JP6149621B2 - アンテナ装置 - Google Patents

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Description

実施の形態はアンテナ装置等に関連する。
移動通信の技術分野では高速大容量低遅延等を目的として様々な技術が開発されている。例えば、ロングタームエボリューション(LTE)アドバンス(LTE-Advance)等のような通信システムでは、複数のキャリア周波数を同時に使用することで、高スループット化等を図ることが許容されている。複数のキャリア周波数を同時に使用することは、キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation:CA)と呼ばれる。
キャリアアグリゲーション(CA)では複数のキャリア周波数が同時に使用されるので、通信装置のアンテナは、複数のキャリア周波数に共振するマルチバンドアンテナでなければならない。マルチバンドアンテナの一例は、特定のキャリア周波数に共振するアンテナを通信装置の中に複数個収容する。
特開2006-42190号公報 国際公開第2006/030708号 特開2008-141739号公報 国際公開第2012/124248号
Kuo-Liang Wu, et al.,"Wire Antenna for Dual Wideband Cellular Phone Application", Asia Pacific Microwave Conference, 2009. APMC 2009. pp.1796-1798
しかしながら、複数のキャリア周波数毎に別個のアンテナを通信装置に収容するとなると、通信装置の中で複数のアンテナ(すなわち、アンテナ装置)により占有される面積又は体積が大きくなり、通信装置の小型化等を図ることが困難になってしまう。
一つの側面では、本発明は、複数の周波数で共振するアンテナ装置の小型化を図ることを課題とする。
一態様によるアンテナ装置は、
一方端と、他方端と、前記一方端及び前記他方端の間に伸びる延伸部とを有し、前記一方端は給電部に結合され、前記延伸部はループ状に形成され、前記他方端は前記延伸部に結合され、前記ループの途中にキャパシタが設けられている、アンテナ装置。
複数の周波数で共振するアンテナ装置の小型化を図ることが可能である。
通信装置の一例を示す図。 実施の形態によるアンテナ装置の一例を示す図。 キャパシタが分布定数回路により形成されている様子を示す図。 延伸部extが点Fで屈曲している例を示す図。 アンテナ装置が基本周波数f1で共振している様子を示す図。 アンテナ装置が共振周波数f2で共振している様子を示す図。 アンテナ装置に対するSパラメータS11の周波数依存性を示す図。 キャパシタが設けられていないモノポールアンテナに対するSパラメータS11の周波数依存性の比較例を示す図。 キャパシタが設けられていないモノポールアンテナを示す図。 様々なキャパシタCi(i=1,2,3,4,5)に対するSパラメータS11の周波数依存性を示す図。 アンテナ要素Antが或る場所αで物理的に切断されたモデルを示す図。 切り離しモデルにおいて、様々なキャパシタCi(i=1,2,3,4,5)に対するSパラメータS11の周波数依存性を示す図。 切り離しモデルでないモデルによるアンテナ装置が共振周波数で共振している場合の電流分布を示す図。 切り離しモデルによるアンテナ装置が共振周波数で共振している場合の電流分布を示す図。 図2に示すアンテナ装置を他の例との比較のために示す図。 キャパシタCiが延伸部の点Eと点Bとの間に設けられたアンテナ装置を示す図。 点Fと点Kが結合されたアンテナ装置を示す図。 ループが2つ重ね合わせられたアンテナ装置を示す図。 点Bからモノポールアンテナを延伸させたアンテナ装置を示す図。 延伸部extが板状の線路で形成された様子を示す図。 ダイポールアンテナによりアンテナ装置を形成した例を示す図。 スイッチSを利用してキャパシタを切り替えることが可能なアンテナ装置の例を示す図。 整合損がない状態での効率ηの周波数依存性を示す図。 小さな値のSパラメータS11をもたらす共振周波数が、整合損のない状態での効率ηを最大にはしない様子を示す図。 キャパシタの容量値がCyである場合のSパラメータS11が所望のキャリア周波数fxで小さな値になるように整合回路が調整された後のSパラメータS11及び効率ηの周波数依存性を示す図。 アンテナ装置を設計する設計手順を示す図。 アンテナ要素Antが、給電部OCに結合されておらず、キャパシタも接続されていない状態を示す図。 アンテナ装置についてのSパラメータS11の周波数依存性を示す図。 アンテナ装置についてのスミスチャートを示す図。 1つのループの中に給電部OCとキャパシタとを直列に設け、ループを形成しているアンテナを示す図。 給電部OCから伸びる延伸部extがループを形成しておらず、ループの途中にキャパシタが設けられたアンテナを示す図。 モノポールアンテナを2つ併存させたアンテナ装置を示す図。
添付図面を参照しながら以下の観点から実施形態を説明する。図中、同様な要素には同じ参照番号又は参照符号が付されている。
1.通信装置
2.アンテナ装置
3.動作
3.1 基本動作
3.2 切り離しモデル
4.変形例
4.1 アンテナ形状についての変形例
4.2 板状アンテナを利用する変形例
4.3 ダイポールアンテナを利用する変形例
4.4 スイッチを利用する変形例
5.Sパラメータ、効率及び共振周波数の相互関係
6.設計方法
7.他のアンテナとの比較
<1.通信装置>
図1は通信装置の一例を示す。通信装置1はマルチバンドアンテナ等のようなアンテナ装置を収容するアンテナスペース2を有する。なお、アンテナスペース2は、図1の例に限定されるものではなく、例えば通信装置1の上部にあってもよい。通信装置1は、1つ以上のキャリア周波数を用いて無線通信を行うことが可能な適切な如何なる装置であってもよい。例えば、通信装置1は、携帯電話、ユーザ装置、情報端末、高機能携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、パーソナルディジタルアシスタント(PDA)、携帯用パーソナルコンピュータ、パームトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ等であってもよい。更に通信装置1は移動端末であってもよいし、固定端末であってもよい。例えば通信装置1は基地局やアクセスポイント等であってもよい。実施の形態によるアンテナ装置は、モノポールアンテナと実質的に同程度のスペースしか占めないので、限られたアンテナスペースしか利用できない携帯端末に特に有利である。
通信装置1は、1つ以上のキャリア周波数を利用して無線通信を行うことができる。特に、複数のキャリア周波数を利用して無線通信を行うことは、キャリアアグリゲーション(CA)と言及される。キャリアアグリゲーション(CA)により一緒に使用される複数のキャリア周波数は、異なる周波数バンドに属していてもよいし、同一の周波数バンドに属していてもよい。周波数バンドは、極長波(30-3kHz)、超長波(3-30kHz)、長波(30-300kHz)、中波(300kHz-3MHz)、短波(3-30MHz)、超短波(30-300MHz)、マイクロ波(300MHz以上)等のような分類であってもよい。周波数バンドは、特に、マイクロ波のうち、I、G、P、L、S、C、X、Ku、K、Ka、V、Wバンドであってもよい。これらは周波数バンドの一例にすぎず、他の分類法に基づく周波数バンドが使用されてもよい。
一例として、キャリアアグリゲーション(CA)により同時に使用される周波数は、800MHz帯のキャリア周波数及び2GHz帯のキャリア周波数のような異なる周波数バンドに属する2つのキャリア周波数であってもよい。別の例として、キャリアアグリゲーション(CA)により同時に使用される周波数は、800MHz帯のキャリア周波数及び700MHz帯のキャリア周波数のような同一の周波数バンドに属する2つのキャリア周波数であってもよい。2つだけでなく3つ以上のキャリア周波数が同時に使用されてもよい。
<2.アンテナ装置>
通信装置1はキャリアアグリゲーション(CA)により無線通信を行う場合がある。そのため、通信装置1のアンテナ装置は、複数のキャリア周波数の電波を同時に送受信することが可能なマルチバンドアンテナであることが好ましい。
図2は実施の形態によるアンテナ装置の一例を、平面図、UU線断面図及びVV線断面の観点から示す。ただし、平面図において誘電体は描かれていない点に留意を要する。このようなアンテナ装置は図1のアンテナスペース2に収容される。アンテナ装置は、地板Gと、給電部OCと、アンテナ要素Antと、整合回路Mとを有する。
給電部OCは地板G上で所定の周波数の電波を生成するための信号を供給する。
アンテナ要素Antは、一方端P1と、他方端P2と、一方端P1及び他方端P2の間に伸びる延伸部extとを有する4分の1波長アンテナである。従ってアンテナ要素Antはモノポールアンテナと言及されてもよい。4分の1波長アンテナAntは、或る基本周波数f1で共振し、基本周波数f1に対応する基本波長λ1(=光速/f1)の4分の1の長さ(λ1/4)が、延伸部extの長さに対応する。アンテナ要素Antは、点A、点B、点Dの3箇所で直角に曲がった線路により形成される。一方端P1は整合回路Mを介して給電部OCに結合される。アンテナ要素Antの他方端P2は、延伸部extのうち点E、点B、点D、点Fが1つのループを描くように、キャパシタCiを介して点Eに結合されている。
なお、図2における点A、点B、点D、点E、点Fは延伸部extの途中の場所を明示するために強調して描かれているにすぎず、実際に黒丸のような構造が存在するわけではない点に留意を要する。
キャパシタCiは、他方端P2と延伸部extの途中の点Eとを容量結合する。キャパシタCiは、VV線断面図に示されているような個別素子として形成されていてもよいし、或いは図3に示されているような分布定数回路として形成されていてもよい。分布定数回路の場合、キャパシタCiの容量は、線路間の隙間又はギャップdや、線路の長さR又は線路の面積等により決定される。
なお、キャパシタCiが個別素子である場合、図4に示すように、他方端P2と点Eとの間の距離が個別素子の長さに合うように、延伸部extが点Fで屈曲し、他方端P2と点Eとの間の距離を短くしてもよい。図4に示す例において、延伸部extの線幅は約1mmであり、点BD間及び点EF間の距離が約2mmであり、キャパシタCiの両端の間の距離が約0.6mmであるが、これに限定されるものではない。
具体的な動作については後述するが、図2の点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiにより形成されるループは、共振周波数f2=[2π√(L・Ci)]-1で共振する。Lはループのインダクタンスを表す。共振周波数f2は基本周波数f1とは異なる。すなわち、アンテナ要素Antは、基本周波数f1だけでなく、共振周波数f2にも共振するアンテナ装置を形成する。
整合回路Mは、アンテナ要素Antと給電部OCとの間でエネルギ損失が実質的に0になるようにインピーダンスを調整する。更に、整合回路Mのインピーダンスを調整することで、アンテナ要素Antを介して送受信される電波の周波数(共振周波数又は整合周波数)を或る程度調整することができる。
図2のUU線断面図に示されているように、アンテナ要素Antは地板G上に設けられた誘電体上の線状の線路として実現されてもよい。線状の線路以外の形態については、「4.2 板状アンテナを利用する変形例」において説明する。誘電体は適切な如何なる材料で形成されていてもよい。一例として、誘電体はガラスエポキシ樹脂により形成されたFR4(Flame Retardant Type 4)、セラミックス、テフロン(登録商標)等の材料で形成されていてもよい。アンテナ要素Antのパターンは適切な如何なる導電性の材料で形成されていてもよい。一例として、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、ステンレス等のような導電性材料を誘電体上にめっきすることで、アンテナ要素Antのパターンが形成されてもよい。導電性材料の導電率は、一例として、5.8×105(S/m)である。
<3.動作>
<<3.1 基本動作>>
図2に示すアンテナ装置の動作を説明する。上述したように、アンテナ要素Antは、基本周波数f1だけでなく、共振周波数f2にも共振する。
図5はアンテナ装置が基本周波数f1で共振している様子を模式的に示す。矢印は電流の流れに対応する。アンテナ要素Antの一方端P1から他方端P2に至る延伸部extの長さは、基本周波数f1に対応する基本波長λ1の4分の1(=λ1/4)に等しい。基本波長λ1は、λ1=光速/f1の関係を満たす。アンテナ装置が基本周波数f1で共振している場合、アンテナ要素Antのうち、一方端P1、点A、点E、点B、点D、点F及び他方端P2の部分が、モノポールアンテナとして動作している。
図6はアンテナ装置が共振周波数f2で共振している様子を模式的に示す。矢印は電流の流れに対応する。アンテナ要素Antのうち、点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiにより形成されるループの部分が、共振周波数f2=[2π√(L・Ci)]-1で共振する。Lはループのインダクタンスを表す。共振周波数f2は基本周波数f1とは異なる。すなわち、アンテナ装置が共振周波数f2で共振している場合、ループの部分は、右側の等価回路図に示すようなLC共振回路を形成している。
図7は図2に示すアンテナ装置のSパラメータS11を様々な周波数について計算したシミュレーション結果を示す。シミュレーションでは、図2に示す延伸部extのうち点Aから点Bまでの距離が約49mmであり、点Bから点Dまでの距離が約2mmであり、延伸部extの線幅が約1mmであり、キャパシタCiの容量値が約3.6pFであるとした。SパラメータのうちS11は、アンテナ装置に入力された電波のうち反射された電波の強度に対応し、リーターンロス又は反射率と言及されてもよい。S11が大きい周波数の電波は反射されてしまうことを表す一方、S11が小さい周波数の電波は反射されないことを表す。すなわち、反射された電波はアンテナから出力されず、通信に使用することはできない。逆に、反射されない電波が、アンテナ装置における電流分布を形成する。従って、小さなS11をもたらす周波数(共振周波数)で電波を送受信することができる。
図7に示す例の場合、0.8GHz(800MHz)付近でS11が小さくなっているのは、アンテナ装置が基本周波数f1で共振していることに対応する。更に、0.7GHz(700MHz)付近でS11が小さくなっているのは、アンテナ装置が共振波数f2で共振していることに対応する。従って、図7に示すようなSパラメータS11の特性を示すアンテナ装置により、700MHz帯に属する周波数キャリアと、800MHz帯に属する周波数キャリアとを同時に利用して無線通信を行うことが可能になる。
図8は図7に示す例に対する比較例を示す。図8は、図9に示すようなアンテナのSパラメータS11を示す。図9に示す構造は、図2に示す構造と同様であるが、他方端P2を点Eに結合するキャパシタCiが設けられていない点が異なる。このアンテナは図8に示すように基本周波数f1でしか共振しない。
図2に示すようなアンテナ装置は、他方端P2をキャパシタCiを介して延伸部extの点Eに結合するという簡易な構造により、モノポールアンテナと実質的に同じサイズで、複数の周波数に共振することができる。
図10は、キャパシタCi(i=1,2,3,4,5)の容量値を変化させた場合のシミュレーション結果を示す。C1=1pF、C2=2pF、C3=3pF、C4=4pF及びC5=5pFの5種類の容量値について、SパラメータS11が計算されている。シミュレーションでは、図2に示す延伸部extのうち点Aから点Bまでの距離が約49mmであり、点Bから点Dまでの距離が約2mmであり、線幅は約1mmであるとした。この点は図7のシミュレーションの場合と同じである。
図10に示されているように、キャパシタCiの各々の値についてのSパラメータS11は、基本周波数及び共振周波数の2つの周波数で低い値を示し、これら2つの周波数で共振していることが分かる。例えばキャパシタCiの容量値が1pFから5pFまで増えるにつれて(キャパシタンスの値がC1、C2、C3、C4、C5の順に変化する場合に)、共振する周波数は徐々に低くなっている。例えば、基本周波数に関する共振の場合、キャパシタンスがC1=1pF〜5pFであるときの基本周波数は約1.2GHz〜1.7GHzの範囲内で徐々に減少している。共振周波数についても、キャパシタンスがC1=1pFから5pFまで増えるにつれて、0.75GHz〜1.2GHzの範囲内で徐々に減少している。これらは、共振する周波数が[2π√(L・Ci)]-1に従うという理論に合致する。
図10に示す例ではキャパシタCiの容量値は5種類しか示されていないが、他の様々な容量値について、Sパラメータのグラフを描くことが可能である。すなわち、キャパシタCiの何らかの容量値について、SパラメータS11が低くなる周波数(共振周波数)が存在し、容量値が増加するにつれて共振周波数は低くなり、容量値が減少するにつれて共振周波数は高くなる。逆に、或る周波数が共振周波数となるように、SパラメータS11を低くする容量値が存在し、共振周波数が高くなるにつれて容量値は減少し、共振周波数が低くなるにつれて容量値は増加する。
<<3.2 切り離しモデル>>
図2のアンテナ要素Antのうち、点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiにより形成されるループの部分が共振している場合、ループの部分は他の部分から見るとハイインピーダンス状態(インピーダンスが高い状態)になっている。ある回路がハイインピーダンス状態である場合、その回路(すなわち、ループの部分)は他の部分から物理的に切り離されたのと同じ状態になっているはずである。これを検証するため、図11に示すように、アンテナ要素Antが或る場所αで物理的に切断されたモデル(切り離しモデル又は分離モデル)についてシミュレーションを行う。図11に示す構造は、場所αで切断されている点を除いて、図2に示す構造と同じである。場所αは、アンテナ要素Antにおいて、点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiによるループの部分とそれ以外の部分との間の境界に存在する。
図12は、図11に示すような切り離しモデルにおいて、キャパシタCi(i=1,2,3,4,5)の容量値を変化させた場合のシミュレーション結果を示す。C1=0.5pF、C2=1.125pF、C3=1.75pF、C4=2.375pF及びC5=3pFの5種類の容量値について、SパラメータS11のシミュレーションが行われている。シミュレーションでは、延伸部extのうち点Aから点Bまでの距離が50mmであり、点Bから点Dまでの距離が5mmであり、線幅は1mmであるとした。この点は図7のシミュレーションの場合と同じである。
図12に示されているように、キャパシタCiの各々の値についてのSパラメータS11は、アンテナ装置が、約1.7GHzの基本周波数で共振している。図2に示すような物理的に切り離されていないアンテナ装置の場合、基本周波数f1 (非分離)に対応する波長λ1 (非分離)の4分の1は、一方端P1から他方端P2までの長さに等しい。これに対して、図11に示すような切り離しモデルの場合、基本周波数f1 (分離)に対応する波長λ1 (分離)の4分の1は、一方端P1から分離点αまでの長さに等しい。従って、波長λ1 (非分離)の方がループの分だけ波長λ1 (分離)より長い(波長λ1 (非分離)>波長λ1 (分離))。これは、f1 (非分離)<f1 (分離)であることを意味する。実際、キャパシタCiの値が3.36pFであった場合、図10に示すように基本周波数f1 (非分離)は約1.3GHzであった。これに対して、切り離しモデルの場合、図12に示すように基本周波数f1 (分離)は約1.7GHzであり、f1 (非分離)<f1 (分離)が成立している。
更に、図11に示すアンテナ装置は、図12に示されているように、キャパシタCiの値に応じた共振周波数でも共振している。キャパシタンスCiの値が0.5pFから3pFまで増えるにつれて(キャパシタンスの値がC1、C2、C3、C4、C5の順に変化する場合に)、共振を起こす周波数は徐々に低くなっている。例えば、キャパシタンスがC1=0.5pFであるときの共振周波数は約2.1GHzであり、キャパシタンスがC2=1.125pFであるときの共振周波数は約1.5GHzであり、キャパシタンスがC3=1.75pF、C4=2.375pF、C5=3pFのように増えるにつれて、基本周波数は徐々に減少している。これは、共振周波数が[2π√(L・Ci)]-1に従うという理論に合致する。
図12に示す例でもキャパシタCiの容量値は5種類しか示されていないが、他の様々な容量値について、SパラメータS11のグラフを描くことが可能である。すなわち、キャパシタCiの何らかの容量値について、SパラメータS11が低くなる周波数(共振周波数)が存在し、容量値が増加するにつれて共振周波数は低くなり、容量値が減少するにつれて共振周波数は高くなる。共振周波数及び容量値の関係に関し、図12に示す例は図10に示す例と同様な性質を示すので、切り離しモデルの妥当性が裏付けられる。
図13は図2に示すようなアンテナ装置が共振周波数で共振している場合の電流分布を示す。図14は図11に示すような切り離しモデルによるアンテナ装置が共振周波数で共振している場合の電流分布を示す。ただし、図13及び図14の何れにおいても、他方端P2はキャパシタCiを介して点Eに接続されているが、図示の簡明化を図るため、キャパシタCiは図示されていない点に留意を要する。図13及び図14を参照すると、両者がかなり類似していることが分かる。このことからも、切り離しモデルは、実施の形態によるアンテナ装置の共振状態を適切に表現していると言える。
実施の形態のアンテナ装置によれば、基本周波数f1で共振するモノポールアンテナ(アンテナ要素Ant)の他方端P2をキャパシタCiを介して延伸部extに結合するという簡易な構成により、基本周波数f1とは異なる共振周波数f2でも共振することができる。モノポールアンテナに対して追加する部材はキャパシタCiに過ぎないので、実施の形態によるアンテナ装置は、モノポールアンテナと実質的に同じサイズで済む。特に、アンテナ装置が同一周波数バンドに属する複数のキャリア周波数に共振しなければならない場合であっても、アンテナ装置のサイズを小型にすることができる。
<4.変形例>
<<4.1 アンテナ形状についての変形例>>
実施の形態によるアンテナ装置は、図2に示す例に限定されず、様々な形態で実現されてよい。
図15は他の例との比較のため図2に示すアンテナ装置と同じ形態を示す。一方端P1と給電部OCとの間には、実際には整合回路Mが存在するが、図示の簡明化のため整合回路Mは図示されていない点に留意を要する。上述したように、アンテナ装置は、一方端P1から他方端P2に至る延伸部extにより基本周波数f1で共振する一方、点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiによるループの部分により共振周波数f2=[2π√(L・Ci)]-1で共振する。
図16はキャパシタCiが延伸部の点Eと点Bとの間に設けられている例を示す。この例の場合、アンテナ装置は、一方端P1から点A、点E、キャパシタCi、点B、点Hに至る部分により基本周波数f1で共振する一方、点E、キャパシタCi、点B、点D、点F、他方端P2及び点Eのループの部分により共振周波数f2=[2π√(L・Ci)]-1で共振する。
図17は図15に示す例において、点Fと点Kが結合された例を示す。この例の場合、アンテナ装置は、延伸部extのうち、一方端P1から点A、点K、点E、点B、点Dに至る部分と、一方端P1、点A、点K、点J、点F、点Dに至る部分とにより基本周波数f1で共振する。すなわち、点Aから点Kに至る電流は、点Eの側と点Jの側とに分岐し点Dに至る一方、逆に点Jから点Kに至る電流と点Eから点Kに至る電流とは点Kにおいて合流し、点Aに至る。更に、点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiによるループの部分が共振周波数f2=[2π√(L・Ci)]-1で共振する。
図15、図16、図17に示すアンテナ装置は2つの周波数に共振しているが、実施の形態は2共振に限定されず、3つ以上の周波数に共振することも可能である。
図18は図15に示すようなループを2つ重ね合わせた例を示す。図18に示す例の場合、延伸部extは、一方端P1と他方端P2との間で(より正確には、点Aと点Eとの間で)別のループを形成するように分岐し、別のループの途中に別のキャパシタCjが設けられている。アンテナ装置は、一方端P1から点A、点E、点B、点D、点F、他方端P2に至る部分により基本周波数f1で共振する一方、点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiによるループの部分により共振周波数f2=[2π√(Li・Ci)]-1で共振する。Liはループの部分のインダクタンスである。ここまでは、図15に示す例と同じである。
更に、図18に示すアンテナ装置の場合、延伸部extのうち、点EE、点BB、点DD、点FF、他方端PP2及びキャパシタCjによるループの部分が、共振周波数f3=[2π√(Lj・Cj)]-1で共振する。Ljは点EE、点BB、点DD、点FF、他方端PP2及びキャパシタCjによるループのインダクタンスである。インダクタンスLiとLjは同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、基本周波数f1、共振周波数f2、及び共振周波数f3は互いに異なっていることを要する。
図19は図15に示す例において、点Bからモノポールアンテナを延伸させた例を示す。図19に示す例の場合、アンテナ装置は、一方端P1から点A、点E、点B、点D、点F、他方端P2に至る部分により基本周波数f1で共振する一方、点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiのループにより共振周波数f2=[2π√(L・Ci)]-1で共振する。ここまでは、図15に示す例と同じである。
更に、図19に示すアンテナ装置の場合、延伸部extは点Bにおいて点Dの側と点BBの側に分岐している。従って、一方端P1から点A、点E、点B、点BB、点DD、点FF、他方端PP2に至る部分は、第3の共振周波数f3で共振する。第3の共振周波数f3に対応する第3の共振波長λ3の4分の1の長さは、一方端P1から点A、点E、点B、点BB、点DD、点FF、他方端PP2に至る経路の長さに等しい。図18の例の場合と同様に、基本周波数f1、共振周波数f2、及び共振周波数f3は互いに異なっていることを要する。
図15ないし図19に示す例は単なる具体例に過ぎず、アンテナ装置の他の様々な形態が可能である。ただし、何れの例においても、延伸部extの一部はループを形成し、そのループの途中にキャパシタが設けられている。
<<4.2 板状アンテナを利用する変形例>>
図2ないし図6、及び図15ないし図19に示す例において、延伸部extは、線状の線路で形成されてもよい。或いは、図20に示すように、板状の線路で形成された延伸部extの断面の形状が、図2ないし図6、及び図15ないし図19に示すような形状になっていてもよい。この場合も他方端P2は延伸部extにキャパシタCiを介して容量結合されている。図20では個別素子による容量結合の例が示されているが、図3に示すような分布定数回路により容量結合が行われてもよい。板状の線路が使用される場合、一方端P1から、点A(辺A)、点B(辺B)、点D(辺D)、点F(辺F)及び他方端P2に至るまでの距離と、線路の幅wとの合計が、基本波長λ1の4分の1の長さに等しければ、基本周波数f1の共振が生じる。従って、板状のアンテナを利用することは、アンテナ装置の更なる小型化を図る等の観点から好ましい。
<<4.3 ダイポールアンテナを利用する変形例>>
図2ないし図6、図15ないし図20に示す例では、基本周波数f1(基本波長λ1)で共振するアンテナ要素Antが、モノポールアンテナを形成していたが、実施の形態はモノポールアンテナに限定されず、ダイポールアンテナが形成されてもよい。
図21は、ダイポールアンテナによりアンテナ装置を形成した例を示す。一方端P1、PP1と給電部OCとの間には、実際には整合回路Mが存在するが、図示の簡明化のため整合回路Mは図示されていない点に留意を要する。アンテナ装置は、一方端P1から点A、点E、点B、点D、点F、他方端P2と一方端PP1から点AA、点EE、点BB、点DD、点FF、他方端PP2に至る延伸部extにより基本周波数f1で共振する一方、点E、点B、点D、点F、他方端P2及びキャパシタCiによるループの部分により共振周波数f2=[2π√(L・Ci)]-1で共振する。同様に、アンテナ装置は、点EE、点BB、点DD、点FF、他方端PP2及びキャパシタCiによるループの部分により共振周波数f3=[2π√(L・Ci)]-1で共振する。
一方端P1から点A、点E、点B、点D、点F、他方端P2に至るまでの長さは基本波長の4分の1に等しく、一方端PP1から点AA、点EE、点BB、点DD、点FF、他方端PP2に至るまでの長さも基本波長の4分の1に等しい。従って図21に示すアンテナ装置は基本周波数f1で共振する場合、ダイポールアンテナとして動作する。
なお、アンテナ装置の小型化を図る観点からは、図2ないし図6、図15ないし図20に示すようにモノポールアンテナを形成することが好ましい。
<<4.4 スイッチを利用する変形例>>
図22は、スイッチSを利用して、他方端P2と点Eとを結合するキャパシタを切り替えることが可能なアンテナ装置の例を示す。図示の例の場合、スイッチSは、C1ないしC5の5種類の容量値のうち何れか1つを選択することが可能である。キャパシタの容量値の種類は任意である。
<5.Sパラメータ、効率及び共振周波数の相互関係>
次に、所望の複数のキャリア周波数の電波を同時に送受信できるアンテナ装置を設計する設計手順を説明する。具体的な設計手順を説明する前に、SパラメータS11、効率η及び共振周波数の相互関係を説明する。
図10を参照しながら説明したように、図2に示すような構造のアンテナ装置の場合、SパラメータS11は、基本周波数f1の場合だけでなく、キャパシタンスに依存する共振周波数f2(=[2π√(L・Ci)]-1)でも低い値を示す。SパラメータS11は入射波のうち反射された結果、通信には利用できない電波の強度を示し、リーターンロス又は反射率と言及されてもよい。
図10を参照しながら説明したSパラメータS11の周波数依存性によれば、次のことが言える。キャパシタCiの何らかの容量値について、SパラメータS11が低くなる周波数(共振周波数)が存在し、容量値が増加するにつれて共振周波数は低くなり、容量値が減少するにつれて共振周波数は高くなる。逆に、或る周波数が共振周波数となるように、SパラメータS11を低くする容量値が存在し、共振周波数が高くなるにつれて容量値は減少し、共振周波数が低くなるにつれて容量値は増加する。
SパラメータS11の周波数依存性は、給電部OCとアンテナ要素Antとの間に設けられた整合回路Mのインピーダンスを調整することによっても或る程度制御できる。すなわち、整合回路Mを調整することで、低いS11をもたらす周波数(共振周波数)の値を制御することができる。具体的には、図10に示すようなグラフを周波数軸方向に或る程度ずらすことができる。
一方、アンテナに入力された電力Pinとアンテナから出力される電力Poutとの比率(より具体的には、比率の常用対数(10log10[Pout/Pin]))は、整合損がない状態での効率η[dB]を表す。「整合損がない」とは、アンテナ要素Antと給電部OCとが整合した状態で接続されていることを示す。従って、整合損がない状態での効率ηは、整合回路Mをどのように調整しても不変である。
図23は整合損がない状態での効率ηの周波数依存性を示す。アンテナに入力された電力Pinとアンテナから出力される電力Poutとが等しい場合、効率ηは最大となり、0[dB]を示す。図23に示されているように、0.7GHz(700MHz)ないし0.9GHz(900MHz)の周波数範囲では、キャパシタの容量値がC1=1pF、C2=2pF又はC3=3pFである場合には良い効率η(0dB付近の値)を示すが、キャパシタの容量値がC4=4pFであった場合、850MHz付近で効率ηが悪くなっている。同様に、キャパシタの容量値がC5=5pFであった場合、730MHz付近で効率ηが悪くなっている。効率ηの良否を判断するための閾値は、例えば-5dBである。
しかしながら、図10を参照すると、キャパシタの容量値がC4=4pFであった場合、850MHzの周波数は小さなSパラメータS11をもたらす共振周波数である。同様に、キャパシタの容量値がC5=5pFであった場合、730MHzの周波数も小さなSパラメータS11をもたらす共振周波数である。
従って、図10及び図23のシミュレーション結果を総合すると、整合損がない状態での効率η(図23)は、小さな値のSパラメータS11をもたらす共振周波数において悪い値しか示さない、ということが分かる。このような傾向は、キャパシタの容量値がC4又はC5の場合だけでなく、他の任意の容量値についても当てはまる。
小さな値のSパラメータS11をもたらす共振周波数が、最良の効率ηをもたらさないことは、次のように考えることができる。アンテナが共振周波数で共振している場合、図6に示すように、点E、点B、点D、点F、他方端P2、及びキャパシタCiにより形成されるループの部分が共振している。この場合、点Eから点Bに至る電流と、点Dから点Fに至る電流とは、大きさが等しく向きが反対なので、互いに相殺されてしまう。互いに相殺される電流による電力は熱エネルギとして散逸し、共振周波数において悪い値の効率ηを招いてしまう。アンテナ要素Antを形成する導体は理想的には無限大の導電率(及びゼロである抵抗率)を有するが、実際には有限の導電率(及び有限の抵抗率)を有し、アンテナ要素Antを流れる電力の一部が熱エネルギとして損失される。
図24は、小さな値のSパラメータS11をもたらす共振周波数fx、fyが、整合損のない状態での効率η(f=fx)、η(f=f7)を最大にはしない(むしろ悪化させる)様子を模式的に示す。ただし、容量値に依存する共振周波数に着目しているので、基本周波数に関するグラフは省略されている点に留意を要する。fxは、キャパシタの容量値がCxである場合に小さなSパラメータS11をもたらす周波数(共振周波数)である。fyは、キャパシタの容量値がCyである場合に小さなSパラメータS11をもたらす周波数(共振周波数)である。
従って、図2に示すアンテナ装置においてCxの容量値のキャパシタを用いてループを形成し、周波数fxで共振させたとしても、そのままでは効率ηが悪いので、適切に電波を送受信することはできない。例えば、所望のキャリア周波数がfxであった場合、キャリア周波数fxにおいて小さなSパラメータS11をもたらす容量値Cxを有するキャパシタを用いてループを形成したとしても、所望のキャリア周波数fxで適切に電波を送受信することはできない。
そこで、実施の形態では、所望のキャリア周波数fxで電波を送受信する場合、キャパシタの容量値をCxではなく、別の共振周波数fyをもたらす容量値Cyに設定する。図24の効率ηのグラフに示されているように、キャパシタの容量値がCyである場合(図24において「・・・」で示したグラフの場合)、周波数fxにおける効率ηは良い値を示す。
次に、キャパシタの容量値がCyである場合のSパラメータS11が、所望のキャリア周波数fxで小さな値になるように、整合回路Mが調整される。上述したように、SパラメータS11の周波数依存性は整合回路を調整することによって或る程度制御できる一方、整合損がない状態での効率ηの周波数依存性は、整合回路をどのように調整しても不変である。従って、キャパシタの容量値がCyである場合のSパラメータS11が、所望のキャリア周波数fxで小さな値になるように整合回路を調整すると、SパラメータS11及び効率ηの周波数依存性は、図25に示すようになる。効率ηのグラフは図24の場合と同じである。図示の簡明化のため、キャパシタの容量値がCxである場合のグラフは描かれていない。キャパシタの容量値をCyに設定し、整合回路を適切に調整することで、アンテナ装置は、所望のキャリア周波数fxにおいて高い効率ηを示し、かつ所望のキャリア周波数fxにおけるSパラメータS11の値を十分に低くすることができる。このように整合回路を活用することで、所望のキャリア周波数fxで電波を送受信することができる。
<6.設計方法>
図26を参照しながら、所望のキャリア周波数の電波を送受信できるアンテナ装置を設計する設計手順26を説明する。説明する設計手順26は、容量値に依存する共振周波数を設定する手順を示す。アンテナ要素Ant又は延伸部extの長さで決定される基本周波数についての設計は別に行われる。具体例として、基本周波数f1は800MHzであり、所望のキャリア周波数fxが700MHzであるとする。
例えば図27に示すように、給電部OCに結合されておらず(すなわち、一方端P1が開放されており)、キャパシタも接続されていない状態のアンテナ要素Antが準備される。
ステップ261において、このアンテナ要素Antの延伸部extにおける点Eと他方端P2との間から見たインピーダンスZC=R+jXが算出される。Rは抵抗成分を表し、Xはリアクタンス成分を表す。
次にステップ262において、X=ωLに基づいて、点E、点B、点D及び他方端P2によるループのインダクタンスLが算出される。ただし、ωは角周波数であり、ω=2πfである。fは共振周波数fyを表す。共振周波数fyは、次のような条件を満たす周波数である。
(A)キャパシタの容量値がCyに設定されていた場合に、小さなSパラメータS11をもたらす周波数である。
(B)キャパシタの容量値がCyに設定されていた場合に、整合損がない状態での効率ηが、所望のキャリア周波数fx付近において良い値を示す。
(C)所望のキャリア周波数fxに近い周波数である。これは、キャパシタの容量値がCyに設定されていた場合に、整合回路Mを調整することにより、共振周波数をfyからfxに変更できることを意味する。
上記の具体例の場合、所望のキャリア周波数fxは700MHzである。図10に示すSパラメータS11の700MHz付近の周波数依存性を参照すると、850MHz(C4)、950MHz(C3)においてSパラメータS11が十分低い値を示している(条件A)。図23を参照すると、キャパシタの容量値がC4=4pFであった場合(850MHzの共振周波数に対応する)、C5=5pFの場合よりも良い効率ηを示すが、800MHz帯に近づくにつれて悪い効率ηを示す。キャパシタの容量値がC3=3pFであった場合(950MHzの共振周波数に対応する)、700MHz帯及び800MHz帯の双方で効率ηは良い値を示す(条件B)。従って、850MHz(C4)よりも950MHz(C5)の方が良い効率ηをもたらす。950MHzは700MHzに比較的近い(条件C)。そこで、図10及び図23に示す5種類の容量値に対応するグラフを参照すると、共振周波数fyを950MHzに設定してよいことが分かる。
一方、図10を参照しながら説明したように、キャパシタCiの何らかの容量値について、SパラメータS11が低くなる周波数(共振周波数)が存在し、そのような容量値は連続的に多数存在すする。逆に、或る周波数が共振周波数となるように、SパラメータS11を低くする容量値が存在するし、そのような周波数も連続的に多数存在する。従って、共振周波数fyとして設定することが可能な周波数は950MHzだけでなく、他の周波数であってもよい。850MHz(C4)よりも950MHz(C5)の方が良い効率ηをもたらすことを考慮すると、950MHzよりも高い周波数を共振周波数fyに設定することができる。ただし、条件Cにより、共振周波数fyとして設定する周波数は、700MHzに比較的近い必要がある。そこで、計算の便宜上、共振周波数fyを1GHzとする。
シミュレーションにおいて、共振周波数fyが1GHzであるとすると、アンテナ要素Antの延伸部extにおける点Eと他方端P2との間から見たインピーダンスZCは、ZC=R+jX=1.5+j75.27のような値になった。従って、点E、点B、点D、点F及び他方端P2によるループのインダクタンスLは、L=X/(2πfy)=11.99nHとなる。
次にステップ263において、ループが共振周波数fyで共振するためのキャパシタンスCyが、fy=[2π√(L・Cy)]-1に基づいて算出される。Cy=[(2πf)2L]-1=2.11pF。
次にステップ264において、図27の点Eと点F(他方端P2)との間に、Cy=2.11pFの容量値を有するキャパシタが挿入される。この状態のアンテナについてのSパラメータS11の周波数依存性が図28に示され、このアンテナについてのスミスチャートが図29に示されている。周波数fは0.5GHz(500MHz)から2GHzまで変化させている。図28及び図29から分かるように、周波数fが1GHz付近である場合に並列共振が生じ、周波数fが1.3GHzである場合にモノポール共振が生じている。
次にステップ265において、アンテナ要素Antの一方端P1が整合回路Mに接続される。所望のキャリア周波数fxにおいて、SパラメータS11が十分に小さくなるように、整合回路が調整される。これにより、整合回路M及びアンテナ要素Antを通じて、所望のキャリア周波数fxの電波を適切に送受信することができるようになる。そして、設計手順26は終了する。
<7.他のアンテナとの比較>
実施の形態によるアンテナ装置と他のアンテナとの差異の観点から、実施の形態によるアンテナ装置の特徴を説明する。
図30は、1つのループの中に給電部OCとキャパシタとを直列に設け、ループを形成しているアンテナを示す。このアンテナはループの長さで決定される1つの波長でしか共振しない。この点、複数の波長又は周波数で共振する実施の形態によるアンテナ装置と異なる。
図31は、給電部OCから伸びる延伸部extがループを形成しておらず、ループの途中にキャパシタが設けられたアンテナを示す。このアンテナもループの長さで決定される1つの波長でしか共振しない。この点、複数の波長又は周波数で共振する実施の形態によるアンテナ装置と異なる。
アンテナが共振する周波数を変化させる観点からは、アンテナにおける電流が流れる経路を切り替えたり、経路の途中にある素子のインピーダンス(特に、リアクタンス)を切り替えることが考えられる。しかしながら、経路やインピーダンスを切り替える場合、同時に複数の周波数に共振することはできない。この点、同時に複数の周波数に共振する実施の形態によるアンテナ装置と異なる。
図32は、給電部OCから点A、点B、点Cを経て点Dに至る部分により第1の波長λ1で共振し、給電部OCから点A、点B、点Cを経て点Eに至る部分により第2の波長λ2で共振するアンテナ装置を示す。給電部OCから点A、点B、点Cを経て点Dに至るまでの長さは、第1の波長λ1の4分の1に等しい。給電部OCから点A、点B、点Cを経て点Eに至るまでの長さは、第2の波長λ2の4分の1に等しい。このアンテナは、2つの波長又は周波数で共振するアンテナ装置であるが、点Cと点Eとの間に線路を設ける必要がある。従って、700MHzと800MHzのような類似する周波数に共振するには、給電部OCから点Dに至るまでの距離と、給電部OCから点Eに至るまでの距離とを、同程度に長くする必要があり、アンテナが大型化してしまうことが懸念される。この点、実施の形態によるアンテナ装置は、単にキャパシタを追加すればよいので、小型化等の観点から有利である。
以上、複数の周波数に共振するアンテナ装置の実施の形態を説明してきたが、実施の形態は具体的に説明された例に限定されず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解することができる。実施の形態の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。また、実施の形態の理解を促すため具体的な数式を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数式は単なる一例に過ぎず、同様な結果をもたらす他の数式が使用されてもよい。上記の説明における項目の区分けは実施の形態に本質的ではなく、矛盾しない限り、2つ以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に適用されてよい。
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
一方端(P1)と、他方端(P2)と、前記一方端及び前記他方端の間に伸びる延伸部(ext)とを有し、前記一方端は給電部(図2、OC)に結合され、前記延伸部はループ状に形成され、前記他方端は前記延伸部に結合され、前記ループの途中にキャパシタ(Ci)が設けられている、アンテナ装置。
(付記2)
当該アンテナ装置は、4分の1波長の長さが前記延伸部の長さに等しい電磁波(f1)に共振し、かつ前記キャパシタと前記ループにより形成されるインダクタとにより決定される共振周波数(f2=[2π√(LC)]-1)の電磁波にも共振する付記1に記載にアンテナ装置。
(付記3)
前記キャパシタが個別素子(図2、図4)又は分布定数回路(図3)により形成されている、付記1又は2に記載のアンテナ装置。
(付記4)
前記延伸部が、前記一方端と前記他方端との間で別のループを形成するように分岐し、前記別のループの途中に別のキャパシタが設けられている、付記1又は2に記載のアンテナ装置。
(付記5)
前記キャパシタと前記ループにより形成されるインダクタとにより決定される前記共振周波数が、前記別のキャパシタと前記別のループにより形成される別のインダクタとにより決定される別の共振周波数と異なる、付記4に記載のアンテナ装置。
(付記6)
前記別のキャパシタが個別素子又は分布定数回路により形成されている、付記4又は5に記載のアンテナ装置。
(付記7)
前記キャパシタの容量値を変更するためのスイッチを有する付記1−6の何れか1項に記載のアンテナ装置。
(付記8)
前記スイッチは、複数の容量値のうち何れか1つを選択する切り替えスイッチである、付記7に記載のアンテナ装置。
(付記9)
前記一方端(P1)は、整合回路(M)を介して前記給電部(OC)に結合されている、付記1−8の何れか1項に記載のアンテナ装置。
(付記10)
前記4分の1波長の長さが前記延伸部の長さに等しい電磁波の周波数と、前記共振周波数とが同じ周波数バンドに属する、付記1−9の何れか1項に記載にアンテナ装置。
(付記11)
前記4分の1波長アンテナが、線状逆Lアンテナを形成している、付記1−10の何れか1項に記載のアンテナ装置。
(付記12)
前記4分の1波長アンテナが、板状逆Fアンテナを形成している、付記1−10の何れか1項に記載のアンテナ装置。
1 通信装置
2 アンテナスペース
G 地板
OC 給電部
Ant アンテナ要素
P1 一方端
P2 他方端
ext 延伸部
Ci キャパシタ
M 整合回路

Claims (5)

  1. 一方端と、他方端と、前記一方端及び前記他方端の間に伸びる延伸部とを有するアンテナ装置であって
    前記一方端は給電部に結合され、前記延伸部は、前記一方端から第1分岐点、キャパシタ及び第2分岐点を経て前記他方端に至る第1部分と、前記第2分岐点から前記キャパシタを経由せずに前記第1分岐点に至る第2部分とを有し、
    前記第1部分の長さによって、前記アンテナ装置の第1共振周波数が定まり、
    前記第1分岐点、前記キャパシタ及び前記第2分岐点を経て前記第1分岐点に至るループによって、前記第1共振周波数より高い第2共振周波数が定まる、アンテナ装置。
  2. 一方端と、他方端と、延伸部とを有するアンテナ装置であって
    前記一方端は給電部に結合され、前記延伸部は、前記一方端から第1分岐点、第2分岐点、折り返し点及び第3分岐点を経て前記他方端に至る第1部分と、前記第3分岐点と前記第1分岐点とを結ぶ第2部分とを有し、前記第2分岐点と前記他方端との間にキャパシタが設けられており、
    前記延伸部のうち前記一方端から前記折り返し点までの長さによって、前記アンテナ装置の第1共振周波数が定まり、
    前記第2分岐点、前記折り返し点、前記第3分岐点、前記他方端、前記キャパシタ及び前記第2分岐点に至るループによって、前記第1共振周波数より高い第2共振周波数が定まる、アンテナ装置。
  3. 前記キャパシタが個別素子又は分布定数回路により形成されている、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
  4. 前記キャパシタの容量値を変更するためのスイッチを有する請求項1−の何れか1項に記載のアンテナ装置。
  5. 前記一方端は、整合回路を介して前記給電部に結合されている、請求項1−の何れか1項に記載のアンテナ装置。
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