以下では、図中に示した矢印に従って、上下方向、前後方向及び左右方向を定義する。
まず、図1を用いて、本発明の一実施形態に係る潤滑油供給機構1全体の構成の概略を説明する。
潤滑油供給機構1は、後述するターボチャージャ5の軸受部41へと潤滑油を供給するためのものである。潤滑油供給機構1は、主としてオイルパン2、圧送油路3、オイルポンプ4、ターボチャージャ5(より詳細には、当該ターボチャージャ5のうち潤滑油が流通する経路を成す部分)、戻り油路6及びオイルフィルタ7により構成される。
オイルパン2は、図示せぬエンジンに設けられて潤滑油を貯溜するものである。オイルパン2には1本の圧送油路3の一端が接続される。圧送油路3の一端には、オイルストレーナ3aが設けられる。当該圧送油路3の他端は、ターボチャージャ5(より詳細には、後述するベアリングハウジング40の供給油路42)に接続される。圧送油路3の中途部には、前記エンジンの回転に応じて駆動されるオイルポンプ4が設けられる。また、圧送油路3の中途部(オイルポンプ4よりも下流側)にはオイルフィルタ7が設けられる。オイルフィルタ7は、所定の目の大きさ(目開き)のろ紙を有する。オイルフィルタ7は圧送油路3を流通する潤滑油をろ過し、当該潤滑油に混入した異物(スラッジや磨耗粉等)を取り除くことができる。
ターボチャージャ5においては、コンプレッサホイール20とタービンホイール30とがシャフト10によって連結される。当該シャフト10はベアリングハウジング40の軸受部41において回転可能に支持される。
ベアリングハウジング40には供給油路42及び排出油路43が形成される。供給油路42の一端(外側の端部)は前述の通り圧送油路3の他端に接続され、供給油路42の他端(内側の端部)は軸受部41に接続される。供給油路42の中途部には流量制御弁50が設けられる。排出油路43の一端(内側の端部)は軸受部41に接続され、排出油路43の他端(外側の端部)は戻り油路6の一端に接続される。当該戻り油路6の他端はオイルパン2に接続される。
このように構成された潤滑油供給機構1において、前記エンジンの回転に応じてオイルポンプ4が駆動すると、当該オイルポンプ4によってオイルパン2内の潤滑油が圧送油路3を介してターボチャージャ5へと圧送される。当該潤滑油は、流量制御弁50によって適宜流量を調整されながら供給油路42を介してベアリングハウジング40の軸受部41へと案内される。当該軸受部41を潤滑した潤滑油は、排出油路43及び戻り油路6を介してオイルパン2へと戻される。
なお、本実施形態においては特に言及しないが、オイルポンプ4によって圧送された潤滑油は、図示せぬ他の油路を介して前記エンジンの各部へも供給され、当該エンジンの各部を適宜潤滑する。
次に、図2及び図3を用いて、ターボチャージャ5の構成について説明する。
ターボチャージャ5は、前記エンジンのシリンダに圧縮空気を送り込むためのものである。ターボチャージャ5は、主としてシャフト10、コンプレッサホイール20、タービンホイール30、ベアリングハウジング40、流量制御弁50、すべり軸受60、スラストカラー70及びスラスト軸受90を具備する。
シャフト10は、後述するコンプレッサホイール20とタービンホイール30とを連結するものである。シャフト10は、その長手方向(軸線方向)を前後方向へ向けて配置される。
コンプレッサホイール20は、複数の羽根を有し、回転駆動されることによって空気を圧縮するものである。コンプレッサホイール20は、シャフト10の後端部に固定される。
タービンホイール30は、複数の羽根を有し、前記エンジンからの排気を受けて回転することで駆動力を発生させるものである。タービンホイール30は、シャフト10の前端部に一体的に形成される。
ベアリングハウジング40は、シャフト10を間接的に回転可能に支持する略箱状の部材である。ベアリングハウジング40の下部には、オイルパイプアッシ40aが設けられる。
ベアリングハウジング40は、略箱状の部材である。ベアリングハウジング40の底面は平ら(平面)に形成される。
オイルパイプアッシ40aは、略板状の部材とパイプからなる部材である。オイルパイプアッシ40aの上面(フランジ部)は平ら(平面)に形成される。オイルパイプアッシ40aは、その上面をベアリングハウジング40の底面と当接させた状態で、ボルト等によってベアリングハウジング40に固定される。当該オイルパイプアッシ40aによって、圧送油路3及び戻り油路6の一部が形成される。
また、ベアリングハウジング40には、軸受部41、供給油路42、排出油路43及び遠心分離部44が形成される。
軸受部41は、シャフト10を間接的に回転可能に支持する部分である。軸受部41は円形断面を有し、ベアリングハウジング40を前後方向に貫通するように形成される。
供給油路42は、圧送油路3を介して供給される潤滑油を軸受部41へと案内するためのものである。すなわち、圧送油路3及び供給油路42によって、オイルポンプ4から圧送される潤滑油を軸受部41へと案内するための油路(潤滑油供給油路)が形成される。供給油路42は、ベアリングハウジング40の下面から上方に向かって形成される。供給油路42の一端(下端)は圧送油路3の他端に接続される(図2及び図3参照)。供給油路42の他端(上端)は、前後に分岐されて軸受部41の前端部及び後端部にそれぞれ接続される。
なお、供給油路42の中途部には、後述する流量制御弁50が設けられる。よって、説明の便宜上、以下では供給油路42のうち一端(下端)から当該流量制御弁50までの部分を第一供給油路42aと、供給油路42のうち当該流量制御弁50から他端(上端)までの部分を第二供給油路42bと、それぞれ記す。
排出油路43は、潤滑油を軸受部41から排出するためのものである。排出油路43は、供給油路42の右方において、ベアリングハウジング40の下面から上方に向かって形成される。排出油路43の一端(上端)は適宜に分岐されて軸受部41の前端部、後端部及び前後中途部にそれぞれ接続される。排出油路43の他端(下端)は戻り油路6の一端に接続される(図2及び図3参照)。
図3に示す遠心分離部44は、遠心力を利用して、流通する潤滑油から異物を分離して取り除くためのものである。遠心分離部44は、第一供給油路42aの中途部または圧送油路3に形成される。
なお、遠心分離部44の詳細な構成については後述する。
図2及び図3に示す流量制御弁50は、供給油路42を流通する潤滑油の圧力に基づいて当該潤滑油の流路の開口面積を変更することによって当該潤滑油の流量を調整するものである。流量制御弁50は、供給油路42の中途部に設けられる。流量制御弁50は、その長手方向(軸線方向)を左右方向へ向けて配置される。
なお、流量制御弁50の詳細な構成については後述する。
すべり軸受60は、シャフト10を回転可能に支持する略円筒状の軸受である。すべり軸受60は、ベアリングハウジング40の軸受部41の前端部及び後端部(第二供給油路42bと対向する部分)にそれぞれ配置される。当該すべり軸受60にはシャフト10が挿通される。
スラストカラー70は略円筒状に形成され、前後方向に向けて配置される。スラストカラー70にはシャフト10が挿通される。スラストカラー70は、シャフト10に対して相対回転不能となるように固定される。スラストカラー70の前後中途部にはスラスト軸受90が外嵌される。スラスト軸受90は、軸受部41の後方においてベアリングハウジング40と接するように配置される。このようにして、スラスト軸受90はシャフト10に加わる軸線方向の荷重を受けることになる。
次に、図4を用いて、流量制御弁50の構成について説明する。
流量制御弁50は、主として弁本体110、スプール120、スプリング130、調圧スクリュ140及び仕切り部材150を具備する。
弁本体110(スリーブ)は略円筒状の部材である。弁本体110は、その長手方向を左右方向に向けて、ベアリングハウジング40の内部に配置される。この際、弁本体110は、供給油路42及び排出油路43に亘るように配置される。弁本体110には、摺動部111、第一ポート112、第二ポート113、連通油路114、貫通孔115及びめねじ部116が形成される。
摺動部111は、弁本体110の内部を左右方向に貫通するように形成される孔である。摺動部111は円形断面を有するように形成される。摺動部111の左端部は、適宜閉塞部材によって閉塞される。
第一ポート112は、摺動部111と弁本体110の外部とを連通するように形成される孔である。第一ポート112は、ベアリングハウジング40の第一供給油路42aと対向する位置に形成される。
第二ポート113は、摺動部111と弁本体110の外部とを連通するように形成される孔である。第二ポート113は、ベアリングハウジング40の第二供給油路42bと対向する位置に形成される。
連通油路114は、摺動部111の左右中途部と左端部近傍とを連通するものである。連通油路114は、第一連通油路114a、第二連通油路114b及び第三連通油路114cにより構成される。
第一連通油路114aは、弁本体110の左右中途部において摺動部111と弁本体110の外部とを連通するように形成されるものである。第一連通油路114aは、第一ポート112よりも右方に位置するように形成される。
第二連通油路114bは、弁本体110の外周面に形成される溝である。第二連通油路114bは、第一連通油路114aの外側端部から、弁本体110の左端部近傍まで延設される。
第三連通油路114cは、弁本体110の左端部近傍において摺動部111と弁本体110の外部(第二連通油路114bの左端部近傍)とを連通するように形成されるものである。第三連通油路114cは、第一ポート112よりも左方に位置するように形成される。
貫通孔115は、弁本体110を上下方向に貫通する孔である。貫通孔115は、円形断面を有するように形成される。貫通孔115は、ベアリングハウジング40の排出油路43上に位置するように形成される。
めねじ部116は、弁本体110の右端部近傍に形成される。めねじ部116は、摺動部111と同一軸線上の孔の内側にねじを切ることで形成される。
スプール120は、流量制御弁50を流通する潤滑油の流路を適宜に絞るためのものである。スプール120は略円柱状の部材である。スプール120は、その長手方向を左右方向に向けて、弁本体110の摺動部111の内部に配置される。より詳細には、スプール120は、弁本体110の摺動部111の左端部近傍から左右中途部(貫通孔115)に亘って配置される。スプール120には、第一拡径部121及び第二拡径部122が形成される。
第一拡径部121は、その径が他の部分よりも大きくなるように形成される部分である。第一拡径部121は、スプール120の右端部近傍に形成される。第一拡径部121の径(外径D2)は、弁本体110の摺動部111の径(内径D1)よりも所定値だけ小さくなるように形成される(図9参照)。
第二拡径部122は、その径が他の部分よりも大きくなるように形成される部分である。第二拡径部122は、スプール120の左右中途部に、第一拡径部121と所定距離だけ離間して形成される。第二拡径部122は、弁本体110の第一連通油路114aよりも左方かつ第三連通油路114cよりも右方に位置するように形成される。第二拡径部122の径(外径D2)は、第一拡径部121の径と同じ値、すなわち、弁本体110の摺動部111の径(内径D1)よりも所定値だけ小さくなるように形成される(図9参照)。
また、第二拡径部122は、弁本体110の第一ポート112の一部と対向する位置に形成される。すなわち、第一ポート112は、第二拡径部122によってその一部が閉塞された(絞られた)状態になる。
このように構成されたスプール120の第一拡径部121及び第二拡径部122が弁本体110の摺動部111に対して左右方向に摺動可能に接することにより、当該スプール120が弁本体110の摺動部111の内部において左右方向に摺動可能となるように配置される。この際、第一拡径部121及び第二拡径部122と、摺動部111との間には一定の隙間(クリアランス(D1−D2))が確保されることになる。また、スプール120が左右方向に摺動することによって、弁本体110の第一ポート112の第二拡径部122による閉塞具合(絞り具合)が変化する。すなわち、当該第一ポート112の開口面積が変更される。
スプリング130は、スプール120の右方(スプール120と後述する調圧スクリュ140との間)に配置され、当該スプール120を所定の力で左方に向かって付勢するものである。
調圧スクリュ140は、スプリング130を右方から支持し、当該スプリング130によってスプール120に加えられる付勢力を調整するためのものである。調圧スクリュ140は、弁本体110のめねじ部116に固定される。調圧スクリュ140のめねじ部116における位置を調整することで、スプリング130によってスプール120に加えられる付勢力を調整することができる。
仕切り部材150は、弁本体110及びスプール120によって区画された隣り合う空間(第一油室R1内の空間と貫通孔115内の空間)の間を潤滑油が流通しないように仕切るためのものである。
なお、仕切り部材150の詳細な構成については後述する。
このように構成された流量制御弁50において、スプール120の第一拡径部121、第二拡径部122及び弁本体110の摺動部111によって囲まれた部分に、潤滑油が満たされる第一油室R1が形成される。また、スプール120の第二拡径部122及び弁本体110の摺動部111によって囲まれた部分に、潤滑油が満たされる第二油室R2が形成される。
第一油室R1と第二油室R2とは、スプール120の第二拡径部122によって区画されると共に、連通油路114によって接続されることになる。
次に、図1から図5までを用いて、潤滑油の供給態様(潤滑油が軸受部41に供給された後、排出される様子)について具体的に説明する。
前述の如く、オイルポンプ4(図1参照)によって圧送された潤滑油は、ベアリングハウジング40の第一供給油路42a及び弁本体110の第一ポート112を介して第一油室R1内へと供給される(図4及び図5参照)。当該第一油室R1内の潤滑油は、第二ポート113を介してベアリングハウジング40の第二供給油路42bへと供給される。この際、第二ポート113を流通する潤滑油の流量は、第一油室R1内の圧力と排出油路43内の圧力との差(差圧)に応じて変化する。
第二供給油路42bへと供給された潤滑油は、当該第二供給油路42bに案内されてベアリングハウジング40の軸受部41へと供給される(図2及び図3参照)。軸受部41へと供給された潤滑油は、当該軸受部41(特に、すべり軸受60)を潤滑した後、当該軸受部41の前端部、後端部及び前後中途部から排出油路43へと流出する。当該潤滑油は、排出油路43及び戻り油路6を介してオイルパン2へと戻される(図1参照)。
次に、図5を用いて、流量制御弁50によって軸受部41へと供給される潤滑油の流量が調整される様子について説明する。
上述の如く、流量制御弁50の第二ポート113を流通する潤滑油の流量(すなわち、軸受部41へと供給される潤滑油の流量)は、第一油室R1内の圧力と排出油路43内の圧力との差(差圧)に応じて変化する。従って、本実施形態に係る流量制御弁50によって当該差圧が略一定となるように制御される。以下、具体的に説明する。
例えば、前記エンジンの回転数が上昇すると、オイルポンプ4の回転数も上昇し、流量制御弁50の第一油室R1へと供給される潤滑油の量も増加する。この場合、第一油室R1内の圧力が上昇するため、当該第一油室R1の圧力と排出油路43の圧力との差(差圧)が大きくなる。従って、このままの状態では、図5(a)に示すように、第二ポート113を流通する潤滑油の流量が増加し、軸受部41に過剰な潤滑油が供給されることになる。
しかし、本実施形態に係る流量制御弁50においては、第一油室R1と第二油室R2とが連通油路114を介して接続されているため、第一油室R1内の圧力が第二油室R2内にも加わることになる。当該第二油室R2内の圧力が第一油室R1と同様に上昇すると、当該第二油室R2内の圧力によって、スプール120が右方へと押圧される。
第二油室R2内の圧力によってスプール120が右方へと押圧されると、図5(b)に示すように、当該圧力による力とスプリング130による付勢力とがつりあう位置までスプール120が右方へと摺動する。
スプール120が右方へと摺動すると、当該スプール120の第二拡径部122によって第一ポート112(潤滑油の流路)がより絞られることになる。すなわち、当該第一ポート112の開口面積が減少する。これによって、第一油室R1へと供給される潤滑油の量が減少し、当該第一油室R1内の圧力が低下する。
このように、第一油室R1内の圧力が上昇すると、流量制御弁50によって潤滑油の流路が絞られ、当該第一油室R1内の圧力が減少するように調整される。これによって、第一油室R1の圧力と排出油路43の圧力との差(差圧)が略一定となるように調整することができる。
一方、第一油室R1内の圧力が減少し、第一油室R1の圧力と排出油路43の圧力との差(差圧)が小さくなった場合には、上記とは逆にスプリング130の付勢力によってスプール120が左方へと摺動する。これによって、第一油室R1へと供給される潤滑油の量が増加し、ひいては第一油室R1内の圧力を増加させることができる。
次に、図6を用いて、ベアリングハウジング40に形成される遠心分離部44の構成について説明する。
遠心分離部44は、主として渦流発生部44a、拡径部44b及び円形凹部44cを具備する。
渦流発生部44aは、供給油路42(第一供給油路42a)内を流通する潤滑油に渦流を発生させるための部分である。渦流発生部44aは、オイルパイプアッシ40aに形成された円形断面を有する圧送油路3の上端部に形成される。渦流発生部44aは、圧送油路3の内周面に形成された複数の溝によって構成される。当該複数の溝は、当該圧送油路3における潤滑油の流通方向(すなわち上方)に向かって、当該圧送油路3の周方向一側に傾斜するようにして形成される。
拡径部44bは、渦流発生部44aの下流側に形成され、さらに下流側の供給油路42(本実施形態においては、弁本体110の第一ポート112)よりも大きな径を有する部分である。拡径部44bは、ベアリングハウジング40に形成された第一供給油路42aの下端部に(ベアリングハウジング40の底面から流量制御弁50に亘るように)形成される。拡径部44bの断面は、円形状になるように形成される。拡径部44bは、オイルパイプアッシ40aに形成された圧送油路3の径、及び弁本体110の第一ポート112の径よりも大きな径となるように形成される。拡径部44bは、オイルパイプアッシ40aに形成された圧送油路3と同一軸線上に形成される。
円形凹部44cは、拡径部44bの底面の外周部に沿うように形成されるものである。本実施形態において、拡径部44bはベアリングハウジング40の底面に面するように形成されるため、オイルパイプアッシ40aの上面のうち拡径部44bと対向する部分によって、当該拡径部44bの底面が形成される。円形凹部44cは、当該拡径部44bの底面の外周部に沿うように、すなわち平面視においてオイルパイプアッシ40aに形成された圧送油路3を中心とする円形となるように、当該底面(オイルパイプアッシ40aの上面)に形成される。
次に、図7を用いて、上述の如く構成された遠心分離部44によって潤滑油内の異物Fが分離される様子について説明する。
図7(a)に示すように、潤滑油が、オイルパイプアッシ40aに形成された圧送油路3内を上方に向かって流通してくると、当該潤滑油は渦流発生部44aによって圧送油路3の周方向一側に向かって案内される。これによって、潤滑油が圧送油路3内を周方向一側に向かって回転しながら上方へと流通する渦流が発生する。
渦流発生部44aを通過して渦流となった潤滑油は、拡径部44bへと流入する。当該拡径部44bでも、潤滑油は渦流を形成したまま、当該拡径部44bを上方へと流通する。この際、渦流による遠心力によって、潤滑油内に混入した異物Fは拡径部44bの外周部に集められる。
拡径部44bを通過した潤滑油は、弁本体110の第一ポート112へと流入する。この際、当該第一ポート112の径は拡径部44bの径よりも小さいため、潤滑油は拡径部44bの中心(軸線)付近から第一ポート112へと流入することになる。したがって、上述の如く遠心力によって拡径部44bの外周部に集められている異物Fは、第一ポート112へと流入し難くなる。このようにして、異物Fを遠心力によって潤滑油と分離させることによって、当該異物Fが第一ポート112(流量制御弁50)へと供給されるのを防止することができる。
また、図7(b)に示すように、前記エンジンが停止する等して圧送油路3内の潤滑油の流通が停止した場合、当該潤滑油内の異物Fは、重力によって潤滑油内を下方へと落下する。異物Fは、潤滑油が流通している際に拡径部44bの外周部に集められているため(図7(a)参照)、当該拡径部44bの底面の外周部に沿うように形成されている円形凹部44c内へと落下する。当該円形凹部44c内へと落下した異物Fは、再び圧送油路3内を潤滑油が流通し始めたとしても、当該潤滑油内に混入し難くなる。このようにして、遠心力によって潤滑油と分離させた異物Fを円形凹部44c内へと落下させることによって、当該異物Fが第一ポート112(流量制御弁50)へと供給されるのを防止することができる。
次に、図8を用いて、仕切り部材150の構成について説明する。
仕切り部材150は、略円筒状の部材の側面を蛇腹状に形成することにより、伸縮可能に構成されたベローズにより構成される。仕切り部材150は、弁本体110の貫通孔115内に、軸線方向を左右方向に向けた状態で配置される。仕切り部材150には、スプール120の右端部が当接(固定)される。
仕切り部材150の一端(右端)は、スプール120の第一拡径部121の右端部に、適宜の方法(溶接や接着剤等)により接着される。仕切り部材150の他端(左端)は、弁本体110の貫通孔115の内周面(左側面)に、適宜の方法により接着される。この際、仕切り部材150とスプール120及び弁本体110との間に隙間が生じないように、当該仕切り部材150の全周に亘って接着が施される。
このようにして、当該仕切り部材150により、弁本体110及びスプール120によって形成された隣り合う空間、すなわち、第一油室R1内の空間と貫通孔115内の空間とが、隙間なく完全に仕切られることになる。
図8(a)に示すように、スプール120が左方へと摺動すると、当該スプール120の第一拡径部121と共に仕切り部材150の右端部も左方へと移動する。これによって、当該仕切り部材150は左右方向に縮む。
また、図8(b)に示すように、スプール120が右方へと摺動すると、当該スプール120の第一拡径部121と共に仕切り部材150の右端部も右方へと移動する。これによって、当該仕切り部材150は左右方向に伸びる。
このように、仕切り部材150はスプール120の摺動に伴って伸縮するため、スプール120の摺動を阻害することがなく、また、スプール120の摺動位置にかかわらず常時第一油室R1内の空間と貫通孔115内の空間とを仕切ることができる。
次に、図9を用いて、上述の如く構成された仕切り部材150の作用について説明する。
前述の如く、第一拡径部121と摺動部111との間には一定の隙間(クリアランス(D1−D2))が確保されている。第一油室R1内の空間と貫通孔115内の空間には差圧が発生しているため、第一油室R1内の空間と貫通孔115内の空間とが当該クリアランスを介して連通されていると、第一油室R1から貫通孔115側へ向かって、当該クリアランス内を微量ながら潤滑油が流通する。この際、潤滑油と共に当該潤滑油内に混入した異物Fがクリアランス部分(第一拡径部121と摺動部111とが摺接する部分)に入り込むと、当該部分を損傷させたり固着させたりするおそれがある。
しかし、上述の如く、仕切り部材150によって第一油室R1内の空間と貫通孔115内の空間とを隙間なく仕切ることによって、上述のような第一油室R1から貫通孔115側へのクリアランス内の潤滑油の流れを防止することができる。これによって、潤滑油と共に第一拡径部121と摺動部111とが摺接する部分に異物Fが入り込むのを防止することができる(図9の矢印参照)。
次に、図1及び図9を用いて、弁本体110とスプール120とのクリアランスについて、より詳細に説明する。
上述の如く、第一拡径部121及び第二拡径部122と摺動部111との間には一定の隙間(クリアランス(D1−D2))が確保されている。本実施形態において、当該クリアランスは、オイルフィルタ7(図1参照)のろ紙の目の大きさ(目開き)よりも大きくなるように形成される。
このような構成において、オイルフィルタ7のろ紙の目を通過する異物Fの径Dfは、当該ろ紙の目の大きさよりも小さいものになる。すなわち、オイルフィルタ7のろ紙の目を通過した異物Fの径Dfは、第一拡径部121及び第二拡径部122と摺動部111とのクリアランス(D1−D2)よりも小さくなる。
したがって、図9に示すように、オイルフィルタ7を通過した異物Fが第二拡径部122と摺動部111とが摺接する部分(クリアランス部分)に入り込んだとしても、当該異物Fが当該クリアランス部分に引っかかって固着するのを防止することができる。また、当該クリアランス部分の損傷等も防止することができる。
また、仕切り部材150によって第一拡径部121と摺動部111とが摺接する部分(クリアランス部分)への異物Fの入り込みは防止されているものの、何らかの要因で当該クリアランス部分に異物Fが入り込んだとしても、損傷や固着等を防止することができる。
以上の如く、本実施形態に係るターボチャージャ5の潤滑油供給機構1は、オイルポンプ4から圧送される潤滑油を、コンプレッサホイール20とタービンホイール30とを連結したシャフト10を回転可能に支持する軸受部41へと案内する供給油路42と、供給油路42に設けられ、当該供給油路42を流通する潤滑油の圧力に基づいて当該潤滑油の流路の開口面積を変更することによって潤滑油の流量を調整する流量制御弁50と、流量制御弁50の上流側に設けられ、当該流量制御弁50へと供給される潤滑油をろ過するオイルフィルタ7とを具備するターボチャージャ5の潤滑油供給機構1であって、流量制御弁50は、その内部を潤滑油が流通可能な弁本体110(スリーブ)と、前記弁本体110内を摺動することによって、前記開口面積を変更するスプール120と、を具備し、スプール120と弁本体110とのクリアランスは、オイルフィルタ7の目の大きさよりも大きくなるように形成されるものである。
このように構成することにより、異物Fによる流量制御弁50の不具合の発生を防止することができる。
すなわち、オイルフィルタ7を通過する異物Fよりも、スプール120と弁本体110とのクリアランス(D1−D2)の方が大きくなるため、当該異物Fがスプール120と弁本体110との間に挟まって当該部分を損傷させたり固着させたりするのを防止することができる。
また、本実施形態に係るターボチャージャ5の潤滑油供給機構1は、オイルポンプ4から圧送される潤滑油を、コンプレッサホイール20とタービンホイール30とを連結したシャフト10を回転可能に支持する軸受部41へと案内する圧送油路3及び供給油路42(潤滑油供給油路)と、前記潤滑油供給油路に設けられ、当該潤滑油供給油路を流通する潤滑油の圧力に基づいて当該潤滑油の流路の開口面積を変更することによって潤滑油の流量を調整する流量制御弁50とを具備するターボチャージャ5の潤滑油供給機構1であって、前記潤滑油供給油路における流量制御弁50の上流側に設けられ、潤滑油内の異物を遠心力により分離する遠心分離部44をさらに具備するものである。
このように構成することにより、異物による流量制御弁50の不具合の発生を防止することができる。
すなわち、流量制御弁50の上流側において、潤滑油中の異物を遠心力により分離することで、当該異物が流量制御弁50へと供給されるのを防止することができ、ひいては当該異物による流量制御弁50の不具合の発生を防止することができる。
また、遠心分離部44は、流通する潤滑油に渦流を発生させる渦流発生部44aと、渦流発生部44aの下流側に形成され、さらに下流側の前記潤滑油供給油路よりも大きな径を有する拡径部44bと、を具備するものである。
このように構成することにより、異物は遠心力によって拡径部44bの外周近傍(外周部)へと分離されるため、当該拡径部44bよりも径の小さい下流側に流通し難くなり、ひいては当該異物が流量制御弁50へと供給されるのを防止することができる。
また、遠心分離部44は、拡径部44bの底面の外周部に沿うように形成される円形凹部44c(凹部)をさらに具備するものである。
このように構成することにより、拡径部44bにおいて遠心力により分離された異物を円形凹部44c内に落下させることで、当該異物が再び潤滑油と共に流通するのを防止することができる。
また、遠心分離部44は、ベアリングハウジング40とその下部に設けられるオイルパイプアッシ40aとが互いに当接する面に形成されるものである。
このように構成することによって、遠心分離部44の加工を容易に行うことができる。特に、渦流発生部44a及び円形凹部44cは、オイルパイプアッシ40aのフランジ部をプレス加工等により成形する際に同時に形成することが可能である。
また、本実施形態に係るターボチャージャ5の潤滑油供給機構1は、オイルポンプ4から圧送される潤滑油を、コンプレッサホイール20とタービンホイール30とを連結したシャフト10を回転可能に支持する軸受部41へと案内する供給油路42と、供給油路42に設けられ、当該供給油路42を流通する潤滑油の圧力に基づいて当該潤滑油の流路の開口面積を変更することによって潤滑油の流量を調整する流量制御弁50とを具備するターボチャージャ5の潤滑油供給機構1であって、流量制御弁50は、その内部を潤滑油が流通可能な弁本体110(スリーブ)と、弁本体110内を摺動することによって、前記開口面積を変更するスプール120と、弁本体110及びスプール120によって形成された隣り合う空間の間を潤滑油が流通しないように、当該隣り合う空間の間を仕切る仕切り部材150と、を具備するものである。
このように構成することにより、異物による流量制御弁50の不具合の発生を防止することができる。
すなわち、弁本体110及びスプール120によって区画された隣り合う空間の間の潤滑油の流通を防止することで、当該区画している部分(弁本体110とスプール120とが摺接する部分)に異物が入り込み、当該部分を損傷させたり固着させたりするのを防止することができる。
また、仕切り部材150は、その一端が弁本体110に固定されると共に、他端がスプール120に固定され、スプール120の摺動に伴って伸縮可能に構成されるものである。
このように構成することにより、スプール120の摺動を阻害することなく、異物による流量制御弁50の不具合の発生を防止することができる。
また、上述のように、遠心分離部44による異物の分離と、仕切り部材150によるクリアランス部分への異物の入り込みの防止と、当該クリアランス(D1−D2)をオイルフィルタ7の目の大きさよりも大きく形成することによるクリアランス部分の不具合の防止と、を組み合わせることで、より効果的に異物による流量制御弁50の不具合の発生を防止することが可能となる。
なお、本実施形態においては、オイルフィルタ7は圧送油路3の中途部に設けられるものとしたが、流量制御弁50よりも上流側であれば任意の位置(例えば、圧送油路3の上流側端部等)に設けることが可能である。
また、本実施形態に係る流量制御弁50やターボチャージャ5の構成は一例であり、任意の形状等に構成することが可能である。
また、本実施形態においては、第一供給油路42aに形成された拡径部44bは、第一供給油路42aの他の部分よりも大きな径を有するものとしたが、これらの油路の断面形状は円形に限るものではない。ただし、渦流発生部44aによって滑らかに渦流を発生させるために、当該油路の断面形状は円形とすることが望ましい。また同様に、本実施形態においては、円形凹部44cは平面視円形に形成されるものとしたが、当該形状は円形に限るものではなく、異物を拡径部44bの底面よりもさらに低い位置に落下させることが可能な凹部であれば良い。
また、本実施形態においては、渦流発生部44aは供給油路42に溝を形成することにより構成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、渦流を発生させることが可能な羽根部材を供給油路42に配置する構成等であっても良い。
また、本実施形態においては、仕切り部材150は蛇腹状に形成されたベローズにより構成されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、ダイヤフラム等により構成することも可能である。
また、本実施形態においては、仕切り部材150は第一油室R1内の空間と貫通孔115内の空間とを仕切るものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、隣り合う空間を仕切るものであれば良く、例えば、第一油室R1内の空間と第二油室R2内の空間とを仕切るものであっても良い。
ただし、本実施形態においては、第一油室R1内の空間と第二油室R2内の空間とは連通油路114を介して連通されており、差圧は発生し難いため、仕切り部材150を設けなくても異物は入り込み難いと考えられる。このように、仕切り部材150は、特に差圧が発生し易い空間を仕切るように配置すると効果的である。
また、本実施形態においては、連通油路114は、弁本体110の外部を介して第一油室R1と第二油室R2とを連通するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、第一油室R1と第二油室R2とを連通するものであれば、必ずしも弁本体110の外部を介する必要はない。例えば、弁本体110の内部に連通油路114を形成したり、スプール120に連通油路114を形成したりすることも可能である。
また、本実施形態においては、仕切り部材150(ベローズ)は、図8等に示すように、略円筒状(中心(軸線)部分が左右に連通している形状)であるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図10に示すように、仕切り部材150は、その一端(右端部)が閉塞され、スプール120の右端部を覆うように形成されていても良い。このように構成することによって、より確実に第一油室R1内の空間と貫通孔115内の空間とを隙間なく仕切ることができる。