JP6144657B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、固体高分子電解質膜の両側の面に、それぞれ電極触媒層を含む電極が設けられた電解質膜・電極構造体を備える燃料電池に関する。
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ触媒層(電極触媒層)とガス拡散層とからなるアノード電極及びカソード電極を配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータにより挟持している。この燃料電池は、所定の数だけ積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
通常、アノード電極及びカソード電極は、固体高分子電解質膜の各面に設けられる電極触媒層と、前記電極触媒層に積層されるガス拡散層とを有している。電極触媒層は、例えば、白金粒子等の金属粒子を担持した触媒担体(カーボン等)が添加された溶媒に対し、イオン伝導性バインダ(溶液)を混合したペーストが用いられている。ペーストは、塗布された後、熱処理により乾燥されることにより、電極触媒層が形成されている。
その際、電極触媒層には、ひび割れ(ピンホール、割れ、ひび等を含む)が発生する場合がある。電極触媒層のひび割れは、固体高分子電解質膜の劣化を促進させ易く、燃料電池の発電性能の低下や耐久性の低下が惹起されるという問題がある。ひび割れは、特に電極触媒層の外周部分から発生する場合が多く、前記外周部分から内側に向かって欠陥が拡大してしまう。
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池が知られている。この燃料電池では、燃料電池電極用触媒インクが、触媒を担持した粒子である触媒担持粒子と、プロトン伝導性を有するアイオノマーと、前記触媒担持粒子及び前記アイオノマーを分散させる分散溶媒と、を含んでいる。そして、触媒担持粒子の単位比表面積当たりのアイオノマーの吸着量が、0.1(mg/m2)以上であることを特徴としている。
また、特許文献2に開示されている固体高分子型燃料電池用電極では、電極の表面層の全面を固体高分子電解質溶液によりコ−ティングした後、水蒸気によりその溶液中の溶媒を沸点以上に加熱して除去することを特徴としている。
さらに、特許文献3に開示されている固体高分子型燃料電池用電極の製造方法では、混合物成形工程、造孔剤除去工程及び含浸工程を備えている。混合物成形工程は、電極触媒とポリテトラフルオロエチレンと造孔剤とを混合し、該混合物を成形してシート体にしている。造孔剤除去工程は、シート体から造孔剤を除去して多孔性シート体としている。含浸工程では、多孔性シートに高分子電解質溶液を含浸している。
そして、混合物成形工程で成形されるシート体を多孔性の基板上に積層する積層ステップと、該積層ステップ後にポリテトラフルオロエチレンの融点以上の温度で熱処理を行う熱処理ステップとを、含浸工程より前に備えている。
特開2013−030287号公報 特開平08−148152号公報 特開平09−120821号公報
ところで、上記の特許文献1では、最適な電極層の成分設定の自由度が著しく低下するという問題がある。さらに、上記の特許文献2及び3では、構成が複雑化するとともに、製造工程が煩雑化してしまい、経済的ではないという問題がある。しかも、いずれの技術を用いても、完全にひび割れを防止することができないという問題がある。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単且つ経済的に、電極触媒層の外周部位のひび割れを確実に補修することができ、所望の発電性能及び耐久性を確保することが可能な燃料電池を提供することを目的とする。
本発明は、固体高分子電解質膜の両側の面に、それぞれ電極触媒層を含む電極が設けられた電解質膜・電極構造体を備える燃料電池に関するものである。この燃料電池では、電解質膜・電極構造体は、電極触媒層の外周部位にのみ、イオン交換成分を含むペーストが塗布されたペースト塗布層を設けている。前記電極触媒層の形成時に前記外周部位に生じたひび割れが前記ペースト塗布層により補修されている。
また、電極触媒層は、固体高分子電解質膜の一方の面に設けられる第1電極触媒層と、前記固体高分子電解質膜の他方の面に設けられ、前記第1電極触媒層よりも平面寸法が小さな第2電極触媒層と、を有することが好ましい。その際、電解質膜・電極構造体の外周を周回して樹脂枠部材が設けられるとともに、第1電極触媒層のペースト塗布層は、前記樹脂枠部材の枠形状の範囲内に設けられることが好ましい。
さらに、第2電極触媒層のペースト塗布層は、樹脂枠部材の枠形状の範囲内から内側にはみ出して設けられることが好ましい。
さらにまた、電極触媒層は、固体高分子電解質膜の一方の面に設けられる第1電極触媒層と、前記固体高分子電解質膜の他方の面に設けられ、前記第1電極触媒層よりも平面寸法が小さな第2電極触媒層と、を有することが好ましい。その際、電解質膜・電極構造体の外周を周回して樹脂枠部材が設けられるとともに、第1電極触媒層のペースト塗布層は、前記樹脂枠部材の端部内周端を跨いで設けられることが好ましい。
また、第1電極触媒層のペースト塗布層及び第2電極触媒層のペースト塗布層は、樹脂枠部材の枠形状の範囲内から内側にはみ出して設けられることが好ましい。
本発明によれば、電極触媒層が形成される際に発生するひび割れを覆って、前記電極触媒層の外周部位にのみ電解質成分を含むペーストが塗布され、ペースト塗布層が形成されている。電極触媒層には、先ず、外周部分にひび割れが発生し易いため、前記外周部分に前記ペーストを塗布することにより、前記ひび割れが前記電極触媒層の内側に向かって拡大することを抑制することができる。このため、簡単且つ経済的に、電極触媒層のひび割れを確実に補修することが可能になり、所望の発電性能及び耐久性を確保することができる。
本発明の第1の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。 前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。 前記燃料電池を構成する電解質膜・電極構造体のアノード側の平面図である。 前記電解質膜・電極構造体の他の構成を説明するアノード側の平面図である。 前記電解質膜・電極構造体の別の構成を説明するアノード側の平面図である。 前記電解質膜・電極構造体の製造方法において、前記アノード側の説明図である。 前記アノード側に高分子ペーストを塗布する際の説明図である。 前記製造方法において、カソード側の説明図である。 前記カソード側に高分子ペーストを塗布する際の説明図である。 前記製造方法において、固体高分子電解質膜に触媒層が転写される際の説明図である。 前記製造方法において、前記電解質膜・電極構造体が製造される際の説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る燃料電池の要部断面説明図である。 本発明の第3の実施形態に係る燃料電池の要部断面説明図である。 本発明の第4の実施形態に係る燃料電池の要部断面説明図である。 本発明の第5の実施形態に係る燃料電池の要部断面説明図である。 本発明の第6の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。 前記燃料電池の、図16中、XVII−XVII線断面説明図である。 本発明の第7の実施形態に係る燃料電池の要部分解斜視説明図である。 前記燃料電池の、図18中、XIX−XIX線断面説明図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池10は、矢印A方向に積層されて、例えば、車載用燃料電池スタックが構成され、図示しない燃料電池電気自動車に搭載される。
燃料電池10は、電解質膜・電極構造体12と、前記電解質膜・電極構造体12を挟持するアノード側セパレータ14及びカソード側セパレータ16とを備える。アノード側セパレータ14及びカソード側セパレータ16は、横長(又は縦長)の長方形状を有する。アノード側セパレータ14及びカソード側セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板や、カーボン部材等で構成される。
図2に示すように、電解質膜・電極構造体12は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するアノード電極20及びカソード電極22とを有する。
固体高分子電解質膜18は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質が使用される。アノード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに設けられる一方、カソード電極22は、前記固体高分子電解質膜18の他方の面18bに設けられる。アノード電極20は、固体高分子電解質膜18と同一の平面寸法に設定されるとともに、カソード電極22は、前記固体高分子電解質膜18及び前記アノード電極20よりも小さな平面寸法を有する。なお、アノード電極20とカソード電極22との大小関係は、逆に設定されてもよく、又は、前記アノード電極20と前記カソード電極22は、同一の平面寸法を有していてもよい。
アノード電極20は、固体高分子電解質膜18の面18aに接合される第1電極触媒層20aと、前記第1電極触媒層20aに積層される第1ガス拡散層20bとを備える。第1電極触媒層20a及び第1ガス拡散層20bは、同一の外形寸法を有するとともに、固体高分子電解質膜18と同一(又は同一未満)の外形寸法に設定される。
カソード電極22は、固体高分子電解質膜18の面18bに接合される第2電極触媒層22aと、前記第2電極触媒層22aに積層される第2ガス拡散層22bとを備える。第2電極触媒層22aの外周端部22aeは、第2ガス拡散層22bの外周端部22beよりも外方に突出するとともに、前記第2電極触媒層22aは、固体高分子電解質膜18の外形寸法よりも小さな外形寸法に設定される。
第1ガス拡散層20b及び第2ガス拡散層22bは、例えば、カーボンペーパー又はカーボンクロス、あるいは、金属メッシュ等の細孔を有するシート部材からなる。第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aは、例えば、白金粒子又は白金粒子や貴金属(ルテニウム、コバルト、パラジウム等)等の触媒を担持した触媒担体(カーボンや導電体等)により構成される。
電解質膜・電極構造体12は、固体高分子電解質膜18の外周を周回するとともに、アノード電極20及びカソード電極22に接合される樹脂枠部材24を備える。樹脂枠部材24は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーンゴム、フッ素ゴム又はEPDM(エチレンプロピレンゴム)等で構成される。
樹脂枠部材24の内側壁部24bには、カソード電極22の外周側に突出する薄肉状内側膨出部24aが一体に設けられる。内側膨出部24aは、カソード電極22と同一の肉厚、実質的には、第2ガス拡散層22bと同一の肉厚である厚さ(第2ガス拡散層22b上に下地層を設ける場合には、前記下地層の厚さも含む)を有していることが好ましい。
樹脂枠部材24の内側壁部24bと第2電極触媒層22aの外周端部22aeとの間に形成される隙間には、接着剤26の層が形成される。樹脂枠部材24の内周端部24aeと第2ガス拡散層22bの外周端部22beとの間には、隙間が形成され、この隙間には、接着剤26の層が形成される。接着剤26としては、例えば、シリコン系接着剤、アクリル系接着剤、フッ素系接着剤やホットメルト剤が使用される。
図3に示すように、アノード電極20では、第1電極触媒層20aの外周部位にのみ、電解質成分、例えば、イオン交換成分を含む高分子ペーストが塗布された第1ペースト塗布層28aが設けられる。第1ペースト塗布層28aは、後述するひび割れ52を覆って設けられるものであり、前記ひび割れ52の発生部位によって、第1電極触媒層20aの外周全周(図3)に額縁状に設けられる。図2に示すように、第1ペースト塗布層28aは、樹脂枠部材24の内側膨出部24aの範囲内、又は、第2ガス拡散層22bの外周端部22beよりも内側まで設けられる。第1の実施形態では、第1ペースト塗布層28aは、第2ガス拡散層22bの外周端部22beよりも内側まで設けられる。
なお、第1ペースト塗布層28aは、図4に示すように、第1電極触媒層20aの1つの長辺と1つの短辺とに設けてもよい。また、第1ペースト塗布層28aは、図5に示すように、第1電極触媒層20aの1つの短辺のみに(又は1つの長辺のみに)設けてもよい。
高分子ペーストは、フッ素系樹脂とカーボンと溶媒を混練したもの等が使用され、イオン交換成分を添加してもよい。なお、第1ガス拡散層20bには、第1電極触媒層20aが塗布される面に下地層(図示せず)を設けてもよい。下地層は、カーボンやファイバー等を純水、アルコール等で撹拌して塗布される。
カソード電極22では、図2に示すように、第2電極触媒層22aの外周部位にのみ、電解質成分、例えば、イオン交換成分を含む高分子ペーストが塗布された第2ペースト塗布層28bが設けられる。第2ペースト塗布層28bは、ひび割れ52を覆って設けられるものであり、前記ひび割れ52の発生部位によって、例えば、第2電極触媒層22aの外周全周に設けられる。
第2ペースト塗布層28bは、樹脂枠部材24の枠形状の範囲内から内側にはみ出して、すなわち、前記樹脂枠部材24の内周端部24aeから内方に距離tだけ突出して設けられる。第1ペースト塗布層28aの端部は、第2ペースト塗布層28bの端部よりも内方に距離sだけ突出して設けられる。第1ペースト塗布層28aの端部位置と第2ペースト塗布層28bの端部位置とは、積層方向(矢印A方向)に対して互いにずれていることが好ましい。
図1に示すように、燃料電池10の矢印B方向(図1中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔32a及び燃料ガス出口連通孔34bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔30aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給し、冷却媒体入口連通孔32aは、冷却媒体を供給し、燃料ガス出口連通孔34bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔32a及び燃料ガス出口連通孔34bは、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
燃料電池10の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体出口連通孔32b及び酸化剤ガス出口連通孔30bが設けられる。燃料ガス入口連通孔34aは、燃料ガスを供給し、冷却媒体出口連通孔32bは、冷却媒体を排出し、酸化剤ガス出口連通孔30bは、酸化剤ガスを排出する。燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体出口連通孔32b及び酸化剤ガス出口連通孔30bは、矢印C方向に配列して設けられる。
カソード側セパレータ16の電解質膜・電極構造体12に向かう面16aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとに連通する酸化剤ガス流路36が設けられる。
アノード側セパレータ14の電解質膜・電極構造体12に向かう面14aには、燃料ガス入口連通孔34aと燃料ガス出口連通孔34bとに連通する燃料ガス流路38が形成される。互いに隣接するアノード側セパレータ14の面14bとカソード側セパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとに連通する冷却媒体流路40が形成される。
図1及び図2に示すように、アノード側セパレータ14の面14a、14bには、このアノード側セパレータ14の外周端部を周回して、第1シール部材42が一体化される。カソード側セパレータ16の面16a、16bには、このカソード側セパレータ16の外周端部を周回して、第2シール部材44が一体化される。
図2に示すように、第1シール部材42は、電解質膜・電極構造体12を構成する樹脂枠部材24の外周縁部に当接する第1凸状シール42aと、カソード側セパレータ16の第2シール部材44に当接する第2凸状シール42bとを有する。第2シール部材44は、第1凸状シール42aと当接する面にセパレータ面方向に沿って平坦状の平面シールを構成する。なお、第2シール部材44には、第2凸状シール42bに代えて凸状シール(図示せず)を設ける一方、第1シール部材42は、平面シールにより構成してもよい。
第1シール部材42及び第2シール部材44には、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
次いで、電解質膜・電極構造体12を製造する方法について、以下に説明する。
先ず、図6に示すように、例えば、プラスチック製フィルムである第1転写用基材50aが用意され、この第1転写用基材50aには、アノード電極20を構成する第1電極触媒層20aが形成される。具体的には、白金粒子等の触媒粒子を担持した触媒担体に、電解質と純水又はアルコールが添加された溶媒を、スターラや超音波ホモジナイザー等により撹拌させてペーストが得られる。このペーストは、第1転写用基材50aに、例えば、コータ、スプレー、インクジェット又はスクリーン印刷等により塗工される。次に、乾燥処理(例えば、ヒータや熱風等の熱処理)を施すことにより、第1電極触媒層20aが作製される。
上記の作製時に、特に乾燥処理が施されることにより、図3に示すように、第1電極触媒層20aには、特に外周部位にひび割れ(ピンホール、割れ、ひびを含む)52が発生し易い。そこで、第1電極触媒層20aには、ひび割れ52が発生した部分、すなわち、外周部位のみを露呈させて、マスク54aが配置される。
さらに、図7に示すように、第1電極触媒層20aには、マスク54aを介して第1高分子ペースト28apが塗布又は転写される。第1の実施形態では、第1電極触媒層20aの外周部位のみに、枠状に周回して第1高分子ペースト28apが塗布される。なお、第1高分子ペースト28apが、刷毛やインクジェット等で塗布される際には、マスク54aを不要にすることができる。
一方、図8に示すように、第2転写用基材50bが用意され、この第2転写用基材50bには、カソード電極22を構成する第2電極触媒層22aが形成される。第2電極触媒層22aは、上記の第1電極触媒層20aと同様に形成される。
第2電極触媒層22aには、マスク54bが配置される。図9に示すように、第2電極触媒層22aの外周部位にのみ、マスク54bを介して枠状に周回する第2高分子ペースト28bpが塗布される。
次いで、図10に示すように、固体高分子電解質膜18の一方の面18aには、アノード電極20を構成する第1電極触媒層20aが重ねられ、第1転写用基材50aから転写される。このため、第1高分子ペースト28apは、第1電極触媒層20aの外周部位に含浸され、第1ペースト塗布層28aが形成されるとともに、前記第1電極触媒層20aが固体高分子電解質膜18の面18aに転写される。
固体高分子電解質膜18の他方の面18bには、カソード電極22を構成する第2電極触媒層22aが重ねられ、第2転写用基材50bから転写される。従って、第2高分子ペースト28bpは、第2電極触媒層22aの外周部位に含浸され、第2ペースト塗布層28bが形成されるとともに、前記第2電極触媒層22aが固体高分子電解質膜18の面18bに転写される。
そして、図11に示すように、第1電極触媒層20aには、第1ガス拡散層20bが重ねられるとともに、第2電極触媒層22aには、第2ガス拡散層22bが重ねられる。この状態で、ホットプレスや加熱ロール等により固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bにアノード電極20とカソード電極22とが熱転写され、一体化される。さらに、樹脂枠部材24が、アノード電極20及びカソード電極22に接合されて、電解質膜・電極構造体12が製造される。
ところで、電解質膜・電極構造体12は、上記の製造方法の他、種々の製造方法により製造することができる。
他の製造方法では、例えば、先ず、第1ガス拡散層20bに第1電極触媒層20aが形成される。そして、第1電極触媒層20aに第1高分子ペースト28apが塗布されて、前記第1電極触媒層20aの外周部位にのみ第1ペースト塗布層28aが形成される。一方、第2ガス拡散層22bに第2電極触媒層22aが形成される。さらに、第2電極触媒層22aに第2高分子ペースト28bpが塗布されて、前記第2電極触媒層22aの外周部位にのみ第2ペースト塗布層28bが形成される。
次に、固体高分子電解質膜18の一方の面18aには、アノード電極20を構成する第1電極触媒層20aが重ねられる。固体高分子電解質膜18の他方の面18bには、カソード電極22を構成する第2電極触媒層22aが重ねられる。この状態で、ホットプレスや加熱ロール等により固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bにアノード電極20とカソード電極22とが熱転写され、一体化される。
また別の製造方法では、先ず、第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aが、固体高分子電解質膜18に転写又は塗布形成される。次いで、固体高分子電解質膜18の一方の面18aには、第1高分子ペースト28apが枠状に塗布される。固体高分子電解質膜18の他方の面18bには、第2高分子ペースト28bpが枠状に塗布される。
上記により、固体高分子電解質膜18に第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aが形成される際に発生する前記第1電極触媒層20a及び前記第2電極触媒層22aのひび等を埋めることができる。
さらに、第1電極触媒層20aには、第1ガス拡散層20bが重ねられるとともに、第2電極触媒層22aには、第2ガス拡散層22bが重ねられる。この状態で、ホットプレスや加熱ロール等により固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bにアノード電極20とカソード電極22とが熱転写され、一体化される。
さらにまた別の製造方法では、固体高分子電解質膜18にアノード電極20及びカソード電極22が設けられたMEAを樹脂枠部材に一体化した後、前記アノード電極20の外周部に高分子ペーストが塗布される。高分子ペーストは、第1ガス拡散層20bを透過して第1電極触媒層20aに第1高分子ペースト28apとして塗布される。なお、第1ガス拡散層20bが設けられる前に、高分子ペーストの塗布を行ってもよい。
また、別の製造方法では、上記の各製造方法をアノード電極20とカソード電極22のいずれかに適用してもよく、又はこれらの製造方法を組み合わせてもよい。
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔34aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔32aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔30aからカソード側セパレータ16の酸化剤ガス流路36に導入され、矢印B方向に移動して電解質膜・電極構造体12のカソード電極22に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔34aからアノード側セパレータ14の燃料ガス流路38に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路38に沿って矢印B方向に移動し、電解質膜・電極構造体12のアノード電極20に供給される。
従って、各電解質膜・電極構造体12では、アノード電極20に供給される燃料ガスと、カソード電極22に供給される酸化剤ガスとが、第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22a内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
次いで、カソード電極22に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔30bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極20に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔34bに沿って矢印A方向に排出される。
また、冷却媒体入口連通孔32aに供給された冷却媒体は、アノード側セパレータ14とカソード側セパレータ16との間の冷却媒体流路40に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体12を冷却した後、冷却媒体出口連通孔32bから排出される。
この場合、第1の実施形態では、アノード電極20を構成する第1電極触媒層20aが形成される際、乾燥処理等によりひび割れ52が発生し易い(図3参照)。そこで、ひび割れ52を覆って、すなわち、第1電極触媒層20aの外周部位にのみ、第1高分子ペースト28apが塗布されて、第1ペースト塗布層28aが形成されている。第1高分子ペースト28apは、必要に応じて粘度の異なるものを複数回に亘って塗布してもよい。
このため、電極欠陥であるひび割れ52は、第1ペースト塗布層28aにより埋設され、前記電極欠陥が第1電極触媒層20aの内側に拡大進行することがなく、耐久性の低下を抑制することができる。従って、簡単且つ経済的に、第1電極触媒層20aの電極欠陥を確実に補修することが可能になり、所望の発電性能及び耐久性を確保することができるという効果が得られる。
一方、カソード電極22では、第2電極触媒層22aが形成される際にひび割れ52が発生した前記第2電極触媒層22aには、外周部位にのみ、第2高分子ペースト28bpが塗布されて、第2ペースト塗布層28bが形成されている。これにより、簡単且つ経済的に、第2電極触媒層22aの電極欠陥を確実に補修することが可能になり、所望の発電性能及び耐久性を確保することができるという効果が得られる。なお、第1ペースト塗布層28a及び第2ペースト塗布層28bは、電極欠陥の発生の有無によって設ければよく、例えば、いずれか一方のみを設けてもよい。
図12は、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池60aの要部断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても、同様である。
燃料電池60aは、アノード側セパレータ14及びカソード側セパレータ16に挟持される電解質膜・電極構造体62aを備える。電解質膜・電極構造体62aでは、アノード電極20を構成する第1電極触媒層20aの外周部位にのみ第1ペースト塗布層28asが設けられる。電解質膜・電極構造体62aでは、カソード電極22を構成する第2電極触媒層22aの外周部位にのみ第2ペースト塗布層28bsが設けられる。
第1ペースト塗布層28asは、第1の実施形態の第1ペースト塗布層28aよりも幅狭に構成される。具体的には、第1ペースト塗布層28asは、積層方向に対して接着剤26に重なる位置に設けられる。第2ペースト塗布層28bsは、第1の実施形態の第2ペースト塗布層28bよりも幅狭に構成される。具体的には、第2ペースト塗布層28bsは、積層方向に対して樹脂枠部材24の枠形状の範囲内に設けられる。
このように構成される第2の実施形態では、簡単且つ経済的に、第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aの電極欠陥を確実に補修することが可能になる。従って、所望の発電性能及び耐久性を確保することができる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
図13は、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池60bの要部断面説明図である。
燃料電池60bは、アノード側セパレータ14及びカソード側セパレータ16に挟持される電解質膜・電極構造体62bを備える。電解質膜・電極構造体62bでは、アノード電極20を構成する第1電極触媒層20aの外周部位にのみ第1ペースト塗布層28aが設けられる。電解質膜・電極構造体62bでは、カソード電極22を構成する第2電極触媒層22aの外周部位にのみ第2ペースト塗布層28bsが設けられる。第1ペースト塗布層28aの端部は、第2ペースト塗布層28bsの端部よりも内方に距離s1だけ突出して設けられる。
このように構成される第3の実施形態では、簡単且つ経済的に、第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aの電極欠陥を確実に補修することが可能になる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
図14は、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池60cの要部断面説明図である。
燃料電池60cは、アノード側セパレータ14及びカソード側セパレータ16に挟持される電解質膜・電極構造体62cを備える。電解質膜・電極構造体62cでは、アノード電極20を構成する第1電極触媒層20aの外周部位にのみ幅狭な第1ペースト塗布層28as1が設けられる。電解質膜・電極構造体62cでは、カソード電極22を構成する第2電極触媒層22aの外周部位にのみ幅狭な第2ペースト塗布層28bs1が設けられる。
第1ペースト塗布層28as1は、樹脂枠部材24の範囲内に、より具体的には、第2電極触媒層22aの外周端部22aeよりも外方で終端する。第2ペースト塗布層28bs1は、樹脂枠部材24の内周端を跨いで設けられる。第1ペースト塗布層28as1と第2ペースト塗布層28bs1とは、積層方向から見て互いに重なり部を設けていない。
このように構成される第4の実施形態では、簡単且つ経済的に、第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aの電極欠陥を確実に補修することが可能になる等、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
図15は、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池60dの要部断面説明図である。
燃料電池60dは、アノード側セパレータ14及びカソード側セパレータ16に挟持される電解質膜・電極構造体62dを備える。電解質膜・電極構造体62dでは、アノード電極20を構成する第1電極触媒層20aの外周部位(第5の実施形態では、外周端部は含まない)にのみ幅狭な第1ペースト塗布層28as2が設けられる。電解質膜・電極構造体62dでは、カソード電極22を構成する第2電極触媒層22aの外周部位(第5の実施形態では、外周端部は含まない)にのみ幅狭な第2ペースト塗布層28bs2が設けられる。
第1ペースト塗布層28as2は、樹脂枠部材24の内周端を跨いで設けられる。第2ペースト塗布層28bs2は、樹脂枠部材24の内周端を跨いで設けられる。第1ペースト塗布層28as2と第2ペースト塗布層28bs2とは、積層方向から見て互いに重なり部を有する。具体的には、第2ペースト塗布層28bs2は、第1ペースト塗布層28as2よりも幅狭に構成されるとともに、前記第2ペースト塗布層28bs2は、積層方向から見て前記第1ペースト塗布層28as2の範囲内に収容される。
このように構成される第5の実施形態では、第1ペースト塗布層28as2と第2ペースト塗布層28bs2とは、樹脂枠部材24の内周端を跨いで設けられており、前記内周端による応力の上昇を緩和することができる。その際、簡単且つ経済的に、第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aの電極欠陥を確実に補修することが可能になる等、上記の第1〜第4の実施形態と同様の効果が得られる。
図16は、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池70の要部分解斜視説明図である。燃料電池70は、電解質膜・電極構造体72と、前記電解質膜・電極構造体72を挟持するカソード側セパレータ74及びアノード側セパレータ76とを備える。カソード側セパレータ74には、酸化剤ガス流路36が設けられる一方、アノード側セパレータ76には、燃料ガス流路38が設けられる。
図16及び図17に示すように、電解質膜・電極構造体72は、固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するアノード電極20及びカソード電極22とを有する。アノード電極20は、カソード電極22よりも大きな平面寸法を有し、第1電極触媒層20a及び第1ガス拡散層20bは、固体高分子電解質膜18と略同一の平面寸法に設定される。カソード電極22は、第2電極触媒層22a及び第2ガス拡散層22bが同一の平面寸法で且つ固体高分子電解質膜18よりも小さな平面寸法に設定される。
アノード電極20では、第1電極触媒層20aの外周部位にのみ、電解質成分、例えば、イオン交換成分を含む高分子ペーストが塗布された第1ペースト塗布層78aが設けられる。カソード電極22では、第2電極触媒層22aの外周部位にのみ、電解質成分、例えば、イオン交換成分を含む高分子ペーストが塗布された第2ペースト塗布層78bが設けられる。
このように構成される第6の実施形態では、簡単且つ経済的に、第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aの電極欠陥を確実に補修することが可能になる。これにより、所望の発電性能及び耐久性を確保することができる等、上記の第1〜第5の実施形態と同様の効果が得られる。
図18は、本発明の第7の実施形態に係る燃料電池80の要部分解斜視説明図である。燃料電池80は、電解質膜・電極構造体82と、前記電解質膜・電極構造体82を挟持するカソード側セパレータ84及びアノード側セパレータ86とを備える。カソード側セパレータ84には、酸化剤ガス流路36が設けられる一方、アノード側セパレータ86には、燃料ガス流路38が設けられる。
図18及び図19に示すように、電解質膜・電極構造体82は、固体高分子電解質膜18Lと、前記固体高分子電解質膜18Lを挟持するアノード電極20及びカソード電極22とを有する。固体高分子電解質膜18Lは、カソード側セパレータ84及びアノード側セパレータ86よりも大きな外形寸法に設定される。
アノード電極20とカソード電極22とは、同一の平面寸法を有する。アノード電極20は、第1電極触媒層20a及び第1ガス拡散層20bが略同一の平面寸法に設定される。カソード電極22は、第2電極触媒層22a及び第2ガス拡散層22bが同一の平面寸法に設定される。
アノード電極20では、第1電極触媒層20aの外周部位にのみ、電解質成分、例えば、イオン交換成分を含む高分子ペーストが塗布された第1ペースト塗布層88aが設けられる。カソード電極22では、第2電極触媒層22aの外周部位にのみ、電解質成分、例えば、イオン交換成分を含む高分子ペーストが塗布された第2ペースト塗布層88bが設けられる。
このように構成される第7の実施形態では、簡単且つ経済的に、第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aの電極欠陥を確実に補修することが可能になる。これにより、所望の発電性能及び耐久性を確保することができる等、上記の第1〜第6の実施形態と同様の効果が得られる。
10、60a〜60d、70、80…燃料電池
12、62a〜62d、72、82…電解質膜・電極構造体
14、16、74、76、84、86…セパレータ
18、18L…固体高分子電解質膜 18a、18b…面
20…アノード電極 20a、22a…電極触媒層
20b、22b…ガス拡散層 22…カソード電極
24…樹脂枠部材 24a…内側膨出部
24b…内側壁部 26…接着剤
28a、28as、28as1、28as2、28b、28bs、28bs1、28bs2、78a、78b、88a、88b…ペースト塗布層
30a…酸化剤ガス入口連通孔 30b…酸化剤ガス出口連通孔
32a…冷却媒体入口連通孔 32b…冷却媒体出口連通孔
34a…燃料ガス入口連通孔 34b…燃料ガス出口連通孔
36…酸化剤ガス流路 38…燃料ガス流路
40…冷却媒体流路 42、44…シール部材

Claims (5)

  1. 固体高分子電解質膜の両側の面に、それぞれ電極触媒層を含む電極が設けられた電解質膜・電極構造体を備える燃料電池であって、
    前記電解質膜・電極構造体は、前記電極触媒層の外周部位にのみ、イオン交換成分を含むペーストが塗布されたペースト塗布層を設け
    前記電極触媒層の形成時に前記外周部位に生じたひび割れが前記ペースト塗布層により補修されていることを特徴とする燃料電池。
  2. 請求項1記載の燃料電池において、前記電極触媒層は、前記固体高分子電解質膜の一方の面に設けられる第1電極触媒層と、
    前記固体高分子電解質膜の他方の面に設けられ、前記第1電極触媒層よりも平面寸法が小さな第2電極触媒層と、
    を有し、
    電解質膜・電極構造体の外周を周回して樹脂枠部材が設けられるとともに、
    前記第1電極触媒層の前記ペースト塗布層は、前記樹脂枠部材の枠形状の範囲内に設けられることを特徴とする燃料電池。
  3. 請求項2記載の燃料電池において、前記第2電極触媒層の前記ペースト塗布層は、前記樹脂枠部材の枠形状の範囲内から内側にはみ出して設けられることを特徴とする燃料電池。
  4. 請求項1記載の燃料電池において、前記電極触媒層は、前記固体高分子電解質膜の一方の面に設けられる第1電極触媒層と、
    前記固体高分子電解質膜の他方の面に設けられ、前記第1電極触媒層よりも平面寸法が小さな第2電極触媒層と、
    を有し、
    電解質膜・電極構造体の外周を周回して樹脂枠部材が設けられるとともに、
    前記第1電極触媒層の前記ペースト塗布層は、前記樹脂枠部材の端部内周端を跨いで設けられることを特徴とする燃料電池。
  5. 請求項2記載の燃料電池において、前記第1電極触媒層の前記ペースト塗布層及び前記第2電極触媒層の前記ペースト塗布層は、前記樹脂枠部材の枠形状の範囲内から内側にはみ出して設けられることを特徴とする燃料電池。
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