JP6136335B2 - 吸音体、印刷装置 - Google Patents

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Description

本発明は、吸音体、印刷装置に関する。
従来、例えば、プリンターでは、ヘッドやプラテン等から放射される騒音を吸音する吸音部材をケース部材の内部に備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2012−86551号公報
しかしながら、上記吸音部材の密度はほぼ均一であるため、より吸音効果を高めるためには吸音部材の厚みをさらに厚くする必要があった。そして、電子機器内に吸音部材を配置する場合には、吸音部材の厚みを考慮した設計が求められ、吸音部材が厚くなるとプリンター等の電子機器の外形寸法が大きくなってしまう、という課題があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例にかかる吸音体は、1枚の吸音体において、繊維状に解繊された解繊部と、繊維状に解繊されていない未解繊部と、を有し、前記未解繊部は、前記1枚の吸音体の内部に分散していることを特徴とする。
この構成によれば、吸音体の内部には未解繊部が分散して存在している。当該未解繊部は解繊されていないので音が進入しにくい。このため、吸音体に音が進入すると、未解繊部において音がランダムに反射しながら解繊部を通過していく。このため、音が解繊部を通過する距離がより長くなる。そして、音が解繊部を通過していく過程において減衰していくため、吸音効果を高めることができる。また、同じ厚みの吸音体において、未解繊部と解繊部を含む方がより吸音効果を得ることができるため、吸音体の厚みを低減することができる。そして、これにより、例えば、プリンター等の電子機器の外形寸法を小さくすることが可能となる。
[適用例2]上記適用例にかかる吸音体では、前記吸音体の一面に対する垂直方向を厚み方向としたとき、前記一面に沿った方向及び前記厚み方向に前記未解繊部が分散されていることを特徴とする。
この構成によれば、未解繊部は、吸音体における一面方向及び厚み方向に分散されているため、吸音体のいずれの面から音が進入した場合であっても効率よく吸音させることができる。
[適用例3]上記適用例にかかる吸音体の前記未解繊部は、セルロース繊維を含むことを特徴とする。
この構成によれば、未解繊部はセルロース繊維を含むので、パルプ材の解繊されていない部分や紙片などを用いて容易に製造することができる。
[適用例4]本適用例にかかる印刷装置は、ケースと、前記ケース内に配置された印刷部と、前記ケース内に配置された上記の吸音体と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、例えば、印刷部によって発生したノイズが吸音体によって吸音されるため、吸音性に優れた印刷装置を提供することができる。また、配置された吸音体は吸音効率が高いので吸音体自体の厚みを抑えることができる。これにより、印刷装置を小型化することができる。なお、印刷装置の他、吸音を要する各種電子機器に対して適用することができる。
吸音体の構成を示す模式図。 プリンターの構成を示す概略図。 吸音体の吸音性の評価方法を示す模式図。
[実施形態]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各部材等を認識可能な程度の大きさにするため、各部材等の尺度を実際とは異ならせて示している。
まず、吸音体の構成について説明する。図1は、吸音体の構成を示す模式図である。吸音体200は、例えば、電子機器等における騒音を吸収(吸音)するものである。図1に示すように、1枚の吸音体200において、パルプ材が解繊された解繊部220と、パルプ材が解繊されていない未解繊部210と、を有し、未解繊部210は、1枚の吸音体200の内部に分散している。さらに詳細には、未解繊部210は、吸音体200の一面に対する垂直方向を厚み方向としたとき、一面に沿った方向及び厚み方向に分散されている。すなわち、吸音体のいずれの方向においても未解繊部210が分散している。未解繊部210は、例えば、2〜4mm四方(或いは直径)程度の紙片である。そして、未解繊部210は、解繊部220よりも密度が高い部分である。従って、吸音体200に進入した音を未解繊部210で反射(乱反射)させ、反射した音を解繊部220で通過させることにより、音を減衰させ吸音効果を得ることができる。
吸音体200は、セルロース繊維、溶融樹脂及び難燃剤を含む混合物から形成されたものである。セルロース繊維は、パルプ材としてのパルプシート等を、例えば、回転式粉砕装置等の乾式解繊機を用いて繊維状に解繊したものである。そして、この解繊された繊維群の中には繊維状に解繊されない未解繊部210(例えば、紙片)が混在している。
溶融樹脂は、セルロース繊維間の結合を図り、吸音体200に適度な強度(硬度など)を付与したり、紙粉・繊維の飛散を防止したり、吸音体200の形状維持に寄与したりするものである。溶融樹脂は、繊維状や粉状など各種形態を採用することができる。そして、セルロース繊維と溶融樹脂とを混合した混合物を加熱することにより、溶融樹脂を溶融させセルロース繊維に融着させ固化させることができる。なお、セルロース繊維等を熱劣化させない程度の温度で融着させることが望ましい。また、溶融樹脂は、解繊物中の紙繊維と絡みやすい繊維状のものが好ましい。さらに、芯鞘構造の複合繊維が望ましい。芯鞘構造の溶融樹脂は、周囲の鞘部が低温で溶融し、繊維状の芯部が溶融樹脂自身、あるいは、セルロース繊維と接合することで強固な接合を行うことができる。
難燃剤は、吸音体200において難燃性を付与するために添加されるものである。難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の無機材料、リン系の有機材料(例えば、トリフェニルホスフェートなどの芳香族のリン酸エステル)を用いることができる。
吸音体200の形成方法としては、例えば、セルロース繊維、溶融樹脂及び難燃剤が混合された混合物を篩にかけ、篩の下方に配置されたメッシュベルトに堆積させて堆積体を形成する。そして、形成された堆積物を加圧加熱処理する。これにより、溶融樹脂が溶解されるとともに、所望の厚みに形成される。さらに、所望の寸法に型抜きすることにより吸音体200が形成される。
なお、複数の吸音体200を積層して適用することも可能である。これにより、さらに、吸音効果を高めることができる。
次に、印刷装置の構成について説明する。なお、本実施形態では、印刷装置としてのプリンターの構成について説明する。図2は、プリンターの構成を示す断面図である。図2に示すように、本実施形態にかかるプリンター10は、ケース1と、ケース1内に配置された印刷部としての印字ヘッド3と、ケース1内に配置された吸音体200等を備えている。本プリンター10は、プラテン2と印字ヘッド3との間に配置した印字媒体としての印字用紙6に対して、インクリボン13を介して印字ヘッド3内に設けた印字ワイヤー図示せず)により衝撃力を与えて印字を行うものである。
印字用紙6はプリンター10のケース1に設けられた給紙口7から給紙されプラテン2に巻き付けられ、印字ヘッド3により印字(数字、文字等の他、ドットのよるグラフ等の印刷も含む広い概念である)が行われ、排紙口9から排紙される。キャリッジ4は、ガイド軸5によりガイドされて軸方向に移動できる。印字ヘッド3と印字用紙6との間にはインクリボン13が介装されキャリッジ4に固定された印字ヘッド3は、軸方向に移動しながら印字ヘッド3内に設けた複数の印字ワイヤーを所望のタイミングで駆動して印字を行う。
ケース1には開閉自在なカバー11及び排紙口カバー12が取り付けてあり、排紙口カバー12はカバー11と回動可能に連結されている。また排紙口カバー12は透明で軽量な部材で構成したため印字用紙6が見やすくまた取り出しやすくすることができる。そして、印字された印字用紙6は用紙ガイド8に沿って排紙口9から排出される。
また、プリンター10には、騒音を吸収(吸音)する吸音体200を備えている。なお、吸音体200の構成は図1における構成と同様なので説明を省略する。本実施形態では、ケース1の印字ヘッド3の周辺に対応する部分に吸音体200が配置されている。具体的には、ケース1の印字ヘッド3の駆動部とは反対側に対応する部分に配置されている。さらに、印字ヘッド3の上方に対応するカバー11にも吸音体200が配置されている。これにより、印字ヘッド3の駆動において騒音が発生した場合、発生した騒音が吸音体200に進入し、未解繊部210で音を反射しつつ、反射した音を解繊部220で伝搬させるため、この過程おいて音が効果的に吸音され、ケース1の内部における騒音の拡散を防ぐことが可能となる。
なお、本実施形態では、印刷装置としてプリンターを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、吸音を要する各種電子機器に適用することもできる。
以上、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)吸音体200は解繊部220と未解繊部210とを含み、吸音体200に音が進入すると、より密度の高い未解繊部210において音が反射しながら、密度が低い解繊部220を伝播しながら通過していくことで音が減衰する。これにより、吸音効果を高めることができる。
(2)上記吸音体200を備えたプリンター10では、印字ヘッド3の駆動時おける騒音を効率よく低減させることができる。
[実施例]
次に、本発明にかかる具体的な実施例について説明する。
1.混合物
(1)セルロース繊維
裁断機を用いて数cmに裁断されたパルプシートをターボミル(ターボ工業株式会社製)で綿状に解繊した。
(2)溶融樹脂
芯鞘構造を有し、鞘が100℃以上で溶融するポリエチレンであり、芯がポリエステルから成る1.7dtexの溶融繊維(テトロン、帝人株式会社製)。
(3)難燃剤
水酸化アルミニウムB53(日本軽金属株式会社製)。
2.吸音体の形成
(実施例1:吸音体Aの形成)
セルロース繊維100重量部、溶融繊維15重量部、難燃剤10重量部を気中混合した混合物C1を10mm目明きの篩を通してメッシュベルト上に堆積させた。この際、サクション装置で吸引させながらメッシュベルト上に堆積させた。そして、堆積した堆積物を200℃で加圧加熱処理した。その後、φ29mm、厚さ10mmに切り出して吸音体Aを形成した。当該吸音体Aの密度を観察したところ、パルプシートが解繊された解繊部とパルプシートが解繊されていない未解繊部とが形成されていた。
(実施例2:吸音体Bの形成)
セルロース繊維100重量部、溶融繊維15重量部、難燃剤10重量部を気中混合した混合物C2’を3mm目明きの篩を通して、当該篩を通った混合物C2を形成した。また、上記混合物C1中に、混合物C2’を3mm目明きの篩を通した際に、篩を通らなかった(篩に残った)混合物を混ぜて混合物C3を形成した。従って、混合物C3は未解繊部の含有比率が高い混合物である。一方、混合物C2は未解繊部の含有比率が低い混合物である。そして、混合物C2と混合物C3とを交互にメッシュベルト上に堆積させた。本実施例2では、混合物C2と混合物C3とを交互に6回ずつ堆積させた。そして、堆積した堆積物を200℃で加圧加熱処理した。その後、φ29mm、厚さ10mmに切り出して吸音体Bを形成した。当該吸音体Bの密度を観察したところ、未解繊部の含有比率が高い層と、未解繊部の含有比率が低い層とが形成されていた。
(比較例1:吸音体Rの形成)
セルロース繊維100重量部、溶融繊維15重量部、難燃剤10重量部を気中混合した混合物C2’を3mm目明きの篩を通して、当該篩を通った混合物C2を形成した。そして、混合物C2をメッシュベルト上に堆積させた。そして、堆積した堆積物を200℃で加圧加熱処理した。その後、φ29mm、厚さ10mmに切り出して吸音体Rを形成した。当該吸音体Rの密度を観察したところ、未解繊部の含有比率が低い層が形成されていた。
3.評価
次いで、上記の実施例1、実施例2及び比較例1において、吸音性の評価を行う。本吸音性の評価は、JIS A 1405−2に基づく吸音率(垂直入射吸音率)を測定する。具体的には、下記の通りである。
(a)吸音性の評価方法について
図3は、吸音性の評価方法を示す模式図である。図3に示すように、吸音性を評価する設備は、音響管と、音響管の一方端部に設けられた底部と、音響管の他方端部に開口された開口部と、音響管の内部に設置されたマイクロホンと、音響管の開口部に設置されたスピーカーと、スピーカーに接続されたノイズ発生器や演算処理装置等を備えている。
音響管の底部に吸音体Wをセットした後、スピーカーから所定の周波数の音を放射し、音響管内に音場を生成する。そして、音響管内のマイクロホンから取得された音圧信号に基づいて垂直入射吸音率を演算する。この評価により、吸音体Wの吸音効果を評価することができる。
(b)放射する音の周波数
(b−1)1000Hz
(b−2)2000Hz
(b−3)4000Hz
上記の実施例1から実施例4及び比較例1について吸音性を評価した。評価結果は、表1の通りである。なお、表1では、各周波数における比較例1の吸音率を1とした場合の実施例1から実施例4の吸音率を表している。従って、比較例1における吸音率1よりも数字が大きい場合には、より吸音効果があるという評価になる。一方、比較例1における吸音率1よりも数字が小さい場合には、吸音効果が低いという評価になる。
Figure 0006136335
表1に示すように、実施例1及び実施例2では、全ての実施例に対応する全周波数域における吸音率が、比較例1における吸音率よりも大きい数値であり、吸音性に優れているという結果となった。これは、実施例1及び実施例2にかかる吸音体A及び吸音体Bの内部には未解繊部が分散しているため、進入した音が未解繊部に反射しながら解繊部を伝播していくためである。
本願の特徴点である解繊部と未解繊部は、空隙を有する繊維状集合体の中に紙片が混ざっているので外観として目視あるいは実体顕微鏡で確認すればわかる。紙片が表面に露出していない場合は、吸音体を複数に切断することで切断面に紙片が露出することでわかる。
上記実施形態において、吸音体200の表面の毛羽立ちを防止するなどのために、表面に薄い不織布を張り付けてもよい。貼り付ける不織布は吸音体200に比べて薄いため、吸音性には影響は少ない。
上記実施形態において、吸音体200を直方体としたが、これに限らない。直方体の一部に切り欠きや凹みがあってもよいし、直方体でなく円弧部や傾斜部を有していてもよい。
上記実施例において、パルプシートとは、針葉樹や広葉樹などの木材パルプ、麻・綿・ケナフなどの非木材植物繊維、古紙などを含む。
上記実施例において、セルロース繊維主体とするものとしたが、音を吸音し、密度差をつけられる材料であれば、セルロース繊維に限られない。ポリウレタンやポリエチレンテレフタラート(PET)などのプラスチックを原料とする繊維や、羊毛などの他の繊維でもよい。
吸音体を成形する方法は上記実施例に記載の方法に限られない。本願の特徴が出せれば、湿式など他の製法でもよい。
10…印刷装置としてのプリンター、24…印刷部としての印字ヘッド、200…吸音体、210…未解繊部、220…解繊部。

Claims (5)

  1. パルプシートを裁断した材料を用いて製造される1枚の吸音体において、解繊機を用いて形成される工程において、前記材料が繊維状に解繊された解繊部と、前記解繊機を用いて形成される工程において、前記材料が繊維状に解繊されなかった未解繊部と、を有し、
    前記未解繊部は、前記1枚の吸音体の内部に分散し
    前記未解繊部は、1000Hz、2000Hz、4000Hzの全ての周波数において、吸音効果を高めていることを特徴とする吸音体。
  2. 請求項1に記載の吸音体において、
    前記吸音体の一面に対する垂直方向を厚み方向としたとき、前記一面に沿った方向及び前記厚み方向に前記未解繊部が分散されていることを特徴とする吸音体。
  3. 請求項1又は2に記載の吸音体において、
    溶融樹脂を含むことを特徴とする吸音体。
  4. 請求項1乃至3の何れか一項に記載の吸音体において、
    前記パルプシートは、古紙を含むことを特徴とする吸音体。
  5. ケースと、
    前記ケース内に配置された印刷部と、
    前記ケース内に配置された請求項1乃至4の何れか一項に記載の吸音体と、を備えたことを特徴とする印刷装置。
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