JP6148955B2 - 異材接合方法及び異材接合体 - Google Patents

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Description

本発明は、異材接合方法及び異材接合体に関する。
従来において、例えばスポット溶接で高い接合強度を得ることのできる発明として、マンガン及びケイ素等の元素量、板厚、界面反応層の厚み等を適宜に調整して成る鋼材とアルミニウム材との接合体が知られている(特許文献1の請求項1、[0005]〜[0014]、及び図1参照。)。
特開2005−152959号公報
しかしながら、材料の組成、板厚、及び反応層の厚み等を改良しても、異種の金属、例えばアルミニウム系材料と鉄系材料との金属を含む部材間には、溶接強度の低下を生じ得る金属間化合物が溶接時に形成されてしまうことがあった。
よって、本発明が解決しようとする課題は、金属間化合物を形成することなく異種の金属を含有する部材同士を接合可能である異材接合方法及び異材接合体を提供することである。
前記課題を解決するための手段として、本発明に係る異材接合方法は、第1材料を含有する第1部材と、第1材料とは異なる第2材料を含有する第2部材とを接合する異材接合方法であって、第2材料に溶接可能な第3材料を含有する補助部材を、第1部材に摩擦接合する摩擦工程と、第1部材と摩擦接合した補助部材と、第2部材とを溶接する溶接工程とを、備え、第1部材は貫通孔又は凹部を有し、摩擦工程において、補助部材を貫通孔内又は凹部内に摩擦接合する。
本発明に係る異材接合方法において、補助部材はテーパ形状を成す外周面を有し、摩擦工程において、補助部材の外周面が貫通孔又は凹部の内周面に接した状態で、補助部材を第1部材に対して相対的に回転させることにより、補助部材を第1部材に摩擦接合する、ことが好ましい。
本発明に係る異材接合方法において、補助部材は、その径が貫通孔又は凹部の径より大きく形成され、摩擦工程において、補助部材を貫通孔の開口部又は凹部上に圧接させた状態で、補助部材を第1部材に対して相対的に回転させることにより、補助部材を第1部材に摩擦接合することが好ましい。
本発明に係る異材接合方法において、補助部材は、その径が貫通孔又は凹部より小さく形成され、摩擦工程において、補助部材を貫通孔内又は凹部内に入れ、補助部材の外周面と貫通孔又は凹部の内周面とが接した状態、又は、補助部材の回転によって接する状態で、補助部材を第1部材に対して相対的に回転させることにより、補助部材を第1部材に摩擦接合することが好ましい。
本発明に係る異材接合方法において、第1部材は貫通孔を有し、補助部材は、円盤形状を成す円盤部を有し、円盤部が挟持されて回転駆動可能であることが好ましい。
本発明に係る異材接合方法において、補助部材は、円盤形状を成す円盤部と、円盤部の一方の側面において中心から離れて形成された孔部、凹部又は凸部と、を有し、孔部、凹部又は凸部に治具が嵌合することにより、補助部材が回転駆動可能であることが好ましい。
本発明に係る異材接合方法において、補助部材は、円盤形状を成す円盤部と、円盤部の一方の側面において中心に形成された孔部、凹部又は凸部と、を有し、孔部、凹部又は凸部に治具が嵌合することにより、補助部材が回転駆動可能であることが好ましい。
前記課題を解決するための手段として、本発明に係る異材接合方法は、第1材料を含有する第1部材と、第1材料とは異なる第2材料を含有する第2部材とを接合する異材接合方法であって、第2材料に溶接可能な第3材料を含有する棒状部材を、第1部材に形成された貫通孔又は凹部に摩擦接合する摩擦工程と、第1部材に摩擦接合した棒状部材の貫通孔又は凹部から突出した部位を切断することにより、補助部材を形成する切断工程と、補助部材と、第2部材とを溶接する溶接工程と、を備える。
前記課題を解決するための手段として、本発明に係る異材接合体は、第1材料を含有し、貫通孔又は凹部を有する第1部材と、第1材料とは異なる第2材料を含有する第2部材と、第2材料に溶接可能な第3材料を含有し、第1部材の前記貫通孔内又は前記凹部内に摩擦接合して成る補助部材と、を備え、第2部材と補助部材とが溶接されている。
本発明によると、第1部材に摩擦接合されて成る補助部材と、補助部材と溶接可能な第2部材とを溶接することによって、第1部材と補助部材との間、及び補助部材と第2部材との間において金属間化合物を形成することなく、それぞれ異種の金属を含有する第1部材及び第2部材を接合可能である異材接合方法及び異材接合体を提供することができる。
また、本発明によると、補助部材は、摩擦工程によって第1部材に摩擦接合されるので、溶接工程に供されるまでに振動、衝撃、傾斜等が作用しても第1部材から脱離しない異材接合方法及び異材接合体を提供することができる。
図1は、本発明に係る異材接合体が用いられる車両の一部を示す概略図である。 図2は、本発明に係る異材接合体が用いられる車両の一部を示す断面概略図である。 図3は、本発明に係る異材接合方法が用いられる車両の製造工程を示すフローチャートである。 図4は、本発明に係る異材接合方法の一実施形態における摩擦工程を示す断面概略図である。 図5は、本発明に係る異材接合方法の一実施形態における溶接工程を示す断面概略図である。 図6は、本発明に係る異材接合体における補助部材の変形例を示す断面概略図である。 図7は、本発明に係る異材接合体における補助部材の変形例を示す断面概略図である。 図8は、本発明に係る異材接合体における補助部材の変形例を示す断面概略図である。 図9は、本発明に係る異材接合体における補助部材の変形例を示す断面概略図である。 図10は、本発明に係る異材接合方法の他の実施形態を示す断面概略図である。
本発明に係る異材接合体及び異材接合方法の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(1)車両における本発明の適用部位
本発明に係る異材接合体は、例えば車両のボディ部分及びルーフ部分等を製造する際に異なる種類の金属間の溶接が必要となる部位に適用することができる。本発明に係る異材接合体の一実施形態を適用可能な部位の一例として、図1及び図2に車体の上部及び側部となる構造体を示した。
図1に示すように、前後方向に延在する表皮部材のサイドシル101と、サイドシル101の前端部から上方に延在し、フロントガラスの側方を支持するヒンジピラー102と、サイドシル101の中央部から上方に延在するセンターピラー103とが一体的に形成されている。サイドシル101、ヒンジピラー102、及びセンターピラー103は、車体の上部及び側部の枠体であり、各枠体の間にはボディ部分及びルーフ部分等を形成する金属板、及びガラス等が溶接又は嵌め込まれている。例えばヒンジピラー102と、ルーフ部分を形成するルーフパネル104とは溶接により固定される。
また、図1のA部分の断面斜視図である図2に示すように、ヒンジピラー102における車外側の表皮部分と、ルーフパネル104とが接合されている。
なお、図1及び図2には図示していないが、ヒンジピラー102の内部には、車外側の表皮部材であるアウタパネル、補強用の中間部材であるレインフォースメント、車内側の表皮部材であるインナパネル等が設けられている。
ヒンジピラー102の表皮部分と、ルーフパネル104とは、溶接によって接合されるが、それぞれが異なる金属で形成されていることが多く、直接溶接しようとしても高い溶接強度を確保することが困難であった。
よって、本実施形態に係る異材接合体は、例えばヒンジピラー102及びルーフパネル104の溶接される部位に適用することができる。
なお、図2のヒンジピラー102とルーフパネル104との接合部位には、後述の異材接合体における補助部材3が設けられている。
(2)車両製造時における本発明の適用時期
本発明に係る異材接合方法は、例えば車両のボディ部分及びルーフ部分等に成る部品をプレス成形する前からプレス成形した部品を溶接する時までの間に適用することができる。図3には、車両の製造工程を示すフローチャートを示した。
図3に示すように、車両の製造工程としては、例えば部品プレス成形工程S1、車体溶接工程S2、車体塗装工程S3、及び組付工程S4を挙げることができる。部品プレス成形工程S1は、ボディ部分及びルーフ部分となる部品をそれぞれの形状にプレス成形する工程である。車体溶接工程S2は、部品プレス成形工程S1でプレス成形された複数の部品を集めて溶接する工程である。車体塗装工程S3は、溶接されて外形がある程度完成したボディ部分及びルーフ部分等の外面を塗装する工程である。組付工程S4は、塗装体にエンジン、タイヤ、補機、及び内装材等を取り付ける工程である。
本実施形態に係る異材接合方法は、部品プレス成形工程S1のプレス成形前から車体溶接工程S2の溶接時までの間に適用することができる。具体的には、図2に示したヒンジピラー102の構成部材及びルーフパネル104等をプレス成形する前から、プレス成形された各部品において異なる種類の金属間の溶接をする際までの間において適用することができる。
詳細は後述するが、本発明に係る異材接合方法は摩擦工程と溶接工程とを備えている。なお、例えば摩擦工程と溶接工程とを連続して実行しても良く、部品プレス成形工程S1を実行するライン上にて摩擦工程を実行した後に、車体溶接工程S2を実行するライン上に溶接予定部品を移して溶接工程を実行しても良い。
更に詳述すると、例えば各部材が未成形状態の平板状部材において、プレス成形後にどの部位が溶接箇所と成るかが判明している場合は、該溶接箇所と成る部位に対して、プレス成形前に本実施形態に係る異材接合方法における摩擦工程を予め実行しておいても良い。この場合、摩擦工程が実行された後に部品プレス成形工程S1が実行され、更に車体溶接工程S2が実行されることによって、本発明に係る異材接合方法における溶接工程が実行されたことになる。
車両の製造工程における部品プレス成形工程S1で本発明に係る異材接合方法を適用していれば、車体溶接工程S2に供される部品において、異なる種類の金属間の溶接が必要な部位には補助部材が配置されていることになる。上記溶接が必要な部位に補助部材が配置されていることにより、通常の車体溶接工程S2を実行するだけで、本実施形態に係る異材接合方法の溶接工程が実行されることになる。
(3)異材接合方法及び異材接合体の概要
図4及び図5には、本発明に係る異材接合方法の一実施形態を断面概略図として示している。なお、図4には本発明に係る異材接合方法の摩擦工程の一実施形態を示し、図5には溶接工程を示している。摩擦工程及び溶接工程で用いる各部材の材料の説明は、溶接工程の説明後に行う。
先ず、図4(A)には第1部材1が示されている。第1部材1は、第1材料を含有する板状部材である。また、第1部材1には、平面視円形で第1部材1の厚み方向に沿った内周面21を有する貫通孔2が形成されている。以下において、貫通孔2の平面視中心に一致し、第1部材1の厚み方向に沿った仮想線を、貫通孔2の軸線と称する。
続いて、図4(B)に示すように、補助部材3が第1部材1の貫通孔2内に挿入される。補助部材3は、第3材料を含有する板状部材である。また、補助部材3は、円盤形状を成す円盤部4を有し、円盤部4の外縁部にはその厚み方向に沿った外周面41が形成されている。補助部材3は、その厚みが第1部材1の厚みと同一又は略同一に形成されている。以下において、補助部材3の平面視中心に一致し、補助部材3の厚み方向に沿った仮想線を、補助部材3の軸線と称する。
貫通孔2の内径と、補助部材3の外径とは一致又は略一致するように形成されている。よって、補助部材3が貫通孔2内に挿入される際には、補助部材3を貫通孔2に対して嵌入又は圧入することとなる。このとき、第1部材1と補助部材3とは厚みが同一又は略同一に形成されているので、第1部材1と貫通孔2に挿入された補助部材3とは面一又は略面一と成る。
摩擦工程において第1部材1と補助部材3とを摩擦溶着させることのできる一態様として、図4(C)に示す挟持用治具J1及びj2を用いる態様を挙げることができる。該態様について詳述すると、第1部材1の貫通孔2に挿入されて成る補助部材3は、その一方面及び他方面が、第1部材1の表面において露出している。該露出した補助部材3の一方面及び他方面に対して、挟持用治具J1及びJ2がそれぞれ当接し、かつそれぞれの当接面を押圧している。これにより、挟持用治具J1及びJ2が補助部材3を一方面及び他方面から挟持することができる。
挟持用治具J1及びJ2は同一形状を有する棒状の治具であり、各先端部が対向し、かつ各軸線が一致するように配置される。また、挟持用治具J1及びJ2の各軸線は、第1部材1の貫通孔2及び補助部材3の各軸線と一致している。なお、挟持用治具J1及びJ2は、図示しない適宜の動力源及び回転駆動モータ等を備える補助部材回転装置に接続されている。
更に、挟持用治具J1及びJ2は、補助部材3を挟持した時に、各軸線を中心として同一方向に回転可能な部材である。挟持用治具J1及びJ2が回転することにより、補助部材3の円盤部4が、挟持用治具J1及びJ2により挟持されて回転駆動することができる。このとき、第1部材1は固定されている。よって、補助部材3が、第1部材1の貫通孔2内で、補助部材3及び貫通孔2の各軸線を中心にして回転する。補助部材3は貫通孔2と同径又は略同径に形成されているので、補助部材3が貫通孔2内で回転すると、補助部材3が貫通孔2に対して摺動することとなる。
第1部材1と補助部材3とが摩擦により溶着した時点で、摩擦工程が完了する。
摩擦工程が完了すると、図4(D)に示す摩擦溶着体5が得られる。
摩擦溶着体5は、上記第1部材1における貫通孔2の内周面21と、上記補助部材3における円盤部4の外周面41とが、補助部材3の回転で生じた摩擦熱によって溶着して成る。摩擦溶着体5においては、貫通孔2の内周面21と円盤部4の外周面41とが溶着した部位は摩擦溶着部Fとして形成されている。
なお、摩擦溶着部Fが形成される補助部材3の回転条件は、例えば第1部材1及び補助部材3の材料、補助部材3の回転速度、及び第1部材1と補助部材3との回転時における接触部位の温度等に応じて決定することができる。
本発明に係る異材接合方法において補助部材の円盤部が挟持されて回転駆動可能である実施形態を採用するときに、円盤部を挟持する挟持用部材、例えば上記挟持用治具J1及びJ2を用いる場合、挟持用部材と補助部材との摩擦が大きいのが好ましい。挟持用部材と補助部材との摩擦が適宜の大きさ以上であれば問題は生じないが、該摩擦が小さ過ぎると、挟持用部材が回転しても補助部材と挟持用部材との接触面で滑りが生じてしまい、補助部材の回転による摩擦溶接が可能な回転数に達しない可能性がある、したがって、挟持用部材と補助部材との摩擦は、挟持用部材の回転と補助部材における円盤部の回転とが同期可能な程度であると良く、挟持用部材における補助部材との接触部位にエラストマー等の滑り止め部材を付設しておくのが好ましい。
続いて、溶接工程を実行するには、図5(A)に示すように、前記摩擦工程にて得られた摩擦溶着体5と第2部材6とを当接させる。
第2部材6は、第1材料とは異なる第2材料を含有する板状部材であり、第1部材1と接合されることになる。第2部材6に含まれる第2材料と、補助部材3に含まれる第3材料とは、相互に溶接可能な材料である。
次に、図5(B)に示すように、摩擦溶着体5の補助部材3に対してスポット溶接用の電極E1を圧接し、第2部材6における補助部材3に当接する部位又は臨む部位の反対側に対して電極E2を圧接する。
電極E1及びE2を補助部材3及び第2部材6に圧接しつつ通電することにより、補助部材3と第2部材6とが溶着する。
なお、仮に摩擦溶着体5における第2部材6に臨む面において、補助部材3の露出面が第1部材1の表面に対して面一でなく、突出又は陥没している可能性がある。補助部材3の露出面が突出している場合は、補助部材3と第2部材6とが溶接前から接触可能であるので、溶接作業が容易である。また、補助部材3の露出面が陥没している場合は、電極E1及びE2の通電時に圧接する力を大きくすることにより、第2部材6における電極E2の圧接される部位が第1部材1の貫通孔2内に圧入されるように僅かに変形し、補助部材3に接触するので、溶着が可能である。第2部材6が変形して第1部材1の貫通孔2内に圧入され、更に補助部材3と溶着されることによって、第2部材6の補助部材3に対する溶着状態だけでなく、貫通孔2に対する係合状態も実現されるので、第1部材1と第2部材6との接合強度が高くなる。
溶接作業が完了すると、図5(C)に示すように、本発明に係る異材接合体の一実施形態である異材接合体7が得られる。これにより、溶接工程が完了し、つまり本実施形態
に係る異材接合方法の全工程が完了したこととなる。
異材接合体7において、補助部材3と第2部材6との溶着部位には、溶接部Wが形成されている。第1部材1と補助部材3とは摩擦溶着部Fにおいて溶着されており、第2部材6と補助部材3とは溶接部Wにおいて溶着されている。結果として、第1部材1と第2部材6とは接合されていることとなる。
(4)各部材の材料
ここで、第1部材1、第2部材6及び補助部材3の各材料について説明する。
第1部材1の材料である第1材料と、第2部材6の材料である第2材料との組合せとしては、溶接が困難な材料の組合せ、又は、溶接しても例えば車両用部品として使用に耐え得る溶接強度を得ることが困難な材料の組合せが挙げられる。具体的には、第1材料及び第2材料の組合せとして、例えば一方がアルミニウム、アルミニウム系材料、マグネシウム又はマグネシウム系材料であり、他方が鉄又は鉄系材料である組合せ等を採用することができる。
補助部材3の材料である第3材料は、第2材料に溶接可能な材料、好ましくは車両用部品としての使用に耐え得る溶接強度を以って第2材料に溶接可能な材料である。第3材料は、第2材料が決定されると、第2材料に応じて適当な材料が決定される。
本発明に係る異材接合体を車両用部品として用いる場合、第1材料、第2材料及び第3材料の組合せとして好ましいのは、第1材料がアルミニウム、アルミニウム系材料、マグネシウム又はマグネシウム系材料であり、第2材料及び第3材料が鉄又は鉄系材料である。
なお、本発明に係る異材接合方法及び異材接合体において、上述の溶接が困難であること、及び、溶接が可能であることは、例えば通電を伴う溶接、具体的には車両用部品の製造に多く用いられるスポット溶接等についての溶接の可否を意味している。つまり、第1材料と第2材料とは、例えば通電を伴う溶接が困難であり、第2材料と第3材料とは例えば通電を伴う溶接が可能である。
従来、車両用部品の製造において、異種の金属を含む板状部材同士を接合する方法としては、例えば、各板状部材に含まれる金属を溶接時に金属間化合物が形成され難い材料に改良し、板状部材同士を直接溶接する方法、異種の金属を含む板状部材以外にリベットを介して接合する方法等が採用されてきた。
材料を改良する方法を採った場合、改良されていても溶接強度の低下を招き得る金属間化合物が溶接時に形成されてしまう可能性が依然として残っていた。また、リベットを用いる方法を採った場合、車両用部品の製造において多く用いられるスポット溶接用の装置等をリベットの溶接には適用することができない。更に、リベットの購入、準備、位置決め及び配置工程、別途専用のリベット打込装置及びかしめ装置等が必要となる。
従来においては異種の金属を含む板状部材以外にリベットを購入、又は、煩雑な製造工程を経てリベットを形成する必要があった。
これに対して、本発明に係る異材接合方法においては、上述したように補助部材が第2部材に対して通電を伴う溶接が可能である材料を含有し、例えば第2材料と第3材料とは同種又は同系の金属材料を採用し得るので、第2部材を製造する際にその一部を切断して補助部材を製造することが可能である。
よって、本発明に係る異材接合方法においては、リベットに拠らない接合態様を採用しており、具体的には補助部材を第1部材に対して回転等による摩擦溶着するので、リベットの購入、準備、位置決め及び配置工程を追加する必要が無い。更に、専用のリベット打込装置及びかしめ装置等も不要である。
本発明に係る異材接合体は、第1部材と補助部材との間の摩擦溶着部、及び、第2部材と補助部材との間の通電を伴う溶接部位において、金属間化合物が形成されていないので、第1部材と第2部材とは良好な接合強度を確保することができる。
また、補助部材は摩擦工程によって第1部材に摩擦接合されるので、摩擦工程後で溶接工程に供されるまでに振動、衝撃、傾斜等が作用しても第1部材から補助部材が脱離することがない。
図4及び図5には第1部材1に補助部材3が挿入される貫通孔2が設けられて成る実施形態を示した。本発明に係る異材接合方法においては、上記貫通孔2に代えて、補助部材と平面形状及び大きさは同一であり、補助部材の一部が挿入可能な凹部を、第1部材が有することとしても良い。
第1部材が凹部を有する場合は、補助部材の一部を凹部内に配置し、例えば補助部材を凹部内で回転させて生じる摩擦熱によって補助部材の外面と凹部の内面とを摩擦溶着することができる。補助部材の外面と凹部の内面とが摩擦溶着している場合、第1部材の片面にしか補助部材が露出しないことがある。この場合、第2材料と補助部材とを溶接する溶接工程においてスポット溶接を用いるのであれば、第1材料が第2材料及び第3材料よりも融点が低い材料であるのが良い。これにより、第1部材における補助部材が露出していない面と第2部材とを当接させてスポット溶接すると、補助部材に通電されて生じる抵抗熱が第1部材を溶融する。第1部材が溶融すると、凹部が第1部材の反対側まで貫通して貫通孔と成り、第2部材と補助部材とが直接溶着することができる。
なお、好ましくは、補助部材を凹部内で回転させる際に、第1部材の凹部に対して補助部材を圧接しつつ回転させるのが良い。補助部材が圧接されつつ回転することにより、補助部材が回転駆動により生じる摩擦熱で第1部材の凹部であった部位を溶融し、補助部材が第1部材を貫通する。結果として、第1部材に貫通孔が形成され、図4に示した実施形態と同様に、貫通孔の内周面と補助部材の外周面とが摩擦溶着することとなる。これにより、補助部材が第1部材の両面に露出し、第1部材と補助部材とを溶接工程に供する際に第1部材のいずれの面を第2部材に当接して溶接しても良いので、溶接工程に係る作業効率の向上を図ることができる。
本発明に係る異材接合方法における摩擦工程、及び、本発明に係る異材接合体における第1部材と補助部材との摩擦接合としては、図4に示した実施形態のように補助部材を回転させて摩擦により生じる摩擦熱を利用する態様以外に、次の態様を採用し得る。
採用可能な実施形態として、例えば、第1部材に形成される貫通孔又は凹部に補助部材を挿入した上で、補助部材と第1部材との接点に超音波を照射して生じる摩擦熱を利用することによって摩擦溶着させる態様が挙げられる。超音波照射による摩擦溶着であれば、第1部材の貫通孔又は凹部及び補助部材の平面形状が、円形以外の例えば三角形、多角形、又は楕円等の様々な形状を有していることにより、回転による摩擦接合が困難であっても溶着可能である。
更に、補助部材を第1部材の貫通孔又は凹部内において回転させつつ、接点に超音波を照射することによって、回転による摩擦溶着、及び超音波照射による摩擦溶着のいずれかを採用した場合よりも、短時間でかつより確実に摩擦溶着が達成される。
以下に、補助部材の様々な変形例について、図面を参照しつつ説明する。
(5)外周面がテーパ形状を成す補助部材を用いる実施形態
図6に示す実施形態においては、補助部材31がテーパ部8を有している。具体的には、テーパ部8は補助部材31の外周面であって、補助部材31の軸線に対して傾斜するテーパ形状を有する。補助部材31はその外周面にテーパ部8が形成されているので、補助部材31の一方面及び他方面は各直径が異なる。すなわち、補助部材31は、貫通孔2の直径Hと同じ大きさである直径d1を有する小径面312と、直径d1より大きな直径D1を有する大径面311と、テーパ部8とから成る。なお、第1部材1と補助部材31とは同一の厚みに形成されている。
第1部材1と補助部材31との摩擦接合は、補助部材31の小径面312を第1部材1の貫通孔2を覆蓋するように配置し、大径面311から小径面312に向かう方向に補助部材31を貫通孔2に対して圧接しつつ回転させることにより達成される。
補助部材31を貫通孔2に対して圧接しつつ回転させると、先ず貫通孔2の縁辺部と小径面312の縁辺部との間に摩擦が生じる。貫通孔2の縁辺部と小径面312の縁辺部との摩擦により生じる摩擦熱が、貫通孔2の縁辺部を溶融する。補助部材31は貫通孔2に対して圧接されているので、貫通孔2の縁辺部が溶融すると、補助部材31が貫通孔2を押し広げつつ貫通孔2内に挿入され始める。補助部材31が貫通孔2内に挿入され始めると、貫通孔2の内周面21及び周辺部とテーパ部8との間に摩擦が生じる。貫通孔2の内周面21及び周辺部とテーパ部8との摩擦により生じる摩擦熱が、貫通孔2の内周面21及び周辺部を溶融する。補助部材31は貫通孔2に対して圧接されているので、貫通孔2の内周面21及び周辺部が溶融すると、補助部材31が貫通孔2を押し広げつつ第1部材1に埋没する。補助部材31の小径面312及び大径面311が第1部材1の両面に対してそれぞれ面一となるまで補助部材31が第1部材1に埋没した時点で、補助部材31の回転を止めるのが良い。これにより、補助部材31が第1部材1に完全に埋没し、かつ補助部材31が第1部材1に対して摩擦接合されることになり、摩擦工程が完了する。このとき、摩擦工程の実行前には貫通孔2の軸線に沿って形成されていた貫通孔2の内周面21が、溶融及び補助部材31との摩擦溶着によって、テーパ部8に沿った形状に変形している。
摩擦工程の完了後、補助部材31と第2部材(図6には図示せず。)とを、例えばスポット溶接で溶接することによって、溶接工程も完了する。
溶接工程が完了されて得られる異材接合体(図6には図示せず。)は、第1部材1と補助部材31との間の摩擦溶着部、及び、第2部材と補助部材31との間の通電を伴う溶接部位において、溶接強度の低下を招き得る金属間化合物が形成されていないので、第1部材1と第2部材とは良好な接合強度を確保することができる。
また、補助部材31は、摩擦工程によって第1部材1に摩擦接合されるので、摩擦工程後で溶接工程に供されるまでに振動、衝撃、傾斜等が作用しても第1部材1から補助部材31が脱離することがない。
好ましくは、溶接工程において、第1部材1における小径面312が露出した面と第2部材とを当接させてスポット溶接することにより、小径面312と第2部材との間に溶接部が形成されるのが良い。摩擦工程の完了後において、大径面311から小径面312に向かう方向に補助部材31が押圧力又は衝撃が作用しても、貫通孔2の内周面がテーパ部8を小径面312から大径面311に向かう方向に支持する状態と成る。したがって、第2部材が小径面312に対して溶接されると、補助部材31が貫通孔2から脱離しない又は脱離し難いので、第1部材1と第2部材との良好な接合強度が確保することができ、好ましい。
もっとも、第2部材と大径面311との間に溶接部が形成される場合であっても良い。この場合、摩擦工程によって貫通孔2の内周面21とテーパ部8とが溶着していることにより、補助部材31が貫通孔2から脱離しない又は脱離し難いので、第1部材1と第2部材との良好な接合強度を確保することができる。
(6)大径の補助部材を用いる実施形態
図7に示す実施形態においては、補助部材32が貫通孔2の直径Hより大きい直径D2を有している。補助部材32は、平面形状が円形を成す円盤状部材である。なお、第1部材1と補助部材32とは同一の厚みに形成されている。
第1部材1と補助部材32との摩擦接合は、貫通孔2を覆うようにして補助部材32を第1部材1に当接させた上で、補助部材31を第1部材1に対して圧接しつつ回転させることにより達成される。
補助部材32を第1部材1に対して圧接しつつ回転させると、貫通孔2の周辺部と補助部材32との間に摩擦が生じる。貫通孔2の周辺部と補助部材32との摩擦により生じる摩擦熱が、貫通孔2の周辺部を溶融する。補助部材32は第1部材1に対して圧接されているので、貫通孔2の周辺部が溶融すると、補助部材32が第1部材1に埋没する。補助部材32の円形を成す両面が第1部材1の両面に対してそれぞれ面一となるまで補助部材32が第1部材1に埋没した時点で、補助部材32の回転を止めるのが良い。これにより、補助部材32が第1部材1に完全に埋没し、かつ補助部材32が第1部材1に対して摩擦接合されることになり、摩擦工程が完了する。このとき、摩擦工程の実行前には直径Hであった貫通孔2が、その周辺部の溶融及び補助部材32との摩擦溶着によって、補助部材32の直径D2と同一となっている。
摩擦工程の完了後、補助部材32と第2部材(図7には図示せず。)とを、例えばスポット溶接で溶接することによって、溶接工程も完了する。
溶接工程が完了されて得られる異材接合体(図7には図示せず。)は、第1部材1と補助部材32との間の摩擦溶着部、及び、第2部材と補助部材32との間の通電を伴う溶接部位において、金属間化合物が形成されていないので、第1部材1と第2部材とは良好な接合強度を確保することができる。
また、補助部材32は、摩擦工程によって第1部材1に摩擦接合されるので、摩擦工程後で溶接工程に供されるまでに振動、衝撃、傾斜等が作用しても第1部材1から補助部材32が脱離することがない。
(7)小径の補助部材を用いる実施形態
図8(A)に示す実施形態においては、補助部材33が貫通孔2の直径Hより小さい直径D3を有している。補助部材33は、平面形状が円形を成す円盤状部材である。なお、第1部材1と補助部材33とは同一の厚みに形成されている。
第1部材1に対して補助部材33を回転摩擦溶着するには、例えば次の2通りの回転態様を採用することができる。第1の回転態様は、補助部材33の回転軸と補助部材33の中心軸線とが一致しない態様である。また、第2の回転態様は、補助部材33の回転軸と補助部材33の中心軸線とが一致する態様である。以下に、第1の回転態様及び第2の回転態様について詳述する。
(7−1)補助部材33の第1の回転態様
図8(B)に補助部材33の第1の回転態様を示している。該第1の回転態様において、貫通孔2よりも小径である補助部材33は、その軸線が貫通孔2の軸線に一致するように貫通孔2内に挿入され、補助部材33の回転軸と補助部材33の中心軸線とが一致しない状態で回転が開始される。すなわち、補助部材33の回転軸が、補助部材33の中心軸線からずれた状態で、かつ補助部材33の外周面413の一部及び貫通孔2の内周面21の一部が、接触が生じた状態で回転させる。この場合、補助部材33の外周面413と、貫通孔2の内周面21との間に接触が生じる。
図8(B)に示す補助部材33は、外周面413が貫通孔2の内周面21に接触した状態で、補助部材33の回転軸を貫通孔2の中心軸線に一致するように設定している。つまり、補助部材33は貫通孔2内で偏心回転することになる。図8(B)に示す補助部材33が回転することによって、補助部材33の外周面413が貫通孔2の内周面21に接触した状態で回転する。この場合、補助部材33の外周面413と、貫通孔2の内周面21との間に摩擦が生じる。
また、回転前に補助部材33の外周面413と貫通孔2の内周面21とが接触しない場合、補助部材33の回転軸を補助部材33の中心軸線及び貫通孔2の中心軸線から離れて設定すれば良い。この場合も、補助部材33は貫通孔2内で偏心回転することになる。補助部材33の外周面413が貫通孔2の内周面21に接触しない状態で補助部材33が偏心回転した場合、補助部材33の回転軸が補助部材33の中心軸線から離れていることにより、補助部材33の中心軸線が回転軸を中心にして円軌道上を変位する。補助部材33の中心軸線が変位することにより、補助部材33の外周面413が様々な方向に振れる。よって、補助部材33の偏心回転により、補助部材33の外周面413と貫通孔2の内周面21との接触が生じる。該接触が生じることによって、補助部材33の外周面413と、貫通孔2の内周面21との間に摩擦が生じる。
以上により、補助部材33の回転によって補助部材33と貫通孔2との接触が生じる回転態様において、補助部材33の外周面413と貫通孔2の内周面21とが摩擦溶着する。更に、該摩擦によって生じる摩擦熱は、補助部材33、特に摩擦熱が生じている外周面413が膨張することがある。よって、摩擦熱により膨張した補助部材33の外周面413が貫通孔2の内周面に全面的に摩擦溶着する。補助部材33の回転は、補助部材33が第1部材1に対して溶着状態となった時点で止めると良い。
摩擦工程の完了後、補助部材33と第2部材(図8(B)には図示せず。)とを、例えばスポット溶接で溶接することによって、溶接工程も完了する。
(7−2)補助部材33の第2の回転態様
図8(C)に補助部材33の第2の回転態様を示している。該第2の回転態様において、貫通孔2よりも小径である補助部材33は、貫通孔2内に挿入され、補助部材33の外周面413の一部と貫通孔2の内周面21の一部とが接触した状態で、補助部材33の軸線を中心にして回転が開始される。すなわち、補助部材33の回転軸は、補助部材33の中心軸線と一致し、貫通孔2の中心軸線から偏心している。
補助部材33が回転すると、補助部材33の外周面413の一部が貫通孔2の内周面21の一部に対して摺動するので、摩擦が生じる。補助部材33の外周面413の一部と貫通孔2の内周面21の一部との摩擦によって生じる摩擦熱が、摺動部位を溶融する。よって、第2の回転態様においては、補助部材33の外周面413の一部と貫通孔2の内周面21の一部とが溶着することになる。補助部材33の回転は、補助部材33が第1部材1に対して溶着状態となった時点で止めると良い。
摩擦工程の完了後、補助部材33と第2部材(図8(C)には図示せず。)とを、例えばスポット溶接で溶接することによって、溶接工程も完了する。
第1の回転態様及び第2の回転態様において摩擦工程が実行され、更に溶接工程が完了されて得られる異材接合体(図8には図示せず。)は、いずれも、第1部材1と補助部材33との間の摩擦溶着部、及び、第2部材と補助部材33との間の通電を伴う溶接部位において、金属間化合物が形成されていない。したがって、第1部材1と第2部材とは良好な接合強度を確保することができる。
また、補助部材33は摩擦工程によって第1部材1に摩擦接合されるので、摩擦工程後で溶接工程に供されるまでに振動、衝撃、傾斜等が作用しても第1部材1から補助部材33が脱離することがない。
(8)棒状部材から形成される補助部材を用いる実施形態
続いて、図9(A)〜図9(C)に示す実施形態においては、摩擦工程が実行された後に補助部材が形成される。
詳述すると、図9(A)に示すように、先ず第3材料を含有する棒状部材9を、第1部材1の貫通孔2に対して挿通する。棒状部材9は、その直径が貫通孔2の直径と同径又は略同径である円柱形部材である。
次に、該実施形態に係る異材接合方法の摩擦工程を実行する。図9(B)に示すように、貫通孔2を挿通している棒状部材9をその軸線を中心にして回転させる。棒状部材9と貫通孔2とは各直径が同径又は略同径であるので、棒状部材9が回転すると、棒状部材9の周側面91と貫通孔2の内周面21との間に摩擦が生じる。該摩擦によって生じる摩擦熱が、棒状部材9の周側面9と貫通孔2の内周面21とを溶融し、溶着する。これにより、摩擦工程は完了である。
更に、該実施形態に係る異材接合方法の切断工程を実行する。図9(C)に示すように、第1部材1に対して摩擦接合した棒状部材9の貫通孔2から突出した部位を切断し、補助部材34を形成する。該切断工程によって、補助部材34以外の棒状部材9を形成していた除去部10は、異材接合方法及び異材接合体には使用しないので、除去される。
なお、除去部10は、軸線方向に沿った大きさは棒状部材9に比べて小さくなっているが、棒状部材9と同様に円柱形状を有しているので、該実施形態に係る異材接合方法を用いて別の異材接合体を製造する際に、新たな棒状部材として再利用することができる。
切断工程の完了後、補助部材34と第2部材(図9(C)には図示せず。)とを、例えばスポット溶接で溶接することによって、溶接工程も完了する。
溶接工程が完了されて得られる異材接合体(図9には図示せず。)は、いずれも、第1部材1と補助部材34との間の摩擦溶着部、及び、第2部材と補助部材34との間の通電を伴う溶接部位において、金属間化合物が形成されていない。したがって、第1部材1と第2部材とは良好な接合強度を確保することができる。
また、補助部材34は摩擦工程によって第1部材1に摩擦接合されるので、摩擦工程後で溶接工程に供されるまでに振動、衝撃、傾斜等が作用しても第1部材1から補助部材34が脱離することがない。
なお、特に図9(B)に示されるように、本実施形態においては第1部材1の両面から棒状部材9が突出した状態で摩擦工程を行なっている。もっとも、本発明に係る異材接合方法においては、棒状部材が第1部材の片面からのみ突出するようにした上で、摩擦工程を行なっても良い。これにより、摩擦工程後の切断工程が第1部材の片面から突出する棒状部材を切断するだけで良いので、切断回数の低減を図ることができ、作業効率が向上するので好ましい。更に、棒状部材の軸線方向に沿った大きさが切断工程を経ても第1部材の厚み程度しか減少しないので、該実施形態に係る異材接合方法を用いて別の異材接合体を製造する際に、複数回に亘って新たな棒状部材として再利用することができる。
摩擦工程、切断工程及び溶接工程を備える異材接合方法において、棒状部材を回転させる方法としては、例えば、棒状部材の円形を成す一端面及び他端面において補助部材を挟持して回転させる方法、及び、棒状部材における第1部材から突出する周側面の一部を把持して回転させる方法等を挙げることができる。
以上において様々な補助部材を用いる異材接合方法について説明した。
上述した補助部材31、32、33又は34を用いる異材接合方法においては、リベットの購入、準備、位置決め及び配置工程を追加する必要が無い。更に、専用のリベット打込装置及びかしめ装置等も不要である。
また、補助部材31、32、33又は34を用いる異材接合方法において、第1部材1が貫通孔2に代えて凹部を有していても良い。摩擦工程は、補助部材31、32、33又は34が少なくとも凹部内に摩擦溶着することができるように、補助部材31、32若しくは33又は棒状部材9を第1部材1の凹部に圧接しつつ回転させることにより実行可能である。
(9)回転時における補助部材の保持が挟持以外で行われる実施形態
上記(1)に係る実施形態において、摩擦工程では補助部材31を挟持して回転させている。摩擦工程における補助部材の回転時に補助部材を保持する態様としては、図4に示した挟持態様以外に、図10に示す態様を挙げることができる。
図10(A)に示す回転時の補助部材の保持態様においては、補助部材35が凸部を有し、該凸部に嵌合可能な凹部を有する治具を用いる。
具体的には、図10(A)に示すように、補助部材35は、円盤部45と、円盤部45の円形を成す一方の側面において中心から離れて形成された2つの円柱状突起111及び111とを有している。また、補助部材35を回転させることのできる嵌合用治具J3の端面には、円柱状突起111に嵌合可能な凹部121が形成されている。
摩擦工程において、補助部材35及び嵌合用治具J3は、例えば上述した実施形態(1)の補助部材3及び挟持用治具J1及びJ2に代えて用いることができる。
図10(B)に示す回転時の補助部材の保持態様においては、補助部材36が凸部を有し、該凸部に嵌合可能な凹部を有する治具を用いる。
具体的には、図10(B)に示すように、補助部材36は、円盤部46と、円盤部46の円形を成す一方の側面において中心に形成された1つの角柱状突起112とを有している。また、補助部材36を回転させることのできる嵌合用治具J4の端面には、角柱状突起112に嵌合可能な凹部122が形成されている。
摩擦工程において、補助部材36及び嵌合用治具J4は、例えば上述した実施形態(1)の補助部材3及び挟持用治具J1及びJ2に代えて用いることができる。
円柱状突起111及び角柱状突起112は、本発明に係る異材接合方法における円盤部に形成される凸部の一例である。
補助部材35及び挟持用治具J1、又は、補助部材36及び挟持用治具J2の組合せが摩擦工程に供されると、次のようになる。補助部材35又は36には凹部121又は122に嵌合する円柱状突起111又は角柱状突起112が形成されているので、挟持用治具J1又はJ2が回転したときに、挟持用治具J1又はJ2のみが空転することがない。すなわち、挟持用治具J1又はJ2の回転が、凹部121又は122から円柱状突起111又は角柱状突起112を介して補助部材35又は36に伝達されることになる。補助部材35又は36が回転すると、上記補助部材3と同様に、第1部材に摩擦接合される。
摩擦工程の完了後、補助部材35又は36と第2部材(図10には図示せず。)とを、例えばスポット溶接で溶接することによって、溶接工程も完了する。
本実施形態においては凸部が形成されて成る補助部材35及び36を示した。本発明に係る異材接合方法においては、凸部に代えて孔部又は凹部が形成されて成る補助部材を用いる実施形態を採用することもできる。この場合、補助部材を回転させる治具においても、凸部に代えて孔部又は凹部に嵌合可能な形状を採用することができる。
なお、孔部又は凹部が形成された補助部材に対しては、孔部及び凹部のいずれにも嵌合可能な突起部を有する治具を用いることができる。すなわち、摩擦工程において治具が空転しない限り、孔部及び凹部のいずれかが形成される補助部材を用いた場合であっても、嵌合させる治具を共通化することができる。
補助部材35の円柱状突起111及び補助部材36の角柱状突起112は、車両用部品の完成時に他の部品との溶接、組立、塗装等を阻害しないのであれば、除去する必要は無い。しかしながら、阻害が生じるのであれば、溶接工程の前後において円柱状突起111及び角柱状突起112を切断する等によって除去すれば良い。
なお、本発明に係る異材接合方法においては、補助部材に凸部が形成されている場合、摩擦工程完了後にスポット溶接により該凸部を溶融し、第1部材に対して面一又は略面一と成る程度にまで押し潰すことにより、上記阻害の有無に関わらず、凸部を切断等により除去する必要がなくなる。
摩擦工程が完了すると補助部材と第1部材とが溶着するので、補助部材が回転不能となる。円盤部に凸部が形成される場合、第1部材に溶着して回転不能となった補助部材を、円盤部の凸部に嵌合する治具により更に回転させようとすると、凸部に対して集中的に応力が作用する。このとき、溶接工程の前後において凸部を除去する必要が有る場合、凸部が根元部分から折れる又はねじ切れることによって、補助部材から脱離しても良い。これにより、凸部を切断等により除去する必要がなくなる。なお、摩擦工程を行った治具を用いて凸部が根元部分から折れる又はねじ切れるようにするには、例えば補助部材に含まれる第3材料の適切な選択、治具から凸部に作用させる応力の大きさ、凸部の太さ及び長さ等を調整することにより実現可能である。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により、本発明は限定されることはない。例えば、補助部材は実施例では円盤形状又は円柱形状としたが、それ以外の形状であっても良い。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
1:第1部材、2:貫通孔、3、31、32、33、34、35及び36:補助部材、311:大径面、312:小径面、4、45及び46:円盤部、5:摩擦溶着体、6:第2部材、7:異材接合体、8:テーパ部、9:棒状部材、10:除去部、21:内周面、111:円柱状突起(凸部)、112:角柱状突起(凸部)、121及び122:凹部、41及び413:外周面、101:サイドシル、102:ヒンジピラー、103:センターピラー、104:ルーフパネル、E1及びE2:電極、F:摩擦溶着部、W:溶接部、J1及びJ2:挟持用治具、J3及びJ4:嵌合用治具、H、D1、D2及びD3:径、S1:部品プレス成形工程、S2:車体溶接工程、S3:車体塗装工程、S4:組付工程

Claims (9)

  1. 第1材料を含有する第1部材と、該第1材料とは異なる第2材料を含有する第2部材とを接合する異材接合方法であって、
    前記第2材料に溶接可能な第3材料を含有する補助部材を、前記第1部材に摩擦接合する摩擦工程と、
    前記第1部材と摩擦接合した前記補助部材と、前記第2部材とを溶接する溶接工程と、
    を備え
    前記第1部材は貫通孔又は凹部を有し、
    前記摩擦工程において、前記補助部材を前記貫通孔内又は前記凹部内に摩擦接合す
    異材接合方法。
  2. 前記補助部材はテーパ形状を成す外周面を有し、
    前記摩擦工程において、前記補助部材の前記外周面が前記貫通孔又は前記凹部の内周面に接した状態で前記補助部材を前記第1部材に対して相対的に回転させることにより、前記補助部材を前記第1部材に摩擦接合する、
    請求項1に記載の異材接合方法。
  3. 前記補助部材は、その径が前記貫通孔又は前記凹部の径より大きく形成され
    前記摩擦工程において、前記補助部材を前記貫通孔の開口部又は前記凹部上に圧接させた状態で前記補助部材を前記第1部材に対して相対的に回転させることにより、前記補助部材を前記第1部材に摩擦接合する、
    請求項に記載の異材接合方法。
  4. 前記補助部材は、その径が前記貫通孔又は前記凹部より小さく形成され、
    前記摩擦工程において、前記補助部材を前記貫通孔内又は前記凹部内に入れ、前記補助部材の外周面と前記貫通孔又は前記凹部の内周面とが接した状態、又は、前記補助部材の回転によって接する状態で前記補助部材を前記第1部材に対して相対的に回転させることにより、前記補助部材を前記第1部材に摩擦接合する、
    請求項に記載の異材接合方法。
  5. 前記第1部材は貫通孔を有し、
    前記補助部材は、円盤形状を成す円盤部を有し、該円盤部が挟持されて回転駆動可能である、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の異材接合方法。
  6. 前記補助部材は、円盤形状を成す円盤部と、該円盤部の一方の側面において中心から離れて形成された孔部、凹部又は凸部と、を有し、
    該孔部、凹部又は凸部に治具が嵌合することにより、前記補助部材が回転駆動可能である、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の異材接合方法。
  7. 前記補助部材は、円盤形状を成す円盤部と、該円盤部の一方の側面において中心に形成された孔部、凹部又は凸部と、を有し、
    該孔部、凹部又は凸部に治具が嵌合することにより、前記補助部材が回転駆動可能である、
    請求項1〜のいずれか一項に記載の異材接合方法。
  8. 第1材料を含有する第1部材と、該第1材料とは異なる第2材料を含有する第2部材とを接合する異材接合方法であって、
    前記第2材料に溶接可能な第3材料を含有する棒状部材を、前記第1部材に形成された貫通孔又は凹部に摩擦接合する摩擦工程と、
    前記第1部材に摩擦接合した前記棒状部材の前記貫通孔又は前記凹部から突出した部位を切断することにより、補助部材を形成する切断工程と、
    前記補助部材と、前記第2部材とを溶接する溶接工程と、を備える、
    異材接合方法。
  9. 第1材料を含有し、貫通孔又は凹部を有する第1部材と、
    前記第1材料とは異なる第2材料を含有する第2部材と、
    前記第2材料に溶接可能な第3材料を含有し、前記第1部材の前記貫通孔内又は前記凹部内に摩擦接合して成る補助部材と、を備え、
    前記第2部材と前記補助部材とが溶接されている、
    異材接合体。
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