本発明の実施の形態における認証装置100は、図1の概念構成図に示すように、監視空間に配置された撮像部10、撮像部10とネットワークを介して接続された監視端末12とを含んで構成される。
撮像部10は、図1に示すように、監視空間(例えば、建造物)の天井や壁面上部等に設置され、監視空間を撮像して撮像画像(監視画像)として監視端末12へ出力する。撮像部10は、光学系、CCD素子又はC−MOS素子等の撮像素子、光学系部品、アナログ/デジタル変換器等を含んで構成される。これらの撮像素子は、明るさを電気信号に変換する可視光タイプでもよいし、赤外線に反応して温度を電気信号に変換する熱画像タイプとしてもよい。撮影は所定時間間隔で行う。
ここで、監視空間は、未認証者及び認証成功者のいずれであっても進入が許可されている共用エリアAと、認証成功者のみに進入が許可され、未認証者には進入が許可されていない制限エリアBと、に分けられる。図1では、共用エリアAと制限エリアBは壁W及び扉によって分け隔てられている。認証装置100は、扉を通って共用エリアAから制限エリアBへの進入者があったときにその進入者が未認証者であるか認証成功者であるかを判定し、さらに認証成功者と共に未認証者が制限エリアBに進入する共連れ進入が発生した場合に共連れ進入を管理者に警告するか否かを判定する処理を行う。なお、共用エリアAと制限エリアBは、必ずしも壁Wや扉で区画されていなくてもよく、撮像部10によって撮像された撮像画像内の画像領域として共用エリアAと制限エリアBとが区別できればよい。なお、共用エリアA及び制限エリアBは、監視端末12において予め設定されていることとする。
監視空間は、例えば、会社の社屋であり、共用エリアAは受付エリアとし、制限エリアBは事務エリアとすることができる。図1では、共用エリアAに2つの撮像部10及び制限エリアBに2つの撮像部10が設けられた例が示されている。このように各エリアをそれぞれ複数の撮像部10で撮像することにより、各エリアの移動物体を複数の視点から撮像して複数人物や什器等による隠蔽時においても高精度な追跡を可能としている。なお、本実施の形態においては複数の撮像部10を設けているが、これに限らず、単一の撮像部10を設けることによっても以降の処理と同様の処理を行うことができる。
また、隣り合っている撮像部10は、互いに撮像範囲が部分的に重複していることとする。このような重複した撮像範囲(重複領域)を設けることによって、ある撮像部10によって追跡している人物と、隣接する他の撮像部10において追跡している人物とを、同じ位置に存在する同一人物として対応付けることができる。したがって、撮像部10毎に追跡している人物の追跡結果に基づいて、監視空間における統合的な追跡が可能となる。
監視端末12は、図2に示すように、制御部20、記憶部22、通信部24、入力部26及び出力部28を含んで構成される。監視端末12は、監視空間内を移動する移動物体である人物を追跡して各人物を検出して不審者を検知する。人物の追跡は、監視空間を撮像部10で撮像された撮像画像を処理することにより行う。特に、監視空間を共用エリアA及び制限エリアBに分割したときにこれらのエリアの追跡結果を統合して監視空間全体に亘る追跡処理を行う。
制御部20は、CPU等の処理装置を含んで構成される。制御部20は、認証プログラムを実行することによって、撮像部10において撮像された撮像画像に基づいて監視空間に進入した人物の認証処理を行う。制御部20は、抽出処理・ラベリング処理・追跡処理を行う追跡手段201、認証判定処理を行う認証判定手段202及び異常判定処理を行う異常判定手段203を含んで構成される。追跡手段201、認証判定手段202及び異常判定手段203における処理については後述する。
記憶部22は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、ハードディスク等のメモリ装置で構成される。記憶部22は、制御部20からアクセス可能であり、撮像部10から取得した撮像画像や基準画像等の画像データを記憶する。また、記憶部22は、カメラ設定情報221、登録者情報222、認証結果管理テーブル223、未認証進入者管理テーブル224、異常判定期間225、同行判定期間226等の認証処理で用いられる情報を記憶する。
カメラ設定情報221は、各撮像部10において撮像された撮像画像中の領域と監視区空間内の実際の位置との関係を幾何学的な方法で算出するために用いられる情報である。カメラ設定情報221は、撮像部10の画角、床面からの高さ、俯角、撮像部10間の距離の情報などの各種撮像パラメータを含む。カメラ設定情報221は、認証装置100の設置時等におけるキャリブレーション作業により設定することができる。各撮像部10のカメラ設定情報221を用いることにより、各撮像部10からの撮像画像における座標と実空間における三次元座標との間で座標変換することが可能となる。
登録者情報222は、制限エリアBへの進入が許可されている人物を認証するための情報である。登録者情報222は、例えば、人物を特定するユーザID毎に顔の画像データ等の画像処理による認識処理に必要な情報が登録される。また、登録者情報222は、ICカード情報、パスワード等の認証のための情報や指紋、静脈パターン、虹彩パターンなどの生体認証のための情報としてもよい。この場合、監視空間の壁面等にICカードリーダ、パスワード入力装置、生体情報読取装置等を設置することが好適である。
認証結果管理テーブル223は、図3に示すように、追跡手段201にて追跡対象となっている人物と認証判定手段202にて認証された結果とを関連付けて登録したデータベースである。認証結果管理テーブル223には、追跡手段201において追跡対象となっている人物の人物像を特定する追跡ラベルIDが登録される。さらに、追跡対象となっている人物のうち認証判定手段202において登録者として認証された人物の追跡ラベルIDには認証された人物のユーザIDが関連付けて登録される。
未認証進入者管理テーブル224は、認証判定手段202にて認証され認証成功することなく制限エリアBに進入した人物(未認証進入者)を管理するためのデータベースである。未認証進入者管理テーブル224には、図4に示すように、追跡対象となっている人物の人物像を特定する追跡ラベルID、その人物の認証状態が「未認証進入」、「同行進入」、「異常」のいずれであるかを示す状態情報、制限エリアBに共連れ進入したときに同行している認証成功者を示す同行認証者、制限エリアBへの進入後の経過時間を示す進入後経過期間T1、制限エリアB内において同行認証者が同行している期間を示す同行期間T2、が関連付けて登録される。
異常判定期間225は、進入後経過期間T1がこれ以上の値となったときに共連れ進入が異常であると判断する基準となる閾値である。すなわち、進入後経過期間T1が異常判定期間225以上となった場合に、該当する追跡ラベルIDで特定される人物は異常の共連れ進入をしたものと判定される。同行判定期間226は、同行期間T2がこれ以上の値となったときに共連れ進入が同行進入状態であると判断する基準となる閾値である。すなわち、同行期間T2が同行判定期間226以上となった場合に、該当する追跡ラベルIDで特定される人物は制限エリアBへの進入が許可されている認証成功者(同行認証者)に同行している状態であり、異常ではないと判定される。なお、異常判定期間225は、同行判定期間226より長い期間が設定される。
通信部24は、撮像部10と制御部20とを接続する通信手段であり、撮像部10で撮像された撮像画像を監視端末12に入力するためのインターフェースを含む。通信部24は、撮像部10がIP(Internet protocol)カメラであればイーサネット(登録商標)等のLAN(Local Area Network)により構成でき、撮像部10がアナログカメラであれば同軸ケーブルで接続したアナログ網などで構成できる。撮像画像は、撮像が行われた撮像部10を特定するカメラID及び撮像時刻等の情報と共に通信部24を介して監視端末12に入力される。制御部20は、取得された撮像画像を記憶部22に記憶させる。
入力部26は、利用者(監視者)が監視端末12に対してコマンド等を入力するために用いられる。入力部26は、例えば、キーボード等の文字入力装置、マウス等のポインティング装置等とすることができる。出力部28は、利用者(監視者)に対して認証装置100での処理結果を表示するために用いられる。出力部28は、ディスプレイ等の画像表示装置やスピーカ・ブザー等の音響出力装置等とすることができる。
<認証処理>
以下、図5のフローチャートを参照して、認証装置100における認証処理について説明する。制御部20は、認証プログラムを実行することによって、以下に説明する処理を実現する。
ステップS10では、設定情報取得処理が行われる。当該処理は、認証装置100における初期設定処理の1つであり、制御部20は、記憶部22に記憶されているカメラ設定情報221、登録者情報222、認証結果管理テーブル223、未認証進入者管理テーブル224、異常判定期間225、同行判定期間226等の認証処理で用いられる情報を読み出す。
ステップS10の処理が終わると、ステップS12〜S24のループ処理に入る。当該ループ処理は、撮像部10のいずれかにおいて撮像が行われ、制御部20に撮像画像が入力される毎に実行される。
ステップS12では、監視画像取得処理が行われる。各撮像部10は、それぞれの撮像領域を所定の撮像周期で撮像して撮像画像として通信部24を介して制御部20へ出力する。制御部20は、取得した撮像画像に撮像部10のID及び撮像時刻を関連付けて記憶部22に記憶させる。なお、通信部24を介して、撮像画像を取得する取得時刻は、撮像部10が割り当てられたエリアを撮像した撮像時刻をほぼ同一時刻となり、取得時刻が撮像時刻に応じた時刻となる。
各撮像部10の撮像周期は、例えば、追跡可能な周期を3フレーム/秒として、これに対する余裕を持たせた10フレーム/秒に設定する。なお、撮像部10の間で撮像タイミングの同期は不要である。
ステップS14では、取得された各撮像画像に対して背景差分処理を行うことにより、変化領域を抽出する抽出処理が行われる。制御部20は、ステップ14〜ステップ18に記載の抽出処理、及び後述するラベリング処理、追跡処理を行うことによって追跡手段201として機能する。背景差分処理に利用される背景画像は、各撮像部10において人物が居ないときに撮像した画像を予め用意して記憶部22に記憶させておけばよい。
ステップS16では、抽出された変化領域毎に撮像画像内で識別するためのラベルを付与するラベリング処理が行われる。すなわち、ラベリング処理とは、変化領域のある抽出画素に注目したときに、注目抽出画素の8近傍に隣接している抽出画素を一塊の抽出画素領域とみなし、各一塊の抽出画素領域に対して、画像内でユニークなラベルを割り当てる処理である。さらに、ラベリング処理では、所定範囲にある複数の変化領域を一体の物体からなる変化領域とみなし、単一ラベルに統合するラベル統合処理を行っている。
ステップS18では、ラベリング処理された変化領域の追跡処理が行われる。追跡処理では、制御部20は、新たに抽出された現在時刻の変化領域と、過去時刻において抽出され変化領域とを対応付ける処理を行う。制御部20は、ステップS14において抽出された変化領域毎に当該変化領域内の撮像画像から大きさや色ヒストグラム等の画像特徴量を抽出する。そして、人物らしい画像特徴量(例えば、人物らしい大きさやアスペクト比)を有する変化領域を選択する。以下では、人物らしいとして選択された変化領域(人物像)を「人物領域」という。そして、人物領域の画像特徴量を、同じ撮像装置10の撮像画像から抽出した過去の人物領域の画像特徴量と照合することにより、同一人物と想定される人物領域を逐次対応付ける。また、対応付けを行った人物領域毎に、当該人物領域を識別する追跡ラベルIDと、当該人物領域の実空間における位置(以下、「人物位置」という)と、画像特徴量とを対応付けて記憶部22に記憶させる。ここで、人物位置は、当該人物領域の撮像画像内における画像位置(例えば、撮像画像内における足元位置や頭部重心位置等の座標値)を、カメラ設定情報221を用いて座標変換することによって行うこととする。さらに、追跡処理では、制御部20は、各撮像部10で撮像される監視画像における人物位置が同一人物の位置であるか否かを判定することにより監視空間全体における人物位置を対応付ける統合処理を行う。この統合処理では、制御部20は、複数の撮像部10で撮像される撮像画像の重複領域における人物位置と撮像時刻との組み合わせが近接関係にある人物を同一人物と判定することで人物位置の対応付けを行い、同一人物の人物位置には共通の追跡ラベルIDを付与してこれらを管理する。
なお、各撮像部10は、それぞれの撮像タイミングでそれぞれの撮像対象となる監視空間(エリア)の撮像画像を出力する。したがって、各撮像画像に対応付けて保存される撮像時刻もそれぞれの撮像タイミングに応じたものとなる。制御部20は、各撮像部10から新たな撮像画像を受信する度に、受信された撮像画像から人物領域を抽出して、他の撮像画像から抽出された人物領域との同一人物の判定が可能な組み合わせを都度選出して近接関係の判定に基づく対応付けを行って監視空間全体の追跡結果に逐次統合する。そして、追跡ラベルIDで特定される同一人物の人物位置の時間的な変化(移動)の追跡を監視空間全体において行う。
ここで、各撮像部10は独立した周期で撮像を行うため、撮像時刻が近い撮像画像を得ることはできるが、一般的には撮像時刻が完全に同一となる撮像画像を複数の撮像部10から得ることはできない。撮像時刻が同一でない撮像画像から抽出された人物の人物位置をそのまま統合しようとすれば、同一人物の人物位置同士には撮像時刻の差に応じたずれが存在しているため、同一人物の人物位置が別人物の人物位置として対応付けられたり、別人物の人物位置が同一人物の人物位置として対応付けられたりする誤統合を引き起こし得る。そこで、撮像時刻の差による人物位置のずれを加味して処理を行うことが好適である。ある撮像部10によって撮像された撮像画像の撮像時刻が重複領域を撮像する他の撮像部10によって撮像された撮像画像の連続2時点の撮像時刻に挟まれた時刻(以下、中間時刻)であれば、当該他の撮像部10によって撮像された撮像画像における人物の人物位置を人物同定のための補助データとして用いれば、中間時刻における人物位置を推定することで同一人物を確実に対応付けることができる。
制御部20は、追跡情報として、各人物領域の位置情報(人物位置)を追跡ラベルIDに関連付けて記憶部22に記憶させる。追跡情報は、次時刻の追跡処理において利用される。すなわち、前時刻における人物位置を参照して、その位置から所定の距離以内にあり、かつ、画像特徴の近い現時刻における人物領域を同一人物として対応付けることにより追跡処理をする。
なお、現時刻の人物領域の人物位置に対応する前時刻の人物領域が無かった場合、現時刻において撮像部10によって新規の人が撮像され始めたものとして、次の時刻から追跡の対象とする。このとき、追跡処理の対象となった人物領域の追跡ラベルIDは、図3に示した認証結果管理テーブル223にも登録される。逆に、前時刻の人物領域の人物位置に対応する現時刻において人物領域が無い場合には、これまで撮像部10によって撮像されていた人が撮像範囲の外側にはずれて撮像画像に撮像されなくなったものとして、以後の処理対象から外し、追跡情報から消去する。
ステップS18の処理が終わると、ステップS20及びS22のループ処理に入る。当該ループ処理は、ステップS18までの処理において追跡対象とされた人物領域(追跡ラベルID)毎に実行される。すなわち、現時点において追跡対象とされている全人物領域のうち1人を処理対象人物と順に選択してステップS20及びS22の処理を適用し、追跡対象とされているすべての人物領域が処理対象人物として選択されるまで処理を繰り返す。
ステップS20では、認証判定処理が行われる。制御部20は、以下の処理を行うことによって認証判定手段202として機能する。本実施の形態では、撮像画像から処理対象人物の顔領域を検出し、当該顔領域の画像と登録者情報222に登録されている登録者の顔の画像とを比較することにより顔認証を行う。顔画像の比較処理では、処理対象人物が写された人物領域から目、鼻、口等の顔の構成要素の大きさ、形、相対的な位置等の特徴量を抽出して登録者情報222に登録されている登録者の顔の画像の特徴量と比較し、その類似度が基準値以上であれば処理対象人物が登録者であると認証するようにすればよい。
なお、ICカード情報、パスワード等により認証するための情報や指紋、静脈パターン、虹彩パターンなどの生体認証のための情報を用いて認証判定処理を行ってもよい。この場合、共用エリアAから制限エリアBへ進入する際に進入者となる人物自身が認証手続きを行う。制御部20は、認証手続きを行った人物と制限エリアBに新たに進入して撮像画像に写された人物とを対応付けて認証を行う。
登録者であると認証された人物については、認証結果管理テーブル223における当該人物に対応する追跡ラベルIDに関連付けて認証結果(登録者を特定するユーザID)を登録して認証成功者とする。例えば、図3では、追跡ラベルID「L00005」、「L00030」、「L00023」で特定される人物がそれぞれユーザID「U52313」、「U44323」、「U33030」で特定される登録者であることが認証された例が示されている。
ステップS22では、異常判定処理が行われる。制御部20は、図6のフローチャートに沿って、以下の処理を行うことによって異常判定手段203として機能する。
S30では、処理対象人物が認証成功者か否かが判定される。制御部20は、認証結果管理テーブル223を参照して、処理対象人物の追跡ラベルIDに関連付けて認証成功者(登録者)であることを示す認証結果(ユーザID)が登録されているか否かを判定する。処理対象人物が認証成功者であればステップS32に処理を移行させ、そうでなければステップS36に処理を移行させる。
ステップS32では、未認証進入者管理テーブル224から処理対象人物のレコードが存在するか否かを判定する。制御部20は、未認証進入者管理テーブル224を参照して、処理対象人物のレコードが存在すればステップS34に処理を移行させ、そうでなければステップS70に処理を移行させて異常判定処理を終了させる。
ステップS34では、未認証進入者管理テーブル224から処理対象人物のレコードを削除する。ステップS30において処理対象人物が認証成功者と判定された場合、未認証進入者管理テーブル224から当該処理対象人物のレコードを削除する。その後、ステップS70に処理を移行させて異常判定処理を終了させる。これにより、当該処理対象人物は、ステップS20及びS22のループにおける処理の対象から外れる。このように、制限エリアB内において処理対象人物の認証が成功したとき、当該処理対象人物は社員等の予め入室が許可された登録者であることが判明することから、当該処理対象人物の未認証進入状態の判定を解除する。したがって、単に認証が失敗した登録者を異常な共連れ進入とする誤った異常判定を抑制でき、利用者の利便性を向上することができる。
ステップS36では、処理対象人物が同行進入状態であるか否かが判定される。同行進入状態とは、処理対象人物が認証成功者である社員に引率されている来訪者等のように異常でない状況において認証成功者に共連れして制限エリアBに進入している状態である。制御部20は、未認証進入者管理テーブル224を参照して、処理対象人物の追跡ラベルIDに関連付けられた状態が「同行進入状態」でなければステップS38に処理を移行させ、「同行進入状態」であればステップS70に処理を移行させて異常判定処理を終了させる。
例えば、図4の未認証進入者管理テーブル224では、追跡ラベルIDが「L01002」である人物が処理対象人物であった場合には、その状態は「同行進入状態」であるのでステップS70に処理が移行される。一方、追跡ラベルIDが「L00120」や「L00433」である人物が処理対象人物であった場合には、その状態はそれぞれ「未認証進入状態」及び「異常状態」であるのでステップS38に処理が移行される。
ステップS38では、処理対象人物が制限エリアB内に存在するか否かが判定される。制御部20は、処理対象人物の実空間の人物位置が制限エリアB内にあればステップS42に処理を移行させ、そうでなければステップS40に処理を移行させる。
ステップS40では、進入後経過期間T1及び同行期間T2の計測を停止させる処理が行われる。制御部20は、ステップS38にて処理対象人物が制限エリアB内にいないと判定されたのであるから、処理対象人物に対する進入後経過期間T1及び同行期間T2が計測中であればそれを停止させる。その後、ステップS70に処理を移行させて異常判定処理を終了させる。
ステップS42では、処理対象人物が未認証進入状態であるか否かが判定される。未認証進入状態とは、処理対象人物が認証成功者に共連れして制限エリアBに進入している状態であり、その進入が異常か否か不確定な状態である。制御部20は、未認証進入者管理テーブル224を参照して、処理対象人物の追跡ラベルIDに関連付けられた状態が「未認証進入状態」であればステップS56に処理を移行させ、そうでなければステップS44に処理を移行させる。
例えば、図4の未認証進入者管理テーブル224では、追跡ラベルIDが「L00120」である人物が処理対象人物であった場合には、その状態は「未認証進入状態」であるのでステップS56に処理が移行される。
ステップS44では、未認証進入者管理テーブル224に処理対象人物のレコードを新規登録する。すなわち、ステップS36において処理対象人物が同行進入状態でなく、ステップS38において処理対象人物が制限エリアB内に存在し、ステップS42において処理対象人物が未認証進入状態でないと判定されたので、当該処理対処人物は制限エリアBに進入した新たな人物であるとして未認証進入者管理テーブル224にレコードを登録する。
ステップS46では、処理対象人物に対して進入後経過期間T1の計測を開始する。進入後経過期間T1は、処理対象人物が制限エリアBに進入してからの経過時間を計測した値となる。進入後経過期間T1は、処理対象人物の追跡ラベルIDに関連付けて未認証進入者管理テーブル224に登録される。
ステップS48では、処理対象人物の近傍に認証成功者が存在しているか否かが判定される。制御部20は、処理対象人物の追跡ラベルIDで特定される人物領域の実空間での人物位置を基準点として予め定められた所定範囲を定めて、その所定範囲に既に登録者として認証成功者が存在していれば、当該処理対象人物の近傍に認証成功者が存在していると判定される。すなわち、当該処理対象人物は認証成功者に同行して制限エリアBに進入している状態であるとみなされる。なお、所定範囲は、図7に示すように、実空間での処理対象人物Cの位置を基準点として予め定められた距離Rの範囲とすればよい。距離Rは、処理対象人物が認証成功者に同行していると想定される範囲、例えば、2mとすることが好適である。所定範囲内に認証成功者Dが存在している場合にはステップS50に処理を移行させ、そうでなければステップS60に処理を移行させる。
なお、本実施の形態では、処理対象人物Cの人物位置を基準として所定領域に認証成功者Dが存在するか否かを判定したが、逆に、認証成功者Dの人物位置を基準として所定領域に処理対象人物Cが存在するか否かを判定してもよい。この場合、制限エリアBに居る認証成功者全員について処理対象人物が所定領域内に居るか否かを判定する必要がある。
ステップS50では、ステップS48にて処理対象人物に同行していると判定された認証成功者を同行認証者として設定する。制御部20は、未認証進入者管理テーブル224の処理対象人物のレコードの同行認証者として、処理対象人物に同行していると判定された認証成功者の追跡ラベルIDを登録する。なお、処理対象人物に同行していると判定された認証成功者が複数の場合、未認証進入者管理テーブルに複数の同行認証者を登録することが好適である。
ステップS52では、処理対処人物を未認証状態として設定する。制御部20は、未認証進入者管理テーブル224の処理対象人物のレコードの状態を未認証進入状態として登録する。すなわち、処理対象人物は、1人で制限エリアBに進入しているのではなく、認証成功者(認証同行者)に共連れして制限エリアBに進入している状態であるが、登録者である社員に引率されている来訪者のように正規の進入者であるか否かが不確定な状態であるものとして登録される。
ステップS54では、処理対象人物に対して同行期間T2の計測を開始する。同行期間T2は、処理対象人物が制限エリアBに進入してから認証成功者と同行している累計時間を計測した値となる。その後、ステップS70に処理を移行させて異常判定処理を終了させる。同行期間T2は、処理対象人物の追跡ラベルIDに関連付けて未認証進入者管理テーブル224に登録される。
ステップS56では、ステップS42において処理対象人物が未認証進入状態であると判断された場合に進入後経過期間T1を累算する処理が行われる。本実施の形態では、進入後経過期間T1に単位時間として1を加算し、未認証進入者管理テーブル224を更新する。また、単に進入後経過期間T1を実時間で計測する処理としてもよい。
ステップS58では、進入後経過期間T1が異常判定期間225以上であるか否かが判定される。制御部20は、進入後経過期間T1が異常判定期間225以上である場合にはステップS60に処理を移行させ、そうでない場合にはステップS62に処理を移行させる。
ステップS60では、処理対処人物を異常状態として設定する。制御部20は、未認証進入者管理テーブルの処理対象人物のレコードの状態を異常状態として登録する。すなわち、処理対象人物は、認証成功者に共連れして制限エリアBに進入した人物であり、さらに異常判定期間225よりも長い期間において認証成功せず、さらに認証成功者が同行判定期間226よりも長い期間において同行している者(例えば、認証成功者に引率されている来訪者)とも判定されなかった人物であり、異常な共連れ進入をした者であるとされる。その後、ステップS70に処理を移行させて異常判定処理を終了させる。
なお、ステップS48において処理対象人物の近傍に認証成功者が存在していないと判定された場合もステップS60にて処理対処人物を異常状態として設定する。これは、初めて未認証進入状態であると判定された処理対象人物、すなわち共用エリアAから制限エリアBへと認証成功しないで進入した人物の近傍に認証成功者が居ない場合は共連れ進入でもなく未認証者が単独で制限エリアBに進入している状態であると考えられるので直ちに処理対処人物を異常状態として設定する。
ステップS62では、処理対象人物の近傍にステップ50にて設定された同行認証者が存在しているか否かが判定される。このステップでの処理は、ステップS48と同様であり、制御部20は、処理対象人物の追跡ラベルIDで特定される人物領域の実空間での人物位置を基準点として予め定められた所定範囲を定めて、その所定範囲に同行認証者が存在していれば当該処理対象人物は認証成功者に同行して制限エリアBに進入している状態であると判定する。処理対象人物の近傍に同行認証者が存在している場合にはステップS64に処理を移行させ、そうでなければステップS66に処理を移行させる。なお、このステップにおいても、同行認証者の人物位置を基準として所定領域に処理対象人物が存在するか否かを判定してもよい。この場合、全ての同行認証者について処理対象人物が所定領域内に居るか否かを判定する必要がある。
ステップS64では、同行期間T2を累算する処理が行われる。本実施の形態では、同行期間T2に単位時間として1を加算し、未認証進入者管理テーブル224を更新する。また、単に同行期間T2を実時間で計測する処理としてもよい。
ステップS66では、同行期間T2が同行判定期間226以上であるか否かが判定される。制御部20は、同行期間T2が同行判定期間226以上である場合にはステップS68に処理を移行させ、そうでない場合にはステップS70に処理を移行させる。
ステップS68では、処理対処人物を同行進入状態として設定する。制御部20は、未認証進入者管理テーブル224の処理対象人物のレコードの状態を同行進入状態として登録する。すなわち、処理対象人物が登録者である社員のような認証成功者(同行認証者)に引率されており、制限エリアBに進入してからの認証成功者(同行認証者)と同行している同行期間T2が同行判定期間226以上となった場合には異常ではない共連れ進入である同行進入状態として登録される。その後、ステップS70に処理を移行させて異常判定処理を終了させる。
ステップS30〜S70の異常判定処理によって、処理対象人物による共用エリアAから制限エリアBへの進入が異常であるか否かが判定される。すなわち、図8に示すように、処理対象人物が共用エリアAから制限エリアBへと最初に進入してからの経過時間を示す進入後経過期間T1、及び、処理対象人物が制限エリアBに存在する場合に制限エリアBへの進入時に近傍に存在する認証成功者(同行認証者)と同行している時間を示す同行期間T2が測定される。そして、同行期間T2が同行判定期間226未満のまま進入後経過期間T1が異常判定期間225以上となるまで経過した場合に処理対象人物の進入は「異常状態」であると判定され、進入後経過期間T1が異常判定期間225未満の間に同行期間T2が同行判定期間226以上となった場合に処理対象人物の進入は「同行進入状態」と判定され、「未認証進入状態」が解除される。さらに、進入後経過期間T1が異常判定期間225未満の間に処理対象人物が制限エリアBへ進入することが許可された人物であると認証された場合にも、「未認証進入状態」が解除され、ループ2における処理対象人物から外す処理が行われる。
ステップS70で異常判定処理が終了すると、制御部20は次の人物を処理対象人物としてステップS30〜S70の処理を繰り返す。そして、処理対象となるすべての人物について異常判定処理が終了するとステップS24に処理を移行させる。
ステップS24では、出力処理が行われる。制御部20は、ステップS22の異常判定処理において「異常状態」であると判定された人物が存在する場合には出力部28を介して警報を出力する。出力部28は、ブザー等の音響出力手段及び液晶ディスプレイ等の表示出力手段を含んで構成される。出力部28は、例えば、ブザー鳴動により異常発生を監視員に報知すると共に「異常状態」と判定された人物領域が特定できるように加工された撮像画像を表示する。
以上のように、本実施の形態によれば、未認証者が認証成功者と共に制限エリアBに進入した場合であっても直ちに共連れ進入として通報することなく、当該未認証者を追跡したうえで所定期間(異常判定期間225)内に進入が認められた利用者(例えば、来訪者や登録者)であることが確認されないときのみに警報を出力することにより、共連れ進入に対する誤報を低減させることができる。
<変形例>
上記実施の形態では、未認証者が制限エリアBに存在するときに認証成功者が同行している場合であっても未認証者と同行認証者との関係に拠らず同行判定期間226は一定として処理を行った。しかしながら、未認証者と同行認証者との同行時における状況に応じて、同行時間が短くても未認証者を進入が認められた利用者(例えば、来訪者や登録者)であると判定してもよい場合がある。
具体的には、図6のステップS64とS66との間において、追跡手段201において追跡されている人物像の向きを判定し、処理対象人物の向きと認証成功者(同行認証者又は同行認証者以外の認証成功者の少なくとも一方)の向きとの関係に基づいて同行判定期間226を変更することが好適である。例えば、処理対象人物の顔の向きと認証成功者の顔の向きが向かい合った頻度又は向かい合った期間の少なくとも一方に応じて同行判定期間226を調整する。このとき、処理対象人物の顔の向きと認証成功者の顔の向きが向かい合った頻度が多くなるほど又は向かい合った期間が長くなるほど同行判定期間226を短くすることが好適である。これにより、未認証進入者が来訪者であることが強く推定できる状況(例えば、向かい合って会話しているような状況)であるほど、早い段階で未認証進入状態を解除することができる。また、処理対象人物の顔の向きと認証成功者の顔の向きが向かい合った頻度が少なくなるほど又は向かい合った期間が短くなるほど同行判定期間226を長くすることが好適である。これにより、未認証進入者が来訪者らしくないことが推定できる状況であるほど、認証成功者の近傍に長時間存在しなければならなくなるため、不審者を誤って来訪者と判定することを抑制することができる。
また、図6のステップS64とS66との間において、追跡手段201において追跡されている人物像の接触を判定し、処理対象人物と認証成功者(同行認証者又は同行認証者以外の認証成功者の少なくとも一方)とが接触した頻度又は期間の少なくとも一方に基づいて同行判定期間226を変更することが好適である。例えば、処理対象人物と認証成功者とが接触した頻度又は接触した期間の少なくとも一方に応じて同行判定期間226を調整する。このとき、処理対象人物の人物領域と認証成功者の人物領域とが接触或いは重なりあった頻度が多くなるほど又は接触或いは重なりあった期間が長くなるほど同行判定期間226を短くすることが好適である。これにより、未認証進入者が来訪者であることが強く推定できる状況(例えば、握手や名刺交換等の接触の機会が多い状況)であるほど、早い段階で当該未認証進入状態を解除することができる。すなわち、未認証進入者が認証成功者の近傍に長時間存在する必要はなくなることから、例えば、来訪者が制限エリアBへの入室後にトイレに長時間立ち寄るような場合であっても、当該来訪者を共連れ進入と誤判定することを抑制でき、利用者の利便性を向上することができる。また、処理対象人物の人物領域と認証成功者の人物領域とが接触或いは重なりあった頻度が少なくなるほど又は接触或いは重なりあった期間が短くなるほど同行判定期間226を長くすることが好適である。これにより、未認証進入者が来訪者らしくないことが推定できる状況であるほど、認証成功者の近傍に長時間存在しなければならなくなるため、不審者を誤って来訪者と判定することを抑制することができる。
上記実施の形態では、制限エリアBに進入した未認証者(未認証進入者)が、未認証進入状態と判定されたときに近傍(所定範囲内)に存在する認証成功者を同行認証者とし、当該未認証進入者の所定範囲内に当該同行認証者が同行判定期間以上存在しているときにのみ同行進入状態と判定して未認証進入状態の判定を解除している。すなわち、同行認証者以外の認証成功者の所定範囲内に同行判定期間以上存在していても同行進入状態と判定しないようにしている。これにより、不審者が引率とは無関係な認証成功者の周囲を渡り歩くことによって異常状態の判定を回避する、といったような不正行為を制限できるため、より厳格に不審者の判定を行うことができ、より安全性の高い認証処理を行うことができる。しかし、これに限らず、同行認証者以外の認証成功者の所定範囲内に同行判定期間以上の間存在しているときに同行進入状態と判定して未認証進入状態の判定を解除してもよい。これにより、未認証進入者を引率(同行)して制限エリアBに進入させた認証成功者(同行認証者)が、制限エリアB内において他の認証成功者に同行を引き継ぐようなケースにも利用することが可能となる。この場合、同行を引き継ぐ認証成功者は、当該同行の引き継ぎがあることが予め登録されているのが好適である。