JP6170655B2 - 変位計測装置、及び、変位履歴記録方法 - Google Patents
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下部構造物と上部構造物との間に免震機構を有する建造物に備えられ、前記下部構造物に対して前記上部構造物が相対的に移動する際の変位量を計測する変位計測装置であって、
前記上部構造物の移動に応じて前記下部構造物の水平方向の平面に沿って摺動し、前記平面上の位置座標のデータを時間経過と共に検出する検出部と、
検出された前記位置座標のデータから、前記下部構造物に対する前記上部構造物の単位時間あたりの水平方向変位量を算出する処理部と、
前記単位時間あたりの水平方向変位量を累積して記憶する記憶部と、
を備え、
前記処理部は、前記記憶部に累積して記憶された前記単位時間あたりの水平方向変位量から、地震が発生した際に前記免震機構によって吸収されるエネルギーの合計量を算出することを特徴とする変位計測装置である。
このような変位計測装置によれば、建造物の詳細な変位状況や変位の総量を精度よく計測することが可能である。
このような変位計測装置によれば、地震によって検出部が水平方向に移動する際に、検出面が計測対象となる平面(摺動面)と対向する姿勢を維持しやすくなるため、変位量の計測を高精度に実現することができる。また、緩衝部によって縦方向の揺れが吸収することができる。
このような変位計測装置によれば、閾値を適当に設定することによって誤作動や誤検出を抑制し、変位量の計測を正確に行うことができる。また、閾値の設定によって変位量が小さい場合には計測を行わないようにすることなども可能である。
このような変位計測装置によれば、免震機構のメンテナンスを行うべきタイミングや交換の要否等について、客観的かつ正確に判断することができる。これにより、免震機構の維持管理を適切に行うことが可能になる。
このような変位計測装置によれば、コスト面に優れ、構成が単純で故障の少ない汎用性の高い装置を実現できる。また、検出部を容易に交換することが可能であり、複雑な初期設定等も不要であるので、正確な計測を行いやすい。
このような変位計測装置によれば、垂直方向における建造物の詳細な変位状況や変位の総量を精度よく計測することが可能である。
このような変位計測装置によれば、地震発生時に水平方向の揺れ(横揺れ)が発生しても、検出面が計測対象となる平面(摺動面)と対向する姿勢を維持しやすくなるため、垂直方向の変位量の計測を高精度に実現することができる。
はじめに、地震発生時において揺れの影響を軽減することが可能な免震機構を有する建造物(以下、単に「免震建造物」とも呼ぶ)について簡単に説明する。図1は、免震建造物の基本的な構成を表す図である。
上部構造物11は、いわゆる建築物であり、例えば人が生活や作業をするためのビルや倉庫等である。
下部構造物15は、上部構造物11とは隔離された構造物であり、上部構造物11を据えるために上部構造物11の下側の設置される土台としての機能を有する。本実施形態では、下部構造物15は地面に設置されており、免震建造物の基礎に相当する。
免震機構20は、地震が発生した際に上部構造物11の揺れを軽減させるための機構であり、図1に示されるように上部構造物11と下部構造物15との間に設けられる。免震機構20は、一般にアイソレータとダンパー(図1でダンパーは不図示)の組み合わせによって構成される。また、免震機構20の設置個数や設置位置は建造物の大きさや用途に応じて適宜調整される。
ダンパーは、上部構造物11に働く震動(揺れ)を減衰させる。すなわち、震動のエネルギーを吸収して揺れを低減させる。ダンパーとしては、例えば、オイルダンパー、曲げた金属鋼材の延性を利用した鋼材ダンパーや、鉛ダンパー等が用いられる。
これに対して、免震機構20を有する建造物(免震建造物)では、地面に設置された下部構造物15が震動しても、当該震動は免震機構20によって吸収・低減されるため、上部構造物11には大きな震動が伝わりにくく、地震による被害を小さくすることができる(免震化)。
上述のように、免震建造物は免震機構20によって免震化されていることから、十分な免震性能を確保するためには、免震機構20を適切に維持・管理することが重要である。そのためには、地震発生時における建造物の変位の状況を正確に把握する必要がある。なお、建造物の変位とは、図1において下部構造物15に対する上部構造物11の変位のことを言う。
ここで、建造物が受けた地震によるエネルギーの総量は、地震による建造物の変位量の総量を用いて算出される。つまり、免震機構20を適切に維持・管理するためには、地震発生時における建造物の変位量を正確に計測できることが必要である。
まず、地震発生時における建造物の変位量を計測する装置として従来使用されている変位計測装置(オービット)について、比較例として説明する。
記録部51は実際に変位の記録を行うペン状の先端部511と、先端部511を支持する支持部512とを有する。支持部512の一端側(図2では上端側)は免震建造物の上部構造物11の下面側に固定され、支持部512の他端側(図2では下端側)には先端部511が取り付けられる。先端部511は支持部512によって所定の圧力で記録面52(感圧紙53)に押し付けられている。
記録面52は、免震建造物の下部構造物15の上面側に固定された金属製の平面である。通常、記録面52は水平に設置される。
感圧紙53は、ペンなどの先端部で圧力を加えることによってその部分が発色する紙であり、建造物の変位計測を行う際に記録面52上の所定の範囲に設置される。
地震が発生すると、地面に設置された下部構造物15が震動するが、該震動(横揺れとする)は免震機構20によって吸収されるため、上部構造物11の震動は軽減される。つまり、下部構造物15の震動と上部構造物11の震動とでは、震動の大きさが異なる。そのため、下部構造物15は上部構造物11に対して水平方向に移動するように動く。言い換えると、下部構造物15に対して上部構造物11が相対的に移動するように動く。
このとき、記録部51は先端部511を感圧紙53に押し付けながら記録面52上(水平面上)を移動するため、感圧紙53には記録部51の移動の軌跡が記録される。すなわち、下部構造物15に対する上部構造物11の相対的な移動の様子が、先端部511の軌跡として表される。
一方で、図3のような変位の軌跡を見ても、地震の際に建造物がどのように移動したのかについての詳細な履歴を確認することはできない。すなわち、所定の時刻において当該建造物がどのような変位をしていたのか、変位の過程は不明である。また、建造物の変位量の最大値を算出することができたとしても、変位の履歴が不明であれば総変位量(積算の変位量)を算出することは難しい。
第1実施形態では、地震発生時における免震建造物の水平方向の変位状況を詳細に計測することが可能な変位計測装置について説明する。
図4は、第1実施形態の変位計測装置30の基本的構成を表す図である。変位計測装置30は、上述のような免震建造物の上部構造物11と下部構造物15との間に設けられ、検出部31と、摺動面32と、緩衝部33と、データ処理部35とを有する。説明のため、図4では免震機構20を省略している。
検出部31は、検出面313を摺動面32と対向させた状態で摺動面32上を摺動する。光源311から出て摺動面32で反射された光(例えばレーザー光やLED光であり、図4においては破線矢印で示される。)は受光部312で読み取られ、摺動面32上における検出部31の位置座標のデータとして検出される。
検出された座標データは後述するデータ処理部35へと転送され、地震発生時における下部構造物に対する上部構造物の相対的な変位量が、時間経過と共に算出される。検出部31はデータ転送用のケーブルを備える構成としてもよいし、ワイヤレスでデータ転送可能な構成としてもよい。
本実施形態では、摺動面32が水平に設置され、検出部31は下部構造物15の水平方向の平面に沿って摺動する。つまり、変位計測装置30では、摺動面32と平行な平面(水平方向)に対する上部構造物11の変位データが測定される。
データ処理部35によって行われる処理については後で説明する。
図5は、第1実施形態で行われる変位量計測動作のフローを表す図である。第1実施形態ではS101〜S105の工程を順次実行することによって、免震建造物の変位量が計測される。
免震建造物の変位の計測が開始される前は、変位計測装置30は待機状態となっている。待機状態では、検出部31の検出面313が緩衝部33によって摺動面32に付勢された状態(押し付けられた状態)で静止している。この状態で地震が発生すると、上述のように免震建造物の下部構造物15に対して上部構造物11が相対的に移動する。すると、緩衝部33を介して上部構造物11に取り付けられた検出部31が、上部構造物11の移動に応じて下部構造物15の水平方向の平面(本実施形態において摺動面32)に沿って摺動する。
検出部31は摺動面32の表面を摺動しながら、時間経過と共に座標データを検出する。座標データの検出は、例えば、待機状態において検出部31が静止していた摺動面32上のある地点のX座標及びY座標を計測原点(0,0)とする。そして、検出部31が摺動を開始してから時間t経過毎にX座標及びY座標(Xt,Yt)が検出される。時間tの設定は、データ処理部35を介して、使用者によってあらかじめ設定される。例えば、t=0.05秒と設定すれば、1秒間に20個の座標データが検出される。
検出部31によって検出された座標データ及び時間データは、検出タイミング毎に(上述の時間t毎に)データ処理部35へ転送される。
転送された座標データ及び時間データから、データ処理部35のCPU352によって単位時間あたりの水平方向の変位量が算出される。
図6は、データ処理部35によって算出された変位量の表示画面の一例である。計測開始以降の時間経過毎の座標データがデータテーブルに表示され(図6の左側)、実際の変位の様子が軌跡としてグラフに表示される(図6の右側)。変位の軌跡を表すグラフは、比較例で説明した図3に相当し、地震発生時における変位を視覚的に確認することができる。さらに、本実施形態では任意のタイミングにおける変位量(下部構造物15に対する上部構造物15の変位量)が座標データとして定量化されるため、地震による揺れの大きさを容易に算出することが可能である。また、地震発生時における変位の様子について、時間を追って詳細に再現すること等も可能である。
CPU352によって算出された単位時間あたりの水平方向変位量は、メモリー353に順次記憶される。つまり、水平方向変位量を累積して記憶することにより、変位の履歴が作成される。
第1実施形態では、免震建造物の下部構造物の水平方向の平面に沿って摺動し、該平面上の位置座標のデータを時間経過と共に検出可能な変位計測装置を用いて、下部構造物に対して上部構造物が相対的に移動する際の変位量を計測する。変位量の計測に際し、検出された座標データから単位時間当たりの水平方向変位量が算出され、累積して記憶される。
地震が発生した際に生じる震動は、横揺れ(水平方向の揺れ)のみに限られず、縦揺れ(垂直方向の揺れ)の場合もある。第2実施形態では、地震発生時における免震建造物の垂直方向の変位を計測することが可能な変位計測装置について説明する。
図7は、第2実施形態の変位計測装置30の基本的構成を表す図である。図8は、第2実施形態の変位計測装置30の概略鳥瞰図である。変位計測装置30は、免震建造物の上部構造物11と下部構造物15との間に設けられ、検出部31と、摺動面32と、緩衝部33と、すべり部34と、データ処理部35とを有する。
すべり板342は下部構造物15の上面に水平に設置される板状の部材である。レール支持部341がすべり板342の表面をすべるように平行に移動することにより、検出部31も下部構造物15に対して水平な方向に移動する。これにより、地震発生時に水平方向の揺れ(横揺れ)が発生しても、検出部31は安定した姿勢で支持される。
すべり緩衝材343はレール支持部341の底面に設けられる板状の部材であり、レール支持部341の底面部とすべり板342との間に生じる摩擦を軽減して、レール支持部341がすべり板342の上を移動しやすくする。
第2実施形態の変位量計測動作は、計測方向が垂直方向である以外は基本的に第1実施形態と同様である。すなわち、検出部31の垂直方向の移動量が所定の閾値を超えた場合に変位量の計測が開始される。検出部31によって検出された座標データはデータ処理部35に送信され、単位時間当たりの変位量(垂直方向の変位量)が算出され、変位履歴として記憶される。
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。また、以下に述べる実施形態も、本発明に含まれるものである。
前述の実施形態では、検出部31はレーザー光やLED光を用いた光学方式によって座標を検出していたが、検出部31の構成はこの例には限られない。例えば、他の光源を用いて座標を検出する構成であってもよい。また、例えば、ボール式のマウスのように、光学方式以外で座標を検出する構成であってもよい。
前述の各実施形態では、それぞれ横方向の揺れ、縦方向の揺れによる変位を計測可能な変位計測装置について説明したが、横方向の揺れ、及び、縦方向の揺れによる変位を同時に計測し、地震による揺れの影響を複合的に計測するようにするようにしてもよい。この場合、データ処理部を通じて各実施形態を一括して管理し、どちらかの実施形態が計測を開始した瞬間に同調させて他方の計測も開始させることで、時刻暦における上部構造物の水平方向・垂直方向の変位を同時に計測し、データ処理部にて合成してデータ出力することも可能である。
前述の各実施形態において、変位計測装置の天地を逆転して設置してもよい。すなわち、前述の各記述において上部構造物と下部構造物を入れ替えて設置しても本変位計測装置は本来の構成と同等の計測結果を得ることが可能である。
20 免震機構、
30 変位計測装置、
31 検出部、311 光源、312 受光部、313 検出面、
32 摺動面、
33 緩衝部、331 伸縮部、332 弾性部材、333 固定部、
334 スライド式支持部、335 レール、
34 すべり部、341 レール支持部、342 すべり板、343 すべり緩衝材、
35 データ処理部、351 インターフェース部、352 CPU、
353 メモリー、
50 オービット、
51 記録部、511 先端部、512 支持部、52 記録面、53 感圧紙
Claims (9)
- 下部構造物と上部構造物との間に免震機構を有する建造物に備えられ、前記下部構造物に対して前記上部構造物が相対的に移動する際の変位量を計測する変位計測装置であって、
前記上部構造物の移動に応じて前記下部構造物の水平方向の平面に沿って摺動し、前記平面上の位置座標のデータを時間経過と共に検出する検出部と、
検出された前記位置座標のデータから、前記下部構造物に対する前記上部構造物の単位時間あたりの水平方向変位量を算出する処理部と、
前記単位時間あたりの水平方向変位量を累積して記憶する記憶部と、
を備え、
前記処理部は、前記記憶部に累積して記憶された前記単位時間あたりの水平方向変位量から、地震が発生した際に前記免震機構によって吸収されるエネルギーの合計量を算出することを特徴とする変位計測装置。 - 請求項1に記載の変位計測装置であって、
前記水平方向の平面と交差する方向に伸縮し、弾性力によって前記検出部の検出面を前記平面に付勢する緩衝部を備える、ことを特徴とする変位計測装置。 - 請求項1又は2に記載の変位計測装置であって、
前記検出部が前記水平方向の平面を摺動開始しても、摺動する量が所定の値以下の時は、前記下部構造物に対する前記上部構造物の単位時間あたりの水平方向変位量の計測が開始されず、
前記検出部が前記水平方向の平面を摺動する量が前記所定の値よりも大きくなった時に、前記下部構造物に対する前記上部構造物の単位時間あたりの水平方向変位量の計測が開始されることを特徴とする変位計測装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の変位計測装置であって、
前記検出部が光学式マウスである、ことを特徴とする変位計測装置。 - 下部構造物と上部構造物との間に免震機構を有する建造物に備えられ、前記下部構造物に対して前記上部構造物が相対的に移動する際の変位量を計測する変位計測装置であって、
前記上部構造物の移動に応じて前記上部構造物の垂直方向の平面に沿って摺動し、前記平面上の位置座標のデータを時間経過と共に検出する検出部と、
検出された前記位置座標のデータから、前記下部構造物に対する前記上部構造物の単位時間あたりの垂直方向変位量を算出する処理部と、
前記単位時間あたりの垂直方向変位量を累積して記憶する記憶部と、
を備え、
前記処理部は、前記記憶部に累積して記憶された前記単位時間あたりの垂直方向変位量から、地震が発生した際に前記免震機構によって吸収されるエネルギーの合計量を算出することを特徴とする変位計測装置。 - 請求項5に記載の変位計測装置であって、
前記下部構造物の水平方向の平面上を前記検出部が水平方向に移動するのを支持するすべり部を備える、ことを特徴とする変位計測装置。 - 下部構造物と上部構造物との間に免震機構を有する建造物で、前記上部構造物の移動に応じて前記下部構造物の水平方向の平面上の位置座標のデータを時間経過と共に検出することと、
検出された前記位置座標のデータから、前記下部構造物に対する前記上部構造物の単位時間あたりの水平方向変位量を算出することと、
前記単位時間あたりの水平方向変位量を累積して記録することと、
累積して記憶された前記単位時間あたりの水平方向変位量から、地震が発生した際に前記免震機構によって吸収されるエネルギーの合計量を算出することと、
を有する変位履歴記録方法。 - 下部構造物と上部構造物との間に免震機構を有する建造物で、前記上部構造物の移動に応じて前記上部構造物の垂直方向の平面上の位置座標のデータを時間経過と共に検出することと、
検出された前記位置座標のデータから、前記下部構造物に対する前記上部構造物の単位時間あたりの垂直方向変位量を算出することと、
前記単位時間あたりの垂直方向変位量を累積して記録することと、
累積して記憶された前記単位時間あたりの垂直方向変位量から、地震が発生した際に前記免震機構によって吸収されるエネルギーの合計量を算出することと、
を有する変位履歴記録方法。 - 下部構造物と上部構造物との間に免震機構を有する建造物に備えられ、前記下部構造物に対して前記上部構造物が相対的に移動する際の変位量を計測する変位計測装置を用いたエネルギー算定方法であって、
前記変位計測装置は、
前記上部構造物の移動に応じて前記下部構造物の水平方向又は垂直方向の平面に沿って摺動し、前記平面上の位置座標のデータを時間経過と共に検出する検出部と、
検出された前記位置座標のデータから、前記下部構造物に対する前記上部構造物の単位時間あたりの水平方向又は垂直方向の変位量を算出する処理部と、
前記単位時間あたりの水平方向又は垂直方向の変位量を累積して記憶する記憶部と、
を備え、
前記変位計測装置で計測された前記単位時間あたりの水平方向又は垂直方向の変位量に基づくエネルギーを算定するエネルギー算定方法。
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