以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。
〔映像信号伝送システム〕
図1は、本発明の実施形態による基地局装置(送り返し信号遅延補正装置)を含む映像信号伝送システムの全体構成の概要を示すブロック図である。この映像信号伝送システム1は、N台の端末装置200−1〜200−Nを備えた端末側と、1台の基地局装置2を備えた基地局側との間で双方向伝送を行うミリ波モバイルカメラを用いたシステムである。N台の端末装置200−1〜200−Nと1台の基地局装置2との間は、図19に示した映像信号伝送システム100と同様に、複数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを用いるMIMO伝送環境が構築されている。それぞれの端末装置200−1〜200−Nは、端末側から基地局側への本線伝送を実現する2本の送信アンテナTx、及び、基地局側から端末側への送り返し伝送を実現する1本の受信アンテナRxを備えている。また、基地局装置2は、本線伝送を実現する4本の受信アンテナRx、及び、送り返し伝送を実現する4本の送信アンテナTxを備えている。この映像伝送システム1により伝送されるOFDM信号の形式は、映像信号伝送システム100と同様に、ARIB STD−B43に従うものとする。
図19に示した従来の映像信号伝送システム100と図1に示す映像信号伝送システム1とを比較すると、両映像信号伝送システム1,100は、端末装置200−1〜200−Nを備えている点で同一であるが、映像信号伝送システム1は、映像信号伝送システム100の基地局装置300とは異なる基地局装置2を備えている点で相違する。端末装置200−1〜200−Nについては図19にて説明済みであるから、ここでは説明を省略する。
図1において、映像信号伝送システム1の基地局装置2は、高周波部30−1〜30−4、多重分離部31−1,31−2,32、復調部33−1〜33−N、多重分離部34、送り返し伝送部35、カメラコントローラ36−1〜36−N、インカム37−1〜37−N、電力/伝送遅延検出部3、電力調整部4及び遅延補正部5を備えている。
図19に示した従来の基地局装置300と図1に示す基地局装置2とを比較すると、両基地局装置2,300は、高周波部30−1〜30−4、多重分離部31−1,31−2,32、復調部33−1〜33−N、多重分離部34、送り返し伝送部35、カメラコントローラ36−1〜36−N及びインカム37−1〜37−Nを備えている点で同一であるが、基地局装置2は、さらに、電力/伝送遅延検出部3、電力調整部4及び遅延補正部5を備えている点で相違する。高周波部30−1〜30−4、多重分離部31−1,31−2,32、復調部33−1〜33−N、多重分離部34、送り返し伝送部35、カメラコントローラ36−1〜36−N及びインカム37−1〜37−Nについては図19にて説明済みであるから、ここでは説明を省略する。
図1において、基地局装置2の電力/伝送遅延検出部3は、端末装置200−1〜200−Nから送信されたOFDM信号を受信した高周波部30−1〜30−4に対応する4系統の受信IF信号の同期位置を示す情報(同期情報)、受信電力及び受信CNR(Carrier−to−Noise Ratio)を復調部33−1〜33−Nから入力し、4系統の伝送遅延を検出し、それぞれの伝送遅延に基づいて、光カメラケーブルのケーブル長の差及び伝搬経路の差を吸収し端末側にて4系統の信号を同じタイミングで受信するための送信タイミングを決定し、決定した送信タイミングを反映した送信タイミング信号を遅延補正部5に出力する。また、電力/伝送遅延検出部3は、4系統の送信電力をそれぞれ検出し、検出した4系統の送信電力を示す送信電力信号を電力調整部4に出力する。
ここで、復調部33−1は、既存の手法にて、端末装置200−1から送信されたOFDM信号を受信した高周波部30−1〜30−4に対応する4系統の受信IF信号の同期情報を生成し、既存の手法にて、4系統の受信IF信号の受信電力及び受信CNRを測定する。復調部33−2〜33−Nも同様に、対応する端末装置200−2〜200−Nから送信されたOFDM信号を受信した高周波部30−1〜30−4に対応する4系統の受信IF信号の同期情報を生成し、受信電力及び受信CNRを測定する。
電力調整部4は、送り返し伝送部35から4系統の送信IF信号を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信電力信号を入力し、入力した4系統の送信IF信号の電力を、入力した送信電力信号に基づいて調整する。そして、電力調整部4は、電力を調整した4系統の送信IF信号を遅延補正部5に出力する。
ここで、送り返し伝送部35は、N台の端末装置200−1〜200−Nへ送信する送り返し映像の映像信号及び制御情報が多重されたTS信号に対し、所要CNRが低いBPSK等により多値変調し、OFDMフレームのデータキャリアに配置してOFDM信号を生成し、IFFT処理を行ってGIを付加した信号を生成する。そして、送り返し伝送部35は、生成した信号を、同じデータ内容かつ同じタイミングの4系統の送信IF信号として電力調整部4に出力する。
遅延補正部5は、電力調整部4から4系統の送信IF信号を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信タイミング信号を入力し、入力した4系統のOFDM信号のタイミングを、入力した送信タイミング信号に基づいて調整することで、4系統の送信IF信号の遅延を、光カメラケーブルのケーブル長の差及び伝搬経路の差を吸収し端末側にて4系統の信号を同じタイミングで受信するように、補正する。そして、遅延補正部5は、遅延を補正した4系統の送信IF信号を多重分離部32に出力する。
そして、多重分離部32は、遅延補正部5から4系統の送信IF信号を入力し、1系統目の高周波部30−1に対応する送信IF信号及び2系統目の高周波部30−2に対応する送信IF信号を波長多重して光信号に変換し、光信号を多重分離部31−1に出力する。また、多重分離部32は、3系統目の高周波部30−3に対応する送信IF信号及び4系統目の高周波部30−4に対応する送信IF信号を波長多重して光信号に変換し、光信号を多重分離部31−2に出力する。
これにより、電力調整部4にて送信電力が調整され、遅延補正部5にて遅延が補正された4系統の送信IF信号がOFDM信号として、高周波部30−1〜30−4から端末側へそれぞれ送信される。そして、端末装置200−1〜200−Nのそれぞれにおいて、これらのOFDM信号は、同じタイミングで受信される。
尚、図1に示した基地局側の基地局装置2は、電力調整部4を備えているが、送信電力を調整しない場合は、必ずしも電力調整部4を備える必要はない。また、基地局装置2は、送り返し伝送部35の後段に電力調整部4を備え、電力調整部4の後段に遅延補正部5を備え、遅延補正部5の後段に多重分離部32を備えるようにしたが、電力調整部4と遅延補正部5とを入れ替え、送り返し伝送部35の後段に遅延補正部5を備え、遅延補正部5の後段に電力調整部4を備え、電力調整部4の後段に多重分離部32を備えるようにしてもよい。
〔運用例〕
次に、図1に示した映像信号伝送システム1をゴルフ中継に用いた場合の運用例について説明する。図2は、第1の運用例を示す図である。ゴルフ中継では、端末側の端末装置200−1において、カメラマンがカメラ20−1を持って撮影対象を撮影し、カメラマン補助者が本線/送り返し伝送部22−1、本線送信部23−1及び送り返し受信部24−1を装備する。また、基地局側の基地局装置2において、基地局側補助者が高周波部30−1,30−2及び多重分離部31−1を装備する。カメラマン補助者と基地局側補助者との間の距離は、数十m〜数百mである。カメラマン及びカメラマン補助者は、ゴルフプレイヤー等を撮影するために、ホール内を自由に移動する。また、カメラマン及びカメラマン補助者が複数ホールにおいて撮影を行うことができるようにするために、異なるホールへの移動に伴って、基地局側補助者も移動する。基地局側補助者は、移動元のホールにおいて、多重分離部31−1及び分離接続器aに接続された光カメラケーブルを、分離接続器aから分離し、移動先のホールへ移動すると、移動先のホールにおいて、移動先のホールに設置された分離接続器aにその光カメラケーブルを接続する。尚、各ホールには、多重分離部31−1に接続された光カメラケーブルを接続したり分離したりすることが可能な分離接続器aが設置されている。分離接続器aには、制御室に設けられた多重分離部32に接続して敷設された光カメラケーブルが接続されている。また、ホールに敷設された光カメラケーブルの長さは、ホール毎に異なっている。
ゴルフ中継では、図2に示したように、カメラ20−1、本線/送り返し伝送部22−1、本線送信部23−1及び送り返し受信部24−1を備えた端末装置200−1と、高周波部30−1,30−2及び多重分離部31−1、さらに多重分離部32等を備えた基地局装置2とを用いることにより、ミリ波モバイルカメラを運用する。端末側に、1台の端末装置200−1ではなく、複数台の端末装置200−1等を備える場合には、本線伝送において、端末装置200−1等に対して異なる搬送波周波数のチャネルを割り当てて運用し、送り返し伝送においては、全ての端末装置200−1等に対して共通の搬送波周波数のチャネルを割り当てて運用する。基地局装置2に備えた高周波部30−1の受信部は、複数台の端末装置200−1等の搬送波周波数を広帯域で同時に受信する。例えば、基地局側補助者の装備する高周波部30−1,30−2が、複数台の端末装置200−1等からのOFDM信号を同時に受信することが可能であり、複数の基地局側補助者の装備するそれぞれの高周波部30−1,30−2等が、1台の端末装置200−1からのOFDM信号を受信することも可能である。
一方で、送り返し伝送では、基地局装置2に備えた複数の高周波部30−1等から端末装置200−1の送り返し受信部24−1へOFDM信号を送信することにより、送信ダイバーシティを向上させることができる。
図3は、第2の運用例を示す図であり、基地局装置2の高周波部30−1〜30−4を用いて本線伝送及び送り返し伝送を行う例である。図3において、基地局側補助者#1が高周波部30−1,30−2及び多重分離部31−1を装備し、基地局側補助者#2が高周波部30−3,30−4及び多重分離部31−2を装備する。カメラマン及びカメラマン補助者は、ゴルフプレイヤー等を撮影するために、ホール内を自由に移動し、複数ホールにおいて撮影を行うことができるように、異なるホールへの移動に伴って、基地局側補助者#1,#2も移動する。基地局側補助者#1,#2は、異なるホールへの移動に伴って、多重分離部31−1,31−2に接続された光カメラケーブルを、分離接続器a1,a2から分離したり接続したりする。この第2の運用例では、図2に示した第1の運用例に比べ、高周波部30−1〜30−4の数が多いから、送信ダイバーシティを一層向上させることができる。
しかしながら、基地局装置2の高周波部30−1〜30−4が、ホール毎に異なる長さの光カメラケーブルを経由したOFDM信号を端末装置200−1へ送信する場合、光カメラケーブルのケーブル長の差が大きくなると、高周波部30−1〜30−4の送信部から送信されたOFDM信号のうち、いずれかの送信部から送信されたOFDM信号が遅延波となってしまう。このため、光カメラケーブルのケーブル長の差に加え伝搬経路の差を合わせると、この遅延波がガードインターバル長を超える遅延となった場合には、端末装置200−1において、シンボル間干渉が発生して急激に伝送特性が劣化し、送り返し伝送が突然に途切れてしまうことがあり得る。
そこで、本発明の実施形態では、基地局装置2が、高周波部30−1〜30−4から端末側へOFDM信号を送信する前に、端末側から送信され基地局側にて受信したOFDM信号に基づいて、これら4系統のOFDM信号の遅延量を求め、端末側において4系統のOFDM信号が同じタイミングで受信するように、遅延量を補正して送信タイミングを変更したOFDM信号を生成する。
より具体的には、本発明の実施形態では、図2及び図3に示したように、端末側において、本線伝送を行う本線送信部23−1と送り返し伝送を行う送り返し受信部24−1とが同じ筐体で一体化されており、基地局側において、本線伝送及び送り返し伝送を行う高周波部30−1等の送信部と受信部とが同じ筐体で一体化されており、それぞれの筐体は、ほぼ同じ位置にある。
そこで、基地局装置2は、高周波部30−1〜30−4から送り返し伝送のOFDM信号をそれぞれ送信する前に、端末装置200−1から送信された本線伝送のOFDM信号に基づいて、各高周波部30−1〜30−4と多重分離部32との間の光カメラケーブルのケーブル長の差及び伝搬経路の差によって生じる4系統の受信IF信号の遅延時間を算出する。そして、基地局装置2は、4系統の受信IF信号の遅延時間に基づいて、各高周波部30−1〜30−4から送り返し伝送のOFDM信号を送信するタイミングを調整して送信を行う。これにより、端末装置200−1において、混信して受信される4系統のOFDM信号間でなるべく時間的なずれがないようにすることができ、シンボル間干渉の発生を抑制することができる。
また、複数の端末装置200−1等にて運用する場合においても、基地局装置2は、各高周波部30−1〜30−4から送信する送り返し伝送のOFDM信号の送信タイミングを1台の端末装置200−1に合わせるのではなく、複数台の端末装置200−1等について最適な送信タイミングになるように調整する。つまり、基地局装置2は、1台の端末装置200−1を基準にして遅延補正を加えて送信タイミングを調整した場合、他の端末装置200−2等がその端末装置200−1と離れた場所で運用されていたときには、この遅延補正の送信タイミングでは、他の端末装置200−2等へのOFDM信号に対して、より大きな遅延を与えてしまう可能性がある。このため、基地局装置2は、複数の端末装置200−1等へのOFDM信号に対し、遅延時間が全体として最小となるような遅延補正の送信タイミングを決定する。また、基地局装置2は、複数の端末装置200−1等へのOFDM信号であって、高周波部30−1〜30−4に対応する系統のOFDM信号のうち、遅延波として影響の大きい系統のOFDM信号について、その送信電力を小さくする。これにより、端末装置200−1等において、混信して受信される4系統のOFDM信号間で時間的なずれを全体として小さくすると共に、遅延波の影響を小さくすることができ、シンボル間干渉の発生を抑制することができる。
〔電力/伝送遅延検出部、電力調整部、遅延補正部〕
図1に示した映像信号伝送システム1の基地局装置2において、高周波部30−1と多重分離部31−1を介した多重分離部32との間の光カメラケーブルのケーブル長(距離)をx[m]、高周波部30−2と多重分離部31−1を介した多重分離部32との間の距離をx+Δ1[m]、高周波部30−3と多重分離部31−2を介した多重分離部32との間の距離をx+Δ2[m]、高周波部30−4と多重分離部31−2を介した多重分離部32との間の距離をx+Δ3[m]とする。これらの光カメラケーブルのケーブル長が異なる場合、光カメラケーブルにて伝送される送受信IF信号には、各光カメラケーブルのケーブル長に応じた伝送遅延が生じる。本線伝送では、高周波部30−1〜30−4からの受信IF信号は、別々の光カメラケーブルを経由して多重分離部32から復調部33−1〜33−Nへ伝送される。
基地局装置2の復調部33−1〜33−Nは、各受信IF信号に対して、既存の技術であるガード相関によるシンボル同期及びTMCC同期の処理を行い、端末装置200−1〜200−Nからの4系統の各受信IF信号におけるタイミングの同期位置を示す情報(同期情報)を生成する。すなわち、復調部33−1は、前述の同期処理により、端末装置200−1からの4系統の受信IF信号(受信IF信号1_1〜4_1)における同期情報を生成する。同様に、復調部33−2は、前述の同期処理により、端末装置200−2からの4系統の受信IF信号(受信IF信号1_2〜4_2)における同期情報を生成する。また、復調部33−Nは、前述の同期処理により、端末装置200−Nからの4系統の受信IF信号(受信IF信号1_N〜4_N)の同期情報を生成する。
また、復調部33−1〜33−Nは、既存の技術により、高周波部30−1〜30−4からの各受信IF信号の受信電力、及び高周波部30−1〜30−4からの各受信IF信号の受信CNRを測定する。
そして、電力/伝送遅延検出部3は、復調部33−1〜33−Nにより生成された受信IF信号1_1〜4_1,1_2〜4_2,・・・,1_N〜4_Nの同期情報、復調部33−1〜33−Nにより測定された受信IF信号1_1〜4_1,1_2〜4_2,・・・,1_N〜4_Nの受信電力及び受信CNRを入力し、同期情報に基づいて、4系統の受信IF信号における伝送遅延を検出する。この場合、TMCC同期の処理にて得られた最大408×8×1/2[シンボル]時間の伝送遅延を、シンボル同期の処理にて得られた1/2[シンボル]時間の分解能で検出することができる。これが検出精度の限界となる。これは、復調部33−1〜33−Nにおいて、同期情報が前述の限界精度にて生成されるからである。電力/伝送遅延検出部3により検出された伝送遅延は、光カメラケーブルのケーブル長の差及び伝搬経路の差が反映された遅延時間である。この遅延時間は、異なる搬送波周波数を割り当てた端末装置200−1〜200−Nのそれぞれに対し、高周波部30−1〜30−4毎の系統にて算出することができる。
また、電力/伝送遅延検出部3は、検出した伝送遅延、及び入力した受信電力または受信CNRに基づいて、4系統の送信IF信号の送信電力を検出する。そして、電力/伝送遅延検出部3は、検出した送信電力を示す送信電力信号を電力調整部4に出力し、検出した伝送遅延を反映した送信タイミングの信号(送信タイミング信号)を遅延補正部5に出力する。電力/伝送遅延検出部3による送信電力及び伝送遅延の検出処理の具体例については後述する。
電力調整部4は、可変減衰器及び増幅器等により構成され、送り返し伝送部35から4系統のOFDM信号である送信IF信号を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信電力信号を入力し、入力した送信電力信号に基づいて、4系統の送信IF信号の送信電力を調整する。電力調整部4による電力調整処理の具体例については後述する。
遅延補正部5は、バッファを含んで構成され、電力調整部4から電力調整された4系統の送信IF信号を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信タイミング信号を入力し、入力した4系統の送信IF信号をバッファに格納し、入力した送信タイミング信号に基づいて、バッファから4系統の送信IF信号を読み出してシンボル位相を調整することにより遅延を補正する。これにより、4系統の送信IF信号の送信タイミングが補正される。例えば、遅延補正部5は、送信タイミング信号に基づいて、送信IF信号に対してIFFTクロックの1クロック分の位相をずらすことにより、約4.6[m]分の遅延を送信IF信号に与えることができる。遅延補正部5による遅延補正処理の具体例については後述する。
ただし、送信IF信号に含まれるTMCC信号が、送り返し伝送部35によりDBPSK変調されている場合は、1OFDMフレーム期間内において差動復調により信号が検出される。このため、一度に大きく送信IF信号の位相をずらすと、端末側の本線/送り返し伝送部22−1等において送り返し復調を行う際に、TMCC同期が外れてしまう。そこで、遅延補正部5は、1OFDMフレーム(約6.8[msec])の先頭で位相を1クロック分程度ずつずらして徐々に遅延を与えることにより、各送信IF信号に対して位相調整を行い、遅延補正を実現する。これにより、端末側ではTMCC同期が外れることなく、送り返し伝送が途切れることはない。
〔電力/伝送遅延検出部による処理〕
以下、図1に示した基地局装置2の電力/伝送遅延検出部3による送信電力及び送信タイミングの決定処理について、具体例を挙げて詳細に説明する。
(パターン1)
まず、パターン1の具体例について説明する。図4は、パターン1の構成を説明するための図である。図4に示すように、パターン1は、図2に示した運用例1のように、端末側には1台の端末装置200−1を備え、基地局側には高周波部30−1,30−2を含む基地局装置2を備えた映像信号伝送システム1により構成される例であり、高周波部30−1,30−2は、同じ箇所に設けられている。パターン1では、例えば、伝搬経路の差はさほど無く、2系統の光カメラケーブルのケーブル長x[m],x+Δ1[m]には差があるものとする。この場合、ミリ波モバイルカメラは、1台のカメラ20−1にて運用されるから、端末装置200−1と基地局装置2とは十分に離して構成することができ、この映像信号伝送システム1は、他のミリ波モバイルカメラに影響を与えず、また、他のミリ波モバイルカメラの影響を受けない。この映像信号伝送システム1の本線伝送において、端末側の1台の端末装置200−1と基地局側の高周波部30−1,30−2との間は、単数の送信アンテナ及び複数の受信アンテナを用いるSIMO(Single Input Multiple Output:単入力多出力)伝送環境が構築されている。
パターン1では、高周波部30−1,30−2から送信されるそれぞれのOFDM信号を、端末装置200−1の送り返し受信部24−1にて同じタイミングで受信するように、それぞれのOFDM信号に対応する2系統の送信IF信号の送信タイミングが、本線伝送の2系統の受信IF信号で検出した伝送遅延を用いて決定される。また、2系統の送信IF信号の送信電力は、当該送信電力の補正が行われることなく、2系統の送信IF信号の最大出力となるように決定される。
図5は、パターン1における基地局装置2の構成を示すブロック図であり、図6は、パターン1における受信IF信号のタイミングを説明する図である。また、図7は、パターン1における送信IF信号のタイミング、及び端末装置200−1によるOFDM信号の受信タイミングを説明する図であり、図8は、パターン1における電力/伝送遅延検出部3の処理を示すフローチャートである。
復調部33−1は、高周波部30−1,30−2にて受信したOFDM信号に対応する受信IF信号を入力する。すなわち、復調部33−1は、多重分離部32−1から、高周波部30−1の系統の受信IF信号1(高周波部30−1から光カメラケーブル及び多重分離部31−1を介して伝送された受信IF信号1)及び高周波部30−2の系統の受信IF信号2(高周波部30−2から光カメラケーブル及び多重分離部31−1を介して伝送された受信IF信号2)を入力する。そして、復調部33−1は、前述のとおり、受信IF信号1,2の同期位置を示す情報(同期情報)をそれぞれ生成し、受信IF信号1,2の受信電力及び受信CNRを測定する。復調部33−1により生成された受信IF信号1,2の同期情報、及び、測定された受信IF信号1,2の受信電力及び受信CNRは、電力/伝送遅延検出部3に出力される。受信信号IF1,2の同期情報は、例えば、図6に示すように、OFDMフレームの先頭位置を基準にして遅延時間を表したタイミングの情報である。
電力/伝送遅延検出部(伝送遅延検出部)3は、復調部33−1から、受信IF信号1,2の同期情報、受信電力及び受信CNRを入力し(ステップS801)、受信IF信号1,2の同期情報に基づいて、受信IF信号1と受信IF信号2との間の伝送遅延を検出する。例えば、電力/伝送遅延検出部3は、図6に示すように、受信IF信号1,2のうち所定の受信IF信号2(例えば、最も遅いタイミングの信号)を選択して基準信号とし、そのOFDMフレームの先頭位置を基準位置にして、受信IF信号1のOFDMフレームの先頭位置がその基準位置よりもT1進んでいる(T1だけ早いタイミングである)ことを示す伝送遅延を検出する(ステップS802)。この場合、遅延時間(遅延量)T1は、GI長以下の所定の許容遅延量Sを超えるものとする。許容遅延量Sは、基地局側の高周波部30−1,30−2と端末側の本線送信部23−1及び送り返し受信部24−1との間の伝搬環境における反射波の遅延時間を考慮して、GI長以下に予め設定される。尚、この実施例では、端末側は1台の端末装置200−1のみを備えていると仮定しており、電力/伝送遅延検出部3の受信電力及び受信CNRの検出結果からも、基地局側は、1台分の受信IF信号しか受信していないことが判断できる。この場合、図5に示す電力調整部4は、電力調整を行わない。
これにより、本線伝送における受信IF信号1と受信IF信号2との間の伝送遅延が検出される。この伝送遅延を示す遅延量T1は、伝搬経路にさほど差がないことから、高周波部30−1から多重分離部31−1を介して多重分離部32までの光カメラケーブルのケーブル長x[m]と、高周波部30−2から多重分離部31−1を介して多重分離部32までの光カメラケーブルのケーブル長x+Δ1[m]との間の差Δ1に対応する量となる。差Δ1が長い場合、遅延量T1は大きくなり、差Δ1が短い場合、遅延量T1は小さくなる。
そして、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号1,2のOFDMフレームの先頭位置がGI長以下の所定の許容遅延量Sを超えないようにその範囲内に位置するように、受信IF信号1の系統の送信IF信号1(多重分離部32、光カメラケーブル及び多重分離部31−1を介して高周波部30−1からOFDM信号として伝送される送信IF信号1)を所定の補正量ΔT1だけ遅れさせた送信タイミングを決定する。
すなわち、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号2を基準信号とした場合の受信IF信号2の遅延量T1(タイミングがT1だけ早いことを示す量)から、基準信号である受信IF信号2に対応する送信IF信号2(多重分離部32、光カメラケーブル及び多重分離部31−1を介して高周波部30−2からOFDM信号として伝送される送信IF信号2)を基準にして、送信IF信号1を所定の補正量ΔT1だけ遅れさせた送信タイミングを決定し(ステップS803)、送信タイミングを反映した送信タイミング信号を生成する(ステップS804)。
ここで、所定の補正量ΔT1は、受信IF信号1,2の伝送遅延を示す遅延量T1に対応する量であり、送信IF信号1に対応するOFDM信号及び送信IF信号2に対応するOFDM信号が端末側で受信される際に、これらの信号がGI長以下の所定の許容遅延量Sを超えないようにその範囲内で受信されるようにするための量である。例えば、補正量ΔT1として、伝送遅延を示す遅延量T1が設定される。この場合、受信IF信号1,2のOFDMフレームの先頭位置が同じ位置になるように(伝送遅延が0になるように)、受信IF信号1の系統の送信IF信号1を補正量ΔT1=T1だけ遅れさせるための送信タイミングが決定される。
これにより、光カメラケーブルのケーブル長の差Δ1を吸収する送信タイミング、すなわち、高周波部30−1,30−2から送信されるそれぞれのOFDM信号を端末装置200−1にて同じタイミングで受信するための送信タイミングが決定される。
尚、電力/伝送遅延検出部3は、遅延量T1が許容遅延量S以下であることを判定した場合には、遅延させないことを示す送信タイミング信号を生成するようにしてもよい。この場合、遅延補正部5は、送信IF信号1,2の遅延補正を行わない。これは、端末側がOFDM信号を許容遅延量S内に収まるように受信することができ、シンボル間干渉が発生しないからである。また、電力/伝送遅延検出部3は、遅延量T1が許容遅延量S以下であることを判定した場合であっても、前述のとおり、遅延量T1の伝送遅延を検出し、遅延量T1に応じた補正量ΔT1の送信タイミングを決定するようにしてもよい。これにより、確実にシンボル間干渉の発生を抑制することができる。
また、電力/伝送遅延検出部3は、送信IF信号1,2の送信電力として最大の送信電力を決定し、送信IF信号1,2の送信電力を最大にする(図5の電力調整部4において電力調整を行わない)ことを示す送信電力信号を生成する(ステップS805)。電力/伝送遅延検出部3により生成された送信タイミング信号は遅延補正部5に出力され、送信電力信号は電力調整部4に出力される(ステップS806)。
電力調整部4は、送り返し伝送部35から同じデータ内容及び同じタイミングの送信IF信号1,2を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信電力信号(送信IF信号1,2の送信電力を最大にすることを示す送信電力信号)を入力し、入力した送信IF信号1,2の送信電力を、入力した送信電力信号に基づいて、それぞれの送信電力が最大になるように調整する。この場合、電力調整部4は、電力調整を行わないときに最大の送信電力となるときには、入力した送信IF信号1,2の送信電力に対して電力調整を行う必要はない。そして、電力調整部4は、送信電力を調整した送信IF信号1,2を遅延補正部5に出力する。
遅延補正部5は、図7の上段に示すように、電力調整部4から同じタイミングの送信IF信号1,2を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信タイミング信号(送信IF信号2を基準にして、送信IF信号1を補正量ΔT1だけ遅らせることを示す送信タイミング信号)を入力し、入力した送信タイミング信号に基づいて、図7の中段に示すように、送信IF信号2を基準にして、送信IF信号1を補正量ΔT1だけ遅らせるように、入力した送信IF信号1,2の送信タイミングを調整することで、伝送遅延を補正する。そして、遅延補正部5は、伝送遅延を補正した送信IF信号1,2を多重分離部32に出力する。そして、伝送遅延が補正された送信IF信号1,2は、多重分離部32から多重分離部31−1及び光カメラケーブルを介して高周波部30−1,30−2へそれぞれ伝送され、OFDM信号として高周波部30−1,30−2からそれぞれ送信される。
これにより、高周波部30−1,30−2は、送信IF信号1,2を、光カメラケーブルのケーブル長の差Δ1を吸収した同じタイミングで入力することができる。したがって、端末装置200−1は、伝搬経路に差がない場合、図7の下段に示すように、高周波部30−1,30−2から送信されるそれぞれのOFDM信号を、GI長以下の所定の許容遅延量Sを超えないタイミングで受信することができる。
以上のように、パターン1における基地局装置2によれば、電力/伝送遅延検出部3は、復調部33−1から受信IF信号1,2の同期情報を入力し、受信IF信号1,2のうちいずれかの受信IF信号を基準にして、そのOFDMフレームの先頭位置を基準位置とした遅延量を求め、送信IF信号1,2に対応するそれぞれのOFDM信号が端末側にてGI長以下の許容遅延量S内で受信されるように、送信タイミングを決定し、その送信タイミングが反映された送信タイミング信号を生成するようにした。そして、遅延補正部5は、電力/伝送遅延検出部3により生成された送信タイミング信号が示す送信タイミングになるように、送信IF信号1,2の送信タイミングを補正する。
これにより、端末装置200−1において、高周波部30−1,30−2から送信されるそれぞれのOFDM信号を、光カメラケーブルのケーブル長の差Δ1を吸収し、GI長以下の許容遅延量S内に収まるタイミングで受信することができる。したがって、シンボル間干渉が発生することはなく、安定した送り返し伝送の運用を実現することが可能となる。
〔パターン2〕
次に、パターン2の具体例について説明する。図9は、パターン2の構成を説明するための図である。図9に示すように、パターン2は、端末側には2台の端末装置200−1,200−2を備え、基地局側には高周波部30−1〜30−4を含む基地局装置2を備えた映像信号伝送システム1により構成され、共通の高周波部30−1〜30−4を用いて本線伝送及び送り返し伝送を行う例である。高周波部30−1〜30−4は、近接した同じ箇所に設けられている。パターン2では、端末装置200−1,200−2と基地局装置2との間で伝搬経路に差があり、4系統の光カメラケーブルのケーブル長x[m],x+Δ1[m],x+Δ2[m],x+Δ3[m]にも差があるものとする。
端末装置200−1,200−2から異なる周波数帯でOFDM信号が送信され、基地局装置2は、異なる周波数帯のOFDM信号を受信する。基地局装置2の高周波部30−1〜30−4は、異なる周波数帯のOFDM信号を当該周波数帯で分離し、周波数帯で分離したOFDM信号を受信IF信号として出力する。パターン2では、基地局装置2の復調部33−1,33−2によりそれぞれ測定される、端末装置200−1からの4系統の受信IF信号における受信電力と、端末装置200−2からの4系統の受信IF信号における受信電力とは、同じ系統において、端末装置200−1,200−2の位置に応じて異なる値となる。しかし、電力/伝送遅延検出部3により検出される、端末装置200−1からの4系統の受信IF信号における伝送遅延と、端末装置200−2からの4系統の受信IF信号における伝送遅延とは、同一の光カメラケーブルで受信IF信号を伝送するため、ケーブル部分では同じになる。これは、高周波部30−1〜30−4が近接した同じ箇所に設けられており、伝送遅延は、高周波部30−1〜30−4から多重分離部31−1,31−2を介して多重分離部32までの間の光カメラケーブルのケーブル長の差に大きく依存するからである。このため、送信IF信号の送信タイミングは、端末装置200−1からの4系統の受信IF信号または端末装置200−2からの4系統の受信IF信号のうちのいずれか一方の受信IF信号を用いて、その伝送遅延に基づいて決定すればよい。また、4系統の送信IF信号の送信電力は、当該送信電力の補正が行われることなく、4系統の送信IF信号の最大出力となるように決定される。
図10は、パターン2における基地局装置2の構成を示すブロック図であり、図11は、パターン2において、端末装置200−1,200−2毎の受信IF信号のタイミングを説明する図であり、図12は、パターン2における送信IF信号のタイミング、及び端末装置200−1,200−2によるOFDM信号の受信タイミングを説明する図である。
復調部33−1は、高周波部30−1,30−2にて受信したOFDM信号に対応する受信IF信号を入力し、前述のとおり、端末装置200−1からの高周波部30−1〜30−4に対応した系統の受信IF信号1_1〜1_4の同期情報を生成し、端末装置200−1からの高周波部30−1〜30−4に対応した系統の受信IF信号1_1〜1_4の受信電力及び受信CNRを測定する。復調部33−1により生成された受信IF信号1_1〜1_4の同期情報、及び、測定された受信IF信号1_1〜1_4の受信電力及び受信CNRは、電力/伝送遅延検出部3に出力される。受信IF信号1_1〜1_4の同期情報は、例えば、図11の上段に示すように、OFDMフレームの先頭位置を基準にして遅延時間を表したタイミングの情報である。
復調部33−2は、高周波部30−1,30−2にて受信したOFDM信号に対応する受信IF信号を入力し、前述のとおり、端末装置200−2からの高周波部30−1〜30−4に対応する受信IF信号2_1〜2_4の同期情報を生成し、端末装置200−2からの高周波部30−1〜30−4に対応する受信IF信号2_1〜2_4の受信電力及び受信CNRを測定する。復調部33−2により生成された受信IF信号2_1〜2_4の同期情報、及び、測定された受信IF信号2_1〜2_4の受信電力及び受信CNRは、電力/伝送遅延検出部3に出力される。受信IF信号2_1〜2_4の同期情報は、例えば、図11の下段に示すように、OFDMフレームの先頭位置を基準にして遅延時間を表したタイミングの情報である。
電力/伝送遅延検出部3は、復調部33−1から受信IF信号1_1〜1_4の同期情報、受信電力及び受信CNRを入力すると共に、復調部33−2から受信IF信号2_1〜2_4の同期情報、受信電力及び受信CNRを入力する。そして、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号1_1〜1_4の同期情報及び受信IF信号2_1〜2_4の同期情報のうち、予め設定された一方の同期情報を選択し、選択した同期情報に基づいて、各受信IF信号の伝送遅延を検出する。例えば、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号1_1〜1_4の同期情報を選択した場合、図11に示すように、受信IF信号1_1〜1_4のうちの所定の受信IF信号1_4(例えば、最も遅いタイミングの信号である受信IF信号1_4)を基準信号として選択し、そのOFDMフレームの先頭位置を基準位置にして、受信IF信号1_1,1_2,1_3のOFDMフレームの先頭位置がその基準位置よりも遅延量T1,T2,T3進んでいる(T1,T2,T3だけ早いタイミングである)ことを示す伝送遅延を検出する。この場合、遅延量T1,T2は、GI長以下の所定の許容遅延量Sを超えるものとする。
尚、端末側は2台の端末装置200−1,200−2を備え、基地局側には高周波部30−1〜30−4が近接した同じ箇所に設けられているため、遅延量の差は小さく、電力/伝送遅延検出部3は、復調部33−1,33−2から入力した受信電力及び受信CNRを使用して送信IF信号の電力調整を電力調整部4に行わせる必要がない。
これにより、本線伝送における4系統の受信IF信号間の伝送遅延が検出される。この伝送遅延を示す遅延量は、伝搬経路にさほど差がない場合は、高周波部30−1から多重分離部31−1を介して多重分離部32までの光カメラケーブルのケーブル長x[m]を基準にして、高周波部30−2から多重分離部31−1を介して多重分離部32までの光カメラケーブルのケーブル長x+Δ1[m]との間の差Δ1、高周波部30−3から多重分離部31−2を介して多重分離部32までの光カメラケーブルのケーブル長x+Δ2[m]との間の差Δ2、高周波部30−4から多重分離部31−2を介して多重分離部32までの光カメラケーブルのケーブル長x+Δ3[m]との間の差Δ3に対応する量となる。差Δ1,Δ2,Δ3が長い場合、遅延量は大きくなり、差Δ1,Δ2,Δ3が短い場合、遅延量は小さくなる。
そして、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号1_1〜1_4のOFDMフレームの先頭位置がGI長以下の所定の許容遅延量Sを超えないでその範囲内に位置するように、受信IF信号1_1,1_2,1_3の系統の送信IF信号1,2,3を所定の補正量ΔT1,ΔT2,ΔT3だけ遅れさせるための送信タイミングを決定する。
すなわち、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号4を基準信号とした場合の受信IF信号1の遅延量T1(タイミングがT1だけ早いことを示す量)から、基準信号である受信IF信号1_4に対応する送信IF信号4を基準にして、送信IF信号1を所定の補正量ΔT1だけ遅らせるための送信タイミングを決定する。また、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号2,3の遅延量T2,T3(タイミングがT2,T3だけ早いことを示す量)から、送信IF信号4を基準にして、送信IF信号2,3を所定の補正量ΔT2,ΔT3だけ遅らせるための送信タイミングを決定する。そして、電力/伝送遅延検出部3は、これらの送信タイミングを反映した送信タイミング信号を生成する。
ここで、所定の補正量ΔT1,ΔT2,ΔT3は、受信IF信号1_1〜1_4の伝送遅延を示す遅延量T1,T2,T3に対応する量であり、送信IF信号1に対応するOFDM信号、送信IF信号2に対応するOFDM信号、送信IF信号3に対応するOFDM信号及び送信IF信号4に対応するOFDM信号が端末側で受信される際に、これらの信号がGI長以下の所定の許容遅延量Sを超えないようにその範囲内で受信されるようにするための量である。例えば、補正量ΔT1,ΔT2,ΔT3として、伝送遅延を示す遅延量T1,T2,T3がそれぞれ設定される。この場合、受信IF信号1_1〜1_4のOFDMフレームの先頭位置が同じ位置になるように(伝送遅延が0になるように)、受信IF信号1_1,1_2,1_3の各系統の送信IF信号1,2,3を補正量ΔT1=T1,ΔT2=T2,ΔT3=T3だけ遅れさせるための送信タイミングが決定される。
これにより、光カメラケーブルのケーブル長の差Δ1,Δ2,Δ3を吸収する送信タイミング、すなわち、高周波部30−1〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号を端末装置200−1にて同じタイミングで受信するための送信タイミング、及び端末装置200−2にて同じタイミングで受信するための送信タイミングが決定される。
尚、電力/伝送遅延検出部3は、遅延量T1,T2,T3が許容遅延量S以下であることを判定した場合には、その受信IF信号に対応する送信IF信号について、遅延させないことを示す送信タイミング信号を生成するようにしてもよい。この場合、遅延補正部5は、対応する送信IF信号について遅延補正を行わない。例えば、電力/伝送遅延検出部3は、図11に示したタイミングの場合、遅延量T3が許容遅延量S以下であるから、受信IF信号1_3に対応する送信IF信号3について、遅延させないことを示す送信タイミング信号を生成する。
また、電力/伝送遅延検出部3は、送信IF信号1〜4の送信電力として最大の送信電力を決定し、送信IF信号1〜4の送信電力を最大にする(電力調整部4において電力調整を行わない)ことを示す送信電力信号を生成する。この場合、電力調整部4において、電力調整は行われず、送信IF信号が最大出力のまま出力される。電力/伝送遅延検出部3により生成された送信タイミング信号は遅延補正部5に出力され、送信電力信号は電力調整部4に出力される。
電力調整部4は、送り返し伝送部35から同じデータ内容及び同じタイミングの送信IF信号1〜4を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信電力信号(送信IF信号1〜4の送信電力を最大にすることを示す送信電力信号)を入力し、入力した送信IF信号1〜4の送信電力を、入力した送信電力信号に基づいて、それぞれの送信電力が最大になるように調整する。そして、電力調整部4は、送信電力を調整した送信IF信号1〜4を遅延補正部5に出力する。
遅延補正部5は、図12の上段に示すように、電力調整部4から同じタイミングの送信IF信号1〜4を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信タイミング信号(送信IF信号4を基準にして、送信IF信号1,2,3を補正量ΔT1,ΔT2,ΔT3だけ遅らせることを示す送信タイミング信号)を入力し、入力した送信タイミング信号に基づいて、図12の中段に示すように、送信IF信号4を基準にして、送信IF信号送信IF信号1,2,3を補正量ΔT1,ΔT2,ΔT3だけ遅らせるように、入力した送信IF信号1〜4の送信タイミングを調整することで、伝送遅延を補正する。そして、遅延補正部5は、伝送遅延を補正した送信IF信号1〜4を多重分離部32に出力する。そして、伝送遅延が補正された送信IF信号1,2は、多重分離部32から多重分離部31−1及び光カメラケーブルを介して高周波部30−1,30−2へそれぞれ伝送され、伝送遅延が補正された送信IF信号3,4は、多重分離部32から多重分離部31−2及び光カメラケーブルを介して高周波部30−3,30−4へそれぞれ伝送され、OFDM信号として高周波部30−1〜30−4からそれぞれ送信される。
これにより、図12の下段に示すように、端末装置200−1は、高周波部30−1〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号を、GI長以下の所定の許容遅延量Sを超えないタイミングで受信することができ、端末装置200−2も、高周波部30−1〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号を、GI長以下の所定の許容遅延量Sを超えないタイミングで受信することができる。
以上のように、パターン2における基地局装置2によれば、電力/伝送遅延検出部3は、復調部33−1から受信IF信号1_1〜1_4の同期情報及び復調部33−2から受信IF信号2_1〜2_4の同期情報を入力し、受信IF信号1_1〜1_4及び受信IF信号2_1〜2_4のうちいずれかの受信IF信号を選択し、選択した4系統の受信IF信号のうちいずれかの受信IF信号を基準にして、そのOFDMフレームの先頭位置を基準位置にした遅延量を求め、送信IF信号1〜4に対応するそれぞれのOFDM信号が端末側にてGI長以下の許容遅延量S内で受信されるように、送信タイミングを決定し、その送信タイミングが反映された送信タイミング信号を生成するようにした。そして、遅延補正部5は、電力/伝送遅延検出部3により生成された送信タイミング信号が示す送信タイミングになるように、送信IF信号1〜4の送信タイミングを補正する。ここで、パターン2では、高周波部30−1〜30−4が同じ位置に設けられているから、端末装置200−1からの受信IF信号1_1〜1_4における各系統のタイミングと、端末装置200−2からの受信IF信号2_1〜2_4における各系統のタイミングとは同じになる。
これにより、端末装置200−1,200−2において、高周波部30−1〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号を、光カメラケーブルのケーブル長の差Δ1〜Δ3及び伝搬経路の差を吸収し、GI長以下の許容遅延量S内に収まるタイミングで受信することができる。したがって、シンボル間干渉が発生することはなく、安定した送り返し伝送の運用を実現することが可能となる。
〔パターン3〕
次に、パターン3の具体例について説明する。図13は、パターン3の構成を説明するための図である。図13に示すように、パターン3は、端末側には2台の端末装置200−1,200−2を備え、基地局側には高周波部30−1〜30−4を含む基地局装置2を備えた映像信号伝送システム1により構成され、共通の高周波部30−1〜30−4を用いて本線伝送及び送り返し伝送を行う例である。図9に示したパターン2の構成と図13に示すパターン3の構成とを比較すると、パターン2,3共に、同じ端末装置200−1,200−2及び高周波部30−1〜30−4を備えている点で同一であるが、パターン3における高周波部30−1〜30−4は、パターン2のように近接した同じ箇所に設けられておらず、高周波部30−1,30−2が近接した同じ箇所に設けられ、高周波部30−3,30−4が近接した同じ箇所に設けられ、高周波部30−1,30−2と高周波部30−3,30−4とは異なる箇所に設けられている点で相違する。パターン3では、パターン2と同様に、端末装置200−1,200−2と基地局装置2との間で伝搬経路の差があり、4系統の光カメラケーブルのケーブル長x[m],x+Δ1[m],x+Δ2[m],x+Δ3[m]にも差があるものとする。
パターン3では、パターン2と異なり、電力/伝送遅延検出部3により検出される、端末装置200−1からの4系統の受信IF信号における伝送遅延と、端末装置200−2からの4系統の受信IF信号における伝送遅延とは、同じにならない。これは、端末装置200−1に対する高周波部30−1,30−2及び高周波部30−3,30−4の位置と、端末装置200−2に対する高周波部30−1,30−2及び高周波部30−3,30−4の位置とが大きく異なるからである。送信IF信号の送信タイミングは、端末装置200−1からの4系統の受信IF信号または端末装置200−2からの4系統の受信IF信号のうちのいずれか一方の受信IF信号を用いて、その伝送遅延に基づいて決定されるが、4系統の送信IF信号の送信電力は、送信タイミングを調整してもそのタイミングがGI長以下の許容遅延量S以下に収まらない送信IF信号について、当該送信電力が小さくなるように決定され、それ以外の系統の送信IF信号について、当該送信電力が最大になるように決定される。
パターン3における基地局装置2の構成は、図10に示したパターン2における構成と同様である。パターン2の基地局装置2とパターン3の基地局装置2とを比較すると、電力/伝送遅延検出部3の処理のみが異なる。復調部33−1,33−2、電力調整部4及び遅延補正部5等の他の構成部はパターン2と同様であるから、ここでは説明を省略する。
図14は、パターン3において、端末装置200−1,200−2毎の受信IF信号のタイミングを説明する図であり、図15は、パターン3において、送信タイミングを決定する処理を説明する図であり、図16は、パターン3における送信IF信号のタイミング及び送信電力、並びに端末装置200−1,200−2によるOFDM信号の受信タイミングを説明する図である。また、図17は、パターン3における電力/伝送遅延検出部3の処理を示すフローチャートであり、図18は、図17におけるステップS1711の処理の詳細を示すフローチャートである。
電力/伝送遅延検出部3は、復調部33−1から受信IF信号1_1〜1_4の同期情報、受信電力及び受信CNRを入力すると共に(ステップS1701)、復調部33−2から受信IF信号2_1〜2_4の同期情報、受信電力及び受信CNRを入力する(ステップS1702)。そして、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号1_1〜1_4の同期情報及び受信IF信号2_1〜2_4の同期情報のうち、予め設定された一方の受信IF信号1_1〜1_4の同期情報を選択し、選択した同期情報に基づいて、パターン2の場合と同様に、例えば受信IF信号1_2に対応する送信IF信号2を基準にして、全ての送信IF信号1〜4がGI長以下の許容遅延量S内に収まるように、送信IF信号1,3,4をそれぞれ補正量ΔT1,ΔT3,ΔT4移動させるための送信タイミングaを決定する(ステップS1703)。
具体的には、電力/伝送遅延検出部3は、図14の上段に示すタイミングが反映された受信IF信号1_1〜1_4の同期情報を入力し、受信IF信号1_1〜1_4のうちの所定の受信IF信号1_2を基準信号として選択し、そのOFDMフレームの先頭位置を基準位置にして、受信IF信号1_1のOFDMフレームの先頭位置がその基準位置よりも遅延量T1進んでおり(T1だけ早いタイミングであり)、受信IF信号1_3,1_4のOFDMフレームの先頭位置がその基準位置よりも遅延量T3,T4遅れている(T3,T4だけ遅いタイミングである)ことを示す伝送遅延を検出する。この場合、最も早いタイミングの受信IF信号1_1と受信IF信号1_3との間の遅延量T1+T3、及び受信IF信号1_1と受信IF信号1_4との間の遅延量T1+T4は、許容遅延量Sを超えるものとする。
そして、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号1_2を基準信号とした場合の受信IF信号1_1,1_3,1_4の遅延量T1,T3,T4から、全ての送信IF信号1〜4が許容遅延量S内に収まるように、送信IF信号1,3,4のタイミングをそれぞれ補正量ΔT1,ΔT3,ΔT4移動させるための送信タイミングaを決定する。この送信タイミングaは、図15の上段に示すように、受信IF信号1_1〜1_4のタイミングが許容遅延量S内に収まるように、受信IF信号1_1,1_3,1_4のタイミングをそれぞれ補正量ΔT1,ΔT3,ΔT4移動させるためのタイミングである。
尚、端末装置200−1と端末装置200−2とは独立した装置であり、端末装置200−1,200−2からの送信信号の同期は端末装置200−1,200−2間でとれておらず、基地局側には高周波部30−1,30−2と高周波部30−3,30−4とが同じ箇所に設けられていない。このため、図14に示すように、端末装置200−1からの受信IF信号1_1〜1_4の伝送遅延と、端末装置200−2からの受信IF信号2_1〜2_4の伝送遅延とは、大きく異なっている。
ここで、本線伝送では、端末装置200−1,200−2からのOFDM信号はそれぞれ異なる搬送波周波数を用いて送信されるから、基地局装置2は、受信IF信号をそれぞれ個別に受信することができる。このため、復調部33−1,33−2は、高周波部30−1〜30−4からの受信IF信号におけるOFDMフレームの先頭が一致するように、端末装置200−1からの受信IF信号1_1〜1_4及び端末装置200−2からの受信IF信号2_1〜2_4の位相を調整することができるから、光カメラケーブルのケーブル長の差及び伝搬経路の差による遅延の影響を受けることなく、本線伝送の復調を行うことができる。
一方、送り返し伝送では、基地局装置2の高周波部30−1〜30−4からのOFDM信号は共通の搬送波周波数を用いて送信されるから、端末装置200−1,200−2は、高周波部30−1〜30−4からのOFDM信号に対し、独立して位相調整することができない。このため、端末装置200−1,200−2に対して、高周波部30−1〜30−4に対応する送信IF信号1〜4がGI長以下の許容遅延量S内に収まるように、電力/伝送遅延検出部3において送信タイミングが決定され、遅延補正部5において送信IF信号1〜4の位相が調整される。
電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1703にて決定した送信タイミングaにて、受信IF信号2_1〜2_4のタイミングを補正する(ステップS1704)。具体的には、電力/伝送遅延検出部3は、図15の下段に示すように、受信IF信号2_1,2_3,2_4のタイミングをそれぞれ補正量ΔT1,ΔT3,ΔT4移動させ、受信IF信号2_2のタイミングはそのままとする。
電力/伝送遅延検出部3は、補正後の受信IF信号2_1〜2_4において、受信IF信号2_1〜2_4の先頭フレーム位置(端末装置200−2から同じタイミングで送信されたOFDM信号の先頭フレーム位置)が全て許容遅延量S内に収まっているか否かを判定する(ステップS1705)。電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1705において、補正後の受信IF信号2_1〜2_4の先頭フレーム位置が全て許容遅延量S内に収まっていると判定した場合(ステップS1705:Y)、送信タイミングaを反映した送信タイミング信号を生成すると共に、送信IF信号1〜4の送信電力を最大にするための送信電力信号を生成する(ステップS1706)。
電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1705において、補正後の受信IF信号2_1〜2_4のうちのいずれかの先頭フレーム位置が許容遅延量S内に収まっていないと判定した場合(ステップS1705:N)、ステップS1707へ移行する。例えば、図15の下段に示したように、補正後の受信IF信号2_1の先頭フレーム位置が許容遅延量S内に収まっていないと判定した場合である。
ここで、図15は、遅延補正部5にて送信IF信号1,3,4のタイミングを補正量ΔT1,ΔT3,ΔT4移動させるように位相を調整した場合に、端末装置200−1,200−2にて混信して受信される時点での各OFDM信号におけるOFDMフレームの先頭位置を示している。図15に示すように、高周波部30−3,30−4から送信されるOFDM信号については、それぞれΔT3,ΔT4の遅延差となるように、送信IF信号3,4の位相が調整されるから、端末装置200−1,200−2は、光カメラケーブルのケーブル長の差及び伝搬経路の差を吸収し、許容遅延量S内に収まるような状態で、高周波部30−2〜30−4からのOFDM信号を受信することができる。また、端末装置200−1は、光カメラケーブルのケーブル長の差及び伝搬経路の差を吸収し、許容遅延量S内に収まるような状態で、高周波部30−1からのOFDM信号を受信することができるが、端末装置200−2は、許容遅延量S内に収まるような状態で、高周波部30−1からのOFDM信号を受信することができない。このため、端末装置200−2において、高周波部30−1から送信されるOFDM信号は、他の高周波部30−2〜30−4から送信されるOFDM信号に対しシンボル間干渉を引き起こす干渉波となってしまう。
電力/伝送遅延検出部3は、補正後の受信IF信号2_1〜2_4のうちのいずれかの先頭フレーム位置が許容遅延量S内に収まっていないと判定し、ステップS1705から移行すると、入力した受信IF信号2_1〜2_4の同期情報に基づいて、パターン2の場合と同様に、例えば受信IF信号2_2に対応する送信IF信号2を基準にして、全ての送信IF信号1〜4が許容遅延量S内に収まるように、送信IF信号1,3,4のタイミングをそれぞれ補正量ΔT1’,ΔT3’,ΔT4’だけ移動させるための送信タイミングbを決定する(ステップS1707)。
電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1707にて決定した送信タイミングbにて、復調部33−1から入力した同期情報の示す受信IF信号1_1〜1_4のタイミングを補正する(ステップS1708)。具体的には、電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1704にて受信IF信号2_1〜2_4のタイミングを補正した処理と同様に、受信IF信号1_2を基準にして、受信IF信号1_1,1_3,1_4のタイミングをそれぞれ補正量ΔT1’,ΔT3’,ΔT4’移動させ、受信IF信号1_2のタイミングはそのままとする。
電力/伝送遅延検出部3は、補正後の受信IF信号1_1〜1_4において、受信IF信号1_1〜1_4の先頭フレーム位置(端末装置200−1から同じタイミングで送信されたOFDM信号の先頭フレーム位置)が全て許容遅延量S内に収まっているか否かを判定する(ステップS1709)。電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1709において、補正後の受信IF信号1_1〜1_4の先頭フレーム位置が全て許容遅延量S内に収まっていると判定した場合(ステップS1709:Y)、送信タイミングbを反映した送信タイミング信号を生成すると共に、送信IF信号1〜4の送信電力を最大にするための送信電力信号を生成する(ステップS1710)。
電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1709において、補正後の受信IF信号1_1〜1_4のうちのいずれかの先頭フレーム位置が許容遅延量S内に収まっていないと判定した場合(ステップS1709:N)、図18に示す後述の処理により、送信タイミング信号及び送信電力信号を生成する(ステップS1711)。具体的には、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号1_1〜1_4及び受信IF信号2_1〜2_4のうち、入力した受信電力または受信CNRの高い方に合わせて、送信タイミングaまたはbのうちのいずれか一方を反映した送信タイミング信号を生成する。また、電力/伝送遅延検出部3は、入力した受信電力または受信CNRの低い方の全ての系統における受信IF信号のうち、先頭フレーム位置が許容遅延量S内に収まっていない受信IF信号について、その系統の送信IF信号の送信電力を所定値に小さくし、他の系統の送信IF信号の送信電力を最大にするための送信電力信号を生成する。詳細については後述する。
電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1706、ステップS1710及びステップS1711から移行して、送信タイミング信号を遅延補正部5に出力し、送信電力信号を電力調整部4に出力する(ステップS1712)。このようにして、電力調整部4は、電力/伝送遅延検出部3から送信電力信号を入力し、送り返し伝送部35から同じデータ内容かつ同じタイミングの送信IF信号1〜4を入力し、送信IF信号1〜4の電力を、送信電力信号が示す電力になるように調整する。また、遅延補正部5は、電力/伝送遅延検出部3から送信タイミング信号を入力し、電力調整部4から電力調整された送信IF信号1〜4を入力し、送信IF信号1〜4のタイミングを、送信タイミング信号が示すタイミングになるように補正する。
図17に示したステップS1711の処理について、図18を参照して詳細に説明する。このステップS1711の処理は、受信IF信号1_1〜1_4の同期情報に基づいて決定した送信タイミングaにて受信IF信号2_1〜2_4のタイミングを補正した結果、補正後の受信IF信号2_1〜2_4のうちのいずれかの先頭フレーム位置が許容遅延量S内に収まっていないと判定し、かつ、受信IF信号2_1〜2_4の同期情報に基づいて決定した送信タイミングbにて受信IF信号1_1〜1_4のタイミングを補正した結果、補正後の受信IF信号1_1〜1_4のうちのいずれかの先頭フレーム位置が許容遅延量S内に収まっていないと判定した場合に、送信タイミング信号及び送信電力信号を生成する処理である。
図18において、電力/伝送遅延検出部3は、入力した受信IF信号1_1〜1_4の受信電力(または受信CNR)を平均化すると共に、入力した受信IF信号2_1〜2_4の受信電力(または受信CNR)を平均化する(ステップS1801)。そして、電力/伝送遅延検出部3は、受信IF信号1_1〜1_4の受信電力(または受信CNR)の平均値と、受信IF信号2_1〜2_4の受信電力(または受信CNR)とを比較し、高い方を特定する(ステップS1802)。
電力/伝送遅延検出部3は、受信電力(または受信CNR)の平均値が高い方の受信IF信号の同期情報に基づいて決定した送信タイミングaまたはbを送信タイミングに決定し(ステップS1803)、決定した送信タイミングを反映した送信タイミング信号を生成する(ステップS1804)。
電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1802にて、受信IF信号1_1〜1_4の受信電力(または受信CNR)の平均値と、受信IF信号2_1〜2_4の受信電力(または受信CNR)とを比較した結果、低い方を特定する(ステップS1805)。そして、電力/伝送遅延検出部3は、受信電力(または受信CNR)の平均値が低い方の受信IF信号を、ステップS1803にて決定した送信タイミングaまたはbにて補正する(ステップS1806)。
電力/伝送遅延検出部3は、ステップS1806にて補正した後の全系統の受信IF信号のうち、先頭フレーム位置が許容遅延量S内に収まっていない系統の受信IF信号を特定し(ステップS1807)、その受信IF信号の系統について、対応する送信IF信号の送信電力を所定値に小さくし、それ以外の系統について、送信IF信号の送信電力を最大にするための送信電力信号を生成する(ステップS1808)。これにより、ある系統の送信IF信号の送信電力を小さくすることで、端末側において、他の系統からの送信信号に大きな影響を与えないD/Uとすることができる。
例えば、電力/伝送遅延検出部3が、受信IF信号1_1〜1_4及び受信IF信号2_1〜2_4のうち、受信電力または受信CNRの高い方として受信IF信号1_1〜1_4を特定し、図15に示したタイミングaが反映された送信タイミング信号を生成し、送信IF信号1の送信電力を所定値に小さくすると共に、送信IF信号2〜4の送信電力を最大にするための送信電力信号を生成した場合を想定する。電力調整部4は、図16の上段に示すように、送り返し伝送部35から同じデータ内容かつ同じタイミングの送信IF信号1〜4を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信電力信号を入力する。そして、電力調整部4は、送信電力信号に基づいて、図16の上から2段目に示すように、送信IF信号1の送信電力を所定値に小さくし(減力し)、送信IF信号2〜4の送信電力が最大になるように調整する。
遅延補正部5は、図16の上から2段目に示す送信IF信号1〜4を入力すると共に、電力/伝送遅延検出部3から送信タイミング信号を入力し、入力した送信タイミング信号に基づいて、図16の上から3段目に示すように、送信IF信号2を基準にして、送信IF信号1,3,4をそれぞれ補正量ΔT1,ΔT3,ΔT4だけ進めるように、入力した送信IF信号1,3,4の送信タイミングを調整することで、伝送遅延を補正する。そして、遅延補正部5は、伝送遅延を補正した送信IF信号1〜4を多重分離部32に出力する。前述のとおり、遅延補正部5は、送信IF信号1〜4を一時的に格納するバッファを備えていることから、送信IF信号1〜4のそれぞれを遅らせたり進めたりすることができる。そして、伝送遅延が補正された送信IF信号1〜4は、多重分離部32から多重分離部31−1,31−2及び光カメラケーブルを介して高周波部30−1〜30−4へそれぞれ伝送され、OFDM信号として高周波部30−1〜30−4からそれぞれ送信される。
これにより、端末装置200−1は、図16の下段に示すように、高周波部30−1〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号を、許容遅延量Sを超えないタイミングで受信することができる。この場合、高周波部30−1からのOFDM信号の電力は他のOFDM信号に比べて低くなっている。一方、端末装置200−2は、図16の下段に示すように、高周波部30−2〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号を、許容遅延量Sを超えないタイミングで受信することができる。また、高周波部30−1からのOFDM信号は、許容遅延量Sを超えるタイミングで受信するが、その電力は他に比べて低くなっている。
このため、端末装置200−2において、高周波部30−1からのOFDM信号が高周波部30−2〜30−4からのOFDM信号の干渉波となることを抑制することができ、結果としてシンボル間干渉の発生を抑えることができる。したがって、安定した送り返し伝送の運用を実現することが可能となる。
以上のように、パターン3における基地局装置2によれば、電力/伝送遅延検出部3は、復調部33−1から受信IF信号1_1〜1_4の同期情報、受信電力及び受信CNRを入力すると共に、復調部33−2から受信IF信号2_1〜2_4の同期情報、受信電力及び受信CNRを入力し、受信IF信号1_1〜1_4の同期情報に基づいて、送信IF信号1〜4に対応するOFDM信号が端末側にてGI長以下の許容遅延量S内で受信されるように、送信IF信号1〜4の送信タイミングaを決定し、送信タイミングaにて受信IF信号2_1〜2_4のタイミングを補正したときに、補正後の受信IF信号2_1〜2_4が全て許容遅延量S内に収まると判定した場合、送信タイミングaを反映した送信タイミング信号を生成すると共に、送信IF信号1〜4の送信電力を最大にするための送信電力信号を生成するようにした(ケース1)。一方、電力/伝送遅延検出部3は、補正後の受信IF信号2_1〜2_4のいずれかが許容遅延量S内に収まらないと判定した場合、受信IF信号2_1〜2_4の同期情報に基づいて、送信IF信号1〜4に対応するOFDM信号が端末側にて許容遅延量S内で受信されるように、送信IF信号1〜4の送信タイミングbを決定する。そして、電力/伝送遅延検出部3は、送信タイミングbにて受信IF信号1_1〜1_4のタイミングを補正したときに、補正後の受信IF信号1_1〜1_4が全て許容遅延量S内に収まると判定した場合、送信タイミングbを反映した送信タイミング信号を生成すると共に、送信IF信号1〜4の送信電力を最大にするための送信電力信号を生成するようにした(ケース2)。
また、電力/伝送遅延検出部3は、補正後の受信IF信号1_1〜1_4のいずれかが許容遅延量S内に収まらないと判定した場合、すなわち、受信IF信号1_1〜1_4の同期情報に基づいて決定した送信タイミングaにて受信IF信号2_1〜2_4のタイミングを補正した結果、補正後の受信IF信号2_1〜2_4のいずれかが許容遅延量S内に収まっていないと判定し、かつ、受信IF信号2_1〜2_4の同期情報に基づいて決定した送信タイミングbにて受信IF信号1_1〜1_4のタイミングを補正した結果、補正後の受信IF信号1_1〜1_4のいずれかが許容遅延量S内に収まっていないと判定した場合、受信IF信号1_1〜1_4及び受信IF信号2_1〜2_4のうち、入力した受信電力または受信CNRの高い方に合わせて、送信タイミングaまたはbのうちのいずれか一方を反映した送信タイミング信号を生成するようにした。また、電力/伝送遅延検出部3は、入力した受信電力または受信CNRの低い方の全ての系統における受信IF信号のうち、許容遅延量S内に収まっていない受信IF信号について、その系統の送信IF信号の送信電力を所定値に小さくし、他の系統の送信IF信号の送信電力を最大にするための送信電力信号を生成するようにした(ケース3)。そして、電力調整部4は、電力/伝送遅延検出部3により生成された送信電力信号が示す送信電力になるように、送信IF信号1〜4の送信電力を調整し、遅延補正部5は、電力/伝送遅延検出部3により生成された送信タイミング信号が示す送信タイミングになるように、送信IF信号1〜4の送信タイミングを補正する。
これにより、前述のケース1,2の場合、端末装置200−1,200−2において、高周波部30−1〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号を、光カメラケーブルのケーブル長の差Δ1〜Δ3及び伝搬経路の差を吸収し、GI長以下の許容遅延量S内に収まるタイミングで受信することができる。また、前述のケース3の場合、受信電力または受信CNRの高い方の受信IF信号に対応する端末装置200−1または端末装置200−2において、高周波部30−1〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号を、許容遅延量S内に収まるタイミングで受信することができる。また、前述のケース3の場合、受信電力または受信CNRの低い方の受信IF信号に対応する端末装置200−1または端末装置200−2において、高周波部30−1〜30−4から送信されるそれぞれのOFDM信号のうち、送信電力が減力されていない送信IF信号に対応するOFDM信号を、許容遅延量S内に収まるタイミングで受信することができ、送信電力が減力された送信IF信号に対応するOFDM信号は、許容遅延量S内に収まらないタイミングで受信することになるが、その電力は低いから、シンボル間干渉の発生を抑えることができ、安定した送り返し伝送の運用を実現することが可能となる。
このように、従来は、送り返し伝送において、光カメラケーブルのケーブル長の差及び端末側の位置に起因した伝搬経路の差によって、基地局側からそれぞれ送信されるOFDM信号がGI長以下の許容遅延量S内に収まらずシンボル間干渉が発生し、送り返し伝送が頻繁に途切れる現象が生じていた。本発明の実施形態によれば、1台または複数台の端末側の装置を使用する場合においても、基地局側から送信される送り返し伝送のOFDM信号の送信タイミングを、GI長以下の許容遅延量S内に収まるように調整するようにしたから、シンボル間干渉の発生を抑えることができ、安定した送り返し伝送の運用を実現することが可能となる。
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、基地局装置2の遅延補正部5は、電力調整部4により電力調整された送信IF信号1〜4に対して送信タイミングを補正するようにしたが、送り返し伝送部35が、遅延補正部5の機能を備え、電力/伝送遅延検出部3から送信タイミング信号を入力し、4系統の信号を変調する際に、送信タイミング信号に基づいて、タイミングをずらして変調を行い、送信タイミングを補正した送信IF信号1〜4を電力調整部4に出力するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、基地局装置2の電力/伝送遅延検出部3は、複数系統の受信IF信号のうち所定の受信IF信号を基準にして、全系統の受信IF信号のタイミングがGI長以下の許容遅延量S内に収まるように、送信タイミングを決定するようにしたが、本発明は、送信タイミングの決定処理をこの処理に限定するものではない。要するに、電力/伝送遅延検出部3は、全系統の受信IF信号のタイミングがGI長以下の許容遅延量S内に収まるように、すなわち、基地局側から送信されるそれぞれのOFDM信号が端末側にて、GI長以下の許容遅延量S内に収まるように、送信タイミングを決定できればよい。
また、前記実施形態のパターン3では、電力/伝送遅延検出部3は、前記ケース3の場合に、受信IF信号1_1〜1_4及び受信IF信号2_1〜2_4のうち、入力した受信電力または受信CNRの高い方に合わせて、送信タイミングaまたはbのうちのいずれか一方を反映した送信タイミング信号を生成するようにした。これに対し、電力/伝送遅延検出部3は、前記ケース3の場合に、受信IF信号1_1〜1_4及び受信IF信号2_1〜2_4のうち、予め設定された受信IF信号の同期情報に基づいて決定した送信タイミングaまたはbを選択し、その送信タイミングaまたはbを反映した送信タイミング信号を生成するようにしてもよい。
また、本発明は、光カメラケーブルのケーブル長に差がある場合だけでなく、光カメラケーブルのケーブル長に差がなく、端末装置200−1〜200−Nと基地局装置2との間の伝搬経路にのみ差がある場合にも適用がある。