先ず、本発明に係る駆動装置の各実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1に示す車両3は、内燃機関4と電動機5が直列に接続された駆動装置6(以下、前輪駆動装置と呼ぶ。)を車両前部に有するハイブリッド車両であり、この前輪駆動装置6の動力がトランスミッション7を介して前輪Wfに伝達される。
一方、この前輪駆動装置6と別に車両後部に設けられた駆動装置1(以下、後輪駆動装置と呼ぶ。)は、その動力が、左後輪LWr(左車輪)及び右後輪RWr(右車輪)からなる後輪Wrに伝達されるようになっている。後輪駆動装置1は、左後輪LWrに左遊星歯車式減速機12Aを介して動力伝達可能に接続される左電動機2A(左駆動源)と、右後輪RWrに右遊星歯車式減速機12Bを介して動力伝達可能に接続される右電動機2B(右駆動源)と、を有する。また、後輪Wrには、左後輪LWr、右後輪RWrの回転数を検出する左右車輪速センサ44A、44Bが設けられている
前輪駆動装置6の電動機5と後輪駆動装置1の電動機2A、2Bは、PDU8(パワードライブユニット)を介してバッテリ9に接続され、バッテリ9からの電力供給と、バッテリ9へのエネルギー回生がPDU8を介して行われるようになっている。PDU8は、車両全体を各種制御するためのECU45に接続されている。
図2は、後輪駆動装置1の全体の縦断面図を示すものであり、同図において、10A、10Bは、車両の左後輪LWr及び右後輪RWr側の左車軸及び右車軸であり、車幅方向に同軸上に配置されている。後輪駆動装置1の減速機ケース11は全体が略円筒状に形成され、その内部には、左右車軸10A、10Bを駆動する左右電動機2A、2Bと、この左右電動機2A、2Bの駆動回転を減速する左右遊星歯車式減速機12A、12Bとが、左右車軸10A、10Bと同軸上に配置されている。
この左電動機2A及び左遊星歯車式減速機12Aは左後輪LWrを制御し、右電動機2B及び右遊星歯車式減速機12Bは右後輪RWrを制御し、左電動機2A及び左遊星歯車式減速機12Aと右電動機2B及び右遊星歯車式減速機12Bは、減速機ケース11内で車幅方向に左右対称に配置されている。そして、減速機ケース11は、図4に示すように、車両3の骨格となるフレームの一部であるフレーム部材13の支持部13a、13bと、不図示の後輪駆動装置1のフレームで支持されている。支持部13a、13bは、車幅方向でフレーム部材13の中心に対し左右に設けられている。なお、図4中の矢印は、後輪駆動装置1が車両に搭載された状態における位置関係を示している。
減速機ケース11の左右両端側内部には、それぞれ左右電動機2A、2Bのステータ14A、14Bが固定され、このステータ14A、14Bの内周側に環状のロータ15A、15Bが回転可能に配置されている。ロータ15A、15Bの内周部には左右車軸10A、10Bの外周を囲繞する円筒軸16A、16Bが結合され、この円筒軸16A、16Bが左右車軸10A、10Bと同軸で相対回転可能となるように減速機ケース11の端部壁17A、17Bと中間壁18A、18Bに軸受19A、19Bを介して支持されている。また、円筒軸16A、16Bの一端側の外周であって減速機ケース11の端部壁17A、17Bには、ロータ15A、15Bの回転数を検出し、左右電動機2A、2Bの制御コントローラ(図示せず)にフィードバックするための左右レゾルバ20A、20Bが設けられている。
また、左右遊星歯車式減速機12A、12Bは、サンギヤ21A、21Bと、このサンギヤ21に噛合される複数のプラネタリギヤ22A、22Bと、これらのプラネタリギヤ22A、22Bを支持するプラネタリキャリア23A、23Bと、プラネタリギヤ22A、22Bの外周側に噛合されるリングギヤ24A、24Bと、を備え、サンギヤ21A、21Bから左右電動機2A、2Bの駆動力が入力され、減速された駆動力がプラネタリキャリア23A、23Bを通して出力されるようになっている。
サンギヤ21A、21Bは円筒軸16A、16Bに一体に形成されている。また、プラネタリギヤ22A、22Bは、例えば図3に示すように、サンギヤ21A、21Bに直接噛合される大径の第1ピニオン26A、26Bと、この第1ピニオン26A、26Bよりも小径の第2ピニオン27A、27Bを有する2連ピニオンであり、これらの第1ピニオン26A、26Bと第2ピニオン27A、27Bが同軸にかつ軸方向にオフセットした状態で一体に形成されている。このプラネタリギヤ22A、22Bはプラネタリキャリア23A、23Bに支持され、プラネタリキャリア23A、23Bは、軸方向内側端部が径方向内側に伸びて左右車軸10A、10Bにスプライン嵌合され一体回転可能に支持されるとともに、軸受33A、33Bを介して中間壁18A、18Bに支持されている。
なお、中間壁18A、18Bは左右電動機2A、2Bを収容する電動機収容空間と左右遊星歯車式減速機12A、12Bを収容する減速機空間とを隔て、外径側から内径側に互いの軸方向間隔が広がるように屈曲して構成されている。そして、中間壁18A、18Bの内径側、且つ、左右遊星歯車式減速機12A、12B側にはプラネタリキャリア23A、23Bを支持する軸受33A、33Bが配置されるとともに中間壁18A、18Bの外径側、且つ、左右電動機2A、2B側にはステータ14A、14B用のバスリング41A、41Bが配置されている(図2参照)。
リングギヤ24A、24Bは、その内周面が小径の第2ピニオン27A、27Bに噛合されるギヤ部28A、28Bと、ギヤ部28A、28Bより小径で減速機ケース11の中間位置で互いに対向配置される小径部29A、29Bと、ギヤ部28A、28Bの軸方向内側端部と小径部29A、29Bの軸方向外側端部を径方向に連結する連結部30A、30Bと、を備えて構成されている。この実施形態の場合、リングギヤ24A、24Bの最大半径は、第1ピニオン26A、26Bの左右車軸10A、10Bの中心からの最大距離よりも小さくなるように設定されている。小径部29A、29Bは、それぞれ後述する一方向クラッチ50のインナーレース51とスプライン嵌合し、リングギヤ24A、24Bは一方向クラッチ50のインナーレース51と一体回転するように構成されている。
ところで、減速機ケース11とリングギヤ24A、24Bの間には円筒状の空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bを制動する左右油圧ブレーキ60A、60Bが第1ピニオン26A、26Bと径方向でラップし、第2ピニオン27A、27Bと軸方向でラップして配置されている。左右油圧ブレーキ60A、60Bは、減速機ケース11の内径側で軸方向に延びる筒状の外径側支持部34の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35A、35Bと、リングギヤ24A、24Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36A、36Bが軸方向に交互に配置され、これらのプレート35A、35B、36A、36Bが環状のピストン37A、37Bによって締結及び解放操作されるようになっている。ピストン37A、37Bは、減速機ケース11の中間位置から内径側に延設された左右分割壁39と、左右分割壁39によって連結された外径側支持部34と内径側支持部40間に形成された環状のシリンダ室38A、38Bに進退自在に収容されており、シリンダ室38A、38Bへの高圧オイルの導入によってピストン37A、37Bを前進させ、シリンダ室38A、38Bからオイルを排出することによってピストン37A、37Bを後退させる。なお、左右油圧ブレーキ60A、60Bは図4に示すように、前述したフレーム部材13の支持部13a、13b間に配置された電動オイルポンプ70に接続されている。
また、さらに詳細には、ピストン37A、37Bは、軸方向前後に第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bを有し、これらのピストン壁63A、63B,64A、64Bが円筒状の内周壁65A、65Bによって連結されている。したがって、第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bの間には径方向外側に開口する環状空間が形成されているが、この環状空間は、シリンダ室38A、38Bの外壁内周面に固定された仕切部材66A、66Bによって軸方向左右に仕切られている。減速機ケース11の左右分割壁39と第2ピストン壁64A、64Bの間は高圧オイルが直接導入される第1作動室C1とされ、仕切部材66A、66Bと第1ピストン壁63A、63Bの間は、内周壁65A、65Bに形成された貫通孔を通して第1作動室C1と導通する第2作動室C2とされている。第2ピストン壁64A、64Bと仕切部材66A、66Bの間は大気圧に導通している。
この左右油圧ブレーキ60A、60Bでは、第1作動室C1と第2作動室C2に電動オイルポンプ70からオイルが導入され、第1ピストン壁63A、63Bと第2ピストン壁64A、64Bに作用するオイルの圧力によって固定プレート35A、35Bと回転プレート36A、36Bを相互に押し付けが可能である。したがって、軸方向左右の第1,第2ピストン壁63A、63B,64A、64Bによって大きな受圧面積を稼ぐことができるため、ピストン37A、37Bの径方向の面積を抑えたまま固定プレート35A、35Bと回転プレート36A、36Bに対する大きな押し付け力を得ることができる。
この左右油圧ブレーキ60A、60Bの場合、固定プレート35A、35Bが減速機ケース11から伸びる外径側支持部34に支持される一方で、回転プレート36A、36Bがリングギヤ24A、24Bに支持されているため、両プレート35A、35B,36A、36Bがピストン37A、37Bによって押し付けられると、両プレート35A、35B,36A、36B間の摩擦締結によってリングギヤ24A、24Bに制動力が作用し固定され、その状態からピストン37A、37Bによる締結が解放されると、リングギヤ24A、24Bの自由な回転が許容される。
したがって、左右油圧ブレーキ60A、60Bは、締結又は開放することによって、左右電動機2A、2Bと左右後輪LWr、RWrとの動力伝達経路を、動力伝達不能な遮断状態又は動力伝達可能な接続状態に切り替え可能な左右動力断接手段を構成する。
また、軸方向で対向するリングギヤ24A、24Bの連結部30A、30B間にも空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する一方向クラッチ50が配置されている。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がスプライン嵌合によりリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bと一体回転するように構成されている。またアウターレース52は、内径側支持部40により位置決めされるとともに、回り止めされている。一方向クラッチ50は、車両3が左右電動機2A、2Bの動力で前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。より具体的に説明すると、一方向クラッチ50は、左右電動機2A、2B側の順方向(車両3を前進させる際の回転方向)の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに係合状態となるとともに、左右電動機2A、2B側の逆方向の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに非係合状態となり、車輪Wr側の順方向の回転動力が左右電動機2A、2B側に入力されるときに非係合状態となるとともに車輪Wr側の逆方向の回転動力が左右電動機2A、2B側に入力されるときに係合状態となる。
このように本実施形態の後輪駆動装置1では、左右電動機2A、2Bと車輪Wrとの動力伝達経路上に一方向クラッチ50と左右油圧ブレーキ60A、60Bとが並列に設けられている。
ここで、ECU45(図1参照)は、車両全体の各種制御をするための制御装置であり、ECU45には左右車輪速センサ44A、44Bから取得される左右後輪LWr、RWrの回転数、左右レゾルバ20A、20Bから取得される電動機2A、2Bの回転数、操舵角、アクセルペダル開度AP、シフトポジション、バッテリ9における充電状態SOC、油温などが入力される一方、ECU45からは、内燃機関4を制御する信号、左右電動機2A、2Bを制御する信号、バッテリ9における発電状態・充電状態・放電状態などを示す信号、電動オイルポンプ70を制御する制御信号などが出力される。
図5は、各車両状態における前輪駆動装置6と後輪駆動装置1との関係を左右電動機2A、2Bの作動状態とあわせて記載したものである。図中、フロントユニットは前輪駆動装置6、リアユニットは後輪駆動装置1、リアモータは左右電動機2A、2B、OWCは一方向クラッチ50、BRKは左右油圧ブレーキ60A、60Bを表わす。
また、図6〜図11は後輪駆動装置1の各状態における速度共線図を表わし、LMOTは左電動機2A、RMOTは右電動機2B、左側のS、Cはそれぞれ左電動機2Aに連結された左遊星歯車式減速機12Aのサンギヤ21A、左車軸10Aに連結されたプラネタリキャリア23A、プラネタリギヤ22A、右側のS、Cはそれぞれ右電動機2Bに連結された右遊星歯車式減速機12Bのサンギヤ21B、右車軸10Bに連結されたプラネタリキャリア23B、プラネタリギヤ22B、Rはリングギヤ24A、24B、BRKは左右油圧ブレーキ60A、60B、OWCは一方向クラッチ50を表わす。以下の説明において左右電動機2A、2Bによる車両前進時のサンギヤ21A、21Bの回転方向を順方向とする。また、図中、停車中の状態から上方が順方向の回転、下方が逆方向の回転であり、矢印は、上向きが順方向のトルクを表し、下向きが逆方向のトルクを表す。
停車中は、前輪駆動装置6も後輪駆動装置1も駆動していない。従って、図6に示すように、後輪駆動装置1の左右電動機2A、2Bは停止しており、左右車軸10A、10Bも停止しているため、いずれの要素にもトルクは作用していない。このとき、左右油圧ブレーキ60A、60Bは解放(OFF)している。また、一方向クラッチ50は、左右電動機2A、2Bが非駆動のため係合していない(OFF)。
そして、キーポジションをONにした後、EV発進、EVクルーズなどモータ効率のよい前進低車速時は、後輪駆動装置1による後輪駆動となる。図7に示すように、左右電動機2A、2Bが順方向に回転するように力行駆動すると、サンギヤ21A、21Bには順方向のトルクが付加される。このとき、前述したように一方向クラッチ50が係合しリングギヤ24A、24Bがロックされる。これによりプラネタリキャリア23A、23Bは順方向に回転し前進走行がなされる。なお、プラネタリキャリア23A、23Bには左右車軸10A、10Bからの走行抵抗が逆方向に作用している。このように車両3の発進時には、キーポジションをONにして左右電動機2A、2Bのトルクをあげることで、一方向クラッチ50が機械的に係合してリングギヤ24A、24Bがロックされる。
このとき、左右油圧ブレーキ60A、60Bは弱締結状態に制御される。なお、弱締結とは、動力伝達可能であるが、左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結状態の締結力に対し弱い締結力で締結している状態をいう。左右電動機2A、2Bの順方向のトルクが後輪Wr側に入力されるときには一方向クラッチ50が係合状態となり、一方向クラッチ50のみで動力伝達可能であるが、一方向クラッチ50と並列に設けられた左右油圧ブレーキ60A、60Bも弱締結状態とし左右電動機2A、2B側と後輪Wr側とを接続状態としておくことで、左右電動機2A、2B側からの順方向のトルクの入力が一時的に低下して一方向クラッチ50が非係合状態となった場合にも、左右電動機2A、2B側と後輪Wr側とで動力伝達不能になることを抑制できる。また、後述する減速回生への移行時に左右電動機2A、2B側と後輪Wr側とを接続状態とするための回転数制御が不要となる。一方向クラッチ50が係合状態のときの左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結力を一方向クラッチ50が非係合状態のときの左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結力よりも弱くすることにより、左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結のための消費エネルギーが低減される。
前進低車速走行から車速があがりエンジン効率のよい前進中車速走行に至ると、後輪駆動装置1による後輪駆動から前輪駆動装置6による前輪駆動となる。図8に示すように、左右電動機2A、2Bの力行駆動が停止すると、プラネタリキャリア23A、23Bには左右車軸10A、10Bから前進走行しようとする順方向のトルクが作用するので、前述したように一方向クラッチ50が非係合状態となる。このときも、左右油圧ブレーキ60A、60Bは弱締結状態に制御される。
図7又は図8の状態から左右電動機2A、2Bを回生駆動しようすると、図9に示すように、プラネタリキャリア23A、23Bには左右車軸10A、10Bから前進走行を続けようとする順方向のトルクが作用するので、前述したように一方向クラッチ50が非係合状態となる。このとき、左右油圧ブレーキ60A、60Bは締結状態(ON)に制御される。従って、リングギヤ24A、24Bが固定されるとともに左右電動機2A、2Bには逆方向の回生制動トルクが作用し、左右電動機2A、2Bで減速回生がなされる。このように、後輪Wr側の順方向のトルクが左右電動機2A、2B側に入力されるときには一方向クラッチ50は非係合状態となり、一方向クラッチ50のみで動力伝達不能であるが、一方向クラッチ50と並列に設けられた左右油圧ブレーキ60A、60Bを締結させ、左右電動機2A、2B側と後輪Wr側とを接続状態としておくことで動力伝達可能な状態に保つことができ、この状態で左右電動機2A、2Bを回生駆動状態に制御することにより、車両3のエネルギーを回生することができる。
続いて加速時には、前輪駆動装置6と後輪駆動装置1の四輪駆動となり、後輪駆動装置1は、図7に示す前進低車速時と同じ状態となる。
前進高車速時には、前輪駆動装置6による前輪駆動となるが、典型的には左右電動機2A、2Bを停止させる。
図10に示すように、左右電動機2A、2Bが力行駆動を停止すると、プラネタリキャリア23A、23Bには左右車軸10A、10Bから前進走行しようとする順方向のトルクが作用するので、前述したように一方向クラッチ50が非係合状態となる。このとき、サンギヤ21A、21Bには、サンギヤ21A、21B及び左右電動機2A、2Bの回転損失が抵抗として入力され、リングギヤ24A、24Bにはリングギヤ24A、24Bの回転損失が発生する。
このとき左右油圧ブレーキ60A、60Bは解放状態(OFF)に制御される。従って、左右電動機2A、2Bの連れ回りが防止され、前輪駆動装置6による高車速時に左右電動機2A、2Bが過回転となるのが防止される。
後進時には、図11に示すように、左右電動機2A、2Bを逆力行駆動すると、サンギヤ21A、21Bには逆方向のトルクが付加される。このとき、前述したように一方向クラッチ50が非係合状態となる。
このとき左右油圧ブレーキ60A、60Bは締結状態に制御される。従って、リングギヤ24A、24Bが固定されて、プラネタリキャリア23A、23Bは逆方向に回転し後進走行がなされる。なお、プラネタリキャリア23A、23Bには左右車軸10A、10Bからの走行抵抗が順方向に作用している。このように、左右電動機2A、2B側の逆方向のトルクが後輪Wr側に入力されるときには一方向クラッチ50は非係合状態となり、一方向クラッチ50のみで動力伝達不能であるが、一方向クラッチ50と並列に設けられた左右油圧ブレーキ60A、60Bを締結させ、左右電動機2A、2B側と後輪Wr側とを接続状態としておくことで動力伝達可能に保つことができ、左右電動機2A、2Bのトルクによって車両3を後進させることができる。
このように後輪駆動装置1は、車両の走行状態、言い換えると、左右電動機2A、2Bの回転方向が順方向か逆方向か、及び左右電動機2A、2B側と後輪Wr側のいずれから動力が入力されるかに応じて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結・解放が制御され、さらに左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結時であっても締結力が調整される。
図12は、車両が停車中の状態からEV発進→EV加速→ENG加速→減速回生→中速ENGクルーズ→ENG+EV加速→高速ENGクルーズ→減速回生→停車→後進→停車に至る際の電動オイルポンプ70(EOP)と、一方向クラッチ50(OWC)、左右油圧ブレーキ60A、60B(BRK)のタイミングチャートである。
先ず、キーポジションをONにしてシフトがPレンジからDレンジに変更され、アクセルペダルが踏まれるまでは、一方向クラッチ50は非係合(OFF)、左右油圧ブレーキ60A、60Bは解放(OFF)状態を維持する。そこから、アクセルペダルが踏まれると後輪駆動(RWD)で後輪駆動装置1によるEV発進、EV加速がなされる。このとき、一方向クラッチ50が係合(ON)し、左右油圧ブレーキ60A、60Bは弱締結状態となる。そして、車速が低車速域から中車速域に至って後輪駆動から前輪駆動になると内燃機関4によるENG走行(FWD)がなされる。このとき、一方向クラッチ50が非係合(OFF)となり、左右油圧ブレーキ60A、60Bはそのままの状態(弱締結状態)を維持する。そして、ブレーキが踏まれるなど減速回生時には、一方向クラッチ50が非係合(OFF)のまま、左右油圧ブレーキ60A、60Bが締結(ON)する。内燃機関4による中速クルーズ中は、上述のENG走行と同様の状態となる。続いて、さらにアクセルペダルが踏まれて前輪駆動から四輪駆動(AWD)になると、再び一方向クラッチ50が係合(ON)する。そして、車速が中車速域から高車速域に至ると、再び内燃機関4によるENG走行(FWD)がなされる。このとき、一方向クラッチ50が非係合(OFF)となり、左右油圧ブレーキ60A、60Bが解放(OFF)され、左右電動機2A、2Bを停止する。そして、減速回生時には、上述した減速回生時と同様の状態となる。そして、車両が停止すると、一方向クラッチ50は非係合(OFF)、左右油圧ブレーキ60A、60Bは解放(OFF)状態となる。
続いて、後進走行時には、一方向クラッチ50は非係合(OFF)のまま、左右油圧ブレーキ60A、60Bが締結(ON)する。そして、車両が停止すると、一方向クラッチ50は非係合(OFF)、左右油圧ブレーキ60A、60Bは解放(OFF)状態となる。
<左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定>
このように、ECU45は、各車両状態に合わせて前輪駆動装置6及び後輪駆動装置1を制御しているが、さらに、左右電動機2A、2Bの回転数や、左右後輪RWrの回転数に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bに締結及び解放に関する異常が発生したことを判定することが可能である。
ここで、左右電動機2A、2Bと左右後輪LWr、RWrとの動力伝達経路上において、左油圧ブレーキ60Aよりも左電動機2A側である上流側の回転状態量である左電動機2Aの回転数LMOTR(第1回転状態量)は、左レゾルバ20A(第1回転状態量検出手段)によって検出され、左油圧ブレーキ60Aよりも左後輪LWr側である下流側の回転状態量である左後輪LWrの回転数LWrR(第2回転状態量)は、左車輪速センサ44A(第2回転状態量検出手段)によって検出され、右油圧ブレーキ60Bよりも右電動機2B側である上流側の回転状態量である右電動機2Bの回転数RMOTR(第3回転状態量)は、右レゾルバ20B(第3回転状態量検出手段)によって検出され、右油圧ブレーキ60Bよりも右後輪RWr側である下流側の回転状態量である右後輪RWrの回転数RWrR(第4回転状態量)は、右車輪速センサ44B(第4回転状態量検出手段)によって検出される。
<締結異常判定>
先ず、左右油圧ブレーキ60A、60Bに締結指令を出しているにもかかわらず、解放状態が維持されてしまう締結異常についての判定方法を述べる。
ECU45は、左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrR、及び左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRに基づいて、左油圧ブレーキ60A又は右油圧ブレーキ60Bに締結異常が発生したことを判定する。より具体的には、左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrRの平均{(LWrR+RWrR)/2}(以下、後輪回転数平均と呼ぶ。)と、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRの平均{(LMOTR+RMOTR)/2}(以下、電動機回転数平均と呼ぶ。)と、の差異に基づいて、左油圧ブレーキ60A又は右油圧ブレーキ60Bに締結異常が発生したことを判定する。
なお、上記「差異」とは、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}の差や比をいうものとし、本実施形態のように、左右電動機2A、2Bと左右後輪LWr、RWrとの間に、減速比がaである左右遊星歯車式減速機12A、12Bが配置される場合には、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}の一方を減速比aで換算した場合の、両者の差や比をいうものとする。
ここで、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との差に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行う場合、車両3の速度の変化に応じて、異常判定するための回転数差の値も変化させる必要があるので、制御が煩雑となってしまう。そこで、車両3の速度が所定の閾値b以上のときは、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との比に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行う。
すなわち、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との比が、所定の下限締結判定回転数比cよりも大きく且つ上限締結判定回転数比dよりも小さい場合には〔c<{(LWrR+RWrR)/2}/{(LMOTR+RMOTR)/2}<d〕、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結していると判定する。また、下限締結判定回転数比c以下である場合〔{(LWrR+RWrR)/2}/{(LMOTR+RMOTR)/2}≦c〕、又は上限締結判定回転数比d以上である場合には〔d≦{(LWrR+RWrR)/2}/{(LMOTR+RMOTR)/2}〕、左右油圧ブレーキ60A、60Bのうち少なくとも一方が正常に締結していない(異常である)と判定する。
一方、車両3の速度が低い領域においては、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との比に基づいて異常判定を行うと、その精度が悪化する虞があるので、車両3の速度が所定の閾値b未満のときは、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との差に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行う。
すなわち、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との差が、所定の締結判定回転数差eよりも小さい場合には〔|{(LWrR+RWrR)/2}−{(LMOTR+RMOTR)/2}|<e〕、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結していると判定し、締結判定回転数差e以上である場合には〔e≦|{(LWrR+RWrR)/2}−{(LMOTR+RMOTR)/2}|〕、左右油圧ブレーキ60A、60Bのうち少なくとも一方が正常に締結していない(異常である)と判定する。
なお、本実施形態のように左右電動機2A、2Bと左右後輪LWr、RWrとの間に、左右遊星歯車式減速機12A、12Bが配置される場合には、減速比aを考慮して、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}と、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に減速比aを乗じたものと、の差又は比が、上記所定の範囲内であるかに基づいて異常判定を行う。
なお、車両3の速度は、不図示の車両速度センサによって取得してもよく、また、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRから換算して取得してもよく、左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrRから換算して取得してもよい。
また、車両3の速度に限られず、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTR、又は左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrRが所定の閾値b以上のときに、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との比に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行ってもよい。
また、車両3の速度に限られず、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTR、又は左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrRが所定の閾値b未満のときに、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との差に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行ってもよい。
次に、左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結異常判定のフローについて、図13を参照しながら説明する。
先ず、左右油圧ブレーキ60A、60Bを締結状態とする指令がされているかを判定し(ステップS1)、当該指令がされていない場合には、フローを終了して、ステップS1に戻る。一方、当該指令がされている場合には、ステップS2に進み、車両3の速度が所定の閾値b以上であるか判定する。
ステップS2における判定結果が「YES」である場合には、ステップS3に進み、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との比が、所定の下限締結判定回転数比cよりも大きく且つ上限締結判定回転数比dよりも小さいか〔c<{(LWrR+RWrR)/2}/{(LMOTR+RMOTR)/2}<d〕を判定する。
ステップS3における判定結果が「YES」である場合には、ステップS4に進み、〔c<{(LWrR+RWrR)/2}/{(LMOTR+RMOTR)/2}<d〕である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結されていると判定され(締結OK)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS1に戻る。
一方、ステップS3における判定結果が「NO」である場合には、ステップS5に進み、〔{(LWrR+RWrR)/2}/{(LMOTR+RMOTR)/2}≦c〕又は〔d≦{(LWrR+RWrR)/2}/{(LMOTR+RMOTR)/2}〕である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結されていないと判定され(締結NG)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS1に戻る。
また、ステップS2における判定結果が「NO」である場合には、ステップS6に進み、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との差が、締結判定回転数差eよりも小さいか〔|{(LWrR+RWrR)/2}−{(LMOTR+RMOTR)/2}|<e〕を判定する。
ステップS6における判定結果が「YES」である場合には、ステップS7に進み、〔|{(LWrR+RWrR)/2}−{(LMOTR+RMOTR)/2}|<e〕である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結されていると判定され(締結OK)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS1に戻る。
一方、ステップS6における判定結果が「NO」である場合には、ステップS8に進み、〔e≦|{(LWrR+RWrR)/2}−{(LMOTR+RMOTR)/2}|〕である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結されていないと判定され(締結NG)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS1に戻る。
次に、左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結異常判定について車両が停止状態(図6参照。)から後進(RWD)状態(図11参照。)に遷移する場合を例に説明する。なお、この例において、車両3の速度は閾値b未満であるとする。
停車中は、前輪駆動装置6も後輪駆動装置1も駆動していない。従って、図14に示すように、後輪駆動装置1の左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRはゼロであり、左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrRもゼロとなる。したがって、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}と、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に減速比aを乗じたものと、の回転数差はゼロとなる。また、左右油圧ブレーキ60A、60Bは解放状態とされるので、ブレーキ油圧はゼロに維持される。
次に、後進する場合には、一方向クラッチ50は非係合のまま、左右油圧ブレーキ60A、60Bを締結させる必要があるので、ブレーキ油圧を上昇させる。そして、ブレーキ油圧が所望の値になった時点で、油圧Hi判定がされて、左右油圧ブレーキ60A、60Bが締結状態であると判定される。この状態において左右電動機2A、2Bが逆力行駆動されると、リングギヤ24A、24Bが固定されているので、プラネタリキャリア23A、23Bは逆方向に回転し後進走行がなされる。
このとき、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結している場合には、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}と、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に減速比aを乗じたものとは、略同一の値となるので、これらの回転数差は、略ゼロとなり、締結判定回転数差eより小さくなる〔|{(LWrR+RWrR)/2}−{(LMOTR+RMOTR)/2}×a|<e〕。この場合、正常確定カウンタが時間経過とともに増加して行き、所定時間t経過した時点で正常判定閾値fに到達し、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結していると判定される。
これに対して、後進する場合に左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結していない場合には、リングギヤ24A、24Bが適切に固定されないので、左右電動機2A、2Bの駆動力がプラネタリキャリア23A、23Bに伝達されない。したがって、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRは上昇するのに対し、左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrRが上昇せず、左右電動機2A、2Bが空転状態となってしまう。
そして、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRの上昇にともなって、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}と、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に減速比aを乗じたものとの回転数差が、締結判定回転数差eよりも以上となったことを検知したときから〔e≦|{(LWrR+RWrR)/2}−{(LMOTR+RMOTR)/2}×a|〕、異常確定カウンタが時間経過とともに増加して行く。所定時間t経過した時点で、異常確定カウンタが異常判定閾値gに到達し、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に締結していない(異常である)と判定される。
以上説明したような締結異常判定によれば、車両3の速度が所定の閾値b以上のときは、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との比に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行うので、制御を簡素化することが可能である。
また、車両3の速度が所定の閾値b未満のときは、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との差に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行うので、車両3の速度が低い領域においても、異常判定の精度を向上させることが可能である。
また、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}との差異に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行うので、左後輪LWrの回転数LWrRと左電動機2Aの回転数LMOTRとの差異に基づいて左油圧ブレーキ60Aに異常が発生したことを判定、又は右後輪RWrの回転数RWrRと右電動機2Bの回転数RMOTRとの差異に基づいて右油圧ブレーキ60Bに異常が発生したことを判定する場合に比べて、左右車輪速センサ44A、44B、左右レゾルバ20A、20B自体の不調による誤判定を抑制可能となる。
<解放異常判定>
続いて、左右油圧ブレーキ60A、60Bに解放指令を出しているにもかかわらず、締結状態が維持されてしまう解放異常についての判定方法を述べる。
ECU45は、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRに基づいて、より具体的には、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に基づいて、左油圧ブレーキ60A又は右油圧ブレーキ60Bに解放異常が発生したことを判定する。
ここで、本実施形態において、車両走行中に左右油圧ブレーキ60A、60Bを解放制御する必要が生じるのは、四輪駆動(AWD)状態(図7参照。)から、ENG走行(FWD)状態(図10参照。)に遷移する場合であるので、この場合を例に、解放異常判定について説明する。
図15に示すように、四輪駆動状態では、左右油圧ブレーキ60A、60Bが締結しており、左右電動機2A、2Bから順方向のトルクが入力されている。このとき、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}と、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に減速比aを乗じたものとは、略同一の値となる。
車両3の速度が中車速域から高車速域に至ると、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}が解放指令回転数hと一致し、左右電動機2A、2Bのトルクを減少させる指令が出される。左右電動機2A、2Bのトルクがゼロになった時点で、左右油圧ブレーキ60A、60Bを解放するために、ブレーキ油圧を減少させる。そして、ブレーキ油圧がゼロになった時点で、油圧ゼロ判定がされて、左右油圧ブレーキ60A、60Bが解放状態であると判定される。
この状態から、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRを減少させると、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に解放されている場合には、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}が減少する。そして、正常確定カウンタが時間経過とともに増加して行き、所定時間tだけ経過した時点で所定の正常判定閾値fに到達し、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に解放されていると判定される。
一方、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に解放されておらず、締結状態が維持されてしまう場合には、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRを減少させる指令を出しても、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}が減少しない。この場合、ENG走行による、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}の上昇に伴って、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}も上昇してしまい、所定の解放判定回転数iに達する。そして、異常確定カウンタが時間経過とともに増加して行き、所定時間tだけ経過した時点で、異常確定カウンタが異常判定閾値gに到達し、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に解放されていない(異常である)と判定される。
次に、左右油圧ブレーキ60A、60Bの解放異常判定のフローについて、図16を参照しながら説明する。
先ず、左右油圧ブレーキ60A、60Bを解放状態とする指令がされているかを判定し(ステップS11)、当該指令がされていない場合には、フローを終了して、ステップS11に戻る。一方、当該指令がされている場合には、ステップS12に進み、左右電動機2A、2Bのトルクを減少させ、当該トルクがゼロとなったかを判定する。
ステップS12における判定結果が「NO」である場合には、フローを終了して、ステップS11に戻る。一方、ステップS12における判定結果が「YES」である場合には、ステップS13に進み、左右油圧ブレーキ60A、60Bのトルクを減少させ、当該トルクがゼロとなったかを判定する。
ステップS13における判定結果が「NO」である場合には、フローを終了して、ステップS11に戻る。一方、ステップS13における判定結果が「YES」である場合には、ステップS14に進み、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRを減少させる。続いて、ステップS15に進み、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}が、解放判定回転数iよりも大きいか[i<{(LMOTR+RMOTR)/2}]を判定する。
ステップS15における判定結果が「YES」である場合には、ステップS16に進み、[i<{(LMOTR+RMOTR)/2}]である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に解放されていないと判定され(解放NG)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS11に戻る。
一方、ステップS15における判定結果が「NO」である場合には、ステップS17に進み、[{(LMOTR+RMOTR)/2}≦i]である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左右油圧ブレーキ60A、60Bが正常に解放されていると判定され(解放OK)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS11に戻る。
以上説明したような解放異常判定によれば、締結異常判定と異なり、左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrRを用いず、左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRに基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行うので、制御を簡素化することが可能となる。
また、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に基づいて、左右油圧ブレーキ60A、60Bの異常判定を行うので、左電動機2Aの回転数LMOTRに基づいて左油圧ブレーキ60Aに異常が発生したことを判定、又は右電動機2Bの回転数RMOTRに基づいて右油圧ブレーキ60Bに異常が発生したことを判定する場合に比べて、左右レゾルバ20A、20B自体の不調による誤判定を抑制可能となる。
なお、解放異常判定においても、締結異常判定と同様に、左右後輪LWr、RWrの回転数LWrR、RWrR、及び左右電動機2A、2Bの回転数LMOTR、RMOTRに基づいて、左油圧ブレーキ60A又は右油圧ブレーキ60Bに解放異常が発生したことを判定しても構わない。すなわち、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}と、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}と、の差異に基づいて、左油圧ブレーキ60A又は右油圧ブレーキ60Bに解放異常が発生したことを判定しても構わない。
<異常判定禁止制御>
なお、ECU45は、左電動機2Aの回転数LMOTR又は左後輪LWrの回転数LWrRの符号と、右電動機2Bの回転数RMOTR又は右後輪RWrの回転数RWrRの符号とが、反対のときには、上述した締結異常判定及び解放異常判定を禁止する制御を行う。すなわち、左電動機2A又は左後輪LWrと、右電動機2B又は右後輪RWrとが、正逆回転している状況においては、車両3が低μ路でスピン傾向にある等の状態であり、正しく異常判定できない虞があるので、異常判定が禁止される。これにより、不適切な異常判定を回避することが可能である。
ここで、左右レゾルバ20A、20B、及び左右車輪速センサ44A、44Bの全てが、回転方向を検出可能である場合には、上述した異常判定禁止制御を行うことが可能である。しかし、一般的に、レゾルバは回転方向が検出可能であるが、車輪速センサにはより低廉で検出精度が低く回転方向が検出不能なものが適用されることが多い。
したがって、左右レゾルバ20A、20Bが回転方向を検出可能であり、左右車輪速センサ44A、44Bが回転方向を検出不能である場合には、左電動機2Aの回転数LMOTRの符号と右電動機2Bの回転数RMOTRの符号とが、反対のときに、異常判定を禁止する制御を行う。これにより、左右車輪速センサ44A、44Bとして、より廉価な回転方向検出不能なセンサを採用することが可能である。
(変形例1−1)
次に、本発明の変形例1−1について図17及び図18を参照して説明する。なお、なお、本変形例の駆動装置は、第1実施形態の後輪駆動装置1と比較し、動力断接手段としての油圧ブレーキが一つである点、及び油圧ブレーキと一方向クラッチの配置が異なる点以外、同一の構成を有するので同一又は同等部分については同一又は同等の符号を付してその説明を省略する。
本変形例の後輪駆動装置1では、減速機ケース11とリングギヤ24Aの間に円筒状の空間部が確保され、その空間部内に、油圧ブレーキ60が第1ピニオン26Aと径方向でラップし、第2ピニオン27Aと軸方向でラップして配置されている。油圧ブレーキ60は、減速機ケース11の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35と、リングギヤ24Aの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36が軸方向に交互に配置され、これらのプレート35、36が環状のピストン37によって締結及び解放操作されるようになっている。ピストン37は、減速機ケース11と支持壁45と円筒状支持部42間に形成された環状のシリンダ室38に進退自在に収容されており、シリンダ室38への高圧オイルの導入によってピストン37を前進させ、シリンダ室38からオイルを排出することによってピストン37を後退させる。
また、さらに詳細には、ピストン37は、軸方向前後に第1ピストン壁63と第2ピストン壁64を有し、これらのピストン壁63,64が円筒状の内周壁65によって連結されている。したがって、第1ピストン壁63と第2ピストン壁64の間には径方向外側に開口する環状空間が形成されているが、この環状空間は、シリンダ室38の外壁内周面に固定された仕切部材66によって軸方向前後に仕切られている。減速機ケース11の支持壁45と第2ピストン壁64の間は高圧オイルが直接導入される第1作動室C1とされ、仕切部材66と第1ピストン壁63の間は、内周壁65に形成された貫通孔を通して第1作動室C1と導通する第2作動室C2とされている。第2ピストン壁64と仕切部材66の間は大気圧に導通している。
この油圧ブレーキ60では、第1作動室C1と第2作動室C2に高圧オイルが導入され、第1ピストン壁63と第2ピストン壁64に作用するオイルの圧力によって固定プレート35と回転プレート36を相互に押し付けが可能である。したがって、軸方向前後の第1,第2ピストン壁63、64によって大きな受圧面積を稼ぐことができるため、ピストン37の径方向の面積を抑えたまま固定プレート35と回転プレート36に対する大きな押し付け力を得ることができる。
この油圧ブレーキ60の場合、固定プレート35が減速機ケース11に支持される一方で、回転プレート36がリングギヤ24Aに支持されているため、両プレート35、36がピストン37によって押し付けられると、両プレート35、36間の摩擦締結によって互いに連結されたリングギヤ24A、24Bに制動力が作用し固定され、その状態からピストン37による締結が解放されると、連結されたリングギヤ24A、24Bの自由な回転が許容される。
また、減速機ケース11とリングギヤ24Bの間にも円筒状の空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する一方向クラッチ50が配置されている。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がリングギヤ24Bのギヤ部28Bと一体に構成されている。またアウターレース52は、減速機ケース11の内周面により位置決めされるとともに、回り止めされている。一方向クラッチ50は、車両が前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。より具体的に、一方向クラッチ50は、左右電動機2A、2B側の順方向(車両3を前進させる際の回転方向)の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに係合状態となるとともに左右電動機2A、2B側の逆方向の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに非係合状態となり、車輪Wr側の順方向の回転動力が左右電動機2A、2B側に入力されるときに非係合状態となるとともに車輪Wr側の逆方向の回転動力が左右電動機2A、2B側に入力されるときに係合状態となる。
このように構成された後輪用駆動装置1は、遊星歯車減速機12A、12Bが中央部で軸方向に対向し、遊星歯車減速機12Aのリングギヤ24Aと遊星歯車減速機12Bのリングギヤ24Bが連結され、連結されたリングギヤ24A、24Bは減速機ケース11の円筒状支持部42に軸受43を介して回転自在に支持されている。また、遊星歯車減速機12Aの外径側と減速機ケース11との間の空間には1つの油圧ブレーキ60が設けられ、遊星歯車減速機12Bの外径側と減速機ケース11との間の空間には1つの一方向クラッチ50が設けられ、油圧ブレーキ60と一方向クラッチ50間であって軸受43の外径側には油圧ブレーキ60を作動するピストン37が配置されている。
このように構成された本変形例においても、第1実施形態と同様に締結異常判定、解放異常判定、及び異常判定禁止制御が行われ、同様の効果を奏することが可能である。
また、一方向クラッチ50と油圧ブレーキ60がそれぞれ1つで済むので、駆動ユニットの小型化・軽量化や、部品点数の削減が図れる。
(変形例1−2)
また、第1実施形態の後輪駆動装置1では、図3を参照して上述したように、左右のリングギャ24A、24Bは、その小径部29A、29Bが一方向クラッチ50のインナーレース51とスプライン嵌合することによって、インナーレース51と一体回転する。すなわち、左右のリングギヤ24A、24Bは連結されており、左右電動機2A、2Bが機械的に連結されている。
しかし、後輪駆動装置1では、必ずしも左右のリングギヤ24A、24Bが互いに連結される必要はなく、左右電動機2A、2Bが連結されない構成であってもよい。
このような変形例1−2の後輪駆動装置1は、第1実施形態と同様に、左電動機2Aと左後輪LWrとの動力伝達経路上に配置される左油圧ブレーキ60Aと、右電動機2Bと右後輪RWrとの動力伝達経路上に配置される右油圧ブレーキ60Bと、を備える。したがって、第1実施形態と同様に締結異常判定、解放異常判定、及び異常判定禁止制御が行われ、同様の効果を奏することが可能である。
(変形例1−3)
また、車両3は、内燃機関4及び電動機5からなる前輪駆動装置6は、備えなくてもよく、少なくとも後輪駆動装置1を備えればよい。この場合、車両33は、後輪駆動の電気自動車となる。このような構成であっても、第1実施形態と同様に締結異常判定、解放異常判定、及び異常判定禁止制御が行われ、同様の効果を奏することが可能である。
(変形例1−4)
また、第1実施形態、及び変形例1−1〜1−3において、前輪駆動装置6を後輪駆動装置として適用し、後輪駆動装置1を前輪駆動装置として適用してもよい。
すなわち、第1実施形態、及び変形例1−1、1−2においては、前輪駆動装置は、左右前輪Wfに動力を伝達する左右電動機2A、2Bや、左右電動機2A、2Bと左右前輪Wfとの動力伝達経路上に配置される左右油圧ブレーキ60A、60B等からなり、後輪駆動装置は、内燃機関4や電動機5等からなるように構成してもよい。また、変形例1−3においては、左右前輪Wfに動力を伝達する左右電動機2A、2Bや、左右電動機2A、2Bと左右前輪Wfとの動力伝達経路上に配置される左右油圧ブレーキ60A、60B等からなる前輪駆動装置を備え、後輪駆動装置を備えない構成であっても構わない。このような構成であっても、第1実施形態と同様に左右油圧ブレーキ60A、60B締結異常判定、解放異常判定、及び異常判定禁止制御が行われ、同様の効果を奏することが可能である。
(第2実施形態)
上述の第1実施形態においては、締結異常判定を、後輪回転数平均{(LWrR+RWrRLMOTR)/2}と、電動機回転数平均{(LMOTRRWrR+RMOTR)/2}と、の差異に基づいて行い、解放異常判定を、電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に行い、左油圧ブレーキ60A又は右油圧ブレーキ60Bに締結・解放異常が発生していることを判定していた。
しかしながら、本実施形態においては、左油圧ブレーキ60Aの締結異常判定を、左後輪LWrの回転数LWrRと左電動機2Aの回転数LMOTRとの差異に基づいて行い、右油圧ブレーキ60Bの締結異常判定を、右後輪RWrの回転数RWrRと右電動機2Bの回転数RMOTRとの差異に基づいて行う。これにより、左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結異常をそれぞれ判定することが可能である。
同様に、左油圧ブレーキ60Aの解放異常判定を、左電動機2Aの回転数LMOTRに基づいて行い、右油圧ブレーキ60Bの解放異常判定を、右電動機2Bの回転数RMOTRに基づいて行うことにより、左右油圧ブレーキ60A、60Bの解放異常をそれぞれ判定することが可能である。
以下、本実施形態の締結異常判定及び解放異常判定のフローを詳述するが、後輪回転数平均{(LWrR+RWrR)/2}及び電動機回転数平均{(LMOTR+RMOTR)/2}に基づかないことを除き、第1実施形態と同様であるので、第1実施形態のフロー図である図13及び図16を用いて説明する。
<締結異常判定>
左油圧ブレーキ60Aの締結異常判定について説明する。なお、右油圧ブレーキ60Bの締結異常判定は、同様の方法により行うことが可能であるので、説明を省略する。
図13に示すように、先ず、左油圧ブレーキ60Aを締結状態とする指令がされているかを判定し(ステップS1)、当該指令がされていない場合には、フローを終了して、ステップS1に戻る。一方、当該指令がされている場合には、ステップS2に進み、車両3の速度が所定の閾値b以上であるか判定する。
ステップS2における判定結果が「YES」である場合には、ステップS3に進み、左後輪LWrの回転数LWrR及び左電動機2Aの回転数LMOTRとの比が、所定の下限締結判定回転数比cよりも大きく且つ上限締結判定回転数比dよりも小さいか〔c<LWrR/LMOTR<d〕を判定する。
ステップS3における判定結果が「YES」である場合には、ステップS4に進み、〔c<LWrR/LMOTR<d〕である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左油圧ブレーキ60Aが正常に締結されていると判定され(締結OK)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS1に戻る。
一方、ステップS3における判定結果が「NO」である場合には、ステップS5に進み、〔LWrR/LMOTR≦c〕又は〔d≦LWrR/LMOTR〕である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左油圧ブレーキ60Aが正常に締結されていないと判定され(締結NG)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS1に戻る。
また、ステップS2における判定結果が「NO」である場合には、ステップS6に進み、左後輪LWrの回転数LWrR及び左電動機2Aの回転数LMOTRとの差が、締結判定回転数差eよりも小さいか〔|LWrR−LMOTR|<e〕を判定する。
ステップS6における判定結果が「YES」である場合には、ステップS7に進み、〔|LWrR−LMOTR|<e〕である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左油圧ブレーキ60Aが正常に締結されていると判定され(締結OK)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS1に戻る。
一方、ステップS6における判定結果が「NO」である場合には、ステップS8に進み、〔e≦|LWrR−LMOTR|〕である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左油圧ブレーキ60Aが正常に締結されていないと判定され(締結NG)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS1に戻る。
以上説明したような締結異常判定によれば、左右油圧ブレーキ60A、60Bの締結異常をそれぞれ判定することが可能である。
また、車両3の速度が所定の閾値b以上のときは、左後輪LWrの回転数LWrR及び左電動機2Aの回転数LMOTRとの比、又は右後輪RWrの回転数RWrR及び右電動機2Bの回転数RMOTRとの比に基づいて、左油圧ブレーキ60A又は右油圧ブレーキ60Bの異常判定を行うので、制御を簡素化することが可能である。
また、車両3の速度が所定の閾値b未満のときは、左後輪LWrの回転数LWrR及び左電動機2Aの回転数LMOTRとの差、又は右後輪RWrの回転数RWrR及び右電動機2Bの回転数RMOTRとの差に基づいて、左油圧ブレーキ60A又は右油圧ブレーキ60Bの異常判定を行うので、車両3の速度が低い領域においても、異常判定の精度を向上させることが可能である。
<解放異常判定>
次に、左油圧ブレーキ60Aの解放異常判定について説明する。なお、右油圧ブレーキ60Bの解放異常判定は、同様の方法により行うことが可能であるので、説明を省略する。
図16に示すように、先ず、左油圧ブレーキ60Aを解放状態とする指令がされているかを判定し(ステップS11)、当該指令がされていない場合には、フローを終了して、ステップS11に戻る。一方、当該指令がされている場合には、ステップS12に進み、左電動機2Aのトルクを減少させ、当該トルクがゼロとなったかを判定する。
ステップS12における判定結果が「NO」である場合には、フローを終了して、ステップS11に戻る。一方、ステップS12における判定結果が「YES」である場合には、ステップS13に進み、左油圧ブレーキ60Aのトルクを減少させ、当該トルクがゼロとなったかを判定する。
ステップS13における判定結果が「NO」である場合には、フローを終了して、ステップS11に戻る。一方、ステップS13における判定結果が「YES」である場合には、ステップS14に進み、左電動機2Aの回転数LMOTRを減少させる。続いて、ステップS15に進み、左電動機2Aの回転数LMOTRが、解放判定回転数iよりも大きいか[i<LMOTR]を判定する。
ステップS15における判定結果が「YES」である場合には、ステップS16に進み、[i<LMOTR]である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左油圧ブレーキ60Aが正常に解放されていないと判定され(解放NG)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS11に戻る。
一方、ステップS15における判定結果が「NO」である場合には、ステップS17に進み、[LMOTR≦i]である状態が、所定時間tだけ経過したかを判定する。上記状態のまま所定時間tだけ経過した場合には、左油圧ブレーキ60Aが正常に解放されていると判定され(解放OK)、所定時間tだけ経過しなかった場合には、フローを終了し、ステップS11に戻る。
以上説明したような解放異常判定によれば、左右油圧ブレーキ60A、60Bの解放異常をそれぞれ判定することが可能である。
また、締結異常判定と異なり、左後輪LWrの回転数LWrR(右後輪RWrの回転数RWrR)を用いず、左電動機2Aの回転数LMOTR(左電動機2Aの回転数LMOTR)に基づいて、左油圧ブレーキ60A(右油圧ブレーキ60B)の異常判定を行うので、制御を簡素化することが可能である。
<異常判定禁止制御>
なお、第2実施形態においても、左電動機2Aの回転数LMOTR又は左後輪LWrの回転数LWrRの符号と、右電動機2Bの回転数RMOTR又は右後輪RWrの回転数RWrRの符号とが、反対のときには、上述した締結異常判定及び解放異常判定を禁止する制御が行われる。
(変形例2−1〜2−4)
また、上述の変形例1−1〜1−4においても、第2実施形態と同様に、左油圧ブレーキ60Aの締結異常判定を、左後輪LWrの回転数LWrRと左電動機2Aの回転数LMOTRとの差異に基づいて行い、右油圧ブレーキ60Bの締結異常判定を、右後輪RWrの回転数RWrRと右電動機2Bの回転数RMOTRとの差異に基づいて行っても構わない。また、同様に、左油圧ブレーキ60Aの解放異常判定を、左電動機2Aの回転数LMOTRに基づいて行い、右油圧ブレーキ60Bの解放異常判定を、右電動機2Bの回転数RMOTRに基づいて行っても構わない。また、左電動機2Aの回転数LMOTR又は左後輪LWrの回転数LWrRの符号と、右電動機2Bの回転数RMOTR又は右後輪RWrの回転数RWrRの符号とが、反対のときには、上述した締結異常判定及び解放異常判定を禁止する制御が行われる。
(変形例2−5)
また、上述した後輪駆動装置1では、2つの左右電動機2A、2Bにそれぞれ左右遊星歯車式減速機12A、12Bを設け、それぞれ左後輪LWrと右後輪RWrの制御するように構成したが、これに限定されず、図19に示すように1つの電動機2Cと1つの遊星歯車式減速機12Cを差動装置80に接続して構成してもよい。
本変形例においては、遊星歯車式減速機12Cと差動装置80との動力伝達経路上に、該動力伝達経路を遮断状態又は接続状態に切り替え可能な油圧ブレーキ60Cが配置される。また、電動機12Cには、当該電動機12Cの回転数を検出するレゾルバ20Cが配置され、左右後輪LWr、RWrのうち少なくとも一方(本変形例では左後輪LWr)には、当該左後輪LWrの回転数LWrRを検出する車輪速センサ44Cが配置される。
このように構成した場合で、第2実施形態と同様に、油圧ブレーキ60Cの締結異常判定は、左後輪LWrの回転数LWrRと電動機2Cの回転数MOTRとの差異に基づいて行われ、油圧ブレーキ60Cの解放異常判定は、電動機2Cの回転数MOTRに基づいて行われる。
なお、本変形例においても、前輪駆動装置6を後輪駆動装置として適用し、後輪駆動装置1を前輪駆動装置として適用してもよい。すなわち、前輪駆動装置は、左右前輪Wfに動力を伝達する電動機2Cや、電動機2Cと左右前輪Wfとの動力伝達経路上に配置される油圧ブレーキ60Cや、差動装置80等からなり、後輪駆動装置は、内燃機関4や電動機5等からなるように構成してもよい。このような構成であっても、油圧ブレーキ60Cの締結異常判定、及び解放異常判定を行うことが可能である。
尚、本発明は、上述した実施形態等に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記実施形態等では、第1及び第3回転状態量検出手段としての左右レゾルバ20A、20Bを左右電動機2A、2Bにそれぞれ設けたが、第1及び第3回転状態量検出手段は、左右電動機2A、2Bと左右後輪LWrRWrとの動力伝達経路上で、左右油圧ブレーキ60A、60Bよりも左右電動機2A、2B側に配置されていればよい。
同様に、上記実施形態等では、第2及び第4回転状態量検出手段としての左右車輪速センサ13A、13Bを左右後輪LWr、RWrにそれぞれ設けたが、第2及び第4回転状態量検出手段は、左右電動機2A、2Bと左右後輪LWr、RWrとの動力伝達経路上で、左右油圧ブレーキ60A、60Bよりも左右後輪LRr、RWr側に配置されていればよい。
また、第1〜第4回転状態量としては、回転数に限られず、角速度等を採用してもよい。
また、上述の後輪駆動装置1は、左右電動機2A、2Bと後輪Wr(RWr、LWr)との伝達系路上に左右遊星歯車式減速機12A、12Bを備えたものを例示したが、必ずしも左右遊星歯車式減速機12A、12B等の変速機を備えている必要はない。
また、左右電動機2A、2Bの出力軸と左右車軸10A、10Bとは同軸上に配置される必要はない。
また、前輪駆動装置6に内燃機関4を用いずに電動機5を唯一の駆動源とするものでもよい。