前述したように、前記特許文献1に記載されたような、本発明に関連する現状の技術においては、アンテナ特性を維持しつつ広帯域化を図り、かつ、共振周波数の調整を柔軟に行う、ということが困難であり、複数の周波数帯域を効果的にカバーすることができないという問題点がある。以下に、かかる問題点について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図8は、本発明に関連する現状の技術の一つである逆L型パターンアンテナを用いた場合のアンテナ装置を示す模式図であり、図8(A)は、アンテナ装置の全体構成を示し、図8(B)は、図8(A)のアンテナ部分を拡大した拡大図を示す。図8に示すアンテナ装置50は、GND(Ground:アース)51とアンテナ52と誘電体53とによって構成される。誘電体53は板形状をなし、GND51とアンテナ52とは板状の誘電体53に張り付けられた導体パターンである。以下に説明する他の形状のアンテナ装置も同様な構造である。
そして、アンテナ装置50のGND51とアンテナ52以外の部分は誘電体53によって満たされる。また、アンテナ装置50は、アンテナ52を実装可能な領域として実装範囲54を定めている。アンテナ52は、実装範囲54内に配置される。
図9は、図8に示すアンテナ装置50のリターンロス特性と放射効率特性とを示す特性図であり、図9(A)がリターンロス特性を示し、図9(B)が放射効率特性を示している。ここで、図9(A)に示すリターンロス特性は、アンテナ装置50の性能を計る指標の一つであり、インピーダンスが50Ωに近ければ近い程リターンロスが小さい値になるように作られた図表である。図9(A)の縦軸はリターンロスの大きさ(dB)であり、横軸は周波数である。図9(A)において谷となる部分は、アンテナの共振と呼ばれ、アンテナとして動作している周波数を示している。
一般的に、アンテナが動作する周波数におけるリターンロスは−5dB以下であることが望ましい。以下の説明においては、リターンロス特性で谷底となる周波数を共振周波数と称し、リターンロスが−5dBとなる周波数f1から周波数f2までを帯域と称し、|f1−f2|を帯域幅と称する。
図9(A)に示すリターンロス特性の場合、アンテナ装置50の共振周波数は、1,900MHzである。そして、帯域幅は、600MHz(=|1,650MHz−2,250MHz|)である。なお、図9(B)に示すように、放射効率特性に関しては、帯域幅の範囲内において特に大きな落ち込みはなく、良好な効率が得られていることが分かる。
次に、図10に示すアンテナ装置について説明する。図10は、本発明に関連する現状の技術の他の例であって2共振を得るために逆L型パターンアンテナの先端を二つに分岐した場合のアンテナ装置を示す模式図であり、図10(A)は、アンテナ装置の全体構成を示し、図10(B)は、図10(A)のアンテナ部分を拡大した拡大図を示す。図10に示すアンテナ装置60は、GND61とアンテナ62と誘電体63とによって構成され、アンテナ62の先端は二つに分岐して構成される。つまり、図10のアンテナ装置60と図8のアンテナ装置50との違いはアンテナ形状にある。
そして、図8の場合と同様、アンテナ装置60のGND61とアンテナ62以外の部分は誘電体63によって満たされる。また、アンテナ装置60は、図8の場合と同様、アンテナ62を実装可能な領域として実装範囲64を定めている。アンテナ62は、実装範囲64内に配置される。
図11は、図10に示すアンテナ装置60のリターンロス特性と放射効率特性とを示す特性図であり、図11(A)がリターンロス特性を示し、図11(B)が放射効率特性を示している。
図11(A)に示すリターンロス特性の場合、アンテナ装置60の共振周波数は、1,900MHzと2,300MHzとの二つである。そして、帯域幅は、1,300MHz(=|1,600MHz−2,900MHz|)であり、図8に示したアンテナ装置50に比して、帯域が広がっている。しかし、図11(B)に示すように、周波数1,600MHzから周波数2,900MHzまでの帯域幅内において放射効率特性の急激な落ち込みが発生している。かくのごとく、図10のアンテナ装置60のようにアンテナ62を二つに分岐した場合、二つの共振周波数の間の周波数帯において、特性の劣化ポイントが発生してしまう。
次に、図12に示すアンテナ装置について説明する。図12は、本発明に関連する現状の技術のさらに異なる例であって二つに分岐した逆L型パターンアンテナの先端を接続してループ形状に形成した場合のアンテナ装置を示す模式図であり、図12(A)は、アンテナ装置の全体構成を示し、図12(B)は、図12(A)のアンテナ部分を拡大した拡大図を示す。つまり、図12のアンテナ装置70は、図10のアンテナ装置60の二つのアンテナ62の先端を互いに接続してループ形状のアンテナループを有するアンテナとして形成している。図12に示すアンテナ装置70は、GND71とループ形状のアンテナ72と誘電体73とによって構成される。
そして、図8、図10の場合と同様、アンテナ装置70のGND71とアンテナ72以外の部分は誘電体73によって満たされる。また、アンテナ装置70は、図8、図10の場合と同様、アンテナ72を実装可能な領域として実装範囲74を定めている。アンテナ72は、実装範囲74内に配置される。なお、ここで引用した各構成例の説明においては、図8の実装範囲54、図10の実装範囲64、図12の実装範囲74は、いずれも同じ大きさの領域であり、領域を変更することに伴って、図8のアンテナ装置50、図10のアンテナ装置60、図12のアンテナ装置70それぞれのアンテナ特性が変化してしまうことが無いようにしている。
図13は、図12に示すアンテナ装置70のリターンロス特性と放射効率特性とを示す特性図であり、図13(A)がリターンロス特性を示し、図13(B)が放射効率特性を示している。
図13(A)に示すリターンロス特性の場合、アンテナ装置60の共振周波数は、2,000MHzである。そして、帯域幅は、1,100MHz(=|1,650MHz−2,750MHz|)である。図12に示すアンテナ装置70の場合、図8に示したアンテナ装置50に比して、帯域が広がり、また、図10に示したアンテナ装置60のような帯域内における放射効率特性の落ち込みは発生していない。
しかし、図12に示すアンテナ装置70の場合、図8に示したアンテナ装置50に比して、共振周波数が高くなっている。ここで、共振周波数を低くするには、一般的には、アンテナエレメントを長くするか、あるいは、アンテナエレメント上にインダクタを挿入することが考えられる。しかし、近年は、高密度実装が進んでいるため、アンテナエレメントを長くするという前者の実装エリアの拡大は敬遠される傾向にある。したがって、アンテナエレメント上にインダクタを挿入するという後者による現状の技術について、次に説明する。
一般に、逆L型のアンテナは、アンテナエレメントとGNDとに高周波電流を流すことによって共振を得ることができる。一般的なアンテナ装置の場合、アンテナエレメントの長さは共振周波数の波長の1/4程度である。また、アンテナエレメントを分岐した場合は、分岐したアンテナエレメントの長さが1/4波長になる周波数で、それぞれにおいて、共振を得ることができる。
まず、図10に示したアンテナ装置60にける高周波電流の動きについて説明する。図14は、図10に示したアンテナ装置60において、アンテナ62の二つのアンテナエレメントとGND61とに或るタイミングにおいて流れる高周波電流の動きを模式的に示した模式図であり、高周波電流の動きを点線の矢印線を用いて示している。
図14(A)は、図11(A)に示したリターンロス特性の一つ目の共振周波数(周波数が低い側の共振周波数すなわち1,900MHz)における高周波電流の動きを示している。図14(A)に示すように、一つ目の共振周波数においては、高周波電流はGND61からアンテナ62の外側のアンテナエレメントに流れる。この時、アンテナ62の内側のアンテナエレメントには、外側のアンテナエレメントと逆行する電流が発生する。図11(A)に示したリターンロス特性の二つ目の共振周波数(周波数が高い側の共振周波数すなわち2,300MHz)における高周波電流の動きについても基本的には同じである。ただし、この場合は、高周波電流はGND61からアンテナ62の内側のアンテナエレメントに流れ、アンテナ62の外側のアンテナエレメントには、内側のアンテナエレメントと逆行する電流が発生する。
また、図14(B)は、図11(B)に示した放射効率特性が劣化した周波数における高周波電流の動きを示している。図14(B)に示すように、図14(A)の一つ目の共振周波数における高周波電流の動きとは、アンテナ62の外側と内側との分岐部分に流れる高周波電流の向きとGND61に流れる高周波電流の向きとが異なっていて、分岐した内側のアンテナエレメントから外側のアンテナエレメントに向かって高周波電流が流れている。つまり、分岐した外側と内側とのアンテナエレメントの長さの合計が波長の1/2となる周波数において、図14(B)に示す動きとなる。したがって、アンテナエレメントが閉じている状態になっているために、無線電波として空中に放射されることがなく、放射効率が悪くなる。
次に、図12に示したアンテナ装置70にける高周波電流の動きについて説明する。図15は、図12に示したアンテナ装置70において、アンテナ72の二つのアンテナエレメントとGND71とに或るタイミングにおいて流れる高周波電流の動きを模式的に示した模式図であり、図14の場合と同様、高周波電流の動きを点線の矢印線を用いて示している。図15(A)は、図12(A)に示したリターンロス特性の共振周波数における高周波電流の動きを示している。図15(A)に示すように、共振周波数においては、GND71からアンテナ72の外側と内側との双方のアンテナエレメントに向かって高周波電流が同じ向きに流れる。
また、図15(B)は、図12(B)に示した放射効率特性が劣化した周波数における高周波電流の動きを示している。図15(B)に示すように、放射効率特性が劣化した周波数においても、図15(A)の共振周波数の場合と同様、GND71からアンテナ72の外側と内側との双方のアンテナエレメントに向かって高周波電流が同じ向きに流れる。
図15(A)と図15(B)との差分は、アンテナ72の外側と内側とのそれぞれアンテナエレメントを流れる高周波電流の向きを示す矢印線が、互いに向かい合う位置の違いにある。矢印線が向かう合う位置については、分岐した各アンテナエレメントのインピーダンスが同じになる位置で向かい合うものと考えられる。周波数によって各アンテナエレメントのインピーダンスが等しく変化することは無いため(つまり、分岐した内側のアンテナエレメントがGND71から受ける影響は周波数により変化するため)、図15(A)と図15(B)との矢印線の向かい合う位置に違いが生じている。
なお、図15に示した高周波電流の動きは、アンテナ72を分岐することなく、1本の幅広い板状アンテナエレメントとして構成した場合と全く同じである。高周波電流は、アンテナエレメントの外縁側を流れようとするため、板状アンテナエレメントの内側を除いて、ループ形状のアンテナエレメントにしても、同様の効果が得られることが、前記特許文献1にも記載されている。
ここで、図12に示したアンテナ装置70の効果を得ながら、共振周波数を調整するために、アンテナエレメント上に調整用素子としてインダクタを挿入する場合、図15に示したループ形状のアンテナループ部分の高周波電流の動きをそのまま維持することが必要である。
図16は、図12に示したアンテナ装置70における逆L型のアンテナ72のアンテナループ先端に調整用素子(10nH)を挿入した構成と、そのリターンロス特性と放射効率特性とを示す特性図である。図16(A)は、図12のアンテナ72のアンテナループ先端に調整用素子75として10nHのインダクタを接続した場合のアンテナ装置70Aを示し、図16(B)は、図16(A)のアンテナ装置70Aにおけるリターンロス特性を示し、図16(C)は、図16(A)のアンテナ装置70Aにおける放射効率特性を示している。図16(A)のアンテナ装置70Aにおけるアンテナ特性は、図16(B)に示すように、調整用素子75をアンテナ72のアンテナループ先端に挿入しても、図13に示したアンテナ装置70の特性と比較して、共振周波数がほとんど変化していないことが分かる。
また、図17は、図12に示したアンテナ装置70における逆L型のアンテナ72の二つに分岐した外側のアンテナエレメントに調整用素子(5nH)を1個挿入した構成と、そのリターンロス特性と放射効率特性とを示す特性図である。図17(A)は、図12のアンテナ72が二つに分岐した外側のアンテナエレメントの分岐点近傍の位置に調整用素子76として5nHのインダクタを接続した場合のアンテナ装置70Bを示し、図17(B)は、図17(A)のアンテナ装置70Bにおけるリターンロス特性を示し、図17(C)は、図17(A)のアンテナ装置70Bにおける放射効率特性を示している。図17(A)のアンテナ装置70Bにおけるアンテナ特性は、図17(B)に示すように、共振周波数が1,900MHzであり、挿入した調整用素子76による効果として、図13に示したアンテナ装置70の特性と比較して、共振周波数が低い周波数側に移動していることが分かる。
しかし、図17(C)に示すように、帯域(f1=1,650MHzからf2=2,450MHzまでの周波数)の外側の周波数(3,150MHz)において、効率劣化点が生じ、放射効率特性の落ち込みが発生している。そして、かくのごとき放射効率特性の落ち込みの発生に伴って、帯域の高域側周波数f2における放射効率が劣化している。また、放射効率が落ち込む周波数は、調整用素子76のインピーダンス値を大きくすると、帯域内にも移動することが分かっており、共振周波数の調整量が制限されてしまうという問題もある。
以上に説明したように、本発明に関連する現状の技術においては、アンテナの放射効率特性を維持しつつ、共振周波数を所望の値へ調整することが困難であり、複数の周波数帯域を効果的にカバーすることができないという問題点がある。
(本発明の目的)
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、電界型のアンテナのアンテナ特性を劣化させることなく広帯域化し、かつ、共振周波数を柔軟に調整することを可能にするアンテナ装置および無線通信装置を提供することを、その目的としている。
前述の課題を解決するため、本発明によるアンテナ装置および無線通信装置は、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
(1)本発明によるアンテナ装置は、基板上の導体パターンとして逆L型のアンテナを形成する電界型のアンテナ装置において、給電点からの該アンテナのアンテナエレメントを、あらかじめ設定した分岐点において外側と内側との二つに分岐し、分岐した前記外側のアンテナエレメントと前記内側のアンテナエレメントとの双方の先端を互いに繋いでループ形状のアンテナループを形成し、かつ、前記給電点から前記分岐点までのアンテナエレメント、前記外側のアンテナエレメントまたは前記内側のアンテナエレメントのいずれか1ないし複数のアンテナエレメント上の前記分岐点の近傍の位置に、前記アンテナの電気長を調整するための調整用素子を実装していることを特徴とする。
(2)本発明による無線通信装置は、電界型のアンテナ装置を搭載して無線通信を行う無線通信装置であって、該アンテナ装置として前記(1)に記載のアンテナ装置を用いることを特徴とする。
本発明のアンテナ装置および無線通信装置によれば、以下のような効果を奏することができる。
すなわち、本発明においては、給電点からのアンテナエレメントを分岐点において二つに分岐して、ループ形状のアンテナループを形成するとともに、前記分岐点の近傍の位置に、アンテナの電気長を調整するための調整用素子を実装しているので、アンテナの実装エリアを増やすことなく、かつ、アンテナ特性を劣化させることなく、広帯域化することが可能になるとともに、共振周波数を柔軟に調整することが可能になる。
以下、本発明によるアンテナ装置および無線通信装置の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるアンテナ装置について説明するが、かかるアンテナ装置を、無線通信を行う無線通信装置、例えば、携帯電話機やスマートフォン、タブレット端末等の無線通信装置のアンテナ装置として搭載することが可能であることは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、プリント基板などにアンテナを導体パターンで形成した電界型のアンテナ装置において、アンテナを構成するアンテナエレメントをループ形状のアンテナループとして形成することによって広帯域化しつつ、アンテナエレメント上に設けた調整用素子により、共振周波数の柔軟な調整を可能にすることを主要な特徴としている。言い換えると、本発明は、プリント基板上の導体パターンとして逆L型のアンテナを形成する電界型のアンテナ装置において、アンテナをあらかじめ設定した分岐箇所にて二つに分岐したアンテナエレメントの先端を互いに繋いでループ形状のアンテナループとして形成することにより、アンテナ特性を劣化させずに広帯域化することを可能にし、かつ、前記分岐箇所の近傍に電気長調整用の素子(インダクタ、コンデンサ)を実装することにより、アンテナの共振周波数を柔軟に調整することを可能にしたことを主要な特徴としている。
(本発明の実施形態)
次に、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明に係るアンテナ装置および無線通信装置は、例えば、LTE(Long Term Evolution)規格に対応した無線通信を行う電界型のアンテナ装置や無線端末装置において好適に使用することができる。例えば、該LTE規格において、Band21(1.5GHz帯)とBand3(1.8GHz帯)とBand1(2GHz帯)とに対応したアンテナ装置を構成する場合には、アンテナとしては、大凡720MHzの帯域幅が必要となる。
しかし、前述の図8にて示したような単純な逆L型のアンテナを採用したアンテナ装置50の場合は、図9の特性図にて説明したように、600MHzの帯域幅であり、720MHzの帯域幅を必要とするLTE規格対応のアンテナ装置としては、帯域幅が不足している。また、前述の図10に示したアンテナ装置60のように、アンテナエレメントを分岐して、1.5GHz付近と2GHz付近との2箇所において共振させた場合、図11の特性図にて示したように、所望の720MHzの帯域幅は確実に確保することができるものの、二つの共振周波数の間には放射効率が悪化する周波数帯が発生し、所望の2GHz帯における放射効率が悪くなる可能性がある。かくのごとき問題を解決し、周波数帯域を広く取り、かつ、帯域内に効率劣化点が存在しないアンテナ装置および該アンテナ装置を備えた無線通信装置を実現することが、本発明の実施形態に係るアンテナ装置および無線通信装置の目的である。
(第1の実施形態の構成例)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成例を示す模式図であり、図1(A)は、アンテナ装置の全体構成を示し、図1(B)は、図1(A)のアンテナ部分を拡大した拡大図を示す。図1のアンテナ装置10は、電界型のアンテナ装置としてプリント基板などにアンテナを導体パターンで形成したアンテナ装置であって、GND(Ground:アース)11、ループ形状のアンテナ12、誘電体13によって構成される。アンテナ12は、あらかじめ設定した分岐点において二つに分岐した逆L型のアンテナエレメントそれぞれの先端を互いに接続することにより、ループ形状のアンテナループを有するアンテナとして形成する。さらに、アンテナ12は、図1(B)の拡大図に示すように、二つのアンテナエレメントに分岐する分岐点の近傍の位置に複数の調整用素子15,16,17を実装して構成される。
ここで、調整用素子15,16,17のうち、調整用素子15は、アンテナ12が分岐点において二つのアンテナエレメントに分岐する直前の位置(すなわち、給電点と分岐点との間で、分岐点の近傍の位置)に配置される。また、調整用素子16は、分岐点において二つのアンテナエレメントに分岐した直後の外側のアンテナエレメントの位置(すなわち、二つに分岐したアンテナエレメントのうち、外側のアンテナエレメントの分岐点の近傍の位置)に配置される。また、調整用素子17は、二つのアンテナエレメントに分岐した直後の内側のアンテナエレメントの位置(すなわち、二つに分岐したアンテナエレメントのうち、内側のアンテナエレメントの分岐点の近傍の位置)に配置される。また、調整用素子15,16,17それぞれは、インダクタまたはキャパシタあるいはインダクタとキャパシタとの組み合わせを用いて構成される。
つまり、図1のアンテナ装置10は、図12に示したアンテナ装置70とは異なり、アンテナエレメントの分岐点の近傍に電気長を調整するための複数の調整用素子15,16,17を実装している。また、図16、図17それぞれに示したアンテナ装置70A,70Bとの違いは、調整用素子として実装する実装個数の違いと実装場所とにあり、図1のアンテナ装置10においては、前述したように、調整用素子15,16,17として、給電点からのアンテナエレメントを二つのアンテナエレメントに分岐する分岐点の近傍の位置に複数個実装している。
さらには、図1のアンテナ装置10においては、調整用素子15を、給電点から分岐点に至るまでのアンテナエレメント上であって分岐点の近傍の位置に実装し、調整用素子16,17は実装しないようにしても良い。あるいは、図1のアンテナ装置10においては、二つの調整用素子16,17を、分岐点において外側と内側との二つに分岐したアンテナエレメントそれぞれの分岐点の近傍の位置に実装し、調整用素子15は実装しないようにしても良い。また、図16、図17それぞれに示したアンテナ装置70A,70Bの場合は、調整用素子75,76としてインダクタを用いて構成しているが、図1のアンテナ装置10においては、前述したように、調整用素子15,16,17としてインダクタやキャパシタを用いて構成している。
なお、図8、図10、図12、図16、図17の場合と同様、アンテナ装置10のGND11とアンテナ12以外の部分は誘電体13によって満たされる。また、アンテナ装置10は、図8、図10、図12、図16、図17の場合と同様、アンテナ12を実装可能な領域として実装範囲14を定めている。アンテナ12は、実装範囲14内に配置される。実装範囲14の大きさは、本発明に関連する現状の技術において説明した図8の実装範囲54、図10の実装範囲64、図12の実装範囲74と同じ大きさとしている。
(第1の実施形態の動作の説明)
次に、本発明の第1の実施形態の構成例として図1に示したアンテナ装置10の動作の一例について、図2、図3、図4を参照して説明する。
図1に示したアンテナ装置10の動作の説明に先立って、本発明に関連する現状の技術において調整用素子を用いているアンテナ装置として図16および図17それぞれに示したアンテナ装置70A,70Bにおける高周波電流の動きについて、図2を参照して説明する。図2は、本発明に関連する現状の技術として図16(A)に示したアンテナ装置70Aおよび図17(A)に示したアンテナ装置70Bそれぞれにおいて、アンテナ72の二つのアンテナエレメントとGND71とに或るタイミングにおいて流れる高周波電流の動きを模式的に示した模式図であり、高周波電流の動きを点線の矢印線を用いて示している。ここで、図2(A)は、図16(B)のリターンロス特性に示した共振周波数における高周波電流の動きを示している。また、図2(B)は、図17(C)の放射効率特性に示した効率劣化点における高周波電流の動きを示している。
図2(A)に示す共振周波数における高周波電流の動きは、点線の矢印線に示すように、調整用素子75を用いていない図12のアンテナ装置70の場合の共振周波数における高周波電流の動きを示す図15(A)と全く同じである。すなわち、共振周波数においては、図2(A)に示すように、GND71からアンテナ12の外側と内側との双方のアンテナエレメントに向かって高周波電流が同じ向きに流れ、かつ、アンテナ72のアンテナループ先端においては、高周波電流の動きを示す矢印線が互いに向かい合って、互いの高周波電流を打ち消し合うため、高周波電流はほとんど流れていない状態になる。この結果、図16(A)のように、アンテナ72のアンテナループ先端に調整用素子75を挿入しても、該調整用素子75の挿入効果は全く得られない。したがって、前述したように、図16(A)のアンテナ装置70Aにおいて調整用素子75をアンテナ72のアンテナループ先端に挿入したとしても、図13に示したアンテナ装置70の特性と比較して、共振周波数がほとんど変化していない。
また、図2(B)に示す放射効率特性の効率劣化点における高周波電流の動きについては、点線の矢印線に示すように、アンテナ72を二つに分岐した外側のアンテナエレメントの分岐点近傍の位置に挿入した調整用素子76を中心にして、内側のアンテナエレメントから前記分岐点を通過して外側のアンテナエレメントへ流れる高周波電流と、内側のアンテナエレメントからアンテナループ先端を通過して外側のアンテナエレメントへ流れる高周波電流とが発生する。双方の高周波電流の流れは、1/2波長ごとの分布であり、アンテナ72のアンテナループの電気長が1波長となる周波数の場合に、図2(B)に示すような高周波電流の動きになる。
電気長が1波長となる周波数においては、給電点とGND71とには高周波電流がほとんど流れていないため、給電点にとって、アンテナ72はOpen状態(繋がっていない状態と等しい状態)となる。また、アンテナループ開口が狭く、かつ、外側と内側とのアンテナエレメントに流れる高周波電流の動きが、互いに逆行する関係にあるため、高周波電流により生じる電界は打ち消されてしまい、無線電波はほとんど放射されない。つまり、放射効率が劣化する状態になる。
なお、調整用素子76を用いていない図12のアンテナ装置70の場合においても、図17(A)のアンテナ装置70Bと同様、アンテナループの電気長が1波長と等しくなる周波数が存在するはずであるが、図12のアンテナ装置70の放射効率特性を示す図13には、放射効率の急激な落ち込みは現れていない。したがって、図17(C)に示した図17(A)のアンテナ装置70Bにおける放射効率の急激な落ち込みは、外側のアンテナエレメントへの調整用素子76の挿入によって、外側と内側との二つに分岐したアンテナエレメント間のインピーダンスバランスが崩れることが原因であると想定することができる。
本発明に関連する現状の技術として調整用素子を用いている場合の図16(A)のアンテナ装置70A、図17(A)のアンテナ装置70Bに関する以上のような分析結果から、アンテナエレメントに挿入する調整用素子は、高周波電流が強く、かつ、ループ形状のアンテナループを形成するために二つに分岐した外側と内側との双方のアンテナエレメントのインピーダンスができるだけ同じになる箇所に挿入することが必要であるということが判明する。したがって、アンテナループ上に調整用素子を挿入する場合は、外側と内側との二つのアンテナエレメントに分岐する分岐点に近く、かつ、外側と内側とのアンテナエレメントの双方のできる限り同じ位置に、調整用素子を挿入することが望ましい。
次に、図1に示したアンテナ装置10において実装した調整用素子15,16,17それぞれの挿入効果について、その一例を、図3を参照して説明する。なお、以下の説明においては、アンテナ12の電気長を調整するための調整用素子15,16,17としてインダクタを用いて調整する場合について説明するが、インダクタの代わりに、キャパシタあるいはインダクタとキャパシタとの組み合わせを用いるようにしても勿論差し支えない。
図3は、図1に示したアンテナ装置10の調整用素子15,16,17のうち、外側と内側との二つに分岐したアンテナエレメント双方の分岐点近傍のほぼ同じ位置に調整用素子16,17としていずれも2nHのインダクタを挿入した場合におけるリターンロス特性と放射効率特性とを示す特性図である。すなわち、図3のアンテナ装置10Aは、調整用素子15,16,17のうち、給電点と分岐点との間のアンテナエレメントには調整用素子15を挿入することなく、該分岐点にて二つに分岐したアンテナエレメント双方に調整用素子16,17それぞれを挿入している場合を示している。図3(A)は、図1の二つに分岐したアンテナエレメント双方の分岐点近傍のほぼ同じ位置に調整用素子16,17としていずれも2nHのインダクタを接続した場合のアンテナ装置10Aを示し、図3(B)は、図3(A)のアンテナ装置10Aにおけるリターンロス特性を示し、図3(C)は、図3(A)のアンテナ装置10Aにおける放射効率特性を示している。
図3(A)のアンテナ装置10Aにおけるアンテナ特性は、調整用素子16,17として2nHのインダクタを二つに分岐したアンテナエレメント双方の分岐点近傍に挿入することにより、図3(B)に示すように、共振周波数が、図13に示したアンテナ装置70の特性と比較して、低くなっている。また、図3(C)に示すように、放射効率特性については、調整用素子を挿入していないアンテナ装置70における図13に示した特性とほぼ同じであり、外側のアンテナエレメントに調整用素子76を挿入しているアンテナ装置70Bにおいて図17に示したような放射効率の劣化点が発生していないことが分かる。
次に、図1に示したアンテナ装置10において実装した調整用素子15,16,17それぞれの挿入効果について、図3とは異なる挿入形態の場合を、図4を参照して説明する。図4は、図1に示したアンテナ装置10の調整用素子15,16,17のうち、アンテナ12の給電点と分岐点との間で分岐点近傍の位置に調整用素子15として2nHのインダクタを挿入した場合におけるリターンロス特性と放射効率特性とを示す特性図である。すなわち、図4のアンテナ装置10Bは、調整用素子15,16,17のうち、分岐点において分岐した外側と内側とのアンテナエレメントのいずれにも調整用素子16,17を挿入することなく、給電点と該分岐点との間のアンテナエレメントに調整用素子15を挿入している場合を示している。図4(A)は、図1のアンテナ12の給電点と分岐点との間で分岐点近傍の位置に調整用素子15として2nHのインダクタを接続した場合のアンテナ装置10Bを示し、図4(B)は、図4(A)のアンテナ装置10Bにおけるリターンロス特性を示し、図4(C)は、図4(A)のアンテナ装置10Bにおける放射効率特性を示している。
図4(A)のアンテナ装置10Bにおけるアンテナ特性は、調整用素子15として2nHのインダクタを給電点と分岐点との間に挿入することにより、図3の場合と同等以上の効果を得ることができる。すなわち、図4(B)に示すように、共振周波数が、図13に示したアンテナ装置70の特性と比較して、低くなり、また、図4(C)に示すように、放射効率特性が、図13に示したアンテナ装置70の特性とほぼ同じであり、図17に示したアンテナ装置70Bの場合のような放射効率の劣化点が発生していないことが分かる。
さらに、図4(A)のアンテナ装置10Bにおいては、図3(A)のアンテナ装置10A(すなわち、二つに分岐したアンテナエレメント双方の分岐点近傍のほぼ同じ位置に調整用素子16,17としていずれも2nHのインダクタを接続した場合のアンテナ装置)の場合の図3(B)の共振周波数と比較すると、図4(B)に示すように、図4(A)のアンテナ装置10Bの共振周波数は、図3(B)の共振周波数よりも低くなっていることが分かる。
つまり、調整用素子の挿入位置に関しては、同じ回路定数の調整用素子を用いていたとしても、より強い高周波電流が流れている箇所に挿入した場合の方が、効果がより大きくなることが分かる。言い換えると、二つに分岐したアンテナエレメントそれぞれに流れる高周波電流(すなわち、アンテナ12に形成したアンテナループ上に流れる高周波電流)の強さは、給電点から分岐点に至るまでのアンテナ12のアンテナエレメントに流れる高周波電流の1/2になる。したがって、二つに分岐したアンテナエレメントそれぞれへの調整用素子の挿入効果は、給電点から分岐点に至るまでのアンテナエレメントに挿入した場合に比して、薄れてしまうことが分かる。さらに言うと、図4(A)のアンテナ装置10Bに比して、図3(A)のアンテナ装置10Aのような、アンテナ12に形成したアンテナループ上に調整用素子16,17を挿入する構成は採用する必要性は低いと言うこともできる。しかし、本第1の実施形態においては、以下に示す理由に基づいて、分岐点の前後の双方に、調整用素子15,16,17を挿入することにしている。
すなわち、調整用素子として用いるインダクタやキャパシタは、一般的には、特定の回路定数しか存在していないため、図1に示したように、分岐点の手前側と分岐点の後方側との双方の位置に調整用素子15,16,17を挿入することによって、共振周波数をより柔軟に調整することが可能になる。さらには、二つに分岐後の位置に調整用素子16,17を挿入して、調整用素子16,17のインピーダンス値を微調整することによって、二つのアンテナエレメントのインピーダンスの微調整を行い、二つのアンテナエレメント間のインピーダンスバランスを取って、広帯域化を図ることも可能になる。
(第1の実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、第1の実施形態のアンテナ装置10においては、以下に説明するような効果を奏することができる。
まず、第1の実施形態の図1に示したアンテナ装置10のアンテナ特性について、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置10の特性を、図8に示したアンテナ装置50における図9の特性と重ね合わせた特性図であり、図5(A)が、リターンロス特性を示し、図5(B)が、放射効率特性を示している。また、図5において、実線がアンテナ装置10の特性を示し、破線がアンテナ装置50の特性を示している。なお、図1のアンテナ装置10の調整用素子15,16,17は、いずれも、2nHのインダクタを用いている場合を示している。
図5(A)のリターンロス特性に示すように、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置10においては、図8に示した逆L型のアンテナ装置50の場合と同様、1,900MHz付近で共振しているが、リターンロスが−5dB以下になる帯域幅は、950MHz(=|1,600MHz−2,500MHz|)であり、アンテナ装置50の場合の600MHzに比し、大幅な広帯域化を実現していることが分かる。また、図5(B)の放射効率特性に示すように、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置10においては、効率の急激な落ち込みもなく、図8に示したアンテナ装置50と同等以上の効率特性を維持していることも分かる。
つまり、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置10においては、逆L型のアンテナ装置50の場合の実装エリアを増やすことなく(すなわち、図1の実装範囲14は図8の実装範囲54と同じ大きさであるが)、逆L型のアンテナ装置50の場合の共振周波数を維持したまま、逆L型のアンテナ装置50の場合よりも帯域を大幅に拡大することが可能である。さらには、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置10においては、調整用素子15,16,17をアンテナエレメント上の分岐点近傍の位置に挿入しているので、該調整用素子15,16,17のインピーダンス値を調整することにより、共振周波数を柔軟に調整することも可能にしている。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るアンテナ装置の第2の実施形態について、図6を参照しながら説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成例と特性とを示す説明図である。図6(A)は、第2の実施形態に係るアンテナ装置20の全体構成を示し、図6(B)は、図6(A)のアンテナ部分を拡大した拡大図を示す。また、図6(C)は、図6(A)のアンテナ装置20のリターンロス特性を示し、図6(D)は、図6(A)のアンテナ装置20の放射効率特性を示している。さらに、図6(E)は、図6(C)のリターンロス特性に示した共振周波数における高周波電流の動きを示している。なお、図6(C)、(D)の特性図は、アンテナ装置20の特性を、図8に示したアンテナ装置50における図9の特性と重ね合わせて示しており、実線がアンテナ装置20の特性を示し、破線がアンテナ装置50の特性を示している。
図6(A)のアンテナ装置20は、図1のアンテナ装置10と同様、電界型のアンテナ装置としてプリント基板などにアンテナを導体パターンで形成したアンテナ装置であって、GND21、ループ形状を有するアンテナ22、誘電体23によって構成される。アンテナ22は、アンテナ装置10と同様、あらかじめ設定した分岐点において二つに分岐した逆L型のアンテナエレメントそれぞれの先端を互いに接続することにより、ループ形状のアンテナループを有するアンテナとして形成する。ただし、図6(A)のアンテナ装置20は、図1のアンテナ装置10とは異なり、アンテナ装置10よりもアンテナループのループサイズを小さくするとともに、さらに、アンテナエレメントのアンテナループ先端の位置(つまり、分岐点とは対角の位置)に線状のアンテナエレメントを延在させた形で追加して接続している。
さらに、図6(B)の拡大図に示すように、図1のアンテナ装置10と同様、給電点からのアンテナ22のアンテナエレメントを二つのアンテナエレメントに分岐する分岐点の近傍の位置に複数の調整用素子25,26,27を実装している。ここで、調整用素子25,26,27のうち、調整用素子25は、分岐点において二つのアンテナエレメントに分岐する直前の位置に配置される。また、調整用素子26は、分岐点において二つのアンテナエレメントに分岐した直後の外側のアンテナエレメントの位置に配置される。また、調整用素子27は、二つのアンテナエレメントに分岐した直後の内側のアンテナエレメントの位置に配置される。また、調整用素子25,26,27それぞれは、インダクタまたはキャパシタあるいはインダクタとキャパシタとの組み合わせを用いて構成される。
なお、図1のアンテナ装置10の場合と同様、アンテナ装置20のGND21とアンテナ22以外の部分は誘電体13によって満たされる。また、アンテナ装置20は、図1の場合と同様、アンテナ22を実装可能な領域として実装範囲24を定めている。アンテナ22は、実装範囲24内に配置される。実装範囲24の大きさは、第1の実施形態の場合と同様であり、本発明に関連する現状の技術において説明した図8の実装範囲54、図10の実装範囲64、図12の実装範囲74と同じ大きさとしている。
本発明の第2の実施形態に係る図6(A)のアンテナ装置20は、図6(C)のリターンロスの特性に示すように、第1の実施形態として図1に示したアンテナ装置10の場合と同様、共振周波数が、1,900MHz付近にあり、また、リターンロスが−5dB以下になる帯域幅が、950MHz(=|1,600MHz−2,500MHz|)であり、図8に示したアンテナ装置50と比較して、大幅な広帯域化を実現していることが分かる。また、図6(D)の放射効率特性に示すように、本発明の第2の実施形態に係る図6(A)のアンテナ装置20においては、第1の実施形態として図1に示したアンテナ装置10の場合と同様、効率の急激な落ち込みもなく、図8に示したアンテナ装置50と同等以上の効率特性を維持していることも分かる。なお、図6(C)、(D)に示す特性図は、図6のアンテナ装置20の調整用素子25,26,27として、いずれも、2nHのインダクタを用いている場合を示している。
第1の実施形態において前述したように、放射効率を劣化させることなく、広帯域化を図るためには、分岐点において二つに分岐した外側と内側とのアンテナエレメントのインピーダンスバランスが取れていることが必要である。つまり、アンテナ22の外側と内側とのアンテナエレメントのインピーダンスバランスが取れている場合には、図6(E)に示すように、共振周波数においてアンテナ22のアンテナループの外側のアンテナエレメントと内側のアンテナエレメントとに同じ向きに高周波電流が流れるので、広帯域化を図ることができる。これに対して、アンテナ22の分岐した一方のアンテナエレメントがもう一方のアンテナエレメントよりも明らかに高インピーダンスになっていると、高インピーダンス側のアンテナエレメントには高周波電流が流れにくくなり、広帯域化の効果は弱くなってしまう。
また、図6(A)のアンテナ装置20においては、図1のアンテナ装置10とは異なり、アンテナ12のアンテナループ先端の分岐点と対角になる位置に、線状のアンテナエレメントを延在させて接続しているので、図6(E)に示すように、アンテナループの外側のアンテナエレメントに流れる高周波電流とアンテナループの内側のアンテナエレメントに流れる高周波電流とが向かい合うことがなく、双方の高周波電流が合流して延在させた線状のアンテナエレメントに流れることになる。
なお、図6に示すアンテナ装置20の場合は、前述したように、アンテナ12のアンテナループ先端の分岐点と対角になる位置に、線状のアンテナエレメントを延在させて接続している場合について示したが、該線状のアンテナエレメントを接続する位置は、分岐点から見て二つに分岐した外側のアンテナエレメントと内側のアンテナエレメントとの間のインピーダンスバランスが取れているアンテナループ上の位置であれば如何なる位置に接続するようにしても良く、接続するための位置に関する制限は特にない。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係るアンテナ装置の第3の実施形態について、図7を参照しながら説明する。図7は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の構成例と特性とを示す説明図である。図7(A)は、第3の実施形態に係るアンテナ装置30の全体構成を示し、図7(B)は、図7(A)のアンテナ部分を拡大した拡大図を示す。また、図7(C)は、図7(A)のアンテナ装置30のリターンロス特性を示し、図7(D)は、図7(A)のアンテナ装置30の放射効率特性を示している。さらに、図7(E)は、図7(C)のリターンロス特性に示した共振周波数における高周波電流の動きを示している。なお、図7(C)、(D)の特性図は、アンテナ装置30の特性を、図8に示したアンテナ装置50における図9の特性と重ね合わせて示しており、実線がアンテナ装置30の特性を示し、破線がアンテナ装置50の特性を示している。
図7(A)のアンテナ装置30は、図6(A)のアンテナ装置20と同様、電界型のアンテナ装置としてプリント基板などにアンテナを導体パターンで形成したアンテナ装置であって、GND31、ループ形状を有するアンテナ32、誘電体33によって構成される。アンテナ32は、アンテナ装置20と同様、あらかじめ設定した分岐点において二つに分岐した逆L型のアンテナエレメントそれぞれの先端を互いに接続することにより、ループ形状のアンテナループを有するアンテナとして形成するとともに、互いに接続したアンテナエレメント先端の位置(つまり、分岐点とは対角の位置)に線状のアンテナエレメントを延在させた形で接続している。ただし、図7(A)のアンテナ装置30は、図6(A)のアンテナ装置20とは異なり、アンテナ装置20よりもアンテナループのループサイズを大きくするとともに、該アンテナループ内に線状のアンテナエレメントを十字形に配置して、該アンテナループと接続している。
さらに、図7(B)の拡大図に示すように、図1、図6のアンテナ装置10,20と同様、給電点からのアンテナ32のアンテナエレメントを二つのアンテナエレメントに分岐する分岐点の近傍に複数の調整用素子35,36,37を実装している。ここで、調整用素子35,36,37のうち、調整用素子35は、分岐点において二つのアンテナエレメントに分岐する直前の位置に配置される。また、調整用素子36は、分岐点において二つのアンテナエレメントに分岐した直後の外側のアンテナエレメントの位置に配置される。また、調整用素子37は、二つのアンテナエレメントに分岐した直後の内側のアンテナエレメントの位置に配置される。また、調整用素子35,36,37それぞれは、インダクタまたはキャパシタあるいはインダクタとキャパシタとの組み合わせを用いて構成される。
なお、図1、図6のアンテナ装置10,20の場合と同様、アンテナ装置30のGND31とアンテナ32以外の部分は誘電体33によって満たされる。また、アンテナ装置30は、図1、図6の場合と同様、アンテナ32を実装可能な領域として実装範囲34を定めている。アンテナ32は、実装範囲34内に配置される。実装範囲34の大きさは、第1、第2の実施形態の場合と同様であり、本発明に関連する現状の技術において説明した図8の実装範囲54、図10の実装範囲64、図12の実装範囲74と同じ大きさとしている。
本発明の第3の実施形態に係る図7(A)のアンテナ装置30は、図7(C)のリターンロスの特性に示すように、第1の実施形態として図1に示したアンテナ装置10の場合と同様、共振周波数が、1,900MHz付近にあり、また、リターンロスが−5dB以下になる帯域幅が、950MHz(=|1,600MHz−2,500MHz|)であり、図8に示したアンテナ装置50と比較して、大幅な広帯域化を実現していることが分かる。つまり、図7(A),(B)に示すように、アンテナループ内に十字形に線状のアンテナエレメントを追加して接続した構成においても、図7(E)に示すように、共振周波数において各アンテナエレメントを流れる高周波電流は同じ向きであり、広帯域化の効果が得られる。
また、図7(D)の放射効率特性に示すように、本発明の第3の実施形態に係る図7(A)のアンテナ装置30においては、第1の実施形態として図1に示したアンテナ装置10の場合と同様、効率の急激な落ち込みもなく、図8に示したアンテナ装置50と同等以上の効率特性を維持していることも分かる。なお、図7(C),(D)に示す特性図は、図7(B)のアンテナ装置30の調整用素子35,36,37として、いずれも、2nHのインダクタを用いている場合を示している。
また、第3の実施形態として図7(A),(B)に示すアンテナ装置30においては、第1、第2の実施形態に係るアンテナ装置10,20に比べて、図7(E)に示すように、高周波電流が流れるルートを多数のルート数にすることができるので、周波数帯ごとに、最適なルートを高周波電流が流れることになる。したがって、高周波電流が流れるルートとしてアンテナループ以外のルートがない第1、第2の実施形態に係るアンテナ装置10,20に比べ、高周波数帯の特性を改善することができる。
なお、図7(A),(B)においては、アンテナ32を構成するアンテナエレメントとしてアンテナループ内に十字形に線状のアンテナエレメントを追加配置した場合について示したが、高周波電流が流れるルートを多く確保することができれば、アンテナループ内に追加配置するアンテナエレメントは如何なる配置であっても差し支えない。例えば、アンテナループ内に縦方向の線状のアンテナエレメントまたは横方向の線状のアンテナエレメントを追加配置するようにしても良い。かくのごとく、縦方向または横方向の線状のアンテナエレメントを追加配置する場合は、一般に、十字形に追加配置した場合に比して、ルート数が少なくなるので、高周波数帯の特性の改善効果は減少するものの、アンテナループ以外のルートがない第1、第2の実施形態に係るアンテナ装置10,20に比べ、高周波数帯の特性を改善することができ、より高い広帯域化を実現することができる。
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。