JP3169022U - 鋼管部材の端部接合構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 鋼管部材端部に形成した軸方向の切込みに1枚の割込み板を挿入するだけの簡素な接合構造にても高い接合強度および曲げ剛性が確保され、加工手間が少なく、費用も安価な鋼管部材の端部接合構造を提供することを目的とする。【解決手段】 鋼管部材1端部に軸方向の切込み1aを形成し、該切込み1aに1枚の割込み板2の端部を挿入して溶接等により接合し、前記鋼管部材1端面の開口部を塞ぐ蓋板3の外面に直交させて立設した補剛板4を、前記割込み板2と他部材30とを接合する接合板5に立設したリブ板5aに、締結ボルト6等により接合したので、従来の1枚板形式のように鋼管部材の強度低下を招いたり、十字板形式のように加工手間を要してコスト高にならず、曲げ応力等を蓋板3や補剛板4を介して効果的に接合板5およびリブ板5aに分散でき、低廉な1枚の割込み板形式にても、割込み板2の座屈等を有効に防止できる。【選択図】 図1
Description
本考案は、筋交い材等のブレースを構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造に関する。
従来、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合部は、図10に示すように、ブレース等を構成する鋼管部材301の端部の軸方向に切込み301aを形成し、該切込み301aに1枚の割込み板302を挿入し、該割込み板302を挟む接合板305、305により他部材(例えば、図8(A)のA−A断面である図8(B)に図示のガセットプレート110等)と接合されることが多用されていた。一般的に、鋼管部材に大きな圧縮軸力が作用した場合には、図10に示すような、鋼管部材の全体座屈に伴って部材端部を局部的に曲げようとする力Mが働くが、割込み板302が1枚の場合、1枚板の曲げ剛性は小さいので、割込み板302が接合板305、305とともに曲がってしまい、設計上期待していた圧縮耐力が得られないことがあった。
例えば、図8(A)に示すように、両端部の割込み板102、102が1枚板である鋼管筋交い材101、101が、柱120と梁130との交差部のガセットプレート110に、平板状の接合板105、105にて締結ボルト106、106・・・で接合されている架構において、地震力等Pにより筋交い材101に圧縮軸力Nが作用した場合、割込み板102、102の板厚が充分厚くなければ、図8(B)に示したように、割込み板102、102がイ部のところで接合板105、105とともに屈曲し、筋交い全体がZ形に変形することがあり、地震力等Pによって作用する圧縮軸力Nに抵抗しきれなくなる虞れが生じた。また、仮に接合板105、105が充分厚く、あるいはリブ板付きであればその虞れはないが、接合板105と筋交い材101の端部との間の部分で割込み板102が屈曲する可能性が生じた。
また、同様の現象は、図9に示したようなトラス構造の節点200に集合する鋼管部材201、201・・・の端部接合部(割込み板202が1枚の場合には)においても起こり得た。鋼管サイズが大きい場合には、図11に示すように、割込み板402を1枚板ではなく十字板とすることで、前述のような割込み板の曲がりは生じない。しかしながら、十字板形式の場合は、鋼管端部の切込み401aが1枚板の場合の2倍の箇所数となるだけでなく、鋼管部材401の切込み401aが増加することにより、鋼管部材401の板材内部に閉じ込められていた残留応力が開放されることによる鋼管断面形状の歪みが大きくなり、矯正の必要が生じて鋼管部材端部の加工手間と費用が余分に掛かっていた。
また、鋼管部材のサイズが小さいままに割込み板402を敢えて1枚板ではなく十字板とすると、軸力がまともに接合ボルト406に伝達され、板厚だけでなく接合ボルト406の孔から割込み板402の縁までの寸法(縁あき寸法)を確保する必要上、割込み板402の幅が鋼管部材401の幅よりも大幅に広くなってしまい、その結果、接合部としての外観が著しくバランスの悪いものになり、意匠的に望ましくないものとなった。このように、1枚の割込み板で済む鋼管部材の端部を、曲げ剛性確保のために敢えて十字板形式にすると、上述したような加工手間、費用、意匠面で多くの問題があった。
一方、筋交い材等のブレースを構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合部における補剛に関する技術としては、下記特許文献1に係る、ガセットプレートを用いた構造物の接合構造および構造物が提案されている。
前記特許文献1に開示されたガセットプレートを用いた構造物の接合構造および構造物について、図12を用いて説明すると、図12(A)に示すように、柱531に対して水平状の梁532が取り付けられた構造物において、これらの構造物を構成する柱531および梁532等の軸力部材の、互いの交差部(格点である節点)にガセットプレート521を介して斜材503が介設される。図12(B)に示すように、ガセットプレート521の2辺には鉛直接合片505と水平接合片506が接合され、それらの接合片505、506がそれぞれ柱531、梁532にボルト等により固定される。そして、制振ブレース等の斜材503の接合端部504が所定長のL型形鋼またはリブ付きスプライスプレート520からなる連結部材522の一端側をガセットプレート521に、ボルトにて接合するとともに、他端側を斜材503の接合端部504にボルト等により接合したものである。
このように構成することによって、制振ブレース等の斜材503が取り付けられるガセットプレート521が、補剛リブプレートを不要とした所定長のL型形鋼またはリブ付きスプライスプレート520の4本を組み合わせて構成した連結部材522により、斜材503に作用した圧縮力によって面外座屈や面外変形を引き起こさないようにしたものである。しかしながら、この特許文献1に開示された接合構造では、斜材503が接合されるガセットプレート521について面外方向の曲げ剛性を向上させることが目的であり、斜材端部接合部の局部的な屈曲防止を意図していない。また、斜材端部部分を局部的に曲げ補剛する構造については記述も示唆もない。
そこで本考案は、前記従来の鋼管部材の端部接合構造における課題を解決して、鋼管部材端部に形成した軸方向の切込みに1枚の割込み板を挿入するだけの簡素な接合構造にても高い接合強度および曲げ剛性が確保され、加工手間が少なく、費用も安価な鋼管部材の端部接合構造を提供することを目的とする。
このため本考案は、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐために設けられた蓋板の外面に直交させて立設した補剛板を、前記割込み板と前記他部材とを接合する接合板に立設したリブ板に、締結ボルト等により接合したことを特徴とする。また本考案は、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐために設けられた蓋板の外面に直交させて立設した補剛板を、前記割込み板と他部材とを接合する接合板とは取り合うことなく、直接割込み板に溶接等により接合したことを特徴とする。また本考案は、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端部の内外部に連続するように割込み板の少なくとも一方の面に直交する補剛板を立設し、かつ該補剛板は、鋼管部材本体とは直接接合されることなく、前記割込み板と前記他部材とを接合する接合板に立設したリブ板に、締結ボルト等により接合したことを特徴とする。また本考案は、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端部の内外部に連続するように割込み板の少なくとも一方の面に直交する補剛板を立設し、かつ該補剛板は、鋼管部材本体とは直接接合されることなく、前記割込み板と他部材とを接合する接合板とは取り合うことなく、直接割込み板に溶接等により接合したことを特徴とする。また本考案は、前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐための蓋板を設けるとともに、該蓋板を前記割込み板および補剛板に溶接等により一体化して接合したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
本考案によれば、請求項1の構成要件である、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐために設けられた蓋板の外面に直交させて立設した補剛板を、前記割込み板と前記他部材とを接合する接合板に立設したリブ板に、締結ボルト等により接合したことにより、従来の1枚板形式のように鋼管部材の強度低下を招いて矯正が必要となったり、十字板形式のように加工手間を要してコスト高になることもなく、曲げ応力等を蓋板や補剛板を介して効果的に接合板およびリブ板に分散できるので、低廉な1枚の割込み板形式にても、割込み板の座屈等を有効に防止できる。また、蓋板による鋼管部材端部の開口閉塞により、鋼管部材内部の腐食等も防止できる。さらに、リブ板の立設による接合板の補剛効果も発揮されて、接合板自体の厚さも薄くできる。
また、請求項2の構成要件である、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐために設けられた蓋板の外面に直交させて立設した補剛板を、前記割込み板と他部材とを接合する接合板とは取り合うことなく、直接割込み板に溶接等により接合したことにより、割込み板に作用する曲げ力に対しては、接合板と取り合うことなく干渉されずに独立して溶接等により直接溶接された補剛板により高い耐性を示すとともに、割込み板と他部材に重合して接合された接合板の補剛効果によっても曲げが抑制される。
さらに、請求項3の構成要件である、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端部の内外部に連続するように割込み板の少なくとも一方の面に直交する補剛板を立設し、かつ該補剛板は、鋼管部材本体とは直接接合されることなく、前記割込み板と前記他部材とを接合する接合板に立設したリブ板に、締結ボルト等により接合したことにより、鋼管部材の全体座屈に伴う曲げ力により補剛板に作用した力は、補剛板が溶接等により接合された鋼管部材内部の割込み板の部分を介して、鋼管部材本体に伝達されて曲げ抵抗力が発揮され、接合部の折曲が抑制される。また、リブ板の立設による接合板の補剛効果も発揮されて、接合板自体の厚さも薄くできる。さらに、蓋板を省略できるので、溶融亜鉛メッキする等の蓋板を設けにくい場合等に適している。
さらにまた、請求項4の構成要件である、ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端部の内外部に連続するように割込み板の少なくとも一方の面に直交する補剛板を立設し、かつ該補剛板は、鋼管部材本体とは直接接合されることなく、前記割込み板と他部材とを接合する接合板とは取り合うことなく、直接割込み板に溶接等により接合した場合は、請求項3の構成要件のものと同様に、鋼管部材の全体座屈に伴う曲げ力により補剛板に作用した力は、補剛板が溶接等により接合された鋼管部材内部の割込み板の部分を介して、鋼管部材本体に伝達されて曲げ抵抗力が発揮されて接合部の折曲が抑制されることはもとより、接合板と取り合うことなく干渉されずに独立して溶接等により直接溶接された補剛板により高い耐性を示すとともに、割込み板と他部材に重合して接合された接合板の補剛効果によっても曲げが抑制され、また、蓋板を省略できるので、溶融亜鉛メッキする等の蓋板を設けにくい場合等に適している。
また、請求項5の構成要件である、前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐための蓋板を設けるとともに、該蓋板を前記割込み板および補剛板に溶接等により一体化して接合した場合は、鋼管部材に圧縮軸力が作用して、全体座屈に伴って部材端部を局部的に曲げようとする力が補剛板に作用しても、溶接等で接合された鋼管部材内部の割込み板の部分を介すると同時に、蓋板をも介して鋼管部材の本体に伝達されるので、高い曲げ抵抗が発揮される。かくして、鋼管部材端部接合部の曲げ力の鋼管部材本体への伝達が確実かつ滑らかになされて、1枚の割込み板形式にも拘らず、従来の十字板形式の場合と同等の曲げ剛性の確保が可能となる。
以下、本考案の鋼管部材の端部接合構造を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。図1は本考案の鋼管部材の端部接合構造の第1実施例を示す側面図およびそのB−B断面図である。ブレース等を構成する鋼管部材1の端部に軸方向の切込み1a(好適には直径上に対向して2条)を形成し、該切込み1aに平板状の1枚の割込み板2を挿入して、溶接等にて鋼管部材1に接合して構成される鋼管部材端部の接合構造において、その鋼管部材1の端面の開口部を塞ぐために、溶接等により接合して取り付けた蓋板3の外面(鋼管部材1の内部と反対側)に直交させて(軸方向に)補剛板4を2枚あるいは1枚を立設形成する。そして、該補剛板4を、前記割込み板2を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材30に接合するための接合板5に立設されたリブ板5aに締結ボルト6にて接合する。なお、図1(B)にて理解されるように、蓋板3に直交して立設される補剛板4を鋼管部材1の芯に一致させた場合は、割込み板2の一方の面に締結ボルト6等により接合される接合板5に立設されるリブ板5aは、当然ながら補剛板4の芯とは偏芯して補剛板4に取り付けられる。割込み板2の他方の面に接合される接合板5のリブ板5aは反対側に偏芯して補剛板4に取り付けられることは言うまでもない。
ここで、前記接合板5は、1枚の板にリブ板5aをT字状に立設形成したものに限らず、L形断面の接合材(例えばL形鋼等)を一対で用いて、前記補剛板4を両面から挟持して締結ボルト6にて接合してもよい。このような構成により、鋼管部材1に圧縮軸力が作用した場合、鋼管部材1の軸力は割込み板2から接合板5と締結ボルト6とを介してガセットプレート等の他部材30へ伝達されるが、その鋼管部材1の全体座屈に伴って部材端部を局部的に曲げようとする力Mに対しては、相互に距離を置いて蓋板3に立設された2枚の補剛板4、4が曲げ抵抗力を発揮するので、割込み板2自身は曲げられることはなく、図8(B)に示したイ部のような折曲りを回避できる。
なお、部材端部を曲げようと力Mに抵抗しようとする力は、補剛板4から蓋板3を介して鋼管部材1に伝達されるが、蓋板3の板厚が薄過ぎると補剛板4からの力が鋼管部材1の端面に集中力として作用するため、鋼管部材1の端面と蓋板3との溶接部等に亀裂が生じる可能性がある。それを回避するために、蓋板3の板厚はある程度厚いもの(補剛板4に作用する力を、溶接部の強度以下の応力レベルに分散できるのに必要な板厚)にすることが望ましい。あるいは、鋼管部材1の端面と蓋板3との溶接部で補剛板4が取り付く位置に、添え板10等を溶接する等の局部補強方法によっても良い。
図2は本考案の鋼管部材の端部接合構造の第2実施例を示す側面図およびそのB−B断面図である。本実施例では、前記第1実施例のものにおいて、割込み板2と他部材30とを接合する接合板5に立設されたリブ板5aの長さを、接合板5本体に対して割込み板2の先端2a(図2(B))までとし、他部材30の面外剛性を高めるために補剛リブ30a、30aを立設したものである。この場合、接合部端部の曲げ変形は、リブ板5aの先端付近の接合板5、5(割込み板2の先端2a付近)で発生するが、鋼管部材1の端部接合部では発生しないので、図8(B)に示すような部材全体がZ形に変形することなく、鋼管部材1は圧縮耐力を発揮し得る。本実施例では、スペースに制約がある場合等に対応させてリブ板5aの長さを短くせざるを得ない場合にも対応できる。
図3は本考案の鋼管部材の端部接合構造の第3実施例を示す側面図およびそのB−B断面図である。鋼管部材1の端部に軸方向の切込み1aを形成し、該切込み1aに1枚の割込み板2の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材1の端面の開口部を塞ぐために接合された蓋板3の外面に直交させて立設した補剛板4を、前記割込み板2と他部材30とを接合する接合板5とは取り合うことなく、直接割込み板2に溶接等により接合したものである。補剛板4は割込み板2の先端2aまでとし、他部材30の面外剛性を高めるために縁部に補剛リブ30a、30aを立設した。接合板5、5はリブ板5aを設けない代わりに板厚を厚くするとともに、補剛板4と割込み板2とが交差する溶接部との干渉を回避するために切込み5b(隙間)を形成した。これにより、割込み板2に作用する曲げ力に対しては、補剛板4の先端付近の接合板5、5(割込み板2の先端2a付近)で曲げ変形が発生するが、鋼管部材1の端部接合部では発生しないので、図8(B)に示したような部材全体がZ形に変形することはない。その際、接合板5と取り合うことなく干渉されずに独立して溶接等により直接溶接された補剛板4により高い耐性を示すとともに、割込み板2と他部材30に重合して接合された接合板5の補剛効果によっても曲げが抑制される。
図4は本考案の鋼管部材の端部接合構造の第4実施例を示す側面図およびそのB−B断面図である。本実施例のものは、前述したものとは異なり、蓋板3を省略した構成となっている。鋼管部材1の端部の内外部に連続するように割込み板2の少なくとも一方の面(片面あるいは両面)に直交する補剛板4を溶接等により立設し、かつ該補剛板4は、鋼管部材1本体とは直接接合されることなく、前記割込み板2と前記他部材30とを接合する接合板5に立設したリブ板5aに、締結ボルト6等により接合したものである。本実施例では、鋼管部材1に圧縮軸力が作用し、その鋼管部材1の全体座屈に伴って部材端部を局部的に曲げようとする力Mを受けた場合、補剛板4に作用した力は、補剛板4が溶接等で接合された鋼管部材1の内部の割込み板2の部分を介して、鋼管部材1の本体に伝達されることにより曲げ抵抗力を発揮するので、図8(B)に示したような折れ曲がりを回避できる。また、リブ板5aの立設による接合板5の補剛効果も発揮されて、接合板5自体の厚さも薄くできる。さらに、蓋板3を省略できるので、溶融亜鉛メッキする等の蓋板3を設けにくい場合等に適している。
図5は本考案の鋼管部材の端部接合構造の第5実施例を示す側面図およびそのB−B断面図である。本実施例のものは、前記第4実施例において、割込み板2と他部材30とを接合する接合板5に立設されたリブ板5aの長さを、割込み板2の先端2aまでとして、他部材30の面外剛性を高めるために補剛リブ30a、30aを立設形成したものである。この場合、前記図2の実施例2のものと同様に、接合部の端部の曲げ変形は、リブ板5aの先端付近の接合板5、5(割込み板2の先端2a付近)で発生するが、鋼管部材1の端部接合部では発生しないので、図8(B)に示すような部材全体がZ形に変形することはなく、鋼管部材1は圧縮耐力を発揮し得る。また、スペースに制約がある場合等に対応させてリブ板5aの長さを短くせざるを得ない場合にも対応できる。
図6は本考案の鋼管部材の端部接合構造の第6実施例を示す側面図およびそのB−B断面図である。本実施例のものは、前記第5実施例のリブ板5aを有する接合板5に代えて、平板状の接合板5を採用したもので、鋼管部材1の端部の内外部に連続するように割込み板2の少なくとも一方の面(あるいは両面)に直交する(軸方向に)補剛板4を立設し、かつ該補剛板4は、鋼管部材1本体とは直接接合されることなく、かつ前記割込み板2と他部材30とを接合する接合板5とは取り合うことなく、直接割込み板2に溶接等により接合したものである。補剛板4の長さは割込み2の先端2aまでとして、他部材30の面外剛性を高めるために縁部に補剛リブ30a、30aを立設したものである。接合板5には、リブ板5aを立設しない代わりに板厚を厚くするとともに、補剛板4と割込み板2とが交差する溶接部との干渉を回避するために切込み(隙間)5bを形成した。かくして、接合部の端部の曲げ回転力は、リブ板5aのない部分の接合板5、5の位置(割込み板2の先端2a付近)で発生するが、鋼管部材1の端部接合部では発生しないので、図8(B)に示すような部材全体がZ形に変形することはないので、鋼管部材1は圧縮耐力を発揮し得る。
図7は本考案の鋼管部材の端部接合構造の第7実施例を示す側面図およびそのB−B断面図である。前記実施例4のものと同様に、鋼管部材1の端部に軸方向の切込み1aを形成し、該切込み1aに1枚の割込み板2の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、鋼管部材1の端部の内外部に連続するように割込み板2の少なくとも一方の面(片面あるいは両面)に直交する補剛板4を溶接等により立設し、かつ該補剛板4は、鋼管部材1本体とは直接接合されることなく、前記割込み板2と前記他部材30とを接合する接合板5に立設したリブ板5aに、締結ボルト6等により接合したものであるが、本実施例では、前記実施例1〜3のもののように、鋼管部材1の端面の開口部を塞ぐための蓋板3を設けたものである。その蓋板3に直交貫通させて補剛板4を接合するとともに、割込み板2に直交して接合される。つまり、蓋板3と割込み板2および補剛板4とが一体化される。
したがって、蓋板3と割込み板2および補剛板4とを一体化するためには、割込み板2の片面あるいは両面に直交して半円弧状の(鋼管部材1が円形断面の場合)蓋板3が立設接合され、該蓋板3には前記補剛板4を受け入れるためのスリットが形成される。該スリットに補剛板4を挿入して蓋板3と補剛板4とを溶接等により接合する。かくして、鋼管部材に圧縮軸力が作用して、全体座屈に伴って部材端部を局部的に曲げようとする力Mが補剛板に作用しても、溶接等で接合された鋼管部材1の内部の割込み板2の部分を介すると同時に、蓋板3をも介して鋼管部材1の本体に伝達されるので、高い曲げ抵抗が発揮される。かくして、鋼管部材1の端部接合部の曲げ力の鋼管部材1本体への伝達が確実かつ滑らかになされて、1枚の割込み板形式にも拘らず、従来の十字板形式の場合と同等の曲げ剛性の確保が可能となる。
本考案の第8実施例については図示はしないが、前記図5の第5実施例のもの(リブ板5aの長さが短いもの)に蓋板3を追加したもので、蓋板3を割込み板2および補剛板4に溶接等にて一体化して取り付けることにより、前記図7の第7実施例のものと同様の特性がある。
本考案の第9実施例については図示はしないが、前記図6の第6実施例のもの(補剛板4の長さが短いもの)に蓋板3を追加したもので、蓋板3を割込み板2および補剛板4に溶接等にて一体化して取り付けることにより、前記図7の第7実施例のものと同様の特性がある。
以上、本考案の実施例について説明してきたが、各部材の形状、形式および材質等については本考案の趣旨の範囲内で適宜のものが採用され得る。例えば、鋼管部材端部の軸方向の一対の切込みは、鋼管部材の直径部位に形成されるのを好適とするが、直径部位から外れることを妨げるものではない。鋼管部材の断面形状についても円形断面の管部材を好適とするが、角形であってもよい。その際は、鋼管部材の端部に接合される蓋板の形状も鋼管部材の断面形状に適合する形状とされる。蓋板にあるいは割込み板に直接接合される補剛板については割込み板の両面に接合されるのを好適とするが、片面の1枚のみでも鋼管部材端部接合部の曲げ剛性向上に対しては相応に有効である。接合板の形状およびそのリブ板の立設形態(接合板の一部を曲折してリブ板を形成したり、接合板にリブ板を溶接等により立設接合してもよい)ならびにその補剛板、割込み板および他部材への接合形態(実施例のように締結ボルトにて締結接合する他、リベットや溶接等による接合も採用され得る)、蓋板を省略した場合の補剛板の鋼管部材の内外部に連続する形態にて挿入される際の補剛板の形状(実施例の補剛板は先端側が幅狭のテーパー状を呈しており、挿入組立て時のガイド機能を有するが、テーパー状でなく鋼管部材内径に適合する形状でもよい)、補剛板が、割込み板と他部材とを接合する接合板と取り合うことがない場合で、直接割込み板に溶接等により接合される場合に、補剛板と割込み板とが交差する溶接接合部を回避するために接合板に形成される切込み(隙間)の形成形態(実施例のように接合板の表裏を通して切込みを形成するものの他、接合板が比較的厚い場合には、接合板の裏面の割込み板側を、溶接部に相当する部分を面取りするようにしてもよい)等については適宜選定できる。また、実施例における諸元等については限定的に解釈してはならない。
本考案の鋼管部材の端部接合構造は、鋼管部材が柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合されるブレースを構成するものに適用されるのを好適とするが、その他の構造物の鋼管部材とプレート状の他部材に接合される場合にも適用が可能である。
1 鋼管部材
1a 切込み
2 割込み板
2a 先端
3 蓋板
4 補剛板
5 接合板
5a リブ板
5b 切込み(隙間)
6 締結ボルト
30 他部材(ガセットプレート等)
30a 補剛リブ
1a 切込み
2 割込み板
2a 先端
3 蓋板
4 補剛板
5 接合板
5a リブ板
5b 切込み(隙間)
6 締結ボルト
30 他部材(ガセットプレート等)
30a 補剛リブ
Claims (5)
- ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐために設けられた蓋板の外面に直交させて立設した補剛板を、前記割込み板と前記他部材とを接合する接合板に立設したリブ板に、締結ボルト等により接合したことを特徴とする鋼管部材の端部接合構造。
- ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐために設けられた蓋板の外面に直交させて立設した補剛板を、前記割込み板と他部材とを接合する接合板とは取り合うことなく、直接割込み板に溶接等により接合したことを特徴とする鋼管部材の端部接合構造。
- ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端部の内外部に連続するように割込み板の少なくとも一方の面に直交する補剛板を立設し、かつ該補剛板は、鋼管部材本体とは直接接合されることなく、前記割込み板と前記他部材とを接合する接合板に立設したリブ板に、締結ボルト等により接合したことを特徴とする鋼管部材の端部接合構造。
- ブレース等を構成する鋼管部材端部を柱梁やトラス枠等に固定されたガセットプレート等の他部材に接合する鋼管部材の端部接合構造であって、前記鋼管部材端部に軸方向の切込みを形成し、該切込みに1枚の割込み板の端部を挿入して溶接等により接合する鋼管部材の端部接合構造において、前記鋼管部材端部の内外部に連続するように割込み板の少なくとも一方の面に直交する補剛板を立設し、かつ該補剛板は、鋼管部材本体とは直接接合されることなく、前記割込み板と他部材とを接合する接合板とは取り合うことなく、直接割込み板に溶接等により接合したことを特徴とする鋼管部材の端部接合構造。
- 前記鋼管部材端面の開口部を塞ぐための蓋板を設けるとともに、該蓋板を前記割込み板および補剛板に溶接等により一体化して接合したことを特徴とする請求項3または4に記載の鋼管部材の端部接合構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011002392U JP3169022U (ja) | 2011-04-28 | 2011-04-28 | 鋼管部材の端部接合構造 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2011002392U JP3169022U (ja) | 2011-04-28 | 2011-04-28 | 鋼管部材の端部接合構造 |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2013158640A Continuation JP5554441B2 (ja) | 2013-07-31 | 2013-07-31 | 鋼管部材の端部接合構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP3169022U true JP3169022U (ja) | 2011-07-07 |
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ID=54879936
Family Applications (1)
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JP2011002392U Ceased JP3169022U (ja) | 2011-04-28 | 2011-04-28 | 鋼管部材の端部接合構造 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3169022U (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015040460A (ja) * | 2013-08-23 | 2015-03-02 | 株式会社Ihi | 鋼管ブレースの支持構造 |
JP6167253B1 (ja) * | 2017-01-27 | 2017-07-19 | 新日鉄住金エンジニアリング株式会社 | 座屈拘束ブレース及び耐力構造物 |
-
2011
- 2011-04-28 JP JP2011002392U patent/JP3169022U/ja not_active Ceased
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