JP6167253B1 - 座屈拘束ブレース及び耐力構造物 - Google Patents
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Description
この回転支承型座屈拘束部ブレースは、構造物に固定したフレームのガセットプレートに対して、両端が回転支承される。回転支承型座屈拘束部ブレースは、地震によって構造物が層間変形したときに両端部が回動するため、曲げモーメントが生せず、引張力又は圧縮力のみが作用する。したがって、座屈拘束部ブレースの特性を十分に発揮することができる。
しかし、回転支承型座屈拘束部ブレースについては、回転剛性(曲げ剛性)を考慮した座屈は評価されていないという問題がある。
そこで、発明者は、この弾性座屈式を回転支承型の座屈拘束部ブレースに適用して、芯材とクレビスプレートが接合する貫入部の回転剛性が小さいと座屈安定性が低下することを見出した。
本発明の第一実施態様に係る座屈拘束ブレースは、直線状に延在する芯材と、前記芯材の両端部に接合するクレビスプレートと、前記芯材と前記クレビスプレートの両端部を突出させた状態で外周側を覆う拘束部材と、前記拘束部材の内側に充填された充填材と、を備え、前記芯材と前記クレビスプレートが接合する貫入部において、前記芯材と前記クレビスプレートがそれぞれ一対の平板からなり、軸線方向から見て井桁形又は額縁形に組み合わされることを特徴とする。
本発明の第三実施態様に係る座屈拘束ブレースは、第一実施態様又は第二実施態様において、前記芯材の板厚は40mm以下であることを特徴とする。
一部を塑性化させる芯材は、数多くの試験結果に基づいて板厚を選定することが好ましい。
請求項2に記載の座屈拘束ブレースによれば、座屈安定性をより高めることができる。
本発明において、請求項4に記載の耐力構造物によれば、座屈拘束ブレースの座屈安定性が高まるので、耐震・制震性能を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態に係る座屈拘束ブレース1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る座屈拘束ブレース1を示す図であって、(a)正面図、(b)平面図、(c)A−A断面図である。
座屈拘束ブレース1は、例えば建築、橋梁構造物において筋交い等に用いられ、これらの耐震・制震性能を向上するものである。
なお、座屈拘束ブレース1の軸線Pに沿う方向を長手方向ともいう。
一対の芯材3は、それぞれ細長い平板形をなして、座屈拘束ブレース1の軸線Pに沿って延在する。これら一対の芯材3は、それぞれの板厚方向に互いに離間して平行に配置される。各芯材3において、長手方向の中央部における芯材3の幅が狭い部分が、芯材3における他の部分よりも塑性化しやすい塑性化部3aである。各芯材3における塑性化部3a以外の部分が、塑性化部3aよりも幅が広い拡幅部(端部)3bである。
各クレビスプレート4は、平行に配置された一対の芯材3に対して、それぞれ垂直に交差する。また、各クレビスプレート4は、各芯材3の板幅方向の中央に固定される。つまり、軸線P方向から見ると、一対の芯材3と一対のクレビスプレート4が、井桁形(parallel crosses)に配置される。
なお、芯材3とクレビスプレート4が接合する部位を貫入部5と呼ぶ。貫入部5の軸線P方向の長さ(以下、貫入長さとも略称する)Linは、図1(a)及び図1(b)に示すようになる。本実施形態では、芯材3は拡幅部3bのみがクレビスプレート4に接合されているため、貫入長さLinは、芯材3の拡幅部3bの貫入長さに等しい。
本実施形態では、各芯材3の板厚は、従来の芯材53の板厚の1/2である。さらに、各芯材3の板厚は、40mm以下である。つまり、芯材3の2枚分の板厚は、従来の芯材53の1枚分の板厚と同一である。このため、中心鋼材2の重量は、従来と同一である。その一方で、中心鋼材2の回転剛性は、従来の中心鋼材の約2倍になっている。これは、一対の芯材3と一対のクレビスプレート4が、井桁形に配置されているからである。
なお、拘束部材6は、例えば角筒形の鋼管であってもよい。
次に、図2を参照して、上述した座屈拘束ブレース1を組み込んだ本実施形態の耐力構造物100について説明する。
耐力構造物100は、外形が矩形の枠状をなす複数のフレーム103と、フレーム103の各々のコーナー部分104に配置されたガセットプレート(取り付け部材)108と、ガセットプレート108を介してフレーム103に取り付けられた座屈拘束ブレース1と、を備える。
ガセットプレート108は、縦枠106及び横枠107に対して、例えば溶接等によって接合される。
つまり、ガセットプレート108は、座屈拘束ブレース1の両端部に配置された一対のクレビスプレート4同士の間に挿入される。そして、クレビスプレート4同士の間に架け渡された支持ピン9がこの貫通孔109に挿通される。
これにより、座屈拘束ブレース1は、ガセットプレート108に対して回転支承される。回転支承は、ピン接合、ピン継手とも呼ばれる。
座屈拘束ブレース1は、一対のクレビスプレート4の間にガセットプレート108が差し込まれた状態で、支持ピン9によって回転可能に接合される。
座屈拘束ブレース1の全体座屈荷重は、以下の式により算出される。
図3に示すように、座屈拘束ブレース1の各端部がガセットプレート108等に接続され、座屈拘束ブレース1が対称モードで座屈している状態を仮定する。座屈拘束ブレース1がガセットプレート108に接続されている部分に第1回転バネ11を仮定する。第1回転バネ11の回転剛性をKRgとする。
拘束部材(拘束材)6の端部に第2回転バネ12を仮定する。第2回転バネ12の回転剛性をKRrする。拘束部材6の断面二次モーメントをIとし、第1回転バネ11と第2回転バネ12との間(貫入部及び接合部)の断面二次モーメントをγIとする。
KRrは、拘束部材6の形状が角型鋼管か円形鋼管かに応じて式(4a)、(4b)により算出する。
例えば、図1(b)に示す座屈拘束ブレース1では、芯材3の拡幅部3bの幅Wca、及び芯材3の拘束部材6端部の幅Wcbはそれぞれ図示のようになる。この場合、拡幅部3bの幅Wcaと拘束部材6端部の幅Wcbとは等しくなる。
図4は、従来の座屈拘束ブレース51を示す図であって、(a)正面図、(b)平面図、(c)B−B断面図である。
tclはクレビスプレート4の板厚、Wclはクレビスプレート4の幅である。wgは、クレビスプレート4の幅方向において、クレビスプレート4が一対の芯材3から外側に突出する長さである。Dは、拘束部材6の外径である。
例えば、座屈拘束ブレース1、51において、クレビスプレート4の板厚tclはそれぞれ25.4[mm]であり、クレビスプレート4の幅Wclはそれぞれ180[mm]である。
比較例の座屈拘束ブレース51は、芯材53を1枚備えている。1枚の芯材53の板厚tcが25.4[mm]である。
実施例及び比較例の座屈拘束ブレースにおいて、芯材全体の厚さは変わらないが、芯材の枚数が異なる。これにより、比較例の座屈拘束ブレース51の貫入部の断面二次モーメントγIが2.49×107[mm4]であるのに対して、実施例の座屈拘束ブレース1の貫入部の断面二次モーメントγIが4.63×107[mm4]になる。
これにより、拘束部材の断面二次モーメントに対する貫入部の断面二次モーメントである剛性比は、比較例の座屈拘束ブレース51では0.59になるのに対して、実施例の座屈拘束ブレース1では1.10になる。
また、座屈拘束ブレース1の長さ(支持ピン9同士の距離)は、4000[mm]である。
図5に示すように、拘束部材6の端部の回転剛性KRrは、貫入長さLinの3乗に比例して大きくなる。すなわち、貫入長さLinが長くなるのにしたがって、回転剛性KRrが急激に大きくなる。
オイラー座屈荷重は、Ncr B0=2EI/L2で算出する。ただし、Eは鋼材のヤング係数で2.05×105[N/mm2]、Iは座屈拘束鋼管(拘束部材)の断面二次モーメントで4.21×107[mm4]、Lは座屈拘束ブレース1の長さで4000[mm]である。
しかし、貫入長さLinを長くすることで、全体弾性座屈軸力Ncr Bmは鋼管のオイラー座屈荷重Ncr B0に近づく。座屈拘束ブレース1では、貫入長さLinを長くすると、全体弾性座屈軸力Ncr Bmは頭打ちになることなく増加し、座屈軸力比は1.0に漸近する。なぜなら、貫入部5の回転剛性が拘束鋼管の回転剛性と同等以上であるからである。
貫入長さ比が1.8以上である領域R1の条件下では、比較例の座屈拘束ブレース51に比べて実施例の座屈拘束ブレース1の座屈軸力比が顕著に大きくなり、比較例の座屈拘束ブレース51に比べて実施例の座屈拘束ブレース1では座屈しにくくなることが分かった。
クレビスプレートの板厚tclが25.4[mm]であり、クレビスプレートの幅Wclが180[mm]であり、芯材の板厚tcが25.4[mm]であり、芯材の拡幅部の幅Wcaが180[mm]であるとする。
クレビスプレートの幅Wclに対する2枚の芯材3の間隔の比(以下、芯材間隔比と呼ぶ)と、座屈拘束ブレース51の断面二次モーメントをI51に対する座屈拘束ブレース1の断面二次モーメントをI1の比(以下、断面二次モーメント比と呼ぶ)の関係を、図8に示す。
芯材間隔比が0.75よりも大きくなる領域R2の条件下では、断面二次モーメント比が1.8以上になり、実施例の座屈拘束ブレース1の断面二次モーメントをI1が比較例の座屈拘束ブレース51の断面二次モーメントをI51に比べて顕著に大きくなることが分かった。
また、芯材3の板厚が40mmである。塑性化部3aを塑性化させる芯材3は、数多くの試験結果に基づいて板厚を選定することが好ましい。芯材3の板厚をこのように設定することにより、試験結果に裏付けされた信頼度の高い芯材3を選定することができる。
芯材3の板厚が厚すぎると、芯材3の溶接時に芯材3を充分に加熱できないという問題も生じる。芯材3の板厚を40mm以下にすることで、この問題が生じるのを抑えることができる。
3…芯材
3b…拡幅部(端部)
4…クレビスプレート
5…貫入部
6…拘束部材
8…充填材
100…耐力構造物
103…フレーム
108…ガセットプレート
Lin…貫入部の軸線方向の長さ
Wca…芯材の端部における幅
Claims (4)
- 直線状に延在する芯材と、
前記芯材の両端部に接合するクレビスプレートと、
前記芯材と前記クレビスプレートの両端部を突出させた状態で外周側を覆う拘束部材と、
前記拘束部材の内側に充填された充填材と、
を備え、
前記芯材と前記クレビスプレートが接合する貫入部において、前記芯材と前記クレビスプレートがそれぞれ一対の平板からなり、軸線方向から見て井桁形又は額縁形に組み合わされることを特徴とする座屈拘束ブレース。 - 前記芯材の端部における幅に対する前記貫入部の前記軸線方向の長さの比は、1.8以上であることを特徴とする請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記芯材の板厚は40mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の座屈拘束ブレース。
- 外形が矩形の枠状をなすフレームと、
前記フレームから内側に張り出すように配置される複数のガセットプレートと、
前記ガセットプレート同士の間に架け渡されて、前記ガセットプレートに対して回転支承される請求項1から3のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレースと、
を備えることを特徴とする耐力構造物。
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