以下、本発明に係る蓄電モジュールの一実施形態である電池モジュールについて、図面を参酌しつつ説明する。
図1〜図3に示すように、電池モジュール1は、一列に整列される複数の電池セル3と、隣り合う電池セル3間及び整列方向における複数の電池セル3の両側にそれぞれ並んで配置される複数のスペーサ5と、複数の電池セル3及び複数のスペーサ5を保持するフレーム7と、複数の電池セル3の電圧、電流又は温度の少なくとも一つを電池セル3毎に監視するセル監視回路(CMU:Cell Monitor Unit)モジュール9とを備えている。本発明の「蓄電素子」は、本実施形態における電池セル3である。本発明の「隣接部材」は、本実施形態におけるスペーサ5である。
なお、以下においては、便宜上、第一方向をZ方向(各図に示された直交軸のうちのZ軸方向)といい、第一方向と直交する第二方向をY方向(各図に示された直交軸のうちのY軸方向)といい、第一方向及び第二方向と直交する第三方向をX方向(各図に示された直交軸のうちのX軸方向)という。各図においては、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ一方側に対し、X、Y、Zの記号を付している。なお、Z方向が鉛直方向に置かれた場合、Z方向は上下方向となり、Y方向は左右方向、X方向は前後方向となる。
電池セル3は、図3に示すように、電極体と、該電極体を収容するケース30とを備えている。ケース30は、開口部を有するケース本体31と、該ケース本体31の開口部を塞いで密閉する蓋体32とを備える。ケース30内には、互いに絶縁された正極板と負極板とを含む電極体(図示せず)が収容されている。電池セル3は、X方向に扁平な角形電池である。
電池セル3は、正負極一対の電極端子33を備えている。隣り合う電池セル3は、極性が反対となるように配置されている。隣り合う電池セル3の電極端子33には、バスバー34が取り付けられる。その上で、電極端子33には、ナットが螺合される。これにより、複数の電池セル3は、電気的に接続され、一つの電池を構成する。
スペーサ5は、合成樹脂製であり、絶縁性を有している。スペーサ5は、電池セル3と面対向する(本発明の本体としての)スペーサ本体50と、該スペーサ本体50からX方向に延出し、X方向において該スペーサ本体50と対向する電池セル3の外周端部を保持する保持部51とを備えている。電池セル3のケース30がX方向から見ると矩形状であるのに対応して、スペーサ本体50は、矩形状に形成されている。保持部51は、スペーサ本体50の四つの角部に対向して形成された角部保持部52と、スペーサ本体50の三辺のそれぞれ中央部に形成された角部間保持部53とを備えている。
なお、本実施形態に係る電池モジュール1では、電池セル3間に隙間が形成されている。この隙間に空気が流通することで、電池セル3が冷却される。つまり、電池モジュール1の冷却方式は、空冷式である。空冷式の電池モジュール1のスペーサ5は、空気の流路を確保するために設けられている。このスペーサ5のスペーサ本体50は、矩形波形状の断面形状を有する。
スペーサ本体50は、図5に示すように、電池セル3と面対向する領域におけるZ方向の第一端50aを含む第一領域50Aと、該第一端50aと反対側の第二端50bを含む第二領域50Bと、第一領域50Aと第二領域50Bとの間の第三領域50Cとを有する。第一領域50A及び第二領域50Bは、Z方向において第三領域50Cより外側の領域を指す。本実施形態における第一領域50Aは、角部保持部52の後述する上側角部保持部52Aで挟まれる領域である。第二領域50Bは、角部保持部52の後述する下側角部保持部52Bで挟まれる領域である。第三領域50Cには、Y方向に延びる溝状の流路を形成する流路形成部54が設けられる。本実施形態における流路形成部54は、本発明の「溝形成部」に相当する。第一領域50A及び第二領域50Bには、基部550と、電池セル3に向かって突出する凸部55とが設けられる。
流路形成部54は、スペーサ本体50の両面においてZ方向にそれぞれの位置を互いにずらして配置される。流路形成部54は、Y方向における第三端50cから該第三端50cと反対側の第四端50dまで連続して該Y方向に延びる。流路形成部54は、Z方向に二つ以上配置されている。具体的には、図6に示すように、流路形成部54は、スペーサ本体50の一方の面(図6の左方向)に4本設けられており、他方の面(図6の右方向)に3本設けられている。
流路形成部54は、図9及び図10に示すように、溝部540を形成する。流路形成部54は、スペーサ本体50の第三領域50Cを凹凸成形することにより、複数形成されている。流路形成部54は、この溝部540と該溝部540と面対向する電池セル3のケース本体31の側面との間に流路を形成する。この流路は、外気(空気)を流す風路となる。スペーサ本体50は、溝部540が形成された一方の面と、該一方の面と反対側の他方の面とを有する。流路形成部54の他方の面側は、凸条541に形成されている。凸条541は、該凸条541と対向する別の電池セル3のケース本体31の側面に当接する。この別の電池セル3は、溝部540と対向する電池セル3とは異なる電池セル3である。スペーサ本体50の一方の面に設けられた流路形成部54の(Z方向における)隣には、スペーサ本体50の他方の面に設けられた流路形成部54の凸条541が配置される。つまり、スペーサ本体50の一方の面には、溝部540と、凸条541(の後述する頂部544)とが交互に配置されている。他方の面も同様である。
溝部540は、スペーサ本体50のY方向に略一定幅で延びる底部542と、該底部542の長手方向の縁から電池セル3に向かって延出する一対の内壁部543とを備える。底部542と、一対の内壁部543と、電池セル3のケース本体31の側面とは、断面視矩形状の流路を形成する。
凸条541は、頂部544と、該頂部544を支持する側壁部545とを備える。頂部544は、ケース本体31の側面に面接触する。側壁部545は、隣り合う電池セル3との間の距離を一定に保つために頂部544を支持する。
これらの流路形成部54は、スペーサ本体50の両側にそれぞれ面対向する電池セル3のうち、いずれか一方の電池セル3との間に流路を形成する。一方の面に設けられた溝部540と一方の電池セル3との間に第一の流路が形成される。第一の流路は、一方の電池セル3を冷却する。他方の面に設けられた溝部540と他方の電池セル3との間に第二の流路が形成される。第二の流路は、他方の電池セル3を冷却する。この第一の流路と第二の流路とは、隣り合う電池セル3,3間に互い違いに配置される。
凸部55は、図5に示すように、スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bに設けられている。スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bは、Y方向の第三端50cを含む第一端部50D1と該第三端50cと反対側の第四端50dを含む第二端部50D2と、第一端部50D1及び第二端部50D2間の中間部50D3とを備える。第一凸部55Aは、第一領域50Aの中間部50D3に形成される。第一凸部55Aは、Y方向に延び、第一領域50Aの中間部50D3における第一端部50D1側と第二端部50D2側の2箇所に設けられている。第二凸部55Bは、第二領域50Bの中間部50D3に形成される。第二凸部55Bは、第二領域50Bの中間部50D3における第一端部50D1近傍から第二端部50D2近傍までY方向に連続して延びる。凸部55と流路形成部54とは、略平行に配置されている。
凸部55は、図6及び図7に示すように、スペーサ5が保持する電池セル3の一方の面(図6及び図7における右側の面)に面接触する基部550を有する。しかし、基部550は、電池セル3の他方の面(図6及び図7における左側の面)とは面接触せず、離間している。凸部55は、図10及び図12に示すように、基部550における電池セル3のケース本体31と離間する他方の面から該ケース本体31に向かって突出している。なお、スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bにおいて他方の電池セル3に当接するのは、この凸部55のみであり、この凸部55がなければ、他方の電池セル3とスペーサ本体50とは当接しない。
凸部55は、電池セル3のケース本体31に当接する当接部551と、該当接部551を支える支持部552とを備える。当接部551は、平面状に形成されている。当接部551は、ケース本体31の側面に面接触する。支持部552は、流路形成部54の側壁部545の高さと同じ高さを有する。
ケース本体31に面接触する当接部551の裏側には、図9及び図11に示すように、基部550を凹ませて形成された凹部553が設けられている。なお、スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bにおいて一方の電池セル3に当接するのは、基部550のみであり、この凹部553がなければ、スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bの全面が一方の電池セル3に当接して、スペーサ本体50の第一領域50A又は第二領域50Bにおける電池セル3との当接面積比がスペーサ本体50の第三領域50Cにおける電池セル3の当接面積比を超える。ここでいう当接面積比とは、スペーサ本体50の各領域において電池セル3に面対向している領域の面積に対する、電池セル3に当接可能な面積の比率のことである。
凸部55は、スペーサ本体50の基部550から他方の電池セル3のケース本体31側に向かって膨出して形成されている。そのため、スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bの剛性が高められている。また、スペーサ本体50の第一領域50Aと第二領域50Bの厚さは、基部550が設けられた領域と凸部55及び凹部553が設けられた領域とで同じ厚さとなる。スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bの一方の面には、凹部553が設けられ、その他方の面には、当接部551と支持部552とが設けられる。よって、スペーサ本体50の厚みを増すことなく、つまりは、凸部55を成形するのに伴って材料を増やすことなく、スペーサ本体50の裏表両面に凸部55(当接部551)と凹部553とが設けられる。
当接部551におけるZ方向の長さは、図10に示すように、電池セル3を保持するスペーサ本体50の一方の面において、溝部540同士の間隔と同じ又は略同じである。具体的には、凸部55におけるZ方向の長さは、溝部540同士の間隔、言い換えると、凸条541(の後述する頂部544)の幅と同一又は略同一である。そのため、スペーサ5に加わる力は、Z方向において電池セル3に均等に加わりやすくなる。
電池セル3のケース本体31の縁と蓋体32の縁とが接合される位置には、溶接部(溶接痕)が形成される。凸部55及び凹部553は、この溶接部を避けて配置されている。溶接部は、ケース本体31の開口部の開口縁(上端部)に沿って連続して形成されている。溶接部は、ケース本体31の側面側から(X方向及びY方向から)ケース本体31の縁と蓋体32の縁とを溶接することにより生じる。また、スペーサ本体50の基部550は、この溶接部と面接触し得る位置に配置される。そのため、基部550には、この溶接部を避けるために、段差部56が形成されている。段差部56は、第一領域50AのY方向端部(上端部)に設けられている。
角部保持部52は、図11及び図12に示すように、電池セル3を安定して拘束すべく、電池セル3のケース30の中央を中心とした二つの対角位置(四隅)に配置され、電池セル3のケース30の四隅を保持する。角部保持部52は、スペーサ本体50の角部におけるY方向及びZ方向の直交端縁からX方向の一方側及び他方側の両側に延出する。角部保持部52の内面は、電池セル3の外周端部のうち、角部に当接するようになっている。これらの内面は、壁状(平板状)に形成されている。凹部553がこの角部保持部52間の第一領域50A及び第二流域50Bに設けられているが、この凹部553には、角部保持部52が妨げとなり、冷却媒体が流れず、つまり、角部保持部52は、冷却媒体が流路以外に流れるのを阻止する。
角部保持部52は、図5に示すように、電池セル3の上側の一対の角部に当接する一対の上側角部保持部52Aと、電池セル3の一対の下側の角部及び底面に当接する下側角部保持部52Bとを備える。一対の上側角部保持部52Aは、スペーサ本体50の第三端50c及び第四端50dの上端側の縁に設けられる。下側角部保持部52Bは、スペーサ本体50の第三端50cの下端側から底面を介してスペーサ本体50の第四端50dの下端側に亘る縁に設けられる。角部保持部52は、隣り合う電池セル3を位置決めする位置決め部として機能する。
角部間保持部53は、図11及び図12に示すように、スペーサ本体50の頂部(頂辺)の中央箇所に設けられた頂部保持部53Aと、スペーサ本体50の左右の側部(側辺)の中央箇所に設けられた第一側部保持部53B及び第二側部保持部53Cとを備えている。頂部保持部53A、第一側部保持部53B及び第二側部保持部53Cのそれぞれは、X方向(の電池セル3側に)に延出する延出片530を有する。延出片530は、壁状に形成されており、具体的には、一様に平坦に形成されている。第一側部保持部53Bの延出片530は、X方向における長さが電池セル3のX方向における厚み寸法と略同じ長さとなるように延出している。第二側部保持部53Cの延出片530は、X方向における長さが電池セル3のX方向における厚み寸法よりも短くなるように延出している。
頂部保持部53A及び第一側部保持部53Bのそれぞれは、延出片530の先端部に、内側に突出する突片531を備えている。頂部保持部53Aの突片531は、スペーサ本体50の下方に向かって突出している。第一側部保持部53Bの突片531は、第二側部保持部53Cに向かって突出している。第二側部保持部53Cは、延出片530の先端部に、内側に突出する突起532を備えている。
第一側部保持部53B及び第二側部保持部53Cは、開口533を有する。開口533は、流路形成部54によって形成される流路の出入り口に対応する第一側部保持部53B及び第二側部保持部53Cの位置を貫通して形成されている。開口533は、溝部540の断面形状以上の開口面積を有する。開口533は、流路を塞がない位置に設けられている。そのため、開口533は、流路を通過する空気の流れの妨げとならない。
図4〜図8は、スペーサ5が電池セル3を保持した状態を示している。電池セル3の(ケース30の)外周端部のうち、四つの角部のそれぞれは、角部保持部52によって保持されている。頂部は、頂部保持部53Aによって保持されている。左右の側部は、第一側部保持部53B及び第二側部保持部53Cによって保持されている。電池セル3の頂部のうち、頂部保持部53Aが延出する方向における面(電池セル3のケース30におけるスペーサ本体50との対向面とは反対側の面)には、頂部保持部53Aの突片531が係止されている。電池セル3の一方の側部のうち、第一側部保持部53Bが延出する方向における面には、第一側部保持部53Bの突片531が係止されている。電池セル3の他方の側部には、第二側部保持部53Cの突起532が当接している。これらにより、電池セル3は、スペーサ5に保持され、スペーサ5と一体化されている。
フレーム7は、図1〜図3に示すように、X方向における複数の電池セル3の両側に配置され且つX方向において複数の電池セル3及び複数のスペーサ5を挟み込む一対の終端部材70(いわゆるエンドプレート)と、該一対の終端部材70同士を連結し、複数の電池セル3及び複数のスペーサ5を一体に緊締する連結部材75とを備えている。つまり、電池セル3とスペーサ5とが一列に整列されている。そして、電池セル3とスペーサ5とは、直線上に積層された状態で、一端の終端部材70に挟まれて電池積層方向に加圧されている。
終端部材70は、例えば鋳造によって形成された、例えばアルミなどの金属製である。終端部材70は、終端部材本体71と、該終端部材本体71の下部からX方向外方に突出する脚部72とを備えている。スペーサ本体50と同様、電池セル3のケース30がX方向から見て矩形状であるのに対応して、終端部材本体71は、矩形状に形成されている。
連結部材75は、Y方向における複数の電池セル3の両側に一対設けられている。すなわち、連結部材75は、Y方向の一方側から複数の電池セル3に対向配置される連結部材75と、Y方向の他方側から複数の電池セル3に対向配置される連結部材75とを備えている。連結部材75は、X方向に沿って延びて互いに間隔を有して平行する一対の横梁部76(連結部)と、該一対の横梁部76のX方向における一端部同士及び他端部同士を連結する一対の縦梁部77とを備える。連結部材75は、全体として、矩形の枠形状を呈している。連結部材75の一対の横梁部76は、電池セル3及びスペーサ5のX方向に沿う面における、電池セル3のケース30の中央を中心とした二つの対角位置(四隅)の近傍に配置されている。
セル監視回路モジュール9は、セル監視回路(図示しない)を回路ケース90に収容したものである。回路ケース90は、開口部を有するケース本体91と、該ケース本体91の開口部を塞いで密閉する蓋体92とを備えている。
以上の構成からなる電池モジュール1は、以下のようにして組み立てられる。つまり、図3に示すように、まず、間にスペーサ5が配置されつつ複数の電池セル3が積層される。一端及び他端にある電池セル3の外側にもスペーサ5が配置される。さらにその両側に一対の終端部材70が配置される。一対の終端部材70間にX方向の圧縮力が掛けられた状態で、一対の連結部材75が複数の電池セル3にY方向から配置される。そして、連結部材75の各貫通孔に挿通されたボルト85のネジ部が終端部材70の各雌ネジに螺入され、複数の電池セル3及び複数のスペーサ5がフレーム7とともに一体化される。その後、セル監視回路モジュール9が複数の電池セル3にZ方向から配置されて取り付けられる。このようにして、電池モジュール1は、完成する。
以上の構成からなる電池モジュール1では、スペーサ5が電池セル3と並んで配置され、スペーサ本体50の第三領域50Cにおいて流路形成部54が電池セル3に当接するのに伴って、第一領域50A及び第二領域50Bにおける凸部55も電池セル3に当接する。第三領域50Cにおける溝形成部54は、電池セル3に対して不均等に力を加えるが、凸部55を設けて、第一領域50A及び第二領域50Bにおいても不均等に力を電池セル3に加えて分散させることにより、第三領域50Cの状態に近づけ、第一領域50A及び第二領域50Bと第三領域50Cとで均等となるようにする。そのため、スペーサ5が撓みにくくなっている。よって、スペーサ5が電池セル3に加える力の不均衡が抑えられ、電池セル3の保持性が高まる。
より詳細に説明すると、凸部55がスペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bに設けられていない場合、図7に示すスペーサ本体50の他方の面において、電池セル3とスペーサ本体50とは、第三領域50Cに設けられる流路形成部54(の凸条541の頂部544)のみで当接することになる。しかし、第一領域50A及び第二領域50Bに凸部55が設けられることにより、電池セル3の第三領域50Cに対向する領域において流路形成部54が当接し、第一領域50A及び第二領域50Bに対向する領域において凸部55が当接するようになる。そのため、流路形成部54から電池セル3に加えられていた力が流路形成部54と凸部55とに分散されて、電池セル3に加わるようになる。よって、スペーサ5が電池セル3に加える力の不均衡が抑えられる。
また、凸部55がスペーサ本体50の基部550から面交差する方向に突出しており、スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bの強度が高まり、曲げやねじりに対して強くなる。
また、スペーサ5が電池セル3と並んで配置され、スペーサ本体50の第三領域50Cにおいて流路形成部54が電池セル3に当接するのに伴って、第一領域50A及び第二領域50Bにおける凹部553が電池セル3に当接する。第三領域50Cにおける溝形成部54は、電池セル3に対して不均等に力を加えるが、凹部553を設けて、第一領域50A及び第二領域50Bにおいても不均等に力を電池セル3に加えて分散させることにより、第三領域50Cの状態に近づけ、第一領域50A及び第二領域50Bと第三領域50Cとで均等となるようにする。そのため、スペーサ5が撓みにくくなっている。よって、スペーサ5が電池セル3に加える力の不均衡が抑えられ、電池セル3の保持性が高まる。
より詳細に説明すると、凹部553がスペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bに設けられていない場合、図6に示すスペーサ本体50の一方の面において、電池セル3とスペーサ本体50とは、第三領域50Cに設けられる流路形成部54(の凸条541の頂部544)と、第一領域50A及び第二領域50Bの基部550(の全域)とで当接することになる。しかし、第一領域50A及び第二領域50Bに凹部553が設けられることにより、電池セル3の第三領域50Cに対向する領域において流路形成部54が当接し、第一領域50A及び第二領域50Bに対向する領域において凹部553が当接するようになる。そのため、第一領域50A及び第二領域50Bから電池セル3に一様に加えられる力の分布は、第三領域50Cにおいて流路形成部54の頂部544の間隔で加えられる力の分布に近づくようになる。よって、スペーサ5が電池セル3に加える力の不均衡が抑えられる。
また、凹部533が基部550の一方の面から他方の面に向かって面交差する方向に凹ませ、反対側の面を膨出させ、凸部55を形成することにより、スペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50Bの強度が高まり、曲げやねじりに対して強くなる。
また、電池セル3に対向するスペーサ5のZ方向における長さが他方の面において流路形成部54と凸部55とで同じ又は略同じ長さとなっている。そのため、スペーサ5に加わる力は、Z方向において電池セル3に均等に加わりやすくなる。凸部55は、Y方向に延びる。そのため、スペーサ5に加わる力は、Y方向において電池セル3に均等に加わりやすくなる。
また、角部保持部52がスペーサ本体50の第一領域50A及び第二領域50BにおけるY方向の両方の端部50c,50dに設けられている。そのため、溝部540が電池セル3のケース30における周囲の二つの対角位置(四隅)を躱した位置に配置される。第一領域50A及び第二領域50Bに凸部55が設けられ、スペーサ5から電池セル3に加わる外力は、スペーサ本体50における第一領域50A及び第二領域50Bと、第三領域50Cとに分散される。そのため、スペーサ5は、撓みにくくなっている。よって、スペーサ5が電池セル3に加える力の不均衡が抑えられ、電池セル3の保持性が高まる。
凸部55は、第一領域50A又は第二領域50BにおけるY方向の第一端部50D1と第二端部50D2との間の中間部50D3に設けられる。溝部540が電池セル3のケース30における周囲の二つの対角位置(四隅)を躱した位置に配置されるため、この領域には、溝部540が形成されておらず、この領域を凸部55に有効に利用することができる。
また、ケース本体31と蓋体32とを密閉する際に、ケース本体31の縁と蓋体32の縁とが側面から溶接される。蓋体32の縁とケース本体31の縁との接合部には、溶接部(溶接痕)が形成される。溶接部は、ケース本体31の側面から盛り上がって形成される。そのため、この溶接部の高さは、電池セル3とスペーサ5との間の離隔距離の公差に影響を与える。しかし、凸部55は、この溶接部を避けて配置されている。凸部55が溶接部に接触しない。そのため、溶接部によって電池セル3とスペーサ5との間の離隔距離は変わらない。よって、電池モジュール1のX方向(電池セル積層方向)の公差を低く抑えることができる。
また、凸部55がこの溶接部と接触する位置に設けられていると、溶接部とケース本体31の側面との高低差(段差)によりスペーサ5が撓む。しかし、凸部55がこの溶接部を避けて配置されているため、スペーサ5が撓むことはない。そのため、スペーサ5に加わる力が電池セル3に均等に加わりやすくなり、電池セル3の保持性が高まる。
尚、本発明に係る蓄電モジュールは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、隣接部材として、スペーサ5が設けられている。しかしながら、これに限定されるものではない。隣接部材は、終端部材であってもよい。
また、上記実施形態においては、凸部55及び凹部553は、第一領域50Aと第二領域50Bとに設けられている。しかしながら、これに限定されるものではない。溝形成部がZ方向に設けられているような場合、凸部及び凹部は、スペーサ本体のY方向の一端を含む領域と該一端と反対側の他端を含む領域とに設けられていてもよい。
また、上記実施形態においては、溝形成部として、流路形成部54が設けられている。しかしながら、これに限定されるものではない。隣接部材は、蓄電素子間の絶縁を確保するためにも設けられている。このために、溝形成部は、形成する溝が流路として利用されないものであってもよい。また、隣接部材は、各蓄電素子の製造誤差であったり、蓄電素子が発熱等で熱膨張し、筐体が変形するのに対応するために設けられるものであってもよい。
また、上記実施形態においては、溝形成部としての流路形成部54は、スペーサ本体50の両面に設けられている。しかしながら、これに限定されるものではない。溝形成部は、本体の一方の面のみに設けられていてもよい。
また、上記実施形態においては、凸部55及び凹部553は、第一領域50A及び第二領域50Bの両方に設けられている。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、凸部及び凹部は、第一領域又は第二領域のいずれか一方のみに設けられていてもよい。
また、上記実施形態においては、凸部55は、スペーサ本体50の一方の面から突出して設けられている。しかしながら、これに限定されるものではない。凸部が溝形成部から突出しなければ、つまり、凸部がX方向における溝形成部の高さの範囲以内で突出しておれば、凸部は、スペーサ本体の両面から突出して設けられていてもよい。また、凸部は、スペーサ本体の厚さを厚くしたものであってもよい。
また、上記実施形態においては、凸部55は、スペーサ本体50の一方の面から膨出して、他方の面に凹部553を形成している。しかしながら、これに限定されるものではない。凸部は、本体の一方の面から突出させた突出部であってもよく、他方の面に凹部が設けられていなくてもよい。但し、本体の他方の面から一方の面に押し出して、一方の面から突出させた凸部は、重量を増加させることなく、本体の強度を上げることができる。
また、上記実施形態においては、凸部55におけるX−Z平面で切断した断面形状がコの字(Uの字形)に形成されている。しかしながら、これに限定されるものではない。凸部の断面形状は、Vの字形状やCの字形状であってもよい。
また、上記実施形態においては、凸部55及び凹部553は、流路形成部54に沿って(本発明の第二方向としての)Y方向に延びるように設けられている。しかしながら、これに限定されるものではない。凸部及び凹部は、Z方向に延びるように設けられていてもよい。また、凸部及び凹部は、溝形成部と繋がっていてもよい。つまり、凸部及び凹部は、溝形成部の一部であってもよい。
また、上記実施形態においては、凸部55におけるZ方向の長さと溝同士の間隔は、同じ又は略同じである。しかしながら、これに限定されるものではない。凸部におけるZ方向の長さと溝同士の間隔は、異なっていてもよい。
また、上記実施形態においては、電池モジュール1には、フレーム7が設けられている。フレーム7は、一対の終端部材70及び一対の連結部材75を備えている。そして、積層された電池セル3がフレーム7によって緊締保持されている。しかしながら、これに限定されるものではない。スペーサが蓄電素子を緊締保持する蓄電モジュールであってもよい。このスペーサのスペーサ本体は、電池セルのケースにおける中央を中心とした二つの対角位置(四隅)に孔を有する。この孔には、ボルトの軸部(連結部)が挿通され、スペーサ同士の相対的な位置決めを行う。そして、ナットがボルトの先端に螺合され、締め付けられることにより、スペーサ同士が緊締保持される。スペーサ間の蓄電素子には、蓄電素子が積層される方向(X方向)にスペーサから圧縮力が加わっている。本発明は、このような蓄電モジュールにおいても適用することができる。
また、上記実施形態においては、凸部55は、電池セル3とスペーサ5とが並んで配置されるときに、流路形成部54とともに電池セル3に当接している。しかしながら、これに限定されるものではない。蓄電素子と隣接部材とが並んで配置されるときに、溝形成部と凸部とが蓄電素子に同時に当接しなくてもよく、例えば、特定の姿勢のときに(蓄電モジュールを縦にしたとき(図1のX方向を上下方向にしたとき))溝形成部と凸部とが蓄電素子に当接するものであってもよい。
また、ある一定の力が溝形成部に加わって溝形成部が変形し、蓄電素子と基部との間の距離が所定の長さになったときに、凸部が蓄電素子に当接するものであってもよい。この場合、凸部のX方向の長さ(高さ)は、溝形成部のX方向の長さより低くなる。
また、上記実施形態においては、流路は、空気を通す風路である。しかしながら、これに限定されるものではない。流路には、空気以外の冷却媒体を通すものが含まれる。
また、上記実施形態においては、リチウムイオン二次電池について説明した。しかしながら、電池の種類や大きさ(容量)は任意である。
また、本発明は、リチウムイオン二次電池に限定されるものではない。本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタにも適用可能である。