前掲の特許文献4に開示される技術は、上述のとおり、座部、フットレストおよびバックレストがフラットな状態となるように構成されたものであるが、リフト機構は、カムを備えたフットペダルの操作によるものであり、上位および下位の高さ変動のみを可能にするものであった。また、脚フレームが前方に延出して設けられており、この脚フレームがベッド下部に侵入することにより、ベッドに横臥する要介護者をフラットな座部等に移動したときのバランスを維持させることできるものとなっているが、この脚フレームの設置範囲が座面等に対向する程度であるため、ベッドの一側面から反対側面へ向かって大きく侵入するものではなかった。さらに、座面等は、フラットな状態でベッド表面に設置されるものであるから、横臥する要介護者を移乗させる場合には、ベッド上で寝返るように介助する必要があった。なお、上記装置は、駆動車輪を有しない一般的な車椅子として構成されているため、当該装置に移乗した要介護者の移動そのものについて、介助者の補助が必須となるものであった。
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、搬送物や要介護者をワイヤ部材によって吊り下げ可能とした自走式の移動台車を提供するものであり、吊り下げ時におけるバランス調整が可能な装置を提供することである。
そこで、本発明は、駆動車輪および荷台を有する基部と、この基部に立設された支柱と、この支柱の先端から横向きに突設されたブームと、このブームの先端から垂下可能なワイヤ部材とを備える移動台車において、前記基部の下方において横向きに進退可能な補助脚と、この補助脚の下端縁に当接して下向きの移動を規制する規制部と、前記補助脚の先端に転動可能に装着された補助車輪と、前記補助脚の両端が上下方向に揺動自在とするための枢軸と、この枢軸とともに前記補助脚の進退方向を規制するガイド部材とを備え、前記枢軸による前記補助脚の揺動は、該枢軸が前記規制部を越えて前進するとき、該補助脚の後方が下向きに揺動することを制限し、該枢軸が前記規制部よりも後方に位置するとき、該補助脚の後方の揺動を解除させるものであることを特徴とする。
上記構成によれば、基本的には基部に設置される駆動車輪の駆動力により自走可能となっている。そして、補助脚がガイド部材に沿って進退可能となっており、この補助脚の先端には補助車輪が設けられていることから、補助車輪を転動させつつ補助脚を延出させることが可能となるものである。この補助脚は、枢軸がガイド部材によって支持されることにより揺動可能となっており、かつ、規制部によって下向きの移動が規制されていることから、揺動の中心(枢軸)と規制部との相対的な位置関係により、補助脚の揺動の状態を変化させることができる。すなわち、枢軸は、補助脚の長手方向の中間的な位置に設けられ、先端側および後端側が上下方向に揺動させるものであり、補助脚の進退に伴ってガイド部材の内部を移動し、常にガイド部材によって支持された状態となっているが、枢軸よりも前方または後方のいずれかに規制部が位置することによって、当該いずれか一方について下方への揺動が制限されることとなるのである。また、いずれか一方の下向きの揺動が規制されるということは、他方の上向きの揺動も同時に規制される。この上向きの規制によって、第1に補助車輪を有する補助脚先端に荷重が作用した際に、補助車輪とともに荷重を支える機能を発揮し、第2に規制が解除されることにより、上向きの移動が可能となる。この上向きの移動が可能となることにより、移動台車の移動時(自走時)には、駆動車輪のみが車輪として機能することとなる。そして、上記規制は、補助脚が延出(前進)したときを基準とし、規制の解除は、補助脚が収納(後退)したときを基準とすることにより、ワイヤ部材による搬送物や要介護者を吊り上げる際に、補助脚を延出(前進)させることによって、装置全体を安定させることができる。
上記発明において、補助脚は、断面を段階的に小さくしてなる複数の脚部が重ねて配置され、断面の大きい脚部をガイドとして断面の小さい脚部の進退方向を規制し、全体として伸縮可能としたものとすることができる。
このような構成の場合には、補助脚が複数段に伸縮および伸張が可能となるため、基部から比較的離れた位置に補助車輪を配置することができ、基部から離れた位置にある搬送物や要介護者の吊り上げに際しても安定させることができる。なお、上記構成における補助脚の枢軸は、最も断面積が大きい補助脚に設置され、この補助脚がガイド部材に沿って進退することに伴う枢軸と規制部との位置関係は、前述のように、補助脚全体の揺動を決定するものとなっている。
また、上記各発明において、補助脚は、前記駆動車輪による前進方向に向かって、少なくとも二個所において平行に進退可能に配置されたものとすることができる。
上記構成によれば、補助脚は駆動車輪の前進方向に向かって進退可能となっているため、駆動車輪を前進させた状態で移動台車を停止させることにより、それよりも前方に補助車輪を転動させながら前進させることができる。また、少なくとも二個所において進退可能とすることにより、駆動車輪の前進方向に対して両側に補助脚を配置することができ、しかも平行に進退させることによって、当該両側に作用する荷重を均等な状態で支持させることができる。なお、この補助脚は、平行に限定されるものではなく、例えば、先端に向かって幅が拡張するように進退させる場合もあり得る。平行な場合には、補助脚の進退幅が変化しないことから、移動台車の車幅の範囲で進退させることもできるが、補助脚を遠方まで伸張させる場合は、幅間隔を拡張させることによって走行台車の安定性を確保することができる。
さらに、上記各発明おいて、支柱は、前記基部に固定された柱脚部と、この柱脚部を基準として昇降可能な延長部とを備え、前記ワイヤ部材は、前記ブームの内部を経由して前記延長部において巻回可能に設けられている構成とすることができる。
上記構成によれば、支柱全体の長さを柱脚部と延長部とで伸縮可能とすることができる。このように支柱の長さが変更できることにより、移動中等の吊り下げ操作を行わない場合には、支柱を短くしており、搬送物や要介護者を吊り上げるなどの際には、ブームを必要な高さまで上昇させることができる。また、搬送物が高位置に設置されている場合、または、要介護者が横臥するベッドの高さが通常よりも高い場合など、一般的な位置よりも高い位置で吊り下げ操作を行うときであっても、必要な高さを確保することができる。この場合、ワイヤ部材は、延長部において巻回可能となっているため、支柱の長さが変化しても、ワイヤ部材の長さが変化しないのである。
そして、上記発明における延長部は、前記ワイヤ部材を巻回するためのモータを有する巻回手段を備えるものであり、また、この巻回手段は、基準となる位置から前記ワイヤ部材の張力方向への進退自在に設けられ、該巻回手段が該ワイヤ部材の張力変動により変位するとき、基準位置に停止または復元させるために必要な反力を測定することによりワイヤ部材に作用する張力を検出する張力検出手段を備えるものとすることができる。
このような構成の場合には、ワイヤ部材は、延長部の巻回手段によって巻回されることとなり、この巻回手段による巻回は、例えば、巻回ドラムを直接モータによって巻回する構成のほか、巻回ドラムに設けられた平歯車にウォームギアを歯合させ、さらに、このウォームギアに歯合する駆動ギアをモータによって駆動するような構成があり得る。そして、張力検出手段によって、ワイヤ部材に作用する張力が測定されるようになっている。張力の測定結果は、ブームに対する撓みの大きさを示す指標となる。このような張力測定には、モータを含む巻回手段が一体となって、ワイヤ部材の張力方向に進退自在となるように設けられ、その位置が変化するとき、基準となる位置で停止または復元させるための反力を測定することによって得ることができる。すなわち、ワイヤ部材に張力が作用すると、当該巻回手段が張力によって引っ張られ、その張力方向へ移動することとなる。このとき、巻回手段の基準位置を定めておき、その基準位置に巻回手段を停止させるために必要な反力を測定するのである。このような測定にはロードセルなどの計器を使用することができる。この場合には、ロードセルによって巻回手段を基準位置に固定させることができるとともに、巻回手段に作用する張力方向の外力を検出することが可能となる。
また、上記構成の発明おいては、張力検出手段により検出されたワイヤ部材の張力変化に伴い、該張力変化を解消させるように前記モータを作動させる制御部をさらに備える構成とすることができる。
上記構成によれば、ワイヤ部材によって吊り上げられた搬送物や要介護者の昇降方向への移動の際のパワーアシスト機能を発揮させることができる。すなわち、搬送物を吊り上げた状態では当該搬送物等の重量のみがワイヤ部材に作用するため、ワイヤ部材の張力は基本的に変化しないものとなるが、この搬送物等に対して上向きに外力を作用させる場合には、ワイヤ部材に作用する張力が減少し、逆に下向きに外力を作用する場合には、ワイヤ部材に作用する張力は増加することとなる。そこで、搬送物等に対して作用する外力に伴って、当該方向へアシストさせるように、モータを作動させるのである。制御部は、このような張力の変化とモータの作動を制御するのである。
また、支柱に延長部を備える構成の上記各発明において、ブームは、前記支柱の延長部に固定されたブーム基部と、このブーム基部の先端から進退可能に設けられた伸縮アームとを備える構成としてもよい。
さらに、この場合において、ブーム基部は、内部表面と前記伸縮アームの外部表面との間で該伸縮アームの進退を円滑にするために設置された転動部材と、この転動部材の回転数により伸縮アームの進退方向への移動量を検出するポテンションメータとを備え、前記制御部は、前記伸縮アームの移動量に応じて前記モータによるワイヤ部材の巻回状態を制御するものとすることができる。
上記のような構成によれば、当該ブームは、ブーム基部を備えており、このブーム基部が支柱の延長部に固定されるものであるから、支柱の延長部が昇降することに伴って、ブーム基部も昇降し、伸縮アームを含むブーム全体が上記延長部の昇降に伴って昇降できるものである。また、伸縮アームはブーム基部から進退可能となっていることから、支柱から横向きに突設されるブームの長さ(突出長)を変化させることができるものである。
このとき、ポテンションメータによって伸縮アームの移動量を検出することにより、ブーム先端(伸縮アームの先端)から垂下されるワイヤ部材の長さを調整することができる。すなわち、ワイヤ部材は、ブームの内部を経由して支柱(支柱の延長部)で巻回されるものであるところ、ブームの長さが変化することにより、その内部を経由するワイヤ部材の長さも変化するため、結果的にブーム先端から垂下される長さが変化する。そこで、ポテンションメータによる伸縮アームの移動量に応じてワイヤ部材の長さを変化させることにより、ブーム先端から垂下するワイヤ部材の長さを同じ状態に維持させることができる。
なお、上記の伸縮アームの進退には、支柱の延長部と伸縮アームとの間に、有角状に設けられたアクチュエータを備える構成によることができる。
ここで、有角状とは、鉛直方向に立設する延長部と、水平方向に延出する伸縮アームとの間で、傾斜した状態で配置されるような状態を意味する。従って、このような状態でアクチュエータが設置されることにより、水平方向に延出する伸縮アームの撓み方向に対する補強部材として機能させることができる。また、アクチュエータの一端は支柱の延長部に接続されることから、支柱の高さ変更(延長部の昇降)によって、当該アクチュエータの状態が変化することはない。従って、ブームの長さ変更(伸縮アームの進退)の際にアクチュエータを作動させることとなるものである。
上記構成の発明においては、前記伸縮アームの先端に、垂下する前記ワイヤ部材に対する水平面における振角を検出する振角センサを備え、前記制御部は、該振角センサによって検出されるワイヤ部材の振角の変化を解消させるように前記駆動車輪に対する駆動力を制御するものとすることができる。
上記構成によれば、搬送物等を吊り上げた状態において、当該搬送物等に対して横向きの外力を作用させるとき、垂下するワイヤ部材の振れ角を検知し、当該ワイヤ部材が振れている方向へ移動台車全体を移動させ、パワーアシスト機能を発揮させることとなる。このときの伸縮アームの移動は、当該伸縮アームの進退方向であることから、搬送物等の移動は、支柱に対して離れる方向または接近する方向の2通りであり、通常は、支柱から離れた位置で吊り上げた搬送物等を支柱に接近する方向へ移動させる際に使用されるものである。
上記各発明において、駆動車輪は、操舵可能な駆動車輪であることが好ましい。ここで、操舵可能な駆動車輪とは、駆動車輪が操舵軸に設けられ、駆動源から伝達される駆動力を車輪の転動のために伝達するとともに、操舵軸にも伝達されるものであり、遊星歯車などを使用して駆動力を分解して両者へ伝達するような機構を意味する。操舵軸への駆動力の分解は、制御部による制御によって行うことができる。従って、本発明の移動台車は、操舵が可能な自走式の移動台車として使用することができる。
この場合、基部に立設されて前記支柱を支持する補強フレームと、この補強フレームに対して作用する外力を検出する6軸力覚センサとを備え、該6軸力覚センサにより検出される補強フレームの外力を解消させる方向へ前記操舵可能な駆動車輪を駆動させる制御部を備える構成とすることができる。
上記構成によれば、補強フレームによって、支柱が補強されるとともに、駆動車輪に駆動力が伝達されない状態において、手動により当該補強フレームを操作して移動台車を移動させることが可能となる。また、駆動車輪に駆動力が伝達される場合においては、6軸力覚センサによる外力を検知し、その外力の方向へ駆動車輪を駆動させることができる。これにより、当該補強フレームに対して走行させるべき方向へ外力を作用することにより、当該方向への移動についてパワーアシスト機能を発揮させることができる。
なお、上記各発明においては、荷台が、人体の座位を可能にする座面を備えているものとすることができる。
上記構成により、介護用の移動台車として使用する際、ワイヤ部材による要介護者の吊り上げは、スリングシートによる場合であっても、その後において、要介護者が座面に着座することができ、着座状態で移動台車とともに目的の場所まで移動することが可能となる。なお、スリングシートによって吊り上げられた状態での移動も可能であるが、移動中に要介護者に揺れを感じさせることとなるため、座面に着座することにより、要介護者が揺れることなく移動できることとなる。
本発明によれば、支柱から横向きに突設されたブームから垂下されるワイヤ部材によって、搬送物等を吊下することができ、基部に装着した駆動車輪によって自走式させることができるものである。荷台は、搬送する対象物によって適宜変更されるものであり、搬送物を搬送するための移動台車の場合は、当該搬送物が収容できる箱形とし、要介護者の移乗のための移動台車の場合には、要介護者が着座できる座面を有する形状としてもよい。
そして、基部の下方には、補助脚が進退可能に設けられていることから、この補助脚を大きく前進させることにより、駆動車輪のほかに補助脚先端の補助車輪によって走行台車を支えることができる。これにより、ブームを延出させて支柱から離れた場所の搬送物等を吊り上げる場合においても、支柱を含む走行台車全体のバランスを確保することができる。
また、ブームは、ブーム基部から進退できる伸縮アームを備えており、支柱から離れた場所までブーム先端を到達させることができ、その状態で吊り上げた搬送物等を支柱近くまで移動させることもできる。さらに、伸縮アームの進退に伴うワイヤ部材の長さを調整することにより、ブーム先端から垂下するワイヤ部材の長さを一定に保つことも可能となる。そして、ワイヤ部材に張力が作用する際の張力を計測し、ブーム先端におけるワイヤ部材の振れ角を検出し、これらの変化に応じて巻回用ワイヤまたはアクチュエータを作動させることによりパワーアシスト機能を発揮させ、操作者の負担の軽減を実現している。さらには、基部と支柱との間に懸架される補強フレームにおいて、6軸力覚センサによる移動方向の検出を可能にするため、操作パネル等の操作によることなく、パワーアシストによる走行を可能にするものである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本実施形態による移動台車の概略について説明する。図1は、移動台車の全体を示す図である。この図に示されるように、移動台車100は、基部1に立設された支柱2の先端から横向きにブーム3が突設されたものであり、ブーム3の先端からワイヤ部材4が垂下されるように設けられている。また、基部1の一部には車輪ベース11が設けられ、この車輪ベース11の下部に駆動車輪12が設けられ、この駆動車輪12の駆動により走行が可能となっている。なお、図では詳細を表示していないが、駆動車輪12を駆動するためのモータと、伝達のための伝達機構とが搭載され、車輪ベース11は、駆動車輪12を操舵可能とするための操舵軸が設けられている。この種の機構は、本願の出願人らが開発した特開2008−279848号公報またはWO2010/147100号公報に記載される操舵可能な駆動機構が使用され得る。本実施形態では、3個の駆動車輪12を使用しており、前輪として2個、後輪として1個が使用されている。
基部1には、荷台20が設置されるものであり、搬送対象物(搬送物または要介護者など)を積載または移乗させることができるものである。この荷台20は、本実施形態では支柱2によって二個所で支持され、回動可能に軸支されることによって、後述するような可倒式に構成されている。支柱2は基部1に立設されるものであり、支柱2が進退方向へ移動する機構を有する場合には、その支柱2とともに移動できるように構成し得るものである。また、基部1は、専ら支柱2および駆動車輪12を支持する下部フレーム10aと、これよりも高位に設けられる上部フレーム10bとで構成されている。この上部フレーム10bには、図示せぬ制御ボックスが搭載され、支柱2と一体に構成されている。この制御ボックスには、制御装置が内蔵されるものであり、制御装置は、後述の各種検出手段等による検出値を入力し、駆動系の装置に対する指令信号を出力するものである。前述の駆動車輪12の転動および操舵に関する制御もこの制御装置によって制御されるものである。
また、上部フレーム10bには、2本の棒状の補強フレーム18が立設され、この補強フレーム18が支柱2との間に懸架されることにより、支柱2を補強している。上部フレーム10bは、支柱2を中心に荷台20とは逆の側に設けられ、荷台20に積載または移乗される搬送対象物の重量に耐え得るように設けられるものである。なお、この補強フレーム18には、後述するパワーアシスト機能を発揮する際の力覚検知手段(6軸力覚センサ)19を備える構成とすることができる。また、本実施形態では、ブーム3は予め定めた一方向へ突設されることを前提としており、当該突出方向の側を移動台車100の前方として以下に説明する。従って、駆動車輪12による移動は、前進がブーム3の突出方向であり後退がその逆向きとなる。この場合、荷台20は、支柱2に対して前方側に設けられる状態であり、補強フレーム18は後方側に設けられる状態となっている。そして、下部フレーム10aは、駆動車輪12のほかに支柱2を支持するものであり、基部1の基本的構成部となっている。従って、この下部フレーム10aの一部には、図示せぬ駆動装置およびバッテリが搭載され、駆動車輪12などに対する駆動力を提供するように構成されるものである。
また、支柱2は、柱脚部21と、この柱脚部21から昇降可能な延長部22とで構成されており、延長部22が柱脚部21の内部に収納されており、この柱脚部21の軸線方向に沿って昇降することにより、支柱2の全体が伸縮できるように構成されている。この昇降は、前述の下部フレーム10aに搭載される駆動装置(図示せず)によって駆動されるものである。さらに、この延長部22の上端にブーム3が固定される構成となっており、しかも、このブーム3は、ブーム基部31と伸縮アーム32とで構成されるものである。ブーム基部31の後端が支柱2の延長部22の上端に固着され、この延長部22と一体となって昇降するものであり、伸縮アーム32は、ブーム基部31に収容されるとともに、このブーム基部31をガイドとして進退することにより、ブーム3の全体を伸縮させるように構成されている。
従って、ブーム3の先端の位置は、上下方向については支柱2の延長部22の昇降によって移動可能となり、前後方向については伸縮アーム32の進退によって移動可能となっている。このように、延長部22の上昇により支柱2が長尺な状態となった場合、および伸縮アーム32の前進によりブーム3が長尺となった場合には、基部1による支持状態が不安定となることが予想される。そこで、前述の補助脚5の延出および補助車輪51の接地によって、支持状態を安定させるのである。
なお、ブーム3(伸縮アーム32)の先端には垂下するワイヤ部材4が設けられており、このワイヤ部材4を巻回し、または巻き戻しによって、ワイヤ部材4の先端41の位置を上下動させることができるのである。この巻回のための巻回手段6は、前述した支柱2の延長部22に設置されており、ワイヤ部材4は、ブーム3(伸縮アーム32)の先端からブーム3(ブーム基部31)の後端に至る範囲において、ブーム3(ブーム基部31および伸縮アーム32)の内部を通過するように配置され、ブーム3(ブーム基部31)の後端から巻回手段6まで連続されるものである。
また、支柱2の延長部22と、ブーム3の伸縮アーム32との間には、斜め方向に懸架されるアクチュエータ7が設けられており、その作動部71がアクチュエータ7の作動により進退し、この駆動力によって伸縮アーム32の進退を操作している。また、このように斜め方向にアクチュエータ7が懸架されることにより、ブーム3に作用する撓みに耐えるようにしている。すなわち、アクチュエータ7は電磁ブレーキ機能を有し、作動部71を進退させない状態(作動停止状態)において、当該作動部71の位置を固定するものであり、この作動部71の固定により、支持部材として機能させているのである。
ここで、基部1の詳細について説明する。図2は、基部1の周辺を拡大した図である。なお、説明の便宜上、図2には荷台20を省略している。この図に示されるように、基部1には、車輪ベース11の近傍に進退可能な補助脚5が設けられている。この補助脚5は、左右に各1個配設されており、進行方向の前方へ向かって延出できるように構成されている。具体的な構成は後述するが、この補助脚5の先端には、補助車輪51が設けられている。この補助車輪51は、一般的なキャスタが使用されており、接地することにより転動可能となっている。また、補助脚5は、揺動可能な状態で基部1に支持されるものであるが、所定の長さまで延出することによって、その揺動が制限されるようになっている。従って、後退(収縮)させた状態では揺動自在であり、駆動車輪12によって自走する際、段差等の障害物を乗り越える場合には、補助車輪51は補助脚5の揺動によって上昇できるようになっている。また、前進(延出)させた際には、補助脚5の揺動が制限されるため、補助車輪51は上昇することなく、下向きの荷重を支えることができるようになっている。
また、基部1の下部フレーム10aには、2本の規制シャフト13が軸線を前後方向に向けて配置されており、この規制シャフト(第1)13に沿って移動できるように、スライド機構を有するプレート部14が配置されている。支柱2の基端(下端)は、このプレート部14に固着され、プレート部14の移動に伴って支柱2が全体的に進退方向へ移動できるようになっている。他方、上部フレーム10bは、下部フレーム10aから立設される支持部材15,16の間に懸架される第2の規制シャフト17に沿って移動できる構成であり、全体的に板状部材で構成されている。この板状部材の表面に図示せぬ制御ボックスを搭載するのである。また、上部フレーム10bの後端側が、第2の規制シャフト17に沿って移動できるスライド機構を有し、前端側が支柱2に固着されている。
上記の下部フレーム10aと上部フレーム10bの機構を図3に示す。この図に示されるように、下部フレーム10aに設けられるプレート部14と、上部フレーム10bとは、支柱2を介して連続し、ともに規制シャフト13,17に沿って摺動可能となっている。従って、支柱2がプレート部14とともに前記第1の規制シャフト13に沿って移動するとき、これと一体となって上部フレーム10bも進退方向に移動できるようになっている。なお、スライド機構とは、規制シャフト13,17を包囲する筒状部材で構成されるものであり、単純に棒状部材と筒状部材とで摺動可能に構成してもよいが、円筒部材側にすべり軸受けを設ける構成としてもよい。
上記のように、基部1を下部フレーム10aと上部フレーム10bとに区分して構成してもよいが、同じ平面上における単一構造としてもよい。いずれの場合においても、基部1に対して、下部フレーム10aにおいて支柱2を支持するプレート部14、および上部フレーム10bは、基部1の一部であり、これらを含むことにより基部1の全体が構成されるものである。また、支柱2がプレート部14とともに移動する構成の場合には、このプレート部14に連動して補助脚5を進退させる構成としてもよい。
次に、補助脚5の構成について説明する。図4は、補助脚5の構成を示す図である。図4(a)は補助脚5が後退した状態の側面を示し、図4(b)はIIIB−IIIB断面を示し、図4(c)は補助脚5が前進した状態の側面を示している。なお、本実施形態では、前述のように左右二個所に補助脚5を設ける構成であるが、説明の都合上、図は一方のみを示している。また、補助脚5の延伸を2段階とすることも可能であるが(図1、図2参照)、ここでは、1段階による延伸の状態を示し、この図に沿って説明することとする。
補助脚5は、図4(a)に示されるように、長尺な脚部52が長手方向を水平にしつつ配置され、その先端に補助車輪51が設けられた構成である。上記脚部52には、枢軸53が設けられ、この枢軸53は支持部材54によって支持されている。そして、枢軸53は支持部材54との間で回動自在となっており、結果として、枢軸53を中心に、脚部52の全体が揺動可能になっている。また、脚部52の長手方向に平行なガイド部55が設けられ、上記支持部材54は、このガイド部55に沿って移動可能となっている。具体的には、図4(b)に示すように、ガイド部55は断面コ字状のレール部材で構成され、支持部材54の上部がガイド部材55の内側を転動する転動部材56,57に支持された状態となっている。従って、転動部材56,57がガイド部(レール部材)55の内部を転動することによって、支持部材54が移動し、その移動に伴って補助脚5の全体が進退方向へ移動できるようになっているのである。なお、脚部52とガイド部55は、延長方向に並設されるものではなく、脚部52の揺動を自在にすべく、ガイド部55は脚部52の両側のいずれかに偏った位置に設けられている。また、支持部材54の移動は、手動による構成もよいが、駆動装置によって駆動させる構成でもよい。
ガイド部55は、基部1(図1)に固設されるものであるが、このガイド部55に(または基部1に直接)規制用フレーム58が設けられ、この規制用フレーム58には、補助脚5の脚部52の下部を支持する規制部59が設けられている。つまり、規制部59は、基部1に直接的または間接的に固設された状態となっているのである。そして、規制部59は、補助脚5の脚部52の下部を支持するものであるため、上向きの規制を可能にするものではない。従って、脚部52が揺動する場合、その揺動方向は下向きについては、規制部59によって制限されるが、上向きの揺動は規制されないものとなっている。そして、支柱2が移動する機構を有する場合には、支柱2の基端(下端)が固着されるプレート部14(図3)に支持部材54を固定させる構成としてもよい。この場合、第1の規制シャフト13(図3)がガイド部として機能することとなる。
このような構成から、脚部52に設けられる枢軸54と、規制部59との位置関係によって、脚部52の揺動可能な方向が決定されることとなる。すなわち、枢軸53が、規制部59よりも後方に位置する場合(図4(a)の状態)では、補助脚5の先端50aを上向きとする揺動が可能となるものである。これに対し、枢軸53が、規制部59よりも前方に位置する場合(図4(c)の状態)では、当該先端50aを下向きとする揺動が可能となるものである。ただし、この場合の下向きの揺動は、補助車輪51の接地により、現実には当該揺動が制限されることとなる。
上記のような補助脚5の揺動の規制は、補助脚5が使用される状態であるか否かにおいて重要となる。すなわち、補助脚5は、基部1(図1)を安定させるためのものであり、通常(特に移動時)は、後退させた状態(図4(a)の状態)とするのである。特に、移動台車100が走行中(駆動車輪12の転動中)においては、補助脚5を使用する必要性がないことから、走行中の補助脚5は後退された状態となっている。このとき、床面に接地されるのは駆動車輪12となり、補助車輪51は、僅かに浮上させるか、または接地しても従動する状態となっているものである。そして、上述のように補助脚5の先端50aは上向きに揺動可能であるため、段差などの障害物を通過する際、補助車輪51が当該障害物に接することにより、その段差に応じて、自在に先端50aが上方へ移動可能となるのである。
これに対し、補助脚5による基部1を安定させる場合、特に搬送物を吊り上げる場合などでは、補助脚5を前進させた状態(図4(c)の状態)とすることにより、その先端50aは、上方への揺動が制限されることから、補助車輪51が床面に接地することにより、基部1に作用する荷重の一部を支持することができるのである。
なお、本実施形態では、ガイド部55を独立した部材で構成したものを例示したが、基部1の一部を使用してもよい。また、支柱2が進退する構成の場合(図3)には、例えば、支柱2を進退させるためのプレート部14に規制用フレーム58を連続させることにより、当該プレート部14と一体となって補助脚5を進退させる機構としてもよい。この場合、プレート部14を規制する規制シャフト(第1)13がガイド部55として機能し、転動部材56,57を設けることなく、補助脚5を所定方向に進退させることができる。
次に、支柱1の上端(延長部22の上端)とブーム3の構成について詳述する。図5は、ブーム3の断面図であり、その内部の構造を示す図である。図5(a)は、伸縮アーム32を収納させた状態であり、図5(b)は、伸縮アーム32を延出させた状態を示す。これらの図に示されるように、ブーム3は、ブーム基部31と、伸縮アーム32とで構成されるものであるが、ブーム基部31は筒状に構成され、伸縮アーム32がブーム基部31の内部に設けられるものである。この伸縮アーム32の内部は中空となっており、この中空内部およびブーム基部31の内部を通過するようにワイヤ部材4が張設されているのである。
ワイヤ部材4は、伸縮アーム32の先端32aから外方に出されており、外方下向きに垂下されるものである。そのワイヤ部材4の先端41が、適当な高さに停止されるようにワイヤ部材4の長さが調整されている。この長さ調整には、ワイヤ部材4の後方が巻回手段6によって巻回されるものである。ワイヤ部材4の後方は、ブーム基部31の後端31bから一旦外方に出され、プーリ33によって向きが変更されて巻回手段6の内部に到達する。巻回手段6には、巻回ドラム61と、この巻回ドラム61を回転駆動させるためのモータ62とが内蔵されており、ワイヤ部材4の後方を巻回ドラム61に巻回させ、当該巻回ドラム61の回転(正転または逆転)によってワイヤ部材4の全体の長さを調整するものである。このワイヤ部材4の全体の長さを調整することにより、伸縮アーム32の先端32aから垂下されるワイヤ部材4の上下方向の長さも調整され得るものである。
また、巻回手段6は、支柱2(延長部22)の側面に固定されておらず、支柱2(延長部22)の長手方向へ移動自在(通常は鉛直方向へ摺動自在)な状態となっている。そして、この巻回手段6に連続するように張力検出手段としてのロードセル8が設けられている。すなわち、巻回手段6はロードセル8によって支持されるものであり、当該巻回手段6がワイヤ部材4の張力を受けて上昇方向へ荷重を受ける際、その変位を検知して張力を検出できるように構成されている。ここで検出される張力は、制御ボックス内の制御装置に入力され、ブーム3の撓み量に変換される。この撓み量に応じて、後述のアクチュエータ7を作動させ撓み修正を可能にするものである。さらに、ロードセル8で検知される荷重の変化により、吊下される搬送対象物の昇降方向の移動を検出し、この移動方向をアシストするように、モータ62を作動させることによって、搬送対象物の移動に対するパワーアシスト機能を発揮させることも可能となる。このときのモータ62の作動は制御ボックス内の制御装置によって制御されるものである。
また、ブーム基部31と伸縮アーム32との間には、ポテンショメータ34,35が設けられている。ポテンショメータ34,35は、ブーム基部31に対して伸縮アーム32の相対的な位置関係を検出するためのものであり、ロータリ型またはリニア型のいずれを使用してもよい。本実施形態では、ブーム基部31の内部底面にローラを設け、このローラの回転角を計測するロータリポテンショメータが使用されている。このように、伸縮アーム32の位置関係を計測することにより、当該伸縮アーム32が延出する長さを算出することができ、当該延出の程度に応じて、巻回手段6のモータ62を作動させて、ワイヤ部材4の長さを調整するのである。
つまり、図5(b)に示すように、伸縮アーム32を進退させてブーム3の全長が変化した際、その内部を通過するワイヤ部材4の長さも変化することとなるから、ワイヤ部材4の先端41の位置(高さ)が上下することとなるが、ワイヤ部材4の長さを調整することにより、その先端の位置(高さ)を一定に維持させることができるのである。ワイヤ部材4の長さの調整は、伸縮アーム32の延出長さLの変位をポテンショメータ34,35により測定し、その結果に応じて、モータ62を作動させて巻回ドラム61を巻き戻すのである。このときの巻き戻し量は、延出長さLと同じ長さとなるように巻回ドラム61の回転角度が調整される。また、伸縮アーム32を収縮させる場合には、上記とは逆に巻回ドラム61によりワイヤ部材4を巻き取るようにモータ62を作動させるのである。
さらに、伸縮アーム32の先端32aの下部には、振角センサ部9が設けられている。具体的には、本体部が円環状に形成され、その内側円形端縁に振角センサが設けられるものである。この中空内部にワイヤ部材4を挿通させ、円環状本体部を通過するワイヤ部材4の振れ角を検出するのである。この検出には、CCDカメラによる光学的検出方法やジャイロセンサなどを使用することができる。振れ角を検出することにより、搬送対象物の移動(水平方向の変化)を検出することができるため、当該変化に応じて伸縮アーム32の伸縮操作を行うことにより、搬送対象物の移動におけるパワーアシスト機能を半期させることができるのである。
なお、伸縮アーム32の伸縮操作は、支柱2の延長部21と伸縮アーム32との間に斜状(有角状)に懸架されたアクチュエータ7によって行われる。アクチュエータ7の基端70aは、支柱2の延長部21に回動自在に接続され、作動部71の先端70bも伸縮アーム32の先端近傍に回動自在に接続されていることから、伸縮アーム32の伸縮に応じてアクチュエータ7の軸線が変化(傾斜)しても両端の回動により自由に角度を変化させることができるものである。また、アクチュエータ7の作動により、作動部71が進退することにより、伸縮アーム32の先端32aの位置を水平方向に移動させることができ、これによって、当該伸縮アーム32の伸縮を可能にしている。このアクチュエータ7には電磁ブレーキ機能が具備されており、作動部71を適宜長さに進退させた状態で固定できるものである。この電磁ブレーキの作動により、ブーム3の撓み方向への補強部材として機能させることができる。さらには、ブーム3の撓み量に応じて、作動部71の長さを僅かに変化させることにより、その撓みを解消させることも可能である。
次に、移動台車100の全体の作動態様について説明する。図6に移動台車100の全体を示す。この図に示されるように、基部1は、前輪(前側の駆動車輪2個)12aと、後輪(後側の駆動車輪1個)12bとの駆動により、走行可能となっている。走行中は、補助脚5は後退させており、揺動(先端の上向き移動)が可能な状態である。搬送対象物を吊り上げる場合には、必要に応じて補助脚5を前進させ、また、支柱2を前進させることができる。そして、搬送対象物の真上にワイヤ部材4の先端41が到達するまでブーム3を伸縮(伸縮アーム32を延出)し、ワイヤ部材4の長さを調整して、搬送対象物までワイヤ部材4の先端41を下降させるのである。これらの各部の移動は、前述したように、モータ62、アクチュエータ7および図示せぬ駆動装置により行うものである。これらの駆動装置の操作は、タッチパネル、ジョイスティック、またはパワーアシスト機能によって、操作者が操作するものである。
また、荷台20は、可倒式であり、表面部分(座面)を鉛直方向とする直立状態(図中一点鎖線部分)から水平方向とする横向き状態(図中実線部分)まで可動できる構成としている。荷台20を使用しない場合には直立状態として収納しておき、使用する場合に倒して表面部分(座面)が水平方向となるように突出させるのである。このような可動方式のことを本実施形態では可倒式と称している。このように、荷台20を可倒式とするために、荷台20の後端縁側が回動できるように支柱2に回転軸によって軸支されている。また、荷台20の基部は、複数の棒状部材(円形パイプまたは丸棒など)20aによって形成され、そのうちの一本を規制ロッド20bとして配置されている。そして、この規制ロッド20bを包囲しつつ摺動可能なスライダ20cが設けられ、支柱2の下端近傍(荷台20の後端縁側とは異なる位置)に支持部材20dが回動自在に軸支されるとともに、その支持部材20dの自由端側が、上記スライダ20cに軸着されているのである。従って、スライダ20cが規制ロッド20bに沿って移動した位置に応じて、支持部材20dが、角度を変化させることができるように構成されている。なお、支持部材20dが直立するように付勢することにより、通常時は、荷台20を直立状態としつつ、使用時においてのみ横向き状態とすることが可能となる。
また、規制ロッド20bの両端近傍には、当該規制ロッド20bに直交する棒状部材20a,20eが配置されており、当該棒状部材20a,20eが設けられている範囲内においてスライダ20cが摺動できるようになっている。つまり、直立状態(図中一点鎖線部分)では、スライダ20cが荷台20の回転軸に接近する位置まで移動し、横向き状態(図中実線部分)では、スライダ20cが荷台20の先端に接近する位置まで移動するのである。このように、スライダ20cの移動範囲を確定させることにより、荷台20は、直立状態と横向き状態との二形態から容易に選択され得ることとなるのである。
ここで、要介護者の移乗に際し、本実施形態の作動の形態を説明する。その手順を図7および図8に示す。まず、図7(a)に示すように、移動台車100を要介護者が横臥するベッドBの側方に移動させる。このときの移動は、駆動車輪12の駆動力による走行状体で行われる。そして、図7(b)に示されるように、ベッドBの側方まで移動した状態で移動台車100を停止させるのである。このときの移動には、例えば、補強フレーム18に対して作用する外力検知する6軸力覚センサ19を設けておき、この6軸力覚センサ19が検出する外力を解消させる方向へ、駆動車輪12の移動方向を誘導することにより、パワーアシスト機能を発揮させつつ、所望の位置まで移動台車100を移動させることができる。これにより、基本的には人為的な操作(手動による移動)と同じ感覚で移動台車100を移動させることができ、僅かな調整を行いつつ移動状態をコントロールすることができるのである。このように、移動台車100を所望位置まで移動させた後に、要介護者を吊り上げる操作に移行するのである。図は、ワイヤ部材4の先端にハンガHを装着した状態を示しており、このハンガHにスリングシートなどを連結することにより、横臥する要介護者をスリングシートに乗せることができる。
図7(b)に示す状態において、移動台車100をできる限りベッドBに接近させているが、ワイヤ部材4はベッドBの中央に到達できていない。そこで、図8(a)に示すように、支柱2を前進させることによって、ブーム3とともにベッドBの中央へ向かって移動させるのである。このとき、基部1の重量バランスを配慮して、補助脚5を前進させ、補助車輪51を床面に接地させて、基部1を安定化させるのである。なお、図示は、この支柱2の移動によってワイヤ部材4がベッドBの中央に到達しているが、さらに、必要であれば、ブーム3を延長させることができる。また、支柱2を移動する代わりに、ブーム3のみを延長させてもよい。
上記のように、ワイヤ部材4の先端がベッドBの中央に配置できた状態で、ワイヤ部材4の巻回を巻き戻すことにより、先端(ハンガH)を下降させることができる(図8(b))。ハンガHの先端にはスリングシートが設けられることから、このスリングシートによって要介護者を包囲し、再びワイヤ部材4を巻回することにより、ベッドBの上方へ吊り上げることができるのである。
このように要介護者をスリングシートによって吊り上げた状態で駆動車輪12を駆動させて搬送することも可能であるが、要介護者が荷台20に座った状態として移動することもできる。なお、荷台20は、要介護者が座位の姿勢を維持できるように座面を有する構成としており、また、この座面は、必要に応じて上述のような可倒式とすることができる。図7(b)、図8(a)および(b)では、ベッドBの側部に接近させるため、荷台20を収納させて(直立状態として)いる形態を示しており、図7(a)では、荷台20を倒して使用可能状態(横向き状態)した形態を示している。従って、要介護者を荷台20に移乗させる場合には、図7(a)に示すように、ベッドBから移動台車100を離したうえで、荷台20を倒して使用可能な状態とするのである。このように、荷台20を可倒式とすることにより、移動台車100がベッドBにより近くまで移動できることとなるのである。
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記実施形態は、本発明の一例を示すものであって、本発明がこれらに限定されるものではない。従って、上記実施形態とは異なる構成とすることは可能である。例えば、荷台20の形状としては、要介護者の移乗のために使用するために座面としたが、工業製品等の搬送に使用する場合は箱形に構成してもよい。また、ワイヤ部材4の先端には、ハンガHおよびスリングシートなどを設ける構成について説明したが、工業製品等を搬送する場合には、他の係止手段等を設ける構成とすることができる。支柱2についても、基部1に対して進退可能な形態を例示したが、この支柱2は、基部1に固定的に設けられる構成としてもよい。支柱2が進退しない場合であってもブームが伸縮することにより、支柱2から離れた搬送対象物までワイヤ部材4を到達させることが可能である。
さらに、移動台車100の走行のために、3個の駆動車輪12を使用しているが、この駆動車輪を4個とする四輪駆動としてもよい。また、補助脚5の進退構造については、1段階の進退について詳述し、2段階の進退については詳述しなかったが、基本的に1段階の進退により、枢軸53が、規制部53の前後のいずれかに配置される状態をもって、補助脚5の揺動の可否が決定するものであるから、第2段目の進退については、単純に第2の補助脚が進退する構成で十分である。従って、第1段目の補助脚と第2段目の補助脚は一体となるように、第1段目の補助脚の内部に第2段目の補助脚が挿入されたものとし、第2段目の補助脚は第1段目の補助脚をガイドに、その軸線方向に進退可能に設けられる構成とすることができる。