JP6167925B2 - 工作機用窓 - Google Patents
工作機用窓 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6167925B2 JP6167925B2 JP2014023886A JP2014023886A JP6167925B2 JP 6167925 B2 JP6167925 B2 JP 6167925B2 JP 2014023886 A JP2014023886 A JP 2014023886A JP 2014023886 A JP2014023886 A JP 2014023886A JP 6167925 B2 JP6167925 B2 JP 6167925B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- machine tool
- meth
- coat layer
- acrylate
- window
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
- Auxiliary Devices For Machine Tools (AREA)
- Coating Of Shaped Articles Made Of Macromolecular Substances (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
Description
特許文献1に記載のマシニングセンタは、外側を外装(カバー)で全体が覆われている。これにより、機械加工が行われる加工領域と、マシニングセンタを操作する操作者が立ち入り可能な操作領域とが区画され、操作者に対する安全性が確保されている。このマシニングセンタの外装には、開閉自在な開閉扉が設けられている。そして、開閉扉には、マシニングセンタの内部を外側から視認可能、すなわち、機械領域を操作領域から視認可能な窓部としてのガラスがはめ込まれている。
しかしながら、このマシニングセンタの機械領域内では、例えば、加工対象物を切削することにより生じる切りくずが飛散してガラスに衝突し、この衝突によって、ガラスに微細な傷がついてしまうことがあった。そして、このような切りくずの衝突が、長期にわたって繰り返されることによって、微細な傷がガラスに多数生じ、その結果、ガラスの透明性が損なわれてしまう問題があった。そのため、長期間、窓部を介して機械領域内部の様子を確認し続けることや、内部に光を採り込み続けることが難しかった。
(1) 工作機械に装着され、その状態で前記工作機械の内部を視認する窓、該内部に光を採り込む窓のうちの少なくとも一方に用いられる工作機用窓であって、
透光性を有する基材と、
基材の一方の面側に設けられ、多官能(メタ)アクリレートを含有するハードコート層形成用組成物の硬化物で構成されたハードコート層と、を備え、
下記要件Aを満足することを特徴とする工作機用窓。
要件A:当該工作機用窓は、ASTM D673で規定された落砂摩耗試験に準拠して規定砂4000[g]を前記ハードコート層に向かって落下させ、前記落砂摩耗試験前のヘイズと前記落砂摩耗試験後のヘイズとの大きさの差をヘイズ増加量(4000[g])としたとき、該ヘイズ増加量(4000[g])が、20以下となる。
(2) 規定砂1600[g]を前記ハードコート層側に向かって落下させ、前記落砂摩耗試験前のヘイズと前記落砂摩耗試験後のヘイズとの大きさの差をヘイズ増加量(1600[g])としたとき、該ヘイズ増加量(1600[g])が、10以下となる上記(1)に記載の工作機用窓。
(3) 前記多官能(メタ)アクリレートは、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含む上記(1)または(2)に記載の工作機用窓。
(4) さらに、前記ハードコート層形成用組成物は、シロキサン変性(メタ)アクリレートを含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の工作機用窓。
(5) さらに、前記ハードコート層形成用組成物は、フィラーを含む上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の工作機用窓。
(6) 前記フィラーは、無機材料で構成されている上記(5)に記載の工作機用窓。
(7) 前記フィラーは、粒子状をなし、
前記フィラーは、その粒子表面に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が導入されているものである上記(5)または(6)に記載の工作機用窓。
(8) 前記基材は、主としてビスフェノール型ポリカーボネート樹脂で構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の工作機用窓。
本発明の工作機用窓は、工作機械に装着され、その状態で前記工作機械の内部を視認する窓、該内部に光を採り込む窓のうちの少なくとも一方に用いられる工作機用窓であって、透光性を有する基材と、基材の一方の面側に設けられ、多官能(メタ)アクリレートを含有するハードコート層形成用組成物の硬化物で構成されたハードコート層と、を備え、下記要件Aを満足する。要件A:当該工作機用窓は、ASTM D673で規定された落砂摩耗試験に準拠して規定砂4000[g]を前記ハードコート層に向かって落下させ、前記落砂摩耗試験前のヘイズと前記落砂摩耗試験後のヘイズとの大きさの差をヘイズ増加量(4000[g])としたとき、該ヘイズ増加量(4000[g])が、20以下となる。
このような本発明によれば、工作機械で加工対象物を切削する際に生じる切りくずの衝突に起因する微細な傷の発生を抑制または防止し、長期にわたり優れた透明性を発揮することができる。
<第1実施形態>
図1は、本発明の工作機用窓(第1実施形態)が装着された工作機械の一例を示す斜視図、図2は、図1中のA−A線断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1および図2中(図3〜図6についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図2中(図3、図5についても同様)の右側を「内側」、左側を「外側」と言う。また、図2中(図3、図5についても同様)では、第1の工作機用窓および第2の工作機用窓に関して、それぞれ、その厚さ方向を強調して描いている。
図1に示す工作機械は、数値制御(NC)による機械加工、すなわちNC加工で機械加工を自動的に行うことができ、そして、その機械加工に応じて、工具と(母材)とを自動的に交換可能なマシニングセンタ10である。このマシニングセンタ10は、加工対象物に対して実際に機械加工を行う構造体101と、構造体101全体を覆う外装102と、構造体101の作動を操作、制御する操作パネル103とを有している。
外装102は、金属板で構成され、マシニングセンタ10の骨格を構成するフレーム(図示せず)に例えばボルトを介して固定されている。これにより、構造体101で機械加工が行なわれる加工領域S1と、マシニングセンタ10を操作する操作者が立ち入り可能な操作領域S2とを確実に仕切ることができる。よって、操作者に対する安全性を確保することができる。
操作パネル103は、各種の機械加工を施すためのプログラムが予め記憶された制御部105と、プログラムを呼び出す等の操作を行う液晶パネル106や操作ボタン107を有している。
なお、飛翔物40としては、破片104’、切りくず201、潤滑油30の他に、バイト104を固定するボルト等の固定部材(治具)等も含まれることがある。
第1の工作機用窓2a(工作機用窓2a)と第2の工作機用窓2b(工作機用窓2b)とは、空気層5(中間層5)を介して互いに対向しており、第1の工作機用窓2aが内側、第2の工作機用窓2bが外側となるように配置されている。そして、この配置状態で各工作機用窓2a、2bが枠体4に一括して支持されている。
第1の工作機用窓2aと第2の工作機用窓2bとは、いずれも透明性を有する透明基板である。なお、「透明」には、無色透明と有色透明とが含まれ、マシニングセンタ10では、無色透明が好ましい。
第1の工作機用窓2aと第2の工作機用窓2bとは、本実施形態では同様の構成である。第1、第2の工作機用窓2a、2bは、本発明の工作機用窓で構成されている。
同様に、第2の工作機用窓2bは、その平面視で長方形をなし、基材21とハードコート層22とを備える積層体である。基材21は、空気層5(中間層5)側に位置しており、ハードコート層22は、基材21の一方の面(片面)側、すなわち操作領域S2側に位置している。これにより、第2の工作機用窓2bは、ハードコート層22が基材21よりも操作領域S2に臨むように配置された状態となっている。このような配置により、例えば操作領域S2にいる操作者が構造体101の調整のために六角レンチやドライバ等の工具を把持していた場合、誤って当該工具を第2の工作機用窓2bにぶつけてしまったとしても、ハードコート層22で基材21を保護することができる。
また、第1の工作機用窓2aと第2の工作機用窓2bとは、基材21同士が互いに空気層5(中間層5)に臨む、すなわち、第1の工作機用窓2aと第2の工作機用窓2bとは、互いに反転した状態となっている。これにより、窓ユニット1をマシニングセンタ10の外装102に取り付ける組立作業をしようとした場合、窓ユニット1の表裏を問わずに、その組立作業を行うことができる。このように窓ユニット1は、組立時の姿勢や方向を考えなければないという煩わしさを低減した構造となっている。
また、前述したように、第1の工作機用窓2aと第2の工作機用窓2bとは同じ構成のものである、すなわち、基材21とハードコート層22とを備えたものである。これにより、透明基板として部品を共通化することができ、よって、窓ユニット1の製造コストを低減することができる。
また、基材21の厚さt1は、一定であるのが好ましい。また、ハードコート層22の厚さt2も、厚さt1と同様に、一定であるのが好ましい。
なお、第1、第2の工作機用窓2a、2bを構成する基材21の構成材料、およびハードコート層22の構成材料等については後に詳述する。
また、空気層5(中間層5)の厚さt3は、第1の工作機用窓2aの総厚ttotalと同じかまたはそれよりも薄いのが好ましい。これにより、厚さt3が過剰になるのが抑制され、よって、窓ユニット1の薄型化に寄与する。また、厚さt3が総厚ttotalを超えたとしても、空気層5(中間層5)での衝撃吸収性の向上は望めない。
なお、枠体4の構成材料としては、特に限定されず、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の各種金属材料や、各種樹脂材料を用いることができる。
枠体4は、第1の工作機用窓2a(第2の工作機用窓2b)の縁部に沿うような、すなわち、平面視で四角形の枠状をなし、その四隅にそれぞれ貫通孔41が形成されている。マシニングセンタ10では、外装102の窓ユニット1が設置される部分が開口しており、その周辺に4本のスタッドボルト102aが支持、固定されている。そして、枠体4の各貫通孔41にそれぞれスタッドボルト102aを挿通させて、当該スタッドボルト102aにナット102bを螺合させることができる。これにより、窓ユニット1が外装102に装着されることとなる。
また、枠体4の内周部には、その周方向に沿って第1の凹部(第1の溝)421と第2の凹部(第2の溝)422とが形成されている。第1の凹部421には、第1の工作機用窓2aの縁部が嵌め込まれており、第2の凹部422には、第2の工作機用窓2bの縁部が嵌め込まれている。これにより、第1の工作機用窓2aおよび第2の工作機用窓2bが枠体4に確実に支持される。
また、第1の凹部421には、第1の工作機用窓2aとともに第1のパッキン3aが挿入されている。第2の凹部422にも、第2の工作機用窓2bとともに第2のパッキン3bが挿入されている。第1のパッキン3a、第2のパッキン3bは、それぞれ、弾性を有する長尺な帯体で構成されている。
このように空気層5(中間層5)が気密的に封止されていることにより、例えば、塵や埃、水分等(以下「塵」を代表的に扱う)のが空気層5(中間層5)内に侵入するのを防止することができる。仮に空気層5(中間層5)に塵が一旦侵入してしまうと、この塵によって第1の工作機用窓2aや第2の工作機用窓2bが曇ってしまい、その曇りを除去するのは困難となる場合がある。しかしながら、前述したように塵の侵入が防止されていることにより、このような不具合の発生を防止することができる。
また、気密的封止により、空気層5(中間層5)内の圧力を大気圧と同じかまたはそれよりも高く設定することもできる。これにより、空気層5(中間層5)内が減圧状態となっている場合に比べて、空気層5(中間層5)での衝撃吸収性の向上を図ることができる。
空気層5(中間層5)内の圧力としては、特に限定されず、例えば、1〜10気圧であるのが好ましく、5〜10気圧であるのがより好ましい。
また、空気層5(中間層5)内には、例えば窒素等のような不活性ガスも充填されていてもよい。この場合、第1の工作機用窓2a、第2の工作機用窓2bの各基材21の構成材料にもよるが、例えば、当該基材21の空気層5(中間層5)側からの経時的な劣化を防止または抑制することができる。
第1のパッキン3a、第2のパッキン3bの構成材料としては、特に限定されず、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。
以上のような構成のマシニングセンタ10の窓ユニット1が備える第1、第2の工作機用窓2a、2bが、本発明の工作機用窓で構成されている。
《第1の工作機用窓2aおよび第2の工作機用窓2b》
第1、第2の工作機用窓2a、2bは、前述したように、それぞれ基材21とハードコート層22とを備えている。
本発明の工作機用窓は、前述したように、工作機械に装着され、その状態で前記工作機械の内部を視認する窓、該内部に光を採り込む窓のうちの少なくとも一方に用いられる工作機用窓であって、透光性を有する基材と、基材の一方の面側に設けられ、多官能(メタ)アクリレートを含有するハードコート層形成用組成物の硬化物で構成されたハードコート層と、を備え、下記要件Aを満足する。要件A:当該工作機用窓は、ASTM D673で規定された落砂摩耗試験に準拠して規定砂4000[g]を前記ハードコート層に向かって落下させ、前記落砂摩耗試験前のヘイズと前記落砂摩耗試験後のヘイズとの大きさの差をヘイズ増加量(4000[g])としたとき、該ヘイズ増加量(4000[g])が、20以下となる。
本発明によれば、工作機械で加工対象物を切削する際に生じる切りくずの衝突に起因する微細な傷の発生を抑制または防止し、長期にわたり優れた透明性を発揮することができる。
このように、本発明の工作機用窓は、上記要件Aを満たすものであるが、このような要件Aを満足するためには、ハードコート層22を後述するような構成にすることによる。
<基材21>
基材21は、透光性を有し、ハードコート層22を支持する機能を有している。
基材21の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料、ガラス等の各種無機材料等を用いることができる。これらの中でも、基材21の構成材料としては、樹脂材料であるのが好ましい。これにより、第1、第2の工作機用窓2a、2bの飛翔物40の衝突に対する耐衝撃性をより向上させることができる。
また、ポリカーボネート樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールと、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートとがカーボネート結合されている芳香族系ポリカーボネート樹脂を用いることができる。この芳香族系ポリカーボネート樹脂は、一般に、界面重縮合や、エステル交換反応などで合成される。
ビスフェノールとしては、ビスフェノールAや、下記式(1)に示すビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
上述したようなポリカーボネート樹脂の中でも、ビスフェノール骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート樹脂であること好ましい。これにより、透明性にさらに優れ、飛翔物40の衝突に対する耐衝撃性にさらに優れた基材21を得ることができる。
また、基材21には、ハードコート層22との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、あるいは、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、電子線照射処理等の表面の酸化処理が施されていてもよい。
ハードコート層22は、工作機用窓2a、2bの切りくず201の衝突に対する耐久性向上に寄与している。すなわち、本発明では、ハードコート層22は前記要件Aを満足することに寄与している。
ここで、ハードコート層は、通常、アクリル樹脂を含有する材料を用いて形成されるが、このようなハードコート層は、機械加工を繰り返すうちに、透明性が低下してしまう問題があった。そのため、工作機用窓を介して長期にわたりマシニングセンタ10の内部の様子を確認したり、マシニングセンタ10の内部に光を採り込んだりすることが困難であった。
そして、本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、前述ASTM D673で規定された落砂摩耗試験に準拠し、規定砂4000[g]をハードコート層22側に向かって落下させたときのヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1が20以下となる工作機用窓とすることで、長期にわたって切りくず201が衝突することに起因する工作機用窓の透明性の低下の問題を解決し得ることを見出し、本発明の完成に至った。
より具体的には、ヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1とは、以下のようにして算出される値である。なお、ヘイズとは、透明性に関する指標であり、濁度(曇度)を表すものである。
また、以下では、工作機用窓2a、2bは同様の構成であるため、以下では、工作機用窓2a、2bのうち、加工領域S1側に位置する工作機用窓2aのヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1の算出について代表して説明する。
まず、縦60mm×横60mm×厚さ8mmの工作機用窓2aを用意し、この工作機用窓2aについて、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電飾工業社製)により、拡散透過率Tdと、全光線透過率Ttとを求め、下記式(9)により、落砂摩耗試験前のヘイズT(ヘイズHz0)[%]を算出する。
T(%)=Td/Tt×100 ・・・・・(9)
次に、ASTM D 673に準じ、上島製作所社製の落砂摩耗試験機を用い、ハードコート層22側に規定砂(炭化ケイ素:カーボンランダム#80)が落下するように、工作機用窓2aを回転可能にサンプルホルダーに固定する。このとき、工作機用窓2aを試験機のサンプルホルダーに対して45°傾けて固定する。次いで、回転している工作機用窓2aに、規定砂4000[g]を自由落下させる。規定砂を落下させる条件としては、衝突速度が13km/hrであり、規定砂を落下させる高さがハードコート層22表面の中央部に対して60cmである。
次に、落砂摩耗試験後の工作機用窓2aについて、前述したヘイズを算出する方法と同様にして落砂摩耗試験後のヘイズT(ヘイズHz1)[%]を算出する。
そして、落砂摩耗試験後のヘイズHz1と落砂摩耗試験前のヘイズHz0との差(Hz1−Hz0)を算出することにより、ヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1が算出される。
また、ヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1は20以下であればよいが、0.01以上16以下であることが好ましく、0.1以上11以下であることがより好ましい。これにより、上記工作機用窓2a、2bの透明性が低下することを抑制または防止するという効果をより顕著に発揮することができる。
また、初期ヘイズHz0は、20[%]以下であることが好ましく、0.01[%]以上15[%]以下であることがより好ましく、0.1[%]以上10[%]以下であることがさらに好ましい。初期ヘイズHz0が前記数値範囲内の工作機用窓2a、2bは、十分な透明性を有し、視認用窓としての機能と、採光用窓としての機能とに特に優れている。また、このよう工作機用窓2a、2bは、比較的容易に製造することができ、生産性にも優れている。
また、ヘイズHz1は、20[%]以下であることが好ましく、0.01[%]以上16[%]以下であることがより好ましく、0.1[%]以上11[%]以下であることがさらに好ましい。ヘイズHz1が前記範囲内のハードコート層22であれば、切りくず201の衝突による微細な傷が特に生じ難く、より長期にわたって特に優れた透明性を発揮することができる。
また、前述したヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1と、規定砂1600[g]における落砂摩耗試験前後のヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2とが、ΔHz1−ΔHz2<12を満たすことが好ましく、0.01<ΔHz1−ΔHz2<9を満たすことがより好ましく、0.1<ΔHz1−ΔHz2<6.2を満たすことがさらに好ましい。
また、規定砂4000[g]をハードコート層22に落下させることが、長期にわたって切りくず201がハードコート層22の中央部に衝突することと近い状態を近似的に作り出し、規定砂1600[g]をハードコート層22に落下させることが、切りくず201が長期にわたってハードコート層22の中央部以外に衝突することと近い状態を近似的に作り出し、これらにより上記のような傾向を作り出すことが可能であった。
なお、本実施形態では、ハードコート層22の中央部に、切りくず201が衝突しやすい場合について詳述したが、ハードコート層22の中央部に限らず、ハードコート層22内の中央部以外の部分に切りくず201が衝突しやすい場合であっても、上記関係式を満足することにより、ハードコート層22全体にわたって、切りくず201の衝突による微細な傷が生じることを特に有効に防ぐことができる。
このヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2は、10以下であることが好ましく、0.01以上7以下であることがより好ましく、0.1以上5以下であることがさらに好ましい。これにより、前述したヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1とヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2との関係をより確実に満足することができ、よって、工作機用窓2a、2bは全体にわたって特に優れた透明性を維持し続けることができる。
また、規定砂1600[g]における落砂摩耗試験後のヘイズHz2は、10[%]以下であることが好ましく、0.01[%]以上7[%]以下であることがより好ましく、0.1[%]以上5[%]以下であることがさらに好ましい。これにより、前述したヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1とヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2との関係をより確実に満足することができ、よって、工作機用窓2a、2bは全体にわたって、より優れた透明性を維持し続けることができる。
以下、このハードコート層形成用組成物について詳細に説明する。
多官能(メタ)アクリレートは、ハードコート層22の強度を高め、ハードコート層22の切りくず201の衝突に対する耐久性向上に寄与している。
特に、多官能(メタ)アクリレートとして、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。これにより、ヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1が前述した範囲を満たすハードコート層22をより容易に得ることができ、よって、飛翔物40が衝突することに起因する微細な傷の発生を特に効果的に抑制することができる。
3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(A)多官能(メタ)アクリレート(以下、単に「(A)多官能(メタ)アクリレート」ということもある)とは、1分子中に、重合反応に寄与する(メタ)アクリロイル基が3個以上含まれている(メタ)アクリレートを意味する。
なお、本明細書では、アクリロイル基およびメタクリロイル基を総称して(メタ)アクリロイル基という。
また、(A)多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に重合反応に寄与する(メタ)アクリロイル基が3個以上含まれている(メタ)アクリレートであればよく、モノマー、オリゴマー全般を示し、その分子量および分子構造を特に限定するものではない。すなわち、多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に重合反応に寄与する(メタ)アクリロイル基が3個以上含まれている(メタ)アクリレートモノマーである多官能(メタ)アクリレートモノマーや、1分子中に重合反応に寄与する(メタ)アクリロイル基が3個以上含まれている(メタ)アクリレートオリゴマーである多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。
また、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとの反応生成物である。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合で、数平均分子量が600未満のものが望ましい。600以上では、硬化物の柔軟すぎてハードコート性能が得られない可能性があるからである。なお、ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸もしくはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得ることができる。ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸など、ジオールとしてはエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールなどが用いられる。
ポリカーボネートジオールとしては、1、4−ブタンジオール、1、6−へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコールなどが用いられ、1種でも2種以上を併用しても良い。
水酸基を有するアクリレートモノマーの例として、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレートが挙げられる。
また、多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる、両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。また、多官能ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、前述した中でも、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いるのが好ましい。多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの硬化物は、比較的高い硬度を有するとともに、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとが反応することにより形成された骨格を備えているため、適度な柔軟性を有している。このため、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、より優れた硬度と、より優れた靱性とを有するハードコート層22を得ることができ、よって、飛翔物40に対する耐衝撃性により優れた工作機用窓2a、2bを得ることができる。
また、多官能ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子中における(メタ)アクリロイル基の数が、6以上であることが好ましく、8以上15以下であることがより好ましく、9以上13以下であるのがさらに好ましい。(メタ)アクリロイル基の数が前記数値範囲内の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、硬化後には、特に表面硬度が高く、適度な柔軟性を有するものとなる。そのため、(メタ)アクリロイル基の数が前記数値範囲内の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることにより、より優れた硬度と、より優れた靱性とを有するハードコート層22を得ることができる。また、前述したヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1を満たす工作機用窓2a、2bをより容易に得ることができる。
2個の(メタ)アクリロイル基を有する2官能(メタ)アクリレート(以下、単に「2官能(メタ)アクリレート」ということもある)とは、1分子中に、重合反応に寄与する(メタ)アクリロイル基が2個含まれている(メタ)アクリレートを意味する。
2官能(メタ)アクリレートは、多官能(メタ)クリレートと比較して低粘度であるため、ハードコート層形成用組成物の希釈剤として寄与する。このため、2官能(メタ)アクリレートを含むことにより、ハードコート層形成用組成物を低粘度化することができ、ハードコート層形成用組成物の取扱性を向上させることができる。
また、2官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に重合反応に寄与する(メタ)アクリロイル基が2個含まれている(メタ)アクリレートであればよく、モノマー、オリゴマー全般を示し、その分子量および分子構造を特に限定するものではない。すなわち、2官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に重合反応に寄与する(メタ)アクリロイル基が2個含まれている(メタ)アクリレートモノマーである2官能(メタ)アクリレートモノマーや、1分子中に重合反応に寄与する(メタ)アクリロイル基が2個含まれている(メタ)アクリレートオリゴマーである2官能(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、その主骨格が鎖状である鎖式構造の2官能(メタ)アクリレートモノマーや、その主骨格が環状である環式構造の2官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
鎖式構造の2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
環式構造の2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の脂環式アクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジアクリレート等のビスフェノール型アクリレート等の芳香環式アクリレートの等が挙げられる。
また、2官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、2官能ウレタン(メタ)アクリレート、2官能エポキシ(メタ)アクリレート、2官能ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートとしては、上述したような2官能(メタ)アクリレートの中でも特に、ビスフェノール型(メタ)アクリレートであるのがより好ましく、ビスフェノールA型アクリレートであるのがさらに好ましい。ビスフェノール型(メタ)アクリレートを用いることで、基材21を構成する材料にビスフェノール型ポリカーボネート樹脂を用いた場合、基材21を構成する材料とハードコート層形成用組成物とは共に、ビスフェノール骨格を有することとなる。このため、基材21を構成する材料にビスフェノール型ポリカーボネート樹脂を用い、ハードコート層22を構成する材料(ハードコート層形成用組成物)にビスフェノール型(メタ)アクリレートを用いることで、基材21を構成する材料とハードコート層形成用組成物との親和性と特に優れたものとすることができる。これにより、基材21とハードコート層22との密着性を向上させることができる。そのため、工作機用窓2a、2bの飛翔物40に対する耐衝撃性や耐擦傷性等の耐久性をより向上させることができる。また、基材21とハードコート層22との密着性を向上することで、前述したヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1を満たす工作機用窓2a、2bをより容易に得ることができる。
また、シロキサン変性(メタ)アクリレートや、フィラーを含み、多官能(メタ)アクリレートとして2官能(メタ)アクリレートを含む場合、前記多官能(メタ)アクリレートと、前記シロキサン変性(メタ)アクリレートと、前記フィラーの合計100重量部に対する2官能(メタ)アクリレートの含有率は、特に限定されないが、8重量部以上40重量部以下であるのが好ましく、10重量部以上35重量部以下であるのがより好ましい。2官能(メタ)アクリレートの含有率が、前記下限値未満であると、ハードコート層形成用組成物を構成する材料の組み合わせや、基材21を構成する材料の種類等によっては、基材21とハードコート層22との密着性が若干低下する可能性がある。また、2官能(メタ)アクリレートの含有率が、前記上限値を超えると、2官能(メタ)アクリレート以外のハードコート層形成用組成物を構成する材料の含有率が減少し、ハードコート層22の硬度が低くなるおそれがある。
このような多官能(メタ)アクリレートを含有するハードコート層形成用組成物は、さらにシロキサン変性(メタ)アクリレートや、フィラーを含んでいることが好ましい。これにより、前述したようなヘイズ増加量(4000[g])が前述した範囲をより確実に満たすことができ、よって、長期にわたって特に優れた透明性を発揮することが可能な工作機用窓2a、2bを得ることができる。
[シロキサン変性(メタ)アクリレート]
シロキサン変性(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系化合物と、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有する化合物とが結合したものである。
このような構成のシロキサン変性(メタ)アクリレートを含むことにより、ハードコート層22の表面硬度をさらに高くすることができる。よって、シロキサン変性(メタ)アクリレートを含むハードコート層22を備えることで、切りくず201に対する耐擦傷性に特に優れた工作機用窓2a、2bを得ることができる。また、シロキサン変性(メタ)アクリレートは、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有することで、優れた撥油性を発揮する。このため、シロキサン変性(メタ)アクリレートを含むハードコート層形成用組成物から得られる硬化物、すなわち、ハードコート層22は、潤滑油の液滴や霧状(オイルミスト)等の飛翔物40に対する耐油性に優れたものとなる。そのため、このようなハードコート層22を用いることで、飛翔物40に対する耐油性に特に優れた工作機用窓2a、2bを得ることができ、よって、潤滑油による工作機用窓2a、2bの視認性の低下を特に効果的に抑制することができる。
シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有する化合物は、具体的には、下記式(2)および式(3)で表されるシロキサン結合を有する構造単位のうちの少なくとも一方の構造単位を有するものが挙げられる。これにより、潤滑油の液滴や霧状(オイルミスト)等の飛翔物40に対する耐油性に特に優れたハードコート層22となる。
シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有する化合物としては、具体的には、ポリオルガノシロキサンや、シルセスキオキサンが挙げられ、中でもシルセスキオキサンが好ましい。シルセスキオキサンの硬化物は、比較的高い硬度を有するとともに、適度な柔軟性を有する。そのため、シルセスキオキサンを用いることで、飛翔物40に対する耐衝撃性や耐擦傷性に優れるとともに、靱性により優れたハードコート層22を得ることができる。よって、飛翔物40に対する耐衝撃性等の耐久性に特に優れた工作機用窓2a、2bを得ることができる。
また、シルセスキオキサンとしては、ランダム構造、籠型構造、ラダー構造(はしご型構造)等、いかなる構造であってもよいが、特にラダー構造であるのが好ましい。これにより、飛翔物40に対する耐衝撃性や耐擦傷性に特に優れたハードコート層22を得ることができる。
また、(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、下記式(4)や式(5)で表される構造を有するものが挙げられ、中でも特に、式(4)および式(5)で表される双方の構造を有するものが好ましい。式(4)および式(5)で表される双方の構造としては、例えば、下記式(6)で表される構造が挙げられる。上記構造を有するシロキサン変性(メタ)アクリレートを用いることにより、ハードコート層22全体の表面硬度および靱性を特に優れたものとすることができる。また、前述したヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1を満たすハードコート層22をより確実に得ることができ、飛翔物40が衝突することに起因する微細な傷の発生をより的確に防ぐことができる。このように、上記構造を有するシロキサン変性(メタ)アクリレートを用いることにより、飛翔物40対する耐衝撃性や耐擦傷性に特に優れた工作機用窓2a、2bを得ることができ、よって、工作機用窓2a、2bは、より優れた透明性を長期にわたり維持し続けることができる。
以上のような構成を有するシロキサン変性(メタ)アクリレートとしては、上記のような理由から、例えば、下記式(7)、式(8)で表される化合物が好ましく用いられる。
フィラーは、ハードコート層22の表面硬度のさらなる向上に寄与している。そのため、フィラーを含むことでハードコート層形成用組成物を用いて得られたハードコート層22は、切りくず201に対する耐擦傷性に特に優れたものとなる。よって、フィラーを含むハードコート層22を用いれば、ヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1が前述した範囲を満たす工作機用窓2a、2bをより容易に得ることができる。その結果、飛翔物40が衝突することに起因する微細な傷の発生を特に効果的に抑制することができる。
フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、湿式、乾式等の非結晶シリカや結晶シリカ等のシリカ、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、ガラス、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属酸化物等の無機フィラー、木粉、パルプ、および熱硬化性樹脂硬化物等の有機フィラー等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、無機フィラーであることが好ましい。無機フィラーは、一般的に有機フィラーに比べて硬く、破損しにくい。したがって、ハードコート層形成用組成物に無機フィラーを含むことで、ハードコート層22の硬度をより高くすることができる。その結果、工作機用窓2a、2bの、飛翔物40に対する耐衝撃性をより高めることができ、飛翔物40が衝突することに起因する微細な傷の発生をより効果的に抑制することができる。
また、フィラーとしてシリカを用い、前記シロキサン変性(メタ)アクリレートとして、シロキサン変性(メタ)アクリレート構成するアクリル系化合物の重合度が100以上200以下のものを用いた場合、これらの親和性を特に高くすることができる。そのため、ハードコート層形成用組成物中におけるシリカの分散性を高めることができ、よって、シリカが均一に混ざった状態のハードコート層22を得ることができる。その結果、ハードコート層22全体の、表面硬度をさらに高くすることができる。また、シリカと、アクリル系化合物の重合度が100以上200以下のシロキサン変性(メタ)アクリレートとを含むハードコート層22を用いることで、ヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1とヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2との関係を満たす工作機用窓2a、2bをより容易に得ることできる。そのため、全体にわたって特に優れた透明性を、より長期間維持し続けることが可能な工作機用窓2a、2bをより確実に得ることできる。
フィラーの形状が粒子状である場合、フィラーの平均粒径は、特に限定されないが、0.001μm以上5μm以下であるのが好ましく、0.005μm以上1μm以下であるのがより好ましい。これにより、平滑性に特に優れ、硬度が特に高いハードコート層22を形成することができる。
なお、前記フィラーの平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布計(HORIBA製「LA−500」)により測定することができる。
また、フィラーは、粒子状をなし、その粒子表面に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が導入されているものであるのが好ましい。フィラーの表面に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を導入することにより、フィラーと、多官能アクリレートと、シロキサン変性アクリレートとは、全て(メタ)アクリロイル基を有していることとなる。このため、各材料(多官能アクリレート、シロキサン変性アクリレート、およびフィラー)の親和性を特に優れたものとすることができる。各材料の親和性が優れることで、各材料が均一に混ざった状態のハードコート層22を得ることができる。また、フィラーの表面に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を導入することにより、フィラー、多官能アクリレート、およびシロキサン変性アクリレートを化学的に結合させることができる。このようなことから、均質で、かつ、硬度が特に高いハードコート層22を得ることができ、よって、ハードコート層22全体の、飛翔物40に対する耐衝撃性、耐擦傷性をより優れたものとすることができる。また、前述したヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1とヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2との関係をより確実に満たすことでき、よって、ハードコート層22において飛翔物40の衝突のしやすさに偏りがある場合でも、全体にわたって特に優れた透明性を、より長期間維持し続けることが可能な工作機用窓2a、2bをより確実に得ることできる。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物をフィラーの表面に導入する方法としては、シラン系カップリング剤を用いた方法が特に好ましく用いられる。これにより、フィラーの表面に(メタ)アクリロイル基をより容易に導入することができる。
また、シロキサン変性(メタ)アクリレートや、フィラーを含む場合、前記多官能(メタ)アクリレートと、前記シロキサン変性(メタ)アクリレートと、前記フィラーの合計100重量部に対するフィラーの含有率は、特に限定されないが、15重量部以上48重量部以下であるのが好ましく、20重量部以上35重量部以下であるのがより好ましい。フィラーの含有率が前記下限値未満であると、ハードコート層形成用組成物を構成する材料の組み合わせ等によっては、ハードコート層22全体の硬度が若干低下するおそれがある。また、フィラーの含有率が前記上限値を超えると、フィラー以外のハードコート層形成用組成物を構成する材料の含有率が減少し、ハードコート層22の撥油性が若干低下する可能性がある。
ハードコート層形成用組成物は、上述した材料(多官能(メタ)アクリレート、シロキサン変性(メタ)アクリレート、およびフィラー)以外のその他の材料を含んでいてもよい。
その他の材料としては、例えば、上述した多官能(メタ)アクリレート、およびシロキサン変性(メタ)アクリレート以外の樹脂材料(例えば、単官能(メタ)アクリレート等)、重合開始剤、増感剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤、酸化防止剤、酸化防止剤、還元防止剤、帯電防止剤、表面調整剤、および溶剤等が挙げられる。
溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、メチルエチルケトン、2−ぺンタノン、イソホロンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシブタノールなどのグリコール系溶剤などが挙げられる。これらは単独または混合して使用することができる。
表面調整剤は、塗膜の基材への濡れ性や均一性、表面の平滑性および硬化した塗膜の表面スリップ性の向上を目的として添加されるものであり、例えばフッ素系、変性シリコーン系、アクリル系の調整剤を使用することができる。中でも、フッ素系および変性シリコーン系のうちの少なくとも一方を含むものが好ましい。これらは、ポリエーテル変性体、アルキル変性体、ポリエステル変性体から構成されているものが好ましく、特にポリエーテル系から構成されているものが好ましい。
なお、このようなハードコート層形成用組成物は、室温で液状、固形状のいずれの形態であってもよい。
また、以上のような各材料を含むハードコート層形成用組成物を用いてハードコート層22は形成されている。
具体的には、ハードコート層22は、当該ハードコート層22となるワニス状のハードコート層形成用組成物を基材21の面211上に塗布して、この塗布されたものに紫外線を照射することに硬化することにより得られる。
その後、塗布されたハードコート層形成用組成物を硬化する工程を有することにより、ハードコート層形成用組成物の硬化物であるハードコート層22を形成する。
例えば、ハードコート層形成用組成物を基材21上に塗布し、希釈溶剤を含む場合には、基材21および雰囲気の温度を上げて十分に希釈溶剤を乾燥して塗膜を形成した後、紫外線照射して塗膜を硬化させることで、ハードコート層22を形成させることができる。紫外線照射は、例えば、一般の有電極型や無電極型の高圧水銀灯やメタルハライドランプなどが使用可能である。また、100KeV程度の低電圧の電子線照射装置も使用可能である。電子線を硬化手段とする場合は、後述する光重合開始剤は不要となる。
基材21にハードコート層形成用組成物を塗工する際、ハードコート層形成用組成物の塗膜の厚みは特に制限されないが、ハードコート層22として実用的な性能を得るためには1μm以上、50μm以下であることが好ましい。ハードコート層形成用組成物の塗膜の厚みを上記範囲とすることにより、紫外線照射によって内部まで均一に硬化させることが可能となり、また、ハードコート層22と基材21との密着性がさらに良好になり、塗膜の硬化収縮によるクラックなどがさらに発生しにくくなる。
図3は、本発明の工作機用窓を備える窓ユニットの第2実施形態を示す断面図(第1の工作機用窓の変位状態を示す図)、図4は、図3(a)中の矢印B方向から見た図(平面図)である。
以下、これらの図を参照して本発明の工作機用窓を備える窓ユニットの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、スペーサの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図3に示すように、本実施形態では、スペーサ43Aは、弾性を有する複数の部材、すなわち、複数の圧縮コイルバネ431で構成されている。図4に示すように、圧縮コイルバネ431の設置数は、4つであり、各圧縮コイルバネ431は、それぞれ、長方形をなす第1の工作機用窓2aの角部付近に当接している(第2の工作機用窓2bについても同様)。なお、第1の工作機用窓2aの圧縮コイルバネ431が当接する当接部212は、基材21をその厚さ方向の途中まで凹没して形成した凹部の底部で構成されているのが好ましい。これにより、圧縮コイルバネ431の位置ズレを防止することができる。
圧縮コイルバネ431の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等のような各種金属材料を挙げることができる。
このような圧縮コイルバネ431を有することにより、第1の工作機用窓2aが全体としても外側へ変位することができる。
例えば飛翔物40が前記第1実施形態で例示した(想定している)破片104’、切りくず201よりも質量が大きいものの場合、第1の工作機用窓2aに作用する衝撃は、前記第1実施形態での衝撃よりも大きくなる。本実施形態では、窓ユニット1は、前述したハードコート層22と空気層5(中間層5)との相乗効果の他に、さらに、第1の工作機用窓2a全体の変位、すなわち、圧縮コイルバネ431の弾性による効果も加わり、当該衝撃に十分に耐え得る構成となっている。
図5は、本発明の工作機用窓を備える窓ユニットの第3実施形態を示す断面図(第1の工作機用窓の変位状態を示す図)である。
以下、この図を参照して本発明の工作機用窓を備える窓ユニットの第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、スペーサの構成が異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
図5に示すように、本実施形態では、スペーサ43Bは、下側に配された圧縮コイルバネ431と、上側に配され圧縮コイルバネ432とで構成されている。圧縮コイルバネ432は、圧縮コイルバネ432よりもバネ定数が小さいものとなっている。これにより、第1の工作機用窓2aは、その上側の部分の方が下側の部分よりも変位し易い、すなわち、優先的に変位する。
例えば、質量が比較的大きい飛翔物40の飛翔方向が、図5中の右斜め下方からであるという傾向がある場合、このように変位の程度に差があることにより、当該飛翔物40からの衝撃に十分に耐えることができる。
図6は、本発明の工作機用窓を備える窓ユニットの第4実施形態を示す分解斜視図である。
以下、この図を参照して本発明の工作機用窓を備える窓ユニットの第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、枠体の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図6に示すように、本実施形態では、枠体4は、本体部44と、本体部44に対して着脱自在な蓋部45との2個の部材で構成されている。本体部44は、平面視で四角形状をなす枠体4の3本の辺に相当する部分を構成し、蓋部45は、残りの1本の辺に相当する部分を構成する。そして、第1の工作機用窓2aおよび第2の工作機用窓2bがそれぞれ差し込まれた本体部44と、蓋部45とを組み立てた状態で、これらの部材同士を、4本のボルト46により締結することができる。これにより、窓ユニット1が得られる。
このような構成により、窓ユニット1全体を交換しなくとも、破損した部材のみを交換すれば、窓ユニット1をそのまま使用することができる、すなわち、窓ユニット1の使用をそのまま継続することができる。よって、窓ユニット1のMTBF(Mean Time between Failure)をできる限り長くすることがきる。
なお、本体部44には、ボルト46が螺合する4つの雌ネジ441が設けられている。また、蓋部45には、雌ネジ441に螺合するボルト46が挿通する貫通孔451が設けられている。
また、窓ユニット1は、本実施形態では第1の工作機用窓2aおよび第2の工作機用窓2bの双方が交換可能に構成されているが、これに限定されず、第1の工作機用窓2aおよび第2の工作機用窓2bのうちの一方のみが交換可能に構成されていてもよい。
また、本発明の工作機用窓は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、工作機用窓は、前記各実施形態では視認用窓としての機能と、採光用窓としての機能との2個の機能を有しているが、これに限定されず、マシニングセンタでの設置箇所によっては、当該2個の機能のうちの一方の機能のみを有する場合もある。
また、窓ユニットは、前記各実施形態では第1の工作機用窓と第2の工作機用窓とを有する構成であるが、これに限定されず、例えば、さらに第3の工作機用窓を有する構成であってもよい。また、第2の工作機用窓を備えておらず、第1の工作機用窓のみを有する構成であってもよい。
また、窓ユニットは、前記各実施形態では空気層を有するものであったが、空気層は省略されていてよい。
また、窓ユニットは、枠体や各パッキンが省略され、第1の工作機用窓および第2の工作機用窓が直接的にマシニングセンタの外装に装着されてもよい。
また、工作機用窓(第1の工作機用窓および第2の工作機用窓)は、それぞれ、基材とハードコート層との間に中間層が介在していてもよい。中間層としては、例えば、基材とハードコート層との親和性が比較的低い場合に、基材にハードコート層を接合する接合層とすることができる。
また、前述した実施形態では、微細な傷を発生させる要因として、加工時に生じる切りくずを代表的に挙げて説明したが、本発明によれば、微細な傷を発生させる要因は、切りくずに限定されず、切りくず以外の微小な飛翔物等であってもよい。
(実施例1)
1.ハードコート層形成用組成物の作製
まず、ハードコート層形成用組成物を作製するにあたり、フィラーとしてのアクリロイル基が導入されているシリカ粒子Aを作製した。
具体的には、シリカ粒子(平均粒径0.020μm、商品名「CP−102」、トクヤマ社製)を、プロピレングリコールモノメチルエーテル中に分散させ、この分散液をミキサーにて撹拌・混合させた。その後、この分散液を攪拌しながら、シランカップリング剤3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−5103」、信越化学工業社製)を添加した。これにより、アクリロイル基が導入されているシリカ粒子Aを得た。
次に、ハードコート層形成用組成物を、以下のようにして作製した。
多官能(メタ)アクリレートとして10官能ウレタンアクリレート(商品名「U−10HA」、新中村化学工業社製、および6官能アクリレート(商品名「A−DPH」、新中村化学工業社製)と、2官能(メタ)アクリレートとして2官能ビスフェノールA型アクリレート(商品名「A−BPE−4」、新中村化学工業社製)と、シロキサン変性(メタ)アクリレートとしてシリコン変性(メタ)アクリル樹脂(商品名「SQ200」、トクシキ社製)と、フィラーとして上記作製したアクリロイル基が導入されているシリカ粒子Aと、を配合し、上記10官能ウレタンアクリレートと、6官能アクリレートと、2官能ビスフェノールA型アクリレートと、シロキサン変性(メタ)アクリレートと、シリカ粒子Aの合計濃度が、30質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈した。
ここへ、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)と、表面調整剤として変性シリコーン(商品名「グラノール450」、共栄社化学社製)と、を添加し、ハードコート層形成用組成物を調整した。
なお、ハードコート層形成用組成物中における各材料は、表1に示す含有率となるように配合した。
このように、作製されたハードコート層形成用組成物は十分に攪拌混合した後、密閉容器に保存した。
次に、基材として厚さ8mmのポリカーボネートシート(商品名ポリカエースECK100UU」、住友ベークライト社製)を準備し、金属製のバーコーターを用いてウェット膜厚が55μmになるように、ハードコート層形成用組成物をポリカーボネートシートの一方の面上に塗布した。ハードコート層形成用組成物が塗布されたポリカーボネートシートを、60℃の熱風循環型オーブンに入れ、10分間乾燥した後、無電極UVランプ(Hバルブ)(ヘレウス・ノーブルライト・フュージョン・ユーブイ社製)を用い、照射距離50mm、コンベア搬送速度3m/minの条件で、乾燥したハードコート層形成用組成物の塗膜に紫外線を照射し、前記塗膜を硬化させ、ドライ膜厚10μmのハードコート層を備える工作機用窓(ハードコート層を備える基材)を得た。
ハードコート層形成用組成物を構成する材料の種類や含有量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてハードコート層形成用組成物を作製した。また、ハードコート層の膜厚、基材の種類や膜厚を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして工作機用窓を得た。
(比較例1)
ハードコート層形成用組成物の各材料の含有量を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてハードコート層を得た。
(比較例2)
表1に示すように、ハードコート層を用いずに、基材としてのポリカーボネートシート(商品名ポリカエースECK100UU」、住友ベークライト社製)のみで構成された工作機用窓を得た。
なお、表1中、多官能(メタ)アクリレートとして10官能ウレタンアクリレート(商品名「U−10HA」、新中村化学工業社製)を「10官能ウレタンアクリレート」、
多官能(メタ)アクリレートとして6官能アクリレート(商品名「A−DPH」、新中村化学工業社製)を「6官能アクリレート」、多官能(メタ)アクリレートとして6官能ウレタンアクリレート(商品名「U−6HA」、新中村化学工業社製)を「6官能ウレタンアクリレート」、多官能(メタ)アクリレートとして15官能ウレタンアクリレート(商品名「U−15HA」、新中村化学工業社製)を「15官能ウレタンアクリレート」、多官能(メタ)アクリレートとして4官能アクリレート(商品名「A−TMMT」、新中村化学工業社製)を「4官能アクリレート」、多官能(メタ)アクリレートとして8官能アクリレート(商品名「V#802」、大阪有機化学工業社製)を「8官能ウレタンアクリレート」、2官能(メタ)アクリレートとして2官能ビスフェノールA型アクリレート(商品名「A−BPE−4」、新中村化学工業社製)を「2官能ビスフェノールA型アクリレート」、2官能(メタ)アクリレートとして2官能鎖式アクリレート(商品名「A−NOD−N」、新中村化学工業社製)を「2官能鎖式アクリレート」、シロキサン変性(メタ)アクリレートとしてシリコン変性(メタ)アクリル樹脂(商品名「SQ200」、トクシキ社製)を「シロキサン変性(メタ)アクリレート」、フィラーとしてシリカ粒子B(平均粒径0.020μm、商品名「CP−102」、トクヤマ社製)を「シリカ粒子B」、フィラーとして、上記作製したアクリロイル基が導入されているシリカ粒子Aを「アクリロイル基が導入されているシリカ粒子A」、重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)を「重合開始剤」、表面調整剤として変性シリコーン(商品名「グラノール450」、共栄社化学社製)を「表面調整剤」で示した。
なお、各実施例および各比較例のハードコート層の膜厚は、非接触膜厚測定装置MCS500(カール・ツァイス社製)により測定した。
以下の評価を行うにあたり、各実施例および各比較例にて得られた工作機用窓から、中央平面部付近から任意の大きさに切り出したサンプルを用いて、以下の評価を行った。
<1>耐衝撃性評価
各実施例および比較例の工作機用窓について、切り出したサンプル(100mm×100mm)を用いて、それぞれ、ASTM D 3763に準じて計装化面衝撃試験を行った。この結果を表1に示す。また、衝撃強度が、100以上のものを合格、100以下のものを不合格とした。
計装化面衝撃試験は、GRCインスツルメンツ社製の落錘型衝撃試験機DYNATUP8250を用い、サンプルの周縁部を固定し、サンプルの中央部に先端が半球状の錘体を打ち出し、錘体の先端がサンプルを貫通するのに要するエネルギー(衝突エネルギー)量[J]を測定する方法により行った。なお、サンプルの周縁部を固定する際には、サンプルのハードコート層側に錘が落下するように、サンプルを固定した。また、ハードコート層表面に対する錘の落下高さは75cmとした。また、錘は、重さ12.8kg、撃芯先端直径1/2インチであり、打ち出し速度は、5.8m/secとした。
<2−1>初期ヘイズHz0の評価
各実施例および比較例の工作機用窓について、切り出したサンプル(60mm×60mm)を用いて、ヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電飾工業社製)により、拡散透過率Tdと、全光線透過率Ttとを求め、下記式(9)によりヘイズT(%)を算出した。この結果を表1に示す。なお、ヘイズとは、透明性に関する指標であり、濁度(曇度)を表すものである。20%以下であれば透明性は良好である。
T(%)=Td/Tt×100 ・・・・・(9)
各実施例および比較例の工作機用窓について、まず、切り出したサンプル(60mm×60mm)を用いて、それぞれ、ASTM D 673に準じて、落砂摩耗試験を行い、落砂摩耗試験前後のヘイズを前記<2−1>と同様の方法にて算出し、落砂量4000gにおける落砂摩耗試験後のサンプルのヘイズHz1を求めた。
なお、各落砂摩耗試験は、上島製作所社製の落砂摩耗試験機を用い、前記試験機のサンプルホルダーにサンプルを45°傾け、回転可能に固定し、回転しているサンプルに、炭化ケイ素(カーボンランダム#80)を自由落下させ、サンプルに傷をつけるようにする方法により行った。また、落砂量4000gにおける落砂摩耗試験の測定条件としては、衝突速度を13km/hrとし、サンプル表面に対して衝突物を落下させる高さを60cmとした。
次に、求めたヘイズHz1と、前記<2−1>で求めた初期ヘイズHz0との差(Hz1−Hz0)を算出することにより、ヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1を求めた。
各実施例および比較例の工作機用窓について、求めたヘイズHz1と、ヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1とを表1に示す。
また、ヘイズHz1が、16以下のものを特に良好、16を超え20以下のものを良好、20を超えるものを不合格とした。
また、ヘイズ増加量ΔHz1が、16以下のものを特に良好、16を超え20以下のものを良好、20を超えるものを不合格とした。
各実施例および比較例の工作機用窓について、まず、切り出したサンプル(60mm×60mm)を用いて、それぞれ、ASTM D 673に準じて、落砂摩耗試験を行い、落砂摩耗試験前後のヘイズを前記<2−1>と同様の方法にて算出し、落砂量1600gにおける落砂摩耗試験後のサンプルのヘイズHz2を求めた。
なお、各落砂摩耗試験は、上島製作所社製の落砂摩耗試験機を用い、前記試験機のサンプルホルダーにサンプルを45°傾け、回転可能に固定し、回転しているサンプルに、炭化ケイ素(カーボンランダム#80)を自由落下させ、サンプルに傷をつけるようにする方法により行った。また、落砂量1600gにおける落砂摩耗試験の測定条件としては、衝突速度を13km/hrとし、サンプル表面に対して衝突物を落下させる高さを60cmとした。
次に、求めたヘイズHz2と、前記<2−1>で求めた初期ヘイズHz0との差(Hz2−Hz0)を算出することにより、ヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2を求めた。
各実施例および比較例の工作機用窓について、求めたヘイズHz2と、ヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2とを表1に示す。
また、ヘイズHz2が、7以下のものを特に良好、7を超え10以下のものを良好、10を超えるものを不合格とした。
また、ヘイズ増加量ΔHz2が、7以下のものを特に良好、7を超え10以下のものを良好、10を超えるものを不合格とした。
各実施例および比較例の工作機用窓について、前記<2−2>で求めたヘイズ増加量(4000[g])ΔHz1と前記<2−3>で求めたヘイズ増加量(1600[g])ΔHz2との差(ΔHz1−ΔHz2)を算出した。この結果を表1に示す。
また、ΔHz1−ΔHz2が、9以下のものを特に良好、9を超え12以下のものを良好、12を超えるものを不合格とした。
各実施例および比較例の工作機用窓について、切り出したサンプル(100mm×100mm)を用いて、暗室内で、3波長型蛍光灯(20W)の直下10cmの距離で目視観察し、サンプルのハードコート層表面の曇りの有無、表面の平滑性を確認し、以下の評価基準(有、無)に従い評価した。
有:曇りが見られた。
無:曇りが見られなかった。
各実施例および比較例の工作機用窓について、切り出したサンプル(100mm×100mm)を用いて、潤滑油(商品名「ユシローケンFGS700」、ユシロ化学工業社製)の中に、40℃で14日間浸漬した。その後、サンプルを取り出し、付着した潤滑油をウエスで拭き取りサンプルの状態を観察し、以下の評価基準に従い評価した。表1に、各実施例および各比較例の評価結果を示した。
○:ハードコート層の外観に変化は見られなかった。
△:ハードコート層に変色が見られた。
×:ハードコート層が膨潤、または、ハードコート層が基材から剥離していた。
2a 第1の工作機用窓
2b 第2の工作機用窓
21 基材
211 面
212 当接部
22 ハードコート層
3a 第1のパッキン
3b 第2のパッキン
4 枠体(窓枠)
41 貫通孔
421 第1の凹部(第1の溝)
422 第2の凹部(第2の溝)
43、43A、43B スペーサ
431、432 圧縮コイルバネ
44 本体部
441 雌ネジ
45 蓋部
451 貫通孔
46 ボルト
5 空気層(中間層)
10 マシニングセンタ
101 構造体
102 外装
102a スタッドボルト
102b ナット
103 操作パネル
104 バイト
104’ 破片
105 制御部
106 液晶パネル
107 操作ボタン
20 円柱体
201 切りくず
30 潤滑油
40 飛翔物
S1 加工領域
S2 操作領域
t1、t2、t3 厚さ
ttotal 総厚
Claims (8)
- 工作機械に装着され、その状態で前記工作機械の内部を視認する窓、該内部に光を採り込む窓のうちの少なくとも一方に用いられる工作機用窓であって、
透光性を有する基材と、
基材の一方の面側に設けられ、多官能(メタ)アクリレートを含有するハードコート層形成用組成物の硬化物で構成されたハードコート層と、を備え、
下記要件Aを満足することを特徴とする工作機用窓。
要件A:当該工作機用窓は、ASTM D673で規定された落砂摩耗試験に準拠して規定砂4000[g]を前記ハードコート層に向かって落下させ、前記落砂摩耗試験前のヘイズと前記落砂摩耗試験後のヘイズとの大きさの差をヘイズ増加量(4000[g])としたとき、該ヘイズ増加量(4000[g])が、20以下となる。 - 規定砂1600[g]を前記ハードコート層側に向かって落下させ、前記落砂摩耗試験前のヘイズと前記落砂摩耗試験後のヘイズとの大きさの差をヘイズ増加量(1600[g])としたとき、該ヘイズ増加量(1600[g])が、10以下となる請求項1に記載の工作機用窓。
- 前記多官能(メタ)アクリレートは、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含む請求項1または2に記載の工作機用窓。
- さらに、前記ハードコート層形成用組成物は、シロキサン変性(メタ)アクリレートを含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の工作機用窓。
- さらに、前記ハードコート層形成用組成物は、フィラーを含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の工作機用窓。
- 前記フィラーは、無機材料で構成されている請求項5に記載の工作機用窓。
- 前記フィラーは、粒子状をなし、
前記フィラーは、その粒子表面に(メタ)アクリロイル基を有する化合物が導入されているものである請求項5または6に記載の工作機用窓。 - 前記基材は、主としてビスフェノール型ポリカーボネート樹脂で構成されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の工作機用窓。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014023886A JP6167925B2 (ja) | 2014-02-10 | 2014-02-10 | 工作機用窓 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014023886A JP6167925B2 (ja) | 2014-02-10 | 2014-02-10 | 工作機用窓 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015151411A JP2015151411A (ja) | 2015-08-24 |
JP6167925B2 true JP6167925B2 (ja) | 2017-07-26 |
Family
ID=53894035
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014023886A Active JP6167925B2 (ja) | 2014-02-10 | 2014-02-10 | 工作機用窓 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6167925B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107608207B (zh) * | 2017-07-05 | 2020-10-27 | 佛山缔乐视觉科技有限公司 | 一种基于机器学习的铝型材落砂检测方法 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH01244848A (ja) * | 1988-03-28 | 1989-09-29 | Dainippon Printing Co Ltd | ハードコートフィルム及びその製造方法 |
JPH0885191A (ja) * | 1994-09-16 | 1996-04-02 | Takiron Co Ltd | 工作機器用強化窓板 |
JP2005272708A (ja) * | 2004-03-25 | 2005-10-06 | Fuji Photo Film Co Ltd | 表面処理ポリカーボネート成形品 |
JP2008150484A (ja) * | 2006-12-18 | 2008-07-03 | Momentive Performance Materials Japan Kk | ハードコート用組成物 |
JP2015112670A (ja) * | 2013-12-10 | 2015-06-22 | 住友ベークライト株式会社 | 工作機用窓、およびハードコート層形成用組成物 |
-
2014
- 2014-02-10 JP JP2014023886A patent/JP6167925B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2015151411A (ja) | 2015-08-24 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP7064313B2 (ja) | ハードコート積層フィルム | |
US8236406B2 (en) | Fingerprint easily erasible film | |
CN1831071B (zh) | 防眩性硬涂膜 | |
US20020028328A1 (en) | Very fine anti-glare hard coat film | |
JP2015112670A (ja) | 工作機用窓、およびハードコート層形成用組成物 | |
JP6720639B2 (ja) | ハードコートフィルム | |
US6869673B2 (en) | Transparent hard coat film | |
JP6476676B2 (ja) | 車両用風防板 | |
JP4840074B2 (ja) | 表示体カバー用樹脂積層体 | |
JP6303726B2 (ja) | 窓部材 | |
JP6167925B2 (ja) | 工作機用窓 | |
JP5541457B2 (ja) | ハードコートフィルム | |
JP5779939B2 (ja) | ハードコートフィルム及びそれを用いたハードコート樹脂成型体 | |
JP6459444B2 (ja) | 工作機用窓 | |
JP6609915B2 (ja) | 窓部材 | |
JP2018034562A (ja) | 窓用部材および車両 | |
JP6146283B2 (ja) | 窓ユニット | |
WO2015008869A1 (ja) | 複合体および工作機械用部品 | |
JP2022093244A (ja) | 抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物、コーティング層、抗菌性部材、および物品 | |
JP2017002573A (ja) | 折板、平板および樹脂組成物 | |
JP6919162B2 (ja) | 窓用部材および車両 | |
JP2020185794A (ja) | 表面硬度及び耐擦傷性に優れた被覆ポリカーボネート基板及びその製造方法 | |
JP6680019B2 (ja) | 風防板および車両 | |
JP6680018B2 (ja) | 風防板および車両 | |
JP6680020B2 (ja) | 風防板および車両 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20161011 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20170517 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20170530 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20170612 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 6167925 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |