JP6154533B1 - 免震建物とその構築方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大地震時にせん断破壊される耐風ピンを適用することなく、風荷重による上部構造体の大きな残留変位を抑制しながら、大地震時における優れた免震性能を発揮することのできる免震建物を提供すること。【解決手段】上部構造体20と下部構造体10から構成される免震建物100であって、上部構造体20と下部構造体10の間に異なる形態の滑り支承が介在しており、異なる形態の滑り支承は球面滑り支承30と平面滑り支承40から構成されており、平面滑り支承40の摩擦係数は球面滑り支承30の摩擦係数よりも大きい。【選択図】図1

Description

本発明は、上部構造体と下部構造体から構成される免震建物において、上部構造体と下部構造体の間に異なる形態の滑り支承が介在している免震建物に関するものである。
地震国であるわが国においては、ビルや橋梁、高架道路、戸建の住宅といった様々な構造物に対して、地震力に抗する技術、構造物に入る地震力を低減する技術など、様々な耐震技術、免震技術、制震技術が開発され、各種構造物に適用されている。
中でも免震技術は、構造物に入る地震力そのものを低減する技術であることから、地震時の構造物の振動は効果的に低減される。この免震技術を概説するに、下部構造体(基礎や柱−梁フレーム架構等)と上部構造体(柱−梁フレーム架構や屋根架構等)との間に免震支承(装置)を介在させ、地震による下部構造体の振動の上部構造体への伝達を低減し、上部構造体の振動を低減して構造安定性を保証するものである。なお、この免震支承は、地震時のみならず、構造物に対して常時作用する交通振動の上部構造体への影響低減にも効果を発揮するものである。
免震支承には鉛プラグ入り積層ゴム支承や高減衰積層ゴム支承、積層ゴム支承とダンパーを組み合わせた支承、滑り免震支承など、様々な形態の支承が存在している。その中の一種である滑り免震支承にはさらに、球面滑り支承や平面滑り支承などが存在している。
たとえば球面滑り支承を取り上げてその一つの形態の構成を説明すると、曲率を有する摺動面を備えた上沓および下沓と、上沓と下沓の間で、それぞれの沓と接して同じ曲率を有する上面および下面を備えた柱状の摺動体と、から構成されており、上下球面滑りタイプの免震支承、あるいはダブルコンケイブ式の免震支承などと称されることもある。この種の免震支承では、上下の沓の動作性能が、それらの間に介在する摺動体との間の摩擦係数やこれに重量が乗じられた摩擦力に支配される。
ところで、従来の球面滑り支承を有する免震建物では、球面滑り支承の摩擦係数が比較的小さいことから、風荷重を受けた際に球面滑り支承で支持される上部構造体(たとえば屋根架構)の変位が大きくなり、これが大きな残留変位となるといった課題があった。すなわち、球面滑り支承は地震荷重に対して高い減衰効果を発揮する一方で、風荷重に対してはその低い摩擦係数ゆえに支持する上部構造体の変位を抑制し難いといったデメリットを有していた。
ここで、特許文献1には、建物と地盤との間に介装され、水平方向の振動エネルギを相対変位にて吸収する転がり支承体と、円柱状剛性部材および中空弾塑性体の組み合わせによって水平方向の振動エネルギを減衰させるトリガー機構とを備え、トリガー機構は、地盤に固定される下部ブッシュとこの下部ブッシュの直上に配置されて建物に固定される上部ブッシュとを有し、円柱状剛性部材が下部ブッシュおよび上部ブッシュに嵌合され、下部ブッシュおよび上部ブッシュ間に位置する円柱状剛性部材の外周には中空弾塑性体が嵌着され、中空弾塑性体は軸方向の両端のみが円柱状剛性部材に固定されている、免震装置のトリガー機構が開示されている。
また、特許文献2には、上部構造体と下部構造体の間に免震装置が設けられていて、再現期間1年程度の風荷重による上部構造体の微小振幅の揺れは免震装置によって減衰され、再現期間50年程度の風荷重に対しては免震層の水平剛性が剛性部材によって高められて免震層の過大な変形を抑え、大地震等によって上部構造体と下部構造体が大きく相対移動した際には剛性部材が破断し、上部構造体と下部構造体の相対移動の拘束が解除されて免震装置が機能して免震効果を発揮する、免震建物が開示されている。
さらに、特許文献3には、基礎と基礎上に支持される構造物本体との間に設けられる耐風構造であって、基礎上に設けられる下部構造体と、下部構造体上に配置され、その上方に構造物本体を支持する上部構造体と、強風時に下部構造体と上部構造体との間の定位置に係合してこれら下部構造体と上部構造体とを剛に拘束し、地震力が入力された際に定位置から退避して下部構造体、上部構造体間を縁切りする第1ピンと、下部構造体、上部構造体が剛に拘束された状態において地震力が一定値を超えたときに破断して下部構造体、上部構造体と構造物本体とを縁切りする第2ピンとを備えてなる免震耐風構造が開示されている。
特開2000−065129号公報 特開2008−156945号公報 特開2004−176525号公報
特許文献1で開示されるトリガー機構によれば、簡易な構成で、構造物が風荷重等により揺動するのを回避するととともに、地震発生時には効果的に免震機能を果たすことができ、弾性域、降伏荷重、塑性域等の挙動を任意に設定することができるとしている。
また、特許文献2で開示される免震建物によれば、再現期間1年程度の風荷重に対して快適な居住性を確保し、再現期間50年程度の風荷重に対しては免震層の水平剛性を高め、大地震時には免震効果を発揮することができるとしている。
さらに、特許文献3で開示される免震耐風構造によれば、地震時に免震構造としての機能を有し、強風時に耐風構造としての機能を有するとしている。
しかしながら、いずれの技術も耐風ピンを備えた免震支承を有するものであり、風荷重に対しては耐風ピンで免震支承の変位を抑制し、たとえば再現期間500年程度のレベル2地震等の大地震時には耐風ピンがせん断破壊されて免震支承が機能する機構を有していることから、大地震後にはせん断破壊された耐風ピンの交換が余儀なくされることに加えて、大地震でなくてもレベル1地震等の際に耐風ピンが破断されていないか否かを確認する必要がある。
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、大地震時にせん断破壊される耐風ピンを適用することなく、風荷重による上部構造体の大きな残留変位を抑制しながら、大地震時における優れた免震性能を発揮することのできる免震建物とその構築方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による免震建物は、上部構造体と下部構造体から構成される免震建物であって、前記上部構造体と前記下部構造体の間に異なる形態の滑り支承が介在しており、前記異なる形態の滑り支承は球面滑り支承と平面滑り支承から構成され、前記球面滑り支承は、曲率を有する下摺動面をその下面に備えた上沓と、曲率を有する上摺動面をその上面に備えた下沓と、前記上沓と前記下沓の間で、該上沓および該下沓と接して曲率を有する上面および下面を備えた柱状の摺動体と、から構成され、前記平面滑り支承は、平板からなる上滑り板および下滑り板と、前記上滑り板もしくは前記下滑り板のいずれか一方に固定され、固定されていない他方の滑り板の表面で滑る滑り摩擦材と、から構成され、該平面滑り支承の摩擦係数は前記球面滑り支承の摩擦係数よりも大きいものである。
本発明の免震建物は、上部構造体と下部構造体の間に、球面滑り支承と平面滑り支承という異なる形態の滑り支承を介在させたものであり、球面滑り支承よりも摩擦係数の大きな平面滑り支承によって風荷重による上部構造体の大きな残留変位を抑制することができ、地震荷重に対しては主として球面滑り支承によって免震作用が奏されるものである。
このように、一つの建物に対し、球面滑り支承と平面滑り支承という異なる形態の滑り支承を組み込んだ免震建物はこれまでになく、斬新で、かつ耐風性能と免震性能の双方に優れた免震建物である。
ここで、本発明の対象とする免震建物としては、上部構造体が屋根架構であり、下部構造体が屋根架構を支持する柱−梁フレーム架構等である体育館やアリーナ等の大空間建物や、上部構造体が橋桁であり、下部構造体が橋脚や橋台である橋梁などが含まれる。
たとえば、平面視矩形の体育館の場合、下部構造体を構成する矩形平面の基礎の各辺に所定間隔で配設されている各柱上に、球面滑り支承と平面滑り支承を交互に配設し、各滑り支承にて上部構造体である屋根架構を支持する形態とすることができる。また、橋軸方向に所定間隔で複数の橋脚が配設されている橋梁においては、下部構造体を構成する全ての橋脚上に球面滑り支承を配設するとともに、平面滑り支承は一つ置きに橋脚上に配設し、上部構造体である橋桁を各滑り支承にて支持する形態とすることができる。
球面滑り支承の摩擦係数は0.03以上0.05以下の範囲にあり、平面滑り支承の摩擦係数は球面滑り支承よりも大きな範囲である、0.05より大きく0.1以下の範囲で、一般には0.08〜0.1の範囲にある。
風荷重を受けた際には、摩擦係数の大きな平面滑り支承の摩擦力が作用し、風荷重に対する抵抗力を発揮して上部構造体の変位を抑制することができる。
一方、地震時には、球面滑り支承を構成する摺動体(スライダー)が上沓と下沓の間で水平及び上向きに移動し、この摺動体によって上沓の上面が上に持ち上げられる。そのため、球面滑り支承と平面滑り支承の双方に作用していた地震時の鉛直荷重は球面滑り支承へシフトしていく。球面滑り支承への鉛直荷重のシフトに応じて平面滑り支承の鉛直軸力は小さくなり、さらに変形が大きくなると平面滑り支承の鉛直軸力が0になる。このことにより、大地震時の大変形時には球面滑り支承にのみ水平せん断力が生じることになる。
大地震時において、仮に摩擦係数の大きな平面滑り支承に水平せん断力が作用すると、摩擦係数の大きな平面滑り支承にて層せん断力が大きくなり、この大きな層せん断力が建物に入力されることになる。これに対し、本発明の免震建物では、摩擦係数の大きな平面滑り支承に水平せん断力が作用しなくなることより、大地震時の大きな層せん断力が建物に入力するのが抑制され、建物の受ける地震荷重を可及的に抑制することができる。
また、本発明の免震建物は、大地震時にせん断破壊される耐風ピンを備えていないことから、レベル2地震等の大地震後にせん断破壊された耐風ピンの交換が余儀なくされることもなく、レベル1地震等の際に耐風ピンが破断されていないか否かを確認する必要もない。
また、本発明による免震建物の好ましい実施の形態は、前記下部構造体の上に軸力調整装置が配設され、該軸力調整装置と前記上部構造体の間に前記球面滑り支承および/または前記平面滑り支承が配設されているものである。
摩擦係数が同じ同種の滑り支承で上部構造体を支持する従来の免震建物では、上部構造体の総荷重×摩擦係数が総滑り力となる。これは、滑り支承に作用する軸力が設計値と異なっても、上部構造体の総重量が設計値と同じであれば、総滑り力は設計値と同様になるという設計思想に基づいている。
一方、本発明の免震建物のように摩擦係数が異なる異種の滑り支承で上部構造体を支持する場合、滑り支承に作用する軸力が設計値通りでないと、総滑り力が設計値と乖離していくという課題がある。
そこで、平面滑り支承もしくは球面滑り支承と下部構造体を構成するたとえば柱の間に軸力調整装置を配設しておき、軸力調整装置を構成するジャッキによって滑り支承の上面(上部構造体を直接支持する面)のレベルを上下に調整できるようにしておく。この構成により、平面滑り支承と球面滑り支承の上面のレベルをフラットに調整し、各滑り支承に生じる軸力を設計値に近づけることができ、総滑り力が設計値と乖離するといった課題を解消することができる。なお、「平面滑り支承および/または球面滑り支承」とは、いずれか一方の滑り支承のみに軸力調整装置を適用する形態や、双方の滑り支承に軸力調整装置を適用する形態を含む意味である。
ここで、前記軸力調整装置の実施の形態は、上下に高さ調整が可能で前記滑り支承を支持する支持台と、該支持台の上面のレベルを上下させるジャッキと、該ジャッキの荷重を計測するロードセルと、から構成されている。
滑り支承の全部もしくは一部において、ロードセルでジャッキ荷重を計測しながら、上下に高さ調整が可能で滑り支承を支持する支持台の上面のレベルを油圧ジャッキ等のジャッキによって調整し、レベル調整がおこなわれた支持台の高さを固定することにより、平面滑り支承の荷重総和と球面滑り支承の荷重総和がいずれも設計値に一致もしくは近似した免震建物を構築することが可能になる。すなわち、本発明は、このように滑り支承の全部もしくは一部のレベル調整により、異種の滑り支承それぞれの荷重総和が所定の設計値となるようにして免震建物を構築する方法にも及ぶものである。
以上の説明から理解できるように、本発明の免震建物によれば、上部構造体と下部構造体の間に球面滑り支承と平面滑り支承という異なる形態の滑り支承を介在させたことにより、球面滑り支承よりも摩擦係数の大きな平面滑り支承によって風荷重による上部構造体の大きな残留変位を抑制しながら、地震荷重に対しては球面滑り支承によって高い免震性能を発揮することができる。
本発明の免震建物の実施の形態1の分解斜視図である。 球面滑り支承の模式図である。 平面滑り支承の模式図である。 球面滑り支承と平面滑り支承を合わせた滑り支承全体の変位−せん断力関係図である。 (a)〜(d)の順に、大地震時に鉛直軸力が平面滑り支承から球面滑り支承にシフトすることを説明した模式図である。 本発明の免震建物の実施の形態2とその構築方法を説明した模式図であって、(a)は軸力調整装置にてジャッキアップしている状況を説明した図であり、(b)は軸力調整装置にてジャッキダウンしている状況を説明した図である。 球面滑り支承と平面滑り支承のレベルが調整された実施の形態2の免震建物を示した模式図である。
以下、図面を参照して本発明の免震建物の実施の形態を説明する。なお、図1で示す免震建物においては、理解を容易とするべく、下部構造体や上部構造体においてブレス材等の図示を省略している。また、図示する免震建物は体育館等の大空間建物であるが、これ以外にも、一般のビルや橋梁等であってもよい。
(免震建物の実施の形態1)
図1は本発明の免震建物の実施の形態1の分解斜視図であり、図2は球面滑り支承の模式図であり、図3は平面滑り支承の模式図である。
図示する免震建物100は体育館等の大空間建物であり、基礎1と、基礎1上で妻方向および桁行方向にそれぞれ立設された複数の柱2と、から構成される下部構造体10と、各柱2の上端に配設された球面滑り支承30および平面滑り支承40と、下部構造体10にて支持され、球面滑り支承30と平面滑り支承40の上に配設された屋根架構からなる上部構造体20と、から構成されている。
図示例では、妻方向および桁行方向ともに5本の柱2が配設されており、各柱2に対して球面滑り支承30と平面滑り支承40が交互に配設されている。
図2で示すように、球面滑り支承30は、曲率を有するSUS製の下摺動面をその下面に備えた上沓31と、曲率を有するSUS製の上摺動面をその上面に備えた下沓32と、上沓31と下沓32の間で、上沓31および下沓32と接して曲率を有する上面および下面を備えた柱状で鋼製(SUS製を含む)の摺動体33(スライダー)と、から構成される。
上沓31の下面における下摺動面の周囲、および、下沓32の上面における上摺動面の周囲にはそれぞれ、環状のストッパー34が配設されていて、摺動体33の摺動範囲が規定され、摺動体33の脱落等が抑止される。
上沓31と下沓32と摺動体33はいずれも、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A,B,C、もしくはSN490B,C、もしくはS45C)から形成され、面圧60MPa程度の耐荷強度を有している。また、球面滑り支承30の摩擦係数は0.03以上0.05以下の範囲にある。
また、摺動体33の上面と下面にはそれぞれ、不図示の二重織物層が接着固定されているのが好ましい。この二重織物層は、たとえばPTFE繊維とPTFE繊維よりも引張強度の高い繊維からなる二重織物層であり、PTFE繊維が上沓31の下摺動面と下沓32の上摺動面側に配設されるようにして各二重織物層が摺動体33の上下面に固定されている。ここで、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン4・6などのポリアミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやパラアラミド、メタアラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、LCP、ポリイミド、PEEKなどの繊維を挙げることができる。また、さらに、熱融着繊維や綿、ウールなどの繊維を適用してもよい。その中でも、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、引張強度の極めて高いPPS繊維が望ましい。これら二重織物層は、エポキシ樹脂系接着剤等からなる接着剤を介して摺動体33の上下面に接着固定される。
一方、図3で示すように、平面滑り支承40は、平板からなる上滑り板41および下滑り板42と、上滑り板41に固定されて下滑り板42の表面で滑る滑り摩擦材43と、から構成される。
上滑り板41と下滑り板42はともに鋼製(SS400等)の板材であり、滑り摩擦材43はポリアミド等の樹脂部材であり、滑り摩擦材43が滑る下滑り板42の表面にはPTFE等がコーティングされたSUS製のプレートが取り付けられている。
平面滑り支承40の摩擦係数は球面滑り支承30よりも大きく、0.05より大きく0.1以下の範囲で、一般には0.08〜0.1の範囲にある。
ここで、図4で示す変位−せん断力関係図を参照して、球面滑り支承と平面滑り支承で構成される滑り支承全体の有する耐風性能および免震性能を説明する。
図中、点線グラフは平面滑り支承に作用する水平せん断力グラフであり、一点鎖線グラフは球面滑り支承に作用する水平せん断力グラフであり、実線グラフは球面滑り支承と平面滑り支承を合わせた場合の変位−せん断力関係グラフである。なお、球面滑り支承と平面滑り支承の数を1:1に配置した場合を仮定している。
グラフ中央のS1の範囲では、平面滑り支承の摩擦力の寄与度が大きく、各滑り支承ともに動かず、風荷重に対して抵抗する。したがって、風荷重に対し、主として平面滑り支承の摩擦力が作用して上部構造体の大きな変位(残留変位)が抑制される。
S1の外側のS2の範囲では、平面滑り支承の摩擦力の寄与度が低下するものの依然として存在し、その一方で球面滑り支承の摩擦力が増加し、双方の滑り支承にてレベル1地震等に対抗する。
S2の外側のS3の範囲では、平面滑り支承の摩擦力の寄与度が完全に無くなり、球面滑り支承の摩擦力のみによってレベル2地震等の大地震に対抗する。
ここで、図5には、球面滑り支承と平面滑り支承に作用する上部構造体の重量に起因した鉛直軸力に関し、大地震が作用した際の初期状態から大変形時までの鉛直軸力の変動を図5(a)〜(d)の順に示している。
図5(a)で示すように、球面滑り支承30と平面滑り支承40の双方に地震時の水平せん断力Qが作用した初期状態では、双方の滑り支承に対して上部構造体の分担荷重に起因した鉛直軸力N1が作用している。
図5(b)で示すように、水平せん断力Qによって球面滑り支承30の摺動体33が滑り、平面滑り支承40の滑り摩擦材43が滑る過程で、球面滑り支承30では摺動体33が下沓32の曲率を有する上摺動面に沿って上昇し、上部構造体20の荷重が球面滑り支承30にシフト易くなる。その結果、平面滑り支承40の鉛直軸力が低下し(鉛直軸力N3)、その低下分が球面滑り支承30の鉛直軸力の増加分となり、球面滑り支承30の鉛直軸力が増加する(鉛直軸力N2)。
図5(c)で示すように、さらに双方の滑り支承の変形が進行すると、摺動体33がさらに上がることで上部構造体の荷重が球面滑り支承30に全て流れ、平面滑り支承40の鉛直軸力はゼロとなり、球面滑り支承30の鉛直軸力は最大となる(鉛直軸力N4)。
図5(d)で示すように、球面滑り支承30において摺動体33が下沓32の端部まで移動し、地震に対する免震性能を最大限に発揮する。
図5(d)で示す状態においては、地震時の水平せん断力Qは球面滑り支承30にのみ作用することから、摩擦係数の大きな平面滑り支承40に水平せん断力が作用しなくなることより、大地震時の大きな層せん断力が建物に入力するのが抑制され、建物の受ける地震荷重を可及的に抑制することができる。
図示する免震建物100によれば、上部構造体20と下部構造体10の間に球面滑り支承30と平面滑り支承40という異なる形態の滑り支承を介在させたことにより、球面滑り支承30よりも摩擦係数の大きな平面滑り支承40によって風荷重による上部構造体20の大きな残留変位を抑制しながら、地震荷重に対しては球面滑り支承30によって高い免震性能を発揮することができる。
(免震建物の実施の形態2とその構築方法)
図6は本発明の免震建物の実施の形態2とその構築方法を説明した模式図であって、図6(a)は軸力調整装置にてジャッキアップしている状況を説明した図であり、図6(b)は軸力調整装置にてジャッキダウンしている状況を説明した図である。また、図7は球面滑り支承と平面滑り支承のレベルが調整された実施の形態2の免震建物を示した模式図である。なお、図示例は平面滑り支承にのみ軸力調整装置が配設された形態であるが、軸力調整装置が球面滑り支承にのみ配設された形態や、軸力調整装置が平面滑り支承と球面滑り支承の双方に配設された形態であってもよい。
図7で示すように、実施の形態2にかかる免震建物200は、下部構造体を構成する複数の柱2のうち、平面滑り支承40が配設される柱2の上には支持台51が配設され、支持台51の上に平面滑り支承40が配設され、レベル調整がなされた球面滑り支承30と平面滑り支承40の上に上部構造体20Aが配設され、各滑り支承に対して設計軸力が作用するようになっている。
図6(a)で示す構築方法は、平面滑り支承40に作用する軸力が設計軸力よりも小さい場合を示しており、支持台51内に油圧ジャッキ等のジャッキ52を配設して軸力調整装置50を構成し、軸力調整装置50を構成するロードセル53にてジャッキ荷重を計測しながら、ジャッキ52をジャッキアップして(Y1方向)平面滑り支承40の上面のレベル調整をおこない、平面滑り支承40に対して所定の設計軸力が作用するように調整する。
支持台51は分離した下部材と上部材がボルトにて固定される構成を有しており、ジャッキアップの際にはボルトを緩めて下部材に対して上部材がスライドできるようにし、所定のレベルにてボルトを締めて下部材と上部材を固定する。
図示する上部構造体20Aは、球面滑り支承30と平面滑り支承40に直接載置される鉄骨フレーム20aと屋根材20bから構成されている。
一方、図6(b)で示す構築方法は、平面滑り支承40に作用する軸力が設計軸力よりも大きい場合を示しており、支持台51内にジャッキ52を配設して軸力調整装置50を構成し、ロードセル53にてジャッキ荷重を計測しながら、ジャッキ52をジャッキダウンして(Y2方向)平面滑り支承40の上面のレベル調整をおこない、平面滑り支承40に対して所定の設計軸力が作用するように調整する。
図6(a)、(b)のいずれの構築方法によっても、ロードセル53でジャッキ荷重を計測しながら、上下に高さ調整が可能で滑り支承を支持する支持台51の上面のレベルをジャッキ52によって調整し、レベル調整がおこなわれた支持台51の高さを固定することにより、平面滑り支承の荷重総和と球面滑り支承の荷重総和がいずれも設計値に一致もしくは近似した状態の免震建物200が構築される。
各滑り支承がレベル調整されることにより、免震建物200のように摩擦係数が異なる異種の滑り支承で上部構造体20Aを支持する場合における課題、すなわち、各滑り支承に作用する軸力が設計値通りでない場合に総滑り力が設計値と乖離していくといった課題が解消される。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…基礎、2…柱、10…下部構造体、20,20A…上部構造体、30…球面滑り支承、31…上沓、32…下沓、33…摺動体、40…平面滑り支承、41…上滑り板、42…下滑り板、43…滑り摩擦材、50…軸力調整装置、51…支持台、52…ジャッキ、53…ロードセル、100,200…免震建物

Claims (4)

  1. 上部構造体と下部構造体から構成される免震建物であって、
    前記上部構造体と前記下部構造体の間に異なる形態の滑り支承が介在しており、
    前記異なる形態の滑り支承は球面滑り支承と平面滑り支承から構成され、
    前記球面滑り支承は、
    曲率を有する下摺動面をその下面に備えた上沓と、
    曲率を有する上摺動面をその上面に備えた下沓と、
    前記上沓と前記下沓の間で、該上沓および該下沓と接して曲率を有する上面および下面を備えた柱状の摺動体と、から構成され、
    前記平面滑り支承は、
    平板からなる上滑り板および下滑り板と、
    前記上滑り板もしくは前記下滑り板のいずれか一方に固定され、固定されていない他方の滑り板の表面で滑る滑り摩擦材と、から構成され、該平面滑り支承の摩擦係数は前記球面滑り支承の摩擦係数よりも大きい、免震建物。
  2. 前記下部構造体の上に軸力調整装置が配設され、該軸力調整装置と前記上部構造体の間に前記球面滑り支承および/または前記平面滑り支承が配設されている請求項1に記載の免震建物。
  3. 前記軸力調整装置は、上下に高さ調整が可能で前記滑り支承を支持する支持台と、該支持台の上面のレベルを上下させるジャッキと、該ジャッキの荷重を計測するロードセルと、から構成されている請求項2に記載の免震建物。
  4. 上部構造体と下部構造体から構成される免震建物であって、該上部構造体と該下部構造体の間に異なる形態の滑り支承が介在しており、該異なる形態の滑り支承は球面滑り支承と平面滑り支承から構成され、該下部構造体の上に軸力調整装置が配設され、該軸力調整装置と該上部構造体の間に該球面滑り支承および/または該平面滑り支承が配設され、該軸力調整装置は、上下に高さ調整が可能で該滑り支承を支持する支持台と、該支持台の上面のレベルを上下させるジャッキと、該ジャッキの荷重を計測するロードセルと、から構成されている免震建物の構築方法において、
    前記滑り支承の全部もしくは一部において、前記ロードセルでジャッキ荷重を計測しながら前記支持台の上面のレベルを前記ジャッキによって調整し、レベル調整がおこなわれた前記支持台の高さを固定することにより、前記平面滑り支承の荷重総和と前記球面滑り支承の荷重総和がいずれも設計値に一致もしくは近似した免震建物を構築する、免震建物の構築方法。
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