関連出願についてのクロスリファレンス
本出願は2009年10月26日に出願の米国仮出願番号第61/255,052号の優先権の利益を請求し、その全てが本願明細書に出典明示により援用されるものとする。
技術分野
本発明は、一般的に、治療的抗IgE抗体に対する、IgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するための方法及び試薬及びアナフィラキシーのリスクを評価するための方法の分野に関連する。
背景
IgEは、アレルギー反応(例えば広範囲にわたって患われる喘息、食物アレルギー、I形過敏症及びよく知られている副鼻腔炎)を媒介する免疫グロブリンファミリーのメンバーである。IgEは、B細胞又はBリンパ球により分泌され、その表面に発現する。IgEは、そのFc領域のFcεRIIとして知られる低親和性IgE受容体への結合を介して、B細胞(単核細胞、好酸球性及び血小板も同様)に結合する。アレルゲンへの哺乳動物の暴露により、抗原に特異的な表面結合IgE抗体を生じるB細胞は、「活性化され」、IgEを分泌するプラズマ細胞となる。生じたアレルゲン特異的なIgEは、血流を循環し、FcεRIとして知られる高親和性受容体を介して、組織中でマストセル表面に、血液中で好塩基球表面に結合する。マストセル及び好塩基球は、それによりアレルゲンに感作される。アレルゲンへの後の暴露によって、これらの細胞の脱顆粒及び臨床過敏症及びアナフィラキシーの原因となるヒスタミン、ロイコトリエン及び血小板活性化因子、好酸球性及び好中球走化性因子及びサイトカインIL−3、IL−4、IL−5及びGM−CSFの放出を引き起こす好塩基球及びマスト細胞FcεRIの架橋結合が生じる。
IgE−受容体複合体形成をブロックするアンタゴニストは、アレルギー反応を予防するための治療剤として有用である。いくつかの治療的抗IgE抗体が開発された。これらの抗IgE抗体は、好塩基球及びマストセルに見いだされる高親和性受容体FcεRIへのIgEの結合をブロックし、それによって、ヒスタミン及び病的状態を引き起こす他のアナフィラキシー因子の放出を予防する。
アナフィラキシーは、オマリズマブなどの抗IgE抗体(例えばXolair(登録商標))を受けた後に患者において発生することが報告された。アナフィラキシーは、急性全身性(マルチシステム)及び非常に重度のI型過敏症アレルギー反応である。それは、マストセル及び好塩基球の脱顆粒によって生じ、IgEによって媒介される。2006年まで、57,269人の喘息患者のうちの124人(約0.2%)が、オマリズマブ投与後にアナフィラキシーを有した。オマリズマブの結果としての致命的なアナフィラキシーの報告はないが、いくつかのケースは重篤で、潜在的に生死にかかわるものであった。このために、FDAはオマリズマブを受けている患者をオマリズマブ投与後しばらくの間診療室において監視することを推奨しており、オマリズマブを投与する健康管理提供者は生死にかかわり得るアナフィラキシーを管理するために準備されるべきである。事例の60パーセント(124)で、オマリズマブの最初の2回の投与後であったことが報告されている。したがって、薬剤の投与後に起こる抗薬物反応とは対照的に、反応は患者中に先に存在したオマリズマブ上のエピトープを認識する抗体によるものかもしれない。アナフィラキシーがIgEアイソタイプの抗体と関連しているように、好ましくは抗IgE抗体治療前にアナフィラキシーのリスクを評価し、ハイリスクな患者を同定するために、治療的抗IgE抗体に特異的な患者のIgE量を検出及び定量するためのアッセイを開発するというニーズが存在する。
本願明細書に引用される特許出願及び刊行物を含む全ての文献は、その全てが出典明示により援用されるものとする。
発明の要約
一つの態様では、本発明は、以下の工程を含む、試料中で治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するための方法を提供する:a)治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体と、抗薬剤抗体を含み得る試料とを接触させる工程であって、IgE(例えばヒトIgE)へのミュータント治療抗体の相対的結合親和性は、IgEへの治療的抗IgE抗体の相対的な結合親和性の約10%以下である工程;及びb)ミュータント治療抗体への抗薬剤抗体の結合を検出する工程。
いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体の相対的結合親和性は、治療的抗IgE抗体の相対的な結合親和性の約7.5%以下、約5%以下、約2.5%以下、約2.0%以下、約1.5%以下、約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.5%以下、約0.25%以下、約0.1%以下である。
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、試料中で治療的抗IgEに結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するための方法を提供する:a)治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体と、抗薬剤抗体を含み得る試料とを接触させる工程であって、IgE(例えばヒトIgE)へのミュータント治療抗体の活性は、IgEに対する治療的抗IgE抗体の活性の約10%以下である工程;及びb)ミュータント治療抗体への抗薬剤抗体の結合を検出する工程。
いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体の活性は、治療的抗IgE抗体の活性の約7.5%以下、約5%以下、約2.5%以下、約2.0%以下、約1.5%以下、約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.5%以下、約0.25%以下、約0.1%以下である。
本願明細書で提供されるいかなるミュータント治療抗体が用いられてもよい。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、治療的抗IgE抗体の重鎖及び/又は軽鎖のCDR配列中に1、2、3、4、5又は6つのアミノ酸変異を含む。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体はオマリズマブであり、ミュータント治療抗体はオマリズマブの軽鎖の第1のCDRにおいて1、2又は3つのアミノ酸変異を含む。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体はオマリズマブであり、ミュータント治療抗体はオマリズマブの軽鎖(配列番号:1)の位置34(Asp)にアミノ酸置換を含む。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、配列番号:2の重鎖アミノ酸配列及び配列番号:1の軽鎖アミノ酸配列を含み、軽鎖の位置30(Asp)及び34(Asp)、又は32(Asp)及び34(Asp)のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、配列番号:2の重鎖アミノ酸配列及び配列番号:1の軽鎖アミノ酸配列を含み、位置30、32及び34のアミノ酸D(Asp)が軽鎖において置換されている。いくつかの実施態様において、アミノ酸Aspは、Alaで置換される。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、配列番号:2の重鎖アミノ酸配列及び軽鎖の位置30、32及び34のAspのAlaへの置換を伴った配列番号:1の軽鎖アミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体はオマリズマブであり、ミュータント治療抗体はオマリズマブの重鎖の第3のCDRにおいて1、2又は3つのアミノ酸変異を含む。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、配列番号:2の重鎖アミノ酸配列及び配列番号:1の軽鎖アミノ酸配列を含み、重鎖(配列番号:2)の位置101(His)、105(His)及び107(His)のアミノ酸が置換されている。いくつかの実施態様において、アミノ酸Hisは、Alaで置換される。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、重鎖の位置101、105及び107のHisからAlaへのアミノ酸置を伴った換配列番号:2の重鎖アミノ酸配列及び配列番号:1の軽鎖アミノ酸配列を含む。
いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、表面に固定又は接続される。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、表面に直接固定される。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は標識にコンジュゲートされ、標識に特異的に結合する捕捉剤により表面に固定又は接続されており、捕捉剤は表面に固定される。いくつかの実施態様において、標識はビオチンであり、捕捉剤はストレプトアビジンである。いくつかの実施態様において、標識はジゴキシゲニンであり、捕捉剤は抗ジゴキシゲニン抗体である。
いくつかの実施態様において、試料を表面に固定又は接続されたミュータント治療抗体と接触させる。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体を表面に接続させる前に、試料をミュータント治療抗体と接触させる。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、試料をミュータント治療抗体と接触させた後、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出する前に、表面に接続させる。
いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体への抗薬剤抗体の結合は、検出剤で検出される。いくつかの実施態様において、検出剤は、IgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドである。本願明細書において提供されるいかなるFcεRIαポリペプチドが用いられてもよい。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、FcεRIαサブユニットの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、IgG定常領域に融合したFcεRIαサブユニットの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識されている。いくつかの実施態様において、標識は、ビオチン、ジゴキシゲニン、ルテニウム、放射線標識、フォトルミネセンス標識、化学発光標識、蛍光標識、電気化学発光標識及び酵素標識からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはビオチンで標識され、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合はストレプトアビジン−HRPによって検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはジゴキシゲニンで標識され、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合はHRPがコンジュゲートされた抗ジゴキシゲニン抗体によって検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはルテニウムで標識され、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合は電気化学発光アッセイによって検出される。
いくつかの実施態様において、試料はヒト血清又は血漿を含む。いくつかの実施態様において、試料は治療的抗IgE抗体を含む。いくつかの実施態様において、試料は治療的抗IgE抗体を含まない。いくつかの実施態様において、血清又は血漿はオマリズマブを含む。他の実施態様において、血清又は血漿はオマリズマブを含まない。
いくつかの実施態様において、方法は、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を基準と比較する工程をさらに含む。いくつかの実施態様において、基準は、ミュータント治療抗体とコントロール抗体との間の検出された結合である。いくつかの実施態様において、コントロール抗体は、治療的抗IgE抗体とミュータント治療抗体とに同程度の親和性で結合するポジティブコントロール抗体である。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、配列番号:7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号:8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、ヒトIgEの重鎖及び軽鎖定常領域をさらに含む。
別の態様において、本発明は、(a)治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体であって、IgE(例えばヒトIgE)へのミュータント治療抗体の相対的結合親和性は、IgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である抗体;及びb)IgEのFc領域に結合する検出剤を含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットを提供する。本願明細書で提供されるいかなるミュータント治療抗体が用いられてもよい。いくつかの実施態様において、検出剤はFcεRIαポリペプチドである。本願明細書で提供されるいかなるFcεRIαポリペプチドがキットに包含されてもよい。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、FcεRIαサブユニットの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、IgG定常領域に融合したFcεRIαサブユニットの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識されている(例えばビオチン、ジゴキシゲニン、ルテニウムなどによる標識)。いくつかの実施態様において、キットはストレプトアビジン−HRP又はAmdex SA−HRPをさらに含む。いくつかの実施態様において、キットは、ジゴキシゲニン標識FcεRIαポリペプチドを検出するためのHRPがコンジュゲートされた抗ジゴキシゲニン抗体をさらに含む。いくつかの実施態様において、キットは、治療的抗IgE抗体とミュータント治療抗体とに同程度の親和性で結合するポジティブコントロール抗体をさらに含む。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、配列番号:7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号:8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、ヒトIgEの重鎖及び軽鎖定常領域をさらに含む。
別の態様において、本発明は、(a)治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体であって、IgE(例えばヒトIgE)へのミュータント治療抗体の活性は、IgEへの治療的抗IgE抗体の活性の約10%以下である抗体;及びb)IgEのFc領域に結合する検出剤を含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットを提供する。本願明細書で提供されるいかなるミュータント治療抗体が用いられてもよい。いくつかの実施態様において、検出剤は、FcεRIαポリペプチドである。本願明細書で提供されるいかなるFcεRIαポリペプチドがキットに包含されてもよい。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、FcεRIαサブユニットの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、IgG定常領域に融合したFcεRIαサブユニットの細胞外ドメインを含む。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識されている(例えばビオチン、ジゴキシゲニン、ルテニウム、などによる標識)。いくつかの実施態様において、キットはストレプトアビジン−HRP又はAmdex SA−HRPをさらに含む。いくつかの実施態様において、キットは、ジゴキシゲニン標識FcεRIαポリペプチドを検出するためのHRPがコンジュゲートされた抗ジゴキシゲニン抗体をさらに含む。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体とミュータント治療抗体とに同程度の親和性で結合するポジティブコントロール抗体をさらに含む。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、配列番号:7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号:8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、ヒトIgEの重鎖及び軽鎖定常領域をさらに含む。
別の態様においては、本発明は、以下の工程を含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するための方法を提供する:(a)抗薬剤抗体を含み得る試料と、(i)ミュータント治療抗体及び(ii)ヒトIgEのFc領域に結合する及びFcεRIαポリペプチドとを接触させる工程であって、ミュータント治療抗体は治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含み、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である工程;(b)表面にミュータント治療抗体を接続させる工程;及び(c)ミュータント治療抗体への抗薬剤抗体の結合を検出する工程。
いくつかの実施態様において、工程(a)で過剰量のFcεRIαポリペプチドを試料と接触させる。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドの少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍又は少なくとも約10倍の過剰量を、工程(a)において試料と接触させる。本願明細書で提供されるいかなるFcεRIαポリペプチドが用いられてもよい。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、FcεRIαサブユニットの細胞外ドメインを含む。FcεRIαポリペプチドは、標識されていても、されていなくてもよい。
本願明細書で提供されるいかなるミュータント治療抗体が用いられてもよい。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、標識され、標識に特異的に結合する捕捉剤によって表面に接続される。いくつかの実施態様において、標識はビオチンであり、表面はストレプトアビジンで被覆されている。いくつかの実施態様において、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合は、標識抗ヒトIgE抗体によって検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識されており、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合はFcεRIαポリペプチド上の標識に特異的に結合する検出剤によって検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはジゴキシゲニンで標識され、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合はHRPがコンジュゲートされた抗ジゴキシゲニン抗体によって検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはルテニウムで標識され、抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合は電気化学発光アッセイによって検出される。
別の態様において、本発明は、(a)治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体であって、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性がIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である抗体;及びb)IgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドを含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットを提供する。本願明細書で提供されるいかなるミュータント治療抗体が用いられてもよい。本願明細書に記載されるいかなるFcεRIαポリペプチドが用いられてもよい。いくつかの実施態様において、過剰量のFcεRIαポリペプチドがキットに提供される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識されている。いくつかの実施態様において、キットは、FcεRIαポリペプチド上の標識に特異的に結合する検出剤をさらに含む。いくつかの実施態様において、キットは、抗ヒトIgE抗体をさらに含む。いくつかの実施態様において、抗ヒトIgE抗体は標識されている。
別の態様においては、本発明は、以下の工程を含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するための方法を提供する:(a)抗薬剤抗体を含み得る試料を過剰量のヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドとプレインキュベートする工程;(b)工程(a)でプレインキューベートされた試料を治療的抗IgE抗体又は治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体と共にインキュベートする工程であって、ミュータント治療抗体のヒトIgEへの相対的結合親和性は治療抗体の前記ヒトIgEへの相対的結合親和性と比較して減少している工程;及び(c)抗薬剤抗体の治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体への結合を検出する工程。
本願明細書で提供されるいかなるミュータント治療抗体が用いられてもよい。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含み、ミュータント治療抗体のヒトIgEへの相対的結合親和性は治療的抗IgE抗体の前記ヒトIgEへの相対的結合親和性の約10%以下である。
いくつかの実施態様において、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍又は少なくとも約10倍の過剰なFcεRIαポリペプチドが工程(a)において試料と共にプレインキュベートされる。本願明細書で提供されるいかなるFcεRIαポリペプチドが用いられてもよい。
いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体は、工程(b)における試料とのインキューベーションの前又は後に、表面に接続される。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体は、工程(b)における試料とのインキューベーションの前に、表面に直接固定される。
いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体は標識され、標識に特異的に結合する固定された捕捉剤によって表面に接続される。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体は、ビオチンで標識され、ストレプトアビジン被覆表面に接続される。
いくつかの実施態様において、抗薬剤抗体の治療抗体又はミュータント治療抗体への結合は、HRPがコンジュゲートされた抗ヒトIgE抗体によって検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識されており、抗薬剤抗体の治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体への結合は標識を検出することによって検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはジゴキシゲニンで標識されており、抗薬剤抗体の治療抗体又はミュータント治療抗体への結合はHRPでコンジュゲートされた抗ジゴキシゲニン抗体によって検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはルテニウムで標識されており、抗薬剤抗体の治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体への結合は電気化学発光アッセイによって検出される。
別の態様において、本発明は、(a)治療的抗IgE抗体又はそのミュータント治療抗体であって、ミュータント治療抗体は治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含み、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性はヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性と比較して減少している、抗体;及び(b)ヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドを含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットを提供する。本願明細書で提供されるいかなるミュータント治療抗体が用いられてもよい。いくつかの実施態様において、キットは抗ヒトIgE抗体をさらに含む。いくつかの実施態様において、抗ヒトIgE抗体は標識されている。本願明細書で提供されるいかなるFcεRIαポリペプチドが用いられてもよい。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識されている。いくつかの実施態様において、キットは、FcεRIαポリペプチド上の標識に特異的に結合する検出剤をさらに含む。
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定する方法を提供する:(a)患者の試料を治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体と接触させる工程であって、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である工程;及び(b)ミュータント治療抗体へのIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の結合を検出する工程であって、試料中の抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す、工程。
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定する方法を提供する:(a)患者の試料を治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体と接触させる工程であって、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の活性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の活性の約10%以下である工程;及び(b)ミュータント治療抗体へのIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の結合を検出する工程であって、試料中の抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す、工程。
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定する方法を提供する:(a)患者の試料を(i)ミュータント治療抗体及び(ii)ヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドと接触させる工程であって、ミュータント治療抗体は治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含み、ミュータント治療抗体のヒトIgEへの相対的結合親和性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である工程;(b)表面にミュータント治療抗体を接続させる工程;及び(c)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出する工程であって、試料中の抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す、工程。
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定する方法を提供する:(a)患者の試料を過剰量のヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドと共にプレインキュベートする工程;(b)工程(a)でプレインキュベートされた試料を治療的抗IgE抗体又は治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体と共にインキュベートする工程であって、ミュータント治療抗体のヒトIgEへの相対的結合親和性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性と比較して減少している、工程;及び(c)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出する工程であって、試料中の抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す、工程。
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、IgE媒介性疾患を有する患者を治療する方法を提供する:(a)患者の試料中の治療的抗IgE抗体に対するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体のレベルを測定する工程;(b)試料中の抗薬剤抗体のレベルが、患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示さない場合、患者に治療的抗IgE抗体の有効量を投与する工程。抗薬剤抗体のレベルは、本願明細書で提供されるいかなる方法によって測定されてもよい。
別の態様において、本発明は、試料中で治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットの調製における、治療的抗IgEにおいて少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体の使用を提供し、検出は以下の工程を含む:(a)抗薬剤抗体を含みうる試料をミュータント治療抗体と接触させる工程であって、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である工程;及び(b)ミュータント治療抗体への抗薬剤抗体の結合を検出する工程。
別の態様において、本発明は、試料中で治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットの調製における、治療的抗IgEにおいて少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体抗体の使用を提供し、検出は以下の工程を含む:(a)抗薬剤抗体を含みうる試料をミュータント治療抗体と接触させる工程であって、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の活性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の活性の約10%以下である工程;及び(b)ミュータント治療抗体への抗薬剤抗体の結合を検出する工程。
別の態様において、本発明は、試料中で治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットの調製における(i)ミュータント治療抗体及び(ii)ヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドの使用を提供し、検出は以下の工程を含む:(a)抗薬剤抗体を含み得る試料と、(i)ミュータント治療抗体及び(ii)FcεRIαポリペプチドを接触させる工程であって、ミュータント治療抗体は治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含み、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である、工程;(b)表面にミュータント治療抗体を接続する工程;及び(c)ミュータント治療抗体への抗薬剤抗体の結合を検出する工程。
別の態様において、本発明は、試料中で治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットの調製における(i)治療的抗IgE抗体又は治療的抗IgE工程において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体、及び(ii)ヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドの使用を提供し、検出は以下の工程を含む:(a)抗薬剤抗体を含み得る試料を過剰量のFcεRIαポリペプチドと共にプレインキュベートする工程;(b)工程(a)でプレインキューベートされた試料を、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体と共にインキュベートする工程であって、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性は、前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性と比較して減少している、工程;及び(c)治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体への抗薬剤抗体の結合を検出する工程。
別の態様において、本発明は、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定するためのキットの調製における、治療的抗IgE工程において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体の使用を提供し、同定は以下の工程を含む:(a)患者の試料をミュータント治療抗体と接触させる工程であって、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性が前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である工程;及び(b)ミュータント治療抗体へのIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の結合を検出する工程であって、抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す、工程。
別の態様において、本発明は、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定するためのキットの調製における、治療的抗IgE工程において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体の使用を提供し、同定は以下の工程を含む:(a)患者の試料をミュータント治療抗体と接触させる工程であって、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の活性が前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の活性の約10%以下である工程;及び(b)ミュータント治療抗体へのIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の結合を検出する工程であって、試料中の抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す、工程。
別の態様において、本発明は、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定するためのキットの調製における(i)ミュータント治療抗体、及び(ii)ヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドの使用を提供し、同定は以下の工程を含む:(a)患者の試料と、(i)ミュータント治療抗体及び(ii)FcεRIαポリペプチドを接触させる工程であって、ミュータント治療抗体は治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含み、ヒトIgEへのミュータント治療抗体の相対的結合親和性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性の約10%以下である、工程;(b)表面にミュータント治療抗体を接続する工程;及び(c)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出する工程であった、試料中の抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルが、患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す、工程。
別の態様において、本発明は、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定するためのキットの調製における(i)ヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチド、及び(ii)治療的抗IgE抗体又は治療的抗IgE抗体において少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体の使用を提供し、同定は以下の工程を含む:(a)患者の試料を過剰量のFcεRIαポリペプチドと共にプレインキュベートする工程;(b)工程(a)でプレインキュベートされた試料を治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体と共にインキュベートする工程であって、ミュータント治療抗体のヒトIgEへの相対的結合親和性は前記ヒトIgEへの治療的抗IgE抗体の相対的結合親和性と比較して減少している、工程;及び(c)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出する工程であって、試料中の抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す、工程。
別の態様において、本発明は、治療的抗IgE抗体を含むIgE媒介性疾患を有する患者を治療するための組成物であって、患者の試料中の治療的抗IgE抗体に対するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体のレベルが測定され、試料の抗薬剤抗体のレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示さない、組成物を提供する。別の態様においては、本発明は、IgE媒介性疾患を有する患者を治療するための治療的抗IgE抗体であって、患者の試料中の治療的抗IgE抗体に対するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体のレベルが測定され、試料の抗薬剤抗体のレベルは患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示さない、治療的抗IgE抗体を提供する。
本明細書に記載される様々な実施態様の特性の一つ、一部又は全ては、本発明の他の実施態様と組み合わせてもよいことは理解されるべきである。本発明のこれら及び他の態様は、当業者にとって明白となる。
図1Aは、抗体E25の軽鎖アミノ酸配列(配列番号:1)を示す。図1Bは、抗体E25の重鎖アミノ酸配列(配列番号:2)を示す。Kabatに定義されるCDR領域が括弧で表されているのに対して、Chothiaに定義されるCDR領域はボールドで示されている。
図2Aは、精製されたヒトIgEへのE25及びE25−AAAミュータントの結合親和性を比較するELISAアッセイの図表示である。図2Bは、ヒトIgEへのE25の結合と比較したヒトIgEへのE25−AAAミュータントの結合を示すグラフである。E25−AAAミュータントは、IgEに対してE25より約100x少ない親和性を有した。
図3は、治療的抗IgE抗体についての活性アッセイの図表示である。
図4Aは、E25−AAAミュータントへのAME2の結合と比較したE25へのAME2の結合を示すグラフである。図4Bは、E25−AAAミュータントへのAME10の結合と比較したE25へのAME10の結合を示すグラフである。図4Cは、E25−AAAミュータントへのAME1の結合と比較したE25へのAME1の結合を示すグラフである。図4Dは、E25−AAAミュータントへのAME7の結合と比較したE25へのAME7の結合を示すグラフである。図4Eは、E25−AAAミュータントへのAME9の結合と比較したE25へのAME9の結合を示すグラフである。図4Fは、E25−AAAミュータントへのAME13の結合と比較したE25へのAME13の結合を示すグラフである。図4Gは、E25−AAAミュータントへのAME4の結合と比較したE25へのAME4の結合を示すグラフである。図4Hは、E25−AAAミュータントへのAME5の結合と比較したE25へのAME5の結合を示すグラフである。
図5は、アッセイ系のポジティブコントロール抗体として設計されたE25特異的なIgEキメラ抗体を示す。キメラ抗体の可変領域は、E25のFab断片に特異的に結合する抗体AME2からのものであり、キメラ抗体の定常領域はヒトIgE抗体からのものである。
図6Aは、E25抗体又はE25−AAAミュータント抗体へのキメラE25特異的IgEポジティブコントロール抗体の結合を試験するためのアッセイ系の図表示である。図6Bは、キメラE25特異的なIgEポジティブコントロール抗体が同程度の親和性でE25及び25−AAAミュータントと結合することを示すグラフである。
図7は、E25−AAAミュータント抗体を用いた、IgEアイソタイプのE25−特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。
図8は、E25−AAAミュータント抗体を用いたIgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの感度を測定するためのE25特異的IgE標準曲線を示す。この図は、図7に記載されるアッセイフォーマットを用いた結果を示す。
図9は、漸増濃度のE25存在下で、E25−AAAミュータント抗体を用いたIgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの薬剤耐性を示す。
図10は、半均一系ELISAフォーマットを用いた、IgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。
図11は、半均一系MSD−ECLAフォーマットを用いた、IgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。
図12は、「ブロッキング」均一系ELISAフォーマットを用いた、IgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。
図13は、「ブロッキング」均一系ELISAフォーマットを用いた、IgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。
図14は、均一系MSD−ECLAフォーマットを用いた、IgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。
図15は、半均一系ELISAフォーマットを用いた、IgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。図15の左パネルは、ビオチン標識E25(又はビオチン標識E25ミュータント)を用いたアッセイを示す。図15の右パネルは、E25(又はE25ミュータント)を用いたアッセイを示す。
図16は、半均一系ELISAフォーマットを用いた、IgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。図16の左パネルは、ビオチン標識E25(又はビオチン標識E25ミュータント)を用いたアッセイを示す。図16の右パネルは、E25(又はE25ミュータント)を用いたアッセイを示す。
図17は、半均一系MSD−ECLAフォーマットを用いた、IgEアイソタイプのE25特異的抗体を検出するためのアッセイの図表示である。図17の左パネルは、ビオチン標識E25(又はビオチン標識E25ミュータント)を用いたアッセイを示す。図17の右パネルは、E25(又はE25ミュータント)を用いたアッセイを示す。
発明の詳細な説明
本発明は、治療的抗IgE抗体(例えばオマリズマブ、XOLAIR(登録商標))に特異的なIgEアイソタイプ抗薬剤抗体を検出するのに有用な方法及び試薬を提供する。内因性IgEが治療的抗IgE抗体に特異的なIgEの検出を干渉することから、そのようなアッセイの開発に伴う課題には、内因性IgE(抗IgE治療抗体による結合に利用可能なFc領域を有するIgE)と治療的抗IgE抗体に特異的なIgEとを区別することの困難性が含まれる。本発明は、内因性IgEと、治療的抗IgE抗体に特異的なIgEとを識別することができ、治療的抗IgE抗体に特異的なIgEを特異的に検出することができる方法及び試薬を提供する。
A.一般的な技術
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技術を用いる。このような技術は、例えば次のような文献に詳しく説明されている:「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版 (Sambrook 等, 1989); 「Oligonucleotide Synthesis」 (M. J. Gait編, 1984); 「Animal Cell Culture」 (R. I. Freshney編, 1987); 「Methods in Enzymology」 (Academic Press, Inc.); 「Current Protocols in Molecular Biology」 (F. M. Ausubel等編,1987, 及び定期的更新版); 「PCR: The Polymerase Chain Reaction」,(Mullis等編,1994)。
特に明記しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を持つ。Singleton等, Dictionary of Microbiology 及び Molecular Biology 第2版, J. Wiley & Sons (New York, N.Y. 1994), 及び March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms 及びStructure 第4版, John Wiley & Sons (New York, N.Y. 1992) は、本願において使用される多くの用語に対する一般的な指針を当業者に提供する。
B.定義
本明細書で使用される「抗薬剤抗体」とは、可変領域が治療的抗IgE抗体に結合している抗体である。例えば、本明細書に記載の治療用抗体オマリズマブ(E25)に結合する可変領域を有する抗体は、抗薬剤抗体である。
用語「抗体」とは、本明細書で最も広い意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の生物活性を示す限り、抗体断片を含む。
「抗体断片」とは、完全長抗体の一部分、一般に完全長抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies);直鎖状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
「Fab」断片は、軽鎖の可変及び定常ドメインと重鎖の可変ドメイン及び第一定常領域(CH1)を含む。F(ab)’2抗体断片には一対のFab断片が含まれ、これは通常、ヒンジシステインによってそれらのカルボキシ末端付近に共有結合する。抗体断片の他の化学結合も知られている。
「Fv」は、完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この断片は、一本の重鎖及び一本の軽鎖可変領域ドメインが、堅固な非共有結合をなしたダイマーからなる。これら二つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識し結合する能力を有している。
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る変異体(通常少量で存在する変異体など)を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。このようなモノクローナル抗体は、通常、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られる。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの唯一のクローンの選択とすることができる。重要なのは、選択された標的結合配列を更に変化させることにより、例えば標的への親和性の向上、標的結合配列のヒト化、細胞培養液中におけるその産生の向上、インビボでの免疫原性の低減、多選択性抗体の生成等が可能になること、並びに、変化させた標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体の調製物は、他の免疫グロブリンで通常汚染されていないという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で作製しなければならないことを意味するものではない。本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例: Kohler等, Nature,256:495(1975); Harlow等, Antibodies: Laboratory Manual, (ColdSpring Harbor Laboratory Press, 第2版1998 ); Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier, N.Y.,1981)のHammerling等)、組換えDNA法(参照例:米国特許第4816567号)、ファジーディスプレイ法(参照例: Clackson等, Nature, 352:624-628 (1991); Marks等, J.Mol. Biol., 222:581-597 (1991); Sidhu等, J. Mol. Biol. 338 (2): 299-310 (2004); Lee等, J.Mol. Biol. 340 (5) : 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004); 及びLee等J. Immunol. Methods 284 (1-2) : 119-132 (2004)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子あるいはヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部もしくは全てを有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生するための技術(参照例: 国際公開第1998/24893号; 国際公開第1996/34096号; 国際公開第1996/33735号; 国際公開第1991/10741号; Jakobovits等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993); Jakobovits等, Nature, 362:255-258 (1993); Bruggemann等, YearinImmuno., 7:33 (1993); 米国特許第5545806号; 第5569825号;第5591669号 (全てGenPharm); 第5545807号;国際公開第1997/17852号;米国特許第5545807号;第5545806号;第5569825号;第5625126号;第5633425号;及び第5661016号; Marks等, Bio/Technology, 10:779-783 (1992); Lonberg等, Nature ,368:856-859(1994); Morrison, Nature, 368:812-813 (1994); Fishwild等, Nature Biotechnology, 14:845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology, 14:826 (1996); 及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev .Immunol., 13:65-93 (1995)のような種々の手法によって作られる。
ここで、モノクローナル抗体は特に、「キメラ」抗体を含む。「キメラ」抗体(免疫グロブリン)は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体、又は特定の抗体クラスもしくは抗体サブクラスに属する抗体における対応配列と同一又は相同であり、一方、該鎖の残部が、別の種に由来する抗体、又は別の抗体クラスもしくは抗体サブクラスに属する抗体、及び所望の生物活性を示す限りはそのような抗体の断片における対応配列と同一又は相同である(米国特許第4816567号、及びMorrison等 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81: 6851-6855 (1984))。ここで使用されるヒト化抗体は、キメラ抗体のサブセットである。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント又は受容体抗体)である。いくつかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体において見い出されない残基を含み得る。これらの修飾は、結合親和性などの抗体性能をさらに改良するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、通常は2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全て又は実質的に全てが上ヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域は、結合親和性を改良する一又は複数のアミノ酸置換を含み得る。FRにおけるこのようなアミノ酸の置換数は通常、重鎖で6、軽鎖で3にすぎない。.また、ヒト化抗体は、場合によっては、免疫グロブリン、通常はヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。更なる詳細については、Jones 等., Nature 321: 522-525 (1986); Reichmann等, Nature 332: 323-329 (1988); 及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はヒト抗体を製造するための任意の周知技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
本明細書で使用される用語「超可変領域」、「HVR」又は「HV」は、配列が超可変であるか、及び/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、VH(H1、H2、H3)に3つ、及びVL(L1、L2、L3)に3つの6つのHVRを含む。天然抗体において、H3及びL3は6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3は抗体に高度な特異性を付与するのに独特の役割を果たすと考えられている。例として、Xu等, Immunity 13: 37-45 (2000); Methodsin Molecular Biology 248: 1-25 (Lo, 編, Human Press, Totowa, NJ, 2003)のJohnsonand Wuを参照のこと。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は、軽鎖の不存在下で機能的で安定である。例として、Hamers-Casterman等 ,Nature363:446-448 (1993); Sheriff 等, Nature Struct .Biol. 3:733-736(1996)を参照のこと。
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。Kabat相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat等., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及してい(Chothia及びLesk J.Mol. Biol. 196: 901-917 (1987))。AbM HVRは、KabatHVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の解析に基づく。これらの各HVRからの残基は以下に記される。
HVRは、次のような「拡大HVR」を含むことができる:VLの24−36又は4−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)。可変ドメイン残基には、これら各々を定義するために上掲のKabat等に従って番号を付した。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義しているHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
用語「Kabatの可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatのアミノ酸位置のナンバリング」及びそれらの変形は、上掲のKabat等の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに対して用いられるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを用いると、実際の線状のアミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVRの短縮物又はそれらへの挿入物に相当する、より少ないアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatによれば残基52a)及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、Kabatによれば残基82a、82b及び82cなど)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、「標準的な」Kabatナンバリングされた配列と、抗体の配列相同性がある領域において配列比較することによって、所与の抗体について決定され得る。
Kabatナンバリングシステムは一般に、可変ドメイン内の残基(およそ軽鎖の残基1−107及び重鎖の残基1−113)を指す場合に用いられる(例として、Kabat等, Sequences of Immunological Interest. 第5版. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991) 参照)。免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合には、一般に「EUナンバリングシステム」又は「EUインデックス」を用いる(参照例:上掲のKabat等に記載のEUインデックス)。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。本明細書では、特に明記しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、Kabatナンバリングシステムによって番号付けする残基を意味する。本明細書では、特に明記しない限り、抗体の定常ドメイン内の残基番号の参照は、EUナンバリングシステムによって番号付けする残基を意味する(参照例:米国特許仮出願第60/640323号、EUナンバリングの図)。
用語「Fc領域」は、インタクトな抗体のパパイン消化によって生成され得る免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。Fc領域は天然配列Fc領域又は変異Fc領域であってもよい。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はおよそCys226の位置又はおよそPro230の位置のアミノ酸残基からFc領域のカルボキシル末端まで伸長すると定義される。免疫グロブリンのFc領域は一般に、CH2ドメインとCH3ドメインの2つの定常ドメインを含み、場合によってCH4ドメインを含む。本明細書中の「Fc領域鎖」は、Fc領域の2つのポリペプチド鎖の1つを意味する。
一般的に、「結合」又は「特異的結合」とは、2つの分子が十分な親和性をもって結合することを指す(抗体と一又は複数の標的、抗IgE抗体とIgE、及び抗薬剤抗体と薬剤など)。無関係な分子への抗体の結合の程度は、好ましくは、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体の標的への結合の約10%未満である。いくつかの実施態様において、標的に結合する抗体の解離定数(Kd値)は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、又は≦0.1nMである。
一般的に、「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の一価の相互作用の総和の強度を指す。本明細書では、特に明記しない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当該技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は通常、抗原にゆっくり結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は通常、抗原により速く結合し、より長く結合を維持する傾向がある。結合親和性の種々の測定方法は当該技術分野において周知であり、それらの何れも本発明の目的ために用いることができる。結合親和性を測定するための具体的な実例であって例示的な実施態様を以下に記載する。
一実施態様では、本発明に記載の「Kd」又は「Kd値」は、以下のアッセイで説明するように、目的の抗体のFab型とその抗原を用いて実施する放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。非標識抗原の滴定系列の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原とFabとを平衡させた後、結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートに捕捉することによって、抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する(例としてChen 等, J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)を参照)。アッセイ条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)にて一晩コートして、その後2%(w/v))のウシ血清アルブミンを含むPBSにて室温(およそ23℃)で2〜5時間ブロックする。非吸着プレート(Nunc#269620)に、100pM又は26pMの(125I)−抗原を段階希釈した目的のFabと混合させる(例えば、Presta等, Cancer Res. 57: 4593-4599(1997) の抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致)。次いで目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションは平衡状態に達したことを確認するまで長時間(例えばおよそ65時間)かかるかもしれない。その後、混合物を捕捉プレートに移し、室温でインキュベートする(例えば1時間)。次いで、溶液を取り除き、プレートを0.1%のTween−20TMを含むPBSにて8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MICROSCINT−20TM;Packard社製)を加え、プレートをTOPCOUNTTMガンマカウンター(Packard社製)で10分間計測する。それぞれ最大結合の20%以下の濃度のFabを選択して競合結合アッセイに用いる。
他の実施態様に従って、−10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIACORE(登録商標)−2000又はBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイを使用してKd値を測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化する。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(−0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入する。抗原の注入後、未反応群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。反応速度論的な測定のために、Fabの2倍の段階希釈(0.78nMから500nM))を、25℃で、およそ25μl/分の流速で0.05%TWEEN−20(商標)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入する。会合センサーグラム及び解離センサーグラムを同時にフィットさせることによる単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)をkoff/kon比として算出する。例えば、Chen等,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照のこと。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる会合速度が106M−1s−1を上回る場合、会合速度は、分光計、例えば流動停止を備えた分光光度計(Aviv Instruments社製)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCOTM分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される漸増濃度の抗原の存在下、25℃、PBS(pH7.2)中20nM抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて測定することができる。
本発明に記載の「会合速度(「on−rate」、「rate of association」、「association rate」、又は「kon」)」は、BIACORE(登録商標)−2000又はBIACORE(登録商標)−3000システム(BlAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用して上に記載の通り決定することもできる。
本明細書で使用される用語「実質的に類似」又は「実質的に同じ」は、当業者が、二つの値の間の差異が、前記値(例えば、相対結合親和性値)によって測定される生物学的特性という脈絡の中で、わずかに又は全く生物学的及び/又は統計学的有意性がないと考えるであろうほどの、二つの数値(例えば、一つは本発明の抗体に関連するもの、他方は参照/比較抗体に関連するもの)の間の十分に高い類似性を意味する。前記二つの値の間の差異は、参照/比較値に応じて、例えば約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、及び/又は約10%以下である。
用語「試料」は、本明細書で用いているように、目的の被検体から得た組成物を指す。試料には、限定されないが、個体の全血、血清又は血漿が含まれる。
「全IgE」は、非結合遊離IgE及び結合パートナーとの複合体を形成するgEを含む、試料中に存在するIgEの総量を指す。「遊離IgE」は、結合パートナーに結合しないIgEを指す。
本明細書で用いる「被検体」、「個体」又は「患者」は、哺乳類、より好ましくはヒトである。哺乳類には、限定されないが、ヒト、霊長類、家畜、競技用動物(例えば、ウマ)、げっ歯類並びにペット(例えば、イヌ及びネコ)が挙げられる。
「評価を補助する」ための方法は、本明細書で用いているように、臨床的判断(例えばアナフィラキシーのリスク)を下す際の支援の方法を指し、最終的な評価に関して決定的であってもなくてもよい。
「基準値」は、本明細書で用いているように、絶対値;相対値;上限及び/又は下限を有する値;数値の範囲;算術平均値(average value);中央値;平均値(mean value)、又は特定のコントロール値もしくはベースライン値と比較した場合の値であり得る。
用語「検出すること」又は「検出」は、特定の分子の定性的及び定量的測定の両方、本明細書においては例えばIgE又は抗薬剤抗体などの特定の被分析分子の測定を含むようにもっとも広い意味で使用される。一態様において、本明細書に記載の検出方法は、試料中の目的の被分析分子の存在を単に確認するために用られる。別の態様において、検出方法は、試料中の被分析分子の量を定量するために用いられる。更に別の態様において、該方法は、目的の被分析分子の標的分子への相対的結合親和性を決定するために用いられる。
用語「検出剤(「detecting agent」、「detection agent」)及び「検出試薬(「detecting reagent」、「detection reagent」)は互換的に使用され、検出剤に結合可能な、蛍光標識、酵素標識、放射性標識又は化学発光標識等の標識を介して直接的に、あるいは検出剤と特異的に結合する抗体又は受容体等の標識結合パートナーを介して間接的に、被分析分子を検出する薬剤を指す。検出剤の例には、限定されないが、抗体、抗体断片、可溶型受容体、受容体断片などが含まれる。
「相関」又は「相関する」は、任意の方法で、第一の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果を、第二の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコルを行う際に第一の分析又はプロトコルの結果を用いてもよいし、及び/又は第一の分析又はプロトコルの結果を用いて、第二の分析又はプロトコルを行うかどうかを決定してもよい。
用語「アッセイ表面」又は「表面」は、イムノアッセイで使用するために、捕捉剤が表面上に固定化されている基質を意味する。好適なアッセイ表面としては、重合アッセイプレート、流動性カード(fluidity cards)、電磁ビーズ、樹脂、セルロースポリマースポンジなどが挙げられる。
用語「結合ドメイン」は、他の分子に結合するポリペプチドの領域を指す。Fc受容体ポリペプチドすなわちFcRの場合に結合ドメインは、免疫グロブリン又は他のFc領域を含む分子のFc領域への結合を担っているそのポリペプチド鎖(例えばそのα鎖)の一部分を含むことができる。一つの有用な結合ドメインはFc受容体α鎖ポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)である。本明細書に記載するように、FcεRIα鎖の細胞外ドメインは、Ig、例えばIgEのFc領域に結合する結合ドメインを含む。
用語「捕捉剤」又は「捕捉試薬」は、試料中の標的分子又は被分析分子を結合し捕捉することができる薬剤を指す。通常、捕捉剤又は捕捉試薬は、微小粒子又はビーズ、マイクロタイタープレート、カラム樹脂、チップ、流動性カード、磁気ビーズ、セルロースポリマースポンジなどの固体基質上に、例えば、固定化されている。捕捉剤は、抗原、可溶性受容体、抗体、異なる抗体の混合物などであり得る。
「キメラ」ポリペプチドとは、その中のポリペプチド配列の一部分が一つの種に由来し、一方、他の少なくとも一つの部分が異なる種由来の配列に相当している、ポリペプチドである。
用語「標識」は、本明細書に用いる場合、例えば核酸プローブ、ポリペプチド又は抗体などの試薬に直接的もしくは間接的にコンジュゲート又は縮合している化合物又は組成物を指し、それがコンジュゲート又は縮合している試薬の検出又は捕捉を容易にする。標識は、それ自体が検出可能なもの(例えば放射性標識、蛍光性標識、光輝標識、化学発光標識又は電気化学発光標識)、他の分子と結合した後に検出可能なもの、あるいは酵素標識の場合、検出可能な基質化合物又は組成物の化学変成を触媒するものであってもよい。
用語「標的分子」は、被分析分子の特定の結合標的を指す。被分析分子が抗体の場合、標的分子は、例えば抗原であり得る。標的分子は例えば、治療活性を有するポリペプチド又は抗体であり得る。一実施態様において、標的分子は治療的抗体であり、被分析分子は治療的抗体に結合する抗薬剤抗体である。
「被分析物」及び「被分析分子」は、本明細書で用いているように、本発明の方法によって分析される分子を指し、限定されないが、それは抗薬剤抗体を含む。
「治療すること(treating)」又は「治療(treatment)」治療されている個体又は細胞の自然の経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過においての何れかで実施できる。治療の望ましい効果は、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な任意の病理学的帰結の低減、疾患の進行速度を遅らせること、病状の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の治療的抗体は、疾患又は障害の発症を遅らせるため、あるいは疾患又は障害の進行を遅らせるために使用される。
「有効量」とは、所望の治療的又は予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。治療剤の「治療的有効量」は、個体の病状、年齢、性別及び体重、また、個体に所望の反応を引き出すための本発明の抗体の能力等の要因によって変わり得る。また、治療的有効量とは、治療剤の毒性又は有害作用よりも治療的に有益な作用が上回る量である。「予防的有効量」とは、所望の予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。必ずではないが、通常、予防的用量は、疾病の前又は初期の段階に被検体に使用されるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ない。
「保守的置換」は、本明細書で用いているように、選択したアミノ酸を、特性において実質的に違いのない別のアミノ酸と置き換えることである。アミノ酸の特性による分類は、正荷電アミノ酸:Lys,Arg,His;負荷電アミノ酸:Asp,Glu;アミドアミノ酸:Asn,Gln;芳香族アミノ酸:Phe,Tyr,Trp;疎水性アミノ酸:Pro,Gly,Ala,Val,Leu,Ile,Met;及び非荷電親水性アミノ酸:Ser,Thr。好ましい保守的アミノ酸置換を以下に示す:
保存的アミノ酸置換
用語「タンパク質」、「ペプチド」及び「ポリペプチド」は、アミノ酸ポリマー又は二つ以上の相互作用もしくは結合したアミノ酸ポリマーのセットを表すために互換的に使用される。
「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸を含むペプチド又はタンパク質を指し、ペプチド、オリゴマー、タンパク質などを含む。ポリペプチドは、天然か、又は修飾されたか合成されたアミノ酸を含み得る。またポリペプチドは、例えば翻訳後プロセシングによって天然に、又はアミド化、アシル化、架橋など化学的に修飾され得る。
本明細書で用いているように、「a」、「an」及び「the」は、特に明記しない限り、単数又は複数(すなわち、一又は複数)を意味する。
本明細書における「およそ」の値又はパラメーターへの言及は、その値又はパラメーター自体に対する実施態様を含む(記載する)。例えば、「およそX」との記載には「X」の記載が含まれる。
本明細書に記載の本発明の態様及び変形形態は、態様及び変形形態「からなる」及び/又は「本質的にからなる」を含む。
C.発明の方法
本発明は、治療的抗IgE抗体.に特異的に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するのに有用な方法及び試薬を提供する。本発明はまた、個体由来の試料中の治療的抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の存在及び/又は量を測定すること、並びに試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の存在及び/又は量に基づいてアナフィラキシーのリスクを評価することによって、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシーのリスクを有する個体を同定する方法を提供する。本発明は、IgE媒介性疾患を有する個体を治療するための方法であって、個体由来の試料中の治療的抗IgE抗体に対する抗薬剤抗体の存在及び/又は量を決定すること、並びに、試料中の抗薬剤抗体の量により個体が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクをも持たないことが示される場合、その個体に対して治療的抗IgE抗体の有効量を投与することを含む、方法を更に提供する。
治療的抗IgE抗体及びミュータント治療抗体
本発明の方法は、抗IgE治療的抗体に特異的に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するのに有用である。このようなアッセイを展開することの難しさは、抗IgE抗体が標的とする内因性IgEへの結合と、抗IgE抗体に特異的に結合するIgE(すなわち、IgEアイソタイプの抗薬剤抗体)への結合を識別する能力にある。いくつかの実施態様において、IgEはヒトIgEである。
本明細書で用いているように、「抗IgE抗体」又は「治療的抗IgE抗体」は、IgEの高親和性受容体(FcεRI)への結合を阻害するか又は実質的に減じるような方法でIgEに結合する抗体である。例示的抗IgE抗体には、例えば、E25(オマリズマブ)、E26、E27、並びにCGP−5101(Hu−901)及びHA抗体が含まれる。重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列、並びにヒト化抗IgE抗体E25、E26とE27の完全長重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、例えば米国特許第6172213号(図2と12)及び国際公開第99/01556号に開示されている。CGP−5101(Hu−901)抗体はCorne等,1997,J.Clin.Invest.99(5):879-887、国際公開第92/17207号、及びATTC受託番号BRL−10706、11130、11131、11132及び11133に記載されている。図1に抗IgE抗体E25(オマリズマブ)の完全長アミノ酸配列を示す。HA抗体は、国際公開第2004/070011号及び国際公開第2004/070010号の実施例10、表2に示されている抗体MAb2(CL−2C)である。HA抗体を産生する細胞株は、2003年12月3日にアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)へ、ATCC番号PTA−5678として寄託された。
いくつかの実施態様において、本発明の方法は、IgE(ヒトIgEなど)に対して非修飾の治療的抗IgE抗体よりも有意に低い結合親和性(相対結合親和性を含む)及び/又は有効性を有するミュータント抗IgE抗体を用いる。ミュータント治療抗IgE抗体は、次の特性を一つ以上有するように設計される:a)ミュータント抗体のIgEへの結合親和性(相対的結合親和性を含む)が、治療的抗IgE抗体のIgEへの結合親和性(相対的結合親和性を含む)の約10%以下である;b)ミュータント抗体のIgEへの活性が治療的抗IgE抗体の活性の約10%以下である;c)ミュータント抗体が治療的抗IgE抗体と同じが類似の三次構造を有する;d)ミュータント抗体が治療的抗IgE抗体と同じか同程度のグリカンレベルを有する;e)ミュータント抗体が一つ以上のコントロールの抗薬剤抗体に対し、治療的抗IgE抗体と同じが同程度の結合親和性を有する。IgEへの相対的結合親和性及び/又は活性を低下させるのに有効な可変領域におけるアミノ酸変異の最小数を有するミュータント治療抗体を、本明細書に記載のアッセイにおける使用のために選択することができる。いくつかの実施態様において、ミュータント抗体は、治療的抗IgE抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一つ以上のCDR(例えば、CDR1、CDR2及びCDR3のうちの1、2又は3つ)の1、2、3、4、5又は6つのアミノ酸変異(例えば、置換、欠失又は付加)を含む。
いくつかの実施態様において、IgEに対するミュータント抗体の活性は、治療的抗IgE抗体のIgEに対する活性の約10%以下、約7.5%以下、約5%以下、約2.5%以下、約2.0%以下、約1.5%以下、約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以又は約0.1%以下である。
いくつかの実施態様においてミュータント治療抗体のIgEへの相対的結合親和性は、治療的抗IgE抗体のIgEへの相対的結合親和性の約10%以下、約7.5%以下、約5%以下、約2.5%以下、約2.0%以下、約1.5%以下、約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以又は約0.1%以下である。
いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体はオマリズマブであり、ミュータント抗体は軽鎖の第一のCDRにおいて1、2又は3つのアミノ酸変異、及び/又は重鎖の第三のCDRにおいて一、二又は三つのアミノ酸変異を含む。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体はオマリズマブであり、ミュータント抗体は、配列番号2の重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号1の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含み、ここで配列番号1の34位、30位及び34位、32位及び34位、又は30位、32位及び34位のアミノ酸Aspは置換されている。いくつかの実施態様において、配列番号1の30位、32位及び/又は34位のアミノ酸AspはAlaで置換されている。.いくつかの実施態様において、ミュータント抗体は配列番号2の重鎖アミノ酸配列、及び配列番号1の30位、32位及び34位においてAspからAlaへのアミノ酸置換を有する配列番号1の軽鎖アミノ酸配列を含む。IgEへの相対的結合親和性及び/又は活性が治療的抗体E25の相対的結合親和性又は活性の約10%以下である、Presta等(J.Immunol.151:2623-2632,1993)に記載の任意の抗IgE抗体は本明細書に記載の方法においてミュータント治療抗体として使用される。
抗薬剤抗体は、ミュータント抗体を選別するためのコントロールとして生成及び使用される。これらのコントロール抗体は、類似の親和性で、又は等しく十分にミュータント抗体及び非修飾の治療的抗IgE抗体と結合する。いくつかの実施態様において、コントロールの抗薬剤抗体は抗IgE抗体のFab断片に結合する。いくつかの実施態様において、コントロールの抗薬剤抗体は抗IgE抗体.の一つ以上のCDRに結合する。実施例2に記載の結合アッセイは、コントロールの抗薬剤抗体(例えば、図5に示すコントロール抗体など)を使用してミュータント抗体を試験及び選別するために用いられる。アッセイ方法については、図6Aを参照のこと。
治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体の活性は、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体が、基準コントロールと比較して高い親和性を示す受容体(FcεRI)と競合的にIgEへ結合する能力を測定することによって決定される。一般的アッセイ方法には、例えばELISAやECLAなど、アッセイ表面に結合して所望の標的分子を捕捉及び固定化する捕捉剤を含むイムノアッセイが挙げられる。捕捉された標的分子は、標的分子に結合して定量化のための検出レベルを提供する検出剤を用いて検出される。
いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体の活性は、図3に示したような阻害ELISAによって決定される。漸増濃度の抗IgE抗体又はミュータント抗体は、標識されたIgEとともにインキュベートされる。混合物を、捕捉剤として固定化されたFcεRIαポリペプチドを含有するプレートに添加する。標識されたIgEに結合する抗IgE抗体又はミュータント抗体は検出可能なシグナルを低減させ、標識されたIgEの捕捉剤への結合を効率的に阻害する。したがって、試料の抗−IgE活性は検出されるシグナルに逆相関する。
本明細書に記載のFcεRIαポリペプチドは、このようなアッセイにおいてIgEに結合する捕捉剤として使用可能である。捕捉されたIgEの量は、例えばスタンダードロットもしくは既知量の抗IgE抗体を有する他のスタンダード及び/又は抗IgE抗体欠失コントロールなどのコントロールと比較可能である。標識されたIgEから検出される低減シグナルはコントロールと比較され、また、阻害の量は抗IgE抗体又はミュータント抗体の活性に相関する。
ミュータント治療抗体又は治療的抗IgE抗体のIgEへの結合親和性(相対的結合親和性を含む)はELISA又はBIAコア(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム(BIAcore,INC,Piscaway NJ)を用いて測定することができる。相対的結合親和性は、薬剤のその標的への結合を他の薬剤と比較したものである。例えば、ELISAアッセイを用いて、治療的抗IgE抗体もしくはミュータント抗体、又はその断片(例えば、Fab)を表面に固定化し、次いで上昇濃度(例えば、0.1ng/mlから10,000ng/mlへ)の精製されたIgE(例えば、ヒトIgE)を固定化された治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体とともにインキュベートする。HRPで標識した検出剤(例えば、ヤギ抗ヒトIgE抗体)を、固定化された治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体に結合した任意のIgEと結合させる。HRPによって発せられるシグナルを測定する。例えば、図2A及び2Bを参照。治療的抗IgE抗体と比較して、ミュータント治療抗体の結合親和性の相対的低下を決定する。また、相対的な結合親和性は、IgEを直接表面(ELISAプレート)に固定化し、様々な濃度の抗IgE治療抗体又はミュータント抗体とともにインキュベートし、その後HRP標識抗ヒトIgG抗体を用いて結合した抗IgE治療抗体又はミュータント抗体を検出することによっても測定可能である。固定化された治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体(例えば、Fab断片)に対するヒトIgEの結合親和性を測定するために、あるいはBIAcoreアッセイが使用され得る。
治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体の他の特性、例えば、一次構造及び三次構造並びにグリカンレベルは既知の方法を用いて試験する。
FcεRIαポリペプチド
FcεRIαポリペプチドは本明細書に記載のアッセイにおいて、捕捉剤、検出剤及び/又はブロッキング剤として使用可能である。用語「FcεRIポリペプチド」は、IgEのFc領域又はIgEのFc領域含有分子に結合するポリペプチド、及びIgEのFc領域又はIgEのFc領域含有分子に結合する受容体を形成するポリペプチドを表すために使用される。FcεRI受容体はFc受容体ポリペプチドα鎖、及びε鎖のFc受容体ポリペプチドホモダイマー又はヘテロダイマーを含み得る。FcεRIα鎖は、Fcドメイン含有物質、例えば免疫グロブリン(Ig)に結合する細胞外ドメイン(「ECD」)を包含する。FcRは、Ravetch及びKinet,1991,Annu.Rev.Immunol.9: 457-492;Capel等,1994,Immunomethods 4:25-34;及びde Haas等,1995 J.Lab.Clin.Med.126 330-341に概説がある。高親和性IgE受容体(FcεRI)の生理学及び病理学は、Kinet,1999,Annu.Rev.Immunol.17 931(-972)に概説がある。
いくつかの実施態様において、FcεRIポリペプチドは、ヒト又は非ヒト霊長類(カニクイザル、アカゲザル、チンパンジーなど)FcεRIαポリペプチドのFc結合ドメイン配列(細胞外ドメイン配列など)を含み得る。FcεRIαポリペプチドはまた、合成FcεRIαポリペプチド、FcεRIαポリペプチドの変異体、FcεRIαポリペプチドを含む融合タンパク質、及びFcεRIαポリペプチドを含むキメラタンパク質を含み得る。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、野生型のヒト又は非ヒト霊長類FcεRIαと同様の親和性でヒトIgEに結合し、ヒトIgEのCDRエピトープが治療的抗IgE抗体に結合するのをブロックしない。
未成熟FcεRIαポリペプチドは天然シグナル配列を含み、成熟ポリペプチドはシグナル配列を欠く。FcεRIαポリペプチドは天然シグナル配列を含む未成熟FcεRIαポリペプチド、及びシグナル配列を欠く成熟ポリペプチドを含む一実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、配列番号3(カニクイザル)、配列番号4(アカゲザル)、配列番号5(チンパンジー)、又は配列番号6(ヒト)のアミノ酸配列、及び配列番号3、4、5もしくは6と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列同一性を有するその変異体を含む。
FcεRIα IgE結合断片ポリペプチド
いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはFcεRIαのIgE結合断片を含む。FcεRIαのIgEj結合断片は、好ましくはIgEに対する高親和性を保持する。一実施態様において、IgE結合断片は、ヒト又は非ヒト霊長類FcεRIαの細胞外ドメイン(「ECD」)を含み、配列番号3、4、5又は6のECD又は配列番号3、4、5又は6と少なくとも90%の配列同一性を有するその変異体のECDであり得る。
カニクイザル、アカゲザル及びヒトFcεRIαのアミノ酸配列を以下の表1に示す。国際公開第08/028068号に記載の任意の非ヒト霊長類FcεRIαポリペプチドを使用してよい。
表1.霊長類FcεRIα成熟配列
FcεRIα ECDは例えば、表1で番号付けした残基V1からK171、A172、P173、H/R174、D/E175、又はFcεRIαポリペプチドのK176へと、伸長可能である。いくつかの実施態様において、FcεRIポリペプチドは次のFcεRIα ECD断片:V1−K171、V1−A172、V1−Q/P173、V1−H/R174、V1−D/E175、又はV1−K176の何れをも含む。したがって例示的FcεRIα ECDポリペプチドは、配列番号3、4、5又は6のV1からK171、V1からA172、V1からP173、V1からH/R174、V1からD/E175又はV1からK176の残基、及び配列番号3、4、5又は6と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の同一性を有するその変異体の残基を含むポリプチドである。
更に断片には、IgEへの高結合親和性を保持するECDの切断ミュータント及び欠失ミュータントも含まれる。
FcεRIα変異体ポリペプチド
いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは変異体FcεRIαポリペプチドを含む。変異体FcεRIαポリペプチドは、天然ポリペプチドに比べて少なくとも一つのアミノ酸置換、欠失又は挿入を有する。FcεRIα変異体は、標的残基を同じ一般的特性を有する対応する残基で置換する(例えばLysをArgに)一又は複数の保守的アミノ酸置換(本明細書に記載)が可能である。このようなアミノ酸置換はポリペプチドの全体的な機能を改変することなく行うことができる。FcεRIα変異体ポリペプチドはまた、非保守的置換も含み得る。
変異体FcεRIαポリペプチドは、第一の種のFcεRIαのアミノ酸を第二の種のFcεRIαの対応するアミノ酸で置き換える一又は複数の置換を有する。例えば、コードされたポリペプチドは、表1に示した通り、29、37、48、49、59、73、74、75、80、141、155、160、173、174又は175位で一又は複数のアミノ酸置換(但し14以下)を含む。一又は複数の置換には、例えば、以下のアミノ酸置換のうち一又は複数(且つ14未満)が挙げられる:
S29N M37T V48E A49T D59K
F73V D74N D75E H80V T141A
L155V C160Y Q173P H174R D175E
ヒトIgE−Fcドメイン/FcεRI複合体の結晶構造由来の構造情報は、Tyr160が受容体とリガンドの接触面付近に位置することを示す。この接触面においてCysが結合を妨げるため、FcεRIαポリペプチドは突然変異してCys160をチロシンと置き換え、カニクイザル及びアカゲザルFcεRIαのヒトIgEへの結合を高める。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは、Cys160からチロシンへの突然変異を含む変化したFcεRIαポリペプチドを含む。例えば、変異したカニクイザルの配列を以下に示す。
pRKgD cynoFcεRI.6xHisTyr160
キメラFcεRIαポリペプチド
いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはキメラポリペプチド、例えば、異なるFcεRIαポリペプチドの二つ以上の部分で形成されるキメラポリペプチドである。例えば、キメラFcεRIαポリペプチドは配列番号3、4、5及び6のうちの二つ以上に由来する二つ以上の部分から形成される。例示的キメラポリペプチドは、アカゲザルFcεRIα ECDの残基1−141及びカニクイザルFcεRIα ECDの残基142−171を含み、且つ配列番号12(すぐ下を参照)のアミノ酸配列を有するカニクイザル/アカゲザルキメラポリペプチドである。更にキメラポリペプチドは、ヒト/カニクイザル、ヒト/アカゲザル、ヒト/チンパンジー、カニクイザル/チンパンジー、アカゲザル/チンパンジーなどのキメラを含み、これは夫々名前を挙げた種のFcεRIα ECDの一部を含む。
rhesusSScynoFceRI.6xhis tyr160
融合タンパク質
いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは融合タンパク質、例えば、一つ以上の異種ポリペプチドと融合したFcεRIαポリペプチドである。そのような融合タンパク質はFcεRIα IgE結合断片、例えば、少なくとも、カルボキシ末端又はアミノ末端で異種ポリペプチドと融合したFcεRIα ECDを少なくとも含む。異種ポリペプチドは、任意のポリペプチドであってもよく、一般的に、融合タンパク質に特異的な特性を付与するポリペプチドである。
異種ポリペプチドは、FcεRIαポリペプチドの分泌、改善された安定性をもたらし、あるいは精製を容易にすることができる。そのようなペプチドタグの非限定的な例としては、6−Hisタグ、Gly/His6/GSTタグ、チオレドキシンタグ、ヘマグルチニンタグ、Glylh156タグ及びOmpAシグナル配列タグが含まれる。例えば、FcεRIαポリペプチドの細胞外ドメインはHisタグ、例えばGly(His)6−gstタグを含む(His)6に融合することができる。Gly(His)6−gstタグは、核酸にコードされたポリペプチドの精製を容易にする。
上記のように夫々の種のECDの用いて、FcεRIαポリペプチドの異なる形態、例えば、受容体の細胞外ドメイン(残基1−176)、6つのC末端ヒスチジン残基及びシグナル配列を含む単量体形態など、が構成され、哺乳類細胞において発現される。例えば、FcεRIαポリペプチドは、ECDの代わりにN末端の天然シグナル配列、及びHIS6タグを含む単量体形態を含む:
cyno Fc R1 (1−176) hisモノマー
FcεRIαポリペプチドはまた、以下に示す単純ペルペスウィルス(HSV)gDタンパク質のシグナル配列及び第一の27アミノ酸配列に融合したECDを含んでもよい。
いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは三つの特異的融合タンパク質の何れでもよく、夫々がFcεRIα ECD及び6XHisタグ:
gDカニクイザル FcεRIα 1−176 6Xhis (配列番号15)、
gDアカゲザル FcεRIα 1−176 6Xhis (配列番号16)、及び
gDチンパンジー FcεRIα 1−176 6Xhis (配列番号17)
に融合したHSV gDシグナル配列(下記の下線)を含む。
gDcyno FcεRIα 1−176 6XHis
gDrhesus FcεRIα 1−176 6XHis
gDchimp FcεRIα 1−176 6XHis
FcεRIαポリペプチドは、イムノアドヘシン分子を形成するために抗体の免疫グロブリン定常ドメインへ融合することもできる。例えば、融合ポリペプチドはFcεRIαポリペプチドの細胞外ドメイン及びIgGのFc部分を含み、これらはここに提供する何れの方法でも用いられる。いくつかの実施態様において、融合ポリペプチドFcεRIα−IgGは以下の配列を含む:
いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドはFcεRIαのダイマー形態を形成するIgGのFcドメインに融合するFcεRIαポリペプチドを含む融合タンパク質である。IgG Fcドメインに存在するシステイン残基が融合ポリペプチドのダイマー化を可能にする。例えば、FcεRIαをコード化する核酸断片は以下に示すIgGのFcドメインに融合する。
IgGのFcドメイン
FcεRIαポリペプチドは、免疫グロブリンGタンパク質のFcドメインに融合する、天然アカゲザルシグナル配列(SS)、アカゲザルFcεRIα ECD(残基V1−A141)の一部及びカニクイザルFcεRIα ECD(残基T142−K171)の一部を含む。IgGドメインのシステイン残基がFcεRIαポリペプチドダイマーを形成するジスルフィド結合を可能にする。いくつかの実施態様においてFcεRIポリペプチドは、以下に示す配列を有するFcεRIα−IgG融合タンパク質を含む:
rhesus (1−141)/cyno (142−171) FcεRIα−IgG融合タンパク質(1−171)
更にキメラアカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質は、配列171KAQHDKYW178の長さの増大に伴いキメラFcεRIαポリペプチドの長さを1−171から1−178へ変えることによって作られる融合タンパク質を含む。これらには以下が含まれる:
アカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質 (1−172) (配列番号21)
アカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質 (1−173) (配列番号22)
アカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質 (1−174) (配列番号23)
アカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質 (1−175) (配列番号24)
アカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質 (1−176) (配列番号25)
アカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質 (1−177) (配列番号26)
アカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質 (1−178) (配列番号27)
例えば、FcεRIαポリペプチドは以下に示す配列を有するアカゲザル/カニクイザルFcεRIα−IgG融合タンパク質(1−178)であってもよい:
rhesus/cyno FcεRIα−IgG融合タンパク質(1−178)
FcεRIαポリペプチドは、種々のキメラFcεRIαポリペプチドを産生するアカゲザル、カニクイザル、シンパンジー及びヒトFcεRIαポリペプチの種々の組み合わせによって作られるポリペプチドを含む。例えば、FcεRIαポリペプチドは、以下に示すカニクイザル/ヒトFcεRIα−IgG(1−178)を含む:
cyno/Human FcεRIα−IgG (1−178)
いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識化されている(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、ルテニウム、放射線標識、フォトルミネセンス標識、化学発光標識、蛍光標識又は電気化学発光標識)。
本発明はまた、本明細書に記載の任意のFcεRIαポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明は、完全長天然配列をコードする核酸配列、シグナル配列を欠く成熟配列、又は配列番号3、4、5又は6のポリペプチドの細胞外ドメインに少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であり得、且つ完全長天然配列をコードする核酸配列、シグナル配列を欠く成熟配列、又は天然配列の細胞外ドメインに100%未満同一である変異体ポリヌクレオチドを更に提供する。
FcεRIα核酸及びアミノ酸配列の改変は、多くの既知によって達成可能である。例えば、Walder等, 1986, Gene, 42:133; Bauer等, 1985, Gene 37:73; Craik, 1985, BioTechniques, 12-19; Smith等, 1981, Genetic Engineering: Principles 及び Methods, Plenum Press; 米国特許第4518584号,及び米国特許第473746号に記載のオリゴヌクレオチドを標的とした突然変異誘発のように、当業者に既知の方法によって特定の場所に突然変異を起こすことができる。
哺乳類動物細胞においてFcεRIポリペプチド及びFcεRIポリペプチドの発現をコードするヌクレオチドの作製方法は当業者に知られている。例えば、上述のFcεRIポリペプチドの構築形態をコードするプラスミドを、リン酸カルシウム沈殿又はFugene(登録商標)(Roche,Indianapolis,IN)トランスフェクション法の何れかを使用して293Sヒト胚腎臓細胞にトランスフェクトすることができる。トランスフェクトされた細胞培養物からの上清を、数日間の増殖させた後に回収し、カラムマトリックスに固定された、HSV gDタグに対する抗体(孔制御ガラスに固定化されたMAb5B6)、又は6Xのヒスチジン融合タグに対する金属キレート樹脂(Ni−NTAアガロース、Qiagen,Valencia,CA)を用いた親和性クロマトグラフィーを用いてFcεRIポリペプチドを精製することができる。
本明細書に記載のポリペプチド及びタンパク質(例えば、抗IgE抗体、ミュータント抗体、コントロールの抗薬剤抗体、FcεRIポリペプチドなど)は当該技術分野で知られている方法を用いて生産、単離及び精製することができる。「精製された」は、分子が試料中にそれが含まれる試料の少なくとも95重量%、又は少なくとも96、97、98もしくは99重量%の濃度で存在していることを意味する。トランスフェクション、形質転換又は形質導入などを含むがこれらに限定されない任意の組換えDNA又はRNAの手法が、本発明の標的ポリペプチドを発現する宿主細胞を作製するために使用され得る。本発明のポリヌクレオチド(その断片及び変異体を含む)を用いて宿主細胞を遺伝子操作する方法及びベクターは、当該技術分野でよく知られており、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel等編 (Wiley & Sons, New York, 1988, 及び後続版)に見い出される。例示的ベクター及び宿主細胞は下記の実施例に記載している。
宿主細胞を本明細書に記載のポリペプチドを発現するように遺伝子操作する。ベクターには、哺乳動物、微生物、ウイルス又は昆虫遺伝子に由来するものなど、好適な転写又は翻訳調節配列に動作可能に連結された、本明細書に記載の任意のポリペプチドをコードするDNAが含まれる。調節配列の例は、転写プロモーター、オペレーター、又はエンハンサー、mRNAのリボソーム結合部位、並びに転写及び翻訳を制御する適切な配列が含まれる。調節配列が機能的に標的タンパク質をコードするDNAに関連する場合、ヌクレオチド配列は動作可能に連結されている。
そのようなポリペプチドは、ポリペプチドの例えば分泌、改善された安定性、容易な精製を可能にするために含まれていてもよい。適切なシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクターに組み込むことができる。シグナルペプチドに対するDNA配列(分泌リーダー)を、標的配列に対するフレーム内に融合することができ、その結果標的タンパク質がシグナルペプチドを含む融合タンパク質に翻訳される。シグナルペプチドに対するDNA配列は、シグナルペプチドをコードする天然核酸と置換するか、あるいは天然配列シグナルペプチドをコードする核酸配列に付加することができる。目的の宿主細胞において機能的であるシグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞該分泌を促進する。好ましくは、シグナル配列は、細胞からの分泌の際に標的ポリペプチドから切断される。本発明を実施するのに使用し得るシグナル配列の非制限的な例は、酵母I−因子及びsf9昆虫細胞中のミツバチメラチン(melatin)リーダーを含む。
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子のクローニングに使用するのに適切なベクターの選択は、内部でベクターが形質転換される宿主細胞、及び、必要に応じて、標的ポリペプチドを発現する宿主細胞から決まる。ポリペプチドの発現に適した宿主細胞には、原核生物、酵母、及び高等真核細胞が含まれる。
原核生物宿主での使用のための発現ベクターは、通常、一つ以上の表現型選択マーカー遺伝子を含む。そのような遺伝子は、通常、例えば抗生物質耐性を与えるタンパク質、又は栄養要求性を付与するタンパク質をコードする。このような多種多様なベクターは、商業的供給源から容易に入手可能である。例としては、pSPORTベクター、pGEMベクター(Promega)、pPROEXベクター(LTI,Bethesda,MD)、Bluescriptベクター(Stratagene)及びpQEベクター(Qiagen)が挙げられる。
宿主細胞から産生されるポリペプチド又はタンパク質は、周知の方法を用いて更に精製することができる。
治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出する方法
一態様において、本発明は個体由来の試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出する方法であって、(a)抗薬剤抗体を含み得る試料を治療的抗IgE抗体から少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体と接触させる工程[ミュータント治療抗体のIgE(例えば、ヒトIgE)に対する相対結合親和性は、治療的抗IgE抗体のIgEに対する相対結合親和性の約10%以下である];及び(b)抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出する工程、を含む方法を提供する。
別の態様において、本発明は個体由来の試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出する方法であって、(a)抗薬剤抗体を含み得る試料を治療的抗IgE抗体から少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体と接触させる工程[ミュータント治療抗体の活性は、治療的抗IgE抗体の活性の約10%以下である];及び(b)抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出する工程、を含む方法を提供する。
当技術分野で既知の方法が、抗薬剤抗体とミュータント治療抗体の間の結合を検出するために用いられ得る。ELISA、BIAcore(登録商標)、Immunocap(登録商標)又はRIA(ラジオイムノアッセイ)アッセイが用いられ得る。アッセイは、均一、半均一、又は不均一であってよい。例えば、殆どのELISAは標的タンパク質の捕捉もしくは検出用の抗体及び/又はリガンドを使用する。このようなELISAでは、感度を最大化あるいはマトリックス干渉を低減するために、均一フォーマット、半均一フォーマット、又は不均一フォーマットの何れも使用することができる。
均一アッセイでは、液相反応中の標的タンパク質を含有するマトリックス試料と同時に、捕捉剤及び検出剤(又はリガンド)の両方をプレインキュベートするフォーマットを使用する。次いで、捕捉剤−標的タンパク質−検出剤複合体を固相(例えば、ストレプトアビジン被覆ELISAプレート)上に捕捉し、洗浄し、且つ表面に捕捉された検出剤の量を検出することによって定量する(例えば、検出剤が酵素で標識されている場合、適切な基質溶液を添加することによって)。半均一アッセイでは、捕捉剤のみを液相反応中のマトリックス試料と同時にプレインキュベートするフォーマットを使用する。次いで、この捕捉剤−標的タンパク質複合体を固相上に捕捉し、洗浄し、その後検出剤とともにインキュベートし、洗浄し、定量する。不均一アッセイではいかなる液相プレインキュベーション工程も用いないが、代わりに連続工程を用いる。捕捉剤を固相に捕捉し、洗浄し、次いで標的タンパク質を含有するマトリックス試料を添加して捕捉剤により結合させ、洗浄し、検出試薬により結合させ、洗浄し、最後に定量する。
例えば、不均一アッセイにおいて、本明細書に記載のミュータント治療抗体を表面に固定化し、抗薬剤IgE抗体への結合に対する捕捉剤として用いる。ミュータント治療的抗体は、直接又は間接的に表面に固定化される。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は標識にコンジュゲートし、表面に固定化されている、標識に特異的に結合する捕捉剤によって表面に捕捉される。直接又は間接的に固定化されたミュータント治療抗体をIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を含有し得る、個体由来の資料とともにインキュベートする。ミュータント抗体はIgEへの結合親和性又は活性が低下しているように設計されているので、ミュータント治療抗体に結合したIgE抗体の量は、試料中の抗薬剤抗体と相関する。抗薬剤IgE抗体の固定化されたミュータント抗体への結合は、検出剤(例えば、IgEのFc領域に結合するFcεRIポリペプチド)を用いて検出する。そのようなアッセイの実施例を図7に示す。
半均一アッセイはまた、試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するために使用される。いくつかの実施態様において、検出は、1)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体を含み得る個体由来の試料を、標識されたミュータント治療抗体とともにプレインキュベートする工程;2)プレインキュベートした試料を、ミュータント治療抗体上の標識に結合する固定化された分子(例えば、ストレプトアビジン)とともインキュベートする工程;及び3)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出剤(例えば、IgEのFc領域に結合するFcεRIポリペプチド)を用いて検出する工程、を含む。洗浄工程が、固相に結合していない分子を除去するために各インキュベーション工程の間に含まれる。そのようなアッセイの実施例を図11及び12に示す。
「ブロッキング」均一アッセイもまた試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するために用いられる。例えば、本発明は、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出する方法であって、(a)抗薬剤抗体を含み得る試料を、(i)ミュータント治療抗IgE抗体及び(ii)IgEのFc領域に結合するFcεRIポリペプチド(例えば、FcεRIαサブユニットの細胞外ドメインを含むFcεRIポリペプチド)とともにプレインキュベートする工程;(b)工程(a)で表面にミュータント治療抗体を捕捉する工程;並びに(c)抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出する工程、を含む方法を提供する。
「ブロッキング」半均一アッセイアッセイもまた、固体由来の試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するために用いられる。例えば、本発明は治療的抗IgE抗体に結合する試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出する方法であって、(a)抗薬剤抗体を含み得る個体由来の試料を、IgEのFc領域に結合するFcεRIポリペプチドとともにプレインキュベートする工程;(b)工程(a)でプレインキュベートした試料を、治療的抗IgE抗体又はそのミュータントとともインキュベートする工程;及び(c)抗薬剤抗体の治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体への結合を検出する工程、を含む方法を提供する。ミュータント治療抗体を表面に捕捉するのは、プレインキュベートされた試料とともにインキュベートする前又はインキュベートした後でもよい。
いくつかの実施形態において、試料はブロッキングアッセイにおいてFcεRIαポリペプチドの過剰量とプレインキュベートされる。その中で使用する場合、FcεRIαポリペプチドの「過剰」量とは、添加するFcεRIαポリペプチドの量が試料中の予想されるベースライン総IgEの最高レベルよりも高いことを意味する。例えば、ベースライン総IgEは、体重30−150kgの患者では30IU/mLから700IU/mLである。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドの添加量は、試料中の総IgE量の少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、又は少なくとも約10倍である。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体は、そのIgEへの相対的結合親和性が治療的抗IgE抗体のIgEへの相対的結合親和性と比較して低減される治療的抗IgE抗体からの少なくとも一つのアミノ酸変異を含む。いくつかの実施態様において、ミュータント治療抗体のIgEへの相対的結合親和性は、治療的抗IgE抗体のIgEへの相対的結合親和性の約10%以下である。本明細書に記載のミュータント治療抗体の何れを用いてもよい。
いくつかの実施態様において、方法は、1)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体を含み得る個体由来の試料を、少なくとも約10倍過剰の非標識又は標識されたFcεRIαポリペプチドの存在下で標識されたミュータント治療抗体とともにプレインキュベートする工程;2)プレインキュベートした試料を、ミュータント治療抗体上の標識(例えば、ビオチン)に結合する固定化された分子(例えば、ストレプトアビジン)になるまでインキュベートする工程;及び3)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体のミュータント治療抗体への結合を検出剤(例えば、標識された抗ヒトIgE抗体又はFcεRIポリペプチド上の標識に特異的な標識された抗体)を用いて検出する工程、を含む。洗浄工程が、固相に結合していない分子(例えば、内因性の非薬物特異的IgE)を除去するために各インキュベーション工程の間に含まれる。そのようなアッセイの実施例を図12、13及び14に示す。
いくつかの実施態様において、方法は、1)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体を含み得る個体由来の試料を、少なくとも約10倍過剰の非標識又は標識されたFcεRIαポリペプチドとともにプレインキュベートする工程;2)工程1)でプレインキュベートした試料を、固定化された抗IgE治療的抗体又は固定化されたミュータント治療抗体とともにインキュベートする工程;及び3)IgEアイソタイプの抗薬剤抗体の治療的抗体又はミュータント治療抗体への結合を検出剤(例えば、標識された抗ヒトIgE抗体、又はIgEのFc領域に結合するFcεRIポリペプチド上の標識に特異的な標識された抗体)を用いて検出する工程、を含む。洗浄工程が、固相に結合していない分子(例えば、内因性の非薬物特異的IgE)を除去するために各インキュベーション工程の間に含まれる。そのようなアッセイの実施例を図15、16及び17に示す。
本明細書に記載する方法の何れにおいても、治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体は標識を含んでもよく、あるいは標識にコンジュゲートしていてもよい。いくつかの実施態様において、方法は、抗薬剤抗体の治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体への結合を検出する前に、標識された治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体を表面に捕捉する工程を含み、ここで、標識に特異的に結合する捕捉剤が表面に固定化される。本明細書中に記載の固相又は表面(例えば、小さなシート、セファデックス、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、微小粒子、アッセイプレート、又はポリエチレン製及びポリスチレン製試験管)の何れを用いてもよい。いくつかの実施態様において、表面はセルロースポリマースポンジ(ImmunoCAP(登録商標),Phadia)である。いくつかの実施態様において、表面はセルロースポリマースポンジ(ImmunoCAP(登録商標),Phadia)ではない。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体はビオチンで標識されており、また捕捉剤はストレプトアビジンである。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識を含み、また抗薬剤抗体の治療的抗IgE抗体又はミュータント抗体への結合は、FcεRIαポリペプチドの抗薬剤抗体への結合を検出することにより検出される。
本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様では、FcεRIαポリペプチドは、抗IgE抗体の治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体への結合を検出するための検出剤として使用される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは標識を含むか、又は標識にコンジュゲートしている。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチド上の標識はジゴキシゲニンであり、FcεRIαポリペプチドの抗薬剤抗体への結合はHRPでコンジュゲートされた抗ジゴキシゲニン抗体を用いて検出される。いくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチド上の標識はルテニウムであり、FcεRIαポリペプチドの抗薬剤抗体への結合は電気化学発光を用いて検出される。
本明細書に記載の方法のいくつかの実施態様において、FcεRIαポリペプチドは試料中の非薬物特異的IgEの治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体への結合をブロックするためのブロッキング剤として用いられる。いくつかの実施態様において、抗薬剤抗体の治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体への結合は、HRPでコンジュゲートされた抗ヒトIgE抗体を用いて検出される。
本明細書に記載した方法において使用される試料には、抗IgE治療的抗体を用いた治療の前又は後に個体から採取した血液試料が含まれる。いくつかの実施態様において、血液試料は、抗IgE抗体治療を少なくとも16週間止めている個体から採取される。いくつかの実施態様において、血液試料は、抗IgE抗体治療を少なくとも16週間止めているが、最後の抗IgE抗体の投与から18か月を超えていない個体から採取される。いくつかの実施態様において、試料は血清又は血漿試料である。血清又は血漿試料は当該技術分野で知られている標準的な技術を用いて調製することができる。
ポジティブコントロールはアッセイを展開するため、アッセイ感度及び薬剤耐性を評価するために用いられてもよく、及び/又はアッセイのためのコントロールとして用いられ得る。ポジティブコントロールは、本明細書に記載の任意の方法で使用することができる。いくつかの実施態様において、アッセイにはポジティブコントロール抗薬剤抗体が含まれる。治療的抗IgE抗体及びミュータント治療抗体の双方に結合するポジティブ抗体を用いてもよい。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗薬剤抗体は抗IgE抗体の抗IgE抗体c断片に結合する。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗薬剤抗体は抗IgE抗体の一つ以上ののCDRに結合する。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は治療的抗IgE抗体及びミュータント治療抗体の双方に、同程度の親和性で結合する。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体の治療的抗IgE抗体への相対的結合親和性は、ポジティブコントロール抗体のミュータント治療抗体への相対的結合親和性に比べて、約10倍以内、約9倍以内、約8倍以内、約7倍以内、約6倍以内、約5倍以内、約4倍以内、約3倍以内又は約2倍以内の差異がある。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体の治療的抗IgE抗体への相対的結合親和性と、ミュータント治療抗体への相対的結合親和性の差異は、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/又は約10%未満である。例えば、ポジティブコントロール抗体は抗薬剤抗体(CDR特異的抗薬剤抗体など)の可変領域及びIgE(例えば、ヒトIgE)の定常領域を含むキメラ抗体である。いくつかの実施態様において、コントロール抗薬剤抗体はオマリズマブ(E25)に対するマウス抗体である。(例えばAME2など)ポジティブコントロールとして使用され得る抗E25抗体の例は、実施例2に記載されている。いくつかの実施態様において、試料中の抗薬剤抗体の固定化されたミュータント抗体への結合と、ポジティブコントロール抗体の固定化されたミュータント抗体への結合が検出され、比較される。
重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列並びに抗体AME2の核酸配列を以下に示す。
AME2重鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号7)
QVQLQQSGAELMKPGASVKISCKATGYTFSSHWIEWVKQRSGHGLEWIGEILPGSGSINYNEKFKGKATFTADTSSNTAYMQLSSLASEDSAVYYCGREGADYGYDVAMDYWGQGASVTVSS
AME2軽鎖可変領域アミノ酸配列(配列番号8)
QIVITQSPAIMSASPGEKVTITCSATSSVNYMHWFQQKPGTSPKLWIYGTSHLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQRSRYPFTFGSGTKLEIKR
AME2重鎖可変領域核酸配列(配列番号9)
CAAGTTCAACTGCAGCAGTCTGGCGCTGAGCTGATGAAGCCTGGGGCCTCAGTGAAGATATCCTGCAAGGCTACTGGCTACACATTCAGTAGCCACTGGATAGAGTGGGTGAAACAGAGGTCTGGACATGGCCTTGAGTGGATTGGAGAGATTCTACCTGGAAGTGGTAGTATTAATTACAATGAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACATTCACAGCAGACACATCCTCCAACACAGCCTACATGCAACTCAGCAGCCTGGCATCTGAGGACTCTGCCGTCTATTATTGTGGAAGAGAGGGGGCCGACTATGGTTACGACGTTGCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAGCCTCGGTCACCGTCTCCTCG
AME2軽鎖可変領域核酸配列(配列番号10)
CAAATTGTTATCACCCAGTCTCCAGCAATCATGTCTGCATCTCCAGGGGAGAAGGTCACCATAACCTGTAGTGCCACCTCAAGTGTAAATTACATGCACTGGTTCCAGCAGAAGCCAGGCACTTCTCCCAAACTCTGGATTTATGGCACATCCCACCTGGCTTCTGGAGTCCCTGCTCGCTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACCTCTTACTCTCTCACAATCAGCCGAATGGAGGCTGAAGATGCTGCCACTTATTACTGCCAGCAAAGGAGTCGTTACCCATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGCTCGAGATCAAACGG
いくつかの実施態様において、抗体AME2の重鎖可変領域は、キメラ抗体を形成するために、ヒトIgEの重鎖定常領域及び抗体AME2の軽鎖可変領域に融合されている。例えば、以下のヒトIgEの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を用いてもよい。
ヒトIgE重鎖定常領域アミノ酸配列(配列番号29)
ASTQSPSVFPLTRCCKNIPSNATSVTLGCLATGYFPEPVMVTWDTGSLNGTTMTLPATTLTLSGHYATISLLTVSGAWAKQMFTCRVAHTPSSTDWVDNKTFSVCSRDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDXSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSNPRGVSAYLSRPSPFDLFIRKSPTITCLVVDLAPSKGTVNLTWSRASGKPVNHSTRKEEKQRNGTLTVTSTLPVGTRDWIEGETYQCRVTHPHLPRALMRSTTKTSGPRAAPEVYAFATPEWPGSRDKRTLACLIQNFMPEDISVQWLHNEVQLPDARHSTTQPRKTKGSGFFVFSRLEVTRAEWEQKDEFICRAVHEAASPSQTVQRAVSVNPGK
ヒトIgE軽鎖定常領域アミノ酸配列(配列番号30)
ADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
いくつかの実施態様において、捕捉試薬(例えば、ミュータント抗体、抗IgE抗体、FcεRIαポリペプチド、又はストレプトアビジン)は、(米国特許第3720760号中に記載されているような)非水溶性マトリックスもしくは表面への吸着、又は米国特許第3645852号中もしくはRotmans等J.Immunol.Methods 57:87〜98頁(1983)中に記載されているような、硝酸及び還元剤を例えば用いた担体の事前の活性化有りもしくは無しで、グルタルアルデヒド又はカルボジイミド系架橋剤を例えば使用する非共有結合又は共有結合により、アッセイ手順前あるいはアッセイ手順後に不溶化されることにより固相へ固定化される。いくつかの実施態様において、固定化した後の捕捉試薬(例えば、ミュータント抗体)は、試料由来の標的分子(例えば、抗薬剤抗体)に結合させるのに利用可能である。
固定化のために使用される固相又は表面は、本質的に非水溶性で、イムノアッセイに有用な、例えば表面、粒子、多孔性マトリックス、セルロースポリマースポンジ(ImmunoCAP(登録商標)、Phadia)などの形態の担体を含む任意の不活性担体又は賦形剤であってよい。一般的に使用される担体の例としては、さなシート、セファデックス、ポリ塩化ビニル、プラスチックビーズ、微小粒子、アッセイプレート、又はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどから製造された試験管が挙げられる。いくつかの実施態様において、固相又は表面は、セルロースポリマースポンジ(ImmunoCAP(登録商標)、Phadia)である。いくつかの実施態様において、固相又は表面は、セルロースポリマースポンジ(ImmunoCAP(登録商標)、Phadia)ではない。そのような担体には96ウェルマイクロタイタープレート、並びにろ紙、アガロース、架橋デキストラン、及び他の多糖類のような粒状材料が挙げられる。あるいは、臭化シアン活性化炭水化物や米国特許第3969287;3691016;4195128;4247642;4229537;及び4330440号に記述されている反応基質などの反応性非水溶性マトリックスを、捕捉試薬の固定化に使用するのが適している。実施態様において、固定化捕捉試薬でマイクロタイタープレート上を被覆する。好ましい固相は、一度に複数の試料を分析するために使用することができるマルチウェルマイクロタイタープレートである。固相は、一度に複数の試料を分析するために使用することができるマルチウェルマイクロタイタープレートである。
固相は、非共有結合性もしくは共有結合性相互作用又は物理的結合によって所望のように結合可能な捕捉試薬(例えば、本明細書に記載のミュータント治療抗体)で被覆される。結合のための技術は、米国特許第4376110号及びそこに引用された文献に記載されたものを含む。プレートへの捕捉試薬の共有結合を利用すれば、プレート又は他の固相は捕捉試薬と一緒に、架橋剤とともにインキュベートすることができる。捕捉試薬を固相基質に付着させるために一般に使用される架橋剤としては、例えば、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、4−アジドサリチル酸とのエステル)、3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)などのジスクシンイミジルエステルをはじめとするホモ二官能性イミドエステル、更には、ビス−N−マレイミド−1,8−オクタンなどの二官能性マレイミドが挙げられる。誘導体化剤(例えば、メチル?3?[(p?アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートは、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化中間体を生成する。
ポリスチレンプレートを使用する場合、プレート中のウェルを少なくとも約10時間、より好ましくは少なくとも一晩、約4−20℃の温度で、より好ましくは約4−8℃の温度で、また、pHは約8−12、より好ましくは約9−10、及び最も好ましくは約9.6でのインキュベーションにより、捕捉試薬(通常、例えば0.05M炭酸ナトリウム又は0.15Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS),pH7.2又は7.4のようなバッファー中に希釈)で好ましくは被覆する。より短い被覆時間(1−2時間)を望むならば、プレートを37℃で被覆するか、又はプレートが、例えばミリポアMULTISCREENTM等のニトロセルロースフィルター底部を有していてもよい。プレートは積層し、アッセイに先立って被覆し、手動、半自動、又は、例えばロボット工学を用いることにより自動様式にて、イムノアッセイを複数の試料について同時に実施できるようにしてもよい。ポリスチレンプレートを、上記の方法を使用して、ストレプトアビジンで被覆することができる。
被覆したプレートは、プレートのウェル上の過剰な結合部位への遊離の非分析分子の所望しない結合が防止されるように、通常、結合部位に非特異的に結合してそれを飽和状態にするブロッキング剤で処理する。適切なブロッキング剤の例には、例えば、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、卵白アルブミン、カゼイン、及びノンファットミルクがある。ブロッキング処理は通常、周囲温度の条件下で約1.5から3時間行う。
被覆及びブロッキング後、分析する試料を適切に希釈し、固定化相に加える。好ましい希釈率は約5−15体積%、好ましくは約10体積%である。希釈のために使用することができるバッファーには、例えば(a)0.5%BSA、0.05%TWEEN20TM、洗剤(P20)、5mMのEDTA0.25%チャップス界面活性剤、0.2%ベータ−ガンマグロブリン及び0.35MのNaClを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.0;(b)0.5%BSA及び0.05%P20を含有するPBS;(c)0.5%BSA、0.05%P20、5mMのEDTA、0.35MのNaClを含有するPBS、pH6.35;(d)0.5%BSA、0.05%P20、5mMのEDTA、0.2%ベータ−ガンマグロブリン及び0.35MのNaClを含有するPBS;(e)0.5%BSA、0.05%P20、5mMのEDTA、0.25%チャップス及び0.35MのNaClを含有するPBS;及び(f)0.5%のP20を含有するPBSが挙げられる。
十分な感度のために、固定化捕捉試薬は、適切に希釈された後の試料中で予想される被分析物(例えば、IgEのアイソタイプの抗薬剤抗体)の最大モル濃度よりも過剰なモル濃度であることが好ましい。被分析分子によっては、捕捉試薬は検出抗体と結合部位に関して競合し、不正確な結果が生じるおそれがある。よって、捕捉試薬の最終濃度は、通常は、目的の範囲にわたってアッセイの感度が最大になるように実験的に決定されるであろう。
いくつかの実施態様において、アッセイ系は抗薬剤IgEに対して約0.1IU/mlから約0.5IU/ml(例えば、約0.1IU/ml、約0.2IU/ml、約0.3IU/ml、約0.4IU/ml又は約0.5IU/ml)の感度を有する。いくつかの実施態様において、アッセイ系は700IU/ml以上の総IgE耐性を有する。いくつかの実施態様において、アッセイ系は800IU/ml以上の総IgE耐性を有する。いくつかの実施態様において、アッセイ系は少なくとも約50ng/ml(例えば約50ng/mlから約200ng/ml)の薬物耐性(例えばオマリズマブ耐性)を有する。いくつかの実施態様において、アッセイ系の薬物耐性は少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約125ng/ml、又は少なくとも約150ng/mlである。
試料及び捕捉試薬のインキュベーション条件はアッセイの感度を最大にし、解離を最小にするように選択する。インキュベーション時間は主に温度に依存する。例えば、インキュベーション時間は20−38℃(36−38℃を含む)で約0.5から3時間(1.5−3時間を含む)、又は室温で一晩である。抗薬剤IgE感度及びアッセイの抗IgE薬物耐性を最大にするために、可能な場合は約10時間以上のインキュベーション時間を用いる。試料が生体液である場合(例えば、血液又は血清)、生体液中のプロテアーゼが被分析物を分解するのを防止するために、試料にプロテアーゼ阻害剤を添加することによってインキュベーション時間を長くすることができる。
インキュベーションバッファーのpHは、捕捉試薬の捕捉される被分析物への特異的結合を有意なレベルに維持するように選択される。いくつかの実施態様において、インキュベーションバッファーのpHは約6−9.5(pH約6−7を含む)である。いくつかの実施態様において、インキュベーションバッファーのpHは約7.2である。この工程の間、種々のバッファーが所望のpHを達成及び維持するために用いられるが、それらにはホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、トリス塩酸塩又はトリスリン酸塩、酢酸塩、バルビタール、及び類似のものが含まれる。通常、用いられる特定のバッファーが重要というわけではないが、個々のアッセイにおいて、あるバッファーが他のバッファーより好ましいこともある。
捕獲されなかった被分析物(抗薬剤抗体など)を系から除去するために、洗浄液を用いて試料を固定化された捕獲試薬から分離する。通常、洗浄液はバッファーである。上記したインキュベーションバッファーは、好適な洗浄液である。洗浄液のpHは、インキュベーションバッファーに関する上の記載の通りに決定される。一実施態様において、洗浄液のpHは約6−9、より好ましくは約6−7である。洗浄は一回又は複数回行ってよい。洗浄回数は最小限に抑えるが、低親和性で標的分子に結合する分子を保持することは、アッセイのバックグラウンドノイズを増加させる。いくつかの実施態様において、この系は3回洗浄される。洗浄液の温度は通常、約0−40℃、より好ましくは約4−30℃である。自動プレート洗浄機を使用してもよい。架橋結合剤又は他の適切な結合剤を洗浄液に添加し、捕捉された被分析物を捕捉試薬へ共有結合させる。
捕捉されていない被分析物分子を系から除去した後、捕捉された被分析分子を、例えば約20−40℃、約36−38℃の温度又は室温で、例えば抗体又はFcεRIαポリペプチドなどの検出剤と接触させる。いくつかの実施態様において、被分析物はIgEアイソタイプの抗薬剤抗体であり、検出剤は標識されたFcεRIα−IgGキメラ受容体である。
検出剤と被分析分子を接触させるための温度及び時間は、用いられる検出手段に主に依存している。例えば、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(SA−HRP)が検出の手段として使用される場合、検出剤は、好ましくは約0.5−2時間、より好ましくは約1時間、捕捉された分析物とともにインキュベートされる。系を上述したように洗浄して非結合検出剤を系から除去し、ペルオキシダーゼ基質を添加し、室温で約15分間、又は良好な色が見えるまでプレートをインキュベートすることによって、系を展開する。一実施態様において、非結合被分析物を系から洗浄した後、モル過剰の検出剤を系に添加する。
検出剤の親和性は、被分析物が少量でも検出できるように、十分に高くなければならない。蛍光標識又は化学発光標識部位は、従来の比色標識に比べイムノアッセイにおいてより高い感度を有している。選択した検出剤の結合親和性は、検出剤が捕捉試薬から被分析物を奪わないように、捕捉剤の結合親和性の観点から考慮されなければならない。
標識部位は、捕捉された被分析物の検出剤への結合を干渉しない任意の検出可能な機能性である。適切な標識部位の例は、直接的に検出され得る部位、例えば蛍光色素標識、化学発光標識及び放射性標識、並びに、検出のために反応又は誘導体化させなければならない部分、例えば酵素を含む。このような標識の例は、放射性同位体32P、14C、125I、3H及び131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート、又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ、例えば蛍光ルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖類オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、色素前駆体を酸化するために過酸化水素を用いる酵素(例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はミクロペルオキシダーゼ)と結合した複素環式オキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン−ベータガラクトシダーゼ及びMUG、ジゴキシゲニン、ルテニウム、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定なフリーラジカルなどを含む。
例えば、抗体又はFcεRIαポリペプチドのような検出剤への標識部位のコンジュゲートは、イムノアッセイ技術においては標準的な操作法である。例えば、 Methods in Enzymology, J. J. Langone 及び H. Van Vunakis編, 73巻 (Academic Press, New York, N.Y., 1981), pp. 147-166中の、O’Sullivan等 「Methods for the Preparation of Enzyme-antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay」を参照のこと。標識部位をタンパク質又はポリペプチドに共有結合させるために、従来の方法が利用可能である。例えば、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、ビス−イミデート、ビス−ジアゾ化ベンジジンなどの結合剤が、上記の蛍光標識、化学発光標識及び酵素標識を用いて抗体を標識化するのに使用可能である。例えば、米国特許第3940475号(蛍光分析)及び米国特許第3645090号(酵素);Hunter 等, 1962, Nature, 144:945;David 等, 1974, Biochemistry, 13:1014-1021; Pain 等, 1981, J. Immunol Methods, 40:219-230; 及び Nygren J., 1982, Histochem. 及び Cytochem., 30:407-412を参照のこと。本明細書における好ましい標識は、約5−10pg/mlまで増幅及び感度を増加させる、蛍光又は化学発光標識である。一実施態様において、標識部位はHRPである。
捕捉試薬に結合した被分析物の量は、固定化相から非結合検出剤を洗い流し、その標識に適した検出方法を用いて被分析物に結合した検出剤の量を測定することによって、決定される。一実施態様において、標識部位は酵素である。酵素部位の場合には、発色量が捕捉された被分析物の量の直接的な測定値となる。例えば、HRPが標識部位である場合、色は光学濃度(O.D.)吸光度を(例えば、450nmで)定量することによって検出される別の実施態様において、捕捉試薬に結合した被分析物の量は、間接的に決定される。標識部位に結合した抗検出剤抗体を用いた検出のために、非標識検出剤のシグナルを増幅することができる。例えば、標的分子と結合する非標識マウス抗体のシグナルは、HRPで標識したヒツジ抗マウスIgG抗体を用いて増幅することができる。標識部位は、その標識に適した検出方法を用いて検出される。例えば、HRPは、発色(calorimetric)基質でHRPを反応させ、反応させ、反応基質の光学濃度を450nmの吸光度で測定することによって検出することができる。
系のpH及び/又は温度は、標的分子に結合する分子を同定するために変えることができる。
治療的抗IgE抗体治療に対するアナフィラキシー反応のリスク評価方法又は評価補助の方法
本明細書に記載の方法は、治療的抗IgE抗体の投与に対するアナフィラキシー反応のリスクを評価するため、又は評価を補助するために使用され得る。本明細書に記載の方法はまた、治療的抗IgE抗体の投与に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定するために使用することができる。
治療的抗IgE抗体(例えば、E25、オマリズマブ)で治療されたアナフィラキシーを有する患者と、過敏性反応がない患者から血液試料を採取する。病歴、アレルギー皮膚テストの結果及び免疫原性の評価などのデータを収集する。試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の量は、本明細書に記載のアッセイを用いて試験される。アレルギー皮膚テスト、アナフィラキシー及びIgEアイソタイプの抗薬剤抗体レベルとの相関関係を明らかにする。試料は、アナフィラキシー後に収集するか、コントロールを含む全参加者が少なくとも16週、但し18ヶ月を超えない期間、抗IgE治療を中止した後で収集する。明らかにされた相関は、基準レベルを確立するために使用することができ、患者が治療的抗IgE抗体で治療される前に、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシーのリスクを評価するため、又は評価を補助するために使用することができる。
一態様において、本発明は、患者における治療的抗IgE抗体の投与に対するアナフィラキシー反応のリスクを評価する、又は評価を補助するための方法であって、a)抗IgE抗体治療前の患者からの試料において治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプ抗薬剤抗体のレベルを検出する工程と、及びb)工程a)で検出されたレベルと基準レベルを比較する工程とを含む、方法を提供する。いくつかの実施態様において、基準レベルよりも高いIgEアイソタイプの抗薬剤抗体レベルを有する患者は、抗IgE抗体治療から除外される。
別の態様において、本発明は、患者からの試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の存在及び/又はレベルを本明細書に記載の任意の方法を用いて検出することを含む、治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有する患者を同定する方法を提供し、ここで、試料中の抗薬剤抗体のレベルの存在及び/又はレベルは、患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示す。
IgE媒介性疾患の治療方法
患者におけるIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を、患者が抗IgE抗体で治療される前又は後に本明細書に記載のアッセイ方法を用いて評価する。本発明は、個体由来の試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体のレベルを基準レベルと比較することと、試料中の抗薬剤抗体のレベルが基準レベルより低い場合に個体に抗IgE抗体の有効量を投与することを含む、抗IgE抗体を用いて個体のIgE媒介性疾患を治療する方法を提供する。一態様において、本発明は、個体由来の試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体のレベルを基準レベルと比較することを含むアナフィラキシーの高リスクを有する患者を同定する方法を提供し、ここで、個体は試料中の抗薬剤抗体のレベルが基準レベルよりも高い場合にアナフィラキシーのリスクが高いと同定される。別の態様において、本発明は、(a)患者由来の試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の治療的抗IgE抗体に対するレベルを本明細書に記載の任意の方法を用いて決定する工程と、(b)試料中の抗薬剤抗体のレベルが、患者が治療的抗IgE抗体に対するアナフィラキシー反応のリスクを有することを示していない場合に患者へ治療的抗IgE抗体の有効量を投与する工程とを含む、IgE媒介性疾患を有する患者を治療する方法を提供する。
IgE媒介性疾患の予防又は治療のための抗IgE抗体の適切な用量は、治療する疾患のタイプ、疾患の重症度及び経過、抗IgE抗体が予防又は治療目的で投与されるかどうか、を左右される又は治療目的、以前の治療、患者の病歴及び薬剤に対する応答、及び主治医の裁量に依存する。抗IgE抗体は、患者に対して、単回、又は一連の治療にわたって適切に投与される。いくつかの実施態様において、抗IgE抗体はオマリズマブである。抗IgE抗体は液体製剤であってもよく、又は凍結乾燥製剤から再構成される。抗IgE抗体に適した製剤は、米国特許第6875432号、並びに米国特許出願公開第2004/0197324号及び第2005/0158303号に記載されている。
抗IgE抗体は、治療を必要とする個体、好ましくはヒトに対して、ボーラス又はある期間にわたる連続的注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑膜内、髄腔内、口腔内、局所又は吸入経路による投与などの既知の方法に従って投与される。
IgE媒介性疾患としては、アレルギー性鼻炎、喘息(例えば、アレルギー性喘息及び非アレルギー性喘息)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性胃腸疾患、過敏症(例えば、アナフィラキシー、じん麻疹、食物アレルギーなど)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、寄生虫症、間質性膀胱炎、高IgE症候群、毛細血管拡張性運動失調症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、胸腺リンパ形成不全症、IgE骨髄腫及び移植片対宿主反応が挙げられる。また更に特定の態様では、IgE媒介性疾患は食物アレルギー、アナフィラキシー、接触性皮膚炎及びアレルギー性紫斑病である。
また、本発明の方法によって治療可能なIgE媒介性疾患には、毛細血管拡張性運動失調症、チャーグ・ストラウス症候群、湿疹、腸炎、胃腸症、移植片対宿主反応、高IgE(ジョブ)症候群、過敏症(例えば、アナフィラキシー型過敏症、カンジダ症、血管炎)、IgE骨髄腫、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、不確定性大腸炎及び感染性大腸炎)、粘膜炎(例えば、口腔粘膜炎、胃腸粘膜炎、鼻粘膜炎及び直腸炎)、壊死性腸炎及び食道炎、寄生虫症(例えば、トリパノソーマ症)、過敏性血管炎、じん麻疹及びウィスコット・アルドリッチ症候群が含まれる。
本発明の方法によって治療可能なIgE媒介性疾患には、アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)、脱毛症、遺伝性血管浮腫、血管浮腫(anigioedema)(バニスター病、血管神経性浮腫)、強直性脊椎炎、再生不良性貧血、動脈炎、アミロイドーシス、免疫不全、例えば、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性多発性内分泌症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血球減少(autoimmunocytopenia)、自己免疫性糸球体腎炎、ベーチェット病、気管支炎、バージャー病、水疱性類天疱瘡、カプラン症候群(リウマチ様塵肺症)、心臓炎、セリアックスプルー、チェディアック・東症候群、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、コーガン・リース症候群(虹彩角膜内皮症候群)、CREST症候群、疱疹状皮膚炎(ジューリング病)、糖尿病、好酸球性筋膜炎、好酸球性腎炎、上強膜炎、外因性アレルギー性肺胞炎、家族性発作性多漿膜炎、フェルティ症候群、線維性肺胞炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、顆粒球減少症、肉芽腫、肉芽種症、肉芽腫筋炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(多発性神経炎)、橋本甲状腺炎(リンパ節様甲状腺腫)、ヘモクロマトーシス、組織球増殖症(histocytosis)、好酸球増多症候群、過敏性腸症候群、若年性関節炎、角膜炎、ハンセン病、紅斑性狼瘡、ライエル病、ライム病、混合性結合組織病、単発神経炎、多発性単神経炎、マックル・ウェルズ症候群、皮膚粘膜リンパ節(lymphoid)症候群(川崎病)、多中心性細網組織球症(reticulohistiocystosis)、多発性硬化症、重症筋無力症、菌状息肉症、脂肪織炎(panninculitis)、類天疱瘡、天疱瘡、心膜炎、多発性神経炎、結節性多発動脈炎(polyarteritis nodoas)、乾癬、乾癬性関節炎、肺性関節炎、肺腺腫症、肺線維症、再発性多発性軟骨炎、リウマチ熱、関節リウマチ、鼻副鼻腔炎(副鼻腔炎)、サルコイドーシス、強膜炎、硬化性胆管炎、血清病、セザリー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、全身性肥満細胞症、移植片拒絶反応、血小板減少性紫斑病、胸腺リンパ形成不全症、ブドウ膜炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症も含まれる。
IgE媒介性疾患は、IgE媒介性疾患の治療の既知の方法と組み合わせて、すなわち併用又は追加的治療工程としてか、治療用製剤の追加的成分としての何れかで治療することができる。例えば、治療は、抗ヒスタミン薬、交感神経様作用薬、気管支拡張剤、グルココルチコイド、非ステロイド系抗炎症薬、充血除去剤、鎮咳剤又は鎮痛剤と組み合わせた抗IgE抗体を含む。別の特定の態様において、抗IgE抗体は、アレルゲン脱感作の治療計画と組み合わせて投与される。
D.キット
本発明はまた、本明細書に記載の方法で使用するためのキットを提供する。
一態様において、本発明は、治療的抗IgE抗体からの少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体を含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットを提供し、ここで、ミュータント治療抗体のIgE(例えば、ヒトIgE)に対する相対的結合親和性は、治療的抗IgE抗体のIgEに対する相対的結合親和性の約10%以下である。いくつかの実施態様において、キットはヒトIgEのFc領域に結合する検出剤(例えば、本明細書に記載のFcεRIαポリペプチド)を更に含む。
別の態様において、本発明は、治療的抗IgE抗体からの少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体を含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットを提供し、ここで、ミュータント治療抗体のIgE(例えば、ヒトIgE)に対する活性は、治療的抗IgE抗体のIgEに対する活性の約10%以下である。いくつかの実施態様において、キットはヒトIgEのFc領域に結合する検出剤(例えば、本明細書に記載のFcεRIαポリペプチド)を更に含む。
別の態様において、本発明は、(a)治療的抗IgE抗体からの少なくとも一つのアミノ酸変異を含むミュータント治療抗体であって、そのIgE(例えば、ヒトIgE)に対する相対的結合親和性が治療的抗IgE抗体のIgEに対する相対的結合親和性の約10%以下であるものと、(b)ヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドを含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットを提供する。
別の態様において、本発明は、(a)治療的抗IgE抗体、又はそのミュータント治療抗体であって治療的抗IgE抗体から少なくとも一つのアミノ酸変異を含み、そのIgE(例えば、ヒトIgE)に対する相対結合親和性が、治療的抗IgE抗体のIgEに対する相対結合親和性より低下しているミュータント治療抗体;及び(b)ヒトIgEのFc領域に結合するFcεRIαポリペプチドを含む、試料中の治療的抗IgE抗体に結合するIgEアイソタイプの抗薬剤抗体を検出するためのキットを提供する。
いくつかの実施態様において、キットは、治療的抗IgE抗体及びミュータント治療抗体の双方に結合するポジティブコントロール抗体を更に含む。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は治療的抗IgE抗体及びミュータント治療抗体の双方に、同程度の親和性で結合する。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、抗IgE抗体のFab断片及びヒトIgEの定常領域に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域並びに軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、ポジティブコントロール抗体は、抗IgE抗体のFab断片及びIgEに結合する。
キットの試薬(治療的抗IgE抗体、ミュータント治療抗体、ポジティブコントロール抗体及び/又はFcεRIαポリペプチドなど)は容器に入れられる。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体、ミュータント治療抗体、ポジティブコントロール抗体及び/又はFcεRIαポリペプチドは標識を含む。
いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体は表面に直接的又は間接的に固定化される。いくつかの実施態様において、治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体は(ビオチンなどの)標識にコンジュゲートされる。いくつかの実施態様において、標識にコンジュゲートされた治療的抗IgE抗体又はミュータント治療抗体は、標識に特異的に結合する固定化された捕捉剤を介して表面に捕捉される。いくつかの実施態様において、標識はビオチンであり、捕捉剤はストレプトアビジンである。
いくつかの実施態様において、検出剤又はFcεRIαポリペプチドは標識(ビオチン、ジゴキシゲニン又はルテニウム)にコンジュゲートされる。いくつかの実施態様において、検出剤は標識されたFcεRIポリペプチドである。いくつかの実施態様において、キットは、ストレプトアビジン−HRP又はAmdex SA−HRPを更に含む。いくつかの実施態様において、キットは、ジゴキシゲニン標識FcεRIαポリペプチドを検出するためのHRPがコンジュゲートされた抗ジゴキシゲニン抗体を更に含む。いくつかの実施態様において、キットは、標識された抗ヒトIgE抗体(例えば、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体)を更に含む。いくつかの実施態様において、標識された抗ヒトIgE抗体はHRPがコンジュゲートされた抗ヒトIgE抗体である。
本発明のキットは本明細書に記載の任意の方法に従う使用説明書を更に含むことができる。いくつかの実施態様において、これらの使用説明書は、本明細書に記載の任意の方法に従って、患者試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の量を試験する記述を含む。キットは、抗IgE抗体を用いる治療の前に患者のアナフィラキシーのリスクを評価する記述を更に含んでもよい。説明書は、ラベル又は添付文書に提供されてもよい。キットは、本明細書に記載の方法を実施するためのバッファー及び試薬など、追加の構成要素を含んでいてもよい。
本発明のキットは、適切に包装されている。適切な包装には、限定されないが、バイアル、ボトル、ジャー、フレキシブル包装(例えば、密封マイラー又はビニール袋)などがある。また、ELISAアッセイにおけるシグナル検出のための装置のような、特定の装置と組み合わせて使用するための包装も企図される。
以下は本発明の方法及び組成物の例である。上記提供される一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施され得ることが理解される。
実施例1.抗IgE抗体オマリズマブのミュータント抗体の調製
抗体オマリズマブ(E25又はrhuMAbE25)は、米国特許出願公開第2005/0158303号明細書及び米国特許第6,172,213号明細書に記載されるヒト化抗ヒトIgE抗体である。E25の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列は米国特許第6,172,213号明細書の図2において提供され、E25の重鎖及び軽鎖の完全長アミノ酸配列は米国特許第6,172,213号明細書の図12において提供される。抗体E25の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列は、図1A及び1Bに示される。E25−AAAミュータントと称され、軽鎖CDR1において3つのアミノ酸置換を含むミュータントE25が生成された。変異は、配列番号:1に示される位置30、32、34におけるDからAへの置換である。このミュータント抗体は、Presta et al., J. Immunol. 151:2623−2632, 1993に記載される。
E25と比較したヒトIgEへのミュータント抗体の結合親和性は、図2Aに示すように試験された。E25又はE25−AAAミュータントは、ELISAプレートに固定され、漸増濃度の精製されたヒトIgEはプレートに添加された。E25又はE25−AAAミュータントへのヒトIgEの結合は、HRPでコンジュゲートされたヤギ抗ヒトIgEによって検出された。450nmにおけるODが測定された。これらの実験は、公知の方法を用いて実施された。例えばEngvall et al., Immunochemistry 8:871−4, 1971; Presta et al., J. Immunol. 151:2623−2632, 1993を参照。図2Bに示すように、E25−AAAミュータントは、ヒトIgEに対してE25よりも約100倍少ない結合親和性を有する。
E25−AAAミュータントとE25の一次構造を比較するために、Lys−Cペプチドマッピングが用いられた。3つのアミノ酸置換の全てが同じペプチド内(軽鎖1−43)となるように、Lys−C酵素は消化のために用いられた。ペプチドマッププロファイルは、ミュータントにおいて2つのピークの相違、親ペプチドLC1−43の消失及びE25には存在しない新しいピーク、のみを示した。LC−MSは実行され、ミュータントにおける新しいピークの主要部が3つのAspを置換した3つのAlaを有するLC1−43として確認された。したがって、この解析により、LCにおける3つのAspを置換した3つのAlaを除いて、ミュータントがE25の同じ一次構造を有することが確認された。
E25−AAAミュータントの電荷分布も研究された。モノクローナル抗体の電荷分布は、通常分子特異的である。ミュータントにおけるアミノ酸置換が分子のpIを有意に(7.6から9まで)変化させた場合、ミュータントの移動時間は非常に異なった。さらに、プロファイルの相違は、E25の電荷分布の不均一性に寄与する(異性化する)Asp32の置換によるものであると予測される。酸性及び塩基性変異体の同程度の量について、E25及びE25−AAAミュータントのiCIEF(イメージキャピラリー等電点電気泳動)プロファイルは同程度であったが同一ではなかった。
実施例2.E25及びE25−AAAミュータントへの抗薬剤抗体の結合の比較
E25に特異的なミューリンモノクローナル抗体が生成された。下記の表2に示すように、AME1、AME7、AME9、AME2、AME10、AME13、AME4及びAME5はE25に結合する抗体である。AME1、AME7、AME9、AME2、AME10、AME4及びAME5はマウスIgG1であり、AME13はマウスIgG2抗体である。E25は、実施例1及びPresta et al., J. Immunol. 151:2623−2632, 1993に記載されるように、MAE11から誘導されたヒト化抗体である。MAE1は、コントロール抗ヒトIgEモノクローナル抗体であって、MAE11とは異なるCDRを有する。MAE1及びMAE11はマウスIgG抗体である。コントロール抗体(完全長)は、E25に類似するフレームワーク残基を有するIgG抗体であるが、異なる抗原に結合する。MAE1へのネガティブ結合は、AMEがE25配列のみに特異的であることを証明した。これらの抗薬剤抗体がE25及びE25−AAAミュータントに対して同様によく結合するかどうかを試験するために、結合アッセイは公知技術の方法を用いて実施された。例えばEngvall et al., Immunochemistry 8:871−4, 1971を参照。E25又はE25−AAAミュータントはELISAプレートに固定され、漸増濃度の精製された抗薬剤抗体(AME1、AME7、AME9、AME2、AME10、AME14、AME4又はAME5)はプレートに添加された。E25又はE25−AAAミュータントへの抗薬剤抗体の結合は、HRPがコンジュゲートされた抗マウスIgG抗体によって検出された。450nmにおけるODが測定された。下記の図4A−4H及び表2に示すように、AME2、AME10、AME4及びAME5はE25Fab及びE25フレームワーク領域に特異的である;AME1、AME7及びAME9は、E25CDRに特異的である;AME13は、E25フレームワーク領域に特異的である。AME2、AME10、AME13、AME4、AME5及びAME7がE25及びE25−AAAミュータントの両方に結合するので、これらの抗体は本願明細書に記載されるアッセイにおいて用いられ得るミュータント抗IgE抗体を試験し、スクリーニングするために用いられてもよい。
表2.E25及びE25−AAAミュータントに結合するマウス抗体
実施例3.E25特異的IgEポジティブコントロール抗体の調製
図5は、本願明細書に記載されるアッセイ系で用いられ得るポジティブコントロール抗体を示す。この抗体は、AME2の重鎖及び軽鎖可変領域及びヒトIgEの定常領域を有する。
ポジティブコントロール抗体は、図6Aに示されるアッセイを用いて試験された。ELISAプレートの表面をヒトFcεRIα IgGキメラ受容体で被覆した。E25特異的IgEポジティブコントロール抗体をプレートに添加し、固定された受容体に結合できるようにインキューベートした。漸増濃度のE25又はE25−AAAミュータントの何れかをプレートに添加し、E25又はE25−AAAミュータントの結合を可能とするためにインキューベートした。プレートへのE25又はE25−AAAミュータントの結合は、HRP−抗ヒトIgG抗体を用いて測定された。結果を図6Bに示す。実験は、図3に示されるポジティブコントロール抗体がE25及びE25−AAAミュータントに同様によく結合することを示し、アッセイ又はさらなるミュータント抗体のスクリーニングのためのポジティブコントロールとして本明細書に記載されるアッセイ系で用いられてもよい。
実施例4.直接的ELISAフォーマットを用いた試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の検出
図7は、E25特異的IgEを検出するためのアッセイ系を示す。E25−AAAミュータント抗体は、ELISAプレートの表面を被覆するために用いられる。あるいは、ミュータント抗体は、セルロースポリマースポンジ(ImmunoCAP(登録商標)design、Phadia)の表面に固定される。患者血清試料は表面に添加され、E25−AAAミュータントへのあらゆるE25特異的IgEの結合を可能とする条件下でインキューベートされた。ビオチン標識ヒトFcεRIα−IgGキメラ受容体(例えば国際公開第08/028068号に記載される)は、E25−AAAミュータントに結合するあらゆるE25特異的なIgEを検出するために、ELISAプレート(又はImmunoCAP(登録商標))に添加される。SA−HRP(ストレプトアビジン−ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート)は、ビオチン−FcεRI−IgGを検出するために添加される。
あるいは、E25−AAAミュータントへのE25特異的IgEの結合を検出するために他の検出系が用いられる。以下の工程が直接的ELISAアッセイのために用いられる:a)E25−AAAミュータントを用いて2−8℃、オーバーナイトでプレートを被覆する工程;b)プレートにアッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)を添加し、撹拌させながら室温で2時間インキューベートする工程;c)プレートにE25特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む1:2希釈血清試料を添加し、撹拌させながら室温、オーバーナイトでインキューベートする工程;d)プレートにビオチン標識FcεR1−IgGを添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートする工程;e)プレートにAmdex−ストレプトアビジン−HRPを添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートする工程;f)プレートにテトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加し、約15分間インキューベートする工程;及びg)プレートに1Mリン酸を添加し、A450−A650の吸光度を読みとる工程。プレートは、工程f)の前に、各々の工程間で3回洗浄される。
実施例5.半均一系及び均一系アッセイを用いた試料中のIgEアイソタイプの抗薬剤抗体の検出
図10は、試料中のE25特異的IgEを検出するための半均一系ELISAフォーマットを示す。以下の工程が用いられる:a)E25−特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む血清試料を、ビオチン標識E25−AAAミュータントと共に、撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートする工程;b)ストレプトアビジンで被覆したプレートにアッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)を添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする、又は、プレブロックしたストレプトアビジンで被覆したプレート(例えばReacti−Bind Streptavidin Coated High Binding Capacity (HBC) Clear 96−well PlateとSuper Blocker BSA、Pierce cat. #15500)を用いる工程;c)プレートにプレインキュベートされた血清試料を添加し、撹拌しながら室温で0.5−2時間(例えば1時間)インキューベートする工程;d)プレートにジゴキシゲニン標識FcεR1−IgGを添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートする工程;e)プレートにHRP標識抗ジゴキシゲニン抗体を添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートする工程;f)プレートにTMB基質を添加し、約15分間インキューベートする工程;及びg)プレートに1Mリン酸を添加し、A450−A650の吸光度を読みとる工程。プレートを工程間、例えばb)からe)の各工程の後に3回洗浄する。
例えば、アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20、0.05%ProClin300)中の1μg/mlビオチン標識E25−AAAミュータントを、ヒト血清で1:1に希釈し、撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートした。1:2のプレインキューベートされた血清試料を、ストレプトアビジンで被覆したマイクロタイタープレート(Pierce cat. #15500)に添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートし、次いで洗浄した。結合したE25特異的IgEは、撹拌しながら室温で1時間、アッセイ希釈液中で、250ng/mLのDIG標識FceR1−IgGと共にインキュベートすることにより検出される。プレートを洗浄し、〜1:6000のHRP標識マウス抗DIG MAb(Jackson ImmunoResearch cat. #200−032−156)と共に、アッセイ希釈液中で撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。プレートを最後に洗浄し、発色現像及び測定のためにTMB基質と共に15−30分間インキューベートした。
図11は、試料中のE25特異的IgEを検出するための半均一系MSD−ECLAフォーマットを示す。以下のの工程が用いられる:a)E25特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む血清試料をビオチン標識ミュータントE25(例えばE25−AAAミュータント)と共に撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートする工程;b)アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)をMSDストレプトアビジンで被覆したプレート(Meso Scale Discovery (MSD), Gaithersburg, MD, USA)に添加し、浸透しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;c)プレインキュベートされた血清試料をストレプトアビジンで被覆したプレートに添加し、浸透しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;d)ルテニウム標識FcεR1−IgGを添加し、浸透しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;及びe)MSD TPAリードバッファーを添加し、直ちにシグナルを読みとる工程。プレートを工程間、例えばb)からd)の各工程後に洗浄する。
図12は、試料中のE25特異的IgEを検出するための「ブロッキング」均一系ELISAフォーマットを示す。以下の工程が用いられる:a)E25特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む血清試料をビオチン標識ミュータントE25(例えばE25−AAAミュータント)及び10倍以上の過剰なFcεR1−IgGと共に撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートする工程;b)アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)をストレプトアビジンで被覆したプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;c)プレインキュベートされた血清試料をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;d)HRP標識抗ヒトIgE抗体をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;e)TMB基質をプレートに添加し、約15分間インキューベートする工程;及びf)1Mリン酸をプレートに添加し、A450−A650の吸光度を読みとる工程。プレートを工程間、例えばb)からd)の各工程後に洗浄する。
図13は、試料中のE25特異的IgEを検出するための「ブロッキング」均一系ELISAフォーマットを示す。以下の工程が用いられる:a)E25特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む血清試料をビオチン標識ミュータントE25(例えばE25−AAAミュータント)及び10倍以上過剰なジゴキシゲニン標識FcεR1−IgGと共に撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートする工程;b)アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)をストレプトアビジンで被覆したプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;c)プレインキュベートされた血清試料をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;d)HRP標識抗ジゴキシゲニン抗体をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;e)TMB基質をプレートに添加し、約15分間インキューベートする工程;及びf)1Mリン酸をプレートに添加し、A450−A650の吸光度を読みとる工程。プレートを工程間、例えばb)からd)の各工程後に洗浄する。
図14は、試料中のE25特異的IgEを検出するための均一系「ブロッキング」MSD−ECLAフォーマットを示す。以下の工程が用いられる:a)E25特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む血清試料をビオチン標識ミュータントE25(例えばE25−AAAミュータント)及び10倍以上過剰なルテニウム標識FcεR1−IgGと共に撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートする工程;b)アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)をストレプトアビジンで被覆したプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;c)プレインキュベートされた血清試料をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;d)MSD TPAリードバッファーを添加し、直ちにシグナルを読みとる工程。プレートを工程間、例えばb)からc)の各工程後に洗浄する。
図15は、試料中のE25特異的IgEを検出するための半均一系「ブロッキング」ELISAフォーマットを示す。以下の工程が用いられる:a)E25(又はE25ミュータント(例えばE25−AAAミュータント))を用いて2−8℃、オーバーナイトでプレートを被覆するか(図15、右パネル)、又はビオチン標識E25(又はビオチン標識E25ミュータント(例えばE25−AAAミュータント))を予め被覆されたストレプトアビジンプレートに添加し(図15、左パネル)、撹拌しながら室温で1−2時間インキュベートする工程;b)アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)をプレートに添加し、撹拌しながら室温で2時間インキューベートする工程;c)E25特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む血清試料を10倍以上過剰な非標識FcεR1−IgGと共にプレインキュベートし、撹拌しながら室温、オーバーナイトでインキュベートする工程;d)プレインキュベートされた血清試料をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;e)HRP標識抗ヒトIgE抗体をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;f)TMB基質をプレート添加し、約15分間インキューベートする工程;及びg)1Mリン酸をプレートに添加し、A450−A650の吸光度を読みとる工程。プレートを工程間、例えばa)、b)、d)及びe)の各工程後に洗浄する。
図16は、試料中のE25特異的IgEを検出するための半均一系「ブロッキング」ELISAフォーマットを示す。以下の工程が用いられる:a)E25(又はE25ミュータント(例えばE25−AAAミュータント))を用いて2−8℃、オーバーナイトでプレートを被覆するか(図16、右パネル)、ビオチン標識E25(又はビオチン標識E25ミュータント(例えばE25−AAAミュータント))を予め被覆されたストレプトアビジンプレートに添加し(図16、左パネル)、撹拌しながら室温で1−2時間インキュベートする工程;b)アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)をプレートに添加し、撹拌しながら室温で2時間インキューベートする工程;c)E25特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む血清試料を10倍以上過剰なジゴキシゲニン標識FcεR1−IgGと共にプレインキュベートし、撹拌しながら室温、オーバーナイトでインキュベートする工程;d)プレインキュベートされた血清試料をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;e)HRP標識抗ジゴキシゲニン抗体をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;f)TMB基質をプレート添加し、約15分間インキューベートする工程;及びg)1Mリン酸をプレートに添加し、A450−A650の吸光度を読みとる工程。プレートを工程間、例えばa)、b)、d)及びe)の各工程後に洗浄する。
図17は、試料中のE25特異的IgEを検出するために半均一系「ブロッキング」MSD−ECLAフォーマットを示す。以下の工程が用いられる:a)E25(又はE25ミュータント(例えばE25−AAAミュータント))を用いて2−8℃、オーバーナイトでプレートを被覆するか(図17、右パネル)、ビオチン標識E25(又はビオチン標識E25ミュータント)を予め被覆されたストレプトアビジンプレートに添加し(図17、左パネル)、撹拌しながら室温で1−2時間インキュベートする工程;b)アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)をプレートに添加し、撹拌しながら室温で2時間インキューベートする工程;c)E25特異的IgE及び非E25特異的IgEを含む血清試料を10倍以上過剰なルテニウム標識FcεR1−IgGと共にプレインキュベートし、撹拌しながら室温、オーバーナイトでインキュベートする工程;d)プレインキュベートされた血清試料をプレートに添加し、撹拌しながら室温で1−2時間インキューベートする工程;及びe)MSD TPAリードバッファーを添加し、直ちにシグナルを読みとる工程。プレートを工程間、例えばa)、b)及びd)の各工程後に洗浄する。
実施例6.IgEアイソタイプの抗薬剤特異的抗体のアッセイ感度
実施例4(図7)に記載されるアッセイ系のE25特異的IgE抗体の感度が測定された。マイクロタイタープレートを、0.05MNa炭酸バッファー(pH9.6)中のE25−AAAミュータントを用いて4℃、オーバーナイトで被覆し、洗浄バッファー(PBS、0.05%ポリソルベート20、pH7.2)で3回洗浄し、次いで室温で2時間、アッセイ希釈液(PBS、0.05%ポリソルベート20、0.5%BSA、0.05%ProClin300、pH7.2)でブロッキングした。E25特異的IgE(図5に示されるポジティブコントロール)標準曲線は、0.4−1000ng/mlのポジティブコントロール(PC)を正常ヒトニート血清プール(NHSプール)に添加し、標準試料をアッセイ希釈液で1:2に希釈することによって調製された。1:2ポジティブコントロール標準曲線試料を、E25−AAAミュータントで被覆したマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温、オーバーナイトでインキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで6回洗浄した。
アッセイ希釈液(PBS、0.5%BSA、0.05%ポリソルベート20及び0.05%ProClin300)で希釈されたビオチン標識rhuFcεR1−IgGを、マイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで6回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈されたAmdexストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(Amdex SA−HRP)をマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで6回洗浄した。次いでTMB基質をマイクロタイタープレートに添加し、室温で15分間インキューベートした。発色現像を止めるためにリン酸をマイクロタイタープレートに添加し、それぞれのウェルの吸光度シグナルを650nm基準で450nmにおいてプレートリーダーを用いて読みとった。
E25特異的IgE(PC)標準曲線を図8に示す。E25特異的IgE抗体の最小定量化可能濃度(MQC)は、このアッセイ系では0.2IU/ml(0.48ng/ml)であった。
図10に記載されるアッセイ系のE25特異的IgE抗体の感度が測定された。E25特異的IgE(図5に示されるポジティブコントロール)標準曲線は、正常ヒトニート血清プール(NHSプール)に0.1−100IU/mLのポジティブコントロール(PC)を添加し、次いで1μg/mLのビオチン標識E25−AAAミュータントを含むアッセイ希釈液(PBS、0.05%ポリソルベート20、0.5%BSA、0.05%ProClin300、pH7.2)で1:2にそれぞれの標準試料を希釈することによって調製された。1:2のポジティブコントロール標準曲線試料を、撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートした。ストレプトアビジンで予め被覆したマイクロタイタープレート(Pierce cat. #15125)は、洗浄バッファー(PBS、0.05%ポリソルベート20、pH7.2)で3回洗浄された。プレインキューベートされた1:2のポジティブコントロール標準曲線試料を、ストレプトアビジンで予め被覆したマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈されたジゴキシゲニン標識rhuFcεR1−IgGをマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈した抗ジゴキシゲニンモノクローナル抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP−Anti−DIG MAb、Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc. cat. #200−032−156)を、マイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。次いでTMB基質をマイクロタイタープレートに添加し、室温で15分間インキューベートした。発色現像を止めるためにリン酸をマイクロタイタープレートに添加し、それぞれのウェルの吸光度シグナルを650nm基準で450nmにおいてプレートリーダーを用いて読みとった。E25特異的IgE(PC)標準曲線を下記の表3に示す。E25特異的IgE抗体の最小定量化可能濃度(MQC)は、このアッセイ系では0.1IU/ml(0.24ng/ml)であった。以下の表4の方法は、以下の変更を伴うが上記表3と同じである:1)E25特異的IgE(図5に示されるポジティブコントロール)標準曲線は、正常ヒトニート血清プール(NHSプール)に、0.1−100IU/mLのポジティブコントロール(PC)の代わりに0.1−6.4IU/mLを添加することによって調製された;及び2)予め被覆したストレプトアビジンプレートは、Pierce cat. #15125の代わりにPierce cat. #15500であった。
表3.半均一系ELISAフォーマットの感度
約159IU /mlの総IgEを含むNHSプールの標準曲線。
表4.半均一系ELISAフォーマットの感度
実施例7.IgEアイソタイプの抗薬剤特異的抗体の検出のためのアッセイ系の薬剤耐性
実施例4(図7)に記載されるアッセイ系の薬剤耐性は、0.8IU/ml(2ng/ml)のポジティブコントロール(図5に示されるE25特異的IgE)及び漸増濃度のE25の存在下で試験された。マイクロタイタープレートを、実施例6に記載されるように、E25−AAAミュータントで被覆した。E25薬剤耐性試験試料は、1−1000ng/mLのE25を2ng/mLのPCを含むニートNHSプールに添加し、次いで各々の薬剤耐性試料をアッセイ希釈液で1:2に希釈することによって調製された。1:2のE25薬剤耐性試料を、E25−AAAミュータントで被覆したマイクロタイタープレートに添加し、さらに実施例6に記載されるように、E25特異的抗体を検出するように処理した。このアッセイの結果を図9に示す。0.8IU(2ng/ml)のE25特異的抗体の存在下では、アッセイのE25耐性度は〜130ng/mlのE25であった。
図10に記載されるアッセイ系の薬剤耐性は、0.2、1及び5IU/ml(0.48、2.4及び12ng/ml)のポジティブコントロール(図5に示されるE25特異的IgE)及び0、10、50及び150ng/ml濃度のE25の存在下で試験された。E25特異的IgE(ポジティブコントロール)標準曲線は、0.1−6.4IU/mLのポジティブコントロール(PC)を正常ヒトニート血清プール(NHSプール)に添加することによって調製された。E25薬剤耐性試験試料は、0、10、50及び150ng/mLのE25を、ニートNHSプール又は0.2、1及び5IU/mlのPCを含む812IU/mlまでの非特異的IgEを含む3人のアレルギー性喘息ヒト血清に添加することによって調製された。標準曲線及び薬剤耐性試料は、1ug/mLのビオチン標識E25−AAAミュータントを含むアッセイ希釈液(PBS、0.05%ポリソルベート20、0.5%BSA、0.05%ProClin300、pH7.2)で1:2に希釈された。1:2の試料は、撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートした。ストレプトアビジンで予め被覆したマイクロタイタープレート(Pierce cat. #15500)を洗浄バッファー(PBS、0.05%ポリソルベート20、pH7.2)で3回洗浄した。プレインキュベートされた1:2の試料を、ストレプトアビジンで被覆したマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈されたジゴキシゲニン標識rhuFcεR1−IgGをマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈された抗ジゴキシゲニンモノクローナル抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP−抗DIG MAb、Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc. cat. #200−032−156)をマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。次いでTMB基質をマイクロタイタープレートに添加し、室温で15分間インキューベートした。発色現像を止めるためにリン酸をマイクロタイタープレートに添加し、それぞれのウェルの吸光度シグナルを650nm基準で450nmにおいてプレートリーダーを用いて読みとった。このアッセイの結果を以下の表5に示す。0.2IU(0.48ng/ml)のE25−特異的抗体の存在下では、アッセイのE25耐性度は〜50ng/mlのE25であった。
表5.半均一系ELISAフォーマットの薬剤耐性
図10に記載されるアッセイ系の総IgE干渉も試験された。E25特異的IgE(ポジティブコントロール)標準曲線は、0.1−6.4IU/mLのポジティブコントロール(PC)を正常ヒトニート血清プール(NHSプール)に添加することによって調製された。アレルギー性喘息と診断された個体からの9つのヒト血清試料(Bioreclamation, Westbury, NY社から提供された血清)及び107−2446IU/mLの様々なIgEレベルを有する正常ヒト血清プールからなる10の総IgE干渉試料が、解析のために選択された。標準曲線及び10の総IgE干渉試料は、1μg/mLのビオチン標識E25−AAAミュータントを含むアッセイ希釈液(PBS、0.05%ポリソルベート20、0.5%BSA、0.05%ProClin300、pH7.2)で1:2に希釈された。1:2の試料を、撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートした。ストレプトアビジンで予め被覆したマイクロタイタープレート(Pierce cat. #15500)を洗浄バッファー(PBS、0.05%ポリソルベート20、pH7.2)で3回洗浄した。プレインキュベートされた1:2の試料を、ストレプトアビジンで被覆したマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈されたジゴキシゲニン標識rhuFcεR1−IgGをマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈された抗ジゴキシゲニンモノクローナル抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP−抗DIG MAb、Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc. cat. #200−032−156)をマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。次いでTMB基質をマイクロタイタープレートに添加し、室温で15分間インキューベートした。発色現像を止めるためにリン酸をマイクロタイタープレートに添加し、それぞれのウェルの吸光度シグナルを650nm基準で450nmにおいてプレートリーダーを用いて読みとった。
以下の表6は、試料中の総IgEが800IU/ml以下である場合、総IgE干渉がなかったことを示す。
表6.半均一系ELISAフォーマット総IgE干渉
図10に記載されるアッセイ系の精度も試験された。図10に記載されるアッセイ系の精度は、0、0.2、1及び5IU/ml(0.48、2.4及び12ng/ml)のポジティブコントロール(図5に示されるE25特異的IgE)存在下で試験された。E25特異的IgE(ポジティブコントロール)標準曲線は、0.1−6.4IU/mLのポジティブコントロール(PC)を、正常ヒトニート血清プール(NHSプール)に添加することによって調製された。精度試験試料は、0、0.2、1及び5IU/mlのPCをニートNHSプール又は812IU/mlまでの非特異的IgEを含む3個体のアレルギー性喘息ヒト血清に添加することによって調製された。標準曲線及び精度試料は、1μg/mLのビオチン標識E25−AAAミュータントを含むアッセイ希釈液(PBS、0.05%ポリソルベート20、0.5%BSA、0.05%ProClin300、pH7.2)で1:2に希釈された。1:2の試料を、撹拌しながら室温、オーバーナイトでプレインキュベートした。ストレプトアビジンで予め被覆したマイクロタイタープレート(Pierce cat. #15500)を洗浄バッファー(PBS、0.05%ポリソルベート20、pH7.2)で3回洗浄した。プレインキュベートされた1:2の試料を、ストレプトアビジンで被覆したマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈されたジゴキシゲニン標識rhuFcεR1−IgGをマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。アッセイ希釈液で希釈された抗ジゴキシゲニンモノクローナル抗体−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP−抗DIG MAb、Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc. cat. #200−032−156)をマイクロタイタープレートに添加し、撹拌しながら室温で1時間インキューベートした。マイクロタイタープレートを洗浄バッファーで3回洗浄した。次いでTMB基質をマイクロタイタープレートに添加し、室温で15分間インキューベートした。発色現像を止めるためにリン酸をマイクロタイタープレートに添加し、それぞれのウェルの吸光度シグナルを650nm基準で450nmにおいてプレートリーダーを用いて読みとった。結果を以下の表7に示す。総IgEレベルの増加に伴って、IgEの過剰回収の傾向があるようである。
表7.半均一系ELISAフォーマットの精度
個体のアレルギー性喘息血清の総IgE(非特異的IgE)レベルは、Phadiaの市販用総IgEアッセイを用いて血清ベンダー(Bioreclamation)で測定された。
NHSプールの総IgEレベルは、ヒト血清試料中の総遊離IgEを検出するための方法を用いて測定された。E25の投与の前に抽出された試料を、rhuFcεRI−IgGで被覆されたプレートと共にインキューベートした。試料のIgEとrhuFcεRI−IgGとの間の結合は、プレートにビオチンがコンジュゲートされた抗ヒトIgE抗体を添加し、ストレプトアビジンがコンジュゲートされたβ−ガラクトシダーゼ試薬を添加することによって検出された。プレートを洗浄し、0.1Mリン酸ナトリウム、1mMMgCl2、pH7.5中の0.34mg/mLMUG(4−メチルウンベリフェリルb−D−ガラクトシド)と共にインキューベートした。この反応を0.3Mグリシン、pH10.5の添加により停止し、蛍光シグナルを読みとった。シグナルは、血清試料中のIgEレベルと相関する。
前述の発明は明確な理解のために図と例とを挙げて詳細に記載されているが、記載及び例は発明を限定するように解釈されるべきではない。