図1〜図7は実施例1を示している。同図に示すように、本処理方法(保管システム)には、ため池、湖、河川や海などの水底Sに体積した放射性物質を含む泥土Dを採取して処理する。前記採取に用いる採取手段としては浚渫手段1が用いられる。
前記浚渫手段1は、船体たる台船2上に設けられている。また、浚渫した泥土から夾雑物を除去した後、処理場所3に圧送する圧送手段4が台船2上に設けられている。前記圧送手段4には閉管路である管路5が接続され、この管路5には、水上部分に複数のフロート6を設け、これらフロート6により管路5が水面又は水面近くに配置され、一方、管路5の陸上部分は複数の支持台7により支持されている。尚、以下、採取場所8として、ため池を例に説明する。また、好適には採取場所8と保管場所を同一とする。
処理場所3は前記採取場所8の近辺に設けられ、泥土を粗粒分と細粒分に分級し、含水率を下げ、細粒分を凝集する処理装置11が設けられている。
図3及び図4に示すように、管路5の終端に減圧手段たる減圧サイクロン12を設けている。この減圧サイクロン12は、前記管路5より大径な筒部12Aを縦設し、この筒部12Aの直径方向に対して管路5の中心線をずらして該管路5の管端を接続している。そして、減圧サイクロン12を通過した泥土Dは、土砂脱水篩9へと送られる。尚、筒部12Aの直径は管路5の直径の2倍以上、好ましくは3倍以上である。
したがって、管路5の端末から横方向に吐き出された泥土Dは、筒部12Aの内面に沿って旋回流れとなって落下することにより、減圧された後、土砂脱水篩9へと供給される。このように旋回流とすることにより、管路5から直接供給する場合に比べて、流速が低下し、泥土が周囲に飛び散り難くなる。
さらに、処理装置11は、分離手段たる前記土砂脱水篩9,洗浄手段たる土砂洗浄水槽10,複数の沈殿槽と、泥土に凝集剤を投入する薬品投入機と、泥土を沈降して上水と分離する貯泥槽と、凝集した泥土を脱水する脱水手段とを備える。この例では、前記処理装置11は、泥土Dの移送順に、土砂脱水篩9,土砂洗浄水槽10,貯泥槽13,沈殿槽14,薬品投入機15,撹拌反応槽23,第1〜第3の沈殿槽16,17,18、貯泥槽19,脱水手段20が配置されている。
前記土砂脱水篩9は、回転篩等を備え、減圧サイクロン12から送られてきた泥土Dを、粒径の大きな礫や砂(粗粒分)と、細粒分と水とを含む泥土と、に分離し、土砂脱水篩9の排出口9Aから粒径の大きな礫や砂が脱水状態で土砂洗浄水槽10に送られる。一方、細粒分と水を含む泥土は、管路9Bにより貯泥槽13に送られる。
土砂洗浄水槽10においては、前記粗粒分に水を供給して洗浄し、洗浄後、即ち、放射能濃度が基準値以下となった粗粒分を、土砂洗浄水槽10の外部に仮置きする。尚、土砂脱水篩9において、粗粒分から礫などを除去した後、土砂洗浄水槽10に送り、得られた洗浄砂を仮置きしてもよいし、土砂洗浄水槽10において洗浄処理を行った後、粗粒分の礫と砂とを分離して洗浄砂を得るようにしてもよい。そして、土砂洗浄水槽10において用いた洗浄水は、管路10Aにより貯泥槽13へと送られる。尚、貯泥槽13へと送られた洗浄水には細粒分が含まれる。
このように貯泥槽13には、土砂脱水篩9により篩分けられた細粒分と水に、管路10Aにより貯泥槽13へと送られた水を加えた泥土が搬送される。このようにして泥土が搬送された前記貯泥槽13においては、泥土を静置し、必要に応じて、凝集剤を添加した後、静置する。このように静置することにより、泥土に含まれる細粒分が貯泥槽13内の下部に沈降し、貯泥槽13内の上部の泥土(分離上水という)を、管路13Aにより次の沈殿槽14に送り、静置する。尚、この泥土には水分が含まれている。このように分離上水と下の細粒分に沈降分離するのは、セシウムなどの放射性物質が粗粒分に比べて細粒分に多く含まれるからである。また、凝集剤を添加して、細粒分にセシウムを固定する。貯泥槽13に沈殿した細粒分は、管路25により脱水手段20に送られる。尚、凝集剤には、ゼオライト系のものを用いることができる。また、細粒分は、泥土Dから粗粒分を分離した粒子の小さいシルト質・粘土質や所定粒径未満の砂(細砂)などである。
貯泥槽13から沈殿槽14に送られた泥土は、静置され、下の細粒分と分離上水に沈殿分離される。ここでも、沈殿槽14に沈殿した細粒分は、管路25により脱水手段20に送られ、一方、沈殿槽14の分離上水を管路14Aにより次の薬品投入機15に送り、薬品投入機15により凝集剤を添加した後、この凝集剤を混合した分離上水を、管路15Aにより撹拌反応槽23に送り、撹拌して凝集させる。この後、撹拌反応槽23の凝集泥土を第1の沈殿槽16に移送して静置する。第1の沈殿槽16において、下の細粒分と分離上水に沈殿分離した後、下の細粒分が凝集した凝集泥土を、凝集泥土搬送管路21により、脱水手段20に送り、分離上水を管路16Aにより第2の沈殿槽17に移送して静置する。この第2の沈殿槽17において、静置により下の細粒分と分離上水に沈殿分離した後、下の凝集泥土を、前記凝集泥土搬送管路21により、脱水手段20に送り、分離上水を管路17Aにより第3の沈殿槽18に移送して静置する。同様に、第3の沈殿槽18において、静置により下の細粒分と分離上水に沈殿分離した後、下の凝集泥土を、前記凝集泥土搬送管路21により、脱水手段20に送り、分離上水を管路18Aにより貯泥槽19に移送して静置する。貯泥槽19において、静置により下の細粒分と分離上水に沈殿分離した後、下の凝集泥土を、前記凝集泥土搬送管路21により、脱水手段20に送り、分離上水を上澄み水返送管22により排水し、この例ではため池に排水している。
このように第1〜第3の沈殿槽16,17,18等において、凝集泥土と分離上水とを沈降分離することにより、分離上水に含まれる凝集泥土が分離される。
尚、沈殿槽14から貯泥槽19までの処理を1回行っても、凝集した細粒分(凝集泥土)の分離が不十分な場合、即ち、貯泥槽19の分離上水に所定量以上の泥土(細粒分)が残っていた場合は、貯泥槽19の泥土を含む分離上水を貯泥槽13又は沈殿槽14に泥土返送管路(図示せず)を用いて返送し、貯泥槽13又は沈殿槽14から貯泥槽19までの処理を更に1回又は複数回繰り返すことができる。
また、処理の過程で、放射能濃度が所定以下の分離上水が得られたら、前記上澄み水返送管22を用いてため池に返送することができ、これにより泥土の含水率を下げることができる。尚、上澄み水返送管22は、分岐管22Aにより貯泥槽13,沈殿槽14,第3の沈殿槽18,貯泥槽19及び脱水手段20にそれぞれ接続されており、それぞれの分離上水の放射能濃度が所定以下となったら、採取場所8であるため池に返送することができる。
このようにして分離上水を排水して含水率を高め、且つ凝集剤により凝集した泥土(放射性物質を含む凝集泥土)を、脱水手段20により脱水する前に、袋24に詰める。この袋24としては、ポリエチレン製やポリ塩化ビニル製の通水性を有し、且つ耐候性を有し、可撓性を有するものを用いる。例えば、袋24には、ポリエチレンやポリピロピレンなどの樹脂製の延伸テープ(ヤーン)を使用し、延伸テープを織機で織り上げることにより、通水性を有するもの(樹脂製クロス袋)などを用いることができる。
図5は前記脱水手段20の概略説明図であり、上部が開口した容器本体26に複数の排水孔27を穿設し、その容器本体26に凝集泥土を詰めた袋24を入れ、袋24の上には圧縮板28を配置し、圧縮板28と容器本体26により袋24を圧縮することにより凝集泥土を脱水する。尚、脱水の際、水は袋24と排水孔27を通って図示しない脱水容器に集められる。また、上述したように脱水手段20により発生した水は、上澄み水返送管22によりため池に戻すことができる。
尚、脱水手段20を用いない場合は、袋24を平地などに置き、複数段に積み重ねることにより、上の袋24からの荷重により下の袋24の水が袋24を通って排水され、脱水効果を得ることができる。この場合は、袋24を仮置きして脱水まで所定の時間が必要となるのに対して、脱水手段20を用いた場合は脱水に必要な時間が短縮される。
この例では、凝集泥土を収納する容器として、箱体31を用いている。図6などに示すように、前記箱体31は、底壁部32と四つの側壁部33,33,33,33とを有し、その上部開口34を閉塞する蓋体35を備え、コンクリート製である。尚、箱体31は、壁部32,33及び蓋体35の厚さ方向全体をコンクリートとすることが好ましいが、厚さの一部にコンクリート層を設けたものでもよい。そして、蓋体35を閉めた状態で、全周囲がコンクリート層で囲まれる。尚、箱体31は円筒形などでもよい。また、箱体31の側壁部33,33の上部には、吊り具(図示せず)の連結部36が複数設けられ、この連結部36に索条などの吊り具を連結することにより、箱体31を吊り下げることができ、前記連結部36により吊り下げ手段を構成している。尚、連結部36は金属製からなり、丸棒をコ字状に形成し、両端部を側壁部33の上部にインサートなどにより固定している。
そして、脱水後の複数の袋24を箱体31に詰め、内部が略一杯になった状態で蓋体35を閉める。この場合、蓋体35と上部開口34とを密閉してもよいが、蓋体35を閉めるだけでもよく、蓋体35を閉めるだけの場合は、水中に没した場合、箱体31の内部に水が侵入するが、袋24から凝集泥土が漏れることはない。
袋24を詰めた箱体31を、前記採取場所8のため池の水底Sに降ろし、水中に没した状態で保管する。この場合、水底Sの浚渫が完了した箇所に箱体31を置く。尚、1年を通して箱体31が水没する場所を選ぶ。
以上のように、本処理方法では、放射性物質を含む泥土を採取する採取工程と、採取した泥土を管路5により処理場所3に圧送する搬送工程と、採取した泥土を細粒分と粗粒分に分級する分級工程と、沈降により粗粒分を分離すると共に、泥土に凝集剤を添加して泥土の細粒分を凝集する凝集工程と、凝集した泥土を袋24に詰める袋詰め工程と、凝集泥土を脱水する脱水工程と、脱水した袋詰めの凝集泥土を、容器たる箱体31に入れ、この箱体31を採取場所8の水中に移送する移送工程と、水中で前記箱体31を保管する保管工程とを備える。これらに用いる装置は実施例に限定されず、各種の装置を用いることができる。
このように浚渫により放射性物質を含んだ泥土Dを採取した場所に、凝集・脱水処理を行った泥土を箱体31に入れて戻すから、以下の利点がある。
まず、他の保管場所を探す必要がない。また、雨や水の流入により水底の泥土が撹拌しても、放射性物質を含んだ泥土はすでに除去され、箱体31に収納しているから、放射性物質が撹拌されることがない。さらに、コンクリート層を有する箱体31に入れて水中に保管するから、コンクリートと水とにより放射性の拡散を防止することができる。また、水位が所定以下にならなければ、ため池の上水を農業用用水などとして使用することができる。したがって、最終処分場に送るまでの中間保存場所として最適なものとなる。
このように本実施例では、請求項1に対応して、放射性物質を含む水底Sの泥土を採取し、この採取した泥土を管路5により処理場所3まで搬送し、この処理場所3において放射性物質を含む泥土から粗粒分を除去し、前記粗粒分を除去した泥土を凝集し、この凝集した泥土を袋24に詰め、この泥土を詰めた袋24を、コンクリート層を有する容器たる箱体31に収納し、泥土を採取した水底Sの浚渫が完了した箇所に、袋24を収納した箱体31を水中保管するから、放射性物質を含む泥土を、外気に晒すことなく管路5を通して処理場所3まで搬送し、処理場所3で凝集し、箱体31に収納して水中保管することにより、放射性物質を含む泥土が水中に拡散することがないと共に、水による放射線遮蔽効果が得られ、周囲に影響の少ない保管場所が得られる。
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、放射性物質を含む泥土から粗粒分を除去し、前記粗粒分を除去した泥土を凝縮するから、放射性物質を多く含む泥土の成分を凝集して処理することができる。
また、このように本実施例では、請求項1に対応して、容器たる箱体31がコンクリート層を有するから、コンクリート層と水とにより放射線遮蔽効果が得られ、周囲に影響の少ない保管場所が得られる。
また、このように本実施例では、請求項1及び2に対応して、凝集した泥土を袋24に詰め、この泥土を詰めた袋24を容器たる箱体31に複数収納するから、泥土の扱いが容易となり、袋24のまま箱体31に収納することができ、箱体31への収納作業などが容易となる。
さらに、このように本実施例では、請求項1に対応して、放射性物質を含む泥土を浚渫により採取する水中の泥土を浚渫により採取して処理することができる。
さらに、このように本実施例では、請求項1に対応して、水中の底部たる水底Sの泥土Dを浚渫により採取し、泥土Dを採取した水中に容器たる箱体31を保管するから、採取した場所に凝集した泥土を保管することにより、他の中間保管場所を選定する必要がなく、処理前であれば、水などが流れ込んで、水底の泥土が拡散して放射能の影響を受ける虞があったが、箱体31に入れて水中保管した後は、拡散することがないと共に、水により放射能を遮蔽した状態で保管することができる。
また、実施例上の効果として、通水性を有する袋24に汚泥を詰めたから、詰めた後に泥土の脱水処理を行うことができる。また、採取場所8と処理場所3が近接しているから、処理装置11で発生した上澄み水を採取場所8に返送するのに便利である。さらに、管路5を用いて泥土を連続的に搬送することができる。
[参考例1]
図8は発明の参考例1を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。この例では、容器として袋41を用いている。この袋41は、ポリエチレン製やポリ塩化ビニル製などの樹脂製やゴム製であって、水を通さない止水性と、耐候性を有するものを用いる。なお、通常は水中保管は1年以上である。また、海などで使用する場合は、海水に晒される環境でも所定の耐久性を有するものを用いる。
そして、前記凝集泥土を脱水した後、この凝集泥土を袋41の開口部42から内部に詰め、空気を抜いた状態で開口部42を封止手段42Aにより封止して密閉する。この密封した袋41を採取場所8であるため池の水底Sに沈め、年間を通して水中に没した状態で保管する。
このように本参考例では、容器が袋41であり、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
また、この例では、直接的に袋41を水底Sに置くから、箱体31が不要となり、コストを削減することができる。
図9〜図13は発明の実施例2を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述する。同図は浚渫手段1の具体例を示している。前記浚渫手段1は集泥装置101を備え、この集泥装置101は箱型の本体ケース102を有し、この本体ケース102の一側の側面103には下部側を開口した集泥口104が形成され、この集泥口104には格子状のスクリーン体105が設けられている。前記本体ケース102内には、集泥室106が設けられている。
この本体ケース102について、図9及び図10を参照して詳細に説明すると、本体ケース102は上部に上面壁107を備えるとともに、下部に下面壁108を備え、この上面壁107と下面壁108の間に4つの側面壁109,110,111,112を備える中空な六面体を成す箱体からなる。
そして、前記一側の側面103たる、この一方の側面壁109には、この側面壁109の略下側半分を開口させて集泥口104が形成されるとともに、この集泥口104には格子状のスクリーン体105が固設されている。さらに、この側面壁109の略上側半分の外部には、上方へ行くほどに外側に突出する板状の第1の傾斜案内部113を備えた第1の泥土案内部114が固設されている。
また、この一方の側面壁109に隣接する両側面壁110,111には、浚渫方向(図9中、白抜き矢印方向)に向かって外側斜め方向に突出する板状の第2の傾斜案内部115を備えた第2の泥土案内部116が固設されている。
さらに、両側面壁110,111には、それぞれ第1及び第2の軸受117,118が固着されており、この第1及び第2の軸受117,118に回転軸119が回転可能に設けられている。
また、第2の軸受118を備えた側面壁111の外部には、回転軸119に一体に備えられた従動スプロケット120と、その軸に一体に設けられた駆動スプロケット121とに無端状チェーン122を掛装し、前記回転軸119を正逆転自在に駆動させるモータ123が設けられている。
さらに、一方の側面壁109と対向する他方の側面壁112には、長手方向が水平方向と平行するように形成された接続側開口部124が形成されており、この接続側開口部124に第1の送泥管125が接続され、第1の送泥管125の吸引口126と集泥室106とが連通する。
その上また、下面壁108には、浚渫方向において中間付近から他方の側面壁112までを他方の側面壁112に向かう程に上方へと傾斜する第1の傾斜部127が形成されるとともに、一方の側面壁109に隣接する側の端を浚渫方向に対し前側に行くほど斜め下方へと傾斜する第2の傾斜部128が形成されており、この第2の傾斜部128は水平方向から、前側下方へと角度θ(30°≦θ≦40°)だけ傾斜したものである。そして、この第2の傾斜部128には、掘削爪129が複数並設されている。
また、本体ケース102の内部に設けられた集泥室106において、この集泥室106の浚渫方向と反対側の斜め上方の内周面130は円弧状をなしており、この内周面130の一端部を上面壁107の中央に連結すると共に、内周面130の他端部を他方の側面壁112における接続側開口部124の上端に連結している。
さらに、集泥室106の中央には中空な回転軸119が、両側面壁110,111にそれぞれ設けられた軸受117,118により回転可能に設けられ、前記回転軸119の側面壁111側には従動スプロケット120が設けられ、前記側面壁111の外部に回転駆動手段たる油圧モータ123を水密に設け、この油圧モータ123の軸に駆動スプロケット121を設け、それらスプロケット120,121に無端状チェーン122が掛装されている。尚、前記スプロケット120,121及びチェーン122はチェーンケース132内に水密に収納されている。
そして、この回転軸119には、図10に示すように、この回転軸119の軸方向に沿って、撹拌羽根133が並設されており、この撹拌羽根133は、前記回転軸119から径方向外側に向けて略十字をなすように放射状に形成された板状の撹拌羽根本体134と、撹拌羽根本体134の外周端141に設けられた撹拌刃135とを備える。
前記撹拌羽根本体134には、前記回転軸119の正転方向(図9中、N方向)において、前側にすくい面136が設けられると共に、後側に逃げ面137が設けられており、このすくい面136を構成している円弧部138の半径Lの大きさを、回転軸119を中心として撹拌刃135が描く円139の半径の約半分に形成されたものである。
また、撹拌羽根本体134には、前記回転軸119から径方向外側に向けて十字を成すように設けられた角柱状の骨部材140が、一体に設けられている。
さらに、撹拌羽根本体134の外周端141には、正転方向Nにおける前側から後側にかけて回転軸119の径方向内向きへと傾斜する傾斜部142が形成されるとともに、傾斜部142には、前記撹拌刃135が固着されおり、この撹拌刃135は、傾斜部142に取り付けられた矩形状の板からなる撹拌刃本体143と、撹拌刃本体143から回転軸119の径方向外向きへと突出する突出片144とからなり、この突出片144は、浚渫方向と平行な平面を備えた板材を撹拌刃本体143に回転軸119の径方向外向きに立設された一対の縦向き突出片145,145と、この一対の縦向き突出片145,145の両端を連結するとともに、浚渫方向と直交する平面を備え、縦向き突出片145,145より撹拌刃本体143からの前記径方向外向きへ突出が抑えられた一対の板材からなる横向き突出片146,146とからなる。これにより、撹拌刃本体143には、その平面から前記径方向外向きへ平面視口字形状に突出した突出片144が備えられる。
ここで、図9に示すように前記傾斜部142は、回転軸119の軸心から径方向外側に向けて延び、骨部材140と平行な仮想線Xにおいて円139におけるこの仮想線Xの接線Yと、傾斜部142の平面方向から延びた仮想線Zとがなす挟角T(5°≦T≦15°、好ましくは10°)となるように形成されている。
また、図9に示すように回転軸119を中心とし、撹拌羽根133を正転させた場合における撹拌刃本体143の回転方向前側端147が描く円148と、縦向き突出片145の先端が描く円149とは、ほぼ一致するものとする。
そして、回転軸119の両端の軸受117側と軸受118側に位置する各撹拌羽根133A,133Fは、回転軸119に接続された側の撹拌羽根本体134及び骨部材140の基端を、それぞれ回転軸119の中央方向へとずらして設けられており、さらに、各撹拌羽根133A,133B,133C,133D,133E,133Fは軸受117側から軸受連動部材131側へと、回転軸119の正転方向Nへ漸次約30°ずつ位相をずらされて並設されている。
また、前述の集泥口104に設けられたスクリーン体105において、間隔を一定にして並設された各縦杆部材150のその間隔によって生じるスクリーン体105の隙間151に対応するよう各撹拌羽根133は並設される。これについて、詳細に述べると、一つの撹拌羽根133(ここでは撹拌羽根133B)が浚渫方向において、スクリーン体105の隙間151に撹拌刃135が現れるように配置され、この撹拌羽根133Bに隣接する撹拌羽根133A,133Cは、その撹拌刃135,135が、浚渫方向において縦杆部材150,150と重なるよう配置される。同様に、図10中の右半分についても、撹拌羽根133Bを撹拌羽根133Eとし、撹拌羽根133A,133Cを撹拌羽根133D,133Fとして、スクリーン体105の隙間151に対応している。さらに、第2の傾斜部128に並設された掘削爪129においても、スクリーン体105の隙間151に対応するよう設けられる。
そして、集泥装置101における本体ケース102の上面壁107の外部には、フレーム体152が一体に設けられ、このフレーム体152には、台船2の前側に配置されたバックホウ等の油圧ショベル153Aの図11に示すように、前後方向動作(ポイント)及び旋回動作可能な支持杆たるラダー154が接続され、該ラダー154はリンク機構により前記集泥装置101を水平に保持できるようになっている。集泥装置101に接続された第1の送泥管125は、ナイフゲート弁(スライドゲート弁)155により開閉自在に設けられており、この第1の送泥管125の二次側接続部が第1の三方切替弁156に接続され、この第1の三方切替弁156の二次側接続部には、それぞれ第2の送泥管157の一次側接続部と第3の送泥管158の一次側接続部とが接続されている。
さらに、この第2の送泥管157の二次側接続部は、第1の貯泥タンク159の一次側接続部に接続されており、同様に第3の送泥管158の二次側接続部は、第2の貯泥タンク160の一次側接続部に接続されている。
また、第1の貯泥タンク159及び第2の貯泥タンク160には、それぞれ泥土Dを浚渫場所近傍の埋立地や処理場に送る泥土排出管159A,160Aが接続されている。
図11又は図12に示すように、第1の貯泥タンク159に接続された第1の吸引管161及び、第2の貯泥タンク160に接続された第2の吸引管162は、ともに第2の三方切替弁163の一次側接続部に接続され、この第2の三方切替弁163の二次側接続部は、金属製の管材からなる第3の吸引管164の一次側接続部に接続され、この第3の吸引管164の二次側接続部は、吸引手段たる第1のコンプレッサ165の一次側接続部に接続されている。
また、前記第3の吸引管164の一次側接続部と二次側接続部の途中には、逆流防止弁166、セパレートタンク167、真空調節弁168、フィルタ169が、この順に配置されており、前述のセパレートタンク167は、図12に示すように、中空円筒形状のタンク本体170の上部に一次側接続部171を設け、この一次側接続部171とタンク本体170の内部とを連通するタンク本体170より径を小さく形成された円筒管172をタンク本体170の上部に同軸に接続し、一次側接続部171とタンク本体170の内部とを連通し、円筒管172の外周には、回転羽根173(図示せず)が回転可能に設けられ、タンク本体170の側面上方には、二次側接続部174が設けられている。さらに、タンク本体170の下部には、手動操作が可能な排出弁167Aが設けられている。
さらに、第1の貯泥タンク159における第2の一次側接続部と台船2上に設けられた第2のコンプレッサ175の二次側接続部とは、第1の圧縮空気供給管76によって接続されるとともに、第2の貯泥タンク160における第2の一次側接続部と台船2上に設けられた第3のコンプレッサ177の二次側接続部とは、第2の圧縮空気供給管178によって接続される。
また、第2のコンプレッサ175の一次側接続部と第3のコンプレッサ177の一次側接続部はともに、第3の三方切替弁197の二次側接続部に接続されており、この第3の三方切替弁197の一次側接続部は、第1のコンプレッサ165の二次側接続部へと接続されている。
そして、第1の貯泥タンク159の二次側接続部には、泥土排出管159Aの一次側が接続されるとともに、第2の貯泥タンク160の二次側接続部には、泥土排出管160Aの一次側が接続される。さらに第1及び第2の貯泥タンクは、それぞれ第1及び第2の大気開放弁159B,160Bが設けられている。
また、これら第1乃至第3のコンプレッサ165,175,177、第1乃至第3の三方切替弁156,163,197などは前記台船2に設けられている。
そして、前記台船2の左右両側には、スパッド179,179がそれぞれ設けられており、さらに、台船2の中央には、前記各コンプレッサ165,175,177、前記各三方切替弁156,163,197、スパッド179等の制御を行う制御装置180と発電機153Bが配置されている。また、この制御装置180の付近には、前記ナイフゲート弁(スライドゲート弁)155の開閉にかかる作動力等を供給する第4のコンプレッサ181が設けられている。
次に、前記装置による浚渫方法につき説明すると、浚渫場所まで移動した後、水底Sにスパッド179,179を打って台船2を位置固定し、ラダー154を操作し集泥装置101を水底Sに降ろす。ここで、この集泥装置101を用いて浚渫作業を行う初期状態として、ナイフゲート弁(スライドゲート弁)155は、閉状態である。
この時、集泥装置101の本体ケース102の上面壁107と水面とを平行となるように操作することで、図9に示すように、掘削爪129は、水底Sに堆積した泥土に対し進入角α(50°≦α≦60°)を有する。
そして、水底Bに降ろされた集泥装置101においては、ラダー154を集泥装置101が水平方向に移動するよう操作して、集泥装置101の集泥室106に泥土を掻き入れる。
このとき、水底Sに堆積した泥土Dに対し、集泥装置101の本体ケース102が表層の泥土に埋設された状態からラダー154を操作し集泥装置101を図9中、白抜き矢印方向へと移動させる。集泥口104の正面に位置する泥土Dはそのままスクリーン体105へ案内され、集泥口104より下層の泥土は水底Sに対し進入角αに設けられた掘削爪129により掻き上げられ、第2の傾斜部128に沿ってスクリーン体105へと案内され、また、集泥口104より上層にある泥土又は集泥口104の水平方向にある泥土Dについては、第1乃至第2の泥土案内部114,116におけるそれぞれの第1の傾斜面113及び第2の傾斜面115により圧縮されて、スクリーン体105へと案内される。そして、スクリーン体105へと案内された泥土Dは、スクリーン体105の縦杆部材150の隙間151を通過可能なもののみ集泥室106へと入れられ、岩やゴミ等はスクリーン体105により止められる。
集泥室106へと入れられた泥土Dは、回転する撹拌羽根133により撹拌される。ここで、泥土Dが撹拌羽根133により撹拌される状況について、詳細に説明すると、先ず水底Sの泥土の柔らかさの質が正転方向Rに回転する撹拌羽根133が通る位では、そのまま、撹拌羽根133を正転方向Rに回転させ、泥土の撹拌を行う。この時、撹拌刃135により、泥土に回転方向の撹拌の流れがもたらされ、撹拌羽根133のすくい面136により、泥土が切り崩されるとともに、回転方向Nへと掻き上げられ、また、突出片144により、集泥室106内側に堆積する泥土が切り崩され、撹拌の流れにこの堆積した泥土を戻す。さらに、撹拌羽根133をそれぞれ位相をずらして設けたことにより、撹拌羽根133による起こる撹拌の流れは、回転軸119を中心とした螺旋状となる。
また、水底Sの泥土の質が正転方向に回転する撹拌羽根133を通さない場合には、撹拌羽根133を逆転(図中R方向)させる。この場合、撹拌刃135により泥土に逆転方向Rの撹拌の流れがもたらされ、撹拌羽根133の逃げ面137により、泥土は回転方向R外側へと案内され、この案内された泥土Dは、集泥室106内側に堆積していくとともに、この堆積する泥土Dは、回転する突出片144と集泥室106内側により擦り潰されて粉砕され、撹拌の流れに戻される。撹拌羽根133の正転・逆転については、回転軸119に備えられたモータ123を制御させて行う。
さらに、水底Sの泥土の質によってラダー154の動きを使い分けることで、最適な浚渫作業を行うことが可能となり、泥土が固い場合には、図11中に示すラダー154の前後方向の動き(ポイント)により、浚渫を行い、それ以外の場合にはラダー154の旋回方向の動きにより、浚渫作業を行うが、これら前後方向、又は旋回方向に対応させるようにラダー154に対し、集泥装置101の向きを変えて装着し使用する。
続いて、この集泥室106内の泥土を外部に排出する方法について述べるとすると、まずここで、第1の三方切替弁156により、第1の送泥管125と第2の送泥管157とを連通させ、第2の三方切替弁163により、第1の吸引管161と第3の吸引管164とを連通させ、真空調節弁168を閉状態とし、第1のコンプレッサ165を作動させ、第1の貯泥タンク159に負圧をかける。そして、ナイフゲート弁(スライドゲート弁)155を開口させて、吸引口126から泥土Dを第1の貯泥タンク159へと吸引する。
そして、第1のコンプレッサ165により第1の貯泥タンク159内の空気を排気する。この時、第1の貯泥タンク159内から第3の吸引管164を通り、第1のコンプレッサ165の一次側接続部へと導かれる第1のコンプレッサ165における吸気側の空気は、セパレートタンク167を通過することで、空気内の水分及び不純物がタンク内部に落とされ、空気中の水分及び不純物が取り除かれ、さらに第3の吸引管164における二次側に配置されたフィルタ169により、さらに、残りの水分及び不純物が取り除かれ第1のコンプレッサ165の一次側接続部へと導かれる。
ここで、第1の貯泥タンク159内の泥土が定量となった状態で、第1の三方切替弁156により、第1の送泥管125と第3の送泥管158とを連通させ、第2の三方切替弁163により、第2の吸引管162と第3の吸引管164とを連通させ、第1のコンプレッサ165により、第2の貯泥タンク160に負圧をかける。
続いて、第2の貯泥タンク160へ泥土を送泥し、同時に第1の貯泥タンク159内における泥土Dの排出を行う。第1の貯泥タンク159内における泥土Dの排出は、第1の圧縮空気供給管176により接続された第2のコンプレッサ175を作動させ、第1の貯泥タンク159内に圧縮空気を供給し、第1の貯泥タンク159内の泥土を泥土排出管159Aへ圧送し、外部へ泥土を排出する。そして、第1の貯泥タンク159内における泥土の排出を完了させた後、第2のコンプレッサ175を停止させ、第1の貯泥タンク159に設けられた第1の大気開放弁182を開き、空となった第1の貯泥タンク159内を大気圧に戻す。ここで、第1のコンプレッサ165と第2及び第3のコンプレッサ175,177とは、同様のものを使用しているが、コンプレッサの吸込み側圧力と吐出し側圧力との圧力比の関係により、コンプレッサの吸込み側圧力を使用する貯泥タンク159,160内への泥土Dの吸引作業に対し、吸込み側圧力より大きな吐出し側圧力を使用する貯泥タンク159,160外への泥土の圧送作業の方が短時間で完了するため、この吸引作業と圧送作業にかかる所要時間の差を利用し、その差に当たる時間に各貯泥タンク159,160の大気開放を行っている。
さらに、第1のコンプレッサ165の吐出し側(二次側)を第3の三方切替弁197を介し第2及び第3のコンプレッサ175,177の吸い込み側(一次側)に接続することにより、貯泥タンク159,160外への泥土Dの圧送作業には、2基のコンプレッサ(第1のコンプレッサ165と第2のコンプレッサ175、又は第1のコンプレッサ165と第3のコンプレッサ177)を直列に連結した場合に生じる吐出し側圧力を用いることとなるので、吸引作業に対し、圧送作業はさらに短時間で完了することなる。
そして、第2の貯泥タンク160内の泥土が定量となった状態で、第1の三方切替弁156により、第1の送泥管125と第2の送泥管157とを連通させ、第2の三方切替弁163により、第1の吸引管161と第3の吸引管164とを連通させ、第1のコンプレッサ165により、第1の貯泥タンク159に負圧をかけ、前述したように、集泥室106の泥土を第1の貯泥タンク159に送り込む。
このように、第1のコンプレッサ165を常時作動させた状態で、図13に示すように、第1の貯泥タンク159と第2の貯泥タンク160に交互に泥土の吸引、圧送・大気開放を行い、水底Bにおける泥土Dの吸引・圧送を行う。
また、水底Sの泥土の吸引を続けることにより、第1のコンプレッサ165の吸気側(一次側)に接続されたセパレートタンク167内には、第1又は第2の貯泥タンク159,160から導かれ出される空気に混入した水分及び泥土等の不純物が沈殿しており、この沈殿物の液面がある一定の高さとなると、沈殿物液面検知手段182(図示せず)により、浚渫作業者に報知される。この沈殿物液面検知手段182の報知を認知した浚渫作業者は、排出弁167Aを開き、セパレートタンク167内の沈殿物を排出する。このセパレートタンク167内に沈殿する沈殿物については、粘性が高く、セパレートタンク167内の沈殿物が完全に排出されるまで、時間がかかるため、目視によりセパレートタンク167の内部が空になったことを確認してから、手動により排出弁167Aを閉じる。
また、第1及び第2の貯泥タンク159,160には、それぞれタンク内の泥土Dの容量を検知する液面検知手段183,184(ともに図示せず)を備えている。
次に、水底Sから集泥装置101を移動させる場合には、ナイフゲート弁(スライドゲート弁)155を閉じてから行うことで、集泥装置101により、第1の送泥管125に取り込まれた泥土Dが逆流し、水底Sに撒き散らされることはない。
さらに、ナイフゲート弁(スライドゲート弁)155を用いたことにより、第1の送泥管125に抵抗の大きい泥土が密に流通していても容易に第1の送泥管125が開閉されるとともに、水密性を有する。
また、第1の送泥管125の途中における浚渫船153との接続部分を水平方向に旋回自在にするスイベルジョイント185としたことで、ラダー154の水平方向の旋回に対応し第1の送泥管125の途中が回動自在となり、第1の送泥管125にねじれや屈曲等の変形が生じず常に第1の送泥管125の径は、一定に保たれることとなる。
以上のように、水底に泥土が厚く堆積している場合、一度集泥装置101を全て泥土の中に潜し、支持杆154を操作し、集泥装置101に泥土を入れるが、集泥装置101をその時にかかる泥土の抵抗に対抗し得る強固な構造とすることができる。また、集泥口104を一側面103の下側半分にのみを開口して設けたことにより、水底に浅く堆積した泥を浚渫する場合に上層に位置する余分な水を集泥装置101内に取り込むことなく、下層の泥土のみを取り込むことが可能となり、浚渫において集泥された泥土中の水分が抑えられた、含泥率の高い浚渫を行うことが可能となる。さらに、このように撹拌羽根133の形状にすることで、集泥装置101内に導入される泥土を効率良く撹拌することが可能となり、また、水底中に存在する様々な状態、種類の泥土に対し、例えば、粘性の高い泥土、固くしまった泥土等であっても、十分に撹拌を行うことが可能となる。
また、前記集泥口104は、前記集泥装置101の前記側面103のその略下側に形成され、前記集泥装置101の前記側面103におけるその略上側に泥土案内部114を設けたことにより集泥口104の高さを側面103より低く形成し、その集泥口104の上部に泥土案内部114を設けたことにより、泥土が上側から圧縮されて集泥室106に取り込まれるため、余分な水分を取り込むことのない高濃度な集泥が可能となる。このように高濃度な集泥が可能となるため、処理装置11における処理を円滑に行うことができる。