JP6139183B2 - 赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークの除去方法 - Google Patents

赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークの除去方法 Download PDF

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Description

本発明は赤外吸収スペクトルから大気成分に由来する妨害ピークを除去する方法に関し、特にフーリエ変換型分光測定装置(以下、FT−IRと略す)によって得られる測定試料の赤外吸収スペクトルから、妨害ピークを効率的に除去する方法に関する。
測定試料に関する赤外吸収スペクトルは、FT−IR等の赤外分光測定装置を使用することによって取得できるが、その測定試料の赤外吸収スペクトルには測定試料による吸収ピーク以外に、水蒸気や二酸化炭素等の大気成分に由来する赤外線の吸収、および検出器や光源等の電圧によって生起する電気的ノイズが含まれている。
ここで、FT−IRを使用する分光測定装置では、上記の電気的ノイズ等のランダムに発生するノイズを取り除いて、測定試料に由来する微弱な吸収ピークのS/N比を向上するために、測定試料に対して複数回インターフェログラムの測定を行い、かつ得られたインターフェログラムを積算することが行われている。そのインターフェログラムの積算を用いた吸収ピークのS/N比の向上は、FT−IRを使用する分光測定の分野では、測定精度の向上のための一手段として用いられている。
しかしながら、水蒸気や二酸化炭素等の大気成分に由来する赤外線の吸収は、そのインターフェログラムを積算する方法では取り除くことが出来ない。それら大気成分に由来する赤外線の吸収スペクトルは妨害ピークと呼ばれ、これまでに、測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークを適切に除去するための技術の開発が行われてきた。
測定試料の赤外吸収スペクトルから妨害ピークを除去する方法は、大別すると、インターフェログラムの測定前に、測定装置内から水蒸気等の大気成分を取り除く方法と、赤外吸収スペクトルの演算後に、コンピュータ上で測定試料の赤外吸収スペクトルから妨害ピークを除去または減算する方法とに分類される。
例えば、前者の測定装置内から大気成分を直接除去する発明は、密閉された装置内に乾燥剤を載置することによって、内部の水蒸気を取り除くもの(例えば、特許文献1)や、密閉された装置内に窒素ガスなどの乾燥空気を送り込むことによって装置内のパージを行い、装置内部から水蒸気等の成分を取り除くもの(例えば、特許文献2)が知られている。
また、後者のコンピュータ上で妨害ピークを除去する方法、または減算する方法として、測定試料の赤外吸収スペクトルから、測定装置内の大気成分のみを対象として得られる赤外吸収スペクトルを差し引くことで、妨害ピークの影響を取り除くものが知られている。
特開平10−253454号公報 特開平05−288606号公報
編者;PeterGriffiths, James A. De Haseth, 書籍名;FOURI-ER TRANSFORMINFERARED SPECTROMETRY,第2版,出版社;Wiley-Interscien-ce.
しかしながら、上記の特許文献1および2の発明も、通常使用される分光測定装置と同様に試料の交換や光軸の調整を行う時は、測定装置を開放するため、装置内の圧力や水蒸気量には微差が生じる。
ここで、装置内の圧力の変化は妨害ピークの成分の吸収波長のずれを生起し、他方で装置内の温度や水蒸気量の変化は吸収ピークの面積の大小の変化を生起することが知られている(例えば、非特許文献1の第10頁参照)。また、上記の測定装置内に測定試料が存在しているか否かによっても、測定装置内の雰囲気は変化するため、測定試料のインターフェログラムの測定時と、大気成分のインターフェログラムの測定時との間で、装置内の雰囲気を短時間かつ高精度に整合させることが可能な技術の開発が望まれているが、未だその開発には至っていない。
また、もし上記の特許文献に記載の装置を長時間使用することによって、FT−IR内の雰囲気が時間平均で安定化ができたとしても、微小時間でみれば分光測定装置内の大気成分濃度は変動する。そのため、その特許文献に記載の装置を長時間使用するだけでは、測定試料、および大気成分のインターフェログラムの測定時に装置内の雰囲気を整合させることは難しい。
そこで、上述した装置を使用して妨害ピークの高精度な除去する場合は、まず長時間かけて測定装置内の雰囲気を安定化させ、その状態のまま測定試料および大気成分に対するインターフェログラム測定する。
その後、得られた測定試料および大気成分のインターフェログラムの積算、および赤外吸収スペクトルの演算を行い、測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピーク部分の影響を、大気成分のみを測定して得られた妨害ピークの赤外吸収スペクトルによって差し引く。そして、従来の妨害ピークの除去方法では、更に、その測定から演算に至る各工程を繰り返し行うことによって、測定試料の赤外吸収スペクトルから適切に妨害ピークを取り除くことが可能な赤外吸収スペクトルの組合せを見付け出さなければならず、それら全てを行うことは測定者にとって非常に煩雑であった。
以上の点から、赤外吸収スペクトルを測定する分野では、装置内の雰囲気を高精度に安定化させる等の工程を経ずに、測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークを高精度に除去し得る技術の開発が望まれていた。
ここで、上記の課題を解決する方法として、分光測定装置内において、光源からの赤外光を、一方が測定試料のインターフェログラム測定用の光、もう一方が大気成分のインターフェログラム測定用の光となるように分離させ、それぞれのインターフェログラムが同時に測定できる装置の開発が考えられた。しかしながら、そのような二つの測定光路、および検出器等を一つの分光測定装置内に配置するには、装置の巨大化、および装置の高価格化が予測された。したがって、このような装置を開発し、妨害ピークを除去する方法は本発明の課題解決の手段として採用しなかった。
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的はFT−IR内の大気成分をその装置内から高精度に除去する工程、又は高精度に整合させる工程を経ることなしに、測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークを、高精度に除去し得る妨害ピークの除去方法を提供することにある。
上述した従来の課題について、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、まず積算予定回数より多い測定回数を設定し、その測定回数分の測定試料のインターフェログラムを、一度のインターフェログラム測定において取得する。次いで、得られたインターフェログラムから積算予定回数の数だけインターフェログラムを選び出す複数の組合せを作成し、その組合せ数分の測定試料の赤外吸収スペクトルを演算する。それと同じ工程を、大気成分についても行う。
そのようにして得られる測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピーク部分と、大気成分のみを測定して得られるバックウンドの赤外吸収スペクトルとの間で、形状の一致度が最も高い組合せを選び出し、その組合せに含まれる測定試料の赤外吸収スペクトルの妨害ピーク部分から、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルを差し引くことによって、測定試料の赤外吸収スペクトルから妨害ピークの影響を高精度に除去できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記の目的を達成するために本発明の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークの除去方法は、
測定対象物を含む測定試料に対して、所定の測定回数のインターフェログラム測定を行い、得られた測定試料のインターフェログラムの中から、その測定回数よりも少ない数の積算数でインターフェログラムを積算し、複数の測定試料の赤外吸収スペクトルを作成する測定試料スペクトル作成工程と、
測定装置内に存在する大気成分に対して、所定の測定回数のインターフェログラム測定を行い、得られたインターフェログラムの中から、その測定回数よりも少ない数の積算数でインターフェログラムを積算し、複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを作成するバックグラウンドスペクトル作成工程と、
上記複数の測定試料の赤外吸収スペクトルと、上記複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルとで、測定試料スペクトルから妨害ピークを適切に除去できる組合せを選び出し、その組合せに含まれる測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピーク部分から、同一の組合せに含まれるバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを用いて差し引いた後、その結果を出力する妨害ピーク除去工程とを備えることを特徴とする。
上記の測定試料スペクトル作成工程は、
測定試料のインターフェログラムの積算数を予め設定する第一積算回数入力工程と、
前述の積算数よりも多い数値で、測定試料のインターフェログラムの測定回数を設定する第一測定回数設定工程と、
測定装置内に測定試料を設置した後、上記の測定回数分のインターフェログラム測定を行う第一インターフェログラム測定工程と、
取得した測定回数の測定試料のインターフェログラムの中から、前述した積算数に対応する数のインターフェログラムの組合せを複数作成し、各組合せ毎にインターフェログラムを積算する第一インターフェログラム積算工程と、
積算された測定試料のインターフェログラムを各組合せ毎にフーリエ変換し、組合せ毎の測定試料の赤外吸収スペクトルを生成する第一スペクトル作成工程とを備えている。
また、上記のバックグラウンドスペクトル作成工程は、
測定試料を含まない状態の大気成分のインターフェログラムの積算数を予め設定する第二積算回数入力工程と、
前述の積算数よりも多い数値で、大気成分のインターフェログラムの測定回数を設定する第二測定回数設定工程と、
測定装置内の大気成分に対して、その測定回数分のインターフェログラム測定を行う第二インターフェログラム測定工程と、
取得した測定回数分の大気成分のインターフェログラムの中から、前述の積算数に対応する数のインターフェログラムの組合せを複数作成し、各組合せ毎にインターフェログラムを積算する第二インターフェログラム積算工程と、
積算された大気成分のインターフェログラムを各組合せ毎にフーリエ変換し、組合せ毎のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを生成する第二スペクトル作成工程とを備えている。
そして、上記の妨害ピーク除去工程は、
上述の第一スペクトル作成工程で作成される複数の測定試料の赤外吸収スペクトルと、上述の第二スペクトル作成工程で作成される複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルとで、スペクトルのペアを作成するスペクトル組合せ工程と、
そのスペクトルの組合せ毎に測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピーク部分の形状と、第二スペクトル作成工程で作成されたバックグラウンドの赤外吸収スペクトルの形状とで、形状の一致度を演算する妨害ピーク一致度演算工程と、
前述の妨害ピークの形状の一致度の演算結果に基づいて、その一致度が最も高くなるスペクトルの組合せを決定し、その組合せに含まれる測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピーク部分から、同一の組合せ中のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを差し引いた後、その結果を出力する最終結果出力工程とを備えている。
本発明は、上記従来の測定試料、および大気成分のインターフェログラム測定時において装置内の環境を整合させる工程に代え、まず測定試料に対して、所定回数分のインターフェログラムの測定を行い、得られた所定回数分のインターフェログラムの中から積算数に応じた数の組合せを複数作成する。そして、それらをフーリエ変換することにより、複数の測定試料の赤外吸収スペクトルを作成する。それと同様の工程を装置内の大気成分について行うことによって、複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを作成する。
そのようにして、得られる測定試料のスペクトルに含まれる妨害ピーク部分の形状と、大気成分に由来するバックグラウンドの赤外吸収スペクトルの形状とで、形状の一致度が最も高い組合せを選び出し、その組合せに含まれるスペクトル同士で差分をとることによって、測定試料のスペクトルに含まれる妨害ピークの影響を高精度に除去することができる。
本実施形態の妨害ピーク除去装置の基本的な構成要素を示す図、および妨害ピーク除去方法の基本的な構成要素を示すフローチャートである。 本実施形態の妨害ピーク除去方法の構成要素を詳細に示すフローチャートである。 本実施形態の妨害ピーク除去方法の動作を概念的に示すフローチャートである。 実施例1におけるインターフェログラムの測定条件を示す図である。 実施例2におけるインターフェログラムの測定条件を示す図である。 比較例におけるインターフェログラムの測定条件を示す図である。
図1は本実施形態の概略を示すものであり、図1(A)は妨害ピーク除去装置10の基本的な構成要素を示す図、図1(B)は妨害ピーク除去装置10によって実行される妨害ピーク除去方法(S10)の基本的な構成要素を示すフローチャートである。
図1(A)に示す妨害ピーク除去装置10は測定部20、およびコンピュータ30を備え、それら測定部20とコンピュータ30との間では、測定回数や測定されたインターフェログラム等の情報の送受信が行われる。
測定部20は、コンピュータ30から測定条件を受信して、測定試料Sおよび大気成分Bのインターフェログラムの測定を行う部分であって、フーリエ変換型分光測定装置22(以下、FT−IR22と略す)と、装置内環境調整手段24と、装置内環境モニター手段26とを備えている。本実施形態におけるFT−IR22には、市販されているフーリエ変換型分光測定装置であれば何れも使用することができる。
装置内環境調整手段24は、FT−IR22内の水蒸気量または真空度等を調節する。装置内環境モニター手段26は、装置内環境調整手段24によって調整されるFT−IR22内の水蒸気量または真空度等を監視する。
コンピュータ30は、測定部20によって取得されるインターフェログラム等の情報に基づき、測定試料のスペクトルに含まれる妨害ピークを除去するためのものであって、CPU32と、記憶手段34と、キーボードやマウス等の入力手段36と、ディスプレイ等の表示手段38とを備えている。
CPU32は測定試料のスペクトルに含まれる妨害ピークを除去する妨害ピーク除去方法(S10)を実装するものであり、そのCPU32を使用することによってインターフェログラム測定から妨害ピーク除去に至る各工程が実行される。記憶手段34には測定部20を使用して得られるスペクトルの情報や、入力手段36を介して測定回数等が記憶される。
図1(B)に示す妨害ピーク除去方法(S10)は、測定試料スペクトル作成工程(S20)と、バックグラウンドスペクトル作成工程(S30)と、妨害ピーク除去工程(S40)とを備えている。
測定試料スペクトル作成工程(S20)では、測定対象物を含む測定試料Sに対して、所定の測定回数のインターフェログラム測定を行い、得られたインターフェログラムIを用いて、複数の測定試料の赤外吸収スペクトルSが作成される。
バックグラウンドスペクトル作成工程(S30)では、測定装置内に存在する大気成分Bに対して、所定の測定回数のインターフェログラム測定を行い、得られたインターフェログラムIを用いて、複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSが作成される。
妨害ピーク除去工程(S40)では、測定試料スペクトル作成工程(S20)で得られる複数の測定試料Sの赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークP部分と、バックグラウンドスペクトル作成工程(S30)で得られるバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSとの間で、形状の一致度を演算し、その形状の一致度が高いスペクトル同士の組合せを、測定試料スペクトルから妨害ピークを適切に除去できる組合せとして選び出し、その組合せに基づいて測定試料の赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークP部分からバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSが差し引かれた後、その結果が出力される。
本実施形態の妨害ピーク除去装置10、および妨害ピーク除去方法(S10)は概略以上のように構成されるが、以下に妨害ピーク除去方法(S10)の詳細と、本実施形態の具体的な動作を図2および図3を用いて説明する。
図2は本実施形態の妨害ピーク除去方法の構成要素の詳細を、図3は本実施形態の妨害ピーク除去方法の動作を示すフローチャートである。まず、図2に示す妨害ピーク除去方法(S10)の測定試料スペクトル作成工程(S20)、バックグラウンドスペクトル作成工程(S30)、および妨害ピーク除去工程(S40)の各工程について説明する。
<測定試料スペクトル作成工程>
測定試料スペクトル作成工程(S20)は、第一積算回数入力工程(S21)、第一測定回数設定工程(S22)、第一インターフェログラム測定工程(S23)、第一インターフェログラム積算工程(S24)、および第一スペクトル作成工程(S25)を備えている。
第一積算回数入力工程(S21)では、測定試料SのインターフェログラムIの積算数(X)が設定される。第一測定回数設定工程(S22)では、前述の積算数(X)よりも多い数値が測定試料SのインターフェログラムIの測定回数(M)として設定される。そのため、積算数(X)に対して測定回数(M)は、常に積算数(X)<測定回数(M)の関係を満たす。
第一インターフェログラム測定工程(S23)では、FT−IR22内に測定試料が設置された後、測定回数(M)分のインターフェログラム測定が行われる。第一インターフェログラム積算工程(S24)では、取得した測定回数(M)の測定試料のインターフェログラムIの中から、積算数(X)に対応する数のインターフェログラムを選びだす組合せが複数作成され、各組合せ毎にインターフェログラムIの積算が行われる。
そして、第一スペクトル作成工程(S25)では、積算後の測定試料Sのインターフェログラムが各組合せ毎にフーリエ変換され、それら組合せ毎の測定試料の赤外吸収スペクトルSが生成される。
<バックグラウンドスペクトル作成工程>
バックグラウンドスペクトル作成工程(S30)は、第二積算回数入力工程(S31)、第二測定回数設定工程(S32)、第二インターフェログラム測定工程(S33)、第二インターフェログラム積算工程(S34)、および第二スペクトル作成工程(S35)を備えている。
第二積算回数入力工程(S31)では、大気成分BのインターフェログラムIの積算数(X)が設定される。第二測定回数設定工程(S32)では、前述の積算数(X)を所定数倍し、その数値が前記大気成分BのインターフェログラムIの測定回数(M)として設定される。そのため、積算数(X)に対して測定回数(M)は、常に積算数(X)<測定回数(M)の関係を満たす。
第二インターフェログラム測定工程(S33)では、FT−IR22内の大気成分B(測定試料を含まない)に対して、測定回数(M)分のインターフェログラム測定が行われる。第二インターフェログラム積算工程(S34)では、取得した測定回数(M)分の大気成分BのインターフェログラムIの中から、積算数(X)に対応する数のインターフェログラムIを選びだす組合せが複数作成され、各組合せ毎にインターフェログラムIの積算が行われる。第二スペクトル作成工程(S35)では、積算後の大気成分Bのインターフェログラムが各組合せ毎にフーリエ変換され、それら組合せ毎のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSが生成される。
<妨害ピーク除去工程>
妨害ピーク除去工程(S40)は、スペクトル組合せ工程(S41)、妨害ピーク一致度演算工程(S42)、および最終結果出力工程(S43)を備えている。
スペクトル組合せ工程(S41)では、上述の第一スペクトル作成工程(S25)で作成される複数の測定試料Sの赤外吸収スペクトルSと、上述の第二スペクトル作成工程(S35)で作成される複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSとで、赤外吸収スペクトルの組合せCSBが作成される。
妨害ピーク一致度演算工程(S42)では、そのスペクトルの組合せCSB毎に測定試料の赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークPの形状と、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSの形状との間で、形状の一致度が演算される。
最終結果出力工程(S43)では、前述の妨害ピークの形状の一致度の演算結果に基づいて、その一致度が最も高くなるスペクトルの組合せCSBを決定し、その組合せCSBの測定試料Sの赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークPから、同組合せ中のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSを差し引いた後、その結果が出力される。
なお、上記の妨害ピーク一致度の演算には、妨害ピーク同志の形状が重なった部分と重ならなかった部分の面積比を演算することによって求める方法用いているが、本実施形態にはその他一般に用いられるピーク形状の一致度の演算方法を利用することもできる。
続いて、本実施形態の動作を、図3を用いて具体的に説明する。
<測定試料スペクトルSの作成>
まず、図3に示す測定試料スペクトル作成工程(S20)において、測定者は入力手段36を使用して、測定試料SのインターフェログラムIの積算数(X)と、測定試料Sの測定回数(M)とをそれぞれ設定し、それら積算数(X)および測定回数(M)は、記憶手段34に記憶される(S21,S22)。
続いて、FT−IR22内に測定試料Sが設置された状態で、CPU32は、FT−IR22に対して、測定回数(M)分のインターフェログラムIの測定指示を行い、そのFT−IR22によって取得される測定回数(M)分のインターフェログラムIが記憶手段34に記憶される(S23)。
次いで、CPU32は、予め測定者によって入力された積算数(X)と、取得した測定回数(M)分のインターフェログラムIとを用いて、インターフェログラムIを積算するための組合せを複数(例えば測定回数積算数通り)作成する。続いて、CPU32は、そのインターフェログラムIの組合せ毎に、インターフェログラムの積算を行うと共に(S24)、その積算結果をフーリエ変化して、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSを作成する(S25)。また、それら測定試料Sの赤外吸収スペクトルSは、記憶手段34に記憶される。
<バックグラウンドスペクトルSの作成>
図3に示すバックグラウンドスペクトル作成工程(S30)において、測定者は入力手段36を使用して、大気成分BのインターフェログラムIの積算数(X)と、大気成分Bのインターフェログラム測定の回数(M)とをそれぞれ設定し、それら積算数(X)および測定回数(M)は、記憶手段34に記憶される(S31,S32)。
続いて、FT−IR22内には大気成分Bのみが存在する状態で、CPU32は、FT−IR22に対して、測定回数(M)分のインターフェログラムIの測定指示を行い、そのFT−IR22によって取得される測定回数(M)分のインターフェログラムIは記憶手段34に記憶される(S33)。
次いで、CPU32は、予め測定者によって入力された積算数(X)と、取得した測定回数(M)分のインターフェログラムIとを用いて、インターフェログラムIを積算するための組合せを複数(例えば測定回数積算数通り)作成する。続いて、CPU32は、そのインターフェログラムIの組合せ毎に、インターフェログラムの積算を行うと共に(S34)、その積算結果をフーリエ変化して、バックグラウンド(妨害ピーク)の赤外吸収スペクトルSを作成する(S35)。また、それらバックグラウンド(妨害ピーク)の赤外吸収スペクトルSは、記憶手段34に記憶される。
<妨害ピークの除去>
図3に示す妨害ピーク除去工程(S40)において、CPU32は、記憶手段34に記憶された複数の測定試料Sの赤外吸収スペクトルS、および複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSから、それぞれ一つずつ呼び出してスペクトルの組合せCSBを作成する(S41)。
そして赤外吸収スペクトルSと、赤外吸収スペクトルSのスペクトルの組合せCSB毎に、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークPの形状と、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSBの形状とで、形状の一致度が演算される(S42)。
その演算の後、CPU32は、例えばその形状の一致度が最も高い数値を示すスペクトルの組合せCSBを、リストの一番上となるように並び替えを行うようにすることで、その一致度の高いスペクトルの組合せCSBが決定される。
このようにして選び出されるスペクトルの組合せCSBについて、CPU32は、その組合せCSBに含まれる測定試料Sの赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークPから、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSを差し引いた後、その結果を表示手段38へ出力する。
このようにして、本実施形態では、一度の測定試料スペクトル作成工程(S20)において赤外吸収スペクトルSを複数作成し、かつバックグラウンドスペクトル作成工程(S30)において赤外吸収スペクトルSを複数作成することによって、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークPを適切に取り除くことが可能な、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSを選び出すことが出来る。
それにより、本発明は、測定試料または大気成分のインターフェログラムを再度測定する必要はない。また、測定試料のスペクトルから妨害ピークの影響の除去に掛かる時間を短縮することもできる。
上述した本実施形態の作用を、以下の実施例1、実施例2、および比較例を用いて一層具体的に説明する。
実施例1
図4は本実施例のインターフェログラムの測定条件を示す図であり、図4(A)は測定試料Sについて、および図4(B)は大気成分Bについての測定条件を示す図である。
ここで、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSを取得した時のFT−IR22内の雰囲気は、測定試料Sが設置された状態で、平均湿度33%(湿度の変動値±1%)であった。なお、積算数および測定回数の設定値として、積算数は3回、および測定回数は12回とした。
この設定に従って、FT−IR22は図4(A)に示す時間T〜T11においてインターフェログラムIの測定を行い、取得されたインターフェログラムIS0〜IS11は記憶手段34に記憶される。続いて、CPU34によって、それら12個のインターフェログラムIS0〜IS11の中から積算数3に対応した数のインターフェログラムIの組合せ(IS0,IS1,IS2)、(IS0,IS1,IS3)…(IS9,IS10,IS11)が作成される。この時、インターフェログラムIの組合せの数は、220(=12)通りとなる。それら各組合せはインターフェログラムの積算が行われた後に、それら各組合せに対応する測定試料の赤外吸収スペクトルSS1〜SS220が作成される。
なお、FT−IR22内の湿度は、測定試料Sの設置に伴い、測定試料Sの設置前に30%であった湿度が、測定試料Sの設置により33%へ上昇したものと考えられた。
続いて、バックグラウンド(妨害ピーク)の赤外吸収スペクトルSを取得した時のFT−IR内の雰囲気は、平均湿度30%(湿度の変動値±3%)であった。なお、測定の際の設定値として積算数は3回,測定回数12回とした。
この設定に従い、FT−IR22は図4(B)に示す時間T〜T11においてインターフェログラムIの測定を行い、取得されたインターフェログラムIB0〜IB11は記憶手段34に記憶される。
そして、CPU34によって、それら12個のインターフェログラムIB0〜IB11の中から積算数3に対応した数のインターフェログラムIの組合せ(IB0,IB1,IB2)、(IB0,IB1,IB3)…(IB9,IB10,IB11)が作成される。この時、インターフェログラムIの組合せの数は、220(=12)となる。それら各組合せについてインターフェログラムの積算が行われた後に、それら各組合せに対応するバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB1〜SB220が作成される。
そのようにして作成された測定試料Sの赤外吸収スペクトルSS1〜SS220、およびバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB1〜SB220の間で、スペクトルの組合せCSBが作成される。そのスペクトルの組合せCSBは、合計で48400個が作成され、それら組合せ毎に、妨害ピークの形状の一致度が演算される。
例えば、スペクトルの組合せCS1,B1では、SA1とSB1との間でピークの形状の一致度について、上記面積比による一致度の演算方法等が実行されるのだが、ここでは各インターフェログラムの測定時の湿度を比較して、形状が一致するか否かを説明する。測定試料Sの赤外吸収スペクトルSS1を構成するインターフェログラム(IS0,IS1,IS2)の測定時の湿度は、IS0で33%,IS1で34%,IS2で33%になっていた。また、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB1を構成するインターフェログラム(IB0,IB1,IB2)の測定時の湿度は、IS0で30%,IS1で33%,IS2で30%になっていた。そのため、それらのインターフェログラムを積算した測定試料Sの赤外吸収スペクトルSA1の妨害ピーク部分の形状と、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB1とでは、湿度が一致しない。そのため、妨害ピークの形状の一致度は1よりも低い値となる。
他方で、スペクトルの組合せCS46,B72に注目すると、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSS46を構成するインターフェログラム(IS1,IS2,IS3)の測定時の湿度は、IS1で34%,IS2で33%,IS3で32%となっていた。また、バックグラウンドBの赤外吸収スペクトルSB72を構成する(IB1,IB5,IB9)のインターフェログラムの測定時の湿度は、IS1で33%,IS5で33%,IS9で33%となっていた。そのため、それらのインターフェログラムを積算した測定試料Sの赤外吸収スペクトルSS46の妨害ピーク部分の形状と、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB72とでは、湿度が一致する。そのため、妨害ピークの形状の一致度は1となる。
そして、CPU32は、その組合せCS46,B72に含まれる測定試料Sの赤外吸収スペクトルSA46に含まれる妨害ピークPから、バックグラウンドBの赤外吸収スペクトルSB72を差し引いた後、その結果を表示手段38へ出力する。
以上、本発明を使用することにより、FT−IR22の装置内の平均湿度が整合されていない状態、かつその平均湿度が揺らぎを持っている状態であっても、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークの形状に一致する妨害ピークの赤外吸収スペクトルSを作成することが出来る。そのため、本発明は、FT−IR22内の雰囲気を測定試料、および大気成分のインターフェログラムの測定時で、高精度に整合させる必要が無い。
実施例2
図5は本実施例のインターフェログラムの測定条件を示す図であり、図5(A)は測定試料Sについて、および図5(B)は大気成分Bについての測定条件を示す図である。
本実施例の測定試料Sの測定条件は、上記の実施例1と同様の条件で測定を行った(図5(A))。また、大気成分Bのインターフェログラムの測定では、FT−IR22内から測定試料Sを取り出す際に、FT−IR22内の湿度が50%近くに上昇したため、装置内環境調整手段24を使用し、湿度を下げている最中にインターフェログラムの測定を行った。妨害ピークの赤外吸収スペクトルSの測定条件として、湿度を30%程度となるよう制御(装置の調整精度±3%)し、設定値として積算回は3回、測定回数は12回とした。
この設定により、FT−IR22内では、図5(B)に示す時間T〜T11においてインターフェログラムIの測定が行われ、インターフェログラムIはIB1〜IB11が記憶手段34に記憶され、CPU34によって、バックグラウンドBの赤外吸収スペクトルSB1〜SB220が作成される。そのようにして作成された測定試料Sの赤外吸収スペクトルSS1〜SS220、およびバックグラウンドBの赤外吸収スペクトルSB1〜SB220の間で、スペクトルの組合せCSBが作成される。そのスペクトルの組合せCSBは、合計で48400個が作成され、それら組合せ毎に、妨害ピークの形状の一致度が演算される。
ここで、本実施例においては、スペクトルの組合せCS46B117に注目すると、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSS46を構成するインターフェログラム(IS1,IS2,IS3)の測定時の湿度は、IS1で34%,IS2で33%,IS3で32%となっている。また、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB117を構成する(IB2,IB5,IB8)のインターフェログラムの測定時の湿度は、IS2で34%,IS5で33%,IS8で32%となっている。そのため、それらのインターフェログラムを積算した測定試料Sの赤外吸収スペクトルSS46の妨害ピークの形状と、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB117とでは、湿度が一致する。そのため、妨害ピークの形状の一致度は1となる。
そして、CPU32は、その組合せCS46B117に含まれる測定試料Sの赤外吸収スペクトルSA46に含まれる妨害ピークから、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB117を差し引いた後、その結果を表示手段38へ出力する。
以上、本発明は、FT−IR22の装置内の湿度を大きく調整させる必要があったとしても、その調整の最中に測定試料Sの赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークの形状に一致するバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSを作成することが出来る。このため、本発明は装置内環境を安定化させるためだけに時間を掛ける必要がなく、短時間で妨害ピークの除去を行うことが出来る。
比較例
図6は比較例のインターフェログラムの測定条件を示す図であり、図6(A)は測定試料Sについて、および図6(B)は大気成分Bについての測定条件を示す図である。
ここで、本比較例には、上述の背景技術で記載したように、高精度な湿度調節を行いながら妨害ピークを除去する方法を用いた。その湿度制御によって、測定試料Sの設置した状態での湿度は31±0.5%範囲内で安定化し、また、大気成分Bのみ存在する状態で、湿度は30±0.5%範囲内で安定化した。さらに、従来のインターフェログラムの積算方法では、測定したインターフェログラム全てを積算するため、本比較例では、上記の湿度環境の下、測定試料Sおよび大気成分Bの測定回数を3回とし、インターフェログラム測定を行った。
ここで、まず図6(A)に示す測定試料Sのインターフェログラムの測定時の湿度に注目すると、1回目の測定では(31%,31.5%,31%)、2回目の測定では(31.5%,31%,30.5%)、3回目の測定では(31%,30.5%,31%)となっている。これに対して、図6(B)に示す大気成分Bのインターフェログラムの測定時の湿度は、1回目の測定では(30%,30.5%,30%)、2回目の測定では(30.5.%,30%,29.5%)、3回目の測定では(30%,29.5%,30%)となっている。このことから、本比較例の方法では、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSの妨害ピークの形状と、妨害ピークの赤外吸収スペクトルSとの間で、湿度が一致する組合せを作成することは出来ない。
すなわち、この比較例のように、時間をかけて測定装置内の湿度等の雰囲気を高精度に安定化させることを前提とする従来技術では、測定試料Sのインターフェログラムの測定時と、大気成分Bのインターフェログラムの測定時とで、装置内の湿度が一致させることが可能な測定条件が存在しない。そのため、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークPを、適切に除去することが可能な妨害ピークの赤外吸収スペクトルSを取得することが出来ない。
これに対して、本発明の妨害ピークの除去方法では、測定試料S、および大気成分Bのインターフェログラムの測定時において、測定装置内の環境を高精度に整合させる必要が無い。また装置内の雰囲気の調整中であっても適切な妨害ピークの赤外吸収スペクトルSを取得することも出来る。そのため、本発明は従来の妨害ピークの除去方法に比べて、高速かつ高精度な妨害ピークの除去を可能としている。
また、本発明の妨害ピークの除去方法を搭載したFT−IRは、装置内の環境を高精度に安定化させるための装置を付加する必要が無く、安価な構成の赤外分光測定装置で高精度な妨害ピークの除去を行うことができる。
また、本実施形態においては、測定試料のインターフェログラム測定を行った後に、大気成分のインターフェログラム測定を行っているが、別段これに限られず、測定試料のインターフェログラム測定に先立って、大気成分の測定を行うことも可能である。
<妨害ピークの除去の演算時間の短縮化>
そして、本発明の実施形態を使用し、上記実施例の妨害ピーク除去を一層短時間で行うための方法を、上記実施例1および2の測定の測定データ等を用いて説明する。
・赤外吸収スペクトル数の削減方法1
図4に示したFT−IR内の雰囲気は、平均湿度33%(湿度の変動値±1%)である。そこで、湿度33%となるインターフェログラムIのみを取り出して測定試料Sの赤外吸収スペクトルSを作成する。その後、その湿度33%の赤外吸収スペクトルSに含まれる妨害ピークP部分と、上述のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルSB1〜SB220との間で、形状の一致度を演算させる。そのため、本方法ではスペクトルの組合せCSB数は220通りの形状の一致度を演算すればよく、上記の実施例1において作成されるスペクトルの組合せCSB数(48400通り)の形状の一致度を演算する必要が無くなる。
もし、上記の湿度で形状の一致度の高い組合せが見つからなかった場合、再度、測定試料Sの赤外吸収スペクトルSを構成するインターフェログラムを選び直すことによって、同様の計算が行われる。この操作によって、一度の妨害ピークの除去に掛かる演算時間を短縮することが出来る。また、測定者は任意の条件で、妨害ピークの除去を行えることから、汎用性も高い。
・赤外吸収スペクトル数の削減方法2
図4に示したFT−IR内の雰囲気は、平均湿度33%(湿度の変動値±1%)であって、その湿度の変動周期はT〜Tや、T〜Tのように、測定回数4回で一周期となっている。そのため、T〜T11の間には湿度27%が3回(T,T,T)出現することとなる。同様に湿度30%および湿度33%の状態についても3回の測定が行われている。そこで、T〜T11の中から3つ選び出す際に、同じ湿度とならない組合せのみを選び出せば(32%、32%、32%)、(32%、32%、33%)…(34%、34%、34%)の9通りとなる。
同様に、バックグラウンド赤外吸収スペクトルSも(27%、27%、27%)、(27%、27%、30%)…(33%、33%、33%)の9通りの組み合わせとなるため、
スペクトルの組合せCSB数は81通りとなる。本方法を用いることにより、演算数の更なる削減を行うことができる。
この操作により、測定者は網羅的に妨害ピークの除去を行うことが出来、かつ短時間でその結果を得ることが可能である。
・赤外吸収スペクトル数の削減方法3
上記実施例2のように湿度の変動が大きい場合は、特にその設定値を多く(例えば、インターフェログラムIの測定回数200、積算数を100)することにより、高精度な妨害ピークの除去ができる可能性が高くなる。しかしながら、演算しなければならない赤外吸収スペクトルの数は、測定したI単体同士の組み合わせ(200100)通りとなり、その数は非常に多い。そこで、上記の設定の場合は、予めインターフェログラムをブロック化させることが好適である。
そのブロック化の工程は各スペクトル作成工程において実行されるものであり、具体的なブロック化の方法としては、例えばブロック1(IS1〜100),ブロック2(IS2〜101)…ブロック100(IS101〜200)のようにインターフェログラムを一つずつずらしてブロックを作成する。これにより、スペクトル作成工程では100個のブロックについて赤外吸収スペクトルを演算すればよい。
また、別の方法としては、10個のインターフェログラムを一つのブロックとして、ブロック1(IS1〜10),ブロック2(IS11〜20)…ブロック20(IS191〜200)の計20個のブロックを作成する。そして、これらのブロックの中から、10個のブロックを選び出すことによって、それらのブロックに含まれる100個のIによる積算が可能となる。これによって、2010個の赤外吸収スペクトルSを得ることが出来、I単体を用いて組合せ(200100通り)を作成するよりも効率的である。
なお、本発明のブロック化の方法は上述の方法に限られず、ブロック1(IS1〜10),ブロック2(IS2〜11)…のように作成することや、適宣別のブロック化方法を使用することが出来る。
この方法を用いることで、測定数や積算数を大きくする必要が生じた場合であっても、赤外吸収スペクトルの数を適切に減らすことが可能である。
・形状の一致度の演算時間の削減
また、上記の本実施形態においては、スペクトルの組合せCSBの妨害ピークの形状の一致度を一度リスト化した後、最も形状の一致度が高い組合せを選びだすため、全てのスペクトルの組合せCSBに対して、その一致度の演算を行うものであった。しかし、本実施形態においては予め形状の一致度に閾値を設けることにより、その演算時間を短縮することが出来る。
例えば、上述の実施例1の形状の一致度の演算において妨害ピークの形状の一致度の最大値は1である。そのため、妨害ピークの形状の一致度の最大値が1になった時点で形状の一致度の演算を終了させることによって、残りのスペクトルの組合せに対しては、演算を行わない。この方法を用いることによって、演算時間の短縮や、CPUの負担の軽減を図ることが出来る。
なお、本実施形態においてバックグラウンドは大気成分Bのみ表すものとして表現しているが、本発明ではこれに限られず、測定対象が溶媒である場合には、大気成分および測定試料を含まない溶媒による赤外吸収スペクトルを、また測定対象がガスの場合、大気成分および測定対象を含まないガスによる赤外吸収をバックグラウンドとして、測定することも可能である。
本発明は測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークを適切に除去することができる。
S10 妨害ピークの除去方法
S20 測定試料スペクトル作成工程
S21 第一積算回数入力工程
S22 第一測定回数設定工程
S23 第一インターフェログラム測定工程
S24 第一インターフェログラム積算工程
S25 第一スペクトル作成工程
S30 バックグラウンドスペクトル作成工程
S31 第二積算回数入力工程
S32 第二測定回数設定工程
S33 第二インターフェログラム測定工程
S34 第二インターフェログラム積算工程
S35 第二スペクトル作成工程
S40 妨害ピーク除去工程
S41 スペクトル組合せ工程
S42 妨害ピーク一致度演算工程
S43 最終結果出力工程

Claims (4)

  1. フーリエ変換型赤外分光測定装置を使用して得られる測定試料の赤外吸収スペクトルから、大気成分に由来の妨害ピークを除去する方法において、
    定対象物を含む測定試料に対して、所定の測定回数のインターフェログラム測定を行い、得られた測定試料のインターフェログラムの中から、当該測定回数よりも少ない数の積算数でインターフェログラムを積算し、複数の測定試料の赤外吸収スペクトルを作成する測定試料スペクトル作成工程と、
    定装置内に存在する大気成分に対して、所定の測定回数のインターフェログラム測定を行い、得られたインターフェログラムの中から、当該測定回数よりも少ない数の積算数でインターフェログラムを積算し、複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを作成するバックグラウンドスペクトル作成工程と、
    前記複数の測定試料の赤外吸収スペクトルと、前記複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルとで、測定試料スペクトルから妨害ピークを適切に除去できる組合せを選び出し、当該組合せに含まれる測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピーク部分から、同一の組合せに含まれるバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを用いて差し引いた後、当該結果を出力する妨害ピーク除去工程とを備えることを特徴とする赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークの除去方法
  2. 請求項1に記載の妨害ピーク除去方法において、
    前記測定試料スペクトル作成工程は、
    前記測定試料のインターフェログラムの積算数を予め設定する第一積算回数入力工程と、
    前記積算数よりも多い数値で、測定試料のインターフェログラムの測定回数を設定する第一測定回数設定工程と、
    前記測定装置内に測定試料を設置した後、前記測定回数分のインターフェログラム測定を行う第一インターフェログラム測定工程と、
    取得した測定回数の測定試料のインターフェログラムの中から、前記積算数に対応する数のインターフェログラムの組合せを複数作成し、各組合せ毎にインターフェログラムを積算する第一インターフェログラム積算工程と、
    積算された測定試料のインターフェログラムを各組合せ毎にフーリエ変換し、組合せ毎の測定試料の赤外吸収スペクトルを生成する第一スペクトル作成工程とを備えていることを特徴とする赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークの除去方法
  3. 請求項1または2に記載の妨害ピーク除去方法において、
    前記バックグラウンドスペクトル作成工程は、
    前記測定試料を含まない状態の大気成分のインターフェログラムの積算数を予め設定する第二積算回数入力工程と、
    前記積算数よりも多い数値で、大気成分のインターフェログラムの測定回数を設定する第二測定回数設定工程と、
    前記測定装置内の大気成分に対して、前記測定回数分のインターフェログラム測定を行う第二インターフェログラム測定工程と、
    取得した測定回数分の大気成分のインターフェログラムの中から、前記積算数に対応する数のインターフェログラムの組合せを複数作成し、各組合せ毎にインターフェログラムを積算する第二インターフェログラム積算工程と、
    積算された大気成分のインターフェログラムを各組合せ毎にフーリエ変換し、組合せ毎のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを生成する第二スペクトル作成工程とを備えていることを特徴とする赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークの除去方法
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の妨害ピーク除去方法において、
    前記妨害ピーク除去工程は、
    記複数の測定試料の赤外吸収スペクトルと、前記複数のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルとで、スペクトルの組合せを作成するスペクトル組合せ工程と、
    当該スペクトルの組合せ毎に測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピーク部分の形状と、バックグラウンドの赤外吸収スペクトルの形状とで、形状の一致度を演算する妨害ピーク一致度演算工程と、
    前記妨害ピークの形状の一致度の演算結果に基づいて、その一致度が最も高くなるスペクトルの組合せを決定し、当該組合せに含まれる測定試料の赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピーク部分から、同一の組合せ中のバックグラウンドの赤外吸収スペクトルを差し引いた後、当該結果を出力する最終結果出力工程とを備えていることを特徴とする赤外吸収スペクトルに含まれる妨害ピークの除去方法
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