JP6148879B2 - 二次電池の電池状態推定装置及び電池パックの製造方法並びにセルバランス確認方法 - Google Patents
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Description
これら大容量の高容量密度の二次電池では、従来の一般的な二次電池に比べ、容量が大きいだけではなく、自動車内、屋外など温度環境が格段に厳しい条件下で長期間にわたって既定の仕様を満足する状態を維持することが要求されている。
このような劣化を起こした電池では、正規の方法で充電を行っても仕様のように電池容量を回復することができなかったり、或いは、仕様のように電力が引き出せないなどの現象を呈する場合がある。
しかしながら、現在のところ、実際の二次電池の使用の場において劣化の程度を十分な精度で推定する方法は未だ確立しておらず、一般的には、電池特性の劣化の程度を大まかに推定しているに過ぎない。
これまでに提案されている二次電池の劣化の程度を推定する方法のうち主なものは、以下のようなものがある。
(2)放電、放電休止、充電、充電休止の充放電サイクルを与えて放電中止時と充電中止時の電圧を計測する方法(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2には、二次電池に対して電流の放電、放電中止後の休止、電流の充電、充電中止後の休止を所定時間行う単位充放電サイクルを1回又は連続して複数回繰り返し、最後の単位充放電サイクルにおける放電の中止時の電圧と充電の中止時の電圧との電圧差を求め、予め設定した所定の設定値とこの電圧差とを比較して二次電池の劣化状態を判定することが開示されている。
なお、二次電池に一時的な電流変化を加えた場合の電圧変化のレスポンスが交流インピーダンス方法で得られたCole−Coleプロットから決定した等価回路から再現できることを示す文献もある(例えば、非特許文献1参照)。
セルがリチウムイオン電池である場合は、過充電及び/又は過放電保護回路によって、充電時には最大電圧、放電時には最小圧が制限される。このために、多数直列接続されたセル間の電圧がばらつくと以下の問題が生じる。
そこで、各セルに均等化回路を並列接続し、各セルの電圧を均等化させるものがある(例えば、特許文献5参照)。この特許文献5には、直列に接続された各セルの充電電圧を耐電圧以下に抑えつつ均等化し、しかも充放電における安全対策が施された電気二重層コンデンサ用均等充電装置が開示されている。ここでは、直列に接続された複数の電気二重層コンデンサセルの充電時に各セルの電圧を均等化させるために、所定の電圧に満たないセルについては充電電流をバイパスせずにセルを充電する一方、所定の電圧を越えるセルについては、充電電流をバイパスさせたり、そのセルを個別に放電したりしている。
また、電池特性の劣化は、電池構成材料の劣化、つまり、電池を構成する電極材料、電解液等の物理的、化学的変化に起因するが、これらの変化は上述のような劣化要因の違いにより異なってくる。
従って、上述した二次電池の劣化の程度を推定する方法のうち、(1)及び(2)の方法は、実際の二次電池の使用の場で実施が容易であるという利点はあるが、劣化要因の違いによる誤差が生じ、十分な精度で劣化の程度を推定することが難しいという問題がある。
更に、上述した(4)の方法は、高温満充電状態での保存劣化の場合の劣化の程度を算出する方法と、充放電を繰り返した場合の劣化の程度を算出方法とを区別することにより、それぞれの劣化要因での劣化の程度を算出する方法を開示している。しかしながら、この方法を示す特許文献4には、85℃での保存劣化と20℃での充放電劣化の二つの場合での算出方法を開示するのみであり、他の温度条件下で劣化の程度を算出する方法は開示されていない。
上述したように、従来の技術では劣化要因の推定がなされないため、実施は容易であっても二次電池特性の劣化の程度を十分な精度で推定することが困難であったり、劣化要因の推定を考慮しているが手法が複雑であるといった問題があった。また、測定時間も長くなる一方で十分な精度で二次電池特性の劣化の程度を推定することが困難であったり、劣化要因の推定を前提としているが、その前提たる推定の方法が開示されていないなどの問題があった。
このため、実用上十分な精度で劣化の程度を推定することができず、自動車内、屋外など温度環境がより厳しい条件下で長期間にわたって大容量の高容量密度の二次電池を使用する上での妨げになっていた。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、実際の二次電池の使用の場において実施が容易であり、かつ二次電池特性の状態を十分な精度で推定することが可能な二次電池の電池状態推定装置及び電池パックの製造方法並びにセルバランス確認方法を提供することにある。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記二次電池の電池状態の類型が、正常状態と、常温で充電と放電を繰り返す常温サイクル劣化後の電池状態と、高温で充電と放電を繰り返す高温サイクル劣化後の電池状態と、高温で満充電保存する高温保存劣化後の電池状態のうちのいずれかから識別されることを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、複数の二次電池を測定できることを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の二次電池の電池状態推定装置によって複数の二次電池の類型を識別する工程と、該類型が同じである複数の二次電池を選別する工程と、該選別された二次電池を直列接続する工程とを有することを特徴とする電池パックの製造方法である。
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の二次電池の電池状態推定装置を用いて、前記二次電池の電池状態の類型を識別することを特徴とする二次電池のセルバランス確認方法である。
まず、実施例を説明する前に「用語の定義」について説明する。「容量」とは、電池に蓄えることのできるあるいは電池から取り出せる最大電気量又は最大電力量のことで、本実施例においては電流容量と電力容量の総称を容量と表現する。
「電流容量」とは、充電電流容量と放電電流容量の総称をいう。また、「充電電流容量」とは、電池が完全放電状態から満充電状態になる間に蓄えられた電気量を示す。「満充電状態」とは、仕様の充電電圧に達した状態をいう。また、「完全放電状態」とは、仕様の放電電圧に達した状態をいう。
また、「SOC(state of charge)」とは、二次電池の充電状態を表す量であり、満充電状態をSOC=100パーセントで表し、完全放電状態をSOC=0パーセントで表す。また、「SOC曲線」とは、充電又は放電時の二次電池の電圧をX軸、二次電池の各電圧でのSOCをY軸とした曲線をいう。
まず、本発明の実施例における技術の理解を容易にするために、本発明の思想における原理的な背景について説明する。なお、本実施例では、充電電流容量の値と放電電流容量の値にあまり差がないことから、充電電流容量と放電電流容量を区別せずに両者を電流容量と表現している。
一般に、リチウムイオン二次電池は、高温状態でSOCが高い状態に長時間に置かれると当該電池の容量が落ちるなどの現象に代表される電池特性の劣化が生じる。
さらに、保存劣化を続けた場合に、環境温度が室温状態の場合と高温状態の場合で劣化度が同程度になるようそれぞれの不使用保存時間を調整し、同程度の劣化度とした場合、例えばSOC曲線に違いが生じる。同様な事が、二次電池に対して充放電を繰り返すことによって生じる電池特性の劣化においても見られる。
また、サイクル劣化を行う場合に、環境温度が室温状態の場合と高温状態の場合で劣化度が同程度になるようそれぞれの充放電サイクル回数を調整し、同程度の劣化度とした場合、例えばSOC曲線に違いが生じる。
さらに、同程度の劣化度とした場合の室温状態での保存劣化、高温状態での保存劣化、室温状態でのサイクル劣化、高温状態でのサイクル劣化の例えばSOC特性は一般にそれぞれ異なったものとなる。
そして、図1のSOC曲線における二次電池は、後述する実施例に係る実験で評価対象とした市販の18650円筒リチウムイオン二次電池である。この18650円筒リチウムイオン二次電池は、黒鉛系負極とコバルト酸リチウム系正極とを有する。
更に、電流容量劣化度を80パーセントに設定した場合のSOC曲線である。電流容量劣化度を80パーセントに設定した場合であるので、SOCが100パーセントの状態での容量は劣化前の二次電池の容量の80パーセントに相当する。
上述したように、二次電池の劣化は、電池を構成する電極材料、電解液等の物理的、化学的変化に起因すると考えられており、劣化要因が異なる場合は電極材料、電解液等の異なる部分に、異なったメカニズムの変化が生じていると考えられているが、そのメカニズムは不明な点が多く現状では十分な解明はなされていない。
図2は、交流インピーダンス方法のCole−Coleプロット例を示す図で、0.1Hz〜800Hzの範囲で交流インピーダンス方法により測定したリチウムイオン二次電池の測定結果をCole−Coleプロットで示している。
更に、上述の4種類の条件とは、具体的には、1)25℃環境下でサイクル劣化を行った25℃サイクル劣化、2)45℃環境下でサイクル劣化を行った45℃サイクル劣化、3)45℃環境下で満充電保存劣化を行った45℃保存劣化、4)60℃環境下で満充電保存劣化を行った60℃保存劣化である。
図2及び図3を参照して上述したような結果から、交流インピーダンス方法は劣化に伴う二次電池の内部構造の変化を探る手がかりとなる事が理解される。この事から、交流インピーダンス方法によって得られる情報に依拠して二次電池の劣化要因を分類する手がかりを得られる可能性が示唆される。しかしながら、交流インピーダンス方法は解釈が難しく測定結果から劣化要因を分類する事は容易ではないことは既述のとおりである。
さらに、測定の期間外部からのノイズなどの外乱を受けると正確な測定が難しいこともあり、二次電池を使用する製品に交流インピーダンス方法を用いた機能部を組み込む事は難しい。
この非特許文献1は、予め二次電池の交流インピーダンス方法で交流インピーダンスを計測し、この交流インピーダンス特性を近似する二次電池の等価回路を決定し、同じ二次電池に数種類の一時的電流変化を加えるプロファイルを与え、その電圧応答を測定することを開示している。
このような非特許文献1の開示は、一時的電流変化のプロファイルに対する電圧応答の測定という交流インピーダンス方法に比べてはるかに容易な測定を行うことにより、交流インピーダンス方法で得られる二次電池の内部構造の変化情報を間接的に取得できる可能性を示唆しているのではないかと本発明者は考えた。
つまり、上述したような非特許文献1に開示されている背景技術を基に、実験、検討をすすめた結果、以下に詳述するような方法、手順を実行することによって、本発明者は二次電池の劣化要因を分類する方法を見出した。
本実施例は、二次電池の放電中でも充電中でも利用可能であるが、放電中は装置が稼動していることを意味しており、装置の稼動に影響を与えないという点、また、同一の条件で測定できる可能性が高いという点から、充電中に適用することが望ましい。また、本実施例は、リチウムイオン二次電池に限らず、ニッケル水素系の電池など、他の二次電池にも適用可能である。
図4は、本発明に係る二次電池の電池状態推定装置における中央処理装置(CPU)を説明するためのブロック構成図である。図中符号2は電圧検出器、3は電流検出器、4は中央処理装置(CPU)、8は診断装置インターフェイス(電池状態出力部)、11は参照用データ保持部、11aは電池状態の類型情報、11bは第1の特徴量、11cは第2の特徴量、12は特徴量取得部、12aは被検電池の第1の特徴量、12bは被検電池の第1の特徴量、13は類型識別部を示している。
また、類型識別部13は、参照用データ保持部11で保持した参照用データを参照し、被検二次電池の第1の特徴量12a及び第2の特徴量12bと類似性の高い第1の特徴量及び第2の特徴量に相当する二次電池の電池状態の類型を識別するものである。また、電池状態出力部8は、類型識別部13で識別した電池状態の類型を被検二次電池の電池状態として出力するものである。
また、充電又は放電は、定電流放電又は定電流充電であることが好ましい。また、二次電池は、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。
また、本発明の二次電池の電池状態推定装置は、複数の二次電池を測定できることが好ましい。
図5は、二次電池を対象として行う劣化要因参照用データ収集の手順を説明するためのフローチャートを示す図である。
まず、未使用の二次電池について、標準環境(温度環境25℃)で、後述する容量測定用充放電プロファイルによる初期電流容量を測定する(ステップS301)。次に、所定の条件として、以下に例示する5つの劣化条件によりそれぞれ劣化を進行させる(ステップS302)。
(1)25℃サイクル劣化:温度環境25℃で容量測定用充放電プロファイルを繰り返し行う。
(2)45℃サイクル劣化:温度環境45℃で容量測定用充放電プロファイルを繰り返し行う。
(3)60℃サイクル劣化:温度環境60℃で容量測定用充放電プロファイルを繰り返し行う。
(4)45℃保存劣化:満充電状態にした電池を温度環境45℃で保存。
(5)60℃保存劣化:満充電状態にした電池を温度環境60℃で保存。
図6に示すような容量測定用充放電プロファイルによる測定から、モデル作成用電池の各測定時(各劣化状態)における電流容量、電流容量劣化度、測定電圧に対するSOC、CV充電開始からの経過時間に対するSOCなどを算出する(ステップS304)。
電流容量劣化度=(各測定時の電流容量/初期電流容量)×100
本実施例に適用する容量測定用充放電プロファイルにおけるCCCV充電及びCC放電の電流レートは、図6に例示した態様に限られるものではないが、CCCV充電時の電流レートは、実際に使用されるシステムでCCCV充電を行う際の値を使用することが望ましい。
図7は、本実施例における特徴量測定用充放電プロファイル中の単位充放電プロファイルを例示する図で、CCCV充電時に4.0Vに到達した時点をトリガーとした例である。単位充放電プロファイルにおける一時放電は、電流レート0.5CのCC放電、一時充電は電流レート1.0CのCCCV充電である。
また、単位充充放電プロファイルを構成する一時充電休止などの要素の時間幅や、一時的な放電及び一時的な充電の電流レートも図7に例示した態様に限られるものではないが、二次電池の充電動作になるべく影響を与えないために、劣化要因の類型推定に適した特徴量が算出できる範囲で時間幅はなるべく短く、電流レートはなるべく小さいことが望ましい。
トリガー電圧は、上掲の単位充放電プロファイル適用時の測定電圧が二次電池の推奨使用電圧範囲から外れないように、推奨使用電圧範囲の上限及び下限に近くない値が望ましい。コバルト酸リチウム系リチウムイオン二次電池の場合は、3.9V〜4.1Vが好適である。
図9は、本実施例における劣化要因参照用データ作成及び劣化要因の類型推定に使用した特徴量を例示的に説明するための図である。ΔV1は、休止状態の電圧と、休止状態からCCCV充電を開始した直後(本実施例では1秒後)の電圧との電圧差、ΔV2は、休止状態の電圧と、CCCV充電開始から所定時間経過後(本実施例では10秒後)の電圧との電圧差を示している。
また、ΔV3は、CC充電から休止状態に状態変化させた際の状態変化直前の電圧と、直後(本実施例では1秒後)の電圧との電圧差を示している。また、ΔV4は、休止状態から一時放電した後、再び休止状態に状態変化させた際の状態変化直前の電圧と、休止開始から所定時間経過後(本実施例では1秒後)の電圧との電圧差を示している。
本実施例では、上述のようにしてデータ収集を行い、収集の結果得られた特徴量を劣化試験ごとに均等に二分した。そして、この二分した一方を劣化要因参照用データ作成のための学習用データとし、他方は後述する劣化電池の診断における評価用データとした(図8のステップS602)。
図10は、本実施例におけるSVMの識別関数と識別の概念について説明するための図である。SVMは、A,Bの2つのラベルのついた学習用データを使用して、A,B2つのグループを分割するのに適した線形又は非線形な識別関数を算出(学習)し、未知のデータが与えられた時に、この未知のデータがA,Bのうちの何れのグループに属するかを、識別関数を使用して識別(推定)する手法である。
上述した実施例では、劣化要因モデルの作成及び劣化要因の類型推定に、SVMを利用したが、例えば、k近傍法など他の推定手法を利用してもよい。
(1)25℃サイクル劣化:温度環境25℃で容量測定用充放電プロファイルを繰り返し行う。
(2)45℃サイクル劣化:温度環境45℃で容量測定用充放電プロファイルを繰り返し行う。
(3)60℃サイクル劣化:温度環境60℃で容量測定用充放電プロファイルを繰り返し行う。
(4)45℃保存劣化:満充電状態にした電池を温度環境45℃で保存。
(5)60℃保存劣化:満充電状態にした電池を温度環境60℃で保存。
本実施例では、後述するように、図25には、評価用データの類型の識別に適用する手法をステップに区分して系統的に表す概念図が示されている。また、後述する図26に示す各識別ステップごとにラベルづけを行なった学習用データをSVMに与え、上述した5種類の類型に識別するための識別関数を作成した。各識別ステップにおける学習用データの特徴量の分布と、識別関数を以下の各図に示す。但し、SVMにより算出される識別関数の形状は複雑なため図では簡易化してある。
なお、電池パック化前の単セル初期状態の電池を診断した場合には、プロットのバラツキがセルバランスに相当するため、セルバランスの確認方法として用いることができる。
次に、特徴量と劣化度の関係式(劣化度算出関数)の作成に関して説明する。
図17は、本実施例における特徴量と劣化度との関係式(劣化度算出関数)の作成手順を説明するためのフローチャートを示す図である。まず、図5のフローチャートにおけるステップS305の処理で保存した測定値群から算出した特徴量と劣化度に対して、三次の回帰分析を行って関係式を算出する(ステップS1401)。
次に、ステップS1401での算出処理が完了すると、特徴量と劣化度との関係式を保存して処理を終了する(ステップS1402)。
本実施例では、ステップS1401,S1402で上述した劣化要因(1),劣化要因(2)と(4)、劣化要因(3)と(5)、それぞれの条件において特徴量ΔV1と電流容量劣化度との関係式を作成し、更に、比較のために劣化要因を考慮しない特徴量ΔV1と電流容量劣化度との関係式を作成した。
電流容量=電流容量劣化度×初期電流容量
の式により、劣化電池の電流容量を求めることができる。また、電力容量劣化度および電力容量に関しても同様の手法により推定することが可能である。
図22は、特徴量とSOCとの関係式を作成する手順を説明するためのフローチャートを示す図である。最初のステップでは、上述した図5のフローチャートのステップS305で保存した測定値から、劣化要因ごとに、CC充電時の例えば4.1Vにおける特徴量ΔV1とSOCの関係式を作成する。
同様に、CC充電時の例えば3.7V,3.8V,・・・などの各所定の電圧における特徴量とSOCの関係式を算出しておけば、劣化電池の診断時に特徴量の値がp1であるような劣化電池に対して、劣化要因ごとに図24(a)に示すような関係を呈する電圧とSOCとの関係式を得ることができる(ステップS1901)。
図25は、劣化電池の診断手順を説明するためのフローチャートを示す図である。まず、診断対象とする劣化電池の充電または放電を開始する(ステップS2201)。次に、該劣化電池の電圧を測定する(ステップS2202)。そして、ステップS2202における測定値がトリガー電圧に達するのを待ち(ステップS2203:No)、トリガー電圧に達したら(ステップS2203:Yes)、単位充電プロファイルを該劣化電池に印加する(ステップS2204)。
ステップS2204の後、電圧及び/又は電流を測定する(ステップS2205)。そして、ステップS2205の測定によって取得した電圧値及び/又は電流値から特徴量を算出する(ステップS2206)。次に、ステップS2206で算出した特徴量と劣化要因参照用データを比較し、劣化電池の劣化要因の類型を識別する(ステップS2207)。
なお、ステップS2201乃至ステップS2209において、充電開始−充電終了の条件は任意であり、充電開始−充電終了期間内にトリガー電圧に等しい電圧が観測されなかったら、その回は電池診断を実施しないだけである。
図26は、評価用データの類型の識別に適用する手法をステップに区分して系統的に表す概念図である。識別ステップ1,2−1,2−1,3及び4における学習用データの特徴量の分布と、識別に使用した識別関数を以下の図27乃至図31に示す。各図の識別関数は、図8のステップS603で作成したものである。但し、SVMにより算出される識別関数の形状は複雑なため、図11乃至図15で示した簡易化した識別曲線を表示してある。
図26における各識別ステップでの識別精度を表1に示す。
この知見に依拠して、図25のフローチャートにおけるステップS2208の如く、推定された劣化要因の類型に対応する特徴量と劣化度との関係式から、この劣化電池の劣化度を推定した。
そして、図26に示す識別手法に従って複数の劣化条件の類型(条件)に評価用データを推定し、この劣化条件の類型ごとに劣化度推定性能を評価した結果を次の表2に示す。
表2に示した如く、劣化要因の類型の識別を行わずに電流容量劣化度を推定した場合の推定誤差は±9.4パーセントである。これに比べ、劣化要因ごとの関係式により推定した場合は、識別誤りを含めた場合でも、25℃サイクル劣化で±6.6パーセント、45℃サイクル劣化・45℃保存劣化で±3.6パーセント、60℃サイクル劣化・60℃保存劣化で±1.6パーセントと推定誤差が大幅に減少した。
劣化電池の電流容量は、劣化電池の電流容量劣化度と劣化電池の初期電流容量との積で求まるため、本発明により、劣化電池の電流容量に関しても同じ割合で推定誤差が減少する。
また、上述したSOC特性で示したように、算出推定された劣化要因に対応する特徴量とSOCと関係式から、劣化電池の特徴量に対応した電圧とSOCの関係式およびCV充電開始からの経過時間とSOCの関係式が得られ、それらの式を使用して、任意の電圧あるいは任意のCV充電開始からの経過時間におけるSOCの値を高精度で算出できる。
図32は、本発明に係る二次電池の電池状態推定装置を説明するためのブロック構成図で、二次電池の劣化要因を分類し、劣化度、容量、SOC特性を算出する二次電池の劣化要因推定装置及び/又は二次電池の容量又は劣化度推定装置を示すブロック図である。図中符号5は充放電コントローラ、6は負荷システム、7は充電システムを示している。なお、図4と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
そして、このシステムコントローラとしての機能によって、本発明の二次電池の電池状態推定装置を、上述した図5,図8,図17,図22,図25,図26を参照して説明した如く機能させ、また、図33を参照して後述する如く機能させる。
しかしながら、このCPU4がバッテリ電気自動車、家庭設置蓄電などの機器に組み込まれている態様である場合は、このような機器の二次電池制御のためのCPUであり、二次電池の診断機能は、二次電池の制御機能の一部として構成される。
充電システム7は、二次電池の診断装置としての構成を採る場合には、もっぱら二次電池の診断機能を実施する際に実施される充電を行うための充電システムの形をとる。また、充電システム7は、バッテリ電気自動車、家庭設置蓄電設備などの機器に組み込まれる場合には、当該自動車又は設備における充電システムを構成する。
なお、ここでは本発明の二次電池の診断装置が説明の主題であるため、二次電池の診断機能以外のCPU4、負荷システム6、充電システム7の機能、動作についてはこれ以上言及せず、もっぱら二次電池の診断装置についての説明を行う。
また、家庭設置蓄電設備などに組み込まれている場合には、電池の直流電力を交流に変換し、電圧を交流家庭用電灯線電圧に合わせて変圧し、交流家庭用電灯線に電力を供給するコンバータを制御し、当該機器が備えている充電システムとしての充電システム7を管理すると共に、二次電池の診断機能を実施する際に実施される放電を行うために負荷システム6、充電システム7を統括的に管理する役割を担うように構成される。
二次電池1は、二次電池の診断機能の対象となる二次電池である。二次電池1には電圧検出器2が接続されており、この電圧検出器2が二次電池1の電圧を検出するよう構成されている。また、この二次電池1には、電流検出器3も接続されており、この電流検出器3が二次電池1に充電される充電電流値及び二次電池1が放電する放電電流値を検出するよう構成されている。
CPU4は、このように入力された電圧値と電流値に基づいて二次電池1の充放電状態を検出できる構成を有している。また、CPU4は、演算機能と演算機能を動かすためのプログラムおよびデータを記憶するメモリを含んで構成されている。
CPU4は、上述したように、取得した電圧値および電流値の何れか、又は電圧値と電流値との双方について、二次電池の診断分類算出プログラムと二次電池の診断データに基づいて劣化要因を分類し、必要に応じて劣化度、電流容量、電力容量、SOC特性を算出する。
以上に説明した実施例を包摂する本発明の技術思想について次のとおり概括し、適宜、説明を補足する。
(a−1)電池を充電状態や放電状態から休止状態に切り替えた時に起きる電圧の変化
(a−2)電池を休止状態から充電状態や放電状態に切り替えた時に起きる電圧の変化
(a−3)電池を既定の条件で放置した時に起きる電圧の変化
などに依拠して
(b−1)電池の電池状態の類型を推定できる
(b−2)推定された電池状態の類型ごとの関係式を使用することにより、電池の現在の充電容量や放電容量、あるいはセルバランスを高精度で推定できる
との知見に基づいて、発明者等による更なる実験ならびに考察によって確立されたものである。
(b−1−1)25℃の環境下で、完全放電→満充電、のサイクルを繰り返した電池か
(b−1−2)45℃の環境下で、完全放電→満充電、のサイクルを繰り返した電池か
(b−1−3)60℃の環境下で、完全放電→満充電、のサイクルを繰り返した電池か
(b−1−4)45℃の環境下で満充電の状態で長い間放置されていた電池か
(b−1−5)60℃の環境下で満充電の状態で長い間放置されていた電池か
などである。
上述した図7には、単位充電プロファイルとして、CCCV充電期間の後の、一時充電休止期間(休止状態期間)→一時放電期間→一時放電休止期間(休止状態期間)→一時充電期間→CCCV充電期間の如く遷移するプロファイルを例示した。そして、上述した図9には、図5の単位充電プロファイルにおける、ΔV1、ΔV2、ΔV3、および、ΔV4を示した。これらは、それぞれ、
ΔV1(第1の電圧差):被検二次電池の休止状態での電圧と休止状態から充電又は放電開始した際の充電又は放電開始直後の電圧との電圧差。
ΔV2(第2の電圧差):被検二次電池の休止状態の電圧と休止状態から充電又は放電開始直後から所定時間経過後の電圧との電圧差で、所定時間に特に限定は無いが、30秒以内が目安となる。
ΔV3(第3の電圧差):被検二次電池を充電したのち充電の休止を行った時の、充電から充電休止への切り替えを行った時刻から所定時間内における二次電池の充電時の電圧と充電休止時の電圧との電圧差である第3の電圧差で、所定時間に特に限定はないが、30秒以内が目安となる。
ΔV4(第4の電圧差):被検二次電池の休止状態から一時充電又は放電した後、再び休止状態に状態変化させた際の状態変化直前の電圧と休止開始から所定時間経過後の電圧との電圧差である第4の電圧差である。所定時間に特に限定は無いが、30秒以内が目安となる。
そして、本発明の技術思想における上述の一つの局面は、
(c−1)ΔV1とΔV1/ΔV2とを用いて、電池の劣化要因の類型を推定できる
(c−2)ΔV3とΔV3/ΔV4とを用いて、電池の劣化要因の類型を推定できる
との知見に基づいて、発明者等による更なる実験ならびに考察によって確立されたものである。
一方、例えば、上述した図17の手法によって、ΔV1の値から、被検二次電池の劣化度を高精度で推定できることを示した。
劣化度とは、被検二次電池における(現在時点での充電容量)/(新品時の充電容量)の値であり、(劣化度)×(新品時の充電容量)によって現在時点での当該二次電池の充電容量を推測することができる。
一方、上述した(c−1)では、劣化要因の類型を推定する為の識別関数(例えば、上述した図14における破線図示の関数)を作成し、この識別関数に依拠して、測定対象たる被検二次電池について、そのΔV1とΔV1/ΔV2とからそれらの劣化要因を推定している。
(d−1)ある閾値以上か閾値以下かで劣化要因の類型を推定する
(d−2)被検二次電池のΔV1とΔV1/ΔV2の値と最も距離的に近い点のサンプル電池の劣化要因を測定対象の電池の劣化要因とする
(d−3)劣化要因Aのサンプルを集めて劣化要因参照用データを作成し、劣化要因Bのサンプルを集めて劣化要因参照用データを作成し、測定対象の電池のΔV1とΔV1/ΔV2がどちらの劣化要因参照用データと尤度が高いか計算し、尤度の高い劣化要因参照用データの劣化要因を測定対象の電池の劣化要因と推定する。
まず、被検二次電池(本例では、18650円筒リチウムイオン二次電池)について、次の5つの態様での劣化を与える(ステップS3001)。
(30−1)25℃サイクル劣化。
(30−2)45℃サイクル劣化。
(30−3)60℃サイクル劣化。
(30−4)45℃保存劣化。
(30−5)60℃保存劣化。
ステップS3002におけるような標準環境下での放電および充電の後、各被検二次電池について測定を行い、電流量、電力量を積算して、充電電流容量、放電電流容量、充電電力容量及び放電電力容量を取得する(ステップS3003)。
ステップS3004におけるような条件での放電及び充電中、各被検二次電池について測定を行い、電圧値及び電流値を取得する(ステップS3005)。
次に、ステップS3005で取得した各電圧値及び/又は電流値に基づいて特徴量を算出する(ステップS3006)。
ステップS3006における特徴量の例は、上述した図9を参照して既述のものである。
ステップS3007で「No」と判断するに到ったときには、それまでに取得したデータを保存する処置(例えば、情報記録媒体に記録する処置)を講じてデータの収集を終了する(ステップS3008)。
ステップS3009における識別関数の作成手法について次に説明する。
(3009−1)算出した全特徴量のうち、容量維持率が約92パーセント乃至70パーセントに該当するデータをデータ数が略等しくなるように2分割し、その一方を学習用データ、他方を評価用データとする。
(3009−2)学習用データを使用して、次の5つの識別関数劣化要因参照用データを作成する。
識別関数1:「25℃サイクル劣化・45℃サイクル劣化・45℃保存劣化」と「60℃サイクル劣化・60℃保存劣化」を識別する識別関数。
識別関数2−1:劣化が進んでいない被検二次電池に関して「25℃サイクル劣化」と「45℃サイクル劣化・45℃保存劣化」を識別する識別関数。
識別関数2−2:劣化が進んだ被検二次電池に関して「25℃サイクル劣化」と「45℃サイクル劣化・45℃保存劣化」を識別する識別関数。
識別関数3:「60℃サイクル劣化」と「60℃保存劣化」を識別する識別関数。
識別関数4:「45℃サイクル劣化」と「45℃保存劣化」を識別する識別関数。
(3009−3)全評価用データと識別関数1を使用して、識別関数1の識別性能を評価する。
(3009−4)「25℃サイクル劣化・45℃サイクル劣化・45℃保存劣化」の評価用データと識別関数2−1および識別関数2−2を使用して、識別関数2−1および識別関数2−2の識別性能を評価する。
(3009−5)「45℃サイクル劣化・45℃保存劣化」の評価用データと識別関数3を使用して、識別関数3の識別性能を評価する。
(3009−6)「60℃サイクル劣化・60℃保存劣化」の評価用データと識別関数4を使用して、識別関数4の識別性能を評価する。
なお、上述したSVMを1回適用することによっては一方の分類に属するか他方の分類に属するかの判断のみ可能であるため、上述した図25における、評価用データの分類に適用する手法のステップに従って全評価用データを「25℃サイクル劣化」、「45℃サイクル劣化」、「60℃サイクル劣化」、「45℃保存劣化」、「60℃保存劣化」の何れかに分類する。
ステップS3010において用いるデータは、容量維持率が約92パーセント乃至70パーセントに該当する全データである。そして、算出の手順は次の通りである。
(3010−1)3次の回帰分析により、劣化要因ごとに特徴量(ここではΔV1を適用)と劣化度の関係式を算出する(上述した図18乃至図21参照)。この関係式は「25℃サイクル劣化」、「45℃サイクル・45℃保存劣化」、「60℃サイクル・60℃保存劣化」の3種類を作成する。
(3010−2)容量維持率が約92パーセント〜70パーセントに該当する全データを用いて関係式を作成する(上述した図26参照)。
次に、電池パックの製造方法及び二次電池のセルバランス確認方法について以下に説明する。電池パックの製造方法は、上述した本発明の二次電池の電池状態推定装置によって複数の二次電池の類型を識別する工程と、この類型が同じである複数の二次電池を選別する工程と、この選別された二次電池を直列接続する工程とを有している。また、二次電池のセルバランス確認方法は、上述した本発明の二次電池の電池状態推定装置を用いて、二次電池の電池状態の類型を識別し、各セルの電圧を均等化するセルバランスを行う。
2 電圧検出器
3 電流検出器
4 CPU
5 充放電コントローラ
6 負荷システム
7 充電システム
8 診断装置インターフェイス(電池状態出力部)
11 参照用データ保持部
11a 電池状態の類型情報
11b 第1の特徴量
11c 第2の特徴量
12 特徴量取得部
12a 被検電池の第1の特徴量
12b 被検電池の第1の特徴量
13 類型識別部
Claims (9)
- 充電又は放電の際に二次電池の電池状態を判定する二次電池の電池状態推定装置において、
二次電池の電池状態の類型に関する類型情報と、前記二次電池の休止状態での電圧と充電又は放電開始から第1の所定時間経過後での電圧との電圧差である第1の電圧差に基づく第1の特徴量と、前記二次電池の休止状態での電圧と前記充電又は放電開始から第2の所定時間経過後での電圧との電圧差である第2の電圧差に基づく第2の特徴量とを含む参照用データを保持しておく参照用データ保持部と、
前記電池状態を推定する対象である被検二次電池における第1の特徴量と第2の特徴量とを取得する特徴量取得部と、
前記参照用データ保持部で保持した参照用データを参照し、前記被検二次電池の第1の特徴量及び第2の特徴量と類似性の高い第1の特徴量及び第2の特徴量に相当する二次電池の電池状態の類型を識別する類型識別部と、
前記類型識別部で識別した電池状態の類型を前記被検二次電池の電池状態として出力する電池状態出力部とを備え、
前記第1の特徴量が、前記第1の電圧差であり、前記第2の特徴量が、前記第1の電圧差の値を前記第2の電圧差で除した値であることを特徴とする二次電池の電池状態推定装置。 - 前記第1の所定時間が1ミリ秒〜2秒であり、前記第2の所定時間が5秒〜60秒であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の電池状態推定装置。
- 前記充電又は放電が、定電流放電又は定電流充電であることを特徴とする請求項1又は2に記載の二次電池の電池状態推定装置。
- 前記二次電池は、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の二次電池の電池状態推定装置。
- 前記二次電池の電池状態の類型が、正常状態と、常温で充電と放電を繰り返す常温サイクル劣化後の電池状態と、高温で充電と放電を繰り返す高温サイクル劣化後の電池状態と、高温で満充電保存する高温保存劣化後の電池状態のうちのいずれかから識別されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の二次電池の電池状態推定装置。
- 前記二次電池の正常状態が、電池パック化前の単セル初期状態であることを特徴とする請求項5に記載の二次電池の電池状態推定装置。
- 複数の二次電池を測定できることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の二次電池の電池状態推定装置。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の二次電池の電池状態推定装置によって複数の二次電池の類型を識別する工程と、該類型が同じである複数の二次電池を選別する工程と、該選別された二次電池を直列接続する工程とを有することを特徴とする電池パックの製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載の二次電池の電池状態推定装置を用いて、前記二次電池の電池状態の類型を識別することを特徴とする二次電池のセルバランス確認方法。
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