示の流路内に露出している。流路の両端は、流路蓋40の上面に形成された不図示の注入口および排出口)とそれぞれ接続されている。流路内へ試料液が注入されると、流路内において、上記試料液は捕捉体に接触する。
流路蓋40は、金属膜30上から放出された光(プラズモン散乱光および蛍光)に対して透明な材料からなる。流路蓋40の材料の例には、樹脂が含まれる。これらの光を受光光学系ユニット120に導くことができれば、流路蓋40は、少なくとも、蛍光物質からの蛍光を外部に取り出す面が、光学的に透明であれば、流路蓋40の一部は、不透明な材料で形成されていてもよい。流路蓋40は、例えば、両面テープや接着剤による接着や、レーザー溶着、超音波溶着、クランプ部材を用いた圧着などにより金属膜30またはプリズム20に接合されている。
このように構成される分析チップ10は、流路内に直接もしくは流路内での反応により蛍光物質が供給される。そして金属膜30上に蛍光物質が供給された分析チップは、このチップホルダーに所定の姿勢で設置、保持される。
励起光学系ユニット110は、プリズム20を介して金属膜30に向けて励起光αを照射する。励起光学系ユニットは、例えば、光源ユニット111、角度走査機構112および光源制御部113によって構成される。ここで、「励起光」とは、蛍光物質を直接または間接的に励起させる光である。たとえば、励起光αは、プリズムを介して金属膜30に向けて表面プラズモン共鳴が生じる角度で照射されて金属膜30表面上に局在場光を生じさせる光であり、この局在場光により蛍光物質を間接的に励起させる光である。
光源ユニット111は、コリメートされ、かつ波長および光量が一定の励起光αを、金属膜30表面における照射スポットの形状が略円形となるように出射する。光源ユニット111は、例えば、励起光の光源、ビーム整形光学系、APC機構および温度調整機構(いずれも不図示)を有する。励起光αの光源は、例えば、レーザーダイオード(以下「LD」とも言う)である。
上記LDは、チップホルダーに保持された分析チップ10の入射面21に向けて励起光α(シングルモードレーザー光)を出射する。より具体的には、光源ユニット111は、分析チップ10の金属膜30に対して励起光αが表面プラズモン共鳴を生じる角度で、金属膜30に対するP波のみを入射面21に向けて出射する。
なお、光源ユニット111に含まれる光源の種類は、特に限定されず、LDでなくてもよい。光源の例には、発光ダイオード、水銀灯、その他のレーザー光源が含まれる。光源から出射される光がビームでない場合は、光源から出射される光は、レンズや鏡、スリットなどによりビームに変換される。また、光源から出射される光が単色光でない場合は、光源から出射される光は、回折格子などにより単色光に変換される。さらに、光源から出射される光が直線偏光でない場合は、光源から出射される光は、偏光子などにより直線偏光の光に変換される。
光源ユニット111における上記ビーム整形光学系は、例えば、コリメーター、バンドパスフィルター、直線偏光フィルター、半波長板、スリットおよびズーム手段によって構成される。ビーム整形光学系は、上記の構成要素の全てによって構成されていてもよいし、一部によって構成されていてもよい。コリメーターは、LDから出射された励起光αをコリメートする。LDは、射出状態で既に形状が扁平であり、且つ偏光方向が概ね一方に偏っている。コリメート化しても、該LDは、全反射条件(浅い角度)で照射される位置において照射面が円形になるように、短軸側から入射するように保持されている。
バンドパスフィルターは、光源ユニット111からの励起光αを中心波長のみの狭帯域光にする。光源ユニット111からの励起光αは、若干の波長分布幅を有しているためである。直線偏光フィルターは、光源ユニット111からの励起光αを完全な直線偏光の光にする。半波長板は、金属膜30にP波成分が入射するように励起光αの偏光方向を調整する。スリットおよびズーム手段は、金属膜30表面における照射スポットの形状が所定サイズの円形となるように、励起光αのビーム径や輪郭形状などを調整する。
光源ユニット111における上記APC機構は、コリメートされた後の励起光αから分岐させた光の光量を不図示のフォトダイオードなどで検出し、励起光αの光量が一定になるように、回帰回路で投入エネルギーを制御することで、出力を一定に制御している。
光源ユニット111における上記温度調整機構は、例えば、ヒーターやペルチェ素子などである。LDの出射光の波長およびエネルギーは、温度によって変動する。このため、温度調整機構でLDの温度を一定に保つことにより、当該波長を一定に制御する。
角度走査機構112は、金属膜30(プリズム20と金属膜30との界面(成膜面22))への励起光αの入射角を調整する。角度走査機構112は、プリズム20を介して金属膜30(成膜面22)の所定の位置に向けて所定の入射角で、励起光αを照射するために、励起光αの光軸とチップホルダーとを相対的に回転させる。
たとえば、角度走査機構112は、光源ユニット111を励起光αの光軸と直交する軸(図1の紙面に対して垂直な軸)を中心として回転させる。このとき、入射角を走査しても金属膜30(成膜面22)上での照射位置がほとんど移動しないように、回転軸の位置を設定する。
光源ユニット111を入射光軸と直交する軸を回転軸として、光源ユニット111を回転(1軸回転)して励起光αの入射角度を走査することで、プリズム20に、入射角を変えて励起光αを照射する。当該入射角度の走査のための回転を行っても、分析チップ10の金属膜30(成膜面22)上での照射位置がほとんどずれないように上記回転軸の位置を設定する。回転中心の位置を、入射角の走査範囲の両端における2つの励起光αの光軸の交点近傍(成膜面22上の照射位置と入射面21との間)に設定することで、照射位置のズレを極小化することができる。
上記走査によりプラズモン散乱光の最大光量を得られる角度が増強角度であり、その増強角度またはその近傍の角度に励起光αの入射角度を設定することで、大きな強度の蛍光を測定することが可能となる。なお、分析チップに付随のプリズムの材質、形状、金属膜厚、流路内の流体の屈折率などにより基本の励起光入射条件が決まるが、流路内の蛍光物質の材質や量、プリズム側の誤差などにより若干条件のゆらぎが発生する。このため、測定毎に最適な増強角度を求めることが好ましい。増強角度は、例えば、小数点第一位まで求められる。
光源制御部113は、光源ユニット111を構成する前述した各種機器を作動させ、制御し、光源ユニット111の出射光の出射を制御する。光源制御部113は、例えば、演算装置、制御装置、記憶装置、入力装置および出力装置を含む公知のコンピュータやマイコンなどによって構成される。
受光光学系ユニット120には、金属膜30(成膜面22)への励起光αの照射によって生じた蛍光が入射する。受光光学系ユニット120は、例えば、受光ユニット121、位置切り替え機構122およびセンサー制御部123によって構成される。
受光ユニット121は、分析チップ10の金属膜(成膜面22)の法線方向に配置される。受光ユニット121は、例えば、第一レンズ124、光学フィルター125、第二レンズ126および受光センサー127によって構成される。
第一レンズ124は、例えば、集光レンズであり、金属膜30上から出射される光(例えば、当該光は、蛍光の測定時であれば蛍光を含む)を集光する。第二レンズ126は、例えば、結像レンズであり、第一レンズ124で集光された光を受光センサー127の受光面に再結像させる。両レンズの間の光路は、略平行な光路になっている。光学フィルター125は、両レンズの間の位置に配置している。
光学フィルター125は、第一レンズ124で集光された光のうち、蛍光成分のみを受光センサー127に導き、高いS/N比で当該蛍光成分を検出するために、励起光成分(プラズモン散乱光)を除去する。光学フィルター125の例には、短波長カットフィルターおよびバンドパスフィルターが含まれる。光学フィルター125は、例えば、所定の光成分を反射することで除去する多層膜からなるフィルターであるが、所定の光成分を一般的には吸収することで除去する色ガラスフィルターであってもよい。
受光センサー127は、微小濃度の被検出物質からの微弱な蛍光を検出することが可能な、高い感度を有する。受光センサー127の例には、光電子増倍管(PMT)およびアバランシェ・フォトダイオード(APD)が含まれる。
位置切り替え機構122は、光学フィルター125の位置を、受光ユニット121における光路中の位置または当該光路から外れた位置に切り替える。位置切り替え機構122は、例えば、回転駆動部と、光学フィルター125を有するターンテーブルやラックアンドピニオンなどの、回転運動によって光学フィルター125を上記光路に対して進出、後退させる公知の機構とによって構成される。
センサー制御部123は、受光センサー127の出力値の検出や、検出した出力値による受光センサー127の感度の管理、適切な出力値を得るための受光センサー127の感度の変更、などを制御する。センサー制御部123は、例えば、演算装置、制御装置、記憶装置、入力装置および出力装置を含む公知のコンピュータやマイコンなどによって構成される。
送液ユニット130は、分析チップ10に試料液または薬液を供給する。送液ユニット130は、例えば、薬液チップ131、シリンジポンプ132および送液ポンプ駆動機構133によって構成される。
薬液チップ131は、分析チップ10に供給されるべき試料液および薬液を収容する容器である。薬液チップ131は、通常、試料液および薬液の種類に応じて複数配置される。
シリンジポンプ132は、シリンジ134と、シリンジ134内を往復動作可能なプランジャー135とによって構成される。シリンジポンプ132は、プランジャー135の往復運動によって、試料液または薬液の吸引および排出が定量的に行われる。
シリンジ134が交換可能であると、シリンジ134の洗浄が不要となる。このため、不純物の混入などの影響を押さえる観点から好ましい。シリンジ134が交換可能に構成されていないと、シリンジ134内を洗浄する構成をさらに有することにより、シリンジ134を交換せずに使用することが可能となる。このため、シリンジ134の消費を抑制する観点から好ましい。
送液ポンプ駆動機構133は、例えば、プランジャー135の駆動装置と、シリンジポンプ132の移動装置とによって構成される。
シリンジポンプ132の駆動装置は、プランジャー135を上記往復運動させるための装置であり、例えば、ステッピングモーターを含む。ステッピングモーターを含む当該駆動装置は、シリンジポンプ132の送液量や送液速度を一定に管理し、分析チップ10の残液量を一定に管理する観点から好ましい。
シリンジポンプ132の移動装置は、例えば、シリンジポンプ132を、シリンジ134の軸方向(例えば垂直方向)と、当該軸方向を横断する方向(例えば水平方向)とに自在に動かす装置である。シリンジポンプ132の移動装置は、例えば、ロボットアーム、2軸ステージまたは上下動自在なターンテーブルによって構成される。
送液ユニット130は、シリンジ134の先端の位置を検出する装置をさらに有することが、シリンジ134と分析チップ10との相対的な高さを一定に調整し、分析チップ10内での残液量を一定に管理する観点から好ましい。
送液ユニット130は、薬液チップ131より各種の試料液または薬液を吸引し、後述する分析チップ移動機構140で送液操作位置(送液ユニット130によって分析チップ10に対して試料液または薬液が供給または排出される位置)まで搬送された分析チップ10まで移動し、分析チップ10における試料液または薬液を収容すべき液収容部にシリンジ134の先端部を挿入して、当該試料液または薬液を分析チップ10に供給する。この際、プランジャー135を、分析チップ10に対して進出、後退する方向、例えば上下方向、に動かすことで、分析チップ10中の流路内を液が往復し、当該流路内の液が攪拌される。上記の操作を行う観点から、シリンジ134が上記液収容部を保護する多層フィルムを貫通した時に、シリンジ134によって上記液収容部が密閉されるように、分析チップ10およびシリンジ134が構成されていることが好ましい。
上記の操作により、当該液の濃度の均一化や、分析チップ10の所定位置への被検出物質の固定化反応の促進などが行われる。反応後の溶液は、再びシリンジポンプ132で吸引され、薬液チップ131などに排出される。上記の動作の繰り返しにより、各種試料液または薬液による反応や洗浄などを実施し、分析チップ10の所定位置に、被検出物質が配置される。
分析チップ移動機構140は、少なくとも分析チップ10を、測定位置(より詳しくは、励起光学系ユニット110によって励起光αが照射され、発生した蛍光を受光光学系ユニット120で検出できる位置)または上記送液操作位置に自在に搬送する。分析チップ移動機構140は、例えば、搬送ステージによって構成される。分析チップ10は、チップホルダーを介して搬送ステージ上に配置される。搬送ステージは、例えば、ステッピングモーターなどで駆動させる。それにより、分析チップ10は、上記測定位置と上記送液操作位置との間を自在に移動し、また当該位置のそれぞれに正確に固定される。
分析チップ移動機構140は、スポット拡大手段150を分析チップ10と同様に有していてもよい。スポット拡大手段150は、例えば、分析チップ10が送液操作位置に配置されたときは測定位置に配置されるように、分析チップ移動機構140によって分析チップ10と入れ違いで測定位置に搬送されることが好ましい。
スポット拡大手段150は、光源ユニット111が出射した励起光αを、第二のスポットの想定される入射領域を含む第一のスポットとなるようにビーム径を拡大させる。「第一のスポット」とは、スポット拡大手段150を介して出射される励起光αの、受光センサー127の受光面における入射領域である。「第二のスポット」とは、受光センサー127の受光面における蛍光の入射領域である。スポット拡大手段150は、例えば、光源ユニット111から照射される励起光αが入射する拡散板151と入射した励起光αを受光ユニット121に向けてビーム径を拡大させる凹レンズ152とによって構成される。
制御部160は、角度走査機構112、光源制御部113、位置切り替え機構122、センサー制御部123、送液ポンプ駆動機構133および分析チップ移動機構140を駆動させ、制御する。制御部160は、例えば、演算装置、制御装置、記憶装置、入力装置および出力装置を含む公知のコンピュータやマイコンなどによって構成される。
次に、SPFS装置100におけるシーケンス制御の一例に基づき、SPFS装置100によるSPFS方法の実施を説明する。
<基本測定動作>
制御部160は、図3に示されるように、SPFS装置100を構成する前述の各装置などの電源を入れ、または待機モードから復帰させる(ステップ301)。そして、制御部160は、分析チップ移動機構140により、スポット拡大手段150を測定位置に配置させる(ステップ302)。また、制御部160は、励起光学系ユニット110に事前の光照射Aを行わせる。事前の光照射Aについては、後に説明する。
一方、送液操作位置では、分析チップ10の洗浄が必要に応じて行われる。分析チップ10は、分析チップ10の流路内に保湿剤が塗布されている場合がある。たとえば、分析チップ10の金属膜30上に、被検出物質を捕捉する固相膜が配置されている場合では、当該固相膜での当該被検出物質を捕捉する感度が長期間の固定の間に低下しないよう、通常、当該固相膜に保湿剤が塗布される。当該固相膜は、例えば、前述した捕捉体を含む膜である。当該固相膜が金属膜30に配置されている場合、制御部160は、送液ユニット130に、分析チップ10の流路内の保湿剤を洗浄させる(ステップ303)。当該洗浄により、分析チップ10における被検出物質を捕捉する高い感度が回復する。
次いで、制御部160は、送液ユニット130に、免疫反応(1次反応)で、被検出物質を含む液を薬液チップ131から分析チップ10の流路内に供給させる(ステップ304)。それにより、上記流路中(金属膜30の当該流路側表面の固相膜)に被検出物質が捕捉される。捕捉後、余剰な被検出物質液は、上記流路から除去される。そして上記流路は、必要に応じて適当な洗浄液で、送液ユニット130によって洗浄される。
次いで、制御部160は、分析チップ移動機構140に、分析チップ10を照射位置に配置させる(ステップ305)。そして、制御部160は、励起光学系ユニット110と受光光学系ユニット120を協働させて、増強角を測定させ(ステップ306)、求めた増強角の入射角度となるよう、励起光学系ユニット110に、光源ユニット111の照射角度を設定させる(ステップ307)。
ここで、増強角の測定について、さらに説明する。
制御部160は、角度走査機構112に、励起光αの入射角度を走査しながら、受光センサー127に、分析チップ10で発生するプラズモン散乱光の強度を測定させる。プリズム20へ導かれた励起光αは、入射面21からプリズム20内に入射する。プリズム20内に入射した励起光αは、プリズム20と金属膜30の界面で全反射する角度で入射する。上記界面での反射光は、出射面23からプリズム20外に出射する。一方、金属膜30および上記捕捉体からは、表面プラズモン共鳴が生じる角度で励起光αが当該界面に入射することで、プラズモン散乱光が、受光光学系ユニット120に向けて出射する。
受光センサー127における当該光の強度の出力値は、例えばセンサー制御部120によって、2次近似などのフィッティングにより解析される。こうして、当該プラズモン散乱光が最大となる上記入射角(増強角)の角度が算出される。
増強角の測定(励起光の走査)時では、プラズモン散乱光を受光センサー127に導くために、例えば、励起光反射フィルターに代えて減光フィルターが受光ユニット121中の光路中に配置される。当該フィルターの入れ替えによって、プラズモン散乱光が受光センサー127に導かれ、かつ強すぎるプラズモン散乱光の光量が下げられる。当該フィルターの入れ替えは、位置切り替え機構122によって行われる。このように、励起光反射フィルターを上記光路内外に出し入れすることによって、後述の蛍光の測定と増強角の測定とを、1つの受光センサー127で実施することが可能である。
次いで、制御部160は、受光光学系ユニット120に、受光ユニット121における励起光の光路中に光学フィルター125を配置させる(ステップ308)。受光光学系ユニット120中に減光フィルターを配置している場合には、制御部160は、必要に応じて、減光フィルターを上記光路中から退避させる。そして、制御部160は、光学フィルター125が介在するときの受光センサー127の出力値(1次反応後のノイズ信号であるアッセイブランク値)を記録する(ステップ309)とともに、アッセイブランク値を補正する。アッセイブランク値の補正については、後に説明する。
そして、制御部160は、分析チップ移動機構140に、分析チップ10を送液操作位置に搬送させる(ステップ310)とともに、励起光学系ユニット110に、事前の光照射を再び行わせる。当該事前光照射については、後に説明する。
次いで、制御部160は、送液ユニット130に、蛍光物質の溶液を薬液チップ131から分析チップ10の流路内に供給させ、当該流路中に固定された上記被検出物質に上記蛍光物質を結合させる(ステップ311)。こうして上記被検出物質が蛍光物質で標識され、被検出物質の量に応じた蛍光シグナルが得られる。標識化反応後、余剰な蛍光物質は、被検出物質の量に関わりなく発光し、ノイズとなる。よって、制御部160は、送液ユニット130に、上記流路中の余剰な蛍光物質を除去させ、当該流路を洗浄させる。
次いで、制御部160は、分析チップ移動機構140に、分析チップ10を測定位置に配置させ(ステップ312)、励起光学系ユニット110に、分析チップ10に向けて励起光αを出射させるとともに、受光光学系ユニット120に、蛍光を検出させる(ステップ313)。また、制御部160は、受光センサー127における蛍光の出力値(蛍光シグナル値)を補正する。蛍光シグナル値の補正については、後に説明する。
ここで、蛍光シグナル値の測定について、さらに説明する。
蛍光シグナルの測定は、ステップ309のアッセイブランク値測定時と同じ入射角で励起光αを照射する。プリズム20へ導かれた励起光αは、入射面21からプリズム20内に入射すると、表面プラズモン共鳴により金属膜30の表面上に発生したプラズモン散乱光および蛍光が、受光ユニット121へ出射する。
プラズモン散乱光は、光学フィルター125により反射または吸収され、蛍光は、受光センサー127に入射する。蛍光シグナル(S)の出力値は、受光センサー127から出力され、制御部160またはセンサー制御部123に記憶され、蛍光シグナル(S)の出力値からステップ309で測定されたアッセイブランク値(aB)を引いた差が算出され、被検出物質の量に相関する蛍光強度(ΔS)が求められる(下記式参照)。上記の計算は、制御部160が行ってもよいし、センサー制御部123で行われてもよい。
ΔS=S−aB
次いで、制御部160は、分析チップ移動機構140に、分析チップ10を送液操作位置または分析チップ10内の液体を取り出す位置(廃棄位置)に移動させ(ステップ314)、各装置の電源を切り、または待機モードに切り替える(ステップ315)。
SPFS装置100は、受光センサー127の感度の安定させるために、以下に説明する受光センサー127への事前の光照射を、前述した基本測定動作と並行する。
<事前光照射>
制御部160は、図3に示されるように、ステップ301において各種装置の電源を入れた後、ステップ302の搬送ステージ移動を経て、事前光照射を行う(ステップ321)。まず、制御部160は、図2に示されるように、分析チップ移動機構140に、スポット拡大手段150を測定位置に配置させる(ステップ302)。
そして、ステップ321において、制御部160は、励起光学系ユニット110に、スポット拡大手段150に向けて励起光αを出射させる。制御部160は、受光センサー127が受光している光の強度(受光センサー127の出力値)の安定性を、適当な基準、例えば単位時間あたりの出力値の変化量が1%以下であるか否か、に基づいて判定する(ステップ322)。安定と判定されない場合(図3中の「no」の場合)には、制御部160は、ステップ321に戻り、励起光αの出射を続ける。安定と判定された場合(図3中の「yes」の場合)には、制御部160は、ステップ励起光αの出射を終了し、ステップ305に進むとともに、後述する感度の補正を行う(ステップ323)。
ここで、受光センサー127の安定化について、さらに説明する。
励起光αは、増強角の測定では、スポット拡大手段150でビーム径を拡大させることなく受光面128に入射する。増強角の測定は、前述したように、金属膜30に対する励起光αの入射角度を、光源ユニット111を回動させながら走査して行われる。増強角の測定時の励起光αの受光面128における入射領域を、図4中、破線で示す。当該入射領域は、当該走査によってプリズム20の入射面21での屈折や、入射角によるビーム形状の変化により、例えば、分析チップ10から受光センサー12への出射光の光軸に直交する方向(図1の紙面に対して左右方向)(図4の矢印方向)にわずかにずれる。増強角の測定により、増強角、すなわち蛍光の測定時の入射角度、が決まることから、蛍光の受光面128における入射領域は、図4中の破線で示す部分のいずれかの位置にある。すなわち、図4中の破線部は、蛍光の受光面128における入射領域(第二のスポット420)の想定される範囲を示している。
一方、上記の事前光照射では、励起光αは、スポット拡大手段150でビーム径を拡大して受光面128に入射する。スポット拡大手段150によって発散した励起光αの受光面128における入射領域は、図4に示される第一のスポット410である。第一のスポット410は、第二のスポット420の全てを内包している。このように、事前光照射では、想定される第二のスポット420の全てを含む、第二のスポット420よりも大きな第一のスポット410が形成され、第一のスポット410に基づいて受光センサー127の感度が安定化される。その結果、受光センサー127の受光面128のうち、蛍光の測定に供されうる部分の感度が一定に保たれる。
なお、第一のスポット410は、受光センサー127の安定化が達成される範囲において、受光面128よりも大きくなってもよい。
受光センサー127の受光面では、一般に、光の入射領域と非入射領域との間には、感度の差が生じる恐れがある。しかしながら、上記の事前光照射において、蛍光の測定における上記入射領域より広い領域で、受光センサー127の感度が安定化されていることから、定量性よく蛍光を測定することが可能となる。
なお、事前光照射において受光センサー127に入射する光の強度は、アッセイブランク測定時に受光センサー127に入射する光の強度に対し、0.1〜10倍であることが好ましい。光源ブランク値は、SPFS装置100が検出する下限値とも言える。受光センサー127の感度の安定化において、当該下限値(アッセイブランク値)に近い光量の光を照射することによって、当該下限値をより高い精度で検出することが可能となる。
当該光の強度が強いと、受光センサー127の感度が安定するまでの時間は短縮されるが、光ブランク値の測定時に、事前光照射の残光効果による影響で、上記測定の正確性が低下することが懸念される。したがって、微弱な光を正確に測定するためには、最も微弱な光であるアッセイブランク値に対し10倍以下程度に抑えることが好ましい。
上記の理由により、事前光照射における光の強度は、アッセイブランク値の測定時における光の強度に比べて、より好ましくは0.5〜2.0倍であり、さらに好ましくは0.9〜1.1倍である。なお、事前光照射における光の強度が弱すぎると、事前光照射による安定化に時間がかかる。受光センサー127の迅速な安定化の効果を得る観点から、事前光照射における光の強度は、アッセイブランク値の測定時における光の強度に比べて、0.1倍以上であることが好ましい。
仮に、ステップ304の免疫反応の終了よりも先に、事前光照射の上記出力値が安定した場合、制御部160は、励起光学系ユニット110に、励起光αの出射をさらに継続させることが好ましい。これは、上記出力値の安定後ただちに励起光αの出射を停止するよりも、免疫反応終了時まで受光センサー127に励起光を出射し続ける方が、受光センサー127の安定した感度を維持する観点から好ましいためである。
さらに、制御部160は、ステップ310で分析チップ10が送液操作位置に搬送された後、分析チップ移動機構140に、スポット拡大手段150を再び照射位置に配置させ、励起光学系ユニット110および受光光学系ユニット120に、再度の事前光照射(「第二の事前光照射」とも言う。この場合、前述したステップ321〜323の事前光照射を「第一の事前光照射」とも言う)を行わせる(ステップ331)。第二の事前光照射は、ステップ311における抗原標識化反応(2次反応)に並行される。そして、制御部160は、第二の事前光照射を終了させ、蛍光シグナルの測定のための分析チップ10の搬送(ステップ312)を行わせる(ステップ332)。
第二の事前光照射は、2次反応時における受光センサー127の感度の低下を防止するために行われる。このため、制御部160は、第二の事前光照射の終了を任意に決めることができる。第二の事前光照射の終了は、例えば、一定の時間経過後であってもよいし、ステップ311の終了時であってもよい。あるいは、制御部160は、ステップ322と同様に、出力値の判定によって第二の事前光照射の終了を決めてもよい。第二の事前光照射によって、受光センサー127の感度が、ステップ309におけるアッセイブランク値の測定時の感度から変化せずに一定に保たれる。
なお、この第二の事前光照射の際、必要であれば励起光カットフィルタを、照射前に光路中から退避させ、励起光カットフィルタがない状態で第二の事前光照射を行い、当該第二の事前光照射後、励起光退避フィルタを再び挿入する方がより望ましい。当該事前光照射は励起光と同じ波長なので、励起光カットフィルタで大部分がカットされ、受光センサーに届く光量が少ないためである。
ただ、励起光カットフィルタに入射する光線角度が、蛍光シグナル測定時とは多少異なるため、完全に全ての光がカットされてしまうわけではない。受光センサーに届く光量が十分であれば、励起光カットフィルタを退避させずに第二の事前光照射を行ってもよい。
なお、事前の光照射は、第一の事前光照射と第二の事前光照射の両方を実施することが望ましいが、例えば、前回の測定における事前の光照射からの測定時間の間隔が十分短いなど、受光センサー127の感度が安定していると判断できる場合は、第一の事前光照射および第二の事前光照射の一方だけでもよい。たとえば、ステップ311の抗原標識化反応のための時間が非常に短い場合には、第二の事前光照射(ステップ331、332)をスキップしてもよい。
さらに、SPFS装置100は、SPFS方法の精度をさらに高めるために、以下に説明する感度の補正を、前述した基本測定動作と並行する。
<感度補正>
受光センサー127の感度は、温度などの環境の変化により変化する。そこで、SPFS装置100が予め保有している設定値と、受光センサー127における測定時の出力値との間の相関を求め、補正された出力値を求めることが、当該出力値の正確性を高める観点から好ましい。たとえば、SPFS装置100は、事前光照射時における受光センサー127の出力値を、受光センサー127の出力値が一定となった時に予め測定されていた検量線値と比較して補正係数を求め、当該補正係数を用いて、アッセイブランク値および蛍光シグナル値を補正し出力する。
すなわち、制御部160は、ステップ321〜323における事前光照射(「第一の事前光照射」とも言う)の受光センサー127の出力値を、予め記憶している検量線値などの設定値と比較し(ステップ341)、補正係数を算出する(ステップ342)。当該設定値は、所定の条件に基づいて求められ、制御部160またはセンサー制御部123に記憶されていてもよいし、別途の事前光照射によって求められてもよい。補正係数は、例えば、上記検量線値を上記出力値で除して求められる。
次いで、制御部160は、ステップ309で測定されたアッセイブランク値を、上記補正係数を用いて補正する(ステップ343)。アッセイブランク値の補正は、例えば、アッセイブランク値の測定における受光センサー127の出力値に補正係数を乗じることによって行われる。補正後のアッセイブランク値は、以後の基本測定動作において、アッセイブランク値として用いられる。同様に、制御部160は、ステップ313で測定された蛍光シグナル値を、上記補正係数を用いて補正する(ステップ344)。補正後の蛍光シグナル値は、例えば、蛍光の出力値として出力される。
上記の感度の補正は、受光センサー127の安定した出力値を用いて行われるので、その後の受光センサー127の出力値の正確性がより高まり、当該出力値の信頼性がさらに向上する。
前述したように、SPFS装置100は、電源を入れてからアッセイブランク値が測定されるまでの間に(第一の)事前光照射を行う。当該事前光照射では、受光センサー127の受光面の広い範囲(第一のスポット)に励起光αが一度に照射される。当該照射による当該受光面のエイジング効果によって受光センサー127の感度が迅速に安定する。よって、SPFS装置100のウォームアップ時間がより短縮され、緊急な測定に対応可能となる。
また、SPFS装置100は、前述したように、アッセイブランク値の測定と蛍光シグナル値の測定の間にも光照射(第二の事前光照射)を行う。当該事前光照射によって、上記受光センサーの感度が一定に保たれる。このため、当該出力値の定量性がより一層確実に得られる。たとえば、光電子増倍管(PMT)などの受光センサーは、入射光を長時間遮断したときに感度が変化する性質を持っている。このため、当該性質を有する受光センサーを用いる場合では、上記第二の事前光照射は、定量性を高める観点で非常に有効である。
さらに、上記の第一および第二の事前光照射は、いずれも、分析チップ10に被検出物質を供給する工程や被検出物質を蛍光物質で標識する工程と並行される。このため、当該事前光照射による被検出物質の測定時間の延長などが生じることなく、受光センサー127の感度を安定に保つことが可能との観点から好ましい。
なお、SPFS装置100は、図5に示されるように、スポット拡大手段150に代えて、受光ユニット121に向けて光を出射する第二の光源511を有していてもよい。第二の光源511も、スポット拡大手段150と同様に、分析チップ移動機構140によって、分析チップ10の搬送と連動して測定位置に搬送されうる。
あるいは、SPFS装置100は、第二の光源511が分析チップ移動機構140では搬送されず、測定位置の下方に固定配置し、分析チップ移動機構140により、分析チップが測定位置から(送液位置に)退避した際に、第二の光源511からの出射光が受光センサー127に導かれるように構成されてもよい。
第二の光源511の例には、LDおよびLEDが含まれる。第二の光源511は、発光点の面積が大きいこと、および、放射角が大きく受光センサー127の受光面を大きなビームスポット径で容易に照射可能であること、から、LEDであることが好ましい。第二の光源511の出射光の波長は、受光センサー127の感度を迅速に安定させる観点から、受光センサー127が感度を有する波長帯域にあることが好ましい。
受光センサー127の感度は、入射光の波長により異なる。したがって、第二の光源511の出射光の波長は、励起光αや上記蛍光などの実際に測定する光の波長と同じかまたは当該波長に近いこと(同じ波長領域にあること)がより好ましい。また、第二の光源511を用いて前述した感度の補正を行う観点からも、第二の光源511の出射光の波長は、実際に測定する光の波長と同じ波長領域にあることが、蛍光の測定の定量性を高める観点から好ましい。
さらに、上記スポット拡大手段は、受光センサー127の受光面での入射光のスポット径を拡大する手段であれば、前述したスポット拡大手段150以外の他の手段であってもよい。当該他の手段の例には、反射ミラーとビームエキスパンダとを組み合わせた構成が含まれる。
なお、SPFS装置100では、分析チップ10とスポット拡大手段150とを入れ替えて、前述の事前光照射と行っているが、SPFS装置100の構造によって許容される場合には、分析チップ10と受光ユニット121との間にスポット拡大手段150を配置して事前光照射を行ってもよい。上記の場合、スポット拡大手段150は、分光チップ10と受光ユニット121との間に配置してもよいし、受光ユニット121と受光センサー127との間に配置してもよい。
また、励起光αの入射角度の走査は、分析チップ10と光源ユニット111の相対的な位置関係により行われればよい。したがって、光源ユニット111を固定し、分析チップ10を回転させて、当該入射角度の走査を行ってもよい。分析チップ10の回転に伴い、像面が傾くが、当該傾きは数度であること、測定物質が蛍光であり全方位に等しく蛍光を放出していること、などから、当該回転に伴い受光センサー127が受光する光量の差は、無視することが可能である。
さらに、本発明は、前述したSPFS法に限定されず、蛍光イムノアッセイ法などの他のイムノアッセイ分析方法にも適用可能である。蛍光イムノアッセイ法では、例えば、分析チップに配置された、蛍光標識された被検出物質に励起光を照射して、励起により発生する蛍光を受光センサーで受光する上記の全反射光で被検出物質を定量する。
前述の実施の形態の説明から明らかなように、本実施の形態に係るイムノアッセイ分析方法(SPFS方法)は、前記蛍光物質からの蛍光を検出する前に、前記受光センサーの受光面に光Aを照射する照射工程を含み、前記第一のスポットは、前記第二のスポットよりも大きい。なお、第一のスポットは、前記受光面における前記光Aの入射領域であり、第二のスポットは、前記受光面における前記蛍光の入射領域である。当該分析方法によれば、上記事前光照射により受光センサーの感度が迅速に安定するので、イムノアッセイ分析装置のウォーミングアップ時間をより一層短縮することが可能である。また、当該感度を一定に保ち、定量性を確保することが可能である。さらに、第二のスポットを必ず内包する入射領域に入射する光によって受光センサーの感度が安定化されることから、蛍光の測定の高い信頼性が得られる。
また、上記方法において、前記分析チップを、前記測定位置から移動させる工程をさらに含み、前記分析チップを前記測定位置から退避させた後に、前記受光面に前記光Aを照射すると、上記事前光照射の光が分析チップによって遮られない。よって、受光センサーの感度を迅速に安定化させ、かつ蛍光の測定の信頼性を高める観点からより効果的である。
また、分析チップを送液操作位置に移動させ、分析チップに被検出物質を供給する工程や、被検出物質を蛍光物質で標識する工程などの測定準備のための他の工程と並行して事前光照射を実施することで、当該事前光照射による被検出物質の測定時間の延長などが生じることなく好ましい。
また、上記方法において、前記分析チップを前記測定位置から退避させた後に、前記測定位置にスポット拡大手段を配置させる工程を含み、前記励起光の光源から出射された前記励起光が、前記測定位置に配置された前記スポット拡大手段を通してビーム径が拡がり、前記光Aとして前記受光面に入射して前記受光面上で前記第一のスポットを形成すると、励起光源と同じ光源を使用して上記事前光照射を行うことが可能となる。よって、前述の効果を奏するイムノアッセイ分析装置をより安価に構成する観点からより効果的である。
また、上記方法において、前記励起光の光源とは別の光源が前記光Aを出射し、前記光Aが前記受光面上で前記第一のスポットを形成すると、シグナル測定時よりも受光スポット範囲が大きい光源を予め選択することが可能となる。よって、スポット拡大手段が不要となり、事前光照射に係る構成をより安価に構成する観点からより効果的である。
また、上記方法において、前記測定位置に前記分析チップを配置する工程と、前記被検出物質が配置された前記分析チップに前記励起光を照射してアッセイブランク値を測定する工程と、前記分析チップ中の前記被検出物質に蛍光物質を結合させる工程と、前記蛍光物質と結合した前記被検出物質が配置された前記分析チップに前記励起光を照射して前記蛍光を検出する工程と、を含み、前記アッセイブランク値を測定する工程の開始前、および、前記アッセイブランク値を測定する工程終了後かつ前記蛍光を検出する工程の開始前、のいずれか一方または両方で、前記受光センサーの受光面に前記光Aを照射して前記照射工程(前述の事前光照射)を行うと、アッセイブランク値および蛍光の出力値がともに、一定の感度の受光センサーによって得られる。よって、被検出物質の検出の定量性および測定の信頼性をより高める観点からより効果的である。
また、上記方法において、前記照射工程における前記受光センサーの出力値を検出し、前記出力値が安定した後に、前記アッセイブランク値または前記蛍光を検出すると、受光センサーの感度の安定化を確実に実現する観点、および、被検出物質の測定の定量性をより高める観点、からより効果的である。
また、上記方法において、前記光Aの強度が、前記アッセイブランク値の測定で出射される前記励起光の強度の0.1〜10倍であると、受光センサーの感度を、イムノアッセイ分析装置のアッセイブランク値により近い光量の光で安定化させることが可能となる。よって、アッセイブランク値の測定における精度および信頼性をより高める観点からより効果的である。
また、上記方法において、前記照射工程における前記受光センサーの出力値を検出し、前記出力値が安定した後に、前記出力値と前記出力値の設定値とを比較して、前記受光センサーの感度を補正すると、受光センサーの感度が経時的にまたは環境に依存して変化した場合でも、被検出物質を高い定量性で測定することが可能であり、測定の信頼性をより高める観点からより効果的である。
また、前述の説明から明らかなように、上記方法は、前記分析チップは、金属膜を一面に有するプリズムを含み、前記被検出物質が配置された前記金属膜に向けて、表面プラズモン共鳴を発生させる入射角で、前記プリズムを介して前記励起光を照射し、前記表面プラズモン共鳴に基づく局在場光により前記被検出物質を標識した蛍光物質を励起させ、前記励起により発生する前記蛍光を前記受光センサーにより検出する表面プラズモン共鳴蛍光分析方法に、特に好ましく適用される。
また、前述の実施の形態の説明から明らかなように、本実施の形態に係るイムノアッセイ分析装置は、前記励起光を出射するための光源と、前記蛍光を受光するための受光センサーと、前記受光センサーに光Aを照射するための光照射装置と、を有し、前記光照射装置が、前記第一のスポットが前記第二のスポットよりも大きくなるように、前記受光センサーに前記光Aを照射する。当該分析装置によれば、上記事前光照射により受光センサーの感度を迅速に安定させられるので、当該分析装置のウォーミングアップ時間をより一層短縮することが可能である。また、当該感度を一定に保ち、定量性を確保することが可能である。さらに、シグナル測定時の入射領域を必ず内包する入射領域に入射する光によって受光センサーの感度が安定化されることから、蛍光の測定の高い信頼性が得られる。
また、上記装置において、前記光照射装置が、前記光源が出射した前記励起光が前記受光面に入射し、前記受光面上で前記第一のスポットを形成し前記光Aとなるようにビーム径を拡げるスポット拡大手段であると、励起光源と同じ光源を使用して上記事前光照射を行うことが可能となる。よって、上記の効果を奏するイムノアッセイ分析装置をより安価に構成する観点からより効果的である。
また、上記装置において、前記光照射装置が、前記受光面上で前記第一のスポットを形成する、前記励起光の光源とは別の光源Aであると、予めシグナル測定時よりも受光スポット範囲が大きい光源を選択することが可能となる。よって、スポット拡大手段が不要となり、事前光照射に係る構成をより安価に構成する観点からより効果的である。
また、上記装置において、前記分析チップから出射する前記蛍光を検出する位置(測定位置)または前記被検出物質を前記分析チップに供給するための位置(送液操作位置)に前記分析チップを搬送するための搬送装置をさらに有すると、上記事前光照射の光が分析チップによって遮られない。よって、受光センサーの感度を迅速に安定させ、かつ蛍光の測定の信頼性を高める観点からより効果的である。
また、上記装置が上記搬送装置を有することは、分析チップに被検出物質を供給する工程や、被検出物質を蛍光物質で標識する工程などの、測定準備のための他の工程と並行して事前光照射を実施可能なので、当該事前光照射による被検出物質の測定時間の延長などが生じることなく好ましい。
また、光電子増倍管の感度は、一般に、光が入射されないと不安定化しやすい。このため、上記装置において、受光センサーが光電子増倍管であると、受光センサーの感度の安定化に係るより高い効果が得られ、特に好適である。