JP6153505B2 - マイクロ波誘電発熱体及びそれによる溶着方法 - Google Patents

マイクロ波誘電発熱体及びそれによる溶着方法 Download PDF

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Description

本発明は、一対の熱可塑性樹脂成型体間に介在させ、マイクロ波を照射して発熱させることにより、一対の熱可塑性樹脂成型体を溶融して溶着するマイクロ波誘電発熱体に関するものであり、特に、融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる熱可塑性樹脂成型体同士であっても均一な溶着が可能なマイクロ波誘電発熱体及びそれによる溶着方法に関するものである。
同種の熱可塑性樹脂部材や、融点(溶融温度)の異なる異種材料からなる異種(異材質)の熱可塑性樹脂部材を接合したい場合、例えば、接着剤、熱かしめ及びアンダーカット処理、溶着等による接合方法が考えられる。
接着剤を使用する場合には、接着剤の塗布工程や溶剤の揮発工程を要するので、時間がかかるうえ、接着乾燥後も揮発性有機物質(VOC)が発生したり、焼却によって有毒ガスが発生したりする環境問題が生じる。
また、熱かしめ等により接合させる一対の樹脂部材のうちの一方の樹脂部材を溶かした後、アンダーカット処理を行うことによって一体化した樹脂からなる接合部材を得る場合、アンダーカット処理加工や、そのアンダーカット処理加工の加工屑等の除去工程を要するため、生産性が良くない。
これに対し、溶着は、原理的には接合面(溶着面)を加熱することで一対の樹脂部材を溶融させて接着させる技術で、短時間で一体化した熱可塑性樹脂からなる接合部材を得ることが可能であり、例えば、レーザ溶着、超音波溶着、誘電加熱溶着、熱板溶着、熱風溶着、振動溶着等の溶着方法が知られている。
しかし、例えば、PPS(融点:280℃)とPP(融点:180℃)のような融点の異なる異種材料の樹脂部材相互を溶着しようとする場合や、同種材料の樹脂部材であっても溶着部位の形状が異なることにより溶着部位を溶融させるのに必要な熱量(以下、溶融熱量と呼ぶ)が異なる樹脂部材相互を溶着しようとする場合、各樹脂部材に適した溶着温度に制御するのは容易でなく、接合条件が制限され易い。接合条件が適切でないと、仮に接合できても融点が低い方の樹脂部材や溶着部位の溶融熱量が小さい方の樹脂部材では、過加熱により形状が保持できず強度が低下することがあり、反対に融点が高い方の樹脂部材や溶着部位の溶融熱量が大きい方の樹脂部材では、加熱不足で接合強度(溶着強度)が不足する事態が生じる。このため、溶着させる樹脂部材の融点が異なったり、溶着部位の溶融熱量が異なったりする場合には、信頼性の高い均一な溶着が困難であった。
ここで、異種の材料同士を接合する技術について、特許文献1に、断熱材を介在させて上下に配置した2枚の熱板の温度をそれぞれ制御したのち、融点が異なる各被溶着部材の溶着面を各熱板で輻射加熱することにより、それぞれの被溶着部材の溶着面を同時に溶着温度に到達させ、このタイミングで前記熱板を被溶着部材間から逃し、被溶着部材相互の間隔を狭めて被溶着部材の溶融した溶着面同士を圧着し溶着する熱板による溶着方法が開示されている。
この特許文献1に記載の技術によれば、上下に配置された2枚の熱板を用い、それぞれの被溶着部材が同時に溶着温度に到達するように輻射熱加熱することにより、溶融温度の異なる異種材料をそれぞれ最適な温度で溶着することができ、また、非接触で溶着部材の接合表面を溶融するため、接触式加熱で多発する溶融部分の糸引きや汚れなどが無く、外観もきれいに溶着できるとしている。
また、特許文献2には、レーザ光を透過する第1部材とレーザ光吸収率を60%以上に設定した第2部材との異種材料間に、レーザ光吸収率を40%以上60%以下に設定した特定のエラストマーシート等からなる接合用中間部材を挟み、第1部材側からレーザ光を照射することによってエラストマーシートを加熱して溶融又は軟化させ、異種材料の第1部材及び第2部材を接合する方法が開示されている。
この特許文献2によれば、レーザ光を吸収させる接合用中間部材を用い、更に第2部材のレーザ光吸収率を所定値に設定していることで、接合用中間部材における第1部材側の発熱量と第2部材側の発熱量とをうまくバランスさせることができて、接合用中間部材の第1部材側及び第2部材側の両方を適度に軟化・溶融させることができるので、第1部材及び第2部材の接合強度を十分に高めることができるとされている。また、エラストマーシート等の接合用中間部材の介在によって、接合面(溶着面)をレーザ光で集中的に加熱することに起因する接合界面での応力発生を低減できるとしている。
特開2012−116062号公報 特開2012−076418号公報
しかしながら、特許文献1のような熱板による溶着では、熱板によって広範囲な熱影響が発生するため、局部的な溶着は困難であり、例えば、内部部品が取付けられた樹脂部品等においてその内部部品に影響を与えることなく溶着するのは難しく、また、複雑な内部形状を有する接合面においては接合精度が悪くなることから、溶着可能な樹脂部材や溶着部位の形状の自由度が制限される。また、材料全体を溶融させるため溶着部にバリが発生しやすい。更に、外部加熱を利用して熱板を加熱させ、加熱した熱板の輻射熱によって被溶着部材を加熱するため、加熱効率が悪くて加熱時間がかかり、生産効率が低い。
これに対し、特許文献2のようなレーザ溶着では、レーザ光によるビームが収束して局部的に発熱させるスポット溶着が可能であるが、接合面全面を加熱するにはスキャンさせる必要があることから、作業効率が低くなる。そのうえ、凹凸形条や曲線形状等の複雑な内部形状の接合面を接合する場合には、その形状に影響されてレーザ光の吸収率が変化することから均一かつ高精度な加熱、溶着が難しい。また、溶着させる一方の構造体がレーザ透過性を有する必要があり、接合対象である被溶着部材の組合せが限定されるのに加え、レーザ光透過性の部材をレーザ光の照射側に配置しなければならず、製造工程上の制約もある。更に、3種以上の樹脂成型部材を一度に溶着するのも困難である。
そこで、本発明は、融点が異なる熱可塑性樹脂成型体相互や、溶着部位の溶融熱量が異なる熱可塑性樹脂成型体相互であっても、各熱可塑性樹脂成型体の溶融制御が可能で信頼性の高い均一な溶着ができ、溶着可能な熱可塑性樹脂成型体の溶着温度の適用範囲を拡大できるマイクロ波誘電発熱体及びそれによる溶着方法の提供を課題とするものである。
請求項1の発明のマイクロ波誘電発熱体は、融点及び/または溶着部位(溶着させる接合部)の溶融熱量が異なる一対の熱可塑性樹脂成型体の間に配置され、マイクロ波の照射による誘電加熱で発熱して前記一対の熱可塑性樹脂成型体を溶着するマイクロ波誘電発熱体であって、前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつフェライトと、前記フェライトを分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとが混合され圧縮成形されてなり、前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの一方の融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の樹脂成型体の融点以上に昇温したのち、所定の発熱温度で昇温が停止する高温発熱部と、前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつフェライトと、前記フェライトを分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとが混合され圧縮成形されてなり、前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの他方の融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が小さい方の樹脂成型体の融点以上に昇温したのち、前記高温発熱部よりも低い所定の発熱温度で昇温が停止する低温発熱部とを具備し、前記誘電加熱によって発熱し異なる発熱温度で昇温停止する前記高温発熱部と前記低温発熱部において、前記高温発熱部に前記低温発熱部を形成するフェライトよりも昇温停止温度が高いフェライトを用い、前記低温発熱部に前記高温発熱部を形成するフェライトよりも昇温停止温度が低いフェライトを用いたものである。
ここで、マイクロ波誘電発熱体の高温発熱部と低温発熱部は、使用する材料の種類、配合量、寸法形状等を変えることによって、発熱特性を制御して異なる所望の発熱温度に発熱可能としたものである。
なお、溶着させる一対の熱可塑性樹脂成型体は、熱可塑性樹脂を母材としていればよい。
また、本発明のマイクロ波誘電発熱体は、前記高温発熱部と前記低温発熱部が、前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材と当該マイクロ波吸収材を分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとを混合して圧縮成形することによって所定形状に形成されたものである。
上記マイクロ波吸収材は、マイクロ波の照射により所定の発熱温度まで昇温すると当該昇温が停止される材料である。このときの昇温が停止する発熱温度は、特定の一点の昇温停止温度のみを意味するものではなく、マイクロ波の照射量の変化に対して昇温が停止される前であっても、温度変化の目安としては、例えば、常温からの変化が略1/10以下に減少した温度変化の状態が得られれば、それをもって「昇温が停止」と見做すことができる。つまり、マイクロ波吸収材は、マイクロ波の照射により所定の発熱温度まで温度上昇し、マイクロ波の照射を継続しても当該昇温が停止したと見做すことができる材料としたものである。
前記高温発熱部と前記低温発熱部が、それぞれ所定の発熱温度で昇温停止する特性を有すればよく、マイクロ波吸収材としては、例えば、フェライト粉等のキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC(Positive Temperature Coefficient)特性をもつ材料が使用される。
また、上記樹脂バインダーとしては、マイクロ波吸収材を分散させて圧縮成形自在とするものであればよく、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が使用される。
請求項2の発明のマイクロ波誘電発熱体は、前記高温発熱部と前記低温発熱部が断面2層構造に形成されてなるものである。
請求項の発明のマイクロ波誘電発熱体は、請求項1または請求項2の構成において、前記高温発熱部と前記低温発熱部の熱容量を同一としたものである。
ここで、上記熱容量は、高温発熱部や低温発熱部の寸法形状、高温発熱部や低温発熱部を形成するマイクロ波吸収材の含有率、マイクロ波の照射条件等によって決定される。
請求項の発明のマイクロ波誘電発熱体は、請求項1または請求項2の構成において、前記高温発熱部の熱容量を前記低温発熱部の熱容量よりも小さくして、高温発熱部の昇温速度を速くするものである。
請求項の発明のマイクロ波誘電発熱体による溶着方法は、融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる一対の熱可塑性樹脂成型体の間に、融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる一対の熱可塑性樹脂成型体の間に、マイクロ波の照射による誘電加熱によって発熱するマイクロ波誘電発熱体を配置し、前記マイクロ波の照射により前記マイクロ波誘電発熱体の誘電加熱を行うと共に、前記一対の熱可塑性樹脂成型体を接合する方向に押圧力を加えて溶着するマイクロ波誘電発熱体による溶着方法であって、前記マイクロ波誘電発熱体は、前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつフェライトと、前記フェライトを分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとが混合され圧縮成形されてなり、前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの一方の融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の樹脂成型体の融点以上に昇温したのち、所定の発熱温度で昇温が停止する高温発熱部と、前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつフェライトと、前記フェライトを分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとが混合され圧縮成形されてなり、前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの他方の融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が小さい方の樹脂成型体の融点以上に昇温したのち、前記高温発熱部よりも低い所定の発熱温度で昇温が停止する低温発熱部とを具備し、前記マイクロ波の照射による誘電加熱によって発熱し異なる発熱温度で昇温停止する前記高温発熱部と前記低温発熱部において、前記高温発熱部に前記低温発熱部を形成するフェライトよりも昇温停止温度が高いフェライトを用い、前記低温発熱部に前記高温発熱部を形成するフェライトよりも昇温停止温度が低いフェライトを用いたものであり、前記高温発熱部を前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の熱可塑性樹脂成型体の溶着部位に接触させ、前記低温発熱部を前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が小さい方の熱可塑性樹脂成型体の溶着部位に接触させたものである。
なお、上記一対の熱可塑性樹脂成型体を接合する方向とは、対向する一対の熱可塑性樹脂成型体相互を接合する方向のことであり、一対の熱可塑性樹脂成型体の間に配置したマイクロ波誘電発熱体の厚みを少なくする方向のことである。
請求項1のマイクロ波誘電発熱体によれば、発熱温度が異なる高温発熱部と低温発熱部を具備する。
したがって、融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる溶着させる一対の熱可塑性樹脂成型体のうち、融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の熱可塑性樹脂成型体に高温発熱部を接触させ、この高温発熱部が所望の発熱温度(溶融温度と呼ぶこともある)に加熱されることで、融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の熱可塑性樹脂成型体を所望の溶融状態に制御できる。
一方で、融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が小さい方の熱可塑性樹脂成型体に低温発熱部を接触させ、この低温発熱部が所望の発熱温度に加熱されることで、融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の熱可塑性樹脂成型体を所望の溶融状態に制御できる。
これにより、融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる一対の熱可塑性樹脂成型体を結合して均一に溶着することができる。
このように、マイクロ波誘電発熱体が、発熱温度の異なる高温発熱部と低温発熱部を具備することで、溶着させる一対の熱可塑性樹脂成型体の各々は、マイクロ波誘電発熱体の高温発熱部または低温発熱部によって溶着部位の溶融温度(溶着温度)が容易に制御され、適当な加熱溶融が施される。したがって、加熱不足や過熱から生じる不具合を無くすことができ、信頼性の高い均一な溶着が可能となる。
更に、マイクロ波誘電発熱体は、マイクロ波をエネルギ源とした内部加熱によって発熱するものであることから、短時間で熱可塑性樹脂成型体を加熱することができ、加熱効率が良く、溶着の生産性を高めることができる。
また、本発明のマイクロ波誘電発熱体によれば、前記高温発熱部と前記低温発熱部は、前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材と当該マイクロ波吸収材を分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーを混合して圧縮成形することによって所定形状に形成されたものであるから、複雑な形状の一対の熱可塑性樹脂成型体を溶着させる場合でも、それら熱可塑性樹脂成型体の接合面に合わせた形状に設定することができ、確実な溶着が可能である。
請求項2のマイクロ波誘電発熱体によれば、前記高温発熱部と前記低温発熱部が断面2層構造に形成されてなるものであるから、マイクロ波誘電発熱体の全体の厚さを小さくできる。よって、請求項1に記載の効果に加えて、溶着後の一対の樹脂成型体相互間に間隙が残るのを抑制できて、高い接合強度を確保できる。また、バリの発生を抑制することができる。
請求項のマイクロ波誘電発熱体によれば、前記高温発熱部と前記低温発熱部の熱容量を同一としているから、低温発熱部が所定の発熱温度に達するまでは、高温発熱部と低温発熱部で昇温速度を同期化して温度差を小さくできる。これによって、高温発熱部と低温発熱部との境界域の温度差(熱膨張率の差)に起因する応力や歪みの発生を少なくできることから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、溶着部位に対する溶融性能を一定の範囲内に保持しやすくなり、溶着精度を向上させることができる。
請求項のマイクロ波誘電発熱体によれば、前記高温発熱部の熱容量を前記低温発熱部の熱容量よりも小さくしているから、高温発熱部の昇温速度を速くして、高温発熱部と低温発熱部がそれぞれ対応する熱可塑性樹脂成型体の溶融時間を同期化させることができる。これにより、同時期に所望の溶融状態として結合させることができるため、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、溶着時間の短縮を図ることができる。
請求項のマイクロ波誘電発熱体の溶着方法によれば、マイクロ波の照射による誘電加熱で発熱したときの発熱温度が異なる高温発熱部と低温発熱部を具備したマイクロ波誘電発熱体を、融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる一対の熱可塑性樹脂成型体の間に配置するが、この際、前記高温発熱部を前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの融点が高い方及び/または溶融熱量が大きい方の熱可塑性樹脂成型体の溶着部位に接触させ、前記低温発熱部を前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの融点が低い方及び/または溶融熱量が小さい方の熱可塑性樹脂成型体の溶着部位に接触させる。そして、マイクロ波の照射による誘電加熱でマイクロ波誘電発熱体を発熱させると共に、前記一対の熱可塑性樹脂成型体を接合する方向に押圧力を加える。
すると、一対の熱可塑性樹脂成型体の各々が、マイクロ波誘電発熱体の高温発熱部または低温発熱部によって所望の溶融状態に制御されて、一対の熱可塑性樹脂成型体は均一に溶着され、かつ、押圧力(加圧力)によって密に溶着接合される。
つまり、溶着させる一対の熱可塑性樹脂成型体が融点の異なる異種材料で形成されている場合や、融点は同じだが溶着部位の溶融熱量が異なる場合であっても、融点が高い方及び/または溶融熱量が大きい方の熱可塑性樹脂成型体の溶着部位にマイクロ波誘電発熱体の高温発熱部を配置し、融点が低い方及び/または溶融熱量が小さい方の熱可塑性樹脂成型体の溶着部位にマイクロ波誘電発熱体の低温発熱部を配置することで、各熱可塑性樹脂成型体の溶着部位を適切な溶融状態とすることができることから、信頼性の高い均一な溶着が可能となる。
そして、マイクロ波をエネルギ源とした内部加熱によって発熱するものであることから、短時間で熱可塑性樹脂成型体を加熱することができ、加熱効率が良く、溶着の生産性を高めることができる。
図1は本発明の実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体の形状の一例で、図1(a)は全体の平面図、図1(b)はその切断線X−Xによる断面図である。 図2は本発明の実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体によって凹凸条の組合せ構造の一対の樹脂成型体を溶着する事例の説明図で、図2(a)はマイクロ波誘電発熱体によって溶着させる一対の樹脂成型体の構造及びマイクロ波誘電発熱体の配置を説明する断面図、図2(b)はマイクロ波誘電発熱体によって凹凸条の組合せ構造の一対の樹脂成型体を加圧しながら溶着する状態を説明する断面図、図2(c)はマイクロ波誘電発熱体によって凹凸条の組合せ構造の一対の樹脂成型体を溶着した溶着後の状態を説明する断面図である。 図3は本発明の実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体によって溶着させる一対の樹脂成型体における接合部の変形例を説明する説明図で、図3(a)〜(f)は、6種類の接合部の断面形状の説明図である。 図4は本発明の実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体の発熱特性を検証した際の断面図の写真である。 図5は本発明の実施の形態の実施例に係るマイクロ波誘電発熱体によって凹凸条の組合せ構造の一対の樹脂成型体を溶着した状態を説明する断面図の写真である。 図6は本発明の実施の形態の実施例に係るマイクロ波誘電発熱体にマイクロ波を照射したときの高温発熱部及び低温発熱部の温度変化を測定したグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分を意味するから、ここではその重複する詳細な説明を省略する。
[実施の形態]
まず、本発明の実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1について、図1及び図2を参照して、説明する。
本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1は、部分によって異なる発熱特性を有し、マイクロ波の照射による誘電加熱で発熱して、部分ごとに異なる温度に上昇する。詳細には、所定温度まで昇温すると昇温が停止する温度特性を有し、昇温後の発熱温度を異なる温度に設定した2つの発熱部、即ち、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bを有したものである。
そして、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1は、図1(b)に示したように、所定の発熱温度で昇温が停止する高温発熱部1Aと、高温発熱部1Aの発熱温度よりも低い所定の発熱温度で昇温が停止する低温発熱部1Bとが断面2層構造に形成されて、マイクロ波誘電発熱体1の表裏で異なる発熱温度に設定可能としたものである。
なお、以下、発熱温度が低温発熱部1Bより高い発熱部を高温発熱部1Aとし、高温発熱部1Aよりも低い温度で昇温が停止し、発熱温度が高温発熱部1Aより低い発熱部を低温発熱部1Bとしている。
また、ここでは、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1によって溶着させる一対の熱可塑性樹脂成型体を、融点及び溶着部位の溶融熱量が異なる一対の樹脂成型体に特定して説明する。
そして、一対の熱可塑性樹脂成型体のうち、融点が高く(高融点側)、溶着部位の溶融熱量が大きい方(大溶融熱量側)の熱可塑性樹脂成型体を樹脂成型体aとし、融点が低く(低融点側)、溶着部位の溶融熱量が小さい方(小溶融熱量側)の熱可塑性樹脂成型体を樹脂成型体bとしている。また、樹脂成型体aの熱可塑性樹脂成型体と樹脂成型体bの熱可塑性樹脂成型体を特定しない両者の場合には、樹脂成型体a、bとしている。
なお、融点の高低(高融点・低融点)、及び、溶融熱量の大小(大溶融熱量・小溶融熱量)は、樹脂成型体aに対する樹脂成型体b、または、樹脂成型体bに対する樹脂成型体aの相対的な指標である。
本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1を構成する高温発熱部1A及び低温発熱部1Bは、マイクロ波の誘電加熱により、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bが接する一対の対応する樹脂成型体a,bの融点以上に昇温したのち、所定温度まで昇温すると昇温が停止するマイクロ波吸収材によって形成されている。
ここで、マイクロ波吸収材としては、キュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつ材料や、マイクロ波の照射による粒子の発熱量と粒子からの放熱量によって温度制御する材料等を用いることで、所定の発熱温度での昇温停止が可能となる。
キュリー温度を有する磁性特性とは、強磁性体から常磁性体に変化する転移温度を有し、所定の転移温度以上ではマイクロ波エネルギの吸収性能を支配する強磁性の性質が失われる特性を指し、キュリー温度を有する磁性特性をもつマイクロ波吸収材を使用することで、マイクロ波の照射により高温発熱部1A及び低温発熱部1Bが昇温した際に、キュリー温度以上では強磁性の性質が失われて、マイクロ波の吸収が停止し昇温し難くなり、所定温度で昇温が停止する。
また、PTC特性とは、温度の上昇に伴って抵抗値が増大する正の温度係数を有する特性を指し、このPTC特性を有するマイクロ波吸収材を使用することで、マイクロ波の照射により高温発熱部1A及び低温発熱部1Bは昇温と共に抵抗値が上昇して所定の抵抗値で平衡するため、温度が高くなると昇温し難くなり所定温度で昇温が停止する。特に、マイクロ波の誘電加熱によって所定温度に到達すると、それ以上のマイクロ波のエネルギを誘電体損失として吸収しなくなって誘電体損失が減少するから、所定の温度に到達するときの温度誤差が少ないものとなる。
なお、昇温が停止される所定温度とは、一定時間内における昇温変化が、実際には昇温が生じていて、その昇温の変化が略一定と見做すことができる温度とする。このときの昇温誤差は、それまでに誘電体損失として供給されたエネルギからすれば、僅かな誤差に過ぎないもので、溶着に影響を与えるものではない。
このようなキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつ材料としては、特定のフェライト材料や、PTサーミスタ等が挙げられ、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bの双方に異なる昇温停止温度特性を持たせることから、それぞれで、一対の樹脂成型体a,bに対応した所定の溶融温度(溶着温度)に維持できる昇温停止温度を有する材料が選択される。特に、フェライト材料では、例えば、成分、粉末の配合量、粒子の中位径の大きさ等を変化させることで容易に温度特性を設定できる。また、PTサーミスタでも、例えば、成分、粉末の配合量、粒子の中位径の大きさ、希土類の配合、SrやPbの配合量を制御することにより、容易に温度特性を設定できる。更に、所定の発熱温度で停止する方策として、マイクロ波の照射により発熱する発熱粒子の発熱量と発熱粒子からの放熱量によって温度制御する方法も挙げられる。その際、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bは、同種の材料を使用してもよいし、異種の材料であっても構わない。
このときの昇温停止温度、つまり発熱温度は、溶着させる一対の樹脂成型体a,bの形状や強度を維持できる温度が設定され、所望とする加熱時間、所望とする溶融温度(溶着温度)、溶着部位の形状や溶融状態、つまり溶融樹脂量や溶融熱量等を考慮して適宜設定されるが、通常、溶融させる一対の樹脂成型体a,bの各々に対応して、その各々の融点より50〜150℃高い温度に設定される。これによって、一対の樹脂成型体a,bを短時間で所望の溶融温度(溶着温度)に加熱して溶融状態とすることができ、かつ、所望の溶融樹脂量として過昇温による過剰な樹脂の溶融を防止できる。
そして、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1Aにおいては、マイクロ波の照射により、一対の樹脂成型体a、bのうちの融点が高く溶着部位の溶融熱量が大きい方の樹脂成型体aの融点以上に昇温したのちに所定の発熱温度で昇温停止することで、樹脂成型体aの溶着部位の溶融温度に対応した所定の溶融温度(溶着温度)に維持できる。一方、低温発熱部1Bでは、マイクロ波の照射により、一対の樹脂成型体a、bのうちの融点が低く溶着部位の溶融熱量が小さい方の樹脂成型体bの融点以上に昇温したのちに高温発熱部1Aよりも低い所定の発熱温度で昇温停止することで、樹脂成型体bの溶着部位の溶融温度に対応した所定の溶融温度(溶着温度)を維持できる。
即ち、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bは、融点及び溶着部の溶融熱量が異なる一対の樹脂成型体a,bのそれぞれの溶融温度に対応した所定の発熱温度を維持できる。これによって、一対の樹脂成型体a,bのそれぞれの溶融状態を容易に制御することが可能となる。
ここで、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1は、マイクロ波吸収材の含有率や、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bの厚み等の寸法形状によって発熱特性、例えば、熱容量等を任意に設定できる。
マイクロ波吸収材の配合量や、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bの寸法形状等を調節することによって、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの熱容量を同一とした場合には、低温発熱部1Bが対応する樹脂成型体bの融点に達し、更に所定の昇温停止温度になるまで、即ち、所定の発熱温度に達するまで、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bとで昇温速度を同期化させて温度差が小さい状態で昇温させることができる。これにより、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bとの境界域の温度差(熱膨張率の差)に起因する応力や歪みの発生が少なくなり、形状が一定に保持されやすくなり、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの発熱効率に変化が生じ難くて安定した発熱が得られる。したがって、溶着部位に対する溶融性能を一定の範囲内に保持することができて所望の溶融状態を得やすく、所望位置の溶着を容易に行うことができ、溶着精度を向上させることができる。
この際、昇温停止温度が低い低温発熱部1Bの昇温が先に停止し、低温発熱部1Bの昇温が停止した後も、高温発熱部1Aがその昇温停止温度に達するまでマイクロ波の照射が続けられるが、低温発熱部1Bが所定の発熱温度で昇温を停止する特性を有することで、高温発熱部1Aの昇温停止温度に達するまでマイクロ波の照射が続いても、過加熱によっての樹脂成型体bに対して過剰な溶融を起こすことなく、所望の溶融温度(溶着温度)が維持される。
また、マイクロ波吸収材の配合量や、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bの寸法形状等を調節することによって、高温発熱部1Aの熱容量を低温発熱部1Bの熱容量よりも小さくして、高温発熱部1Aの昇温速度を速くし、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bがそれぞれ対応する一対の樹脂成型体a,bの融点に到達するまでの時間を同期化させることも可能である。これにより、加熱時間の短縮化を図ることができ、溶着の生産性を向上させることができる。
なお、本実施の形態の高温発熱部1Aと低温発熱部1Bを形成するマイクロ波吸収材は粉末または粒子状等の固体が好ましく、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径(粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数または質量が全粉体の50%をしめるときの粒子径)が0.1〜500μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜30μmの範囲内であるものを使用するのが望ましい。該範囲内であれが、十分な発熱を確保でき、かつ、粒子に誘導される電気量、即ち、粒子の電荷量が小さいことで、放電の発生を抑制できる。
また、ふるい分け試験で測定した粒子径の値が3〜30μmの範囲内とすることもできる。なお、ふるい分け試験とは、JIS−Z−8801によって規定された目開きをもつ標準ふるいを用いて、測定対象となる粉末をふるい分けることによって粒度分布を測定する試験方法をいうものである。標準ふるいなどを用いて行う粒径、粒径分布を測定する方法のことである。粒径と、粒径分布の表現は、使用したふるいの目開き(μm)とふるい上残量(オーバサイズ)またはふるい下通過量(アンダーサイズ)の全体に対する比率で表される。
そして、樹脂バインダーによりマイクロ波吸収材を固めることで、溶着させる一対の樹脂成型体a,bの溶着部位の接合面の寸法形状に対応した所望の寸法形状に形成可能となる。
このときの樹脂バインダーとしては、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が使用できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂(EP)、フェノール樹脂(PF)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)、ジリアルフタレート樹脂(PDAP)等の使用が可能である。特に、エポキシ樹脂やフェノール樹脂は、接着性に優れるためマイクロ波吸収材と樹脂バインダーとの結合力を良好なものとすることができる。更に、樹脂バインダーとしての熱硬化性樹脂は、固形タイプ、液状タイプが使用できるが、液状タイプを使用すると、マイクロ波吸収材を均一に配しやすくなり形状形成も容易となる。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(ナイロン、芳香族ポリアミド等)、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等のエンプラや、スーパーエンプラとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアレート、液晶ポリマー、ポリアミドイミド等がある。
なお、マイクロ波吸収材を固める樹脂バインダーは、溶着性に影響を与えない限り、対応させる一対の樹脂成型体a,bを形成する樹脂と同種の樹脂材料であってもよいし、異種の樹脂材料であってもよく、更に、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bとで同一の樹脂バインダーを用いてもよいし、異なる樹脂バインダーであってもよい。樹脂バインダーを異にする場合には相互に結合できるものであることが条件となる。
また、樹脂バインダーは、通常、マイクロ波吸収材の総量に対して0.1〜50重量%混合されるが、それらの混合比は、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの発熱特性(熱容量、内部抵抗、発熱効率等)や、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの配置箇所や、厚さ・面積等によって決定される。
そして、本実施の形態においては、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bを形成するためのマイクロ波吸収材とそれを固める樹脂バインダーとを分散混合した2種類の複合材料を所定の金型に順次充填し、所定条件で圧縮することにより、図1(b)に示すような断面が2層構造の所定形状のマイクロ波誘電発熱体1を作製した。
このように作製したマイクロ波誘電発熱体1によれば、複雑な形状の一対の樹脂成型体a,bを溶着させる場合でも、それら一対の樹脂成型体a,bの接合部に合わせた複雑な形状に設定できることから、確実な溶着が可能となる。
なお、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1の形状は、一対の樹脂成型体a,bの接合部の形状に合わせた適宜形状とすることができる。
参考までに、マイクロ波誘電発熱体1の形状の一例を図1(a)に示す。図1(a)は全体を環状に形成した長円のマイクロ波誘電発熱体1である。環状にすることで電界が大きくなる先端部がなく、マイクロ波による誘電加熱中に放電が生ずるのを激減させることができるため、溶着時に火花放電等が発生し難くなる。また、溶着させる一対の樹脂成型体a,bの接合部に合わせ易くなり、気密性を確保して接合の信頼性が向上する。
また、マイクロ波誘電発熱体1の全体の厚さは、発熱効率や、溶着部位の接合面積等との関係によって決定され、0.1〜2.0mmの範囲内であるのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0mmの範囲内である。該範囲内であれば、取扱いが容易であるうえ、誘電加熱のばらつきが少なくて高温発熱部1A及び低温発熱部1Bのそれぞれで発熱温度を一様に制御することが容易にでき、更に、溶着後の樹脂成型体a,b間に間隙が残りにくくバリも発生し難いことから、安定した溶着が得られる。特に、図1(b)に示すような高温発熱部1Aと低温発熱部1Bが断面2層構造に形成されてなるマイクロ波誘電発熱体1においては、マイクロ波誘電発熱体1全体の厚さを小さくできることから、溶着後の樹脂成型体a,b間に間隙が残るのを抑制できて、高い接合強度を確保でき、また、バリの発生を抑制することができる。
なお、マイクロ波誘電発熱体1の全体が均一の厚みであってもよいし、全体が均一の厚みでなくてもよく、その機械的強度や、溶着させる一対の樹脂成型体a,bの接合面積等を考慮して、厚みの変化を持たせることもできる。
そして、マイクロ波誘電発熱体1を溶着させる一対の樹脂成型体a,bの接合部の寸法形状に沿った特定形状に形成した場合には、一対の樹脂成型体a,bの接合面にマイクロ波誘電発熱体1を短時間で設置することが可能であるうえ、複雑な形状の一対の樹脂成型体a,bに対しても確実に精度よく溶着ができる。
なお、一対の樹脂成型体a,bの形状や構造が複雑化する程、溶着部位の溶着面も複雑な形状となり、より高精度な溶着が必要とされることになるが、このような場合には、マイクロ波誘電発熱体1を構成する高温発熱部1A及び低温発熱部1Bに所定形状の穿設孔を複数個設けることで、その空間にマイクロ波エネルギを使用しないので、穿設孔周囲の温度上昇が高い効率的な温度制御となりマイクロ波誘電発熱体1の溶着速度を早めることができる。特に、穿設孔が高温発熱部1Aと低温発熱部1Bを貫通する孔である場合、貫通孔を通して一対の樹脂成型体a,bの樹脂同士を溶着させることも可能であり、接合強度の向上が期待できる。
更に、マイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1A及び低温発熱部1Bにそのような穿設孔を設ける一方で、溶着させる一対の樹脂成型体a,bの接合部に穿設孔に対応する突起を形成した場合、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bの穿設孔に、これに対応する一対の樹脂成型体a,bの突起を挿入することで、一対の樹脂成型体a,bの接合面の所定の位置に高温発熱部1A及び低温発熱部1Bを短時間で正確に位置決めを行うことができ、精度が高い組み付け溶着を行うことができる。
そして、このような樹脂成型体aの融点以上に昇温したのちに所定の発熱温度で昇温停止する高温発熱部1Aと、樹脂成型体bの融点以上に昇温したのちに高温発熱部1Aよりも低い所定の発熱温度で昇温停止する低温発熱部1Bとが断面2層構造に形成された本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1は、溶着させる一対の樹脂成型体a,bの相互間に配置され、マイクロ波の誘電加熱により発熱することで一対の樹脂成型体a,bを加熱し溶着する。
詳細には、図2に示されるように、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1は、その高温発熱部1Aを、一対の樹脂成型体a,bのうちの融点が高く溶着部位の溶融熱量が大きい方の樹脂成型体aの溶着部位に接触させ、また、低温発熱部1Bを、一対の樹脂成型体a,bのうちの融点が低く溶着部位の溶融熱量が小さい方の樹脂成型体bの溶着部位に接触させて配置される。
このとき、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1を用いて溶着可能な樹脂成型体a,bとしては、例えば、汎用プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパー・エンジニアリング・プラスチック等の一般の熱可塑性樹脂からなる成型体が挙げられる。
例えば、汎用プラスチックとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等がある。
また、エンプラとしては、ポリアミド(ナイロン、芳香族ポリアミド等)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等がある。
更に、スーパーエンプラとしては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミドイミド(PAI)等がある。
特に、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1は、マイクロ波による内部加熱で発熱するものであり、その発熱温度を高温とすることが可能であるから、PPS等の高融点の樹脂にも対応することができる。なお、溶着させる一対の樹脂成型体a,bは、上述したような熱可塑性樹脂を母材とするものであれば、公知の樹脂用添加剤、例えば、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、充填材等が配合されていてもよい。
ここで、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1によって溶着接合させる一対の樹脂成型体a,bの接合形状の一例について、図2を用いて、説明する。
高温発熱部1A及び低温発熱部1Bが表裏に配設されたマイクロ波誘電発熱体1によって溶着接合させる一対の樹脂成型体a,bにおいては、その溶着部位を、例えば、図2に示すように、凹凸条の噛み合わせの凹凸組合せ構造とし、この凹凸条の噛み合わせ内にマイクロ波誘電発熱体1を配置して、溶着位置を定めることができる。
図2の凹凸組合せ構造の一対の樹脂成型体a,bにおいては、樹脂成型体bの溶着部位に凸形状の突出部10を設け、また、樹脂成型体aの溶着部位に凹形状の嵌合凹部20を設けることによって、凹凸嵌合する形状、即ち、凹凸組合せ構造とした形状に形成されている。
なお、樹脂成型体bの突出部10の幅と樹脂成型体aの嵌合凹部20の溝幅は、嵌め合い嵌合する寸法差に形成されており、例えば、樹脂成型体bの突出部10の幅を嵌合凹部20の幅より0.1〜0.5mm程度小さく設定することで、嵌合凹部20への突出部10の挿入を容易にできる。
更に、図2の凹凸組合せ構造の一対の樹脂成型体a,bにおいては、樹脂成型体bの突出部10の先端面11から内部に向かって凹形状の突出部内空部12が形成され、また、樹脂成型体aの嵌合凹部20の底面21から更に凹形状の嵌合凹部内空部22が形成されている。
そして、樹脂成型体aの嵌合凹部20に樹脂成型体bの突出部10を挿入して接合方向に嵌合させたときに、図2(b)に示すように、突出部10の先端面11と嵌合凹部20の底面21とが接して突出部内空部12と嵌合凹部内空部22とで閉鎖空間が形成されるように設定されており、この閉鎖空間を形成する突出部内空部12及び嵌合凹部内空部22内に高温発熱部1A及び低温発熱部1Bからなるマイクロ波誘電発熱体1を収容し、マイクロ波誘電発熱体1の位置決めが正確に行われるようになっている。
このとき、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1は、樹脂成型体bの溶着部位に形成された突出部内空部12の天井面13に低温発熱部1Bの接触面2Bを接触させ、樹脂成型体aの溶着部位に形成された嵌合凹部内空部22の底面23に高温発熱部1Aの接触面2Aを接触させて収容される。
なお、図2の閉鎖空間はマイクロ波誘電発熱体1を収容可能とするために、樹脂成型体bの突出部内空部12において接合方向(加圧方向)と交差する方向(図2の左右方向)に対する幅と、樹脂成型体aの嵌合凹部内空部22において接合方向と交差する方向(図2の左右方向)に対する幅は、マイクロ波誘電発熱体1の断面における幅(図2の左右方向)より大きくなっている。
また、突出部内空部12における接合方向に対する長さ(高さまたは深さともいえる)と嵌合凹部内空部22における接合方向に対する長さ(深さともいえる)との和がマイクロ波誘電発熱体1の厚み(接合方向に対する長さまたは高さともいえる)と略同じになっている。
このため、突出部内空部12と嵌合凹部内空部22によって形成される閉鎖空間はマイクロ波誘電発熱体1の容積より大きな容積を要し、閉鎖空間はマイクロ波誘電発熱体1の接合方向に交差する方向の両面側に残存空間31を有する。
また、図2においては、樹脂成型体aの嵌合凹部内空部22の接合方向に対する長さは、樹脂成型体bの突出部内空部12の接合方向に対する長さより大きくしている。これにより、マイクロ波誘電発熱体1の厚み(接合方向に対する長さまたは高さ)の半分以上を嵌合凹部内空部22内に収容できるため、マイクロ波誘電発熱体1を嵌合凹部内空部22内に配置した後、突出部10を嵌合凹部20内に挿入して嵌合させるとき、マイクロ波誘電発熱体1の位置ずれが抑制され、樹脂成型体aと樹脂成型体bの確実な嵌め合いが容易に行える。
ここで、樹脂成型体aの嵌合凹部内空部22の接合方向に対する長さを大きくすることで、高温発熱部1Aが樹脂成型体aの嵌合凹部内空部22に完全に収容されて、樹脂成型体bの先端面11が高温発熱部1Aの周囲に配置されない構造となる。これにより、樹脂成型体bの先端面11において高温発熱部1Aによる熱の影響を少なくできるが、樹脂成型体aの溶着部位となる嵌合凹部内空部22は、樹脂成型体bの溶着部位となる突出部内空部12より深くなっていることから、樹脂成型体aの溶着部位の溶着に必要とされる溶融熱量は樹脂成型体bより大きくなる。したがって、樹脂成型体aに高融点側の熱可塑性樹脂を使用し、樹脂成型体bに低融点側の熱可塑性樹脂を使用する場合以外でも、即ち、樹脂成型体a及び樹脂成型体bに同じ融点の熱可塑性樹脂を使用したときでも、溶着部位の形状によっては、必要とされる溶融熱量が異なる場合が生じる。
なお、図2においては、樹脂成型体bの突出部10の先端面11から内部側に形成した凹部である突出部内空部12及び樹脂成型体aの嵌合凹部20の底面21から更に凹条に形成した嵌合凹部内空部22が、断面長方形状に形成されているが、本発明を実施する場合には、この形状に限定されるものではなく、図3に例示するような種々の形状も可能である。
続いて、マイクロ波誘電発熱体1による溶着について、ここでは図2の凹凸組合せ構造の一対の樹脂成型体a,bを溶着する例を挙げて説明する。
図2の凹凸組合せ構造の一対の樹脂成型体a,bにおいて、突出部10が嵌合凹部20に挿着され、突出部10の先端面11と嵌合凹部20の底面21が接して突出部内空部12及び嵌合凹部内空部22によって形成される閉鎖空間内にマイクロ波誘電発熱体1を収容し、マイクロ波誘電発熱体1の低温発熱部1Bの接触面2Bを樹脂成型体bの突出部内空部12の天井面13に接触させ、また、高温発熱部1Aの接触面2Aを樹脂成型体aの嵌合凹部内空部22の底面23と接触させた状態で、マイクロ波を照射すると、マイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1A及び低温発熱部1Bは、マイクロ波吸収材によってマイクロ波を吸収し、マイクロ波で供給された電磁波のエネルギを熱に変換して昇温する。そして、マイクロ波誘電発熱体1の温度上昇に伴う放射熱及び/または熱伝導エネルギを、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bの周囲に配置する一対の樹脂成型体a,bに与えることで、一対の樹脂成型体a,bの溶着部位を溶融させる。
このときのマイクロ波誘電発熱体1を加熱するマイクロ波発生装置としては、マイクロ波を照射することができる形態であればよく、市販の産業用マイクロ波発生装置が使用される。また、マイクロ波の照射時間や出力は、溶着させる一対の樹脂成型体a,bの種類、形状や、マイクロ波誘電発熱体1の熱容量、内部抵抗、発熱効率等によって決定される。
ここで、本実施の形態においては、前述したように、融点が高く溶着部位の溶融熱量が大きい樹脂成型体aには、樹脂成型体aの融点以上に昇温したのちに、所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1Aを接触させ、一方で、樹脂成型体aに比べて融点が低く溶着部位の溶融熱量が小さい樹脂成型体bには、樹脂成型体bの融点以上に昇温したのちに、高温発熱部1Aよりも低い所定の発熱温度で昇温停止する低温発熱部1Bを接触させている。
このため、低温発熱部1Bに接触する樹脂成型体b側では、低温発熱部1Bに接触した接触部やその接触部近傍や低温発熱部1Bの周囲がマイクロ波の照射により樹脂成型体bの融点以上に昇温される低温発熱部1Bによって加熱されることで、溶融し始める。そして、低温発熱部1Bにおいては、所定の発熱温度で当該昇温が停止するため、マイクロ波の照射を続けても、過剰に昇温することなく、樹脂成型体bに対して所望の溶融温度(溶着温度)に維持でき、溶融樹脂量を制御して所望の溶融状態とすることができる。即ち、低温発熱部1Bが所定の発熱温度以上に昇温することがないため、過昇温によって樹脂成型体bを過剰に溶融してその形状や強度を低下させることなく、樹脂成型体bの溶融が制御される。
一方、高温発熱部1Aに接触する樹脂成型体a側では、高温発熱部1Aに接触した接触部やその接触部近傍や高温発熱部1Aの周囲がマイクロ波の照射により樹脂成型体aの融点以上に昇温される高温発熱部1Aによって加熱されることで溶融し始める。即ち、樹脂成型体bよりも融点が高く溶着部位の溶融熱量が大きい樹脂成型体aにおいては、樹脂成型体aの融点以上に昇温される高温発熱部1Aによって加熱されることから、溶着部位の加熱不足が生じることはなく、高温発熱部1Aによって樹脂成型体aの溶融が制御される。
このとき、本実施の形態では、高温発熱部1Aが昇温する最大温度は、樹脂成型体aの溶着部位を適切に溶融できる所定の発熱温度に設定されていて、この所定の発熱温度で昇温が停止するため、マイクロ波の出力を制御しなくても過剰に昇温することがなく、樹脂成型体aを所望の溶融温度(溶着温度)に維持でき、溶融樹脂量を制御して所望の溶融状態とすることができる。また、高温発熱部1Aの過昇温による高熱が樹脂成型体bにも熱伝導して樹脂成型体bの樹脂を過剰に溶融してしまうという事態を防止することもできる。
そして、溶着の際、通常は、一対の樹脂成型体a,b間が十分に溶着されるように、一対の樹脂成型体a,bを接合する方向に、一対の樹脂成型体a,b間の間隔が狭くなるような押圧力(自重であってもよい)が加えられる。
特に、図2の凹凸組合せ構造の一対の樹脂成型体a,bにおいては、突出部10と嵌合凹部20が嵌合した際に、突出部10の先端面11は嵌合凹部20の底面21と接するようになっているが、このとき、先端面11と底面21とが接しても樹脂成型体bと樹脂成型体aとの間に間隙30が生じるように設定されており、図2(b)に示すように、間隙30を減ずる方向に加圧すると(以下、樹脂成型体bと樹脂成型体a間の間隙30を減ずる方向を「加圧方向」と呼ぶ。)、先端面11と底面21との接合面に圧力が加わるようになっている。
したがって、接合方向(加圧方向)に対し互いに接する凹凸組合せ構造とした一対の樹脂成型体a,bの嵌合凹部内空部22及び突出部内空部12によって形成された閉鎖空間内に収容したマイクロ波誘電発熱体1に対して、マイクロ波が照射(例えば、0.5〜10KWの出力)され、更に、樹脂成型体bと樹脂成型体aの間の間隙30を減ずる方向に外力が付与されて加圧(例えば、0.1〜5.0MPa)されると、図2(c)に示すように、低温発熱部1Bの加熱により所望の溶融状態とした樹脂成型体bの樹脂と、高温発熱部1Aの加熱により所望の溶融状態とした樹脂成型体aの樹脂とが流動しながら絡み合って結合し、冷却されると樹脂成型体a及び樹脂成型体bが均一に、かつ、加圧力によって密に、溶着接合される。
この際、樹脂成型体bの溶融樹脂と樹脂成型体aの溶融樹脂とが、閉鎖空間内のマイクロ波誘電発熱体1が占有する部分以外の残存空間31や、突出部10の側面15と嵌合凹部20の側面25によって形成される隙間空間32に拡がりながら結合することで、より樹脂成型体bの溶融樹脂と樹脂成型体aの溶融樹脂が一体化され、高い接合強度を得ることができる。
以上説明してきたように、溶着させる一対の樹脂成型体a,bの溶着部位を凹凸条の組合せ構造とし、予め既定された閉鎖空間を形成する凹部としての突出部内空部12及び嵌合凹部内空部22内に高温発熱部1A及び低温発熱部1Bを有するマイクロ波誘電発熱体1を配置することで、樹脂成型体a及び樹脂成型体bの溶着部位の溶融状態を自在に制御できる。
この際、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bに照射するマイクロ波の照射時間(つまりは、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bに加わるエネルギ量)や、加圧距離等によって溶融樹脂量を調節して、溶着時の接合面積を広く設定し接合強度を上げることが可能である。
特に、凹凸構造の溶着構造とした一対の樹脂成型体a,b間にマイクロ波誘電発熱体1を配置しているため、機械的強度の高い接合部間の接続ができる。また、溶着によって一対の樹脂成型体a,bの接合部から溶融樹脂が外部に食みだし難くて見栄えがよく、密閉性も容易に得ることができる。
更に、既定の位置に設けた閉鎖空間を形成する凹部としての突出部内空部12及び嵌合凹部内空部22内にマイクロ波誘電発熱体1を配することで、樹脂成型体aと樹脂成型体bとを溶着する溶着部位となる突出部10と嵌合凹部20内の所定の位置に精度良く配置されてマイクロ波誘電発熱体1の位置ずれが防止される。また、閉鎖空間によってマイクロ波誘電発熱体1の温度が逃げにくくて、加熱効率が高いものとなり、一対の樹脂成型体a,bが溶融しやすくなる。このため、溶着部位に対して所望とする溶融状態が得られ易く、溶着精度や仕上がりの美観が向上する。
加えて、図2においては、溶着前から一対の樹脂成型体a,bの接合部の凹凸条の組合せが接合方向に対して互いに接している、即ち、樹脂成型体bの先端面11と樹脂成型体aの底面21が接合方向に対し互いに接していることで高いシール性を確保できる。
なお、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1を形成する樹脂バインダーに熱可塑性樹脂が使用されている場合には、マイクロ波の照射によりその樹脂が溶融することで、高温発熱部1Aのバインダー樹脂と高温発熱部1Aによって溶融した樹脂成型体aの樹脂とが溶着し、また、低温発熱部1Bのバインダー樹脂と低温発熱部1Bによって溶融した樹脂成型体bの樹脂とが溶着する。
また、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1を形成するバインダーに熱硬化性樹脂が使用されている場合、マイクロ波誘電発熱体1は、マイクロ波の照射によってもその形状を維持することができるため、溶着部位の溶融状態の制御が容易となる。
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のどちらを使用するかは、所望とする溶着仕様によって適宜選択される。
こうして、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1を樹脂成型体aと樹脂成型体bの間に配置してマイクロ波を照射すると共に、樹脂成型体aと樹脂成型体bを接合する方向に所定の押圧力を加えることで、マイクロ波誘電発熱体1による一対の樹脂成型体a,bの溶着部位の溶融化と、一対の樹脂成型体a,b相互間の加圧によって、樹脂成型体a及び樹脂成型体bは溶着部位で溶着され、同時に、樹脂成型体a及び樹脂成型体b相互間にマイクロ波誘電発熱体1が埋没して樹脂成型体a及び樹脂成型体b相互間の隙間が減少して、樹脂成型体a及び樹脂成型体bは密接に接合して一体化される。
特に、図2(b)に示したように、樹脂成型体bの突出部10を除いた加圧方向底面14と、樹脂成型体aの嵌合凹部20を除いた加圧方向天井面24間に間隙30が生じる設定、即ち、加圧方向に加圧のための加圧距離が設定されている場合には、加圧方向に対し樹脂成型体bの突出部10の先端面11と樹脂成型体aの嵌合凹部20の底面21とが接合した状態で加圧されることになるため、溶着後の樹脂成型体bと樹脂成型体a間は極めて高いシール性が確保される。
なお、加圧距離、つまり隙間30は、溶融した樹脂が残存空間31を充填することができ、更に、隙間空間32から溢れ出さない範囲内に収めることで、溶融樹脂が隙間32空間から溢れ出さずにバリの発生が防止され、樹脂成型体a及び樹脂成型体bを密着させて、精度のよい接合を行うることができ、良好な意匠性を確保できる。
そして、溶融樹脂量は、マイクロ波エネルギの照射時間や、マイクロ波誘電発熱体1の発熱温度、つまりは熱容量を制御することによって所望の容量とすることができる。
ところで、本発明を実施する場合には、マイクロ波誘電発熱体1によって溶着させる一対の樹脂成型体a,bの接合部に関し、上述した図2に示した接合方向(加圧方向)に対し互いに接する凹凸組合せ構造に限定されるものではない。
例えば、図3(a)に示したように、一対の樹脂成型体a,bの接合部において突出部内空部12及び嵌合凹部内空部22を無くした凹凸の組合せ構造や、図3(b)に示すように、突出部10の先端から内部に向かって凹形状の凹欠条41を形成し、また、嵌合凹部20の底面から更に凹形状の凹欠条42を形成し、その凹欠条41,42の間にマイクロ波誘電発熱体1を配置させる構造とすることもできる。
更に、図3(c)に示すように、突出部10の先端に1条または2条以上の突起条(図3(c)においては2個の突起条51)を形成し、また、嵌合凹部20の底にも1条または2条以上の突起条(図3(c)においては2個の突起条52)を形成し、その突起条51,52の間にマイクロ波誘電発熱体1を配置させる構造や、図3(d)に示すように、突出部10に先端から内部に向かって凹形状の凹欠条61を形成し、嵌合凹部20の底の両側(接合方向と交差する方向)に側部に向かって凹形状の凹欠条62を形成した構造とすることもできる。
また、図3(e)に示すように、突出部10の先端側の両側(接合方向と交差する方向)に切欠条71を形成することや、図3(f)に示すように、嵌合凹部20の底の中央に上部開口溝条81を形成することも可能である。このような場合には、その切欠条71や上部開口溝条81の中に溶融樹脂を導くことができることから、切欠条71や上部開口溝条81によるアンカー効果が期待でき、接合強度を上げることができる。
勿論、接合面が平坦な一対の樹脂成型体a,bに対しても、マイクロ波誘電発熱体1によって均一に溶着することができる。
このとき、マイクロ波誘電発熱体1は、通常、接合面の幅方向の略中心に設置され、マイクロ波誘電発熱体1の幅は、十分に一対の樹脂成型体a,bを加熱溶着できる程度の大きさを確保する一方で、溶着時に接合面から溶融した樹脂がはみ出し、バリが発生することを防止するため、接合面の幅より狭い幅に設定される。例えば、一対の樹脂成型体a,bの接合面の幅が3mm程度であれば、その中心に設置するマイクロ波誘電発熱体1の幅は0.5〜2mm程度が好ましく、一対の樹脂成型体a,bの接合面の幅が5mm程度であれば、その中心に設置するマイクロ波誘電発熱体1の幅は1.5〜4mm程度が好ましい。
このように、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1は、所定の異なる発熱温度で昇温停止する高温発熱部1A及び低温発熱部1Bを具備するものであり、一対の樹脂成型体a,bの各々の溶融状態に対応できる高温発熱部1Aまたは低温発熱部1Bを樹脂成型体a,bのそれぞれに接触させて溶着を行う。このとき、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bのそれぞれは、所定の温度以上に昇温することがないため、一対の樹脂成型体a,bの各々の溶着部位は最適な溶着温度に維持され、所望の溶融状態に制御される。このため、均一で最適な溶融状態が得られ、過熱による焼け、形状異常、強度低下等の不具合は発生しにくい。また、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bは所定の発熱温度以上に昇温することがないことから、マイクロ波の出力を制御する必要がなく、簡便な溶着が可能となる。
こうして、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1によれば、異なる昇温停止温度を有して異なる発熱温度に制御可能な高温発熱部1Aと低温発熱部1Bを有することにより、一対の樹脂成型体a,bに対して、それらに対応した溶融温度(溶着温度)を維持して溶融制御が可能であることで、信頼性の高い均一な溶着が可能である。
そして、本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1によれば、一対の樹脂成型体a,bの溶着部位の寸法形状に合わせて高温発熱部1A及び低温発熱部1Bを作製することで、一対の樹脂成型体a,bを局部的に加熱する一部の溶着や、広範囲な全体を一度に加熱する全体的な溶着であっても、容易に行うことができる。
このように本実施の形態のマイクロ波誘電発熱体1を使用することで、溶着する一対の樹脂成型体a,bの融点が相違するものや、溶着部位の形状による溶着範囲の相違によって溶融熱量が相違するものであっても、容易に均一で信頼性の高い溶着を可能とする。
なお、本実施の形態では溶着させる樹脂成型体を2種類で説明しているが、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bの発熱特性を、溶着する一対の樹脂成型体a,bに合わせることで、融点及び/または溶融熱量が異なる3種類以上の樹脂成型体に適用させることも可能となる。
因みに、このような樹脂成型体として適用でき、溶着可能な樹脂部品としては、例えば、自動車用のオートマッチックトランスミッション用樹脂製バルブボディや、自動車用としてのCVT、HV等用のバルブボディや、インテークマニホールド、リザーバタンク等が挙げられる。自動車用以外では、油圧制御が必要な装置用の樹脂製バルブボディ、油圧制御ブロック、燃料電池のセパレータ等の多層の樹脂部品を固定して組み立てる成形品や、複数の配管・ホースをまとめてインテークマニホールドのように分岐させ、分割・接合する成形品等にも適用可能である。勿論、これらに限定されるものではなく、融点が異なる異種材料の接合が必要な部品や、溶着部位の形状が異なる部品等の溶着に幅広く使用することができる。
[実施例]
次に、本発明の実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体1の実施例を具体的に説明する。
本実施例においては、マイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及びPTC特性をもつフェライト粉を使用し、また、マイクロ波吸収材を分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとして、液状エポキシ樹脂((株)サンライズ、耐熱エポキシ樹脂)を使用した。
具体的には、高温発熱部1Aの材料として、昇温停止温度が400℃のフェライト粉(JFEケミカル(株)製ニッケルフェライト粉)を用い、低温発熱部1Bの材料として、昇温停止温度が300℃のフェライト粉(JFEケミカル(株)製ニッケルフェライト粉)を用い、これらの材料のそれぞれに、樹脂バインダーとしての液状エポキシ樹脂を、フェライト粉84重量%とエポキシ樹脂16重量%の配合割合となるように混合して、2種類の複合材料を準備した。そして、この2種類の複合材料を所定形状の金型に順次(高温発熱部1Aの材料と低温発熱部1Bの材料のどちらを先にしてもよい)充填して、室温で500Nの圧力で圧縮成形した後、金型から脱型した。そして、1日以上自然硬化させることによって所定形状の高温発熱部1A及び低温発熱部1Bからなる断面が2層構造のマイクロ波誘電発熱体1を形成した。
ここでは、マイクロ波誘電発熱体1は、図1(a)に示したような、長径が20mm、短径が10mmの長円環状とした。そして、図1(b)に示したような、断面厚みが1.8mm、断面幅が1.0mmの四角状の断面形状を有し、高温発熱部1Aの厚みと低温発熱部1Bの厚みが略同一となるようにした。
ここで、この実施例のマイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1A及び低温発熱部1Bにおいて、所望の発熱特性が得られるか、つまり、所定の発熱温度となるか、検証を行った。
具体的には、溶着させる一対の樹脂成型体をPPS樹脂(東レ(株)製『A400M×01』、融点;約280℃)で作製し、高温発熱部1Aに接したPPS樹脂からなる樹脂成型体と低温発熱部1Bに接したPPS樹脂からなる樹脂成型体とで溶融状態に差が生じるかの確認を行った。
ここでは、溶着させる一対のPPS樹脂からなる樹脂成型体の一方に、マイクロ波誘電発熱体1の位置決めを行う突起を設け、実施例のマイクロ波誘電発熱体1を溶着部位に容易に位置決めして配置できるPPS樹脂からなる樹脂成型体を作製した。
そして、この突起にマイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1Aを挿入し、突起を設けていない樹脂成形体の他方に低温発熱部1Bを接触させ、マイクロ波を照射(出力;1900W)すると共に、一対のPPS樹脂からなる樹脂成型体間の間隙を減ずる方向に2MPaの圧力を60秒間加えることによって、溶着させた。
その結果、図4に示したように、高温発熱部1Aに接した一方の樹脂成型体aのPPS樹脂は溶融が生じた一方で、低温発熱部1Bに接した他方の樹脂成型体bのPPS樹脂は溶融が殆ど生じていないことが確認された。この溶融状態の相違という結果から、本実施の形態に係る実施例のマイクロ波誘電発熱体1は、狙い通りに高温発熱部1Aと低温発熱部1Bとで異なる発熱温度に発熱、つまり、異なる発熱特性を有することが検証できた。
ここで、実施例1のマイクロ波誘電発熱体1の単体での温度変化の測定結果を図6に示す。図6は、マイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1Aの表面温度と低温発熱部1Bの表面温度のマイクロ波照射による発熱温度変化を経時的に測定した結果をグラフに示した図である。
図6から、高温発熱部1Aの発熱温度の変化と低温発熱部1Bの発熱温度の変化は、高温発熱部1Aの方が低温発熱部1Bより高い温度を示しているが、その変化の度合いは、殆ど差が見られない。このことから、実施例のマイクロ波誘電発熱体1においては、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bは略同一の熱容量となっていることが判明した。
次に、このように高温発熱部1Aと低温発熱部1Bとで異なる発熱特性を有する実施例のマイクロ波誘電発熱体1を使用して、融点の異なる一対の樹脂成型体a,bの溶着を行った。
ここでは、図2に示したような、樹脂成型体a(東レ(株)製『A400M×01』、融点;約280℃のPPS樹脂を使用)と樹脂成型体b(日本ポリプロ(株)製 『BC−8』、融点;約180℃のPP樹脂を使用)を凹凸組合せ構造とし、突出部内空部13と嵌合凹部内空部22とによって形成される閉鎖空間内に、実施例のマイクロ波誘電発熱体1を配置した。この際、樹脂成型体aと樹脂成型体bの溶着部位は、図2に示したような、実施例のマイクロ波誘電発熱体1を容易に位置決めして配置できるような形状に作製されている。
マイクロ波誘電発熱体1の配置は、昇温停止温度が400℃のフェライト粉を使用して形成した高温発熱部1Aを樹脂成型体bに比べ融点が高くて溶着部位の熱量が大きいPPS樹脂からなる樹脂成型体aに接触させ、また、昇温停止温度が300℃のフェライト粉を使用して形成した低温発熱部1Bを樹脂成型体aに比べ融点が低くて溶着部位の熱量が小さいPP樹脂からなる樹脂成型体bに接触させた。
そして、マイクロ波を照射(出力;1900W)すると共に、一対の樹脂成型体a,b間の間隙30を減ずる方向に2MPaの圧力を60秒間加えることによって、一対の樹脂成型体a,bを溶着させた。
そのときの溶着状態を図5に示す。図5に示したように、融点及び溶着部位の溶融熱量が異なる樹脂成型体aと樹脂成型体bは溶着部位にて十分に溶融して溶着していた。
これより、高温発熱部1A及び低温発熱部1Bを有する断面2層構造のマイクロ波誘電発熱体1を使用することで、樹脂成型体aの溶融樹脂(PPS樹脂)と樹脂成型体bの溶融樹脂(PP樹脂)のそれぞれが適度に溶融して絡み合って結合し、更に、閉鎖空間においてマイクロ波誘電発熱体1が占有する部分以外の残存空間31や突出部10の側面15と嵌合凹部20の側面25によって形成される隙間空間32にも溶融した樹脂が拡がって樹脂成型体aと樹脂成型体bが均一に溶着していることが分かる。
ここで、このようにして溶着した溶着品の溶着強度をプッシュプルゲージを用いて測定した。
測定に使用した溶着品は、平面視の形状が長方形(縦30mm×横50mm)の樹脂成型体aと、同じく長方形(縦30mm×横50mm)の樹脂成型体bとを、十字形状(クロス形状)になるように溶着したものである。
この溶着品の溶着強度の測定に際しては、樹脂成型体aの両端をワイヤで固定し、樹脂成型体bの両端をプッシュプルゲージに接続した。そして、プッシュプルゲージを5mm/sの速度で上方に引き上げ、樹脂成型体a及び樹脂成型体bが分離したときの強度を溶着強度とした。
その結果、溶着強度は7.3MPaとなり、通常、必要とされる強度が5MPa以上であることから、良好な溶着強度であることが確認された。
そして、このような良好な溶着性能を示す実施例のマイクロ波誘電発熱体1では、上述したように図6の結果から、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bが略同一の熱容量となっている。
したがって、低温発熱部1Bが昇温停止する発熱温度までは、マイクロ波誘電発熱体1自身は、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの境界域において温度差(熱膨張率の差)に起因する応力や歪みの発生が少なく、形状が保持されやすい。また、低温発熱部1Bが昇温停止する発熱温度までは、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの発熱温度に差が生じ難いことから、樹脂成型体aの溶着部位と樹脂成型体bの溶着部位で略均一に温度上昇が行われる。
これにより、溶着部位に対する溶融性能を一定の範囲内に制御しやすくなり、樹脂成型体a,bを所望の溶融状態として、精度の高い溶着を行うことができた。
ここで、溶着部位の形状や、マイクロ波の照射条件によっては、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bを略同一の熱容量とせずに、異なる熱容量とすることも可能である。例えば、溶着部位の範囲が狭く、マイクロ波の照射時間が短時間で済み、加熱による熱の影響が溶着部位以外へ及び難い場合には、異なる熱量とすることができる。かかる場合、高温発熱部1Aの熱容量を低温発熱部1Bの熱容量よりも小さくすることで、高温発熱部1Aの昇温速度が低温発熱部1Bの昇温速度より速くなり、昇温停止する発熱温度に達するまでの時間を同じにすることができる。これにより、マイクロ波の照射時間が短くなることから生産性が向上する。
ところで、上記説明では、本実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体1が、融点及び溶着部位の溶融熱量が異なる一対の樹脂成型体a,b間に配置される事例で説明したが、マイクロ波誘電発熱体1が発熱温度の異なる高温発熱部1Aと低温発熱部1Bを具備することで、融点は同じであるが溶着部位の溶融熱量が異なる一対の樹脂成型体a,bでも同様の効果は得られる。なお、融点が異なる場合でも溶着部位の熱容量が同一となる場合もある。
即ち、本実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体1によれば、発熱温度の異なる高温発熱部1Aと低温発熱部1Bを具備することで、融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる一対の樹脂成型体a,bを均一に溶着することが可能である。
以上説明してきたように、本発明の実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体1は、融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる一対の樹脂成型体a,bの間に配置され、マイクロ波の照射による誘電加熱で発熱するマイクロ波誘電発熱体1であって、一対の熱可塑性樹脂成型体a,bのうちの一方の融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の樹脂成型体aに対応させた融点以上に昇温したのち、所定の発熱温度で昇温が停止する高温発熱部1Aと、他方の融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が小さい方の樹脂成型体bに対応させた融点以上に昇温したのち、高温発熱部1Aの昇温停止温度よりも低い所定の発熱温度で昇温が停止する低温発熱部1Bとを具備するものである。
そして、このようなマイクロ波誘電発熱体1の使用は、マイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1Aを高い融点及び/または溶着部位が大きい溶融熱量の樹脂成型体aの溶着部位に接触させ、低温発熱部1Bを低い融点及び/または溶着部位が小さい溶融熱量の樹脂成型体bの溶着部位に接触させて、一対の樹脂成型体a,bの間に配置し、マイクロ波の照射による誘電加熱でマイクロ波誘電発熱体1を発熱させ、一対の樹脂成型体a,bの接合方向に押圧力を加えながら、一対の樹脂成型体a,bの溶着部位を溶融して溶着するマイクロ波誘電発熱体1による溶着方法の発明として捉えることもできる。
このように、一対の樹脂成型体a,bのそれぞれの溶着部位に対応した発熱特性を有する2種の発熱部1A,1B、即ち、昇温停止温度が異なる高温発熱部1Aと低温発熱部1Bを具備するマイクロ波誘電発熱体1とすることによって、マイクロ波により加熱される発熱部の発熱温度を異にして制御することができる。
したがって、溶着させる一対の樹脂成型体a,bが融点の異なる異種の熱可塑性樹脂で成形されている場合や、同一の熱可塑性樹脂で成形されているが溶着部位の形状によって溶融熱量が異なる場合でも、各樹脂成型体a,bに対して所望の溶融状態に制御することが容易であり、信頼性の高い均一な溶着が可能である。
特に、本実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体1の高温発熱部1Aと低温発熱部1Bはそれぞれ加熱温度が所定の到達温度で、それ以上の昇温が停止することから、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bのそれぞれで発熱温度が均一化されて所定の到達温度範囲に定まる。よって、安定した溶融状態での均一な溶着が可能となる。
そして、マイクロ波誘電発熱体1は、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの発熱温度を異にして制御できることから、溶着する一対の樹脂成型体a,bの各溶着部位に適する温度に、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの発熱温度を各々で設定可能であり、2種以上の熱可塑性樹脂を含んだ成型体の溶着や、2以上に分割して溶着する必要がある複雑形状の成型体であっても溶着が可能となる。
更に、本実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体1は、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bが断面2層構造に形成されてなるものであるから、マイクロ波誘電発熱体1の全体の厚みを小さくできることで、溶着後の樹脂成型体a,b間に間隙が残るのを抑制できる。よって、高い接合強度を確保でき、また、バリの発生を抑制することができる。
また、本実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体1は、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bが、マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するフェライト粉等のマイクロ波吸収材と、マイクロ波吸収材を分散させて圧縮成形自在とするエポキシ樹脂等の樹脂バインダーを混合して圧縮成形することによって所定形状に形成されたものであることから、複雑な形状の一対の樹脂成型体a,bを溶着させる場合でも、それら一対の樹脂成型体a,bの溶着部位に合わせた形状に設定することができ、確実な溶着が可能である。
なお、本実施の形態に係るマイクロ波誘電発熱体1は、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bが断面2層構造に形成されてなるものであるが、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの間に中間層を設けた3層構造とすることも可能である。この場合、中間層は、高温発熱部1Aと低温発熱部1Bの略中間の発熱温度に発熱する構造としたり、発熱しない材料で形成したりする。
1 マイクロ波誘電発熱体
1A 高温発熱部
1B 低温発熱部
10 突出部
12 突出部内空部
20 嵌合凹部
22 嵌合凹部内空部
a,b 樹脂成型体

Claims (5)

  1. 融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる一対の熱可塑性樹脂成型体の間に配置され、マイクロ波の照射による誘電加熱で発熱して前記一対の熱可塑性樹脂成型体を溶着するマイクロ波誘電発熱体であって、
    前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつフェライトと、前記フェライトを分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとが混合され圧縮成形されてなり、前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの一方の融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の樹脂成型体の融点以上に昇温したのち、所定の発熱温度で昇温が停止する高温発熱部と、
    前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつフェライトと、前記フェライトを分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとが混合され圧縮成形されてなり、前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの他方の融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が小さい方の樹脂成型体の融点以上に昇温したのち、前記高温発熱部よりも低い所定の発熱温度で昇温が停止する低温発熱部
    を具備し、
    前記誘電加熱によって発熱し異なる発熱温度で昇温停止する前記高温発熱部と前記低温発熱部において、前記高温発熱部に前記低温発熱部を形成するフェライトよりも昇温停止温度が高いフェライトを用い、前記低温発熱部に前記高温発熱部を形成するフェライトよりも昇温停止温度が低いフェライトを用いたことを特徴とするマイクロ波誘電発熱体。
  2. 前記高温発熱部と前記低温発熱部は、断面2層構造に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波誘電発熱体。
  3. 前記高温発熱部の熱容量と前記低温発熱部の熱容量は、互いに同一としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロ波誘電発熱体。
  4. 前記高温発熱部の熱容量は、前記低温発熱部の熱容量よりも小さくしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロ波誘電発熱体。
  5. 融点及び/または溶着部位の溶融熱量が異なる一対の熱可塑性樹脂成型体の間に、マイクロ波の照射による誘電加熱によって発熱するマイクロ波誘電発熱体を配置し、前記マイクロ波の照射により前記マイクロ波誘電発熱体の誘電加熱を行うと共に、前記一対の熱可塑性樹脂成型体を接合する方向に押圧力を加えて溶着するマイクロ波誘電発熱体による溶着方法であって、
    前記マイクロ波誘電発熱体は、前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつフェライトと、前記フェライトを分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとが混合され圧縮成形されてなり、前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの一方の融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の樹脂成型体の融点以上に昇温したのち、所定の発熱温度で昇温が停止する高温発熱部と、
    前記マイクロ波を吸収して所定の発熱温度で昇温停止するマイクロ波吸収材としてキュリー温度を有する磁性特性及び/またはPTC特性をもつフェライトと、前記フェライトを分散させて圧縮成形自在とする樹脂バインダーとが混合され圧縮成形されてなり、前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの他方の融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が小さい方の樹脂成型体の融点以上に昇温したのち、前記高温発熱部よりも低い所定の発熱温度で昇温が停止する低温発熱部と
    を具備し、
    前記マイクロ波の照射による誘電加熱によって発熱し異なる発熱温度で昇温停止する前記高温発熱部と前記低温発熱部において、前記高温発熱部に前記低温発熱部を形成するフェライトよりも昇温停止温度が高いフェライトを用い、前記低温発熱部に前記高温発熱部を形成するフェライトよりも昇温停止温度が低いフェライトを用いたものであり、
    前記高温発熱部を前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの融点が高い方及び/または溶着部位の溶融熱量が大きい方の熱可塑性樹脂成型体の溶着部位に接触させ、前記低温発熱部を前記一対の熱可塑性樹脂成型体のうちの融点が低い方及び/または溶着部位の溶融熱量が小さい方の熱可塑性樹脂成型体の溶着部位に接触させることを特徴とするマイクロ波誘電発熱体による溶着方法。
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