以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、以下の説明において、「前方」、「後方」または「後端」などの前後関係を示す用語は、特に区別する場合を除いて、車長方向Lにおける方向または位置関係を示すものとする。
<<1.背景>>
本発明の各実施形態に係る車両前部構造の構成について説明する前に、本発明に想到した背景について説明する。
図9は、従来の車両前部構造の概略構成を示す斜視図である。図9に示すように、車両前部構造91は、骨格部材92、92、およびダッシュロアパネル93を備える。
骨格部材92は、車長方向Lに伸びて設けられるフロントサイドメンバまたはフロアメンバの少なくともいずれかのフレーム部材である。また、骨格部材92は、フロントサイドメンバの後部とフロアメンバの前部とを接合することにより得られる部材であってもよい。この骨格部材92は、上方側が開放された溝形状部92Aを有し、フランジ921を備える。また、骨格部材92は、車両後方から前方にかけて車高方向Vにオフセットする湾曲形状が設けられている。
ダッシュロアパネル93は、車両のフロントボックスとキャビンとを仕切る部材である。すなわち、ダッシュロアパネル93よりも車両前方側にはフロントボックスが存在し、ダッシュロアパネル93よりも車両後方側にはキャビンが存在する。ダッシュロアパネル93は骨格部材92、92の上部に設けられる。このダッシュロアパネル93は、傾斜壁94、および縦壁95を有する。図9に示すように、傾斜壁94の後端から途中までの部分は、骨格部材92の湾曲形状に沿って骨格部材92に当接している。また、傾斜壁94の後部の途中から前部にかけて、骨格部材92から離隔する傾斜が傾斜壁94に設けられる。なお、傾斜壁94の後端は、不図示のフロアパネルと接合されている。
図9に示すように、車両前部構造91は、骨格部材92とダッシュロアパネル93とが接合されることにより形成されている。具体的には、フランジ921と傾斜壁94の後部とが、図9の星印により示される箇所において、スポット溶接等の接合手段により接合されることにより(接合された部分を接合部96と称する)、車両前部構造91が形成される。
図9に示す車両前部構造91に対して車両前方から衝突を受けた場合、当該衝突による荷重は骨格部材92およびダッシュロアパネル93に作用する。骨格部材92は衝突荷重による圧潰により衝突エネルギを吸収する役割を果たす。
また、電柱など骨格部材92に直接的に衝突する確率の低い衝突体が車両に衝突する場合、または任意の衝突体による衝突をフロントボックスに収納されたエンジン等の装置が受けた場合、ダッシュロアパネル93に主体的に衝突荷重が作用する場合がある。この場合、ダッシュロアパネル93に主体的に作用する衝突荷重は、接合部96を介してダッシュロアパネル93から骨格部材92に伝達される。そうすると、当該衝突荷重による衝突エネルギを骨格部材92が吸収するので、骨格部材92に対して直接的に衝突荷重が作用しない場合においても、車両の衝突安全性を維持することができる。
さらに、本発明者らはダッシュロアパネル93を高強度鋼板により成形することにより、ダッシュロアパネル93が衝突による衝撃力を受け止め、ダッシュロアパネル93が塑性変形することにより衝突エネルギの吸収することもできると考えた。
しかしながら、車体の高強度化および軽量化のために、骨格部材92およびダッシュロアパネル93が薄板の高強度鋼板により形成される場合、鋼板の炭素含有量の増加に伴う溶接の難化、または硬度の増加に伴う接合部分の応力集中等により、接合強度が低下する可能性が高い。そのため、従来の車両前部構造91では、ダッシュロアパネル93に作用された衝突荷重が接合部96を介して骨格部材92に伝達される際に、当該接合部96の接合強度が不足し、接合部96が破断してしまう可能性が高い。そうすると、ダッシュロアパネル93は衝突荷重を受けてキャビン側に撓んでしまうおそれがある。したがって、衝突体または、当該衝突体による衝突荷重を受けたエンジン等の装置が、ダッシュロアパネル93を車両後方側に撓ませつつ、キャビン側に進入する可能性が高い。すなわち、車両の衝突安全性が損なわれる可能性がある。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、本発明者らは、ダッシュロアパネルと骨格部材との接合部分の破断モードを、剥離方向の破断モードではなくせん断方向の破断モードにすることにより、接合強度を高め、接合部分の破断を生じさせにくくすることが可能であることに想到した。これにより、ダッシュロアパネルによる衝突エネルギの吸収機能を発揮させることが可能であると本発明者らは見出した。そこで、本発明者らは、ダッシュロアパネルによる衝突エネルギの吸収機能を実現させることが可能な車両前部構造を開発した。その結果、衝突安全性を維持しつつ、車体構造全体の軽量化を達成できることが示された。以下、本発明の一実施形態に係る車両前部構造の構成について説明する。
<<2.実施形態>>
<2.1.構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る車両前部構造1の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両前部構造1は、骨格部材2、2、およびダッシュロアパネル3を備える。
骨格部材2は、車両の左右において、車長方向Lに伸びて一対設けられる。この骨格部材2は、例えば、フロントサイドメンバまたはフロアメンバの少なくともいずれかの部材である。本実施形態に係る骨格部材2は、フロントサイドメンバの後端とフロアメンバの前端とが接合されることにより形成される部材である。当該フロントサイドメンバと当該フロアメンバとの車長方向Lにおける接合位置は、特に限定されない。図1に示すように、本実施形態に係る骨格部材2は、上方側が開放された溝形状部2Aを有する。また、骨格部材2は、車両後方から前方にかけて車高方向Vにオフセットする湾曲形状が設けられている。このような骨格部材2は、例えば鋼板等の金属板により形成される。
ダッシュロアパネル3は、車両のフロントボックスとキャビンとを仕切る部材である。すなわち、ダッシュロアパネル3よりも車両前方側にはフロントボックスが存在し、ダッシュロアパネル3よりも車両後方側にはキャビンが存在する。当該フロントボックスには、例えばエンジン、モータまたはバッテリー等の各種装置が収納され得る。すなわち、フロントボックスは、エンジンルーム、またはモータルームの一例である。また、当該フロントボックスは、荷物等を積載するトランクルームであってもよい。また、当該キャビンは、乗員が搭乗する空間である。当該ダッシュロアパネル3は、骨格部材2、2の上部に設けられる。
このダッシュロアパネル3は、傾斜壁4、および縦壁5を有する。図1に示すように、傾斜壁4の車長方向Lにおける後部(以下、単に傾斜壁4の後部とも称する)は、骨格部材2のフランジに当接する形状を有している。傾斜壁4の後端から途中までの部分は、骨格部材2の湾曲形状に沿って骨格部材2に当接している。また、傾斜壁4の後部の途中から傾斜壁4の車長方向Lにおける前部にかけて、骨格部材2から離隔する傾斜が傾斜壁4に設けられる。なお、傾斜壁4の後端は、不図示のフロアパネルと接合されている。
また、本実施形態に係るダッシュロアパネル3の傾斜壁4には、溝部4Aが車長方向Lに沿ってフロントボックス側に設けられる。この溝部4Aは、骨格部材2、2の溝形状部2Aの内側に嵌合するように傾斜壁4に設けられる。溝部4Aは、図1に示すように傾斜壁4の車長方向Lに縦断して設けられてもよいし、傾斜壁4の後部に部分的に設けられてもよい。詳細は後述するが、溝部4Aは、少なくとも骨格部材2の溝形状部2Aに部分的に嵌合するように設けられれば、溝部4Aの車長方向Lの長さは特に限定されない。溝部4Aは、例えば、ダッシュロアパネル3のプレス成形等による成形時に設けられる。
なお、図1には示されていないが、例えば、傾斜壁4の車幅方向Wの中央部には、上方に向かって膨出するトンネル部が形成されてもよい。このトンネル部は、フロントボックスにエンジンが収納されている場合において、エンジンから排出される排気ガスを通過させる排気管、または後部車輪を駆動させるための駆動軸を車両下部に通すために設けられ得る。
また、縦壁5の上端は、不図示のダッシュアッパパネルと接合され得る。この場合、ダッシュロアパネル3およびダッシュアッパパネルによりダッシュパネルが形成される。また、縦壁5は、ダッシュアッパパネルと一体化された部分であってもよい。この場合、ダッシュロアパネルがダッシュパネルとして形成される。また、ダッシュロアパネル3の強度向上のために、例えば、不図示のダッシュクロスメンバが車幅方向Wに沿って縦壁5の前面側に設けられてもよい。
このようなダッシュロアパネル3は、例えば、平板状の金属板がプレス成形等の成形がなされることにより得られる。具体的には、ダッシュロアパネル3は、鋼板をプレス成形することにより得られる。当該鋼板は、引張強度が340MPa以上のハイテン材であることが好ましい。また、当該鋼板の引張強度は、980MPa以上であることがさらに好ましい。また、ダッシュロアパネル3の板厚は、1.0mm以上かつ2.0mm以下であることが好ましい。当該板厚が1.0mmより大きく2.0mmより小さければ、強度を確保しつつ、車体の軽量化を十分に実現することが可能である。当該板厚は、要求される強度および重量に応じて適宜設定される。
図1に示すように、本実施形態に係る車両前部構造1は、ダッシュロアパネル3の溝部4Aが骨格部材2の内側に嵌合され、溝部4Aの側壁と骨格部材2の側壁とがスポット溶接等により接合されることにより形成される。以下、骨格部材2とダッシュロアパネル3との接合について説明する。
図2は、図1のII−II切断線における骨格部材2およびダッシュロアパネル3の断面図である。図2に示すように、骨格部材2は、底壁21と、底壁21から直立する一対の側壁22、22と、側壁22から車幅方向Wに沿って外側に伸びる一対のフランジ23、23とを有する。また、ダッシュロアパネル3の傾斜壁4には、底壁41と、底壁41から直立する一対の側壁42により形成される溝部4Aが設けられる。
なお、骨格部材2の底壁21および溝部4Aの底壁41の形状は特に限定されない。例えば、底壁21および底壁41は、図2に示すように平坦状であってもよいし、凹凸があってもよい。また、底壁21および底壁41は、複数の面を有していてもよい。この場合、面と面との間には、例えば、曲折した部分が設けられていてもよい。
骨格部材2の対向する一対の側壁22は車長方向に延在し、また概ね車高方向に延在する。側壁22を完全に車高方向に一致して延在させることは、理想的であるが実際は難しい。また、車長方向の断面において、骨格部材2の対向する一対の側壁22のなす角度は、0度以上かつ30度以下であることが好ましい。このように骨格部材2の溝形状部2Aには、底壁21および一対の側壁22が設けられる。側壁22が車高方向に延在するため、骨格部材2と溝部4Aの接合強度を確保することができる。そのメカニズムについては後述する。また、溝部4Aの対向する一対の側壁42のなす角度についても、同様である。すなわち、溝部4Aには、底壁41および一対の側壁42が設けられる。なお、断面が三角形である溝形状など、底壁21(41)を有しない(すなわち底面が存在しない)骨格部材および傾斜壁の溝部は、本発明の範疇には含まれない。
図2に示すように、骨格部材2の側壁22の内側面22aと、ダッシュロアパネル3の溝部4Aの側壁42の外側面42aとが当接している。このとき、図中の三角形で示す箇所において、側壁22および側壁42が接合される。側壁22と側壁52とが接合される部分を、接合部6と称する。なお、図1では、星印により示される箇所に接合部6がそれぞれ形成されている。当該接合部6を実現する手段としては、例えば、スポット溶接による接合であってもよい。この場合、接合部6は、車長方向Lに沿って、所定の間隔を空けて設けられ得る。当該所定の間隔は、骨格部材2のサイズおよび材質等により適宜設定される。また、側壁22および側壁42の高さ方向(略鉛直方向)における接合部6の位置は、凡そ中間位置であることが好ましい。これにより、接合面積を最大限確保することができる。
なお、接合部6を実現するスポット溶接以外の接合技術として、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接、MIG(メタル・イナート・ガス)溶接、プラズマ溶接のようなアーク溶接、レーザ溶接または電子ビーム溶接等の公知の溶接技術が用いられてもよい。また、接合部6を実現する接合技術として、リベットまたはボルト等を用いた締結技術、カシメ接合による接合技術、または接着剤等による接着技術が用いられてもよい。
かかる接合部6を実現する手段の他の例については、後述する。
なお、ダッシュロアパネル3の傾斜壁4のうち、図1に示す一対の溝部4A、4Aの間に位置する中間部4Bには、中間部4Bの車幅方向外側の部分(例えば、溝部4Aの外側に位置する外板部4C)の剛性よりも高い剛性を有する領域(高剛性領域)が設けられてもよい。当該高剛性領域は、少なくとも、中間部4Bの車幅方向における一端401から他端402にかけて設けられ得る。後述するように、当該高剛性領域は、中間部4Bの全部または一部に設けられてもよい。
中間部4Bの高剛性領域における高剛性化の具体的な手段については、後述する。
また、中間部4Bには、中間部4Bの車幅方向外側の部分(例えば、溝部4Aの外側に位置する外板部4C)の引張強度よりも高い引張強度を有する領域(高強度領域)が設けられてもよい。当該高強度領域は、少なくとも、中間部4Bの車幅方向における一端401から他端402にかけて設けられ得る。後述するように、当該高強度領域は、中間部4Bの全部または一部に設けられてもよい。
かかる高強度領域を有する中間部4Bを含むダッシュロアパネル3は、例えば、中間部4Bに相当する部分の引張強度を相対的に高くした鋼板部を含むテーラードブランクをプレス加工することにより得られる。
<2.2.作用および効果>
図3は、本実施形態に係るダッシュロアパネル3に衝突荷重Fが作用した際のダッシュロアパネル3の挙動の一例を示す図である。傾斜壁4に設けられた溝部4Aの側壁と骨格部材2の側壁とを当接させ、スポット溶接を用いて接合部6a〜6cを形成することにより、ダッシュロアパネル3と骨格部材2とが接合される。
そうすると、衝突荷重Fが車両前方からダッシュロアパネル3に対して主体的に作用した場合、ダッシュロアパネル3は骨格部材2から離反するような変形モードを示す。この場合、ダッシュロアパネル3の溝部4Aの側壁42と骨格部材2の側壁22との接合部6における接合面の面内方向に引っ張られる力(せん断力)が、ダッシュロアパネルおよび骨格部材に生じる。すると、いわゆるせん断破断モードのように、当該接合面が面内方向にずれるような挙動が接合部6において示される。
一方、図9に示した車両前部構造1では、ダッシュロアパネル93は骨格部材92のフランジ921を介して接合されている。すると、ダッシュロアパネル93に対して車両前方から衝突荷重が作用した場合、ダッシュロアパネル93は骨格部材92から離反する方向に変形するモードを示す。この場合、ダッシュロアパネル93および骨格部材92の接合面に直交する方向に引っ張られる力がダッシュロアパネル93および骨格部材92に生じる。すると、いわゆるプラグ破断モードのように、当該接合面が剥離するような挙動が接合部96において示される。
一般的に、一の接合部の引張せん断強さ(Tensile Shear Strength:TSS)は、十字引張強さ(Cross Tension Strength:CTS)よりも高い傾向にある。つまり、せん断破断モードに関連する接合面のせん断方向の引張強さは、プラグ破断モードに関連する接合面の剥離方向の引張強さよりも優位にある。本実施形態に係る車両前部構造1においては、骨格部材2の側壁とダッシュロアパネル3の溝部4Aの側壁とを接合することにより、接合部6においてせん断破断モードを生じさせることが可能となる。すなわち、ダッシュロアパネル3に対して衝突荷重が作用した際に、プラグ破断モードではなくせん断破断モードの挙動が示されるので、接合部6の接合強度が実質的に増加する。したがって、接合部6の破断を生じさせにくくすることができる。よって、骨格部材2とダッシュロアパネル3の剥離が生じにくくなる。
この場合、図3に示すように、ダッシュロアパネル3に対して衝突荷重Fが車両前方から作用した際において、接合部6の接合強度を高めることができる。つまり、接合部6の破断を生じにくくさせることができる。そうすると、高い衝突荷重Fがダッシュロアパネル3に対して作用しても、接合部6の破断が生じず、骨格部材2が接合部6を介してダッシュロアパネル3を十分に支持する。これにより、衝突荷重を受けたダッシュロアパネル3は、キャビン側へ撓まず、当該衝突荷重を受け止めて塑性変形し得る。これによりダッシュロアパネル3により衝突エネルギを吸収することができる。したがって、キャビン側への衝撃力の伝達および衝突体等の進入を防ぐことができる。よって、車体の衝突安全性を高めることができる。
なお、鋼板の高強度化および軽量化にしたがって、せん断破断モードがプラグ破断モードよりも、引張強度に関してさらに優位となることが本発明者らにより示された。特に、引張強度が780MPa以上である鋼板について、上述した2つの破断モード間における引張強さの差異が顕著に大きいことが示された。つまり、ダッシュロアパネル3を形成する鋼板を高強度化および軽量化することにより、さらに本実施形態に係る接合部6の接合強度が増加するので、接合破断を生じさせにくくすることが可能となる。よって、ダッシュロアパネル3を形成する鋼板が高強度化および軽量化されることにより、本実施形態に係る車両前部構造により発揮される衝突安全性がさらに高くなる。
なお、せん断破断モードのみを生じさせるためには、骨格部材2の対向する一対の側壁22が車高方向に延在し、溝部4Aの一対の側壁42も車高方向に延在するのが理想である。すなわち、骨格部材2の対向する一対の側壁22同士のなす角度、および溝部4Aの一対の側壁42同士のなす角度は、どちらも0度であることが好ましい。しかしながら、実際の溝形状の加工においては、プレス成形等により製造するとスプリングバック等が生じ得るため、一対の側壁22(一対の側壁42)のなす角度は0度より大きくなる場合がある。すなわち、一対の側壁22(一対の側壁42)を完全に車高方向と一致して延在させるのは難しい。この場合においても、一対の側壁22(一対の側壁42)のなす角度が0度以上かつ30度以下であれば、せん断破断モードが主体となるため、接合強度を実質的に向上させることが可能となる。
また、中間部4Bの車幅方向における一端401から他端402にかけて中間部4Bに高剛性領域を設けることにより、ダッシュロアパネル3のうち大部分の面積を占める中間部4Bがねじれにくくなる。この場合、衝突荷重Fが車両前方から作用しても、ダッシュロアパネル3がねじれにくいので、一対の骨格部材2も相対的にねじれにくくなる。そうすると、衝突時に骨格部材2がダッシュロアパネル3により確実に拘束される。これにより、骨格部材2の変形モードが安定する。よって、車両前部構造1の衝突安全性を最大限発揮させることが可能となる。
さらに、中間部4Bに高剛性領域を設けることにより、防音効果を得ることができる。これにより、中間部4Bがロードノイズ等の騒音や振動を遮蔽するので、車両内部に騒音や振動を伝わりにくくすることができる。よって、車両内部の居住性が向上し得る。
また、中間部4Bの引張強度を高くすることにより、ダッシュロアパネル3のうち中間部4Bの部分に車両前方から物体が衝突した場合であっても、中間部4Bが車内方向への上記物体の侵入を防ぐことができる。さらに、中間部4Bに高剛性領域が設けられている場合において、中間部4Bの引張強度を高くすることにより、中間部4Bの剛性を維持できる弾性変形の可能な範囲を広げることができる。これにより、骨格部材2が相対的にねじれにくくなる。よって、車両前部構造1の衝突安全性をより高くすることができる。
<2.3.変形例>
なお、本発明は上記実施形態に示した例に限られないことは言うまでもない。例えば、図2および図3に示したように、溝部4Aの底壁41は、骨格部材2の底壁21に対して部分的に当接しているが、本発明はかかる例に限定されない。より具体的には、溝部4Aの底壁41は骨格部材2の底壁21に対して車長方向Lにわたって当接してもよいし、底壁41は底壁21に対して当接していなくてもよい。ただし、溝部4Aの側壁42と骨格部材2の側壁22とをスポット溶接等により接合させるために、溝部4Aの深さ(側壁42の高さ)は十分確保することが好ましい。溝部4Aの深さが大きいほど強度は向上し、溝部4Aの深さが小さいほど構造の軽量化を図ることができるためである。具体的には、溝部4Aの深さは、15mm以上であることが好ましい。溝部4Aの深さは、要求される強度および重量に応じて適宜設定される。また、底壁41が底壁21に対して当接している場合、その当接箇所においてさらにスポット溶接等により接合されてもよい。これにより、さらに接合強度を高めることができる。また、骨格部材2のフランジ23が傾斜壁4と接合されてもよい。これにより、さらに接合強度を高めることができる。なお、フランジ23は傾斜壁4と必ずしも当接していなくてもよい。
また、骨格部材2およびダッシュロアパネル3の溝部4Aの、車長方向Lに直交する断面における断面形状は、図2に示すような形状に限定されない。例えば、骨格部材2および溝部4Aの断面形状は、底壁が曲面であるU字型、または側壁が傾斜しているV字形等であってもよい。骨格部材2の側壁22と溝部4Aの側壁42とが接合部6を介して接合されれば、底壁の形状など、骨格部材2および溝部4Aの断面形状は特に限定されない。また、骨格部材2の断面形状と溝部4Aの断面形状とは、必ずしも同一または相似でなくてもよい。
また、溝部4Aの内方に、乗員の足や異物が入り込まないように、ダッシュロアパネル3の溝部4Aの上部に蓋部材が設けられてもよい。
<2.4.高剛性化の具体例>
次に、本実施形態に係る車両前部構造1における、ダッシュロアパネル3の中間部4Bに高剛性領域が設けられる場合の、当該高剛性領域の高剛性化の具体的な手法について説明する。
図4Aは、本実施形態に係る中間部4Bに設けられた高剛性領域410の第1の例を示す図である。図4Aに示すように、高剛性領域410は、中間部4Bの車幅方向における一端401から他端402にかけて全面に設けられ得る。高剛性領域410がこのように設けられることにより、中間部4Bの両端の相対的なねじれを抑制することができる。そうすると、一対の骨格部材2の相対的なねじれも抑制される。これにより、衝突時の衝撃をより多く吸収することが可能となる。
図4Bは、本実施形態に係る中間部4Bに設けられた高剛性領域410の第2の例を示す図である。図4Bに示すように、中間部4Bには複数の高剛性領域410a、410bが設けられてもよい。このように、中間部4Bの一部にだけ高剛性領域410が設けられてもよい。また、高剛性領域410は、図4Bに示すように、車長方向に並列して複数設けられてもよい。また、複数の高剛性領域410は、中間部4B上において、交差するように設けられてもよい。要するに、高剛性領域410は、中間部4Bの少なくとも一部において、車幅方向における一端から他端に繋がるように設けられていればよい。同様に、高強度領域が中間部4Bの少なくとも一部において、車幅方向における一端から他端に繋がるように設けられていればよい。
高剛性領域410の高剛性化は、以下に示す手段により実現され得る。例えば、高剛性領域410における金属板の板厚が、ダッシュロアパネル3における高剛性領域410以外の部分の板厚よりも大きくてもよい。本実施形態では、高剛性領域410における金属板の板厚が、中間部4Bの外側の部分(例えば外板部4C)の板厚よりも大きくてもよい。これにより、高剛性領域410における剛性を高めることができる。金属板の板厚が相対的に大きい高剛性領域410を含むダッシュロアパネル3は、例えば、テーラードブランクまたはテーラーロールドブランクにより実現され得る。
また、高剛性領域410における金属板には、樹脂からなるシート部材が接合されていてもよい。かかるシート部材は、高剛性領域410における金属板の片面または両面に接合され得る。金属板のいずれか片面にシート部材が接合される場合、当該シート部材は、車両の内側または外側のいずれに接合されてもよい。かかる樹脂からなるシート部材を高剛性領域410における金属板に接合することにより、高剛性領域410の剛性を高めることができる。
シート部材を形成する樹脂は、例えば、発泡硬化型の樹脂であることが好ましい。また、かかる樹脂は、制振性能を備えることがさらに好ましい。シート部材と金属板との接合方法は特に限定されない。例えば、シート部材を形成する樹脂が発泡硬化型の樹脂である場合、金属板の表面上に形成される樹脂の接着力によりシート部材と金属板とが接合されてもよい。
また、高剛性領域410における金属板には、樹脂構造体がシート部材とともに接合されていてもよい。図5は、本実施形態に係る樹脂構造体7およびシート部材8の構成例を示す図である。図5を参照すると、本実施形態に係る樹脂構造体7は、複数の同じ高さの筒体71、筒体71のそれぞれの一方の端部71aを蓋する頂面72、および筒体71のそれぞれの他方の端部71b同士をつなぐ基部73を備える。また、基部73には、樹脂または紙からなるシート部材8が接合される。
かかる樹脂構造体7を高剛性領域410における中間部4Bの金属板とシート部材8とにより挟み込むことにより、高剛性領域410における中間部4Bの金属板を含む全体的な厚みを増加させることができる。高剛性領域410の高剛性化を、金属板に比べて小さな密度の樹脂により行うことで、剛性あたりの軽量化も実現することができる。
なお、樹脂構造体7の構造は、図5に示した例に限定されない。例えば、筒体71の高さ、面内方向の大きさ、ピッチ、並びに頂面72および基部73の形状(例えば、円またはハニカム構造)等は、樹脂構造体7が適用される高剛性領域410に要求される性能等に応じて適宜設定され得る。
また、樹脂構造体7が、高剛性領域410における金属板の片面または両面に接合され得る。金属板のいずれか片面に樹脂構造体7が接合される場合、樹脂構造体7は、車両の内側または外側のいずれに接合されてもよい。ただし、外部からの物体の衝突による破損による高剛性化の効果の低減を回避するために、樹脂構造体7は、車両の内側に接合されることが好ましい。また、高剛性領域410における金属板の一方の面には樹脂構造体7が接合され、他方の面にはシート部材が接合されてもよい。
また、高剛性領域410における金属板には、凹凸形状が形成されていてもよい。かかる凹凸形状とは、例えば、金属板の表面に形成される凹部または凸部により構成される形状である。高剛性領域410における金属板に凹凸形状が形成されることにより、高剛性領域410のうち平坦面(凹凸形状が形成されていない面)が占める割合が減少する。これにより、高剛性領域410における金属板の剛性が向上する。かかる凹凸形状は、例えば、エンボス加工等により形成され得る。より具体的には、凹凸形状として、国際公開第2013/94691号に開示されている凹凸形状が高剛性領域410に対して適用されてもよい。
さらに、高剛性領域410における金属板に対して、上述した高剛性化の手段が適宜組み合わされて適用されてもよい。例えば、高剛性領域410における金属板に対してエンボス加工により凹凸形状が形成され、かつ、樹脂構造体および/またはシート部材が当該金属板に接合されてもよい。
なお、上述した高剛性化の手段はあくまでも一例であり、中間部4B等の高剛性領域における剛性を向上することが可能であれば、公知の高剛性化に係る技術が当該高剛性領域に対して適用され得る。
以上、高剛性化の具体例について説明した。
<2.5.接合部の具体例>
次に、本実施形態に係る接合部6の具体例について説明する。
再度図2を参照すると、接合部6は、骨格部材2の側壁22の内側面22aと、ダッシュロアパネル3の溝部4Aの側壁42の外側面42aとを接合する。なお、図2に示す接合部6はあくまでも模式的に図示されたものであり、実際の接合部6の位置、範囲および大きさは、図2に示す例に限定されず、接合態様に応じて異なる。
例えば、図2に示す接合部6は、スポット溶接により側壁22と側壁42との間に形成されるナゲットであり得る。他の例では、接合部6が形成される位置(車長方向または車高方向における位置)は、側壁22の内側面22aと側壁42の外側面42aとが互いに当接する部分の全部または一部であり得る。また、接合部6の範囲は、骨格部材2の側壁22と溝部4Aの側壁42との一方または双方を貫通する範囲であってもよいし、側壁22と側壁42との当接部分およびその近傍であってもよい。また、接合部6の大きさは、接合手段および形成される位置等に応じて適宜設定され得る。また、側壁22の内側面22aと側壁42の外側面42aとを接合する複数の接合部分が一つの接合部6として形成されてもよい。
接合部6は、例えば、溶接部であってもよい。すなわち、接合部6は、溶接により形成される部分であってもよい。かかる溶接は、上述したスポット溶接に限らず、レーザ溶接、アーク溶接またはアークスポット溶接等であってもよい。また、かかる溶接は、レーザ溶接およびアーク溶接を組み合わせたハイブリッド溶接であってもよい。
また、かかる溶接部は、車長方向に曲折しながら連続する線状に形成されてもよい。図6は、車長方向に曲折しながら連続する線状に形成された溶接部60の例を示す図である。図6に示すように、骨格部材2の側壁22とダッシュロアパネル3の溝部4Aの側壁42とを接合する溶接部60が、車長方向に連続し、車高方向に振動する波状に形成されてもよい。これにより、接合線長をより多く得ることができる。したがって、骨格部材2とダッシュロアパネル3との接合強度を高くすることができる。
他にも、接合部6は、例えば、締結部であってもよい。かかる締結部は、例えば、ボルト、ナットまたはリベット等により実現され得る。これにより、骨格部材2の側壁22の内側面22aと溝部4Aの側壁42の外側面42aとが締結により接合される。また、接合部6は、例えば、接着部であってもよい。かかる接着部は、例えば、樹脂等の公知の接着剤等により実現され得る。これにより、骨格部材2の側壁22の内側面22aと溝部4Aの側壁42の外側面42aとが接着により接合される。また、接合部6は、例えば、カシメ接合部であってもよい。かかるカシメ接合部は、例えば、骨格部材2の側壁22の内側面22aと溝部4Aの側壁42の外側面42aとを当接させた状態で、両部材を塑性変形により繋ぎ合わせることで実現され得る。また、カシメ接合部は、リベット等の接合部材を用いたカシメ接合により実現されてもよい。
<2.6.その他の補強手段の具体例>
(嵌合溝)
次に、本実施形態に係る車両前部構造1の骨格部材2および溝部4Aにそれぞれ嵌合溝を設ける例について説明する。
まず、溝部4Aの一部の側壁には、車高方向に伸びる第1嵌合溝が、一または複数設けられてもよい。この場合、骨格部材2の側壁には、溝部4Aに設けられた第1嵌合溝に対応する第2嵌合溝が設けられる。そして、骨格部材2とダッシュロアパネル3とが接合される際、第1嵌合溝が第2嵌合溝に嵌合される。これらの嵌合溝は、例えば、絞り成形金型に嵌合溝を設けること等により形成され得る。
図7Aは、第1嵌合溝80が第2嵌合溝81に嵌合された場合の骨格部材2および溝部4Aの状態を示す側面図である。また、図7Bは、第1嵌合溝80Aが第2嵌合溝81Aに嵌合された場合の骨格部材2および溝部4Aの状態を表した第1の例を示す断面図である。なお、図7Bは、骨格部材2および溝部4Aの車高方向に垂直な断面を見た図である。
図7Aおよび図7Bに示すように、骨格部材2の側壁22の一部および溝部4Aの側壁42の一部には、車長方向に曲折する部分が設けられる。このうち、側壁22および側壁42の外側へ突出する部分が、第1嵌合溝80Aおよび第2嵌合溝81Aである。第1嵌合溝80Aは第2嵌合溝81Aに嵌合されているので、嵌合溝の部分についても、骨格部材2の側壁22の内側面22aと溝部4Aの側壁42の外側面42aとが当接する。
嵌合溝の各々が骨格部材2および溝部4Aに設けられない場合、ダッシュロアパネル3に対して衝突荷重が車両前方から作用した際に、ダッシュロアパネル3から骨格部材2への荷重伝達は、接合部6(6a、6b、6c)等の接合箇所のみを介して行われる。そうすると、伝達される荷重が接合強度を上回る場合、骨格部材2とダッシュロアパネル3との接合部6に破断が生じ、車両内側への衝撃力の伝達および衝突体等の侵入が生じ得る。そこで、嵌合溝の各々を骨格部材2および溝部4Aに設け、互いに嵌合することにより、嵌合溝の各々が互いに当接する部分を介して衝突荷重がダッシュロアパネル3から骨格部材2へ伝達し得る。したがって、骨格部材2とダッシュロアパネル3との全体的な接合強度を高くすることができる。これにより、衝突安全性を向上することが可能となる。
なお、図7Aおよび図7Bに示す接合部6は、第1嵌合溝80Aおよび第2嵌合溝81Aの最外になる位置に設けられているが、嵌合溝の嵌合状態を維持できることが可能であれば、車長方向における接合部6が設けられる位置は特に限定されない。また、接合部6とは別に、例えば、第1嵌合溝80Aと第2嵌合溝81Aとが嵌合する部分における、ダッシュロアパネル3の傾斜壁4と骨格部材2のフランジ23とが当接する部分が接合されていてもよい。
また、第1嵌合溝および第2嵌合溝の形状(断面の形状)は、図7Bに示した例に限定されない。図7Cは、第1嵌合溝80Bが第2嵌合溝81Bに嵌合された場合の骨格部材2および溝部4Aの状態を表した第2の例を示す断面図である。なお、図7Cは、骨格部材2および溝部4Aの車高方向に垂直な断面を見た図である。図7Cに示すように、第1嵌合溝80Bおよび第2嵌合溝81Bは、それぞれ、平面視においてU字型の断面形状を有していてもよい。また、第1嵌合溝80および第2嵌合溝81の形状(断面の形状)は、必ずしも同一または相似でなくてもよい。その他、第1嵌合溝80および第2嵌合溝81の形状は、嵌合溝の各々が互いに当接することが可能であれば、特に限定されない。
また、図7A〜図7Cに示した例では、第1嵌合溝および第2嵌合溝は、骨格部材2および溝部4Aのそれぞれの側壁が当該側壁の外側に突出する形状を有していたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、第1嵌合溝および第2嵌合溝は、骨格部材2および溝部4Aのそれぞれの側壁が当該側壁の内側に突出する部分を設け、当該突出する部分の間に設けられる嵌合溝であってもよい。かかる構成であっても、嵌合溝同士が当接する部分を介した衝撃荷重の伝達という作用が生じ、接合強度を高くすることが可能である。
また、第1嵌合溝および第2嵌合溝の車幅方向における長さ(つまり、嵌合溝における溝の深さ)は、骨格部材2および溝部4Aの開口部から底面部にかけて同一であってもよい。また、上記嵌合溝の各々の車幅方向における長さは、上記開口部から上記底面部にかけて変化してもよい。例えば、図7Bおよび図7Cに示したように、上記嵌合溝の各々が側壁の外側に突出している場合、上記嵌合溝の各々の車幅方向における長さは、上記開口部から上記底面部にかけて減少してもよい。かかる構成は、成形性の点から有利である。
(当接部材)
次に、本実施形態に係る車両前部構造1の溝部4Aの内側に当接部材を設ける例について説明する。
溝部4Aの内側には、溝部4Aの対向する双方の側壁(すなわち対向する双方の内側面)に対して当接する当接部材が設けられてもよい。すなわち、かかる当接部材は、溝部4Aの内側において、双方の側壁を連結するように設けられ得る。
図8A〜図8Cは、当接部材の第1の例を示す図である。図8Aは、当接部材90Aを含む車両前部構造1の概略構成を示す斜視図であり、図8Bは、当接部材90Aを含む車両前部構造1の概略構成を示す側面図であり、図8Cは、当接部材90Aを含む車両前部構造1における骨格部材2およびダッシュロアパネル3の断面図である。図8A〜図8Cに示すように、当接部材90Aは、溝部4Aの内側の空間を充填するように設けられてもよい。この場合、当接部材90Aは、互いに対向する側壁42の各々と当接して設けられる。
ダッシュロアパネル3が衝突荷重を受けたときに、かかる荷重により側壁22と側壁42とが互いに離反する方向に変形する可能性がある。具体的には、かかる荷重により、溝部4Aの側壁42が溝部4Aの内側へ倒れ込む場合がある。そうすると、接合部6の剥離モードによる破断が生じやすくなる。
そこで、当接部材90Aを溝部4Aの内側に設けることにより、溝部4Aの側壁42の内側への倒れ込みを抑制することができる。よって、接合部6の剥離モードによる破断を防ぐことができる。したがって、骨格部材2とダッシュロアパネル3との接合強度を高くすることが可能である。
なお、当接部材は、溝部4Aの対向する双方の側壁に対して当接して設けられていればよい。図8Dは、当接部材の第2の例を示す図である。図8Dに示すように、車長方向に直交する断面視における溝部4Aの側壁42の一部(図8Dでは側壁42の上部)同士を連結する当接部材90Bが設けられてもよい。これにより、衝突荷重により側壁42が溝部4Aの内側に倒れ込む力が作用しても、当接部材90Bによりその倒れ込みを抑制することができる。車長方向に直交する断面視における溝部4Aの内側における当接部材の大きさおよび当接位置については、要求される車両前部構造1の強度、剛性、重量および製造コスト等に応じて適宜設定され得る。
また、車長方向における当接部材の設置位置は特に限定されない。ただし、接合部6の剥離モードによる破断をより確実に防止するために、車長方向において接合部6(例えば、図8Bに示す接合部6a、6b、6c)が設けられた位置に対応して当接部材が設けられることが好ましい。車長方向における当接部材の設置位置および設置量については、要求される車両前部構造1の強度、剛性、重量および製造コスト等に応じて適宜設定され得る。
また、当接部材は、例えば、発泡硬化樹脂等の樹脂により形成され得る。また、当接部材は、例えば、金属片または金属板により形成されてもよい。また、当接部材は、必ずしも溝部4Aの側壁42の内側面に固定されていなくてもよい。すなわち、当接部材は、側壁42の内側面に対して接着していなくてもよく、側壁42の内側面の少なくとも一部に密着していればよい。
<<3.まとめ>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。