以下、本発明を実施するための形態の一例(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。また、以下の説明において、上下左右の方向は図1中に示す上下左右の方向を基準とし、前後の方向は図2中に示す前後の方向を基準とする。
まず、本発明の実施形態に係る冷蔵庫の全体構成について説明する。
≪冷蔵庫の全体構成≫
図1は、本発明の実施形態における冷蔵庫の正面図である。図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、上方から、冷蔵室2と、左右に並べた製氷室3及び上段冷凍室4と、下段冷凍室5と、野菜室6と、を有している。なお、一例として、冷蔵室2及び野菜室6は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。また、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、およそ−18℃の冷凍温度帯の貯蔵室である。
冷蔵室2は、左右に分割された、前方側(図1の紙面手前側)に観音開きの、いわゆるフレンチ型の冷蔵室扉2a(第一の扉)及び冷蔵室扉2b(第二の扉)を備えている。冷蔵室扉2a、2bはヒンジ17a及びヒンジ17bのまわりに回動する。左右の冷蔵室扉2a、2b同士の隙間を閉鎖するために、冷蔵室扉2aの冷蔵室扉2bに近接した辺に沿って、回転仕切り18が設けられている。その構成は後に詳しく説明する。
製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、及び野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、及び野菜室扉6aを備えている。なお、以下の説明において、左右の冷蔵室扉2a、2b、製氷室扉3a、上段冷凍室扉4a、下段冷凍室扉5a、及び野菜室扉6aのそれぞれは、単に扉2a、扉2b、扉3a、扉4a、扉5a、及び扉6aと称せられる場合がある。
冷蔵庫1は、扉2a、扉2b、扉3a、扉4a、扉5a、及び扉6aのそれぞれの開閉状態を検知する扉センサ49(図示省略)と、これらの扉2a、2b、3a、4a、5a、扉6aの少なくともいずれかが開放していると判定された状態が所定時間(例えば、1分間以上)継続された場合に、使用者にその旨を報知する報知手段123(図示省略)と、冷蔵室2、上段冷凍室4、下段冷凍室5等の温度設定をする温度設定器、所定の操作部、表示部等を備える図1に示すコントロールパネル40等を備えている。
図2は、図1のA−A断面を模式的に示す側断面図である。図2に示すように、冷蔵庫1の庫外と庫内は、内箱10aと外箱10bとの間に発泡断熱材(発泡ポリウレタン)を充填することにより形成される断熱箱体10により隔てられている。また、冷蔵庫1の断熱箱体10は複数の真空断熱材14を実装している。
庫内は、温度帯の異なる上下方向に配置された複数の貯蔵室が、断熱仕切壁11a、11bで断熱的に区画されている。即ち、上側の断熱仕切壁11aにより、冷蔵温度帯の貯蔵室である冷蔵室2と、冷凍温度帯の貯蔵室である上段冷凍室4及び製氷室3(図1参照)とが隔てられている。また、下側の断熱仕切壁11bにより、冷凍温度帯の貯蔵室である下段冷凍室5と、冷蔵温度帯の貯蔵室である野菜室6とが隔てられている。
扉2a、2bの庫内側には複数の扉ポケット13が設けられている。また、冷蔵室2は複数の棚12により縦方向に複数の貯蔵スペースに区画されている。
上段冷凍室4及び下段冷凍室5それぞれの貯蔵室の前方に設けられた扉4a、5aの後方に、収納容器4b、5bがそれぞれ設けられている。
野菜室6には、貯蔵室の前方に設けられた扉6aの後方に、下段収納容器6bと、下段収納容器6bの上方の上段収納容器6cと、下段収納容器6bに着脱自在に設けられた野菜室仕切り74、とが設けられている。下段収納容器6bと上段収納容器6cと野菜室仕切り74の詳細な構成については、後述する。
そして、扉4a、5a、6aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器4b、5b、6b、6cが引き出せるようになっている。図1に示す製氷室3にも同様に、扉3aの後方に、収納容器(図2中、符号3bで表示)が設けられ、扉3aの図示しない取手部に手を掛けて手前側に引き出すことにより、収納容器3bが引き出せるようになっている。
図2に示すように、扉2a、2b、3a、4a、5a、6aは、その周囲にドアパッキン15が設けられており、各扉2a、2b、3a、4a、5a、6aを閉じた際、冷蔵庫1の前面の開口周縁部と密着することで貯蔵空間(冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、及び野菜室6)の内部を閉塞して密閉し、これらの貯蔵空間から外部への冷気の漏れを防止している。
図2に示すように、冷却器7は、下段冷凍室5の略背部に設けられた冷却器収納室8内に配置されている。冷却器7は、冷却器配管7dに多数のフィン(図示省略)が取り付けられて構成され、冷却器配管7d内の冷媒と空気との間で熱交換することができるようになっている。
冷却器7の上方には、庫内送風機9(例えば、モータ駆動するファン)が設けられている。冷却器7で熱交換して冷やされた空気(以下、この冷やされた低温の空気を「冷気」という)は、庫内送風機9によって冷蔵室送風ダクト22、野菜室送風ダクト25、製氷室送風ダクト26a、上段冷凍室送風ダクト26b及び下段冷凍室送風ダクト27を介して、冷蔵室2、野菜室6、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5の各貯蔵室へ送られるようになっている。
図3は、冷蔵庫の庫内の構成を表す正面図である。
図3に示すように、冷蔵室2、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5及び野菜室6への各送風ダクトは、図3中、破線で示すように冷蔵庫1の各貯蔵室の背面側に設けられている。
冷却器7の冷気がどの貯蔵室へ送られるかは、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21により制御されるようになっている。
ここで、冷蔵温度帯室冷気制御手段20は、独立した2つの開口部を備える所謂ツインダンパであり、第一の開口20aは冷蔵室送風ダクト22への送風を制御し、第二の開口20bは野菜室送風ダクト25への送風を制御するようになっている。また、冷凍温度帯室冷気制御手段21は、単独の開口部を備えたシングルダンパであり、製氷室送風ダクト26a(図2参照)、上段冷凍室送風ダクト26b(図2参照)及び下段冷凍室送風ダクト27(図2参照)への送風を制御するようになっている。
具体的には、冷蔵温度帯室冷気制御手段20の第一の開口20aが開状態のとき、冷気は、冷蔵室上流ダクト23(後述)及び冷蔵室送風ダクト22を経て冷蔵室2に送られる。つまり、冷気は、この冷蔵室送風ダクト22の延在方向に沿って複数設けられた吹出口2cから冷蔵室2に送られる。なお、冷蔵室2を冷却した冷気は、冷蔵室2の下部に設けられた戻り口2dから冷蔵室戻りダクト24を経て、冷却器収納室8の側方下部から冷却器収納室8に流入し、冷却器7と熱交換するようになっている。
冷蔵温度帯室冷気制御手段20の第二の開口20bが開状態のとき、冷気は、後記の冷蔵室上流ダクト23(図4参照)及び野菜室送風ダクト25を経て、吹出口25aから野菜室6に送られる。なお、野菜室6を冷却した冷気は、野菜室6の前面近傍から戻り口25b(図2参照)を経て、冷却器収納室8の下部から冷却器収納室8に流入し、冷却器7と熱交換するようになっている。ちなみに、野菜室6を循環する風量は、冷蔵室2を循環する風量や冷凍温度帯室冷気制御手段21を循環する風量に比べて少なくなっている。
冷凍温度帯室冷気制御手段21が開状態のとき、冷気は、製氷室送風ダクト26a(図2参照)や上段冷凍室送風ダクト26b(図2参照)を経て、吹出口3c、4cから製氷室3及び上段冷凍室4のそれぞれに送られる。また、冷気は、前記の下段冷凍室送風ダクト27(図2参照)を経て、吹出口5cから下段冷凍室5に送られる。このように、冷凍温度帯室冷気制御手段21は、後記の送風機カバー31(図4参照)の上方に取り付けられ、製氷室3への送風を容易にしている。
なお、製氷室3に前記の製氷室送風ダクト26a(図2参照)を介して送風された冷気及び上段冷凍室4に前記の上段冷凍室送風ダクト26b(図2参照)を介して送風された冷気は、下段冷凍室5に下降する。そして、この冷気は、下段冷凍室5に下段冷凍室送風ダクト27を介して送風された冷気と共に、下段冷凍室5の奥下方に設けられた後記の冷凍室戻り口28(図2参照)を介して、冷却器収納室8に流入し、冷却器7と熱交換するようになっている。
製氷室3及び上段冷凍室4、ならびに前記の下段冷凍室5を冷却した冷気は、下段冷凍室5の奥下方に設けられた冷凍室戻り口28を介して、冷却器収納室8に戻る。ちなみに、冷凍室戻り口28の横幅寸法は、冷却器7の左右の幅寸法とほぼ等しい。
図4は、図2の要部拡大説明図である。図4に示すように、吹出口3c、4c、5cが形成されている冷凍温度帯室背面仕切29は、上段冷凍室4、製氷室3及び下段冷凍室5と、冷却器収納室8との間を区画する。
庫内送風機9が取り付けられている送風機支持部30は、冷却器収納室8と冷凍温度帯室背面仕切29との間を区画する。
送風機カバー31は、庫内送風機9の前面を覆うように配置されている。送風機カバー31と冷凍温度帯室背面仕切29との間には、庫内送風機9によって送風された冷気を吹出口3c、4c、5cに導くための、製氷室送風ダクト26a、上段冷凍室送風ダクト26b及び下段冷凍室送風ダクト27が形成されている。また、送風機カバー31の上部には、吹出口31aが形成されており、この吹出口31aに冷凍温度帯室冷気制御手段21が設けられている。
また、送風機カバー31は、庫内送風機9によって送風された冷気を冷蔵温度帯室冷気制御手段20側に送風する役目も果たしている。すなわち、送風機カバー31に設けられた冷凍温度帯室冷気制御手段21側に流れない冷気は、冷蔵室上流ダクト23を経由して冷蔵温度帯室冷気制御手段20側に導かれる。
また、送風機カバー31は、庫内送風機9の前面に整流部31bを備えている。整流部31bは、吹き出す冷気が引き起こす乱流を整流して、騒音の発生を防止するようになっている。
また、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21が開状態のとき、大部分の冷気が冷凍温度帯室冷気制御手段21側に送られて、残りの他の冷気が冷蔵温度帯室冷気制御手段20側に導かれるように各送風ダクト26a、26b、27が構成されている。これにより、温度帯の異なる貯蔵室である冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)及び冷蔵温度帯室(冷蔵室2及び野菜室6)に、1つの冷却器7で冷気を供給することができるようになっている。
以上説明したように、冷蔵庫1の各貯蔵室へ送風する冷気の切り替えは、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21それぞれを適宜に開閉制御することにより行うことができるようになっている。
冷却器7の下方には、除霜手段である除霜ヒータ35が設置されており、除霜ヒータ35の上方には、除霜水が除霜ヒータ35に滴下することを防止するために、上部カバー36が設けられている。
冷却器7及びその周辺の冷却器収納室8の壁に付着した霜の除霜(融解)によって生じた除霜水は、冷却器収納室8の下部に備えられた樋32に流入した後に、排水管33を介して機械室50に配された蒸発皿34に達し、次に説明する圧縮機51(図3参照)や凝縮器52(図3参照)の熱により蒸発させられ、冷凍機外に排出されるようになっている。
図3に示すように、断熱箱体10の下部背面側には、機械室50が設けられている。機械室50には、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機51と、冷媒と空気とを熱交換させる凝縮器52と、凝縮器52における冷媒と空気の熱交換を促進させる庫外送風機53と、細管である減圧手段54と、が配置されている。
なお、圧縮機51、凝縮器52、減圧手段54は、冷却器7(蒸発器)と配管で接続され、冷媒が流通する冷媒経路(冷媒回路)が形成されるようになっている。
図2に示すように、冷蔵庫1の天井壁の上面側には、制御部として、CPU、ROMやRAM等のメモリ、インターフェース回路等を搭載した制御手段である制御基板41が配置されている。冷蔵庫1には、冷蔵室2の温度を検出する冷蔵室温度センサ44、野菜室6の温度を検出する野菜室温度センサ45、冷凍温度帯室(製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5)の温度を検出する冷凍室温度センサ46、冷却器7の温度を検出する冷却器温度センサ47等の温度センサが設けられ、検出した温度が制御基板41に入力されるようになっている。
また、制御基板41は、扉2a、2b、3a、4a、5a、6aの開閉状態をそれぞれ検知する扉センサ(図示省略)、扉2aに設けられた前記のコントロールパネル40(図1参照)と接続されている。
制御基板41は、前述のROMに予め搭載されたプログラムにより、圧縮機51のON/OFFや回転速度の制御、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21を個別に駆動するそれぞれの駆動モータ(図示省略)の制御、庫内送風機9のON/OFFや回転速度の制御、庫外送風機53(図3参照)のON/OFFや回転速度等の制御、扉開放状態を報知する報知手段123のON/OFF、等の制御を行うことにより、冷蔵庫全体の運転を制御することができるようになっている。
図5は、図1のB方向から見た冷蔵庫の平面図である。
本実施形態においては、左側の扉2aに回転仕切り18が設けられている。
この回転仕切り18は、扉2aに設けられた回転仕切り支点19のまわりに回動自在に軸支されている。扉2aが閉じた際には回転仕切り18は、扉2aと平行に位置して扉2aと右側の扉2bの間の隙間を塞ぐ。
また、使用者が扉2aを開くと、回転仕切り18は図示しないカムの作用によって、回転仕切り支点19のまわりに扉2aと略直交する位置まで回動する。回転仕切り18は、扉2bと干渉することなく開く。
また冷蔵庫1は、扉2a、2bを完全に閉じ切る前に、扉2a、2bを閉じる方向に付勢することによって、いわゆる半ドアを防止するクローザを備えている。
次に、本実施形態における野菜室6の構成について、図6から図10を用いて詳細に説明する。
図6は本実施形態における野菜室6の構成を示す図1におけるA−A部分断面図である。
図7は本実施形態における野菜室6の構成を示す図1におけるC−C断面図である。
図8は図7におけるD−D断面図、図9はE−E断面図である。
図10は野菜室6の下段収納容器6bと上段収納容器6cとの配置を示す平面図である。
図6から図10において、冷蔵庫1の前面に沿って設けられた野菜室扉6aには、左右両側の側面に、後方に向けて延出した一対の支持レール55が設けられている。支持レール55の前端近傍は、内箱10aの内側に設けられた本体ローラ56に載置されている。
一対の支持レール55の後側の端部は、互いにレール補強57を介して接続され、変形しにくいよう構成されて必要な強度を得ている。
支持レール55の後端近傍には支持ローラ58が設けられ、冷蔵庫1の内箱10aに沿って前後方向に設けられた本体レール59に沿って前後方向に移動可能な構成である。支持レール55には下段収納容器6bが載置され、下段収納容器6bは支持レール55と一体となって前後方向に移動可能である。
下段収納容器6bの前方側の一辺は、底面との間に段差60を介して一段低く配置された収納凹部61となっており、例えば樹脂容器入り飲料などの背の高い食品の収納にとって好適に配置されている。
下段収納容器6bの後面側には、下段収納容器6bの内部に収納された野菜類から発生した水分を下段収納容器6bの外部の空気に放出させる、水分吸収放出手段62が設けられている。
水分吸収放出手段62は、下段収納容器6bの外側から冷却される熱伝導度の高い例えばアルミニウム製の高熱伝導性部材63と、高熱伝導性部材63よりも後面側には高熱伝導性部材63と下部を接し、吸水性の高い例えば繊維をシート状に構成した吸水放出部材64を設けている。
下段収納容器6b内に野菜から発生した水分は、高熱伝導性部材63の表面で冷却されて結露して水滴となり、吸水放出部材64に吸水されて毛管現象によって吸水放出部材64は湿潤する。吸水放出部材64に含まれる水分は、野菜室6の容器(下段収納容器6b,上段収納容器6c)と内箱10aとの間に流れる低温の空気に接触することで、この低温の空気中に放出されるので、野菜室下段収納容器6bの内部の所定量以上の水分を野菜室6の外に移動させることができる。
下段収納容器6bの上面には底面と前面と後面と左側面と右側面とを備えた上段収納容器6cが載置されており、図9に示すように、上段収納容器6cは概ね下段収納容器6bの内側に適切な隙間65を配しつつ嵌合した構成である。上段収納容器6cの前面と後面と左側面と右側面の上側の辺は、外側に向けて厚さをもって折り返したフランジ部66とすることで剛性を得ている。
フランジ部66の外周はさらに下方に向けて延出された載置部67となっており、載置部67を下段収納容器6bの左右両側の壁面の上端を外側に折り返したフランジ部68に載置し、所定の範囲において前後方向に移動可能なるようにしている。図6、図7および図10に図示したのは、上段収納容器6cが下段収納容器6bに対して最も前方に寄って配置された状態であり、かつ野菜室6は冷蔵庫本体1に対して閉じた状態である。野菜室6内から引き出された状態の上段収納容器6cが野菜室6側に押されると、野菜室6の内壁面を構成する内箱10aに凹形状に形成された引出レール(図示しない)により支持される。また、野菜室扉6aを閉じた状態では、上段収納容器6cが下段収納容器6bの上端縁によって支持される。
上段収納容器6cの底面の下段収納容器6bに近接した側であって、下段収納容器6bの後側の辺に沿って例えば柔軟なゴム製のパッキン69が設けられており、野菜室6が閉じられた際にはパッキン69が下段収納容器6bの後側の辺と接することによって、下段収納容器6bの後側の辺を密閉する。
野菜室6が閉じられた際には、下段収納容器6bの左右両側面上端に設けられた凹部70と、上段収納容器6cの左右両側面の載置部67に設けられた凸部71とが互いに嵌合した、所謂落とし込みによって位置決めされる構成である。
ここで、凹部70と凸部71との落とし込みによる嵌合は強固なものではなく、上段収納容器6cに対して前方から所定以上の力を加えれば凸部71が凹部70から外れ、上段収納容器6cは下段収納容器6bに対して後方に移動可能となる構成である。
またさらに、上段収納容器6cの後部に後方に向けて設けられた第一の当接部72と、断熱仕切壁11bに前方に向けて設けられた第二の当接部73とが当接することで、上段収納容器6cの後方への移動を制限する構成である。なお、上段収納容器6cの後方への移動が所定位置で規制される構成であれば、必ずしも断熱仕切壁11bに第二の当接部73を設ける構成に限定されない。例えば、上段収納容器6cのいずれかの部分を第一の当接部として、野菜室6の内壁面に第二の当接部を設けて、上段収納容器6cの後方への移動を所定位置で規制した構成を採用できる。
上段収納容器6cの前方中央部には、詳細な構成は後述するが、野菜室仕切り74と上段収納容器6cとの間をロックし、かつハンドル操作によってロック解除できる、係脱可能なラッチ手段80が設けられている。
図10に示すように、このラッチ手段80の前方の面は上段収納容器6cの前方の面と概ね同一面、又は所定の奥行き寸法内に配置されており、ラッチ手段80が下段収納容器6bの前部収納スペース6b1に対して大きく出張らないようにすることで、収納凹部61に飲料などを収納するときの邪魔にならないようにしている。
下段収納容器6bの底面と、収納凹部61との境界となる段差60に近接して、段差60の高い方の面に、下段収納容器6bを前後に仕切る野菜室仕切り74が着脱可能に設けられている。野菜室仕切り74を設置した場合には、下段収納容器6bの野菜室仕切り74よりも前方は前部収納スペース6b1、野菜室仕切り74よりも後方は後部収納スペース6b2、が区分けされ、野菜室仕切り74を取り外した際には下段収納容器6bは全体で一つの収納スペースとなるように構成している。
野菜室仕切り74は下段収納容器6bの底面に設けられた段差60の高い方の面にセットされるように配置したので、野菜室仕切り74の高さは段差60の高い方の面から上段収納容器6cの底面までの高さに過ぎないので、野菜室仕切り74の全高を抑制して小型化できるので、好適である。
野菜室仕切り74は上段収納容器6cの前方の辺に近接して配置され、野菜室仕切り74の上端にはラッチ手段80を介して野菜室仕切り74と上段収納容器6cとをロックするためのラッチ受け75が設けられているが、その詳細は後述する。
次に、図11から図15を用いて野菜室仕切り74の構成について説明する。
図11は、野菜室仕切り74を斜め前方からみた斜視図であり、左右の長手方向を一部短縮した省略図として図示している。またさらに、野菜室仕切り74を着脱するために下段収納容器6bに設けられた仕切ガイド76を、説明のためにその部分のみを取り出した形状として図示し、野菜室仕切り74と仕切ガイド76との位置関係を示す分解斜視図としている。
図12は図11における断面F−Fであり、野菜室仕切り74の断面構造を示している。
図13は、野菜室仕切り74を斜め後方からみた斜視図であり、図11と同様に左右の長手方向を一部短縮した省略図として図示している。またさらに、下段収納容器6bと仕切ガイド76との構成を部分的に図示した分解斜視図としている。
図14は、野菜室仕切り74と下段収納容器6bとの配置を示す平面図である。
図15は、野菜室仕切り74と下段収納容器6bとの関係を示す、図13におけるG−G断面図である。
野菜室仕切り74は、図11ないし図13に示すように、一例として四辺形をなしたガラス板74aの周囲に樹脂製の仕切り枠74bを一体として組み合わせた構成である。ガラス板74aは透明なので、野菜室6を開いた際には野菜室仕切り74を通して下段収納容器6bに収納された食品を目視することが可能であり、食品の収納量や状態を確認することが容易なので好適である。
野菜室仕切り74の下部に沿って凹部である受け溝74cが設けられており、下段収納容器6bの受け溝74cに対応した位置には上向きの突起である底面凸部77が設けられている。底面凸部77と受け溝74cは野菜室仕切り74を下段収納容器6bに設置した際の位置決めとなる効果がある。また、受け溝74cと底面凸部77は互いに嵌合して入り組んだ、所謂ラビリンス構造となるので、前部収納スペース6b1と後部収納スペース6b2との間の気体の移動を妨げる、という効果がある。
野菜室仕切り74の上方中央部には、ラッチ手段80に設けられたラッチ83(請求項に記載の「第一係合手段」)を介して野菜室仕切り74と上段収納容器6cとを互いにロックし、かつロック解除をするための、ラッチ受け75(請求項に記載の「第二係合手段」)が設けられている。
ラッチ83とラッチ受け75とが嵌合してロックされる位置は、上段収納容器6cが凹部70と凸部71による落とし込みによって下段収納容器6bと嵌合された位置となるようにしている。したがって、ロックされた際には、上段収納容器6cと下段収納容器6bとは、左右両側面では落とし込みによって嵌合し、さらに中央部はラッチ手段80と野菜室仕切り74を介してロックされているので、上段収納容器6cの位置決めが確実である。
野菜室仕切り74は下段収納容器6bに設けられた仕切ガイド76に沿って挿入され、下段収納容器6bに取り付けられる。ここで、野菜室仕切り74の左右両側面の下方かつ後方側は、稜線が除かれた凹部74dとなしている。下段収納容器6bに設けられた仕切ガイド76のうち、野菜室仕切り74の凹部74dに対応した位置には凸部76bが設けられ、凹部74dと凸部76bとは互いに干渉しないように配置されている。
一方、野菜室仕切り74の前後、左右、あるいは上下を逆向きに仕切ガイド76に挿入しようとした場合には、仕切ガイド76の凸部76bが仕切り枠74bと干渉するので、野菜室仕切り74を仕切ガイド76に沿って所定の位置に取り付けることができない。そのため、野菜室仕切り74の向きを誤ってセットしようとした場合には、使用者が誤りを容易に認識することができる。
したがって、野菜室仕切り74は下段収納容器6bに対して上下、左右、前後の各方向に対して正しく所定の向きにセットされ、逆向きにセットされることがなく、ラッチ受け75が正しい方向に確実に取付けられる、という効果がある。
図16は野菜室6の構成を示す分解斜視図であり、野菜室扉6aの左右両端に設けられ、後方に向けて突出した支持レール55に設けられた支持ローラ58を、冷蔵庫本体1の内箱10aに前後方向に沿って設けられた本体レール59に摺動可能に挿入する。さらに本体ローラ56に支持レール55を載置することで、野菜室扉6aは前後方向に移動して開閉できる構成である。左右の支持レール55には下段収納容器6bが載置され、野菜室仕切り74は下段収納容器6bに設けられた仕切ガイド76に沿って上方から下方に向けて挿入してセットされ、上段収納容器6cは下段収納容器6bに載置される構成である。
野菜室仕切り74を下段収納容器6bにセットすると、先に説明したように下段収納容器6bは野菜室仕切り74によって、前部収納スペース6b1と後部収納スペース6b2とに分割される。ここで、野菜室仕切り74より前方の前部収納スペース6b1は、例えばボトルや容器入り飲料などの背の高い食品の保存に用いられるスペースであって、内箱10a内の空間に開放された領域となる。
一方、後部収納スペース6b2は、野菜室6が閉じられた際には野菜室仕切り74と上段収納容器6cとによって、密閉に近い適度な気密状態となるように構成されている。
すなわち、野菜室仕切り74の下面は下段収納容器6bの底面凸部77と野菜室仕切り74の受け溝74cのラビリンス構造で仕切られ、野菜室仕切り74の左右側面は仕切ガイド76の溝に嵌合しており、気体の通過を妨げる構成である。
後部収納スペース6b2の後面は、上段収納容器6cの下面の幅方向に部分的に設けられたパッキン69と接して部分的に密閉されており、吹出口25aから吐出される冷気が下段収納容器6bの後部収納スペース6b2に流入することを防止している。
一方、下段収納容器6b左右の側面及び底部後方両端は、図9に示した上段収納容器6cと下段収納容器6bとの間に設けられた隙間65を介して上段収納容器6cが嵌合されており、吐出口6cから内箱10aの内部に吐出された冷気は、隙間65を通して微量だけ下段収納容器6bの後部収納スペース6b2内に流入するようにしている。
ここで、隙間65の寸法の一例としては、2mmから3mm程度としている。この隙間65が大きすぎると吹出口25aからの冷気が下段収納容器6b内に流入し過ぎる為に、下段収納容器6b内の湿度が低下して野菜が乾燥する、という問題点が生じる。一方、隙間65が小さすぎると、後部収納スペース6b2内の空気が撹拌されないために、下段収納容器6b内の温度分布が大きくなって局部的に温度が低下して、壁面の一部に結露が生じ易い、という問題点が生じる。
そこで、微量の冷気のみが後部収納スペース6b2内に流入するような適切な隙間を持たせつつ、密閉状態に近い適度な気密状態とすることが好適である。
後部収納スペース6b2は密閉状態に近い適度な気密状態となっているので、収納された野菜類から発生した水分によって後部収納スペース6b2内は湿度が100%に近い高湿状態が維持される。さらに、壁面に結露するような過度な水分は水分吸収放出手段62によって下段収納容器6bの外部に放出されるので、野菜の鮮度が維持されるとともに結露水が下段収納容器6bの壁面や底面に水滴として付着しないので、野菜類の鮮度が維持される、という効果がある。
次に、上段収納容器6cの前方中央部に設けられたラッチ手段80の構成について図17から図19を用いて説明する。
図17は本実施例におけるラッチ手段80の斜視図であり、(a)は斜め上前方から見た図象であり、(b)は斜め下後方から見た図象である。
図18は本実施例におけるラッチ手段80を上段収納容器6cに取付ける手順を示した斜視図であり、図18(a)、図18(b)、図18(c)、の順に取付ける。
図19は図18のG−G断面図である。
図17において、ラッチ手段80は、外形を構成するラッチケース81と、ラッチ手段80の中央部の前面と上面と後面の一部に使用者が操作するハンドル82(請求項に記載の「操作手段」)を構成している。ラッチ手段80の下面にはハンドル82の操作と連動して上下方向に移動するラッチ83と、ラッチ83よりも左右の側面に近接して、ラッチ手段80を上段収納容器6cに取付けるための取付爪84が設けられている。
ラッチ手段80の左右側面の上端近傍には、上段収納容器6cに取付けるためのボス受け溝85と、ボス受け溝85からラッチ手段80の後面とを接続する溝の一部を覆う弾性リブ86が設けられている。
ラッチ手段80の後面側には上段収納容器6cに設けられた取付リブ87と噛み合う溝部88が設けられている。
ボス受け溝85は上下方向に形成されており、このボス受け溝85の下端から前後方向に溝が形成されている(図18参照)。すなわち、ボス受け溝85と溝によって略L字状の溝形状を形成している。溝は、ラッチ手段80を上段収納容器6cに取り付ける際に、取付ボス90をボス受け溝85に導くためのものである。なお、弾性リブ86の弾性力に抗して取付ボス90を溝に挿入した後に、弾性リブ86は溝の一部を覆う。これにより、ラッチ手段80を上段収納容器6cに取り付けた後は、溝が弾性リブ86で覆われているので、溝が外観上目立たず、意匠性が向上する。
ここで、ラッチ手段80の前後方向の厚さの間に野菜室仕切り74を配置し、ラッチ手段80の前方寄りにハンドル82によって上下移動するラッチ83を設けて、野菜室仕切り74の上部に設けられたラッチ受け75と嵌合するように構成した。そのため、野菜室仕切り74の前面からラッチ手段80の前面の出張りを小さくすることができる。またさらに、ラッチ手段80の前面と上段収納容器6cの前面とは概ね面一となるように構成したので、下段収納容器6bの前部収納スペース6b1に対するラッチ手段80の出張りを小さくできるので、前部収納スペース6b1への食品の出し入れの妨げにならないので好適である。
次に、図18と図19を用いて、ラッチ手段80を上段収納容器6cに取付ける動作について説明する。
上段収納容器6cには、ラッチ手段80の左右側面に対応して、ラッチ手段取付側面89が設けられ、ラッチ手段取付側面89には内側に突出した取付ボス90が設けられている。換言すると、取付ボス90はラッチ手段(操作手段)80の左右側面に対向する位置に設けられている。ラッチ手段80の下面に対応した上段収納容器6cの下面には、取付爪84に対応した爪受孔91が開口している。換言すると、爪受孔91はラッチ手段(操作手段)80の下面に対向する位置に設けられている。またさらに、ラッチ手段80の溝部88に対応して、前方に向いて突出した取付リブ87が設けられている。換言すると、取付リブ87はラッチ手段(操作手段)80の後面に対向する位置に設けられている。
図18(a)に示すように、ラッチ手段80の前面が略上向きになるよう配置し、上段収納容器6cに設けられた取付ボス90を、弾性リブ86を変形させつつラッチ手段80の左右側面に設けられたボス受け溝85に嵌合させる。
次に、図18(b)に示すように、ラッチ手段80を取付ボス90のまわりに矢印方向に回転させ、取付リブ87を溝部(後面溝部)88に嵌合させる。
さらに、図18(c)に示すように、ラッチ手段80の前面が上段収納容器6cの前面に略一致するまで回転させ、ラッチ手段80の下面に設けられた取付爪84を上段収納容器6cの爪受孔91に嵌合させることで、図19に示すように、取付ボス90とボス受け溝85とが嵌合し、溝部88と取付リブ87とが嵌合し、さらに取付爪84と爪受孔91とが嵌合することによって、ラッチ手段80は上段収納容器6cの前面中央部に取り付けられる。
すなわち、ラッチ手段(操作手段)80は取付ボス90がボス受け溝85に係合した状態で取付ボス90まわりに回動自在に構成され、ラッチ手段80が取付ボス90まわりに回動する範囲の所定位置で、取付リブ87が溝部(後面溝部)88に係合し、かつ取付爪84が爪受孔91に係合する。
逆に、図18(c)ないし図19に示した状態から、爪受孔91に例えば細い棒を挿入して取付爪84を上方に変形させて取付爪84による引っ掛けを外し、ラッチ手段80の下部を前方に引けば、図18(b)の状態となり、さらに弾性リブ86を内側に向けて弾性変形させれば、取付ボス90をボス受け溝85から外し、ラッチ手段80を上段収納容器6cから取り外すことができる。
ラッチ手段80を上段収納容器6cから取り外した後は、上段収納容器6cのみを水洗いすることができるので、上段収納容器6cを清潔に保つことができる、という効果がある。
次に、ラッチ手段80の内部構成について図20から図22を用いて説明する。
図20は本実施例におけるラッチ手段80の内部構造を示す斜視図であり、図20(a)は使用者がハンドル82を操作しない状態、図20(b)は使用者がハンドル82を操作した状態を示している。
図21(a)は図20(a)のH−H断面図であり、図21(b)は図20(b)のJ−J断面図である。
図22は上段収納容器6cを閉じる際のラッチ83の動作を示しており、図20(a)ないし図20(b)のH−H断面に対応する断面図である。
図23はラッチ手段80を前方から見た図である。
図20から図23において、ハンドル82はラッチ手段80の上下方向の下方寄りに設けられたハンドル支点92のまわりに回動自在に軸支されており、ハンドル82を操作した際には、ハンドル82はハンドル支点92のまわりに回動して、ハンドル82の上面が後方に移動するとともに、再度復帰できる構成である。
ここで、ハンドル82の前後方向の厚さを上段収納容器6cの周囲に配設されたフランジ部66の厚さと同等としたので、ハンドル82が下段収納容器6bの前部収納スペース6b1や上段収納容器6c内に出張ることがなく、食品の収納量を確保できるので好適である。
ベルクランク93(請求項に記載の「操作方向変更手段」)は、ベルクランク軸94の左右両端に設けられたベルクランク支点95のまわりに回動自在に軸支されている。ベルクランク軸94からハンドル82に近接する方向に斜め上向きに突出した駆動側である一対の第一のアーム96(請求項に記載の「第一の腕部」)は、ハンドル82の幅よりも内側に配置されて、ハンドル82の前面の裏面側に設けられた突起であるアーム押し部97に対して当接されている。
ベルクランク軸94の左右両端それぞれのベルクランク支点95の内側近傍であって、ハンドル82の幅よりも外側の位置には、第一のアーム96とは異なる方向、すなわちハンドル82に近接する方向に斜め下向きに突出した従動側となる一対の第二のアーム98(請求項に記載の「第二の腕部」)が設けられている。なお、ベルクランク支点95と第二のアーム98は、前後にラッチケース81が位置しており、第一のアーム96は、ハンドル82とラッチケース81の間に位置している(図23参照)。
第二のアーム98とラッチアーム99とは、ハンドル82よりも左右外側のラッチケース81内に配置されているので、ハンドル82が回動してもハンドル82と第二のアーム98ないしラッチアーム99とは干渉しない。
したがって、図21(b)に示した右側面断面図において、ロックを解除するためにハンドル82を回動した際に、ハンドル82の前面と第二のアーム98ないしラッチアーム99とを重なった位置に配置しても互いに干渉しないため、ハンドル82とベルクランク軸94とを近接して配置することができ、ラッチ手段80を薄型化できるので好適である。
ラッチ手段80の下面中央には、ラッチ83が上下方向に移動自在に設けられている。
ベルクランク軸94の左右両端近傍に設けられた第二のアーム98の先端は、ラッチ83の左右方向の両端に略上向きコの字状に一体に設けられたラッチアーム99(請求項に記載の「第三の腕部」)と、ラッチアーム支点100を介して回動自在に接続されている。ラッチアーム99が上方に移動すれば、ラッチ83はラッチアーム99とともに上方に移動する構成である。
ラッチ83は、先に説明した野菜室仕切り74の上端中央に設けられたラッチ受け75と係脱可能に設けられている。ラッチ83下端の後方に向いた面は概ね鉛直であり、前方に向いた面は下方ほど後方に向かう傾斜形状をなしている。
ここで、第二のアーム98とラッチアーム99とは、ラッチケース81のうちハンドル82よりも外側の範囲に設けられており、ハンドル82が回動してもハンドル82と第二のアーム98ないしラッチアーム99とが干渉しないように配置されている。
また、第二のアーム98を介してベルクランク93からの力を受けるラッチアーム支点100に対して、ラッチ83をほぼ下方投影位置に配置している。したがって、ラッチアーム99が第二のアーム98から受ける力は、ラッチ83が上昇する方向と合致しているために曲げモーメントが生じないので、ラッチ83が傾斜することなくラッチ83の動作が安定する、という効果がある。
ラッチ83とハンドル82の下面との間には、付勢手段である圧縮スプリング101が張架されており、ハンドル82を操作しない場合には圧縮スプリング101の作用によってラッチ83は下方に付勢される構成である。
着脱自在の野菜室仕切り74の上端には、ラッチ83と勘合してラッチ手段80ないし上段収納容器6cをロックするためのラッチ受け75が設けられている。ラッチ受け75の上端には、前方側で概ね鉛直方向に立ち上がり面を有し、ラッチ83がラッチ受け75に係合してロックされた状態で、ラッチ83が後方に移動することを防止している。一方、ラッチ受け75の前方側で略鉛直方向に起ち上がった面から後方に向いた側の面は、傾斜面となっている。
ラッチ83とラッチ受け75とが勘合した状態においては、下段収納容器6bの左右両側部の上端に設けられた凹部70と、上段収納容器6cの左右両側の載置部67に設けられた凸部71とが互いに嵌合して、所謂、落とし込みで位置決めされる構成である。すなわち、下段収納容器6bと上段収納容器6cの容器同士の凹凸による落とし込みの嵌合位置と、ラッチ83と野菜室仕切り74に設けられたラッチ受け75による嵌合とが同時に生じるように配置している。
次に、ラッチ手段80の動作について説明する。
図20(a)と図21(a)は、ハンドル82を操作せずにラッチ83がラッチ受け75に掛った状態を示しており、ラッチ83は圧縮スプリング101の付勢力によって最も下方に移動した位置にある。すなわち、ラッチ83は下に突出した状態にある。ラッチアーム支点100は下方に向けて付勢されるので、図21において、ベルクランク93は反時計方向に回動付勢され、第一のアーム96はハンドル82に設けられたアーム押し部97に対して付勢され、ハンドル82は反時計方向に回転付勢された状態にある。
ラッチ83は下降した位置にあり、ラッチ83の下端は野菜室仕切り74上端に設けられたラッチ受け75と嵌合し、野菜室仕切り74に対して上段収納容器6cが後方に移動しないようロックした状態となる。
図20(b)と図21(b)は、ハンドル82を操作してラッチ83がラッチ受け75から外れた状態を示しており、ハンドル82はハンドル支点92のまわりに図21において時計まわりに回動した状態にある。
アーム押し部97が後方に移動するので、図21において、第一のアーム96はベルクランク支点95のまわりにハンドル82と同様に時計回りに回動し、第二のアーム98も時計回りに回動する。第二のアーム98が時計回りに回動するので、ラッチアーム支点100は上方に移動し、ラッチ83は上方に移動する。ラッチ83の下端は、野菜室仕切り74上端に設けられたラッチ受け75から上方に離反して嵌合が解除されるので、上段収納容器6cは野菜室仕切り74に対して後方に移動可能な状態、すなわちロック解除した状態となる。
すなわち、ハンドル82を後方に向けて移動することで、ラッチ83が上昇して、野菜室仕切り74とラッチ手段80とのロックが解除される構成である。
ここで、ラッチ83はラッチ手段80の前面の近傍に設けたので、野菜室仕切り74の前面からラッチ手段80の前面までの距離が少ない。すなわち、ラッチ手段80ないし上段収納容器6cの前面が下段収納容器6bの前部収納スペース6b1に対して出っ張らないので、前部収納スペース6b1への食品の出し入れの妨げになることがないので好適である。
先に説明したように、一対の第二のアーム98とラッチアーム99とはハンドル82を挟んでベルクランク軸94の左右両端近傍のラッチケース81内に設けられている。したがって、ハンドル82を操作してベルクランク93軸を回動させると、ラッチアーム99は左右均等に上昇する。したがって、ラッチアーム99の中央下側に設けられたラッチ83は傾斜することなく左右均等に上昇するので、ラッチ83の動作は安定しており、ロック解除が確実である、という効果がある。
次に、上段収納容器6cが後方に移動して開いた状態から閉じる際の動作について図22により説明する。図22(a)はラッチ手段80によるロックを解除して、上段収納容器6cを後方に移動し、後部収納スペース6b2の開口102が生じた状態を示している。この状態においては、ラッチ83とラッチ受け75とは接触しておらず、互いに自由な状態にある。
ここで、上段収納容器6cを前方矢印方向に移動して閉じる際のラッチ83とラッチ受け75との構成を説明する。
先に説明したようにラッチ83下端の前方に向いた面は、下方ほど後方寄りの傾斜形状(傾斜面106)をなしている。さらにラッチ受け75上端の後方に向いた側の面は、前方ほど上方に突出した傾斜面(傾斜面106)となっている。これらの構成により、上段収納容器6cを閉じる際にはラッチ83の傾斜面とラッチ受け75の傾斜面とが当接することで、図22(b)に示すようにラッチ83は圧縮スプリング101の付勢力に抗って上方に押し上げられ、第二のアーム98を介してベルクランク軸94は図示時計方向に回動する。図22(b)の状態からさらに上段収納容器6cを前方に移動すれば、ラッチ83はラッチ受け75を乗り越えて図21(a)の状態となって、上段収納容器6cないしラッチ手段80は野菜室仕切り74に対してロックされた状態に戻る。
次に、図21を用いて、ハンドル82の操作によってロックを解除する際に、ハンドル82に所謂クリック感を加える構成について説明する。クリック感とは、例えばハンドル82を操作する場合に、静止した状態から動き始める時の初期荷重が大きく、一方で動き始めてから荷重が急激に減少する特性を付与することで、ハンドル82の動作によるラッチ83解除動作を使用者の触覚に明確に伝えることができるものである。
本実施形態においては、図21(a)、(b)に示すように、ベルクランク軸94からハンドル82に向けて柔軟な板ばね部103を延出して設け、板ばね部103の先端を例えば円筒状の先端部104として、板ばね部103の弾性変形によってハンドル82の裏面に設けられた凹部105に適度な圧接力で当接している。一例として、ベルクランク軸94をポリアセタール樹脂で成型したものとすれば、第一のアーム96、第二のアーム98、板ばね部103、先端部104、はベルクランク軸94と一体であってもよい。
図21(a)に示すように、ラッチ83がラッチ受け75に嵌合してロックした状態のときは、先端部104は凹部105に嵌合している。操作者がハンドル82を後方に向けて移動し、ベルクランク軸94が回動し始めると板ばね部103は弾性変形して反力が増加するので、ハンドル82の操作力は増加する。ハンドル82をさらに後方に移動させると、先端部104は凹部105から外れて上方に移動し、図21(b)に示すようにハンドル82の裏面に当接した状態となる。先端部104が凹部105から外れた瞬間には、先端部104の当接位置が急激に変化して反力が減少する。したがって、ハンドル82の操作力が急激に減少することになり、所謂クリック感を付与できるので好適である。
次に、ラッチ手段80を操作して、上段収納容器6cを開く動作について、図24と図25を用いて説明する。
図24(a)から図24(c)は、野菜室扉6aを開いたのち、ハンドル82を操作してラッチ83によるロックを解除して、上段収納容器6cを後方に移動する一連の動作を示している。
図25(a)から(e)は、野菜室6を開いて下段収納容器6bに食品を出し入れした後に閉じるまでの一連の動作を示している。
野菜室6aを手前に開いた際には、ラッチ83は野菜室仕切り74に設けられたラッチ受け75と嵌合されているから、上段収納容器6cは下段収納容器6bとともに開き、図6、図7ないし図21(a)に示したと同様に、上段収納容器6c前面の位置は野菜室仕切り74の前面に近接した位置となっている。
ここで、図24(b)に示すように、ハンドル82を矢印で示す方向、すなわち後方に移動すると、図21(b)と同様にラッチ83は上方に移動してラッチ受け溝74cとの嵌合が解除されるので、上段収納容器6cは後方に移動可能な状態となる。ここで、ハンドル82にさらに後方に所定以上の力を加えれば、上段収納容器6cの凸部71と下段収納容器6bの凹部との落とし込みによる嵌合が外れ、上段収納容器6cは後方に移動する。
すなわち、図24(c)に示すように野菜室仕切り74と上段収納容器6cとの間が開口するので、その開口102を経由して下段収納容器6bのうち野菜室仕切り74より後方の後部収納スペース6b2への食品の出し入れができる。
このように、操作者がハンドル82に後方向きの力を加えることで、ラッチ83が移動してラッチ手段80と野菜室仕切り74との間のロックを解除し、引き続いて上段収納容器6cが後方に移動して開くので、後部収納スペース6b2への食品の出し入れの際に、ハンドル82を介したロック解除動作と上段収納容器6cを開く動作とを、力の向きが同一な一連の動作として連続的に行うことが出来るので、操作性が良く取り扱い易い冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
上段収納容器6cを閉じる際には、図24(c)の状態から上段収納容器6cを前方に向けて引くと、図22(b)に示すようにラッチ83はラッチ受け75を乗り越えた後、図21(a)に示すようにラッチ83がラッチ受け75に勘合して、上段収納容器6cないしラッチ手段80はロックされた状態になる。
次に、野菜室6を開いて下段収納容器6bに食品を出し入れしてから閉じる際の一連の動作について説明する。
図25において、図25(a)は図6と同様に野菜室6が閉じた状態を示している。
図25(b)は、野菜室扉6aを引き出して全開状態にした状態を示している。このとき、ラッチ83はラッチ受け75と嵌合しており、上段収納容器6cないしラッチ手段80は野菜室仕切り74とロックされた状態である。
図25(c)は、図24(b)ないし図24(c)で示したように、ハンドル82を操作してロックを解除し、上段収納容器6cないしラッチ手段80を後方に移動した状態を示しており、開口102を介して下段収納容器6bの後部収納スペース6b2に食品を出し入れできる。ラッチ83とラッチ受け75とは、互いに接することなく自由な状態である。
図25(d)は、野菜室仕切り74に対して上段収納容器6cないしラッチ手段80を前方に移動せず、ロックしない状態のまま野菜室扉6aを後方矢印方向に移動して閉じる動作の途中を図示している。ここで、上段収納容器6cの後辺に後方に向けて設けられた第一の当接部72と、断熱仕切壁11bに前方に向けて設けられた第二の当接部73とが当接し、上段収納容器6cは目一杯後方に移動した位置にある。ここでラッチ83とラッチ受け75とは、互いに接することなく自由な状態である。
図25(e)は、さらに野菜室扉6aを後方に向けて矢印方向に移動して野菜室6を閉じた状態であり、図25(a)と同一の状態である。ここで、ラッチ83とラッチ受け75とは野菜室6が閉じられる直前に、図22によって説明したように、斜面106同士が当接してラッチ83がラッチ受け75を乗り越えた後に嵌合した状態となる。
すなわち、野菜室6を開いた状態から、上段収納容器6cを予め前方に移動してロックすることなく野菜室6を閉じたとしても、野菜室6が閉じた際にはラッチ83とラッチ受け75とは嵌合して、上段収納容器6cないしラッチ手段80は野菜室仕切り74とロックされる構成である。したがって、使用者がロックを掛ける動作をしなくとも自動的にロックが掛けられる構成なので使い勝手がよい。言い換えれば、野菜室扉6aを閉じるだけで、下段収納容器6bの後部収納スペース6b2を適度な気密状態にできるので、後部収納スペース6b2に収納された野菜類の鮮度を保持できる冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
本実施形態においては、野菜室仕切り74は下段収納容器6bに設けられた仕切ガイド76に沿って、着脱自在にセットされる構成である。野菜室仕切り74をセットすれば、下段収納容器6bを前部収納スペース6b1と後部収納スペース6b2に分割して、このうち後部収納スペース6b2を適度な気密状態に維持して野菜類の鮮度を保持できる。一方で、野菜室仕切り74を取り外せば下段収納容器6b全体を一つの収納容器として使用することができるので、前部収納スペース6b1単独、ないし後部収納スペース6b2単独では収納できない大きさの食品を収納することもできる。
またあるいは、後部収納スペース6b2を気密状態とする必要がない場合には、野菜室仕切り74を設けずに下段収納容器6bを一つの収納容器として使用することができる。野菜室仕切り74を設けない場合には、ラッチ受け75が無いので上段収納容器6cはロックされないが、下段収納容器6bの左右両側面上端に設けられた凹部70と、上段収納容器6cの左右両側の載置部67に設けられた凸部71とが互いに嵌合して落とし込みにより位置決めされる構成なので、上段収納容器6cに対して前方から所定以上の力を加えれば凸部71が凹部70から外れ、上段収納容器6cは下段収納容器6bに対して後方に移動可能である。したがって、使用者の必要性に応じて野菜室仕切り74の有無を選択することが可能な使い勝手のよい冷蔵庫を提供できる。
次に、制御系の構成について説明する。前記したように、制御基板41(図2参照)は、冷蔵庫1の天井壁の上面側に取り付けられている。
図26は、制御系の構成を示すブロック図である。図26に示すように、制御部としての制御基板41は、商用電源から所定電圧の直流等を生成する電源42に接続されている。また、制御基板41は、例えば温度調整を行う押しボタンスイッチ等の操作手段43aと、例えばLED等の表示手段43bと、を備えるコントロールパネル40に接続されている。
また、制御基板41は、温度センサ44、45、46、47、冷蔵温度帯室冷気制御手段20及び冷凍温度帯室冷気制御手段21からなる冷気制御手段、圧縮機51、並びに扉センサ49とも接続され、これらの駆動と制御を行うように構成されている。なお、コントロールパネル40は、前記したように、扉2aの前面に配置されている。これにより、使用者が諸機能を変更したり、確認したりする場合に、その使い勝手が良好となっている。
また、制御基板41の駆動に必要な電力は、電源42から供給される。
コントロールパネル40には扉が半ドア状態になっていることなどを使用者に知らせるための報知手段123が配置されている。この報知手段123としては、例えば、ブザー、ランプ等が挙げられる。
次に、ラッチ機構の別の実施形態について、図27を用いて説明する。
図27は図20と同様に、ラッチ手段80と上段収納容器6cの一部とを前方右上方向からみた斜視図である。図1から図26で示した第一の実施形態と異なるところは、ラッチ83を上昇させる際にハンドル82を後方ではなく上方に移動させることである。すなわちハンドル82は上下に移動自在に支持されており、ラッチ83はハンドル82の一部を下方に延伸する形態でハンドル82と一体に構成され、スプリング107によって下方に付勢される構成である。
図27(a)はスプリング107の付勢力によってハンドル82およびラッチ83が下方に付勢されており、図示しない野菜室仕切り74上端のラッチ受け75にラッチ83が嵌合してロックした状態である。
図27(b)は、矢印で示すように使用者がハンドル82を上方に引き上げた状態を示しており、ラッチ83はハンドル82とともに上昇するのでラッチ受け75から離反して、ロックが解除された状態を示している。
次に、図27(b)に示すようにハンドル82を引き上げた状態のまま、ハンドル82を後方に向けて移動すれば、既にロックは解除されているので上段収納容器6cないしラッチ手段80は後方に移動して、下段収納容器6bの後部収納スペース6b2に開口102を介して食品を出し入れすることができる。
次に、ラッチ機構のさらに別の実施形態について、図28を用いて説明する。
図28は、さらに図27とは別の実施形態のラッチ手段80と上段収納容器6cの一部とを前方からみた正面図である。図1から図26で示した第一の実施形態と異なるところは、ラッチ83を上昇させる際にハンドル82を後方ではなく下方に移動させることである。すなわちハンドル82とラッチ83は上下に移動自在に支持されており、付勢手段であるスプリング111によって互いに離反するよう付勢されている。ハンドル82の左右両側面の内側には一対の第二支点109が設けられ、ラッチ83には一対の第三支点110が設けられている。一対のリンク板112は、第二支点109と第三支点110との略中間に設けられた第一支点108のまわりに回動自在に軸支されており、一端は第二支点109、他端は第三支点110とそれぞれ回動自在に軸支されている。
図28(b)に示すように、ハンドル82を下方に移動させると、第二支点109がハンドル82とともに下方に移動し、リンク板112は回動して第三支点110は支点2とは反対に上昇するので、ラッチ83は第三支点110とともに上昇する。すなわちラッチ83はラッチ受け75から離反して、ロックが解除された状態となる。
次に、図28(b)に示すようにハンドル82を押し下げた状態のまま、ハンドル82を後方に向けて移動すれば、既にロックは解除されているので上段収納容器6cないしラッチ手段80は後方に移動して、下段収納容器6bの後部収納スペース6b2に開口102を介して食品を出し入れすることができる。
本実施形態によれば、野菜室の下段収納容器6bを前後に仕切る着脱自在の野菜室仕切り74を上段収納容器6cの前面に近接して設け、さらに下段収納容器6bには水分吸収放出手段62を設けている。この構成によって、下段収納容器6bの内部に発生した結露水を下段収納容器6bの外に移動させることができるので、野菜室仕切り74を下段収納容器6bにセットした場合には、野菜室仕切り74よりも後方の後部収納スペース6b2は湿度100%に近い高湿を維持し、かつ結露を防止することができるので、野菜類の鮮度を維持可能な冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
また、下段収納容器6bを着脱式の仕切り74と上段収納容器6cとによって区切り、略密閉状態に近い適度な気密状態を得て、内部を高湿に維持するとともに結露を防止し、かつ野菜室を閉じた際には自動的にロックされる。これにより、貯蔵食品(特の野菜類)の鮮度維持に適するとともに使い勝手の向上した冷蔵庫を提供することができる。
また、下段野菜室(収納ケース)を、市販の容器入りの飲料などの背の高い食品の収納に適した前部収納スペースと、密閉状態に近い適度な気密状態によって高湿を維持する後部収納スペースとに分割する着脱自在な仕切りを設け、仕切りの上面にラッチ受けを設ける。上段野菜室の前部には、ハンドル操作によって上下に移動することで、ラッチ受けと係合・離脱するラッチを設ける。野菜室を閉じた際には、上段野菜室(小物ケース)に設けたラッチは仕切りのラッチ受けを乗り越えて自動的にロックされる。これにより、使用者が都度、操作レバーを操作しなくとも、後部収納スペースは高湿を維持できるとともに、ロックが確実で使い勝手が向上する。
本実施形態によれば、着脱自在の野菜室仕切り74を透明なガラス板で構成したので、後部収納スペース6b2に収納された食品を前方から目視確認できる、という効果がある。
本実施形態によれば、着脱自在の野菜室仕切り74はラッチ受け75がラッチ83に対して嵌合できる正しい向き以外に上下左右を逆向きに取付けようとした場合には、野菜室仕切り74の凹部74dと仕切ガイド76に設けられた凸部76bとが干渉して取付けられないように構成した。したがって、野菜室仕切り74を逆向きに取り付けられることがないので、ラッチ83とラッチ受け75との位置関係は一定であり、確実にラッチ83をラッチ受け75に嵌合してロックできる、という効果がある。
本実施形態によれば、ラッチ83と、野菜室仕切り74に設けたラッチ受け75によって上段収納容器6cと野菜室仕切り74とをロックする位置と、上段収納容器6cが凹部70と凸部71による落とし込みによって下段収納容器6bと嵌合する位置とを合わせたので、上段収納容器6cと下段収納容器6bとは、左右両側面では落とし込みによって嵌合し、さらに中央部はラッチ手段80と野菜室仕切り74を介してロックされる。そのため、上段収納容器6cの位置決めが確実であり、下段収納容器6bと、野菜室仕切り74と、上段収納容器6cによって囲まれた後部収納スペース6b2内を適度な気密状態を維持できる、という効果がある。
本実施形態によればさらに、上段収納容器6cの前部の中央寄りに、ハンドル82の操作によって上下動するラッチ83を備えたラッチ手段80を設け、ラッチ83と嵌合するラッチ受け75を下段収納容器6bに対して着脱自在に配置した野菜室仕切り74の上端に設けた。
ラッチ83とラッチ受け75とが嵌合することで下段収納容器6bと野菜室仕切り74とに対して上段収納容器6cをロックした状態となるので、下段収納容器6bと野菜室仕切り74と上段収納容器6cとにより囲まれた下段収納容器6bの後部収納スペース6b2を、高湿度を維持するのに適した適度な気密状態とすることができるので、野菜類の鮮度を維持できる冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
野菜室仕切り74は着脱自在に構成したので、野菜室仕切り74を取り外した場合には、前部収納スペース6b1または後部収納スペース6b2のいずれか片方だけでは入りきらない大きな食品を収納することができる。またさらに、ラッチ受け75が野菜室仕切り74と一体として取り外されるので、上段収納容器6cはロックされない。したがって、野菜室6を開いた後に上段収納容器6cを後方に移動する際にハンドル82を操作してロックを解除する必要が無く、取り扱い性に優れた冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
本実施形態によればさらに、下段収納容器6bの後方の辺と上段収納容器6cの底面との間にパッキンを設けて後方の辺は気密な構成とし、一方で下段収納容器6bの左右の側面と上段収納容器6cの左右の側面との間には適度な隙間を設けたので、吹出口25aから下段収納容器6bの後部収納スペース6b2内に流入する冷気の量を適切に制御できる、という効果がある。
すなわち、冷気の量が多量すぎて下段収納容器6b内の湿度が低下して野菜が乾燥する、という問題を生じることがない。
また、冷気の量が少なすぎて後部収納スペース6b2内の空気が撹拌されないために、下段収納容器6b内の温度分布が拡大して局部的な温度低下によって壁面の一部が結露する、という問題を生じない効果がある。
本実施形態によればさらに、上段収納容器6cの前方の辺と、ラッチ手段80の前方に向いた面は上段収納容器6cの前側辺と概ね面一に配置されており、ラッチ手段80が下段収納容器6bの前部収納スペース6b1に出張らないように薄型にすることで、収納凹部61に飲料などを収納するときの邪魔にならない、という効果がある。
本実施形態によればさらに、上段収納容器6cが後方に移動して開いた位置から、前方に移動して閉じると、ラッチ83が野菜室仕切り74に設けられたラッチ受け溝74cを乗り越えて、上段収納容器6cと野菜室仕切り74との間をロックする構成としたので、上段収納容器6cを閉じるだけで自動的にロックがかかる構成であり、閉じた際にわざわざロックを掛ける必要がなく、使いやすい冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
本実施形態におけるラッチ手段80は、上段収納容器6cと野菜室仕切り74との間を係止したロック状態を解除可能な操作部であるハンドル82を設けたので、使用者がハンドルを操作することでラッチ83が上昇し、容易にロックを解除して上段収納容器6cを後方に移動することができる、という効果がある。
本実施形態におけるラッチ手段80を備えた冷蔵庫においては、ハンドル82を後方に移動することでラッチ83が上昇してロックを解除するように構成したので、ロックを解除した後に、引き続き後方に力を加えることで上段収納容器6cは後方に移動して開き、下段収納容器6bを開口して食品の出し入れを行うことができるので、操作が簡単であり使いやすい冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
本実施形態におけるラッチ手段80を備えた冷蔵庫においては、野菜室6を開いた状態から、上段収納容器6cを予め前方に移動してロックすることなく野菜室6を閉じたとしても、ラッチ83とラッチ受け75とは野菜室6が閉じられる直前にラッチ83がラッチ受け75を乗り越えた後に嵌合するので、野菜室6を閉じれば上段収納容器6cないしラッチ手段80は野菜室仕切り74とロックされる構成である。
したがって、使用者がロックを掛ける動作をしなくとも自動的にロックが掛けられる構成なので使い勝手がよい。言い換えれば、野菜室扉6aを閉じるだけで、下段収納容器6bの後部収納スペース6b2を適度な気密状態にできるので、後部収納スペース6b2に収納された野菜類の鮮度を保持する冷蔵庫を提供できる、という効果がある。
本実施形態において、ラッチ手段80は取付ボス90とボス受け溝85とが嵌合し、溝部88と取付リブ87とが嵌合し、さらに取付爪84と爪受孔91とが嵌合することによって、ラッチ手段80は上段収納容器6cの前面中央部に取り付けられる構成であり、ラッチ手段80は上段収納容器6cから取り外せるように構成したので、上段収納容器6cを水洗いすることができる、という効果がある。
本実施形態におけるラッチ手段80は、ハンドル82の上端の後方への移動を、上向きに方向転換するベルクランク93を介してラッチ83に伝達する構成なので、ハンドル82を後方に移動することでラッチ83を上方に移動してロック解除ができる、という効果がある。
さらに、ハンドル82からベルクランク93に力を伝達する駆動側となる第一のアーム96と、ベルクランク93からラッチ83に力を伝達する従動側となる第二のアーム98とを、第一のアーム96はハンドル82の左右幅の内側に配置し、第二のアーム98はハンドル82の左右幅よりも外側に設けた固定枠であるラッチケース81内に配置したので、第二のアーム98が回動してもハンドル82と干渉しないので、ラッチ手段80を前後方向に薄型化して、食品収納スペースを確保できる、という効果がある。
またさらに、ベルクランク93の第二のアーム98と、ラッチ83の左右方向の両端に略上向きコの字状に一体に設けられたラッチアーム99とは、ハンドル82の左右両側に対称に配置しているので、ラッチ83は第二のアーム98によって左右両側を均等に引き上げられる。したがって、ラッチ83を上方に移動してロック解除する動作が安定しており、ロック解除動作が確実である、という効果がある。
またさらに、第二のアーム98を介してベルクランク93からの力を受けるラッチアーム支点100に対して、ラッチ83をほぼ真下に配置している。したがって、ラッチアーム99が第二のアーム98から受ける力は、ラッチ83が上昇する方向と合致しているために曲げモーメントが生じないので、ラッチ83が傾斜することなく、ラッチ83の動作が安定する、という効果がある。
本実施形態におけるラッチ手段80は、ベルクランク軸94からハンドル82に向けて柔軟な板ばね部103を延伸して設け、板ばね部103の先端を例えば円筒状の先端部104としてハンドル82の裏面に設けられた凹部105に、板ばね部103の弾性変形によって適度な圧接力で当接している。ハンドル82を後方に移動すると、板ばね部103は弾性変形して反力が増加するので、ハンドル82の操作力は増加する。ハンドル82をさらに後方に移動させると、先端部104は凹部105から外れて上方に移動し、その瞬間には先端部104の当接位置が急激に変化して反力が減少する。したがって、ハンドル82の操作力が急激に減少することによって所謂クリック感を付与できるので、ハンドル82の動作によるラッチ83解除動作を使用者の触覚に明確に伝えることができ、使い勝手の良い冷蔵庫を提供できる、という効果がある。