以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明のフィルターエレメント10の一形態の分解斜視図を図1に示す。フィルターエレメント10は、フィルター連結体40と、このフィルター連結体40が挿入される外筒20と、フィルター連結体40及び外筒20の上端面に接合している第1エンドキャップ31と、フィルター連結体40及び外筒20の下端面に接合している第2エンドキャップ34とを有している。
フィルター連結体40は、円筒形状のメインフィルター41と、円筒形状のファイナルフィルター42と、それらフィルター41,42の内空に夫々挿入されたコア32と、ジョイントプレート33とが一体化しているものである。円板形状のジョイントプレート33の上面は、メインフィルター41の下端面及びそれの内空のコア32の下端面に接合している。ジョイントプレート33の下面は、ファイナルフィルター42の上端面及びそれの内空のコア32の上端面に接合している。
メインフィルター41は、例えば平均繊維径が太くて目の粗い不織布で形成されている。ファイナルフィルター42は、例えば平均繊維径が細くて目の細かい不織布で形成されている。メインフィルター41で粒径の大きい粒子を除去する濾過した後に、ファイナルフィルター42で濾過することによって、ファイナルフィルター42が早期に目詰まることを防止している。
コア32は、両端が開口した円筒形状をなし、四角形状の多孔を有している。この多孔は、コア32の側壁を貫通している。コア32は、メインフィルター41及びファイナルフィルター42の内空に挿入されていることにより、各フィルター41,42を支持している。
外筒20は、円筒形状をなし、その内壁面で窪んだ溝である流路溝21を有している。流路溝21は、外筒20の内壁で等間隔な螺旋状をなし、フィルター連結体40の外周側面を取り巻いている。凸部22は、外筒20の内壁面で出っ張っていることによって、フィルター連結体40の外周側面に当接し、メインフィルター41及びファイナルフィルター42を支持している。
第1エンドキャップ31は環形状をなし、フィルター連結体40と外筒20との上端面に接合している。開口部31aは、被濾過液をフィルターエレメント10内に流入させるように、フィルターエレメント10の内外を連通させている。
第2エンドキャップ34は環形状をなし、フィルター連結体40と外筒20との下端面に接合している。環内部34aは、第2エンドキャップ34の外径よりも小さい外径の筒口35に繋がっていることにより、フィルターエレメント10の内外を連通させている。筒口35は、濾過済液をフィルターエレメント10内から流出させるものである。筒口35の外周側面は、2箇所で周方向に窪んでいる。その窪みにシール材であるOリング36が嵌められている。Oリング36は、弾性体製であって、アウトレット54b(図2参照)の内壁面に変形しつつ密着し、濾過済液が漏れることを防止するものである。
図2は、フィルターエレメント10の使用状態を示す断面図である。矢印は、被濾過液及び濾過済液の流れを示している。流路溝21は、メインフィルター41を均等な間隔で取り巻いている上流部21aとファイナルフィルター42を取り巻いている下流部21bとからなる。メインフィルター41に挿入されたコア32の内空であるメイン流路41aは、被濾過液が流れるものである。ファイナルフィルター42に挿入されたコア32の内空であるファイナル流路42aは、濾過済液が流れるものである。上流部21a及び下流部21bの容積は、夫々メイン流路41a及びファイナル流路42aよりも小さい。
ジョイントプレート33は、メイン流路41aを流れる被濾過液と、ファイナル流路42aを流れる濾過済液とが混ざり合わないように、メイン流路41aとファイナル流路42aとを仕切っている。
メイン流路41aに流入した被濾過液は、メインフィルター41に浸入する。このとき、メインフィルター41の外周側面を螺旋状で等間隔に取り巻いている上流部21aによって、被濾過液の圧力は分散されて、メインフィルター41に均一に掛かる。しかも上流部21aがメイン流路41aよりも小さな容積を有しているので、この容積差によって被濾過液は、高圧力になり付勢される。それによって被濾過液は、メインフィルター41内に一気に拡散して濾過される。その結果メインフィルター41は、均一に濡らされて、濾過の不均一を生じない。被濾過液は、高い圧力を保持しつつ、等間隔な螺旋状の下流部21bを流れるので、ファイナルフィルター42に均一に圧力が掛かる。それにより、ファイナルフィルター42にも濾過の不均一を生じさせない。
多段階の濾過をすることができるフィルターエレメント10は、螺旋状の流路溝21を有していることによって、被濾過液がメインフィルター41及びファイナルフィルター42の全体を万遍なく均一に流れるので、局所的な目詰まりを生じさせない。その結果、メインフィルター41及びファイナルフィルター42のフィルター寿命を長くすることができ、フィルターエレメント10の交換頻度を低減することができる。さらに、フィルターエレメント10の外寸を、標準的に採用されている外径60〜75mm、長さ約250mmとすることができる。それによって、フィルターエレメント10は、既に送液ラインに設置されているハウジングに変更を施すことなくセットすることができる。
凸部22は、メインフィルター41の内空側から外周側へ向かって流れる被濾過液の圧力によってメインフィルター41の外周側面が膨らまないようにしている。それにより、上流部21aがメインフィルター41によって塞がれてしまうことを防止している。凸部22は、メインフィルター41を構成している不織布が伸縮又は破断し、除粒子性能のような濾過性能が劣化することを防止している。
フィルターエレメント10に流入する被濾過液を止めた直後や、被濾過液を律動的に流したとき、被濾過液及び濾過済液の逆流によって逆圧が発生する。逆圧は、ファイナルフィルター42の濾材をその内空側から外周側へ押し広げる。凸部22は、この逆圧によってファイナルフィルター42の外周側面が膨らむことを防止している。このように外筒20は、液体を流す機能を有している流路溝21と、メインフィルター41及びファイナルフィルター42の外周側面を支持する機能を有している凸部22とを内壁面で有していることによって、異なる2つの機能を両立させている。
このように、フィルターエレメント10は、濾過の不均一を生じさせない流路溝21と、複数のフィルターが一体化したフィルター連結体40とを有していることによって、早期の目詰まりを防止し、それの交換頻度を相乗的に低減している。交換頻度の低減によって、廃棄されるフィルターエレメントの数を減じることができるので、フィルターエレメント10は、廃棄物の減量にも資する。
外筒20の内壁面における流路溝21の疎密及び長さは、流路溝21を形成している螺旋の傾斜角及び螺旋の本数によって適宜設定される。例えば、1本の螺旋を等間隔に設ける場合、傾斜角(仰角)θを3°以上かつ45°以下のように緩やかに設定すると、流路溝21は密に形成される。一方、傾斜角(仰角)θを45°を超えて67°以下のように急に設定すると疎に形成される。流路溝21は、密に形成されると、その長さが長くなり、メインフィルター41及びファイナルフィルター42を被濾過液で十分に濡らすことができる。また、凸部22も密に形成される。それにより、各フィルター41,42にそれらの内空から外周へ向かって圧力が掛かった場合、密な凸部22は、この圧力を分散させながらフィルター連結体40を支持する。その結果、各フィルター41,42の濾材が伸長又は破断したり、流路溝21を塞いだりすることをより確実に防止することができる。
フィルターエレメント10は、次のようにして製造される。先ず、外筒20、第1エンドキャップ31、コア32、第2エンドキャップ34、及びジョイントプレート33を射出成形によって成型する。この際、外筒20の内壁面で凸部22及び螺旋状の流路溝21を模る雄型金型を、外筒20又は雄型金型を回転させながら抜く。次いでシート状の不織布である濾材をプリーツ折りし、円筒形状に成形してから端部同士を貼り合わせてメインフィルター41及びファイナルフィルター42を成形する。コア32をメインフィルター41の内空に挿入した後、メインフィルター41の下端面とジョイントプレート33の上面とを接合する。コア32をファイナルフィルター42の内空に挿入した後、ファイナルフィルター42の上端面とジョイントプレート33の下面とを接合してフィルター連結体40を得る。フィルター連結体40を外筒20に挿入する。フィルター連結体40及び外筒20の上端面に第1エンドキャップ31を、それの下端面に第2エンドキャップ34を接合する。次いで筒口35の窪みにOリング36を嵌めて、フィルターエレメント10が完成する。フィルターエレメント10は、包装袋に封入されて搬送に供される。
各部材の接合及び濾材の貼り合わせは、接合部をヒーター等で加熱することによって溶融させて接合する熱溶着によって行うことができる。熱溶着の他にもレーザー照射、赤外線照射又は超音波振動で接合部を加熱溶融させることによって接合してもよいし、接着剤による接着で接合してもよい。また、筒口35を第2エンドキャップ34と別体に成型してから第2エンドキャップ34に接合してもよい。また、各部材同士は嵌合や螺合によって接合されていてもよい。それによれば、簡易にフィルターエレメント10を製造することができる。
各部材を、射出成形の他、切削加工によって成形してもよい。
外筒20の肉厚は、内壁面で流路溝21が窪んでいるので、不均一である。そこで、凸部22に対向している外筒20の外周面は、外筒20の肉厚が均一になるように、凹んでいることが好ましい。それによれば、射出成形時に内部にボイドが発生したり、冷却時に収縮して凹む所謂ひけが発生したりすることを抑制できる。また、原材料の使用量を低減したり、成型時間を短くしたりすることができるので、フィルターエレメント10を、低コストで製造することができる。
メインフィルター41及びファイナルフィルター42の種類は、プリーツフィルターの他、不織布等が巻かれたロールフィルター、糸等が巻かれた糸巻フィルターであってもよく、互いに同一でも異なっていてもよい。フィルターの種類は、濾過すべき液体の種類・粘度・温度、取り除く粒子や不純物の種類・性状等に応じて、適宜選択される。
フィルターエレメント10の使用方法を、説明する。フィルターエレメント10は、ハウジング50にセットされて使用される。このハウジング50として、既存のものを使用することができる。筒口35をアウトレット54bに挿し込んでフィルターエレメント10を固定する。マニホールド54のフランジにガスケット52を嵌める。シェル51をフィルターエレメント10に被せる。シェル51のフランジと、マニホールド54のフランジとをクランプバンド53で液密に接合する。次いで、ベントプラグ51bが緩んで、エアベント51aが開放されていることを確認する。インレット54aに繋がっている外部管路61の先のバルブ(不図示)を開いて被濾過液をハウジング50内に流入させる。ハウジング50内に溜まっていく被濾過液により、エアベント51aから空気が追い出され、それによってエア抜きがなされる。被濾過液がエアベント51aから流出し始めたところで、ベントプラグ51bを締める。
被濾過液は、フィルターエレメント10とシェル51との間の流路を流れ、開口部31aを経てメイン流路41aに流入する。被濾過液は、メインフィルター41の内周側面から浸入する。被濾過液は、メインフィルター41の外周側面へ向かって流れ、一度目の濾過がなされて上流部21aに到達する。被濾過液は、上流部21aから下流部21bに向かって流れる。下流部21bを流れる被濾過液は、ファイナルフィルター42の外周側面からファイナルフィルター42内へ浸入する。被濾過液は、ファイナルフィルター42を通過し、二度目の濾過がなされて、ファイナル流路42aに到達する。濾過済液は、筒口35を経て、アウトレット54bへ流れる。
図2に示す矢印の方向と逆方向で、フィルターエレメント10に被濾過液を流してもよい。フィルターエレメント10は、外部管路61を流れる被濾過液及び濾過済液の流れ方向に合わせて濾過をすることができる。
フィルターエレメント10の交換は、以下のように行う。インレット54aに繋がっている外部管路61の先のバルブ(不図示)を閉じ、ハウジング50内に流入する被濾過液を止める。ベントプラグ51bを開けてハウジング50内に空気を導入し、溜まっている被濾過液及び濾過済液をインレット54a及びアウトレット54bに流す。必要に応じてドレン55のプラグを開放することによって、そこからハウジング50内に溜まっている被濾過液を排出してもよい。次いでクランプバンド53を外してシェル51を取り外す。使用済のフィルターエレメント10を取り外し、所定の手順に従って廃棄する。ハウジング50に、新たなフィルターエレメント10をセットする。
フィルターエレメント10は、複数のフィルターが連結されたフィルター連結体40を有しているので、一度の交換作業で複数のフィルターを同時に交換することができる。このことは、フィルターエレメント交換の都度、送液ラインのバルブが締められることで発生する送液停止の頻度を低減させる。それによって、送液ラインの稼働率を向上させることができる。
図3にフィルターエレメント10に用いられる外筒20の別な実施形態を示す。外筒20は、螺旋状の流路溝21を2本有するものである。流路溝21の2本は、夫々平行して、外筒20の内壁面で窪んでいる。1本の流路溝の行程と、2本の流路溝の行程の合計とが等しい場合、後者の流路溝1本当たりの行程は、前者の行程よりも短い。そのため、被濾過液を速やかに流すことができる。なお複数の流路溝21は、図4に2本の例を示したが、これに限定されず、3本以上であってもよい。
図4にフィルターエレメント10に用いられる流路溝21の別な実施形態を示す。外筒20は、その内壁面で流路溝21及び凸部22を有していない。流路部材23は、円筒形状であって、その側壁を螺旋状の流路溝21が貫通しているものである。流路部材23は、外筒20に挿入され、外筒20の内壁面へ熱溶着や接着剤等により固定される。フィルター連結体40は、流路部材23の内空に挿入される。それにより流路溝21は、フィルター連結体40の外周側面を取り巻くことができる。
図5にフィルターエレメント10に用いられる流路溝21の別な実施形態を示す。内筒24は、半円筒形状に2分割されており、それらの内壁面同士を対向させて組み合わされることによって、全体として円筒形状をなしている。内筒24の内壁面で流路溝21が窪んでいる。流路溝21は、2つの内筒24が組み合わされることによって、1本の螺旋状に繋がるように設けられている。組み合わされた内筒24の外径は、外筒20の内径よりもわずかに小さい。内筒24は、組み合わされた状態で外筒20に挿入されて、外筒20の内壁面へ熱溶着や接着剤等により固定される。フィルター連結体40は、内筒24の内空に挿入される。それにより流路溝21は、フィルター連結体40の外周側面を取り巻くことができる。なお内筒24は、2分割に限られず、3分割以上であってもよい。
フィルターエレメント10が、図4に示す流路部材23又は図5に示す内筒24を有していると、外筒20の成型時、雄型金型を抜く際、外筒20又は雄型金型を回転させる必要がないのでフィルターエレメント10を速やかに製造することができる。また、流路溝21を形成するのに、金型の構造を簡素にできるのでフィルターエレメント10を安価に製造することができる。さらに、外筒20と流路溝21とを別体で成型することにより、流路溝21が雄型金型を回転させて抜くことのできる形状に限られず、所望の形状とすることができる。しかも、流路部材23又は内筒24を外筒20に固定することによって、外筒20の内部及び外部を流れる被濾過液及び濾過済液の圧力に十分耐えうる強度を、フィルターエレメント10に付与することができる。
流路部材23又は内筒24と、外筒20との固定は、熱溶着や接着剤による他、図6に示すように、これらの嵌め合わせによってなされていてもよい。同図に示す内筒24は、樹脂で成形されていることにより、わずかの可撓性を有している。外筒20の内壁面の上端で嵌合部25a、下端で係止部26aが夫々窪んでいる。外筒20は、嵌合部25a及び係止部26aを、対称の位置に夫々2つずつ有している。内筒24の外壁面の上端で当接部25b、下端で爪26bが夫々出っ張っている。爪26bは、外筒20の下端から上端に向って漸次高くなる傾斜を有している。2つが組み合わされた内筒24は、嵌合部25aに当接部25bが嵌り、かつ係止部26aに爪26bが嵌るように位置決めされつつ外筒20に挿入される。このとき内筒24が有する可撓性によってわずかに撓むことと、爪26bの傾斜が外筒20の上端開口周縁に当接して滑らかに摺動することとにより、内筒24は、外筒20にスムーズに挿入される。内筒24が外筒20にすべて挿入されると、係止部26aの側壁に爪26bが引っ掛ると同時に、嵌合部25aと当接部25bとの側壁同士が当接する。これらによって、内筒24は、外筒20に嵌まって固定される。内筒24がこのような嵌め合わせによって外筒20に固定されていると、溶着工程や接着工程が不要であるので、製造工程を簡素なものとすることができる。なお、同図に内筒24を示したが、流路部材23もこれと同様に固定することができる。
嵌合部25a及び係止部26aは、外筒20の開口周縁に、連続して周設されていてもよい。それによれば、内筒24を位置決めすることなく、外筒20に挿入することができる。
図7に内筒24の内壁面で窪んだ流路溝21の別な実施形態を示す。同図は、半円筒形状である内筒24の一方のみを示し、組み合わされる同形状の他方を省略している。螺旋状の流路溝21は、同図(a)に示すように斜歯歯車状であってもよい。流路溝21の形状は、螺旋状の他に同図(b)に示す直線状、(c)に示す井桁格子状、(d)に示す斜方格子状、(e)に示す屈曲状を挙げることができる。流路溝21はこれらが組み合わされたものであってもよい。
また流路溝21の容積は、図2に各流路41a,42aの合計より小さいものを示したが、これに限定されずこれらと同一又はこれらより大きくてもよい。
このように流路溝21の形状及び容積は、流す液体の種類、流量、固形分比率、及び粘度、含有する粒子の性状や粒径、メインフィルター41及びファイナルフィルター42の種類や目の細かさのような種々の要素に加えて、各フィルター41,42に掛かる液体の圧力が均一になるように適宜設定される。
図8にフィルターエレメント10の別な実施形態を示す。第1エンドキャップ31の開口部31aの形状が異なる以外、フィルターエレメント10,10aは、図1に示したものと同様である。フィルターエレメント10,10aの開口部31aは、その周縁でメイン流路41a内に向かって突き出したガイド31cを有している。フィルターエレメント10は、筒口35が他のフィルターエレメント10aのガイド31cに嵌められることによって、他のフィルターエレメント10aに連結させることができる。Oリング36は、それの内周方向に潰されて変形していることによって、ガイド31cの内周壁面に押し付けられ、フィルターエレメント10,10a同士の連結が容易に解除されないようにしている。連結されたフィルターエレメント10,10aは、ハウジング50にセットされて使用される。
このようにフィルターエレメント10は、第1エンドキャップ31が開口部31aでガイド31cを有していると、他のフィルターエレメント10aに連結することができ、この連結によって、簡易に濾過の回数を増やすことができる。その結果、濾過の回数を増やすのに、送液ラインを寸断して新たなハウジング50を設ける必要がなく、省スペースに資するので、濾過に要するコストを削減することができる。
なお、フィルターエレメント10の第2エンドキャップ34と、他のフィルターエレメント10aの第1エンドキャップ31との互いに対向している面同士が、接合されることにより、フィルターエレメント10,10a同士が連結されてもよい。それによれば、フィルターエレメント10,10a同士を強固に連結させることができる。
また、フィルターエレメント10の第2エンドキャップ34及び他のフィルターエレメント10aの第1エンドキャップ31に代え中央部が貫通したドーナツ形状の連結板(不図示)を介して、フィルターエレメント10,10a同士が予め連結されていてもよい。この場合、フィルターエレメント10の外筒20、コア32、及びファイナルフィルター42の各下端面が、連結板の上面に接合され、他のフィルターエレメント10aの外筒20、コア32、及びメインフィルター41の各上端面が、連結板の下面に接合される。ドーナツ形状の連結板の内空を経て、フィルターエレメント10によって濾過された被濾過液が、他のフィルターエレメント10aのメイン流路41aに流れ込む。このように、フィルターエレメント10,10a同士が、連結板によって予め連結されていると、連結部分の各エンドキャップ31,34及びOリング36が不要になるので部材の数を減じることができるとともに、それらの部材を接合したり取り付けたりする手間を省くことができる。
図9にフィルターエレメント10の別な実施形態を示す。フィルターエレメント10は、開口部31aと環内部34aとに夫々コネクタ37が螺合しているものである。コネクタ37は、シリコーンチューブのような外部管路61に接続されることによって、フィルターエレメント10に外部管路61を直接繋げることができるものである。それによってフィルターエレメント10を、所謂カプセル型フィルターとして使用することができる。カプセル型フィルターは、使用時にハウジング50を必要とせず、実験室等で小規模の濾過を行う際に用いられるものである。
このフィルターエレメント10は、容積の小さい流路溝21を有しているので、チューブポンプによる送液のように、被濾過液が低圧力で流入してもその圧力を高めることができる。それにより、フィルターエレメント10内に流入した被濾過液は、メインフィルター41及びファイナルフィルター42を十分に濡らすことができる。さらにフィルターエレメント10は、カプセル型フィルターとして用いられた場合、流路の容積が大きい従来のカプセル型フィルターに比較して、使用後廃棄されるフィルターエレメント10内に残存する被濾過液及び濾過済液の量を少なくすることができる。なおコネクタ37は、第1エンドキャップ31及び第2エンドキャップ34に、夫々接合されていてもよいし、夫々一体に成形されていてもよい。
このフィルターエレメント10からコネクタ37を取り外し、環内部34aに別体で成型された筒口35を螺合して取り付けることによって、工場等の送液ライン中に設置されたハウジング50にセットして使用することもできる。
このように、フィルターエレメント10は、部材を取り外したり、付け替えたりするだけの簡易な操作で、カプセル型フィルターとして実験室で用いることもできるし、工場等の送液ラインで用いることもできる。
図10にフィルターエレメント10の別な実施形態を示す。フィルターエレメント10は、フィルター連結体40がメインフィルター41、ファイナルフィルター42、及びプレフィルター43の3体を有していることによって、フィルターエレメント10内で3回の濾過ができるものである。第1ジョイントプレート33aは、その上面でプレフィルター43の外周側面を取り囲んでいる外筒20a、プレフィルター43の内空に挿入されているコア32、及びプレフィルター43の下端面に接合し、その下面でメインフィルター41及びファイナルフィルター42の外周側面を取り囲んでいる外筒20、メインフィルター41の内空に挿入されているコア32、及びメインフィルター41の上端面に接合している。第1ジョイントプレート33aは、中央部が貫通しており、プレ流路43aとメイン流路41aとを連通させているとともに、流路溝21の上流部21aと中流部21cとを仕切っている。第2ジョイントプレート33bは、その上面でメインフィルター41の下端面、及びメインフィルター41の内空に挿入されているコア32と接合し、下面でファイナルフィルター42の上端面、及びファイナルフィルター42の内空に挿入されているコア32と接合している。第2ジョイントプレート33bは、メイン流路41aとファイナル流路42aとを仕切っている。
第1エンドキャップ31は開口を有していない。第1エンドキャップ31の周縁と外筒20の内壁面との空間は、側溝31bである。側溝31bは、流路溝21の上流部21aに繋がっている。
このフィルターエレメント10は、ハウジング50にセットされて使用される(図2参照)。被濾過液及び濾過済液は、図10に示す矢印方向に流れる。ハウジング50内に流入した被濾過液は、側溝31bに流入し、上流部21aを流れて、プレフィルター43内に浸入する。プレフィルター43によって、被濾過液に一度目の濾過が行われる。プレフィルター43によって濾過された被濾過液は、メイン流路41aに向かってプレ流路43aを流れ、メインフィルター41に浸入する。メインフィルター41によって、被濾過液に二度目の濾過が行われる。メインフィルター41によってさらに濾過された被濾過液は、下流部21bへ向かって中流部21cを流れ、ファイナルフィルター42に浸入する。ファイナルフィルター43によって、被濾過液に三度目の濾過が行われる。濾過済液は、ファイナル流路42aから筒口35を経てフィルターエレメント10外へ流出する。
このようにフィルターエレメント10は、フィルター連結体40を構成するフィルターを任意の数にすることができる。それによって、ひとつのフィルターエレメント10で多段階の濾過をすることができる。その例として次のような濾過が挙げられる。プレフィルター43の濾材が太い繊維径の不織布であることによって、まず10μm以上の粒径の粒子を除去する濾過が行われる。メインフィルター41の濾材が細い繊維径の不織布であることによって、次に5μm以上の粒子を除去する濾過が行われる。ファイナルフィルター42の濾材がメインフィルター41の濾材よりもさらに細い繊維径の不織布、又は微細な多孔膜であることによって、最後に0.8μm以上の粒子を除去する濾過が行われる。
この例において、濾過済液中に5μm未満の粒子を、濾過済液中に残留させる場合、メインフィルター41と、ファイナルフィルター42とに、同一の濾材を用いてもよい。それによれば、メインフィルター41で濾過された液体中に、万一不要な5μm以上の粒子が存在している場合、この粒子は、ファイナルフィルター42によって除去される。それによりフィルターエレメント10は、不必要な粒子を、被濾過液中から確実に除去することができる。
このように、種々の特性を有するフィルターの組み合わせによってフィルター連結体40が構成されていると、液体の性状等に合わせた所望の濾過をすることができる。これに加えて流路溝21が濾過の不均一を生じさせず、フィルターが早期に目詰まってしまうことを確実に防止している。
さらにこのフィルターエレメント10によれば、上流部21a、中流部21c、及び下流部21bを、夫々同一又は異なる形状の流路溝21とすることができる。それにより濾過の進行度によって変化する液体の性状等に応じて、流路溝21の形状を、適宜設定することができる。
フィルターエレメント10は、フィルター連結体40が2体のフィルターから構成される例を図1に、3体のフィルターから構成される例を図10に示したが、これらに制限されず、4体以上であってもよい。さらに、フィルター連結体40を構成する各フィルターは、その長さ、内外径差、及び濾材の種類等を必要に応じて任意に設定することができる。
フィルターエレメント10は、多段階の濾過、分級及び/又は精製を要する液体に好適に用いられる。このような液体として、例えば水・飲料・液状医薬のような水系液体、食用油・灯油・ガソリン・潤滑油・有機溶剤・樹脂バインダー・レジストのような有機系液体、スラリー、レジスト、金属ペースト、ガラスペースト、塗料、顔料及び染料が挙げられる。
外筒20、流路部材23、内筒24、第1エンドキャップ31、コア32、ジョイントプレート33、第2エンドキャップ34、及びコネクタ37の材料は、液体への耐性や用途に応じて選択される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体のようなフッ素樹脂;ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル;ポリメタクリル酸メチルのようなアクリル樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニルエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアセタール;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアミド;塩化ビニル;金属が挙げられる。
各フィルター41,42,43の濾材として、スパンボンド、メルトブローン、及びエレクトロスピニングによって製造された不織布が好適に用いられる。さらにこれらによって製造された不織布同士が、サーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ、及びスパンレースによって接着されたものを用いてもよい。濾材は、不織布の他、織布、ネット、撚糸・不撚糸のような糸、紙、多孔膜・活性炭・珪藻土・ゼオライト・セラミックのような多孔体、パーライトのような発泡体、粒状活性炭・イオン交換樹脂のような粒状体を用いることができる。不織布、織布、多孔膜、ネット、撚糸、及び不撚糸の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン;ナイロン、アラミドのようなポリアミド;ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル;ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニルサルフォンのようなサルフォン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリビニルアルコール;アクリル;ポリビニリデンジフロライド;ビスコースレーヨン;コットンの他、カーボン、ガラス、ステンレスのような無機材料が挙げられる。
Oリング36の材料は、ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、及び水素化ニトリルゴムのようなJIS B 2410に準拠した材料;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、パーフルオロエラストマー;四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)又は四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で被覆されたフッ素ゴムが挙げられる。なお、Oリング36に代えてVリング又はUリングを用いてもよい。