JP5988902B2 - マイクロ波誘電溶着体及びマイクロ波誘電溶着体による溶着方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献2では、マイクロ波を照射して誘電加熱するマイクロ波発熱体を加熱するとき、誘電加熱するマイクロ波発熱体を薄くし、発熱温度を一様に高く設定することができ、安定した溶着が可能となる技術が開示されている。
また、特許文献2は、導電体粉末、金属薄膜、金属箔等を発熱体として溶着された溶着体の技術を開示するものであるが、形状によっては発熱のバラツキが生じ、形状の複雑な成型体の溶着には使用できない場合がある。
ここで、上記発熱粒子は、前記マイクロ波の照射により特定の温度まで昇温すると当該昇温が停止される材料である。この特定の温度とは、特定の一点の昇温停止温度のみを意味するものではなく、前記マイクロ波の照射量の変化に対して昇温が停止される前であっても、温度変化の目安としては、例えば、常温からの変化が略1/10以下に減少した温度変化の状態が得られれば、それをもって「昇温が停止」と見做すことができる。
つまり、前記発熱粒子としては、前記マイクロ波の照射により特定の温度まで温度上昇し、マイクロ波の照射を継続しても当該昇温が停止したと見做すことができる材料としたものである。
また、上記溶着接合材は、溶着する成型体接合部の母材と同一材料からなり溶着時に成型体接合部と溶け合うことにより溶着し、成型体接合部との密着性、シール性を得る熱可塑性樹脂からなるものである。
そして、上記バインダーは、前記発熱粒子及び前記溶着接合材を結合し、所望形状のマイクロ波誘電溶着体として一体化する熱硬化性樹脂からなるものである。
ここで、前記バインダーは、前記発熱粒子及び前記溶着接合材を結合してマイクロ波誘電溶着体の形状を形成するものである。そして溶着の際には、前記バインダーは前記発熱粒子によって加熱され、外力により圧縮変形されるがアニールが施された熱硬化性樹脂をバインダーに使用しているため、マイクロ波誘電溶着体の形状はその原型が保持される。
ここで、Ni−Zn系フェライトまたはMg系フェライト(Mg−Cu−Zn系フェライト)の粉体は配合、粒子の中位径によって昇温が停止する温度、詳しくは昇温が停止したと見做せる温度が設定でき、しかも、当該温度に到達すると、それ以上の電力消費を伴わないから、当該温度以上に温度が上昇することがなく、安定した溶融状態での溶着が可能となる。
なお、ここで、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」の本文及び解説の用語の定義によれば、中位径とは、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数(または質量)が、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径(直径)、即ち、オーバサイズ50%の粒径であり、通常、メディアン径または50%粒子径といいD50と表わされる。
ここで、特定の温度とは、特定の一点の昇温停止温度のみを意味するものではなく、前記マイクロ波の照射量の変化に対して昇温が停止される前であっても、温度変化の目安としては、例えば、常温からの変化が略1/10以下に減少した温度変化の状態が得られれば、それをもって「昇温が停止」と見做すことができる。
更に、前記溶着接合材は、母材と同じ材料に設定されているから、前記溶着接合材は溶着時に母材と溶け合うことにより接合密着性を得るものである。したがって、成型体の接合部の母材となる熱可塑性樹脂が、溶着後はマイクロ波誘電溶着体の前記溶着接合材と一体となるから、論理的にも、機械的強度が母材としての最大の強度にできる。このように、溶着接合材は、母材と同じ材質にし、溶着時に母材と溶け合うことで溶着強度を向上させるためにマイクロ波誘電溶着体に配される。特に、一度に複数のシール部を有する多層構造品に対し、マイクロ波誘電溶着体を挟んでマイクロ波を照射させるだけで、1回で溶着、シールを行うことができる。例えば、箱の外周面のみならず、箱の内部まで均一に溶着することができる。
加えて、本発明を実施する場合に使用する発熱粒子は、マイクロ波の照射により特定の温度まで昇温し、その昇温が停止する材料であるため電磁界の集中が起き難く、クラック、コーナー部、シャープエッジ等が存在しても、スパークの発生が抑えられ、均一で複数個を同時に加熱、溶着できる。
したがって、バインダーによって一体化されている発熱粒子に対してマイクロ波を照射すると、成型体接合部の母材となる熱可塑性樹脂を溶融させる特定の限られた温度までマイクロ波誘電溶着体の温度が上昇し、特定の温度以上で昇温が停止する。このため、マイクロ波誘電溶着体中に部分的であっても特定の温度以下の部分があると、そこにマイクロ波のエネルギが集中的に供給されて昇温するため、マイクロ波誘電溶着体全体の温度の変化は殆どなくなる。
故に、成型体接合部及びマイクロ波誘電溶着体中の溶着接合材との溶融状態に違いがなくなる。また、溶着接合材が、溶着する母材と同一材料からなり、かつ、バインダーによってそれが一体化されているから、成型体接合部とマイクロ波誘電溶着体が容易に溶融接合し、成型体接合部間は一体性及び密着性、シール性を得る。そして、マイクロ波誘電溶着体はマイクロ波の誘電加熱により前記発熱粒子の温度を上昇させて、前記成型体相互間の接合部を溶融することになるが、母材及び溶着接合材の溶融温度に近似した温度に発熱粒子が加熱され、かつ、その加熱温度が特定の到達温度以上に昇温せず、溶着しようとする箇所の温度が均一化される。よって、マイクロ波誘電溶着体は、形や大きさ、溶着位置によって溶着性能が左右されない。
そして、母材と溶け合うことで成型体の接合部と一体となる前記溶着接合材が母材と同じ材料であるから、前記溶着接合材が前記成型体接合部と溶け合うことで、より接合密着性が得られやすくなる。
このように、成型体の母材が、溶着後はマイクロ波誘電溶着体の前記溶着接合材と一体となるから、溶着される接合部の溶着強度は異種の材料を用いたときより強くできる。特に、一度に複数のシール部を有する多層構造品をマイクロ波誘電溶着体2を挟んでマイクロ波を照射させるだけで、1回で溶着、シールを行うことができる。例えば、箱の外周面のみならず、箱の内部まで均一に溶着することができる。
まず、成型体の母材としては、一般の熱可塑性樹脂が使用できる。例えば、エンジニアリング・プラスチック、スーパー・エンジニアリング・プラスチックを用いることができる。具体的には、ポリアミド(ナイロン、芳香族ポリアミド等)、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等がある。そして、スーパーエンプラとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアレート、液晶ポリマー、ポリアミドイミド等が使用できる。
ここで、本発明の実施の形態としては、金属、熱硬化性樹脂からの代替として選択されている融点が約280℃の高い耐熱性及び優れた耐薬品性と難燃剤を何ら添加せずに自己消火性を実現する高機能樹脂材料として知られているポリフェニレンサルファイド(以下、単に、『PPS』という)樹脂を選択した。また、機械強度、耐熱性、耐薬品性、難燃性を維持しながら、耐衝撃性とウエルド強度を高める材料であることからもこの材料を特定したものである。
このようなPTC特性は、特定のフェライト材料や、PTCサーミスタ等が有している。このような材料を発熱粒子として用いることで特定の所望温度まで昇温させて、所望の溶着温度を維持できるマイクロ波誘電溶着体が得られる。
本発明のマイクロ波誘電溶着体には溶着時の成型体接合部と同じ熱可塑性樹脂の溶着接合材が配されている。成型体接合部の母材と同種の熱可塑性樹脂を溶着接合材として配することで成型体接合部とマイクロ波誘電溶着体が溶け合いやすくなり良好な溶着が得られやすくなる。本発明の実施の形態では母材にPPS樹脂を選択していることから溶着接合材も同種のPPS樹脂を選択している。
即ち、マイクロ波誘電溶着体のバインダーは、直接成型体接合部間を接着するものではなく、溶着接合材が溶融し、それによって成型体接合部間を母材と同一樹脂である溶着接合材が溶着するとき、その溶着した成型体接合部間を加熱によって溶融しない熱硬化性樹脂であるバインダーで機械的に補強することができ、成型体接合部間が加熱状態にあっても機械的強度を得ることができるものである。
なお、このマイクロ波誘電溶着体として形状維持ができる熱硬化性樹脂からなるバインダーとしては、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)、ジリアルフタレート樹脂(PDAP)等の使用が可能である。
Ni−Zn系フェライト粉からなる発熱粒子、熱可塑性樹脂のPPS粉末からなる溶着接合材、熱硬化性樹脂の液状エポキシ樹脂からなるバインダーを、所定の配合割合で混合し、所定の金型に入れて板状の長円環として圧縮成形した後に熱処理であるアニールをしてマイクロ波誘電溶着体を得た。他のマイクロ波誘電溶着体の試験片として円形、楕円形、三角形の各種サイズの異なったものも圧縮成形し、その後に熱処理して試験片として使用したが、その違いがなかったので、一般的な説明とする。
更に詳しくは、その配合比は、Fe2O3が64〜69wt%、CuOが7〜22wt%、ZnOが10〜22wt%、NiOが0〜4wt%である。
なお、発明者らの実験により、Ni−Zn系フェライト粉の量は、PPS粉末、エポキシ樹脂の配合割合に比較して、多いほど高効率で温度上昇でき、良好な溶着状態が得られることが判明した。
そして、この「レーザ回折・散乱法によって測定した中位径」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算重量部が50%となる粒子径(D50)をいう。
また、上記数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。この誤差の観点から見ると、平均粒子径との差も僅少であり、平均粒子径=中位径と見做すこともできる。
また、バインダー量が少なくなるとマイクロ波誘電溶着体の形成が困難となるためバインダー量についても最小配合量が存在する。
即ち、PTCサーミスタに通電すると、所定の温度に到達するまでに急激に温度上昇が行なわれ、キュリー温度を超えると、温度上昇によって抵抗値が大きくなり、所定の抵抗値で平衡するから、所定以上の誘電体損失の増加が生じない。
このPTCサーミスタにおいては、希土類の配合のみではなく、例えば、Sr、Pbの配合量を制御することにより、昇温停止温度を変化させることができる。したがって、PTCサーミスタを発熱粒子10として使用することも有り得る。
まず、圧縮成形時の圧縮荷重によってマイクロ波誘電溶着体の物性に差が生じることが分かった。図4は圧縮成形して300℃でアニールしたマイクロ波誘電溶着体を300℃の高温中で圧縮したときのマイクロ波誘電溶着体の破壊強度と圧縮成形時の圧縮荷重の関係を示した図であり、圧縮荷重は1分間加えている。図4に示すように、圧縮荷重を15MPa、8MPa、4MPaの3段階に印加したとき、圧縮荷重の増加によって破壊強度の増加が確認された。また、4MPaから8MPaへの圧縮荷重の増加による破壊強度の増加に比べて、8MPaから15MPaへの圧縮荷重の増加による破壊強度の増加は少なくなっている。このことから、圧縮荷重の増加によって破壊強度は増加するが8MPa以上ではその効果は小さいといえる。この結果から、圧縮荷重を8MPa以上であることが望ましいと確認された。
本実施例のマイクロ波誘電溶着体の形状は、熱可塑性樹脂の成型体接合部の形状に合わせた適宜形状とすることができ、本実施の形態ではその形状として図2(a)に示すように長円のマイクロ波誘電溶着体2とした。
そして、マイクロ波誘電溶着体2の実施例の構成は、図3(a)の長円のマイクロ波誘電溶着体2をB−B切断線で切断すると、図3(b)に示すように、マイクロ波の照射により特定の温度まで昇温すると当該昇温が停止する灰色で示した発熱粒子10、及び溶着する母材の熱可塑性樹脂と同一材料からなり、母材の熱可塑性樹脂と溶け合うことにより溶着する熱可塑性樹脂からなる白色で示した溶着接合材20と、それら発熱粒子10及び溶着接合材20を混合して一体化する熱硬化性樹脂からなるバインダー30によって構成されている。このような構成を有するマイクロ波誘電溶着体2は、発熱粒子10と溶着接合材20にバインダー30を添加して混合した成形材料を長円形の金型に充填させた後圧縮成形することで成形品とし、そして圧縮成形で得られた成形品をアニールすることでマイクロ波誘電溶着体2となる。
PPS樹脂の成型体1は、図2(b)に示すように、円筒形の空隙3を上下に分割したアッパー4とロア5から構成されており、溶着する箇所はロア5側が断面凹溝5aとし、アッパー4側が断面凸条4aとし、空隙3の周囲に形成した。ロア5側が断面凹溝5aの溝幅と、アッパー4側の凸条4aの幅は、嵌め合い嵌合する寸法差に形成されている。
さらに、上記実施の形態のマイクロ波誘電溶着体2は、成型体1の接合部の断面構造の一方が凹、他方が凸の噛み合わせ形状とした溶着構造の凹断面構造の窪みの中央にマイクロ波誘電溶着体2を配置したものである。そのため、機械的強度の高い接合部間の接続ができ、溶着によって成型体1の接合部から溶融樹脂が成型体1の外面にはみ出しにくく見栄えもよいし、密閉性も容易に得ることができる。
そして、上記実施の形態のマイクロ波誘電溶着体の発熱粒子10は、マイクロ波の照射により特定の温度まで温度上昇するNi−ZnフェライトまたはMg系フェライトの粉末材料としたものであり、これらはPTC特性を持っている。このため簡単に温度特性を設定でき、例えば、温度特性は、粉末の成分、配合量、粒子の中位径の大きさによって制御することができる。
なお、PTC特性はNi−ZnフェライトまたはMg系フェライトの粉末材料以外にもPTCサーミスタがあり、これの粉末材料の、成分、配合量、粒子の中位径の大きさを制御して用いることも有り得る。このように、特定温度を維持するためにはPTC特性を持った材料が適している。
そして、接合部の母材と一体となって成型体を形成させるための溶着接合材20は、接合する母材と同一材料とすることで溶着時に母材と容易に溶け合うことができ、この溶融結合によって一体性及び密着性を得るものである。したがって、成型体の母材となる熱可塑性樹脂が、溶着後はマイクロ波誘電溶着体2の溶着接合材20と一体となるから、論理的にも、機械的強度が溶着接合材20においては最大に溶着できる。
このようなマイクロ波誘電溶着体2を使用することで、一度に複数のシール部を有する多層構造品をマイクロ波誘電溶着体2を挟んでマイクロ波を照射させるだけで、1回で溶着、シールを行うことができる。例えば、箱の外周面のみならず、箱の内部まで均一に溶着することができる。
加えて、上記実施の形態のマイクロ波誘電溶着体のバインダー30は、部品寸法のバラツキを吸収することで、溶着後の寸法精度を確保できる。
3 空隙
4 アッパー
4a 凸条
5 ロア
5a 凹溝
10 発熱粒子
20 溶着接合材
30 バインダー
Claims (4)
- マイクロ波の照射により、接合される成型体接合部の母材となる熱可塑性樹脂を溶融させる特定の温度まで昇温すると当該昇温が停止する材料からなる発熱粒子と、
前記成型体接合部の母材と同一の熱可塑性樹脂からなり、前記成型体接合部の母材と溶け合うことにより溶着する溶着接合材と、
前記発熱粒子及び前記溶着接合材を結合する熱硬化性樹脂からなるバインダーと
を具備し、
前記発熱粒子及び前記溶着接合材に前記バインダーが配された成形材料を圧縮成形により一体化した成形品がアニールされてなることを特徴とするマイクロ波誘電溶着体。 - 前記発熱粒子は、PTC(Positive Temperature Coefficient)特性を有するフェライト材料としたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波誘電溶着体。
- 前記発熱粒子は、Ni−ZnフェライトまたはMg系フェライトの粉末材料としたことを特徴とする請求項2に記載のマイクロ波誘電溶着体。
- マイクロ波の照射により、接合される成型体接合部の母材となる熱可塑性樹脂を溶融させる特定の温度まで昇温すると当該昇温が停止する材料からなる発熱粒子と、
前記成型体接合部の母材と同一の熱可塑性樹脂からなり、前記成型体接合部の母材と溶け合うことにより溶着する熱可塑性樹脂からなる溶着接合材と、
前記発熱粒子及び前記溶着接合材を結合する熱硬化性樹脂からなるバインダーを具備し、
前記発熱粒子及び前記溶着接合材に前記バインダーを混合し圧縮成形して一体化した後にアニールしたマイクロ波誘電溶着体を前記成型体接合部間に配し、
前記マイクロ波の照射により前記マイクロ波誘電溶着体の誘電加熱を行うと共に、前記成型体接合部相互間を圧縮する圧力を加えて溶着することを特徴とするマイクロ波誘電溶着体による溶着方法。
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