JP6146807B2 - プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
従来より、大気圧下で発生させたプラズマジェットを被処理物に照射するプラズマ処理方法が実施されている。また、被処理物にプラズマジェットを照射したくない領域が存在する場合には、予め被処理物表面にレジストを塗布して、エッチング等で処理対象部分のみを露出させた後に、被処理物表面に対してプラズマジェットを照射することが行われている。この場合には、最終的にレジストを剥離する必要があるため作業が非常に煩雑であり、コスト面でも不利であった。
このような問題を改善する方法として、被処理物の大きさや、被処理物中の処理対象部分に応じた領域にプラズマジェットを照射することができる装置および方法が、例えば、特許文献1に開示されている。
特許文献1においては、放電管として誘電体材料の細長い円管を用いてプラズマジェットを被処理物にスポット的に照射する技術や、同様の複数の放電管を長手方向の外周壁が個々に隣接するように夫々を当接して直線的に束ねて1つの放電管とし、被処理物に直線的に吹き付ける技術や、誘電体材料の二枚の矩形状の薄板を隙間をもって対向させ、両側部を接着テープ等で固定して放電管とし、薄板の略幅に相当する長さ分だけ直線的に照射する技術等が開示されている。
以上のように、放電管の配置方法や形状の工夫によって、被処理物の大きさや、被処理物中の処理目標に応じた領域にプラズマジェットを照射することが可能となった。
特開平9−232293号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、被処理物の大きさ等に対応した放電管を使用する必要があるため、大きさ等が異なる複数の被処理物を処理するためには、夫々に対応する放電管を準備しなければならないという問題を有している。
また、同一の被処理物中に領域の異なる複数の処理対象部分を有するものであれば、夫々の処理対象部分に対応した放電管を用いる必要がある。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、一個の放電管でプラズマジェットの照射領域(照射幅員)を可変制御可能な大気圧プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
以上のような課題を解決するための手段として、本発明は以下のようなものを提供する。
請求項1に係る発明では、誘電体材料で構成した放電管と前記放電管に対峙した複数の電極とを有し、大気圧下で使用されるプラズマ処理装置において、ヘリウムガスと窒素ガスを含む混合ガスを放電管に導入して内部でプラズマ化して生成したプラズマジェットを排出照射する構成とし、混合ガスのヘリウムガス窒素ガスの混合比を調整することにより、前記複数の電極間に電圧を印加することで前記放電管から照射されるプラズマジェットの照射幅員を調整してプラズマ照射範囲を特定可能とし、不要な範囲へのプラズマ照射機能を減殺することを特徴とするプラズマ処理装置。
請求項2に係る発明では、前記放電管は上下開口の略角パイプ状とし、前記電極を二個で構成すると共に、一方の電極は放電管の下部側壁に配設し、他方の電極は前記放電管の略直下に配設したことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
請求項3に係る発明では、前記放電管の略直下に配設した前記電極は、前記電極の表面を絶縁材料で被覆していないことを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
請求項4に係る発明では、前記電極への印加電圧を4.0kV以上で8.0kV以下の範囲で可変自在とし、前記ヘリウムガスに添加する前記窒素ガスの量が0.5vol%以上で20.0vol%以下の範囲で可変自在としたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
請求項5に係る発明では、前記電極への印加電圧を4.0kV以上で6.0kV以下の範囲で可変自在とし、前記ヘリウムガスに添加する前記窒素ガスの量が0.5vol%以上で11.0vol%以下の範囲で可変自在としたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
請求項6に係る発明では、誘電体材料で構成した放電管と前記放電管に対峙した複数の電極とを有し、大気圧下で使用されるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、ヘリウムガスと窒素ガスを含む混合ガスを放電管に導入して内部でプラズマ化して生成したプラズマジェットを排出照射する構成とし、混合ガスのヘリウムガス窒素ガスの混合比を調整することにより、前記複数の電極間に電圧を印加することで前記放電管から照射されるプラズマジェットの照射幅員を調整してプラズマ照射範囲を特定可能とし、不要な範囲へのプラズマ照射機能を減殺することを特徴とするプラズマ処理方法。
請求項7に係る発明では、前記放電管は上下開口の略角パイプ状とし、前記電極を二個で構成すると共に、一方の電極は放電管の下部側壁に配設し、他方の電極は前記放電管の略直下に配設したプラズマ処理装置を用いたことを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理方法。
請求項8に係る発明では、前記電極への印加電圧を4.0kV以上で8.0kV以下とし、前記ヘリウムガスに添加する前記窒素ガスの量を0.5vol%以上で20.0vol%以下の範囲で調整することによりプラズマジェットの照射幅員を調整自在としたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のプラズマ処理方法。
請求項9に係る発明では、前記電極への印加電圧を4.0kV以上で6.0kV以下とし、前記ヘリウムガスに添加する前記窒素ガスの量を0.5vol%以上で11.0vol%以下の範囲で調整することによりプラズマジェットの照射幅員を調整自在としたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のプラズマ処理方法。
本発明によるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法によれば、ヘリウムガスに窒素ガスを所定量添加することでプラズマジェットの照射幅員を可変させることが可能となり、被処理物の照射対象領域に応じた適正なプラズマ照射を行うことができる。
本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置によるプラズマジェットの照射幅員の変化を表した模式図である。 本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の放電管等を示したものであり、(a)は断面図であり、(b)は正面図である。 本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法の作業の流れの一例を示した図である。 本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法の作業の流れの一例を示した図である。 本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置における処理の状況を示す模式図である。 実験例の実験条件を示す表である。 実験例の実験条件を示す表である。 実験例で得られた各印加電圧値における窒素ガス濃度と照射幅員の関係を示すグラフである。 実験例の印加電圧4kV時のプラズマジェットの状態を示す写真である。 実験例の印加電圧4kV時の酵母菌の死滅状態を示す写真である。 実験例の印加電圧5kV時のプラズマジェットの状態を示す写真である。 実験例の印加電圧5kV時の酵母菌の死滅状態を示す写真である。 実験例の印加電圧6kV時のプラズマジェットの状態を示す写真である。 実験例の印加電圧6kV時の酵母菌の死滅状態を示す写真である。 実験例の印加電圧7kV時のプラズマジェットの状態を示す写真である。 実験例の印加電圧7kV時の酵母菌の死滅状態を示す写真である。 実験例の印加電圧8kV時のプラズマジェットの状態を示す写真である。 実験例の印加電圧8kV時の酵母菌の死滅状態を示す写真である。
本発明の要旨は、誘電体材料で構成した放電管と前記放電管に対峙した複数の電極とを有し、大気圧下で使用されるプラズマ処理装置において、ヘリウムガス(以下、Heガスとする)に添加する窒素ガス(以下、Nガスとする)の量を調整することにより、前記複数の電極間に電圧を印加することで前記放電管から照射されるプラズマジェットの照射幅員を調整してプラズマ照射範囲を特定可能とし、不要な範囲へのプラズマ照射機能を減殺することを特徴とするプラズマ処理装置である。すなわち、被処理物の照射対象領域に応じた適正なプラズマ照射を図ろうとするものである。
以下、本発明に係るプラズマ処理装置1及びプラズマ処理方法の一実施形態、及び実験例について図面を参照しながら説明する。なお、本説明中における印加電圧値とは、波高値を示すものである。
[プラズマ処理装置]
図1に示すように、本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、放電管2と電極部3と配管部4とで構成している。プラズマ処理装置1が処理対象とする被処理物101は、放電管2と電極部3の第二電極12との間に設置される。プラズマ処理装置1は、被処理物101の表面に対してプラズマジェット5を供給可能とするものである。
配管部4においては、主ガスとしてのHeガス6Hと、添加ガスとしてのNガス7Nとが所定の混合比で混合され、混合ガス8Gを放電管2へと送出する。放電管2は、誘電体材料で形成され、内部に空間を有する両端開口の角パイプ状としている。放電管2は、両端の開口側が上下を向くように配置される。放電管2の上開口部9から入った混合ガス8Gは下開口部10へと送出するように構成している。また、電極部3は、第一電極11と第二電極12とを有する。第一電極11は、放電管2の下部において、一側の外壁面に貼設され、高周波電源13と接続されている。第二電極12は、被処理物101の下側に配設されて接地されている。
従って、第一・第二電極11,12間に交流の高電圧を印加することで、混合ガス8Gがプラズマ化すると共に、混合ガス8Gの流量に応じたプラズマジェット5が、放電管2の下開口部10から所定の距離を隔てて設置された被処理物101の表面へと供給される。
以上のように、本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、誘電体バリア放電(Dielectric Barrier Discharge)によって大気圧下でプラズマを生成可能とするものである。また、生成されたプラズマをジェット状として被処理物101の表面に供給して殺菌、洗浄等の処理がなされるものである。
また、Heガス6HとNガス7Nの混合比を可変させることで、図2に模式的に示すように、プラズマジェット5の照射幅員15を自在に調整できるものである。
次に、本実施形態に係るプラズマ処理装置1の各部について詳述する。
配管部4は、流量計(図示せず)を備えたHeガスボンベ16と、流量計(図示せず)を備えたNガスボンベ17と、Heガスボンベ16及びNガスボンベ17のそれぞれからの配管が接続されるガス混合器18とを有する。ガス混合器18は、Heガスボンベ16からのHeガス6Hと、Nガスボンベ17からのNガス7Nとの混合比を可変自在とする。ガス混合器18からは、放電管2の上開口部9へと配管が延設されており、ガス混合器18により所定の混合比に調節されたHeガス6HとNガス7Nの混合ガス8Gが放電管2の上開口部9へと供給される。なお、ガス混合器18による混合方法は、例えば、圧力比混合法、重量法、流量比混合法、半重量法等の種々の方法が使用できる。
放電管2は、誘電体材料としてガラスを用いて構成されており、互いに同形状の二枚の矩形状のガラス板を隙間をもって対向配置させると共に幅方向の両側を繋げたような形状を有する。つまり、放電管2は、長手方向の両側に開口する空間を内部に有する角パイプ状に構成され、両側の開口が上下を向くように設けられている。また、放電管2の内部の空間は、後述する電極部3によって高電圧が印加される際に、混合ガス8Gがプラズマ化する反応空間19としている。
具体的には、図3(a)に示すように、放電管2において、第一電極11の上端部と略同高さの位置から下開口部10の間に相当する内部空間を反応空間19としている。すなわち、反応空間19は、放電管2の内部空間の一部、具体的には下側の部分であって、上開口部9及び下開口部10と連通している。なお、誘電体材料としてはガラス以外に、例えば、セラミックス等の絶縁材料を用いることができる。
以上のように放電管2を構成することで、配管部4から送出された混合ガス8Gは、放電管2の上開口部9から放電管2の内部へと導入され、反応空間19を通って下開口部10から排出(被処理物101の表面へ供給)されることになる。
電極部3は、第一電極11と第二電極12と高周波電源13とを配線によって接続している。具体的には、第一電極11は、略四角形状の導電性材料であるアルミニウム板で形成され、放電管2の下部の一側の外壁面の左右方向(放電管2の幅方向)の略中央部に、放電管2の下端部から所定の間隔をおいて導電性接着剤によって貼設されている。また、第一電極11は高周波電源13と接続している。
第二電極12は、四角形状の導電性材料である鉄板で形成され、アース線によって接地されている。また、第二電極12の表面は、誘電体材料等の絶縁材で被覆していない。これは、第一電極11を貼設した放電管2(ガラス部分)が、第一電極11と第二電極12との間で誘電体材料として兼用されることによるものである。なお、第一・第二電極11,12は、導電性材料であればよいが、特に導電率の高い金属材料の使用が望ましい。
以上のように電極部3を構成することで、高周波電源13によって第一・第二電極11,12間に所定の電圧を印加すると、放電管2の反応空間19を通り被処理物101の表面に到達する混合ガス8Gが、反応空間19から第二電極12(第二電極12上の被処理物101表面)にかけてプラズマ化する。すなわち、放電管2の下開口部10から送出される混合ガス8Gのガス流量に応じたプラズマジェット5を被処理物101の表面に供給することができる。
また、第二電極12を放電管2に配設する必要がなく、第二電極12の表面を絶縁材料で被覆することも必要ないので、放電管2の構造を単純化できると共に、プラズマ処理装置1全体の構造をシンプルなものとすることができる。
以上説明したように構成された本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、放電管2を、下開口部10側を下側にして略垂直として、第二電極12の略中央部において第二電極12上の被処理物101に対して所定の間隔を隔てて配設することで、第二電極12上に載置した被処理物101の表面に対して上方からプラズマジェット5を供給することができる。
なお、本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、上述のように垂直下方へのプラズマジェット5の供給としているが、放電管2と第二電極12との位置関係は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、図4に示すようにプラズマ処理装置1を水平方向に配設し、被処理物101を第二電極12に形成された位置決め固定部材20によって固定して処理を行ってもよく、放電管2と第二電極12との位置関係、つまりプラズマジェット5の照射方向は如何なる方向としても本発明の要旨の範囲内において適用可能である。
[プラズマ処理方法]
次に、上述したプラズマ処理装置1を用いてプラズマジェット5の照射幅員を可変させるプラズマ処理方法について図5、図6を参照しながら説明する。
図5は、プラズマ処理装置1の照射幅員15の可変条件(Heガス6HとNガス7Nの混合比と、印加電圧)が不明な場合における照射幅員15の調整方法を含めた作業の流れを示したものである。
まず、プラズマ処理装置1の第二電極12上であって、放電管2の直下に被処理物101として空のシャーレを載置する(ステップS1)。
次に、放電管2の下端面から第二電極12の面上までの距離(厳密には被処理物101の表面までの距離)を所定の間隔に調整して固定する(ステップS2)。第一電極11と第二電極12との間で発生するプラズマジェット5の状態を適正化するためである。
次に、混合ガス8Gに印加する印加電圧値を決め、高周波電源13を、決定した印加電圧値に設定する(ステップS3)。高周波電源13に印加電圧値を設定するのみであり、出力前の状態である。
次に、高周波電源13を操作して第一・第二電極11,12間に設定した印加電圧を出力する(ステップS4)。この段階では放電管2には混合ガス8Gが供給されていないため、プラズマジェット5は発生していない。
次に、Heガスボンベ16とNガスボンベ17のバルブを開ける(ステップS5)。Heガス6HとNガス7Nは、ガス混合器18を操作するまでガス混合器18よりも先には送出されることはない。
次に、Heガス6HとNガス7Nの混合比を決め、ガス混合器18を、決定した混合比に設定する(ステップS6)。ガス混合器18に混合比を設定するのみであり、混合ガス8Gの送出前の状態である。
次に、ガス混合器18を操作して放電管2に設定した混合比の混合ガス8Gを送出する(ステップS7)。放電管2に混合ガス8Gが供給され、反応空間19から第二電極12にかけて混合ガス8Gがプラズマ化すると共にプラズマジェット5として空シャーレに向けて照射される(ステップS8)。
次に、プラズマジェット5の照射幅員15を目視で確認し、被処理物101への適正な幅員であるか否かを判断する(ステップS9)。この場合、プラズマジェット5の照射幅員15が不適当であると判断したときは、ガス混合器18によって混合ガス8Gの混合比を変更し(ステップS10,S11)、上述した処理(ステップS7〜S9)を繰り返す。なお、ガス混合器18の混合比調整方法がダイヤル方式(ダイレクトバルブ)等の手動可変方法である場合には、プラズマジェット5の照射幅員15を視認しながら行うことで容易に調整が可能である。
具体的には、図2(a)に示すように照射幅員15が広い場合には、Nガス7Nの濃度を順次高くすることで図2(b)、(c)のように照射幅員15を狭くすることが可能となる。また、図2(c)に示すように照射幅員15が狭い場合には、Nガス7Nの濃度を順次低くすることで図2(b)、(a)のように照射幅員15を広くすることが可能となる。これらについては、後述する実験例にて詳述する。
なお、プラズマジェット5の照射幅員15を目視によって正確に確認することは非常に困難であることから、後述する実験例では、シャーレ104内の寒天培地103に成長させた酵母菌102の死滅した領域(長さ)を疑似的に照射幅員15として算出している。
また、プラズマジェット5の照射幅員15の調整が、混合比の調整のみでは不充分であると判断された場合(ステップS10)には、高周波電源13による印加電圧値を変更し(ステップS12)、上述した処理(ステップS4〜S9)を繰り返す。なお、高周波電源13の印加電圧値調整方法がダイヤル方式等の手動可変方法である場合には、プラズマジェット5の照射幅員15を視認しながら行うことで容易に調整が可能である。
本実施形態に係るプラズマ処理装置1及びプラズマ処理方法においては、Heガス6HとNガス7Nの混合比を可変させることでプラズマジェット5の照射幅員15を所望の幅員とすることができるが、印加電圧値を可変させることによっても幅員を調整することができる。但し、後述するように、同じ照射幅員15を得るためには、Nガス7Nの濃度を上げると共に、印加電圧値を高く設定する必要があることから、使用電力量の増加となりコストの面では望ましくない。
以上のように、プラズマジェット5の照射幅員15の条件が決まったら、高周波電源13、又はガス混合器18の出力等を停止させ、プラズマジェット5の照射を中断する(ステップS13)。
次に、空シャーレを除去して、実際にプラズマジェット5を供給すべき被処理物101を空シャーレと同様の位置に載置する(ステップS14)。また、停止させていた高周波電源13、又はガス混合器18を出力等させ(ステップS15)、プラズマジェット5を照射させて被処理物に対するプラズマジェット5の供給を開始する(ステップS16)。
所定時間の経過後に、再び、高周波電源13、又はガス混合器18の出力等を停止させ、プラズマジェット5の照射を中断する(ステップS17)。これにより被処理物101へのプラズマジェット5の供給は終了することとなる。
次に、処理すべき同様の被処理物101がある場合(ステップS18)には、処理済みの被処理物101を除去して新しい被処理物101を第二電極12上の所定位置に載置し、上述した同様の処理を繰り返す(ステップS14〜S18)。
全ての被処理物101の処理が終了した場合(ステップS18)は、高周波電源13とガス混合器18の出力と送出をOFFにすると共に、Heガスボンベ16とNガスボンベ17のバルブを閉じて(ステップS19)、作業を終了する。
次に、図6は、プラズマ処理装置1の照射幅員15の可変条件(Heガス6HとNガス7Nの混合比と、印加電圧値)が明確な場合において、同一被処理物101内に照射対象面積が異なる複数の照射対象領域を有する被処理物101へのプラズマ処理方法の作業の流れを示したものである。
また、図7は、プラズマ処理装置1の第二電極12上に、照射対象面積が異なる複数の照射対象領域21,22,23を有する被処理物101を載置して、各照射対象領域21,22,23に対してプラズマジェット5を供給している状態を模式的に示す図である。
まず、プラズマ処理装置1の第二電極12上に、放電管2の直下に位置するように被処理物101を載置する(ステップS30)。
次に、放電管2の下端面から第二電極12の面上までの距離を所定の間隔に調整して固定する(ステップS31)。第一電極11と第二電極12との間で発生するプラズマジェット5の状態を適正化するためである。
次に、高周波電源13とガス混合器18に対して、印加電圧値と混合比の設定を行うと共に、Heガスボンベ16とNガスボンベ17のバルブを開状態とする(ステップS32)。なお、高周波電源13とガス混合器18には、被処理物101内において最初に照射を行う箇所の面積(略幅員)に相当する条件を設定するが、その他箇所についても事前に面積を把握しているものとする。
次に、高周波電源13を操作して第一・第二電極11,12間に設定した印加電圧を出力すると共に、ガス混合器18を操作して、放電管2に設定した混合比の混合ガス8Gを送出する(ステップS33)。放電管2に混合ガス8Gが供給され、反応空間19から第二電極12にかけて混合ガス8Gがプラズマ化すると共にプラズマジェット5として被処理物101の処理対象箇所に向けて照射される(ステップS34)。
所定時間の経過後に、再び、高周波電源13、又はガス混合器18の出力等を停止させ、プラズマジェット5の照射を中断する(ステップS35)。これにより処理対象箇所へのプラズマジェット5の供給は終了することとなる。
次に、同一の被処理物101内に処理すべき残りの処理対象箇所があれば(ステップS36)、被処理物101を所定の箇所に移動させる(ステップS37)。また、次に処理を行う箇所の対象箇所の面積が、処理を行った直前の箇所の面積と同じであれば(ステップS38)、プラズマ処理装置1の照射幅員15の可変条件を変更せずに、再び、プラズマジェット5を処理対象箇所へ供給する(ステップS33〜S36)。
また、処理を行う箇所の対象箇所の面積が、処理を行った直前の箇所の面積と異なる場合には(ステップS38)、プラズマ処理装置1の照射幅員15の可変条件を変更して(ステップS39)、再びプラズマジェット5を対象箇所へ供給する(ステップS33〜S36)。
以上のような処理を繰り返すことで、同一被処理物101内の複数の処理対象箇所についてプラズマジェット5の供給を行うことができ、プラズマジェット5の供給は終了することとなる。
次に、処理すべき他の被処理物101がある場合(ステップSS40)には、処理済みの被処理物101を除去して新しい被処理物101を第二電極12上の所定位置に載置し(ステップS30)、上述した同様の処理を最初から繰り返す(ステップS31〜S40)。
全ての被処理物101の処理が終了した場合(ステップS40)は、高周波電源13とガス混合器18の出力と送出をOFFにすると共に、Heガスボンベ16とNガスボンベ17のバルブを閉じて(ステップS41)、作業を終了する。
なお、上述したプラズマ処理方法は、放電管2の移動や被処理物101の移動等の方法については本実施形態に限定されるものではなく、例えば、ロボットの先端に放電管2を取り付けて自動制御したり、第二電極12を移動自在としたり、ガス混合器18における混合比の可変制御についても自動制御とする等、本発明の要旨の範囲内において如何なる追加、変更も可能である。
以上説明したように、本実施形態に係るプラズマ処理方法は行われる。従って、照射幅員15の変更を、プラズマ処理装置1の構成を変更することなく、Heガス6HとNガス7Nの混合比を可変させるだけで可能とするため、従来のように、放電管の種類を変更したり、他の装置と併用する等の煩わしさがない。
[実験例]
次に、上述した本実施形態に係るプラズマ処理装置1を用いた一実験例について説明する。
本実験例では、Heガス6Hを主ガスとし、Nガス7Nを添加ガスとした所定の混合比の混合ガス8Gをプラズマ化してジェット状として被処理物101に供給するものである。プラズマの供給対象物は、シャーレ104内の寒天培地103に成長させた酵母菌102とし、プラズマの供給による酵母菌102の死滅状態を外観にて確認すると共に、酵母菌102の死滅した領域の長さを測定することで、該長さをプラズマジェット5の照射幅員15として疑似的に測定するものである。
従って、本実験により、所定の印加電圧を付加したときのNガス7Nの濃度に応じたプラズマジェット5の照射幅員15の変化を確認することができる。
なお、本実験例においては、寒天培地103に成長させた酵母菌102を被処理物101としているが、被処理物101の種類は本実験例に限定されず、例えば、金属類、樹脂類、紙類、液体、セラミックス等、本発明の要旨の範囲内において如何なる種類のものを対象としてもよい。
図3(a)は、被処理物101をセットした状態のプラズマ処理装置1の放電管2(第一電極11含む)と第二電極12の断面図を示しており、図3(b)は、図3(a)の正面図を示したものである。また、図8の表1には、図3(a)、(b)で示した各部の数値条件を示している。
放電管2の具体的な寸法は、放電管2のガラス厚aを1.2mm、ガラス幅b(略内部空間の幅)を12mm、ガラス長さcを76mm、放電管内部のガラス間隔dを1.4mmとして形成している。
第一電極11の具体的な寸法は、板厚eが0.1mmのアルミ板を使用し、横幅fを5mm、縦幅gを13mmとして放電管2の下端部から上側hに2mmの位置に配設している。また、第二電極12は、板厚iが2mmで、縦j1、横j2共に120mmの正方形状の鉄板を用いており、第二電極12の略中央に所定の間隔を隔てて垂直に放電管2を配設している。
また、対象物である寒天培地103表面に成長した酵母菌102は、直径90mmのシャーレ104内に収容され、第二電極12の略中央、すなわち放電管2の直下に配置しており、寒天培地103の上面と放電管2の下端部との距離Aを5mmとしている。
以上のように、本実験で使用されるプラズマ処理装置1と被処理物101は構成している。
本プラズマ処理装置1を用いた実験条件は、図9の表2に示すように、混合ガス8Gの流量を2L/minとして固定し、Heガス6Hに対するNガス7Nの濃度を0.5〜20vol%の範囲で可変させている。また、高周波電源13の周波数を1kHzとして固定し、印加電圧を4〜8kVと可変させている。寒天培地103へのプラズマジェット5の供給時間は、酵母菌102の死滅を外観上から確実に判断できる時間として30secとしている。
なお、Nガス7N濃度の最小値を0.5vol%としているが、これは装置構成上の理由によるものである。また、各電圧印加時おいては、Nガス7N濃度を上昇させることで最終的にプラズマ化しないNガス7N濃度が存在するため、本実験例においてはプラズマ化する上限のNガス7N濃度までを実験の上限範囲とした。
以上、説明したような実験装置と実験条件の下で行った実験結果を、図10に示すグラフを参照しながら説明する。
まず、印加電圧を4.0kVとした場合、Nガス7N濃度を0.5〜3.5vol%へと増加させるに従い、照射幅員15を略9.1mm〜略2.9mmへと略反比例に可変させることができた。なお、プラズマジェット5の状態及び酵母菌102の殺菌の状態は、図11(a)、図12(a)に示すように濃度0.5vol%時において照射幅員15が9.07mmであり、図11(b)、図12(b)に示すように濃度1.5vol%時において照射幅員15が7.42mmであり、図11(c)、図12(c)に示すように濃度3.5vol%時において照射幅員15が2.89mmである。
また、印加電圧を5.0kVとした場合、Nガス7N濃度を0.5〜4.0vol%へと増加させるに従い、照射幅員15を略11.2mm〜略3.2mmへと略反比例に可変させることができた。なお、プラズマジェット5の状態及び酵母菌102の殺菌の状態は、図13(a)、図14(a)に示すように濃度0.5vol%時において照射幅員15が11.20mmであり、図13(b)、図14(b)に示すように濃度1.5vol%時において照射幅員15が8.36mmであり、図13(c)、図14(c)に示すように濃度2.0vol%時において照射幅員15が7.42mmであり、図13(d)、図12(d)に示すように濃度4.0vol%時において照射幅員15が3.20mmである。
また、印加電圧を6.0kVとした場合、Nガス7N濃度を0.5〜10.0vol%へと増加させるに従い、照射幅員15を略11.5mm〜略2.9mmへと略反比例に可変させることができた。なお、プラズマジェット5の状態及び酵母菌102の殺菌の状態は、図15(a)、図16(a)に示すように濃度0.5vol%時において照射幅員15が11.47mmであり、図15(b)、図16(b)に示すように濃度6.0vol%時において照射幅員15が3.69mmであり、図15(c)、図16(c)に示すように濃度10.0vol%時において照射幅員15が2.93mmである。
また、印加電圧を7.0kVとした場合、Nガス7N濃度を0.5〜13.0vol%へと増加させるに従い、照射幅員15を略11.9mm〜略2.8mmへと略反比例に可変させることができた。なお、プラズマジェット5の状態及び酵母菌102の殺菌の状態は、図17(a)、図18(a)に示すように濃度0.5vol%時において照射幅員15が11.91mmであり、図17(b)、図18(b)に示すように濃度6.0vol%時において照射幅員15が8.53mmであり、図17(c)、図18(c)に示すように濃度13.0vol%時において照射幅員15が2.84mmである。
また、印加電圧を8.0kVとした場合、Nガス7N濃度を0.5〜20.0vol%へと増加させるに従い、照射幅員15を略11.6mm〜略2.4mmへと略反比例に可変させることができた。なお、プラズマジェット5の状態及び酵母菌102の殺菌の状態は、図19(a)、図20(a)に示すように濃度0.5vol%時において照射幅員15が11.59mmであり、図19(b)、図20(b)に示すように濃度8.0vol%時において照射幅員15が8.46mmであり、図19(c)、図20(c)に示すように濃度12.0vol%時において照射幅員15が5.55mmであり、図19(d)、図20(d)に示すように濃度20.0vol%時において照射幅員15が2.38mmである。
なお、本実験例における各種条件の下では、印加電圧が略3.0kV以下、及び略9.0kV以上の領域においてはプラズマジェット5を発生させることができない。また、印加電圧を高く設定するに従い、第一電極11の表面と第二電極12の表面との間でリークが起こり、異常放電が発生しやすいことを確認している。従って、誘電体バリア放電を達成できずアーク放電となり、プラズマジェット5を生成することができず、第二電極12を損傷してしまう。
また、本実験例においては、放電管2のガラス幅bが12mmであることから、8.0kV以上の印加電圧では、Nガス7Nの濃度が0.5vol%時における照射幅員15に装置構造上の限界が生じている。すなわち、照射幅員15が放電管2のガラス幅bを越えられないことを示している。この場合、放電管2のガラス幅bを広げることで照射幅員15を増加させることが可能であることを確認しているが、照射幅員15が非常に不安定な挙動を示すことも同時に確認している。
以上説明したように、本実施形態に係るプラズマ処理装置1、及び本プラズマ処理方法によれば、印加電圧4.0kV〜8.0kVの範囲においては、Heガス6Hに対してNガス7Nの濃度を0.5vol%〜20.0vol%へと可変させることでプラズマジェット5の照射幅員15を調整することができる。
また、上述した不安定要素等や、実際に使用する際に検討すべき消費電力やガスの使用量(特にHeガス6H)等、コスト面での効果も考慮すると、印加電圧4.0kV〜6.0kVの範囲において、Nガス7Nの濃度を0.5vol%〜11.0vol%の範囲で可変させれば、異常放電の発生等もなく安定した状態でプラズマジェット5の照射幅員15を可変自在とできる。
また、被処理物101にプラズマジェットを照射したくない領域が存在する場合であっても、従来のように、照射前に被処理物101の表面にレジストを塗布したり、放電管の種類を変更したり、他の装置と併用する等の煩わしさがない。
また、Heガス6H単体でプラズマジェット5を照射する場合に比して、Nガス7Nを添加していることで、抽出量が極めて少なく高価な希ガスであるHeガスの使用量を削減することができる。
更に、Heガス6HとNガス7Nの混合比の変更と共に、印加電圧を可変させることによってもプラズマジェット5の照射幅員15を可変することができることより、最適な印加電圧によって最適な照射幅員15とすることができ、消費電力を最小限に抑えることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態等を説明したが、本発明は係る特定の実施形態や使用例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
1 プラズマ処理装置
2 放電管
3 電極部
5 プラズマジェット
6H ヘリウムガス
7N 窒素ガス
11 第一電極
12 第二電極
15 照射幅員

Claims (9)

  1. 誘電体材料で構成した放電管と前記放電管に対峙した複数の電極とを有し、大気圧下で使用されるプラズマ処理装置において、
    ヘリウムガスと窒素ガスを含む混合ガスを放電管に導入して内部でプラズマ化して生成したプラズマジェットを排出照射する構成とし、混合ガスのヘリウムガス窒素ガスの混合比を調整することにより、前記複数の電極間に電圧を印加することで前記放電管から照射されるプラズマジェットの照射幅員を調整してプラズマ照射範囲を特定可能とし、不要な範囲へのプラズマ照射機能を減殺することを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. 前記放電管は上下開口の略角パイプ状とし、
    前記電極を二個で構成すると共に、
    一方の電極は放電管の下部側壁に配設し、
    他方の電極は前記放電管の略直下に配設したことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
  3. 前記放電管の略直下に配設した前記電極は、前記電極の表面を絶縁材料で被覆していないことを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
  4. 前記電極への印加電圧を4.0kV以上で8.0kV以下の範囲で可変自在とし、前記ヘリウムガスに添加する前記窒素ガスの量が0.5vol%以上で20.0vol%以下の範囲で可変自在としたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
  5. 前記電極への印加電圧を4.0kV以上で6.0kV以下の範囲で可変自在とし、前記ヘリウムガスに添加する前記窒素ガスの量が0.5vol%以上で11.0vol%以下の範囲で可変自在としたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のプラズマ処理装置。
  6. 誘電体材料で構成した放電管と前記放電管に対峙した複数の電極とを有し、大気圧下で使用されるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法において、
    ヘリウムガスと窒素ガスを含む混合ガスを放電管に導入して内部でプラズマ化して生成したプラズマジェットを排出照射する構成とし、混合ガスのヘリウムガス窒素ガスの混合比を調整することにより、前記複数の電極間に電圧を印加することで前記放電管から照射されるプラズマジェットの照射幅員を調整してプラズマ照射範囲を特定可能とし、不要な範囲へのプラズマ照射機能を減殺することを特徴とするプラズマ処理方法。
  7. 前記放電管は上下開口の略角パイプ状とし、
    前記電極を二個で構成すると共に、
    一方の電極は放電管の下部側壁に配設し、
    他方の電極は前記放電管の略直下に配設したプラズマ処理装置を用いたことを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理方法。
  8. 前記電極への印加電圧を4.0kV以上で8.0kV以下とし、前記ヘリウムガスに添加する前記窒素ガスの量を0.5vol%以上で20.0vol%以下の範囲で調整することによりプラズマジェットの照射幅員を調整自在としたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のプラズマ処理方法。
  9. 前記電極への印加電圧を4.0kV以上で6.0kV以下とし、前記ヘリウムガスに添加する前記窒素ガスの量を0.5vol%以上で11.0vol%以下の範囲で調整することによりプラズマジェットの照射幅員を調整自在としたことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のプラズマ処理方法。
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